(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】セラミックス回路基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20230117BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230117BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20230117BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
H05K1/02 E
H05K1/03 610D
H05K1/09 C
H01L23/12 C
(21)【出願番号】P 2019534494
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2018028422
(87)【国際公開番号】W WO2019026834
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2017151888
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 篤士
(72)【発明者】
【氏名】広津留 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 恒希
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳孝
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-283184(JP,A)
【文献】特開2015-220295(JP,A)
【文献】特開2000-294699(JP,A)
【文献】特開2002-203942(JP,A)
【文献】特開2001-127157(JP,A)
【文献】特開2006-245437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/03
H05K 1/09
H01L 23/13
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基材と、前記セラミックス基材の両面に設けられ、Al及び/又はCuを含む金属層と、を備え、
前記金属層が第一金属層及び第二金属層を有し、前記セラミックス基材、前記第一金属層及び前記第二金属層がこの順に積層されており、
前記第一金属層が、
Cu又はAlで形成されており、
25℃~150℃における線熱膨張係数の測定値α1が5×10
-6~9×10
-6/Kであり、
25℃~150℃における線熱膨張係数の理論値α2に対する前記α1の比α1/α2が0.7~0.95であり、
前記金属層のうちの少なくとも一方が金属回路を形成している、セラミックス回路基板。
【請求項2】
前記セラミックス基材が、AlN、Si
3N
4又はAl
2O
3で形成されている、請求項1に記載のセラミックス回路基板。
【請求項3】
前記セラミックス基材の厚みが0.2~1.5mmである、請求項1又は2に記載のセラミックス回路基板。
【請求項4】
前記第二金属層が、Cu、Al、Cu及びMoを含む合金、並びにCu及びWを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1種で形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミックス回路基板。
【請求項5】
前記金属層の厚みが0.1~2.0mmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミックス回路基板。
【請求項6】
前記第二金属層がCuを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のセラミックス回路基板。
【請求項7】
前記第一金属層の端面と前記第二金属層の端面とが面一である、又は、前記第一金属層の端面が前記第二金属層の端面よりも外側にはみ出ている、請求項1~6のいずれか一項に記載のセラミックス回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス回路基板に関し、特にパワーモジュール等の大電力電子部品の実装に好適なセラミックス回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボット、モーター等の産業機器の高性能化に伴い、インバータの大電流化及び高効率化が求められている。このような状況の下、インバータに使用されるパワーモジュールにおいて、半導体素子から発生する熱も増加の一途をたどっている。半導体素子から発生する熱を効率的に拡散させるため、良好な熱伝導性を有するセラミックス回路基板が用いられている。
【0003】
パワーモジュールは、一般に、セラミックス回路基板と、セラミックス回路基板の一方の面上に設けられた半導体素子と、セラミックス回路基板の他方の面上に半田付け等により設けられ、熱伝導性に優れるCu、Cu-Mo、Cu-C、Al、Al-SiC、Al-C等からなるベース板と、ベース板のセラミックス回路基板とは反対側の面上にねじ止め等により設けられた放熱フィンと、を備える。
【0004】
しかし、ベース板及びセラミックス回路基板の半田付けは加熱により行われることから、ベース板とセラミックス回路基板との熱膨張係数の差により、ベース板に反りが生じやすいといった問題点があった。
【0005】
パワーモジュールの動作時に半導体素子等から発生した熱は、セラミックス回路基板、半田、及びベース板を介して放熱フィンに伝達される。そのため、ベース板に反りが生じると、放熱フィンをベース板に取り付けたときに反りによる空隙(エアギャップ)が生じてしまい、放熱性が極端に低下してしまう。
【0006】
こうした反りの問題を改善するため、例えば、セラミックス基材の両面に接合された金属層を有するセラミックス回路基板において、硬度、種類、厚さ等の異なる金属層をそれぞれ金属回路板及び放熱板として用いて、セラミックス基材の一方及び他方の面上に接合することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、パワーモジュールを製造する際に、溶融した状態のベース板と、セラミックス回路基板とを接触させることにより、ベース板とセラミックス回路基板とを接合することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-207587号公報
【文献】特開2002-76551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
セラミックス回路基板は、信頼性の観点から、パワーモジュール製造においてベース板に接合する際にベース板の反りを抑制できるのみならず、実使用において繰り返し行われる発熱及び冷却によってもセラミックス基材及び金属層の高い密着性を維持できることが望ましい。しかし、従来のセラミックス回路基板及びパワーモジュールは、上述した信頼性の観点から、未だ改善の余地がある。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、ベース板に接合する際にベース板の反りを抑制できるのみならず、繰り返し行われる発熱及び冷却によってもセラミックス基材及び金属層の高い密着性を維持できるセラミックス回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、セラミックス基材と、セラミックス基材の両面に設けられ、Al及び/又はCuを含む金属層と、を備え、25℃~150℃における線熱膨張係数の測定値α1が5×10-6~9×10-6/Kであり、25℃~150℃における線熱膨張係数の理論値α2に対する前記α1の比α1/α2が0.7~0.95であり、金属層のうちの少なくとも一方が金属回路を形成している、セラミックス回路基板を提供する。
【0012】
セラミックス基材は、AlN、Si3N4又はAl2O3で形成されていてもよく、厚みが0.2~1.5mmであってもよい。
【0013】
金属層は、Cu、Al、Cu及びMoを含む合金、並びにCu及びWを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1種で形成されていてもよく、厚みが0.1~2.0mmであってもよい。
【0014】
金属層は、第一金属層及び第二金属層を有し、セラミックス基材、第一金属層及び第二金属層がこの順に積層されていてもよい。この場合、第二金属層はCuを含んでいてもよい。また、第一金属層の端面と第二金属層の端面とは面一であってもよく、第一金属層の端面が第二金属層の端面よりも外側にはみ出していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ベース板に接合する際にベース板の反りを抑制できるのみならず、繰り返し行われる発熱及び冷却によってもセラミックス基材及び金属層の高い密着性を維持できるセラミックス回路基板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】セラミックス回路基板の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】セラミックス回路基板の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】セラミックス回路基板の一実施形態を示す断面図である。
【
図4】パワーモジュールの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、セラミックス回路基板の一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、セラミックス回路基板100は、セラミックス基材1と、セラミックス基材1の両面に設けられた金属層2a,2bとを有する。金属層2a,2bのうちの少なくとも一方は、電気回路(金属回路)を形成している。
図1に示すように、金属層2a,2bは、それぞれ、単一の金属層21a,21bからなっていてもよい。
【0019】
金属層2a,2bは、Al及び/又はCuを含むが、Al及び/又はCuを主成分として含むことが好ましい。ここで、「主成分」とは、金属層2a,2bの全体質量を基準として、70質量%以上含まれる成分を意味する。金属層がAl及びCuの両方を含む場合、それらの合計量が70質量%以上であればよい。主成分の割合は、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。また金属層は、微量の不可避的不純物を含んでいてもよい。
【0020】
本実施形態に係るセラミックス回路基板は、25℃~150℃における線熱膨張係数の測定値α1が5×10-6~9×10-6/Kであり、25℃~150℃における線熱膨張係数の理論値α2に対するα1の比α1/α2が0.7~0.95である。
【0021】
このような特徴を有するセラミックス回路基板が、ベース板に接合する際にベース板の反りを抑制できるのみならず、繰り返し行われる発熱及び冷却(ヒートサイクル)によってもセラミックス基材及び金属層の高い密着性を維持できる理由を、本発明者等は以下のように考えている。
【0022】
まず、本発明者等の検討によれば、パワーモジュール製造時におけるベース板の反りの発生、並びにヒートサイクルによるセラミックス基材及び金属層の剥離やセラミックス基材におけるクラックの発生は、セラミックス回路基板を構成するセラミックス基材及び金属層の線熱膨張係数の差が原因であることが判明している。一般に、セラミックス基材の線熱膨張係数に比べ金属層の線熱膨張係数の方が大きい。そのため、セラミックス基材と金属層とを接合する温度から室温に戻す場合やヒートサイクルにより、金属層に引張応力が残留する。この引張応力の残留(残留応力)によって、上述したような不具合が発生すると考えられる。
【0023】
本発明者等は、上記残留応力を低減するため、セラミックス回路基板の線熱膨張係数に着目した。本発明者等のさらなる検討によれば、セラミックス回路基板の線熱膨張係数は、構成されるセラミックス基材と金属層の構造(厚み等)及び組成に加え、セラミックス基材と金属層とを接合する温度から室温に戻る際に、両材料の熱膨張差により発生する残留応力により決まることが判明している。このため、例えば、同一の構成を有するセラミックス回路基板であっても、接合方法によりセラミックス回路基板の線熱膨張係数が異なる場合がある。一般に、セラミックス基材と金属層とは、温度800℃程度の温度で、活性金属法によってロウ付けして接合されることが多いが、この方法で接合した場合、接合後に室温に冷却する過程で線熱膨張係数の大きい金属層に引張応力が残留する。引張応力が残留している場合、得られるセラミックス回路基板の線熱膨張係数の測定値は、構成するセラミックス基材及び金属層の構造(厚み等)及び組成から算出した線熱膨張係数の理論値より小さい値となると考えられる。本発明に係るセラミックス回路基板は、得られるセラミックス回路基板の線熱膨張係数の測定値を大きくし、且つ当該測定値を理論値に近づけたことで、セラミックス回路基板における残留応力を低減することができた、と本発明者等は考えている。
【0024】
さらに、本発明に係るセラミックス回路基板は、それ自体の残留応力を低減できることから、ベース板の種類や線熱膨張係数の値によらず、ベース板に接合する際のベース板の反りを抑制することもできると考えている。
【0025】
セラミックス回路基板の線熱膨張係数の測定値を大きくする手法としては、例えば、線熱膨張係数の大きい金属層の厚みを大きくすることが有効と考えられる。ただし、セラミックス回路基板の線熱膨張係数を大きくしすぎると、セラミックス基材に対する金属層の引張応力が大きくなり、実使用を想定したヒートサイクル試験において、セラミックス基材にクラックが入るなどの面で問題が発生する可能性がある。このような観点から、セラミックス回路基板の25℃~150℃における線熱膨張係数の測定値α1は、5×10-6~9×10-6/Kであることが必要であり、6×10-6~9×10-6/Kであることが好ましく、7×10-6~9×10-6/Kであることがより好ましい。
【0026】
一方、セラミックス回路基板の線熱膨張係数の測定値を理論値に近づける手法としては、例えば、セラミックス基材と金属層とを接合する際の温度を小さくし、金属層の残留応力を低減する方法等が有効と考えられる。セラミックス基材と金属層とを接合する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、接着剤を用いて両者を接着させる接着法、活性金属法、溶射法等を単独で又は複数を組み合わせて用いる方法が挙げられる。接合する際の温度を小さくできる観点からは、接着法、溶射法等を用いることが好ましく、熱伝導率の低い接着剤を用いずにパワーモジュールとしての放熱性を十分に確保する観点からは、活性金属法、溶射法等を用いることが好ましい。このような観点から、セラミックス基材の表面に活性金属法等により薄い金属層を形成した後に、所定の厚みの金属を低温で接合する手法や溶射法により金属層を形成する手法が有効である。セラミックス基材と金属層とを接合する方法の詳細については、後述する。
【0027】
セラミックス回路基板の、25℃~150℃における線熱膨張係数の理論値α2に対するα1の比α1/α2は、0.7~0.95であることが必要であるが、金属層の残留応力をより低減できる観点から、0.75~0.95であることが好ましく、0.80~0.95であることがより好ましい。
【0028】
セラミックス回路基板の線熱膨張係数の測定値α1は、JIS R 1618に準拠して測定された値を意味する。α1は、例えば、熱膨張計(セイコー電子工業株式会社製、商品名「TMA300」)を用いて測定することができる。
【0029】
また、線熱膨張係数の理論値α2は、複合則によって算出された値を意味し、より具体的には、以下の計算式から算出することができる。
α2=Σαi・Ei・Vi/ΣEi・Vi
上記計算式中、αは熱膨張係数、Eはヤング率、Vは体積分率を示し、添え字iは複合材料における各材料成分を示す。
【0030】
このようなセラミックス回路基板100を得るためには、例えば、セラミックス基材1は、AlN、Si3N4又はAl2O3で形成されていることが好ましい。上記の材料を用いてセラミックス基材1を形成することで、適切な絶縁性と熱伝導性とを有するセラミックス回路基板100を効果的に得ることができる。セラミックス基材1の厚みは、0.2~1.5mmであることが好ましく、0.25~1.0mmであることがより好ましい。セラミックス基材1の厚みが0.2mm未満であると耐熱衝撃性が低下し、1.5mmを超えると放熱性が低下する傾向がある。
【0031】
また、金属層2a,2bは、Cu、Al、Cu及びMoを含む合金、並びにCu及びWを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1種で形成されていることが好ましい。上記の材料を用いて金属層2a,2bを形成することで、適切な絶縁性と熱伝導性とを有するセラミックス回路基板100を効果的に得ることができる。金属層2a,2bは、それぞれ同種の材料で形成されていても、異種の材料で形成されていてもよいが、セラミックス回路基板の製造を容易にする観点から、同種の材料で形成されていることが好ましい。
【0032】
金属層2a,2bの厚みは、0.1~2.0mmであることが好ましく、0.2~1.0mmであることがより好ましい。金属層2a,2bの厚みが0.1mm未満であると流せる電流が制限され、2.0mmを超えると耐熱衝撃性が低下する傾向がある。金属層2a,2bの厚みは、それぞれ実質的に同じでも異なっていてもよいが、セラミックス回路基板の製造を容易にする観点から、実質的に同じであることが好ましい。
【0033】
セラミックス回路基板100は、上述したように、セラミックス基材1と金属層2a,2bとを接合することにより得ることができる。セラミックス基材と金属層とを接合する方法としては、接着剤を用いて両者を接着させる接着法、活性金属法、溶射法等を単独で又は複数を組み合わせて用いる方法が挙げられる。
【0034】
接着法は、接着剤を用いて両者を接着させる方法であり、セラミックス基材の両面に、例えばアクリル系接着剤で金属板を接着した後、所望によりエッチング法で回路を形成する方法である。
【0035】
活性金属法は、例えばCuを含む金属層を接合する場合、Ag(90%)-Cu(10%)-TiH2(3.5%)のろう材を用いて、温度800℃でセラミックス基材の両面にCu板を接合した後、所望によりエッチング法で回路を形成する方法が挙げられる。また、Alを含む金属層を接合する場合、Al-Cu-Mgクラッド箔をろう材として用い、温度630℃でセラミックス基材の両面にAl板を接合した後、所望によりエッチング法で回路を形成する方法が挙げられる。
【0036】
溶射法(コールドスプレー法)は、例えば、複数の金属粒子から構成される金属紛体を、10~270℃に加熱するとともに250~1050m/sの速度まで加速してから吹き付けることにより、セラミックス基材上に金属層を形成させる工程と、セラミックス基材及びセラミックス基材上に形成された金属層を不活性ガス雰囲気下で加熱処理する工程とを備える。金属紛体を構成する金属粒子として、Al及び/又はCu粒子を用いることにより、これらを含む金属層が形成される。
【0037】
上述した実施形態では、金属層2a,2bは、それぞれ、単一の金属層21a、21bからなる場合について説明したが、本発明は、上記実施形態に限らず、金属層2a,2bがそれぞれ二層以上の金属層を有していてもよい。
【0038】
図2及び
図3は、セラミックス回路基板の他の一実施形態を示す断面図である。
図2のセラミックス回路基板101及び
図3のセラミックス回路基板102において、金属層2a,2bは、それぞれ、セラミックス基材1上に接する第一金属層22a,22b、及び第一金属層22a,22b上に形成された第二金属層23a,23bから構成される。第一金属層22a,22b及び第二金属層23a,23bは、それぞれ上述した金属層2a,2bと同様の材料を用いて形成することができるが、特に第一金属層22a,22bは、Al又はAlを含む合金で形成されていることが好ましく、第二金属層23a,23bは、Cu又はCuを含む合金で形成されていることが好ましい。Al又はAlを含む合金のような柔らかな材料を用いて第一金属層22a,22bを形成することで、耐衝撃性に優れたセラミックス回路基板を得ることができる。Cu又はCuを含む合金を用いて第二金属層23a,23bを形成することで、熱伝導性に優れ、大電流に対応可能なセラミックス回路基板を効果的に得ることができる。なお、
図2に示すセラミックス回路基板101においては、第一金属層22a,22bの端面22Eと第二金属層23a,23bの端面23Eとが面一になっているが、セラミックス回路基板がより優れた耐熱衝撃性を有する観点から、
図3に示すセラミックス回路基板102のように、第一金属層22a,22bの端面22Eが、第二金属層23a,23bの端面23Eよりも外側、すなわちセラミックス基材1の端部側にはみ出していてもよい。端面22Eが、端面23Eよりもはみ出している部分の幅は、例えば1~1000μmであってもよい。
【0039】
以上説明したセラミックス回路基板は、パワーモジュールにおいて好適に用いられ、ベース板と接合する際に生じるベース板の反りを抑制できるのみならず、繰り返し行われる発熱及び冷却によってもセラミックス基材及び金属層の高い密着性を維持することができる。
【0040】
ベース板に接合する際に生じるベース板の反りとは、ベース板にセラミックス回路基板を接合した際の、ベース板自体の初期形状(初期反り量)からの変形量(反り変化量)として測定される。また、ベース板の反り量とは、ベース板の任意の位置において、放熱面方向の長さ10cmあたりの反りの大きさを意味する。ベース板の反り変化量は、セラミックス回路基板に接合するものとしては、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。当該反り変化量は、セラミックス回路基板に接合する前のベース板の反り量と、セラミックス回路基板に接合した後のベース板の反り量との差の絶対値として定義される。
【0041】
図4は、パワーモジュールの一実施形態を示す断面図である。
図4に示すように、パワーモジュール200は、ベース板3と、ベース板3上に第1の半田4を介して接合されたセラミックス回路基板103と、セラミックス回路基板103上に第2の半田5を介して接合された半導体素子6とを備えている。
【0042】
セラミックス回路基板103は、セラミックス基材1と、セラミックス基材1の両面に設けられた金属層2a,2bとを備えている。ベース板3は、第1の半田4を介して金属層2bに接合されている。半導体素子6は、第2の半田5を介して金属層2aの所定の部分に接合されているとともに、アルミワイヤ(アルミ線)等の金属ワイヤ7で金属層2aの所定の部分に接合されている。なお、
図4に示すパワーモジュールにおいて、金属層2aは、電気回路(金属回路)を形成している。金属層2bは、金属回路を形成していてもしていなくともよい。
【0043】
ベース板3上に設けられた上記の各構成要素は、例えば一面が開口した中空箱状の樹脂製の筐体8で蓋され、筐体8内に収容されている。ベース板3と筐体8との間の中空部分には、シリコーンゲル等の充填材9が充填されている。金属層2aの所定部分には、筐体8の外部と電気的な接続が可能なように、筐体8を貫通する電極10が第3の半田11を介して接合されている。
【0044】
ベース板2の縁部には、パワーモジュール200に例えば放熱部品を取り付ける際のネジ止め用の取付け穴3aが形成されている。取付け穴3aの数は、例えば4個以上である。ベース板3の縁部には、取付け穴3aに代えて、ベース板3の側壁が断面U字状となるような取付け溝が形成されていてもよい。
【0045】
パワーモジュール200は、上述した本実施形態に係るセラミックス回路基板を備えるため、高耐圧、高出力等が要望される電車又は自動車の駆動インバータとして好適に用いられる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
セラミックス基材として、窒化アルミニウム(AlN)基材(サイズ:50mm×60mm×0.635mmt)を用いた。Al-Cu-Mgクラッド箔をろう材として用い、セラミックス基材の両面に温度630℃にてAl板(厚み0.2mm)を接合し、エッチングによりAl回路を形成した。続いて、溶射法(コールドスプレー法)で厚み0.4mmのCu回路を積層し、温度300℃でアニール処理を行った後、無電解Niめっきを施し、セラミックス回路基板を作製した。
【0048】
[実施例2]
実施例1と同様のセラミックス基材の両面に溶射法(コールドスプレー法)で厚み0.2mmのAl回路を積層し、温度500℃でアニール処理を行った。続いて、溶射法(コールドスプレー法)で厚み0.4mmのCu回路を積層し、温度300℃でアニール処理を行った後、無電解Niめっきを施し、セラミックス回路基板を作製した。
【0049】
[実施例3]
セラミックス基材として、窒化珪素(Si3N4)基材(サイズ:50mm×60mm×0.32mmt)を用いた。Ag-Cu-TiH2ろう材を用い、セラミックス基材の両面に温度800℃にてCu板(厚み0.1mm)を接合し、続いて融点が300℃の降温半田でCu板(厚み0.9mm)を接合した。エッチングによりCu回路を形成した後、無電解Niめっきを施し、セラミックス回路基板を作製した。
【0050】
[実施例4]
実施例1と同様のセラミックス基材の両面に溶射法(コールドスプレー法)で厚み0.4mmのAl回路を形成し、温度500℃でアニール処理を行った後、無電解Niめっきを施し、セラミックス回路基板を作製した。
【0051】
[実施例5]
実施例1と同様のセラミックス基材の両面にアクリル系接着剤で厚み0.3mmのCu金属を接着した後、エッチングによりCu回路を形成し、無電解Niめっきを施してセラミックス回路基板を作製した。
【0052】
[比較例1]
Ag-Cu-TiH2ろう材を用い、実施例1と同様のセラミックス基材の両面に温度800℃にてCu板(厚み0.3mm)を接合し、エッチングによりCu回路を形成した後、無電解Niめっきを施し、セラミックス回路基板を作製した。
【0053】
[比較例2]
セラミックス基材として、窒化アルミニウム(AlN)基材(サイズ:50mm×60mm×1.0mmt)を用いた以外は、比較例1と同様の操作を行い、セラミックス回路基板を作製した。
【0054】
[比較例3]
セラミックス基材として、窒化珪素(Si3N4)基材(サイズ:50mm×60mm×0.635mmt)を用いた以外は、比較例1と同様の操作を行い、セラミックス回路基板を作製した。
【0055】
[比較例4]
セラミックス基材として、窒化珪素(Si3N4)基材(サイズ:50mm×60mm×0.32mmt)を用いた以外は、比較例1と同様の操作を行い、セラミックス回路基板を作製した。
【0056】
[比較例5]
Cu板(厚み1.0mm)を用いた以外は、比較例4と同様の操作を行い、セラミックス回路基板を作製した。
【0057】
[比較例6]
Al-Cu-Mgクラッド箔をろう材として用い、実施例1と同様のセラミックス基材の両面に温度630℃にてAl板(厚み0.4mm)を接合し、エッチングによりAl回路を形成した後、無電解Niめっきを施してセラミックス回路基板を作製した。
【0058】
表1に、各実施例及び比較例のセラミックス回路基板の詳細を表1に示す。
【0059】
【0060】
<セラミックス回路基板の線熱膨張係数の測定(α1の測定)>
得られたセラミックス回路基板を、4mm×20mmのサイズに切り出し、線熱膨張係数の測定用試験片を作製した。得られた試験片に対して熱膨張計(セイコー電子工業株式会社製、商品名「TMA300」)を用いて5℃/分で降温することにより、温度25℃から150℃の線熱膨張係数を測定した。
【0061】
<セラミックス回路基板の線熱膨張係数の理論値の算出(α2の算出)>
下記計算式を用いて、線熱膨張係数の理論値を算出した。
α2=Σα
i・E
i・V
i/ΣE
i・V
i
上記計算式中、αは熱膨張係数、Eはヤング率、Vは体積分率を示し、添え字iは複合材料における各材料成分を示す。
なお、複合材料における各材料成分の熱膨張係数及びヤング率は、以下の表2に示す値を用いて算出した。
【表2】
【0062】
<半田接合後のベース板の反り変化量の測定>
Al-SiC(65%)材をサイズが140×190×5mmとなるように加工した後、無電解Niめっきを施したベース板を用い、上記実施例及び比較例で得られたセラミックス回路基板とベース板を、共晶半田にて接合して測定用サンプルとした。
測定用サンプルにおけるベース板の放熱面の形状を3次元輪郭測定装置(株式会社東京精密製、商品名「コンターレコード1600D-22」)を用いて測定することで、長さ10cmに対するベース板の反り変化量を測定した。
【0063】
各セラミックス回路基板の評価結果を、表3にまとめて示す。
【0064】
【0065】
実施例1~5のサンプルに対し、125℃の環境に30分放置した後に-40℃の環境に30分放置する操作を1サイクルとして、1000サイクルのヒートサイクル試験を実施した。ヒートサイクル試験後においても、実施例1~5のセラミックス回路基板に金属回路の剥離等の異常は確認されず、高い密着性を維持していることが示された。
【符号の説明】
【0066】
1…セラミックス基材、2a,2b…金属層、21a,21b…単一の金属層、22a,22b…第一金属層、22E…第一金属層の端面、23a,23b…第二金属層、23E…第二金属層の端面、100,101,102,103…セラミックス回路基板。