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特許7211952ネトリン-1干渉薬及び免疫チェックポイント阻害薬による併用治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】ネトリン-1干渉薬及び免疫チェックポイント阻害薬による併用治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230117BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230117BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230117BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
A61K39/395 E ZNA
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
C07K16/28
C07K16/18
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019536507
(86)(22)【出願日】2018-01-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2018050289
(87)【国際公開番号】W WO2018127570
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】17305014.7
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513045574
【氏名又は名称】ネトリス ファーマ
(73)【特許権者】
【識別番号】503161615
【氏名又は名称】ウニベルシテ クロード ベルナール リヨン 1
(73)【特許権者】
【識別番号】500531141
【氏名又は名称】セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク
(73)【特許権者】
【識別番号】504217063
【氏名又は名称】サントル レオン ベラール
(73)【特許権者】
【識別番号】591282995
【氏名又は名称】アンスティテュ ナスィヨナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE
【住所又は居所原語表記】101, rue de Tolbiac/75654 PARIS CEDEX 13/FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン・デュカルージュ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・ゴルドシュネデール
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・マリア・リタ・レデイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン・ジベール
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・メーラン
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/104360(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/197204(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/00
C07K 16/28
C07K 16/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体及び、チェックポイントタンパク質を阻害する又はそのリガンドと相互作用するモノクローナル抗体である免疫チェックポイント阻害薬を含む、ネトリン-1を発現するがんを治療するための医薬組み合わせ物であって、免疫チェックポイント阻害薬が、抗PD1モノクローナル抗体、又は、抗CTLA-4モノクローナル抗体であり、及び、抗ネトリン-1抗体が、配列番号35のアミノ酸配列のポリペプチドに特異的に結合し、及び、ネトリン-1/ネトリン-1受容体相互作用又はネトリン-1媒介受容体二量体形成を破壊又は妨害することができる、医薬組み合わせ物。
【請求項2】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体が、(i)配列番号5の配列のCDR1-H、配列番号6の配列のCDR2-H、配列番号7の配列のCDR3-H、並びに配列番号8の配列のCDR1-L、配列YASのCDR2-L、及び配列番号9の配列のCDR3-L、又は(ii)配列番号28の配列のCDR1-H、配列番号29の配列のCDR2-H、配列番号30の配列のCDR3-H、並びに配列番号31の配列のCDR1-L、配列番号32の配列のCDR2-L、及び配列番号9の配列のCDR3-Lを含む、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項3】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体が、配列番号10、11、12又は13のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体が、配列番号10及び11の両方の配列、又は配列番号12及び13の両方の配列を含む、請求項3に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体が、配列番号14~19の群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の組み合わせ物。
【請求項6】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体が、配列番号20~27の群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の組み合わせ物。
【請求項7】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体が、配列番号14~19の群から選択されるアミノ酸配列、及び配列番号20~27の群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の組み合わせ物。
【請求項8】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体が、配列番号20及び14、配列番号21及び15、配列番号22及び16、配列番号23及び17、配列番号24及び17、配列番号25及び16、配列番号26及び17、配列番号22及び17、配列番号25及び18、配列番号21及び16、又は配列番号27及び19のVH及びVLアミノ酸配列対を含む抗ネトリン-1抗体からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組み合わせ物。
【請求項9】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体が、配列番号22を有するVH、及び、配列番号16を有するVLを含む、請求項1又は2に記載の組み合わせ物。
【請求項10】
治療されるがんが、ネトリン-1発現を有し、免疫チェックポイント阻害薬単独に応答しないがんである、請求項1から9のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項11】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体及び免疫チェックポイント阻害薬の患者への同時、個別又は逐次投与用の、請求項1から10のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項12】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体及び、チェックポイントタンパク質を阻害する又はそのリガンドと相互作用するモノクローナル抗体である免疫チェックポイント阻害薬を含む、ネトリン-1を発現するがんを治療するための医薬組み合わせ物であって、免疫チェックポイント阻害薬が、抗PD1モノクローナル抗体、又は、抗CTLA-4モノクローナル抗体であり、並びに、抗ネトリン-1抗体が、(i)配列番号5の配列のCDR1-H、配列番号6の配列のCDR2-H、配列番号7の配列のCDR3-H、並びに配列番号8の配列のCDR1-L、配列YASのCDR2-L、及び配列番号9の配列のCDR3-L、又は(ii)配列番号28の配列のCDR1-H、配列番号29の配列のCDR2-H、配列番号30の配列のCDR3-H、並びに配列番号31の配列のCDR1-L、配列番号32の配列のCDR2-L、及び配列番号9の配列のCDR3-Lを含む、医薬組み合わせ物。
【請求項13】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体が、配列番号20及び14、配列番号21及び15、配列番号22及び16、配列番号23及び17、配列番号24及び17、配列番号25及び16、配列番号26及び17、配列番号22及び17、配列番号25及び18、配列番号21及び16、又は配列番号27及び19のVH及びVLアミノ酸配列対を含む抗ネトリン-1抗体からなる群から選択される、請求項12に記載の組み合わせ物。
【請求項14】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体が、配列番号22の配列を有するVH、及び、配列番号16の配列を有するVLを含む、請求項12に記載の組み合わせ物。
【請求項15】
抗ネトリン-1モノクローナル抗体及び免疫チェックポイント阻害薬の患者への同時、個別又は逐次投与用のための、請求項12から14のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんを治療するための新規の併用組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸索ガイダンスタンパク質ネトリン-1は、プログラム細胞死を制御することによりがんの進行に重要な役割を果たすという説が提案されている可溶性タンパク質である。
【0003】
実際に、DCC及びUNC5H(すなわち、UNC5A、UNC5B、UNC5C又はUNC5Dとも呼ばれるUNC5H1、UNC5H2、UNC5H3及びUNC5H4)のようなネトリン-1受容体は、いわゆる依存性受容体ファミリーに属する。これらの膜貫通受容体は、2つの逆の様式で作用する。これらは、そのリガンド、ネトリン-1の存在下では細胞増殖、生存及び分化につながる正のシグナル伝達を誘導する。ネトリン-1の非存在下では、これらの受容体は、結合されていないと、アポトーシスを引き起こす負のシグナル伝達を伝える。リガンド脱離時の細胞死誘導のシグナル伝達経路は、特定の頂端カスパーゼによる相互作用及び切断を必要とした。結果として、受容体の細胞内部分におけるカスパーゼ部位の変異は、ネトリン-1の非存在下で観察された細胞死誘導を妨げる。故に、アスパラギン酸-1290(D1290)残基における単一点変異は、DCCの正のシグナル伝達を干渉することなくDCC誘導細胞死を阻害するのに十分である。この変異を有するマウスは、比較的低レベルで自然発生的に腸管新生物を発症する。APC1638N背景で交配されると、マウスは腫瘍発生率の増加を示す。
【0004】
アポトーシスを誘導する依存性受容体の特性は、腫瘍抑制因子活性を自らに付与する。該活性は、限られた量のネトリン-1を提供する領域で異常に増殖する細胞を排除することができる。依存性受容体のモデルでは、リガンド濃度が限られる環境に提供された形質転換細胞、又はリガンドが存在しない遠位部位に遊走する転移性細胞は、結合されていない依存性受容体を示し、それ故にアポトーシスを受けることになる。この機構は、腫瘍発生の別の制限となるであろう。攻撃的な腫瘍では、腫瘍細胞は依存性受容体誘導細胞死を停止させた。この仮説と一致して、受容体発現の喪失は、腫瘍細胞の選択的利点となり、この保護機構を克服する第一の方法となるように思われる。がんにおいて依存性受容体発現消失につながる数多くの分子機構が関係している。依存性受容体発現は、ヘテロ接合性の消失(LOH)、高メチル化又はエピジェネティック機構、翻訳後修飾(微小RNA及びミスセンス変異等)による抑制と関係している。故に、DCC遺伝子は、ヒト直腸結腸がんの70%でLOHにより機能的に抑制される。UNCH5ファミリー受容体の発現は、多くの場合プロモーターのメチル化又は変異のために、様々ながんで下方制御されるようである。
【0005】
依存性受容体が、リガンドを欠く領域で細胞死を誘導することから、腫瘍エスケープの更なる機構は、腫瘍細胞によるネトリン-1の自己分泌合成である。故に、ネトリン-1の発現は、炎症関連結腸直腸がんにおいて卵巣がん、神経芽細胞腫、B細胞リンパ腫、非小細胞肺がん、髄芽腫等の腫瘍型の大部分の増加に関連している。更に、ネトリン-1過剰発現は、乳がんの転移性形態及び攻撃的形態と相関する。
【0006】
治療標的として特徴付けるための概念実証試験が、インビボで行われている。その結果、siRNAによるネトリン-1のサイレンシング又はネトリン-1/依存性受容体相互作用への干渉は、腫瘍細胞アポトーシスと同時に起こる。抗ネトリン-1モノクローナル抗体(HUM03)が特徴付けされ、免疫低下マウスの古典的増殖性腫瘍増殖モデルにおいて有効であることが示されている(Grandinら、Cancer Cell、2016及びWO2015/104360)。この抗体は、ネトリン-1/依存性受容体相互作用又はネトリン-1媒介ネトリン-1受容体二量体形成を破壊することができる。
【0007】
更に、ネトリン-1は、免疫細胞遊走の制御因子として最近同定され、急性及び慢性腎疾患、炎症性関節炎、アテローム性動脈硬化症又は糖尿病/肥満等のいくつかの病態において、ネトリン-1が炎症及び炎症性細胞遊走をどのようにコントロールしているのかを調査する多数の試験につながっている。ネトリン-1は、炎症部位、動脈壁プラークからのマクロファージ放出を妨げ、又は脂肪組織にこれらの細胞を蓄積させ、故に慢性炎症及びインスリン抵抗性を促進することにより、炎症関節炎、アテローム性動脈硬化症、又は肥満を促進することが示された。故に、ネトリン-1は、炎症を制御するように思われるが、これが生じる機構は不明である。
【0008】
免疫療法は、免疫チェックポイント阻害薬、特に、PD1/PDL1又はCTLA4に対するモノクローナル抗体で治療された患者において観察される応答が明確で長期にわたる、がん治療の分野における現在の革命である。
【0009】
CTLA4(CD152(分化152のクラスター)としても知られる細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)は、免疫チェックポイントとして作用して、免疫応答を下方制御するタンパク質受容体である。CTLA4は、Tリンパ球制御因子(Treg)において構成的に発現されるが、活性化後は通常のTリンパ球でのみ上方制御される。CTLA4は、抗原提示細胞(APC)の細胞表面でCD80又はCD86に結合されると、「オフ」スイッチとして作用する。PD-1(プログラム細胞死-1)受容体(CD279としても知られる)は、活性化T細胞の表面で発現される。そのリガンド、PD-L1(B7-H1;CD274)及びPD-L2(B7-DC;CD273)は、マクロファージ又は樹状細胞の表面で通常発現される。PD1及びPD-L1/PD-L2は、共抑制因子として作用する免疫チェックポイントタンパク質のファミリーに属し、T細胞応答の発生を停止又は制限することができる。PD1/PD-L1相互作用は、自己免疫炎症の遷延の可能性を低減するために、免疫系が適当なタイミングでのみ活性化されることを確実にする。
【0010】
PD-1がPD-L1に結合すると、負のシグナル伝達がT細胞に送られ、サイトカイン産生を低減し、T細胞増殖を抑制する。腫瘍細胞は、検出を免れ、免疫応答を妨げる機構としてこの経路を回避する。PD-L1は、腫瘍細胞又は微小環境により過剰発現されることが記載されている。腫瘍細胞で発現されたPD-L1は、活性化T細胞上のPD-1受容体に結合し、細胞傷害性T細胞の阻害につながる。これらの非活性化T細胞は、腫瘍微小環境で阻害されたままである。PD1/PD-L1経路は、内因性抗腫瘍活性に応答して腫瘍細胞によりもたらされる適応免疫抵抗性機構である。がん免疫療法研究は、免疫応答を遮断するがんの能力に打ち勝ち、がんに対して有効なままであるように身体自体の機構を刺激しようとしている。
【0011】
しかし、2つの主な限界が報告されている:
- ごく一部の患者のみがこれらの免疫チェックポイント阻害薬に応答を示す(免疫チェックポイント阻害薬に応答しない可能性がある)ことから、主な限界は化合物の有効性である。故に、メラノーマを有する患者の50%のみがCTLA4及びPD1の組み合わせ遮断に客観的応答を示し、このパーセンテージは、非小細胞肺がんで約20%まで、及び乳がん又は結腸がんでは<5%まで低下する。
- 第2の限界は、これまでのところ、患者が陽性に応答するか否かを予測することができないことである。腫瘍床における免疫抑制細胞(特にFOXP3+制御性T細胞、Treg)の欠乏と組み合わさった免疫エフェクター(及び特にCD8+細胞傷害性Tリンパ球、CTL)の多さは、重要な、けれども不完全な予後因子である。種々の報告が、特に、いくつかの細胞傷害性薬剤は、悪性細胞の免疫原性細胞死(ICD)を刺激することができ、それ故にその免疫認識を支持するため、化学療法は免疫腫瘍薬の効果を高め得ることを示唆している。ネトリン-1干渉により誘導される細胞死が免疫原性であるかどうかは、これまでのところわかっていない。更に、ネトリン-1は、がんの進行における生存因子として作用することが非がん設定で示されているにもかかわらず、ネトリン-1は、T細胞又はマクロファージの免疫誘導の合図として作用し得ることが、相反するデータが記載されているものの最近示された(Ramkhelawonら、Nature Med、2013:Boneschanskerら、J. Immunology、2016)。腫瘍組織により産生されるCXCL12等の種々のケモカインは、Treg及び骨髄由来免疫抑制因子細胞等の免疫抑制細胞を動員することが知られている。これらの細胞は、TGF-ベータ(形質転換増殖因子-ベータ)、IL10(インターロイキン-10)、及びVEGF(血管内皮増殖因子)等の、細胞傷害性T-細胞及び樹状細胞の機能を損なう種々のメディエーターを放出し、免疫寛容な微小環境を作り出す。これらの分泌タンパク質全てが、ネトリン-1に関係していると記載されている。実際に、(i)ネトリン-1はCXCL12の走化性を特異的に促進する、(ii)IL-10はネトリン-1の発現を増加させて神経突起伸張を促す、(iii)TGF-ベータとネトリン-1の間には関連がある、及び(iv)ネトリン-1はインビボで血管新生を刺激し、血管内皮増殖因子への応答を増大させることから、VEGFとネトリン-1の間には関連があることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】WO2015/104360
【文献】WO2007/099133
【文献】WO2012025618
【文献】WO2014/041088
【文献】WO2006/121168
【文献】WO2009/101611
【文献】WO2012/145493
【文献】WO2011/066389
【文献】US2013/034559
【文献】WO2010/077634
【文献】WO2007/005874
【文献】WO2009/014708
【文献】WO2009/114335
【文献】WO2013/019906
【文献】WO2015/085847
【文献】EP2050764A1
【文献】EP0239400
【文献】WO91/09967
【文献】米国特許第5,530,101号
【文献】米国特許第5,585,089号
【文献】EP0592106
【文献】EP0519596
【文献】米国特許第5,565,332号
【文献】米国特許第4,444,887号
【文献】米国特許第4,716,111号
【文献】米国特許第5,545,806号
【文献】米国特許第5,814,318号
【文献】国際特許出願WO98/46645
【文献】国際特許出願WO98/50433
【文献】国際特許出願WO98/24893
【文献】国際特許出願WO98/16654
【文献】国際特許出願WO96/34096
【文献】国際特許出願WO96/33735
【文献】国際特許出願WO91/10741
【非特許文献】
【0013】
【文献】Grandinら、Cancer Cell、2016
【文献】Ramkhelawonら、Nature Med、2013
【文献】Boneschanskerら、J. Immunology、2016
【文献】Kohler及びMilstein(Nature、1975、256(5517):495~7頁)
【文献】Harlowら編、1988「Antibodies:a laboratory manual」
【文献】Scott J.K.、Smith G.P. Science 1990;249:386~390頁
【文献】J.D. Marksら、J. Mol. Biol.、222(1991)、581頁
【文献】Needleman and Wunsch(1970)J. Mol. Biol. 48:443頁
【文献】Lefrancら(2003)Dev Comp Immunol. 27(1):55~77頁;www.imgt.org
【文献】Harmsen and De Haard(2007)Appl. Microbiol. Biotechnol. 77:13~22頁
【文献】Padlan(1991)Molecular Immunology 28(4/5):489~498頁
【文献】Studnickaら(1994)Protein Engineering 7(6):805~814頁
【文献】Roguskaら(1994)Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 91:969~973頁
【文献】「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、1035~1038頁及び1570~1580頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
薬物併用の効果は、本質的に予測不可能である。一方の薬物が他方の効果を部分的又は完全に阻害する傾向がしばしば認められる。本発明は、抗ネトリン-1抗体HUM03、及びCTLA4又はPD-1に対するモノクローナル抗体を使用する併用療法による、異種移植マウス生存率の有意な増加及びより長い疾患コントロールの驚くべき観察に基づく。得られたデータは、ネトリン-1に対するモノクローナル抗体を現在の免疫療法治療に組み合わせることが、それらの有効性を高めるという見方を支持している。ネトリン-1干渉の存在下での免疫チェックポイント阻害薬のこの増強効果を説明し得る機構の探索において、本発明者らは、単独療法又は併用治療に応答した腫瘍免疫浸潤を分析する。図5に示されているように、単独療法(HUM03又はCTLA4のどちらか)は比T細胞エフェクター/T細胞制御因子に有意な影響を与えていないが、併用はT細胞エフェクターへ比をシフトさせている。これは、併用がキラーリンパ球細胞(T細胞エフェクター)の存在を増強していることを示唆して有効性の向上を支持するものである。
【0015】
本発明の目的は、がんの治療における、(i)化合物がネトリン-1に結合する抗体又は抗ネトリン-1抗体であり得る、本明細書においてNTN1中和剤とも呼ばれる、ネトリン-1/ネトリン-1受容体相互作用又はネトリン-1媒介受容体二量体形成を破壊又は妨害することができる化合物、及び(ii)免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせ又は併用である。
【0016】
本発明の別の目的は、がんの治療における、ネトリン-1に結合する抗体又は抗ネトリン-1抗体及び免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせ又は併用である。
【0017】
本発明の別の目的は、患者への化合物(i)及び免疫チェックポイント阻害薬(ii)の同時、個別又は逐次投与による抗がん薬として使用するための、(i)化合物がネトリン-1に結合する抗体又は抗ネトリン-1抗体であり得る、ネトリン-1/ネトリン-1受容体相互作用又はネトリン-1媒介受容体二量体形成を破壊又は妨害することができる化合物と、(ii)免疫チェックポイント阻害薬とを含む組成物である。
【0018】
本発明の別の目的は、患者への抗ネトリン-1抗体及び免疫チェックポイント阻害薬の同時、個別又は逐次投与による抗がん薬として使用するための、(i)ネトリン-1に結合する抗体又は抗ネトリン-1抗体と、(ii)免疫チェックポイント阻害薬とを含む組成物である。
【0019】
本発明の別の目的はまた、(i)化合物がネトリン-1に結合する抗体又は抗ネトリン-1抗体であり得る、ネトリン-1/ネトリン-1受容体相互作用又はネトリン-1媒介受容体二量体形成を破壊又は妨害することができる化合物、及び(ii)免疫チェックポイント阻害薬の患者への投与を含む、併用抗がん治療方法である。
【0020】
本発明の別の目的はまた、(i)ネトリン-1に結合する抗体又は抗ネトリン-1抗体、及び(ii)免疫チェックポイント阻害薬の患者への投与を含む、併用抗がん治療方法である。
【0021】
本発明の別の目的は、(i)化合物がネトリン-1に結合する抗体又は抗ネトリン-1抗体であり得る、ネトリン-1/ネトリン-1受容体相互作用又はネトリン-1媒介受容体二量体形成を破壊又は妨害することができる化合物、及び(ii)免疫チェックポイント阻害薬の患者への投与を含む、腫瘍浸潤物(すなわち、T又はBリンパ球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞)をインビボで調節するための方法である。
【0022】
本発明の別の目的は、(i)ネトリン-1に結合する抗体又は抗ネトリン-1抗体、及び(ii)免疫チェックポイント阻害薬の患者への投与を含む、腫瘍浸潤物(すなわち、T又はBリンパ球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞)をインビボで調節するための方法である。
【0023】
別の目的は、(i)化合物がネトリン-1に結合する抗体又は抗ネトリン-1抗体であり得る、ネトリン-1/ネトリン-1受容体相互作用又はネトリン-1媒介受容体二量体形成を破壊又は妨害することができる化合物、及び(ii)免疫チェックポイント阻害薬の患者への投与を含む、がん細胞死又は免疫原性細胞死を活性化することによる活性化免疫応答である。
【0024】
別の目的は、(i)ネトリン-1に結合する抗体又は抗ネトリン-1抗体、及び(ii)免疫チェックポイント阻害薬の患者への投与を含む、がん細胞死又は免疫原性細胞死を活性化することによる活性化免疫応答である。
【0025】
本発明の他の特定の目的は、
- がんの治療方法における使用のための、抗ネトリン-1抗体及び免疫チェックポイント阻害薬を含む医薬組成物であって、抗ネトリン-1抗体が、ネトリン-1/ネトリン-1受容体相互作用又はネトリン-1媒介受容体二量体形成を破壊又は妨害することができる、使用のための医薬組成物;
- 抗ネトリン-1抗体及び免疫チェックポイント阻害薬を含む医薬組成物であって、抗ネトリン-1抗体が、配列番号35のアミノ酸配列のポリペプチドに特異的に結合し、ネトリン-1/ネトリン-1受容体相互作用又はネトリン-1媒介受容体二量体形成を破壊又は妨害することができる、医薬組成物;
- 抗ネトリン-1抗体及び免疫チェックポイント阻害薬を含む医薬組成物であって、抗ネトリン-1抗体が、(i)配列番号5の配列のCDR1-H、配列番号6の配列のCDR2-H、配列番号7の配列のCDR3-H、並びに配列番号8の配列のCDR1-L、配列YASのCDR2-L、及び配列番号9の配列のCDR3-L、又は(ii)配列番号28の配列のCDR1-H、配列番号29の配列のCDR2-H、配列番号30の配列のCDR3-H、並びに配列番号31の配列のCDR1-L、配列番号32の配列のCDR2-L、及び配列番号9の配列のCDR3-Lを含む、医薬組成物;
- 抗ネトリン-1抗体及び免疫チェックポイント阻害薬を含む医薬組成物であって、抗ネトリン-1抗体が、ネトリン-1/ネトリン-1受容体相互作用又はネトリン-1媒介受容体二量体形成を破壊又は妨害することができ、並びに免疫チェックポイント阻害薬が、抗PD1、抗PD-L1、抗PD-L2及び抗CTLA-4抗体からなる群から選択される、医薬組成物;
- それを必要とする患者への、抗ネトリン-1抗体及び免疫チェックポイント阻害薬の有効量の投与を含む抗がん治療方法であって、抗ネトリン-1抗体が、ネトリン-1/ネトリン-1受容体相互作用又はネトリン-1媒介受容体二量体形成を破壊又は妨害することができる、方法である。
【0026】
一実施形態において、治療されるがんは、ネトリン-1発現を有し、免疫チェックポイント阻害薬に応答することができない(単独で、すなわち、抗ネトリン-1抗体等に組み合わされない場合)がんである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
これらの種々の目的は、この後に示されるように、HUM03抗体又はその親抗体の1つを使用して特に行うことができる。
【0028】
本発明のこれらの種々の目的において免疫チェックポイント阻害薬は、特に抗体、好ましくはモノクローナル抗体であり得、又は該抗体を含み得る。
【0029】
本発明は、図面を参照しながら非限定的な例を使用してこれより記載される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】EMT-6哺乳動物細胞株を移植され、抗ネトリン-1干渉薬(HUM03);対照抗体(NP006);HUM03+抗CTLA-4又はNP006+抗CTLA-4で治療されたマウスを示す図である(n=12匹/群)。腫瘍体積は外部で測定され、腫瘍体積の合計退縮が移植28日後に定量化された。表は、28日後に腫瘍がないマウスの数を示している。
図2図1と同じであるが、EMT-6哺乳動物腫瘍の移植後80日までの、カプラン-マイヤー分析後に定量化されたマウス生存のパーセンテージを示す図である(P=0.046)。
図3図1及び図2と同じ実験であるが、各動物の腫瘍増殖が示された図である。動物の屠殺が、
【化1】
により示されている。
図4図1-図2-図3と同じタイプの実験であるが、4T1哺乳動物がん細胞株を移植され、HUM03+抗PD-1又はNP001+抗PD-1で治療されたマウスを示す図である(n=7匹/群)。マウス生存が、25日目にカプラン-マイヤー分析により定量化された(P=0.0411)。
図5】HUM03と抗CTLA4との組み合わせは、同系EMT6異種移植マウスモデルにおいて腫瘍のT細胞エフェクター/Tregバランスを調節することを示す図である。106個のEMT6細胞が、BalbCJ 8週齢メスマウスの側腹部に皮下移植された。動物は、HUM03(10mg/Kg I.P.)又はNP001 IgG1対照アイソタイプにより、単独で又は抗CTLA4(BioX細胞-クローン9H10- 20mg/Kg I.P.)を伴って、3回(例えば、10、14、18日目)治療される4群に無作為に分けられた。EMT6腫瘍は個々に分離され、網羅的リンパ及び骨髄染色パネルを用いるフローサイトメトリーにより分析された。ここでは、本発明者らは、CD8 T細胞エフェクター(左)、CD4;FoxP3 TReg(真ん中)、及びこれらの間のバランス(右)に着目している。右のパネルに見られるように、組み合わせHUM03/CTLA4 mAbでは、T細胞エフェクター/T制御因子バランスは、T細胞エフェクターへと動いている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
NTN1(ネトリン-1)中和剤
NTN1中和剤は、ネトリン-1受容体と相互作用するネトリン-1の能力を干渉する、又はネトリン-1受容体の二量体形成若しくは多量体形成を誘導するネトリン-1の能力を干渉する薬物である。NTN1中和剤は、本明細書では、ネトリン-1及び依存性受容体相互作用又は依存性受容体二量体形成を破壊又は妨害することができる化合物と呼ばれる。当業者は、参照により本明細書に組み込まれるWO2007/099133を参照することができる。WO2007/099133は、ネトリン-1と受容体の間の相互作用若しくは結合の低下若しくは阻害、又はネトリン-1受容体の二量体形成若しくは多量体形成(本発明者らは、本明細書では単に、多量体形成を包含し得る二量体形成を指す)を誘導し、それによりネトリン-1受容体誘導アポトーシスが促進されるネトリン-1の能力の低下若しくは阻害のどちらかである、ネトリン-1とその受容体の間の干渉を開示する。
【0032】
一実施形態において、NTN1中和剤は、二本鎖RNA(dsRNA)(すなわち、10から50ヌクレオチド長を有し得る)であり、ネトリン-1をコードする遺伝子の発現を低減する、低分子干渉RNA、すなわちsiRNAである。第1の鎖の一部は標的遺伝子に相補的であり、すなわち、標的遺伝子とハイブリダイズするのに十分な相補性を有する。例えば、標的遺伝子又はその一部と少なくとも80%の同一性がある。AP:ヒトネトリン-1 mRNA配列アクセッション番号:NM_004822。使用され得るsiRNA配列:配列NM_004822のアミノ酸94~114。
【0033】
第2の実施形態において、NTN1中和剤は、ネトリン-1に結合する分子(例えば抗体、ポリペプチド、低分子等)であり、ネトリン-1は、その受容体に結合すること、又はネトリン-1受容体、特にDCC及び/若しくはUNC5の二量体形成/多量体形成を誘導することができなくされる。
【0034】
第3の実施形態において、NTN1中和剤は、ネトリン-1受容体に結合する分子(例えば抗体、ポリペプチド、低分子等)であり、この結合は、受容体へのNTN1結合又は受容体の二量体形成/多量体形成を阻害する。
【0035】
NTN1中和剤は、NTN1受容体媒介アポトーシスを誘導し得る。
【0036】
ネトリン-1受容体は、特にDCC、UNC5A、UNC5B、UNC5C又はUNC5D、ネオゲニン及びA2bであり得る。
【0037】
好ましい実施形態において、NTN1中和剤は、ネトリン-1に結合する抗体である。
【0038】
抗NTN1抗体(抗ネトリン-1抗体又はネトリン-1に結合する抗体)
抗NTN1抗体は、好ましくは、ネトリン-1に特異的に結合するポリクローナル又はモノクローナル抗体である。抗体は、好ましくは、ネトリン-1/ネトリン-1受容体相互作用又はネトリン-1媒介受容体二量体形成を破壊又は妨害することができる(すなわち、UNC5B、A、C、D、DCC、ネオゲニン、及びA2bを含むネトリン-1受容体)。
【0039】
NTN1ポリクローナル抗体は、特に、選択されたアミノ酸配列を用いて、例えばウサギ、マウス等の動物を免疫し、回収し、次いで当業者にそれ自体公知の方法により受容体を含有する、例えば免疫吸着剤で得られた抗血清を枯渇させて得ることができる。
【0040】
ネトリン-1アミノ酸配列は、配列番号1に示された通りであり、ネトリン-1は、抗体を設計するのに全体又は一部が使用されてもよい。
【0041】
一般的に、モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein(Nature、1975、256(5517):495~7頁)により記載されたリンパ球融合及びハイブリドーマ培養の従来の方法により得ることができる。モノクローナル抗体を調製する他の方法も公知である(Harlowら編、1988「Antibodies:a laboratory manual」)。モノクローナル抗体は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、又は更にはヒト等)を免疫し、ハイブリドーマをもたらすリンパ球融合法を使用して調製されてもよい(Kohler及びMilstein、1975)。この通例の手法に対する代替法が存在する。例えば、ハイブリドーマからクローニングされた核酸を発現させて、モノクローナル抗体を産生することが可能である。ファージの表面で遺伝子ライブラリーVを示す典型的には繊維状ファージであるベクターに、抗体に対するcDNAを導入してファージディスプレイ法により抗体を産生することも可能である(例えば、大腸菌(E. coli)に対するfUSE5、Scott J.K.、Smith G.P. Science 1990;249:386~390頁)。これらの抗体ライブラリーを構築するプロトコルは、J.D. Marksら、J. Mol. Biol.、222(1991)、581頁に記載されている。シグナル配列(配列番号2)を有する完全長ネトリン-1又は適切なその断片に対応するcDNAが、これらの方法によりモノクローナル抗体を産生するのに使用されてもよい。
【0042】
好ましい実施形態において、NTN1中和抗体は、WO2015/104360に開示されたものであり、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。NTN1中和抗体は、NTN1エピトープ、又は配列番号3若しくは35のアミノ酸配列を有するポリペプチド若しくはそのバリアントに特異的に結合する抗体である。これらの抗体は、NTN1に結合する特性を有し、UNC5又はDCC受容体等のネトリン-1受容体を介して腫瘍細胞の細胞死又はアポトーシスを誘導する。これらの抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。これらの抗体は、ネトリン-1/ネトリン-1受容体相互作用又はネトリン-1媒介二量体形成を破壊又は妨害することができる。抗体の様々な導き出せる形態(断片及びその組み合わせを含む)が、本明細書において後で記載される。
【0043】
一実施形態において、IMGT CDRの定義に基づき、抗体は、配列番号5の配列のCDR1-H、配列番号6の配列のCDR2-H、配列番号7の配列のCDR3-H、配列番号8の配列のCDR1-L、配列YASのCDR2-L及び配列番号9の配列のCDR3-Lを含む。Kabat CDRの定義に基づき、抗体は、配列番号28の配列のCDR1-H、配列番号29の配列のCDR2-H、配列番号30の配列のCDR3-H、配列番号31の配列のCDR1-L、配列番号32の配列のCDR2-L及び配列番号9の配列のCDR3-Lを含む。
【0044】
実施形態の第1のシリーズにおいて、本発明の抗体は、配列番号10、11、12又は13のアミノ酸配列を含む。典型的には、該抗体は、配列番号10及び11、又は配列番号12及び13の両方の配列を含む。
【0045】
実施形態の第2のシリーズにおいて、抗体はヒト化される。好ましくは抗体は、配列番号14~19(VL)の群から及び/又は配列番号20~27(VH)の群から選択されるアミノ酸配列を含む。典型的には、抗体はヒト化され、配列番号14~19の群から選択されるアミノ酸配列、及び配列番号20~27の群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0046】
特定の実施形態は、以下のヒト化抗体である。この表に第1にリストされた抗体は、ヒトIgG1へのマウスCDRの移植に対応する。HUMと呼ばれる他の抗体は、可変ヒトフレームワーク領域を有するモノクローナル抗体である。一実施形態において、本発明は、HUM01、HUM02、HUM03、HUM04、HUM05、HUM06、HUM07、HUM08、HUM09及び/若しくはHUM10を利用し、又は本発明の組成物はこれらを含む。典型的な実施形態において、HUM03が使用される。Table 1(表1)は、ヒトIgG1のCH及びCLの参照も示す。
【0047】
【表1】
【0048】
NTN1受容体ポリペプチド
別の実施形態において、NTN1(ネトリン-1)中和剤薬物は、ネトリン-1受容体の細胞外ドメイン又は前記細胞外ドメインの断片を含む化合物である。例えば、ネトリン-1受容体の細胞外ドメインのアミノ酸配列又は前記細胞外ドメインの断片は、UniProt配列番号[細胞外ドメイン位置範囲]に示されている:UNC5A:Q6ZN44 [アミノ酸26~306、又は断片34~240];UNC5B:Q8IZJ1 [アミノ酸27~377又は断片29~244];UNC5C:O95185 [アミノ酸41~380又は断片61~258];UNC5D:Q6UXZ4 [アミノ酸33~379];DCC:P43146 [アミノ酸26~1097]。この薬物は、ネトリン-1に結合することができる。ネトリン-1受容体は、DCC、UNC5A、UNC5B、UNC5C又はUNC5Dであり得る。
【0049】
一実施形態において、細胞外ドメイン又はその一部は、抗体Fc部分に結合される。好ましい実施形態において、Fc部分はヒトIgGのFc又はその一部である。ヒトIgGは、すなわちIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3であり得る。好ましい実施形態において、IgGはIgG1である。
【0050】
一実施形態において、融合タンパク質は一本鎖である。これは、該タンパク質が、それぞれ、DCCの第4若しくは第5フィブロネクチン様ドメイン、又はUNC5の2つのIg様ドメイン、及び該化合物の薬学的パラメータを改善するペプチド又はタンパク質配列を含む又はから構成される、DCC断片又はUNC5断片からできていることを意味する。
【0051】
別の好ましい実施形態において、融合タンパク質は二本鎖である。これは、融合タンパク質が、それぞれ、DCCの第4若しくは第5フィブロネクチン様ドメイン、又はUNC5の2つのIg様ドメイン、及び抗体Fc部分を各々含む又はから構成される2つの鎖からできており、両方の鎖が、好ましくは1つ又は複数の、例えば2つのジスルフィド結合により互いに連結されていることを意味する。
【0052】
一実施形態において、薬物は、DCCの第5フィブロネクチンドメイン(Fn5又は5Fbn)を含む。好ましくは、薬物は、抗体Fc部分に融合されたこのFn5を含むDCC融合タンパク質を含む。好ましい実施形態において、Fc部分は、ヒトIgGのFc又はその一部を含む。ヒトIgGは、すなわちIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3であり得る。好ましい実施形態において、IgGはIgG1である。DCC遺伝子は、例えばNCBIから、ID 1630(2012年7月14日更新)の下に入手可能であり、2012年7月11日に更新されたUniprot P43146としてDCC受容体タンパク質をコードする。本発明に有用な、及びFn5を含むDCC融合タンパク質は、参照により本明細書に組み込まれたWO2012025618に記載されている。一実施形態において、融合タンパク質は、WO2012025618の配列番号2、3又は4のアミノ酸配列を有する。一実施形態において、融合タンパク質は、WO2012025618の配列番号1のDNA配列によりコードされる。Fn5を含む融合タンパク質の他の例は、WO2007099133に記載されたグルタチオン-S-トランスフェラーゼを用いたDCC-5-フィブロネクチン融合タンパク質(DCC-5Fbn-GST)である。
【0053】
一実施形態において、薬物は、UNC5の2つのIg様ドメインを含む。好ましくは、薬物は、抗体Fc部分に融合されたUNC5の2つのIg様ドメインを含むUNC5融合タンパク質を含む。ヒトIgGは、すなわちIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3であり得る。好ましい実施形態において、IgGはIgG1である。一実施形態において、UNC5はUNC5Aである。別の実施形態において、UNC5はUNC5Bである。別の実施形態において、UNC5はUNC5Cである。更に別の実施形態において、UNC5はUNC5Dである。
【0054】
一実施形態において、UNC5A融合におけるUNC5Aタンパク質は、WO2014/041088の配列番号1のアミノ酸20~217を含む又はからなり、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。この融合タンパク質は、この配列番号1のアミノ酸220~446を含む又はからなるIgG1 Fcを更に含んでもよい。このFcは、例えばGT等のリンカーを通じてUNC5Aタンパク質に融合される。一実施形態において、本発明は、この配列番号1のアミノ酸配列:カッパ2シグナルペプチド配列:アミノ酸1~19;UNC5AのIg様ドメイン:アミノ酸20~217;リンカー:アミノ酸218~219;ヒトIgG1 Fc:アミノ酸220~446を含む又はからなるUNC5Aタンパク質のUNC5A融合に関する。一実施形態において、成熟融合タンパク質は、カッパ2シグナルペプチド配列を含まない。好ましい実施形態において、融合タンパク質は二本鎖である。本発明はまた、この配列番号1の20~217アミノ酸配列の全長、又はアミノ酸20~446の全長において90%以上、好ましくは96、95、94、93、92又は91%超である同一性のパーセンテージを有するバリアント配列も包含する。アミノ酸置換は、例えば、20~217アミノ酸配列の全長、又はこの配列番号1の全長における位置9、72、74、87、144、164、170、193及び/又は210位の1つ又はいくつかで生じ得る。
【0055】
別の実施形態において、UNC5B融合におけるUNC5Bタンパク質は、WO2014/041088の配列番号2のアミノ酸20~215を含む又はからなる。この融合タンパク質は、この配列番号2のアミノ酸218~444を含む又はからなるIgG1 Fcを更に含んでもよい。このFcは、例えばGT等のリンカーを通じてUNC5Bタンパク質に融合される。一実施形態において、本発明は、この配列番号2のアミノ酸配列:カッパ2シグナルペプチド配列:アミノ酸1~19;UNC5BのIg様ドメイン:アミノ酸20~215;リンカー:アミノ酸216~217;ヒトIgG1 Fc:アミノ酸218~444を含む又はからなるUNC5Bタンパク質のUNC5B融合に関する。一実施形態において、成熟融合タンパク質は、カッパ2シグナルペプチド配列を含まない。好ましい実施形態において、融合タンパク質は二本鎖である。本発明は、この配列番号2の20~215アミノ酸配列の全長、又はアミノ酸20~444の全長において90%以上、好ましくは96、95、94、93、92又は91%超である同一性のパーセンテージを有するバリアント配列を包含する。アミノ酸置換は、例えば、20~215アミノ酸配列の全長、又はこの配列番号2の全長における位置29、74、100、109、113、146、149、155、172、184、189、201、213及び/又は214位の1つ又はいくつかで生じ得る。
【0056】
更に別の実施形態において、UNC5C融合におけるUNC5Cタンパク質は、WO2014/041088の配列番号3のアミノ酸20~217を含む又はからなる。この融合タンパク質は、この配列番号3のアミノ酸220~446を含む又はからなるIgG1 Fcを更に含んでもよい。このFcは、例えばGT等のリンカーを通じてUNC5Cタンパク質に融合される。一実施形態において、本発明は、この配列番号3のアミノ酸配列:カッパ2シグナルペプチド配列:アミノ酸1~19;UNC5CのIg様ドメイン:アミノ酸20~217;リンカー:アミノ酸218~219;ヒトIgG1 Fc:アミノ酸220~446を含む又はからなるUNC5Cタンパク質のUNC5C融合に関する。一実施形態において、成熟融合タンパク質は、カッパ2シグナルペプチド配列を含まない。好ましい実施形態において、融合タンパク質は二本鎖である。本発明は、この配列番号3の20~217アミノ酸配列の全長、又はアミノ酸20~446の全長において90%以上、好ましくは96、95、94、93、92又は91%超である同一性のパーセンテージを有するバリアント配列を包含する。アミノ酸置換は、例えば、20~217アミノ酸配列の全長、又はこの配列番号3の全長における位置33、66、109、129、136、178、189及び/又は211位の1つ又はいくつかで生じ得る。
【0057】
更に別の実施形態において、UNC5D融合におけるUNC5Dタンパク質は、WO2014/041088の配列番号4のアミノ酸20~217を含む又はからなる。この融合タンパク質は、この配列番号4のアミノ酸220~446を含む又はからなるIgG1 Fcを更に含んでもよい。このFcは、例えばGT等のリンカーを通じてUNC5Dタンパク質に融合される。一実施形態において、本発明は、この配列番号4のアミノ酸配列:カッパ2シグナルペプチド配列:アミノ酸1~19;UNC5DのIg様ドメイン:アミノ酸20~217;リンカー:アミノ酸218~219;ヒトIgG1 Fc:アミノ酸220~446を含む又はからなるUNC5Dタンパク質のUNC5D融合に関する。一実施形態において、成熟融合タンパク質は、カッパ2シグナルペプチド配列を含まない。好ましい実施形態において、融合タンパク質は二本鎖である。本発明は、この配列番号4の20~217アミノ酸配列の全長、又はアミノ酸20~446の全長において90%以上、好ましくは96、95、94、93、92又は91%超である同一性のパーセンテージを有するバリアント配列を包含する。アミノ酸置換は、例えば、20~217アミノ酸配列の全長、又はこの配列番号4の全長における位置38、79、80、115、131、178、186、201及び/又は212位の1つ又はいくつかで生じ得る。
【0058】
本発明は、ポリペプチド自体よりむしろ、それらのポリペプチドをコードする核酸の投与を提供し得る。患者においてポリペプチドを発現することができるベクターが、通常のように使用されてもよい。当業者は、本発明を実施する上で使用することができる、ベクター及びベクターを調製する方法及びその使用を記載するWO2007/099133及びWO2014/041088を参照してもよい。
【0059】
チェックポイント阻害薬
1つの態様において、免疫チェックポイント阻害薬は、生物学的治療薬又は低分子である。別の態様において、チェックポイント阻害薬は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合タンパク質、又はそれらの組み合わせである。抗体は、経路に関与する任意のタンパク質、及びより具体的には受容体又はリガンドのどちらかに対する抗体であり得る。知られているように、免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞に対する免疫応答を回復させることができる。特に、阻害薬は、相互作用するタンパク質間の相互作用を破壊、又は妨害、又は阻害して、免疫応答、特にT細胞が腫瘍細胞を死滅させるのを可能にする。更なる態様において、チェックポイント阻害薬は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7又はそれらの組み合わせであり得るチェックポイントタンパク質を阻害する。更なる態様において、チェックポイント阻害薬は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7又はそれらの組み合わせであり得るチェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する。
【0060】
抗PD1、抗PD-L1及び抗PD-L2抗体
本発明は、PD1/PD-L1及び/又はPD1/PD-L2経路を遮断、阻害、又は低減する抗体を利用する。
【0061】
現在、市販されている又は臨床評価中の、経路を遮断する少なくとも5種類の薬剤があり、これらのいずれもが本発明と組み合わせて有用であり得る。これらの薬剤は、BMS-936558(抗PD-L1 mAb、ニボルマブ/ONO-4538、Bristol-Myers Squibb社、旧MDX-1106(WO2006/121168の抗体5C4)、MK-3475(抗PD1 mAb、ランブロリズマブ又はペムブロリズマブ、Keytruda(登録商標)、Merck社)、MPDL3280A/RG7446(抗PD-L1 mAb、Roche/Genentech社)、AMP-224(抗PD-L2を含むイムノアドヘシン、Amplimmune社及びGSK社)、ピディリズマブ(抗PD1 mAb、CT-011、CureTech/TEVA社-WO2009/101611)である。
【0062】
MK-3475に関して、ヒト化抗体h409AIIの重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNA構築物がAmerican Type Culture Collection Patent Depository(10801 University Bld.、Manassas、VA)に寄託されている。h409A-I 1の重鎖をコードするDNAを含有するプラスミドが2008年6月9日に寄託され、081469_SPD-Hとして識別され、h409AI 1の軽鎖をコードするDNA を含有するプラスミドが2008年6月9日に寄託され、0801470_SPD-L-I 1として識別された。
【0063】
更なる公知のPD-1抗体及び他のPD-1阻害薬には、AMP-224(GSKにライセンス供与されたB7-DC/IgG1融合タンパク質)、WO2012/145493に記載されているAMP-514、WO2011/066389及びUS2013/034559に記載されている抗体MEDI-4736(AstraZeneca/Medimmune社により開発された抗PD-L-1)、WO2010/077634に記載されている抗体YW243.55.S70(抗PD-L1)、BMS-936559としても知られるMDX-1105は、WO2007/005874に記載されている、Bristol-Myers Squibb社により開発された抗PD-L1抗体であり、WO2006/121168、WO2009/014708、WO2009/114335及びWO2013/019906に記載されている抗体及び阻害薬が挙げられる。本明細書において言及されたいずれの文献の開示も、参照により本明細書に組み込まれる。抗PD1抗体の更なる例は、WO2015/085847に開示されている(例えば、それぞれ、配列番号6、配列番号7及び配列番号8の軽鎖可変ドメインCDR1、2及び3、並びにそれぞれ、配列番号3、配列番号4及び配列番号5の抗体重鎖可変ドメインCDR1、2及び3を有する抗体。配列番号参照はWO2015/085847によるナンバリングである)。
【0064】
抗CTLA-4抗体
CD152としても知られるCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)は、受容体のCD28ファミリーの別の阻害因子メンバーであり、T細胞で発現される。CTLA-4を結合し、阻害する抗体は、当技術分野で公知である。
【0065】
1つの例において、抗体は、ヒトIgG抗体、イピリムマブ(商品名Yervoy(登録商標)、Bristol-Myers Squibb社)である。
【0066】
これらの免疫チェックポイント阻害薬の1つ1つ、特にPD1、PD-L1若しくは2、或いはCTLA-4又は天然の結合パートナー若しくはリガンドに対するこれらの抗体の1つ1つは、本明細書において開示されたTable 1(表1)のモノクローナル抗体の1つ、特にHUM01、HUM02、HUM03、HUM04、HUM05、HUM06、HUM07、HUM08、HUM09及び/又はHUM10と組み合わせる又は使用することができる。一実施形態において、組み合わせ又は使用はHUM03とのものである。
【0067】
本発明の定義及び更なる実施形態、変形例及び代替物:
本明細書で使用される場合、「参照配列と少なくとも85%同一な」配列は、その全長において、参照配列の全長と85%以上、特に90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%の配列同一性を有する配列である。
【0068】
「配列同一性」のパーセンテージは、比較ウィンドウで最適に整列された2つの配列を比較して決定することができ、比較ウィンドウ中のポリペプチド配列の一部は、2つの配列の最適アライメント用の参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して付加又は欠失(すなわちギャップ)を含む可能性がある。パーセンテージは、両方の配列において同一なアミノ酸残基が生じる位置の数を決定してマッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較ウィンドウ中の位置の合計数で割り、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。比較のための配列の最適アライメントは、グローバルペアワイズアライメントにより、例えばNeedleman and Wunsch(1970)J. Mol. Biol. 48:443頁のアルゴリズムを使用して行われる。配列同一性のパーセンテージは、例えばプログラムNeedleを、BLOSUM62マトリックス、及び以下のパラメータ、ギャップオープン=10、ギャップ伸長=0.5で使用して容易に決定することができる。
【0069】
本発明との関連において、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、化学特性(例えば、電荷又は疎水性)が類似した側鎖基を有する別のアミノ酸残基により置換されているものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させることはないであろう。化学特性が類似した側鎖を有するアミノ酸基の例には、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン;2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリン及びスレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン;5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸;並びに7)硫黄含有側鎖:システイン及びメチオニンが挙げられる。保存的アミノ酸置換基は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン-トリプトファン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸塩-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。
【0070】
本出願全体を通して、用語「含む」は、全ての具体的に言及された特徴、及び任意選択の追加の特定されていない特徴を包含すると解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「含む」の使用はまた、具体的に言及された特徴以外の特徴が存在しない(すなわち、「からなる」)実施形態も開示する。
【0071】
「抗体」は、2つの重鎖がジスルフィド結合により互いに連結され、各重鎖がジスルフィド結合により軽鎖に連結されている、天然又は通常の抗体であってもよい。2つのタイプの軽鎖、ラムダ(λ)及びカッパ(κ)がある。抗体分子の機能活性を決定する5つの主な重鎖クラス(又はアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEがある。各鎖は、異なる配列ドメインを含有する。軽鎖は、2つのドメイン又は領域、すなわち、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は、4つのドメイン、すなわち、可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3、まとめてCHと呼ばれる)を含む。軽鎖(VL)及び重鎖(VH)両方の可変領域は、抗原に対する結合認識及び特異性を決定する。軽鎖(CL)及び重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖結合、分泌、経胎盤移行性、補体結合、及びFc受容体(FcR)への結合等の重要な生物学的特性を付与する。Fv断片は、免疫グロブリンのFab断片のN末端部分であり、1つの軽鎖及び1つの重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基の間の構造的相補性にある。抗体結合部位は、主に超可変領域又は相補性決定領域(CDR)由来の残基からできている。非超可変領域又はフレームワーク領域(FR)由来の残基が、全体のドメイン構造及びそれ故に結合部位に影響を及ぼすことがある。
【0072】
「相補性決定領域」又は「CDR」は、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性及び特異性を共に規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は各々3つのCDRを有し、それぞれ、CDR1-L、CDR2-L、CDR3-L及びCDR1-H、CDR2-H、CDR3-Hと命名されている。通常の抗体抗原結合部位は、それ故に、重鎖及び軽鎖V領域の各々からのCDRセットを含む、6つのCDRを含む。
【0073】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR間に介在するアミノ酸配列、すなわち、単一種において異なる免疫グロブリン間で比較的保存されている免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変領域の一部を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は各々4つのFRを有し、それぞれ、FR1-L、FR2-L、FR3-L、FR4-L、及びFR1-H、FR2-H、FR3-H、FR4-Hと命名されている。
【0074】
本明細書で使用される場合、「ヒトフレームワーク領域」は、天然に存在するヒト抗体のフレームワーク領域と実質的に同一(約85%以上、特に90%、95%、97%、99%又は100%)なフレームワーク領域である。
【0075】
本発明との関連において、免疫グロブリン軽鎖又は重鎖におけるCDR/FRの定義 は、IMGT定義(Lefrancら(2003)Dev Comp Immunol. 27(1):55~77頁;www.imgt.org)に基づき決定されるであろう。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、通常の抗体及びその断片、並びに単一ドメイン抗体及びその断片、特に単一ドメイン抗体の可変重鎖、及びキメラ、ヒト化、二重特異性又は多重特異性抗体を表す。
【0077】
本明細書で使用される場合、抗体又は免疫グロブリンはまた、ごく最近記載され、及びその相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である「単一ドメイン抗体」も含む。単一ドメイン抗体の例には、重鎖抗体、天然に軽鎖を欠く抗体、通常の4鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、操作された単一ドメイン抗体が挙げられる。単一ドメイン抗体は、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ及びウシを含むが、これらに限定されない任意の種に由来し得る。単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体として知られる、天然に存在する単一ドメイン抗体であってもよい。特に、ラクダ科の種、例えばラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ及びグアナコは、天然に軽鎖を欠く重鎖抗体を産生する。ラクダ科動物重鎖抗体はまた、CH1ドメインも欠く。
【0078】
軽鎖を欠くこれらの単一ドメイン抗体の可変重鎖は、「VHH」又は「ナノボディ」として当技術分野で公知である。通常のVHドメインと同様に、VHHは4つのFR及び3つのCDRを含有する。ナノボディは、通常の抗体に勝る利点を有する。ナノボディはIgG分子より10倍小さく、結果として、正しく折りたたまれた機能的ナノボディは、高収量を達成しながらインビトロ発現により産生することができる。更に、ナノボディは、極めて安定であり、プロテアーゼの作用に耐性を示す。ナノボディの特性及び産生は、Harmsen and De Haard(2007)Appl. Microbiol. Biotechnol. 77:13~22頁で総論されている。
【0079】
用語「モノクローナル抗体」又は「mAb」は本明細書で使用される場合、特異的抗原に対する単一アミノ酸組成の抗体分子を指し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。モノクローナル抗体は、B細胞の単一クローン又はハイブリドーマにより産生することができるが、組換えであってもよく、すなわち、タンパク質操作により産生されてもよい。
【0080】
(通常の)抗体の「断片」は、インタクトな抗体の一部、特にインタクトな抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fv、Fab、F(ab')2、Fab'、dsFv、(dsFv)2、scFv、sc(Fv)2、抗体断片から形成されるダイアボディ、二重特異性及び多重特異性抗体が挙げられる。通常の抗体の断片はまた、重鎖抗体又はVHH等の単一ドメイン抗体でもあり得る。
【0081】
用語「Fab」は、プロテアーゼ、パパインでIgGを処理して得られる断片のうち、H鎖のN末端側の約半分及びL鎖全体がジスルフィド結合を通じて互いに結び付けられた、約50,000Daの分子質量及び抗原結合活性を有する抗体断片を表す。
【0082】
用語「F(ab')2」は、プロテアーゼ、ペプシンでIgGを処理して得られる断片のうち、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたFabよりわずかに長い、約100,000Daの分子質量及び抗原結合活性を有する抗体断片を指す。
【0083】
一本鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、ペプチドコードリンカーにより連結されたVH及びVLコード遺伝子を含む遺伝子融合体から通常、発現される、共有結合VH::VLヘテロ二量体である。本発明のヒトscFv断片は、特に遺伝子組換え法を使用して適当な立体配座で保持されたCDRを含む。二価及び多価抗体断片は、一価scFvの結合により自然発生的に形成することができ、又はペプチドリンカーにより一価scFvを結合させて生成することができる(二価sc(Fv)2等)。
【0084】
「dsFv」は、ジスルフィド結合により安定化されたVH::VLヘテロ二量体である。
「(dsFv)2」は、ペプチドリンカーにより結合された2つのdsFvを表す。
【0085】
用語「二重特異性抗体」又は「BsAb」は、単一分子内で2つの抗体の抗原結合部位を結び付ける抗体を表す。故に、BsAbは、2つの異なる抗原を同時に結合することができる。例えばEP2050764A1に記載されているような結合特性及びエフェクター機能の所望のセットを有する抗体又は抗体誘導体を設計、修飾、及び産生するのに、遺伝子操作がますます頻繁に使用されている。
【0086】
用語「多重特異性抗体」は、単一分子内で2つ以上の抗体の抗原結合部位を結び付ける抗体を表す。
【0087】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)中に、軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインはもう一方の鎖の相補的ドメインと対になり、2つの抗原結合部位を作るようにされる。
【0088】
特定の実施形態において、エピトープ結合断片は、Fv、Fab、F(ab')2、Fab'、dsFv、(dsFv)2、scFv、sc(Fv)2、ダイアボディ及びVHHからなる群から選択される。
【0089】
「キメラ抗体」は、本明細書で使用される場合、可変領域が、異なる種の、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する定常領域に連結されるように、定常領域又はその一部が、変更、置換、又は交換されている抗体である。「キメラ抗体」はまた、定常領域が、異なる種の、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する可変領域に連結されるように、可変領域又はその一部が、変更、置換、又は交換されている抗体も指す。
【0090】
用語「ヒト化抗体」は、当初は完全に又は部分的に非ヒト起源であり、ヒトにおける免疫応答を回避又は最小限にするために、特に重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域の特定のアミノ酸を置換するように修飾された抗体を指す。ヒト化抗体の定常ドメインは、ほとんどの場合ヒトCH及びCLドメインである。一実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト起源の定常ドメインを有する。本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列、例えばCDRを含有するキメラ抗体を指す。
【0091】
用語「抗体」は、全てのこれらの種類の抗体、断片、又はそれらの組み合わせを包含するように使用される。
【0092】
ヒト化の目標は、抗体の完全な抗原結合親和性及び特異性を維持しながら、ヒトに導入するための、マウス抗体等の異種抗体の免疫原性の低減である。ヒト化抗体、又は他の哺乳動物による非拒絶に適合された抗体は、リサーフェシング及びCDR移植等のいくつかの技術を使用して産生することができる。本明細書で使用される場合、リサーフェシング技術は、分子モデリング、統計解析及び変異誘発の組み合わせを使用して、標的宿主の既知の抗体の表面に似るように、抗体可変領域の非CDR表面を変更する。
【0093】
抗体は、CDR移植(EP0239400;WO91/09967;米国特許第5,530,101号及び第5,585,089号)、ベニアリング又はリサーフェシング(EP0592106;EP0519596;Padlan(1991)Molecular Immunology 28(4/5):489~498頁;Studnickaら(1994)Protein Engineering 7(6):805~814頁;Roguskaら(1994)Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 91:969~973頁)、及び鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含む様々な他の手法を使用してヒト化することができる。ヒト抗体は、ファージディスプレイ方法を含む当技術分野で公知の様々な方法により製造することができる。米国特許第4,444,887号、第4,716,111号、第5,545,806号、及び第5,814,318号;及び国際特許出願WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、及びWO91/10741も参照のこと。
【0094】
本発明との関連において、用語「治療する」又は「治療」は、本明細書で使用される場合、そのような用語が当てはまる障害若しくは状態、又はそのような障害若しくは状態の1つ若しくは複数の症状の進行を逆転、緩和、阻害すること、或いはそのような用語が当てはまる障害若しくは状態、又はそのような障害若しくは状態の1つ若しくは複数の症状を予防することを意味する。
【0095】
用語「がんの治療」は本明細書で使用される場合、特に、腫瘍の悪性細胞の増殖及び/又は前記腫瘍からの転移の進行の阻害を意味する。そのような治療は、腫瘍増殖の退縮、すなわち、測定可能な腫瘍のサイズの減少ももたらすことができる。特定の実施形態において、そのような治療は、腫瘍又は転移の部分的退縮をもたらす。別の特定の実施形態において、そのような治療は、腫瘍又は転移の完全な退縮をもたらす。いくつかの態様において、治療は転移を予防する。
【0096】
本発明によれば、用語「患者」又は「それを必要とする患者」は、悪性腫瘍に罹患した又は罹患する可能性があるヒト又は非ヒト哺乳動物が意図される。
【0097】
「治療有効量」は、任意の医療に適用可能な妥当なベネフィット/リスク比で、前記がん疾患を治療するための活性薬剤の十分な量を意味する。しかし、活性薬剤の1日当たりの総用量は、健全な医学的判断の範囲内で担当医により決定されることが理解されるであろう。任意の特定の患者に対する特定の治療有効量レベルは、治療下の障害及び障害の重症度;使用される特定のポリペプチド又は抗体の活性;使用される特定の組成物、患者の年齢、体重、全般的健康、性別及び食事;使用される特定の活性薬剤の投与時間、投与経路、及び排出速度;治療期間;使用される特定の活性薬剤と組み合わせて又は同時に使用される薬物;並びに医学分野で周知の同様の要因を含む様々な要因に依存するであろう。
【0098】
「薬学的に」又は「薬学的に許容される」は、必要に応じて哺乳動物、特にヒトに投与された場合、副作用、アレルギー反応又は他の有害な反応を引き起こさない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容される担体又は賦形剤は、非毒性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、被包材又は任意のタイプの補助製剤を指す。
【0099】
医薬組成物:
本発明のポリペプチド又は抗体を含む医薬組成物の形態及び投与経路は、治療される状態、病気の重症度、患者の年齢、体重、及び性別等に当然ながら依存する。
【0100】
本発明の活性薬剤は、局所、経口、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下又は眼内投与等用に製剤化することができる。特定の実施形態において、本発明の活性薬剤は静脈内投与される。
【0101】
特に、本発明の活性薬剤を含む医薬組成物は、注射することができる製剤用の薬学的に許容されるビヒクルを含有してもよい。これらは、特に等張滅菌生理食塩水溶液(リン酸一ナトリウム若しくは二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム又は塩化マグネシウム等、又はそのような塩の混合物)、又は場合により滅菌水又は滅菌生理学的食塩水を添加すると、注射用溶液の構成を可能にする乾燥組成物、特に凍結乾燥組成物であってもよい。
【0102】
医薬組成物を調製するために、本発明の活性薬剤の有効量が、薬学的に許容される担体又は水性媒体に溶解又は分散され得る。
【0103】
注射用途に適した剤型には、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、形態は、滅菌状態でなければならず、容易に注射できる程度に流動性でなければならない。形態は、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。
【0104】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの適切な混合物を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。適正な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用、分散液の場合は必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤、安定化剤、抗凍結剤又は抗酸化剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、抗菌剤及び抗真菌剤によりもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。
【0105】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて、上記に列挙された他の成分のいくつかを含む適当な溶媒に必要とされる量の活性薬剤を組み込み、その後濾過滅菌して調製される。一般的に、分散液は、塩基性分散媒及び上記に列挙されたものから必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに、様々な滅菌活性成分を組み込んで調製される。滅菌注射用溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、以前に滅菌濾過されたその溶液から活性成分プラス任意の更なる所望の成分の粉末をもたらす、真空乾燥及び凍結乾燥法である。
【0106】
製剤化すると、溶液は、投与製剤と適合する方法、及び治療的に有効であるような量で投与されるであろう。製剤は、上記に記載された注射用溶液のタイプ等の様々な剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセル等も使用することができる。
【0107】
水溶液での非経口投与には、例えば、溶液は必要であれば適切に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤は、十分な生理食塩水又はグルコースで最初に等張にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に特に適切である。これに関して、使用され得る滅菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知であろう。例えば、1回投与量は、1mLの等張NaCl溶液に溶解し、1000mLの皮下注入液に添加、又は提案された注入部位で注射することができる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、1035~1038頁及び1570~1580頁参照のこと)。投与量のある程度の変動が、治療下の対象の状態に応じて必然的に生じるであろう。いずれにしても、投与に関与する者が、個々の対象にとって適当な用量を決定することになる。
【0108】
薬物の投与及び使用方法:
本明細書で使用される場合、「同時に」は、2つの薬剤が並行して投与されることを意味するために使用されるのに対し、用語「組み合わせて」は、同時でないならば、2つの薬剤が両方とも同じ時間枠内で治療的に作用するように利用可能な時間枠内で「逐次」投与されることを意味するために使用される。故に、「逐次」投与は、第1の投与薬剤の循環半減期が、2つの薬剤が両方とも治療有効量で並行して存在するようなものであることを条件に、一方の薬剤が他方の薬剤後、5分、10分以内又は数時間のうちに投与されることを可能にし得る。成分の投与間の時間遅延は、成分の正確な性質、成分間の相互作用、及び成分のそれぞれの半減期に応じて異なるであろう。
【0109】
「組み合わせて」又は「同時」とは対照的に、「個別に」は、一方の薬剤と他方の薬剤の投与間のギャップが著しい、すなわち数時間であることを意味するのに本明細書で使用される。これは、第2の薬剤が投与されたときに、第1の投与薬剤が治療有効量で血流中にもはや存在しない場合を含み得る。
【0110】
本発明の一実施形態において、NTN1中和剤又は抗ネトリン-1抗体は、免疫チェックポイント阻害薬の前に逐次又は個別投与される。
【0111】
特に好ましい実施形態において、免疫チェックポイント阻害薬は、NTN1中和剤又は抗ネトリン-1抗体の前に逐次又は個別投与される。
【0112】
一実施形態において、本明細書に提供されたNTN1中和剤又は抗ネトリン-1抗体、及び免疫チェックポイント阻害薬は両方とも、薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤を含む同じ組成物内にある。
【0113】
別の実施形態において、それらは、別個の剤型又はキットオブパーツの下で提示される。これは、患者への同時、個別又は逐次投与用の、NTN1中和剤又は抗ネトリン-1抗体及び免疫チェックポイント阻害薬を含む組成物又はセット又はキットオブパーツを形成する。故に、本発明は、(i)2つの活性成分を混合物として含む組成物、又は(ii)同じ条件付け又は別個の条件付けで別個に保たれたそれらの活性成分を含む組成物を含む可能性があり、(ii)の場合、通常はキットオブパーツの概念を指す。
【0114】
治療方法、使用及び使用のための組成物の一実施形態において、投与は逐次的又は個別的である。両方の投与間の間隔は、少なくとも5、10、15、20若しくは24時間、好ましくは24~96時間、より好ましくは24~72時間、又はより特別には24~48時間、例えば24時間であってもよい。一実施形態において、一方の薬剤又は薬物は、他方の薬剤又は薬物の投与の翌日に単に投与される。
【0115】
異なる剤型が、十分な量で本発明治療方法において使用されてもよい。
【0116】
本発明は、免疫チェックポイント阻害薬の用量レジメンの変更を意味するものでも又は意味し得るものでもない。しかし、NTN1中和剤又は抗ネトリン-1抗体と共に生じる相乗効果は、患者に免疫チェックポイント阻害薬のより低い用量レジメンを使用できるようにする可能性がある。当業者は、本発明により提供される併用治療との関連で最適な用量レジメンを決定することができる。
【0117】
医薬組成物は、適切な用量、すなわち、NTN1中和剤又は抗ネトリン-1抗体に関して、がんが治療される対象者の少なくとも1mg/kg体重、例えば約1mg/kg体重~約100mg/kg体重、特に約10mg/kg体重~約60mg/kg体重で対象に投与することができる。免疫チェックポイント阻害薬は、組み合わせが相乗的有効性を有する限り、通常用量、又は通常用量に対して低減用量で投与されてもよい。例えば、免疫チェックポイント阻害薬の用量は、10、20、30、40、50%、又はそれ以上低減される。
【0118】
本明細書で使用される場合、用語「相乗的」は、活性成分、例えば抗体が、併用される場合、2つの成分の個々の効果の相加から期待されるよりも大きな効果をもたらすことを意味する。有利には、相乗的相互作用は、より低用量の各成分を患者に投与できるようにし、これにより、同じ治療効果をもたらす及び/又は維持しながら、化学療法の毒性を低下させることができる。故に、特に好ましい実施形態において、各成分は治療量以下の用量で投与することができる。
【0119】
【表2A】
【0120】
【表2B】
【0121】
【表2C】
【0122】
【表2D】
【0123】
【表2E】
【0124】
【表2F】
IMGTの下のCDRは、必要に応じてTable 2で太字で強調表示される。
【実施例1】
【0125】
材料及び方法
細胞株:
マウス乳がんEMT6(ATCC(登録商標)CRL2755(商標)- LGC standards社-フランス)細胞を、10%ウシ胎仔血清及び抗生物質(ストレプトマイシン及びペニシリン)を補充したイーグル最小必須培地で培養した。
【0126】
ハツカネズミ(Mus Musculus)乳腺4T1(ATCC(登録商標)CRL-2539(商標)LGC standards社-フランス)細胞を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、10%FBSで培養した。
【0127】
マウス実験:
マウスは特定病原体フリー飼養施設で維持し、動物管理使用委員会(Comite d'Evaluation Commun au Centre Leon Berard、a l'Animalerieerie de transit de l'ENS、au PBES et au laboratoire P4;CECCAP)により承認された所内ガイドライン及びプロトコルに従って取り扱った。
【0128】
5×105又は10×105個のEMT6細胞を、BalbC/J 8週齢メスマウスの側腹部に皮下移植した。全ての動物を、7、11及び14日目に抗CTLA4(BioX cell USA社-クローン9H10-)の400μg/注射により3回処置した。動物をそれぞれ、HUM03;NP006 IgG1対照アイソタイプ(Netris Pharma社、フランス);HUM03+抗CTLA4、及びNP001+抗CTLA-4で処置する4群に無作為に分けた。NP006及びHUM03抗体を週2回、10mg/Kgで腹腔内投与した。腫瘍を外部キャリパーにより週2回測定した。腫瘍進行を移植後29日後に決定した。腫瘍が2000mm3の体積に達したら、マウスを屠殺し、生存率を決定した。
【0129】
5×105個の4T1細胞を、BalbC/J 7週齢メスマウスの側腹部に皮下移植した。動物を、対応群(BioX cell USA社-クローンRMP1-14)で抗PD1抗体の100μg/注射により2週間処置した。動物を、それぞれPBS;HUM03+抗PD-1及びNP001(Netris Pharma社、フランス)+抗PD1で処置する3群に無作為に分けた。腫瘍を外部キャリパーにより週3回測定した。腫瘍が1500mm3の体積に達したら、マウスを屠殺し、生存率を決定した。
【0130】
統計:
統計は、GraphPadソフトウェアを使用して行った。スチューデントT検定は両側であり、0.005未満のP値を統計的に有意とみなした。
【0131】
生存曲線は、GraphPadソフトウェアでカプラン-マイヤー方法により生成した。データはマンテル-コックス検定を用いて分析した。nはリピート数を示す。全ての統計検定は両側であり、0.005未満のP値を統計的に有意とみなした。
【0132】
結果/考察
1)HUM03及びCTLA4 mAbの組み合わせは、腫瘍再発を遅らせ、EMT6乳がんモデルのマウス生存率を増加させる。
【0133】
抗ネトリン-1 mAb及び抗CTLA4の組み合わせをテストするために、乳腺EMT-6がん細胞をBalbC/Jマウスに移植した。
【0134】
図1~3に示されているように、HUM03と免疫チェックポイント阻害薬CTLA4との組み合わせは、CTLA4単独で観察された抗腫瘍応答を大幅に増強している。処置28日目に腫瘍がないマウスの数は、それぞれ、HUM03単独群で0/12、及びCTLA4単独群で2/12から、コンボ処置で8/12まで変化している(図1)。
【0135】
マウスの生存率も、80日間のカプランマイヤー分析後に定量化した(p=0.046)。生存率は、組み合わせがマウス生存率を有意に増加させることを示しており(図2)、これは、併用療法によるより長い疾患コントロールと関連しているようである(図3)。組み合わせのこの増加した活性はCTLA4に限られるのか、又は他の免疫チェックポイント阻害薬にまで拡大され得るのかを分析するために、本発明者らは次に、HUM03とPD-1との併用効果を分析した。
【0136】
2)HUM03及びPD-1 mAbを組み合わせることは、4T1乳がんモデルのマウス生存率を増加させる。
【0137】
抗ネトリン-1 mAb及び抗PD1の組み合わせをテストするために、乳腺4T1がん細胞をBalbC/Jマウスに移植した。図4に示されているように、マウス生存率を移植20日後のカプランマイヤー分析後に定量化した(p=0.0411)(図4)。CTLA4で観察されるものと同様に、組み合わせPD-1/HUM03は、PD-1単独より効率的である。実際に、単独療法PD1 mAb単独は、生存率の増加なしと関連するが(対照処置群で観察されるものと同様に、7マウス中4マウスが20日目に生存していた)、PD1にHUM03を組み合わせることは、マウス生存率を100%まで増加させている(7マウス中7マウスが20日目に生存)。
【0138】
これらのデータを合わせると、現在の免疫療法治療にHUM03を組み合わせることは、それらの有効性を高めるという見方を支持している。ネトリン-1干渉の存在下での免疫チェックポイント阻害薬のこの増強効果を説明し得る機構の探索において、本発明者らは、単独療法又は併用治療に応答した腫瘍免疫浸潤を分析する。
【0139】
3)HUM03及びCTLA4 mAbを組み合わせることは、EMT6乳がんモデルにおける腫瘍のT細胞エフェクター/T細胞制御因子比に有利に働く。
【0140】
腫瘍免疫浸潤における抗ネトリン-1 mAb及び抗CTLA4の併用効果を分析するために、上記に示されているように乳腺EMT-6がん細胞をBalbC/Jマウスに移植し、HUM03単独(vs対照アイソタイプNP001)、CTLA4単独、又は組み合わせHUM03+CTLA4 mAbのどちらかで処置した。腫瘍を分離し、リンパ球系細胞内容物をフローサイトメトリーにより分析した。図5に示されているように、単独療法(HUM03又はCTLA4のどちらか)は比T細胞エフェクター/T細胞制御因子に有意な影響を与えていないが、併用はT細胞エフェクターへ比をシフトさせている。これは、併用がキラーリンパ球細胞(T細胞エフェクター)の存在を増強していることを示唆して有効性の向上を支持するものである。
【実施例2】
【0141】
5×105個のEO771細胞を、C57b6J 8週齢メスマウスの側腹部に皮下移植した。移植6日後に、動物を、NP137若しくはNP001 IgG1対照アイソタイプ単独で、又は抗PD-1抗体と併用して処置する4群に無作為に分けた。全ての動物を、抗CTLA4(BioXcell社-クローン9H10)、20mg/Kg及び/又はNP抗体、10mg/KgでIP経路により週2回処置した。腫瘍体積を外部キャリパーにより週2回測定した。腫瘍が2000mm3の体積に達したら、マウスを屠殺した。
【0142】
5×105個のMC38細胞を、C57b6J 8週齢メスマウスの側腹部に皮下移植した。移植6日後に、動物を、NP137若しくはNP001 IgG1対照アイソタイプ単独で、又は抗PD-1抗体と併用して処置する4群に無作為に分けた。全ての動物を、抗PD-1(BioXcell社-クローンRMP1-14)、5mg/Kg及び/又はNP抗体、10mg/KgでIP経路により週2回処置した。腫瘍体積を外部キャリパーにより週2回測定した。腫瘍が2000mm3の体積に達したら、マウスを屠殺した。
【0143】
5×106個の0016eM3細胞を、C57b6J 8週齢メスマウスの側腹部に皮下移植した。移植6日後に、動物を、NP137若しくはNP001 IgG1対照アイソタイプ単独で、又は抗PD-1抗体と併用して処置する4群に無作為に分けた。全ての動物を、抗PD-1(BioXcell社-クローンRMP1-14)、5mg/Kg及び/又はNP抗体、10mg/KgでIP経路により週2回処置した。腫瘍体積を外部キャリパーにより週2回測定した。腫瘍が2000mm3の体積に達したら、マウスを屠殺した。
【0144】
EMT-6及び4T1細胞(実施例1参照のこと)も同様の状態で使用した。
【0145】
以下の表は、NP137及び抗PD1抗体の組み合わせから生じる増強又は相乗効果を示している。
【0146】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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