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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】対象物を機械加工する工具
(51)【国際特許分類】
   B24D 13/04 20060101AFI20230117BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
B24D13/04
B24B9/00 602L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019542792
(86)(22)【出願日】2017-10-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2017076896
(87)【国際公開番号】W WO2018073432
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】102016220766.0
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519145894
【氏名又は名称】ブーク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ベック マルク
(72)【発明者】
【氏名】ベック ヨッヘン
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-058064(JP,U)
【文献】米国特許第05301472(US,A)
【文献】特開昭51-102364(JP,A)
【文献】特開2015-199165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 13/04
B24B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を機械加工するための工具であって、
各々が層領域で延びる多数のフィンガー層を備え、
前記フィンガー層は、前記フィンガー層の隣り合うフィンガー層の前記層領域が少なくとも領域において重なるように前後に配置されており、
前記フィンガー層のそれぞれは、複数のフィンガーを有し、
前記フィンガー層の前記フィンガーは、対応するフィンガー層の前記層領域に立っている方向において撓んでいない状態から屈曲可能であり、
前記フィンガー層の前記フィンガーは、それぞれ平面設計であり、撓んでいない状態では対応する前記層領域内で延びており、
撓んでいない状態では、同じフィンガー層の隣り合うフィンガーは、ゼロよりも大きい距離だけ互いに離れており、
少なくとも幾つかのフィンガー層のフィンガーは、当該フィンガー層と隣り合うフィンガー層への投影において、当該隣り合うフィンガー層のフィンガーの間の隔たりに、又は、当該隣り合うフィンガー層のフィンガーの隣に配置されており、
前記複数のフィンガー層のうち隣り合うフィンガー層は、互いに直接的に隣接しており、
同じ層の隣り合うフィンガー間の距離は、当該フィンガーが隣り合う方向における当該フィンガーの幅よりも大きく、
前記複数のフィンガー層は、閉じた円形の線に沿って前後に配置されており、前記層領域は前記円形の線上に垂直に立っており、前記フィンガーはその長手方向が前記円形の線の中心点を通る軸に対して径方向となるように延びると共に前記円形の線上に垂直に立っており、
互いに直接的に隣接するように隣り合うフィンガー層のフィンガーは、その長手方向が前記軸に対して径方向となるように延びている、
工具。
【請求項2】
請求項1に記載の工具であって、
同じフィンガー層のフィンガーは、撓んでいない状態から互いに独立して弾性的に屈曲可能である、
工具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の工具であって、
前記フィンガー層の隣り合うフィンガー層のフィンガーの間には材料がない、
工具。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか1項に記載の工具であって、
撓んでいない状態では、同じフィンガー層のフィンガーは、互いに平行に延びている、
工具。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか1項に記載の工具であって、
少なくとも幾つかのフィンガー層のフィンガーは、このフィンガー層に対してその表面に垂直な方向において隣り合うフィンガー層への投影において、当該隣り合うフィンガー層のフィンガーと重なり合うように配置されている、
工具。
【請求項6】
請求項5に記載の工具であって、
2、3、4又はそれ以上のフィンガー層のフィンガーは、当該フィンガー層の1つに垂直な方向における共通平面への投影において重なる、
工具。
【請求項7】
ワークピースのエッジの2次バリを除去し、及び/又は、ワークピースのエッジを丸み付けするための方法であって、
請求項1から6までの何れか1項に記載の工具を前記ワークピースの前記エッジをなぞるように移動させることで、前記フィンガー層が前記エッジをブラッシングし、それにより、前記フィンガー層が前記エッジをブラッシングすることによって、前記エッジの2次バリが除去され、及び/又は、前記エッジが丸み付けされる、
方法。
【請求項8】
ワークピースのバリ取りとエッジ丸み付けの方法であって、
請求項1から6までの何れか1項に記載の工具を前記ワークピースの前記エッジをなぞるように移動させることで、前記フィンガー層が前記エッジをブラッシングし、それにより、前記フィンガー層が前記エッジをブラッシングすることによって、前記エッジの1次バリが除去され、前記エッジが丸み付けされる、
方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法であって、
前記ワークピースは金属ワークピースである、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を機械加工する工具であって、層状に並べられた多数のフィンガーを有し、層においてフィンガーは互いに離れて配置されている工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークピースの機械加工中にバリが生じることがある。概して鋭いエッジにより、コンポーネントを取り扱う間に怪我したり、及び/又は、後続の処理段階で減損(例えば、粉体塗装中のエッジの薄肉化、嵌合の不正確さなど)を招いたりする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
バリ取りの範疇においてコンポーネントのバリは取り除かれる。バリの除去はしばしば二段階のアプローチを必要とする。第1のステップでは、1次バリが除去され、続いて2次バリが除去される。第2のステップは、1次バリが完全に削ぎ落とされるのではなく寧ろ再形成されるので、必要とされる。バリ取りに加えて、更なる品質要件を満たすために、しばしばエッジ丸み付けと呼ばれるものが更に必要とされる。
【0004】
バリ取り及び丸み付け機械は、2Dときには3Dのワークピースのバリ取り及びエッジ丸み付けの分野で使用されている。この種の機械では、一般に、1次バリを除去するに際し、研削ベルト又は研削ディスクを有する研削ベルトユニット又はプレートユニットが使用され、続いて2次バリ又はエッジ丸み付けがバリ取り工具や丸み付け工具によって除去又は製造される。半径が大きくなるにつれて、エッジ丸みが重要になる。半径とチップ体積との間の二次関係は、使用される工具にかなりの要求を強いる。エッジの半径が2倍になると、チップ体積が4倍になる。
【0005】
与えられた工具及びワークピースを用いて比較的大きなエッジの丸みをつけるために、丸み付け工具ができるだけ長い動作期間(低い送り速度)を持ち、そしてワークピースのエッジに対して適度に深い態様で前進するように機械を操作しなければならない。長い動作時間と深い前進は、結果として処理時間の延長、工具の磨耗の増加、そしてワークピースへの望ましくない熱の導入をもたらす。
【0006】
加えて、エッジ丸み付けのための低い送り速度は、1次バリの除去に比例しない。1次バリの除去は、1~10m/minの間の送り速度で実施することができ、目立ったエッジ(pronounced edge)の丸み付けのためには、0.2~0.5m/minの間の送り速度が実施される。
【0007】
ワークピースの輪郭が変化する金属材料の2Dときには3Dワークピースのバリ取り及びエッジ丸み付けのため、研削布及び研削フリースとの組み合わせから成る研磨材を有する工具が従来技術において主に使用されている。ほとんどの用途において、研磨材は主たる要素としてベース上の研削手段を含む。研磨材をワークピースの輪郭に適合可能となるように、研磨材は部分的にウェブスロット設計で使用され、柔らかい中間層又は支持層(例えば研削フリース、タンピコ繊維)を備えている。工具はそれぞれの機械加工原理又は機械加工ユニットに従ってロール、プレート又はブロックの形態で設計可能である。
【0008】
工具を構成する様々な可能性(例えば、研磨布の粒状化(graining)、研磨フリース密度など)にもかかわらず、今日までの研磨速度は満足のいくものではなかったので、低い送り速度及び深い切込み量(deep infeed)で作業を行わなければならない。これらのプロセスパラメータはバリ取り及び丸み付けプロセスの経済的効率を犠牲にしている。
【0009】
本発明の目的は、機械加工用、好ましくはバリ取り及び/又はエッジ丸み付け用の工具であって、同じエッジ丸み付けでも送り速度を高くし、又は、同じ送り速度でもより目立ったエッジ(pronounced edge)の丸み付けを可能とする工具を特定することにある。更には、プロセスステップ内でワークピースのエッジをバリ取り及び丸み付けするための方法を特定することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載の対象物を機械加工するための工具、請求項31に記載の2次バリを除去する方法、及び、請求項32に記載のバリ取り及び丸み付け方法によって達成される。従属請求項は、本発明の有利な発展を特定する。
【0011】
本発明によれば、対象物を機械加工するための工具が特定される。工具は、各々が層領域で延びる多数のフィンガー層を備える。前記フィンガー層のそれぞれは、複数のフィンガーを有する。有利には、各層領域は少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも5つのフィンガーを有する。層領域は、有利にはフィンガーが撓んでいない状態で、フィンガー層のフィンガーが広がる領域と考えることができる。層領域におけるフィンガーの凸状被覆は、ここでは有利にはスパン面(spanned surface)であると考えることができる。本発明によれば、前記フィンガー層は、隣り合うフィンガー層の前記層領域が少なくとも領域において重なるように前後に配置されている。これは必ずしもそうである必要はないが、フィンガーもまた重なることを意味する。これは、隣り合うフィンガー層へのフィンガー層に垂直な方向のフィンガー層の投影が隣り合うフィンガー層と重なり合うことを意味する。従って、ここでは投影によって覆われる隣り合うフィンガー層の領域がある。隣り合う層の重なりは完全であり得るが、そうである必要はない。例えば、以下にも説明するブロック形状の工具の場合には完全に重なり合うことがあるが、以下に説明する板状の及び円筒形状の工具の場合には、通常、部分的な重なりしかない。層領域は平面であることが好ましい。有利には、フィンガーが撓んでいない状態では、フィンガー層自体は互いに重ならない。
【0012】
本発明によれば、各フィンガー層は複数のフィンガーを有する。後者は、対応するフィンガー層の層領域上に立つ方向、即ち層領域と平行にも層領域内にも立たない方向に、撓んでいない状態から屈曲可能となるように構成される。例えば、フィンガーが屈曲可能な方向は、対応するフィンガー層の層領域に対して垂直に立つことができる。好ましくは、フィンガーがそれぞれ屈曲可能な方向は、フィンガーの長手方向に対して垂直に、及び/又は、フィンガーの各位置においてフィンガーの表面に対して垂直に立つことができる。ここでのフィンガーの表面は、好ましくはその最大の表面、即ち前記フィンガーが平らに延在する表面である。フィンガーの撓んでいない状態は、そのフィンガーが属するフィンガー層の層領域内に当該フィンガーが完全にある状態である。フィンガーは、例えば屈曲可能な舌であると考えることができる。
【0013】
本発明によれば、フィンガーはそれぞれ平面設計であり、撓んでいない状態では、それらが属するフィンガー層の層領域内に延在する。フィンガーが平面設計であるという事実は、フィンガーが平らであること、即ち当該フィンガーが属するフィンガー層の層領域の方向において、層領域に垂直な方向よりも、大きく延びており、通常は、非常に大きく延びていることを意味する。
【0014】
撓んでいない状態では、同じフィンガー層のフィンガーは互いに平行に延びることが好ましい。フィンガーは有利には細長い設計であり、これはフィンガーが層領域内の方向で、その方向に対して垂直な方向よりも、有利には層領域に対して垂直となるような垂直な方向よりも、有意に大きく延びていることを意味する。フィンガーが層領域内でより大きい範囲は、以下では対応するフィンガーの長手方向と呼ばれる。そのような構成では、同じフィンガー層のフィンガーの長手方向はそれぞれ、撓んでいない状態で互いに平行にある。有利には、同じフィンガー層のフィンガーのエッジも、撓んでいない状態で互いに平行に延びる。しかしながら、撓んでいない状態でフィンガーがまっすぐではないエッジを有する場合、長手方向が平行であれば十分である。
【0015】
長手方向に対して垂直な層領域内のフィンガーの範囲はフィンガーの幅と呼ばれる。層領域に垂直な方向におけるフィンガーの範囲は厚さと呼ばれる。長さは、フィンガーの幅よりも大きく、幅は厚さよりも大きいことが好ましい。
【0016】
本発明によれば、撓んでいない状態では、同じフィンガー層の直接隣り合うフィンガーは、互いにゼロより大きい距離にある。前記距離は、好ましくは一定であり、即ち、それぞれの場合において、フィンガーの全長にわたって同じ値を有する。ここで、距離は、例えば、一方のフィンガーの一方のエッジから隣り合うフィンガーの最も近いエッジまでとして測定することができる。従って、フィンガー層内のフィンガーの配置は櫛形であると考えることができる。従って、フィンガーは、直線部分によってフィンガー層から製造されるのではなく、フィンガー層が製造される層の部分表面が隣り合うフィンガー間で除去されるという事実によって製造されるのが好ましい。
【0017】
作業方向は工具内で有利に規定することができる。 これは、使用時に工具が意図した通りに移動する方向である。意図された動きは、例えば、直線状のエッジをなぞるような動きであり、その動きは、フィンガーが直線状のエッジをその最大面でブラッシングするような方法で起こり、直線状のエッジは、好ましくは、なぞるようにブラッシングする際に、フィンガーの最大面に対して平行である。その場合、フィンガーは、作業方向が平行又は接線方向にある層領域から外れる方向に移動可能であることが好ましい。その場合、層平面は有利には、消えない角度で、又は作業方向に対して垂直に延びる。
【0018】
同じ層の隣り合うフィンガーの間隔によって、フィンガーの高度の柔軟性がもたらされる。これによって、例えばフィンガー層間に設けられるフリース(fleece)のような支持材料なしで、フィンガー層を直接又は小さな距離をおいて前後に配置することが可能となる。それによって高密度のフィンガーが得られ、これから高い研削力が得られる。これによって、同じエッジ丸み付けをより速い送り速度で、又は、同じ送り速度で顕著な目立ったエッジの丸み付けが実現される。
【0019】
同じフィンガー層のフィンガーは、撓んでいない状態から互いに独立して弾性的に屈曲可能であることが有利である。フィンガーが撓んだ状態から互いに独立して屈曲可能であるという事実は、フィンガーを曲げる力を精確に1つのフィンガーに働かせても、同じ層の他のフィンガーが屈曲することがないことを意味する。フィンガーが撓んでいない状態から弾性的に屈曲可能である事実は、力が消えたとき、フィンガーが撓んでいない状態へ実質的に戻ることを意味する。これは、高密度のフィンガーの場合に、任意の所望のワークピースの輪郭に適応する高い能力をもたらす。
【0020】
工具、フィンガー及びフィンガー層の本明細書に記載の幾何学的形状は、フィンガー層に使用される材料の多くが実際にはある程度塑性変形可能であるという意味で理想化を意味し得ることを指摘すべきである。結果として、工具又はフィンガーは、製造のために又は工具の使用のために、本明細書に記載の幾何学的形状とはある程度異なる形状を有するか又はとることができる。しかしながら、当業者であれば、そのような異なる形状を本明細書に記載の形状に割り当てることができることは疑いもなく、従って、異なる形状は保護の範囲に含まれると見なすべきである。
【0021】
本発明に係る配置は、フィンガー層間に支持材料なしで工具を実現することを可能にする。従って、隣り合うフィンガー層のフィンガー間には材料がないことが好ましい。フィンガーが屈曲可能な領域では、隣り合うフィンガー層のフィンガー間に材料がないことが好ましい。
【0022】
フィンガー層は、フィンガーの一端に配置されたキャリア構造によって有利に保持することができる。フィンガー層は、例えば、キャリア構造に接着剤で接着することができる。
【0023】
本発明の有利な構成では、少なくとも幾つかのフィンガー層のフィンガーは、当該フィンガー層と隣り合うフィンガー層へ投影したときに、当該隣り合うフィンガーそうのフィンガーの間の隔たりに収まり、及び/又は、当該隣り合うフィンガー層のフィンガーと隣り合う。ここで、投影は、消えない角度で、又は、対応するフィンガー層の1つの層領域に垂直となるように立つ方向において行われ、又は、フィンガーが撓んでいない状態から屈曲する方向において行われる。作業方向への投影もあり得る。投影と、その投影が行われたフィンガー層は、有利には重ならず、即ち、投影は、有利には、それぞれ隣り合う層のフィンガーの間に完全に収まる。そのような配置は、工具の柔軟性を増大させるのに役立ち、なぜなら、フィンガーの屈曲が隣り合うフィンガー層によって妨害されないからである。本発明の有利な構成では、すべての隣り合うフィンガー層のフィンガーは、従って、互いにずれるように配置される。
【0024】
同じ層の隣り合うフィンガー間の距離が当該フィンガーの幅、即ち当該フィンガーが隣り合う方向におけるフィンガーの範囲よりも大きい場合、それは有利であり得る。隣り合うフィンガー層のフィンガーがそれぞれ互いに対してずれるようにフィンガー層が上述のように配置される場合、屈曲の間にフィンガーが隣り合うフィンガー層のフィンガーから距離をあけて、当該フィンガーの間にこすらずに係合する効果が達成される。
【0025】
本発明の有利な構成では、少なくとも幾つかのフィンガー層のフィンガーは、それぞれ隣り合うフィンガー層のフィンガーと重なり合うことができる。従って、重なり合いは、特に投影において存在し、投影とは、それぞれのフィンガー層のフィンガーの、フィンガー層に垂直な方向における、隣り合うフィンガー層への投影である。重なりは、片方又は両方のフィンガーについて完全又は部分的であり得る。これにより、工具の強度を高めることができる。この構成と、ずらして配置されたフィンガーの上述した構成との組み合わせによって、工具の強度を柔軟に調整することができる。
【0026】
上述のように隣り合う層のフィンガーが重なり合うように配置されている場合、隣り合う層間に距離が設けられており、そのフィンガーが互いに重なり合うように配置されることが有利である。例えば、スペーサ層がそれぞれ隣り合う層間に配置することができ、そのスペーサ層の寸法は隣り合うフィンガー層の寸法と有利に一致する。
【0027】
上述のようにフィンガーが重なり合う場合、フィンガー層のうちの1つに垂直な方向における共通平面への投影において2、3、4又はそれ以上の直接隣り合うフィンガー層のフィンガーが重なり合うことがある。これは、2つ、3つ、4つ又はそれ以上のフィンガー層のフィンガーが、当該層のうちの1つの層領域に対して垂直な方向で前後に並ぶことができることを意味する。
【0028】
工具の強度は、隣り合うフィンガー層の間の距離によっても調整できる。有利には、隣り合うフィンガー層は互いに直接隣接することができ、又は、フィンガー層の厚み1つ分、2つ分、3つ分、又はそれ以上の距離だけ互いに離れてもよい。ここで、2つのフィンガー層の距離は、当該フィンガー層の層領域の互いからの距離であって、層領域に対して垂直に測定される。ここでの距離は、好ましくは、フィンガーが固定されているフィンガー層の点で測定される。これは、層が円筒形状に配置されている場合に関連しており、その配置は以下に説明されるものであり、隣り合うフィンガー層が互いに消えない角度を為す。板状配置の場合、上述した距離は、層の内側のエッジ、即ち板に面するエッジの中心点で測定されるのが好ましい。
【0029】
撓んでいない状態では、フィンガー層は平面であることが好ましく、従って、フィンガー層の層領域は平面である。
【0030】
本発明の有利な構成では、フィンガー層は、工具が機械加工の対象物を通過する際の移動方向に対して斜めに配置することができる。これは、フィンガー層が、フィンガー層が前後に配置される線に対して0度より大きく180度より小さい角度を囲むことができることが好ましいことを意味する。ここでの層は、好ましくは当該線に対してー45度より大きく+45度より小さい角度を取り囲むことができる。
【0031】
フィンガーは、それぞれ少なくとも1つの研削面及び/又は研磨面を有することが好ましい。当該研削面及び/又は研磨面は、対応するフィンガーが平面的に延びる面と平行な、対応するフィンガーの面であることが好ましい。
【0032】
フィンガーは、好ましくはベース上の研削手段として設計することができる。ここでの研削手段はキャリアに適用することができ、その研削及び/又は研磨面を形成することができる。
【0033】
フィンガーがベース上の研削手段として構成されている場合、ベースは有利にはコットン、ポリエステル又はポリコットンを有することができ、又はそれらから構成することができる。しかしながら、フィンガー層はそれ自体研削材料及び/又は研磨材料を有することもでき、又はそれらから構成することもできる。この場合、研削材又は研磨材をフィンガーに塗布する必要はない。
【0034】
フィンガーの研削材及び/又は研磨材は、有利には、粒径12以上、好ましくは粒径50以上、好ましくは粒径100以上、及び/又は、粒径320以下、好ましくは粒径240以下、好ましくは粒径150以下である粒径を有し得る。
【0035】
本発明の有利な構成では、フィンガー層の隣り合うフィンガー層は、上下に配置されたフィンガー層が矩形表面を完全に満たすように構成することができる。この構成は、2つの隣り合うフィンガー層が交差線によって矩形層から切り取られることによって特に効率的に製造することができる。
【0036】
有利には、フィンガーの長さは、20mm以上、好ましくは30mm以上、特に好ましくは40mm以上、及び/又は150mm以下、好ましくは120mm以下、好ましくは90mm以下、好ましくは70mm以下、好ましくは60mm以下、特に好ましくは50mm以下であり得る。工具のすべてのフィンガーは同じ長さを有するのが有利である。
【0037】
本発明の有利な構成では、それらの部分の個々のフィンガーにスロットを入れることができる。ここでスロットをフィンガーに導入することができ、スロットはフィンガーを貫通し、フィンガーの長手方向と平行に延びる。複数のスロットを直線に沿って前後に配置することも有利であり、この直線はフィンガーの長手方向軸と平行に延びることができる。有利には、各場合において、複数の平行なスロット又は複数の平行な列のスロットをフィンガーに設けることができる。
【0038】
フィンガーの幅、即ち同じ層のフィンガーが互いに隣り合うように配置される方向におけるフィンガーの範囲は、好ましくは2mm以上、好ましくは5mm以上、特に好ましくは7mm以上、及び/又は、20mm以下、好ましくは15mm以下、特に好ましくは10mm以下である。
【0039】
フィンガー層の厚さ、又は任意に適用される研削手段のないフィンガーの厚さは、好ましくは0.5mm以上、好ましくは1mm以上、及び/又は、2mm以下、好ましくは1mm以下である。
【0040】
本発明の有利な構成では、すべてのフィンガー層を互いに平行となるように前後に配置することができ、それ故、フィンガーの長手方向に垂直な面であってフィンガー層が広がる面は矩形である。工具全体は、ここでは好ましくはブロック形状を有する。
【0041】
前述のブロック形状の構成では、同じ層のフィンガーが互いに隣り合うように配置される方向における工具の範囲は、有利には、50mm以上、好ましくは70mm以上、及び/又は、100mm以下、好ましくは80mm以下である。この範囲は、本明細書では工具の幅と呼ばれる。
【0042】
工具の深さ又は長さ、即ちフィンガー層が前後に配置される方向における工具の範囲は、好ましくは50mm以上、好ましくは60mm以上、及び/又は、80mm以下、好ましくは70mm以下である。
【0043】
本明細書では板状構成と呼ぶ本発明の更なる有利な構成では、フィンガー層は閉じた円形の線に沿って前後に配置することができ、層領域は円形の線に対して垂直に立ち、フィンガーは、円形の線で描かれた円の領域、つまり円が通る平面の領域に垂直に立つ。この構成では、フィンガー層は円形リング状でキャリア上に配置することができ、個々のフィンガーはキャリアの円形リング表面上に垂直に立つ。
【0044】
工具が板状構成である場合、フィンガー層に加えて、更に閉じた円形の線に沿って配置された多数の更なるフィンガー層が設けられていると有利であり得る。更なる閉じた円形の線は、ここでは前述の第1のフィンガー配置の円形の線に対して同心円状に延びることができ、第1の円形の線よりも大きく又は小さい半径を有することができる。従って、更なるフィンガー層は、最初に説明したフィンガー層の内側又は外側で延びる(run)ことができる。更なるフィンガー層のフィンガーは、好ましくは、第1のフィンガー層のフィンガーと同じ長さを有し、更なるフィンガーの端部が第1のフィンガー層のフィンガーの端部と同じ平面内を走るように配置される。本発明のこの構成は、板状配置の場合のフィンガーの密度が半径方向外向きに減少するので、より均一な機械加工を可能にする。第1のフィンガー層の配置の内径がより大きくなるように選択される場合、更なるフィンガー層は、第1のフィンガー層の配置の内側に配置され得、更なるフィンガー層の下図は、第1のフィンガー層の下図よりも小さくなるように選択され得る。これにより、半径方向内側のフィンガーの密度が過度に増加するのを回避することができる。対応する方法で、第1のフィンガー層の周囲に更なるフィンガー層をより多く配置することもでき、従って外側へのフィンガーの密度の低下を回避することができる。
【0045】
板状配置の場合、工具の円形の線の平面における直径は、有利には、50mm以上、好ましくは80mm以上、好ましくは100mm以上、好ましくは115mm以上、好ましくは125mm以上、好ましくは150mm以上、及び/又は、1500mm以下、好ましくは1000mm以下、好ましくは400mm以下、好ましくは250mm以下、好ましくは200mm以下である。
【0046】
板状配置の場合、同じ層のフィンガーが互いに隣り合うように配置される方向におけるフィンガー層の幅は、15mm以上、好ましくは20mm以上、好ましくは30mm以上、及び/又は、100mm以下、好ましくは65mm以下、好ましくは60mm以下、好ましくは50mm以下、好ましくは40mm以下である。
【0047】
有利な構成では、それぞれの場合において多数のフィンガー層を組み合わせて1つのブロックを構成する。フィンガー層が前後に配置される方向における各ブロックの奥行きは、有利には、20mm以上、好ましくは35mm以上、好ましくは45mm以上、及び/又は、70mm以下、好ましくは55mm以下である。
【0048】
本発明の別の有利な構成では、フィンガー層を閉じた円形の線に沿って前後に配置することができ、順に、層領域は円形の線上に垂直に立ち、フィンガーはその長手方向が円形の線の中心点を通る軸に対して径方向に延びると共に、円形の線によって囲まれた円形の表面に垂直に立つ。工具のこの構成は、以下では円筒構成と呼ばれる。フィンガーの先端は、ここでは共通の円筒面上にあり得る。同様に、フィンガーが固定されているフィンガーの点は、共通の円筒面上にあり得る。フィンガー層は、通常、ここでは互いに対して前述の軸周りに角度を為して立っている。フィンガーは、ここでは円筒形のキャリア構造上に配置されるのが好ましい。
【0049】
円形の線又は軸に対する半径方向において軸の反対側にあるフィンガーの先端間で測定したときの、円筒構成の工具の直径は、有利には、50mm以上、好ましくは100mm以上、特に好ましくは200mm以上、及び/又は、400mm以下、好ましくは300mm以下である。
【0050】
工具の幅、即ち閉じた円形の線で囲まれた円形面に垂直な方向又は軸方向の幅は、好ましくは20mm以上、好ましくは100mm以上、好ましくは500mm以上、好ましくは1500mm以上、及び/又は、2500mm以下、好ましくは2000mm以下、特に好ましくは1700mm以下である。
【0051】
工具の柔軟性は、さまざまな方法で設定又は変更できる。第一に、柔軟性は、フィンガー層又はフィンガーの外形の選択によって影響され得る。更に、説明したようにフィンガーの配置によって工具の適応能力に影響を与えることが任意に可能である。更に任意選択で、フィンガーの所与の剛性において、フィンガーの付け根領域、即ちフィンガーの固定に隣り合う領域に、例えばスペーサ片によって距離を導入することが可能である。これにより、フィンガーの屈曲可能な長さを変えることができ、その結果、フィンガーの剛性も変えることができる。
【0052】
更に、要素の剛性に影響を及ぼすために、任意選択的に積層された主フィンガー層を使用することができる。
【0053】
本発明の有利な構成では、各フィンガー層の最も外側のフィンガーは、フィンガー層のエッジに向かって落ち込むように傾斜させることができる。有利には、フィンガーはエッジに向かって短くなることができる。フィンガーは有利にはエッジに向かってより狭くなり得る。この構成により、より柔らかい係合が得られる。
【0054】
本発明に係る工具は、有利には、金属ワークピースのエッジをバリ取りするための工具、及び/又は、金属ワークピースのエッジを丸み付けするための工具、即ちバリ取り工具又は丸み付け工具である。
【0055】
本発明によれば、更に、金属ワークピースの1つ以上のエッジの2次バリを除去するための、及び/又は、金属ワークピースの1つ以上のエッジを丸み付けするための方法が示される。上述のような工具は、フィンガー層がエッジをブラッシングするように、ここでは機械加工されるべきエッジをなぞるように移動する。フィンガー層によるエッジのブラッシングによって、エッジ上の2次バリが除去され、及び/又は、エッジが丸み付けされる。
【0056】
工具は、機械加工されるべきエッジに対して垂直に立つ方向に動かされるのが好ましい。更に、工具は、撓んでいない状態で、フィンガー層と平行にならない方向に動かされることが好ましい。この方向は、撓んでいない状態で、フィンガー層に対して垂直に立つことが好ましい。
【0057】
本発明によれば、更に、金属ワークピースの1つ以上のエッジをバリ取り及び丸み付けするための方法が特定され、上述のように、フィンガー層がエッジをブラッシングするように工具がエッジをなぞるように移動し、従って、フィンガー層を用いてエッジをブラッシングすることによって、エッジ上の1次バリが取り除かれ、エッジが丸くなる。この場合も、工具は機械加工されるべきエッジの方向に対して垂直な方向に有利に移動される。有利には、工具は、ここで、撓んでいない状態における層領域に垂直な方向にも移動する。本発明に係る工具の構成は、1次バリを除去することとエッジを丸み付けすることの両方を可能にする。1次バリの除去及び丸み付けは、ここで共通のステップでもたらすことができる。
【0058】
本発明によれば、工具の研磨力は、従来技術による同じサイズの工具よりも実質的に増大する。その結果、より顕著なエッジの丸み付けがより短時間で得ることができ、製造の経済的効率を改善することができる。更に、より高い力の能力は、従来技術において互いに独立して実行されるプロセスステップを統合する可能性をもたらす。例えば、1次バリを除去する工程、2次バリを除去する工程及びエッジに丸み付けする工程は、本発明の高い研磨力によって1つの工程に組み合わせることができる。それによって全く新しい機械構成が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
本発明は、幾つかの図面を参照して以下に例示される。同じ参照符号は、同一又は対応する特徴を識別する。実施例に示される特徴はまた、特定の実施例とは無関係にそして異なる実施例の間で組み合わされて実現され得る。
図1図1は、本発明に係る工具の円筒構成を示す。
図2図2は、本発明に係る工具の板状構成を示す。
図3図3は、本発明に係る工具のブロック形状構成を示す。
図4図4は、本発明に係る工具の板状構成の平面図である。
図5図5は、本発明に係る工具の二列を有する板状構成の平面図である。
図6図6は、本発明に係る工具におけるフィンガーの配置の概略図である。
図7図7は、本発明に係る工具におけるフィンガーの配置の概略図である。
図8図8は、本発明に係る工具におけるフィンガーの配置の概略図である。
図9図9は、先行技術に従ってバリ取り及びエッジ丸み付けのプロセスシーケンスを示す。
図10図10は、移動方向に対する層の任意の傾斜位置を示す。
図11図11は、エッジが面取りされたフィンガーを有する、本発明の任意の構成を示す。
図12図12は、鋸刃状エッジのフィンガーを有する、本発明の2つの層の任意構成を示す。
図13図13は、スロット付きフィンガーを有する、フィンガー層の任意構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は、本発明に係る工具の円筒構成を全体的に及び拡大して詳細に示している。工具は、それぞれが層領域内に延びる多数のフィンガー層1a、1b、1cを有する。明確にするために、フィンガー層1a、1b、1cの3つのみが以下明示的に命名されるが、図自体は、フィンガー層1a、1b、1cに関して述べたことが同様に当てはまる多数の更なるフィンガー層を示す。
【0061】
フィンガー層1a、1b、1cは、それらが隣り合うフィンガー層1a、1b、1cの層領域と重なり合うように前後に(one behind another)配置されている。図1に示される円筒形状では、隣り合うフィンガー層1a、1b、1cは互いに対して消えない角度にあり、その結果、重なり合いは完全な重なり合いではない。
【0062】
各フィンガー層1a、1b、1cは、複数のフィンガー2a、2b、2cを有する。明確にするために、フィンガー2a、2b、2cについてのみ明示的に言及するものの、工具は、フィンガー2a、2b、2cに関して述べたことが同様に当てはまる多数の更なるフィンガーを有する。図1において、フィンガー2a、2b、2cはすべて同じ長さを有する。
【0063】
フィンガー2a、2b、2cは、対応するフィンガー層1a、1b、1cの層領域に垂直な方向において、撓んでいない状態から屈曲可能(bendable)となっている。図1では、フィンガー2a、2b、2cは撓んでいない状態にある。
【0064】
フィンガー2a、2b、2cはそれぞれ平面設計であり、図示の撓んでいない状態では、対応するフィンガー層1a、1b、1cの層領域内に延びている。撓んでいない状態では、同じフィンガー層1a、1b、1cのフィンガー2a、2b、2cはそれぞれ互いに平行に延びている。従って、同じフィンガー層1a、1b、1cのフィンガー2a、2b、2cの長手方向は互いに平行になる。撓んでいない状態では、同じフィンガー層1a、1b、1cのそれぞれ隣り合うフィンガー2a、2b、2cは互いにゼロより大きい距離だけ離れている。
【0065】
図1に示される本発明に係る工具の円筒構成では、フィンガー層1a、1b、1cは閉じた円形の線に沿って前後に配置されている。フィンガー層1a、1b、1cの層領域は、それぞれ円形の線に垂直に立っている。フィンガー2a、2b、2cは、その長手方向が、円形の線の中心点を通る軸に対して径方向となるように延びており、円形の線によって描かれた円に垂直に立っている。
【0066】
すべてのフィンガー層1a、1b、1cは、共通するキャリア構造3上に配置されている。すべてのフィンガー層1a、1b、1cのフィンガー2a、2b、2cは、一端においてキャリア構造3に締結されている。図1における本発明に係る工具の円筒形状では、キャリア構造3は、その軸を円筒軸とする円筒形状を有し、それに対して2a、2b、2cを有するフィンガーはそれらの長手方向に沿って半径方向に延びる。
【0067】
図2は、本発明に係る工具の板状構成を示す。図2の板状構成では、それぞれ層領域内に延在する多数のフィンガー層1a、1b、1cが、フィンガー層1a、1b、1cの隣り合うフィンガー層の層領域が互いに重なり合うように、円形の線に沿って前後に配置されている。板状配置のために、重なりは不完全である。明確にするために、ここでは3つのフィンガー層1a、1b、1cのみについても言及されており、ここで述べられていることは他のフィンガー層にも同様に当てはまる。
【0068】
各フィンガー層1a、1b、1cは、複数のフィンガー2a、2b、2cを有する。明確にするために、フィンガー2a、2b、2cの3つのみが説明されているが、述べられていることは図示される他のフィンガーにも同様に当てはまる。
【0069】
フィンガー2a、2b、2cは、対応するフィンガー層1a、1b、1cの層領域に垂直な方向において、撓んでいない状態から屈曲可能(bendable)となっている。図2では、フィンガーは撓んでいない状態にある。フィンガー2a、2b、2cは、それぞれ平面設計であり、撓んでいない状態では、対応するフィンガー層1a、1b、1cの層領域内に延びている。 撓んでいない状態では、同じフィンガー層1a、1b、1cの各フィンガー2a、2b、2cもここでは互いに平行に延びており、何れも同じ長さを有している。また、図2に示す例では、同じフィンガー層1a、1b、1cの隣り合うフィンガー2a、2b、2cは、撓んでいない状態で、互いにゼロより大きい距離を有する。
【0070】
図2に示す板状構成では、フィンガー層1a、1b、1cは閉じた円形の線に沿って前後に配置され、フィンガー層1a、1b、1cの層領域は円形の線に対して垂直に立っており、フィンガー2a、2b、2cは、円形の線で描かれた円の領域上に垂直に立っている。フィンガー層1a、1b、1cは、図2の板状構成において、円形リングの形態の平面形状を有することができるキャリア構造3上に配置されている。円形リングの形状の領域は、閉じた円形の線によって描かれた平面内にある。フィンガー2a、2b、2cは、一端がキャリア構造3に接するように配置され、それらの長手方向がキャリア構造3の表面上に垂直となるように立っている。使用中、板状構造はワークピースのエッジ上を移動することができる。これは、工具が閉じた円形の線の中心点を通り、フィンガー2a、2b、2cの長手方向に平行に立つ軸周りに回転するという事実による。
【0071】
図3は、本発明に係る工具のブロック形状構成を示す。この工具は、多数のフィンガー層1a、1b、1cを同様に(in turn)有しており、明確にするために、そのうちの3つの層1a、1b、1cのみが言及されるが、同じことが図示の他の層にも同様に当てはまる。フィンガー層1a、1b、1cは、フィンガー層1a、1b、1cの隣り合うフィンガー層の層領域が重なり合うように前後に配置されている。 ブロック形状構成では、重なり合いは完全であり得る。更に、ブロック形状構成では、すべてのフィンガー層1a、1b、1cの層領域が完全に重なり合うことができる。
【0072】
同様に、フィンガー層1a、1b、1cのそれぞれは複数のフィンガー2a、2b、2cを有し、そのうち3つのフィンガー2a、2b、2cのみが議論され、述べられたことは図示される他のフィンガーについても同様に当てはまる。示された例におけるすべてのフィンガー層1a、1b、1cのすべてのフィンガー2a、2b、2cは同じ長さを有するので、工具全体で実質的に立方体形状を有する。
【0073】
本発明のブロック形状構成の場合にも、フィンガー層1a、1b、1cのフィンガー2a、2b、2cは、それぞれ平面設計であり、撓んでいない状態では、ここでは平面である対応する層領域内に延在する。次に、フィンガー2a、2b、2cは撓んでいない状態から屈曲可能となっている。図では、同様に、ここでは撓んでいない状態のフィンガー2a、2b、2cを示している。
【0074】
撓んでいない状態では、同じフィンガー層1a、1b、1cのフィンガー2a、2b、2cはそれぞれ互いに平行に延びている。撓んでいない状態では、同じフィンガー層1a、1b、1cの隣り合うフィンガー2a、2b、2cは互いにゼロより大きい距離を有する。
【0075】
図3に示す構成では、フィンガー層1a、1b、1cは、図3のブロック形状構成の場合において、矩形状を有し得る共通のキャリア構造3上に配置されている。図示される例において、すべてのフィンガー層1a、1b、1cのフィンガー2a、2b、2cは、キャリア構造3の矩形によって定義される平面上に垂直に立っている。
【0076】
図4は、図2による本発明に係る工具の板状構成の更なる例を示す。図4において、工具は、円形の線が延びる平面に対して垂直な方向の平面図で示される。フィンガー層1a、1b、1cは、円形の線の中心点に対して放射状に(radially)延びている。フィンガー層1a、1b、1cはここでは実線で示されているが、それらは図2に描かれているがここでは分解されていないフィンガー2a、2b、2cを有する。フィンガー層1a、1b、1cの密度、従ってフィンガー2a、2b、2cの密度は内側から外側に向かって減少することが分かる。結果として生じるフィンガーの密度の不均一性を相殺するために、図5に示されるような板状ワークピースを構成することができる。この例では、フィンガー層1a、1b、1cに加えて、より小さな半径を有する更なる閉じた円形の線に沿って配置された多数の更なるフィンガー層1d、1e、1fが設けられている。更なるフィンガー層1d、1e、1fのうちの3つのみがここでもまた議論されているが、フィンガー層1d、1e、1fに関して述べたことが同様に当てはまる多数の更なるフィンガー層が内側の円形の線に沿って配置されている。
【0077】
フィンガー層1d、1e、1fが沿うように配置される更なる閉じた円形の線は、前述の第1の円形の線に対して同心円状に配置されており、後者よりも小さい半径を有する。2つの円形の線は同じ平面内を通る。フィンガー層1d、1e、1fから成る内側配置は、より少ないフィンガー層1d、1e、1fを有し、その結果、内側のフィンガー層1d、1e、1fの領域におけるフィンガー密度は、外側のフィンガー層1a、1b、1cが図5のフィンガー層1d、1e、1fが配置された領域に延長した構成との対比において、減少する。これにより、図5に示す工具は、図4に示す工具と比較して、より広い範囲にわたってより均一な機械加工を可能にするし、同じ外形寸法を有する。
【0078】
図6、7、8は、例として、本発明に係る工具におけるフィンガー及びフィンガー層の様々な可能な配置を示す。フィンガーはここでは直線として概略的に示されている。ここでの直線は、キャリア構造3上の対応するフィンガーの付け根又は固定線として、或いは、キャリア構造3と反対側に位置するフィンガーの端部におけるフィンガーの上側(upper sides)と見なすことができる。図6、7、8では、フィンガー層が互いに平行に描かれており、ブロック形状構成及び円筒構成に関連したものである。工具の板状構成では、フィンガー層は、図6、7、8の図示において互いに角度を為すだろう。しかしながら、前述の角度は非常に小さいので、図面においてほとんど視認できないだろうから、図6、7、8は、従って、板状構成にも関連していると考えてもよい。
【0079】
図6は、フィンガーの配置を示す。ここでは、フィンガー2a~2fのみを明示している。述べられたことは、図示される他のフィンガーについても同様に当てはまる。
【0080】
図6では、隣り合うフィンガー層1a~1eのフィンガーは互いにずれて配置されている。これは、フィンガー層1aのフィンガー2a、2b、2cが、隣り合うフィンガー層1bへの投影において、隣り合うフィンガー層のフィンガー2d、2e、2fの間の隔たりに配置されることを意味する。ここでの投影は、フィンガー層1a又は1bの層領域に対して垂直な方向におけるものである。同様に、図6において、フィンガー層1a~1eのすべての隣り合うフィンガー層のフィンガーは、前述の投影において、隣り合うフィンガー層1a~1eのフィンガーの間の隔たりに、又は、隣り合うフィンガー層1a~1eのフィンガーの隣に、配置される。
【0081】
図7は、フィンガー層1a~1iにおけるフィンガー2a~2lの可能な配置を示す。フィンガー層1aのフィンガー2a、2b、2cは、その表面に垂直な方向において隣り合うフィンガー層1bへの投影において、フィンガー層1bのフィンガー2g、2h、2iと重なり合う。従って、フィンガー層1cのフィンガーもフィンガー層1a、1bのフィンガーと重なり合う。従って、フィンガー層1a~1cのフィンガー2a~2iは、前述のフィンガー層の層領域に対して垂直な方向で前後に配置されている。
【0082】
フィンガー層1a~1c又は1d~1fの層領域に垂直な方向における投影において層1a~1cに隣り合うフィンガー層1d~1fのフィンガー2j~2lは、隣り合う層1cのフィンガーの間の隔たりに配置される。一方、層1d~1fのフィンガー2j~2lは、前述した層1a~1cと同様に、前後に、又は、重なり合うように配置されている。層1g~1iのフィンガーは、同様に、層1a~1cのフィンガー2a~2iの背後に(behind)配置されている。従って、これらは、投影すると、層1d~1fのフィンガーの間の隔たりに、又は、当該層のフィンガーの隣に配置されている。
【0083】
図8は、フィンガー層1a~1dにおけるフィンガー2a~2fの配置を示す。ここで、隣り合うフィンガー層1a~1dのフィンガー2a~2fは、図6に示されるように、投影において、それぞれ隣り合うフィンガー層1a~1d間の隔たりに同様に収まっている(fall in turn)。
【0084】
すべての図において、すべてのフィンガーはそれぞれ同じ幅を有し、互いに同じ距離を有する。これは必須ではないが有利である。図6及び7では、フィンガーの幅は同じ層の隣り合うフィンガー間の隔たりに等しいが、図8に示す例では、フィンガー2a~2fは、同じ層1a~1dのフィンガー2a~2fの隣り合うフィンガー間の距離よりも小さい幅を有する。それにより、フィンガー層1bのフィンガー2d~2fは、隣り合うフィンガー層1a又は1cのフィンガー2a~2cの間の隔たり4に収まる。そのため、フィンガー2d~2fは、隣り合うフィンガー層1a~1dのフィンガー2a~2cと擦れ合ったりぶつかったりすることなく撓むことができる。
【0085】
図9は、一例として、ワークピースのバリ取り及びエッジ丸み付けのための方法の工程を示す。状態Z1において、1次バリを有するワークピースが存在する。1次バリは、例えば、ワークピースを金属シートから打ち抜いたことによって、又は部品をワークピースから打ち抜いたことによって発生し得る。従来技術は、ここで、1次バリが除去されるステップS1を提供する。1次バリの除去は、例えば、研磨面を有する無端ベルトによって行うことができる。多くの場合、1次バリはそれによって完全に除去されるのではなく、むしろ少なくとも部分的に2次バリと呼ばれるものに再成形される。従って、ステップS1は、2次バリを有するワークピースが存在する状態Z2に至り得る。次に、2次バリを除去するステップS2を行わなければならず、それは状態Z3のバリがないワークピースをもたらす。例えば後から塗布される塗料の剥がれを防止するために、バリがないワークピースのエッジを特定のサイズに丸み付け付けすることが多くの用途に必要である。エッジの丸み付けは、バリがないワークピースに適用されるエッジ丸み付け工程S3によって達成される。このステップS3の結果は、エッジが丸み付けされたワークピースが存在する状態Z4である。
【0086】
図10は、使用中に工具が動かされる方向に対する層の任意の斜め位置を示す。上の部分画像は、図6に対応する平面図を示す。左下の部分画像は、上の部分画像に示される断面線A―Aに沿った断面図を示し、右下の部分画像は、上の部分画像に示される線B―Bに沿った断面図を示す。
【0087】
使用中の工具の移動方向は、同じ層のフィンガーが互いに隣り合うように配置される方向、即ち上側部分画像内において右又は左に配置されている方向に対して垂直である。断面図において、層1aから1eは、移動方向に対して90度に等しくない角度だけ傾斜していることが分かる。層1a~1dの隣り合う層は、ここでは反対方向に傾斜している。図示の例では、層1a、1b、1cは右に傾斜し、層1d、1eは左に傾斜している。
【0088】
図11は、図6に示す実施形態に対応する本発明の構成を示す。ここで、最上部の部分画像は、上から見たフィンガー2a~2hの位置を示し、中央の部分画像は、フィンガーの表面の側面図であり、下側部分画像は、上から見たフィンガー2a~2hの位置を示す。図11に示される実施形態は、図11において各フィンガー層の最も外側のフィンガー2a、2d、2g、2hがフィンガー層のエッジに向かって下降するように傾斜している点で、図6に示される実施形態と異なる。従って、フィンガーはエッジに向かって短くなっている。フィンガーはエッジに向かって狭くなり得る。この構成により、より柔らかい係合が得られる。
【0089】
図12は、フィンガー層が鋸刃状エッジを有するフィンガー層1a~1dの実施形態を例として示す。フィンガー層の基本形状は、フィンガー2a、2b、2cのエッジが鋸刃状になっているという違いを除いて、図3に示す形状に対応する。部分画像Aは、フィンガー層1aのうちの1つを示す。
【0090】
部分図12Bは、切り出しによってフィンガー層1a及び1bを製造することができる出発層を示す。交差線(ここでは任意で鋸歯状になっている)がここで層に導入され、鋸刃状の長い部分と直線的な短い部分とで交互に走っている。これにより、それぞれ細長いフィンガー2a、2b、2cを有する2つのフィンガー層1a、1bが出発層から分離される。
【0091】
部分図12Cは、部分図12Bに従って製造され、ここでは図3に対応して前後に配置されている2つのフィンガー層1a及び1bの平面図を示している。層は、投影においてそれらの鋸刃の領域で重なり合っている。同じフィンガー層1a又は1bのフィンガーはそれぞれ、それらの長手方向が互いに平行になるように配置されている。
【0092】
図13は、フィンガー層1aの任意の構成の一例を示しており、フィンガーにスロットが設けられている。この目的のために、フィンガーの長手方向に前後に配置されたスロット5の3列は、それぞれフィンガー2a、2b、2cに導入されている。 ここで、スロットは、その長手方向がフィンガー2a、2b、2cの長手方向と平行になるように延びている。図示の例では、フィンガー層1aは5つのフィンガーを有し、各フィンガーは3列のスロットを有し、スロットの各列は前後に配置された4つのスロット5を有する。
【0093】
本発明に係る工具は、金属ワークピースのエッジの2次バリを除去する方法において、即ちステップS2において使用することができる。代替的に又は追加的に、金属ワークピースのエッジを丸み付けするためにステップS3で使用することもできる。ここで、工具は、フィンガー層が機械加工されるべきエッジをブラッシングし、それによって2次バリを除去し、及び/又は、エッジを丸み付けするように、ワークピースのエッジ上を移動する。
【0094】
本発明に係る工具は、共通の工程において、工具のエッジにおいて1次バリが除去されそしてエッジが丸み付けされる方法において特に有利に使用することができる。それ故、ワークピースは、本発明に係る工具によって、状態Z1から状態Z4まで、たった1ステップで機械加工することができる。この目的のために、今度は(in turn)、フィンガー層がエッジをブラッシングし、それによって1次バリを取り除き、エッジを丸み付けするように、工具がエッジ上を移動する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13