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▶ ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニアの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】眼疾患の遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230117BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230117BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230117BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N7/01
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61K48/00
A61K9/10
A61P27/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019547457
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 US2018020470
(87)【国際公開番号】W WO2018160849
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】62/465,649
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/469,642
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベネット,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ベニセリ,ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】サン,ジャンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジユン
(72)【発明者】
【氏名】ニコノフ,セルゲイ
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0019364(US,A1)
【文献】国際公開第2016/019364(WO,A1)
【文献】Investigative Ophthalmology and Visual Science (IOVS),2016年,Vol.57, 5151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/12
A61K 35/76
A61K 48/00
A61K 9/10
A61P 27/02
C12N 7/01
C12N 15/864
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトレベルシリンをコードする、配列番号3またはそれと少なくとも90%同一の配列、を含む改変型核酸。
【請求項2】
ヒトレベルシリンをコードする、配列番号3またはそれと少なくとも90%同一の配列、を含む発現カセット。
【請求項3】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、前記rAAVは、AAVカプシドと、その内部にパッケージされたベクターゲノムとを含み、前記ベクターゲノムは:
(a)AAV5’逆向き末端反復(ITR)配列;
(b)プロモーター;
(c)ヒトレベルシリンをコードするコード配列;及び
(d)AAV3’ITR配列
を含
前記rAAVカプシドはAAV7m8カプシドであり、そして前記(c)のコード配列は配列番号3のヌクレオチド配列を含み且つ(b)のプロモーターに作動可能に連結している、
前記rAAV。
【請求項4】
前記プロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、または、CMVプロモーター配列と、ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーター配列とを含むハイブリッドプロモーターである、請求項に記載のrAAV。
【請求項5】
前記AAV5’ITR配列、及び/または、前記AAV3’ITR配列が、AAV2由来である、請求項3または4に記載のrAAV。
【請求項6】
請求項1に記載の改変型核酸、請求項2に記載の発現カセットまたは請求項3~のいずれかに記載のrAAVと、眼への送達に適した医薬的に許容可能な担体または賦形剤とを含む組成物。
【請求項7】
レーバー先天性黒内障(LCA)の処置に用いるのに適した水性懸濁液であって、前記懸濁液は、水性懸濁液、及び、1×1010 ゲノムコピー(GC)~1×1012GC組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を含み、前記rAAVは、AAVカプシドを有し、及び、
(a)AAV 5’逆向き末端反復(ITR)配列;
(b)プロモーター;
(c)ヒトレベルシリンをコードするコード配列;及び
(d)AAV 3’ITR配列、を含む、
ベクターゲノムをその内部にパッケージしており、
前記rAAVカプシドはAAV7m8カプシドであり、そして前記(c)のコード配列は配列番号3のヌクレオチド配列を含み且つ(b)のプロモーターに作動可能に連結している、
前記水性懸濁液。
【請求項8】
前記懸濁液が、網膜下または硝子体内注射に適している、請求項に記載の水性懸濁液。
【請求項9】
LCA処置に用いるための、請求項1に記載の改変型核酸、請求項2に記載の発現カセット、請求項3~のいずれかに記載のrAAV、請求項に記載の組成物、または、請求項7若しくは8に記載の水性懸濁液、を含んでなる医薬組成物。
【請求項10】
性懸濁液において、1×109 ~1×1013 GCのrAAVが眼に送達される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記改変旗核酸、前記発現カセットまたは前記rAAV、網膜下または硝子体内に投与される、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府から資金提供を受けた研究または開発に関する陳述
本発明は、National Eye Institute(NEI)/National Institutes of Health(NIH)より、Grant番号第R21EY020662号、及び、第P30EY001583号の下で、合衆国政府の支援を受けて完成をした。合衆国政府は、本発明について、一定の権利を有する。
【0002】
電子的形態で提出した資料の援用
本出願人は、電子的形態で提出した配列表資料を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。このファイルを、「UPN-16-7696PCT_Seq_Listing_ST25.txt」の名称で格納している。
【背景技術】
【0003】
失明に至る遺伝性の疾患の最も重度のグループの1つは、レーバー先天性黒内障(LCA;OMIM 204000)である。LCAは、稀少のものであり、1:50,000名に発症し、通常は、常染色体劣性様式で遺伝し、そして、少なくとも22個の異なる遺伝子のいずれかの変異に起因する(sph.uth.edu/RetNet/sum-dis.htm)。臨床的特徴として、乳児期または幼児期の重度の異常視力(視力、視野の減少)、眼振、及び、生涯の初期に認められる視力の進行性の喪失がある。臨床検査により、暗所視及び明所視網膜電図(ERG)応答の消失、黒内障、光感受性の低下、及び、網膜の色素変化が明らかになる。現在のところ、承認を受けたLCAの治療法は存在しない。
【0004】
網膜色素上皮の65kDaのタンパク質をコードする遺伝子、RPE65での変異に起因するLCAの形態(Redmond TM, Yu S, Lee E, Bok D, Hamasaki D, Chen N, et al. Rpe65 is necessary for production of 11-cis-vitamin
A in the retinal visual cycle. Nat Genet (1998) 20(4):344-51;Redmond T, Hamel C. Genetic analysis of RPE65: from human disease to mouse model. Methods in Enzymol (2000) 317:705-24,これらの双方の文献を、本明細書の一部を構成するものとして援用する)は、複数の遺伝子増強療法の臨床試験での対象となっているため、近年、大きな注目を集めている。アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型2を使用して、幾つかのグループは、RPE65 cDNAの野生型コピーの網膜色素上皮(RPE)への送達が安全であり、かつ、このものが、夜盲症を含む数多くの欠損を改善できる、ことを示した(3~9)。AAV2-hRPE65v2(または、Spark therapeutics,Philadelphia,PAが資金提供しているvoretigene neparvovec)を試験するランダム化した多施設第3相試験では、この試薬を網膜下注射すると、光感度、視野、さらには、輝度条件の範囲における視覚的刺激を用いて、正確かつ迅速に誘導する能力を改善する、ことを示した(10,11)。The US Food and Drug Administration(FDA)は、Voretigene neparvovec-rzylに対して、2017年12月19日に医薬認可を付与し、これは、米国で初めて承認された遺伝子治療薬の1つになった。RPE65の変異に起因するLCA、つまりLCA2の処置法の開発が進展すると、RPE特異的遺伝子だけでなく、光受容体特異的遺伝子の変異に起因する大半の初期発症網膜変性の処置法の開発への道を開く。
【0005】
このすでに重度の病態(LCA)の最も重度の形態の1つは、レベルシリンをコードする光受容体特異的遺伝子であるLCA5の変異に起因する(12~20)。LCA5変異は、LCA症例の約2%を占めると推定されているが、遺伝的に単離した集団では、より一般的となり得る。(16)LCA5変異は、錐体ジストロフィーや常染色体劣性網膜色素変性症(ARRP)など、その他の網膜変性の早期発症型の原因としても特定されている。(15,16,21)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、必要とする対象でのレベルシリンの発現に有用な組成物が待望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載の実施形態は、ヒトLCA5を、それを必要とする対象に送達するためのAAV遺伝子治療ベクターに関する組成物及び方法に関するものであり、当該ベクターを硝子体内または網膜下に投与すると、長期間、おそらくは10年以上、レーバー先天性黒内障(LCA)の臨床的に意味のある矯正をもたらす。
【0008】
ある態様では、ヒトレベルシリンをコードするコドン最適化の、改変型核酸配列を提供する。ある実施形態では、当該コドン最適化核酸配列は、配列番号3または配列番号2の変異体である。別の実施形態では、当該コドン最適化核酸配列は、配列番号3である。別の実施形態では、当該核酸配列は、ヒトでの発現に最適化したコドンである。
【0009】
別の態様では、レベルシリンをコードするコドン最適化核酸配列を含む発現カセットを提供する。ある実施形態では、当該発現カセットは、ヒトレベルシリンをコードする配列番号3の核酸配列を含む。さらに他の実施形態では、レベルシリンをコードする配列は、5’及び3’AAV ITR配列の間に位置する。
【0010】
さらに別の態様では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを提供する。当該rAAVは、AAVカプシド、及び、その内部にパッケージされたベクターゲノムを含む。ある実施形態では、当該ベクターゲノムは:(a)AAV 5’逆向き末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトレベルシリンをコードするコード配列;及び、(d)AAV 3’ITR、を含む。ある実施形態では、当該rAAVベクターは、宿主細胞におけるレベルシリンの発現を指向する発現制御配列をさらに含む。さらなる実施形態では、当該レベルシリン配列は、配列番号1のタンパク質配列である。ある実施形態では、当該ベクターゲノムは、配列番号8のnt 1-4379の配列である。別の実施形態では、当該ベクターゲノムは、配列番号9のnt 1-4368の配列である。さらに別の実施形態では、同定したベクターゲノムのいずれかにおける当該LCA5コード配列を、本明細書に記載の別のLCA5コード配列と交換する。
【0011】
別の態様では、LCA患者への投与に適した水性懸濁液を提供する。ある実施形態では、当該懸濁液は、水性懸濁液、及び、約1×1010GCまたはウイルス粒子~約1×1013GCのウイルス粒子またはウイルス粒子/眼である、LCAの治療に有用な本明細書に記載した組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を含む。
【0012】
別の態様では、医薬組成物は、本明細書に具体的に説明した、医薬として許容可能な担体、希釈剤、賦形剤、及び/または、アジュバント、ならびに、核酸配列、プラスミド、ベクター、または、rAAVなどのウイルスベクターを含む。
【0013】
別の態様では、レベルシリン遺伝子(LCA5)の欠陥に起因するレーバー先天性黒内障を処置し、及び/または、LCAを有する哺乳動物対象における視覚機能を回復する方法であって、本明細書に記載したレベルシリンをコードする組換えAAVベクターを、硝子体内、網膜下、または、血管内注射を介して、それを必要とする対象に送達する、ことを含む。
【0014】
別の態様では、レベルシリン遺伝子(LCA5)の欠陥に起因するレーバー先天性黒内障の処置、及び/または、LCAを有する哺乳動物対象の視覚機能の回復における、本明細書に記載したAAVベクターの使用を提供する。この使用は、本明細書に記載したレベルシリンをコードする組換えAAVベクターを、硝子体内、網膜下、または、血管内注射を介して、それを必要とする対象に送達する、ことを含む。
【0015】
本発明のその他の態様、及び、利点は、以下の本発明の詳細な説明から自ずと明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1Aは、本明細書に記載したAAV7m8.CBA.hopt.LCA5、及び、AAV7m8.CBA.EGFPを作り出すために使用した導入遺伝子カセットを示す。図1B~1Dは、配列番号2のLCA5(Native_LCA5)のヒト核酸配列と、配列番号3のコドン最適化LCA5(Codon_optimized_LCA5)配列との整列とを提供する。図1E~1Fは、pAAV.CMV.CBA.ヒトコドン最適化レベルシリンベクターのプラスミドマップと、特徴リストとを提供する。当該核酸配列は、配列番号8で再現している。図1G~1Hは、P5でAAV7m8-hopt-LCA5を注射した眼の免疫蛍光分析を提供し、及び、P15で行った分析は、実施例1、2及び4に記載したチューブリン陽性外節の基部と共局在するレベルシリンを示す。硝子体内注射(IVT、図1G)、または、網膜下注射(SR、図1L)の後に、レベルシリンは網膜全体に分布しており、P95での光受容体は、ほぼ皆無であった。対照的に、レベルシリンは、未処置のP15、及び、P95 Lca5-/-網膜には存在しない。SR、網膜下;IVT、硝子体内;(-)未処置のLca5-/-。硝子体内注射スキーム(図1G)、及び、網膜下注射スキーム(図1H)を示す概略画を提供する。図1Iは、P20で、AAV.LCA5ベクターを網膜下に注射した、野生型マウス、及び、Lca5-/-マウスの双方におけるレベルシリンの発現を示す。
図2図2A~2Iは、PN5及びPN15で処置をしたLca5-/-マウスのコントロールの(模擬注射した)眼と比較した、AAV7m8.hopt-LCA5を注射したマウスについて、3ヶ月齢で測定した正規化した瞳孔反射振幅を示す。結果を、(A)硝子体内、及び、(B)網膜下注射の後、または、(C)未処置(-)コントロールマウスについて示す。(D)(A~C)、及び、野生型(C57B16)ポジティブ(+)コントロールマウスのサブグループの各々での動物の右眼の相対的瞳孔反射振幅(ベースライン瞳孔径の%)を、グラフで示す(E)。図2F及び2Gは、図2A~2Dに示した結果を得るために使用した試験スキームの典型である。図2H及び図2Iは、網膜下(SR、I)または硝子体内(IV、H)注射を介して、PN5対PN15で処置した、図2A~2Dに示す、実験及びコントロールマウスにおける正規化瞳孔反射振幅の比較を示す。p<0.1;**p<0.05;***p<0.01。
図3図3A~3Fは、実施例3に記載した、PN5及びPN15で処置をし、かつ、3ヶ月齢で測定したLca5-/-マウスのAAV7m8.hopt-LCA5を注射した眼と、コントロールの(模擬注射した)眼に関する水迷路検査の結果を示す。図3Aは、統計分析結果を示す表である。図3Bは、水迷路検査の典型的な結果の例示である。図3Dは、出生時にAAV7m8.LCA5ベクターを用いて、出生時に硝子体内または網膜下で処置をしたLca5-/-マウスが、PN5またはPN15で、トレーニングで初めて成功するまでの日数を示す棒グラフである。野生型マウスを、コントロールとして提供した。図3Dは、出生時にAAV7m8.LCA5ベクターを用いて硝子体内で処置をしたLca5-/-マウスが、PN5で、様々な光強度(x軸)に対して示す成功率の折れ線グラフである。図3Eは、出生時にAAV7m8.LCA5ベクターを用いて網膜下で処置をしたLca5-/-マウスが、PN5で、様々な光強度(x軸)に対して示す成功率の折れ線グラフである。図3Fは、出生時にAAV7m8.LCA5ベクターを用いて硝子体内で処置をしたLca5-/-マウスが、PN15で、様々な光強度(x軸)に対して示す成功率の折れ線グラフである。
図4】出生して(PN)5日後に、Lca5gt/gt網膜に対してAAV7m8.hopt-LCA5を送達した後の代表的な組織学の結果を提供するグラフである。このグラフは、AAV.LCA5と、模擬注射とでIVTまたはSR処置した後の外核層(ONL)での列の個数を示している。
図5図5Aは、ロドプシン(赤色)が、3ヶ月の時点に至るまで、処置した(しかし、コントロールは未処置である)光受容体に持続することを示す免疫蛍光の結果を提供する。時折認められる視細胞は、eGFPポジティブである(AAV7m8.eGFPとの同時注射で同定された注射領域)。図5B~5Dは、Lca5gt/gtのAAV7m8.hopt-LCA5で処置した桿体視細胞と錐体視細胞のマルチ電極アレイ(MEA)応答は、野生型(WT)網膜のそれと類似していることを示す。(B)応答振幅(発光前後の発火率の差異)と、発光ごとの平均トレースから測定した発光強度データ(表示なし)との対比。処置した網膜からの応答は、WT網膜からの応答の70%と同程度の高さであり、未処置の網膜での応答は、最小限のものか、ないしは、消失している。(C)1回目と2回目の強度シリーズ試験のためのパネルAの網膜からの応答振幅(1回目の試験の終盤に最も明るい露光を受ける前/間、及び、後に、各々の強度シリーズ試験の間に、刺激シリーズ強度は、暗所視から最も明るい明所視値にまで約0.5 log増大した)(D)一時的なON-(発光開始前後の発火率の差異)、持続したON-(発光開始前と消失との差異)、及び、OFF応答(発光消失の前後の差異)の1回目と2回目の強度シリーズ試験の発光強度の関数としての振幅。淡青色の網掛け部分は、WT応答の範囲(4つの網膜、MEAN±STD)を表しており、線だけのトレースは、平均WT応答振幅を示す。水平矢印は、1回目の強度シリーズ試験の終了時での、最も明るい発光への露出に起因する感度の右側への変化を示す。処置したLca5gt/gt、及び、WTの網膜は、漂白の前後で、同様の応答/強度依存性を示すが、未処置のLca5gt/gt網膜の応答は、平坦になる。線で結んだ円は、処置したLCA5gt/gtを表す。線で結んだ三角形は、コントロールLca5gt/gtを表す。
図6図6A~6Eは、未処置のLca5-/-網膜では、生涯の初期の光受容体変性の間に大量の細胞死(及び、AAV.hopt.LCA5で処置した後には、この変性の遅延)が存在することを示しており、このことは、(A)TUNELアッセイ(図6A図6B~E、3列目)及び(B)ロドプシン免疫蛍光分析で証明されている(図6B~E、1、3、及び、4列目)。
図7図7A~7Dは、AAV7m8.hopt.LCA5-処置したLca5-/-網膜には外節が存在したが、コントロールLca5-/-網膜には存在しなかったことを示す。AAV7m8.hopt.LCA5を注射した網膜の透過型電子顕微鏡評価は、3ヶ月齢のLca5-/-では、桿体視細胞と錐体視細胞の双方の光受容体の外節が、積み重なったディスクを備え、そして、繊毛が繋がっていることを示している。そのような構造は、未処置のLca5-/-網膜には存在しなかった。(A、B)PN5でAAV7m8p643(コドン最適化レベルシリン)を硝子体内に注射した後のPN80、代表的な写真;(A1-A3):12K解像度、視細胞の列、桿体視細胞(矢印の頭)、錐体視細胞(矢印)、視細胞の多くのミトコンドリア(アスタリスク)を示す貼り合わせた写真;(B)、20K解像度;(Bl)微小管の9+0構造、桿体視細胞由来のOSの膜状ディスクを示す繊毛の断面(矢印);(C)30K解像度、基底体(矢印の頭);(C1)結合繊毛の矢状断面;(D)12K解像度、ONLに視細胞は残存していない;(Dl)死滅しつつある細胞の濃縮核(矢印の頭);(D2)起伏のあるER(矢印)を含む死滅した細胞小器官の浮遊残留物。
図8】年齢相応の正常な視力の男性(青色トレース-下方の線)と同様の時間的特性を有するLCA5(赤色トレース-上方の線)を有する成人男性の一方の網膜の瞳孔光応答の結果を示す。収縮の振幅は、正常な個体と比較して、LCA5患者で減少していた。
図9】種々の網膜層の厚みの表であり、外核層(ONL)の厚みが、コントロールの網膜と比較して、処置した()ものでは、少なくとも3ヶ月間は厚さが保たれた、ことを示す。他方の網膜層(外網状層、OPL;内核層、INL、内網状層、IPL)では、そのような明確な傾向は認められなかった。各時点で、左から右へのバーは、それぞれ、ONL、OPL、INL、及び、IPLの厚みを表す。
図10】AAV7m8.hopt.LCA5を注射した後の光伝達特異的分子の位置における、光媒介変化の結果を提供する。
図11図11A~11Bは、プラスミドマップ、及び、pAAV.CMV.CBA.ヒト天然レベルシリンベクターの特徴リストを提供する。その核酸配列は、配列番号9に再現している。
図12図12A~12Fは、AAV7m8.hopt-LCA5で処置した後に、ホモ接合性ヒトLCA5 p.(Q279)iPSC-RPEで救済した繊毛表現型を示す。(A)共焦点画像は、免疫蛍光検出可能なRPEマーカー;ZO-1及びMITFと共に、成熟RPE細胞の六角形の形態を示す。位相差(PC)画像は、健常者とLCA5患者の双方に由来するRPEのiPSC-RPE培養物の構造を表示する。(B)正常視力のコントロールRPE、及び、LCA5患者由来のRPEにおける、LCA5 mRNA発現の定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)。GAPDHを、発現レベルを正規化するために使用する。(C)ウェスタンブロット分析は、未処置(「-」)、または、AAV7m8.eGFPで処置(「G」)した正常視力のコントロール細胞における内因性()レベルシリンタンパク質を示す。未処置、または、AAV7m8.GFPで処置をしてLCA5の影響を受けた細胞には、内因性レベルシリンは認められない。健常者、及び、AAV7m8.LCA5を有するLCA5保有者(「L」)の双方に由来する細胞の感染後にあっては、安定したレベルでレベルシリンが存在する。免疫蛍光分析は、正常-視力(D)、及び、LCA5由来(E)iPSC-RPEにおける、Arl13b-ポジティブ原発性絨毛の存在を示す。レベルシリンは、正常視力のコントロール細胞、及び、AAV7m8.LCA5で処置して(AAV7m8.eGFPで処置したものではない)LCA5の影響を受けた細胞に存在する。(F)正常な視力-対LCA5-iPSC-RPEにおける、細胞あたりの繊毛の数の定量分析は、LCA5-iPSC-RPE細胞を、AAV7m8.LCA5(AAV7m8.eGFPではない)で処置した後の繊毛形成の救済効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に記載した方法、及び、組成物は、レーバー先天性黒内障(LCA)の処置を必要とする対象に対して、レベルシリンタンパク質をコードするLCA5核酸配列を送達するための組成物及び方法を含む。ある実施形態では、そのような組成物は、レベルシリンコード配列のコドン最適化を伴う。より低用量の試薬を使用し得るため、製品の有効性を高め、したがって、安全性を高めることが望ましい。配列番号2に示すように、天然レベルシリンコード配列を含む組成物も、本明細書に包む。
【0018】
本明細書で使用した技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が、そして、本出願で使用した多くの用語に対する一般的な指針を当業者に付与する刊行物を参照することで、通常理解するものと同じ意味を有している。本明細書に記載した定義は、本明細書に記載の成分及び組成物の説明を明確にするために与えたものであって、特許請求した本発明の限定は意図していない。
【0019】
「レベルシリン」は、染色体6ql4のLCA5遺伝子によってコードされており、そして、光受容体の結合繊毛と、培養した哺乳動物細胞の微小管、中心小体、及び、原発性絨毛とに局在する繊毛タンパク質である。
【0020】
レベルシリンは、発達を通じて広範に発現し、そして、培養細胞の繊毛、ならびに、成熟した視細胞の結合繊毛に認められる。この結合繊毛は、細胞の生合成機構を格納する光受容体内節と、オプシン駆動視覚カスケードを含有する外節との間の狭小な構造である。この結合繊毛は、導管として機能して、鞭毛内輸送(IFT)として公知のプロセスで毛様体微小管トラックに沿って、タンパク質と小胞の双方向のやりとりを補助する。遺伝子改変したLca5マウスモデルに定量的親和性プロテオミクスを適用して、Boldt et alは、Lca5の機能喪失が、IFTを撹乱し、それにより、光受容体外節の発達に欠陥が生じ、アレスチンとオプシンとのやりとりに支障をきたす、ことを実証した。Lca5 null(Lca5gt/gt)マウスは、錐体及び桿体ERG応答を示さず、そして、19歳2ヶ月までに、外核層(ONL)に存在する(野生型マウスの網膜の隣接する細胞の8~10列と比較して)分散した核の単一の列だけが、初期の進行性の網膜変性を被る。
【0021】
LCA5の変異は、レーバー先天性黒内障(LCA)と呼ばれる遺伝性の網膜変性を引き起こす。罹患者の表現型は、眼に限定されており、失明に至る。den Hollanderが研究した6つの家族の内、5つでは、ホモ接合のナンセンスとフレームシフト変異とが認められており、そして、1つの家族では、LCA5転写産物が完全に欠如していた。レベルシリンcDNA、または、そのコドン最適化バージョンをコードする核酸は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに適合する適切なサイズのものである。例えば、図1A、及び、1E~1F、及び、図11A~11Bの配列を参照されたい。以下の実施例で説明するように、rAAVを媒介させた遺伝子増強戦略を使用すると、LCA5変異に起因する網膜変性を修正できる、ことが示されている。そのような療法は、遺伝子の野生型または最適化したコピーが、生涯の初期、例えば、小児期または出生後初期に送達する場合に特に有利である。さらに、ある実施形態で使用するこの硝子体内または網膜下投与は、標的細胞(例えば、光受容体)に遺伝子を効率的に提供する。
【0022】
レベルシリン遺伝子LCA5は、中心体または毛様体機能に関与し、マイナス末端方向の微小管輸送に関与すると考えられる697個のアミノ酸タンパク質であるレベルシリンをコードする。本明細書で使用する用語「LCA5」及び「レベルシリン」は、コーディング配列を指す場合に互換的に使用する。ヒトレベルシリンをコードする天然の核酸配列は、NCBI Reference Sequence NM_181714.3(転写変異体1)、NM_001122769.2(転写変異体2)、XM_011535504.1(転写変異体XI)、及び、XM_005248665.4(転写変異体X2)で報告されており、そして、本明細書では、それぞれ、配列番号4、5、6、及び、7として再現している。レベルシリンの天然のヒトアミノ酸配列は、本明細書では、配列番号1に再現している(NCBI Reference Sequence:NP_001116241.1、または、NP_859065.2、ならびに、UniProtKB/Swiss-Prot ID:Q86VQ0-1)。LCA5遺伝子での変異は、レーバーの先天性黒内障(LCA)と関連している。特定の実施形態では、用語「LCA5」及び「レベルシリン」は、互換的に使用する。
【0023】
レーバー先天性黒内障(LCA)は、主に網膜に影響を与える眼の障害であり、この網膜は、光と色を検出する眼の後方にある特殊な組織である。この障害を有する者は、通常、乳児期から重度の視覚障害を有する。視覚障害は安定する傾向があるが、時間の経過とともに非常に緩慢に悪化し得る。レーバー先天性黒内障は、光に対する感度の増大(羞明)、眼の不随意運動(眼振)、及び、極端な遠視(遠視)など、その他の視力の問題とも
関連している。瞳孔は、通常、瞳に入る光の量に応じて拡大及び収縮するが、光に正常に応答しなくなる。代わりに、通常よりも緩慢に拡大及び収縮するか、あるいは、光にまったく応答しなくなり得る。さらに、眼の透明な前面カバー(角膜)は、円錐形で異常に薄く、円錐角膜として知られる状態となり得る。Franceschettiの眼指徴候と呼ばれる特定の挙動は、レーバー先天性黒内障の特徴である。この徴候は、指関節または指で、眼を突く、押す、及び、擦る、ことで構成される。研究者たちは、この行動が、罹患した子供のくぼんだ目と円錐角膜に関係しているものと推測している。まれに、レーバー先天性黒内障の特徴を有する人々の発達遅延や知的障害が報告されている。しかしながら、研究者たちには、これらの人々が、実際にレーバー先天性黒内障を有するか、または、類似の徴候及び症状を伴う別の症候群を有するかどうかは不明である。少なくとも13のタイプのレーバー先天性黒内障が報告されている。これらのタイプは、遺伝的原因、視力喪失のパターン、及び、関連する眼の異常によって区別される。
【0024】
核酸配列の文脈における「パーセント(%)同一性」、「配列同一性」、「パーセント配列同一性」、または、「パーセント同一の」という用語は、対応させるために整列させた時に同じである2つの配列での残基のことを指す。配列同一性比較の長さは、ゲノムの全長、遺伝子コーディング配列の全長、または、少なくとも約500~5000個のヌクレオチドの断片に及ぶものが望ましい場合がある。しかしながら、小さな断片、例えば、少なくとも約9個のヌクレオチド、通常は、少なくとも約20~24個のヌクレオチド、少なくとも約28~32個のヌクレオチド、少なくとも約36個以上のヌクレオチドの間の同一性が望ましい場合もある。
【0025】
タンパク質、ポリペプチド、約32個のアミノ酸、約330個のアミノ酸、または、それらのペプチド断片の全長にわたるアミノ酸配列、または、対応する核酸配列コード配列の同一性パーセントは、容易に決定し得る。適切なアミノ酸断片は、少なくとも約8個のアミノ酸の長さであり、約700個のアミノ酸までとし得る。一般的に、2つの異なる配列間の「同一性」、「相同性」、または、「類似性」を指す場合、「同一性」、「相同性」、または、「類似性」は、「整列」配列に関して決定する。「整列」配列または「整列」とは、参照配列と比較して、複数の核酸配列またはタンパク質(アミノ酸)配列のことを指し、これらは、欠落または追加した塩基またはアミノ酸の修正を含むことが多い。
【0026】
同一性は、配列の整列を準備し、そして、当該技術分野で公知の、または、市販されている様々なアルゴリズム、及び/または、コンピュータープログラムを使用して決定し得る[例えば、BLAST、ExPASy;ClustalO;FASTA;例えば、Needleman-Wunschアルゴリズム、Smith-Watermanアルゴリズムを使用する]。整列は、公的に入手可能な、または、市販されている様々なMultiple Sequence Alignment Programsのいずれかを使用して実行する。アミノ酸配列について入手可能な配列アラインメントプログラムとして、例えば、「Clustal Omega」、「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」、及び、「Match-Box」プログラムがある。一般的に、これらのプログラムはいずれも、デフォルト設定で使用するが、当業者であれば、必要に応じて、これらの設定を変更することができる。あるいは、当業者であれば、参照するアルゴリズム及びプログラムが提供するものと少なくとも同一性レベルまたは整列のレベルのものを提供する、別のアルゴリズムまたはコンピュータープログラムを利用することができる。例えば、J.D. Thomson et al,Nucl.Acids.Res.,”A comprehesive comparison of multiple sequence alignments”,27(13):2682-2690(1999)を参照されたい。
【0027】
核酸配列に関して、複数の配列アラインメントプログラムも入手可能である。そのよう
なプログラムの例として「Clustal Omega」、「Clustal W」、「CAP Sequence Assembly」、「BLAST」、「MAP」、及び、「MEME」があり、それらはインターネット上のウェブサーバーを介して利用可能である。そのようなプログラムに関する他の供給源は、当業者に公知である。あるいは、Vector NTIユーティリティーも使用する。上記したプログラムに含まれるものも含め、ヌクレオチド配列同一性の測定に用い得る当該技術分野で公知のアルゴリズムも数多くある。別の例として、GCGVersion6.1のプログラムであるFasta(商標)を用いて、ポリヌクレオチド配列を比較することができる。Fasta(商標)は、クエリ配列と検索配列との間の最適な重複領域の整列とパーセント配列同一性とを提供する。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、本明細書の一部を構成するものとして援用する、GCGバージョン6.1で提供したようにして、デフォルトパラメーター(ワードサイズが6で、かつ、スコアリングマトリックス向けのNOPAM因子)を用いて、Fasta(商標)を使用して決定することができる。
【0028】
ある態様では、ヒトレベルシリンをコードするコドン最適化の、改変型核酸配列を提供する。好ましくは、当該コドン最適化レベルシリンコード配列は、全長ネイティブレベルシリンコード配列に対して、約80%未満の同一性、好ましくは、約75%以下の同一性を有する(図1B~1D、配列番号2)。ある実施形態では、当該コドン最適化レベルシリンコード配列は、配列番号2の天然レベルシリンコード配列と約74%の同一性を有する。ある実施形態では、当該コドン最適化レベルシリンコード配列は、AAV媒介送達(例えば、rAAV)後の天然レベルシリンと比較して、改善された翻訳速度を特徴とする。ある実施形態では、当該コドン最適化レベルシリンコード配列は、配列番号2の全長天然レベルシリンコード配列と、約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%以下の同一性を共有する。ある実施形態では、当該コドン最適化核酸配列は、配列番号3の変異体である。別の実施形態では、当該コドン最適化核酸配列は、配列番号3と、約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%以上の同一性を共有する配列である。ある実施形態では、当該コドン最適化核酸配列は、配列番号3である。別の実施形態では、当該核酸配列は、ヒトでの発現に最適化したコドンである。別の実施形態では、当該レベルシリンコード配列は、配列番号8のnt 1883~nt 3976である。他の実施形態では、異なるレベルシリンコーディング配列を選択する。
【0029】
コドン最適化コード領域は、様々な異なる方法でデザインすることができる。この最適化は、オンラインで利用可能な方法(例えば、GeneArt)、公開された方法、または、例えば、コドン最適化サービスを提供する会社、例えば、DNA2.0(Menlo
Park,CA)を使用して実行し得る。あるコドン最適化方法は、例えば、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、米国国際特許公開第WO2015/012924号に記載されている。また、例えば、米国特許公開第2014/0032186号、及び、米国特許公開第2006/0136184号も参照されたい。好適には、製品のためのオープンリーディングフレーム(ORF)の全長を変更する。しかしながら、幾つかの実施形態では、ORFの断片だけを改変し得る。これらの方法の1つを使用することで、あらゆる所定のポリペプチド配列に対する頻度に適用し、ポリペプチドをコードするコドン最適化コード領域の核酸断片を生成することができる。
【0030】
数多くのオプションを利用して、コドンに対する実際の変更を実行すること、または、本明細書に記載したようにデザインしたコドン最適化コード領域を合成することができる。そのような修飾または合成は、当業者に周知の標準的及び日常的な分子生物学的操作を使用して実施することができる。ある手法では、長さがそれずれ80~90個のヌクレオチドであり、かつ、所望の配列の長さにまで及ぶ一連の相補的オリゴヌクレオチド対を、標準的な方法で合成する。これらのオリゴヌクレオチド対を、アニーリングされ次第に合成し、それらは、付着末端を含有する80~90個の塩基対の二本鎖断片を形成し、例えば、当該対の各オリゴヌクレオチドを合成して、3、4、5、6、7、8、9、10、または、それ以上の個数の塩基を、当該対のその他のオリゴヌクレオチドに対して相補的な領域を超えて伸長させる。これらのオリゴヌクレオチドの各対の当該一本鎖末端は、これらのオリゴヌクレオチドの別の対の一本鎖末端とアニールするようにデザインする。これらのオリゴヌクレオチド対をアニーリングさせ、次いで、これらの二本鎖断片の約5~6個を、付着性一本鎖末端を介して一緒にアニーリングさせ、そして、それらを一緒にライゲーションし、次に、標準的な細菌クローニングベクター、例えば、Invitrogen Corporation,Carlsbad.Calif.から入手可能なTOPO(登録商標)ベクターにクローニングする。次いで、当該構築物を、標準的な方法で配列決定する。所望の配列全体が、一連のプラスミド構築物で表現できるように、一緒にライゲートした80~90個の塩基対断片の5~6個の断片、すなわち、約500個の塩基対の断片からなるこれらの構築物の幾つかを調製する。次に、これらのプラスミドの挿入物を、適切な制限酵素で切断し、そして、ライゲートをして、最終構築物を形成する。次に、最終構築物を、標準的な細菌クローニングベクターにクローニングして、配列決定をする。さらなる方法は、当業者に直ちに自明である。加えて、遺伝子合成は、容易に商業利用できる。
【0031】
「改変した」とは、本明細書に記載のレベルシリンタンパク質をコードする核酸配列を組み立て、そして、適切な遺伝要素、例えば、裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどに配置することで、そこに担持されているレベルシリン配列を宿主細胞に移す、例えば、非ウイルス送達システム(例えば、RNAをベースとしたシステム、裸のDNAなど)を生成するため、または、パッケージング宿主細胞でウイルスベクターを生成するため、及び/または、対象における宿主細胞に送達するために、移すことを意味する。ある実施形態では、当該遺伝要素は、プラスミドである。かように改変した構築物を作製するために使用する方法は、核酸操作の当業者には公知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び、合成技術が関係する。例えば、Green and Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。
【0032】
本明細書で使用する用語「宿主細胞」は、産生プラスミドから組換えAAVを作り出すパッケージング細胞株のことを指し得る。あるいは、用語「宿主細胞」は、コード配列の発現が望まれているあらゆる標的細胞を指し得る。したがって、「宿主細胞」とは、あらゆる手段、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染、トランスフェクション、リポソーム送達、膜融合法、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及び、プロトプラスト融合により細胞内に導入した外因性又は異種DNAを含む原核または真核細胞のことを指す。本明細書の特定の実施形態では、用語「宿主細胞」は、ウイルスベクターまたは組換えウイルスを作り出し、かつ、パッケージングするために用いる細胞のことを指す。本明細書のその他の態様では、用語「宿主細胞」とは、本明細書に記載の組成物のインビトロでの評価のための様々な哺乳動物種の眼細胞の培養物のことを指す。さらに他の実施形態では、用語「宿主細胞」とは、LCAについてインビボで処置した対象の眼細胞を指す、ことを意図している。
【0033】
本明細書で使用する用語「眼細胞」とは、眼内、または、眼の機能と関連するあらゆる細胞のことを指す。この用語は、桿体光受容体、錐体光受容体、及び、光感受性神経節細胞を含む視細胞、網膜色素上皮(RPE)細胞、ミュラー細胞、脈絡膜細胞、双極細胞、水平細胞、ならびに、アマクリン細胞のいずれか1つを指し得る。ある実施形態では、当該眼細胞は、視細胞である。その他の実施形態では、当該眼細胞は、錐体光受容体である。別の実施形態では、当該眼細胞は、桿体光受容体である。
【0034】
ある実施形態では、レベルシリンをコードする当該核酸配列は、それに共有結合したタグポリペプチドをコードする核酸をさらに含む。当該タグポリペプチドは、公知の「エピトープタグ」から選択し得るものであり、mycタグポリペプチド、グルタチオン-S-トランスフェラーゼタグポリペプチド、緑色蛍光タンパク質タグポリペプチド、myc-ピルビン酸キナーゼタグポリペプチド、His6タグポリペプチド、インフルエンザウイルス血球凝集素タグポリペプチド、フラグタグポリペプチド、及び、マルトース結合タンパク質タグポリペプチドなどがあるが、これらに限定されない。
【0035】
別の態様では、レベルシリンをコードする核酸配列を含む発現カセットを提供する。ある実施形態では、当該配列は、コドン最適化配列である。別の実施形態では、当該コドン最適化核酸配列は、ヒトレベルシリンをコードする配列番号3である。
【0036】
本明細書で使用する「発現カセット」とは、レベルシリンタンパク質、プロモーターのためのコード配列を含み、そして、それらのための他の調節配列を含み得る核酸分子のことを指し、そのカセットは、ウイルスベクター(例えば、ウイルス粒子)のカプシドにパッケージし得る。一般的には、ウイルスベクターを生成するためのそのような発現カセットは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルが隣接した本明細書に記載のLCA5配列、及び、本明細書に記載したような、その他の発現制御配列を含む。例えば、AAVウイルスベクターについては、これらのパッケージングシグナルは、5’逆向き末端反復配列(ITR)、及び、3’ITRである。AAVカプシドにパッケージする場合、当該発現カセットと併せて当該ITRは、本明細書では「組換えAAV(rAAV)ゲノム」または「ベクターゲノム」と称し得る。ある実施形態では、発現カセットは、レベルシリンタンパク質をコードするコドン最適化核酸配列を含む。ある実施形態では、当該カセットは、宿主細胞内でレベルシリンをコードするコドン最適化核酸配列の発現を指向する発現制御配列と作動可能に関連したコドン最適化LCA5を提供する。ある実施形態では、当該ベクターゲノムは、配列番号8のnt 1-4379の配列である。別の実施形態では、当該ベクターゲノムは、配列番号9のnt 1-4368の配列である。なおも別の実施形態では、同定したベクターゲノムのいずれかにおけるLCA5コード配列を、本明細書に記載の別のLCA5コード配列と交換する。
【0037】
別の実施形態では、AAVベクターで使用するための発現カセットを提供する。その実施形態では、当該AAV発現カセットは、少なくとも1つのAAV逆向き末端反復(ITR)配列を含む。別の実施形態では、当該発現カセットは、5’ITR配列及び3’ITR配列を含む。ある実施形態では、当該5’及び3’ITRは、レベルシリンをコードするコドン最適化核酸配列に隣接し、任意で、宿主細胞内でレベルシリンをコードするコドン最適化核酸配列の発現を指向するさらなる配列を含む。したがって、本明細書に記載したように、AAV発現カセットとは、その5’端に、5’AAV逆向き末端反復配列(ITR)、及び、その3’端に、3’AAV ITRが隣接する、上記した発現カセットを説明するものである、ことを意味する。したがって、このrAAVゲノムは、当該発現カセットを、AAVウイルス粒子、すなわち、AAV 5’及び3’ ITRにパッケージングするために必要な最小限の配列を含む。AAV ITRは、本明細書に記載したように、あらゆるAAVのITR配列から取得し得る。これらのITRは、得られた組換えA
AVで使用するカプシドと同じAAV起源のものでも、あるいは、異なるAAV起源のもの(AAV偽型を生成するために)としてもよい。ある実施形態では、AAV2由来の当該ITR配列、または、その欠失バージョン(ΔITR)を、便宜上、及び、規制当局の承認を促すために使用する。しかしながら、その他のAAV供給源由来のITRを選択し得る。当該ITRの供給源がAAV2に由来し、かつ、当該AAVカプシドが別のAAV供給源に由来する場合は、得られるベクターを、偽型と称し得る。一般的には、当該AAVベクターゲノムは、AAV 5’ITR、レベルシリンコード配列、及び、あらゆる調節配列、及び、AAV 3’ITRを含む。しかしながら、これらの要素の他の構成でも好適であり得る。ΔITRと称する5’ITRの短縮バージョンを説明しており、そこでは、D配列と端末分離部位(terminal resolution site)(trs)を欠失している。その他の実施形態では、全長AAV 5’及び3’ITRを使用する。次に、各rAAVゲノムを、産生プラスミドに導入することができる。
【0038】
本明細書で使用する用語「調節配列」、「転写制御配列」、または、「発現制御配列」は、開始配列、エンハンサー配列、及び、プロモーター配列などのDNA配列のことを指すものであって、これらは、それらと作動可能に連結しているタンパク質コード核酸配列の転写を、誘導、抑制、または、制御する。
【0039】
本明細書で使用する用語「作動可能に連結した」、または、「作動可能に関連する」とは、レベルシリンをコードする核酸配列に隣接する発現制御配列、及び/または、イントランスで、または、離間して、その転写及びその発現を制御する発現調節配列の双方のことを指す。
【0040】
ある態様では、本明細書に記載した発現カセットのいずれかを含むベクターを提供する。本明細書に記載したように、そのようなベクターを、様々な起源のプラスミドとすることができ、また、本明細書でさらに説明をする組換え複製欠損ウイルスの生成のための特定の実施形態では有用である。
【0041】
本明細書で使用する「ベクター」とは、外因性、または、異種の、または、改変した核酸導入遺伝子を挿入し得る核酸分子であり、次いで、適切な宿主細胞に導入することができる。これらのベクターは、好ましくは、1つ以上の複製起点と、組換えDNAを挿入できる1つ以上の部位を有する。これらのベクターは、ベクターを含む細胞を、ベクターを含まない細胞から選択できる手段、例えば、薬剤耐性遺伝子をコードする手段、を有していることが多い。一般的なベクターとして、プラスミド、ウイルスゲノム、及び(主に、酵母内、及び、細菌内の)「人工染色体」がある。特定のプラスミドを、本明細書に記載している。
【0042】
ある実施形態では、当該ベクターとは、その説明をした発現カセット、例えば、「裸のDNA」、「裸のプラスミドDNA」、RNA、及び、mRNAを含み、様々な組成物、及び、ナノ粒子、例えば、ミセル、リポソーム、カチオン性脂質-核酸組成物、ポリグリカン組成物、及び、その他のポリマー、脂質、及び/または、コレステロールをベースとした核酸コンジュゲート、及び、本明細書に記載したその他の構築物と連結される非ウイルスプラスミドである。例えば、本明細書の一部を構成するものとしてそれらの全内容を援用する、X.Su et al,Mol.Pharmaceutics,2011,8(3),pp 774-787;ウェブ公開:2011年3月21日;WO2013/182683、WO2010/053572、及び、WO2012/170930を参照されたい。そのような非ウイルスレベルシリンベクターは、本明細書に記載した経路で投与し得る。ウイルスベクター、または、非ウイルスベクターは、遺伝子導入、及び、遺伝子治療の用途での使用のために生理学的に許容する担体を用いて配合することができる。
【0043】
別の実施形態では、当該ベクターは、その中で説明をした発現カセットを含むウイルスベクターである。「ウイルスベクター」を、外来性または異種LCA5核酸導入遺伝子を含む複製欠損ウイルスと定義する。ある実施形態では、本明細書に記載した発現カセットは、薬剤送達またはウイルスベクターの作製のために使用するプラスミドで改変し得る。適切なウイルスベクターは、好ましくは、複製欠損性であり、眼細胞を標的とするものから選ぶ。ウイルスベクターは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、パルボウイルスなどを含むが、これらに限定されず、遺伝子療法に適したいずれのウイルスをも含み得る。しかしながら、理解を容易ならしめるために、本明細書では、アデノ随伴ウイルスを、例示的なウイルスベクターと称する。
【0044】
「複製欠損ウイルス」または「ウイルスベクター」とは、目的とする遺伝子を含む発現カセットが、ウイルスカプシドまたはエンベロープにパッケージングされており、そこでウイルスカプシドまたはエンベロープ内にパッケージングされているあらゆるウイルスゲノム配列も複製欠損性である、合成または組換えウイルス粒子のことを指し;すなわち、それらは、子孫ビリオンは産生できないが、標的細胞に感染する能力を保持している。ある実施形態では、ウイルスベクターのゲノムは、複製に必要な酵素をコードする遺伝子を含まない(ゲノムを、人工ゲノムの増幅、及び、パッケージングに必要なシグナルに挟まれた目的とする導入遺伝子のみを含む「ガットレス」になるように改変することができる)が、産生の間に、これらの遺伝子を供給し得る。したがって、複製に必要なウイルス酵素が存在する場合を除いて、子孫ビリオンによる複製及び感染は起こり得ないので、それを、遺伝子療法における使用に関して安全であるとみなす。
【0045】
別の実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを提供する。当該rAAVは、AAVカプシド、及び、その内部にパッケージされたベクターゲノムを損なう。当該ベクターゲノムは、ある実施形態では、(a)AAV 5’逆向き末端反復(ITR)配列;(b)プロモーター;(c)ヒトレベルシリンをコードするコード配列;及び、(d)AAV 3’ITRを含む。別の実施形態では、当該ベクターゲノムは、本明細書に記載の発現カセットである。ある実施形態では、当該LCA5配列は、全長レベルシリンタンパク質をコードする。ある実施形態では、当該レベルシリン配列は、配列番号1のタンパク質配列である。別の実施形態では、当該コード配列は、配列番号3、または、その変異体である。
【0046】
パルボウイルスファミリーのメンバーであるアデノ随伴ウイルス(AAV)は、4.7キロベース(kb)~6kbの一本鎖の線状DNAゲノムを有する小さな非エンベロープの正二十面体ウイルスである。公知のAAV血清型として、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9などがある。当該ITR、または、その他のAAV成分は、AAVから当業者に利用可能な技術を使用して、容易に単離または改変し得る。そのようなAAVは、学術的、商業的、または、公的な情報源(例えば、the American Type Culture Collection,Manassas,VA)から単離、改変、または、取得し得る。あるいは、これらのAAV配列は、文献、または、例えば、GenBank、PubMedなどのデータベースで利用可能な公開された配列を参照することにより、合成またはその他の適切な手段で改変することができる。AAVウイルスを、従来の分子生物学技術によって改変することで、これらの粒子を最適化して、核酸配列の細胞特異的送達、免疫原性の最小化、安定性と粒子寿命の調整、効率的な分解、核への正確な送達などを可能にする。
【0047】
AAVの断片は、様々なベクターシステム、及び、宿主細胞で容易に利用し得る。所望のAAV断片として、vp1、vp2、vp3、及び、超可変領域を含むcapタンパク質、rep78、rep68、rep52、及び、rep40を含むrepタンパク質、及び、これらのタンパク質をコードする配列がある。そのような断片は、単独で、その他
のAAV血清型配列または断片と組み合わせて、または、その他のAAVまたは非AAVウイルス配列由来の要素と組み合わせて使用し得る。本明細書で使用する人工AAV血清型として、非天然カプシドタンパク質を含むAAVがあるが、これらに限定されない。そのような人工カプシドは、本発明の新規AAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質の断片)を、別のAAV血清型(公知または新規)、同じAAV血清型の非連続部分、非AAVウイルス供給源、または、非ウイルス供給源から取得し得る異種配列と組み合わせて使用する、あらゆる適切な技術で生成し得る。人工AAV血清型は、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、または、「ヒト化」AAVカプシドとし得るが、これらに限定されない。ある実施形態では、ベクターは、本発明のAAV8 cap、及び/または、rep配列を含む。例えば、本明細書の一部を構成するものとして援用する、米国特許出願公開第US2009/02270030号を参照されたい。
【0048】
本明細書で使用する用語「AAV」又は「AAV血清型」は、自然に存在する数多くのものであり、かつ、入手可能なアデノ関連ウイルス、ならびに、人工のAAVのことを指す。ヒト又は非ヒト霊長類(NHP)から単離または改変し、十分に特徴決定をしたAAVの内、ヒトAAV2は、遺伝子転移ベクターとして開発した最初のAAVである;それは、様々な標的組織、及び、動物モデルにおける有効な遺伝子導入実験に広く利用されている。特に断りが無い限りは、本明細書に記載のAAVカプシド、ITR、及び、その他の選択したAAV成分は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV8bp、AAV7M8、及び、AAVAnc80、公知の、または、説明をしたAAVのあらゆる変異体、または、未発見のAAV、または、それらの変異体または混合物などのあらゆるAAVから容易に選択し得るが、これらに限定されない。例えば、本明細書の一部を構成するものとして援用する、WO2005/033321を参照されたい。別の実施形態では、当該AAVカプシドは、優先的に双極細胞を標的とするAAV8bpカプシドである。本明細書の一部を構成するものとして援用する、WO2014/024282を参照されたい。別の実施形態では、当該AAVカプシドは、網膜の外側への優先的送達を示したAAV7m8カプシドである。AAV7m8カプシド核酸配列は配列番号11で再現され、アミノ酸配列は配列番号12で再現される。本明細書の一部を構成するものとして援用する、Dalkara et al,In Vivo-Directed Evolution of a New Adeno-Associated Virus for Therapeutic Outer Retinal Gene Delivery from the Vitreous,Sci Transl Med 5,189ra76(2013)を参照されたい。
【0049】
本明細書で使用する「AAV7m8カプシド」とは、複数のAAV7m8 vp(可変タンパク質)タンパク質から構成する自己組織化AAVカプシドである。これらのAAV7m8 vpタンパク質は、一般的には、配列番号11の核酸配列、または、同配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%が同一であり、配列番号12のvp1アミノ酸配列をコードする配列でコードした代替スプライス変異体として発現する。これらのスプライス変異体は、配列番号12の異なる長さのタンパク質をもたらす。特定の実施形態では、「AAV7m8カプシド」は、配列番号12と99%同一であるアミノ酸配列を有するAAVを含む。
【0050】
別の実施形態では、当該rAAVカプシドは、AAV8カプシドまたはその変異体、AAV6カプシドまたはその変異体、AAV9カプシドまたはその変異体、AAV7カプシドまたはその変異体、AAV5カプシドまたはその変異体、AAV2カプシドまたはその変異体、AAV1カプシドまたはその変異体、AAV3カプシドまたはその変異体、及び、AAV4カプシドまたはその変異体から選択する。ある実施形態では、本明細書に記載のAAV7m8カプシド及び発現カセットを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
ベクターを提供し、当該発現カセットは、レベルシリンをコードする核酸配列、逆向き末端反復配列、及び、宿主細胞においてレベルシリンの発現を指向する発現制御配列を含む。
【0051】
さらなる実施形態では、本明細書に記載したLCA5構築物、及び、最適化した配列の送達のための組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを提供する。アデノ関連ウイルス(AAV)ウイルスベクターとは、標的細胞への送達のために核酸配列をパッケージしたAAVタンパク質カプシドを有するAAV DNase耐性粒子である。AAVカプシドは、60個のカプシド(cap)タンパク質サブユニット、VP1、VP2、及び、VP3で構成されており、選択したAAVに応じて、約1:1:10~1:1:20の比率で、正二十面体対称に配置される。AAVは、先に定義したAAVウイルスベクターのカプシドの供給源として選択し得る。例えば、米国公開特許出願第2007-0036760-A1号;米国公開特許出願第2009-0197338-A1号;EP1310571を参照されたい。また、WO2003/042397(AAV7、及び、その他のサルAAV)、米国特許第7790449号、及び、米国特許第7282199号(AAV8)、WO2005/033321、及び、US7,906,111(AAV9)、ならびに、WO2006/110689、及び、WO2003/042397(rh.10)、及び(Dalkara D,Byrne LC,Klimczak RR,Visel
M,Yin L,Merigan WH、et al.In vivo-directed evolution of a new adeno-associated virus for therapeutic outer retinal gene delivery from the vitreous,Sci Transl Med(2013)5(189):189ra76.doi:10.1126/scitranslmed.3005708.)(AAV7m8)も参照されたい。これらの文献のそれぞれを本明細書の一部を構成するものとして援用する。これらの文献は、AAVを作製するために選択し得るその他のAAVカプシドも記載しており、また、本明細書の一部を構成するものとして援用する。幾つかの実施形態では、ウイルスベクターでの使用のためのAAV capは、前記したAAVカプシドの1つ、または、そのコード核酸の変異誘発によって(すなわち、挿入、欠失、または、置換によって)生成することができる。幾つかの実施形態では、当該AAVカプシドは、キメラであり、前記したAAVカプシドタンパク質の2つ、または、3つ、または、4つ以上に由来するドメインを含む。幾つかの実施形態では、当該AAVカプシドは、2つ、または、3つの異なるAAV、または、組換えAAV由来のVp1、Vp2、及び、Vp3モノマーのモザイクである。幾つかの実施形態では、rAAV組成物は、前記したCapの2つ以上を含む。
【0052】
AAVに関して、本明細書で使用する用語、変異体とは、公知のAAV配列に由来するあらゆるAAV配列であって、当該アミノ酸または当該核酸配列と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%以上の配列同一性を共有するAAV配列のことを意味する。別の実施形態では、当該AAVカプシドは、説明をした、または、公知のAAVカプシド配列から最大で約10%の変動を含み得る変異体を含む。すなわち、当該AAVカプシドは、本明細書で提供する、及び/または、当該技術分野で公知のAAVカプシドと、約90%の同一性~約99.9%の同一性、約95%~約99%の同一性、または、約97%~約98%の同一性を共有する。ある実施形態では、当該AAVカプシドは、AAVカプシドと、少なくとも95%の同一性を共有する。AAVカプシドのパーセント同一性を決定する場合、当該可変タンパク質(例えば、vpl、vp2、または、vp3)のいずれかに対して比較し得る。ある実施形態では、当該AAVカプシドは、vp1、vp2、または、vp3について、AAV7m8と少なくとも95%の同一性を共有する。別の実施形態では、当該カプシドは、2013年4月26日にオンラインで公開され、本明細書の一部を構成するものとして援用する、Kay et al.targ
eting Photoreceptors via Intravitreal Delivery Using Novel, Capsid-Mutated AAV Vectors,PLoS one.2013;8(4):e62097に記載された、Y447F、Y733F、及び、T494Vの変異を有するAAV8カプシド(別名、「AAV8(C&G+T494V)」及び「rep2-cap8(Y447F+733F+T494V)」)である。
【0053】
ある実施形態では、所望の標的細胞、例えば、光受容体(例えば、桿体、及び/または、錐体)、RPE、または、その他の眼細胞に対して向性を示すAAVカプシドを利用することが望ましい。ある実施形態では、AAVカプシドは、特定の表面が露出したチロシン残基が、フェニルアラニン(F)で置換されているチロシンカプシド変異体である。そのようなAAV変異体は、例えば、本明細書の一部を構成するものとして援用する、Mowat et al,Tyrosine capsid-mutant AAV vectors for gene delivery to the canine retina from a subretinal or intravitreal approach,Gene Therapy 21,96-105(January 2014)に記載されている。
【0054】
本明細書で使用する「人工AAV」とは、自然に存在しないカプシドタンパク質を有するAAVを意味するが、これらに限定されない。そのような人工カプシドは、選択したAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質の断片)を、異なる選択したAAV、同じAAVの非連続部分、非AAVウイルス供給源、または、非ウイルス供給源から取得し得る異種配列と組み合わせて使用して、適切な方法で生成し得る。人工AAVを、偽型AAV、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、または、「ヒト化」AAVカプシドとし得るが、これらに限定されない。あるAAVのカプシドが、異種のカプシドタンパク質で置換されている偽型ベクターは、本発明において有用である。ある実施形態では、AAV2/5、及び、AAV2/8は、例示的な偽型ベクターである。
【0055】
別の実施形態では、自己相補的なAAVを使用する。「自己相補性AAV」とは、組換えAAV核酸配列が保有するコード領域が分子内二本鎖DNAテンプレートを形成するようにデザインした発現カセットを有するプラスミドまたはベクターのことを指す。感染すると、第2の鎖の細胞が媒介した合成を待つのではなく、scAAVの2つの相補的な半分が会合して、直ちに複製及び転写への準備ができた1つの二本鎖DNA(dsDNA)単位を形成する。例えば、D M McCarty et al.”Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV) vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis”,Gene Therapy,(August 2001),Vol 8,Number 16,pages 1248-1254を参照されたい。自己相補性AAVは、例えば、米国特許第6,596,535号;第7,125,717号、及び、第7,456,683号に記載されており、本明細書の一部を構成するものとして、それらの各々の全内容を援用する。
【0056】
核酸配列またはタンパク質を説明するために使用する用語「外因性」とは、当該核酸またはタンパク質が、染色体または宿主細胞内に存在する位置に自然に発生しない、ことを意味する。外因性核酸配列とは、同じ宿主細胞または対象に由来し、かつ、挿入されるが、非天然状態で、例えば、異なるコピー数、または、異なる調節エレメントの制御下で存在する配列をも指す。
【0057】
核酸配列またはタンパク質を説明するために使用する用語「異種」とは、当該核酸また
はタンパク質が、発現を行う宿主細胞または対象とは異なる生物または同じ生物の異なる種に由来する、ことを意味する。用語「異種」とは、プラスミド、発現カセット、または、ベクター内のタンパク質または核酸に関して使用する場合、当該タンパク質または核酸と、別の配列または部分配列とが、問題の当該タンパク質または核酸が、自然界では、互いに同じ関係では認められない、ことを意味する。
【0058】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載したあらゆる当該発現カセットを使用して、組換えAAVゲノムを生成する。
【0059】
ある実施形態では、本明細書に記載した発現カセットを、ウイルスベクターの生成、及び/または、宿主細胞、例えば、裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどへの送達に有用な適切な遺伝要素(ベクター)に改変し、そこに担持させたLCA5配列を輸送する。当該選択したベクターは、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及び、プロトプラスト融合などの任意の適切な方法で送達し得る。かような構築物を作製するために使用する方法は、核酸操作の当業者には公知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び、合成技術が関係する。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NYを参照されたい。
【0060】
発現カセット、または、rAAVゲノム、または、産生プラスミドを、ビリオンにパッケージングするために、ITRは、発現カセットと同じ構築物でのインシスで必要な唯一のAAV成分である。ある実施形態では、複製(rep)、及び/または、カプシド(cap)のための当該コード配列は、当該AAVゲノムから除去され、そして、当該AAVベクターの作製のために、イントランスで、または、パッケージング細胞株で供給を受ける。
【0061】
対象への送達に適したAAVウイルスベクターを作製及び単離する方法は、当該技術分野において公知である。例えば、米国特許第7790449号;米国特許第7282199号;WO2003/042397;WO2005/033321、WO2006/110689、及び、米国7588772B2を参照されたい。ある系では、ITRが隣接した導入遺伝子をコードする構築物、及び、repとcapをコードする構築物(複数可)で、プロデューサー細胞株を、一時的にトランスフェクションする。第2の系では、repとcapとを安定して供給するパッケージング細胞株を、ITRが隣接した導入遺伝子をコードする構築物で、一過的にトランスフェクションする。これらの各系では、混入ウイルスからrAAVの分離を必要とするヘルパーアデノウイルスまたはヘルペスウイルスの感染に応答して、AAVビリオンを産生する。最近では、当該AAVの回収にヘルパーウイルスの感染を必要としない系が開発された-必要とされるヘルパー機能(すなわち、アデノウイルスE1、E2a、VA、及び、E4、または、ヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52、及び、UL29、ならびに、ヘルペスウイルスポリメラーゼ)も、当該系では、イントランスで供給する。これらの新しい系では、必要とするヘルパー機能をコードする構築物を有する細胞の一過性トランスフェクションによって、当該ヘルパー機能を供給することができ、あるいは、当該ヘルパー機能をコードする遺伝子を安定して含むように細胞を改変することができ、その発現は、転写レベルまたは転写後レベルで制御し得る。
【0062】
用語「単離した」とは、材料が、その当初の環境(例えば、それが自然に存在するものであれば、その自然環境)から脱した、ことを意味する。例えば、生存している動物に存在する天然のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離したものではないが、自然界で
共存する材料の一部または全部から分離した同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、その後、自然界に戻したとしても単離したことになる。そのようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部とすることができ、及び/または、そのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、組成物の一部となるが、それでもなおも、そのようなベクターまたは組成物は、その自然環境の一部でない点で単離したものとなる。
【0063】
さらに別の系では、ITR、及び、rep/cap遺伝子に隣接した発現カセットを、バキュロウイルスをベースにしたベクターを用いた感染で、昆虫細胞に導入する。これらの生産システムについての総説は、一般的に、例えば、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、Zhang et al.,2009,”Adenovirus-adeno-associated virus hybrid for large-scale recombinant adeno-associated virus production,”Human Gene Therapy 20:922-929を参照されたい。これらの、及び、その他のAAV生産システムを作成、及び、使用する方法は、以下の米国特許にも記載されており、本明細書の一部を構成するものとして、それらの各々の全内容を援用する。5,139,941;5,741,683;6,057,152;6,204,059;6,268,213;6,491,907;6,660,514;6,951,753;7,094,604;7,172,893;7,201,898;7,229,823;及び、7,439,065。一般的には、例えば、本明細書の一部を構成するものとして、それらの各々の全内容を援用する、Grieger & Samulski,2005,“Adeno-associated virus as a gene therapy vector:Vector development,production and clinical applications,”Adv.Biochem.Engin/Biotechnol.99:119-145;Buning et al.,2008,“Recent developments in adeno-associated virus vector technology,”J.Gene Med.10:717-733、及び、以下に列挙した文献を参照されたい。
【0064】
本発明のあらゆる実施形態を構築するために使用した方法は、核酸操作の当業者には公知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び、合成技術が関係する。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold
Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。同様に、rAAVビリオンを生成する方法は周知であり、また、適切な方法の選択は、本発明を限定するものではない。例えば、K.Fisher et al,(1993)J. Virol.,70:520-532、及び、米国特許第5,478,745号を参照されたい。
【0065】
「プラスミド」は、一般的に、本明細書では、当業者に周知の標準的な命名規則に従って、小文字のpと、その前、及び/または、後の、大文字、及び/または、数字で表記される。本発明にしたがって使用することができる数多くのプラスミド、ならびに、その他のクローニング、及び、発現ベクターは、当業者に周知であり、また、容易に入手可能である。さらに、当業者は、本発明での使用に適したその他のプラスミドを、幾つでも容易に構築することができる。本発明におけるそのようなプラスミド、ならびに、その他のベクターの性質、構築、及び、使用は、本開示から当業者に自明である。
【0066】
ある実施形態では、当該産生プラスミドは、本明細書に記載されているものまたは本明細書の一部を構成するものとして援用する、WO2012/158757に記載されているものである。rAAVベクターの製造に使用するための様々なプラスミドが当技術分野で公知であり、また、本明細書において有用である。当該産生プラスミドを、AAVキャ
ップ、及び/または、repタンパク質を発現する宿主細胞で培養する。当該宿主細胞では、各rAAVゲノムを、救済し、そして、カプシドタンパク質、または、エンベロープタンパク質にパッケージングして、感染性ウイルス粒子を形成する。
【0067】
ある態様では、上記した発現カセットを含む産生プラスミドを提供する。ある実施形態では、当該産生プラスミドは、配列番号8、及び、図1E~1Fに示すものであり、p643と称されている。このプラスミドを、rAAV-ヒトコドン最適化レベルシリンベクターの生成の例で使用している。そのようなプラスミドは、5’AAV ITR配列;選択したプロモーター;ポリA配列;及び、3’ITRを含むプラスミドであり;加えて、それは、ラムダなどのスタッファー配列も含む。さらなる実施形態では、当該スタッファー配列は、当該rAAVベクターゲノムを、約3キロベース(kb)~約6kb、約4.7kb~約6kb、約3kb~約5.5kb、または、約4.7kb~5.5kbのサイズで保持する。ある実施形態では、非コード化ラムダスタッファー領域は、ベクターバックボーンに含まれる。レベルシリンをコードする配列を含むp643の例は、配列番号8に記載してある。別の実施形態では、当該産生プラスミドは、図11A~11B、及び、配列番号9に記載のものである。別の実施形態では、当該産生プラスミドを、最適化したベクタープラスミド産生効率のために修正を行う。そのような修正として、その他の中性配列の追加、または、ラムダスタッファー配列の一部(複数可)または全部の欠失があり、当該ベクタープラスミドのスーパーコイルのレベルを調節する。本明細書では、そのような修正を企図している。その他の実施形態では、ターミネーター、及び、その他の配列を、当該プラスミドに取り込ませる。
【0068】
特定の実施形態では、当該rAAV発現カセット、当該ベクター(rAAVベクターなど)、当該ウイルス(rAAVなど)、当該産生プラスミドは、AAV逆向き末端反復配列、レベルシリンをコードするコドン最適化核酸配列、及び、宿主細胞におけるコードしたタンパク質の発現を指向する発現制御配列を含む。その他の実施形態では、当該rAAV発現カセット、当該ウイルス、当該ベクター(rAAVベクターなど)、当該産生プラスミドは、イントロン、コザック配列、ポリA、転写後調節エレメントなどの内の1つ以上をさらに含む。ある実施形態では、当該転写後調節因子は、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節因子(WPRE)である。
【0069】
当該発現カセット、ベクター、及び、プラスミドは、例えば、本明細書に記載したコドン最適化を含む当該技術分野で公知の方法を使用して、特定の種に関して最適化し得るその他の成分を含む。当該カセット、ベクター、プラスミド、及び、ウイルス、または、本明細書に記載したその他の組成物の成分は、発現制御配列の一部として、プロモーター配列を含む。別の態様では、当該プロモーターは、細胞特異的である。用語「細胞特異的」とは、組換えベクターのために選択した特定のプロモーターが、特定の眼細胞型では、最適化レベルシリンコード配列の発現を指向することができる、ことを意味する。ある実施形態では、当該プロモーターは、視細胞における導入遺伝子の発現に関して特異的である。別の実施形態では、当該プロモーターは、桿体及び錐体における発現に関して特異的である。別の実施形態では、当該プロモーターは、桿体における発現に関して特異的である。別の実施形態では、当該プロモーターは、錐体における発現に関して特異的である。ある実施形態では、当該光受容体特異的プロモーターは、ヒトロドプシンキナーゼプロモーターである。当該ロドプシンキナーゼプロモーターは、桿体及び錐体の双方で活性がある、ことが示された。例えば、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、Sun et al,Gene Therapy with a Promoter Targeting Both Rods and Cones Rescues Retinal Degeneration Caused by AIPL1 Mutations,Gene Ther.2010 January;17(1):117-131を参照されたい。ある実施形態では、当該プロモーターは、1つ以上の制限部位を加え
る修正をして、クローニングを促す。
【0070】
別の実施形態では、当該プロモーターは、ヒトロドプシンプロモーターである。ある実施形態では、当該プロモーターは、クローニングのために、末端に制限を与える修正をする。例えば、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、Nathans and Hogness,Isolation and nucleotide sequence of the
gene encoding human rhodopsin,PNAS,81:4851-5(August 1984)を参照されたい。別の実施形態では、当該プロモーターは、ヒトロドプシンプロモーターの一部または断片である。別の実施形態では、当該プロモーターは、ヒトロドプシンプロモーターの変異体である。
【0071】
その他の例示的なプロモーターとして、ヒトG-タンパク質共役受容体タンパク質キナーゼ1(GRK1)プロモーター(Genbank受託番号AY327580)がある。別の実施形態では、当該プロモーターは、GRK1プロモーターの292ntの断片(位置1793~2087)である(本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、Beltran et al,Gene Therapy 2010 17:1162-74を参照されたい)。別の好ましい実施形態では、当該プロモーターは、ヒト光受容体間レチノイド-結合タンパク質近位(IRBP)プロモーターである。ある実施形態では、当該プロモーターは、hIRBPプロモーターの235ntの断片である。ある実施形態では、当該プロモーターは、RPGR近位プロモーターである(本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、Shu et al,IOVS,May 2102)。本発明において有用なその他のプロモーターとして、桿体オプシンプロモーター、赤色-緑色オプシンプロモーター、青色オプシンプロモーター、cGMP-β-ホスホジエステラーゼプロモーター(Qgueta et al,IOVS,Invest
Ophthalmol Vis Sci.2000 Dec;41(13):4059-63)、マウスオプシンプロモーター(前出のBeltran et al 2010)、ロドプシンプロモーター(Mussolino et al,Gene Ther,July 2011,18(7):637-45);錐体トランスデューシンのアルファ-サブユニット(Morrissey et al,BMC Dev,Biol,Jan
2011,11:3);ベータホスホジエステラーゼ(PDE)プロモーター;網膜色素変性症(RP1)プロモーター(Nicord et al,J.Gene Med,Dec 2007,9(12):1015-23);NXNL2/NXNL1プロモーター(Lambard et al,PLoS One,Oct.2010,5(10):el3025)、RPE65プロモーター;網膜変性スロー/ペリフェリン2(Rds/perph2)プロモーター(Cai et al,Exp Eye Res.2010
Aug;91(2):186-94);及び、VMD2プロモーター(Kachi et al,Human Gene Therapy,2009(20:31-9))があるが、これらに限定されない。本明細書の一部を構成するものとして、これらの文献の各々の全内容を援用する。別の実施形態では、当該プロモーターを、ヒトヒトEF1αプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼ、光受容体間結合タンパク質(IRBP)、錐体オプシンプロモーター(赤色-緑色、青色)、赤色-緑色錐体遺伝子座制御領域を含む錐体オプシン上流配列、錐体形質導入、及び、転写因子プロモーター(神経網膜ロイシンジッパー(Nrl)、及び、光受容体特異的核受容体Nr2e3、bZIP)から選択する。
【0072】
別の実施形態では、当該プロモーターは、遍在性または構成的プロモーターである。適切なプロモーターの例として、図1E~1Fに示す配列などのサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー要素を有するハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。別の実施形態では、当該プロモーターは、CB7プロモーターである。その
他の好適なプロモーターとして、ヒトβ-アクチンプロモーター、ヒト伸長因子-1αプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、サルウイルス40プロモーター、及び、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーターがある。例えば、Damdindorj et al,(August 2014)A Comparative Analysis of Constitutive Promoters Located in Adeno-Associated Viral Vectors.PLoS ONE 9(8):e106472を参照されたい。さらに他の好適なプロモーターとして、ウイルスプロモーター、構成的プロモーター、調節可能プロモーターがある[例えば、WO2011/126808、及び、WO2013/04943を参照されたい]。あるいは、生理学的合図に応答するプロモーターを、本明細書に記載した発現カセット、rAAVゲノム、ベクター、プラスミド、及び、ウイルスで利用し得る。ある実施形態では、AAVベクターが大きさの制限を受けるが故に、当該プロモーターは、1000bp未満の小さなサイズである。別の実施形態では、当該プロモーターは、400bp未満である。その他のプロモーターは、当業者が選択し得る。
【0073】
さらなる実施形態では、当該プロモーターは、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、及び、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、桿体オプシンプロモーター、赤色-緑色オプシンプロモーター、青色オプシンプロモーター、光受容体間結合タンパク質(IRBP)プロモーター、及び、cGMP-β-ホスホジエステラーゼプロモーター、ファージラムダ(PL)プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、テトラサイクリン制御トランス活性化因子応答プロモーター(tet)システム、長末端反復(LTR)プロモーター、例えば、RSV LTR、MoMLV LTR、BIV LTR、または、HIV LTRなど、モロニーマウス肉腫ウイルスのU3領域プロモーター、グランザイムAプロモーター、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(複数可)、CD34プロモーター、CD8プロモーター、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、B19パルボウイルスプロモーター、PGKプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、熱ショックタンパク質(HSP)プロモーター、例えば、HSP65及びHSP70プロモーターなど、免疫グロブリンプロモーター、MMTVプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、lacプロモーター、CaMV 35Sプロモーター、ノパリンシンテターゼプロモーター、MNDプロモーター、または、MNCプロモーターから選択する。これらのプロモーター配列は、当業者に公知であるか、または、文献またはデータベース、例えば、GenBank、PubMedなどから公的に入手可能である。
【0074】
別の実施形態では、当該プロモーターは、誘導可能なプロモーターである。当該誘導可能なプロモーターは、ラパマイシン/ラパログプロモーター、エクジソンプロモーター、エストロゲン-応答性プロモーター、及び、テトラサイクリン-応答性プロモーター、または、ヘテロダイマーリプレッサースイッチなどの公知のプロモーターから選択し得る。本明細書の一部を構成するものとして双方の全内容を援用する、Sochor et al,An Autogenously Regulated Expression System for Gene Therapeutic Ocular Applications.Scientific Reports.2015 Nov 24;5:17105、及び、Daber R,Lewis M.,A novel molecular switch.J Mol Biol.2009 Aug 28;391(4):661-70,Epub 2009 Jun 21を参照されたい。
【0075】
さらなる実施形態では、当該プロモーターは、配列番号8のnt 546~nt 283までの核酸配列を有するニワトリベータ-アクチンプロモーターである。
【0076】
その他の実施形態では、本明細書に記載した発現カセット、ベクター、プラスミド、及
び、ウイルスは、その他の適切な転写開始、終止、エンハンサー配列、効率的なRNAプロセシングシグナル、例えば、スプライシング、及び、ポリアデニル化(ポリA)シグナルなど;TATA配列;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);イントロン;タンパク質安定性を高める配列;及び、必要に応じて、コードした産物の分泌を高める配列を含む。発現カセット、または、ベクターは、本明細書に説明した要素を何も含まず、あるいは、それらの1つ以上を含み得る。
【0077】
適切なポリA配列の例として、例えば、合成ポリA、または、ウシ成長ホルモン(bGH)、ヒト成長ホルモン(hGH)、SV40、ウサギβ-グロビン(RGB)、または、修飾RGB(mRGB)がある。さらなる実施形態では、当該ポリAは、配列番号8のnt 3993~nt 4200までの核酸配列を有する。
【0078】
適切なエンハンサーの例として、例えば、特に、CMVエンハンサー、RSVエンハンサー、アルファフェトプロテインエンハンサー、TTR最小プロモーター/エンハンサー、LSP(TH-結合グロブリンプロモーター/アルファ1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー)、APBエンハンサー、ABPSエンハンサー、アルファmic/bikエンハンサー、TTRエンハンサー、en34、ApoEがある。ある実施形態では、当該エンハンサーは、配列番号8のnt 241~nt 544までの核酸配列を有する。
【0079】
ある実施形態では、レベルシリンコーディング配列の上流にコザック配列を置いて、正しい開始コドンからの翻訳を促す。別の実施形態では、CBAエクソン1、及び、イントロンを、発現カセットに取り入れる。ある実施形態では、レベルシリンコード配列を、ハイブリッドニワトリβアクチン(CBA)プロモーターの制御下に置く。このプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサー、近位ニワトリβアクチンプロモーター、及び、イントロン1配列が隣接するCBAエクソン1から構成されている。
【0080】
別の実施形態では、当該イントロンは、CBA、ヒトベータグロビン、IVS2、SV40、bGH、アルファ-グロブリン、ベータ-グロブリン、コラーゲン、オボアルブミン、p53、または、それらの断片から選択する。
【0081】
ある実施形態では、当該発現カセット、当該ベクター、当該プラスミド、及び、当該ウイルスは、5’ITR、ニワトリベータ-アクチン(CBA)プロモーター、CMVエンハンサー、CBAエクソン1、及び、イントロン、ヒトコドン最適化レベルシリン配列、bGHポリA、及び、3’ITRを含む。さらなる実施形態では、当該発現カセットは、配列番号8のnt 1~4379を含む。さらに別の実施形態では、当該5’ITRは、配列番号8のnt 1~nt 130までの核酸配列を有し、また、当該3’ITRは、配列番号8のnt 4250~nt 4379までの核酸配列を有する。さらなる実施形態では、当該CBAエクソン1、及び、イントロンは、配列番号8のnt 824~nt
1795までの核酸配列を有する。さらなる実施形態では、当該産生プラスミドは、配列番号8の配列を有し、図1E~1Fにも示している。さらなる実施形態では、当該産生プラスミドは、配列番号9の配列を有し、図1A~11Bにも示している。
【0082】
別の態様では、レベルシリン遺伝子の欠損に起因するレーバー先天性黒内障を処置し、及び/または、LCAを有する対象の視覚機能を回復する方法は、本明細書に記載した通り、それを必要とする対象に対して、レベルシリンをコードするベクター(rAAVなど)を送達することを含む。ある実施形態では、LCAを有する対象を、本明細書に記載のrAAVで処置する方法を提供する。
【0083】
本方法で使用する「投与する」とは、LCAであると特徴決定した標的選択細胞に対して組成物を送達する、ことを意味する。ある実施形態では、当該方法は、網膜下注射で、当該組成物を、RPE、視細胞、または、その他の眼細胞に送達することを含む。別の実施形態では、当該対象に対して硝子体内注射をする。別の実施形態では、当該対象に対して網膜下注射をする。さらに別の方法では、眼瞼静脈を介した注射などの血管内注射を使用し得る。本開示に接した当業者であれば、さらにその他の投与方法を選択し得る。
【0084】
「投与する」または「投与の経路」とは、本明細書に記載の組成物を、医薬担体または賦形剤を使用して、または、使用せずに、対象へ送達することである。必要に応じて、投与経路は組み合わせ得る。幾つかの実施形態では、当該投与を、定期的に繰り返す。本明細書に記載の医薬組成物は、あらゆる適切な経路、または、異なる経路の組み合わせによって、それを必要とする対象へ送達するようにデザインしている。幾つかの実施形態では、眼への直接送達(任意に、眼内送達、網膜下注射、網膜内注射、硝子体内、局所を介して)、または、全身経路、例えば、血管内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、及び、その他の非経口投与経路を介した送達を使用する。本明細書に記載した核酸分子、発現カセット、及び/または、ベクターを、単一の組成物、または、複数の組成物で送達し得る。任意に、2つ以上の異なるAAV、または、複数のウイルスを送達し得る[例えば、WO20 2011/126808、及び、WO2013/049493を参照されたい]。別の実施形態では、複数のウイルスは、単独で、または、タンパク質と組み合わせて、異なる複製欠損ウイルス(例えば、AAV、及び、アデノウイルス)を含み得る。
【0085】
本明細書では、医薬組成物も提供する。本明細書に記載の医薬組成物は、あらゆる適切な経路、または、異なる経路の組み合わせによって、それを必要とする対象への送達のためにデザインする。これらの送達手段は、本明細書に記載のAAV組成物(複数可)を含有する懸濁液の直接全身送達を回避するようにデザインする。適切には、こうすることは、全身投与と比較して、用量を減らし、毒性を小さくし、及び/または、AAV及び/または導入遺伝子産物に対する望ましくない免疫応答を抑制するという利点を有し得る。
【0086】
さらに他の態様では、これらの核酸配列、ベクター、発現カセット、及び、rAAVウイルスベクターは、医薬組成物において有用であり、同組成物は、医薬として許容可能な担体、賦形剤、緩衝剤、希釈剤、界面活性剤、防腐剤、及び/または、アジュバントなども含む。そのような医薬組成物は、そのような組換え改変をしたAAVまたは人工AAVによる送達によって、最適化レベルシリンを宿主細胞内で発現させるために使用する。
【0087】
核酸配列、ベクター、発現カセット、及び、rAAVウイルスベクターを含むこれらの医薬組成物を調製するために、配列、または、ベクター、または、ウイルスベクターは、好ましくは、通常の方法によって、混入に関して評価され、次いで、眼への投与に適した医薬組成物へと配合する。そのような製剤は、医薬的、及び/または、生理学的に許容可能なビヒクル、または、担体、特に、pHを適切な生理学的レベルに保つための緩衝生理食塩水、または、その他の緩衝剤、例えば、HEPESなどの眼への投与に適したもの、ならびに、任意に、その他の医薬品、薬剤、安定剤、緩衝剤、担体、添加剤、希釈剤、界面活性剤、または賦形剤などの使用を含む。注射の場合、一般的には、担体は液体である。例示的な生理学的に許容可能な担体として、発熱物質を含まない滅菌水、及び、発熱物質を含まない滅菌リン酸塩緩衝生理食塩水がある。様々なそのような公知の担体を、本明細書の一部を構成するものとして援用する米国特許公開第7,629,322号で提供している。ある実施形態では、当該担体は、等張塩化ナトリウム溶液である。別の態様では、当該担体は、平衡塩溶液である。ある実施形態では、当該担体は、tweenを含む。ウイルスを長期間保存する場合、グリセロールまたはTween20の存在下で、それを凍結し得る。
【0088】
特定の実施形態では、ヒト患者への投与のために、当該rAAVを、生理食塩水、界面活性剤、及び、生理学的に適合する塩、または、それら塩の混合物を含む水溶液に適切に懸濁する。適切には、当該製剤は、生理学的に許容可能なpH、例えば、pH6~9、または、pH6.5~7.5、pH7.0~7.7、または、pH7.2~7.8の範囲に調整する。脳脊髄液のpHは、約7.28~約7.32であるので、髄腔内送達には、この範囲内のpHが望ましく;一方で、硝子体内または網膜下送達の場合、6.8~約7.2のpHが望ましい場合がある。しかしながら、最も広範囲でのその他のpH、及び、これらの部分範囲は、その他の送達経路のために選択し得る。
【0089】
適切な界面活性剤、または、界面活性剤の組み合わせは、非毒性の非イオン性界面活性剤から選択し得る。ある実施形態では、一級ヒドロキシル基を末端に有する二官能性ブロックコポリマー界面活性剤、例えば、中性のpHを示し、平均分子量が8400である、Pluronic(登録商標)F68[BASF]、別名、Poloxamer 188などを選択する。その他の界面活性剤、及び、その他のPoloxamersは、すなわち、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖が隣接するポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中心疎水性鎖で構成された非イオン性トリブロックコポリマー、SOLUTOL HS 15(マクロゴール-15ヒドロキシステアレート)、LABRASOL(ポリオキシカプリルグリセリド)、ポリオキシ10オレイルエーテル、TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノール、及び、ポリエチレングリコールを選択し得る。ある実施形態では、当該製剤は、ポロキサマーを含む。これらの共重合体は、一般に、「P」(ポロキサマーの場合)の後に3桁の数字が続き;最初の2桁×100は、ポリオキシプロピレンコアのおおよその分子量を示し、そして、最後の桁×10は、ポリオキシエチレン含有率を示す。ある実施形態では、Poloxamer 188を選択する。当該界面活性剤は、当該懸濁液の約0.0005%~約0.001%までの量で存在し得る。
【0090】
一例では、当該製剤は、例えば、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、デキストロース、硫酸マグネシウム(例えば、硫酸マグネシウム-7H2O)、塩化カリウム、塩化カルシウム(例えば、塩化カルシウム-2H2O)、二塩基性リン酸ナトリウム、及び、それらの混合物の1つ以上を含んだ水溶液を含む緩衝生理食塩水を含み得る。適切には、髄腔内送達については、浸透圧は、脳脊髄液に適合する範囲内(例えば、約275~約290)とする;例えば、emedicine.medscape.com/article/2093316-overviewを参照されたい。任意に、髄腔内送達については、市販の希釈剤を懸濁剤として、または、別の懸濁剤と、その他の任意の賦形剤とを組み合わせて使用し得る。例えば、Elliotts B(登録商標)溶液[Lukare Medical]を参照されたい。その他の実施形態では、当該製剤は、1つ以上の透過促進剤を含み得る。適切な透過促進剤の例として、例えば、マンニトール、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウレルエーテル、または、EDTAを含み得る。
【0091】
別の実施形態では、当該組成物は、担体、希釈剤、賦形剤、及び/または、アジュバントを含む。適切な担体は、トランスファーウイルスに起因する適応症を考慮して、当業者は容易に選択し得る。例えば、ある適切な担体として、生理食塩水があり、このものは、様々な緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)とともに製剤化し得る。その他の例示的な担体として、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、落花生油、ゴマ油、及び、水がある。当該緩衝液/担体には、当該rAAVが、注入管の閉塞を防ぐ一方で、インビボでのrAAV結合活性を妨げない成分を含む必要がある。
【0092】
任意に、本発明の組成物は、rAAV及び担体(複数可)に加えて、保存剤または化学安定剤などのその他の従来の医薬成分を含み得る。適切な例示的な防腐剤として、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、及び、パラクロロフェノールがある。適切な化学安定剤として、ゼラチン及びアルブミンがある。
【0093】
本発明の組成物は、上記で定義したような医薬として許容可能な担体を含み得る。適切には、本明細書に記載した組成物は、医薬として適切な担体に懸濁する、及び/または、注射、浸透圧ポンプ、髄腔内カテーテルを介して対象に送達するために、または、別のデバイスまたは経路で送達するためにデザインした適切な賦形剤と混合した、有効量の1つ以上のAAVを含む。ある例では、当該組成物は、硝子体内送達用に製剤化する。ある例では、当該組成物は、網膜下送達用に製剤化する。
【0094】
ある例示的な特定の実施形態では、当該組成物での当該担体または賦形剤は、180mM NaCl、10mM NaPi、pH7.3と、0.0001%~0.01%Pluronic F68(PF68)を含む。当該緩衝剤の生理食塩水成分の正確な組成は、160mM~180mM NaClの範囲である。任意に、具体的に説明した緩衝剤の代わりに、異なるpH緩衝剤(潜在的には、HEPES、重炭酸ナトリウム、TRIS)を使用する。さらに、0.9%NaClを含む緩衝剤が有用である。
【0095】
AAVウイルスベクターの場合、ゲノムコピー(「GC」)、ベクターゲノム(「VG」)、または、ウイルス粒子の定量は、製剤または懸濁液に含まれる用量の尺度として使用し得る。当該技術分野で公知のあらゆる方法を使用して、本発明の複製欠損ウイルス組成物のゲノムコピー(GC)数を決定することができる。AAV GC数の滴定を行う方法の一例は、次の通りである:まず、精製したAAVベクター試料をDNaseで処理して、カプシド化していないAAVゲノムDNA、または、混入があるプラスミドDNAを、生産プロセスから排除する。次に、DNase耐性粒子を熱処理して、カプシドからゲノムを放出する。次いで、放出したゲノムを、ウイルスゲノムの特定の領域(通常はポリAシグナル)を標的とするプライマー/プローブセットを使用して、リアルタイムPCRで定量する。別の方法では、最適化レベルシリンコード配列をコードする核酸配列を保有する組換えアデノ随伴ウイルスの有効量を、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、S.K. McLaughlin et al,1988 J. Virol.,62:1963に説明されているようにして、測定をする。
【0096】
本明細書で使用する用語「用量」とは、処置の過程で対象に送達する総用量、または、単一単位(または、複数単位、または、分割用量)投与で送達する量のことを指す、ことができる。当該医薬ウイルス組成物は、本明細書に記載のレベルシリンをコードするコドン最適化核酸配列を保有する複製欠損ウイルスの量を含む投与単位で製剤化することができ、同量は、約1.0×10GC~約1.0×1015GC/用量の範囲であり、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。ある実施形態では、当該組成物を、少なくとも1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、または、9×10GC/用量を含むように製剤化し、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。別の実施形態では、当該組成物を、少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、または、9×1010GC/用量を含むように製剤化し、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。別の実施形態では、当該組成物を、少なくとも1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、または、9×1011GC/用量を含むように製剤化し、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。別の実施形態
では、当該組成物を、少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、または、9×1012GC/用量を含むように製剤化し、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。別の実施形態では、当該組成物を、少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、または、9×1013GC/用量を含むように製剤化し、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。別の実施形態では、当該組成物を、少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、または、9×1014GC/用量を含むように製剤化し、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。別の実施形態では、当該組成物を、少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015、または、9×1015GC/用量を含むように製剤化し、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。ある実施形態では、ヒトへの適用について、当該用量は、1×1010~約1×1012GC/用量であり、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。すべての用量は、例えば、本明細書の一部を構成するものとして援用する、M.Lock et al,Hum Gene Ther Methods 2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131に記載されているような、oqPCR、または、デジタル液滴PCR(ddPCR)による測定などのあらゆる公知の方法で測定し得る。
【0097】
ある実施形態では、LCA患者への投与に適した水性懸濁液を提供する。当該懸濁液は、水性懸濁液と、約1×1010GCまたはウイルス粒子~約1×1012GCまたはウイルス粒子/眼である、LCAの治療薬として有用な本明細書に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)とを含む。
【0098】
本発明の医薬組成物を、複数の「ブースター」投与量で投与することも望ましい場合がある。例えば、眼の標的細胞内の導入遺伝子の持続期間に応じて、6ヶ月間隔で、または、最初の投与の後に毎年、ブースター投与量を送達し得る。rAAVベクターの投与によってAAV中和抗体が生成されないという事実は、さらなるブースター投与を可能にする。
【0099】
そのようなブースター用量、及び、その必要性は、例えば、以下の実施例に記載した、網膜及び視覚機能検査ならびに視覚行動検査を使用して、主治医はモニターすることができる。その他の同様の検査を使用して、処置した対象の病態を経時的に判断し得る。適切な検査の選択は、主治医が行い得る。あるいは、本発明の方法は、大容量の単一または多重感染のウイルス含有溶液を注射して、野生型網膜に認められるレベルに近い視覚機能のレベルを可能にする。
【0100】
別の実施形態では、レベルシリンをコードするコドン最適化核酸配列を保有する本明細書に記載のベクター、ウイルス、及び、複製欠損ウイルスの量は、約1.0×10VG/眼~約1.0×1015VG/眼の範囲であり、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。ある実施形態では、当該量は、少なくとも1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、または9×l0VG/眼であり、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。ある実施形態では、当該量は、少なくとも1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、または9×l0VG/眼であり、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。ある実施形態では、当該量は、少なくとも1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、または9×l0VG/眼であり、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。ある実施形態では、当該量は、少なくとも1×1010、2×1010
、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、または9×l010VG/眼であり、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。ある実施形態では、当該量は、少なくとも1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、または9×l011VG/眼であり、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。ある実施形態では、当該量は、少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、または9×l012VG/眼であり、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。ある実施形態では、当該量は、少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、または9×l013VG/眼であり、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。ある実施形態では、当該量は、少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、または9×l014VG/眼であり、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。ある実施形態では、当該量は、少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015、または9×l015GC/眼であり、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。ある実施形態では、当該方法は、1×10~約1×1013VG/眼/用量の用量範囲を含み、その範囲内のすべての整数または小数の数値を含む。別の実施形態では、当該方法は、水性懸濁液でのベクターの送達を含む。別の実施形態では、当該方法は、約、または、少なくとも150マイクロリットルの容量にて、1×10~1×1013GCの用量で、本明細書に記載のrAAVを投与することを含み、それにより、当該対象の視覚機能を回復する。すべての用量は、例えば、本明細書の一部を構成するものとして援用する、M.Lock et al,Hum Gene Ther Methods 2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131に記載されているような、oqPCR、または、デジタル液滴PCR(ddPCR)による測定などのあらゆる公知の方法で測定し得る。
【0101】
上記したこれらの用量を、処置する領域の大きさ、使用するウイルス力価、投与の経路、及び、当該方法の所望の効果に応じて、約25~約1000マイクロリットルの範囲で、その範囲内のすべての数値を含む、様々な容量の担体、賦形剤、または、緩衝剤製剤で投与し得る。ある実施形態では、担体、賦形剤、または、緩衝剤の容量は、少なくとも約25μLである。ある実施形態では、当該容量は、約50μLである。別の実施形態では、当該容量は、約75μLである。別の実施形態では、当該容量は、約100μLである。別の実施形態では、当該容量は、約125μLである。別の実施形態では、当該容量は、約150μLである。別の実施形態では、当該容量は、約175μLである。なおも別の実施形態では、当該容量は、約200μLである。別の実施形態では、当該容量は、約225μLである。なおも別の実施形態では、当該容量は、約250μLである。なおも別の実施形態では、当該容量は、約275μLである。なおも別の実施形態では、当該容量は、約300μLである。なおも別の実施形態では、当該容量は、約325μLである。別の実施形態では、当該容量は、約350μLである。別の実施形態では、当該容量は、約375μLである。別の実施形態では、当該容量は、約400μLである。別の実施形態では、当該容量は、約450μLである。別の実施形態では、当該容量は、約500μLである。別の実施形態では、当該容量は、約550μLである。別の実施形態では、当該容量は、約600μLである。別の実施形態では、当該容量は、約650μLである。別の実施形態では、当該容量は、約700μLである。別の実施形態では、当該容量は、約800μLである。別の実施形態では、当該容量は、約150~800μLである。別の実施形態では、当該容量は、約700と1000μLとの間である。別の実施形態では、当該容量は、約250と500μLとの間である。
【0102】
ある実施形態では、当該ウイルス構築物は、マウスなどの小動物対象に対して、約1μL~約3μLの容量で、少なくとも1×10~少なくとも1×1011GCの用量で送達し得る。ヒトの眼と概ね同じ大きさの眼を有する大型家畜対象については、上記したヒト向けの大きな用量と容量が有用である。例えば、様々な家畜動物への物質の投与に関する優良事例の考察に関する、Diehl et al,J.Applied Toxicology,21:15-23(2001)を参照されたい。この文献は、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0103】
毒性、網膜異形成、及び、剥離などの望ましくない影響のリスクを軽減するために、最低有効濃度のウイルス、または、その他の送達ビヒクルを利用することが望ましい。処置を受けている対象、好ましくはヒトの身体的状態、対象の年齢、LCA、及び、進行性のものであれば、障害の程度を考慮して、主治医は、これらの範囲内のさらに別の用量を選択し得る。
【0104】
本明細書に記載のなおも別の態様は、哺乳動物対象のLCAの進行を処置、遅延、または、停止する方法である。ある実施形態では、好ましくは、生理学的に適合性のある担体、希釈剤、賦形剤、及び/または、アジュバントに懸濁した、レベルシリンネイティブの修飾した、または、コドン最適化配列を保有するrAAVを、ヒト対象などの所望の対象に投与し得る。この方法は、それを必要とする対象に、核酸配列、発現カセット、rAAVゲノム、プラスミド、ベクター、または、rAAVベクター、または、それらを含有する組成物のいずれかを投与する、ことを含む。ある実施形態では、当該組成物を、網膜下に送達する。別の実施形態では、当該組成物を、硝子体内に送達する。さらに別の実施形態では、当該組成物を、LCAの処置に適した投与経路の組み合わせを使用して送達し、そして、眼静脈、または、その他の静脈内、または、従来の投与経路を介した投与も含む得る。
【0105】
これらの方法での使用については、各用量の容量、及び、ウイルス力価を、本明細書でさらに説明するようにして個別に決定し、そして、同じ側または反対側の眼で行われるその他の処置と同じ、または、異なるようにし得る。用量、投与、または、管理は、本明細書の教示を考慮して、主治医が決定し得る。ある実施形態では、罹患した眼には、当該組成物を、上掲したものから選択した単一の用量で投与する。別の実施形態では、罹患した両眼には、当該組成物を、上掲したものから選択した単一の用量で、同時投与、または、連続投与する。連続投与は、数分、数時間、数日、数週間、または、数ヶ月の間隔という、一方の眼から他方の眼への投与の時間差を意味し得る。別の実施形態では、当該方法は、当該組成物を、2つ以上の用量(例えば、分割用量)で、眼に投与することを含む。別の実施形態では、同じ眼の異なる部分に、複数回の注射を行う。別の実施形態では、選択した発現カセット(例えば、LCA5含有カセット)を含むrAAVの第2の投与を、後の時点で行う。そのような時点は、最初の投与から数週間、数ヶ月、または、数年後とし得る。ある実施形態では、そのような第2の投与は、最初の投与でのrAAVとは異なるカプシドを有するrAAVを用いて行う。別の実施形態では、第1及び第2の投与でのrAAVは、同じカプシドを有する。
【0106】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、単一の組成物、または、複数の組成物で送達し得る。任意に、2つ以上の異なるAAV、または、複数のウイルスを送達し得る[例えば、WO2011/126808、及び、WO2013/049493を参照されたい]。別の実施形態では、複数のウイルスは、異なる複製欠損ウイルス(例えば、AAV、及び、アデノウイルス)を含み得る。
【0107】
本発明の特定の実施形態では、治療の標的となる桿体、及び、錐体視細胞の領域を特定し、処置の有効性を試験するために、非侵襲性網膜イメージング、及び、機能研究を実施
することが望ましい。これらの実施形態では、1つ以上の網膜下注射(複数可)のための正確な位置(複数可)を決定するために、臨床診断試験を使用する。これらの試験として、処置を受ける対象の種、それらの身体的状態、及び、健康ならびに用量に応じて、網膜電図写真(ERG)、視野測定、網膜の層のトポグラフィックマッピング、及び、共焦点走査レーザー検眼鏡(cSLO)、及び、光干渉断層法(OCT)の手段を用いた、その層の厚みの測定、適応光学(AO)、機能的眼科検査、多電極アレイ(MEA)、瞳孔光応答などを介した、錐体密度のトポグラフィックマッピングがある。画像化及び機能性研究の観点から、本発明の幾つかの実施形態では、罹患した眼の異なる領域を標的とするために、同じ眼で1回以上の注射を行う。本明細書でさらに説明する通り、各注射の容量及びウイルス力価を、個別に決定し、そして、同じ側または反対側の眼で行うその他の注射と同じもの、あるいは、異なるものとし得る。別の実施形態では、眼全体を処置するために、単一の大きな容量を注射する。ある実施形態では、当該rAAV組成物の容量及び濃度は、損傷した眼細胞の領域だけに影響が及ぶように選択する。別の実施形態では、rAAV組成物の容量、及び/または、濃度をさらに大きくして、損傷を受けていない光受容体を含む眼の大半の部分に到達するようにする。
【0108】
別の実施形態では、当該方法は、さらなる研究、例えば、機能性及び画像化研究を行って、処置の有効性を決定することを含む。動物での検査のために、そのような試験は、桿体及び錐体視細胞機能を見る網膜電図(ERG)、視覚運動性眼振、瞳孔測定、水迷路試験、明暗選択、光干渉断層撮影(網膜の様々な層の厚みを測定する)、組織学(網膜の厚み、外核層の核の列、導入遺伝子発現を記録するための免疫蛍光法、錐体視細胞の計数、錐体視細胞鞘を同定するピーナッツ凝集素を用いた網膜切片の染色)を介した、網膜及び視覚機能評価を含む。
【0109】
特に、ヒト対象については、本明細書に記載した用量の組成物の投与に続いて、桿体及び錐体視細胞機能を検査する網膜電図(ERG)、瞳孔測定視力、コントラスト感度色覚検査、視野試験(ハンフリー視野/ゴールドマン視野)、視野移動性検査(障害物コース)、及び、読み取り速度検査を用いて、処置の有効性に関して当該対象を調べる。本明細書に記載の医薬組成物を用いる処置に続いて、当該対象に行う、その他の有用な処置をした後の有効性試験は、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)、全視野光感度試験、光干渉断層撮影を含む網膜構造研究、眼底写真、眼底自家蛍光、補償光学レーザー走査型眼底検査法、移動性試験、読み取り速度と正確度の試験、マイクロペリメトリー、及び/または、検眼鏡検査法である。これら、及び、その他の有効性試験は、本明細書の一部を構成するものとして援用する、米国特許第8,147,823号;同時係属している国際特許出願公開国際公開WO2014/011210またはWO2014/124282に記載されている。
【0110】
本明細書に記載の方法のある実施形態では、本明細書に記載の組成物の1度の眼内送達、例えば、最適化したLCA5カセットのAAV送達は、対象のLCAの処置に有用である。本明細書に記載の方法の別の実施形態では、本明細書に記載の組成物の1度の眼内送達、例えば、最適化したLCA5カセットのAAV送達は、リスクのある対象のLCAの処置に有用である。
【0111】
したがって、ある実施形態では、当該組成物を、疾患の発症前に投与する。別の実施形態では、当該組成物を、視覚障害または視力喪失が始まる前に投与する。別の実施形態では、当該組成物を、視覚障害または視力喪失が始まった後に投与する。なおも別の実施形態では、当該組成物を、罹患していない眼と比較して、桿体、及び/または、錐体、または、光受容体の90%未満が機能または残存している場合に投与する。ある実施形態では、新生児の処置は、本明細書に記載のレベルシリンコード配列、発現カセット、または、ベクターを、送達の8時間以内、最初の12時間以内、最初の24時間以内、または、最
初の48時間以内に投与する、と定義する。別の実施形態では、特に霊長類(ヒト、または、非ヒト)については、新生児への送達は、約12時間から約1週間、2週間、3週間、または、約1ヶ月の期間内、または、約24時間~約48時間後とする。別の実施形態では、当該組成物を、症状の発症後に送達する。ある実施形態では、当該患者の処置(例えば、最初の注射)を、生後1年の前に始める。別の実施形態では、処置を、最初の1年後、または、最初の2~3歳齢の後、5歳齢の後、11歳齢の後、または、それより高齢にて始める。ある実施形態では、処置を、約4歳齢~約12歳齢の年齢で始める。ある実施形態では、処置を、約4歳齢以降に始める。ある実施形態では、処置を、約5歳齢以降に始める。ある実施形態では、処置を、約6歳齢以降に始める。ある実施形態では、処置を、約7歳齢以降に始める。ある実施形態では、処置を、約8歳齢以降に始める。ある実施形態では、処置を、約9歳齢以降に始める。ある実施形態では、処置を、約10歳齢以降に始める。ある実施形態では、処置を、約11歳齢以降に始める。ある実施形態では、処置を、約12歳齢以降に始める。しかしながら、処置は、約15歳、約20歳、約25歳、約30歳、約35歳、または、約40歳以上で始めることができる。ある実施形態では、子宮内での処置を、本明細書に記載の組成物を胎児に投与する、ものと定義する。例えば、本明細書の一部を構成するものとして援用する、David et al, Recombinant adeno-associated virus-mediated in utero gene transfer gives therapeutic transgene expression in the sheep, Hum Gene Ther. 2011 Apr;22(4):419-26. doi:
10.1089/hum.2010.007. Epub 2011 Feb 2を参照されたい。
【0112】
別の実施形態では、当該組成物を、後日に再投与する。任意に、複数回の再投与が許容される。そのような再投与は、本明細書に記載したものと同じタイプのベクター、異なるウイルスベクター、または、非ウイルス送達を用いたものとし得る。ある実施形態では、当該ベクターを、最初に注射をした網膜の異なる箇所に対して患者に再投与する。ある実施形態では、当該ベクターを、最初に注射をした網膜の同じ箇所で患者に再投与する。
【0113】
さらに別の実施形態では、上記した方法のいずれもが、別の、または、二次的な治療と組み合わせて行う。当該二次療法は、これらの変異または欠陥、または、それに関連する作用のいずれかを予防、阻止、または、改善するのに役立つ、公知の、または、未だ公知でない療法とし得る。当該二次療法は、上記した組成物の投与前、投与と同時に、または、投与後に投与することができる。ある実施形態では、二次療法は、神経栄養因子、抗酸化剤、抗アポトーシス剤の投与など、網膜細胞の健康を維持するための非特異的アプローチを伴う。当該非特異的アプローチは、タンパク質、組換えDNA、組換えウイルスベクター、幹細胞、胎児組織、または、遺伝子組み換え細胞の注射によって達成される。後者として、カプセル化した遺伝子組み換え細胞を含み得る。
【0114】
ある実施形態では、組換えrAAVを生成する方法は、上記したAAV発現カセットを含むプラスミドを得ること、及び、AAVウイルスゲノムの感染性AAVエンベロープまたはカプシドへのパッケージングを可能にするのに十分なウイルス配列の存在下で、プラスミドを保有するパッケージング細胞を培養することを含む。rAAVベクター生成の特定の方法は、上記した通りであり、そして、上記し、かつ、以下の実施例に記載した発現カセット及びゲノムにおいて、コドン最適化LCA5を送達できるrAAVベクターの生成に使用し得る。
【0115】
本発明の特定の実施形態では、対象は、レーバー先天性黒内障(LCA)を有しており、それを処置するよう、本発明の構成要素、組成物、及び、方法は、デザインしている。本明細書で使用する用語「対象」とは、ヒト、家畜または農場家畜、屋内家畜またはペッ
ト、及び、臨床研究に通常使用する動物を含む哺乳動物のことを意味する。ある実施形態では、これらの方法及び組成物の対象は、ヒトである。さらに他の適切な対象として、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、非ヒト霊長類などがあるが、これらに限定されない。本明細書で使用する用語「対象」は、「患者」と互換可能に使用する。
【0116】
本明細書で使用する用語「処置(treatment)」または「処置する(treating)」とは、LCAの1つ以上の症状の改善の目的で、本明細書に記載した1つ以上の化合物または組成物を対象に投与すること含む、ものとして定義する。したがって、「処置」は、所与の対象におけるLCAの発症または進行の軽減、疾患の予防、疾患の症状の重篤度の軽減、または、失明の進行を含むそれらの進行の遅延、疾患の症状の除去、疾患の発症の遅延、または、疾患の進行もしくは治療の有効性をモニターする、ことの1つ以上を含むことができる。
【0117】
用語「a」または「an」は、1つ以上を指すことに留意されたい。そのため、用語「a」(または「an」)、「1つ以上」、及び、「少なくとも1つ」は、本明細書では互換的に使用する。
【0118】
用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び、「含む(comprising)」は、排他的ではなく、包括的に解釈する。用語「からなる(consist)」、「からなる(consisting)」、及び、その変形は、包含的ではなく、排他的に解釈する。本明細書での様々な実施形態は、「含む(comprising)」の言語を使用して提示をしているが、その他の状況下では、関連する実施形態は、「からなる(consisting of)」または「本質的にからなる(consisting essentially of)」の言語を使用して解釈及び説明することも意図している。
【0119】
本明細書で使用する「疾患」、「障害」及び「病態」は、対象の異常な状態を示すために互換的に使用する。
【0120】
本明細書で使用する用語「約」または「~」は、特に断りの無い限り、与えられる基準から10%の変動を意味する。
【0121】
本明細書で使用する用語「調節」またはその変形は、生物学的経路の1つ以上の成分を阻害する組成物の能力のことを指す。
【0122】
本明細書で特に定義がされていない限りは、本明細書で使用する技術用語及び科学的用語は、当業者によって、及び、公開された文書を参照することで、一般に理解するものと同じ意味を有しており、それらは、当業者に対して、本願で使用した用語の多くについての一般的な指針を示す。
【実施例
【0123】
以下の実施例は例示にすぎず、本発明の限定を意図するものではない。
【0124】
実施例1:組換えrAAV、及び、インビトロ発現研究
最も研究が進んだ組換えAAV血清型であるAAV2を使用した網膜遺伝子導入を、ヒト対象で、かつ、29の異なる臨床試験(clinicaltrials.gov)において、310を超える個数の眼で実施した。これらの試験は、常染色体異常(RPE65欠損、MERTK変異による網膜色素変性症、脈絡膜血症、色覚異常)、ミトコンドリア病(レーバーの遺伝性視神経障害)、加齢黄斑変性の合併症(脈絡膜血管新生)、及び、末期網膜変性(光遺伝療法を使用する)などの多様な疾患を標的とする。これらの研究の
大部分(18/29、または、AAVと網膜下注射を使用した22の研究の内の18)では、RPE細胞を効率的に標的にすることを目標とした。最終結果は、AAVの眼内送達に関する大量の安全性データである。網膜下注射は、LCA5患者の光受容体を標的とするために必要なものと同じ外科的手法である。
【0125】
得られた情報に基づいて、多大な努力を払って、LCA5、及び、原発性光受容体欠陥が関係するその他の疾患を処置する手順を開発した。残念ながら、AAV2ベクターは、光受容体を効率的に標的とせず、そして、前述したように、光受容体は、LCA5、及び、その他の大半の遺伝性網膜変性の主要な細胞型を含む。このため、進化的デザインで生成させたベクターであるAAV7m8を選択した。このベクターは、多様な種(マウス、及び、非ヒト霊長類(NHP))の光受容体を効率的に標的とし、そして、異なる投与経路を使用する、ことを示した。
【0126】
本明細書で報告した有効性として、処置した動物の視覚的刺激を使用して進む能力の改善、瞳孔測定で認められた脳に至る視覚経路の回復、光受容体アポトーシスの減少、及び、当該網膜の外側でのロドプシンの存在など、この細胞型に特徴的な形態及びマーカーを有する機能的光受容体の保存がある。処置したLca5gt/gt光受容体は、外節ディスクが積み重なった外節が保存された、厚い外核層を示す。このことは、未処置のLca5gt/gt網膜とは著しく対照的であり、網膜は、19歳3ヶ月までに隣接しない光受容体核の単一列にまで減少した。改善は、永続的ではなかった。しかしながら、それらは、少なくとも3ヶ月間持続し、その時点で、未処置のLca5gt/gtマウスには光受容体が残存していない。網膜電図、及び、MEAの結果は、光受容体の伝達に成功すると、LCA5遺伝子療法が、桿体と錐体光受容体の双方で媒介した応答を、少なくとも部分的に回復できる、ことを示している。細胞の応答は、様々な神経節細胞型の活性を反映する応答だけでなく、未処置のLca5gt/gt網膜で認められる支配的なメラノプシン応答の反転を含んでおり、ほぼ正常な動態を有している。これらの結果は、瞳孔測定と視覚行動の知見を補完するものであり、また、処置効果をさらに特徴付けて最適化することを目的とした将来の研究(低照度条件での視覚行動の研究を含む)のフレームワークを提供する。これらのデータは、Lca5gt/gtマウスで使用したのと同様のヒトでの遺伝子増強アプローチが、視力を改善する見込みがあることを示している。治療介入をさらに最適化して、さらに永続的な救済効果を取得することが可能となり得る。導入遺伝子カセットの構成要素(プロモーターなど)、及び、処置する網膜の領域を変化させることで、さらなる利益につながり得る。投与研究は、治療効果に最適な用量を特定する。LCA5を持たない患者が、成人期を通して光受容体を保持し得るという事実(マウスでは、その生涯の初期に光受容体を喪失する)は、Lca5-/-マウスと比較して、LCA5ヒトの方が絶好の機会が大きくなり得る、ことを示唆している。最長30年間、中心窩外核層にLCA5を持たないヒトで、光受容体が報告されている。遺伝子療法を成功させるには、影響を受けた細胞が存在する必要があるため、このことは重要である。LCA5変異を有する成人において保持された光受容体が、正常な視力の個体に由来する光受容体と同様の光応答性の時間的パターン(振幅は減少したが)を示す、ことを我々は実証できた。これらの結果は、構造的及び生理学的欠陥にもかかわらず、LCA5患者の残存光受容体が機能的である、ことを示している。LCA5変異患者に由来するiPSC-RPEの主要な繊毛は、コントロール細胞に由来する繊毛よりも、はるかに少なかった。Lca5gt/gtマウスにおける光受容体での絨毛の欠陥は、遺伝子増強療法で修正でき、そして、繊毛の数を、正常レベルに増やすことができるという事実は、この条件を有するヒトに認められる絨毛の欠陥を改善し得ることを示唆している。
【0127】
A.組換えAAV
組換えAAVを、AAV2よりも効率的に光受容体に感染することが知られているAAV7m8カプシドを使用して、the Center for Advanced Re
tinal and Ocular Therapeutics(CAROT)にて生成した(Dalkara D, Byrne LC, Klimczak RR, Visel M, Yin L, Merigan WH, et al. In vivo-directed evolution of a new adeno-associated virus for therapeutic outer retinal
gene delivery from the vitreous. Sci Transl Med (2013) 5(189): 189ra76. doi:10.1126/scitranslmed.3005708.)。ヒト(h)野生型レベルシリンをコードする最適化cDNA(hopt.LCA5)を、最適なコドンを使用するために個別のデザインを行い、そして、DNA2.0(Menlo Park,CA)で合成した。LCA5 cDNAを、イントロン1配列とサイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサーが隣接するハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)エクソン1の制御下に置いた(図1A及びIE)。ウシ成長ホルモンポリ(A)が、このcDNAに続いた。AAV2逆向き末端反復由来の逆パッケージング(すなわち、非導入遺伝子を含む)ベクターを防ぐために、長いスタッファー配列を含んでいた。これらのベクターを、トリプルトランスフェクションで作成し、そして、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含み、そして、0.001%Pluronic F68(PF68)からなる賦形剤で製剤化した。例えば、Mizukami, Hiroaki, et al. A Protocol for AAV vector production and purification. Diss. Di-vision of Genetic Therapeutics, Center for MolecularMedicine, 1998.を参照されたい。コントロールベクターには、LCA5 cDNAの代わりに、改善した緑色蛍光タンパク質(eGFP)cDNAを組み込んだ。
【0128】
これらのrAAVを、ウェスタンブロットによって、適切な大きさのトランスジェニックタンパク質の発現について試験をした。8431個の細胞を、2×10細胞/ウェルで播種した。播種の2日後、これらの細胞に、AAV7m8.hopt.LCA5(または、コントロールとして、AAV7m8.CBA.EGFP)を、1×10または5×10vgで形質導入した。48時間後に、細胞を回収し、そして、電気泳動とウェスタンブロットのために処理した。抗体は、LCA5ウサギポリクローナル抗体(Proteintech,Rosemont,IL)を含んでおり、そして、シグナルを定量して、GAPDH免疫シグナルで正規化してバックグラウンドとタンパク質負荷との違いについて各数値を補正する。
【0129】
当該AAV7m8.CBA.hopt.LCA5ウイルスは、8431個の細胞において、LCA5導入遺伝子の効率的な発現を促すことができる。AAV7m8.CBA.hopt.LCA5で感染させた後に、予測した約81kDAレベルシリンタンパク質が産生したことは、用量依存的な応答を実証している。
【0130】
実施例2:LCAマウスモデルLca5-/-マウスの研究
Lca5gt/gtマウスモデルにおける遺伝子増強療法の概念実証の開発には、幾つかの課題が伴う:1)網膜変性の変化は非常に初期に始まり、急速に進行するため、新生児マウスでは治療介入を行う必要がある;2)これは光受容体特異的疾患であるので、光受容体を効率的に標的とする組換えAAVベクターを使用しなければならない。RPE細胞を標的とする動物及びヒトの研究で広く使用されているAAV2ベクターは、同等の用量で感染させた後において、異なる血清型の形質導入比較が示したように、その他のAAV血清型ほど効率的に光受容体を標的にしない。理想的には、最終的にヒトの臨床試験に移行できる治療法を開発する必要があり、及び、3)網膜及び視覚機能は、ベースラインでは非常に低く、スコア付けが困難であり、これらの改善を、正確に特定及び定量するアウトカム評価を開発する必要がる。本明細書では、我々は、指向進化に応じてデザインし
た組換えAAVベクター(AAV7m8)を使用して、コドン最適化ヒトレベルシリンをコードするcDNAを提供した。AAV7m8を使用して、生涯の初期の段階で疾患を有する光受容体にLCA5を送達することで、遺伝子増強療法が、Lca5gt/gtマウス網膜の構造的改善と、その視覚の機能的改善との双方をもたらす、ことを我々は示している。
【0131】
レベルシリンは、視細胞の結合繊毛に局在する(22)。この結合繊毛は、タンパク質と膜小胞の選択的輸送を支える視細胞体内節とアンテナ様外節との間の移行帯である。したがって、当該結合繊毛は、毛様体微小管トラック、または、鞭毛内輸送(IFT)に沿った双方向タンパク質輸送を支える導管である。定量的親和性プロテオミクス(アフィニティー精製、質量分析、及び、バイオインフォマティクス分析)と遺伝子組換えマウスモデルとの双方を使用して、Boldt et alは、LCA5変異が、IFTに干渉することを実証しており(22)、これにより、光受容体外節の発達における早発型異常を招き、そして、光受容体、アレスチン、及び、オプシンで特異的に発現する2つの異なるタンパク質を正しく輸送できなくする。マウスにおけるLca5遺伝子のノックアウトは、網膜変性の表現型をもたらした。当該Lca5-/-マウスは、色素脱失した網膜の斑点を発達させ、外節を発達させることは決して無く、そして、光に対する錐体及び桿体のERG応答を欠く。早期かつ急速に進行する網膜変性があり、2ヶ月齢までにONLに存在するのは、核の単一の(病的な)列だけである。(22)したがって、当該Lca5-/-マウスを、LCAの動物モデルとして利用した。
【0132】
成体のLca5gt/gt(Lca5-/-)マウスを、Jackson Labs(Bar Harbour,ME)から購入し、そして、きょうだい交配をして、系統を作成した。この研究で使用したすべての動物の遺伝子型の検証を行った(補足方法を参照されたい)。マウスを、12時間の明/12時間の暗のサイクルに供し、そして、食餌/水は自由に与えた。この研究は、連邦政府、及び、当局の規制に準拠して実施した。
【0133】
仔マウスのコホートについては、以前に報告がされたようにして(28)、網膜下注射を、新生児マウスの片側について行った。生後5日目(PN5)のマウスの麻酔は、低体温法で行った。生後15日目(PN15)に、ケタミン/キシラジンで動物に麻酔をかけた。表1は、コホートごとに使用した動物の数を示している。
【0134】
AAV7m8の硝子体内注射も行っており、この注射は、このベクターが、硝子体側から標的光受容体に向けてマウス網膜に浸透することが以前に報告されていたことによる。(25)AAV7m8.CBA.hopt.LCA5を、コホート1に、1μlで、合計で9.20×10vgを注射した(表1)。この注射液は、5%v/vのAAV7m8.CBA.EGFPを含んでおり、これにより、強化した緑色蛍光タンパク質(EGFP)の存在により、後の時点で確実に注入領域を特定できた。さらなる動物に対して、偽の注射を行い(コホート2)、AAV7m8.CBA.EGFPだけの注射を行い(コホート3)、または、コントロールとして注射せずに維持した(コホート4)。注射後は、離乳するまで仔マウスを、母親のマウスの元に戻した。
【表1】
【0135】
注射をして約1ヶ月に検眼鏡検査を実施して、中膜が透明で、網膜が剥離しておらず、したがって、外科的合併症が無いことを確認した。角膜または硝子体の混濁を有する動物は、さらなる研究から除外した。
【0136】
マウスのコホートを飼育及び研究をして、生後早期(PN5)、及び、若年期の時点(PN15)で注射を行った(表1)。注射による、合併症はほとんど認められなかった。PN5で注射した後、大部分の動物には、さらなる試験を妨げる角膜または硝子体の混濁は認められなかった。混濁が認められた若干の動物を、さらなる分析から除外した。
【0137】
このAAV7m8.CβA.hopt-LCA5ウイルスを、硝子体内(IVT)及び網膜下(SR)の双方に対して投与した後(それぞれ、図1C及び1D)に、マウス網膜におけるヒトLCA5導入遺伝子の効率的な発現を促進することができた(図1A及び1B)。ウェスタンブロット分析は、PN20の、Lca5gt/gtにおいて、及び野生型マウスにおいて、AAV7m8.CβA.hopt-LCA5を眼内送達した後に、予測された約81kDaのLCA5タンパク質の産生を示している(図1B)。免疫蛍光分析は、野生型成体網膜のONL、内節(IS)、及び、結合繊毛(CC)でのレベルシリンタンパク質の存在を示している(図1E)。Lca5gt/gt網膜において、AAV7m8.CβA.hopt-LCA5を、硝子体内または網膜下に注射をした後に、レベ
ルシリンは、CCならびにIS及びONLに認められている(図1G及び1H)。対照的に、偽注射したLca5gt/gt網膜では、レベルシリンは認められない(図1F)。加えて、IVT注射した後に、相当数のミュラー細胞が、レベルシリンを産生する(図1G)。
【0138】
実施例3:網膜/視覚機能の試験
視覚及び網膜機能の試験として、光合図水迷路(注射後2~3ヶ月)、瞳孔測定(注射後2.5ヶ月)、多電極アレイ(注射後3ヶ月)、及び、実施例2に示した、または、記載したマウスを使用した網膜電図検査を行った。次に、実施例4に記載したようにして、組織病理学、及び、免疫蛍光について、網膜を評価した。組織分析も徹底して行った。
【0139】
A.網膜電図法
左眼に賦形剤、右眼にAAV7m8.CβA.hopt-LCA5を、PN5で、硝子体内注射をした、8匹のLca5gt/gtマウス、5匹の野生型動物、及び、16匹のLca5gt/gtマウスのERGを記録した。Lca5gt/gtを注射していないコントロールの眼、または、賦形剤を注射したLca5gt/gtの眼(合計で32眼)は、検出可能なERG応答を生成しなかった。AAV7m8.CβA.hopt-LCA5を注射した16眼の内、4眼は、シグナルの桿体媒介と一致する暗順応状態での薄暗い閃光に対するERG応答、ならびに、小規模の野生型(WT)混合桿体-錐体ERG波形に似た、より明るい閃光に対する混合桿体-錐体応答を示した(図S2)。光に順応したERGも、これらの眼で検出可能であることは、明所視応答の錐体媒介を示唆している。治療後の検出可能なERGの振幅は、WT振幅の20~25%の範囲であった(図S2)。この結果は、一部の動物での遺伝子治療後の桿体と錐体の双方の視細胞機能の回復を示唆している。全分野に及ぶERGでの知見の不一致は、出生後初期に行われるこれらの技術的に困難な網膜下注射後に持続する不完全な網膜被覆、及び/または、組織損傷(白内障、未解決の剥離など)を反映している可能性がある。しかしながら、これらの結果は、規模や頻度は様々であるが、未処置のLca5gt/gtの眼で観察した検出不能なERGとは劇的に異なっていた。B.水迷路誘導研究
【0140】
水迷路検査を実施して、5つのチャンバーの水迷路内に水没させたプラットフォームを含むチャンバーを特定する、各動物の能力を評価した(図11)。この装置を、外部光のない部屋に置き、そして、試験前に光源をプラットフォームの直上に置いた。暗闇に適応したマウスを迷路の中央で放し、中断することなく60秒を与えて、点灯したプラットフォームを見つけて、4本の足をすべて着地させた。
【0141】
マウスを暗順応させ、そして、薄明かりの手順下で試験を実施する前に、室内灯(約200ルクス)でトレーニングを実施した。トレーニングの間に、60秒の終わりに、マウスがプラットフォームを発見できなかった場合、実験者は、マウスをプラットフォームに誘導した。各試行では、ランダム選択を使用して、ライトとプラットフォームを異なるチャンバーに配置した。
【0142】
トレーニングパスの基準は、マウスが異なるチャンバーに逸脱することなく、適切なチャンバーに独立して進入し、そして、9回の連続試行の内、5回超で、60秒以内にプラットフォームを登る能力として定義した。トレーニング合格基準が満たされた日に関係なく、すべてのマウスを5日間かけて訓練した。トレーニングで使用した手順と同じ手順を使用して、光源をさらに暗くするための一連のフィルターを使用して、テストを4日間かけて行った。フィルターの使用により、輝度は:1.06×10、8.69×10、5.87×10 scot cd mであり、または、消灯時の輝度は、0 scot cd mであった。
【0143】
動物をトレーニングし、そして、生後2~2.5ヶ月齢で、光合図水迷路で試験をした。光合図水迷路試験の結果は、AAV7m8.CBA.hopt.LCA5網膜下または硝子体内注射群は、対照群よりも有意に優れたパフォーマンスを示した。(表2B。太字の値を参照されたい。図3)。表2Aは、各コホートで分析を行い、そして、水迷路を使用して光レベルを指定するために試験した動物の数の生データを示す。表2Bは、一元配置分散分析(ANOVA)を使用した統計分析の結果を示す。処置した動物は、8.69×10 scot cd mで試験に合格したが、コントロールの賦形剤を注射したコホートの動物ではそのようにならなかった(p<0.01)。
【表2-1】
【表2-2】
【0144】
C.瞳孔光反射
瞳孔収縮の振幅は、連続する10回の閃光/眼で測定した。閃光強度は、1,000 scotルクスであった。PLRを、刺激前直径の標準偏差の3を超えた閃光に続く、0.6~1.2秒間隔内の瞳孔収縮応答の最大振幅を有する、と定義した。処置パラダイムを知らされていない科学者が、分析前に各動物のデータを評価して、各瞳孔が正確に追跡されている、と確認した。そうでない場合、その特定の動物は、さらなる分析から除外した。
【0145】
統計分析については、処置した(右)、及び、反対側の偽注射したコントロール(左)Lca5-/-眼を、各光強度で比較した。処置した眼の収縮の正規化した振幅を、未処置の眼の収縮で除算して、応答の最大差分振幅(MDAR)の割合を得ることができた。MDARの割合が高いほど、治療介入に対する応答が強いことを示す。同じ年齢のさらなる未処置Lca5-/-、及び、野生型(C57B1/6)マウスを、それぞれ、ポジティブ及びネガティブコントロールとして使用した。未処置のLca5-/-、及び、C57B1/6マウスのMDARは、両眼の差異が最小限であったため、約0とした。
【0146】
さらなる分析では、異なるコホートのマウスの右眼の瞳孔収縮の振幅の大きさを評価した。したがって、収縮の振幅は、処置した、及び、未処置のLca5-/-マウスと、未処置のC57B1/6マウスとの間で比較することができた。
【0147】
処置した眼と、コントロールの眼とを刺激して生ずる瞳孔光反射の振幅の分析は、網膜下または硝子体内のいずれかで、AAV7m8.hopt-LCA5で処置したLca5-/-マウスの眼の瞳孔反射の振幅が、未処置のコントロールLca5-/-動物と比較して、有意な(p<0.05)改善があることを明らかにした(図2)。PN5でのいずれかの送達経路(図2A、2B、2H、及び、2I)、及び、PN15での網膜下送達の注射をした動物では、瞳孔光反射(PLR)が大幅に改善されており、硝子体内送達による改善の傾向もあった(図2H及び2I)。
【0148】
D.多電極アレイ
5%(v/v)AAV7m8.CBA.GFPを混ぜたAAV7m8.CMV/CBA.hopt.LCA5(約9.87×1010vg/眼)を片眼に硝子体内注射をして2.5~3.5ヶ月後に、多電極アレイ(MEA)試験を、5匹の動物で実施した。他方の眼に偽注射をして、ネガティブコントロールとして使用した。未処置で同年齢の5匹の野生型(WT)C57B1/6マウスを、ポジティブコントロールとした。光に適応したマウスの網膜を、赤色光の下で切開し、そして、穿孔したMEAチャンバーに神経節細胞を
下向きに設置した。外植片でのGFPの存在により、光受容体のAAVへの曝露を確認した。異なる強度の455nm光の更正した全視野閃光(色素励起効率約40%:ロドプシン、及び、M-オプシン;約0.2%:S-オプシン)を、光刺激に使用した(0.1Hzで2秒間の閃光、または、4Hzで50msの閃光)。Matlab(MatLab,Natick,MA)のカスタムコードを使用して、データを分析した;スパイクの選別は、Plexon Offline Sorter(Plexon,Dallas,TX)で行った。PN5でのAAV7m8.CβA.hopt-LCA5を、多電極アレイ(MEA)分析を使用してプローブした。MEAを使用する理由は、それが、脳に送られる網膜の出力信号を測定し、光受容体機能を試験することに加えて、網膜の神経回路網に関する情報も提供するからである。MEAで試験した5つの網膜/動物の内、2つは明確に検出可能な桿体と錐体のERGを有しており(図S2の代表的な記録を参照されたい)、1つは残留している僅かな、約10VのERGを有しており、そして、2つは検出可能なERGを有していなかった。AAV7m8.CBA.hopt.LCA5を注射した5つの網膜の内の3つは、強い光応答を示し、1つは応答の中央値を示し、そして、1つはMEA試験で最小限の応答を示した(図5A~D)。応答は、暗所視強度で検出可能になり(42~112光子*s-1*μm-2、または、平均で、8.28el hv/μm;455nm)、そして、2.00e9光子*s-1*μm-2という最も明るい明所強度で、強い応答が観察された。エンドオン照明の桿体と錐体の収集領域が、ピーク感度の波長で約1μmであり23、24(ERGと我々のMEA実験の双方で、光が神経節細胞側から網膜に入射することに留意されたい)、及び、ロドプシンの455nmの光、及び、M-及びS-錐体オプシンによる刺激の効率が、それぞれ、約60%、50%、0.3%である、25~27と仮定すると、我々の実験で明確に検出可能な応答を生成する薄明かりは、桿体では、70未満/秒/細胞の光異性化、M-錐体では、60未満、そして、S-錐体では、約0.3の光異性化を生じるはずである。吸引ピペット記録からのデータは、この速度の色素励起桿体では、検出可能な光応答(最大の20%を超える応答振幅)を生成できるが、錐体応答は、最も好ましい条件下(暗順応したM錐体を含む桿体-トランスデューシンノックアウト網膜)では、少なくとも20倍小さくなると考えられ、また、桿体が支配的なマウス網膜では検出できないはずである25、26、28(吸引ピペット記録におけるサイドオン照明の収集領域は、錐体では、約0.5μm-2であり、そして、錐体では、0.2μm-2である)。このように、我々の実験において、調光器の強度範囲での光応答の観察は、処置したLca5gt/gt網膜における桿体機能の回復を証明している。明るさの強度が大きい端部での応答は、錐体に由来するはずである(最も明るい強度は、M-、及び、S-錐体のそれぞれで、約1.00e9と6.00e6の光異性化/秒/細胞を生じ、少なくとも、M-、及び、S-錐体の双方を駆動できるものでなくてはならない)。桿体/錐体駆動の応答については予想した通り、最も明るい刺激シリーズに曝露の後に、1回目の強度シリーズを終えた時点で(光に敏感な網膜は、暗暗視から最も明るい明所視の強度まで、約0.5logを増大して、少なくとも2回の強度シリーズ試験に供した)、暗所応答は消失したが、明所視応答は有意な影響を受けなかった(図5C及びD)。WT及び処置したLca5gt/gt網膜は、錐体応答を促すと考えられる強度で、4Hzフリッカー刺激にも応答した(データ示さず)。偽注射した反対側の眼の網膜は、最小限の応答、乃至は、消失した応答しか示さず、高い自己発光性と顕著なメラノプシン応答を伴っていた。
【0149】
緩慢なメラノプシン駆動応答も、AAV7m8.CβA.hopt-LCA5で処置したLca5gt/gt網膜の双方で検出されており、そして、野生型マウスの(一連の内の最初の閃光後の回復が緩慢なため、2回目の閃光の開始時の発光率が上昇して出現する)メラノプシン応答は、未処置の網膜と比較して、処置した網膜では認められないようである。
【表3】
【0150】
処置した2つのLca5-/-網膜は、注射後に損傷の徴候が認められ、そして、強い自己発光性があるにもかかわらず、光応答を示さなかった。
【0151】
AAV7m8.CBA.hopt.LCA5で処置した網膜の応答は、未処置の野生型網膜のそれと同様であった。注射後の最短期間で試験をした処置済のある網膜の1つは、光感度の低下と、OFF-、及び、持続性ON-応答の欠如を示した(図5Dの赤色の下向き三角形)。OFF-応答の発生は、ON-応答と比較して、注射後により長い時間を必要とし、処置した10の網膜で観察されたOFF-応答振幅における変動性の高まりと符合する。全領域の刺激下においてWT網膜で識別可能なすべての神経節細胞型の機能が、スパイク選別した後のLca5gt/gt AAVで処置した網膜で検出された(図S10)。暗所視、及び、明所視刺激下で、最も明るい強度(ほぼ100mW/cm)までの強い応答を観察した。桿体/錐体駆動の応答で予想したように、最も明るい光へ曝露した後に、暗所視応答は消失したが、明所視応答は有意な影響を受けなかった(データ示さず)。
【0152】
AAV7m8.hopt.LCA5で処置した網膜の応答は、暗所視強度で検出可能になり(42-112光子s-1μm-2、または、平均で、8.28el hv/μm2;455nm)、そして、2.00e9光子s-1μm-2の最も明るい明所視強度で強い応答が認められた。偽注射した反対側の眼に由来する網膜は、最小限の応答、乃至は、消失した応答を示した(データ示さず。コントロールLca5-/-)。AAV7m8.hopt.LCA5で処置した網膜における応答は、野生型マウスの網膜での応答と類似していた。最も明るい光(2E9 hv/cm2)に曝露した後に、フリッカー応答は、明所視応答が、有意な影響を受けなかったことを示す(データ示さず、Lca5-/-処置した)。フリッカー応答強度シリーズ(3.53E2-1.52E6 hv/
cm2の代表的なAAV7m8.CBAhopt.LCA5で処置した網膜から始まる)は、光の強度が高まるにつれて、応答の振幅が増加する、ことを示す。最も明るい閃光後の桿体及び錐体の耐久性応答の試験は、野生型網膜で認められたのと同様に、錐体応答の持続性が示された。フリッカー応答試験は、野生型マウスの網膜と比較して、処置したLca5-/-網膜と同様の応答を示している。処置したLca5-/-網膜での桿体と錐体の発光率は、光強度の関数として、(コントロールの未処置のLca5-/-網膜とは対照的に)野生型網膜の発光率に近似する。
【0153】
応答動態は、WT網膜の応答動態と類似していた(データ示さず)。8~21光子-1*μm-2で最初の応答が検出された最も感度の高いWT網膜に対して、処置したLca5-/-の光感度はわずかに低かった(データ示さず)。全領域の刺激下においてWT網膜で識別可能なすべての神経節細胞型(ON、OFF、及び、ON/OFF型)は、スパイク選別した後に、Lca5-/-処置した網膜で検出された。WT及び処置したLca5-/-網膜は、3.53e2-2.00e9光子-1*μm-2で、4Hzのフリッカー刺激に応答した(データ示さず)。すべての未処置のLca5-/-網膜は、光感受性である処置したLca5-/-網膜には存在しなかった明るい強度で緩慢なメラノプシン駆動応答を示した。知見の要約を、表3に示す。
【0154】
網膜電図、及び、MEA実験で得た結果は、少なくとも一部の動物において桿体及び錐体機能の回復を示したが、これらの方法は、処置したマウスの4分の1に対してのみ有用なERGシグナルを生成したため、大半の動物での治療介入の効率の評価としては不十分であった。したがって、我々は、2つのさらなる方法、すなわち、瞳孔光反射(PLR)と視覚挙動の分析に基づいて治療介入の有効性を評価したところ、まず、網膜電図よりも大きな感度を示し、そして、次に、Lca5gt/gt網膜を、AAV7m8.CβA.hopt-LCA5で処置すると、脳に至る視覚経路を介して、当該網膜を越えて中継して伝わる光誘導シグナルをもたらす、ということを証明した。
【0155】
瞳孔光反射(PLR)は、まず、光受容体から網膜神経節細胞へ、次に、脳のエディンガー-ウェストファール核へ、そして、最後に、虹彩の直径を制御する毛様体神経節を介して瞳孔括約筋に戻る信号の中継に依存している。偽注射したコントロールと比較して、AAV7m8.CβA.hopt-LCA5で処置したLca5gt/gtマウスの眼のPLRの振幅は、処置した眼とコントロールの眼の刺激後のPLRの分析で有意(p<0.05)に増加した(図2C)。PN5で硝子体内または網膜下に注射した動物で検出したPLRが著しく改善されており(図2A-2B及び2E-2F)、ほぼ野生型の応答が観察された(図2D)。PLRの振幅の統計的に有意な改善も、応答の最大差分振幅の比較を通じて示された(MDAR;図2G-2I;図S1)。AAV7m8.CβA.hopt-LCA5をIVTまたはSR送達した動物も、MDARによって定量したPLRの大幅な改善を示した(図2H及び2I)。
【0156】
PLRは、網膜のシグナル伝達と機能を実証するが、形成された視覚に関する情報を提供しないため、我々は、前述したようにして、機能的視覚を測定するために、光合図水迷路試験を使用した。未処置の野生型(通常の視力の)マウスの大部分は、すべての光レベルで水迷路をうまく進んだが、未処置のLca5gt/gtは、大きく機能が損なわれていた(表2、図3A)。水迷路検査の結果は、IVTと網膜下の双方でAAV7m8.CβA.hopt-LCA5を注射したLca5gt/gt動物は、少なくとも1つの光条件下で、統計的に有意な方法で、非注射のコントロールよりも優れた性能を示した。(表2;図3)。PN5にて網膜下処置を受けた動物は、すべての照明試験条件(1.06E+05、8.69E+03、及び、5.87E+02 scod cd m-2)で、コントロールの賦形剤を注射したコホートよりも有意に改善された成功率を示した(p<0.01)。動物にPN15(IVTまたはSR)を注射したとき、改善は最小限であった
図3)。マウスが、所定の光合図だけを使用したことを確認するために、試験を無光条件(0.00 scot cd m2)で行ったところ、90%を超えるマウスが試験に合格できなかった(正常視力のマウスを含む、図3B)。
【0157】
実施例4:眼の組織学、組織病理学、免疫蛍光、及び、TUNELアッセイ
AAV7m8.CβA.hopt-LCA5で処置した後のPN5でのLca5gt/gt光受容体の組織学的救済を、光変換カスケードの適切な機能に関連する分子の評価と構造的測定の双方を通じて評価した。実施例2及び3に記載の動物を、3ヶ月齢で安楽死させた。眼球を摘出し、そして、網膜切片を、Boldt et al.が報告した方法の変法で評価した。(22)組織を、4%パラホルムアルデヒドを含むPBSで固定し、そして、凍結、及び、凍結切片の作成前に、30%スクロース/PBSで凍結保護した。病理組織学は、4’、6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI,Thermo Fisher Scientific, Philadelphia, PA)染色切片の検査、及び/または、ヘマトキシリン、及び、エオシンでの染色によって分析した。免疫蛍光研究のために、切片を、ブロッキング溶液の存在下で、抗レベルシリン(1:300、(12、22))とインキュベートし、洗浄してからCy3結合二次抗体で処理した。使用した追加の抗体は、抗ロドプシン(1:500,Leico Technologies)、抗赤色/緑色錐体オプシン(1:250,Chemicon)、抗アセチル化チューブリン(1:1,000,Sigma-Aldrich)であった。染色した切片を、DAPI(Electron Microscopy Services, Hatsfield, PA)を含有するCitifluor封入剤でカバースリップした。ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)dUTPニックエンドラベリング(TUNEL)アッセイキットを使用して、製造業者(Vector Laboratories, Burlingame, CA)の推奨に従って、TUNEL染色を行った。落射蛍光及びAxio-Vision 4.6ソフトウェアを搭載したZeiss Axio Imager M2顕微鏡、及び、共焦点レーザー走査顕微鏡(Olympus Fluoview 1000,Center Valley、PA、USA)で、切片を評価した。FEI-Tecnai T12 S/TEMを使用して、指定した組織サンプルに対して、透過型電子顕微鏡(TEM)を実施した。
【0158】
PN5でAAV7m8-hopt-LCA5を注射し、PN15で分析をした眼の免疫蛍光分析を行ったところ、チューブリン陽性の外節の基部と共局在するレベルシリンを示した。硝子体内注射後、レベルシリンは、網膜全体に分布しており、PN95の光受容体はほぼ皆無であった。対照的に、レベルシリンは、未処置のPN15及びPN95 Lca5-/-網膜には存在していなかった。
【0159】
ヘマトキシリン、及び、エオシンで染色処置した網膜切片とコントロールの網膜切片とを、PN40対PN99で、AAV7m8.hopt-LCA5(5%v/v AAV7m8.eGFP)の硝子体内(IVT)または網膜下(SR)に注射した後の結果を、偽注射と比較した。ヘマトキシリン、及び、エオシン染色(H&E)網膜の顕微鏡写真は、AAV7m8.hopt-LCA5のIVTまたはSRのいずれかの注射後に、3ヶ月の時点(PN99)で、内節/外節(IS/OS)、及び、ONLが、保存されていることを示した(データ示さず)。対照的に、偽注射したコントロール網膜には、PN99で、そのような層は認められない(データ示さず)。さらに、レベルシリンは、処置した網膜で検出されたが、偽処置したコントロールの網膜では検出されなかった(データ示さず)。ONLにおけるロドプシンの持続的発現も、免疫蛍光分析によって確認された(データ示さず)が、処置した眼だけに認められた。
【0160】
PN5で、AAV7m8.CβA.hopt-LCA5を、IVTまたはSR注射で処置した網膜の視細胞層の厚みは、コントロールの網膜よりも有意に大きかった(図4)。
網膜下注射で処置した網膜のAAVに曝露された、または、曝露されていない網膜の領域の間の厚さにも顕著な境界線があった(データ示さず)。光受容体層の保存は、最新の時点(PN99)まで持続した。厚みの増大は、外核層の列数の増加と、内節及び外節の存在に起因するものであった(図4)。このことと符合して、特に治療介入をして最初の1ヶ月以内に、TUNELラベリングで判断したとき、AAV.LCA5で処置した網膜と比較して、コントロールでは、死滅しかかった光受容体の割合が非常に高かった(データ示さず)。
【0161】
注射をして1~3ヶ月で、PN5にAAV7m8.hLCA5を注射したLca5-/-マウス網膜を評価したところ、外核層の厚さの増大が明らかになった(図5A及び図9)。免疫蛍光分析は、レベルシリンが、AAV7m8.hOP.LCA5で処置したLca5-/-網膜のチューブリン陽性外節の基部と共局在することを明らかにした(図1M)。未処置のLca5-/-網膜では、生後1ヶ月で数多くのTUNEL陽性細胞があったが、AAV7m8.hOPT.LCA5で処置した網膜では有意に少なかった(図6B及び6C)。TUNEL陽性細胞の数は、これらの動物が、3ヶ月齢になるまでに減少した(図6D及び6E)。コントロール(未処置)の網膜における未処置のLca5-/-網膜で経時的に変性する細胞の大部分は、ロドプシン陽性細胞がAAV処置した網膜にだけ認められるという事実が示すように、光受容体であった(図6B)。免疫蛍光分析は、この結果を確認しており(青色のDAPI染色したONLを参照されたい)、そして、3ヶ月の時点で持続するロドプシンの増加(赤色染色)を示した(図6D)。AAV7m8.hopt.LCA5を注射した後に、光伝達特異的分子の位置において、光が媒介する変化の証拠を認めた(図10)。
【0162】
AAV7m8.hopt.LCA5で処置した網膜の透過型電子顕微鏡(TEM)は、積み重ねられた外節ディスク、原発性絨毛に典型的な9+0微小管アレイ(図7B)、及び、結合繊毛(図7)を備えた、外節の詳細を示した。対照的に、未処置のLca5-/-網膜は、結合繊毛と外節との双方を欠いていた。未処置の網膜には外節がなく、そして、濃縮核と視細胞小器官の残骸のみを伴う光受容体の大規模な変性を示す。コントロールの未処置の網膜、または、偽注射した網膜には、無秩序に変性した視細胞体だけが存在していた。
【0163】
PN5にAAV7m8.hopt-LCA5で処置して暗順応した成体Lca5gt/gt網膜の光刺激は、光伝達タンパク質の正常な転座パターンを、外節に導入した。アレスチンは、AAV7m8.hopt-LCA5で処置した網膜に光を曝露した後に、適切に移行する。このような挙動は、IS/OSの変性が故に、コントロールの網膜では評価できない。このデータは、野生型(WT)hLCA5 cDNAを送達した後のマウス網膜における鞭毛内輸送欠陥の回復を反映している。
【0164】
Lca5-/-マウスモデルにおける遺伝子増強療法の概念実証の開発には、幾つかの課題が伴う:1)網膜変性の変化は生涯の初期に始まり、急速に進行するため、新生児マウスでの治療介入を行う必要がある;2)これは光受容体特異的疾患であるので、光受容体を効率的に標的とする組換えAAVベクターを使用しなければならない。RPE細胞を標的とする動物及びヒトの研究で広く使用されているAAV2ベクターは、その他のAAVほど効率的に光受容体を標的にしない(23、24)。理想的には、最終的にヒトの臨床試験に使用できる試薬を使用する必要があり、及び、3)網膜及び視覚機能は、ベースラインでは測定が困難なほど低レベルであり、これらの改善を反映するアウトカム測定を開発する必要がある。本明細書では、指向進化に応じてデザインした組換えAAV、AAV7m8(25)を使用して、天然のヒトレベルシリンをコードするcDNAの送達後の有効性を試験した。このベクターが、硝子体内送達後に光受容体を効率的に標的にする、ことが他で報告している(25~27)。AAV7m8を使用して、hLCA5 cDN
Aを生涯の初期の段階で疾患を有する光受容体に送達することで、遺伝子増強療法が、Lca5-/-マウス網膜の構造的改善と、その視覚の機能的改善との双方が実現した。
【0165】
実施例3及び4では、Lca5-/-マウスにおけるAAV7m8媒介遺伝子増強療法が、網膜、及び、視覚機能、そして、網膜構造をも救済することを実証した。
【0166】
本実施例で報告した有効性として、視覚的合図を使用して進行する、このモデルの改善した能力、多電極アレイ(MEA)が示した桿体及び錐体視細胞応答の回復、アポトーシス細胞死の減少(すなわち、光受容体の保存)、及び、正常に機能する光受容体に特徴的な細胞生物学的及び物理的特徴の存在、例えば、網膜の外側におけるロドプシンの存在、及び、積み重ねられた外節ディスクを用いた正常に見える外節の発達が含まれた。MEAの結果は、注射を成功裏に行い、そして、注射後に十分な時間を与えて、トランスジェニックタンパク質を発現し、及び、桿体/錐体外節の機能を回復すると、遺伝子治療が、変性網膜細胞を、WT状態とほとんど区別できない状態にまで回復させる、ことを示した。さらに、野生型LCA5の送達は、光受容体を変性から保護した。未処置のLca5-/-網膜は、3ヶ月齢までに、一列の病的な光受容体にまで減少したが、AAVで処置した当該領域は、後に内節及び外節を備える厚みのある外核を有していた。これらの利点は、少なくとも3ヶ月持続した-とりわけ、この年齢までに、未処置のLca5-/-マウス網膜に光受容体が残存していないことを考慮すると、非常に重要な発見である。このデータは、Lca5-/-マウスで使用したものと同様のヒトにおける遺伝子増強アプローチによって、視力が改善することを示唆した。
【0167】
実施例5:ヒトの研究:瞳孔光反射試験
IRB承認プロトコル(#815348)に関するインフォームドコンセントを書面で得た後に、試験を実施した。瞳孔応答を、Procyon P3000瞳孔計、及び、PupilFit6ソフトウェア(Monmuthshire,UK)で、両眼について、同時に記録した。光に対する瞳孔応答を、10 luxの緑色光刺激を、0.2秒間、右眼にあてた後に、暗間隔の後に記録した。25フレーム/秒でビデオ画像を捕捉する赤外線感知カメラは、40ミリ秒ごとに、両眼の瞳孔径を測定が可能である。
【0168】
瞳孔光反射試験を実施して、ホモ接合型LCA5変異を有する成人に存在する残存光受容体における機能の証拠の有無を判定した。図8に示すように、瞳孔光反射は、この個体に存在しており、正常な視力を持つ個体と同じ時間的順序であった。しかしながら、正常な視力の個体と比較して、応答の振幅はかなり減少していた。
【0169】
実施例6:LCA5の人工多能性幹細胞(iPSC)モデル
マウス救済研究のヒトへの橋渡しを支援するために、我々は、正常な視力を有する個体、及び、LCA5変異によりLCAに罹患した個体から研究目的で生成したヒト人工多能性幹細胞(iPSC)系統を研究した。最近、iPSC由来の網膜色素上皮(RPE)が、胎児及び成人のRPEと比較して、分泌、遺伝子発現、及び、成熟特性によって、分極した上皮の機能的表現型を再現する、ことが報告されている29。これらの細胞は、繊毛生物学での欠陥に関連する疾患のメカニズムを理解する上で大いに有望である30、31。本明細書で、我々は、iPSCを、RPE細胞に分化させ(図12A)、そのプロセスがニューロン/視細胞を生成したとき以上に短時間で、さらに効率的に、繊毛細胞の評価を可能にした(図S12)。我々は、LCA5遺伝子発現を評価し、そして、LCA5 mRNAを、影響を受けていないiPSC由来のRPEで発現し、そして、LCA患者のRPEでのLCA5の発現レベルを、コントロールと比較して、有意に減少させることを示した(図12B)。毛様体分布を測定したところ、LCA5患者由来のiPSC-RPEに存在する繊毛は、正常視力の個体に由来するRPEよりも著しく少なかった(図12D~E)。LCA5-iPSC-RPEを、AAV7m8.hopt-LCA5で処理す
ると、レベルシリンタンパク質の産生を招き(図12C)、そして、AAV7m8.LCA5で処置した個体、及び、正常視力の個体のRPE細胞に匹敵する数の繊毛をもたらした(図12D-F)。
【0170】
LCA5変異を有する2名の異なる発端者から署名済みのインフォームドコンセント(IRB承認プロトコル#808828)を得た後に、末梢血単球(PBMC)を採取した。1名の発端者、JB605は、LCA5 Gln279Stop CAG>TAG het、及び、Lys172del4ctcAAAGhetの複合ヘテロ接合体であり;もう1名、JB590は、LCA5c.835C>Tp.Q279Xのホモ接合体であった。野生型細胞は、個々のPBWT4.6に由来するものであった。誘導した多能性幹細胞株は、3名の個体のそれぞれから生成した。これらのPBMCを、サイトカインとホルモンを補充したQBSF-60(Invitrogen,Carlsbad.CA)培地からなる増殖培地で培養した。細胞が指数関数的増殖の段階に入るまで、7~9日間、2~3日ごとに、培地を補充した。
【0171】
リプログラミングのために、OCT4、KLF4、SOX2、及び、cMyc cDNA、ならびに、TetO/CMVプロモーターで駆動するマイクロRNA 302/367クラスターを送達するレンチウイルスベクターにて、rTTAレンチウイルス、及び、ドキシサイクリン誘導性「幹細胞カセット」を用いて、拡大させたPBMCを形質導入した。細胞を、ポリブレン(5μg/ml;Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を補充した増殖培地で増殖させた。これらの細胞を、37℃で、20~24時間インキュベートした。次に、感染細胞を洗浄し、1μg/mlのドキシサイクリン(DOX)を添加した増殖培地に入れた。48時間後に、10%ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミン、ベータ-メルカプトエタノール、非必須アミノ酸、4ng/mlの基本的な線維芽細胞成長因子(bFGF)、及び、1μg/mlのDOX(Sigma-Aldrich、St.Louis,MO)を含むイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)に、細胞を再懸濁し、次いで、マトリゲル被覆(BD Biosciences,San Jose,CA)マウス胚線維芽細胞プレート(MEFプレート)に移した。細胞を、この培地に10日間残存させた後に、それらを、ヒト胚性幹細胞(hESC)培地(DMEM/F12、20%ノックアウト血清代替物、非必須アミノ酸、4ng/ml bFGF、0.001%ベータ-メルカプトエタノール、ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミン、及び、1μg/mlのDOX(Invitrogen,Carlasbad,CA)に移した。4週間後、iPSC-様コロニーを、手作業で採取し、そして、6継代にわたって、マトリゲル被覆MEFプレートで増殖させ、その後、少なくとも15継代にわたって、0.1%ゼラチン被覆MEFプレートへと移した。iPSCの特徴決定は、SSEA3+、SSEA4+、TRA-1-60、及び、TRA-1-81(Biolegend,San Diego,CA)に対する抗体を使用したフローサイトメトリーで測定された表面抗原発現、及び、多能性発現マーカー:DMNT3B、ABCG2、REX1、OCT4、SOX2、NANOG、cMYC、KLF4などを含むRT-qPCR分析に基づいた。iPSCの核型分析を、Gバンディングで行って、目視可能な核型を生成した。これらの細胞が複数の異なる系統に分化する能力は、PCR生殖層アッセイ(Qiagen.Germantown,MD,USA)を用いて行った。
【0172】
Wntシグナル伝達経路の活性化、線維芽細胞成長因子シグナル伝達経路の阻害、及び、Rho関連のコイルドコイル含有プロテインキナーゼシグナル伝達経路の阻害によって、特徴決定したiPSCを、RPEに分化した。geltrexマトリックスに載せた8チャンバースライドで、プレート接着によって、増殖し、色素沈着した細胞を精製した。濃縮した細胞を、立方体形状の石畳の外観になるまで培養した。iPS-RPEの特性を、遺伝子発現、免疫細胞化学、及び、顕微鏡検査で確認した。繊毛の長さを、ARL 1
3B、及び、ペリセントリンの固定及び染色をした後に測定した。繊毛の長さを、Wistar Imaging Facility(Wistar Institute,Philadelphia,PA)がデザインしたカスタムデザインソフトウェアを使用して、3次元で測定した。
【0173】
繊毛を、密度と長さについて、コントロール、及び、LCA5 iPSC-RPE細胞株で評価する。2名のLCA5患者に由来するRPE細胞に存在する繊毛は、野生型細胞株よりも著しく少ない。加えて、LCA5由来株の繊毛は、野生型細胞の繊毛よりも著しく短い。
【0174】
LCA5患者が、中心窩外核層を含む光受容体を、最大で30年間保持できる、ことが以前から認められていた。(21、29)。遺伝子治療の成功には、細胞の存在が欠かせないので(たとえ病気であっても)、LCA5光受容体は、治療に適し得る。LCA5を有する成体に保持された光受容体が、正常な視力の個体の光受容体と同様の光応答性の時間的パターンを示した(振幅は減少したが)ことを本実施例が実証したという事実は、希望となるものである。これらの結果は、これらの異常な網膜の残存光受容体が、構造的及び機能的欠陥にもかかわらず生存可能である、という事実をさらに支持した。さらに、LCA患者由来iPSC-RPE細胞の繊毛は、野生型コントロール細胞の繊毛よりも著しく短かった。Lca5-/-マウスの光受容体での絨毛の欠損が、遺伝子増強療法によって修正できるという事実は、この病態のヒトに存在する絨毛欠損を改善し得る、ことを示唆した。iPSC由来のRPE細胞の絨毛の欠損をインビトロで修正することを目的とした研究が、現在行われている。
【0175】
LCA5を用いたヒトでの遺伝子増強療法は、その安全性と有効性を試験するために研究が行われている。この重度の盲目病態に対する適切なアウトカム測定法を開発する必要性に加えて、本出願は、救済を達成する上での制限の拡大を含めて、ヒト臨床試験の計画における幾つかの課題の解決策を提供した。Lca5-/-マウスでは、新生児(PN5)マウスと若年(PN15)マウスの双方で、救済を実証した。このマウスモデルでは、光受容体が早期に喪失するため、疾患の後期に治療介入は見られなかった。マウスモデルの発達の異常(光受容体の変性と一致する)は、疾患の発達要素がある、ことを示唆した。同様に、ヒトの病態にも発達要素がある可能性があった。上記したように、LCA5を有するヒトでは、成人であっても、幾つかの黄斑光受容体の持続性についての証拠がある。(21)これらの光受容体の機能を改善する方法を決定するための研究、ならびに、RPE65遺伝子治療の臨床試験に登録したヒトの皮質視覚の蘇生に成功したという事実に基づいて、何十年にもわたって視力の低下に悩まされた後であっても、LCA5を有するヒトにおける視覚経路の蘇生の可否を決定するための研究が進められている。(4、30、31)
【0176】
実施例7:Lca5-/-マウスの遺伝子型決定
以下のオリゴ類:LCA-13F6(共通F)GCCTGTTCCTGCTTGCTTAC(配列番号13として含めた);LCA-13R2(WTリバース)TGCTTTCCAAAGTAAGCACAAA(配列番号14として含めた)を使用して、ゲノムDNAを、PCR増幅した。
【0177】
en2.8r(変異体リバース)CCTGGCCTCCAGACAAGTAG(配列番号15として含めた)。PCRは、50℃のアニーリング温度、72℃の伸長ステップで、35サイクル実行した。予測した産物は、353bp(野生型)、及び、439bp(Lca5-/-)であった。
【0178】
実施例8:AAV7m8.hLCA5の硝子体内注射は、Lca5-/-マウスの光受容
体機能を、概ねWTレベルにまで回復する
早期に発症する視力喪失は、光受容体の健常性と機能に対して重要なタンパク質であるレベルシリンをコードする遺伝子であるLCA5の変異に起因する。光受容体の相体的保存があるので、LCA5疾患は、遺伝子増強療法に適し得る。AAV7m8.CMV/CBA.hLCA5の硝子体内送達を使用する遺伝子増強療法の可能性は、試験したLca5マウスモデル(Lca5-/-)において、多電極アレイ(MEA)を使用して、光受容体と網膜機能を回復する。
【0179】
生後5日目に、Lca5-/-マウスに対して、5%(v/v)AAV7m8.CBA.GFPを混合したAAV7m8.CMV/CBA.hLCA5(約9.87×1010vg/眼)を硝子体内に注射した。反対側の眼には注射を行わず、ネガティブコントロールとして使用した。治療介入の3ヶ月後に、光に適応した条件下で、Lca5-/-網膜を、赤色光の下で切開し、そして、有孔のMEAチャンバーに神経節細胞側を下にして置いた。ポジティブコントロールとして、年齢が一致する未処置の野生型マウス(C57Bl/6)に対して、同じ解剖及び準備手順を行った。GFPの存在により、光受容体がAAVに曝露されたことを確認した。暗所視及び明所視強度範囲での455nm光の更正した全視野閃光(0.1 Hzで10 2秒閃光、または、4Hzで400 50ミリ秒閃光)を、光刺激に使用した(M-及びS-錐体の双方を標的として応答検出の機会を最大化するために青色光を使用しており、M-及びS-錐体の励起効率は、それに応じて、約40%と0.2%とする)。Matlabのカスタムコードを使用してデータを分析し、Pllexon Offline Sortingを使用して、スパイク選別を行った。
【0180】
3ヶ月後に、無傷の網膜を有する眼の内、5個の内の3個が、強い光応答を実証しており、1個は、応答の中央値を示し、そして、1個は、MEA記録を使用して試験したときに最小限の応答を示した。強い応答を示す3個の網膜では、暗所視範囲(42~112光子×s-1×μm-2)で光応答が検出可能になり、そして、2.00×10光子×s-1×μm-2の最も明るい明所強度まで、強い応答が認められた。一方で、注射していない反対側の眼の網膜での応答は、最小限のものか、ないしは、消失を示した。桿体/錐体駆動応答で予想したように、最も明るい刺激シリーズへ曝露した後に、暗所応答は消失したが、明所視範囲の応答は有意な影響を受けなかった。応答の動態と感度は、同一プロトコルで試験した5つのWT網膜で認められたものと非常に似ていた(処置した網膜の感度は、最も感度の高いWT網膜と比較してわずかに低く、桿体駆動応答を生成する最も暗い閃光は、8~21光子×s-1×μm-2の範囲にあった)。注射の2ヶ月後に試験をした処置済網膜の1つは、より低い光感度(1.52×10光子×s-1×μm-2の明所視強度で開始した応答)を示しており、また、最も明るい曝露を受けた後に大半の応答が消失していた。このことは、標的タンパク質の十分な発現と、機能的な桿体/錐体外節の生成には、3ヶ月が必要であり得る、ことを示している。全視野刺激下でのWT網膜で識別可能なすべての神経節細胞型(ON、OFF-、及び、ON/OFF型)は、スパイク選別後のLca5-/-処置した網膜で検出された。WT網膜と同様に、処置したLca5-/-網膜は、3.53×10~2.00×10光子×s-1×μm-2の強度範囲で、4Hzのフリッカー刺激に応答した。7個のコントロールの未処置Lca5-/-網膜の内の1個だけが、残存する錐体機能を示し得る明るい明所視刺激で非常に弱い光応答を実証した。すべての未処置Lca5-/-網膜は、光感受性処置したLca5-/-網膜には存在しなかった、明るい強度で緩慢なメラノプシン駆動応答を実証した。
【0181】
処置したLca5-/-網膜の内の2個は、注射後に傷病の兆候があり、強い自己発光性があるにもかかわらず、光応答を示さなかった。処置した網膜の1個は、注射後に傷病の明らかな兆候を示さなかったが、刺激強度の明るい側の端部(8.07×10光子×s-1×μm-2以上)で、非常に弱い光応答だけを示しており、このことは、標的タンパク質の低発現、及び/または、残存する弱い錐体機能の指標となり得る。
【0182】
注射が成功し、そして、標的タンパク質を発現し、及び、桿体/錐体外節の機能を回復するのに十分な注射後の時間が与えられると、遺伝子治療は、変性網膜細胞を、WT状態とほとんど区別できない状態にまで回復する。
【0183】
すなわち、LCAそれ自体が、最も重度の網膜変性疾患の1つであり、また、LCA5は、このカテゴリで最も重度のサブタイプの1つである。大抵の場合、LCA5患者は、生涯の早い段階で光の知覚のみを享受し、そして、眼振が故に、これらの超低視力の対象での視覚機能の構造研究や特殊試験を実施することさえ困難である。したがって、この疾患は、アプローチが難しいと考えられる。しかしながら、Lca5-/-マウスの表現型は、LCA5変異を有するヒトの臨床所見の多くを反映している。Lca5-/-マウスの救済データは、ヒトにおけるのと同様の遺伝子増強法が、視力を改善するとの希望をもたらす。ヒトの臨床試験につながる前臨床試験と並行して、LCA5網膜の構造と機能を正確に測定する方法論を開発して、臨床試験における遺伝子治療の効果を確実かつ正確に捕捉できるようにすることが重要である。このような研究と遺伝子治療の臨床試験は、この壊滅的な病態の処置につながるだけでなく、その他の重度の早期発症盲目状態への治療介入の効果を測定するための枠組みをも提供する。
【0184】
実施例9:ヒトにおけるLCA5疾患の予備分析
ホモ接合型LCA5変異を有するヒト成人に存在する残存光受容体における機能の証拠の有無を判定するために、PLR試験を行った。図S11に示したように、PLRは、正常な視力を有する個体と同じ時間列で、この個体にも存在した。しかしながら、正常な視力の個体と比較して、応答の振幅はかなり減少していた。
【0185】
実施例10:レベルシリンの喪失は、細胞モデル及び動物モデルにおいて、RPE成熟と繊毛機能の調節不全を招く
レーバー先天性黒内障5(LCA5)の視覚系に発生する病理学的変化である、レベルシリンをコードするLCA5遺伝子の発現の喪失に起因する疾患を調査した。これまでの研究は、神経網膜、特に、光受容体に対するレベルシリン欠乏の有害な影響を解明してきた。この研究は、網膜色素上皮(RPE)の発達と機能に対する正常なLCA5発現の寄与に焦点を当てることで、LCA5に至る病因メカニズムをさらに解明することを目的としたものである。
【0186】
2つの独立した実験パラダイムを実施した:1つは、正常な視力を有する個体とLCA5を有する個体の双方に由来する人工多能性幹細胞(iPSC)に由来するRPE細胞を生成して使用した。RPE細胞の形態、色素沈着、細胞特異的マーカー、及び、原発性絨毛の特性を測定した。第2の方法は、LCA5欠損のマウスモデル(Lca5gt/gtマウス)の網膜と比較して、野生型マウスの網膜の研究を評価した。空間時間的分化パターンを、LCA5タンパク質の欠如に起因する視覚系で発生する変性と発達との間の変化を線引きするために、特徴決定した。
【0187】
それらの結果は、ヒトRPE細胞モデルと、生存しているマウスのRPEの双方におけるLCA5欠損が、これらの細胞の発達に重大な変化を招く、ことを実証している。遺伝子発現分析を通じて、我々は、繊毛形成と鞭毛内輸送、色素沈着、及び、発達過程にあるWNTシグナル伝達経路に関与する重要なタンパク質の調節不全を特定した。免疫染色は、LCA5タンパク質機能の喪失に起因する成熟の変化と符合する上皮バリアの違いも特定した。
【0188】

この研究は、潜在的に、細胞内輸送の阻害による、または、間接的に、これらの細胞の成熟進行を遅延させることによる、色素沈着などのプロセスの変化を通じて、RPEにお
けるLCA5抑制という有害な効果を明らかにする。この研究において、我々は、伝統的に光受容体の機能不全に起因すると考えられている網膜病理におけるRPE細胞の潜在的な主要な役割を紹介する。
【0189】
本明細書で引用したすべての特許、特許公報、及び、その他の刊行物、ならびに、優先権出願である2017年3月1日に出願した米国仮特許出願第62/465,649号、及び、2017年3月10日に出願した米国仮特許出願第62/469,642号は、本明細書の一部を構成するものとして援用する。同様に、本明細書に参照され、かつ、添付した配列表に認められる配列番号を、本明細書の一部を構成するものとして援用する。本発明を、特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の要旨から逸脱せずとも修正を加えることが可能である、ことは理解されよう。そのような修正は、添付した特許請求の範囲に該当する、ことを意図している。
【0190】
(配列表フリーテキスト)
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【表4】
【0191】
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図1-1】
図1-2】
図1-3】
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図2-1】
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【配列表】
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