(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】大麦若葉搾汁液の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20230117BHJP
A23L 19/00 20160101ALN20230117BHJP
A23L 2/00 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A23L19/00 Z
A23L2/00 B
(21)【出願番号】P 2020032604
(22)【出願日】2020-02-28
(62)【分割の表示】P 2019106887の分割
【原出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100080953
【氏名又は名称】田中 克郎
(74)【代理人】
【識別番号】230103089
【氏名又は名称】遠山 友寛
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 純平
(72)【発明者】
【氏名】西田 直紀
(72)【発明者】
【氏名】矢作 裕子
(72)【発明者】
【氏名】大関 菖平
(72)【発明者】
【氏名】大西 優香
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-051753(JP,A)
【文献】特開2008-086311(JP,A)
【文献】特開平09-047252(JP,A)
【文献】特開平05-007471(JP,A)
【文献】特開2016-155796(JP,A)
【文献】特開2009-072125(JP,A)
【文献】特開2005-328844(JP,A)
【文献】特開2014-161319(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163442(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/064703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦若葉搾汁液の製造方法であって、
大麦若葉を切断する切断工程と、
切断した前記大麦若葉を、70.0~99.0℃で1.0~10.0分間加熱するブランチング工程と、
加熱した前記大麦若葉に、
原料として投入した前記大麦若葉の重量に対して、0.3倍以上の量の水を加える加水工程と、
前記量の前記水
と一緒に前記大麦若葉を微細化する微細化工程と、
微細化した前記大麦若葉を搾汁し、搾汁液を得る搾汁工程と、を備える、
大麦若葉搾汁液の製造方法。
【請求項2】
前記切断工程後、前記ブランチング工程前に、切断した大麦若葉を洗浄する洗浄工程をさらに備え、
該洗浄工程が、水中に大麦若葉を浸漬する工程、及び/又は、大麦若葉に散水する工程を含む、
請求項1に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
【請求項3】
前記加水工程において加える前記水の量が、原料として投入した前記大麦若葉の重量に対して、0.5~
5.0倍である、
請求項1又は2に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
【請求項4】
前記加水工程後、前記微細化工程前に、前記水を加えた前記大麦若葉を破砕する予備微細化工程をさらに備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
【請求項5】
前記切断工程において、平均長さが1.0~15.0cmである前記大麦若葉を得る、
請求項1~4のいずれか一項に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
【請求項6】
前記微細化工程において、平均長さが0.1~20.0mmである前記大麦若葉を得る、
請求項1~5のいずれか一項に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
【請求項7】
前記搾汁工程において、可溶性固形分0.1~4.0%の搾汁液を得る
請求項1~6のいずれか一項に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
【請求項8】
前記搾汁液を殺菌する殺菌工程と
殺菌した前記搾汁液を容器に充填する充填工程、あるいは、
前記搾汁液を容器に充填する充填工程と
充填した前記搾汁液を殺菌する殺菌工程、のいずれかを有し、
前記容器に充填した
殺菌後の搾汁液を-40~0℃で保管する保管工程と、をさらに備える、
請求項1~7のいずれか1項に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
【請求項9】
前記切断工程、前記加水工程、前記微細化工程、及び前記搾汁工程において、前記大麦若葉を平均5~60℃となるように調整し、かつ、
前記切断工程、前記加水工程、前記微細化工程、及び前記搾汁工程の合計所要時間が、
10~30分とする、
請求項1~8のいずれか1項に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大麦若葉搾汁液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青汁飲料は、簡易に野菜成分を摂取できる健康食品として利用されている。このような青汁飲料は、一般に、植物の緑葉を主原料とする乾燥粉末の状態で保管されて、流通し、飲用直前に水などに溶解して調製される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、青汁飲料を液体の状態で流通させようとする場合には、上記乾燥粉末を水などに溶解したものを、常法に従い加熱殺菌したうえで、容器詰めすることが一般的であると考えらえる。しかしながら、乾燥粉末を水などに溶解させた青汁飲料は、原料が植物の緑葉であるために、容器詰めの際の加熱殺菌工程において熱による劣化を受けやすく、これによって、加熱しない場合の青汁飲料の有する緑色が褐色化したり、加熱しない場合の青汁飲料の有するにおいが減少したり、また加熱に起因すると考えられるにおいが発生したりすることがわかってきた。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、一時的な加熱処理をした場合であっても、色調の変化が少なく、においの減少及び発生が抑制された搾汁液の製造方法、並びに、大麦若葉搾汁液の加熱劣化臭抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、所定の工程を経て得られる搾汁液が、上記課題を解決しうることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
大麦若葉搾汁液の製造方法であって、
大麦若葉を切断する切断工程と、
切断した前記大麦若葉を、70.0~99.0℃で1.0~10.0分間加熱するブランチング工程と、
加熱した前記大麦若葉に、原料として投入した前記大麦若葉の重量に対して、0.3倍以上の量の水を加える加水工程と、
前記量の前記水と一緒に前記大麦若葉を微細化する微細化工程と、
微細化した前記大麦若葉を搾汁し、搾汁液を得る搾汁工程と、を備える、
大麦若葉搾汁液の製造方法。
〔2〕
前記切断工程後、前記ブランチング工程前に、切断した大麦若葉を洗浄する洗浄工程をさらに備え、
該洗浄工程が、水中に大麦若葉を浸漬する工程、及び/又は、大麦若葉に散水する工程を含む、
〔1〕に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
〔3〕
前記加水工程において加える前記水の量が、原料として投入した前記大麦若葉の重量に対して、0.5~5.0倍である、
〔1〕又は〔2〕に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
〔4〕
前記加水工程後、前記微細化工程前に、前記水を加えた前記大麦若葉を破砕する予備微細化工程をさらに備える、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
〔5〕
前記切断工程において、平均長さが1.0~15.0cmである前記大麦若葉を得る、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
〔6〕
前記微細化工程において、平均長さが0.1~20.0mmである前記大麦若葉を得る、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
〔7〕
前記搾汁工程において、可溶性固形分0.1~4.0%の搾汁液を得る
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
〔8〕
前記搾汁液を殺菌する殺菌工程と殺菌した前記搾汁液を容器に充填する充填工程、あるいは、
前記搾汁液を容器に充填する充填工程と充填した前記搾汁液を殺菌する殺菌工程、のいずれかを有し、
前記容器に充填した殺菌後の搾汁液を-40~0℃で保管する保管工程と、をさらに備える、
〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
〔9〕
前記切断工程、前記加水工程、前記微細化工程、及び前記搾汁工程において、前記大麦若葉を平均5~60℃となるように調整し、かつ、
前記切断工程、前記加水工程、前記微細化工程、及び前記搾汁工程の合計所要時間が、
10~30分とする、
〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の大麦若葉搾汁液の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一時的な加熱処理をした場合であっても、色調の変化が少なく、においの減少及び発生が抑制された搾汁液の製造方法、並びに、大麦若葉搾汁液の加熱劣化臭抑制方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0010】
〔大麦若葉搾汁液の製造方法〕
本実施形態の大麦若葉搾汁液の製造方法は、大麦若葉を切断する切断工程と、切断した前記大麦若葉を、70.0~99.0℃で1.0~10.0分間加熱するブランチング工程と、加熱した前記大麦若葉に、水を加える加水工程と、前記水を加えた前記大麦若葉を微細化する微細化工程と、微細化した前記大麦若葉を搾汁し、搾汁液を得る搾汁工程と、を備える。
【0011】
〔切断工程〕
切断工程は、大麦若葉を切断する工程である。ここで、原料となる大麦若葉は、イネ科の植物である大麦の若い葉の部分である。特に限定されないが、10~30cmに育った大麦の若い葉の部分を摘採し、摘採した大麦若葉を生葉の状態で使用することができる。繊維質で細長く薄い葉である大麦若葉は、そのまま微細化工程や搾汁工程やその他の工程に供するには長尺であり、各工程で処理器を停滞させ、また、十分に各工程において目的とする処理を実施できない恐れがある。そのため、本実施形態においては、切断工程において大麦若葉を切断する。
【0012】
切断工程において、切断後の大麦若葉の平均長さは、好ましくは1.0~15.0cmであり、より好ましくは1.0~10.0cmであり、さらに好ましくは1.0~7.0cmであり、特に好ましくは1.0~5.0cmである。大麦若葉を細かく切断するほど、後工程における停滞が抑制され、十分な処理を実施できる傾向にある。一方で、大麦若葉を荒く切断するほど、切断工程における処理効率がより向上する傾向にある。なお、平均長さは、切断後の大麦若葉を任意に100本採取し、その平均として求めることができる。
【0013】
切断方法は、細長い大麦若葉を、葉の伸びる方向に直行する方向で切断できれば特に制限されない。ただし、上述したように大麦若葉は繊維質であるため、包丁のように一枚刃で切断する切断方法よりも、はさみのように上下の刃がかみ合うことにより切断する切断方法のほうが、切断の確実性及び切断工程の効率性の観点から好ましい。
【0014】
また、特に制限はされないが、後述する洗浄工程よりも前に切断工程を行うことが好ましい。大麦若葉に水分が付着した状態で切断を行うと、切断刃に大麦若葉が付着し、切断の確実性及び切断工程の効率性が低下する恐れがある。もっとも、洗浄工程後に、大麦若葉を乾燥させてから切断工程を行えば、このような切断の確実性及び切断工程の効率性の低下は回避できるが、乾燥工程を経ることによる製造方法全体の効率性の低下はもとより、乾燥による大麦若葉への負担は回避できない。そのため、洗浄工程を先に行うことが通常の野菜の処理であるとしても、切断工程が優先されることが好ましい。
【0015】
〔洗浄工程〕
本実施形態の製造方法は、大麦若葉を洗浄する洗浄工程を備えていてもよい。洗浄方法としては、特に制限されないが、例えば、洗浄槽内で水中に大麦若葉を浸漬する浸漬洗浄法や、ベルトコンベアなどの板の上に並べた大麦若葉に散水する散水洗浄法が挙げられる。洗浄工程を行うことにより、土壌菌や土、その他不純物を洗い流すことができる。特に、浸漬洗浄法及び/又は散水洗浄法を行うことが好ましい。なお、洗浄工程は、上述した理由から、切断工程後に行われることが好ましい。また、洗浄工程は、後述するブランチング工程前に行われることが好ましい。なお、洗浄工程において使用する水の温度は、特に制限されないが、常温程度が好ましく、例えば5~35℃が好ましい。
【0016】
〔ブランチング工程〕
ブランチング工程は、切断した大麦若葉を、70.0~99.0℃で1.0~10.0分間加熱する工程である。このような加熱処理を行うことにより、大麦若葉の酵素により促進される劣化を抑制することができ、また、得られる搾汁液が有する大麦若葉のにおいや甘味がより向上する傾向にある。
【0017】
ブランチング工程の処理温度は、70.0~99.0℃であり、好ましくは75.0~98.0℃であり、より好ましくは80.0~97.0℃であり、さらに好ましくは85.0~97.0℃である。ブランチング工程の温度の温度が70.0℃以上であることにより、上記ブランチング工程の目的が達せられる。一方で、ブランチング工程の温度が低いほど、大麦若葉が熱により硬化することが抑制される傾向にある。熱による大麦若葉の硬化を抑制することにより、繊維質な大麦若葉を粉砕したり微細化したりする処理の効率がより向上する。
【0018】
また、ブランチング工程の処理時間は、1.0~10.0分であり、好ましくは1.0~7.0分であり、より好ましくは1.0~5.0分であり、さらに好ましくは1.0~3.0分である。ブランチング工程の処理時間が1.0分以上であることにより、上記ブランチング工程の目的が達せられる。一方で、ブランチング工程の処理時間が10.0分以下であることにより、過剰な加熱処理により、得られる搾汁液が有する色調の低下や、大麦若葉のにおいの低下を抑制することができ、さらには、過加熱によるにおいの発生や大麦若葉の熱による硬化を抑制することができる。
【0019】
ブランチングの具体的な方法としては、特に制限されないが、大麦若葉を乗せたコンベアが熱水槽を通過することにより、大麦若葉が所定の温度の熱水中を通過する方法や、大麦若葉を乗せたコンベアに対して、スチームを吹き付けるあるいはスチームで満たされた空間を通過させる方法が考えられる。なお、ブランチングにおいて熱水やスチームを使用する場合は、ブランチング後の大麦若葉と使用した熱水やスチームなどの外的に付加した水分は可能な限り分離する。
【0020】
〔加水工程〕
加水工程は、ブランチングにより加熱した大麦若葉に、水を加える工程である。ブランチング後の大麦若葉に加水することで、大麦若葉の温度を急激に下げることができる。これにより、ブランチング工程における残熱が取り除かれ、得られる搾汁液が有する色調の低下や、大麦若葉のにおいの低下を抑制することができ、さらには、過加熱によるにおいの発生や大麦若葉の熱による硬化を抑制することができる。熱による大麦若葉の硬化を抑制することにより、繊維質な大麦若葉を粉砕したり微細化したりする処理の効率がより向上する。また、熱による大麦若葉の硬化抑制以外にも、適量の水と一緒に大麦若葉を破砕ないし微細化することで、処理効率がより向上する。
【0021】
加水方法としては、特に制限されず、例えば、ブランチング工程後に熱水と分離された大麦若葉に対して、添加する方法が挙げられる。加水工程において加える水の量は、原料として投入した大麦若葉の重量に対して、好ましくは0.1~5.0倍であり、より好ましくは0.3~3.0倍であり、さらに好ましくは0.5~2.0倍である。加水工程において加える水の量が多いほど、残熱の取り除き効果が高くなり、それに伴う、得られる搾汁液が有する色調の低下や、大麦若葉のにおいの低下を抑制することができ、さらには、過加熱によるにおいの発生や大麦若葉の熱による硬化抑制や、後述する破砕処理ないし微細化処理の効率がより向上する傾向にある。また、加水工程において加える水の量が少ないほど、後述する予備微細化工程や微細化工程で、加えた水の中を大麦若葉が泳いでしまうことにより工程の効率が低下するような事態を抑制できる傾向にある。
【0022】
加水工程で加水する水の水温は、好ましくは0~40℃であり、より好ましくは0~30℃であり、さらに好ましくは0~25℃である。水温が上記範囲内であることにより、上記加水工程の各目的をより効率的に達することができる。
【0023】
〔予備微細化工程〕
本実施形態の製造方法は、加水工程後、微細化工程前に、水を加えた大麦若葉を破砕する予備微細化工程を備えていてもよい。本実施形態における予備微細化工程は、微細化工程の前段処理に位置付けられ、切断工程で1.0~15.0cm程度に切断された大麦若葉を、微細化処理をしやすい程度にさらに細断あるいはすりつぶしを行う工程である。目安として、大麦若葉の大きさが、微細化工程で使用する装置で規定される最大原料サイズ以下となるまで破砕することが考えられる。予備微細化工程を経て得られる大麦若葉の具体的な大きさは、特に制限されないが、好ましくは9.5mm以下であり、より好ましくは9.0mm以下である。予備微細化工程を経ることにより、微細化処理において、装置のつまりが抑制され処理効率がより向上する傾向にある。
【0024】
〔微細化工程〕
微細化工程は、水を加えた大麦若葉を微細化する工程である。微細化方法としては、さらなる細断、すりつぶしが挙げられる。特に、本実施形態においては、細断とすりつぶしの両方を行うことが好ましい。目安として、この微細化工程を経て得られる大麦若葉の具体的な大きさが、続く搾汁工程の処理に適するサイズまで微細化することが好ましく、微細化工程後の大麦若葉は加水した水と合わさって、ピューレ状となる程度に微細化されることが好ましい。このような観点から、微細化工程を経て得られる大麦若葉の平均長さは、特に制限されないが、好ましくは0.1~20.0mmであり、より好ましくは0.1~5mm以下であり、さらに好ましくは0.1~3mm以下であり、特に好ましくは0.1~2mm以下である。
【0025】
〔搾汁工程〕
搾汁工程は、微細化した大麦若葉を搾汁し、搾汁液を得る工程である。搾汁方法としては、特に制限されないが、例えば、デカンタ遠心搾汁、スクリュープレス搾汁、ベルト搾汁、濾過搾汁などが挙げられる。このなかでも、固形分と搾汁される液の重量バランスから、大麦若葉の場合はデカンタ遠心法が好ましい。搾汁工程において得られる搾汁液の可溶性固形分は、特に制限されないが、好ましくは0.1~4.0%、さらに好ましくは0.2~4.0%、特に好ましくは0.5~4.0%である。
【0026】
〔殺菌工程・充填工程〕
本実施形態の製造方法は、搾汁液を殺菌する殺菌工程と搾汁液を容器に充填する充填工程をさらに有していてもよい。なお、殺菌工程及び充填工程の順序は特に限定されず、充填前の搾汁液に対して、殺菌工程を行っても、容器に充填した後に殺菌工程を行ってもよい。
【0027】
搾汁液を充填する容器としては、特に制限されないが、例えば、金属缶(スチール缶、アルミニウム缶など)、PET容器、紙容器、ガラス瓶等を挙げることができる。また、搾汁液は、濃縮加工したものを容器詰したもの(コンク)であっても、購入後にそのまま飲用することができるRTD(Ready To Drink)であってもよい。
【0028】
殺菌処理の条件としては、特に制限されないが、例えば、飲料原料として供給する場合は、120~140℃で10~30秒処理する方法が挙げられる。
【0029】
〔保管工程〕
本実施形態の製造方法は、容器に充填した搾汁液を-40~0℃で保管する保管工程をさらに有していてもよい。上記殺菌工程を経た搾汁液は、低温下で安定した品質で保管することができる。
【0030】
〔その他〕
上記切断工程、加水工程、微細化工程、及び搾汁工程において、大麦若葉を平均5~60℃となるように調整することが好ましい。大麦若葉の平均温度は、好ましくは5~50℃であり、より好ましくは5~40℃であり、さらに好ましくは5~30℃である。大麦若葉の温度を低く保つことにより、得られる搾汁液が有する色調の低下や、大麦若葉のにおいの低下を抑制することができ、さらには、加熱によるにおいの発生を抑制することができる。また、同様の観点から、切断工程、加水工程、微細化工程、及び搾汁工程の合計所要時間は、好ましくは10~30分である。
【0031】
〔大麦若葉搾汁液〕
上記のようにして得られる大麦若葉搾汁液は、そのまま濃縮又は加水して飲料としてもよいし、他の容器詰飲料の原料として用いることもできる。
【0032】
〔大麦若葉搾汁液の加熱劣化臭抑制方法〕
本実施形態の大麦若葉搾汁液の加熱劣化臭抑制方法は、大麦若葉を切断する切断工程と、切断した前記大麦若葉を、70.0~99.0℃で1.0~10.0分間加熱するブランチング工程と、加熱した前記大麦若葉に、水を加える加水工程と、前記水を加えた前記大麦若葉を微細化する微細化工程と、微細化した前記大麦若葉を搾汁し、搾汁液を得る搾汁工程と、を備える。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕
採取した大麦若葉を、上下の二枚刃がかみ合うことにより大麦若葉を裁断する裁断機に投入し、平均長さが1.0cmとなるよう切断した(切断工程)。次いで、裁断した大麦若葉を洗浄槽で洗浄し、その後さらにシャワー洗浄を行った(洗浄工程)。そして、洗浄後の大麦若葉を温水槽に搬送して、95℃の温水で3分間の加熱処理を行い、温水から引き揚げた(ブランチング工程)。温水から引き揚げた大麦若葉に対し、原料として投入した大麦若葉と同じ重量の水を加え(加水工程)、コミトロールプロセッサ(アーシェルジャパン社製)を用いて平均長さが2.0mmとなるように微細化を行った(微細化工程)。微細化後、ピューレ状になった大麦若葉の液を、デカンタ型遠心分離器により搾汁し、大麦若葉の搾汁液を得た(搾汁工程)。
【0035】
そして、その後、137℃、30秒で殺菌処理をし、缶容器に搾汁液を充填して蓋をして、大麦若葉飲料を得た。
【0036】
〔実施例2〕
切断工程において、平均長さが5.0cmとなるように大麦若葉を切断したこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。
【0037】
〔実施例3〕
切断工程において、平均長さが15.0cmとなるように大麦若葉を切断したこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。
【0038】
〔実施例4〕
ブランチング工程において、70℃の温水で10分間の加熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。
【0039】
〔実施例5〕
ブランチング工程において、99℃の温水で1分間の加熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。
【0040】
〔実施例6〕
加水工程において、温水から引き揚げ後の大麦若葉の3倍の重量の水を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。
【0041】
〔実施例7〕
加水工程において、温水から引き揚げ後の大麦若葉の0.5倍の重量の水を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。
【0042】
〔実施例8〕
加水工程後に、ミクログレーダー(イケサン社製、型式:MCG600)を用いて破砕を行い(予備微細化工程)、その後、平均長さが1.0mmとなるように微細化工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。
【0043】
〔実施例9〕
加水工程後に、ミクログレーダー(イケサン社製、型式:MCG600)を用いて破砕を行い(予備微細化工程)、その後、平均長さが2.0mmとなるように微細化工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。
【0044】
〔実施例10〕
加水工程後に、ミクログレーダー(イケサン社製、型式:MCG600)を用いて破砕を行い(予備微細化工程)、その後、平均長さが10.0mmとなるように微細化工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。
【0045】
〔実施例11〕
前記洗浄工程において、シャワー洗浄を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。
【0046】
〔実施例12〕
前記洗浄工程において、洗浄槽による洗浄を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。
【0047】
〔比較例1〕
切断工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。しかしながら、大麦若葉の切断を行わなかったため、微細化工程がスムーズに行えず、大麦若葉がブランチング後の熱い状態で滞留した。高温下での滞留により搾汁液の新鮮香の減少と劣化臭の発生が生じた。
【0048】
〔比較例2〕
ブランチング工程において、95℃の温水で15分間の加熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。
【0049】
〔比較例3〕
ブランチング工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。しかしながら、微細化が進行し難く、それ以降の製造ラインにおいて滞留が発生した。また、ブランチングを行なわなかったことによって、えぐみが強い搾汁液となり、新鮮香を感じづらくなった。
【0050】
〔比較例4〕
加水工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、大麦若葉飲料を得た。しかしながら、加水工程を行わなかったため、それ以降の製造ラインにおいて大麦若葉が比較的高温の状態で処理された。
【0051】
〔評価〕
上記のようにして得られた各大麦若葉飲料の色調、大麦若葉飲料の有するにおい、加熱に起因して大麦若葉飲料に発生したと考えられるにおいについて評価した。なお、これら評価は、8人のパネラーに委託して行い、各評価項目について以下に示す基準で行った。ここで、表中の数値は、パネラーの評価の平均値を算出し、小数点を四捨五入したものである。
【0052】
また、上記評価に際し、下記コントロール1及び2を基準として採用した。
【0053】
〔コントロール1〕
粉末大麦若葉(佐々木食品工業社製)5gを水100gに分散させて調整した。そして、その後、137℃、30秒で殺菌処理をし、缶容器に調製した液を充填して蓋をして、コントロール飲料を得た。
【0054】
〔コントロール2〕
実施例9により得られた大麦若葉飲料をコントロール飲料とした。
【0055】
<色調>
殺菌前のコントロール1の液と、缶に充填した後のコントロール1の液を比較し、褐色変化を確認した。また、殺菌前のコントロール2の搾汁液と、缶に充填した後のコントロール2の大麦若葉飲料を比較し、褐色変化を確認した。その結果、コントロール2のほうが、褐色変化が少なかった。これをもとに、さらに各実施例比較例を以下の基準で評価した。
4:コントロール2と同等の褐変である
3:コントロール1と2の中間程度の褐変である
2:コントロール1と同等の褐変である
1:コントロール1よりも褐変している
【0056】
なお、コントロール1及び2においては、50℃又は70℃で殺菌した場合についても、褐色変化について確認したが、温度が高くなるほど、褐色変化の度合いが大きくなり、特に、70℃を超えると、その変化が顕著となることが分かった。
【0057】
<加熱劣化臭>
殺菌前のコントロール1の液と、缶に充填した後のコントロール1の液のにおいを比較し、増加した傾向のにおいを、加熱に起因すると考えられるにおい(加熱劣化臭)として定義した。また、殺菌前のコントロール2の搾汁液と、缶に充填した後のコントロール2の大麦若葉飲料のにおいを比較し、増加した傾向のにおいを、加熱に起因すると考えられるにおい(加熱劣化臭)として定義した。その結果、コントロール2のほうが、加熱に起因すると考えられる匂いが少なかった。これをもとに、さらに各実施例比較例を以下の基準で評価した。
4:コントロール2と同等の加熱劣化臭である
3:コントロール1と2の中間程度の加熱劣化臭である
2:コントロール1と同等の加熱劣化臭である
1:コントロール1よりも強い加熱劣化臭を感じる
【0058】
なお、コントロール1及び2においては、50℃又は70℃で殺菌した場合についても、加熱に起因すると考えられるにおいについて確認したが、温度が高くなるほど、匂いの発生が大きくなり、特に、50℃を超えた時点で、既にその変化が顕著となることが分かった。
【0059】
<新鮮香>
殺菌前のコントロール1の液と、缶に充填した後のコントロール1の液のにおいを比較し、減少した傾向のにおいを、加熱しない場合の飲料の有するにおい(新鮮香)として定義した。また、殺菌前のコントロール2の搾汁液と、缶に充填した後のコントロール2の大麦若葉飲料のにおいを比較し、減少した傾向のにおいを、加熱しない場合の大麦若葉飲料の有するにおい(新鮮香)として定義した。その結果、コントロール2のほうが、加熱しない場合の大麦若葉飲料の有する匂いが多かった。これをもとに、さらに各実施例比較例を以下の基準で評価した。
4:コントロール2と同等の新鮮香である
3:コントロール1と2の中間程度の新鮮香である
2:コントロール1と同等の新鮮香である
1:コントロール1よりも弱い新鮮香を感じる
【0060】
なお、コントロール1及び2においては、50℃又は70℃で殺菌した場合についても、加熱しない場合の飲料の有するにおいについて確認したが、温度が高くなるほど、匂いの減少が大きくなり、特に、50℃を超えた時点で、既にその変化が顕著となることが分かった。
【0061】
【表1】
C :工程を実施した
- :工程又は測定を実施しなかった
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、大麦若葉から搾汁液を得る方法として、産業上の利用可能性を有する。