(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0242 20230101AFI20230117BHJP
【FI】
G06Q30/02 382
(21)【出願番号】P 2020050184
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】319013263
【氏名又は名称】ヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【氏名又は名称】沖田 壮男
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】上岡 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】下羅 弘樹
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-144916(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208662(WO,A1)
【文献】特開2017-045435(JP,A)
【文献】国際公開第2010/084610(WO,A1)
【文献】特開2017-097801(JP,A)
【文献】特開2012-008765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツに対するユーザの接触の有無を示す接触情報と、前記コンテンツに対するユーザの状態を示す状態情報とを取得する取得部と、
取得された前記接触情報および前記状態情報を用いて、前記コンテンツに接触したユーザの内の第1ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第1割合と、前記コンテンツに非接触のユーザの内の前記第1ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第2割合と、前記コンテンツに非接触のユーザの内の第2ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第3割合と、に基づく指標値を算出する第1算出部と、
を備
え、
前記第1算出部は、前記第3割合に対する、前記第1割合から前記第2割合を減算することにより得られる減算値の割合を示す前記指標値を算出し、
前記コンテンツは、広告またはウェブページである、
情報処理装置。
【請求項2】
前記第1算出部は、認知度が互いに異なる複数のコンテンツの各々について、前記指標値を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記指標値は、最大値が1である、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記状態情報は、前記コンテンツに関するアンケートに対する前記ユーザの回答結果を示す情報を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1算出部により算出された前記指標値の信頼区間を算出する第2算出部をさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第1算出部により算出された前記指標値と、前記第2算出部により算出された前記信頼区間とを表示部に表示させる出力制御部をさらに備える、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータにより、
コンテンツに対するユーザの接触の有無を示す接触情報と、前記コンテンツに対するユーザの状態を示す状態情報とを取得し、
取得された前記接触情報および前記状態情報を用いて、前記コンテンツに接触したユーザの内の第1ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第1割合と、前記コンテンツに非接触のユーザの内の前記第1ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第2割合と、前記コンテンツに非接触のユーザの内の第2ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第3割合と、に基づく指標値を算出する、
情報処理方法
であって、
前記指標値は、前記第3割合に対する、前記第1割合から前記第2割合を減算することにより得られる減算値の割合を示し、
前記コンテンツは、広告またはウェブページである、
情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
コンテンツに対するユーザの接触の有無を示す接触情報と、前記コンテンツに対するユーザの状態を示す状態情報とを取得させ、
取得された前記接触情報および前記状態情報を用いて、前記コンテンツに接触したユーザの内の第1ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第1割合と、前記コンテンツに非接触のユーザの内の前記第1ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第2割合と、前記コンテンツに非接触のユーザの内の第2ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第3割合と、に基づく指標値を算出させる、
プログラム
であって、
前記指標値は、前記第3割合に対する、前記第1割合から前記第2割合を減算することにより得られる減算値の割合を示し、
前記コンテンツは、広告またはウェブページである、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザがインターネットを介してウェブページにアクセスした際に、そのウェブページに広告を掲載し、広告主のウェブページにユーザを誘導する広告配信の仕組みが採用されている。このような広告配信において、広告の効果を測定する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の広告の効果の測定手法では、広告の対象となる商品、サービス等の市場における認知度の影響を強く受け、その効果を適切に評価することができない場合があった。例えば、リスク比等の指標を用いた効果測定の場合、広告掲載前の広告の対象の認知度が低い場合には、広告掲載により認知度が高まりやすく指標値が高く算出されるが、広告掲載前の広告の対象の認知度が高い場合には、広告掲載により認知度が高まりにくく指標値が低く算出される傾向があった。このため、市場における認知度が互いに異なる広告間での効果の比較を行うことができなかった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、コンテンツの効果を正確に測定することが可能な情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、コンテンツに対するユーザの接触の有無を示す接触情報と、前記コンテンツに対するユーザの状態を示す状態情報とを取得する取得部と、取得された前記接触情報および前記状態情報を用いて、前記コンテンツに接触したユーザの内の第1ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第1割合と、前記コンテンツに非接触のユーザの内の前記第1ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第2割合と、前記コンテンツに非接触のユーザの内の第2ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第3割合と、に基づく指標値を算出する第1算出部と、を備える、情報処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、コンテンツの効果を正確に測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る情報処理装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】実施形態に係る情報処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係るユーザ状態リストの一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る集計結果の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る効果測定結果の一例を示す図である。
【
図6】リスク比の最大最小範囲を説明する図である。
【
図7】実施形態に係るOTRの最大最小範囲を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0010】
[概要]
実施形態の情報処理装置は、ユーザがコンテンツに接触することに伴う、コンテンツの効果を測定する。「コンテンツ」とは、広告、ウェブページ、各種イベント等の所定の目的でユーザに提供される情報、サービスを意味する。「広告」には、インターネット広告、テレビ広告、ラジオ等を介した音声広告、紙媒体広告等が含まれる。「インターネット広告」には、静止画の広告、動画の広告等が含まれる。「コンテンツに接触する」とは、ウェブページに掲載されたコンテンツを表示装置に表示させること、テレビ画面にコンテンツを表示させること等、ユーザがコンテンツを認識可能な状態に至ることを意味する。
【0011】
以下においては、「コンテンツ」がウェブページに表示されるインターネット広告であり、「コンテンツに接触する」とはユーザの操作に基づいてインターネット広告が表示装置に表示されることである場合を例に挙げて説明する。
【0012】
[機能構成]
図1は、実施形態に係る情報処理装置100の機能構成を示す機能ブロック図である。
図1には、情報処理装置100に加えて、端末装置10、サービス提供装置20、および広告配信サーバ30を合わせて示している。情報処理装置100は、ネットワークNWを介して、端末装置10、サービス提供装置20、および広告配信サーバ30と接続される。ネットワークNWは、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)、プロバイダ装置、無線基地局、専用回線等のうち一部または全部を含む。
【0013】
端末装置10は、サービス提供装置20によって提供される情報を利用するユーザによって操作される。端末装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等の携帯電話やタブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant)等のコンピュータ装置である。サービス提供装置20によって提供される情報には、例えば、ブラウザによって参照されるウェブページの他、アプリケーションプログラムによって参照されるアプリページが含まれる。これらのウェブページおよびアプリページは、検索サイト、ニュースサイト、ショッピングサイト、オークションサイト、SNS(Social Networking Service)サイト、ゲームサイト等を構成するページである。
【0014】
端末装置10は、ユーザから所定の操作を受け付けると、予めインストールされたブラウザによって、サービス提供装置20によって提供されるウェブページを表示する。このウェブページには、広告が含まれている。また、端末装置10は、ユーザから所定の操作を受け付けると、予めインストールされたアプリケーションを介してサービス提供装置20と通信を行い、アプリケーション上で表示或いは再生するデータを取得する。このデータは、例えば、動画データや、画像データ、音声データ、テキストデータ等であり、広告が含まれている。
【0015】
サービス提供装置20は、インターネット上において、上述した検索サイトやショッピングサイト等のウェブページを提供するウェブサーバ装置であってよいし、アプリケーションが起動された端末装置10と通信を行って、各種情報の受け渡しを行うアプリケーションサーバ装置であってもよい。
【0016】
サービス提供装置20は、ウェブページを生成する際、例えば、広告配信サーバ30から広告を示す情報(例えば、広告のURL(Uniform Resource Locator))を取得する。そして、サービス提供装置20は、ウェブページの一部の領域(広告配信枠)に、少なくとも1つの広告のURLを含むウェブページを端末装置10に送信する。端末装置10は、広告のURLに基づいて、広告に対応するデータ(画像、音声、その他)のリクエストを広告配信サーバ30に送信することで、広告に対応するデータを取得する。そして、端末装置10は、ウェブページに基づく画像の一部に取得した広告の画像を埋め込んで表示する。なお、サービス提供装置20は、ウェブページの広告配信枠に、画像やテキストを含む少なくとも1つの広告を埋め込んだウェブページを生成して端末装置10に送信してもよい。なお、アプリケーションによって広告が再生される場合も、同様の処理が行われる。このように、広告が端末装置10に表示されることで、サービス提供装置20には、この広告に対するアクセスログ(「アクセスログL1」)が蓄積される。
【0017】
また、サービス提供装置20は、ウェブページの一部の領域に、広告に関連付けられたアンケートを含むウェブページを端末装置10に送信する。このアンケートは、ユーザに対して、広告に関連付けられた所定の質問に対する回答を要求するものである。このアンケートには、例えば、広告の対象となる商品、サービス等(以下、「対象商品等」と呼ぶ)を知っているか否かの質問、対象商品等が好きか嫌いかの質問、対象商品等を買いたいか否かの質問、対象商品等が良いか悪いかの質問等が含まれる。ユーザが端末装置10に表示されたウェブページに含まれるアンケートに回答した場合、サービス提供装置20には、このアンケートに対する回答結果(「アンケート結果L2」)が蓄積される。
【0018】
広告配信サーバ30は、サービス提供装置20から受信した広告の配信要求に応じて、広告の情報をサービス提供装置20に送信する。また、広告配信サーバ30は、端末装置10からの広告に対応するデータのリクエストを受信し、広告に対応するデータを端末装置10に送信する。
【0019】
情報処理装置100は、ユーザが広告に接触することに伴う、広告の効果を測定する。情報処理装置100は、ユーザが広告に接触することに伴い、対象商品等に対するユーザ状態(ユーザの心理状態等)がどのように変化したのかを測定する。ユーザ状態の変化とは、例えば、ユーザの状態が、「第1ユーザ状態」と「第2ユーザ状態」との間で互いに変化することを意味する。「第1ユーザ状態」と、「第2ユーザ状態」とは、例えば、互いに反する状態である。第1ユーザ状態は、例えば、広告掲載の結果として広告主がユーザに対して望む状態である。第2ユーザ状態は、例えば、広告掲載の結果として広告主がユーザに対して望まない状態である。(第1のユーザ状態、第2のユーザ状態)の組には、例えば、(対象商品等を知っている、対象商品等を知らない)、(対象商品等が好き、対象商品等が嫌い)、(対象商品等を買いたい、対象商品等を買いたくない)、(対象商品等が良い、対象商品等が悪い)が含まれる。以下においては、(第1のユーザ状態、第2のユーザ状態)の組が、(対象商品等を知っている、対象商品等を知らない)である場合を例に挙げて説明する。
【0020】
情報処理装置100は、例えば、通信部110と、入力インターフェース115と、表示部120と、制御部130と、記憶部140とを備える。通信部110は、例えば、NIC等の通信インターフェースを含む。通信部110は、ネットワークNWを介して、サービス提供装置20等と通信する。
【0021】
入力インターフェース115は、情報処理装置100を操作する操作者による各種の入力操作を受け付ける。入力インターフェース115は、操作者による入力操作を受け付けると、受け付けた入力操作を電気信号に変換して制御部130に出力する。例えば、入力インターフェース115は、マウス、キーボード、タッチパネル等を含む。
【0022】
表示部120は、各種の情報を表示する。例えば、表示部120は、制御部130により算出された効果測定結果や、各種の入力操作を受け付けるインターフェース画面を表示する。表示部120は、例えば、ディスプレイ等を含む。
【0023】
制御部130は、情報処理装置100の動作を制御する。制御部130は、例えば、取得部131と、一方向遷移率(One-way Transition Rate:OTR)を算出するOTR算出部133と、信頼区間算出部135と、出力制御部137とを備える。
【0024】
取得部131は、通信部110を介して、サービス提供装置20から、アクセスログL1と、アンケート結果L2とを取得する。アクセスログL1は、「接触情報」の一例である。アンケート結果L2は、「状態情報」の一例である。すなわち、取得部131は、効果測定の対象のコンテンツに対するユーザの接触の有無を示す接触情報と、コンテンツに対するユーザの状態を示す状態情報とを取得する。
【0025】
OTR算出部133は、ユーザ状態の変化(コンテンツの効果)の指標値であるOTRを算出する。OTR算出部133は、サービス提供装置20から取得されたアクセスログL1およびアンケート結果L2に基づいてユーザ状態リストD1を生成して、記憶部140に記憶させる。また、OTR算出部133は、生成したユーザ状態リストD1を用いてユーザ状態ごとのユーザ数をカウントして集計結果D2を生成して、記憶部140に記憶させる。OTR算出部133は、生成した集計結果D2に基づいて、OTRを算出する。OTR算出部133は、算出したOTRを、効果測定結果D3として記憶部140に記憶させる。OTR算出部133は、「第1算出部」の一例である。OTRは、「指標値」の一例である。OTR算出部133の処理の詳細については後述する。
【0026】
信頼区間算出部135は、OTR算出部133により算出されたOTRに対する信頼区間を算出する。信頼区間算出部135は、算出した信頼区間を、効果測定結果D3として記憶部140に記憶させる。信頼区間算出部135は、「第2算出部」の一例である。信頼区間算出部135の処理の詳細については後述する。
【0027】
出力制御部137は、OTR算出部133により算出された広告ごとのOTRを表示部120に表示させる。出力制御部137は、OTRに加えて、信頼区間算出部135により算出された信頼区間を表示部120に表示させてもよい。なお、出力制御部137は、OTRを含む情報、または、OTRおよび信頼区間の両方を含む情報を、テキストデータや、音声データとして出力してもよい。
【0028】
情報処理装置100の制御部130の各構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ(あるいはプロセッサ回路)が、記憶部140に記憶されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、制御部130の構成要素のうち一部または全部は、例えば、は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェア(回路部:circuitry)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。また、プロセッサにより参照されるプログラムは、予め記憶部140に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体が情報処理装置100のドライブ装置に装着されることで記憶媒体から記憶部140にインストールされてもよい。
【0029】
記憶部140は、例えば、ユーザ状態リストD1と、集計結果D2と、効果測定結果D3とを記憶する。記憶部140は、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SDカード、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disc Drive)、レジスタ等によって実現される。また、記憶部140は、部分的に、或いは全部がNAS(Network Attached Storage)や外部ストレージサーバ装置等であってもよい。ユーザ状態リストD1と、集計結果D2と、効果測定結果D3とは、同一の記憶装置に格納されてもよいし、それぞれ異なる記憶装置に格納されてもよい。
【0030】
[処理フロー]
以下、情報処理装置100の処理について説明する。
図2は、情報処理装置100の処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、サービス提供装置20には、アクセスログL1と、アンケート結果L2とが予め記憶されているものとする。
図2に示すフローチャートは、例えば、情報処理装置100の操作者が入力インターフェース115を操作して対象の広告(以下、「広告A」と呼ぶ)に関する効果測定を指示した場合に開始される。
【0031】
まず、制御部130の取得部131は、通信部110を介して、サービス提供装置20から、アクセスログL1およびアンケート結果L2を取得する(ステップS101)。
【0032】
次に、OTR算出部133は、取得されたアクセスログL1およびアンケート結果L2に基づいて、集計処理を実行する(ステップS103)。まず、この集計処理において、OTR算出部133は、取得されたアクセスログL1およびアンケート結果L2に基づいて、ユーザ状態リストD1を生成して、記憶部140に記憶させる。
図3は、ユーザ状態リストD1の一例を示す図である。
図3に示すように、ユーザ状態リストD1には、ユーザを識別するユーザIDと、広告Aに接触したか否か(接触/非接触)を示す情報と、広告Aの対象商品等を知っているか否か(知っている/知らない)を示すユーザ状態とが関連付けられたレコードが多数含まれる。
【0033】
広告Aに接触したか否かを示す情報は、アクセスログL1から抽出される。すなわち、アクセスログL1に、広告AのURLにあるユーザがアクセスしたことを示すログが含まれている場合、このユーザは広告Aに「接触」したと判定される。一方、アクセスログL1に、広告AのURLにあるユーザがアクセスしたことを示すログが含まれていない場合、このユーザは、広告Aに「非接触」であると判定される。
【0034】
広告Aを知っているか否かを示すユーザ状態は、アンケート結果L2から抽出される。すなわち、あるユーザが広告Aと関連付けられたアンケートに回答済みであり、このアンケート結果が「広告Aの対応商品等を知っている」ことを示している場合、このユーザは、「広告Aの対応商品等を知っている」と判定される。一方、あるユーザが広告Aと関連付けられたアンケートに回答済みであり、アンケート結果が「広告Aの対応商品等を知らない」ことを示している場合、このユーザは、「広告Aの対応商品等を知らない」と判定される。あるユーザが広告Aと関連付けられたアンケートに回答済みでない場合(アンケート結果が存在しない場合)、このユーザは「-(データ無し)」と判定される。
【0035】
次に、この集計処理において、OTR算出部133は、生成したユーザ状態リストD1に基づいて、集計結果D2を生成して、記憶部140に記憶させる。
図4は、集計結果D2の一例を示す図である。
図4に示すように、集計結果D2には、ユーザ状態ごと、接触状態ごと、のユーザ数のカウント値のデータが含まれる。すなわち、集計結果D2には、「広告Aの対象商品等を知っている(第1ユーザ状態)」且つ「広告Aに非接触」のユーザ数aである“10”と、「広告Aの対象商品等を知らない(第2ユーザ状態)」且つ「広告Aに非接触」のユーザ数bである“90”と、「広告Aの対象商品等を知っている(第1ユーザ状態)」且つ「広告Aに接触」のユーザ数cである“20”と、「広告Aの対象商品等を知らない(第2ユーザ状態)」且つ「広告Aに接触」のユーザ数cである“80”とが含まれる。なお、OTR算出部133は、上記のユーザ状態リストD1を生成せずに、アクセスログL1およびアンケート結果L2から直接的に集計結果D2を生成してもよい。
【0036】
次に、OTR算出部133は、生成した集計結果D2に基づいて、OTRを算出する(ステップS105)。OTR算出部133は、算出したOTRを、効果測定結果D3として記憶部140に記憶させる。OTR算出部133は、例えば、以下の式(1)によってOTRを算出する。式(1)におけるa,b,c,dは、
図4に示すユーザ数a,ユーザ数b,ユーザ数c,ユーザ数dと対応する。
【0037】
【0038】
上記の式(1)において、c/(c+d)の項、a/(a+b)の項、b/(b+a)の項の各々は、「第1割合」、「第2割合」、「第3割合」の一例である。すなわち、OTR算出部133は、取得された接触情報および状態情報を用いて、コンテンツに接触したユーザの内の第1ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第1割合と、コンテンツに非接触のユーザの内の第1ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第2割合と、コンテンツに非接触のユーザの内の第2ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第3割合と、に基づく指標値を算出する。例えば、OTR算出部133は、第3割合に対する、第1割合から第2割合を減算することにより得られる減算値の割合を示す指標値を算出する。
【0039】
以下、比較のため、従来技術におけるリスク比を用いた、広告の効果測定の手法を示す。従来技術におけるリスク比(RR)は、例えば、以下の式(2)によって算出される。式(2)におけるa,b,c,dは、
図4に示すユーザ数a,ユーザ数b,ユーザ数c,ユーザ数dと対応する。
【0040】
【0041】
上記の式(2)に示されるように、従来技術の広告の効果測定では、広告に非接触であるユーザの内の広告を知っているユーザの割合に対する、広告に接触したユーザの内の広告を知っているユーザの割合をリスク比として算出していた。すなわち、従来技術の広告の効果測定では、広告への接触により、広告を知っているユーザの割合がどれだけ増大したかを示すリスク比を指標値として採用していた。しかしながら、このリスク比を用いた場合、広告掲載前の対象商品等の市場における認知度が低い場合には、広告掲載により認知度が高まりやすく指標値が高く算出されるが、広告掲載前の対象商品等の市場における認知度が高い場合には、広告掲載により認知度が高まりにくく指標値が低く算出される傾向があった。
【0042】
図6は、従来技術におけるリスク比の最大最小範囲を説明する図である。
図6に示すように、広告掲載前の対象商品等の元の認知率をrとすると、リスク比-1(RR-1)の最大値RR-1_maxは(1-r)/rと表すことができる。元の認知率rが大きくなるほど、この最大値RR-1_maxの取り得る値は小さくなる。すなわち、広告掲載前の段階で、既に、対象商品等の認知度が高い場合には、リスク比が低く算出される傾向があった。このため、市場における認知度が互いに異なる広告間での効果の比較を適切に行うことができなかった。
【0043】
一方、上記の式(1)に示されるように、本実施形態の広告の効果測定では、広告に非接触であるユーザの内の広告を知らないユーザの割合に対する、広告に接触したユーザの内の広告を知っているユーザの割合から広告に非接触であるユーザの内の広告を知っているユーザの割合を減算することにより得られる減算値の割合を、OTRとして算出する。すなわち、本実施形態の広告の効果測定では、広告への接触により、広告に非接触であり且つ対象商品等を知らないユーザのうち、どれだけのユーザが対象商品等を知っているユーザに変化したか(遷移したか)を示す指標値であるOTRを採用する。OTRは、値が大きいほど広告の効果が高かったこと(例えば、広告への接触により対象商品等を知っているユーザ割合が増えたこと)を示す。
【0044】
図7は、本実施形態におけるOTRの最大最小範囲を説明する図である。
図7に示すように、広告掲載前の対象商品等の元の認知率をrとすると、OTRの最大値OTR_maxは、元の認知率rによって変化せず、1となる。このため、本実施形態では、このようなOTRを指標値として採用することで、認知度が互いに異なる複数のコンテンツであってもそれらの効果の比較を適切に行うことができる。
【0045】
次に、信頼区間算出部135は、OTR算出部133により算出されたOTRに対する信頼区間を算出する(ステップS107)。信頼区間算出部135は、算出した信頼区間を、効果測定結果D3として記憶部140に記憶させる。信頼区間算出部135は、例えば、以下の式(3)~(8)によって信頼区間を算出する。式中におけるa,b,c,dは、
図4に示すユーザ数a,ユーザ数b,ユーザ数c,ユーザ数dと対応する。
【0046】
【0047】
上記の式(3)において、以下の式(4)の項は、上記のリスク比に準じた形を取っているため、リスク比の一態様と見なすことができる。このため、以下の式(5)により、信頼区間を算出することできる。
【0048】
【0049】
【0050】
上記の式(5)において、例えば、90%信頼区間は、以下の式(6)により、算出される。
【0051】
【0052】
上記の式(6)に式(4)および(5)を代入すると、以下の式(7)のようになる。
【0053】
【0054】
ここで、上記の式(3)および(4)において、OTR=1-RRであるため、OTRの90%信頼区間は、以下の式(8)となる。
【0055】
【0056】
図4に示す集計結果D2においてカウント対象となるユーザ数(サンプル数)が増えるにつれて、信頼区間の値は高くなる。このような、信頼区間を算出することで、OTR算出部133により算出されたOTRの確度を評価することができる。
【0057】
図5は、効果測定結果D3の一例を示す図である。この効果測定結果D3には、例えば、「広告A」について、OTRが「0.5」であり、90%の信頼区間が「0.4~0.6」である評価結果が含まれている。
【0058】
次に、出力制御部137は、効果測定結果D3から、効果測定の対象の広告である「広告A」のOTRおよび信頼区間の情報を、表示部120に表示させる(ステップS109)。出力制御部137は、OTRおよび信頼区間の情報に加えて、リスク比の情報を、表示部120に表示させてもよい。情報処理装置100の操作者は、表示部120に表示された効果測定結果を参照することで、効果測定の対象の広告の効果を確認することができる。例えば、操作者は、市場の状態(認知度)を加味した広告効果を確認したい場合にはリスク比の情報の確認し、一方、市場の状態(認知度)に影響されない広告効果を確認したい場合にはOTRおよび信頼区間の情報を確認する。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0059】
上記に実施形態では、情報処理装置100が、ネットワークNWを介して、サービス提供装置20からアクセスログL1およびアンケート結果L2を取得して広告の効果測定を行う構成を説明したがこれに限られない。情報処理装置100は、ネットワークNWを介さずに、操作者が入力インターフェース115を操作して、評価対象の広告に対するユーザの接触情報およびアンケート結果を入力することで、広告の効果測定を行うスタンドアローン型の構成を採用してもよい。また、広告の効果測定を希望する利用者のクライアント端末装置が、サーバ装置である情報処理装置100にアクセスすることで、クライアント端末装置が広告の効果測定の結果を取得できるような構成を採用してもよい。
【0060】
以上において説明した実施形態によれば、コンテンツに対するユーザの接触の有無を示す接触情報と、前記コンテンツに対するユーザの状態を示す状態情報とを取得する取得部131と、取得された前記接触情報および前記状態情報を用いて、前記コンテンツに接触したユーザの内の第1ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第1割合と、前記コンテンツに非接触のユーザの内の前記第1ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第2割合と、前記コンテンツに非接触のユーザの内の第2ユーザ状態にあるユーザの割合を示す第3割合と、に基づく指標値を算出するOTR算出部133(第1算出部)と、を備えることで、コンテンツの効果を正確に測定することができる。特に、本実施形態によれば、市場の状態に左右されず、市場における認知度が互いに異なるコンテンツ間での効果の比較を適切に行うことができる。
【0061】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0062】
10…端末装置
20…サービス提供装置
30…広告配信サーバ
100…情報処理装置
110…通信部
115…入力インターフェース
120…表示部
130…制御部
131…取得部
133…OTR算出部
135…信頼区間算出部
137…出力制御部
140…記憶部
NW…ネットワーク