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特許72120201種類または複数種類の集団エピセンサス抗原を含むHIVワクチン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】1種類または複数種類の集団エピセンサス抗原を含むHIVワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/21 20060101AFI20230117BHJP
   C07K 14/16 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230117BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20230117BHJP
   C12N 15/49 20060101ALN20230117BHJP
   C12N 15/863 20060101ALN20230117BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20230117BHJP
   C12N 15/861 20060101ALN20230117BHJP
   C12N 15/869 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
A61K39/21
C07K14/16
A61P31/18
A61K35/76
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/49
C12N15/863 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N15/869 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020170852
(22)【出願日】2020-10-09
(62)【分割の表示】P 2017538177の分割
【原出願日】2015-10-05
(65)【公開番号】P2021035946
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/059,497
(32)【優先日】2014-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/059,506
(32)【優先日】2014-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521222051
【氏名又は名称】トライアド ナショナル セキュリティ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】504303229
【氏名又は名称】オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニバーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】317014002
【氏名又は名称】ブイアイアール バイオテクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ブラエニング エリック
(72)【発明者】
【氏名】フリュー クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ピッカー ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ケルバー ベット ティー.エム.
(72)【発明者】
【氏名】タイラー ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル エミリー
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/131099(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0123485(US,A1)
【文献】特表2007-505624(JP,A)
【文献】国際公開第2014/138209(WO,A1)
【文献】KORBER, BETTE T. M,LANL/NEW MEXICO CONSORTIUM HIV VACCINE DESIGN AND ANALYSIS,[ONLINE],LOS ALAMOS NATIONAL LABORATORY,2014年07月07日,PP10,http://permalink.lanl.gov/object/tr?what=info:lanl-repo/lareport/LA-UR-14-25023
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO: 719のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、SEQ ID NO: 722~725のいずれか一つのアミノ酸配列をさらに含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、SEQ ID NO: 723のアミノ酸配列をさらに含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、SEQ ID NO: 709~712および726~729のいずれか一つのアミノ酸配列をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、SEQ ID NO: 710のアミノ酸配列をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、SEQ ID NO: 709~712および726~729のいずれか一つのアミノ酸配列をさらに含む、請求項2記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、SEQ ID NO: 710のアミノ酸配列をさらに含む、請求項3記載のポリペプチド。
【請求項8】
SEQ ID NO: 706のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項記載のポリペプチドおよび担体を含む、抗HIV-1免疫応答を誘導するための薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項記載のポリペプチドおよび担体を含む、抗HIV-1ワクチン。
【請求項11】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)バックボーンまたはアカゲザルサイトメガロウイルス(RhCMV)バックボーンを含むベクターであって、該HCMVバックボーンまたは該RhCMVバックボーンが、請求項1~8のいずれか一項記載のポリペプチドを含む抗原をコードする核酸配列を含む、ベクター。
【請求項12】
(a)前記HCMVバックボーンまたは前記RhCMVバックボーンが、UL130-128遺伝子領域を欠くか、
(b)前記HCMVバックボーンまたは前記RhCMVバックボーンが、テグメントタンパク質pp71をコードするUL82遺伝子を欠くか、または
(c)前記HCMVバックボーンまたは前記RhCMVバックボーンが、UL130-128遺伝子領域およびテグメントタンパク質pp71をコードするUL82遺伝子を欠く、
請求項11記載のベクター。
【請求項13】
前記核酸配列が、SEQ ID NO: 719のポリペプチドを含む抗原をコードする、請求項11~12のいずれか一項記載のベクター。
【請求項14】
前記核酸配列が、SEQ ID NO: 706のポリペプチドを含む抗原をコードする、請求項11~13のいずれか一項記載のベクター。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項9記載の薬学的組成物、請求項10記載のワクチン、または請求項11~14のいずれか一項記載のベクターを含む、対象において、抗HIV-1免疫応答を誘導するための組成物。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項9記載の薬学的組成物、請求項10記載のワクチン、または請求項11~14のいずれか一項記載のベクターを含む、対象において、抗HIV-1エフェクターメモリーT細胞応答を誘導するための組成物。
【請求項17】
請求項1~8のいずれか一項記載のポリペプチド、請求項9記載の薬学的組成物、請求項10記載のワクチン、または請求項11~14のいずれか一項記載のベクターを含む、対象において、HIV-1感染を処置またはHIV-1感染から保護するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年10月3日に出願された米国仮特許出願第62/059,497号および2014年10月3日に出願された米国仮特許出願第62/059,506号に基づく優先権の恩典を主張し、前記米国仮特許出願のそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
電子形式で提出される配列表の参照
本願と共に提出されるASCIIテキストファイル(名称: 3525.010PC02 Seq listing_ST25.txt;サイズ: 3,634,253バイト;および作成日: 2015年10月5日)中の、電子形式で提出される配列表の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0003】
発明の分野
本願の主題は概してHIVに関し、具体的にはHIVワクチンに関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
2013年には、約230万例の新規ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、3500万人を超えるHIV保因者、および160万例の後天性免疫不全症候群(AIDS)死があった。HIV/AIDSの処置には大きな進歩があったが、HIVを持って生きている人々は皆、その後生涯にわたって抗レトロウイルス療法(ART)による処置を受けることが必要になる。薬物療法では、約1/106細胞の頻度で休止CD4+ T細胞中に存在する潜伏ウイルスリザーバー(viral reservoir)を一掃することができないからである。Eriksson, S. 2013. PLoS Pathog 9:e1003174(非特許文献1)参照。
【0005】
潜伏HIVリザーバーを取り除くための主な戦略は、一般に、ヒストン-デアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を使って潜伏ウイルスを再活性化することを目標としているが、HDAC阻害剤を使った臨床研究では、潜伏リザーバーが常に一貫して減少するわけではなかった。その理由の一つはおそらく、HIV特異的CD8+ T細胞が休止CD4+ T細胞を排除できないことにあるのだろう。
【0006】
既存の感染を持つ個体からHIV-1が一掃されたと記録されている症例は数例しかない。HIV-1を持って生きる推定3500万人の人々は、効果的な治療法が開発されるまでは、根絶へのあらゆる取り組みに耐えたウイルスリザーバーを抑制するために、抗ウイルス薬を服用し続けることになる。
【0007】
AIDSの治療は達成困難であったが、最近の研究では、厳格な免疫学的制御を行うことで、時間をかけてHIVを一掃可能であることが示唆されている。具体的に述べると、シミアン免疫不全ウイルス(SIV)抗原を発現するサイトメガロウイルス(CMV)系ベクターによるワクチン接種を受けたアカゲザル(rhesus macaque: RM)は、最初は感染したものの、感染の1~2年後に、いくつかの厳格な基準で、SIVは検出不能だった。この結果は、これらの研究において使用された強毒性SIVmac239株がこれまであらゆるワクチンの試みを挫折させてきたという事実に照らすと、より一層、注目に値する。これらの結果は、現行のパラダイムを、予防用HIVワクチンに焦点を合わせたものから、HIV/AIDSの免疫療法がついにこのパンデミックに対する闘いの根幹になるものへと拡大させた。このように、予防用ワクチンだけでなく、HIV-1を持って生きている人々を処置するための効果的な治療法も依然として必要とされている。具体的に述べると、臨床試験のための準備として、予防用および治療用HIVワクチンをデザインし、製造し、試験することが、依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Eriksson, S. 2013. PLoS Pathog 9:e1003174
【発明の概要】
【0009】
HIV/SIV Gag、Nef、Pol、Envに対応するアミノ酸配列(完全長配列、その一部分、またはそれらの任意の組み合わせを含む)を含む1種類または複数種類のEpiGraph抗原配列を含むHIV/SIVポリペプチドを、本明細書に提供する。HIV/SIV Gag、Nef、Pol、Env、またはそれらの組み合わせに対応するアミノ酸配列を含む1種類または複数種類の集団エピセンサス抗原(population episensus antigen)配列を含むHIV/SIVポリペプチドも、本明細書に提供する。1種類または複数種類の集団エピセンサス抗原配列を含むHIV/SIVポリペプチドを含む1つまたは複数の担体も、本明細書に提供する。さらに、HIV/SIV Gag、Nef、Pol、Env、またはそれらの組み合わせに対応するアミノ酸配列を含む1種類または複数種類のテーラード抗原(tailored antigen)配列を含むHIV/SIVポリペプチドを、本明細書に提供する。本開示のHIV/SIVポリペプチドは、1種類または複数種類のHIV-1テーラード抗原を含むことができ、該ポリペプチドは、SEQ ID NO:692~696およびSEQ ID NO:754~789からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。1種類または複数種類のテーラード抗原配列を含むHIV/SIVポリペプチドを含む1つまたは複数の担体も、本明細書に提供する。SEQ ID NO:691~789を有するEpiGraph抗原配列を、本明細書に提供する。
【0010】
1つまたは複数の担体と1種類または複数種類の集団エピセンサス抗原とを含むHIV-1ワクチンを、本明細書に提供する。集団エピセンサス抗原と1種類または複数種類のテーラード抗原とを発現する能力を有するベクターを含むHIV-1ワクチンも、本明細書に提供する。
【0011】
いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、Gag、Pol、Nef、Env、Tat、Rev、Vpr、Vif、またはVpuからのエピトープを含む。いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、2つ以上のHIV-1集団エピセンサス抗原を含む融合抗原である。いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は米国におけるHIV-1クレードBエピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、南アフリカにおけるHIV-1クレードCエピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、タイにおけるHIV-1クレード2地域的エピデミック(regional epidemic)の中心をなす。いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原はHIV-1グループMグローバル集合の中心をなす。
【0012】
いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、Gagからのエピトープを含む。いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、HIV-1の保存領域からのエピトープを含む。いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、Gag、Pol、またはNefの保存領域からのエピトープを含む。いくつかの態様において、Gagの保存領域からのエピトープは、Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである。
【0013】
いくつかの態様において、HIV-1テーラード抗原は、Gag、Pol、Nef、Env、Tat、Rev、Vpr、Vif、またはVpuからのエピトープを含む。いくつかの態様において、HIV-1テーラード抗原は、HIV-1グループMグローバル集合の中心をなす。いくつかの態様において、HIV-1テーラード抗原は、南アフリカにおけるHIV-1クレードCエピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、HIV-1テーラード抗原は、米国におけるHIV-1クレードBエピデミックの中心をなす。
【0014】
さらに、その必要のある対象に、有効量の前記のHIV-1ワクチを投与する工程を含む、対象におけるHIV-1感染を防止または処置するための方法を提供する。さらに、個体中のHIV-1ウイルスを配列決定する工程、地理的領域内の多様性を最適にカバーするようにデザインされたワクチン抗原を選択する工程、および前記ワクチン抗原をベクター中に挿入する工程を含む、対象のためのHIV-1ワクチンをデザインし、生産する方法を提供する。その必要がある対象に、本明細書に開示する有効量のワクチンを投与する工程を含む、対象におけるHIV-1感染を処置する方法も、本明細書に提供する。
【0015】
1つまたは複数の担体と、EpiGraphアプローチを使って決定した集団エピセンサス抗原とを含むHIV-1ワクチンも、本明細書に提供する。さらに、EpiGraph抗原アミノ酸配列選択法を使って生成させたワクチン抗原アミノ酸配列を使って、地理的領域内の多様性を最適にカバーするようにワクチン抗原をデザインする方法、およびデザインされたワクチン抗原を生産する方法を、本明細書に提供する。さらに、配列決定によって個体中のHIV-1ウイルスのアミノ酸配列を決定する工程、EpiGraph抗原アミノ酸配列選択法を使って生成させたワクチン抗原アミノ酸配列を使って、地理的領域内の多様性を最適にカバーするようにデザインされたワクチン抗原を選択する工程、および前記ワクチン抗原をベクターに挿入する工程を含む、対象のためのHIV-1ワクチンをデザインし、生産する方法を、本明細書に提供する。
【0016】
1種類または複数種類のEpiGraphアミノ酸配列を決定する工程、1種類または複数種類のEpiGraph抗原アミノ酸配列と1つまたは複数の担体とを含むワクチンを作製する工程、および前記ワクチンを、その必要のある対象に投与する工程を含む、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法も、本明細書に提供する。さらに、その必要がある対象に、有効量の前記のHIV-1ワクチンを投与する工程を含む、対象におけるHIV-1を処置する方法も提供する。また、その必要がある対象に、有効量の前記のHIV-1ワクチンを投与する工程を含む、対象において、HIV-1感染から保護する方法も、本明細書に提供する。
[本発明1001]
1つまたは複数の担体とEpiGraphアプローチを使って決定される1種類または複数種類の集団エピセンサス抗原(population episensus antigen)とを含むHIV-1ワクチン。
[本発明1002]
担体が、DNA、タンパク質、またはベクターである、本発明1001のワクチン。
[本発明1003]
ベクターがウイルスベクターまたは細菌ベクターである、本発明1002のワクチン。
[本発明1004]
ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、風疹ウイルス、センダイウイルス、ラブドウイルス、アルファウイルス、またはアデノ随伴ウイルスのバックボーンを含む、本発明1003のワクチン。
[本発明1005]
ウイルスベクターがサイトメガロウイルス(CMV)バックボーンを含む、本発明1003のワクチン。
[本発明1006]
CMVバックボーンがヒトCMV(HCMV)バックボーンまたはアカゲザルCMV(RhCMV)バックボーンである、本発明1005のワクチン。
[本発明1007]
CMVバックボーンがUL130-128遺伝子領域を欠く、本発明1005または1006のワクチン。
[本発明1008]
CMVバックボーンが、テグメントタンパク質pp71をコードするUL82遺伝子を欠く、本発明1005~1007のいずれかのワクチン。
[本発明1009]
集団エピセンサス抗原が、Gag、Pol、Nef、Env、Tat、Rev、Vpr、Vif、またはVpuからのエピトープを含む、本発明1001~1008のいずれかのワクチン。
[本発明1010]
集団エピセンサス抗原がGagエピトープを含む、本発明1009のワクチン。
[本発明1011]
集団エピセンサス抗原が、SEQ ID NO:697、SEQ ID NO:698、SEQ ID NO:699、またはSEQ ID NO:700のアミノ酸配列を含む、本発明1010のワクチン。
[本発明1012]
集団エピセンサス抗原が、HIVの保存領域からのエピトープを含む、本発明1001~1011のいずれかのワクチン。
[本発明1013]
集団エピセンサス抗原が、Gag、Pol、またはNefの保存領域からのエピトープを含む、本発明1012のワクチン。
[本発明1014]
集団エピセンサス抗原が、Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープを含む、本発明1013のワクチン。
[本発明1015]
集団エピセンサス抗原が2つ以上の集団エピセンサス抗原を含む融合抗原である、本発明1001~1014のいずれかのワクチン。
[本発明1016]
融合抗原が、Gagエピトープを含む集団エピセンサス抗原と、Nefエピトープを含む集団エピセンサス抗原とを含む、本発明1015のワクチン。
[本発明1017]
融合抗原が、Gagの保存領域からのエピトープを含む集団エピセンサス抗原と、Nefの保存領域からのエピトープを含む集団エピセンサス抗原とを含む、本発明1015のワクチン。
[本発明1018]
Gagの保存領域からのエピトープが、Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである、本発明1017のワクチン。
[本発明1019]
集団エピセンサス抗原が、米国におけるHIV-1クレードBエピデミックの中心をなす、本発明1001~1018のいずれかのワクチン。
[本発明1020]
集団エピセンサス抗原がGagエピトープを含む、本発明1019のワクチン。
[本発明1021]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:730またはSEQ ID NO:732のアミノ酸配列を含む、本発明1020のワクチン。
[本発明1022]
集団エピセンサス抗原が、Gagの保存領域からのエピトープを含む、本発明1019のワクチン。
[本発明1023]
Gagの保存領域からのエピトープが、Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである、本発明1022のワクチン。
[本発明1024]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:731またはSEQ ID NO:733のアミノ酸配列を含む、本発明1023のワクチン。
[本発明1025]
集団エピセンサス抗原がNefエピトープを含む、本発明1019のワクチン。
[本発明1026]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:734またはSEQ ID NO:736のアミノ酸配列を含む、本発明1025のワクチン。
[本発明1027]
集団エピセンサス抗原が、Nefの保存領域からのエピトープを含む、本発明1019のワクチン。
[本発明1028]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:735またはSEQ ID NO:737のアミノ酸配列を含む、本発明1027のワクチン。
[本発明1029]
集団エピセンサス抗原が、2つ以上の集団エピセンサス抗原を含む融合抗原である、本発明1019のワクチン。
[本発明1030]
融合抗原が、Gagエピトープを含む集団エピセンサス抗原と、Nefエピトープを含む集団エピセンサス抗原とを含む、本発明1029のワクチン。
[本発明1031]
融合抗原がSEQ ID NO:701またはSEQ ID NO:702のアミノ酸配列を含む、本発明1030のワクチン。
[本発明1032]
融合抗原が、Gagの保存領域からのエピトープを含む集団エピセンサス抗原と、Nefの保存領域からのエピトープを含む集団エピセンサス抗原とを含む、本発明1029のワクチン。
[本発明1033]
Gagの保存領域からのエピトープがGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである、本発明1032のワクチン。
[本発明1034]
集団エピセンサス抗原がPolエピトープを含む、本発明1019のワクチン。
[本発明1035]
集団エピセンサス抗原が、SEQ ID NO:703、SEQ ID NO:704、SEQ ID NO:738、またはSEQ ID NO:740のアミノ酸配列を含む、本発明1034のワクチン。
[本発明1036]
集団エピセンサス抗原が、Polの保存領域からのエピトープを含む、本発明1019のワクチン。
[本発明1037]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:739またはSEQ ID NO:741のアミノ酸配列を含む、本発明1036のワクチン。
[本発明1038]
集団エピセンサス抗原が南アフリカにおけるHIV-1クレードCエピデミックの中心をなす、本発明1001~1018のいずれかのワクチン。
[本発明1039]
集団エピセンサス抗原がGagエピトープを含む、本発明1038のワクチン。
[本発明1040]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:742またはSEQ ID NO:744のアミノ酸配列を含む、本発明1039のワクチン。
[本発明1041]
集団エピセンサス抗原がGagの保存領域からのエピトープを含む、本発明1038のワクチン。
[本発明1042]
Gagの保存領域からのエピトープがGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである、本発明1041のワクチン。
[本発明1043]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:743またはSEQ ID NO:745のアミノ酸配列を含む、本発明1042のワクチン。
[本発明1044]
集団エピセンサス抗原がNefエピトープを含む、本発明1038のワクチン。
[本発明1045]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:746またはSEQ ID NO:748のアミノ酸配列を含む、本発明1044のワクチン。
[本発明1046]
集団エピセンサス抗原がNefの保存領域からのエピトープを含む、本発明1038のワクチン。
[本発明1047]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:747またはSEQ ID NO:749のアミノ酸配列を含む、本発明1046のワクチン。
[本発明1048]
集団エピセンサス抗原が2つ以上の集団エピセンサス抗原を含む融合抗原である、本発明1038のワクチン。
[本発明1049]
融合抗原が、Gagエピトープを含む集団エピセンサス抗原とNefエピトープを含む集団エピセンサス抗原とを含む、本発明1048のワクチン。
[本発明1050]
融合抗原が、Gagの保存領域からのエピトープを含む集団エピセンサス抗原とNefの保存領域からのエピトープを含む集団エピセンサス抗原とを含む、本発明1048のワクチン。
[本発明1051]
Gagの保存領域からのエピトープがGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである、本発明1050のワクチン。
[本発明1052]
集団エピセンサス抗原がPolエピトープを含む、本発明1038のワクチン。
[本発明1053]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:750またはSEQ ID NO:752のアミノ酸配列を含む、本発明1052のワクチン。
[本発明1054]
集団エピセンサス抗原が、Polの保存領域からのエピトープを含む、本発明1038のワクチン。
[本発明1055]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:751またはSEQ ID NO:753のアミノ酸配列を含む、本発明1054のワクチン。
[本発明1056]
集団エピセンサス抗原がタイにおけるHIV-1クレード2地域的エピデミックの中心をなす、本発明1001~1018のいずれかのワクチン。
[本発明1057]
集団エピセンサス抗原がGagエピトープを含む、本発明1056のワクチン。
[本発明1058]
集団エピセンサス抗原が、Gagの保存領域からのエピトープを含む、本発明1056のワクチン。
[本発明1059]
Gagの保存領域からのエピトープがGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである、本発明1058のワクチン。
[本発明1060]
集団エピセンサス抗原がNefエピトープを含む、本発明1056のワクチン。
[本発明1061]
集団エピセンサス抗原が、Nefの保存領域からのエピトープを含む、本発明1056のワクチン。
[本発明1062]
集団エピセンサス抗原が2つ以上の集団エピセンサス抗原を含む融合抗原である、本発明1056のワクチン。
[本発明1063]
融合抗原が、Gagエピトープを含む集団エピセンサス抗原とNefエピトープを含む集団エピセンサス抗原とを含む、本発明1062のワクチン。
[本発明1064]
融合抗原が、Gagの保存領域からのエピトープを含む集団エピセンサス抗原とNefの保存領域からのエピトープを含む集団エピセンサス抗原とを含む、本発明1062のワクチン。
[本発明1065]
Gagの保存領域からのエピトープがGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである、本発明1064のワクチン。
[本発明1066]
集団エピセンサス抗原がPolエピトープを含む、本発明1056のワクチン。
[本発明1067]
集団エピセンサス抗原が、Polの保存領域からのエピトープを含む、本発明1056のワクチン。
[本発明1068]
集団エピセンサス抗原がHIV-1グループMグローバル集合の中心をなす、本発明1001~1018のいずれかのワクチン。
[本発明1069]
集団エピセンサス抗原がGagエピトープを含む、本発明1068のワクチン。
[本発明1070]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:718またはSEQ ID NO:720のアミノ酸配列を含む、本発明1069のワクチン。
[本発明1071]
集団エピセンサス抗原が、Gagの保存領域からのエピトープを含む、本発明1068のワクチン。
[本発明1072]
Gagの保存領域からのエピトープがGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである、本発明1071のワクチン。
[本発明1073]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:719またはSEQ ID NO:721のアミノ酸配列を含む、本発明1072のワクチン。
[本発明1074]
集団エピセンサス抗原がNefエピトープを含む、本発明1068のワクチン。
[本発明1075]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:722またはSEQ ID NO:724のアミノ酸配列を含む、本発明1074のワクチン。
[本発明1076]
集団エピセンサス抗原が、Nefの保存領域からのエピトープを含む、本発明1068のワクチン。
[本発明1077]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:723またはSEQ ID NO:725のアミノ酸配列を含む、本発明1076のワクチン。
[本発明1078]
集団エピセンサス抗原が2つ以上の集団エピセンサス抗原を含む融合抗原である、本発明1068のワクチン。
[本発明1079]
融合抗原が、Gagエピトープを含む集団エピセンサス抗原と、Nefエピトープを含む集団エピセンサス抗原とを含む、本発明1078のワクチン。
[本発明1080]
融合抗原がSEQ ID NO:705またはSEQ ID NO:707のアミノ酸配列を含む、本発明1079のワクチン。
[本発明1081]
融合抗原が、Gagの保存領域からのエピトープを含む集団エピセンサス抗原と、Nefの保存領域からのエピトープを含む集団エピセンサス抗原とを含む、本発明1078のワクチン。
[本発明1082]
Gagの保存領域からのエピトープがGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである、本発明1081のワクチン。
[本発明1083]
融合抗原がSEQ ID NO:706またはSEQ ID NO:708のアミノ酸配列を含む、本発明1082のワクチン。
[本発明1084]
集団エピセンサス抗原がPolエピトープを含む、本発明1068のワクチン。
[本発明1085]
集団エピセンサス抗原が、SEQ ID NO:709、SEQ ID NO:711、SEQ ID NO:726、またはSEQ ID NO:728のアミノ酸配列を含む、本発明1084のワクチン。
[本発明1086]
集団エピセンサス抗原が、Polの保存領域からのエピトープを含む、本発明1068のワクチン。
[本発明1087]
集団エピセンサス抗原が、SEQ ID NO:710、SEQ ID NO:712、SEQ ID NO:727、またはSEQ ID NO:729のアミノ酸配列を含む、本発明1086のワクチン。
[本発明1088]
予防用ワクチンである、本発明1001~1087のいずれかのワクチン。
[本発明1089]
治療用ワクチンである、本発明1001~1087のいずれかのワクチン。
[本発明1090]
EpiGraphアプローチを使って決定される1種類または複数種類のHIV-1集団エピセンサス抗原を含むポリペプチドであって、SEQ ID NO:697~712およびSEQ ID NO:717~753からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
[本発明1091]
その必要がある対象に、有効量の本発明1001~1087のいずれかのワクチンを投与する工程を含む、対象におけるHIV-1を処置する方法。
[本発明1092]
その必要がある対象に、有効量の本発明1001~1087のいずれかのワクチンを投与する工程を含む、対象において、HIV-1感染から保護する方法。
[本発明1093]
1つまたは複数の担体と、EpiGraphアプローチを使って決定される集団エピセンサス抗原と、1種類または複数種類のテーラード抗原とを含む、HIV-1ワクチン。
[本発明1094]
担体がDNA、タンパク質、またはベクターである、本発明1093のワクチン。
[本発明1095]
ベクターが細菌ベクターまたはウイルスベクターである、本発明1094のワクチン。
[本発明1096]
ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、風疹ウイルス、センダイウイルス、ラブドウイルス、アルファウイルスまたはアデノ随伴ウイルスのバックボーンを含む、本発明1095のワクチン。
[本発明1097]
ウイルスベクターがCMVバックボーンを含む、本発明1095のワクチン。
[本発明1098]
CMVバックボーンがHCMVバックボーンまたはRhCMVバックボーンである、本発明1097のワクチン。
[本発明1099]
CMVバックボーンがUL130-128遺伝子領域を欠く、本発明1097または本発明1098のワクチン。
[本発明1100]
CMVバックボーンがテグメントタンパク質pp71をコードするUL82遺伝子を欠く、本発明1097~1099のいずれかのワクチン。
[本発明1101]
第2のテーラード抗原をさらに含む、本発明1093~1100のいずれかのワクチン。
[本発明1102]
第3のテーラード抗原をさらに含む、本発明1101のワクチン。
[本発明1103]
集団エピセンサス抗原がGagエピトープを含む、本発明1097~1102のいずれかのワクチン。
[本発明1104]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:691のアミノ酸配列を含む、本発明1103のワクチン。
[本発明1105]
集団エピセンサス抗原が、不活化Gagタンパク質のアミノ酸配列を含み、該不活化Gagタンパク質のアミノ酸配列が、Gagタンパク質のN末端にあるミリストイル化配列を除去することによって不活化されている、本発明1103のワクチン。
[本発明1106]
テーラード抗原がGagエピトープを含む、本発明1093~1105のいずれかのワクチン。
[本発明1107]
テーラード抗原が、SEQ ID NO:692、SEQ ID NO:693、SEQ ID NO:694、SEQ ID NO:695、またはSEQ ID NO:696のアミノ酸配列を含む、本発明1106のワクチン。
[本発明1108]
第1のテーラード抗原および第2のテーラード抗原が、SEQ ID NO:692、SEQ ID NO:693、SEQ ID NO:694、SEQ ID NO:695およびSEQ ID NO:696のアミノ酸配列のうちの2つを含む、本発明1107のワクチン。
[本発明1109]
第1のテーラード抗原、第2のテーラード抗原、および第3のテーラード抗原が、SEQ ID NO:692、SEQ ID NO:693、SEQ ID NO:694、SEQ ID NO:695およびSEQ ID NO:696のアミノ酸配列のうちの3つを含む、本発明1108のワクチン。
[本発明1110]
テーラード抗原が、不活化Gagタンパク質のアミノ酸配列を含み、該不活化Gagタンパク質のアミノ酸配列が、Gagタンパク質のN末端にあるミリストイル化配列を除去することによって不活化されている、本発明1106のワクチン。
[本発明1111]
集団エピセンサス抗原がHIV-1グループMグローバル集合の中心をなす、本発明1093~1102のいずれかのワクチン。
[本発明1112]
集団エピセンサス抗原およびテーラード抗原がGagエピトープを含む、本発明1111のワクチン。
[本発明1113]
集団エピセンサス抗原およびテーラード抗原配列が、Gagの保存領域からのエピトープを含む、本発明1111のワクチン。
[本発明1114]
Gagの保存領域からのエピトープが、Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである、本発明1113のワクチン。
[本発明1115]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:754またはSEQ ID NO:755のアミノ酸配列を含む、本発明1112~1114のいずれかのワクチン。
[本発明1116]
テーラード抗原が、SEQ ID NO:756~765からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、本発明1115のワクチン。
[本発明1117]
第1のテーラード抗原および第2のテーラード抗原が、SEQ ID NO:756~765からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちの2つを含む、本発明1116のワクチン。
[本発明1118]
第1のテーラード抗原、第2のテーラード抗原、および第3のテーラード抗原が、SEQ ID NO:756~765からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちの3つを含む、本発明1117のワクチン。
[本発明1119]
集団エピセンサス抗原が南アフリカにおけるHIV-1クレードCエピデミックの中心をなす、本発明1093~1102のいずれかのワクチン。
[本発明1120]
集団エピセンサス抗原およびテーラード抗原がGagエピトープを含む、本発明1119のワクチン。
[本発明1121]
集団エピセンサス抗原およびテーラード抗原配列がGagの保存領域からのエピトープを含む、本発明1119のワクチン。
[本発明1122]
Gagの保存領域からのエピトープがGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである、本発明1121のワクチン。
[本発明1123]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:766またはSEQ ID NO:767のアミノ酸配列を含む、本発明1119~1122のいずれかのワクチン。
[本発明1124]
テーラード抗原がSEQ ID NO:768~777からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、本発明1123のワクチン。
[本発明1125]
第1のテーラード抗原および第2のテーラード抗原が、SEQ ID NO:768~777からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちの2つを含む、本発明1124のワクチン。
[本発明1126]
第1のテーラード抗原、第2のテーラード抗原、および第3のテーラード抗原が、SEQ ID NO:768~777からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちの3つを含む、本発明1125のワクチン。
[本発明1127]
集団エピセンサス抗原が南アフリカにおけるHIV-1クレードBエピデミックの中心をなす、本発明1093~1102のいずれかのワクチン。
[本発明1128]
集団エピセンサス抗原およびテーラード抗原がGagエピトープを含む、本発明1127のワクチン。
[本発明1129]
集団エピセンサス抗原およびテーラード抗原配列がGagの保存領域からのエピトープを含む、本発明1127のワクチン。
[本発明1130]
Gagの保存領域からのエピトープがGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである、本発明1129のワクチン。
[本発明1131]
集団エピセンサス抗原がSEQ ID NO:778またはSEQ ID NO:779のアミノ酸配列を含む、本発明1127~1130のいずれかのワクチン。
[本発明1132]
テーラード抗原がSEQ ID NO:780~789からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、本発明1131のワクチン。
[本発明1133]
第1のテーラード抗原および第2のテーラード抗原が、SEQ ID NO:780~789からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちの2つを含む、本発明1132のワクチン。
[本発明1134]
第1のテーラード抗原、第2のテーラード抗原、および第3のテーラード抗原が、SEQ ID NO:780~789からなる群より選択されるアミノ酸配列のうちの3つを含む、本発明1133のワクチン。
[本発明1135]
集団エピセンサス抗原およびテーラード抗原がPolエピトープまたはNefエピトープを含む、本発明1093~1102のいずれかのワクチン。
[本発明1136]
HCMVバックボーンと、ベストマッチの天然HIV-1株であるように選択されたテーラード抗原とを含むHCMVベクターをさらに含む、本発明1093~1135のいずれかのワクチン。
[本発明1137]
HCMVバックボーンと、ベストマッチの異なる(かつ遠い)HIV-1株であるように選択されたテーラード抗原とを含むHCMVベクターをさらに含む、本発明1093~1136のいずれかのワクチン。
[本発明1138]
治療用ワクチンである、本発明1093~1137のいずれかのワクチン。
[本発明1139]
1つまたは複数の担体と、1種類または複数種類の集団エピセンサス抗原またはテーラード抗原とを含む、HIV-1ワクチンであって、該集団エピセンサス抗原およびテーラード抗原がEpiGraph法を使って決定される、前記ワクチン。
[本発明1140]
担体がDNA、タンパク質、またはベクターである、本発明1139のワクチン。
[本発明1141]
ベクターがウイルスベクターまたは細菌ベクターである、本発明1140のワクチン。
[本発明1142]
ウイルスベクターが、ポックスウイルス、アデノウイルス、風疹ウイルス、センダイウイルス、ラブドウイルス、アルファウイルスまたはアデノ随伴ウイルスのバックボーンを含む、本発明1141のワクチン。
[本発明1143]
ウイルスベクターがサイトメガロウイルス(CMV)バックボーンを含む、本発明1141のワクチン。
[本発明1144]
CMVバックボーンがヒトCMV(HCMV)バックボーンまたはアカゲザルCMV(RhCMV)バックボーンである、本発明1143のワクチン。
[本発明1145]
CMVバックボーンがUL130-128遺伝子領域を欠く、本発明1143または1144のワクチン。
[本発明1146]
CMVバックボーンがテグメントタンパク質pp71をコードするUL82遺伝子を欠く、本発明1143~1145のいずれかのワクチン。
[本発明1147]
集団エピセンサス抗原またはテーラード抗原が、SEQ ID NO:691~696およびSEQ ID NO:754~789からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、本発明1139~1146のいずれかのワクチン。
[本発明1148]
SEQ ID NO:691~696およびSEQ ID NO:754~789からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第2の集団エピセンサス抗原またはテーラード抗原をさらに含む、本発明1147のワクチン。
[本発明1149]
SEQ ID NO:691~696およびSEQ ID NO:754~789からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3の集団エピセンサス抗原またはテーラード抗原をさらに含む、本発明1148のワクチン。
[本発明1150]
治療用ワクチンである、本発明1139~1149のいずれかのワクチン。
[本発明1151]
1種類または複数種類のHIV-1集団エピセンサス抗原またはHIV-1テーラード抗原を含むポリペプチドであって、SEQ ID NO:691~696およびSEQ ID NO:754~789からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
[本発明1152]
その必要がある対象に、有効量の本発明1093~1150のいずれかのワクチンを投与する工程を含む、対象におけるHIV-1を処置する方法。
[本発明1153]
(a)EpiGraph抗原アミノ酸配列選択法を使って生成させたワクチン抗原アミノ酸配列を使って、地理的領域内の多様性を最適にカバーするようにEpiGraphワクチン抗原をデザインする工程;および
(b)デザインしたEpiGraphワクチン抗原を生産する工程
を含む、対象のためのHIV-1ワクチンをデザインし、生産する方法。
[本発明1154]
(a)個体中のHIV-1ウイルスのアミノ酸配列を決定する工程;
(b)EpiGraph抗原アミノ酸配列選択法を使って生成させたワクチン抗原アミノ酸配列を使って、地理的領域内の多様性を最適にカバーするようにEpiGraphワクチン抗原をデザインする工程;
(c)デザインしたEpiGraphワクチン抗原を生産する工程;および
(d)Epigraphワクチン抗原をベクターに挿入する工程
を含む、対象のためのHIV-1ワクチンをデザインし、生産する方法。
[本発明1155]
(a)1種類または複数種類のEpiGraphワクチン抗原をデザインする工程;
(b)1種類または複数種類のEpiGraphワクチン抗原とベクターとを含むワクチンを生産する工程;および
(c)その必要がある対象に前記ワクチンを投与する工程
を含む、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法。
[本発明1156]
EpiGraphワクチン抗原がSEQ ID NO:691~712およびSEQ ID NO:717~789からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、本発明1153~1155のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】クレードCRF01-AEのNefタンパク質に関するグラフ全体を示す。長方形は図1Bに示す挿入図である。
図1B図1Aからの挿入図を表す。ノードは灰色の点であって、各k-mer変異体を表しており、k=9である。エッジ(edge)は、左上にある最初の2つのエピトープ(ea=VTSSNMNNA[SEQ ID NO:790]、eb=TSSNMNNAD[SEQ ID NO:791])について示すように、k-1アミノ酸分がオーバーラップしている配列を有するエピトープを結ぶ横線である。グラフのトポロジー的性質はノードの位置に依存しないが、このプロットでは、各ノードについて、ターゲット配列集合におけるエピトープ頻度y=f(e)を示すために縦軸を使用する。水平方向の位置x(e)=1+maxe'∈P(e)x(e')[式中、P(e)は、eのプレデセッサー(predecessor)の集合である]は、すべての有向エッジが左から右へとつながるという性質を、このプロットに与える。このグラフの理想的パスは可能な限り最大のy値を維持する。本挿入図はノードを通る2つのパスを示している。黒い実線は最適パスであり、配列TSSNMNNADSVWLRAQEEE[SEQ ID NO:792]に対応し、一方、破線はTSSNMNNADCVWLRAQEEE[SEQ ID NO:793]に対応する。4つのノードで破線の方が高いf(e)に達するが、5つのノードでは実線の方が高いf(e)を有し、Σf(e)が高くなる。すべてのx値で最高値ノードを含むパスはないことに留意されたい。
図2】エピトープk文字ストリング、および整列された配列集合においてその位置でそのエピトープが観察される頻度(f)、およびそのノードで終わるコンシステントなパスの累積ベストスコアSを示す、エピトープグラフのノードを示している。ノードはカラム状に配置され、各カラムは、当該エピトープと関連する位置tに対応している。これらのノードをつなぐ線はコンシステントな隣接エピトープに対応する。このグラフを通るコンシステントなパスであって、各ノードにおける頻度値の和を最大化するものを見いだすことが、目標である。太線は、最適な総スコアをもたらす一つのパスを示している。
図3】初期解からのノード(図2に示すq1=ARCHSLM[SEQ ID NO:794]によって与えられるもの)の頻度値がゼロに設定され、これらの新しい頻度ノードに基づいて累積スコアS(t;e)が再計算されることを示している。これは、この補完的カバレッジ問題に対する最適解q2=DEFGKLM[SEQ ID NO:795]をもたらす。太線は、最適な総スコアをもたらす一つのパスを示す。
図4図4A~Bは、それぞれが556の位置に整列された690個の米国クレードB Gagタンパク質配列[SEQ ID NO:1~690]の集合に関連するエピトープグラフを示す。横軸は位置tであり、ノードのカラムは各位置における異なるエピトープを表す。ノードは、各位置における最高頻度が各カラムの最下部になるように配置されている。グラフ全体を図4Aに示し、同じグラフの拡大挿入図を図4Bに示す。
図5図5A~Cは、希少な変異体を除外するとカバレッジは減少するが、Gag(図5A)、Nef(図5B)、およびPol(図5C)の場合は、それがごくわずかに過ぎないことを示している。多価(m=2)解のカバレッジを、最小カウントfo(すなわちワクチン中の最も希少なエピトープの集団内頻度)の関数として示す。破線はダイレクト逐次アルゴリズムによって与えられるカバレッジに対応し、黒い実線は、100回のランダムリスタート後のベスト解に基づく。3つのプロットのすべてにおいて、縦軸は0.015の範囲に限定されている。
図6図6A~Bは2抗原ワクチンカバレッジを示している。米国において単離されたコンテンポラリークレードB配列(これを治療用ワクチンの仮想ターゲット集団とみなした)の配列あたりの平均エピトープカバレッジを図解する比較。天然クレード内配列のペアをワクチン抗原として使用した場合の潜在的T細胞エピトープ(PTE)カバレッジを図解するために、ランダムに選択された5000ペアの天然クレードB配列(灰色)を潜在的ワクチンとして評価し、189のコンテンポラリークレードB米国配列の平均カバレッジの分布を、灰色のヒストグラムに示す。これを、グループM EpiGraphの2抗原集合(Mデータベース)、グローバルクレードB EpiGraphの二抗原集合(Bデータベース)、および米国クレードBテーラードワクチン(製造用の6つの代表的EpiGraphの集合から2つのベストマッチを189の天然クレードB米国配列のそれぞれについて「テーラード」マッチとして選んだもの)の平均カバレッジと比較する。図6Aは完全Gagタンパク質についての比較を示す。図6Bは保存されたp24領域だけについての比較を示す。
図7】HIVプロテオーム全体にわたる潜在的エピトープカバレッジのマッピングを示す。
図8】異なるワクチン抗原によるHIV-1クレードB米国配列の平均潜在的Gagエピトープカバレッジを示す。図8Aは単一ワクチン抗原による平均Gagエピトープカバレッジを示し、図8Bはワクチン抗原のペアによる平均Gagエピトープカバレッジを示す。
図9図9A~Cは、EpiGraphでデザインした合成HIV抗原が完全長タンパク質として発現されることを示している。以下のタンパク質をコードする発現プラスミドをHeLa細胞にトランスフェクトした:図9Aに示すHIV用またはSIV用のgagおよびnefの融合タンパク質(HIVグループM EpiGraph1[SEQ ID NO:705]およびHIVグループM EpiGraph2[SEQ ID NO:707]、SIVmac239完全長タンパク質、SIV変異体ハイブリッドタンパク質[SEQ ID NO:713]、ならびにSIVのgagおよびnefの保存部分[SEQ ID NO:714]);図9Bに示すHIVまたはSIVのポリメラーゼタンパク質(SIVmac239完全長(FL)、SIV変異体ハイブリッドタンパク質[SEQ ID NO:715]、HIVグループM EpiGraph1[SEQ ID NO:709]およびHIVグループM EpiGraph2[SEQ ID NO:711]、SIVのpolの保存部分[SEQ ID NO:716]);ならびに図9Cに示すHIV用のgagおよびnefの融合タンパク質(クレードB EpiGraph1 gag/nef[SEQ ID NO:701]およびクレードB EpiGraph2 gag/nef[SEQ ID NO:702])ならびにHIV用のポリメラーゼタンパク質(クレードM epi 1 pol[SEQ ID NO:709];クレードB EpiGraph1 pol[SEQ ID NO:703];クレードB EpiGraph2 pol[SEQ ID NO:704])。gag/nefコンストラクトはいずれもカルボキシ末端V5タグを含み(図9A)、polコンストラクトはいずれもカルボキシ末端HAタグを含む(図9Bおよび図9C)。図9Bにおいて、1および2は各コンストラクトの複数のクローンを示す。トランスフェクションの48時間後に溶解物を収穫し、V5抗体(図9A)またはHA抗体(図9Bおよび図9C)による免疫ブロッティングを行った。観察されたタンパク質の分子量は、各コンストラクトについて予想される分子量と合致している。
図10図10A~Bは、EpiGraphでデザインした合成抗原がCMVベクターによって発現されることを示している。図10Aに示すとおり、SIVmac239ポリメラーゼ完全長(FL)、異なるSIV変異体からのSIVポリメラーゼのハイブリッド[SEQ ID NO:715]、グローバルグループM HIV EpiGraph1[SEQ ID NO:709]またはグローバルグループM HIV EpiGraph2[SEQ ID NO:711]に基づく合成ポリメラーゼ遺伝子を発現するRhCMV68-1株を、BAC突然変異導入法によって構築し、テロメラーゼ導入(telomerized)アカゲザル(Rhesus)線維芽細胞中で再構成した。図10Bに示すように、ポリメラーゼコンストラクトのSIVmac239保存領域[SEQ ID NO:716]を発現するRhCMV68-1株も、BAC突然変異導入法によって構築し、テロメラーゼ導入アカゲザル線維芽細胞中で再構成した。どのベクターでも、抗原発現は内在性ウイルスRh107プロモーターによって駆動される。細胞ペレットを完全CPEで収穫し、各タンパク質のカルボキシ末端に発現するHAタグについてイムノブロッティングした。保存されたpolについて、2つの独立クローン(2.1および2.2)を図10Bに示す。
図11図11A~Cは、二価(すなわち2抗原)ワクチンによる潜在的T細胞エピトープ(PTE)カバレッジの能力に基づいて規定されるNef(図11A)、Gag(図11B)、およびPol(図11C)内の保存領域を示す。
図12】異なるワクチン抗原による保存領域のそれぞれの平均Epigraphカバレッジを、それらのタンパク質のより可変的なセクションと比較して図解している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
例示的態様の詳細な説明
本明細書および特許請求の範囲では、その全体を通して、説明の諸局面に関係してさまざまな用語を使用する。そのような用語には、別段の表示がある場合を除き、当技術分野における通常の意味が与えられるものとする。他の具体的に定義される用語は、本明細書において与えられる定義との矛盾が生じないように解釈すべきである。
【0019】
本明細書および本願特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上そうでないことが明らかな場合を除き、複数の指示物を包含する。したがって、例えば「(ある)細胞」(a cell)という表現には、2つ以上の細胞の組み合わせが包含されることになる。
【0020】
例えば量、持続時間などの測定可能な値に言及する場合に、本明細書において使用する「約」という用語は、指定された値から±20%までの変動を、開示される方法を実施するのにそのような変動が適当な場合に、包含するものとする。別段の表示がある場合を除き、本明細書および特許請求の範囲において使用する成分量、性質、例えば分子量、反応条件などを表現する数字はすべて、いずれの場合も「約」という用語で修飾されていると理解すべきである。したがって、反対の表示がある場合を除き、以下の明細書および本願特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明が得ようとする所望の性質に依存して変動しうる概略値である。特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではないが、最低でも、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0021】
本発明の広い範囲を説明する数値範囲および数値パラメータは概略であるが、具体例で述べる数値は可能な限り正確に報告する。しかし数値はいずれも、各試験測定値に見いだされる標準偏差からの必然的結果として一定の誤差を、本質的に含有する。
【0022】
上で使用すると共に本開示の全体を通して使用する「有効量」という用語は、関連する障害、状態、または副作用の処置に関して所望の結果を達成するのに必要な投薬量および期間において有効である量を指す。本発明のコンポーネントの有効量が、患者ごとに、選択したその特定ワクチン、コンポーネントまたは組成物、投与経路、および当該個体において所望の結果を引き出すコンポーネントの能力によって変動するばかりでなく、緩和しようとする状態の疾患状況または重症度、個体のホルモンレベル、年齢、性別、体重、患者の状況、および処置される病的状態の重症度、患者が従っている併用薬または特別食などといった因子、および当業者にはわかるであろう他の因子によっても変動し、適当な投薬量が担当医の裁量によることは、理解されるであろう。投薬レジメンは治療応答が改良されるように調節することができる。有効量は、コンポーネントのあらゆる毒性効果または有害効果が、治療上有益な効果を下回るような量でもある。
【0023】
「投与する」という用語は、本発明の化合物または組成物をそのまま投与すること、または体内で同等の量の活性化合物もしくは活性物質を形成することになるプロドラッグ、誘導体、もしくは類似体を投与することを意味する。
【0024】
「対象」、「個体」、および「患者」という用語は、本明細書では可換的に使用され、本発明の薬学的組成物による処置(予防的処置を含む)が施行される動物、例えばヒトを指す。本明細書において使用する「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物を指す。「非ヒト動物」および「非ヒト哺乳動物」という用語は、本明細書では可換的に使用され、これらには、あらゆる脊椎動物、例えば哺乳動物、例えば非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(例えばマウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ならびに爬虫類、両生類、ニワトリ、およびシチメンチョウなどの非哺乳動物が包含される。
【0025】
「カクテル」という用語は、組み合わせて患者に送達することが意図された抗原の集合を指す。
【0026】
「エピセンサス」(episensus)とはエピトープベースのコンセンサス配列をいう。これは、天然配列のリファレンス集合中のエピトープと可能な限り厳密にマッチするエピトープを有する配列である。「エピトープ」および「潜在的エピトープ」という用語は、多くの場合、はるかに長い天然抗原配列またはワクチン抗原配列のk文字部分配列という文脈において、k個の文字の配列(kは典型的には8~12の範囲内にある)を指す。T細胞は免疫応答においてそのようなペプチドを認識することができる。
【0027】
「EpiGraph」という用語は、最適なエピセンサス配列を与える配列を作り出すか、または組み合わされることで多様なウイルス配列の集団の最適なカバレッジを与える配列の集合を作り出すために開発された、新しいコンピュータ戦略を指す。
【0028】
「EpiGraph配列」または「エピセンサス抗原」という用語は、EpiGraphアルゴリズムに基づいてデザインされたワクチンインサートを指す。
【0029】
「集団エピセンサス抗原」という用語は、あるHIV配列集団の「中心」をなす、EpiGraphアルゴリズムを使って導出される配列を指す。集団は、特定のHIVクレード、本発明者らのテーラードエピトープベースクラスタリング(Tailored epitope based clustering)アルゴリズムを使って導出される配列のクラスター、またはグローバルエピデミックであることができる。「中心」(central)は、潜在的エピトープの共有という観点から定義される。したがってこれは、当該集団の最大平均エピトープカバレッジを与える、コンピュータによって導出される配列である。
【0030】
EpiGraph配列は、予防用の防止ワクチンのための解として使用するか、あるいは個々の感染にマッチするようにテーラリングされた治療用ワクチンをデザインするための、より複雑な戦略の一部として採用することができる。「テーラードワクチン集合」という用語は、製造用にデザインされたワクチン抗原配列の集合を指し、治療用ワクチンとして送達するための部分集合抗原は、そこから、患者のウイルスにベストマッチするように選択することができる。
【0031】
「テーラード抗原」または「テーラードエピセンサス抗原」という用語は、治療用ワクチンとして患者に送達するために、患者の感染HIV-1株へのベストマッチに基づいて個別に選択される、「テーラードワクチン集合」からの1種類または複数種類のアミノ酸配列を指す。
【0032】
本明細書において使用する場合、「処置」または「治療」という用語は(治癒的または姑息的などといったその異形と共に)、感染した人の処置を指す。本明細書において使用する場合、「処置する」という用語は、ある状態、疾患または障害の、少なくとも1つの有害なまたは負の効果または症状を緩和しまたは低減することを包含する。この状態、疾患または障害は、HIV感染であることができる。
【0033】
本明細書において使用する場合、「防止」または「予防」という用語は、対象が例えばHIV、SIV、または関連ウイルスに感染した状態になることを防止する、または対象がこれらのウイルスに感染した状態になるリスクを低減する、またはこれらのウイルスの伝染を停止させる、またはこれらのウイルスの伝染のリスクを低減することを包含する。
【0034】
「薬学的に許容される」とは、妥当な医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比と見合って、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または問題となる他の合併症を伴わずに、ヒトおよび動物の組織と接触させるのに適した、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0035】
使用することができるベクターには、プラスミド、細菌ベクター、およびウイルスベクターなどがあるが、それらに限定されるわけではない。ウイルスベクターには、サイトメガロウイルス(CMV)ベクターが含まれる。治療用ワクチン送達に使用されるこれらCMVベクターの利点は、それらが新しいCD8+ T細胞エピトープパラダイムを作り出し、より強力で永続的な応答を誘導することである。これらのウイルスベクターに基づくワクチンはウイルス感染を取り除きうることが動物モデルにおいて示されているので(Hansen, S. G.2013. Science 340:1237874)、これらのアプローチは、テーラードワクチンが役立ちうる場である治療用ワクチンにとって有望である。
【0036】
他のウイルスベクターとして、ワクシニアAnkaraおよびカナリア痘などのポックスウイルス(ワクシニア);アデノウイルス5型(Ad5)などのアデノウイルス;風疹ウイルス;センダイウイルス;ラブドウイルス;アルファウイルス;およびアデノ随伴ウイルスを挙げることができる。あるいは、EpiGraphワクチン抗原を、ワクチンのDNA、RNAまたはタンパク質コンポーネントとして送達することもできる。これは抗原デザイン戦略であるから、EpiGraphでデザインしたワクチン抗原は、本質的に任意のワクチン抗原送達方式に適合するであろう。
【0037】
ある特定の態様において、EpiGraphアミノ酸配列を使ってデザインされたワクチンは単一の抗原を有する。ある特定の態様においてEpiGraphアミノ酸配列を使ってデザインされたワクチンは抗原の集合を有する。
【0038】
ある特定の態様では、予防用ワクチンにおいて、EpiGraph抗原配列を使用することができる。
【0039】
ある特定の態様では、EpiGraph戦略を使って、予防用ワクチンのためにエピトープカバレッジを完全に最適化する配列を作ることができる。これは、1つの配列であるか、防止用ワクチンとして互いを補完するようにデザインされた数個の配列であることができる。EpiGraphワクチンは、例えば限定するわけではないがプラスミド、細菌ベクター、およびウイルスベクターなど、任意のベクターに入れて使用することができる。
【0040】
EpiGraphアルゴリズムでは、天然配列がノードの大きなグラフによって特徴づけられ、各ノードは天然配列中に現れるエピトープに対応する。有向エッジは、対応する2つのエピトープストリングが「コンシステント」である場合、つまり第1ストリングの最後のk-1個の文字が第2ストリングの最初のk-1個の文字と合致している場合(例えば
とは、コンシステントなk=12 merである)に、2つのノードをつなぐ。2つのストリングがコンシステントであるなら、長さk+1のストリング(例えば
)は、両方のエピトープを含有する。より一般的には、このノードとエッジのグラフを通るパスは、グラフ中のノードのそれぞれに対応するk-merのサブストリングを含有する単一のストリングに対応する。各ノードはリファレンス集合中のいくつの配列が当該ノードに対応するサブストリングを呈するかに応じて重み付けされる。EpiGraphアルゴリズムでは、このグラフ全体を通るパスであって、これらの重みの和を最大にするもの、したがって最大のカバレッジを与えるものを見いだすために、ダイナミックプログラミングスキームを使用する。
【0041】
提供されるある特定の態様は、ベクターと集団エピセンサス抗原かまたは集合として使用するようにデザインされた最適化EpiGraph抗原の組み合わせとを含むHIV-1ワクチンを包含する。ワクチンに使用することができるベクターは種々存在する。例えば、使用することができるベクターの一タイプはウイルスベクターである。これらのウイルスベクターとしては、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、ポックスウイルス、アデノウイルス、風疹ウイルス、センダイウイルス、ラブドウイルス、アルファウイルスまたはアデノ随伴ウイルスを挙げることができる。ワクチンは、DNAまたはRNAを使ってEpiGraphタンパク質をコードする遺伝子として送達することも、発現したタンパク質またはタンパク質の一部として含めることもできる。
【0042】
ある特定の態様において、開示されるワクチンのEpiGraph抗原は、HIV-1 Gagタンパク質に由来しうる。別の一態様において、HIV-1 Gagタンパク質は、HIV-1 Gagタンパク質のN末端にあるミリストイル化配列を除去することによって不活化されている。別の一態様において、EpiGraph抗原は、HIV-1 PolまたはNefタンパク質に由来することができ、また実際には、Env、Tat、Rev、Vif、またはVpuを含む他のどのHIVタンパク質にも由来しうる。
【0043】
ある特定の態様では、EpiGraphアプローチを使って集団エピセンサス抗原を決定することができる。次に、この集団エピセンサス抗原を使ってワクチンを作製することができる。あるいは、集合として使用するようにデザインされた配列の組み合わせとしてEpiGraphをデザインすることができる。HIV-1は地理的な場所に基づいてクレードに分割することができる。一態様では、開示されるワクチンにおいて、集団エピセンサス抗原は、米国におけるHIV-1クレードBエピデミックの中心をなす。別の一態様では、開示されるワクチンにおいて、集団エピセンサス抗原は、南アフリカにおけるHIV-1クレードCエピデミックの中心をなす。別の一態様では、開示されるワクチンにおいて、集団エピセンサス抗原は、タイにおけるHIV-1クレード2地域的エピデミックの中心をなす。別の一態様では、開示されるワクチンにおいて、集団エピセンサス抗原はHIV-1グループMグローバル集合の中心をなす。
【0044】
いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、Gag、Pol、Nef、Env、Tat、Rev、Vpr、Vif、またはVpuからのエピトープを含む。いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原はGagからのエピトープを含み、SEQ ID NO:691、SEQ ID NO:697、SEQ ID NO:698、SEQ ID NO:699、またはSEQ ID NO:700のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、HIV-1の保存領域からのエピトープを含む。いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、Gag、Pol、またはNefの保存領域からのエピトープを含む。いくつかの態様において、Gagの保存領域からのエピトープは、Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである。
【0045】
いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、2つ以上のHIV-1集団エピセンサス抗原を含む融合抗原である。いくつかの態様において、融合抗原は、Gagエピトープを含むHIV-1集団エピセンサス抗原と、Nefエピトープを含むHIV-1集団エピセンサス抗原とを含む。いくつかの態様において、融合抗原は、Gagの保存領域からのエピトープを含むHIV-1集団エピセンサス抗原と、Nefの保存領域からのエピトープを含むHIV-1集団エピセンサス抗原とを含む。いくつかの態様において、Gagの保存領域からの融合抗原のエピトープは、Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープである。
【0046】
いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、米国におけるHIV-1クレードBエピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、HIV-1クレードB集団エピセンサス抗原はGagエピトープを含み、SEQ ID NO:730、SEQ ID NO:732、またはSEQ ID NO:778のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードB集団エピセンサス抗原はGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープを含み、SEQ ID NO:731、SEQ ID NO:733、またはSEQ ID NO:779のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードB集団エピセンサス抗原はNefエピトープを含み、SEQ ID NO:734またはSEQ ID NO:736のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードB集団エピセンサス抗原はNefの保存領域からのエピトープを含み、SEQ ID NO:735またはSEQ ID NO:737のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードB集団エピセンサス抗原はPolエピトープを含み、SEQ ID NO:703、SEQ ID NO:704、SEQ ID NO:738、またはSEQ ID NO:740のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードB集団エピセンサス抗原はPolの保存領域からのエピトープを含み、SEQ ID NO:739またはSEQ ID NO:741のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードB集団エピセンサス抗原は、(1)Gagエピトープを含むHIV-1クレードB集団エピセンサス抗原と(2)Nefエピトープを含むHIV-1クレードB集団エピセンサス抗原とを含む融合抗原であり、本融合抗原は、SEQ ID NO:701またはSEQ ID NO:702のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードB集団エピセンサス抗原は、(1)Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープを含むHIV-1クレードB集団エピセンサス抗原と(2)Nefの保存領域からのエピトープを含むHIV-1クレードB集団エピセンサス抗原とを含む融合抗原である。
【0047】
いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、南アフリカにおけるHIV-1クレードCエピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、HIV-1クレードC集団エピセンサス抗原はGagエピトープを含み、SEQ ID NO:742、SEQ ID NO:744、またはSEQ ID NO:766のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードC集団エピセンサス抗原はGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープを含み、SEQ ID NO:743、SEQ ID NO:745、またはSEQ ID NO:767のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードC集団エピセンサス抗原はNefエピトープを含み、SEQ ID NO:746またはSEQ ID NO:748のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードC集団エピセンサス抗原はNefの保存領域からのエピトープを含み、SEQ ID NO:747またはSEQ ID NO:749のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードC集団エピセンサス抗原はPolエピトープを含み、SEQ ID NO:750またはSEQ ID NO:752のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードC集団エピセンサス抗原はPolの保存領域からのエピトープを含み、SEQ ID NO:751またはSEQ ID NO:753のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードC集団エピセンサス抗原は、(1)Gagエピトープを含むHIV-1クレードC集団エピセンサス抗原と(2)Nefエピトープを含むHIV-1クレードC集団エピセンサス抗原とを含む融合抗原である。いくつかの態様において、HIV-1クレードC集団エピセンサス抗原は、(1)Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープを含むHIV-1クレードC集団エピセンサス抗原と(2)Nefの保存領域からのエピトープを含むHIV-1クレードC集団エピセンサス抗原とを含む融合抗原である。
【0048】
いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、タイにおけるHIV-1クレード2地域的エピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、HIV-1クレード2集団エピセンサス抗原は、Gagエピトープを含む。いくつかの態様において、HIV-1クレード2集団エピセンサス抗原は、Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープを含む。いくつかの態様において、HIV-1クレード2集団エピセンサス抗原は、Nefエピトープを含む。いくつかの態様において、HIV-1クレード2集団エピセンサス抗原は、Nefの保存領域からのエピトープを含む。いくつかの態様において、HIV-1クレード2集団エピセンサス抗原は、Polエピトープを含む。いくつかの態様において、HIV-1クレード2集団エピセンサス抗原は、Polの保存領域からのエピトープを含む。いくつかの態様において、HIV-1クレード2集団エピセンサス抗原は、(1)Gagエピトープを含むHIV-1クレード2集団エピセンサス抗原と(2)Nefエピトープを含むHIV-1クレード2集団エピセンサス抗原とを含む融合抗原である。いくつかの態様において、HIV-1クレード2集団エピセンサス抗原は、(1)Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープを含むHIV-1クレード2集団エピセンサス抗原と(2)Nefの保存領域からのエピトープを含むHIV-1クレード2集団エピセンサス抗原とを含む融合抗原である。
【0049】
いくつかの態様において、HIV-1集団エピセンサス抗原は、HIV-1グループMグローバル集合の中心をなす。いくつかの態様において、HIV-1グループM集団エピセンサス抗原はGagエピトープを含み、SEQ ID NO:718、SEQ ID NO:720、またはSEQ ID NO:754のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1グループM集団エピセンサス抗原はGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープを含み、SEQ ID NO:719、SEQ ID NO:721、またはSEQ ID NO:755のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1グループM集団エピセンサス抗原はNefエピトープを含み、SEQ ID NO:722またはSEQ ID NO:724のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1グループM集団エピセンサス抗原はNefの保存領域からのエピトープを含み、SEQ ID NO:723またはSEQ ID NO:725のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1グループM集団エピセンサス抗原は、(1)Gagエピトープを含むHIV-1グループM集団エピセンサス抗原と(2)Nefエピトープを含むHIV-1グループM集団エピセンサス抗原とを含む融合抗原であり、本融合抗原はSEQ ID NO:705またはSEQ ID NO:707のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1グループM集団エピセンサス抗原は、(1)Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープを含むHIV-1グループM集団エピセンサス抗原と(2)Nefの保存領域からのエピトープを含むHIV-1グループM集団エピセンサス抗原とを含む融合抗原であり、本融合抗原は、SEQ ID NO:706またはSEQ ID NO:708のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1グループM集団エピセンサス抗原はPolエピトープを含み、SEQ ID NO:709、SEQ ID NO:711、SEQ ID NO:726、またはSEQ ID NO:728のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1グループM集団エピセンサス抗原はPolの保存領域からのエピトープを含み、SEQ ID NO:710、SEQ ID NO:712、SEQ ID NO:727、またはSEQ ID NO:729のアミノ酸配列を含む。
【0050】
ある特定の態様において、開示されるワクチンは、HCMVバックボーンと、ベストマッチの天然HIV-1株であるように選択されたテーラード抗原とを含むHCMVベクターを、さらに含むことができる。別の一態様において、開示されるワクチンは、HCMVバックボーンと、ベストマッチの異なるHIV-1株であるように選択されたテーラード抗原とを含むHCMVベクターを、さらに含むことができる。
【0051】
いくつかの態様において、HIV-1テーラード抗原は、Gag、Pol、Nef、Env、Tat、Rev、Vpr、Vif、またはVpuからのエピトープを含む。いくつかの態様において、テーラード抗原は、SEQ ID NO:692~696; SEQ ID NO:756~765; SEQ ID NO:769~777;またはSEQ ID NO:780~789から選択される配列を含む。
【0052】
いくつかの態様において、HIV-1テーラード抗原はGagからのエピトープを含み、SEQ ID NO:692、SEQ ID NO:693、SEQ ID NO:694、SEQ ID NO:695、またはSEQ ID NO:696のアミノ酸配列を含む。
【0053】
いくつかの態様において、HIV-1テーラード抗原は、HIV-1グループMグローバル集合の中心をなす。いくつかの態様において、HIV-1グループMテーラード抗原はGagエピトープを含み、SEQ ID NO:756~765からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1グループMテーラード抗原は、Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープを含み、SEQ ID NO:757、SEQ ID NO:759、SEQ ID NO:761、SEQ ID NO:763、またはSEQ ID NO:765のアミノ酸配列を含む。
【0054】
いくつかの態様において、HIV-1テーラード抗原は、南アフリカにおけるHIV-1クレードCエピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、HIV-1クレードCテーラード抗原はGagエピトープを含み、SEQ ID NO:768~777からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードCテーラード抗原はGagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープを含み、SEQ ID NO:769、SEQ ID NO:771、SEQ ID NO:773、SEQ ID NO:775、またはSEQ ID NO:777のアミノ酸配列を含む。
【0055】
いくつかの態様において、HIV-1テーラード抗原は、米国におけるHIV-1クレードBエピデミックの中心をなす。いくつかの態様において、HIV-1クレードBテーラード抗原はGagエピトープを含み、SEQ ID NO:780~789からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、HIV-1クレードBテーラード抗原は、Gagのp24キャプシドタンパク質からのエピトープを含み、SEQ ID NO:781、SEQ ID NO:783、SEQ ID NO:785、SEQ ID NO:787、またはSEQ ID NO:789のアミノ酸配列を含む。
【0056】
ある特定の態様では、その必要がある対象に、有効量の、開示されるワクチンのうちの一つを投与する工程を含む、対象におけるHIV-1を処置する方法が提供される。別の一態様において、地理的領域内での多様性を最適にカバーするようにワクチン抗原を選択する工程は、EpiGraph抗原配列選択法を使って生成させたワクチン抗原配列を使用する。
【0057】
本発明の態様には、その必要がある対象に、有効量の、これら開示されるワクチンのうちのいずれかを投与する工程を含む、対象におけるHIV-1感染を処置する方法が包含される。
【0058】
本発明の態様には、1種類または複数種類のEpiGraph配列を決定する工程、前記1種類または複数種類のEpiGraphアミノ配列とベクターとを含むワクチンを作製する工程、および前記ワクチンを、その必要がある対象に投与する工程を含む、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法も包含される。別の一態様では、前記1種類または複数種類のEpiGraphアミノ配列がSEQ ID NO:697、SEQ ID NO:698、SEQ ID NO:699、またはSEQ ID NO:700を含む、エフェクターメモリーT細胞応答を誘導する方法が提供される。このワクチンは予防用ワクチンまたは治療用ワクチンであることができる。
【0059】
HIVワクチン研究における近年のブレークスルーには、HIV感染を防ぐためのエフェクターメモリーT細胞(TEM)誘導性ワクチンの概念が含まれる。伝統的なワクチンアプローチによって誘導される中枢メモリーT細胞(TCM)とは異なり、TEMはリンパ組織およびリンパ系外エフェクター部位に持続的に維持され、抗ウイルスエフェクター機能を直ちに媒介することができるので、ウイルス侵入の入口およびウイルス再活性化の部位に不断の免疫シールドを与える。TEMを誘導し無期限に維持するための最も適格なベクター系はCMVに由来する。おそらくは、持続感染細胞における不断の低レベルな再活性化および/または遺伝子発現により、CMVは、T細胞消耗を引き起こすことなくTEM維持に必要なちょうど適正な量の持続的低レベル免疫刺激を維持するのであろう。
【0060】
ある特定の態様では、治療用ワクチンにおいて、テーラード抗原カクテルを使用することができる。例えばテーラードワクチンには、HIVなどの可変性の高い病原体に感染した人々の集団において極めて良好なエピトープカバレッジを与える6~10配列の所定の集合を得るために、k平均クラスタリング戦略を使用することができる。対象が感染しているウイルスを配列決定することができ、その感染ウイルスを最もよくカバーする2つまたは3つのテーラードワクチンが送達されるであろう。エピトープカバレッジは最適化され、一方、ワクチンと感染株との間のエピトープミスマッチは最小限に抑えられるであろう。
【0061】
提供されるある特定の態様には、一定のCMV遺伝子領域を欠くHCMVバックボーンベクターと集団エピセンサス抗原とを含むHIV-1ワクチンが包含される。ある特定の態様において、HCMVバックボーンはUL131A-128遺伝子領域を欠くことができる。ある特定の態様は、テグメントタンパク質pp71(UL82)遺伝子の欠失を含むこともできる。(米国特許出願公開第2014-0141038号;同第2008-0199493号;同第2013-0142823号および国際出願公開第2014/138209号)。
【0062】
ある特定の態様において、本開示は、第2のテーラード抗原配列を含むことができるワクチンを提供する。ある特定の態様において、ワクチンは、第2の、第3の、またはそれ以上のテーラード抗原配列を含むことができる。エピセンサス抗原は、SEQ ID NO:691のアミノ酸配列を含むことができる。テーラード抗原は、SEQ ID NO:692、SEQ ID NO:693、SEQ ID NO:694、SEQ ID NO:695、またはSEQ ID NO:696のアミノ酸配列を含むことができる。一態様において、第1のテーラード抗原配列および第2のテーラード抗原配列は、SEQ ID NO:692、SEQ ID NO:693、SEQ ID NO:694、SEQ ID NO:695およびSEQ ID NO:696のアミノ酸配列のうちの2つを含む。別の一態様において、第1のテーラード抗原配列、第2のテーラード抗原配列および第3のテーラード抗原配列は、SEQ ID NO:692、SEQ ID NO:693、SEQ ID NO:694、SEQ ID NO:695およびSEQ ID NO:696のアミノ酸配列のうちの3つを含む。
【0063】
SEQ ID NO:692、SEQ ID NO:693、SEQ ID NO:694、SEQ ID NO:695、またはSEQ ID NO:696を含むことができるテーラード抗原配列も提供する。
【0064】
ある特定の態様において、開示されるワクチンは、HCMVバックボーンと、ベストマッチの天然HIV-1株であるように選択されたテーラード抗原とを含むHCMVベクターを、さらに含むことができる。別の一態様において、開示されるワクチンは、HCMVバックボーンと、ベストマッチの異なる(かつ遠い)HIV-1株であるように選択されたテーラード抗原とを含むHCMVベクターを、さらに含むことができる。
【0065】
ある特定の態様において、開示されるワクチンのエピセンサス抗原およびテーラード抗原はHIV-1 Gagタンパク質に由来しうる。別の一態様において、HIV-1 Gagタンパク質は、HIV-1 Gagタンパク質のN末端にあるミリストイル化配列を除去することによって不活化されている。別の一態様において、エピセンサス抗原およびテーラード抗原は、HIV-1のPolタンパク質またはNefタンパク質に由来しうる。
【0066】
ある特定の態様では、その必要がある対象に、有効量の、開示されるワクチンのうちの一つを投与する工程を含む、対象におけるHIV-1を処置する方法を提供する。別の一態様では、個体中のHIV-1ウイルスを配列決定する工程、地理的領域内の多様性を最適にカバーするようにデザインされたワクチン抗原を選択する工程、および前記ワクチン抗原をベクターに挿入する工程を含む、対象のためのHIV-1ワクチンをデザインし、生産する方法を提供する。
【0067】
ある特定の態様には、その必要がある対象に、有効量の、この開示されるワクチンのうちのいずれかを投与する工程を含む、対象におけるHIV-1感染を処置する方法が包含される。
【0068】
以下に実施例を挙げて本明細書に記載する態様をさらに詳しく説明する。以下の実施例の目的は態様の例示であって、限定ではない。
【0069】
本明細書において言及する文書、特許、および特許出願はすべて参照により本明細書に組み入れられ、本発明の実施に使用しうる。
【実施例
【0070】
実施例1:整列された配列の最適エピトープカバレッジに関するグラフィカルモデル
N個の整列された配列の集合S={s1,s2, … ,sN}の存在を仮定した。各配列は、アルファベット文字(場合によってはギャップ、未知などに対応する数種類の特別な文字がある他は、20種のアミノ酸に対応する)のストリングである。配列は整列されているので、すべてが同じ長さTを有し、位置t=1…Tは、配列ごとに明確であって、sn[t]はn番目の配列中のt番目の文字として書かれることになる。位置tで始まり位置uで終わるsの部分配列に対してs[t:u]という表記を導入することは有用である。
【0071】
潜在的エピトープは、k個の文字(典型的には8~12個)の短い配列と定義される。関心対象のエピトープはS中の配列の部分配列である。実際には、配列sはエピトープのリスト、すなわちe1、...、eT-k+1(ここでet=s[t:t+k-1])であると考えることができる。ただし、エピトープのリストが配列と関連づけられるには、それらのエピトープはコンシステントである必要があることに留意されたい。具体的に述べると、どの隣り合うペアetおよびet+1についても、etの最後のk-1個の文字が、et+1の最初のk-1個の文字と一致すること、すなわちet[2:k]=et+1[1:k-1]であることが要求される。
【0072】
各エピトープeについて、そのエピトープが現れるS中の配列の分率を算出する頻度f(e)を関連づけることができる。
【0073】
一般カクテル問題の場合は、有用な性質を有するエピトープを持つ人工的配列の集合Q={q1, ... ,qM}を求める。EQを、Q中に現れる全エピトープの集合であるとする。すなわち、
EQ={e|何らかのm、tに対してe=qm[t:t+k-1]}
である。
【0074】
具体的には、配列集合Sのうちの可能な限り多くをカバーするように、エピトープをデザインした。目標は、カバレッジスコア
Σf(e)
を最大化することであり、ここで和はe∈EQ全体にわたる。
【0075】
M<N、そして典型的にはM≪Nであるから、すべてのエピトープをカバーすることは一般にできない。
【0076】
整列配列問題の場合は、いくつかの簡略化を行うことができる。この場合は、アラインメント中の各位置を、異なる(ただし独立ではない)問題として処理した。ここでは頻度関数が位置に依存し、f(t,e)を、eが位置tから始まるk-mer部分配列であるS中の配列の数とした。したがって
f(t,e)=ΣI(e=sn[t:t+k-1])
であり、式中、Iは指標関数であって、その引数が真であれば1、そうでなければゼロである。集合EQも配列q中の位置に応じて分割することができる。したがって
EQ[t]={e|あるmに対してe=qm[t:t+k-1]}
である。
【0077】
これにより、各位置についてのカバレッジ尺度
c[t]=Σe∈EQ[t]f(t,e)
の生成が可能になり、ここから、総カバレッジは
c=Σtc[t]
によって与えられる。
【0078】
自明な特殊な事例である、k=1の場合、エピトープはアミノ酸文字でしかなかった。しかし、たとえ問題の解が自明であったとしても、この解は依然として有用であった。M=1の場合、ベスト解はコンセンサス配列によって与えられ、q1[t]は、位置tにおいて最も多く見られるアミノ酸になるように選ばれる。M=2の場合は、q2[t]を、位置tにおいて2番目に多く見られるアミノ酸とすることによって、カバレッジを最適化することができる。さらに大きなMについても同様である。
【0079】
k>1の場合は、エピトープがオーバーラップするので問題は自明でなくなり、もはや各c[t]を独立して最適化することはできない。M=1の場合は、求めたのがエピトープのコンセンサスであるという点以外はコンセンサスに似ているので、これを「エピセンサス」問題と名付けた。
【0080】
一例において、コンセンサスとk=3エピセンサスとは一致しない。すなわち、コンセンサスでは各位置において最もポピュラーな文字が使用され、エピセンサスでは最もポピュラーな「エピトープ」が使用された。ここで本発明者らは潜在的エピトープを3文字のストリングとみなしている。表1では、この例を拡大して、オーバーラップするエピトープストリングを説明する。
【0081】
(表1)6つの配列およびそれらに付随するk=3エピトープを示す。
一番下の行は、コンセンサス配列(各位置において最も多く見られる文字から形成されるもの)および各位置において最も多く見られるエピトープを示す。しかし、これらのエピトープ(特にEFGおよびCHS)は互いにコンシステントではないので、これらを組み合わせて単一のエピセンサス解にすることはできない。この場合、ベストエピセンサススコアは(一意的にではないが)配列ARCHSLM[SEQ ID NO:794]によって与えられ、これは、これらの配列において可能な30個のエピトープのうちの1+1+2+2+3=9個をカバーしている。コンセンサスARCGSLM[SEQ ID NO:799]は1+1+1+1+3=7個をカバーする。このスコアの上限は、各位置における最もポピュラーなエピトープの頻度から得ることができ、この例では、2+2+2+2+3=11になることに留意されたい。
【0082】
エピセンサス問題を解く
まずM=1の場合に取り組んだ。この場合は、整列されていない配列リストS中のエピトープを最適にカバーするエピトープを持つ単一の配列qを求めた。EpiGraphアルゴリズムは適当な仮定の下に最適解に達する。比較として、コンセンサスアルゴリズム(非常に簡単かつ迅速)および(参照により本明細書に組み入れられるFisher, Nat Med.2007 Jan;13(1):100-6)に記載の遺伝的アルゴリズムによる最適化(非常に遅い)も考慮した。EpiGraphアルゴリズムを図1Aおよび図1Bに図解する。
【0083】
次に、M>1で、より一般的なワクチンカクテル問題を考察して、このより一般的な問題のためにエピセンサスアルゴリズムを改変する方法を示した。
【0084】
図2にエピトープグラフのノードを示す。各ノードには、エピトープk文字ストリング、およびそのエピトープが整列された配列集合においてその位置に観察される頻度(f)、およびそのノードで終わるコンシステントなパスの累積ベストスコアSが含まれている。ノードはカラム状に配置され、各カラムは当該エピトープに関連する位置tに対応する。これらのノードを結ぶ線は、コンシステントであった隣接エピトープに対応する。狙いは、このグラフを通るコンシステントなパスであって、各ノードにおける頻度値の和を最大化するものを見いだすことにある。
【0085】
図2における太線は、最適な総スコアをもたらす一つのパスを示している。そのようなパスは常に少なくとも1つはあるだろうが、それは一意的ではないかもしれない。
【0086】
累積スコアS(t,e)を、t=1で始まり、位置tのエピトープeで終わる場合に達成可能なベストスコアと定義した。S(t=1,e)=f(e)であること、およびt>1の場合の値は、帰納的に計算できることがわかった:
S(t,e)=f(e)+maxe'S(t-1,e')、ここで、e'∈E(t-1,e)
式中、E(t-1,e)は、位置tにあるeとコンシステントな位置t-1のエピトープの集合である。すべてのエピトープについてこの累積スコアを計算したところ、ベストパスについては、総スコアが最後のカラム上の最大スコアとして見いだされた: Smax=maxeS(T-k+1,e)。さらにまた、最適パスを見いだすために、この最大値から逆向きに動かすこともできる。
e* T-k+1=argmaxeS(T-k+1,e)
e* t-1=argmaxe'S(t-1,e')、ここで、e'∈E(t-1,e* t
配列e* 1、e* 2、...、e* T-kにより、最高スコアを持つコンシステントなエピトープの配列が規定された。エピセンサスストリングqは、各エピトープの最初の文字をとり(q[t]=et *[1])、最後のエピトープ(q[T-k:T]=e* T-k[1:k])で終わることによって得られる。
【0087】
argmax演算子は一意的な値を持たないかもしれない。その場合、当該エピセンサス問題には複数の解があり、それらはすべてカバレッジという意味では最適である。
【0088】
ギャップ
配列を整列するには挿入および欠失を扱う必要があり、これは整列された配列中にギャップを導入する。例えば、配列ARCCDEGH[SEQ ID NO:806]とARCDEFGH[SEQ ID NO:807]は、ARCCDE-GH[SEQ ID NO:808]およびARC-DEFGH[SEQ ID NO:809]として、より良く整列された。EpiGraphアルゴリズムにおいてこれらのギャップを扱うために、プレースホルダーエピトープを開発した。
【0089】
プレースホルダーエピトープ
k=3エピトープは、それぞれARC、RCC、CCD、CDE、DEG、EGHおよびABC、BCD、CDE、DEF、EFG、FGHであった。ただし、エピトープを第1カラムによって整列させた場合、そのリストにはギャップを導入する必要がある:ABC、BCC、CCD、CDE、DEG、EGH、-GHおよびABC、BCD、CDE、-DE、DEF、EFG、FGH。ストリング-GHおよび-DEはプレースホルダーエピトープであった。プレースホルダーはカバリング関数(covering function)ではカウントされない。すなわちf(t;-XY)=0である。しかしそれでもプレースホルダーは有用である。なぜなら、プレースホルダーは隣接するエピトープのコンシステント性(consistency)を定義するために使用することができるからである。
【0090】
ギャップなしの配列の場合、第1エピトープの最後のk-1個の文字が第2エピトープの最初のk-1個の文字と合致するのであれば、それら2つの隣接エピトープはコンシステントであるとみなした。したがってABCとBCDはコンシステントであるが、BCCとCDEはコンシステントではない。ギャップを導入した場合、ギャップ文字で始まる第2エピトープを考慮し、残りのk-1個の文字が、一つ前のエピトープの最後のk-1個の文字とマッチするのであれば、そのペアはコンシステントである。したがってCDEと-DEはコンシステントである。
【0091】
「ドロップ-イン-プレース」(drop-in-place)アルゴリズムには、一般にコンセンサス配列であるとみなされる「サブストレート」(substrate)配列を使用した。次に、すべての位置におけるすべてのエピトープをとりあげ、その出現頻度に従ってソートした。最も低頻度のエピトープから出発し、位置[t:t+k-1]にあるサブストレート中の文字をエピトープ中の文字で置き換えることによって、各エピトープをサブストレート上に落とし込んだ。最も頻繁に現れるエピトープがサブストレート上に落とし込まれたら、ストリングをエピセンサス解qとして使用した。最も高頻度なエピトープはそれより希少なエピトープを上書きするので、より高いエピトープカバレッジが達成された。また、単一の配列qが常に更新されるので、最終解はコンシステントなエピトープで構成されることになる。
【0092】
このアルゴリズムは完全には決定的ではないかもしれない。なぜなら、いくつかのエピトープが同じ頻度を持つかもしれないこと、そして、それらの位置がオーバーラップしている場合、最終結果は落とし込んだ順序に依存しうるからである。実装時には、ソートアルゴリズムが与える順序を採用するが、それらの順序を無作為化し、アルゴリズムを多重に実行すると、いくつかの実行がより高いスコアを与える場合もありうる。
【0093】
ヒューリスティック「ドロップ-イン-プレース」アルゴリズム
このアルゴリズムでは、「サブストレート」配列をコンセンサス配列であるとみなしたが、サブストレートの選択が相違を生むことはほとんどない。すべての位置のすべてのエピトープをとり、その出現頻度に従ってソートした。最も低頻度のエピトープから出発する。
【0094】
各エピトープを、位置[t:t+k-1]にあるサブストレート中の文字をエピトープ中の文字で置き換えることによって、各エピトープをサブストレートに「落とし込」んだ。最も頻繁に現れるエピトープが最後にサブストレート上に落とし込まれた時に、エピセンサス解qとして使用されるストリングが得られた。最も高頻度なエピトープはそれより希少なエピトープを上書きするので、より高いエピトープカバレッジが達成された。単一の配列qが常に更新されていたので、最終解はコンシステントなエピトープで構成された。
【0095】
このアルゴリズムは完全には決定的ではないかもしれない。なぜなら、いくつかのエピトープが同じ頻度を持つかもしれないこと、そして、それらの位置がオーバーラップしている場合、最終結果は落とし込んだ順序に依存しうるからである。実装時には、ソートアルゴリズムが与える順序を採用するが、それらの順序を無作為化し、アルゴリズムを多重に実行すると、いくつかの実行がより高いスコアを与える場合もありうる。このランダム化多重実行アプローチの有用性はまだ調べられていない。
【0096】
解は各位置での最高頻度エピトープだけに依存するので、表1に挙げた例であれば、それは、DEF、EFG、CHJ、HJL、JLMのコンシステントな組み合わせになる。もしこの順序で落とし込むと(最初の4つは頻度2、最後の1つは頻度3である)、DECHJLM[SEQ ID NO:810]が得られ、そのスコア0+0+2+2+3=7はコンセンサスに優るが最適ではない。もしHJL、CHJ、EFG、DEF、JLMという順序で落とし込めば、2+2+1+1+3=9というスコアを持つDEFGJLM[SEQ ID NO:811]が得られ、この例ではこれが最適スコアである。これら2つの解を図3に図解する。
【0097】
整列ワクチンカクテル(M>1)問題
遺伝的アルゴリズム最適化を使った元のmosaic解では、mosaic配列のすべてのMが同時に最適化される。
【0098】
逐次解法
M=1エピセンサス解をM>1問題に敷衍する一方法は、総カバレッジを最適化するためのアルゴリズムに変更を加えて、補完的カバレッジを最適化することである。すなわち、あるエピセンサス解q1が与えられたら、q1ではカバーされない残りのエピトープのうちの可能な限り多くをカバーするq2を見つける。
【0099】
逐次解法の反復精密化
初期解q1、q2、…、qMが与えられたら、q1に関して、新しい推定値を再計算することができる。これは、エピトープのそれぞれについて元の頻度値から出発するが、q2、…、qMによってカバーされるエピトープを0に設定することによって行われる。この補完的カバレッジ問題の最適化は新しいq1をもたらす。初期解のすべてをこの方法でループすることができ、その都度、補完的カバレッジが最適化される。
【0100】
オフ-バイ-ワン(off-by-one)スコアリング
上述の解析では、配列S中のエピトープが配列q中のエピトープと厳密にマッチした場合にのみ、カバレッジにクレジットを与える。しかし、より長いエピトープ、例えばk=12の場合は特に、配列中のエピトープは、それが近似的マッチであってもなお、有効でありうる。例えば、12文字中11文字の一致は、問題のないカバレッジを構成しうる。
【0101】
結果
690個の配列のデータ集合を使ってこれらのアルゴリズムを比較した。
【0102】
図4に、そのような大きなデータ集合でのグラフの外観を図解する。図4は、それぞれが556の位置に整列された690個の米国クレードB Gagタンパク質配列(SEQ ID NO:1~690)のデータ集合に関連するグラフを示している。結果を表2に示す。横軸は位置tであり、ノードのカラムは各位置における異なるエピトープを示している。ノードは最高頻度が最下部になるように配置された。ノードおよびエッジ(隣接するノードのコンシステント性を示す)が示されている。グラフ全体を(a)に示し、同じグラフの拡大挿入図を(b)に示す。
【0103】
表2はカバレッジスコアの比較を示している。これは、ワクチン配列Q={q1,…,qM}中のエピトープによって(厳密なマッチで)カバーされている配列S中のエピトープ(k=12)の分率である。
【0104】
(表2)
【0105】
グローバルEpiGraph解については、グループM、クレードBおよびクレードCデータベース配列(最大でおよそ2015個を含む)に基づき、Gag、Pol、およびNefに関して、単一ベストEpiGraph配列が、二価ワクチン用の補完的第2 EpiGraph配列と共に決定された。Mosaicデザインとの比較でEpiGraphコードの新規な利点は、この新しい配列のデザインに含まれる特徴である希少なエピトープの意図的排除が可能になる点である。グループMからの希少な変異体の排除がもたらす影響の例については、以下の図を参照されたい。図5A~Cは、使用したEpiGraphおよびテーラードワクチンの最終値を図解している。
【0106】
実施例2:整列されていない配列の最適エピトープカバレッジのためのグラフィカルモデル
ターゲット集団(例えば系統学的クレード、国、またはグローバル)でのウイルスの可変性を特徴づけるために、N個の整列されていないタンパク質配列の集合S={s1,s2, ... ,sN}をとりあげる。潜在的エピトープは、k個のアミノ酸(典型的にはk=9)の部分配列である。各潜在的エピトープeには、eが現れるS中の配列の数に対応する整数頻度f(e)が割り当てられる。一価問題は、天然タンパク質に似ているが、集団S中の潜在的エピトープを最適にカバーする単一の人工的配列qをデザインすることである。q中に現れるエピトープの集合をE(q)と書くと、本発明者らのカバレッジの尺度は
カバレッジ(q)=Σe∈E(q)f(e)/Σe∈E(S)f(e)
である。
【0107】
分子は、q中に現れるエピトープの頻度の和であり、分母は、S中の配列のいずれかに現れるすべてのエピトープの和で正規化を行う。この式は有向グラフとして表現することができる。グラフ中の各ノードは異なるエピトープeに対応し、有向エッジは、長さkの2つのエピトープ(ea; eb)がk-1文字分オーバーラップしている場合に、それらをつなぐ。このグラフを通るパスは、eiからei+1(i=1、…、L-1)へのエッジを持つノードe1、e2、…、eLの配列である。そのようなパスは人工的抗原qであるL+k-1文字の配列に対応する。
【0108】
この有向グラフが周期(cycle)を持たない場合、EpiGraphはカバレッジを厳密に最大化するグラフを通るパスを見いだして、最適解を与える。さらにまた、この最適化は、グラフのサイズ(ノード数およびエッジ数で測定されるもの)と線形にしかスケールしない計算作業によって行われる。実際には、Sから作成される有向グラフは、無周期性に極めて近いことが多いとはいえ、kの値が大きくなればとりわけ、無周期性でないこともありうる。その場合は、周期を同定して低値エッジを除去する作業を周期が残らなくなるまで反復することにより、グラフを「脱周期化(de-cycle)」した。
【0109】
m>1抗原の多価「カクテル」は、EpiGraphを逐次的に実行し、補完的エピトープカバレッジを最適化することによって作ることができる。これは、第1抗原に含まれたエピトープをそれらの頻度がゼロであるかのように扱い、次にそれら変更された頻度でEpigraphを実行することによって達成される。パスを完成させる(そして完全なタンパク質を生成させる)のに第1抗原中のエピトープのいずれかが必要である場合、それらを利用することは依然として可能であるが、それらはもはやカバレッジスコアには貢献しないので、好まれない。この逐次解法は反復精密化を使って改良することができる。
【0110】
実施例3:テーラード治療用ワクチン
対象ごとにデザイナーワクチンを組み上げることは実行不可能でも、その対象からのウイルスを配列決定して、ワクチンオプションの小さなリファレンス集合内から良好なマッチを得ようと試みることは実行可能である。最初に、Gagタンパク質に焦点を合わせて米国系クレードB治験集団を検討した。改訂版米国系クレードBデザインに加えて、南アフリカ系リファレンスワクチン集合およびグローバルワクチン集合もデザインした。p24はGag中の最も高度に保存されたサブタンパク質であり、より大きなGagタンパク質から切り出されて、約230アミノ酸長の保存領域を与えることができる。おそらくGagおよびPol中の領域に焦点を合わせて、あるいはNefおよび他の任意の関心対象のタンパク質の保存されたストレッチを含めて、保存領域アプローチも、Gagの代替物として検討した。
【0111】
これは、予防用ワクチンのために最適集団カバレッジを与える集合をデザインする試みとは、著しく異なる最適化問題である。予防の場合は、ワクチンと出会うのがどのウイルスであるかはわからない。治療の場合は、感染ウイルス配列を得て、マッチさせることができる。
【0112】
最適化は二つの事項を考慮して行った。すなわち、第1に、対象の感染ウイルスからのマッチを最大化すること、そして第2に、ワクチン応答が可能な限り関連エピトープをターゲットとするように、ミスマッチを最小限に抑えることである。
【0113】
HIV主要クレード内での系統樹は明確な構造をほとんど持たない傾向にある。むしろそれは、外枝が非常に長く、基部近くに非常に短く不明確な内枝を持つ「星形」である。この構造の一部はおそらくサブタイプ内組換えによるのであろう。定量化することは難しいが、組換えは間違いなく比較的頻繁に起きており、サブタイプ内組換えに関して見られるものとの類似性から、それは広範である可能性が高い。系統樹の構造を考えると、クレード内での関連性は「エピトープという観点」からは限られた意味しか持たないので、可能なワクチンのリファレンス集合を規定するために、単に系統樹でのクラスタリングを使用するだけでは有効ではないだろう。そうではなく、配列の関係性は関連尺度によって考慮されるべきであり、リファレンス集合は天然株と推定ワクチンデザインとの間の潜在的エピトープ類似性に基づいて選択されるべきである。
【0114】
クラスIIエピトープを考慮して12 merを最適化したが、このコードは任意の長さのk-merをリファレンスポイントとして使用することができる(ここで、kは推定上の潜在的エピトープ長である)。9 merも使用した。mosaicによる過去の研究では、9 merに関する最適解は他の近接長(8、10、11、12)に対してもほとんど最適であった。これは、本明細書に記載する新しいアルゴリズムにも持ち越されると予想される。9 merは、本明細書において開示する一定のテーラードワクチン集合に使用した。
【0115】
k-merカバレッジによって最適性を規定した。これは、各配列を「バッグ・オブ・エピトープ」(bag of epitopes)、すなわち配列中に現れるすべてのk-merの順序不同のリストで置き換えることによって規定される。バッグ・オブ・エピトープは、ある配列の集合に対して、その集合中の配列のいずれかに現れるすべてのk-merのリストを作ることによって、規定することができる。配列の集合Q={q1,q2,…,qN}による所与の配列Sのカバレッジは、Q配列の総体的バッグ中にも存在するSのバッグ中のエピトープの分率によって与えられ、ここでQはワクチンカクテル中の多価の組み合わせであってもよい。最適化したのは、このカバレッジである。関心対象であるもう一つの量は、Sバッグ中にはないQバッグ中のエピトープの分率であった。最適化においてこれを直接使用することは(現時点では)ないが、これら無関係なエピトープの分率は低いほど好ましく、これらの数を比較および実験デザインのために計算する。
【0116】
テーラードワクチン解析コード(下記参照)に組み込まれたテーラードワクチン用のクラスタリングを行う時に「中心配列」(central sequence)を見つける6つの方法を評価した。EpiGraph解がベストであると思われ、これを最終コードに使用した。数種類のクラスタリング戦略も試した。以下に、クラスターのアミノ酸ベースの中心配列を規定するために試験した戦略を示す。
【0117】
1)コンセンサス:コンセンサスは、アラインメント中で最も多く見られるアミノ酸を連結することによって得られる一般的な標準である。
【0118】
潜在的エピトープ(k-mer)ベース:
2)エピセンサス:このアプローチでは集団内またはクラスター内の単一中心配列を求める。エピセンサスを発見するために2つのアルゴリズムを試験した。第1のアルゴリズムはドロップ-イン-プレースアルゴリズムである。これは「サブストレート」としてのコンセンサスから出発する。非常に希少なk-mer(集団中に1回しか見つからないもの)の除外は、希少な低頻度変異体から開始し、コンセンサスk-merを希少な変異体で置き換え、次に、すべてのk-merのその頻度に基づくリストの最後まで変異体で置き換え続け、k-mer中で最も高頻度な変異体が「留まった」(standing)状態になるまで、次第に高頻度な変異体で置き換え、上書きする。高頻度のオーバーラップk-merは低頻度でオーバーラップするペプチドを必然的に無効化しがちになる。第2のアルゴリズムはEpiGraphである。これは実施例1で説明した。Epigraph配列はGA mosaicより計算が速いので、テーラードワクチンをデザインするために必要なクラスタリングアルゴリズムへの組み込みは容易であった。Gagタンパク質を含む556アミノ酸の690個の整列された配列の集合(SEQ ID NO:1~690)を使った実験では、EpiGraph解はコンセンサスに非常に近く、単一ベストmosaicにも非常に近く、それら他の2つのセントロイド(centroid)とのアミノ酸相違は一つだけであった。
【0119】
3)逐次:このアプローチではN個のワクチンオプション配列の集合を求める。ここでは、まず、その集団に対してエピセンサスを規定して、これをq1とする。次に、q1によって既にカバーされているすべてのk-merを除外し、同じドロップ-イン-プレースプロセスによって一連の第2配列を求めることで、q2を得る。次に、q1およびq2によって既にカバーされたすべてのk-merを除外して、q3を求め、それぞれがより一層希少な形態の潜在的エピトープを含むN個の配列の集合が求められるまで同様にする。
【0120】
4)反復:これは逐次アルゴリズムの反復バージョンである。これも、N個のワクチンオプション配列の集合をもたらし、その集合は通常、逐次アプローチより優れたカバレッジを持つが、逐次アルゴリズムがもたらす優先順序は伴わない。逐次解q1、q2、…、qNから出発して、データ配列集合中にあるすべてのエピトープを同定し、次にq2、…、qNによってカバーされるエピトープを除外する。残りの(除外されていない)エピトープを使ってエピセンサスを求めることにより、q1に関して新しい値を得る。次の工程では、q1、q3、…、qN中のエピトープを除外して、q2で同じことを行う。q3からqNまで同様にする。
【0121】
5)Mosaic(GA mosaic):元の遺伝的アルゴリズム(GA)を使って規定される。Mosaicとは、Mosaicと名付けられた遺伝的アルゴリズムおよび/またはそのGAによってもたらされる抗原配列を指す。ここでは、サイズNのmosaicの集合を同時に求めるか、ベストな単一Mosaicを求め、それを固定し、5つの補完的集合を求めることで、合計6つのワクチンオプション配列を作成することができる。この戦略は、下記のクラスタリング戦略との直接比較を可能にするために使用した。
【0122】
6)ベスト天然株(best natural):このアプローチではN個のワクチンオプション配列の集合を求める。最も「エピトープ中心」(epitope centric)的な集合中の天然株、すなわち最も多く見られるk-merを有するものを同定する。これを見いだすために、所与の天然株中のあらゆるk-merについて、集団におけるその頻度に基づいて、その特別な形態に頻度を割り当て、その天然株が集団をどの程度よくカバーしているかの尺度として、それらの頻度を合計することができる。最高スコアを持つ天然株がベスト単一株Nat.1である。次に、Nat.1によってカバーされるk-merをスコアリングスキームから除去し、Nat.1によって既にカバーされているエピトープを除外した場合のエピトープカバレッジについてベスト天然株を見つけることによって、Nat.2に対するベスト補完物を選び取ることができる。これを反復して行うことで、k個の天然株を選ぶ。ここで、kは考慮しようとするワクチンオプションの数であり、それらは、Nat.1がベスト単一株であり、Nat.2がNat.1に対するベスト補完物であり、Nat.3が(Nat.1+Nat.2)に対するベスト補完物であるというように順序づけられる。
【0123】
以下の一般戦略に従ってデザインされるワクチンオプションを探究し、新しいアイデアを比較して、集団カバレッジを最適化するために過去にデザインされた治療用ワクチン集団配列を具体的に扱った。
【0124】
すべての対象が同じワクチンを受けるとすると(これは保存領域でしかうまく機能しないかもしれない)、配列決定およびテーラリングは行われない。これらはユニバーサルデザインであって、個々人には最適化されていない。
【0125】
コンセンサス:集団を最もよくカバーする単一のユニバーサル配列を見いだす。この1ユニバーサル配列の候補には、集団コンセンサス、ベスト単一GA mosaic、エピセンサス、および最も「エピ中心的」(epi-centric)な天然株が含まれた。
【0126】
EpiGraph:2つまたは3つの集団ベースの配列を見いだし、それらを集団内の全員に与える。この集団ベースの戦略を、GA mosaic、ベスト天然株、ならびに逐次および反復mosaic解を使って比較した。EpiGraphを利用することができるようになり、Mosaicからの改良によって希少なエピトープを除外することもできるので、それらを使用する。
【0127】
対照的に、テーラードワクチンの場合、個々人には、その感染に最もよくマッチした唯一のワクチン配列が与えられることになる。例えば6種類のワクチン抗原配列を製造し、それら6種類のなかから患者への送達にとってベストのもの、または2種類のもしくは3種類のベストな組み合わせを選ぶ。すなわち、患者の感染株のベストカバレッジを与え、ミスマッチエピトープが最も少ないものを選ぶ。このシナリオのための戦略をいくつか探究した。
【0128】
a. k平均様戦略による配列のクラスタリング
6つのクラスターを作成するために、最終集合に対して1500回の反復(これらの反復のそれぞれは、試験的分割統合(trial split-and-merge)工程と、それに続く数回の規則的反復であった)を行って、これら6つのクラスターからワクチン集合用にセントロイド配列を規定した。2つの配列間の距離を、1-(一方の配列のエピトープの他方の配列によるカバレッジ)と定義した。最初に6つの無作為に選択した天然株を使ってクラスターをシーディングした。これは、非常に高度に関連する6セントロイド配列の集合を与えた。より多くの天然多様性を表現すれば、テーラードワクチンを作製するための試薬のより良い集合が作られることになると決定された。次に、それら6つのクラスターに、極めて独特であることから最も補完的な6つの天然(Nat6)株をシーディングし、次にクラスターに基づく中心(center)をエピセンサスとして再び割り当て、反復して再クラスタリングし、再び中心を定めた。この戦略を、6つのベスト天然株から出発し、エピセンサスの代わりにコンセンサスをクラスターセントロイドとして使用した場合と比較したところ、エピセンサスの方がわずかに良いカバレッジを与えた。最小クラスターサイズを強制することでも、カバレッジがわずかに良くなったので(最小クラスターサイズとして1、5および20を試した)、最小クラスターサイズを制約条件として組み込んだ。20の最小サイズは1または5よりも良かった。最小サイズを実装するために、所与のサイクルにおいて、クラスターサイズ中の配列の数が最小サイズ未満になったら、その「小さすぎるクラスター」の構成要素を、それぞれ、他の5つのクラスターからのベストセントロイドに再び割り当てた。失われたものを置き換えるための新しいクラスターを作るために、自身のセントロイドへの平均距離が最も大きいクラスターを、そのクラスターから2つの無作為天然配列をセントロイドとして採用してその周りに2つのクラスターを再形成させることによって分割し、セントロイドを再計算し、これら新しい6つのクラスターで次の工程に移った。これらのクラスターのセントロイドは、ツリーの中心に極めて近かった。これは、クラスター内で繰り返すコンセンサスの複製がシグナルの大部分を占めることに起因することが、配列から明らかにされた。
【0129】
b.エピセンサス+(5つのクラスター中心)
ここではまず、集団全体について、EpiGraphアルゴリズムを使って中心配列を規定し(集団エピセンサス)、それをワクチン試薬として含めるように固定した。集団エピセンサスとマッチするエピトープはいずれもクラスタリングの検討から除外した。配列を、先と同様に、最小サイズを使ってクラスタリングしたが、今回は、クラスターが集団エピセンサスを補完するように、エピセンサス中に見いだされるものを除くすべての潜在的エピトープに基づく5つのクラスターを、ターゲットとした。これはGagに関する最適解であると決定された。各対象のテーラードワクチンに集団エピセンサスを含めることにより、所与の最も多く見られるk-merが対象のサンプリングされたHIV配列において明白でないとしても(それは潜んでいるのかもしれないし、復帰変異のための一般的な形態であるかもしれない)、多く見られる形態の間で切り替わるHIVの頻繁なアミノ酸を得る。こうすれば、5つのクラスターのうちの1つからの第2の補完的配列は、ワクチンと感染株との間の交差反応力を、変異体に付加するであろう。
【0130】
c.ベストEpiGraphを固定し、5つのmosaic補完物を加えて、6つ(追加した5つに順序はない)の集合を得るか、ベスト天然株を固定して、5つの天然株を逐次追加する。
【0131】
詳細な比較および精密化を経て、本発明者らは、テーラードワクチン用のクラスターの中心を規定するために、EpiGraphアルゴリズムを使用することにした。南アフリカ用にグローバルグループMワクチン、コンテンポラリークレードBワクチン、およびコンテンポラリークレードCワクチンのいずれかをターゲットとする、テーラードデザインで製造するための6つのGagタンパク質抗原の集合を提供する。2つの天然クレードB配列、グループM EpiGraph、クレードB EpiGraph、またはクレードBテーラードを使った天然コンテンポラリークレードB配列のカバレッジの比較を図6A~Bに示す。クレードBテーラードデザインが最も良いエピトープカバレッジを与える。
【0132】
表3に示すように、M、C、T、A、およびPと表される数個の数字で、さまざまなシナリオを要約することができる。これらを各カテゴリーについて「丸薬」(pill)(すなわちワクチン抗原)の数に関して以下に説明する。
M=製造(Manufactured)、作製した丸薬の総数、ここから、各個体用に、何らかの部分集合を選ぶ。(典型的には本発明者らはM=6以下を考えている)。
C=共通(Common)、場合によってはいくつかのテーラード丸薬に加えて、全員が投与される丸薬。
T/A=テーラード(Tailored)/選択肢(Alternatives)、Tは、場合によってはいくつかの共通丸薬と組み合わせて、個々人に与えられる(A個の選択肢のうちの)テーラード丸薬の数である。
P=対象あたりの総数(Per-subject total)(T+C)、個々人に与えられる丸薬の数。
【0133】
(表3)
【0134】
表3において、一重下線を付した数字は、平均で、天然配列中の12 merの>60%が、ワクチンによってカバーされていること(「良」)を示し、二重下線を付した数字は、平均で12 merの70%超が、天然株中に存在しないことを示す。
【0135】
テーラード - 690個の集団配列のそれぞれについて6つのうちの最良の1つを選ぶ:
集団全体に対して1つだけ作るのと大差ないが(0.54対0.51)、6つのワクチンを作るのであれば、C6-epiが最も良い部類であり、それぞれの配列に基づいて対象に6つのうちの1つが与えられる。
【0136】
6つの群からのテーラードベストペア
【0137】
ハイブリッドテーラードペア:
集団中心を固定し、試験配列のそれぞれをカバーするために、固定された配列が最もよく補完されるように5つのセントロイドのうちの1つを加える。
【0138】
ハイブリッドベストスリー:
集団中心を固定し、固定された配列を最もよく補完して試験配列をカバーするように、5つのセントロイドのうちの2つを加える。
【0139】
共通:
全員が同じ集団ベースのワクチンを投与され、1つまたは2つのワクチン抗原が送達される。
【0140】
厳密なマッチ1+5-Epi-C5:
【0141】
およびマッチ1+5-Epi-C5とみなしたオフ-バイ-ワン:
**これらはおそらく最適解である。集団エピセンサスを作り、クラスタリングではエピセンサス中に見いだされる12 merを除外した。集団エピセンサスを固定し、他の5つの補完的クラスターのうちのベストエピセンサスを選んでそれとペアにすると、6つの変異体のうちのベストペアを選んだ場合と全く同じ答えが得られる。これは、集団エピセンサスが常にベストペアの一つであったことを意味している。
【0142】
オフ-バイ-ワン:
上記の推定値では完全マッチだけを考慮し、エピトープがワクチンカクテルと天然株との間でマッチするには、完全な12/12マッチを要求した。ミスマッチは十分に許容されることが多く、クラスIIエピトープの場合は特にそうである。マッチが11/12の一致を要求するとすれば、ミスマッチは10/12以下であり、ことはより楽観的に見える。真実はおそらく中間のどこかにあり、場合によっては10/12も許容されうるだろう。ここでは、おそらくベストなオプションを、比較しうるベストな天然株オプションと、完全マッチで比較する。
【0143】
完全マッチ(上記の表から抽出):
【0144】
そしてマッチとみなしたオフ-バイ-ワン:
【0145】
3つの丸薬、1つは一般(どの人も同じ)。そして2つのテーラード丸薬は、残り5つのうちのベストペア。
【0146】
実施例4:クレードB HIV-1「テーラード」抗原カクテルのデザインおよび最適化
集団レベルでのHIV多様性は各感染宿主内での迅速な進化から始まる。宿主内多様性の多くは免疫エスケープの直接的帰結であり(Bar, K. J.2012. PLoS Pathog 8:e1002721., Liu, M. K.2013. J. Clin. Invest. 123:380-93)、エスケープ変異体は感染後すぐに生じる(Fischer, W.2010. PLoS One 5:e12303)。予防用ワクチンの目標は、感染株を迅速に排除すること、または感染株が最初の段階で感染するのを妨げることである。どの株が伝染するかはわからないので、予防用ワクチンは、遭遇する可能性があるどの変異体に対しても活性である免疫応答を引き出す必要がある。これに対して、免疫療法は所与の宿主内に存在する既知のウイルス集団を対象とすることができる。したがって予防用HIVワクチンと治療用HIVワクチンは、これら異なる要件を念頭においてデザインする必要がある。図7に示すようにmosaic解は所与のHIV集団に関して最大可能エピトープカバレッジに近づく。この図からHIVタンパク質の保存の相違も明らかになり、Gag、NefおよびPolの大きなセグメントが高度に保存されているのに対して、Envの大半およびほとんどの小さな補助タンパク質(データ省略)は高度に可変的である。mosaicは、予防用ワクチンに関して、集団におけるエピトープカバレッジについてほぼ最適解を与えるが、治療の場では、標的である感染株の配列を知っているという追加情報を活用しない。
【0147】
テーラードワクチンデザイン戦略を実行するには、ターゲット集団のエピトープ多様性を最大限に捕捉する管理可能な数のワクチン試薬を製造し、感染したワクチンレシピエントからのHIVを配列決定し、次に前記ワクチン試薬プールのなかから、対象にベストマッチする抗原インサートの部分集合を選択する必要がある。このように、テーラードワクチン戦略は、mosaicワクチンデザインとは概念的に異なる。
【0148】
米国においてサンプリングされた約150,000のHIV配列のうち、98%はクレードBである。現在Los Alamos HIVデータベースから入手することができる米国でサンプリングされたクレードBのGag配列を使用した。この集合には、それぞれが異なる感染対象に由来する690個のインタクトなGag配列があり(SEQ ID NO:1~690)、米国HIV株における多様性の縮図を表している。ワクチンカクテルに含める必要がある異なるGag配列の数を固定しつつ、仮定上のワクチンにおけるT細胞エピトープカバレッジを最大化するために、エピトープベースのコンセンサス(すなわち「エピセンサス」)配列アルゴリズムの使用をk平均様クラスタリングと結びつける新規コンピュータ戦略を考案した。アラインメントの各位置において最も多く見られるアミノ酸を採用する単純なコンセンサス配列とは異なり、エピセンサスでは、アラインメントの各位置で始まる最も多く見られるエピトープ(例えば12 mer)を探す。しかし、各位置に最も多く見られるエピトープを単純に採用することはできない。なぜなら、エピトープはオーバーラップしており、単純な採用では近接するアミノ酸に矛盾が生じうるからである。目標は、ワクチンによる集団の最大エピトープカバレッジにつながるような方法で、それらの矛盾を取り扱うことである。
【0149】
集団エピトープ多様性を表現する製造用の抗原の小さな集合を規定するために、k平均様アプローチを使って、690個のGag配列をエピトープ類似性に基づいて異なるクラスターに区分し、クラスターごとに、そのクラスターの中心配列として役立つように、個別のエピセンサス配列を生成させた。5~6クラスターを超えると個々の変異体のカバレッジは横ばい状態になること、そして6つのHIV抗原変異体を持つ6つのワクチンベクターを製造することは実行可能であることから、最初は6つの抗原の集合をターゲットにした。アルゴリズムは初期セントロイド配列として無作為に選択された6つの天然株から出発し、残りの配列のそれぞれを、それら6つのどれでも一番近いものに割り当てる。6つのクラスターのそれぞれのなかで、そのクラスター中の配列のエピセンサスに基づいて、新しいセントロイド配列を計算する。次に、配列のすべてを新しいセントロイドのどれに一番近いかに従って、再割り当てする。このプロセスは、6つのワクチン抗原のデザインのためのk平均様最適化に収束し、それらを個々のクラスターのエピセンサスセントロイドであるとみなして、これらの抗原を、そこから所与のワクチンのためのベストマッチを与えるものを選択するための製造済みの集合として使用することができる。
【0150】
ハイブリッドアプローチは、潜在的なワクチン特異的応答の増加を最小限に抑えつつ、エピトープカバレッジを実質的に改良することがわかった。ハイブリッド戦略では、集団全体に対して中心配列を計算し(集団エピセンサス)、次に、もっぱら中心配列内に見いだされないエピトープに基づいて、クラスタリングを行った。このようにしてクラスターエピセンサス配列は集団エピセンサスを補完する。したがって、この6配列の試薬プールは、1つの集団エピセンサスと5つの補完的クラスターセントロイド配列とからなり、対象には2抗原テーラードワクチン、すなわちベスト補完配列とペアにした集団エピセンサスが与えられることになる。表4に見られるように、この戦略は、リファレンス集合中に、より多様な配列を与え、試験集団中の天然Gag配列の潜在的カバレッジを改良した。
【0151】
(表4)異なるワクチンによる米国クレードB Gag中の潜在的エピトープの株あたりのカバレッジの平均
【0152】
集団エピセンサスと5つのクラスター由来の補完的配列から、2抗原または3抗原デザインのテーラードワクチンを、690の変異体のそれぞれについて作った。これを、それぞれのワクチン被接種者が同じワクチン、すなわちmosaicまたはベスト天然株の組み合わせを与えられることになる集団ベースのワクチン戦略の潜在的エピトープカバレッジと比較した。「送達」欄はワクチンカクテルに含まれることになる抗原の数を示す。「製造」欄は、そのテーラードアプローチを使用するために、選択肢として合成する必要があるワクチン抗原のリファレンスプールのサイズを示す。「マッチ(%)」欄は、天然Gag変異体のそれぞれとワクチンとの間で完全にマッチした潜在的エピトープの平均数を示す。この値が高いほど、ワクチン応答が天然変異体と交差反応性になる可能性が高くなる。「非マッチ(%)」欄は、690個の配列のそれぞれについて別々に計算してから平均した、所与の天然Gag配列中に見いだされないワクチン中の潜在的エピトープの分率を表す。この値が高いほど、そのワクチンが、交差反応性応答を損ないうるワクチン特異的応答を引き出す可能性が高くなる。改良係数は、単一のベスト天然株を使用した場合と比較して、新しいワクチンデザインオプション案を使用することによるカバレッジの増加を示す。
【0153】
12 merに関して最適化したテーラードワクチン解は9 merについてもほぼ最適であり、逆もまた同様であるので、12 merに基づくクラスターは、表5に見られるように、クラスIエピトープ提示とクラスIIエピトープ提示の両方で奏功するはずである。
【0154】
(表5)2タンパク質テーラードデザインの平均カバレッジを計算する際に9 mer評価または12 mer評価における単一アミノ酸ミスマッチを正のマッチとみなす。
【0155】
最後に、潜在的エピトープにおいて同一を要求するのではなく12中1つのミスマッチを許容するのであれば、テーラードワクチンアプローチは、理論上、非常にうまくいく(表5)。この、より寛大で、おそらく生物学的に、より現実的な尺度を仮定するなら、テーラードワクチンに対するワクチン応答の約90%は、対応天然Gag中のエピトープと交差反応性でありうる。テーラードワクチンアプローチは、Gag配列のエピトープカバレッジを最大化する点でも、潜在的に有害なワクチン特異的エピトープを最小限に抑える点でも、集団mosaic、コンセンサス配列、およびベスト天然株よりも優れていた(図8)。このコードは、1つの代表配列を使用するのではなくそれぞれが感染個体に由来する複数の配列を使ったワクチンのテーラリングにも応用することができ、異なる集団(南アフリカにおけるクレードCエピデミック、タイにおけるクレード2地域的エピデミック、およびグローバルグループM集合)へのテーラードワクチンデザイン戦略の応用が探究される。
【0156】
テーラードワクチン抗原は、感染株がわかっている場合には(集団ベースの抗原と比較して)より良い天然配列のカバレッジを与えることができる。
【0157】
実施例5:二重発現ベクター
本明細書に記載する集団エピセンサス抗原および/またはテーラード抗原を使って、それぞれが完全なGag抗原と第2のHIV抗原とを発現する二重発現ベクターを作製する。第2のHIV抗原は、例えば、逆転写酵素(RT)とNefの中心部分との融合タンパク質であることができる。インテグラーゼは含まれない。インテグラーゼはT細胞応答の刺激因子としてはかなり弱いからである。CMVベクター(例えばRhCMVまたはHCMVベクター)を二重発現ベクターとして使用すれば、2つの異なるSIV抗原またはHIV抗原に対するT細胞を同時に誘導することが可能である。
【0158】
例えば、開発されたEpiGraphアルゴリズムに基づくテーラードGag配列を含有する最大6つのHCMVベクターのパネルを作製し(Gag集団エピセンサス抗原を発現するベクターが1つ、およびそれぞれが補完的なクラスターベースのGag抗原を発現するベクターが5つ)、RTおよびNefの中心領域をカバーする抗原のパネルもデザインする。Gag集団エピセンサス抗原を発現する1つのベクターに加えて、5つの補完的なクラスターベースの抗原のなかから選択することができる異なるGag抗原をそれぞれが発現する2つのベクターを提供する。これらのベクターは、2つの補完的HIV-1 EpiGraph RT/nef配列も含有することができる。これらの配列が高度に保存されているために、テーラリングによるカバレッジの改良が予想されない場合は、2-mosaic解を保って、それをベクターに使用する。例えば、一方のRT/nef mosaicを集団エピセンサスベクターに含め、他方をテーラードベクターに含める。結果として生じるベクターを配列決定し、それらをインビトロで抗原発現および増殖について特徴づけることにより、ワクチン生産に入ることができるHCMV系ワクチンベクターのパネルを作製する。
【0159】
実施例3でデザインしたGag、RTおよびNef mosaicならびにテーラード抗原に対応する合成コドン最適化DNAインサートを作製する。
【0160】
実施例6: EpiGraphアプローチを使って開発したウイルス抗原の一過性発現
EpiGraphアルゴリズムを使ってエピトープ頻度が最大になるようにデザインした抗原は天然配列に似ているが、もはやネイティブタンパク質をコードしていない。これらの配列の構築において、これら人工配列の発現に関する理論的指針は固く守っても、それらがコードするタンパク質が予期せぬ発現プロファイルを呈することや、安定な完全長タンパク質を発現できないことはありうる。
【0161】
哺乳動物細胞との関連におけるこれらの配列の発現プロファイルを評価するために、EpiGraph配列を合成し、一過性トランスフェクションのためにクローニングした。これらのコンストラクトをコードするDNAは、プラスミドベクター(pcDNA3.1およびpOri)に適合するクローニング部位を含有するように合成された(Genscript、ニュージャージー州ピスカタウェイ)。すべてのインサートをそれぞれの宿主(アカゲザル、SIV、またはヒト、HIV)についてコドン最適化した。各コンストラクトには、Kulkarni et al., Vaccine(2011)に記載されているように、ネイティブ配列の残存酵素活性を除去するための修飾も加えた。欠失させる位置は、クレードB EpiGraph-1に関するアミノ酸配列に基づいた。欠失させるアミノ酸には、プロテアーゼ活性に関連する「DTG」(位置81~83)、逆転写酵素活性に関連する「YMDD」(位置338~341)、リボヌクレアーゼH活性に関連する「E」(位置633)、インテグラーゼ活性に関連する「D」(位置779)、インテグラーゼ活性に関連する「D」(位置831)、およびインテグラーゼ活性に関連する「E」(位置867)が含まれる。合成DNAを水中で再水和させ、制限エンドヌクレアーゼ(5'NheI、3'BamHI)で消化した後、熱不活化を行った。適合するエンドヌクレアーゼでプラスミドベクターを線状化し、空ベクターの再環化を防ぐためにウシ腸ホスファターゼで処理した。消化フラグメントサイズを確認するためにベクターフラグメントおよびインサートフラグメントをアガロースゲル電気泳動によって分離し、PCR精製キット(Thermo Scientific)によってライゲーション用に精製した。ラピッドライゲーションキット(Roche、インディアナ州インディアナポリス)を使用し、室温で15分間、約3:1のインサート対ベクターで、インサートを線状化したベクターにライゲーションし、化学コンピテント大腸菌(E. coli)(DH5-アルファ)に形質転換し、抗生物質選択プレートにプレーティングした。結果として生じたコロニーからのDNAをインサートについて制限消化によってスクリーニングした。
【0162】
正しいインサートのそれぞれをベクターのプロモーター配列およびポリ(A)配列に対して適切な配向で含有するクローンを、プラスミドDNA精製用に、液体培養で増殖させた。12ウェル組織培養プレート中の活発に増殖しているサブコンフルエントHela細胞に500μlの新鮮培地(DMEM 10%FBS)を加えると共に、リポソームを調製した。プラスミドDNAを含有するリポソームを生成させるために、250μlの無血清培地を500ngのプラスミドDNAと混合し、250μlの無血清培地を2μlの脂質(Lipofectamine 2000、Invitrogen)と混合した。室温で5分間インキュベートした後、これらの溶液を合わせ、混合し、20分間インキュベートした。このプロセス中に形成されたDNA含有リポソーム(500μl)を培養物に滴下し、12~16時間インキュベートしてから、トランスフェクション混合物を新鮮培地で置き換えた。さらに1日間インキュベートした後、掻き落として遠心分離することにより、培養物を収穫した。上清を吸引除去し、5%SDSおよび10%2-メルカプトエタノールを含有する100μlのゲルローディング色素中に再懸濁してQiaShredカラム(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)で遠心分離することによって、細胞ペレットを溶解した。
【0163】
EpiGraphタンパク質の発現は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-page)によって、そしてまた、各コンストラクトに工学的に組み込んでおいたV5またはヘマグルチニンエピトープタグに対する抗体と反応させるウェスタンブロッティングによって、証明された。簡単に述べると、10%ポリアクリルアミドゲルを調製し、10μl(各サンプルの10%)をローディングし、110~120ボルトで90分間電気泳動した。分離されたタンパク質を、20ボルトで45~50分間のセミドライブロッティングによってPVDFメンブレンに転写した。0.1%Tween-20を含むリン酸緩衝食塩水(PBS-T)に溶解した10%脱脂粉乳で60分間、非特異的結合をブロッキングした。HA抗体(Sigma)またはV5抗体(Santa Cruz)を5%乳溶液に希釈し、メンブレンと共に1時間インキュベートした後、PBS-Tで3回洗浄してから、セイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウス(Santa Cruz)二次抗体の1:2000希釈液を1時間加えた。次に、ブロットをPBS-Tで3回洗浄し、酵素結合化学ルミネセンス(ECLキット(Thermo-Pierce))と反応させ、X線フィルムで可視化した。
【0164】
試験したコンストラクトはすべて、予想される分子量のタンパク質のロバストな一過性発現を示し、CMVベクターバックボーンにおける試験にそれらが有用であることが確認された(例えば図9A~C参照)。
【0165】
実施例7: EpiGraphでデザインした抗原のCMVベクターBACコンストラクトへの工学的組み込みおよび再構成ウイルスからの発現
EpiGraph抗原を、その出発点になったHIVのウイルス配列のスペクトルおよびクレードを代表するT細胞エピトープのカバレッジが最大になるようにデザインした。これらの抗原を最も効果的に利用するために、それらを、競合するプラットフォームの3倍のCD8 T細胞スペクトルを示しているCMVベクターに工学的に組み込んだ。CMVベクターの幅広い抗原提示および生涯にわたる発現プロファイルは、SIVに感染したアカゲザルを保護し治癒させる能力を示した。CMVベクターと組み合わせたEpiGraph抗原デザインアルゴリズムは、広く予防用ワクチンに応用するか、目標が明確なテーラードワクチンに応用した場合に、クレード内で、およびクレード横断的に、さらに高いHIVのカバレッジを提供しうる。
【0166】
一過性発現系における発現が証明されたEpiGraph配列を、組換えプラスミド(pOri)にサブクローニングし、BACリコンビニアリングを使ってCMVバックボーンに移した。(Messerle et al., Proc Natl Acad Sci USA.1997 Dec 23;94(26):14759-63およびBorst et al., J Virol.1999 Oct;73(10):8320-9)。
【0167】
BACリコンビニアリングは、親BACを含有する大腸菌EL250株との関連において、温度および代謝産物の制御を受ける組換え酵素を利用して、大きなDNA配列の操作を容易にする。組換えは、ターゲット領域中に抗原配列を抗生物質耐性遺伝子(カナマイシン)と共に挿入する段階と、それに続くカナマイシンカセットの除去とからなる、逐次的二段階プロセスである。挿入フラグメントは、関心対象の抗原+カナマイシンを含有するテンプレートDNAから、長い(50+bp)ホモロジーアームを持つプライマーを使って、PCRによって増幅される。
【0168】
挿入段階用の細菌細胞を調製するために、5mlの培養物を、クロラムフェニコールを含むLuriaブロス(LB)中、30℃で一晩増殖させ、翌朝、50mlまで希釈した。細菌を30℃でさらに約3~4時間(OD=0.6まで)増殖させてから、組換え酵素を誘導するために、42℃で15分間振とうすることによって熱ショックを与えた。この誘導に続いて、細菌をペレット化し(3000rpm、10分、4℃)、次に氷冷水中で3回洗浄した。その大腸菌細胞を、PCR産物を導入するためにエレクトロコンピテントにし、配列をBACのターゲット領域に挿入するために組換えコンピテントにした。精製したインサート(500ng)を氷上のコンピテント大腸菌100μlと合わせ、0.2cmキュベット(Fisher)に移し、Bio-rad MicroPulser装置を使ってエレクトロポレーションに付した。エレクトロポレーションに続いて、900μlのLB培養培地を添加することによって細菌を希釈し、30℃で2時間回復させてから、クロラムフェニコール/カナマイシンプレート上にプレーティングした。プレートを30℃で2日間インキュベートし、組換えイベントに関して制限消化およびPCRによってコロニーをスクリーニングした。
【0169】
組換えに関して陽性であるBACコンストラクトを第2段階に進めた。ここでは、カナマイシンカセットが、隣接FRT部位によって媒介されるFlipリコンビナーゼのアラビノース誘導によって切り出された。5mlの培養物をLB+クロラムフェニコール中で一晩増殖させ、翌朝、1:10希釈した。3時間増殖させた後、細菌をL-アラビノース(Arcos、最終濃度0.1%)で処理し、30℃で1.5時間誘導した。インキュベーションに続いて細菌をクロラムフェニコールプレートに画線し、30℃で2日間インキュベートした。次に、カナマイシン耐性を失っているクローンを選別するために、コロニーをクロラムフェニコール/カナマイシンプレートおよびクロラムフェニコールプレートにレプリカプレーティングした。これらのクローンを制限消化およびPCRによってさらにスクリーニングすることで、コンストラクトを確認した。
【0170】
ウイルス再構成:ウイルスを再生させるために、ウイルス増殖を許容する哺乳動物宿主細胞にBAC DNAを導入した。10mlの終夜培養物から精製したBAC DNAを、テロメラーゼ導入線維芽細胞のコンフルエントフラスコの約1/5(約200,000細胞)に、エレクトロポレートした。簡単に述べると、細胞をペレット化し(1,500rpm、5分)、700μlのOpti-Memに再懸濁した。次に、この細胞混合物を50μlのBAC DNAに加え、穏やかに混合してから、4mmキュベットに移した。エレクトロポレーションはBio-rad GenePulser IIを使って0.25kVおよび0.95μFで行った。エレクトロポレーションに続いて、DMEM+10%FBSを含有する100mmディッシュに細胞をプレーティングし、翌日、細胞デブリを除去するために培地を換えた。細胞をプラークの形成に関して毎日観察し、完全CPE時に収穫した。残っている付着細胞をセルスクレーパーで収穫し、遠心分離(1,500rpm、5分)によってペレット化し、再構成されたウイルスベクターを含有する上清を、組換えウイルスの継代のためにとっておいた。5%SDSおよび10%2-メルカプトエタノールを含有する100μlのゲルローディング色素に再懸濁し、QiaShredカラム(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)で遠心分離することによって、細胞ペレットを溶解した。
【0171】
ウイルスEpiGraph発現: EpiGraphタンパク質の発現を、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-page)、および各コンストラクトに工学的に組み込まれたV5またはヘマグルチニンエピトープタグに対する抗体と反応させるウェスタンブロッティングによって、調べた。簡単に述べると、10%ポリアクリルアミドゲルを調製し、10μl(各サンプルの10%)をローディングし、110~120ボルトで90分間、電気泳動した。分離されたタンパク質を、20ボルトで45~50分間のセミドライブロッティングによってPVDFメンブレンに転写した。0.1%Tween-20を含むリン酸緩衝食塩水(PBS-T)に溶解した10%脱脂粉乳で60分間、非特異的結合をブロッキングした。HA抗体(Sigma)またはV5抗体(Santa Cruz)を5%乳溶液に希釈し、メンブレンと共に1時間インキュベートした後、PBS-Tで3回洗浄してから、セイヨウワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウス(Santa Cruz)二次抗体の1:2000希釈液を1時間加えた。次に、ブロットをPBS-Tで3回洗浄し、酵素結合化学ルミネセンス(ECLキット(Thermo-Pierce))と反応させ、X線フィルムで可視化した。
【0172】
試験したコンストラクトはすべて、予想される分子量のタンパク質のロバストな安定発現を示し、アカゲザルCMVワクチンモデルにおける免疫原性試験にそれらが有用であることが確認された(例えば図10A~B参照)。
【0173】
実施例8:集団Epigraphワクチン:
Epigraphアルゴリズムを使用し、まずCMVベクターを使って、ワクチン抗原の集合を作製した。ただし他のワクチン送達系を利用することもできる。
【0174】
クレードBおよびクレードC(これら特定のクレードがエンデミックである地域に地理的に限定された使用)に加えて、グループM(グローバル)も検討した。Gag、PolおよびNef Epigraphワクチン抗原を作製した。BおよびグループMを発現させる。
【0175】
基本Epigraphデザインの特質:
Epigraphではグラフ理論/ダイナミックプログラミングアプローチを使って、潜在的T細胞エピトープ(PTE)カバレッジを最大化する抗原をデザインする。一定の条件下で、Epigraphは数学的に最適であり、コンピュータ効率が非常に高い。Epigraphには、コンストラクト中の非常に希少なエピトープを除外することの利益を、ごくわずかなPTEカバレッジコストを認容するだけで得ることができる点で、Mosaic抗原と比較して追加の明白な利益がある。それを念頭において、Epigraph抗原に表現される最も希少なエピトープでさえ集団配列の多くに見いだされる(正確な数はインプットデータ集合に依存する)ことが保証されるように、わずかなカバレッジコスト(0.005)を許して、これらのEpigraphをデザインした。
【0176】
これらのEpigraphのためのインプットデータ集合は、2014年9月頃に、タンパク質Gag、PolおよびNefのそれぞれについて、1人につき1配列を含むHIVデータベース配列アラインメント集合から得た。不完全な配列は除外した。これにより、各タンパク質の集合について、以下の数の配列が残った。Nseqは、インプットアラインメント中の配列の数である。
【0177】
二価ワクチン用のペアEpigraph抗原集合は、整列されていない配列のためのEpigraphアルゴリズムを使って、逐次的に求めた。第1 Epigraphを一価ワクチンとして孤立して使用することを許す逐次解法を使用した。これは、それらのデザインが、まず集団の最適PTEカバレッジが得られるようにベストな単一Epigraph抗原、すなわち「エピセンサス」を求め、次に二価デザインへのその包含が固定されるようになされることを意味する。次に、第1 Epigraphすなわちエピセンサスを含有する二価抗原ペアによってベストな集団PTEカバレッジが得られるように、補完物を求める。同時抗原解と比較してカバレッジコストはごくわずかであった。
【0178】
次に、希少な変異体を除外することのカバレッジコストを決定するために、解析を行った。データを以下の表に要約する。foは希少エピトープ閾である。foまたはそれより少ない配列中に現れるPTEをすべて放棄した後に、配列を作る。言い換えると、ワクチン中にあるすべてのPTEは、foより多くの配列に現れていた。これらのfo値を、fo=0の場合に達成される最大カバレッジの0.005以内にあるカバレッジを達成しつつ、可能な限り大きくした。Nseqはインプットアラインメント中の配列の数である。
【0179】
基本Epigraph抗原を完全タンパク質としてデザインし、それらをCMVベクターに入れて発現させ、Gag/Nef融合タンパク質として、または安全のために欠失が施されたPolとして、または融合されたGagおよびNefの最も保存された領域として、または融合されたPolの最も保存された領域として試験した。CMVベクターに入れて発現させるための完全タンパク質型のそれぞれのリストを、グループMおよびクレードBの例を挙げて、以下に含める。
【0180】
ワクチン抗原の保存領域を完全長Epigraphタンパク質から切り出す。
【0181】
Gag、PolおよびNef内の保存領域は、二価(すなわち2抗原)ワクチンによるPTEカバレッジ能力に基づいて規定した。すなわちそれらは、最適化された2つの抗原の、クレードBのPTEカバレッジを与える能力に基づいた。保存領域の配列を下記のリストに示す。境界は、保存領域のなかに、より可変的な区間が散在するように、可能な限り長い連続したフラグメントに3つのタンパク質(Gag、PolおよびNef)のそれぞれの保存度の高い方の半分が捕捉されるように選択した。Gagの場合、境界は単純にp24キャプシドタンパク質の境界を反映している。
【0182】
実施例9:テーラード治療用抗原
テーラード抗原には、Gagを使用するか、Gagの最も保存されている部分、すなわちp24を使用した。あるデザインでは、グローバル解を得るために、4596個の配列のグループM 2015アラインメント全体を使用した。189個のコンテンポラリークレードB配列のアラインメントは米国において単離され、または199個のコンテンポラリークレードC配列のアラインメントは南アフリカから単離された。「コンテンポラリー」とは、2004年以後に単離されたウイルスを指し、過去10年間にサンプリングされた配列はすべて、各領域からの配列の適正な標本を得るために使用した。完全には解明していない配列または不完全な配列は除外した。地域サブタイプ特異的コンテンポラリーウイルスを選択した。これらは、テーラードワクチンを評価する最初の概念実証研究のための集団にはぴったりだからである。単一サブタイプの地域集合を使用することにより、本発明者らは、HIV治療用ワクチンの成功の可能性を高めるために、集団多様性を制限することができた。
【0183】
これらの治療用ワクチン抗原は、ワクチンの投与を受ける人の配列決定された感染ウイルスに対してそれらがマッチしうるような、または「テーラード」でありうるような、処置シナリオで使用されるようにデザインされる。6つのワクチン抗原を製造し、個体の感染ウイルスに対してベストマッチであるその集合からの2つまたは3つを、ワクチンとその感染株との間のマッチが最大になるように個体に与える。
【0184】
そこで、6つのテーラード抗原解を製造するために、すべてのepigraphについて完全なGagを以下に記載し、p24を太字体で表す。テーラードワクチンにはGagを使用するか、より保存されたp24を使用することができるであろう。
【0185】
Gagタンパク質または内部p24領域について、m個のプールのなかからn個のベストマッチ抗原を送達する場合の、マッチPTEスコアおよびミスマッチスコア(無関係なエピトープの数)、ここでnは、ターゲット集団中の個々の配列を最もよくカバーするように選択される。ターゲット集団は、南アフリカにおいてサンプリングされたコンテンポラリークレードC感染集団、または米国においてサンプリングされたコンテンポラリークレードB集団である。最適解はm=6抗原のプールを使用し、太字である。これらは、上に示す6つの配列に基づく。
【0186】
南アフリカクレードC Gagのエピトープカバレッジ
【0187】
南アフリカクレードC p24のエピトープカバレッジ
【0188】
米国クレードB Gagのエピトープカバレッジ
【0189】
米国クレードB p24のエピトープカバレッジ
【0190】
実施例10:ワクチン試験
CMVにおける初回試験のためのワクチンアームには、1)米国クレードBエピデミックの中心をなす単一集団エピセンサスGag抗原; 2)集団エピセンサス+ベストマッチの天然HIV-1株であるように選択されたテーラードGagタンパク質; 3)集団エピセンサス+ベストマッチの異なる(かつ遠い)天然HIV-1株であるように選択されたテーラードGagタンパク質; 4)集団エピセンサス+コホート2および3からの両方のGagタンパク質が含まれる。結果として生じる免疫応答を、ワクチン抗原に対応するオーバーラップ15 merペプチド(4アミノ酸オーバーラップ)を使って分析し(ワクチンが誘発するGag特異的総応答を決定するため)、次に「ターゲット」HIV-1株および選択された非ターゲットHIV株(下記参照)の両方に対応するものを使って分析することにより、株特異的応答およびエピトープマッチングのレベルを測定する(ターゲット対非ターゲットHIV Gag配列を比較)。コンピュータでデザインしたインサートとベクターとの組み合わせが、非ターゲット株マッチ応答を最小限に抑えつつ、ターゲット株に対して、より強くより広いT細胞応答を与えるかどうかを決定する。この分析の結果により、実施例1で生成したエピトープマッチングに関する予測を実験的に試験することが可能になる。
【0191】
アカゲザル(RM)5匹の4つのコホートに、次のように106PFUのHCMVベクターを接種する。コホート1には、クレードBエピセンサス配列を含有する単一のベクターを与え、コホート2にはエピセンサスベクター+単一のテーラードワクチンベクターを与え、コホート3にはエピセンサス+異なるテーラードワクチンベクターを与え、コホート4にはエピセンサス+両方のテーラードワクチンベクターを与える。ワクチンは、広範囲にわたって縦断的に配列決定されたクレードB米国HIV感染9例の小さな集合から選択された2つの代表的な伝染/ファウンダーHIV株に対して「テーラード」である。このパネルは、ヒト臨床治験において遭遇しそうなものに匹敵する天然感染のスペクトルを表す。要するに、これら2つの分岐した天然株は、プロトタイプ患者として使用されている。ある人に最適化されたエピセンサス/テーラードワクチンインサートペアは、他の人には最適ではないであろうし、逆もまた同様であるから、それぞれの株の特異的配列を反映したペプチド集合に対する交差認識の決定により、本発明者らのテーラード配列マッチング戦略にとって益があるかどうかの相互分析が可能になる。この相互分析に加えて、他の7例の感染からの配列も、選択されたベクターインサートに対するそれらの相対的「マッチ」にばらつきが生じるであろう。そして、これら他の7つのHIV株の配列を反映するペプチド集合に対する応答を分析することにより、ベクターインサート配列およびベクターの組み合わせの関係が、マッチ応答と非マッチ応答の強さおよび範囲について、包括的に分析されることになる。この9株の集合に焦点を合わせた動機の一つは、注意深く配列決定された完全長ゲノムを縦断的サンプルから利用することができることである。分離株も感染性分子クローンとして利用することができ、それらは、後続のヒト研究における応答を評価するのに役立ちうる。このように、この集合を使ってRMにおける基礎研究を行うことにより、これらのワクチンをヒト研究に進めた時に、マカク応答とヒト応答とを直接比較するための、とりわけ有用なタンパク質のマッチ集合が見つかるであろう。
【0192】
0日目および12週目にアカゲザル(RM)に皮下接種し、1年にわたって縦断的に追跡する。HCMVベクターによるワクチン接種は既存の抗RhCMV免疫による影響を受けないので、これらの実験にはRhCMVに自然感染した動物を使用する。フローサイトメーターによる細胞内サイトカイン分析(ICS)を使って、各動物に投与されたワクチンインサート内のワクチン配列を含む個々の連続的15 merペプチドに対するCD4+およびCD8+ T細胞応答(これはワクチンが誘発する総応答を含むであろう)を決定する。次に、これらのエピトープ特異的T細胞がエピトープ変異体を認識するかどうかを、ターゲット株および他の8つの非ターゲット株の両方において決定する。株特異的エピトープに対する応答を示すペプチドについて、「親」(ワクチンインサート配列)ペプチド変異体に対するそれらの応答の強さ、機能的アビディティ、および機能的特徴(IFN-γ、TNF-α、IL-2およびMIP-1βの生産、ならびにCD107の外在化)を比較することで、機能的交差反応性の程度を決定する。選択した例では、トランケーション(truncation)分析を使って、類似する比較分析のためにコアエピトープを同定する。存在するMHC-II拘束性CD8+ T細胞のパーセンテージを決定するために、SIV応答について以前になされたように、MHC-IおよびMHC-IIならびに不変鎖由来のMHC-II特異的結合ペプチドCLIPに特異的な「ブロッキング」mAbを使って、PBMCにおけるインフルエンザ特異的CD8+ T細胞応答を阻害する。
【0193】
ベクター特異的遺伝子に関係するT細胞プライミング結果とは無関係に、免疫学的分析により、テーラードワクチンによって誘導されるT細胞が、所与の天然HIVリザーバーのエピトープカバレッジに関して、非テーラードワクチンより優れているという仮説を検証することが可能になる。テーラード2抗原カクテルは、おそらく、その適合する天然株に対して、エピセンサス単独よりも少なくとも25%は高い交差反応性応答頻度で、T細胞応答を生じさせることができる(表5)。カクテルに3つの補完的テーラード抗原を含めることが、より多くの交差反応性を誘導するかどうか、または2抗原ではなく3抗原を加えることによって余儀なくされる、抗原希釈もしくはより多くのワクチン特異的エピトープ数の存在が、天然タンパク質に対する交差反応応答の強さまたは幅を実際に減じるかどうかを決定するための試験も行う。CMVベースのT細胞応答は、他のベクターについて過去に報告されたものよりはるかに幅広く、したがってはるかに高いパーセンテージの配列をカバーすると予想される。したがって、比較的少数の動物であっても、応答の交差反応能力に対する配列変異の影響を評価するには十分なエピトープ応答が得られるはずである。ワクチンに対する全応答の数および強さは、ワクチンにマッチしたペプチドの集合を使用することによって決定される。ターゲットとなるペプチドが決定されたら、各動物において陽性であるペプチドだけを使って、各ワクチン応答性ペプチドでの天然変異の影響を決定する。試験される天然変異体はリファレンスパネルに見いだされる変異に基づき、テーラードGagおよびマッチ率の低いGagの両方を含む。ノンパラメトリックなコンピュータによる再サンプリング統計方法を、認識の強度減少または消失に対するエピトープ変異の影響を評価するための一次ツールとして使用する。ただしこれらの分析は、T細胞応答交差反応性に対するより複雑な相互作用の影響を探究するために必要となる一般化線形モデルを使用することによって補完される。
【0194】
SEQ ID NO:691
テーラードワクチン抗原エピセンサス配列

SEQ ID NO:692
テーラードワクチン抗原1配列

SEQ ID NO:693
テーラードワクチン抗原2配列

SEQ ID NO:694
テーラードワクチン抗原3配列

SEQ ID NO:695
テーラードワクチン抗原4配列

SEQ ID NO:696
テーラードワクチン抗原5配列

SEQ ID NO:697
EpiGraph抗原1配列

SEQ ID NO:698
Epigraphカクテル抗原1

SEQ ID NO:699
Epigraphカクテル抗原2

SEQ ID NO:700
Epigraphカクテル抗原3

SEQ ID NO:701
HIV B gag/nef融合物Epigraph1

SEQ ID NO:702
HIV B gag/nef融合物Epigraph2

SEQ ID NO:703
HIV B pol Epigraph1

SEQ ID NO:704
HIV B pol Epigraph2

SEQ ID NO:705
HIV M gag/nef融合物Epigraph1

SEQ ID NO:706
HIV M gag/nef保存領域Epigraph1

SEQ ID NO:707
HIV M gag/nef融合物Epigraph2

SEQ ID NO:708
HIV M gag/nef保存領域Epigraph2

SEQ ID NO:709
HIV M pol Epigraph1

SEQ ID NO:710
HIV M pol保存領域Epigraph1

SEQ ID NO:711
HIV M pol Epigraph2

SEQ ID NO:712
HIV M pol保存領域Epigraph2

SEQ ID NO:713
SIV gag/nefハイブリッド

SEQ ID NO:714
SIV gag/nef保存領域

SEQ ID NO:715
SIV polハイブリッド

SEQ ID NO:716
SIV pol保存領域

SEQ ID NO:717
HIV B pol epigraph1

SEQ ID NO:718
HIV M gag Epigraph1

SEQ ID NO:719
HIV M gag Epigraph1保存領域

SEQ ID NO:720
HIV M gag Epigraph2

SEQ ID NO:721
HIV M gag Epigraph2保存領域

SEQ ID NO:722
HIV M nef Epigraph1

SEQ ID NO:723
HIV M nef Epigraph1保存領域

SEQ ID NO:724
HIV M nef Epigraph2

SEQ ID NO:725
HIV M nef Epigraph2保存領域

SEQ ID NO:726
HIV M pol Epigraph1

SEQ ID NO:727
HIV M pol Epigraph1保存領域

SEQ ID NO:728
HIV M pol Epigraph2

SEQ ID NO:729
HIV M pol Epigraph2保存領域

SEQ ID NO:730
HIV B gag Epigraph1

SEQ ID NO:731
HIV B gag Epigraph1保存領域

SEQ ID NO:732
HIV B gag Epigraph2

SEQ ID NO:733
HIV B gag Epigraph2保存領域

SEQ ID NO:734
HIV B nef Epigraph1

SEQ ID NO:735
HIV B nef Epigraph1保存領域

SEQ ID NO:736
HIV B nef Epigraph2

SEQ ID NO:737
HIV B nef Epigraph2保存領域

SEQ ID NO:738
HIV B pol Epigraph1

SEQ ID NO:739
HIV B pol Epigraph1保存領域

SEQ ID NO:740
HIV B pol Epigraph2

SEQ ID NO:741
HIV B pol Epigraph2保存領域

SEQ ID NO:742
HIV C gag Epigraph1

SEQ ID NO:743
HIV C gag Epigraph1保存領域

SEQ ID NO:744
HIV C gag Epigraph2

SEQ ID NO:745
HIV C gag Epigraph2保存領域

SEQ ID NO:746
HIV C nef Epigraph1

SEQ ID NO:747
HIV C nef Epigraph1保存領域

SEQ ID NO:748
HIV C nef Epigraph2

SEQ ID NO:749
HIV C nef Epigraph2保存領域

SEQ ID NO:750
HIV C pol Epigraph1

SEQ ID NO:751
HIV C pol Epigraph1保存領域

SEQ ID NO:752
HIV C pol Epigraph2

SEQ ID NO:753
HIV C pol Epigraph2保存領域

SEQ ID NO:754
HIV M GagエピセンサスEG-0,テーラード

SEQ ID NO:755
HIV M gagエピセンサスEG-0保存領域,テーラード

SEQ ID NO:756
HIV M gag CEN-1,テーラード

SEQ ID NO:757
HIV M gag CEN-1保存領域,テーラード

SEQ ID NO:758
HIV M gag CEN-2,テーラード

SEQ ID NO:759
HIV M gag CEN-2保存領域,テーラード

SEQ ID NO:760
HIV M gag CEN-3,テーラード

SEQ ID NO:761
HIV M gag CEN-3保存領域,テーラード

SEQ ID NO:762
HIV M gag CEN-4,テーラード

SEQ ID NO:763
HIV M gag CEN-4保存領域,テーラード

SEQ ID NO:764
HIV M gag CEN-5,テーラード

SEQ ID NO:765
HIV M gag CEN-5保存領域,テーラード

SEQ ID NO:766
HIV C gagエピセンサスEG-0,テーラード

SEQ ID NO:767
HIV C gagエピセンサスEG-0保存領域,テーラード

SEQ ID NO:768
HIV C gag CEN-1,テーラード

SEQ ID NO:769
HIV C gag CEN-1保存領域,テーラード

SEQ ID NO:770
HIV C gag CEN-2,テーラード

SEQ ID NO:771
HIV C gag CEN-2保存領域,テーラード

SEQ ID NO:772
HIV C gag CEN-3,テーラード

SEQ ID NO:773
HIV C gag CEN-3保存領域,テーラード

SEQ ID NO:774
HIV C gag CEN-4,テーラード

SEQ ID NO:775
HIV C gag CEN-4保存領域,テーラード

SEQ ID NO:776
HIV C gag CEN-5,テーラード

SEQ ID NO:777
HIV C gag CEN-5保存領域,テーラード

SEQ ID NO:778
HIV B gagエピセンサスEG-0,テーラード

SEQ ID NO:779
HIV B gagエピセンサスEG-0保存領域,テーラード

SEQ ID NO:780
HIV B gag CEN-1,テーラード

SEQ ID NO:781
HIV B gag CEN-1保存領域,テーラード

SEQ ID NO:782
HIV B gag CEN-2,テーラード

SEQ ID NO:783
HIV B gag CEN-2保存領域,テーラード

SEQ ID NO:784
HIV B gag CEN-3,テーラード

SEQ ID NO:785
HIV B gag CEN-3保存領域,テーラード

SEQ ID NO:786
HIV B gag CEN-4,テーラード

SEQ ID NO:787
HIV B gag CEN-4保存領域,テーラード

SEQ ID NO:788
HIV B gag CEN-5,テーラード

SEQ ID NO:789
HIV B gag CEN-5保存領域,テーラード

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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