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▶ クアンタム−エスアイ インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】光拒絶フォトニック構造
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N21/64 F
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020503723
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 US2018043333
(87)【国際公開番号】W WO2019023146
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】62/536,268
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ、ジョナサン エム.
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド、ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】ゴンダレンコ、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】プレストン、カイル
(72)【発明者】
【氏名】ガセミ、ファーシッド
(72)【発明者】
【氏名】ラッキー、ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ジュウェル、ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ファイフ、キース ジー.
(72)【発明者】
【氏名】カビリ、アリ
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0141267(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0084761(US,A1)
【文献】特開2016-200575(JP,A)
【文献】国際公開第2007/029714(WO,A1)
【文献】特開2013-160623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0082544(US,A1)
【文献】特表2016-537998(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139133(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0065726(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0081769(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/83
C12M 1/00 - C12M 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積デバイスにおいて、
前記集積デバイスの第1の層に配置されている複数のサンプルウェルであって、前記複数のサンプルウェルのうちの個々のサンプルウェルは、励起光に反応して発光を放出するように構成されている少なくとも1つの蛍光マーカでラベリングされているサンプルを受け取るように構成されている、複数のサンプルウェルと、
励起光を前記複数のサンプルウェルの一部に結合するように構成されている少なくとも1つの導波路と、
前記集積デバイスの第2の層に配置されているとともに、前記複数のサンプルウェルから放出された発光の光子を受け取るように位置決めされている複数の光検出器であって、前記複数のサンプルウェルのうちの個々のサンプルウェルは、前記複数の光検出器のうちの少なくとも1つの光検出器と位置合わせする、複数の光検出器と、
個々のサンプルウェルとそのそれぞれの少なくとも1つの光検出器との間に位置決めされている少なくとも1つのフォトニック構造であって、前記励起光を前記発光に対して減衰させるように構成されており、前記少なくとも1つの光検出器によって発生される信号は、発光の光子の検出を示し、及び、前記少なくとも1つのフォトニック構造は前記少なくとも1つの導波路と前記第2の層の間に設けられる、少なくとも1つのフォトニック構造と、を備え、
前記少なくとも1つのフォトニック構造は、前記複数のサンプルウェルの少なくとも一部と少なくとも1つの金属層とに重なるとともに、前記励起光の少なくとも一部の透過を阻止するように構成されている、少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つの空間フィルタを含む集積デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つのフォトニック構造は、共通の軸上で、個々のサンプルウェルおよびそのそれぞれの少なくとも1つの光検出器と位置合わせする少なくとも1つの開口部を有する、請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの導波路のうちの第1の導波路は、共通の軸に沿って、前記サンプルウェルの一部のうちの第1のサンプルウェル、および、前記複数の光検出器のうちの第1の光検出器に重なるように位置決めされ、
前記少なくとも1つのフォトニック構造は、前記共通の軸に沿って、前記第1の導波路と前記第1の光検出器との間に位置決めされている、請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項4】
前記集積デバイスは、前記少なくとも1つの金属層を含む回路部をさらに備え、該回路部は、前記複数の光検出器のうちの少なくとも1つの光検出器に電気的に結合されている、請求項に記載の集積デバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの空間フィルタは、前記複数のサンプルウェルに近接して位置決めされている第1の空間フィルタ、および、前記複数の光検出器に近接して位置決めされている第2の空間フィルタを含み、
前記第1の空間フィルタは、第1のサイズを有する開口部を有し、前記第2の空間フィルタは、第2のサイズを有する開口部を有し、前記第1のサイズは前記第2のサイズよりも大きい、請求項に記載の集積デバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つのフォトニック構造は、少なくとも1つのスペクトルフィルタを含み、前記少なくとも1つのスペクトルフィルタは第1の空間フィルタと第2の空間フィルタとの間に位置決めされ、かつ、第2の範囲の波長よりも大きい第1の範囲の波長を透過させるように構成され、前記第1の範囲の波長は、前記発光の少なくとも1つの特徴的な波長を含み、前記第2の範囲の波長は、前記励起光の少なくとも1つの特徴的な波長を含む、請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つのスペクトルフィルタは、低屈折率材料を有する複数の低屈折率の交互の層、および、高屈折率材料を有する複数の高屈折率の層を含む、請求項に記載の集積デバイス。
【請求項8】
前記集積デバイスは、励起光のビームを受け取るとともに、励起光を前記集積デバイスの導波路に光学的に結合するように構成されている励起源結合領域をさらに含み、前記少なくとも1つのスペクトルフィルタは、前記励起源結合領域に重なる、請求項に記載の集積デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つのフォトニック構造は、横電界(TE)偏光を有する光の透過を減衰させるように構成されている少なくとも1つの偏光フィルタを含む、請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つのフォトニック構造は、少なくとも1つの空間フィルタ、および、前記少なくとも1つの空間フィルタと前記複数の光検出器の少なくとも一部との間に位置決めされている鉛直な側壁を含む、請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項11】
前記少なくとも1つのフォトニック構造は、第1の空間フィルタ、第2の空間フィルタ、および、前記第1の空間フィルタと前記第2の空間フィルタとの間に位置決めされている鉛直な側壁を含む、請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1つのフォトニック構造は空間フィルタを含み、前記集積デバイスは、前記空間フィルタと前記複数の光検出器のうちの少なくとも1つの光検出器との間に位置決めされている第1の誘電材料を有する領域、および、前記空間フィルタと、前記少なくとも1つの光検出器に重なるサンプルウェルとの間に位置決めされている第2の誘電材料を有する領域をさらに備え、前記第1の誘電材料は、前記第2の誘電材料よりも高い屈折率を有する、請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つのフォトニック構造は複数の開口部を有した少なくとも1つの空間フィルタを含み、前記複数の開口部の個々の開口部は前記複数のサンプルウェルのうちの対応するサンプルウェルに重なるとともに、対応するサンプルウェルの寸法よりも大きい寸法を有する、請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項14】
前記複数の開口部の個々の開口部の寸法は対応するサンプルウェルの底面の寸法よりも大きく、又は、前記複数の開口部の個々の開口部の面積は、対応するサンプルウェルの底面の面積よりも大きい、請求項13に記載の集積デバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの導波路は前記第1の層と前記少なくとも1つのフォトニック構造との間に設けられ、請求項1に記載の集積デバイス。
【請求項16】
システムにおいて、
請求項1に記載の集積デバイスと、
励起光のパルスを放出するように構成されている励起源と、
励起光が前記集積デバイスの前記少なくとも1つの導波路に結合されるように、励起光のビームを前記集積デバイスに位置合わせするように構成されている少なくとも1つの位置合わせ構成要素と、を備える機器と、を備える、システム。
【請求項17】
集積デバイスの製造方法において、
前記集積デバイスの第1の層に配置される複数のサンプルウェルを形成する工程であって、前記複数のサンプルウェルのうちの個々のサンプルウェルは、励起光に反応して発光を放出するように構成されている少なくとも1つの蛍光マーカでラベリングされるサンプルを受け取るように構成されている、複数のサンプルウェルを形成する工程と、
励起光を前記複数のサンプルウェルの一部と結合する少なくとも1つの導波路を形成する工程と、
前記集積デバイスの第2の層に配置されるとともに、前記複数のサンプルウェルから放出される発光の光子を受け取るように位置決めされる複数の光検出器を形成する工程であって、前記複数のサンプルウェルのうちの個々のサンプルウェルは、前記複数の光検出器のうちの少なくとも1つの光検出器と位置合わせする、光検出器を形成する工程と、
共通の軸上で、個々のサンプルウェルおよびそのそれぞれの少なくとも1つの光検出器と位置合わせするように位置決めされる少なくとも1つのフォトニック構造を形成する工程であって、前記少なくとも1つのフォトニック構造は、前記励起光を前記発光に対して減衰させるように構成されており、前記少なくとも1つの光検出器によって発生される信号は、発光の光子の検出を示す、フォトニック構造を形成する工程とを備え、
前記少なくとも1つのフォトニック構造は、前記少なくとも1つの導波路と前記第2の層との間に設けられ、
前記少なくとも1つのフォトニック構造は、前記複数のサンプルウェルの少なくとも一部と少なくとも1つの金属層とに重なるとともに、前記励起光の少なくとも一部の透過を阻止するように構成されている、少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つの空間フィルタを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル分析のために、何万ものサンプルウェルに、すなわちより同時に短光パルスを提供するとともに、サンプルウェルから蛍光信号を受け取ることによって、サンプルの超並列分析を行うことができる、集積デバイスおよび関連する機器に関する。機器は、ポイント・オブ・ケア遺伝子シークエンシング、および、個人化医療に有用であるものとすることができる。
【背景技術】
【0002】
生体サンプルまたは化学的サンプルの超並列分析が可能である機器は、通常、研究室の環境に限定されており、これは、それらが大型で、持ち運びできないこと、機器を操作するために熟練した技術者を必要とすること、動力の必要性、制御された動作環境の必要性、および、コストを含み得るいくつかの要因のためである。サンプルがそのような設備を使用して分析される場合、一般的なパラダイムは、臨床または現場においてサンプルを抽出し、サンプルを研究室に送り、分析結果を待つことである。結果の待ち時間は、数時間から数日に及ぶ可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態は、集積デバイスの第1の層に配置されている複数のサンプルウェルを備える、集積デバイスに関する。複数のサンプルウェルのうちの個々のサンプルウェルは、励起光に反応して発光を放出するように構成されている少なくとも1つの蛍光マーカでラベリングされているサンプルを受け取るように構成されている。集積デバイスは、集積デバイスの第2の層に配置されているとともに、複数のサンプルウェルから放出された発光の光子を受け取るように位置決めされている複数の光検出器をさらに備える。複数のサンプルウェルのうちの個々のサンプルウェルは、複数の光検出器のうちの少なくとも1つの光検出器と位置合わせする。集積デバイスは、個々のサンプルウェルとそのそれぞれの少なくとも1つの光検出器との間に位置決めされている少なくとも1つのフォトニック構造をさらに備え、少なくとも1つのフォトニック構造は、励起光を発光に対して減衰させるように構成されており、少なくとも1つの光検出器によって発生される信号は、発光の光子の検出を示す。
【0004】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのフォトニック構造は、共通の軸上で、個々のサンプルウェルおよびそのそれぞれの少なくとも1つの光検出器と位置合わせするように位置決めされている。いくつかの実施形態においては、複数のサンプルウェルのうちの或るサンプルウェルは、そのそれぞれの少なくとも1つの光検出器に重なるように位置決めされている。いくつかの実施形態においては、複数のサンプルウェルのうちの個々のサンプルウェルは、複数の光検出器のうちの個々の光検出器と位置合わせする。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのフォトニック構造は、共通の軸上で、個々のサンプルウェルおよびそのそれぞれの少なくとも1つの光検出器と位置合わせする少なくとも1つの開口部を有する。
【0005】
いくつかの実施形態においては、集積デバイスは、励起光を複数のサンプルウェルの一部に結合するように構成されている少なくとも1つの導波路をさらに備える。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの導波路のうちの第1の導波路は、共通の軸に沿って、サンプルウェルの一部のうちの第1のサンプルウェル、および、複数の光検出器のうちの第1の光検出器に重なるように位置決めされている。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのフォトニック構造は、共通の軸に沿って、第1の導波路と第1の光検出器との間に位置決めされている。
【0006】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのフォトニック構造は、複数のサンプルウェルの少なくとも一部に重なるとともに、励起光の少なくとも一部の透過を阻止するように構成されている、少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つの空間フィルタを含む。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの空間フィルタは、励起光の少なくとも一部の透過を阻止するように構成されている少なくとも1つの金属層を含む。いくつかの実施形態においては、集積デバイスは、少なくとも1つの金属層を含む回路部をさらに備え、回路部は、複数の光検出器のうちの少なくとも1つの光検出器に電気的に結合されている。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの空間フィルタは、複数のサンプルウェルに近接して位置決めされている第1の空間フィルタ、および、複数の光検出器に近接して位置決めされている第2の空間フィルタを含む。いくつかの実施形態においては、第1の空間フィルタは、第1のサイズを有する開口部を有し、第2の空間フィルタは、第2のサイズを有する開口部を有し、第1のサイズは第2のサイズよりも大きい。
【0007】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのフォトニック構造は、第2の範囲の波長よりも高いレベルで第1の範囲の波長を透過させるように構成されている少なくとも1つのスペクトルフィルタを含み、第1の範囲の波長は、発光の少なくとも1つの特徴的な波長を含み、第2の範囲の波長は、励起光の少なくとも1つの特徴的な波長を含む。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのスペクトルフィルタは、第1の空間フィルタと第2の空間フィルタとの間に位置決めされている。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのスペクトルフィルタは、低屈折率材料を有する複数の低屈折率の層、および、高屈折率材料を有する複数の高屈折率の層を含む。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのスペクトルフィルタは、複数の高屈折率の層および複数の低屈折率の層の交互の層を含む。いくつかの実施形態においては、集積デバイスは、励起光のビームを受け取るとともに、励起光を集積デバイスの導波路に光学的に結合するように構成されている励起源結合領域をさらに含み、少なくとも1つのスペクトルフィルタは、励起源結合領域に重なる。
【0008】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのフォトニック構造は、或る種の偏光を有する光の透過を減衰させるように構成されている少なくとも1つの偏光フィルタを含む。いくつかの実施形態においては、励起光は、横電界(TE:transverse electric)偏光であり、少なくとも1つの偏光フィルタは、TE偏光を減衰させるように構成されている。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの偏光フィルタは、スリットの周期的なアレイを含む。
【0009】
いくつかの実施形態においては、励起光は、励起光のパルスであり、発光は、励起光のパルスに反応して放出される少なくとも1つの蛍光マーカによって放出される光子であり、複数の光検出器のうちの個々の光検出器は、発光の寿命を示す信号を発生させるようにさらに構成されている。いくつかの実施形態においては、複数の光検出器のうちの個々の光検出器は、励起光の光子から生成される電荷キャリアを廃棄するように構成されている。いくつかの実施形態においては、励起光は、励起光のパルスであり、個々の光検出器は、励起光のパルスの光子から生成される電荷キャリアを、第1の時間期間にわたって廃棄するようにさらに構成されている。いくつかの実施形態においては、個々の光検出器は、入射光子によって生成される電荷キャリアを、電荷キャリアが生成される時間に基づいて、それぞれの電荷キャリア格納領域内に第2の時間期間にわたって選択的に方向付けるようにさらに構成されている。
【0010】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのフォトニック構造は、少なくとも1つのフォトニック構造に対して垂直から或る角度範囲にわたって励起光を減衰させるように構成されている。いくつかの実施形態においては、発光の特徴的な波長は、550nm~650nmである。いくつかの実施形態においては、励起光の特徴的な波長は532nmである。いくつかの実施形態においては、励起光の特徴的な波長は515nmである。
【0011】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのフォトニック構造は、少なくとも1つの空間フィルタ、および、少なくとも1つの空間フィルタと複数の光検出器の少なくとも一部との間に位置決めされている鉛直な側壁を含む。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのフォトニック構造は、第1の空間フィルタ、第2の空間フィルタ、および、第1の空間フィルタと第2の空間フィルタとの間に位置決めされている鉛直な側壁を含む。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのフォトニック構造は空間フィルタを含み、集積デバイスは、空間フィルタと複数の光検出器のうちの少なくとも1つの光検出器との間に位置決めされている第1の誘電材料を有する領域、および、空間フィルタと、少なくとも1つの光検出器に重なるサンプルウェルとの間に位置決めされている第2の誘電材料を有する領域をさらに備え、第1の誘電材料は、第2の誘電材料よりも高い屈折率を有する。
【0012】
いくつかの実施形態においては、複数のサンプルウェルのうちの1つのサンプルウェルと、複数の光検出器のうちの少なくとも1つの光検出器との間の距離は、10ミクロン未満である。いくつかの実施形態においては、複数のサンプルウェルのうちの1つのサンプルウェルと、複数の光検出器のうちの少なくとも1つの光検出器との間の距離は、5ミクロン未満である。いくつかの実施形態においては、複数のサンプルウェルのうちの1つのサンプルウェルと、複数の光検出器のうちの少なくとも1つの光検出器との間の距離は、1.5ミクロン~5ミクロンである。
【0013】
いくつかの実施形態は、本明細書において記載されるような集積デバイス、ならびに、励起光のパルスを放出するように構成されている励起源、および、励起光が集積デバイスの少なくとも1つの導波路に結合されるように、励起光のビームを集積デバイスに位置合わせするように構成されている少なくとも1つの位置合わせ構成要素とを備える機器に関する。
【0014】
いくつかの実施形態は、集積デバイスを形成する方法であって、集積デバイスの第1の層に配置される複数のサンプルウェルを形成することであって、複数のサンプルウェルのうちの個々のサンプルウェルは、励起光に反応して発光を放出するように構成されている少なくとも1つの蛍光マーカでラベリングされるサンプルを受け取るように構成されていることを含む。方法は、集積デバイスの第2の層に配置されるとともに、複数のサンプルウェルから放出される発光の光子を受け取るように位置決めされる複数の光検出器を形成することであって、複数のサンプルウェルのうちの個々のサンプルウェルは、複数の光検出器のうちの少なくとも1つの光検出器と位置合わせすることをさらに含む。方法は、共通の軸上で、個々のサンプルウェルおよびそのそれぞれの少なくとも1つの光検出器と位置合わせするように位置決めされる少なくとも1つのフォトニック構造を形成することであって、少なくとも1つのフォトニック構造は、励起光を発光に対して減衰させるように構成されており、少なくとも1つの光検出器によって発生される信号は、発光の光子の検出を示すことをさらに含む。
【0015】
本出願の様々な態様および実施形態を、以下の図面を参照して記載する。図面は必ずしも縮尺通りではないことを理解されたい。複数の図面において見られるアイテムは、これらが見られるすべての図面において同じ参照符号によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1-1A】いくつかの実施形態による、集積デバイスの概略図。
図1-1B】いくつかの実施形態による、集積デバイスのピクセルの概略図。
図2-1A】いくつかの実施形態による、スペクトルフィルタを有する集積デバイスの断面図。
図2-1B】いくつかの実施形態による、スペクトルフィルタおよび空間フィルタを有する集積デバイスの断面図。
図2-2A】いくつかの実施形態による、スペクトルフィルタに含まれている個々の層の材料、厚さおよび屈折率の表。
図2-2B】いくつかの実施形態による、例示的なスペクトルフィルタの透過対波長のプロット。
図2-3A】いくつかの実施形態による、スペクトルフィルタに含まれている個々の層の材料、厚さおよび屈折率の表。
図2-3B】いくつかの実施形態による、例示的なスペクトルフィルタの透過対波長のプロット。
図2-4A】いくつかの実施形態による、スペクトルフィルタに含まれている個々の層の材料、厚さおよび屈折率の表。
図2-4B】いくつかの実施形態による、例示的なスペクトルフィルタの透過対波長のプロット。
図2-5A】いくつかの実施形態による、スペクトルフィルタに含まれている個々の層の材料、厚さおよび屈折率の表。
図2-5B】いくつかの実施形態による、例示的なスペクトルフィルタの透過対波長のプロット。
図2-6】いくつかの実施形態による、2つのスペクトルフィルタの垂直入射における透過対波長のプロット。
図2-7A】いくつかの実施形態による、スペクトルフィルタに含まれている個々の層の厚さの表。
図2-7B】いくつかの実施形態による、例示的なスペクトルフィルタの、光拒絶対垂直入射に対する角度のプロット。
図2-7C】いくつかの実施形態による、例示的なスペクトルフィルタの、光拒絶対波長のプロット。
図3-1A】いくつかの実施形態による、偏光フィルタを有する集積デバイスの上平面図。
図3-1B】いくつかの実施形態による、偏光フィルタを有する集積デバイスの断面図。
図3-2A】偏光フィルタがない集積デバイスの断面図(一実施形態による、偏光フィルタを有しない断面の集積デバイスを通した532nmの特徴的な波長を有する横電界光の光出力のプロット)。
図3-2B】偏光フィルタがない集積デバイスの断面図(一実施形態による、偏光フィルタを有しない断面の集積デバイスを通した532nmの特徴的な波長を有する横電界光の光出力のプロット)。
図3-2C】偏光フィルタがない集積デバイスの断面図(一実施形態による、偏光フィルタを有しない断面の集積デバイスを通した532nmの特徴的な波長を有する横磁界(transverse magnetic)光の光出力のプロット)。
図3-2D】偏光フィルタがない集積デバイスの断面図(一実施形態による、偏光フィルタを有しない断面の集積デバイスを通した532nmの特徴的な波長を有する横磁界光の光出力のプロット)。
図3-3A】偏光フィルタなどの偏光フィルタを有する集積デバイスの断面図(一実施形態による、偏光フィルタを有する断面の集積デバイスを通した532nmの特徴的な波長を有する横電界光の光出力のプロット)。
図3-3B】偏光フィルタなどの偏光フィルタを有する集積デバイスの断面図(一実施形態による、偏光フィルタを有する断面の集積デバイスを通した532nmの特徴的な波長を有する横電気光の光出力のプロット)。
図3-3C】偏光フィルタなどの偏光フィルタを有する集積デバイスの断面図(一実施形態による、偏光フィルタを有する断面の集積デバイスを通した532nmの特徴的な波長を有する横磁界光の光出力のプロット)。
図3-3D】偏光フィルタなどの偏光フィルタを有する集積デバイスの断面図(一実施形態による、偏光フィルタを有する断面の集積デバイスを通した532nmの特徴的な波長を有する横磁界光の光出力のプロット)。
図4-1A】いくつかの実施形態による、複数の空間フィルタを有する集積デバイスの断面図。
図4-1B】いくつかの実施形態による、例示的な空間フィルタ開口部を示す、集積デバイスにおけるピクセルの平面図。
図4-1C】いくつかの実施形態による、例示的な空間フィルタ開口部を示す、集積デバイスにおけるピクセルの平面図。
図4-1D】いくつかの実施形態による、例示的な空間フィルタ開口部を示す、集積デバイスにおけるピクセルの平面図。
図4-1E】いくつかの実施形態による、例示的な空間フィルタ開口部を示す、集積デバイスにおけるピクセルの平面図。
図4-1F】いくつかの実施形態による、例示的な空間フィルタ開口部を示す、集積デバイスにおけるピクセルの平面図。
図4-2】いくつかの実施形態による、空間フィルタの層の断面図。
図4-3A】例示的な空間フィルタの、吸収対角度のプロット。
図4-3B】例示的な空間フィルタの、吸収対波長のプロット。
図4-3C】例示的な空間フィルタの、反射対角度のプロット。
図4-3D】例示的な空間フィルタの、反射対波長のプロット。
図4-3E】532nmの特徴的な波長を有する光に対する、2つの例示的な空間フィルタの反射対角度のプロット。
図4-3F】532nmの特徴的な波長を有する光に対する、2つの例示的な空間フィルタの反射対角度のプロット。
図4-3G】532nmの特徴的な波長を有する光に対する、標準的なCMOS金属層と比較した、この空間フィルタの反射対角度のプロット。
図4-4】いくつかの実施形態による、複数の空間フィルタおよび1つのスペクトルフィルタを有する集積デバイスの断面図。
図4-5A】いくつかの実施形態による、図4-4において示されている集積デバイスの断面図であり、532nmの光の光出力の伝搬のプロットを示す。
図4-5B】いくつかの実施形態による、図4-4において示されている集積デバイスの断面図であり、575nmの光の光出力の伝搬のプロットを示す。
図4-6】いくつかの実施形態による、スペクトルフィルタ、および、空間フィルタとして作用するように構成されている金属層を有する集積デバイスの断面図であり、532nmの光の光出力の伝搬のプロットを示す。
図4-7】いくつかの実施形態による、鉛直な吸収側壁を有する集積デバイスの断面図。
図4-8A】一実施形態による、鉛直な吸収側壁を形成するために使用される例示的な製造ステップを示す図
図4-8B】一実施形態による、鉛直な吸収側壁を形成するために使用される例示的な製造ステップを示す図
図4-8C】一実施形態による、鉛直な吸収側壁を形成するために使用される例示的な製造ステップを示す図
図4-8D】一実施形態による、鉛直な吸収側壁を形成するために使用される例示的な製造ステップを示す図
図4-8E】一実施形態による、鉛直な吸収側壁を形成するために使用される例示的な製造ステップを示す図
図4-8F】一実施形態による、鉛直な吸収側壁を形成するために使用される例示的な製造ステップを示す図。
図4-9A】いくつかの実施形態による、鉛直な吸収側壁を有する集積デバイスの断面図。
図4-9B】いくつかの実施形態による、鉛直な吸収側壁を有する集積デバイスの断面図である。
図4-9C】いくつかの実施形態による、鉛直な吸収側壁を有する集積デバイスの断面図。
図4-10A】いくつかの実施形態による、鉛直な吸収側壁を有する集積デバイスの断面図。
図4-10B】いくつかの実施形態による、個々のピクセル内に高誘電材料の領域を有する集積デバイスの断面図。
図5-1】いくつかの実施形態による、集積デバイスおよび機器のブロック図。
図5-2A】いくつかの実施形態による機器を示すブロック図。
図5-2B】いくつかの実施形態による、一連の光パルスのプロット。
図5-3】いくつかの実施形態による、1つまたは複数の導波路を介してパルスレーザによって光学的に励起させることができる平行なサンプルウェル、および、それぞれのサンプルウェルの対応する検出器の概略図。
図5-4】いくつかの実施形態による、導波路からのサンプルウェルの光励起を示す光出力のプロット。
図5-5】いくつかの実施形態による、サンプルウェル、光導波路および時間ビニング光検出器を有するピクセルの概略図。
図5-6】いくつかの実施形態による、サンプルウェル内で生じる可能性がある例示的な生体反応の概略図。
図5-7】異なる減衰特徴を有する2つの異なるフルオロフォアの放出確率曲線のプロット。
図5-8】いくつかの実施形態による、蛍光放出の時間ビニング検出のプロット。
図5-9A】いくつかの実施形態による、例示的な時間ビニング光検出器を示す図。
図5-9B】いくつかの実施形態による、例示的な時間ビニング光検出器を示す図。
図5-10A】いくつかの実施形態による、パルス励起およびサンプルからの蛍光放出の時間ビニングでの検出を示す概略図。
図5-10B】いくつかの実施形態による、サンプルを繰り返しパルス励起した後の、様々な時間ビンにおける蓄積した蛍光光子カウントのヒストグラム。
図5-11A】いくつかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T、A、C、G)またはヌクレオチド類似体に対応する可能性がある異なるヒストグラム。
図5-11B】いくつかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T、A、C、G)またはヌクレオチド類似体に対応する可能性がある異なるヒストグラム。
図5-11C】いくつかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T、A、C、G)またはヌクレオチド類似体に対応する可能性がある異なるヒストグラム。
図5-11D】いくつかの実施形態による、4つのヌクレオチド(T、A、C、G)またはヌクレオチド類似体に対応する可能性がある異なるヒストグラム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
I.序論
本出願の態様は、単一の分子の同定および核酸シークエンシングを含む、サンプルを並列に分析可能な集積デバイス、機器および関連するシステムに関する。そのような機器は、コンパクトであり、持ち運びが容易であり、操作が容易であるものとすることができ、医師または他の提供者が機器を容易に使用すること、および、機器を、ケアが必要とされ得る所望の場所まで輸送することを可能にする。サンプルの分析は、1つまたは複数の蛍光マーカでサンプルをラベリングすることを含むことができ、これはサンプルを検出し、かつサンプルの単一の分子を同定する(たとえば、核酸シークエンシングの一部としての個々のヌクレオチドの同定)ため、またはこのような検出もしくは同定のために使用することができる。蛍光マーカは、励起光(たとえば、蛍光マーカを励起して励起状態にすることができる特徴的な波長を有する光)で蛍光マーカを照らすことに反応して、励起されることができ、蛍光マーカが励起されると、発光(たとえば、励起状態から基底状態に戻ることにより蛍光マーカによって放出される特徴的な波長を有する光)を放出することができる。発光の検出は、蛍光マーカ、したがって、蛍光マーカによってラベリングされるサンプルまたはサンプルの分子の同定を可能にすることができる。いくつかの実施形態によると、機器は、超並列サンプル分析が可能であるものとすることができ、何万ものサンプルを、すなわちより同時に取り扱うように構成することができる。
【0018】
本発明者らは、集積デバイスであって、サンプルを受け取るように構成されているサンプルウェル、および、集積デバイス上に形成される集積される光学系を有する集積デバイス、ならびに、集積デバイスとインターフェースするように構成されている機器を使用して、この数のサンプルの分析を達成することができることを認識および理解している。機器は、1つまたは複数の励起光源を含むことができ、集積デバイスは、集積デバイス上に形成される集積される光学構成要素(たとえば、導波路、光カプラ、光学スプリッタ)を使用して励起光がサンプルウェルに送達されるように、機器とインターフェースすることができる。光学構成要素は、集積デバイスのサンプルウェルにわたる照明の均一性を改善することができ、そうでなければ必要となり得る多数の外部の光学構成要素を減らすことができる。さらに、本発明者らは、集積デバイス上に光検出器を集積させることによって、サンプルウェルからの蛍光放出の検出効率を高め、他の場合は必要となり得る集光構成要素の数を減らすことができることを認識および理解している。
【0019】
蛍光マーカは一度に単一の光子しか放出しないため、蛍光放出の光子を検出する上で、課題が生じる可能性がある。蛍光マーカを確実に励起するために、集積デバイスに結合されるとともに個々のサンプルウェルに送達される励起光は、励起光の光子が、集積デバイスの光検出器の、発光を検出する効率に悪影響を与える可能性があるような高い出力レベルである場合があり、この理由は、光検出器が励起光子で飽和される可能性があるためであり、発光の全体的な検出信号においてノイズを発生させる可能性がある。本発明者らは、集積デバイスの光検出器によって発生される検出信号から励起光の影響を低減するかまたはなくすために使用される技法が、発光の検出、およびしたがって、サンプル分析を改善することができることを認識および理解している。そのような技法は、励起光のうちのいくらかまたはすべてが、光検出器によって発生される信号に寄与することを拒絶することができる。いくつかの実施形態によると、光検出器による発光の単一の光子の検出のためには、励起光の数千から数百万もの光子が、光検出器によって拒絶されかつ光検出器に到達することが拒絶されるかまたは、そのいずれかの拒絶がされる必要があり得る。
【0020】
本発明者らは、集積デバイス上に形成され、サンプルウェルと光検出器との間に位置決めされ、励起光を発光に対して減衰させるように構成されているフォトニック構造を含むことが、放出光子の検出改善に寄与することができることをさらに認識および理解している。そのようなフォトニック構造は、励起光の吸収、反射および屈折を含む、光を操作するための1つまたは複数の特性を使用することによって、光検出器に到達する励起光の量を減衰させるように作用することができる。これらのタイプのフォトニック構造は、励起光のうちのいくらかまたはすべてが光検出器に到達することが防止されるため、「光拒絶」フォトニック構造と称することができる。
【0021】
集積デバイスは、励起光をサンプルウェルのうちのいくつかまたはすべてに送達するように構成されている複数の導波路を含むことができる。導波路は、集積デバイスの1つまたは複数の光学構成要素(たとえば、格子カプラ、光学スプリッタ)を介して、励起光のビームと結合し、サンプルウェルと光学的に結合するように構成することができる。いくつかの実施形態においては、導波路は、導波路に近接して位置決めされているサンプルウェルの列と結合することができる。励起光を減衰させるように構成されているフォトニック構造は、導波路と光検出器との間に形成することができる。フォトニック構造は、導波路から散乱されるいくらかまたはすべての励起光の光拒絶を提供することができ、励起光は、そうでなければ、光検出器に到達し、発光の光子の検出効率に影響を与える可能性がある。導波路から散乱される励起光は、導波路から広い角度領域にわたるものを含め、複数の方向に伝搬する可能性がある。対照的に、サンプルウェルからの発光は、サンプルウェルと対応する光検出器との間の方向に実質的に沿って伝搬することができる。したがって、本出願のいくつかのフォトニック構造は、特定の角度または特定の角度範囲において個々の光検出器に向かって伝搬するいくらかまたはすべての光を阻止するように構成されていることによって、この散乱励起光と発光との間の方向性の違いを利用する。いくつかの実施形態においては、光拒絶フォトニック構造は、光検出器に対して垂直から実質的に角度をなす(たとえば、垂直入射から45°)光検出器へ入射する光を減衰させるかまたは阻止しながらも、光検出器に対して実質的に垂直な入射である光の透過を可能にすることができる。
【0022】
集積デバイスにおいて形成することができる1つのタイプのフォトニック構造は、スペクトルフィルタである。スペクトルフィルタは、光の波長(たとえば、光の特徴的な波長、光の波長の帯域)に基づいて、スペクトルフィルタへの光入射を選択的に吸収、反射および/または拒絶することができる。優先的に吸収または拒絶するスペクトルフィルタの波長は、サンプルをラベリングする1つまたは複数の蛍光マーカを励起するために使用される励起光の特徴的な波長に対応することができる。好適なタイプのスペクトルフィルタは、色吸収フィルタ、ノッチ拒絶フィルタ、バンドパスフィルタおよびロングパスフィルタを含むことができる。
【0023】
集積デバイスにおいて形成することができる別のタイプの光拒絶フォトニック構造は、偏光フィルタである。偏光フィルタは、特定のタイプの偏光を有する光の透過を低減または防止するように作用することができる。このように、偏光フィルタは、偏光を無偏光光に対して減衰させることができる。たとえば、導波路は、特定のタイプの偏光(たとえば、横電界(TE:transverse electric)偏光、横磁界(TM:transverse magnetic)偏光)を有する励起光を伝搬させることができる。対照的に、蛍光マーカによって放出される光は、偏光されないか、または、励起光とは異なるタイプの偏光を有することができる。集積デバイスに集積される偏光フィルタは、発光のいくらかまたはほとんどが偏光フィルタを通過することを可能にしながらも、散乱励起光を含め、偏光された励起光を減衰させるように作用することができる。いくつかの実施形態においては、集積デバイスの導波路は、TE偏光を有する励起光を伝搬させるように構成することができ、集積デバイスは、偏光フィルタに入射する励起光のいくらかまたはすべてが、偏光フィルタを通過しないように、TE偏光を減衰させるように構成されている偏光フィルタを有することができる。偏光フィルタは発光をある程度まで減衰させる場合があるが、偏光フィルタを集積デバイスに組み込むことは、製造の容易さ、および、或る角度範囲にわたる偏光フィルタへの光入射の望ましい光拒絶を含め、他の光拒絶フォトニック構造に勝る利点を提供することができる。
【0024】
集積デバイスにおいて形成することができる第3のタイプの光拒絶フォトニック構造は、空間フィルタである。空間フィルタは、1つまたは複数の虹彩構造を含むことができ、これは、いくらかまたはすべての入射光を吸収するように作用する1つまたは複数の材料の層、および、光が通過することを可能にする1つまたは複数の開口部を含むことができる。開口部は、サンプルウェルおよびそれぞれの光検出器に重なるように位置決めされ、空間フィルタを通した発光の透過を可能にすることができる。空間フィルタは、励起迷光を阻止するとともに、隣り合う光検出器間のクロストークを低減するように作用することができる。いくつかの実施形態においては、集積デバイスの1つまたは複数の金属層は、空間フィルタとして作用することができる。1つまたは複数の金属層は、集積デバイスの回路部(たとえば、光検出器に電気的に結合される回路部)として作用することもできる。1つまたは複数の金属層は、好適な相補型金属酸化膜半導体(CMOS)製造技法を使用して形成することができる。
【0025】
1つまたは複数の光拒絶フォトニック構造は、集積デバイスによる発光の検出を改善するために、他の技法と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態によると、集積デバイスの光検出器は、励起光の光子によって生成される電荷キャリアを廃棄するように構成することができる。光検出器による蛍光放出の検出は、光検出器が励起光の光子によって飽和される可能性がある励起光のパルスに対応する時間期間の後に生じることができる。また、本発明者らは、迅速にオフになる(たとえば、ピーク値から500ps未満で)パルス励起源を使用することで、励起光からの実質的なノイズ信号を有することなく検出される十分な蛍光レベルが存在する励起の後の時点で、発光を検出することによってサンプルウェルからの発光の検出改善を可能にすることができることを認識および理解している。たとえば、発光の検出は、光検出器が励起光によって飽和されない時点で生じることができる。発光の光子の検出効率に対する励起光の影響を低減するために、集積デバイスのパルス励起源および光検出器のタイミングを計ることを含むそのような技法は、「電気拒絶」技法のタイプと称することができる。光拒絶フォトニック構造と、そのような電気的拒絶技法とを組み合わせることは、隣り合うピクセル間のクロストーク信号の低減を可能にすることができ、これは、集積デバイスの個々のピクセルが、光拒絶フォトニック構造または電気的拒絶技法が単独で実施された場合よりも小さい面積の設置面積を占有することを可能にすることができる。いくつかの場合において、光拒絶フォトニック構造とそのような電気的拒絶技法とを組み合わせることは、光検出器への発光のより効率的な透過を可能にすることができ、これは、光拒絶フォトニック構造または電気的拒絶技法が単独で実施された場合よりも大きい信号対ノイズ比を可能にすることができる。
【0026】
放出信号を改善するための他の技法は、発光の強度を高める技法を含むことができる。いくつかの実施形態においては、サンプルは、2つ以上の蛍光マーカでラベリングすることができ、それによって、発光の複数の光子が、励起光のパルス後に、ラベリングされたサンプルから放出されることができる。たとえば、同じタイプの複数の蛍光マーカでラベリングされるサンプルが、励起光のパルスによって照らされることに反応して、発光の複数の光子を放出することができる。付加的にまたは代替的に、蛍光マーカを、励起光の拒絶を改善することができる1つまたは複数の特徴に関して選択することができる。1つの特徴は、蛍光マーカの寿命である。より長い寿命を有する蛍光マーカを使用することは、励起光の拒絶改善を提供することができ、この理由は、光検出器が励起光によって生成される電荷キャリアを廃棄する時間期間を延長することができる一方で、発光の光子を集めるための時間期間を依然として可能にするためである。蛍光マーカの別の特徴は、そのストークスシフト、すなわち、(励起光の特徴的な波長に対応し得る)蛍光マーカの特徴的な吸収波長と、(発光に相当し得る)特徴的な放出波長との間の波長の隔たりである。より大きいストークスシフトを有する蛍光マーカは、特に1つまたは複数のスペクトルフィルタを集積デバイスに集積させるときに、励起光のより高い拒絶を可能にすることができる。

II.集積デバイス
A.概説
ピクセル1-112の列を示す集積デバイス1-102の断面概略図が、図1-1Aにおいて示されている。集積デバイス1-102は、結合領域1-201、ルーティング領域1-202およびピクセル領域1-203を含むことができる。ピクセル領域1-203は、励起光(破線の矢印として示されている)が集積デバイス1-102に結合する結合領域1-201から離れた位置にある表面に位置決めされているサンプルウェル1-108を有する複数のピクセル1-112を含むことができる。サンプルウェル1-108は、金属層1-106を通して形成することができる。点線の矩形によって示されている1つのピクセル1-112は、集積デバイス1-102の領域で、サンプルウェル1-108、および、1つまたは複数の光検出器1-110を有する光検出器領域を含む領域である。
【0027】
図1-1Aは、励起光のビームを結合領域1-201およびサンプルウェル1-108に結合することによる、励起の経路(破線で示されている)を示している。図1-1Aにおいて示されているサンプルウェル1-108の列は、導波路1-220と光学的に結合するように位置決めすることができる。励起光は、サンプルウェル内に位置付けられるサンプルを照らすことができる。サンプルは、励起光によって照らされることに反応して、励起状態に到達することができる。サンプルが励起状態にあるとき、サンプルは発光を放出することができ、これが、サンプルウェルに関連付けられる1つまたは複数の光検出器によって検出されることができる。図1-1Aは、サンプルウェル1-108からピクセル1-112の光検出器1-110への(実線として示されている)発光の経路を概略的に示している。ピクセル1-112の光検出器1-110は、サンプルウェル1-108からの発光を検出するように構成および位置決めすることができる。好適な光検出器の例は、「INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS」と題する、米国特許出願第14/821,656号(参照によりその全体が援用される)に記載されている。個々のピクセル1-112に関して、サンプルウェル1-108およびそのそれぞれの光検出器1-110は、共通の軸に沿って(図1-1Aにおいて示されているy方向に沿って)位置合わせすることができる。このように、光検出器は、ピクセル1-112内でサンプルウェルに重なることができる。
【0028】
サンプルウェル1-108からの発光の方向性は、金属層1-106に対する、サンプルウェル1-108内のサンプルの位置決めに応じて変わる可能性があり、この理由は、金属層1-106が、発光を反射させるように作用することができるためである。このように、金属層1-106と、サンプルウェル1-108内に位置決めされる蛍光マーカとの間の距離は、蛍光マーカによって放出される光を検出するための、サンプルウェルと同じピクセル内にある光検出器1-110の効率に影響を与える可能性がある。金属層1-106と、サンプルが動作中に位置決めされることができる場所に近接する、サンプルウェル1-108の底面との間の距離は、100nm~500nmの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲にあるものとすることができる。いくつかの実施形態において、金属層1-106とサンプルウェル1-108の底面との間の距離は、およそ300nmである。
【0029】
サンプルと光検出器との間の距離は、発光を検出する効率にも影響を与える可能性がある。サンプルと光検出器との間で光が移動しなければならない距離を減らすことによって、発光の検出効率を改善することができる。加えて、サンプルと光検出器との間がより短い距離であれば、集積デバイスのより小さい面積の設置面積を占有するピクセルを可能にすることができ、これは、より多くのピクセルが集積デバイスに含まれることを可能にすることができる。サンプルウェル1-108の底面と光検出器との間の距離は、1.5μm~15μmの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲であるものとすることができる。いくつかの実施形態においては、サンプルウェルと光検出器との間の距離は、10ミクロン未満であるものとすることができる。いくつかの実施形態においては、サンプルウェルと光検出器との間の距離は、5ミクロン未満であるものとすることができる。いくつかの実施形態においては、サンプルウェルと光検出器との間の距離は、1.5ミクロン~5ミクロンであるものとすることができる。
【0030】
フォトニック構造1-230が、サンプルウェル1-108と光検出器1-110との間に位置決めされており、励起光が光検出器1-110に到達することを低減するかまたは防止するように構成することができ、これは、そうでなければ、発光を検出する上で信号ノイズに寄与する可能性がある。図1-1Aにおいて示されているように、1つまたは複数のフォトニック構造1-230は、導波路1-220と光検出器1-110との間に位置決めすることができる。フォトニック構造1-230は、スペクトルフィルタ、偏光フィルタおよび空間フィルタを含む1つまたは複数の光拒絶フォトニック構造を含むことができる。フォトニック構造1-230は、共通の軸に沿って、個々のサンプルウェル1-108およびそれらのそれぞれの光検出器1-110と位置合わせするように位置決めすることができる。集積デバイス1-102の回路部として作用することができる金属層1-240も、いくつかの実施形態によると、空間フィルタとして作用することができる。そのような実施形態においては、1つまたは複数の金属層1-240は、いくらかまたはすべての励起光が光検出器1-110に到達することを阻止するように位置決めすることができる。
【0031】
図1-1Bは、集積デバイス1-102のピクセル1-112の断面図を示している。励起光は、図1-1Bの左側において破線によって示されているように、導波路1-220に沿って伝搬することができる。励起光が導波路1-220に沿って伝搬すると、いくらかの励起光の散乱が生じる可能性がある。散乱される励起光は、導波路1-220に沿う光の伝搬の方向に対して、および(たとえば、図1-1Bにおいて示されているy方向に沿う)フォトニック構造1-230に垂直な方向に対して、またはそのいずれかの方向に対して、特定の方向性を有することができる。導波路1-220から散乱される光は、図1-1Bにおいて示されている破線によって示されているように、フォトニック構造1-230に対する垂線に対して特定の角度または角度範囲にあるものとすることができる。散乱される光の角度は、導波路1-220の屈折率、導波路1-220を囲む材料の屈折率、および、光の伝搬に対して垂直な導波路1-220の寸法(たとえば、y方向に沿うなどの、導波路の幅、導波路の高さ)を含む、集積デバイス1-102の1つまたは複数の特徴に応じて変わることがある。たとえば、導波路1-220と周囲の材料(たとえば、誘電性)との間に高屈折率のコントラストがある導波路の設計では、導波路1-220に沿って伝搬する光は、より低屈折率のコントラストを有する導波路の設計の場合よりも高い角度で散乱する可能性がある。いくつかの実施形態においては、フォトニック構造1-230は、散乱される励起光の角度においてフォトニック構造1-230に入射する励起光の透過を阻止するかまたは低減するように構成することができる。このように、フォトニック構造1-230は、特定の導波路の設計に関連付けられる散乱励起光を考慮することができる。たとえば、導波路1-220から散乱される励起光は、フォトニック構造1-230に対して垂直からおよそ50°~60°の範囲の方向を有する可能性がある。フォトニック構造1-230は、この角度範囲にわたって励起光の透過を実質的に阻止するかまたは低減するように構成することができる。いくつかの実施形態においては、フォトニック構造1-230は、スペクトルフィルタに対して垂直から40°~70°の範囲にわたって励起光の透過を低減するように構成されているスペクトルフィルタを含むことができ、これは、導波路1-220から散乱される励起光のうちの少なくともいくらかを阻止するように作用することができる。
【0032】
結合領域1-201は、外部の励起源からの励起光を結合するように構成されている1つまたは複数の光学構成要素を含むことができる。結合領域1-201は、励起光のビームのうちのいくらかまたはすべてを受け取るように位置決めされている格子カプラ1-216を含むことができる。好適な格子カプラの例は、「OPTICAL COUPLER AND WAVEGUIDE SYSTEM」と題する、米国特許出願第62/435,693号(参照によりその全体が援用される)に記載されている。格子カプラ1-216は、励起光を導波路1-220に結合することができ、これは、励起光を1つまたは複数のサンプルウェル1-108の近傍に伝搬させるように構成することができる。代替的には、結合領域1-201は、光を導波路内に結合する他の既知の構造を含むことができる。
【0033】
集積デバイスから離れて位置付けられる構成要素を使用して、励起源5-108を集積デバイスに対して位置決めするとともに位置合わせすることができる。そのような構成要素は、レンズ、鏡、プリズム、窓、アパーチャ、減衰器および/または光ファイバーを含む光学構成要素を含むことができる。付加的な機械的な構成要素を、1つまたは複数の位置合わせ構成要素の制御を可能にするために機器に含めることができる。そのような機械的な構成要素は、アクチュエータ、ステッパモータおよび/またはノブを含むことができる。好適な励起源および位置合わせ機構の例は、「PULSED LASER AND SYSTEM」と題する、米国特許出願第15/161,088号(参照によりその全体が援用される)に記載されている。ビームステアリングモジュールの別の例は、「COMPACT BEAM SHAPING AND STEERING ASSEMBLY」と題する、米国特許出願第62/435,679号(参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されている。
【0034】
分析されるサンプルは、ピクセル1-112のサンプルウェル1-108内に導入されることができる。サンプルは、生物サンプル、または、化学的サンプルなどの任意の他の好適なサンプルであるものとすることができる。サンプルは、複数の分子を含むことができ、サンプルウェルは、単一の分子を分離するように構成することができる。いくつかの場合においては、サンプルウェルの寸法は、単一の分子をサンプルウェル内に閉じ込めるように作用することができ、測定を単一の分子に対して行うことを可能にする。励起光は、サンプル、または、サンプルに付けられるか、もしくは、サンプルウェル1-108内の照明エリア内にある間にサンプルに別様に関連付けられる少なくとも1つの蛍光マーカを励起するように、サンプルウェル1-108内に送達されることができる。
【0035】
動作時に、サンプルウェル内のサンプルの並列な分析が、励起光を使用してウェル内のサンプルのいくらかまたはすべてを励起するとともに、光検出器によってサンプル発光からの信号を検出することによって、行われる。サンプルからの発光は、対応する光検出器によって検出され、少なくとも1つの電気信号に変換されることができる。電気信号は、集積デバイスの回路部内の伝導ライン(たとえば、金属層1-240)に沿って伝達されることができ、伝導ラインは、集積デバイスとインターフェースする機器に接続されることができる。電気信号は、続いて処理および分析される、または処理もしくは分析されることができる。電気信号の処理または分析は、機器上にまたは機器から離れて位置付けられる好適なコンピューティングデバイスにおいて行うことができる。

B.スペクトルフィルタ
フォトニック構造1-230は、発光に対して、励起光よりも高い透過レベルを選択的に有することによって励起光を発光に対して減衰させるように構成されている1つまたは複数のスペクトルフィルタを含むことができる。いくつかの実施形態においては、サンプルをラベリングするために使用される蛍光マーカは、550nm~650nmの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲の波長を有する光を放出するように構成することができる。蛍光マーカを励起させるために使用される励起光は、より低い波長(たとえば、515nm、532nm)を有することができる。集積デバイスに含まれるスペクトルフィルタは、励起光の透過レベルが低い一方で、発光の高い透過レベルを有するように構成することができる。スペクトルフィルタがより短い波長(たとえば、励起光)を減衰させ、より長い波長(たとえば、発光)を透過させる実施形態では、スペクトルフィルタは、ロングパスフィルタとみなすことができる。スペクトルフィルタは、スペクトルフィルタへの広範囲の入射角度にわたって励起光を減衰させるように構成することができ、これは、導波路およびサンプルウェルの両方またはそのいずれかから多くの方向に散乱されるいくらかまたはすべての励起光の光拒絶を提供することができる。いくつかの実施形態においては、スペクトルフィルタは、スペクトルフィルタへの(図1-1Aにおいて示されているy方向に沿う)垂直入射から或る角度範囲にわたる(たとえば、0°~45°)励起光の低い透過レベルを有するように構成することができる。いくつかの実施形態においては、スペクトルフィルタは、或る角度範囲にわたって光の特定の偏光の低い透過レベルを提供するように構成することができる。そのようなフィルタは、導波路から散乱される光を含む、偏光された励起光の拒絶の実質的改善を提供することができる。
【0036】
スペクトルフィルタは、層の積層体と称することがある複数の層を含むことができる。スペクトルフィルタを形成する層の積層体は、高屈折率材料および低屈折率材料の交互の層を含むことができる。低屈折率材料は、1.40~1.55の範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲の屈折率を有することができる。高屈折率材料は、1.7よりも高い屈折率を有することができる。スペクトルフィルタにおいて使用することができる低屈折率材料の例は、二酸化ケイ素(SiO)である。スペクトルフィルタにおいて使用することができる高屈折率材料の例としては、Ta、Nb、TiO、A1、シリコンリッチ酸化物(SRO)およびアモルファスSi(a-Si)が挙げられる。いくつかの実施形態においては、低屈折率材料および高屈折率材料は、層の積層体の特定の全体的な厚さを達成しながらも、結果として生じるスペクトルフィルタの所望の光学特性を達成するように選択することができる。たとえば、より高いコントラスト(たとえば、低屈折率材料と高屈折率材料との差)を有するように、低屈折率材料および高屈折率材料の組み合わせを選択することは、低いコントラストを有する低屈折率材料および高屈折率材料の組み合わせよりも薄い積層体を可能にすることができる。スペクトルフィルタのより薄い積層体は、1つまたは複数の光検出器による発光の収集改善を提供することができる。いくつかの場合においては、より薄い積層体は、スペクトルフィルタおよび結果として生じる集積デバイスの製造を容易にするために望ましい場合がある。スペクトルフィルタは、スペクトルフィルタの完全性および性能を大幅に低下させることなく集積デバイスの他の構成要素の製造を可能にする材料から形成することができる。いくつかの場合においては、スペクトルフィルタは、およそ400℃まで実質的に熱的に安定しているものとすることできる。シリコンベースのフォトニックデバイス(たとえば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)の製造)に好適な任意の製造技法を使用して、スペクトルフィルタを形成することができる。いくつかの実施形態においては、プラズマ励起化学気相成長(PECVD)を使用して、SiO、SiN、SiON、a-Si、SiCおよびそれらの組み合わせを含むフィルタなどの、スペクトルフィルタを形成することができる。いくつかの実施形態においては、スペクトルフィルタは、物理気相成長(PVD)またはスパッタリングによって形成することができ、これは、フィルムの厚さおよび光学特性の両方またはそのいずれかを好適に制御しながら、金属酸化物材料を堆積させる能力を可能にすることができる。いくつかの実施形態においては、イオンビームスパッタリング(IBS)またはイオンビーム堆積(IBD)を使用して、スペクトルフィルタを形成することができ、そのような技法は、非常に密な光学フィルムの形成を可能にすることができる。多くのフィルタ積層材料は、ウェハに堆積されると大きなフィルム応力を呈し、このフィルム応力が、後続の加工(たとえば、フォトリソグラフィー)を妨げる可能性があるウェハの歪みを引き起こす可能性がある。フィルム応力に起因するウェハの歪みは、ウェハをアニーリングすることによって、または、ウェハの裏面を、フィルム応力を実質的に相殺するフィルムでコーティングすることによって、最小限に抑えるかまたは低減することができる。
【0037】
スペクトルフィルタは、2層~45層の範囲、または、その範囲内の任意の数もしくは数の範囲の、多数の交互の高屈折率材料および低屈折率材料の層を含むことができる。スペクトルフィルタにおける個々の層の厚さは、個々の層が20nm~300nmの範囲またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲の厚さを有することができるように、変えることができる。スペクトルフィルタにおける層の全体的な厚さは、0.1ミクロン~3ミクロンの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲にあるものとすることができる。図2-1Aは、サンプルウェル2-108、導波路2-220、ならびに、高屈折率材料2-110および低屈折率材料2-112の交互の層から形成されるスペクトルフィルタを有する、例示的な製造された集積デバイスの断面画像である。本明細書において記載するように、集積デバイスのいくつかの実施形態は、個々のサンプルウェルに重なる開口部を有する虹彩構造を有する空間フィルタを含むことができる。図2-1Bは、サンプルウェル2-108、導波路2-220、高屈折率材料2-110および低屈折率材料2-112の交互の層から形成されるスペクトルフィルタ、ならびに、開口部2-116を有する空間フィルタ2-114を有する、例示的な製造された集積デバイスの断面画像である。
【0038】
いくつかの実施形態においては、スペクトルフィルタは、TaおよびSiOの交互の層を含むことができる。図2-2Aは、23層およびおよそ1466nmの全体的な厚さを有する例示的なスペクトルフィルタに含まれる個々の層の材料、厚さおよび屈折率の表を示している。図2-2Bは、図2-2Aの表において記載されているスペクトルフィルタの透過対波長のプロットである。図2-2Bにおいて示されている透過対波長のプロットは、このタイプのスペクトルフィルタが、スペクトルフィルタに対して垂直から0°~45°の範囲の角度を含む、スペクトルフィルタへの或る範囲の入射角度にわたって、500nm~540nmの範囲の光の波長の場合により低い透過を有することを示している。スペクトルフィルタの別の例は、図2-3Aおよび図2-3Bを参照して示されているように、TaおよびSiOの交互の37層、ならびに、およそ2498nmの全体的な厚さを有する。増大した厚さは、図2-2Aおよび図2-2Bのスペクトルフィルタとは対照的に、より低い波長の低下した透過の主な原因となる可能性がある。
【0039】
いくつかの実施形態においては、スペクトルフィルタは、TiOおよびSiOの交互の層を含むことができる。図2-4Aは、25層およびおよそ1550nmの全体的な厚さを有する例示的なスペクトルフィルタに含まれる個々の層の材料、厚さおよび屈折率の表を示している。この例においては、高屈折率の層は、TiOを含み、532nmの波長においておよそ2.36の屈折率を有する。図2-4Bは、図2-4Aの表において記載されているスペクトルフィルタの透過対波長のプロットである。図2-4Bにおいて示されている透過対波長のプロットは、このタイプのスペクトルフィルタが、スペクトルフィルタに対して垂直から0°~45°の範囲の角度を含む、スペクトルフィルタへの或る範囲の入射角度にわたって、500nm~540nmの範囲の光の波長の場合により低い透過を有することを示している。スペクトルフィルタの別の例は、図2-5Aおよび図2-5Bを参照して示されているように、TiOおよびSiOの交互の23層、ならびに、およそ1252nmの全体的な厚さを有する。この例においては、高屈折率の層は、TiOを含み、532nmの波長においておよそ2.75の屈折率を有する。より高い屈折率は、図2-4Aおよび図2-4Bのスペクトルフィルタとは対照的に、スペクトルフィルタのより薄い厚さを可能にすることができる。
【0040】
図2-6は、図2-3Aおよび図2-3Bによって記載されているスペクトルフィルタと、図2-4Aおよび図2-4Bによって記載されているスペクトルフィルタとを比較する、垂直入射における透過対波長のプロットである。図2-6において示されているように、双方のスペクトルフィルタは、より低い波長において(たとえば、波長515nmおよび532nmにおいて)光の低下した透過を有し、この波長は、いくつかの実施形態によると、励起光の特徴的な波長または波長の帯域に相当し得る。
【0041】
いくつかの実施形態においては、スペクトルフィルタは、NbおよびSiOの交互の層を含むことができる。図2-7Aは、23層を有する例示的なスペクトルフィルタにおいて含まれている個々の層の厚さの表である。この例においては、高屈折率の層は、Nbを含み、532nmの波長においておよそ2.358の屈折率を有する。図2-7Bは、励起光に相当し得る波長532nm、および、発光に相当し得る575nmにおける、図2-7Aの表において記載されているスペクトルフィルタに関する、s偏光(TE光)の透過率の光学密度対垂線に対する角度のプロットである。図2-7Bにおいて示されている光学密度対角度のプロットは、このタイプのスペクトルフィルタがより高い光拒絶を有し、結果として、スペクトルフィルタに対して垂直からおよそ50°~およそ60°の範囲にわたり575nmの光の場合よりも532nmの光の場合に透過が低くなることを示している。そのようなスペクトルフィルタは、この角度範囲内で導波路から散乱される励起光の光拒絶を可能にすることができる。図2-7Cは、スペクトルフィルタに対して垂直から角度0°~55°の場合の、図2-7Aの表において記載されているスペクトルフィルタの透過率の光学密度対波長のプロットである。図2-7Cにおいて示されているように、低い光拒絶が存在し、結果として、560nm未満における波長と比較して、560nm~600nmの範囲の0°および55°の双方において、光の波長の透過が高くなる。そのようなスペクトルフィルタは、およそ560nm~600nmの範囲内で発光の所望の透過レベルを有しながらも、560nm未満の波長を有する励起光の所望のレベルの光拒絶を可能にすることができる。

C.偏光フィルタ
フォトニック構造1-230は、いくつかの実施形態によると励起光の偏光に相当し得る、特定のタイプの偏光を有する光を選択的に減衰させるように構成されている1つまたは複数の偏光フィルタを含むことができる。無偏光光、または、ランダムな向きの蛍光マーカによって放出される光子などのランダム偏光は、偏光フィルタを少なくとも部分的に通過することができる。導波路内の励起光は、実質的に偏光されることができ、この励起光が蛍光マーカを励起することができる。蛍光マーカの励起は、励起光の偏光に関して、マーカの向きに応じて変わることがある。蛍光マーカからの発光は、励起光とは異なる偏光を有することができる。加えて、蛍光マーカは、励起事象と放出事象との間で向きを変化させても、または、変化させなくてもよい。偏光フィルタは、集積デバイスの、少なくとも個々のサンプルウェルに重なる領域において、スリットアレイを含むことができる。図3-1Aは、導波路3-220に近接して位置決めされているサンプルウェル3-108、および、導波路3-220の下に位置決めされているスリットアレイを有する偏光フィルタ3-230を有する集積デバイスの平面図を示している。図3-1Bは、図3-1Aにおいて示されている集積デバイスの断面図を示しており、サンプルウェル3-108と光検出器3-110との間に位置決めされている偏光フィルタ3-230を示している。いくつかの実施形態においては、偏光フィルタ3-230は、個々のサンプルウェル3-108に関連付けられるスリットアレイ領域を含むことができる。個々のスリットアレイ領域間には、光を阻止するように作用することができる、スリットを有しない1つまたは複数の層があり、これは、ピクセル間のクロストークを低減するかまたは防止することができる。スリットアレイのスリット、および、スリットアレイ領域間の層は、アルミニウムまたは別の金属(たとえば、CMOS金属)を含む、任意の好適な材料から形成することができる。スリットアレイの厚さTは、0.05ミクロン~0.3ミクロンの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲であるものとすることができる。いくつかの実施形態においては、スリットアレイの厚さは、およそ0.1ミクロンであるものとすることができる。スリットアレイにおける個々のスリットは、0.05ミクロン~0.15ミクロンの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲の幅wを有することができる。いくつかの実施形態においては、スリットアレイにおけるスリットの幅は、およそ0.09ミクロンであるものとすることができる。スリットは、アレイの個々のスリット間に特定のピッチpすなわち距離があるように、周期的な配置を有することができる。スリットアレイは、0.1ミクロン~0.5ミクロンの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲のピッチを有することができる。いくつかの実施形態においては、スリットアレイは、およそ0.26ミクロンのピッチを有することができる。
【0042】
図3-2A、図3-2B、図3-2C、図3-2Dは、偏光フィルタがない集積デバイスの断面図を示し、サンプルウェル3-108および導波路3-220から散乱される532nmの特徴的な波長を有する光の伝搬のプロットである。示されているように、双方のTEおよびTMの532nmの光は、サンプルウェル3-108と光検出器3-110との間の距離に沿って伝搬する。対照的に、図3-3A、図3-3B、図3-3C、図3-3Dは、上記の偏光フィルタなどの偏光フィルタを有する集積デバイスの断面図を示し、サンプルウェル3-108から光検出器3-110までの532nmの特徴的な波長を有する光の伝搬のプロットである。図3-3Aおよび図3-3Bにおいて示されているように、偏光フィルタを集積デバイスに集積させることで、偏光フィルタがない集積デバイスと比較して(比較のために図3-2Aおよび図3-2Bを参照のこと)、TE532nmの光を減衰させる。図3-3Cおよび図3-3Dにおいて示されているように、偏光フィルタは、TM532nmの光の減衰に対する影響をほとんどまたは全く有しない(比較のために図3-2Cおよび図3-2Dを参照のこと)。

D.空間フィルタ
フォトニック構造1-230は、光の透過を阻止するように構成されている層を有する1つまたは複数の空間フィルタを含むことができ、この場合、層は、光が空間フィルタを通過することを可能にするように位置決めされている開口部またはアパーチャを有する。空間フィルタの個々の開口部は、サンプルウェル、および、個々のサンプルウェルに対応する光検出器に重なるように位置決めすることができ、それによって、開口部は、発光がサンプルウェルからそのそれぞれの光検出器に向かって伝搬することを可能にするように位置決めされている。いくつかの実施形態においては、空間フィルタの個々の開口部は、共通の軸に沿って、サンプルウェルおよびそのそれぞれの光検出器と位置合わせするように位置決めすることができる。空間フィルタの開口部は、サンプルウェルに対応する光検出器によって、サンプルウェルから放出される発光の所望のレベルの検出を可能にするように、好適にサイズ決めおよび形状決めすることができる。空間フィルタの層は、発光を励起光から識別しない可能性があるため、空間フィルタの開口部は、発光と励起光との方向性の違いを利用するようにサイズ決めおよび形状決めすることができる。サンプルウェルからの発光は、サンプルウェルとそのそれぞれの光検出器との間の方向に沿って実質的に伝搬することができ、この方向は、(図4-1Aにおいて示されているy方向に沿う)空間フィルタに対して垂直な方向である。発光のこの方向性は、サンプルウェルの底面と、金属層1-106などの金属層との間の距離、および、発光の波長によって達成することができる。サンプルウェルの底面と金属層との間の距離、すなわち、図1-1Bにおいて示されているようなdは、100nm~500nmの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲であるものとすることができる。空間フィルタに対して実質的に垂直である発光の方向性を達成するために、サンプルウェルの底面と金属層との間の距離は、周囲の材料における発光の波長に関して、およそ4分の1波長の奇数であるものとすることができる。たとえば、距離は、およそλ=580nmの放出波長およびn=1.45の屈折率の場合に、およそ(3/4)×λ/n=300nmであるものとすることができる。対照的に、導波路から散乱される励起光は、空間フィルタに対して垂直からより広範な角度範囲にわたって伝搬する可能性がある。空間フィルタの開口部のサイズおよび形状は、広範な角度における空間フィルタへの励起光の入射を含め、空間フィルタへ入射する励起光のいくらかを阻止するように作用することができる。空間フィルタにある開口部は、空間フィルタを通して、励起光に比して発光の透過を増大させるように好適にサイズ決めおよび形状決めすることができ、この場合、励起光は発光に比して減衰される。そのような空間フィルタを実装することによって、光検出器は、発光を示す信号を発生させることができ、この場合、信号は、励起光によって実質的に飽和されない。
【0043】
いくつかの実施形態は、複数の空間フィルタを有する集積デバイスに関する。1つの空間フィルタの層にある開口部は、別の空間フィルタの開口部に重なることができ、空間フィルタの重なり合う開口部は、異なる空間フィルタの開口部が異なる面積を有するように、異なるようにサイズ決めおよび形状決めすることができる。いくつかの実施形態においては、1つの空間フィルタの開口部および別の空間フィルタの開口部は、共通の軸に沿って位置合わせすることができ、この共通の軸は、ピクセル内でサンプルウェルおよびそのそれぞれの光検出器によって共有される。異なる空間フィルタの開口部のサイズのばらつきは、一連の空間フィルタを通過する光を減衰させることができ、それによって、第1の空間フィルタの開口部を通過する光は、第2の空間フィルタの層によって阻止される。これは、一連の空間フィルタにより、励起光を含むより広い角度範囲の光が、単一の空間フィルタが使用される場合よりも、光検出器に到達することをより効率的に阻止することを可能にすることができる。いくつかの実施形態においては、集積デバイスは、サンプルウェルに近接して位置決めされている第1の空間フィルタ、および、光検出器に近接して位置決めされている第2の空間フィルタを含むことができる。集積デバイスのピクセルに関して、第1の空間フィルタは、第1のサイズ(たとえば、開口部の直径)を有する開口部を有することができ、第2のフィルタは、第2のサイズを有する開口部を有することができ、この場合、第1のサイズおよび第2のサイズは異なる。いくつかの実施形態においては、第2のサイズは、第1のサイズよりも小さいものとすることができる。他の実施形態においては、第1のサイズは、第2のサイズよりも小さいものとすることができる。
【0044】
図4-1Aは、第1の空間フィルタ4-234および第2の空間フィルタ4-232を有する集積デバイス4-102の断面図を示している。第1の空間フィルタ4-234および第2の空間フィルタ4-232は、個々のサンプルウェル1-108に重なる開口部を含む。第1の空間フィルタ4-234は、ピクセル4-112のサンプルウェル1-108および光検出器1-110に重なる開口部4-240を有する。第2の空間フィルタ4-232は、ピクセル4-112のサンプルウェル1-108および光検出器1-110に重なる開口部4-242を有する。いくつかの実施形態においては、空間フィルタ4-234の開口部4-240および空間フィルタ4-232の開口部4-242は、共通の軸に沿って、サンプルウェル1-108および光検出器1-110と位置合わせすることができる。図4-1Aにおいて示されているように、第2の空間フィルタ4-232の開口部4-242は、第1の空間フィルタ4-234の開口部4-240よりも小さいサイズ(z方向に沿う寸法)を有する。
【0045】
空間フィルタにある個々の開口部は、光検出器による発光の収集を改善し、かつ光検出器への励起光の入射の量を低減するように、または光検出器による発光の収集を改善するか、もしくは光検出器への励起光の入射の量を低減するように集積デバイス内の対応するサンプルウェルおよび光検出器に対して好適にサイズ決め、形状決めおよび位置決めすることができる。図4-1B、図4-1C、図4-1D、図4-1Eおよび図4-1Fは、例示的な空間フィルタ開口部4-240b、4-240c、4-240d、4-240eおよび4-240fをそれぞれ示す、集積デバイス内のピクセルの上平面図である。空間フィルタにある開口部は、それぞれ図4-1Bおよび図4-1Cにおいて示されているように、空間フィルタ開口部4-240bおよび4-240cなどの開口部の平面において1つまたは複数の方向に沿って対称であるか、または、それぞれ図4-1Eおよび図4-1Fにおいて示されているように、空間フィルタ4-240eおよび4-240fなどの開口部の平面において1つまたは複数の方向に沿って非対称であるものとすることができる。空間フィルタにある開口部は、それぞれ図4-1B、図4-1D、図4-1Eにおいて示されているように、空間フィルタ開口部4-240b、4-240dおよび4-240eなど、ピクセル内の対応するサンプルウェルおよび光検出器の両方またはそのいずれかと同軸であるか、または、それぞれ図4-1Bおよび図4-1Fにおいて示されているように、空間フィルタ4-240cおよび4-240fなど、同軸ではないものとすることができる。
【0046】
いくつかの場合においては、空間フィルタにある開口部のサイズおよび形状は、励起光の散乱および発光の収集に影響を与える特徴を含め、集積デバイスの他の特徴に対応することができる。一例として、サンプルウェルのサイズおよび形状の両方またはそのいずれかは、サンプルウェルによって散乱される励起光の方向性に影響を与えることができる。特に、サンプルウェルの断面の寸法または面積が増大すると、サンプルウェルは、レイリー散乱体としてではなくミー散乱体としてより作用し得るため、より前方への散乱を呈する可能性がある。たとえば、およそ160nm以下の断面寸法を有するサンプルウェルは、レイリー散乱体として作用することができ、一方で、およそ170nm以上の断面寸法を有するサンプルウェルは、ミー散乱体として作用することができ、前方への散乱を呈することができる。空間フィルタにある、サンプルウェルに対応する開口部は、光検出器に到達する前方散乱光の量を低減するように、サンプルウェルに対するサイズ、形状および位置を有することができる。いくつかの場合においては、空間フィルタ開口部は、導波路に沿う光の伝搬の方向に低減されたサイズまたは寸法を有することができる。いくつかの実施形態においては、空間フィルタ開口部は、導波路からいくらかの角度での別の寸法よりも小さい、導波路を通した光の伝搬の方向に沿う寸法を有することができる。
【0047】
図4-1B、図4-1C、図4-1D、図4-1Eおよび図4-1Fに戻ると、光は、矢印によって示されているように、導波路1-220に沿って左から右に伝搬する。空間フィルタ開口部4-240dは、導波路1-220に対して垂直な開口部の寸法よりも小さい、導波路1-220に対して平行な寸法を有する楕円形状を有する。いくつかの実施形態においては、励起光が導波路に沿って伝搬して向かう(たとえば、図4-1B、図4-1C、図4-1D、図4-1Eおよび図4-1Fにおいて示されているような+z方向に向かう)方向への、サンプルウェルとその対応する空間フィルタ開口部の縁との間の距離は、光が導波路に沿って離れるように伝搬して向かう(たとえば、図4-1B、図4-1C、図4-1D、図4-1Eおよび図4-1Fにおいて示されているような-z方向に向かう)方向への、サンプルウェルと空間フィルタ開口部の縁との間の距離と比較して、より小さい。そのような空間フィルタ開口部は、ミー散乱体として作用するサンプルウェルから生じる前方散乱光を含め、前方散乱光の阻止の低減を可能にすることができる。たとえば、開口部が、開口部4-240eの左側と比較して右側が部分的に閉じているため、空間フィルタ開口部4-240eは、開口部の右側が前方散乱励起光を阻止するように作用することができる形状を有する。別の例として、空間フィルタ開口部4-240fは、+z方向へのサンプルウェルと開口部4-240fの縁との間の距離が、-z方向におけるよりも小さいように、サンプルウェル1-108に対する形状および位置を有する。
【0048】
いくつかの空間フィルタ開口部は、開口部を、対応するサンプルウェルから、導波路への光入射の方向に向かってオフセットすることによって、前方散乱光を阻止するように作用することができ、それによって、開口部およびサンプルウェルは同軸ではない。たとえば、空間フィルタ開口部4-240cは、図4-1Cにおいて示されているような-z方向である、光が導波路に沿って離れるように伝搬して向かう方向にオフセットされることによって、対応するサンプルウェル1-108と同軸ではない。
【0049】
空間フィルタの層は、励起光を含む光の透過を阻止するかまたは減衰させるように構成されている1つまたは複数の材料から形成することができる。空間フィルタは、金属層および反射防止層を含むことができる。空間フィルタの層を形成するために使用することができる材料の例としては、チタン、窒化チタン、アルミニウム、窒化タンタル、タンタル、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素および窒化ケイ素が挙げられる。空間フィルタの個々の層は、5nm~200nmまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲の厚さを有することができる。
【0050】
図4-2は、光学的に透明な材料4-210内に形成される第1の層4-202、第2の層4-204、第3の層4-206および第4の層4-208を有する、例示的な空間フィルタの断面図である。この例示的な空間フィルタは、広い角度にわたり励起波長において低下されたまたは最小限の反射を有することができる。空間フィルタは、第1の層4-202がデバイスのサンプルウェル(たとえば、サンプルウェル1-108)に近接し、第4の層4-208がデバイスの光検出器(たとえば、光検出器1-110)に近接したデバイス内に集積させることができ、それによって、光は、第1の層4-202に実質的に入射する。第1の層4-202および第3の層4-206は、窒化チタン(TiN)を含むことができる。第2の層4-204は、窒化ケイ素(SiN)および二酸化ケイ素(SiO)の両方またはそのいずれかを含むことができる。第4の層4-208は、チタンを含むことができる。光学的に透明な材料は、二酸化ケイ素を含むことができる。第1の層4-202の厚さは、3nm~15nmの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲であるものとすることができる。第2の層4-204の厚さは、30nm~60nmの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲であるものとすることができる。第3の層4-206の厚さは、20nm~90nmの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲であるものとすることができる。第4の層4-208の厚さは、40nm~60nmの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲であるものとすることができる。図4-3Aおよび図4-3Bは、それぞれ、およそ7nmの厚さを有する窒化チタンの第1の層、およそ47nmの厚さを有する窒化ケイ素の第2の層、およそ50nmの厚さを有する窒化チタンの第3の層、および、およそ50nmの厚さを有するチタンの第4の層を有する例示的な空間フィルタの、吸収(p偏光およびs偏光の双方)対角度および波長のプロットであり、図4-3Cおよび図4-3Dは、それぞれ、反射(p偏光およびs偏光の双方)対角度および波長のプロットである。
【0051】
図4-3Eは、532nmの特徴的な波長を有する光に対する、2つの例示的な空間フィルタの反射対角度のプロットである。空間フィルタのうちの一方は、およそ6nmの厚さを有する窒化チタンの第1の層、およそ36nmの厚さを有する窒化ケイ素の第2の層、およそ77nmの厚さを有する窒化チタンの第3の層、および、およそ50nmの厚さを有するチタンの第4の層を有する。他方の空間フィルタは、およそ6nmの厚さを有する窒化チタンの第1の層、およそ39nmの厚さを有する窒化ケイ素の第2の層、およそ27nmの厚さを有する窒化チタンの第3の層、および、およそ50nmの厚さを有するチタンの第4の層を有する。図4-3Fは、532nmの特徴的な波長を有する光に対する、2つの例示的な空間フィルタの反射対角度のプロットである。空間フィルタのうちの一方は、およそ6nmの厚さを有する窒化チタンの第1の層、およそ36nmの厚さを有する窒化ケイ素の第2の層、およそ77nmの厚さを有する窒化チタンの第3の層、および、およそ50nmの厚さを有するチタンの第4の層を有する。他方の空間フィルタは、およそ10nmの厚さを有する窒化チタンの第1の層、およそ49nmの厚さを有する二酸化ケイ素の第2の層、およそ73nmの厚さを有する窒化チタンの第3の層、および、およそ50nmの厚さを有するチタンの第4の層を有する。
【0052】
いくつかの実施形態においては、空間フィルタは、集積デバイスの回路部として作用する集積デバイスの金属層(たとえば、金属層1-240)から形成することができる。金属層は、集積デバイスの光検出器に電気的に結合することができ、制御信号を、集積デバイスの外部にある回路部(たとえば、集積デバイスとインターフェースする機器)から光検出器に送信し、および/または、光検出器によって発生される検出信号を外部の回路部に送信するように構成することができる。空間フィルタとして作用するように構成されている金属層は、集積デバイスの相補型金属酸化膜半導体(CMOS)領域内に形成することができる。金属層は、好適なCMOS製造技法を使用して形成することができる。空間フィルタの層を形成するために使用することができる材料の例としては、チタン、窒化チタン、アルミニウム、銅、酸窒化ケイ素(たとえば、SiON)が挙げられる。いくつかの実施形態においては、空間フィルタは、酸窒化ケイ素(SiON)の第1の層、窒化チタンの第2の層、チタンの第3の層、および、アルミニウム銅(AlCu)の第4の層を含むことができる。図4-3Gは、532nmの特徴的な波長を有する光に対する、標準的なCMOS金属層と比較した、この空間フィルタの反射対角度のプロットである。図4-3Gにおいて示されているように、この空間フィルタの光学特性は、CMOS金属と比較して、光の反射率を低下させる。特に、この空間フィルタは、0度~45度の範囲にわたって入射光の低下した反射率を呈する。
【0053】
いくつかの実施形態においては、集積デバイスは、サンプルウェルに近接して位置決めされている第1の空間フィルタ、および、集積デバイスの回路部として作用する集積デバイスの金属層から形成される光検出器に近接して位置決めされている第2の空間フィルタを含むことができる。第1の空間フィルタは、金属層(たとえば、Ti)および2つ以上の反射防止層(たとえば、TiN)から形成することができ、この場合、反射防止層は、金属層の両側に位置決めされている。回路部として作用するとともに第2の空間フィルタを形成する金属層は、入射光を反射させることができる。第2の空間フィルタに近接する第1の空間フィルタの反射防止層は、第2の空間フィルタの金属層によって反射される光を低減するように作用することができ、これは、反射防止層が含まれていない場合よりも、第1の空間フィルタおよび第2の空間フィルタが励起光を阻止する効率を高めることができる。
【0054】
いくつかの実施形態は、本明細書において記載される複数のタイプのフォトニック構造を有する集積デバイスに関する。異なるタイプのフォトニック構造は、異なるタイプのフォトニック構造の利点を利用することができ、励起光の光拒絶の改善は、1つのタイプのフォトニック構造のみを使用することに勝って達成することができる。たとえば、スペクトルフィルタの、励起光を光学的に拒絶する性能は、スペクトルフィルタへの励起光の入射角度に応じて変わることがある。スペクトルフィルタは、より広範な角度におけるよりも、スペクトルフィルタに対する垂線に近い角度において励起光を光学的に拒絶するときに改善性能を有することができる。空間フィルタを、スペクトルフィルタと併せて使用し、これらのより広範な角度における性能低下を考慮することができる。いくつかの実施形態においては、空間フィルタは、スペクトルフィルタの、サンプルウェルに近接する側に位置決めすることができる。いくつかの実施形態においては、空間フィルタは、スペクトルフィルタの、光検出器に近接する側に位置決めすることができる。
【0055】
図4-4は、第1の空間フィルタ4-234と第2の空間フィルタ4-232との間に位置決めされているスペクトルフィルタ4-230を有する集積デバイス4-402の断面図である。図4-4において示されているように、スペクトルフィルタ4-230は、集積デバイスの長さに沿って(z方向に沿って)延在することができ、第1の空間フィルタ4-234および第2の空間フィルタ4-232にある開口部ならびにサンプルウェル1-108に重なることができる。図4-5Aは、図4-4において示されている集積デバイス内のピクセルの断面図であり、導波路1-220およびサンプルウェル1-108から散乱される、いくつかの実施形態において励起光として使用することができる、532nmの光の伝搬のプロットである。図4-5Aによって示されているように、第1の空間フィルタ4-234、スペクトルフィルタ4-230および第2の空間フィルタ4-232の組み合わせは、532nmの光が光検出器1-110に到達することを実質的に阻止する。図4-5Bは、図4-4において示されている集積デバイス内のピクセルの断面図であり、いくつかの実施形態において蛍光マーカによって放出される発光であり得る、572nmの光の伝搬のプロットである。図4-5Bによって示されているように、スペクトルフィルタ4-230は、532nmの光とは対照的に、572nmの光の透過を可能にし、それによって、572nmの光のいくらかを、第1の空間フィルタ4-234および第2の空間フィルタ4-232によって阻止することができるが、572nmの光のいくらかは光検出器1-110に到達する。加えて、光検出器1-110に入射し得る572nmの光の量は、532nmの光の量よりも大幅に多いものとすることができ、それによって、光検出器1-110によって発生される信号は、572nmの光を示すことができる。
【0056】
上記で説明したように、回路部として作用する集積デバイスの金属層は、空間フィルタとして作用するように構成することもできる。いくつかの実施形態においては、集積デバイスは、スペクトルフィルタ、および、空間フィルタとして構成される1つまたは複数の金属層の双方を含むことができる。図4-6は、集積デバイスのピクセルの断面図であり、導波路1-220およびサンプルウェル1-108から散乱される、いくつかの実施形態において励起光として使用することができる、532nmの光の伝搬のプロットである。図4-6によって示されているように、スペクトルフィルタ4-230および金属層4-240の組み合わせは、532nmの光が光検出器1-110に到達することを実質的に阻止する。
【0057】
いくつかの実施形態は、集積デバイスであって、導波路または集積デバイスの上面に対して実質的に垂直であるといった、実質的に鉛直な向きであり、鉛直な吸収側壁と称することができる光吸収構造を有する集積デバイスに関する。鉛直な吸収側壁は、集積デバイスの個々のピクセル間に位置決めすることができ、ピクセル間の光学的な隔離を改善することができ、隣り合うピクセル間の励起光および発光のクロストークを低減することができる。鉛直な吸収側壁は、ピクセルのサンプルウェルと光検出器との間の光学経路に沿う任意の好適な位置に位置決めすることができる。複数の空間フィルタの層を含む実施形態では、鉛直な吸収側壁は、2つの空間フィルタの層の間に延在することができる。いくつかの実施形態においては、鉛直な吸収側壁は、集積デバイスの空間フィルタの層と光検出器との間に位置決めすることができる。
【0058】
図4-7は、第1の空間フィルタ4-234および第2の空間フィルタ4-232、ならびに、第1の空間フィルタ4-234と第2の空間フィルタ4-232との間に位置決めされている鉛直な吸収側壁4-704を有する集積デバイス4-702の断面図である。図4-7において示されているように、鉛直な吸収側壁4-704は、鉛直な吸収側壁のセットが個々のサンプルウェルおよび対応する光検出器1-110と関連付けられるように個々のピクセル間に位置決めされている。鉛直な吸収側壁4-704は、隣り合うピクセルにおいて、サンプルウェルからの発光(実線の矢印によって示されている)を吸収するか、またはそうでなければ、光検出器に到達することを低下させることができ、これは、集積デバイスにおけるピクセル間のクロストークの量を低減することができる。付加的に、鉛直な吸収側壁4-704は、(破線の矢印によって示されている)励起光が、集積デバイスの光検出器に到達することを低下させることができる。
【0059】
鉛直な吸収側壁は、光を吸収するかまたは実質的に阻止するように構成されている1つまたは複数の材料の層を含むことができる。鉛直な吸収側壁を形成するために使用することができる好適な材料の例としては、ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化ケイ素、タングステン、チタン、窒化チタン、タンタルおよび窒化タンタルが挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態によると、鉛直な吸収側壁は、集積デバイスの製造中に、トレンチをエッチングするとともに、トレンチ内に光吸収材料を堆積させることによって形成することができる。いくつかの実施形態においては、鉛直な吸収側壁を形成することは、集積デバイスのピクセル領域内でトレンチをエッチングすることを伴うことができる。いくつかの実施形態においては、鉛直な吸収側壁を形成することは、集積デバイスのピクセル領域間にトレンチをエッチングすることを伴うことができる。
【0061】
図4-8A~図4-8Fは、鉛直な吸収側壁を形成するために使用される例示的な製造ステップを示している。図4-8Aにおいて、光学的に透明な材料4-210を、いくつかの実施形態においては金属CMOS層である、空間フィルタ4-232にわたって形成する。図4-8Aにおいて示されているように、空間フィルタ4-232は、金属層1-240、および、光検出器を含むことができる基板4-802にわたって形成されている。光学的に透明な材料は、二酸化ケイ素(SiO)を含むことができる。本明細書において説明されるように、いくつかの実施形態においては、空間フィルタ4-232は、図4-2において示されている例示的な空間フィルタなどの、反射光を低減するように作用する1つまたは複数の層を含むことができる。光学的に透明な材料は、化学機械平坦化(CMP)技法を使用して平坦化することができる。図4-8Bにおいて示されているように、トレンチ4-804を、任意の好適なリソグラフィー技法を使用して、光学的に透明な材料内に形成することができる。トレンチ4-804は、図4-8Bにおいて示されているように、空間フィルタ4-232の領域を延ばすように形成することができる。そのような場合においては、空間フィルタ4-232は、エッチング停止部として作用することができる。いくつかの実施形態においては、トレンチ4-804は、下にある空間フィルタに向かって完全には延在しないものとすることができる。
【0062】
トレンチ4-804を形成した後で、鉛直な吸収側壁4-704を形成するために使用される材料を、図4-8Cにおいて示されているように、トレンチにわたって堆積させることができる。鉛直な吸収側壁は、ケイ素、タングステン、チタン、窒化チタン、タンタルおよび窒化タンタルの1つまたは複数の層を使用して形成することができる。トレンチの残りの部分は、任意の好適な誘電材料4-806で充填することができる。誘電材料4-806の例としては、二酸化ケイ素(SiO)、酸窒化ケイ素(SiON)、窒化ケイ素(SiN)、および、アモルファスシリコンを含むケイ素が挙げられる。トレンチは、プラズマ励起化学気相成長(PECVD)を含む、任意の好適な堆積技法を使用して充填することができる。トレンチが誘電材料で充填されると、図4-8Eにおいて示されているように、空間フィルタ4-234を形成する層を、充填されたトレンチにわたって形成することができる。図4-8Fにおいて示されているように、空間フィルタ4-234を、誘電材料4-806で充填されるトレンチ間のそれらの層をエッチングすることによって形成することができる。付加的な光学的に透明な材料を、エッチングされた空間フィルタ4-234にわたって形成することができる。集積デバイスの後続の処理は、図4-9Aにおいて示されているように、導波路1-220およびサンプルウェル1-108を形成することを伴うことができる。図4-9Aにおいて示されている、結果として生じる集積デバイスは、鉛直な吸収側壁4-704、ならびに、サンプルウェル1-108および関連する光検出器1-110を有する個々のピクセル間に形成される誘電材料4-806を有する。
【0063】
いくつかの実施形態においては、鉛直な吸収側壁を形成することは、集積デバイスの個々のピクセル内の領域をエッチングすることを伴うことができる。たとえば、図4-8Bにおいて示されているように、空間フィルタ4-232に重なる領域をエッチングする代わりに、鉛直な吸収側壁を形成することは、空間フィルタ4-232の開口部に重なる領域をエッチングすること、および、これらのエッチングされたトレンチにおいて誘電材料を形成することを含むことができる。図4-9Bは、そのようなプロセスによって形成された鉛直な吸収側壁を有する集積デバイスの断面図を示している。特に、誘電材料4-808の領域は、ピクセル内の個々のウェル1-108および光検出器に重なるように形成される。
【0064】
任意の好適な数の鉛直な吸収側壁を、ピクセル間に位置決めし、集積デバイスの所望の特性を達成することができることを理解されたい。付加的に、集積デバイスの製造の容易さは、結果として生じる集積デバイスにおいて隣接するピクセル間で使用するための鉛直な吸収側壁の数を選択する上で考慮することができる。いくつかの場合においては、ピクセル間の側壁がより少なければ、集積デバイスにおけるピクセルのアレイにわたるピクセル構造の拡張可能性および製造許容差の改善の両方、またはそのいずれかを可能にすることができる。たとえば、隣接するピクセル間に単一の鉛直な側壁を有することは、小さい特徴部を形成する上で特定の製造の制約を有するパターニング、エッチング、および、材料堆積を含むリソグラフィー技法を使用してより小さい特徴部を形成する必要性を低減することができる。図4-9Cは、隣接するピクセル間に位置決めされている単一の鉛直な吸収側壁4-704を有する集積デバイスの断面図を示している。
【0065】
いくつかの実施形態においては、集積デバイスは、集積デバイスの空間フィルタと光検出器との間に位置決めされる鉛直な吸収側壁を含むことができる。図4-10Aは、空間フィルタ4-232と光検出器1-110との間に位置決めされている鉛直な吸収側壁4-904を有する集積デバイスの断面図を示している。いくつかの実施形態においては、鉛直な吸収側壁4-904は、図4-10Aにおいて示されているように、空間フィルタ4-232と光検出器1-110との間に連続的に延在することができる。いくつかの実施形態においては、鉛直な吸収側壁4-904は、空間フィルタ4-232と光検出器1-110との間に部分的に延在することができる。鉛直な吸収側壁4-904は、集積デバイスのピクセル内の金属層1-240間にトレンチをエッチングするとともに、トレンチ内に吸収材料を堆積させて鉛直な吸収側壁4-904を形成することによって、形成することができる。
【0066】
いくつかの実施形態は、個々のピクセル内に位置決めされている誘電材料の領域を有する集積デバイスであって、領域は、集積デバイスの光検出器による収集を改善するために好適な屈折率を有する、集積デバイスに関する。いくつかの実施形態においては、領域は、光学的に透明な材料(たとえば、二酸化ケイ素)などの周囲の材料よりも高い屈折率を有することができ、これは、光を光検出器に向かって方向付けるように作用することができる。高屈折率誘電材料のこれらの材料は、空間フィルタと光検出器との間に位置決めすることができる。図4-10Bは、個々のピクセル内の空間フィルタ4-232と光検出器1-110との間に位置決めされている高屈折率材料4-906の領域を有する集積デバイスの断面図を示している。領域4-906は、集積デバイスのピクセル内の金属層1-240間にトレンチをエッチングするとともに、トレンチ内に高屈折率材料を堆積させて鉛直な吸収側壁4-904を形成することによって、形成することができる。領域4-906を形成するために使用することができる好適な材料の例としては、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、および/または、特定の特徴的な波長において1.5~2.0の範囲の屈折率を有する他の誘電材料が挙げられる。集積デバイスのいくつかの実施形態は、鉛直な吸収側壁および高屈折率誘電材料の領域の双方を含むことができることを理解されたい。

III.システムのさらなる態様
システムは、集積デバイス、および、集積デバイスとインターフェースするように構成されている機器を含むことができる。集積デバイスは、ピクセルのアレイを含むことができ、この場合、ピクセルは、サンプルウェルおよび少なくとも1つの光検出器を含む。集積デバイスの表面は、複数のサンプルウェルを有することができ、この場合、サンプルウェルは、集積デバイスの表面に配置される試料からサンプルを受け取るように構成されている。試料は、複数のサンプル、および、いくつかの実施形態においては異なるタイプのサンプルを含有することができる。複数のサンプルウェルは、サンプルウェルの少なくとも一部が試料から1つのサンプルを受け取るように、好適なサイズおよび形状を有することができる。いくつかの実施形態においては、サンプルウェル内のサンプルの数は、いくつかのサンプルウェルが1つのサンプルを含有し、他のサンプルウェルがゼロ個、2個またはそれ以上のサンプルを含有するように、サンプルウェル間で分散させることができる。
【0067】
いくつかの実施形態においては、試料は、複数の一本鎖DNAテンプレートを含むことができ、集積デバイスの表面上の個々のサンプルウェルは、一本鎖DNAテンプレートを受け取るようにサイズ決めおよび形状決めすることができる。一本鎖DNAテンプレートは、集積デバイスのサンプルウェルの少なくとも一部が一本鎖DNAテンプレートを含有するように、集積デバイスのサンプルウェル間で分散させることができる。試料は、ラベリングされたデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)も含有することができ、これは次に、サンプルウェルに入り、サンプルウェル内の一本鎖DNAテンプレートに対して相補的なDNAの鎖に組み込まれると、ヌクレオチドの同定を可能にすることができる。そのような例においては、「サンプル」は、ポリメラーゼによってその時点で組み込まれている一本鎖DNAおよびラベリングされたdNTPの双方を指すことができる。いくつかの実施形態においては、試料は、一本鎖DNAテンプレートを含有することができ、ラベリングされたdNTPは、ヌクレオチドがサンプルウェル内のDNAの相補的な鎖に組み込まれると、続いてサンプルウェルに導入されることができる。このように、ヌクレオチドの組み込みのタイミングは、ラベリングされたdNTPが集積デバイスのサンプルウェルに導入されるときによって制御することができる。
【0068】
励起光は、集積デバイスのピクセルアレイから離れて位置付けられる励起源から提供される。励起光は、少なくとも一部は集積デバイスの要素によって、1つまたは複数のピクセルに向かって方向付けられ、サンプルウェル内の照明領域を照らす。次に、マーカが、照明領域内に位置付けられると、励起光によって照らされることに反応して、発光を放出することができる。いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の励起源は、システムの機器の一部であり、この場合、機器および集積デバイスの構成要素は、励起光を1つまたは複数のピクセルに向かって方向付けるように構成されている。
【0069】
サンプルによって放出される発光は、次に、集積デバイスのピクセル内の1つまたは複数の光検出器によって検出することができる。検出された発光の特徴は、発光に関連付けられるマーカを同定するための指示を提供することができる。そのような特徴は、光検出器によって検出される光子の到着時間、光検出器によって経時にわたって蓄積される光子の量、および/または、2つ以上の光検出器にわたる光子の分散を含む、任意の好適なタイプの特徴を含むことができる。いくつかの実施形態においては、光検出器は、サンプルの発光に関連付けられる1つまたは複数のタイミング特徴(たとえば、蛍光寿命)を検出することを可能にする構造を有することができる。光検出器は、励起光のパルスが集積デバイスを通して伝搬した後の光子到着時間の分散を検出することができ、到着時間の分散は、サンプルの発光のタイミング特徴(たとえば、蛍光寿命のプロキシ)の指示を提供することができる。いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の光検出器は、マーカによって放出される発光の確率(たとえば、蛍光強度)の指示を提供する。いくつかの実施形態においては、複数の光検出器は、発光の空間的な分散を捕捉するようにサイズ決めおよび配置することができる。次に、1つまたは複数の光検出器からの出力信号を使用して、マーカを複数のマーカの中から区別することができ、この場合、複数のマーカを使用して、試料中のサンプルを同定することができる。いくつかの実施形態においては、サンプルは、複数の励起エネルギーによって励起させることができ、複数の励起エネルギーに反応してサンプルによって放出される発光および発光のタイミング特徴の両方またはそのいずれかが、マーカを複数のマーカから区別することができる。
【0070】
システム5-100の概略的な概説が、図5-1において示されている。システムは、機器5-104とインターフェースする集積デバイス5-102の双方を備える。いくつかの実施形態においては、機器5-104は、機器5-104の一部として集積される1つまたは複数の励起源5-106を含むことができる。いくつかの実施形態においては、励起源は、機器5-104および集積デバイス5-102の双方の外部にあるものとすることができ、機器5-104は、励起光を励起源から受け取るとともに、励起光を集積デバイスに方向付けるように構成することができる。集積デバイスは、集積デバイスを受け取るとともに、集積デバイスを励起源と光学的に正確に位置合わせして保持するために、任意の好適なソケットを使用して機器とインターフェースすることができる。励起源5-106は、集積デバイス5-102に励起光を提供するように構成することができる。図5-1において概略的に示されているように、集積デバイス5-102は、複数のピクセル5-112を有し、この場合、ピクセルの少なくとも一部は、サンプルの独立した分析を行うことができる。ピクセルが、ピクセルとは別個の源5-106から励起光を受け取るため、そのようなピクセル5-112は、「受動源ピクセル」と称することができ、この場合、この源からの励起光が、ピクセル5-112のうちのいくつかまたはすべてを励起する。励起源5-106は、任意の好適な光源であるものとすることができる。好適な励起源の例は、「INTEGRATED DEVICE FOR PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES」と題する、米国特許出願第14/821,688号(参照によりその全体が援用される)に記載されている。いくつかの実施形態においては、励起源5-106は、励起光を集積デバイス5-102に送達するように組み合わせられる複数の励起源を含む。複数の励起源は、複数の励起エネルギーまたは波長を生成するように構成することができる。
【0071】
ピクセル5-112は、サンプルを受け取るように構成されているサンプルウェル5-108、および、励起源5-106によって提供される励起光によってサンプルを照らすことに反応して、サンプルによって放出される発光を検出する光検出器5-110を有する。いくつかの実施形態においては、サンプルウェル5-108は、集積デバイス5-102の表面に近接してサンプルを保持することができ、これは、サンプルへの励起光の送達、および、サンプルからの発光の検出を容易にすることができる。
【0072】
励起光源5-106からの励起光を集積デバイス5-102に結合するとともに、励起光をサンプルウェル5-108にガイドする光学素子が、集積デバイス5-102および機器5-104の双方に位置付けられる。源からウェルへの光学素子は、集積デバイス5-102に位置付けられる1つまたは複数の格子カプラを備え、励起光を集積デバイスおよび導波路に結合して、励起光を機器5-104からピクセル5-112内のサンプルウェルに送達することができる。1つまたは複数の光学スプリッタ素子を、格子カプラと導波路との間に位置決めすることができる。光学スプリッタは、格子カプラからの励起光を結合し、励起光を導波路のうちの少なくとも1つに送達することができる。いくつかの実施形態においては、光学スプリッタは、励起光を、すべての導波路にわたって実質的に均一に送達することを可能にする構造を有することができ、それによって、導波路のそれぞれは、実質的に同様の量の励起光を受け取る。そのような実施形態は、集積デバイスのサンプルウェルによって受け取られる励起光の均一性を改善することによって、集積デバイスの性能を改善することができる。
【0073】
サンプルウェル5-108、励起源からウェルへの光学系の一部、および、サンプルウェルから光検出器への光学系は、集積デバイス5-102に位置付けられる。励起源5-106および源からウェルへの構成要素の一部は、機器5-104内に位置付けられる。いくつかの実施形態においては、単一の構成要素が、励起光をサンプルウェル5-108に結合すること、および、サンプルウェル5-108からの発光を光検出器5-110に送達することの双方において、役割を果たすことができる。集積デバイスに含まれるための、励起光をサンプルウェルに結合しかつ発光を光検出器に方向付ける、またはそのいずれかのための好適な構成要素の例は、「INTEGRATED DEVICE FOR PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES」と題する、米国特許出願第14/821,688号、および、「INTEGRATED DEVICE WITH EXTERNAL LIGHT SOURCE FOR PROBING,DETECTING,AND ANALYZING MOLECULES」と題する、米国特許出願第14/543,865号(これらの双方は、参照によりその全体が援用される)に記載されている。
【0074】
ピクセル5-112は、それ自体の個々のサンプルウェル5-108および少なくとも1つの光検出器5-110に関連付けられる。集積デバイス5-102の複数のピクセルは、任意の好適な形状、サイズおよび/または寸法を有するように構成することができる。集積デバイス5-102は、任意の好適な数のピクセルを有することができる。集積デバイス5-102内のピクセルの数は、およそ10,000ピクセル~1,000,000ピクセルの範囲内、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲であるものとすることができる。いくつかの実施形態においては、ピクセルは、512個のピクセル×512個のピクセルのアレイに配置することができる。集積デバイス5-102は、任意の好適な方法で機器5-104とインターフェースすることができる。いくつかの実施形態においては、機器5-104は、集積デバイス5-102に着脱可能に結合するインターフェースを有することができ、それによって、ユーザーは、集積デバイス5-102の使用のために集積デバイス5-102を機器5-104に取り付け、サンプルを分析するとともに、別の集積デバイスを取り付けることを可能にするために、集積デバイス5-102を機器5-104から取り外すことができる。機器5-104のインターフェースは、機器5-104の回路部と結合するように集積デバイス5-102を位置決めし、1つまたは複数の光検出器からの読み出し信号を機器5-104に送信することを可能にすることができる。集積デバイス5-102および機器5-104は、大きなピクセルアレイ(たとえば、10,000超のピクセル)に関連付けられるデータを取り扱うために、マルチチャネル高速通信リンクを含むことができる。
【0075】
機器5-104は、機器5-104および集積デバイス5-102の両方またはそのいずれかの動作を制御するためにユーザーインターフェースを含むことができる。ユーザーインターフェースは、ユーザーが、機器の機能を制御するために使用されるコマンドや設定、またはコマンドもしくは設定などの情報を機器に入力することを可能にするように構成することができる。いくつかの実施形態においては、ユーザーインターフェースは、ボタン、スイッチ、ダイヤル、および、音声命令のためのマイクを含むことができる。ユーザーインターフェースは、ユーザーが、適切な位置合わせや集積デバイス上の光検出器からの読み出し信号によって得られる情報などの、機器および/または集積デバイスの性能に関するフィードバックを受け取ることを可能にすることができる。いくつかの実施形態においては、ユーザーインターフェースは、スピーカーを使用してフィードバックを提供し、可聴フィードバックを提供することができる。いくつかの実施形態においては、ユーザーインターフェースは、ユーザーに視覚的なフィードバックを提供するための、インジケーターライトおよびディスプレイスクリーン、またはインジケーターライトもしくはディスプレイスクリーンを含むことができる。
【0076】
いくつかの実施形態においては、機器5-104は、コンピューティングデバイスと接続するように構成されているコンピュータインターフェースを含むことができる。コンピュータインターフェースは、USBインターフェース、ファイヤーワイヤーインターフェース、または、任意の他の好適なコンピュータインターフェースであるものとすることができる。コンピューティングデバイスは、ラップトップまたはデスクトップコンピュータなどの任意の汎用コンピュータであるものとすることができる。いくつかの実施形態においては、コンピューティングデバイスは、好適なコンピュータインターフェースを介して無線ネットワークにわたってアクセス可能なサーバ(たとえば、クラウドベースのサーバ)であるものとすることができる。コンピュータインターフェースは、機器5-104とコンピューティングデバイスとの間の情報の通信を容易にすることができる。機器5-104を制御および構成する、または制御もしくは構成するための入力情報を、コンピュータインターフェースを介して、コンピューティングデバイスに提供するとともに、機器5-104に送信することができる。機器5-104によって発生される出力情報は、コンピュータインターフェースを介してコンピューティングデバイスによって受信されることができる。出力情報は、機器5-104の性能、集積デバイス5-112の性能、および/または、光検出器5-110の読み出し信号から発生されるデータについてのフィードバックを含むことができる。
【0077】
いくつかの実施形態においては、機器5-104は、集積デバイス5-102の1つまたは複数の光検出器から受信されるデータを分析し、かつ制御信号を励起源5-106に送信する、または集積デバイス5-102の1つまたは複数の光検出器から受信されるデータを分析するか、もしくは制御信号を励起源5-106に送信するように構成されている処理デバイスを含むことができる。いくつかの実施形態においては、処理デバイスは、汎用プロセッサ、特別に適応されたプロセッサ(たとえば、1つまたは複数のマイクロプロセッサもしくはマイクロコントローラコアなどの中央処理ユニット(CPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、カスタム集積回路、デジタル信号プロセッサ(DSP)、または、それらの組み合わせ)を含むことができる。いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の光検出器からのデータの処理は、機器5-104の処理デバイスおよび外部のコンピューティングデバイスの双方によって行うことができる。他の実施形態においては、外部のコンピューティングデバイスは省いてもよく、1つまたは複数の光検出器からのデータの処理は、集積デバイス5-102の処理デバイスのみによって行うことができる。
【0078】
例示的な機器5-104は、図5-2Aにおいて示されているように、機器内の交換可能なモジュールとして実装されるか、または、機器に別様に結合される1つまたは複数のモードロックレーザモジュール5-258を含むことができる。機器5-104は、光学システム5-255および分析システム5-260を含むことができる。光学システム5-255は、光学構成要素(たとえば、レンズ、鏡、光学フィルタ、減衰器、ビームステアリング構成要素、ビーム成形構成要素のそれぞれのいずれも含まないか1つまたは複数を含むことができる)のいくつかの組み合わせを含み、出力光パルス5-252に対して動作し、かつモードロックレーザモジュール5-258から分析システム5-260に出力光パルス5-252を送達する、またはその動作もしくは送達を行うように構成することができる。分析システムは、分析される少なくとも1つのサンプルに光パルスを方向付け、少なくとも1つのサンプルから1つまたは複数の光信号(たとえば、蛍光、後方散乱放射)を受け取り、受け取った光信号を表す1つまたは複数の電気信号を生成するように構成されている複数の構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態においては、分析システム5-260は、1つまたは複数の光検出器、および、光検出器からの電気信号を処理するように構成されている、信号処理電子部品(たとえば、1つまたは複数のマイクロコントローラ、1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ、論理ゲートなど)を含むことができる。分析システム5-260は、1つまたは複数のデータ通信リンクを介して、データを外部のデバイスに送信し、データを外部のデバイスから受信するように構成されているデータ送信ハードウェアも含むことができる。いくつかの実施形態においては、分析システム5-260は、分析される1つまたは複数のサンプルを受け取ることができる集積デバイス5-102を受け取るように構成することができる。
【0079】
図5-2Bは、出力パルス5-252の時間的な強度プロファイルを示している。いくつかの実施形態においては、放出されたパルスのピーク強度値は、およそ等しいものとすることができ、プロファイルは、ガウス型の時間的プロファイルを有することができるが、sech2型のプロファイルなどの他のプロファイルも可能であるものとすることができる。いくつかの場合においては、パルスは、対照的な時間的プロファイルを有しない場合があり、他の時間的形状を有する可能性がある。各パルスの持続時間は、図5-2Bにおいて示されているように、全値半幅(FWHM)値によって特徴付けることができる。モードロックレーザのいくつかの実施形態によると、超短光パルスは、100ピコ秒(ps)未満のFWHM値を有することができる。いくつかの場合においては、FWHM値は、およそ5ps~およそ30psであるものとすることができる。
【0080】
出力パルス5-252は、規則的な間隔Tだけ隔てることができる。たとえば、Tは、出力カプラと、レーザモジュール5-258のキャビティエンドミラーとの間の往復進行時間によって求めることができる。いくつかの実施形態によると、パルスを隔てる間隔Tは、およそ1ns~およそ30nsの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲であるものとすることができる。いくつかの場合においては、パルスを隔てる間隔Tは、約0.7メートル~約3メートル間のレーザキャビティ長(レーザモジュール5-258のレーザキャビティ内の光軸のおよその長さ)に対応して、およそ5ns~およそ20nsの範囲であるものとすることができる。
【0081】
いくつかの実施形態によると、所望のパルスを隔てる間隔Tおよびレーザキャビティ長は、集積デバイス5-102上のサンプルウェルの数、蛍光放出特徴、および、集積デバイス5-102からのデータを読み取るためのデータ取り扱い回路部の速度の組み合わせによって決めることができる。本発明者らは、異なるフルオロフォアを、それらの異なる蛍光減衰率または特徴的な寿命によって区別することができることを認識および理解している。したがって、それらの異なる減衰率を区別するために、選択されたフルオロフォアの十分な統計値を収集するように、十分なパルスを隔てる間隔Tがある必要がある。さらに、パルスを隔てる間隔Tが短すぎる場合、データ取り扱い回路部は、多数のサンプルウェルによって収集される大量のデータについていくことができない。本発明者らは、約5ns~約20nsのパルスを隔てる間隔Tが、最高で約2nsの減衰率を有するフルオロフォア、および、約60,000個~600,000個のサンプルウェルからのデータを取り扱うために好適であることを認識および理解している。
【0082】
いくつかの実施態様によると、ビームステアリングモジュールが、モードロックレーザモジュール5-258から出力パルスを受け取り、集積デバイス5-102の光カプラへの光パルスの少なくとも位置および入射角度を調整するように構成することができる。いくつかの場合においては、モードロックレーザモジュールからの出力パルスは、集積デバイス5-102上の光カプラにおけるビームの形状および/もしくはビームの回転を付加的にまたは代替的に変更するために、ビームステアリングモジュールによって操作することができる。いくつかの実施態様においては、ビームステアリングモジュールは、光カプラへの出力パルスのビームの焦点および偏光、または焦点もしくは偏光の調整をさらに提供することができる。ビームステアリングモジュールの1つの例が、2016年5月20日に出願された、「PULSED LASER AND BIOANALYTIC SYSTEM」と題する、米国特許出願第15/161,088号(参照により本明細書に援用される)に記載されている。ビームステアリングモジュールの別の例は、「COMPACT BEAM SHAPING AND STEERING ASSEMBLY」と題する、米国特許出願第62/435,679号(参照により本明細書に援用される)に記載されており、この出願は、整理番号R0708.70024US00を有し、2016年12月16日に出願されている。
【0083】
図5-3を参照すると、モードロックレーザモジュールからの出力パルス5-522は、集積デバイス上の1つまたは複数の光導波路5-312内に結合することができる。いくつかの実施形態においては、光パルスは、格子カプラ5-310を介して1つまたは複数の導波路に結合することができるが、いくつかの実施形態においては、集積デバイス上の1つまたは複数の光導波路の端に結合することを使用することができる。いくつかの実施形態によると、光パルス5-122のビームを格子カプラ5-310に位置合わせすることを助けるために、クアッド検出器5-320を半導体基板5-305(たとえば、シリコン基板)に位置付けることができる。1つまたは複数の導波路5-312およびサンプルウェル5-330は、基板、導波路、サンプルウェルおよび光検出器5-322間に誘電層(たとえば、二酸化ケイ素層)が介在した状態で、同じ半導体基板上に集積させることができる。
【0084】
それぞれの導波路5-312は、サンプルウェル5-330の下にテーパー状部分5-315を含み、導波路に沿ってサンプルウェルに結合される光出力を均質化することができる。先細りテーパーは、より多くの光エネルギーを導波路のコアの外に押しやることができ、サンプルウェルへの結合を増大させ、サンプルウェル内への光の結合の損失を含む、導波路に沿う光損失を相殺する。第2の格子カプラ5-317を、それぞれの導波路の端に位置付け、光エネルギーを集積されたフォトダイオード5-324に方向付けることができる。集積されたフォトダイオードは、導波路を下って結合される出力の量を検出し、検出された信号を、ビームステアリングモジュールを制御するフィードバック回路部に提供することができる。
【0085】
サンプルウェル5-330は、導波路のテーパー状部分5-315と位置合わせし、タブ5-340において窪ませることができる。それぞれのサンプルウェル5-330について、半導体基板5-305に位置付けられる時間ビニング光検出器5-322が存在し得る。金属コーティングおよび多層コーティング5-350の両方またはそのいずれかを、サンプルウェルの周りおよび導波路の上に形成し、サンプルウェル内にない(たとえば、サンプルウェル上の溶液中に分散している)フルオロフォアの光励起を防止するかまたは低減することができる。金属コーティングおよび多層コーティング5-350の両方またはそのいずれかは、タブ5-340の縁を越えて隆起させ、それぞれの導波路5-312の入力端および出力端における導波路内の光エネルギーの吸収損失を低減することができる。
【0086】
集積デバイス上には導波路、サンプルウェルおよび時間ビニング光検出器の複数の列があるものとすることができる。たとえば、いくつかの実施態様においては、128個の列があるものとすることができ、それぞれが512個のサンプルウェルを有し、全部で65,536個のサンプルウェルがある。他の実施態様は、より少ないかまたはより多いサンプルウェルを含むことができ、他のレイアウト構造を含むことができる。モードロックレーザからの光出力は、1つまたは複数のスターカプラおよびマルチモード干渉カプラの両方またはそのいずれかを介して、または、集積デバイスの光カプラと複数の導波路との間に位置付けられる任意の他の手段によって、複数の導波路に分散させることができる。
【0087】
図5-4は、導波路5-315内の光パルス5-122からサンプルウェル5-330への光エネルギーの結合を示している。導波路5-315は、チャネル導波路とみなすことができる。図面は、導波路の寸法、サンプルウェルの寸法、異なる材料の光学的特性、および、サンプルウェル5-330からの導波路5-315の距離を考慮した光波の電磁場シミュレーションから生成されている。導波路は、たとえば、二酸化ケイ素の周囲の媒体5-410において窒化ケイ素から形成することができる。導波路、周囲の媒体およびサンプルウェルは、「INTEGRATED DEVICE FOR PROBING,DETECTING AND ANALYZING MOLECULES」と題する、2015年8月7日に出願された米国特許出願第14/821,688号において記載されている微細加工方法によって形成することができる。いくつかの実施形態によると、エバネッセント光場5-420が、導波路によって運ばれる光エネルギーをサンプルウェル5-330に結合する。
【0088】
サンプルウェル5-330内で生じる生体反応の非限定的な例が、図5-5において示されている。この例においては、標的核酸に対して相補的な成長鎖へのヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体の順次組み込みは、サンプルウェル内で生じている。順次組み込みは、一連の核酸(たとえば、DNA、RNA)をシークエンシングするために検出することができる。サンプルウェルは、およそ100nm~およそ500nmの範囲、または、その範囲内の任意の値もしくは値の範囲の深さ、および、およそ80nm~およそ200nmの範囲の直径を有することができる。金属化層5-540(たとえば、電気的な参照電位のための金属化)を、光検出器の上にパターニングし、隣接するサンプルウェルおよび他の望ましくない光源から迷光を阻止するアパーチャを提供することができる。いくつかの実施形態によると、ポリメラーゼ5-520を、サンプルウェル5-330内に位置付ける(たとえば、サンプルウェルのベースに付着させる)ことができる。ポリメラーゼは、標的核酸5-510(たとえば、DNAから由来する核酸の一部)を取り込み、相補的な核酸の成長鎖をシークエンシングして、DNA5-512の成長鎖を生成することができる。異なるフルオロフォアでラベリングされたヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体は、サンプルウェル上およびサンプルウェル内の溶液中に分散させることができる。
【0089】
ラベリングされたヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体5-610が、図5-6において示されているように、相補的な核酸の成長鎖に組み込まれると、1つまたは複数の付着しているフルオロフォア5-630を、導波路5-315からサンプルウェル5-330内に結合される光エネルギーのパルスによって、繰り返し励起することができる。いくつかの実施形態においては、フルオロフォア(単数または複数)5-630は、任意の好適なリンカー5-620によって1つまたは複数のヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体5-610に付着させることができる。組み込み事象は、最長で約100msの時間期間にわたって続くことができる。この時間の間に、モードロックレーザからのパルスによるフルオロフォアの励起から結果として生じる蛍光放出のパルスを、時間ビニング光検出器5-322によって検出することができる。異なる放出特徴(たとえば、蛍光減衰率、強度、蛍光波長)を有するフルオロフォアを、異なるヌクレオチド(A、C、G、T)に付着させことによって、DNA5-512の鎖が核酸を組み込む間に、異なる放出特徴を検出および区別することは、DNAの成長鎖のヌクレオチドシーケンスの決定を可能にする。
【0090】
いくつかの実施形態によると、蛍光放出特徴に基づいてサンプルを分析するように構成されている機器5-104は、異なる蛍光分子間の蛍光寿命および/もしくは強度の差、ならびに/または、異なる環境における同じ蛍光分子の寿命および/もしくは強度の差を検出することができる。説明として、図5-7は2つの異なる蛍光放出確率曲線(AおよびB)をプロットしており、これはたとえば、2つの異なる蛍光分子からの蛍光放出を表すことができる。曲線A(破線)を参照すると、短光パルスまたは超短光パルスによって励起された後で、第1の分子からの蛍光放出の確率p(t)が、図示のように、時間とともに減衰する可能性がある。いくつかの場合においては、経時にわたって放出される光子の確率の低下は、指数関数的減衰関数p(t)=PAο-t/τAによって表すことができ、式中、PAοは、初期の放出確率であり、τは、放出減衰確率を特徴付ける第1の蛍光分子に関連付けられる時間的パラメータである。τは、第1の蛍光分子の「蛍光寿命」、「放出寿命」または「寿命」と称することができる。いくつかの場合においては、τの値は、蛍光分子の局所的な環境によって変わる可能性がある。他の蛍光分子は、曲線Aにおいて示されているものとは異なる放出特徴を有することができる。たとえば、別の蛍光分子は、単一の指数関数的減衰とは異なる減衰プロファイルを有する可能性があり、その寿命は、半減期値または何らかの他のメトリックによって特徴付けることができる。
【0091】
第2の蛍光分子は、図5-7において曲線Bについて示されているように、急激であるが、明らかに異なる寿命τを有する減衰プロファイルを有することができる。示されている例においては、曲線Bの第2の蛍光分子の寿命は、曲線Aの寿命よりも短く、放出の確率は、曲線Aの場合よりも、第2の分子の励起後により早く高くなる。異なる蛍光分子は、いくつかの実施形態においては、約0.1ns~約20nsの範囲の寿命または半減期値を有することができる。
【0092】
本発明者らは、蛍光放出寿命の差を使用して、異なる蛍光分子の存在もしくは非存在を判別し、かつ蛍光分子が供される異なる環境もしくは状況を判別する、またはそのいずれかの判別ができることを認識および理解している。いくつかの場合においては、(たとえば、放出波長ではなく)寿命に基づいて蛍光分子を判別することは、機器5-104の態様を簡略化することができる。一例として、寿命に基づいて蛍光分子を判別する場合には、波長識別光学系(波長フィルタ、それぞれの波長の専用の検出器、異なる波長における専用のパルス光源、および/または、回折光学素子)の数を減らすか、または、排除することができる。いくつかの場合においては、単一の特徴的な波長において動作する単一のパルス光源を使用して、光学スペクトルの同じ波長領域内で放出するが、明らかに異なる寿命を有する異なる蛍光分子を励起することができる。同じ波長領域において放出する異なる蛍光分子を励起および判別するために、異なる波長において動作する複数の源ではなく、単一のパルス光源を使用する分析システムは、操作およびメンテナンスするためにあまり複雑ではないものとすることができ、よりコンパクトであり、より低いコストで製造することができる。
【0093】
蛍光寿命分析に基づく分析システムは、特定の利点を有することができるが、分析システムによって得られる情報の量および検出精度、またはそのような情報量もしくは検出精度は、付加的な検出技法を可能にすることによって高めることができる。たとえば、いくつかの分析システム5-160は、蛍光波長および蛍光強度の両方またはそのいずれかに基づいてサンプルの1つまたは複数の特性を判別するように付加的に構成することができる。
【0094】
図5-7を再び参照すると、いくつかの実施形態によると、蛍光分子の励起後の蛍光放出事象を時間ビニングするように構成されている光検出器によって、異なる蛍光寿命を区別することができる。時間ビニングは、光検出器の単一の電荷蓄積サイクルの間に行うことができる。電荷蓄積サイクルは、読み出し事象間の間隔であり、この間に、光生成キャリアが、時間ビニング光検出器のビンに蓄積される。放出事象の時間ビニングによって蛍光寿命を求めるという概念は、図5-8においてグラフによって導入されている。tの直前の時点tにおいて、或る蛍光分子または同じタイプ(たとえば、図5-7の曲線Bに対応するタイプ)の蛍光分子のアンサンブルが、短光パルスまたは超短光パルスによって励起される。分子の大きいアンサンブルの場合、放出の強度は、図5-8において示されているように、曲線Bと同様の時間プロファイルを有することができる。
【0095】
しかし、この例の場合に、単一の分子または少数の分子に関しては、蛍光光子の放出は、図5-7における曲線Bの統計値に従って生じる。時間ビニング光検出器5-322は、放出事象から生成されるキャリアを、蛍光分子の励起時間に関して時間的に分解される別個の時間ビン(図5-8には3個が示されている)に蓄積させることができる。多数の放出事象が合計される場合、時間ビンに蓄積されるキャリアは、図5-8において示されている減衰強度曲線に近似し、ビニングされた信号を使用して、異なる蛍光分子、または、蛍光分子が位置付けられる異なる環境を区別することができる。
【0096】
時間ビニング光検出器の例は、「INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS」と題する、2015年8月7日に出願された米国特許出願第14/821,656号(参照により本明細書に援用される)に記載されている。説明のために、時間ビニング光検出器の非限定的な実施形態が、図5-9Aにおいて示されている。単一の時間ビニング光検出器5-900は、光子吸収/キャリア発生領域5-902、キャリア移動/捕捉領域5-906、および、時間ビンに対応することができる、1つまたは複数の電荷キャリア格納領域5-908a、5-908b、5-908cを有するキャリア格納領域を備えることができる。キャリア移動/捕捉領域は、キャリア輸送チャネル5-907によって電荷キャリア格納領域に接続することができる。3個のキャリア格納ビンしか示されていないが、より多いかまたは少ないキャリア格納ビンがあってもよい。いくつかの実施形態においては、単一の時間ビニング光検出器5-900は、少なくとも2つの電荷キャリア格納領域を含む。電荷キャリア格納領域に接続されている読み出しチャネル5-910があてもよい。光子吸収/キャリア発生領域5-902、キャリア移動/捕捉領域5-906、電荷キャリア格納領域5-908a、5-908b、5-908c、および、読み出しチャネル5-910は、半導体を局所的にドーピングし、かつ隣接する絶縁領域を形成する、または半導体を局所的にドーピングするかもしくは隣接する絶縁領域を形成することによって形成され、光検出機能を提供し、キャリアを閉じ込めることができる。時間ビニング光検出器5-900は、キャリア移動/捕捉領域5-906に接続するように形成されるドレイン5-904を含むことができる。ドレイン5-904は、電荷キャリアを特定の回数廃棄するように構成することができる。光生成電荷キャリアをこのように除去することによって、励起光に反応して発生する望ましくない電荷キャリアを廃棄することができる。時間ビニング光検出器5-900は、電荷キャリアを光検出器を通して輸送するデバイスにおいて電界を発生されるように構成されている、基板上に形成される複数の電極5-920、5-922、5-932、5-934、5-936、5-940を含むことができる。複数の電極は、電荷キャリアがドレイン5-904に向かって移動するように、電位勾配を確立することができる。
【0097】
動作時に、蛍光光子は、異なる時点において光子吸収/キャリア発生領域5-902で受け取られ、キャリアを発生させることができる。たとえば、およそ時点tにおいて、3個の蛍光光子が、光子吸収/キャリア発生領域5-902の欠乏領域において3個のキャリア電子を発生させることができる。デバイスにおける電界(ドーピング、ならびに/または、電極5-920および5-922、ならびに任意選択的にもしくは代替的には5-932、5-934、5-936に外部から印加されるバイアスに起因する)は、キャリアをキャリア移動/捕捉領域5-906まで移動させることができる。キャリア移動/捕捉領域において、移動距離を、蛍光分子の励起後の時間に変換する。後の時点tにおいて、別の蛍光光子を光子吸収/キャリア発生領域5-902において受け入れ、付加的なキャリアを発生させることができる。この時点で、最初の3個のキャリアは、キャリア移動/捕捉領域5-906内の、第2の格納ビン5-908bに隣接する位置まで移動している。後の時点tにおいて、電気バイアスを、電極5-932、5-934、5-936と電極5-940との間に印加して、キャリアをキャリア移動/捕捉領域5-906から格納ビンまで横方向に輸送することができる。最初の3個のキャリアは、次に、第1のビン5-908aまで輸送されて第1のビン5-908a内に保持されることができ、後に発生するキャリアは、第3のビン5-908cまで輸送されて第3のビン5-908c内に保持されることができる。いくつかの実施態様においては、それぞれの格納ビンに対応する時間間隔は、サブナノ秒の時間スケールであるが、いくつかの実施形態においては(たとえば、フルオロフォアがより長い減衰時間を有する実施形態においては)、より長い時間スケールを使用することができる。
【0098】
励起事象(たとえば、パルス光源からの励起パルス)後に電荷キャリアを発生させるとともに時間ビニングするプロセスは、光検出器5-900の1回の電荷蓄積サイクル中に、単一の励起パルス後に1回生じるか、または、複数の励起パルス後に複数回繰り返すことができる。電荷の蓄積が完了した後で、キャリアを、読み出しチャネル5-910を介して格納ビンから読み出すことができる。たとえば、適切なバイアスシーケンスを、少なくとも電極5-940および下流の電極(図示せず)に適用し、キャリアを格納ビン5-908a、5-908b、5-908cから取り出すことができる。
【0099】
時間ビニング光検出器5-900は、励起光の光子、または、他の望ましくない光から生成される電荷キャリアを廃棄するように構成することができる。キャリア移動/捕捉領域5-906内の1つまたは複数のポテンシャル障壁の上昇のタイミングは、励起光を含む望ましくない光によって生成される光生成キャリアが、ドレイン5-904に向かって移動し、電荷キャリア格納領域5-908a、5-908b、5-908cに向かっては移動しないように、タイミングを計ることができる。ポテンシャル障壁を上昇させるために、電極5-922などの電極に電圧を印加するタイミングは、或る時間期間後に生じることができ、それによって、その時間期間の間に発生した電荷キャリアのいくつかまたはすべては、ドレイン5-904に向かって移動し、電荷キャリア格納領域5-908a、5-908b、5-908cには方向付けられない。その時間期間後に発生する後続の電荷キャリアは、電荷キャリア格納領域5-908a、5-908b、5-908cに選択的に方向付けられることができる。いくつかの実施形態においては、励起光は、励起光のパルスであり、時間ビニング光検出器5-900は、第1の時間期間にわたって励起光のパルスの光子から生成される電荷キャリアのうちの少なくともいくつかを廃棄するように構成することができる。第1の時間期間後に、時間ビニング光検出器5-900は、入射光子によって生成される1つまたは複数の電荷キャリアを、電荷キャリアが生成される時間に基づいて、それぞれの電荷キャリア格納領域内に第2の時間期間にわたって選択的に方向付けることができる。
【0100】
多くの励起事象後に、それぞれの電子格納ビン内に蓄積された信号を読み出し、たとえば、蛍光放出の減衰率を表す対応するビンを有するヒストグラムを提供することができる。そのようなプロセスは、図5-10Aおよび図5―10Bにおいて示されている。ヒストグラムのビンは、サンプルウェル内のフルオロフォアの励起後の、それぞれの時間間隔の間に検出される多くの光子を示すことができる。いくつかの実施形態においては、ビンに関する信号は、図5-10Aにおいて示されているように、多数の励起パルスに続いて蓄積される。励起パルスは、パルスの時間間隔Tだけ隔てられる時点te1、te2、te3...teNにおいて生じることができる。電子格納ビンにおける信号の蓄積中にサンプルウェルに印加される10個~10個の励起パルスがあるものとすることができる。いくつかの実施形態においては、1つのビン(ビン0)は、それぞれの光パルスとともに送達される励起光の振幅を検出するように構成され、(たとえば、データを正規化するために)基準信号として使用されることができる。
【0101】
いくつかの実施形態においては、時間ビニング光検出器は、光子吸収/キャリア発生領域において電荷キャリアを発生させ、電荷キャリアを、電荷キャリア格納領域内の電荷キャリア格納ビンに直接的に移送することができる。そのような実施形態においては、時間ビニング光検出器は、キャリア移動/捕捉領域を含まなくてもよい。そのような時間ビニング光検出器は、「直接ビニングピクセル」と称することができる。直接ビニングピクセルを含む時間ビニング光検出器の例は、「INTEGRATED PHOTODETECTOR WITH DIRECT BINNING PIXEL」と題する、2016年12月22日に出願された米国特許出願第62/438,051号(参照により本明細書に援用される)に記載されている。説明のために、時間ビニング光検出器の非限定的な実施形態が図5-9Bにおいて示されている。図5-9Bにおいて示されているように、時間ビニング光検出器5-950は、光子吸収/キャリア発生領域5-952、電荷キャリア格納領域5-958のビン、および、電荷キャリア格納領域5-958のビンから信号を読み出す読み出し回路部5-960を含む。電荷キャリアが移送されるビンは、電荷キャリアを生成する光子吸収/キャリア発生領域5-952における光子の到着時間に基づく。図5-9Bは、電荷キャリア格納領域5-958において2つのビン、すなわちビン0およびビン1を有する時間ビニング光検出器の例を示している。いくつかの場合においては、ビン0は、トリガー事象(たとえば、励起光のパルス)後の1つの期間において受け取られる電荷キャリアを集めることができ、ビン1は、トリガー事象に対して後の時間期間において受け取られる電荷キャリアを集めることができる。しかし、電荷格納領域5-958は、1個のビン、3個のビン、4個のビンまたはそれ以上といった、任意の数のビンを有することができる。時間ビニング光検出器5-950は、電圧を印加して電位勾配を確立し、電荷キャリアを方向付けるように構成することができる、電極5-953、5-955および5-956を含むことができる。時間ビニング光検出器5-950は、ドレインとして作用するか、または、光子吸収/キャリア発生領域5-952において生成される電荷キャリアを廃棄するように別様に構成することができる、拒絶領域5-965を含むことができる。電荷キャリアが拒絶領域5-965によって拒絶される時間期間は、励起光のパルスなどのトリガー事象中に生じるようにタイミングを計ることができる。
【0102】
励起光のパルスは、光子吸収/キャリア発生領域5-952において多くの望ましくない電荷キャリアを生成する可能性があるため、電位勾配が、ピクセル5-950において確立され、拒絶期間中にそのような電荷キャリアを拒絶領域5-965に排出することができる。一例として、拒絶領域5-965は、電子が供給電圧に排出される高電位拡散エリアを含むことができる。拒絶領域5-965は、領域5-952を拒絶領域5-965に直接的に電荷結合する電極5-956を含むことができる。電極5-956の電圧は、光子吸収/キャリア発生領域5-952において所望の電位勾配を確立するように変えることができる。拒絶期間中に、電極5-956の電圧は、キャリアを光子吸収/キャリア発生領域5-952から引き出して電極5-956内に入れ、供給電圧に出すレベルに設定することができる。たとえば、電極5-956の電圧は、正の電圧に設定して電子を引き付けることができ、それによって、電子は、光子吸収/キャリア発生領域5-952から拒絶領域5-965に引き離される。拒絶領域5-965は、「横方向拒絶領域」とみなすことができ、この理由は、拒絶領域5-965がキャリアを領域5-952からドレインまで横方向に移送することを可能にするためである。
【0103】
拒絶期間に続いて、光子吸収/キャリア発生領域5-952において生成された光生成電荷キャリアを、時間ビニングすることができる。個々の電荷キャリアは、それらの到着時間に基づいてビンに方向付けることができる。そうするために、光子吸収/キャリア発生領域5-952と電荷キャリア格納領域5-958との間の電位を、光生成電荷キャリアをそれぞれの時間ビンに方向付ける電位勾配を確立するように、それぞれの時間期間において変化させることができる。たとえば、第1の時間期間中には、電極5-953によって形成される障壁5-962を下げることができ、光子吸収/キャリア発生領域5-952からビン0への電位勾配を確立することができ、それによって、この期間中に発生するキャリアがビン0に移送される。次に、第2の時間期間中に、電極5-955によって形成される障壁5-964を下げることができ、光子吸収/キャリア発生領域5-952からビン1への電位勾配を確立することができ、それによって、後のこの期間中に発生するキャリアはビン1に移送される。
【0104】
いくつかの実施態様においては、図5-10Aにおいて示されているように、平均して単一の光子のみが、励起事象後にフルオロフォアから放出されることができる。時点te1における第1の励起事象後に、時点tf1において放出される光子は、第1の時間間隔内で生じることができるため、結果として生じる電子信号が、第1の電子格納ビンに蓄積される(ビン1に寄与する)。時点te2における後続の励起事象において、時点tf2において放出される光子は、第2の時間間隔内で生じることができるため、結果として生じる電子信号はビン2に寄与する。
【0105】
多数の励起事象および信号蓄積の後で、時間ビニング光検出器5-322の電子格納ビンを読み出し、サンプルウェルの多値信号(たとえば、2つ以上の値のヒストグラム、N次元ベクトルなど)を提供することができる。それぞれのビンの信号値は、フルオロフォアの減衰率に応じて変わることがある。たとえば、図5-8を再び参照すると、減衰曲線Bを有するフルオロフォアは、減衰曲線Aを有するフルオロフォアよりも、ビン1~ビン2においてより高い信号の比を有する。ビンからの値を分析し、校正値に対しておよび互いに比較して、または校正値に対してもしくは互いに比較して、特定のフルオロフォアを決定することができ、これがさらに、サンプルウェル内にあるときにフルオロフォアに結合するヌクレオチドもしくはヌクレオチド類似体(または、対象の任意の他の分子もしくは試料)を同定する。
【0106】
信号分析の理解をさらに助けるために、蓄積されるマルチビン値は、たとえば図5-10Bにおいて示されているようにヒストグラムとしてプロットされることができるか、または、N次元空間におけるベクトルもしくは位置として記録することができる。校正の実行は、4個のヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に結合する4個の異なるフルオロフォアに関して、多値信号の校正値(たとえば、校正ヒストグラム)を取得するように別個に行うことができる。一例として、校正ヒストグラムは、図5-11A(Tヌクレオチドに関連付けられる蛍光ラベル)、図5-11B(Aヌクレオチドに関連付けられる蛍光ラベル)、図5-11C(Cヌクレオチドに関連付けられる蛍光ラベル)、および、図5-11D(Gヌクレオチドに関連付けられる蛍光ラベル)において示されているように見える場合がある。(図5-10Bのヒストグラムに対応する)測定された多値信号と、校正用の多値信号との比較によって、DNAの成長鎖に組み込まれているヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体のアイデンティティー「T」(図5-11A)を求めることができる。
【0107】
いくつかの実施態様においては、蛍光強度を付加的にまたは代替的に使用して、異なるフルオロフォアを区別することができる。たとえば、いくつかのフルオロフォアは、大幅に異なる強度で放出するか、または、それらの減衰率が同様であり得る場合であってもそれらの励起の確率が大幅に異なる可能性がある(たとえば、少なくとも約35%の差)。ビニングされた信号(ビン1~3)の基準を測定された励起光のビン0とすることによって、強度レベルに基づいて異なるフルオロフォアを区別することが可能であるものとすることができる。
【0108】
いくつかの実施形態においては、同じタイプの異なる数のフルオロフォアを異なるヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に結合させることができるため、ヌクレオチドは、フルオロフォア強度に基づいて同定することができる。たとえば、2個のフルオロフォアを、第1のヌクレオチド(たとえば、「C」)またはヌクレオチド類似体に結合させることができ、4個以上のフルオロフォアを、第2のヌクレオチド(たとえば、「T」)またはヌクレオチド類似体に結合させることができる。異なる数のフルオロフォアのために、異なるヌクレオチドに関連付けられる異なる励起およびフルオロフォア放出確率があり得る。たとえば、信号蓄積間隔の間に、「T」ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体についてより多くの放出事象があってもよく、それによって、ビンの見かけの強度は、「C」ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の場合よりも大幅に高くなる。
【0109】
本発明者らは、フルオロフォアの減衰率およびフルオロフォアの強度、またはフルオロフォアの減衰率もしくはフルオロフォアの強度に基づいてヌクレオチドまたは任意の他の生体試料もしくは化学的試料を区別することが、機器5-104における光励起および検出システムの簡略化を可能にすることを認識および理解している。たとえば、光励起を、単一の波長源(たとえば、複数の源または複数の異なる特徴的な波長において動作する源ではなく1つの特徴的な波長を生成する源)を用いて行うことができる。付加的に、波長を識別する光学素子およびフィルタは、検出システムにおいて必要ではないものとすることができる。また、異なるフルオロフォアからの放出を検出するために、それぞれのサンプルウェルに単一の光検出器を使用することができる。簡略化された光励起および検出システムは、サンプルウェルから光検出器へのより短い光経路を容易にし、これは、信号の収集を改善することおよび集積デバイスにおいてより小さい面積の設置面積を占有するピクセルを可能にするか、またはそのいずれかを可能にする。
【0110】
「特徴的な波長」または「波長」という句は、放射の限定された帯域幅内の中央のまたは主な波長を指すのに使用される(たとえば、パルス光源によって出力される20nmの帯域幅内の中央またはピークの波長)。いくつかの場合においては、「特徴的な波長」または「波長」は、源による放射出力の全帯域幅内のピーク波長を指すのに使用される場合がある。
【0111】
本発明者らは、約560nm~約900nmの範囲の放出波長を有するフルオロフォアが、(CMOSプロセスを使用してシリコンウェハ上に製造することができる)時間ビニング光検出器によって検出される十分な量の蛍光を提供することができることを認識および理解している。これらのフルオロフォアは、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体などの対象の生体分子に結合することができる。この波長範囲における蛍光放出は、より長い波長における蛍光よりも、シリコンベースの光検出器においてより高い感度で検出することができる。付加的に、この波長範囲におけるフルオロフォアおよび関連付けられるリンカーは、DNAの成長鎖へのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の組み込みを妨げないものとすることができる。本発明者らはまた、約560nm~約660nmの範囲の放出波長を有するフルオロフォアを、単一波長源によって光学的に励起することができることを認識および理解している。この範囲内の例示的なフルオロフォアは、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific Inc.)(マサチューセッツ州ウォルサム)から入手可能なAlexa Fluor647である。本発明者らはまた、(たとえば、約500nm~約650nmの)より短い波長における励起光が、約560nm~約900nmの波長において放出するフルオロフォアを励起するために必要であり得ることを認識および理解している。いくつかの実施形態においては、時間ビニング光検出器は、たとえば、Geなどの他の材料を光検出器の活性領域に組み込むことによって、サンプルからのより長い波長の放出を効率的に検出することができる。
【0112】
単一の特徴的な波長を放出する励起源を使用してDNAをシークエンシングする可能性は、光学システムのいくつかを簡略化することができるが、上記で示したように、励起源に対して技術的に困難な要求を課す可能性がある。たとえば、本発明者らは、励起光が、続いて検出される蛍光信号を圧倒するかまたは干渉することがないように、励起源からの光パルスが、上記の検出スキームのために迅速に消滅すべきことを認識および理解している。いくつかの実施形態において、図5-5を再び参照すると、導波路5-315と時間ビニング光検出器5-322との間に波長フィルタがないものとすることができる。励起光と後続の信号収集との干渉を回避するために、励起パルスは、励起パルスのピークから約100ps以内で少なくとも50dBだけ強度が低下する必要があり得る。いくつかの実施態様においては、励起パルスは、励起パルスのピークから約100ps以内で少なくとも80dBだけ強度が低下する必要があり得る。本発明者らは、モードロックレーザが、そのような迅速なターンオフ特徴を提供することができることを認識および理解している。しかし、モードロックレーザは、長い時間期間にわたって安定したモードロック状態で動作することが困難である可能性がある。また、パルス繰り返し率を、データを取得する目的で100MHz未満に下げる必要があり得るため、モードロックレーザキャビティの長さは、非常に長くなる可能性がある。そのような長い長さは、持ち運び可能なデスクトップ機器に組み込むことができるコンパクトな光源とは対照的である。付加的に、蛍光を、何千またはさらには何百万ものサンプルウェルに関して集積されたフォトダイオードによって並列に検出可能であるように、モードロックレーザは、660nm未満の波長でフルオロフォアを励起するパルス当たり十分なエネルギー(または高い平均出力)を提供しなければならない。本発明者らは、たとえば、集積デバイス5-102の光カプラおよび導波路への効率的な結合を達成することができるように、モードロックレーザのビーム品質が高くなければならない(たとえば、1.5未満のM値)ことをさらに認識および理解している。現在のところ、持ち運び可能なデスクトップ機器に組み込まれ、長い時間期間にわたって安定したままであることができる、コンパクトなモジュール(たとえば、0.1ft未満の体積を占有する)において、50MHz~200MHzの繰り返し率で、500nm~650nmの波長で、200mW~1Wの平均出力でパルスを提供する、入手可能な市販のモードロックレーシングシステムは存在しない。
【0113】
いくつかの実施形態においては、サンプルは、1つまたは複数のマーカによってラベリングすることができ、マーカに関連付けられる放出を、機器によって判別可能である。たとえば、光検出器は、発光からの光子を電子に変換し、特定のマーカからの発光に応じて変わる寿命を判別するのに使用することができる電気信号を形成するように構成することができる。サンプルをラベリングするために異なる寿命を有するマーカを使用することによって、光検出器によって検出される、結果として生じる電気信号に基づいて、特定のサンプルを同定することができる。
【0114】
サンプルは、複数のタイプの分子を含有することができ、異なる蛍光マーカは、或る分子のタイプに一意に関連付けられることができる。励起中または励起後に、蛍光マーカは発光を放出することができる。発光の1つまたは複数の特性を使用して、サンプル中の分子の1つまたは複数のタイプを同定することができる。分子のタイプを区別するために使用される発光の特性は、蛍光寿命の値、強度、および/または、発光波長を含むことができる。光検出器は、発光の光子を含め、光子を検出し、これらの特性のうちの1つまたは複数を示す電気信号を提供することができる。いくつかの実施形態においては、光検出器からの電気信号は、1つまたは複数の時間間隔にわたる光子の到着時間の分散についての情報を提供することができる。光子の到着時間の分散は、励起光のパルスが励起源によって放出された後で光子が検出される時間に対応することができる。時間間隔の値は、その時間間隔中に検出される光子の数に対応することができる。複数の時間間隔にわたる相対値は、発光の時間的な特徴(たとえば、寿命)の指示を提供することができる。サンプルを分析することは、分散内の2つ以上の異なる時間間隔の値を比較することによって、マーカを区別することを含むことができる。いくつかの実施形態においては、強度の指示は、分散におけるすべての時間ビンにわたる光子の数を求めることによって提供することができる。

IV.結論
本出願の技術のいくつかの態様および実施形態をこのように記載したが、様々な改変、変更および改良が当業者に容易に想起されることを理解されたい。そのような改変、変更および改良は、本出願において記載される技術の趣旨および範囲内にあることが意図される。したがって、上記の実施形態は例として提示されているものにすぎないこと、ならびに、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明の実施形態は、詳細に記載されているものとは別様に実践され得ることを理解されたい。加えて、本明細書において記載される2つ以上の特徴部、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴部、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が相互に矛盾するものでなければ、本開示の範囲内に含まれる。
【0115】
また、記載したように、いくつかの態様は、1つまたは複数の方法として具現化してもよい。方法の一部として実施される行為は、任意の好適な形で順序付けることができる。それに応じて、例示的な実施形態では連続的な行為として示されている場合であっても、いくつかの行為を同時に実施することを含み得る、示されているものとは異なる順序で行為が実施される実施形態を構築することができる。
【0116】
本明細書において定義および使用されるようなすべての定義は、辞書の定義、参照により援用される文献中の定義、および/または、定義される用語の通常の意味を超えて統括するものと理解されたい。
【0117】
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書および特許請求の範囲において本願明細書で使用されるとき、明らかにそれとは反対に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されたい。
【0118】
「および/または」という句は、本明細書および特許請求の範囲において本願明細書で使用されるとき、そのように連合された要素の「一方または両方」を、すなわち、或る場合には共同で存在し、他の場合には選言的に存在する要素を意味するものと理解されたい。
【0119】
本明細書および特許請求の範囲において本願明細書で使用されるとき、1つまたは複数の要素の列挙に関して、「少なくとも1つ」という句は、要素の列挙中の要素のうちのいずれか1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解されたいが、必ずしも、要素の列挙内に具体的に列挙されるあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、また、要素の列挙中の要素の任意の組み合わせを排除するわけではない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が言及する要素の列挙内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定されるそれらの要素に関するか関しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることを可能にする。
【0120】
特許請求の範囲および上記の明細書において、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」、「から構成される」などのようなすべての移行句は、オープンエンドであり、すなわち、限定はされないが含むことを意味するものであると理解されたい。「からなる」および「から本質的になる」という移行句は、それぞれ、クローズドまたはセミクローズドの移行句であるものとする。
図1-1A】
図1-1B】
図2-1A】
図2-1B】
図2-2A】
図2-2B】
図2-3A】
図2-3B】
図2-4A】
図2-4B】
図2-5A】
図2-5B】
図2-6】
図2-7A】
図2-7B】
図2-7C】
図3-1A】
図3-1B】
図3-2A-3-2D】
図3-3A-3-3D】
図4-1A】
図4-1B-4-1F】
図4-2】
図4-3A】
図4-3B】
図4-3C】
図4-3D】
図4-3E】
図4-3F】
図4-3G】
図4-4】
図4-5A-4-5B】
図4-6】
図4-7】
図4-8A】
図4-8B】
図4-8C】
図4-8D】
図4-8E】
図4-8F】
図4-9A】
図4-9B】
図4-9C】
図4-10A】
図4-10B】
図5-1】
図5-2A】
図5-2B】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図5-7】
図5-8】
図5-9A】
図5-9B】
図5-10A】
図5-10B】
図5-11A】
図5-11B】
図5-11C】
図5-11D】