(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】ペプチド組成物の滅菌および濾過
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20230117BHJP
C07K 5/103 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C07K7/08
C07K5/103 ZNA
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021087415
(22)【出願日】2021-05-25
(62)【分割の表示】P 2019220878の分割
【原出願日】2015-03-10
【審査請求日】2021-06-22
(32)【優先日】2014-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505043041
【氏名又は名称】株式会社スリー・ディー・マトリックス
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ギル ユン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ギルバート カール パトリック
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/008400(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/147763(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/017913(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00~19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に規定されるRADA16、または、配列番号2に規定されるKLD12を含む液体ペプチド組成物を滅菌する方法であって、
前記方法は、
前記液体ペプチド組成物の
粘度が
、初期
の粘度の0.01%~80%の範囲内の低下したレベルに一時的に低下するように、前記液体ペプチド組成物を高剪断応力に供するステップ;および
前記
粘度が低下したレベルである間、前記液体ペプチド組成物を濾過に供するステップ、
を含
み、
前記の液体ペプチド組成物を高剪断応力に供するステップは、少なくとも1つの剪断減粘性ユニットを使用し、前記剪断減粘性ユニットは、少なくとも1本のニードル、マイクロ-またはナノ-サイズの穴を有する少なくとも1つのスクリーン、または、マイクロ-またはナノ-サイズの孔を有する少なくとも1枚の膜である、または備え、
前記濾過が、膜フィルターによる濾過である、
方法。
【請求項2】
請求項
1の方法であって、
前記の少なくとも1本のニードルは、少なくとも1mmの長さである、
方法。
【請求項3】
請求項
1の方法であって、
前記の少なくとも1本のニードルは、25~35の範囲内のゲージを有する、
方法。
【請求項4】
請求項
1の方法であって、
前記マイクロ-またはナノ-サイズの穴は、0.5μm~200μmの範囲内の最大寸法を有する、
方法。
【請求項5】
請求項
1の方法であって、
前記マイクロ-またはナノ-サイズの穴の間のピンチは、5μm~10mmである、
方法。
【請求項6】
請求項
1の方法であって、
前記スクリーンは、ステンレススチール、タングステン、チタン、シリコン、セラミック、プラスチック、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で少なくとも一部が作られる、
方法。
【請求項7】
請求項
1の方法であって、
前記少なくとも1つスクリーンの厚さは、10μm~10mmである、
方法。
【請求項8】
請求項
1の方法であって、
前記マイクロ-またはナノ-サイズの孔は、0.45μm~120μmの範囲のサイズを有する、
方法。
【請求項9】
請求項1の方法であって、
前記高剪断応力は、30~200Paの範囲である、
方法。
【請求項10】
請求項1の方法であって、
前記液体ペプチド組成物は、濾過の前に加圧される、
方法。
【請求項11】
請求項1の方法であって、
前記液体ペプチド組成物を真空下で保管するステップをさらに含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2014年3月10日に出願された米国仮特許出願第61/950,536号の、合衆国法典第35巻第119条(e)の下での利益を主張し、その出願は、その全体で参照により本明細書に援用される。
【0002】
[配列リスト]
本出願は、「2004837-0044_Sequences.txt」というASCII.txtファイルとして電子的形態で提出された配列リストを参照する。txtファイルは、2015年3月9日に作られ、1kbのサイズである。
【背景技術】
【0003】
ゲル構造に自己組織化する能力を有するペプチド剤は、治療および研究のコンテキストにおいて多種多様の用途を有する。そのようなペプチド剤の1つである、例えば、アルギニン、アラニン、およびアスパラギン酸の繰り返し配列を有する合成の16-アミノ酸ポリペプチド(すなわち、RADARADARADARADA[配列番号1]であり、「RADA16」としても知られる)は、3-D Matrix Medical Technologyから商品名PuraStat(登録商標)、PuraMatrix(登録商標)、およびPuraMatrix GMP(登録商標)として市販され、細胞培養、薬物輸送、促進的な軟骨および骨の成長、および、CNS、軟組織、および心筋の再生を含む広範な実験および臨床用途において、さらに、マトリックス、足場、または、1つまたは複数の検出可能な薬剤、生物学的活性剤、細胞、および/または細胞成分と関連し得るテダーとして、有用性が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、とりわけ、ペプチド組成物を取り扱う方法およびそれに関する技術を提供する。本明細書で提供される教示は、高粘度ペプチド組成物、および/または自己組織化ペプチドの組成物に、特に適用可能であり得る。
【0005】
とりわけ、本開示は、特定のペプチド組成物(例えば、特定の濃度での、および/または特定のレオロジー特性を有する、特定のペプチドの組成物)が、特定の特性を有すること、および/または、例えば濾過(例えば、滅菌濾過)などの特定の操作および/または処理ステップに適し得ないことを示す。
【0006】
また、本開示は、ある特定のペプチド組成物が、驚くべきことに、多くのペプチド組成物を損傷させる1つまたは複数の処理(例えば、オートクレーブ手順で適用される熱処理)に対して、安定であることも示す。
【0007】
したがって、本開示は、ペプチド組成物の処理(具体的には滅菌)に関連する、様々な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一部の実施態様では、本開示は、特定のペプチド組成物が、1つまたは複数の有用および/または驚くべき特性(例えば、熱処理による損傷に対する耐性、剪断応力の適用に対するレオロジー反応性および/または復元など)を有し得ることを示す。
【0009】
本開示は、とりわけ、ペプチド組成物を滅菌するためのシステム、およびまたは、特定のペプチド組成物への適用に適切なそのようなシステムを決定するためのシステムを提供する。
【0010】
一部の実施態様では、特定のペプチド組成物は、例えば、ペプチド配列、ペプチド濃度、粘度、剛性、熱処理に対する感受性、剪断応力の適用に対するレオロジー反応性、剪断応力の適用からのレオロジー復元など)からなる群より選択される1つまたは複数の特性により、定義され得る。
【0011】
とりわけ、本開示は、オートクレーブ処理により滅菌され得る特定のペプチド組成物を提供する。
【0012】
一部の実施態様では、本開示は、特定のペプチド組成物の濾過を達成するための、具体的には、濾過に適するようにさせるためにペプチド組成物のレオロジー特性(ペプチドの同一性および配列により定義される)を変更するための、特定の技術を提供する。例えば、一部の実施態様では、濾過されるペプチド組成物の粘度は、濾過の前に低下させてよい。一部の実施態様では、レオロジー特性が変更され得るように、剪断応力をペプチド組成物に適用してよい。例えば、ペプチド組成物の粘度および/または剛性は、濾過の前に低下させてよく;一部の実施態様では、そのような低下は一時的である。
【0013】
一部の実施態様では、提供される技術は、従来の濾過技術で実現可能な濃度よりも高い濃度でペプチド組成物の濾過を可能にする。例えば、本明細書に記載の技術は、従って(in accordance)2.5%よりも高い濃度で、RADA16が濾過される(具体的には、濾過により滅菌される)のを可能にする。
【0014】
一部の特定の実施態様では、本開示は、組成物をオートクレーブ処理に供するステップを含む、IEIKの一連の繰り返し単位を配列に含む液体ペプチド組成物を滅菌する方法を提供する。一部の実施態様では、方法は、滅菌濾過を伴わない。
【0015】
一部の実施態様では、本開示は、組成物を熱処理に供するステップを含む、IEIKの一連の繰り返し単位を配列に含む液体ペプチド組成物を滅菌する方法を提供する。一部の実施態様では、熱処理は、約121℃で約25分間実施する。
【0016】
一部の実施態様では、本開示は、1Paの振動応力で約300~約5,000Paの範囲内の初期貯蔵弾性率を有する液体ペプチド組成物を滅菌するための方法を提供し、その方法は、組成物の貯蔵弾性率が一時的に初期貯蔵弾性率の約0.01%~80%の範囲内のレベルまで低下するように組成物を高剪断応力に供するステップ、および、その粘度が低下したレベルである間、組成物を濾過に供するステップを含む。
【0017】
一部の実施態様では、組成物を高剪断応力に供するステップは、少なくとも1つの剪断減粘性ユニットを利用する。
【0018】
一部の実施態様では、少なくとも1つの剪断減粘性ユニットは、少なくとも1本のニードルであり、または備える。一部の実施態様では、少なくとも1本のニードルは、少なくとも10mmの長さである。一部の実施態様では、少なくとも1本のニードルは、約25~約35の範囲内のゲージを有する。
【0019】
一部の実施態様では、少なくとも1つの剪断減粘性ユニットは、マイクロ-またはナノ-サイズの穴を有する少なくとも1つのスクリーンであり、または備える。一部の実施態様では、マイクロ-またはナノ-サイズの穴は、約0.5μm~約200μmの範囲内の最大寸法を有する。一部の実施態様では、穴の間のピンチは、約5μm~約10mmである。一部の実施態様では、スクリーンは、ステンレススチール、タングステン、チタン、シリコン、セラミック、プラスチック、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で少なくとも一部が作られる。一部の実施態様では、スクリーンの厚さは、約10μm~約10mmである。
【0020】
一部の実施態様では、少なくとも1つの剪断減粘性ユニットは、マイクロ-またはナノ-サイズの孔を有する少なくとも1枚の膜であり、または備える。一部の実施態様では、孔は、約0.45μm~約120μmの範囲のサイズである。
【0021】
一部の実施態様では、滅菌のための高剪断応力は、約30~約200Paの範囲である。
【0022】
一部の実施態様では、液体ペプチド組成物は、RADA16、IEIK13、またはKLD12を含む。
【0023】
一部の実施態様では、液体ペプチド組成物は、濾過の前に加圧される。一部の実施態様では、ペプチド液体組成物は、真空下でさらに保管される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、熱感受性を評価するための、オートクレーブ処理の前後のRADA16の例示的な質量分析を示す。
図1Aは、オートクレーブ処理前の質量分析を示す。
図1Bは、オートクレーブ処理後の質量分析を示す。
図1Cは、例示的なRADA16分子構造を示し;分析された特定のペプチド組成物では、N-末端およびC-末端がアセチルおよびアミノ基により保護されている場合、タンパク質はRADARADARADARADAから構成された。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、評価するための、オートクレーブ処理前後のIEIK13の例示的な質量分析を示す。
図2Aは、オートクレーブ処理前の質量分析を示す。
図2Bは、オートクレーブ処理後の質量分析を示す。
図2Cは、例示的なIEIK13分子構造を示し;分析された特定のペプチド組成物では、N-末端およびC-末端がアセチルおよびアミノ基により保護されている場合、タンパク質は、IEIKIEIKIEIKIから構成された。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、熱感受性を評価するための、オートクレーブ処理前後のKLD12の例示的な質量分析を示す。
図3Aは、オートクレーブ処理前の質量分析を示す。
図3Bは、オートクレーブ処理後の質量分析を示す。
図3Cは、例示的なKLD12分子構造を示し;分析された特定のペプチド組成物では、N-末端およびC-末端がアセチルおよびアミノ基により保護されている場合、タンパク質は、KLDLKLDKKLDLから構成された。
【
図4】オートクレーブ処理前後のRADA16およびIEIK13の例示的な時間スイープ試験を示す。
【
図5】粘性ペプチド溶液(例えば、RADA16、KLD12、およびIEIK13)を濾過するために必要なデバイスおよびペプチドの写真を提供する。ペプチド溶液が濾過されるように(右)、剪断応力を30-ゲージのニードルを通してペプチド溶液に適用した(中央)。
【
図6】1Paおよび10rad/sで実施した1%および2.5%のRADA16の例示的な時間スイープ試験を示す。適用される剪断応力がペプチドの剛性を低下するように、30-ゲージのニードルを通してRADA16を注入した。注入後1分に測定を開始した。
【
図7】1Paおよび10rad/sで実施した1%および2.5%のKLD12の例示的な時間スイープ試験を示す。適用される剪断応力がペプチドの剛性を低下するように、30-ゲージのニードルを通してKLD12を注入した。注入後1分に測定を開始した。
【
図8】1Paおよび10rad/sで実施した2.5%のIEIK13の例示的な時間スイープ試験を示す。適用される剪断応力がペプチドの剛性を低下するように、30-ゲージのニードルを通してIEIK13を注入した。注入後1分に測定を開始した。
【
図9】0.003~1000 1/secの剪断速度で2.5%RADA16溶液について実施した例示的な流動粘度試験を示す。
【
図10】0.003~1000 1/secの剪断速度で1.5%のIEIK13溶液について実施した例示的な流動粘度試験を示す。
【
図11】粘度復元を示す時間関数としての、2.5%のRADA16の例示的な粘度測定を示す。時間=0では、粘度が低下するように剪断応力をペプチドに適用した。横線は、2.5%のRADA16の元の粘度を示す。
【
図12】粘度復元を示す時間関数としての、1.5%のIEIK13の例示的な粘度測定を示す。時間=0では、粘度が低下するように剪断応力をペプチドに適用した。横線は、1.5%のIEIK13の元の粘度を示す。
【
図13】粘性ペプチド溶液(例えば、RADA16、KLD12、およびIEIK13)を濾過するための例示的なデバイスを示す。多数の孔を有する剪断減粘性ユニットを通して剪断応力を適用した。ペプチド溶液は、上部のシリンジ(i)を用いて分注した。ペプチド溶液は、ペプチド溶液の粘度を一時的に低下させるために孔または穴を有する剪断減粘性ユニットが挿入された第一の剪断減粘性チャンバー(25mmフィルターホルダー、Millipore(ii))を通過した。それから、ペプチド溶液は、ペプチド溶液を滅菌するため、またはペプチド溶液から微粒子を除去するために濾過膜が挿入された第二の濾過チャンバー(25mmフィルターホルダー、Millipore(iii))へ通った。濾過された溶液は、アウトプット用のボトル(iv)内に回収された。高圧ディスペンサーを分注シリンジ(v)に接続した。高圧窒素ガスを高圧ディスペンサー(vii)に接続した。
【
図14】2.5%のKLD12溶液および1.5%のIEIK13溶液に剪断応力を適用した後の、粘度の目視観測を示す。上の列は、2.5%のKLDの写真を含む。下の列は、1.5%のIEIK13の写真を含む。最も左のカラム内の溶液はバイアルの上部に留まる。最も右のカラム内の溶液(剪断応力を適用後)は粘度が低く、ほとんどの物質がバイアルの底に存在する。
【
図15】
図15A、15B、15C、および15Dは、粘性ペプチド溶液(例えばRADA16、KLD12、およびIEIK13)を濾過するための、材料およびデバイス(マイクロ-またはナノ-穴のスクリーン)を示す。
図15A、15Bおよび15Cは、
図13に示されるデバイスで用いられ得る例示的な剪断減粘性ユニット、マイクロ-穴のスクリーンの特性を示す。穴は、レーザー穴あけ技術により作った。そのようなスクリーンは、第二のチャンバー内の膜を通した実際の濾過の前にペプチド溶液の粘度を低下させるために、第一のチャンバー内に挿入し得る。
図15Dは、マイクロ-またはナノ-穴のスクリーンを用いて2.5%のKLD12に剪断応力を適用した後の、粘度の目視観測を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[定義]
本明細書において用いられる用語「薬剤」は、例えば、ポリペプチド、核酸、糖類、脂質、小分子、金属、またはそれらの組み合わせを含む、任意の化学クラスの化合物または物質を指し得る。一部の実施態様では、薬剤は、天然に見られ、および/または天然から得られるという点で、天然物であり、または含む。一部の実施態様では、薬剤は、人の手の動作を通して設計され、改変され、および/または生産され、および/または、天然に見られないという点で、人工である1つまたは複数の物質であり、または含む。一部の実施態様では、薬剤は、分離されまたは純粋な形態で使用され得て;一部の実施態様では、薬剤は、粗製形態で使用され得る。一部の実施態様では、潜在的な薬剤は、コレクションまたはライブラリーとして提供され、例えば、スクリーニングしてそれらの中の活性の薬剤が同定または特徴付けられ得る。本発明により使用され得る薬剤の一部の特定の実施態様は、小分子、抗体、抗体フラグメント、アプタマー、核酸(例えば、siRNA、shRNA、DNA/RNAハイブリッド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム)、ペプチド、ペプチド模倣物などを含む。一部の実施態様では、薬剤は、ポリマーであり、または含む。一部の実施態様では、薬剤はポリマーではなく、および/または、いかなるポリマーも実質的に存在しない。一部の実施態様では、薬剤は、少なくとも1つのポリマー部分を含む。一部の実施態様では、薬剤は、いかなるポリマー部分もなく、または実質的に存在しない。
【0026】
本明細書において用いられる用語「アミノ酸」は、その最も広い意味において、例えば1つまたは複数のペプチド結合の形成を通してポリペプチド鎖に取り込むことのできる、任意の化合物および/または物質を指す。一部の実施態様では、アミノ酸は、一般構造H2N-C(H)(R)-COOHを有する。一部の実施態様では、アミノ酸は天然起源のアミノ酸である。一部の実施態様では、アミノ酸は合成アミノ酸であり;一部の実施態様では、アミノ酸はD-アミノ酸であり;一部の実施態様では、アミノ酸はL-アミノ酸である。「標準アミノ酸」は、天然起源ペプチドに一般に見られる任意の20の標準的なL-アミノ酸を指す。「非標準アミノ酸」は、合成的に調製されるか、または天然起源から得られるかにかかわらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。一部の実施態様では、ポリペプチド内のアミノ酸(カルボキシ-および/またはアミノ-末端アミノ酸を含む)は、上記の一般構造と比較して構造上の改変を含んでよい。例えば、一部の実施態様では、アミノ酸は、一般構造と比較して、メチル化、アミド化、アセチル化、および/または置換により改変されてよい。一部の実施態様では、そのような改変は、それ以外では同一の改変されていないアミノ酸を含むものと比較して、例えば、改変されたアミノ酸を含むポリペプチドの循環半減期を変更し得る。一部の実施態様では、そのような改変は、それ以外では同一の改変されていないアミノ酸を含むものと比較して、改変されたアミノ酸を含むポリペプチドの関連のある活性を著しく変更しない。文脈から明らかであるように、一部の実施態様では、用語「アミノ酸」は、フリーのアミノ酸を指すために用いられ;一部の実施態様では、それは、ポリペプチドのアミノ酸残基を指すために用いられる。
【0027】
本明細書において用いられる用語「およそ」または「約」は、1つまたは複数の目的の値に適用されて、記載された参照の値と似た値を指す。特定の実施態様では、用語「およそ」または「約」は、別段の記載がされ、または文脈からそれ以外が明らかでない限り、記載された参照の値の、いずれかの方向に(よりも大きい、または、よりも小さい)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満の範囲内に入る値の範囲を指す(そのような数字が、あり得る値の100%を超える場合を除く)。
【0028】
2つの事象または物質は、その用語が本明細書において用いられる場合、一方の存在、レベルおよび/または形態が、他方のものと相関する場合に、互いに「関係がある」。例えば、特定物質(例えば、ポリペプチド、遺伝子シグネチャ、代謝物など)は、その存在、レベルおよび/または形態が、(例えば、関連のある集団にわたって)疾患、障害、または状態の発生率および/または感受性と相関する場合に、特定の疾患、障害、または状態と関係があると考えられる。一部の実施態様では、2以上の物質は、それらが、互いに物理的に近接して存在および/または留まるように、直接的または間接的に相互作用する場合に、互いに物理的に「関係がある」。一部の実施態様では、互いに物理的に関係がある2以上の物質は、互いに共有結合していて;一部の実施態様では、互いに物理的に関係がある2以上の物質は、互いに共有結合していないが、例えば水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁気作用、およびそれらの組み合わせにより、非共有的に関係がある。
【0029】
用語「同等」は、本明細書において、得られた結果または観察された現象の比較を可能にするのに十分に互いに似た2つの(またはそれよりも多い)セットの状態、状況、個体または集団を記載するために用いられる。一部の実施態様では、同等のセットの状態、状況、個体、または集団は、複数の実質的に同一の特性および1または少数の異なる特性により、特徴付けられる。当業者は、状況、個体、または集団のセットは、十分な数およびタイプの実質的に同一の特性により特徴付けられる場合に、互いに同等であると理解し、異なるセットの状況、個体、または集団の下またはそこで得られた結果または観察された現象の違いは、異なるこれらの特性における多様性に起因し、または兆候であるという合理的な結論を正当化する。当業者は、本明細書で用いられる相対的な言語(例えば、増強した、活性化された、低下した、阻害された、など)は、典型的に、同等の条件下で行なわれた比較を指すことを理解するであろう。)
【0030】
本明細書に記載の特定の方法論は、「決定」するステップを含む。本明細書を読んだ当業者は、そのような「決定」するステップは、本明細書において明示的に言及される特定の技術などを含む、当業者に利用可能な任意の様々な技術の使用を介して利用または達成することができることを理解するであろう。一部の実施態様では、決定するステップは、物理的サンプルの操作を含む。一部の実施態様では、決定するステップは、例えば、関連のある分析を行なうために適用されるコンピューターまたは他の処理装置を利用する、データまたは情報の考察および/または操作を含む。一部の実施態様では、決定するステップは、関連のある情報および/または物質をソースから受け取るステップを含む。一部の実施態様では、決定するステップは、サンプルまたは物質の1つまたは複数の特性を、同等の参照と比較するステップを含む。
【0031】
本明細書において用いられる用語「ゲル」は、レオロジー特性が、溶液、固体などから区別される粘弾性物質を指す。一部の実施態様では、組成物は、その貯蔵弾性率(G’)がその弾性率(G’’)よりも大きい場合に、ゲルであると考えられる。一部の実施態様では、組成物は、溶液中に化学的または物理的な架橋ネットワーク(粘性溶液中の絡まった分子から区別される)が存在する場合に、ゲルであると考えられる。
【0032】
本明細書において用いられる用語「インビトロ」は、多細胞生物内ではなく、例えば、試験チューブまたは反応槽中、細胞培養中などの人工的環境中で生じる事象を指す。
【0033】
本明細書において用いられる用語「インビボ」は、ヒトおよび非ヒト動物のような多細胞生物内で生じる事象を指す。細胞に基づく系の文脈において、その用語は、(例えば、インビトロ系とは逆に)生細胞内で生じる事象を指すために用いられ得る。
【0034】
本明細書において用いられる用語「ペプチド」は、典型的に相対的に短い、例えば、約100個未満のアミノ酸、約50個未満のアミノ酸、20個未満のアミノ酸、または10個未満のアミノ酸の長さを有するポリペプチドを指す。
【0035】
本明細書において用いられる用語「ポリペプチド」は、アミノ酸の任意のポリマー鎖を指す。一部の実施態様では、ポリペプチドは、天然に生じるアミノ酸配列を有する。一部の実施態様では、ポリペプチドは、天然に生じないアミノ酸配列を有する。一部の実施態様では、ポリペプチドは、人の手の動作を通じて設計および/または生産されたという点で改変されたアミノ酸配列を有する。一部の実施態様では、ポリペプチドは、天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸、または両方を含んでよく、またはからなってよい。一部の実施態様では、ポリペプチドは、天然のアミノ酸のみ、または非天然のアミノ酸のみを含んでよく、またはからなってよい。一部の実施態様では、ポリペプチドは、D-アミノ酸、L-アミノ酸、または両方を含んでよい。一部の実施態様では、ポリペプチドは、D-アミノ酸のみを含んでよい。一部の実施態様では、ポリペプチドは、L-アミノ酸のみを含んでよい。一部の実施態様では、ポリペプチドは、例えば、ポリペプチドのN-末端、ポリペプチドのC-末端、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、1つまたは複数のアミノ酸側鎖に修飾または付加された、1つまたは複数のペンダント基または他の修飾を含んでよい。一部の実施態様では、そのようなペンダント基または修飾は、アセチル化、アミド化、脂質化、メチル化、ペグ化などからなる群より選択されてよく、それらの組み合わせを含む。一部の実施態様では、ポリペプチドは環状であってよく、および/または、環状部分を含んでよい。一部の実施態様では、ポリペプチドは環状ではなく、および/または、いかなる環状部分も含まない。一部の実施態様では、ポリペプチドは直鎖である。一部の実施態様では、ポリペプチドは、ステープルポリペプチドであってよく、または含んでよい。一部の実施態様では、用語「ポリペプチド」は、参照ポリペプチドの名称、活性、または構造に付け加えられ得て;そのような場合は、関連のある活性または構造を共有するポリペプチドを指すために本明細書において用いられ、したがって、ポリペプチドの同一のクラスまたはファミリーのメンバーであると考えることができる。そのようなクラスそれぞれに関して、本明細書は、アミノ酸配列および/または機能が公知であるクラス内の例示的なポリペプチドを提供し、および/または、当業者は知っていて;一部の実施態様では、そのような例示的なポリペプチドは、ポリペプチドクラスまたはファミリーに関する参照ポリペプチドである。一部の実施態様では、ポリペプチドクラスまたはファミリーのメンバーは、クラスの参照ポリペプチドと;一部の実施態様では、クラス内の全てのポリペプチドと)、有意な配列相同性または同一性を示し、共通の配列モチーフ(例えば、特徴的な配列因子)を共有し、および/または、(一部の実施態様では同等のレベル、または所定の範囲内で)共通の活性を共有する。例えば、一部の実施態様では、メンバーポリペプチドは、少なくとも約30~40%、および、約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上よりも高いことが多い、参照ポリペプチドとの配列相同性または同一性の全体的な度合を示し、および/または、90%または実に95%、96%、97%、98%、または99%よりも高いことが多い、非常に高い配列同一性を示す少なくとも1つの領域(例えば、一部の実施態様では、特徴的な配列因子であり得る、または含み得る、保存領域)を含む。そのような保存領域は、通常、少なくとも3~4個、20個までであることが多い、またはそれよりも多い、アミノ酸を含み;一部の実施態様では、保存領域は、少なくとも1つの一続きの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個またはそれよりも多い連続アミノ酸を含む。一部の実施態様では、有用なポリペプチドは、親ポリペプチドのフラグメントを含んでよく、またはからなってよい。一部の実施態様では、有用なポリペプチドは、複数のフラグメントを含んでよく、またはからなってよく、そのそれぞれは、目的のポリペプチドがその親ポリペプチドの誘導体であるように、目的のポリペプチド内に見られるのとは互いに対して異なる空間的配置で同一の親ポリペプチド内に見られる(例えば、親内で直接結合しているフラグメントは、目的のポリペプチド内で空間的に離れていてよく、または逆も同様であり、および/または、フラグメントは、親内とは異なる順番で目的のポリペプチド内に存在してよい)。
【0036】
本明細書において用いられる用語「参照」は、それに対して比較が行われる標準またはコントロールを記載する。例えば、一部の実施態様では、目的の薬剤、動物、個体、集団、サンプル、配列または値は、参照またはコントロールの薬剤、動物、個体、集団、サンプル、配列または値と比較される。一部の実施態様では、参照またはコントロールは、目的の試験または決定と実質的に同時に、試験および/または決定される。一部の実施態様では、参照またはコントロールは、歴史的な参照またはコントロールであり、場合により、有形的表現媒体で具体化される。典型的に、当業者により理解されるように、参照またはコントロールは、評価中のものと同等の条件または状況下で決定され、または特徴付けられる。当業者は、十分な類似性が存在する場合に、特定のあり得る参照またはコントロールへの依存および/または比較を正当化することを理解するであろう。
【0037】
[特定の実施態様の詳細な説明]
本発明は、ペプチド組成物の滅菌のための技術を提供する。一部の実施態様では、開示される方法は、高い粘度および/または剛性を有するペプチド溶液に特に適している。一部の実施態様では、本開示は、オートクレーブ処理により滅菌され得る特定のペプチド溶液を定義する。一部の実施態様では、本開示は、それらのレオロジー特性を変更するように処理されない限り、および処理されるまで、濾過に適し得ない特定のペプチド溶液を定義する。一部の実施態様では、本開示は、ペプチド溶液の粘度および/または剛性を、濾過を可能にするのに十分に一時的に低下させ得る技術を提供する。一部の実施態様では、本開示は、特定のペプチド溶液の操作、処理、および/または濾過を、例えばそのレオロジー特性を改変する高剪断応力を適用することにより、促進する技術を教示する。
【0038】
ペプチドおよびペプチド組成物
1つまたは複数の実施態様によれば、本開示が教示するペプチド組成物は、約6~約200個のアミノ酸残基を有する両親媒性ペプチドの組成物であり得る。特定の実施態様では、関連のあるペプチドは、少なくとも約7個のアミノ酸の長さを有してよい。特定の実施態様では、ペプチドは、約7~約17個の間のアミノ酸の長さを有してよい。特定の実施態様では、ペプチドは、少なくとも8個のアミノ酸、少なくとも約12個のアミノ酸、または少なくとも約16個のアミノ酸の長さを有してよい。
【0039】
一部の実施態様では、当分野で理解されるように、両親媒性ポリペプチドは、その配列が親水性アミノ酸および疎水性アミノ酸の両方を含むものである。一部の実施態様では、そのような親水性アミノ酸および疎水性アミノ酸は、ペプチドが、交互の親水性および疎水性アミノ酸のアミノ酸配列を有するように交互に結合し得る。一部の実施態様では、そのようなペプチドは、Arg-Ala-Asp-Ala(RADA)の繰り返しである、または含むアミノ酸配列を有し;一部の実施態様では、そのようなペプチドは、Lys-Leu-Asp(KLD)の繰り返しである、または含むアミノ酸配列を有し;一部の実施態様では、そのようなペプチドは、Ile-Glu-Ile-Lys(IEIK)の繰り返しである、または含むアミノ酸配列を有する。
【0040】
一部の実施態様では、本開示による使用のためのペプチドは、一般に、特定の条件下の水溶液中で、自己組織化し得て、および/または、βシート構造を示し得る。
【0041】
一部の実施態様では、本開示による使用のためのペプチドは、PuraMatrix(登録商標)として知られる市販の商品に見られるアミノ酸配列を有し、すなわち、アミノ酸配列Arg-Ala-Asp-Ala-Arg-Ala-Asp-Ala-Arg-Ala-Asp-Ala-Arg-Ala-Asp-Ala(すなわち、RADA16、aka[RADA]4;配列番号1)を有する。一部の実施態様では、本開示による使用のためのペプチドは、アミノ酸配列:Lys-Leu-Asp-Leu-Lys-Leu-Asp-Leu-Lys-Leu-Asp-Leu(すなわち、KLDL12、aka[KLDL]3、aka KLD12;配列番号2)を有する。本開示による使用のためのペプチドは、アミノ酸配列:Ile-Glu-Ile-Lys-Ile-Glu-Ile-Lys-Ile-Glu-Ile-Lys-Ile(すなわち、IEIK13、aka(IEIK)3I;配列番号3)を有する。
【0042】
一部の実施態様では、本開示が関連し得るペプチド組成物は、特定のレオロジー特性により特徴付けられるものである。一部の実施態様では、関連のあるレオロジー特性は、損失弾性率、剛性、レオロジー復元時間、貯蔵弾性率、粘度、降状応力などであり得て、または含み得る。一部の実施態様では、レオロジー特性は測定を介して評価され;一部の実施態様では、1つまたは複数のレオロジー特性は、目視観測を介して評価され得る。
【0043】
特定の実施態様では、貯蔵弾性率および剛性は、正の相関を有し;一般に、当業者は、より高い貯蔵弾性率は、より高い剛性と相関することを理解する。
【0044】
一部の実施態様では、高粘度ペプチド組成物は、1rad/secの振動数および1Paの振動応力で、約300~約5,000Paの範囲内の貯蔵弾性率により特徴付けられる。
【0045】
一部の実施態様では、本発明による使用のためのペプチド組成物は、約0.01%~約10%の範囲内のペプチド濃度を有する。
【0046】
一部の実施態様では、本明細書に記載の方法論の1つまたは複数が適用されるペプチド組成物は、商業規模容量である。
【0047】
一部の実施態様では、本明細書に記載の方法論の1つまたは複数が適用されるペプチド組成物は、一定期間保管されているものである。一部の実施態様では、ペプチド組成物は、圧力容器中に保管されている。
【0048】
一部の実施態様では、本明細書に記載の方法論の1つまたは複数が適用されるペプチド組成物は、それから、梱包前に、例えば貯蔵容器中に保管される。
【0049】
特性の改善
本開示は、特定のペプチド組成物(例えば、特に、特定の自己組織化ペプチドおよび/または高ペプチド濃度の、特定の組成物)の調製および/または操作は、例えば高い粘度および/または剛性と関連する困難性により、複雑になっていることを認識する。本開示は、特に、特定のペプチド組成物が、濾過(具体的には滅菌フィルターを介した濾過)に適していないことを示す。
【0050】
本開示はさらに、濾過チャレンジは、そのようなペプチド組成物の滅菌を複雑化または不可能にし得ることを認識する。本開示は、特定のペプチド組成物の濾過を可能にする、および/または、他の方法で滅菌を可能にする、技術を提供する。
【0051】
オートクレーブ処理
オートクレーブ処理は、物質を121℃の高圧飽和蒸気に供するステップを伴う、従来の滅菌方法である。当分野において、オートクレーブ処理に伴うような高熱の適用は、ペプチドを分解し得ることが一般に理解される。
【0052】
本開示は、驚くべきことに、特定のペプチド組成物が、熱処理(具体鉄器にはオートクレーブ処理)に安定であることを示す。とりわけ、本開示は、そのようなペプチド組成物が、オートクレーブ処理により滅菌され得ることを示す。一部の実施態様では、そのような組成物は、約121℃で約25分間の熱処理により、滅菌され得る。
【0053】
一部の実施態様では、熱処理、および/またはオートクレーブ処理に供され得るペプチド組成物は、IEIK13組成物である。一部のそのような実施態様では、IEIK13組成物は、約0.01%~約10%の範囲内の濃度である。
【0054】
一部の実施態様では、熱処理および/またはオートクレーブ処理に供され得るペプチド組成物は、KLD12組成物である。しかしながら、一部の実施態様では、KLD12組成物は、本発明によるオートクレーブ処理に供されない。
【0055】
一部の実施態様では、RADA16組成物は、本発明によるオートクレーブ処理に供されない。
【0056】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望まずに、本開示は、オートクレーブ処理のような熱処理に対する特定のIEIK13組成物の安定性は、組成物中のアスパラギン酸(Asp、D)の不存在に少なくとも部分的に起因し得るということを提案する(一方で、RADA16およびKLD12はアスパラギン酸を有する)。
【0057】
一部の実施態様では、本発明によるオートクレーブ処理のような熱処理に適切に供することのできるペプチド組成物は、そのような処理に曝されたときの分解に対する耐性により、および/または、そのような処置に供したときのレオロジー特性(例えば、粘度および/または剛性)の安定性により、特徴付けられる。本開示によれば、目的のペプチド組成物は、オートクレーブ処理のような熱処理に曝され得て、および、組成物の1つまたは複数の特性(例えば、ペプチド分解および/または1つまたは複数のレオロジー特性)を、オートクレーブ処理を介したそのような組成物の滅菌の妥当性が決定され得るように、例えば処理の前後に評価することができる(例えば実施例2を参照)。
【0058】
レオロジー特性の変更
本開示は、1つまたは複数のレオロジー特性を変更する(例えば、粘度および/または剛性を変更する)処理への曝露を介して、特定のペプチド組成物を濾過に適するようにさせることができることを示す。
【0059】
一部の特定の実施態様では、レオロジー特性の変更は、剪断応力に対する曝露により達成される。
【0060】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望まずに、本開示は、本明細書に記載のペプチド組成物を高剪断応力に供するステップは、自己組織化構造を破壊し得ることを提案する。本開示はさらに、復元時間は、そのような構造が再形成するのに要する時間を表わし得ることを提案する。
【0061】
一部の実施態様では、ペプチド溶液に適用される剪断応力は、少なくとも約20Paであり得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液に適用される剪断応力は、少なくとも約30Paであり得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液に適用される剪断応力は、少なくとも約40Paであり得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液に適用される剪断応力は、少なくとも約50Paであり得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液に適用される剪断応力は、少なくとも約60Paであり得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液に適用される剪断応力は、少なくとも約60Paであり得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液に適用される剪断応力は、少なくとも約80Paであり得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液に適用される剪断応力は、少なくとも約90Paであり得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液に適用される剪断応力は、少なくとも約100Paであり得る。一部の実施態様では、例えば、上記の降状応力(RADA16 2.5%、IEIK13 1.5%および2.5%およびKLD12 2.5%)を考慮して、剪断応力の量は、少なくとも約30~100Paであり得る。
【0062】
一部の実施態様では、ペプチド溶液の粘度は、剪断応力を著しく低下させ得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液の粘度は、剪断応力を少なくとも10%低下させ得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液の粘度は、剪断応力を少なくとも30%低下させ得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液の粘度は、剪断応力を少なくとも50%低下させ得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液の粘度は、剪断応力を少なくとも70%低下させ得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液の粘度は、剪断応力を少なくとも90%低下させ得る。
【0063】
一部の実施態様では、レオロジー特性の変更は、一時的である。一部の実施態様では、ペプチド組成物は、レオロジー復元特性により特徴付けられる。例えば、一部の実施態様では、そのような組成物は、それらのレオロジー特性の1つまたは複数が、約1分~約48時間の範囲内の期間内で復元するという点で特徴付けられる。
【0064】
一部の実施態様では、1つまたは複数のレオロジー特性が、その最初の値の少なくとも20%のレベルまで戻ったときに、レオロジー復元が達成されると考えられる。
【0065】
一部の実施態様では、剪断応力の適用の際に1つまたは複数のレオロジー特性に見られる変化が少なくとも30%反転したときに、レオロジー復元が達成されると考えられる。
【0066】
一部の実施態様では、ペプチド組成物は、剪断応力の適用後にそれらの貯蔵弾性率を復元し得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液は、それらの元の貯蔵弾性率の約0.1~100%を、1分で復元し得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液は、それらの元の貯蔵弾性率の約0.1~10%を、1分で復元し得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液は、それらの元の貯蔵弾性率の約20~100%を、20分で復元し得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液は、それらの元の貯蔵弾性率の約20~60%を、20分で復元し得る。
【0067】
一部の実施態様では、ペプチド溶液は、それらの粘度を、濾過後に経時的に復元し得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液は、それらの元の粘度の約0.1~30%を、1分で復元し得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液は、それらの元の粘度の約0.1~100%を、1分で復元し得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液は、それらの元の粘度の約20~100%を、20分で復元し得る。一部の実施態様では、ペプチド溶液は、それらの元の粘度の約20~60%を、20分で復元し得る。
【0068】
本開示は、具体的には、剪断応力の適用の際(例えば、具体的には、特定の構造のニードルなどの通過の際)に、特定のペプチド組成物のレオロジー特性の適切な調節を実証する(実施例4を参照)。当該実施例で示される結果は、
図10(RADA16)、
図11(KLD12)、および
図12(IEIK13)に示すように、注入後1分から貯蔵弾性率の対数増加を示す。
【0069】
とりわけ、本開示は、1つまたは複数の特定のペプチド組成物が、組成物(単数または複数)が濾過(一部の実施態様では滅菌濾過)に適するようになるように、それらのレオロジー特性の1つまたは複数を適切なレベルに調節する(例えば、粘度が低下する)ように、高剪断応力に供される方法論を提供し、組成物(単数または複数)は、レオロジー特性が調節されたままの間(例えば、そのような特性(単数または複数)の有意または完全な復元が生じる前)に濾過が生じるように選択された剪断応力に供した後の期間に、そのような濾過に供される。
【0070】
一般に、本明細書に記載のように、剪断応力は、剪断減粘性ユニットに対するペプチド組成物の適用(および/またはペプチド組成物の通過)により、適用され得る。一部の実施態様では、剪断減粘性ユニットは、ニードル、膜、および/またはスクリーンであり、または含む。一部の実施態様では、複数の個々の剪断減粘性ユニットは、例えばハイスループットの濾過が達成され得るように使用される。
【0071】
一部の実施態様では、本発明は、商業規模でペプチド組成物の濾過を達成することができるデバイスおよび方法論を提供する。
【0072】
剪断減粘性ユニットとしてのニードル
一部の非限定的な実施態様では、剪断応力は、1つまたは複数のニードルを通した注入により適用され得る。したがって、一部の実施態様では、1つまたは複数のニードルは、剪断減粘性ユニットとして用いられ得る。
【0073】
一部の実施態様では、ニードルは、少なくとも約1mmの長さであり得る。一部の実施態様では、ニードルは、少なくとも約2mmの長さであり得る。一部の実施態様では、ニードルは、少なくとも約5mmの長さであり得る。一部の実施態様では、ニードルは、少なくとも約10mmの長さであり得る。一部の実施態様では、ニードルは、少なくとも約15mmの長さであり得る。一部の実施態様では、ニードルは、少なくとも約20mmの長さであり得る。一部の実施態様では、ニードルは、少なくとも約30mmの長さであり得る。一部の実施態様では、ニードルは、少なくとも約40mmの長さであり得る。一部の実施態様では、ニードルは、少なくとも約50mmの長さであり得る。
【0074】
一部の実施態様では、ニードルは、約20~約34の範囲内のゲージを有し得る。一部の実施態様では、ニードルは、約25~約34の範囲内のゲージを有し得る。一部の実施態様では、ニードルは、約27~約34のゲージを有し得る。
【0075】
図5は、1つまたは複数の非限定的な実施態様による滅菌デバイスの1つの非限定的な実施態様を開示する。示されるように、ペプチド組成物(例えば、自己組織化ペプチドの粘性溶液)(左)は、ニードルを備える第一のシリンジに移され、第二のシリンジ(右)に注入され、それから濾過され得る。
【0076】
剪断減粘性ユニットとしての膜
一部の実施態様では、本明細書に記載されるペプチド組成物に対して剪断応力を適用するために使用される剪断減粘性ユニットは、マイクロ-またはナノ-孔により特徴付けられるデバイスまたは物質であり得る。
図13は、本発明の1つまたは複数の非限定的な実施態様による滅菌デバイスの1つの非限定的な実施態様を示す。示されるように、ペプチド溶液(例えば、自己組織化ペプチドの粘性溶液)は、分注シリンジ(または圧力容器)へ移され、剪断応力のための孔を有する第一のチャンバーに送達され、それから、第二のチャンバー内で濾過され得る。当業者により理解されるように、膜の直径サイズは、ペプチド溶液の量に応じて変更し得る。
【0077】
一部の実施態様では、剪断減粘性ユニットの孔サイズは、約0.45μm~120μmであり得る。一部の実施態様では、剪断減粘性ユニットの孔サイズは、約1μm~100μmであり得る。一部の実施態様では、剪断減粘性ユニットの孔サイズは、約3μm~80μmであり得る。一部の実施態様では、剪断減粘性ユニットの孔サイズは、約4μm~50μmであり得る。
【0078】
剪断減粘性ユニットとしてのスクリーン
一部の実施態様では、剪断減粘性ユニットは、マイクロ-またはナノ-穴を有し得る。一部の実施態様では、穴は、一部の実施態様では厚さが約10μm~10mmであり得るプレート上に、パターン形成またはドリル穴あけされてよい。
図15は、本開示の1つまたは複数の非限定的な実施態様による滅菌デバイスの1つの非限定的な実施態様を示す。剪断減粘性ユニットは、
図13に示される第一の濾過チャンバー内に挿入され得る。
【0079】
一部の実施態様では、本明細書に記載の剪断減粘性ユニットの一実施態様での穴は、およそ、約0.5μm~200μmであり得る範囲内の最大寸法であり得る。一部の実施態様では、そのような寸法は、約0.5μm~100μmの範囲内であり得る。一部の実施態様では、そのような寸法は、約0.5μm~80μmの範囲内であり得る。一部の実施態様では、一部の実施態様では、そのような寸法は、約0.5μm~50μmの範囲内であり得る。
【0080】
一部の実施態様では、本実施態様の剪断減粘性ユニットは、約5μm~約10mmの範囲内の穴の間のピッチを有し得る。
【0081】
一部の実施態様では、剪断減粘性ユニットは、ステンレススチール、タングステン、チタン、同様の金属、シリコン、セラミックまたはプラスチック材料、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される材料で全体的または部分的に作られ得る。
【0082】
適用
一部の実施態様では、本明細書に記載の技術が適用されるペプチド組成物は、それから、(例えば、滅菌された組成物に、特定の有用性があるように、)生物学的な細胞、組織、または生物に関わる1つまたは複数の適用において使用される。
【0083】
当技術分野で知られているように、特定のペプチド組成物(例えば、自己組織化ペプチドの特定の組成物)は、インビボおよび/またはインビトロでの細胞増殖のためのマトリックスとして、および/または、空隙充填剤、止血剤、液体移動のバリア、創傷治癒剤などとして、特に有用であることが示されている。一部の実施態様では、そのような組成物は、1つまたは複数の望ましい特性(例えば、孔および/またはチャネルのサイズ、強度、変形能、ゲル形成の可逆性、透明性など)を有したペプチドヒドロゲルを形成する。
【0084】
本開示を読む当業者は、ゲル組成物を含む(具体的には、可逆的にゲル化する組成物を含む)そのようなペプチド組成物が用いられる様々なコンテキストにおける、その有用性を直ちに理解するであろう。特定の興味は、インビボ適用である(例えば、外科的適用または他の適用、具体的には、ニードルのようなカニューレ型デバイスを介した送達を可能にし、または送達による恩恵を受けるものであり、それを通して組成物が投与または適用され得る)。
【実施例】
【0085】
実施例1:高粘性ペプチド溶液の濾過
本実施例は、とりわけ、様々なペプチド組成物の(すなわち、具体的には、自己組織化ペプチドの組成物の)レオロジー特性を説明し、および、異なるペプチドおよび/または異なる濃度の同一ペプチドに関する、粘度、貯蔵弾性率(例えば、剛性)、損失弾性率、および降状応力などのパラメーターの有意な可変性を示す。また、本実施例は、特定のこれらの溶液は、濾過に適しにくいことも示す。具体的には、本実施例は、そのようなペプチドの高粘度溶液は、濾過技術に対するチャレンジを表わすことを示す。レオロジー特性を、様々なペプチド溶液に関して決定した。具体的には、RADA16、IEIK13、およびKLD12の溶液を、以下の表1に示される濃度で調製した。見ることができるように、一般に、より高い濃度の溶液は、より高い最大粘度を示した。さらに、異なる配列のペプチドは、同一濃度の溶液において、異なる最大粘度を示した。例えば、2%のKLD12、2.5%のKLD12、および1.5%のIEIK13溶液は、それぞれ、2.5%のRADA16よりも2倍、3.4倍、および3.2倍高い最大粘度を有する。
【0086】
【0087】
表1に挙げた各ペプチド溶液を、25mmセルロースアセテート膜を備える0.2μmのNalgeneシリンジフィルターを通して濾過に供した。1%および1.5%のKLD12溶液(理解され得るように、相対的に低い濃度、粘度および/または剛性により特徴付けられる)は、フィルターをうまく通過した。対照的に、2%および2.5%のKLD12溶液および1.5%のIEIK13溶液(理解され得るように、相対的に高い濃度、粘度および/または剛性により特徴付けられる)は、フィルターをうまく通過することができず;その代わり、フィルターが破裂した。
【0088】
実施例2:ペプチド溶液のオートクレーブ処理
本実施例は、一部のペプチド組成物(すなわち、具体的には、本明細書に記載の自己組織化ペプチドの組成物)が、驚くべきことに、熱処理に対して安定であることを示す。具体的には、本実施例は、特定のペプチド組成物が、121℃で25分間のオートクレーブ処理の適用の際でさえ、安定したモル質量を維持することを示す。したがって、本実施例は、そのような組成物が、高熱(例えば、オートクレーブ)技術の適用を通じてうまく滅菌され得ることを確立する。本実施例は同時に、しかしながら特定のペプチド組成物はそのような処理に対して安定でないことを示す。
【0089】
図1~
図3は、それぞれ、RADA16、IEKI13、およびKLD12の特定の組成物に関するオートクレーブ処理の結果を示す。
【0090】
オートクレーブ処理前のRADA16の測定モル質量は1712であった。それは、その計算モル質量と一致する。しかしながら、質量スペクトル分析は、RADA16がオートクレーブ処理中に分解されることを示し、それにより、この技術は、そのようなRADA16組成物の滅菌に用いることができないことが示された。
【0091】
オートクレーブ処理前のIEIK13の測定モル質量は1622であった。それも、その計算モル質量と一致する。質量スペクトル分析は、IEIK13がオートクレーブ処理後に分解しないことを示し、それにより、この技術は、そのようなIEIK13組成物の滅菌に有用に用いられ得ることが示された。
【0092】
オートクレーブ処理前のKLD12の測定モル質量は1467であり、その計算モル質量と一致する。KLD12は、オートクレーブ処理中に部分的に分解した。KLD12はオートクレーブ処理中に分解されたので、オートクレーブ処理は、そのようなKLD12組成物の滅菌のための好ましい技術でないことが決定され;滅菌のための従来の濾過手法が、様々な濃度のペプチドでKLD12について行なわれた。
【0093】
特定のペプチド組成物のレオロジー特性を、オートクレーブの前後に決定した。データを
図4に示す。見ることができるように、オートクレーブしたIEIK13は、驚くべきことに、オートクレーブしていないIEIK13とほぼ同一のレオロジー強度を示し、一方で、RADA16は、レオロジー強度の劇的な低下を示した。
【0094】
オートクレーブ処理は、本明細書に記載のIEIK13組成物の滅菌に用いられ得るが、RADA16組成物に関しては避けるべきである。
【0095】
実施例3:剪断応力の適用による、ペプチド組成物のレオロジー特性
本実施例は、適用された剪断応力が、特定のペプチド溶液の粘度および/または剛性を低下させ得ることを示し、さらに、粘度および/または剛性のそのような低下は、そのような処理をしないと組成物が適さない様々および/または処理の技術(例えば濾過)に、組成物を適するようにさせることができることを示す。
【0096】
剪断流動試験
剪断流動試験を、20mmプレートを備えるレオメータ(DHR-1、TA Instruments)を用いて、ペプチド溶液に対して行なった。結果を
図9(2.5%のRADA16溶液)および
図10(1.5%のIEIK13溶液)に示す。見ることができるように、2.5%のRADA16およびIEIK13の1.5%溶液の両方とも、典型的な剪断減粘性の特性を示した。すなわち、剪断速度が増加するにつれて、それらの粘度は劇的に低下した。剪断速度が増加するにつれて、剪断応力が直ちに増加し、それから、粘度がプラトーに達したときに、わずかに低下した。降状応力は、2.5%のRADA16溶液について約40Paであり、1.5%のIEIK13溶液について約60Paであった。
【0097】
粘度復元
RADA16およびIEIK13溶液の粘度復元時間を、高剪断応力の適用後に評価した。DHR-1レオメータ―(rheomether)(TA Instruments)を用いて、2.5%のRADA16および1.5%のIEIK13溶液の粘度変化を、サンプルに対して1000 1/secの剪断速度を1分間適用後に、0.005 1/secの剪断速度での流動試験により測定した。RADA16およびIEIK13溶液は、典型的なチキソトロピック挙動を示した。これは、それらの粘度がゆっくり回復したことを意味する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まずに、我々は、これらの溶液に関するレオロジー特性の復元時間は、溶液中での、ペプチド分子の構造(例えば、ナノ-ファイバー)への再組織化に基づき得ることを提案する。2.5%のRADA16および1.5%のIEIK13溶液の完全な再組織化時間は、約12~48時間であった。結果を
図11(2.5%のRADA16溶液)および
図12(1.5%のIEIK13溶液)に示す。
【0098】
貯蔵弾性率の復元
30ゲージニードルを通したペプチド組成物の注入後1分および20分の、元の貯蔵弾性率に戻る復元のパーセンテージを表2に挙げる。IEIK13(具体的には、2.5%のIEIK13溶液)の復元速度は、ペプチド溶液の中で最も速く、元の貯蔵弾性率に100%の復元を20分で示した。KLD12は、復元が試験されたものの中で最も遅く;20分で元の貯蔵弾性率に23%の復元しか示さなかった(2.5%に関して)。一部の非限定的な実施態様では、ニードルを通過(例えば注入)後に、元の弾性率に完全に復元するのに約12~48時間かかり得る。
【0099】
【0100】
RADA16およびIEIK13溶液に関して、30ゲージニードルを通してそれらを注入後に、レオロジー測定を行なった。結果は、注入後1分から貯蔵弾性率の対数増加を示した。結果を
図6(RADA16)、
図7(KLD12)、および
図8(IEIK13)に示す。
【0101】
実施例4:剪断減粘性ユニットとしてのニードル
本実施例は、剪断減粘性ユニットとしてニードルを用いた、ペプチド組成物(具体的には、本明細書に記載の自己組織化ペプチド)の濾過処理を記載する。具体的には、本実施例は、(例えば剪断減粘性ユニットの通過を介した)適切な剪断応力の適用は、例えば滅菌フィルターなどのフィルターをうまく通過することができるように、組成物のレオロジー特性を変更することができる(例えば、粘度および/または剛性などを低下させることができる)ことを示す)。
【0102】
図5は、本開示による滅菌デバイスの1つの非限定的な実施態様を示す。示されるように、デバイスは、組成物の滅菌を達成するために適切な孔サイズの膜フィルターを備える第二のシリンジをうまく通過するように、そのレオロジー特性を変更させるのに十分に剪断応力を組成物に適用する、第一のシリンジを備える。具体的には、示されるデバイスは、30ゲージニードル(0.3mm×25mm、二重のサイドベントを備えるEndoイリゲーションニードル、Transcodent,Germany)を備える第一のシリンジ(中央)、および、膜フィルター備える第二のシリンジ(右)を備える。粘性の2.5%のKLD12溶液(左)を第一のシリンジへ移し、それから、第二のシリンジ(右)に注入し、そしてそれから、膜フィルターを通して濾過した。この方法を用いて、2.5%のKLD12溶液はうまく濾過された。
【0103】
実施例5:ハイスループットの剪断減粘性ユニット
本実施例は、特定の剪断減粘性ユニットを記載する。操作原理は、上述の第一のニードルと同様である。具体的には、各剪断減粘性ユニットは、組成物が濾過(具体的には滅菌フィルターを通した濾過)に適するようになるように、適用されるペプチド組成物の1つまたは複数のレオロジー特性を調節するのに適切かつ十分な剪断応力を適用する。一部の実施態様では、複数のニードルまたは当量物を、剪断減粘性ユニットとして使用し得る。
【0104】
膜フィルター
本実施例は、剪断減粘性ユニットとして、膜フィルター(孔サイズ>0.45μm)を備える使用を示す。粘性の2.5%のKLD12または1.5%のIEIK13溶液は、分注シリンジ(または圧力容器)へ移され、剪断減粘性ユニット(例えば、0.45μm~120μmの範囲の孔サイズ)を備える第一のチャンバーに送達され、それから、第二のチャンバーにおいて濾過膜(例えば、孔サイズ:0.2μm)を通して濾過され得る。
【0105】
粘性ペプチド溶液の粘度変化に対する剪断減粘性ユニット内の孔サイズの効果を試験するために、2.5%のKLD12および1.5%のIEIK溶液を、選択された孔サイズを通過させ、それらの見かけ上の粘度変化を評価した。2.5%KLD溶液は、41μm、20μm、および5μmの孔サイズの剪断減粘性ユニットを通過した。溶液の粘度は、それを含む容器がひっくり返った場合に流れ落ちるのに十分に低下した。120μmの孔サイズの剪断減粘性ユニットを通過した2.5%のKLD溶液は、通過前の(pre-passage)2.5%のKLD組成物よりもわずかに低い粘性であったが、それらは非常に粘性を保ち、容器-転置試験において流れ落ちなかった。1.5%のIEIK13溶液の粘度は、5μmの孔サイズの膜を通過した場合、有意に低下した。結果を
図14に示す。
【0106】
1.0%のRADA16溶液を、剪断減粘性ユニットでの粘度低下について試験した(
図13に示す)。剪断減粘性およびチキソトロピック挙動を示す1.0%のRADA16溶液は、50psiの注入圧で剪断減粘性ユニットを通過した。溶液は、1.4~1.7mL/分のアウトプットを示した。溶液は、50psiの注入圧(すなわち、剪断減粘性ユニットに対する事前曝露なし)では、フィルター(0.2μm孔サイズ)を通過することができなかった。しかしながら、代表的なニュートン流体である水は、アウトプット流速が相対的に一貫していることを示した。結果を表3に示す。
【0107】
【0108】
上記に示されるように、2.5%のKLD12および1.5%のIEK13溶液は、25mmセルロースアセテート膜を備える0.2μmのNalgeneシリンジフィルターを通って濾過されることはできなかった。2.5%のRADA16は、通常、0.2μm膜を通した濾過に適さない。2.5%のRADA16、1.5%のIEIK13、および2.5%のKLD12溶液は、それぞれ、3.8、12.5、および11.4mL/分のアウトプットを示す100psiの注入圧で剪断減粘性ユニットに曝した後に、濾過することができた。剪断減粘性ユニットなしでは、溶液は濾過することができなかった。
図16に示す剪断減粘性ユニットは、簡単に濾過されない粘性ペプチド溶液の滅菌および濾過のために、うまく利用され得る。結果を表4に示す。
【0109】
【0110】
スクリーン
本実施例は、剪断減粘性ユニットとしてのマイクロ-および/またはナノ-穴を備えるスクリーンの、成功使用を示す。粘性の2.5%のKLD12または1.5%のIEIK13溶液は、分注シリンジ(またはチャンバー)に移され、マイクロ-および/またはナノ-穴を有する剪断減粘性ユニットを備える第一のチャンバーに注入され、それから、第二のチャンバー内の膜フィルター(孔サイズ:0.2μm)を通して濾過され得る。注入用シリンジの代わりに、高圧チャンバーを用いてペプチド組成物を送達してよい。膜サイズ(例えば、直径)および/または他の特性(例えば、孔サイズなど)は、それを通過するペプチド組成物の量に適合するように選択してよい。
【0111】
【配列表】