(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】形状プロファイル計測装置、及びシュリンク包装機
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
G01B11/24 K
(21)【出願番号】P 2021111402
(22)【出願日】2021-07-05
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】316007779
【氏名又は名称】ジック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】浴 辰也
(72)【発明者】
【氏名】池田 皇
(72)【発明者】
【氏名】大楠 祐司
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-121132(JP,A)
【文献】特公昭52-015031(JP,B1)
【文献】特開2018-79971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
B65B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列方向に並んだ複数の発光部を有し、各発光部が相互に略平行な計測光を出射するようにされた投光器と、
前記複数の発光部に対向して前記配列方向に並んだ複数の受光部を有し、各受光部が、前記複数の発光部のうちの対応する発光部から出射された前記計測光を受光し、受光した前記計測光の光強度を示す信号を出力するようにされた、受光器と、
計測対象物が前記複数の発光部と前記複数の受光部との間を通過するように、前記計測対象物を前記投光器及び前記受光器に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記計測対象物が前記複数の発光部と前記複数の受光部との間での異なる複数の移動方向位置にあるときに前記受光器の前記信号を取得し、取得した前記信号と前記複数の移動方向位置に関する情報とに基づいて、前記計測対象物の形状プロファイルを求める演算部と、
を備え、
前記演算部は、前記受光部が受光した前記計測光の光強度が計測前の初期強度に対して所定の閾値以下に低下したときに、前記計測光が伝搬する伝搬経路上に前記計測対象物が存在していると判断する
ようにされ、また前記形状プロファイルに基づいて、前記計測対象物をフィルムで包囲する際に必要となる前記フィルムの最小長さを求める演算を実行するようにされており、
前記演算部が、
前記形状プロファイルに所定の直線を近づけていったときに前記直線が最初に接触することになる前記形状プロファイル上の開始頂点を求める演算と、
前記形状プロファイル上の任意頂点に対して第1回転方向での隣接頂点を求める演算であって、前記任意頂点を通る直線を前記形状プロファイルの平面内で前記任意頂点を中心に第1回転方向に回転させていったときに前記直線が前記任意頂点以外で前記形状プロファイルに最初に接触することになる隣接頂点を求める演算と、
を実行するようにされ、
前記最小長さを求める演算が、
前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算を前記開始頂点に対して実行して隣接頂点を求め、求めた隣接頂点に対して前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算を実行して次の隣接頂点を求め、求めた隣接頂点が前記開始頂点と同一の点になるまで前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算を順次実行し、
前記開始頂点及び求めた各隣接頂点の間を順次結んで形成される折れ線の長さを前記最小長さとする、
ことを含む、形状プロファイル計測装置。
【請求項2】
所定の配列方向に並んだ複数の発光部を有し、各発光部が相互に略平行な計測光を出射するようにされた投光器と、
前記複数の発光部に対向して前記配列方向に並んだ複数の受光部を有し、各受光部が、前記複数の発光部のうちの対応する発光部から出射された前記計測光を受光し、受光した前記計測光の光強度を示す信号を出力するようにされた、受光器と、
計測対象物が前記複数の発光部と前記複数の受光部との間を通過するように、前記計測対象物を前記投光器及び前記受光器に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記計測対象物が前記複数の発光部と前記複数の受光部との間での異なる複数の移動方向位置にあるときに前記受光器の前記信号を取得し、取得した前記信号と前記複数の移動方向位置に関する情報とに基づいて、前記計測対象物の形状プロファイルを求める演算部と、
を備え、
前記演算部は、前記受光部が受光した前記計測光の光強度が計測前の初期強度に対して所定の閾値以下に低下したときに、前記計測光が伝搬する伝搬経路上に前記計測対象物が存在していると判断するようにされ、また前記形状プロファイルに基づいて、前記計測対象物をフィルムで包囲する際に必要となる前記フィルムの最小長さを求める演算を実行するようにされており、
前記演算部が、
前記形状プロファイルに所定の直線を近づけていったときに前記直線が最初に接触することになる前記形状プロファイル上の開始頂点を求める演算と、
前記形状プロファイル上の任意頂点に対して第1回転方向での隣接頂点を求める演算であって、前記任意頂点を通る直線を前記形状プロファイルの平面内で前記任意頂点を中心に第1回転方向に回転させていったときに前記直線が前記任意頂点以外で前記形状プロファイルに最初に接触することになる隣接頂点を求める演算と、
前記形状プロファイル上の任意頂点に対して第2回転方向での隣接頂点を求める演算であって、前記任意頂点を通る直線を前記形状プロファイルの平面内で前記任意頂点を中心に前記第1回転方向とは逆向きの第2回転方向に回転させていったときに前記直線が前記任意頂点以外で前記形状プロファイルに最初に接触することになる隣接頂点を求める演算と、
を実行するようにされ、
前記最小長さを求める演算が、
前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算を前記開始頂点に対して実行して第1回転方向側の隣接頂点を求め、求めた前記第1回転方向側の隣接頂点が前記形状プロファイルの一方の端点でない場合には前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算を、求めた前記隣接頂点に対して実行して第1回転方向側の次の隣接頂点を求め、求めた隣接頂点が前記一方の端点となるまで前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算を順次実行し、
前記第2回転方向での隣接頂点を求める演算を前記開始頂点に対して実行して第2回転方向側の隣接頂点を求め、求めた前記第2回転方向側の隣接頂点が前記形状プロファイルの他方の端点でない場合には前記第2回転方向での隣接頂点を求める演算を、求めた前記隣接頂点に対して実行して第2回転方向側の次の隣接頂点を求め、求めた隣接頂点が前記他方の端点となるまで前記第2回転方向での隣接頂点を求める演算を順次実行し、
前記開始頂点及び求めた各隣接頂点の間を順次結んで形成される折れ線の長さを前記最小長さとする、
ことを含む、形状プロファイル計測装置。
【請求項3】
所定の配列方向に並んだ複数の発光部を有し、各発光部が相互に略平行な計測光を出射するようにされた投光器と、
前記複数の発光部に対向して前記配列方向に並んだ複数の受光部を有し、各受光部が、前記複数の発光部のうちの対応する発光部から出射された前記計測光を受光し、受光した前記計測光の光強度を示す信号を出力するようにされた、受光器と、
計測対象物が前記複数の発光部と前記複数の受光部との間を通過するように、前記計測対象物を前記投光器及び前記受光器に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記計測対象物が前記複数の発光部と前記複数の受光部との間での異なる複数の移動方向位置にあるときに前記受光器の前記信号を取得し、取得した前記信号と前記複数の移動方向位置に関する情報とに基づいて、前記計測対象物の形状プロファイルを求める演算部と、
を備え、
前記演算部は、前記受光部が受光した前記計測光の光強度が計測前の初期強度に対して所定の閾値以下に低下したときに、前記計測光が伝搬する伝搬経路上に前記計測対象物が存在していると判断するようにされ、また前記形状プロファイルに基づいて、前記計測対象物をフィルムで包囲する際に必要となる前記フィルムの最小長さを求める演算を実行するようにされており、
前記演算部が、
前記形状プロファイルの一方の端点を求める演算と、
前記形状プロファイル上の任意頂点に対して第1回転方向での隣接頂点を求める演算であって、前記任意頂点を通る直線を前記形状プロファイルの平面内で前記任意頂点を中心に第1回転方向に回転させていったときに前記直線が前記任意頂点以外で前記形状プロファイルに最初に接触することになる隣接頂点を求める演算と、
を実行するようにされ、
前記最小長さを求める演算が、
前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算を前記一方の端点に対して実行して隣接頂点を求め、求めた前記隣接頂点に対して前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算を実行して次の隣接頂点を求め、求めた隣接頂点が前記形状プロファイルの他方の端点と同一の点になるまで前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算を順次実行し、
前記一方の端点及び求めた各隣接頂点の間を順次結んで形成される折れ線の長さを前記最小長さとする、
ことを含む、形状プロファイル計測装置。
【請求項4】
前記移動機構により搬送される計測対象物の移動量を計測するための移動量計測手段をさらに備え、
前記複数の移動方向位置に関する情報は、前記移動量計測手段によって計測された前記計測対象物の移動量である、請求項1
乃至3の何れか一項に記載の形状プロファイル計測装置。
【請求項5】
請求項
1乃至4のいずれか一項に記載の形状プロファイル計測装置と、
シュリンクフィルムを筒状にして前記計測対象物を前記シュリンクフィルムで包囲するようにするフィルム包囲装置と、
前記シュリンクフィルムを加熱して収縮させ、前記計測対象物を前記シュリンクフィルムで包装された状態とする加熱装置と、
を備え、
前記フィルム包囲装置により形成される筒状のシュリンクフィルムの周長が前記演算部により求められた前記最小長さに基づいて決定されるようにされた、シュリンク包装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的手段を利用して物体の形状プロファイルを計測する形状プロファイル計測装置、及びそのような形状プロファイル計測装置を備えるシュリンク包装機に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な形状の物体をシュリンクフィルムによって包装するシュリンク包装機が知られている。特にインターネット通信販売での商品出荷において、商品を台紙上に載せた状態で台紙ごと商品をシュリンク包装することが行なわれている(特許文献1)。シュリンク包装される商品の大きさや形状は種々様々であり、また複数の商品をまとめてシュリンク包装することもあるが、通常は1つのシュリンク包装機でこのような異なる大きさのシュリンク包装を行うようにしている。
【0003】
シュリンク包装をする際には、まず台紙や商品などの包装対象物を筒状にしたシュリンクフィルムで包囲し、次にシュリンクフィルムを加熱して収縮させる。包装対象物は、収縮したシュリンクフィルムによって包装されて保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように1つのシュリンク包装機で異なる大きさの物を包装する場合には、包装対象物を包装するシュリンクフィルムの大きさは、想定される最大の物を包囲できる大きさに設定する必要がある。しかしながら、大きなシュリンクフィルムで小さな物をシュリンク包装すると、シュリンクフィルムの収縮量が過度に大きくなって多くの皺が生じて見た目が悪くなったり、場合によってはフィルムの収縮量が足りずに物体を適切に保持できなかったりする虞がある。また、シュリンクフィルムを必要以上に使用することになり、材料の無駄が生じることにもなる。このような状況において、シュリンク包装される物体の大きさを事前に検知することが望まれている。また、シュリンク包装される物体には、例えば部分的に又は全体的に透明な材質で形成されたものや、光を吸収してほとんど反射しない物体なども含まれうるが、このような物であっても大きさを正確に計測できるようにすることが望まれている。
【0006】
そこで本発明は、上述のような問題に鑑みて、光を透過又は吸収するような物体であってもその形状プロファイルを計測することが可能となる形状プロファイル計測装置、及びそのような形状プロファイル計測装置を備えたシュリンク包装機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
所定の配列方向に並んだ複数の発光部を有し、各発光部が相互に略平行な計測光を出射するようにされた投光器と、
前記複数の発光部に対向して前記配列方向に並んだ複数の受光部を有し、各受光部が、前記複数の発光部のうちの対応する発光部から出射された前記計測光を受光し、受光した前記計測光の光強度を示す信号を出力するようにされた、受光器と、
計測対象物が前記複数の発光部と前記複数の受光部との間を通過するように、前記計測対象物を前記投光器及び前記受光器に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記計測対象物が前記複数の発光部と前記複数の受光部との間での異なる複数の移動方向位置にあるときに前記受光器の前記信号を取得し、取得した前記信号と前記複数の移動方向位置に関する情報とに基づいて、前記計測対象物の形状プロファイルを求める演算部と、
を備え、
前記演算部は、前記受光部が受光した前記計測光の光強度が計測前の初期強度に対して所定の閾値以下に低下したときに、前記計測光が伝搬する伝搬経路上に前記計測対象物が存在していると判断する、形状プロファイル計測装置を提供する。
【0008】
当該形状プロファイル計測装置においては、受光部が受光した計測光の光強度の大きさに基づいて計測対象物の形状プロファイルを求めるようになっている。計測対象物が光を透過しない不透明なものであれば、それに当たった計測光は遮られて対応する受光部には到達しないため、その受光部における計測光の光強度は実質的にゼロとなり、それにより計測光が伝搬する位置に計測対象物が存在していることを検知することができる。この場合、当該形状プロファイル計測装置は、計測対象物に当たった光の反射を利用していないので、計測対象物が光を吸収するようなものであったとして形状プロファイルの計測には影響しない。一方で、計測対象物が透明なものであると、それに当たった計測光は計測対象物を透過して受光部にまで到達するが、計測光は計測対象物を透過する際にある程度は反射したり散乱したりするため、受光部に到達する計測光の光強度はある程度低下する。当該形状プロファイル計測装置は、受光部が受光した計測光の光強度が所定の閾値以下に低下したことにより計測対象物の存在を検知するため、部分的に又は全体的に透明な物であっても形状プロファイルの計測を行なうことが可能となる。
【0009】
具体的には、
前記移動機構により搬送される計測対象物の移動量を計測するための移動量計測手段をさらに備え、
前記複数の移動方向位置に関する情報は、前記移動量計測手段によって計測された前記計測対象物の移動量であるようにすることができる。
【0010】
また、前記演算部が、前記形状プロファイルに基づいて、前記計測対象物をフィルムで包囲する際に必要となる前記フィルムの最小長さを求める演算を実行するようにすることができる。
【0011】
この場合には、
前記演算部が、
前記形状プロファイルに所定の直線を近づけていったときに前記直線が最初に接触することになる前記形状プロファイル上の開始頂点を求める演算と、
前記形状プロファイル上の任意頂点に対して第1回転方向での隣接頂点を求める演算であって、前記任意頂点を通る直線を前記形状プロファイルの平面内で前記任意頂点を中心に第1回転方向に回転させていったときに前記直線が前記任意頂点以外で前記形状プロファイルに最初に接触することになる隣接頂点を求める演算と、
を実行するようにされ、
前記最小長さを求める演算が、前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算を前記開始頂点に対して実行して第1の隣接頂点を求め、前記最小長さの一部として前記開始頂点と前記第1の隣接頂点とを結ぶ第1の線分を求めることを含むようにすることができる。
【0012】
さらには、
前記演算部が、
前記形状プロファイル上の任意頂点に対して第2回転方向での隣接頂点を求める演算であって、前記任意頂点を通る直線を前記形状プロファイルの平面内で前記任意頂点を中心に前記第1回転方向とは逆向きの第2回転方向に回転させていったときに前記直線が前記任意頂点以外で前記形状プロファイルに最初に接触することになる隣接頂点を求める演算、
をさらに実行するようにされ、
前記最小長さを求める演算が、前記第2回転方向での隣接頂点を求める演算を前記開始頂点に対して実行して第2の隣接頂点を求め、前記最小長さの一部として前記開始頂点と前記第2の隣接頂点とを結ぶ第2の線分を求めることを含むようにすることができる。
【0013】
さらには、
前記最小長さを求める演算が、
前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算で求めた隣接頂点に対して更に前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算を実行し、
前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算で求めた隣接頂点が前記形状プロファイルの端点又は前記開始頂点となるまで前記第1回転方向での隣接頂点を求める演算を繰り返し、
前記最小長さの少なくとも一部として各隣接頂点間を順次結ぶ線分を求める、
ことを含むようにすることができる。
【0014】
本発明はさらに、
上述の形状プロファイル計測装置と、
シュリンクフィルムを筒状にして前記計測対象物を前記シュリンクフィルムで包囲するようにするフィルム包囲装置と、
前記シュリンクフィルムを加熱して収縮させ、前記計測対象物を前記シュリンクフィルムで包装された状態とする加熱装置と、
を備え、
前記フィルム包囲装置により形成される筒状のシュリンクフィルムの周長が前記演算部により求められた前記最小長さに基づいて決定されるようにされた、シュリンク包装機を提供する。
【0015】
以下、本発明に係る形状プロファイル計測装置及びシュリンク包装機の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるシュリンク包装機の概略図である。
【
図2】
図1のシュリンク包装機における形状プロファイル計測装置を示す斜視図である。
【
図3】
図2の形状プロファイル計測装置で包装対象物の形状プロファイル計測をしている状態を示す図である。
【
図4】形状プロファイル計測装置で計測した形状プロファイルを示す図である。
【
図5】
図4の形状プロファイルに対してフィルム最小長さを求める方法を示す図である。
【
図6】コントローラ(演算部)によって隣接頂点を求める演算方法を示す図である。
【
図7】
図2の形状プロファイル計測装置によって計測した別の包装対象物の形状プロファイルと、計測した形状プロファイルに対するフィルム最小長さを示す図である。
【
図8】
図1のシュリンク包装機におけるフィルム包囲装置によって各包装対象物を筒状のシュリンクフィルムで包囲した状態を示す図である。
【
図9】本発明の別の実施形態に係る形状プロファイル計測装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態にかかるシュリンク包装機1は、
図1に示すように、包装対象物(計測対象物)Oの形状プロファイルを計測するための形状プロファイル計測装置2と、包装対象物Oの周囲をシュリンクフィルムで包囲するフィルム包囲装置3と、シュリンクフィルムを加熱して収縮させる加熱装置4とを備える。
【0018】
図2に示すように、形状プロファイル計測装置2は、ベルトコンベア(移動機構)10と、ベルトコンベア10を間に挟むようにして対向して配置された投光器12及び受光器14とを備える。ベルトコンベア10は、その上に載置された包装対象物Oを設定した速度で搬送する。なお、図示の包装対象物Oは、台紙Pとその上に載置された物品Qとからなっている。投光器12は、上下方向である配列方向に並んだ複数の発光部16を有し、各発光部16が相互に略平行な計測光Lを水平方向に出射する。受光器14は、投光器12の複数の発光部16に対向して同配列方向に並んだ複数の受光部18(
図2では見えない)を有する。各受光部18は、対応する発光部16から出射された計測光Lを受光し、受光した計測光Lの光強度を示す信号を出力する。形状プロファイル計測装置2はさらに、ベルトコンベア10の駆動ローラ20の回転数を計測するエンコーダ(移動量計測手段)22と、受光器14とに接続されたコントローラ(演算部)24を備える。
【0019】
本実施形態の形状プロファイル計測装置2においては、ベルトコンベア10の搬送速度は0.5m/sに設定されており、投光器12の発光部16及び受光器14の受光部18は、それぞれ5mmピッチで配置されている。また、コントローラ24は、エンコーダ22の出力に基づいてベルトコンベア10に載置された包装対象物Oの移動量を検知しつつ、受光器14からの信号を10ms間隔で受信して取得する。
【0020】
ベルトコンベア10によって搬送される包装対象物Oが投光器12と受光器14との間を通過する際に、その間を伝搬している計測光Lの一部が包装対象物Oによって遮られる。図示の包装対象物Oの物品Qは、不透明部分Rと透明部分Sとを有する。
図3は、その透明部分Sが投光器12と受光器14との間に位置している状態を示している。一番下の発光部16から出射された計測光Lは、包装対象物Oの台紙Pに当たって遮られるため、対応する受光部18には到達しない。同様に下から2~5番目の発光部16から出射された計測光Lは、包装対象物Oの物品Qの不透明部分Rに当たって遮られるため、対応する受光部18に受光されない。一方で、下から6~14番目の発光部16から出射された各計測光Lは、物品Qの透明部分Sに当りその一部は反射したり散乱したりするが、ほとんどは透明部分Sを透過して対応する受光部18によって受光される。15番目以降の発光部16から出射された計測光Lは、受光部18までに遮る物が何もないため、そのままの光強度で対応する受光部18に受光される。各受光部18は、受光した計測光Lの光強度に応じた信号を出力する。
【0021】
受光部18からの信号はコントローラ24に送信され、コントローラ24は受信した信号に基づいて包装対象物Oの上下方向での大きさを判断する。具体的には、受光部18が受光した計測光Lの光強度が計測前の初期強度に対して所定の閾値以下に低下したときに、その計測光Lが伝搬する伝搬経路上に包装対象物Oが存在していると判断する。所定の閾値は任意に設定可能であるが、例えば本実施形態では95%としている。すなわち、受光部18が受光する計測光Lが初期強度に対して5%以上低下した場合には、その計測光Lの伝搬経路上に包装対象物Oが存在していると判断する。
【0022】
図示の例では、1~5番目の発光部16から出射された計測光Lは、包装対象物Oによって完全に遮られるため、対応する受光部18には到達しない。よって、1~5番目の受光部18が受光する計測光Lの光強度は初期強度に対して0%となり、1~5番目の受光部18は0%にまで低下したことを示す信号を出力する。6~14番目の発光部16から出射された計測光Lは、包装対象物Oの透明部分Sを透過する際の反射や散乱などにより、僅かに光強度が低下した状態で対応する受光部18に到達する。よって、6~14番目の受光部18が受光する計測光Lの光強度は初期強度に対して低下し、例えば90%程度になる。この場合、計測光Lは受光部18に到達しているが、受光部18が受光した計測光Lの光強度は閾値である95%以下の90%にまで低下しているため、コントローラ24はその計測光Lが伝搬する伝搬経路上に包装対象物Oが存在していると判断する。15番目以降の発光部16から出射された計測光Lは、包装対象物Oによって遮られることなく対応する受光部18に到達するため、15番目以降の受光部18で受光される計測光Lの光強度はほぼ100%となる。コントローラ24は、計測光Lの光強度が所定の閾値(95%)以下にまで低下していないため、それら計測光Lが伝搬する伝搬経路上には包装対象物Oが存在しないと判断する。このようにしてコントローラ24は、図示の位置での包装対象物Oの高さが15番目の発光部16及び受光部18と同程度のおよそ7cmであると判断する。
【0023】
上述のような高さ計測は、およそ0.5m/sの速度で搬送されている包装対象物Oに対して10msの時間間隔で連続して実行される。10msあたりの包装対象物Oの移動量はおよそ5mmとなり、よって包装対象物Oの高さ計測はおよそ5mm間隔の複数の移動方向位置で行なわれることになる。コントローラ24は、エンコーダ22により計測される包装対象物Oの移動量に基づいて受光器14から取得した信号間の移動方向での距離を把握し、
図4に示すような形状プロファイル30を求める。このように、当該形状プロファイル計測装置2は、計測対象物Oが光吸収性のものであるか光透過性のものであるに関わらず、その形状プロファイル30を計測することが可能である。なお当該実施形態では、包装対象物Oの移動方向に関する情報として、エンコーダ22により計測される包装対象物Oの移動量を利用しているが、ベルトコンベア10の搬送速度が一定に保たれ且つ高さ計測の時間間隔が常に一定の時間間隔で実行されるのであれば、エンコーダ22を用いることなく、その一定の搬送速度と時間間隔とから計算される一定の移動量を移動方向に関する情報として利用することもできる。または、ベルトコンベア10の搬送速度が一定ではない場合には、エンコーダ22により計測される移動量が前回の高さ測定時の移動方向位置から一定の大きさ(例えば5mm)になったときに次の高さ計測を行なうようにしてもよい。
【0024】
形状プロファイル計測装置2のコントローラ24は更に、計測した形状プロファイル30を有する包装対象物Oをフィルム32で包囲する際に必要となるフィルム32の最小長さを求める機能を有する。
図5に示すように、最小長さを求める際には、まず形状プロファイル30の最も高い位置にある頂点を特定してその頂点を開始頂点A0に設定する。開始頂点A0は形状プロファイル30の底面から上方に最も離れた点であり、別の言い方をすれば、水平な直線を上方から形状プロファイル30に近づけていったときにその直線が最初に接触することになる点である。図示の例では、形状プロファイル30の上面が水平であるため、底面から上方に最も離れた点は上面上にある複数の点となるが、このような場合には例えば前方側(図で見て左方側)の角の点を開始頂点A0に設定することができる。次に、開始頂点A0のみを通り開始頂点A0以外では形状プロファイル30を通らない直線B1を形状プロファイル30の平面内で開始頂点A0を中心に第1回転方向(図で見て反時計回り)に回転させていったときにこの直線B1が開始頂点A0以外で形状プロファイル30に最初に接触することになる点を特定して、この点を第1の隣接頂点A1とする。同様に、第1の隣接頂点A1のみを通る直線B2を第1の隣接頂点A1を中心に第1回転方向に回転させたときに最初に接触することになる点を特定して、この点を第2の隣接頂点A2とする。同様な演算を、求めた隣接頂点が、形状プロファイル30の端点C、すなわちベルトコンベア10に近接又は接触する点になるまで繰り返す。図示の例では、第2の隣接頂点A2がすでに形状プロファイル30の端点Cである。次に、開始頂点A0のみを通る直線B3を第1回転方向とは逆向きの第2回転方向(図で見て時計回り)に回転させていったときにこの直線B3が開始頂点A0以外で最初に接触することになる点を特定して、この点を第3の隣接頂点A3とする。同様の演算を繰り返して第4の隣接頂点A4及び第5の隣接頂点A5を求める。このようにして求めた開始頂点A0及び第1乃至第5の隣接頂点A1~A5の間を第1乃至第6の線分D1~D6で順次結んで形成される折れ線34の長さが、形状プロファイル30をフィルム32で包囲する際の最小長さとなる。なお、ここでは、水平な直線を上方から近づけていったときにその直線が最初に接触することになる頂点を開始頂点A0としているが、開始頂点A0は別の位置の点としてもよい。例えば、下端の点を開始頂点A0として、それに隣接する頂点を順次求めていくようにしてもよい。また、直線を第1回転方向に回転させる方法により隣接頂点A1、A2を求めた後に、さらにA2に対して直線を第1回転方向に回転させる方法を行なって、隣接頂点A5、A4、A3を順次求めて、その次に求めた隣接頂点が開始頂点A0と同一の点になった時点で隣接頂点を求める演算を終えるようにすることもできる。さらには、ここでは各頂点を求める方法を直線を回転させるやり方で説明しているが、このような演算を必ずしも実際に行なわなければならないわけではなく、同じ頂点を求めるために別の演算方法を用いることもできる。
【0025】
例えば、開始頂点及び各隣接頂点を次のような演算によって求めることもできる。
図6に示すように、移動方向をX、高さ方向をYとし、形状プロファイル30を構成するデータ点(図中で黒丸で示している)の中からYが最も大きいデータ点を特定する。形状プロファイル30の場合には、最も大きなYを有するデータ点は複数あるため、その中からXが最も小さいデータ点aを開始頂点A0に設定する。次に、Xの値が開始頂点A0と同じか又はそれよりも小さいデータ点を抽出し、開始頂点A0と各データ点とを結ぶ線分の角度をそれぞれ求める。例えば、開始頂点A0(X
A、Y
A)とデータ点b(X
b、Y
b)とを結ぶ線分Ebの角度θbは次の式により求めることができる。
抽出した他の全てのデータ点に対する線分の角度θも同様に求める。代表的なデータ点b、c、d、eについて角度θb、θc、θd、θeを実際に求めると、それぞれ、約67.4度、約63.4度、約56.3度、約58.4度となる。抽出した全データ点の中からその角度θが最も小さくなるデータ点を求めて、そのデータ点を次の隣接頂点に設定する。図示の形状プロファイル30の場合にはデータ点dとの間の線分Edの角度θdが最も小さな値となるため、データ点dを第1の隣接頂点A1に設定する。次に第2の隣接頂点A2を求めるために、Xの値が第1の隣接頂点A1であるデータ点dと同じか又はそれよりも小さいデータ点を抽出して、データ点dと抽出した各データ点を結ぶ線分の角度を求める。形状プロファイル30の場合には抽出されるデータ点はデータ点eのみとなるため、データ点eが第2の隣接頂点A2となる。続いて、開始頂点A0の右側の隣接頂点を求める。Xの値が開始頂点A0よりも大きいデータ点を抽出し、開始頂点A0と各データ点とを結ぶ線分の角度を同様に求める。形状プロファイル30においては角度θが最小の0度となるデータ点が多数あるが、そのうちの開始頂点A0から最も離れたデータ点fを第3の隣接頂点A3に設定する。次に、Xの値が第3の隣接頂点A3と同じか又はそれよりも大きいデータ点を抽出し、第3の隣接頂点A3と各データ点とを結ぶ線分の角度をそれぞれ求めて、最小の角度となるデータ点を特定する。データ点gとの間の線分Egに対する角度θgが最も小さな値となるため、データ点gを第4の隣接頂点A4に設定する。同様にして、データ点hを第5の隣接頂点A5に設定する。なお、このようなデータ点に対する角度が最小となる点を次の隣接頂点とする演算は、上述の直線を回転させて最初に接触することになる点を次の隣接頂点とすることと実質的に同じであり、両演算の結果は原則として一致する。
【0026】
図7は、同様な方法によって別の包装対象物を計測したときの形状プロファイル30’、及びその形状プロファイル30’に対して求めた最小長さを示す折れ線34’を示している。
【0027】
形状プロファイル計測装置2による計測が完了すると、次に包装対象物Oはフィルム包囲装置3によってシュリンクフィルム32で包囲される。フィルム包囲装置3は、2枚のシュリンクフィルムを溶着して筒状のシュリンクフィルム32を形成し、その内側に包装対象物Oが包囲されるようにする。このときの筒状のシュリンクフィルム32の周長は、形状プロファイル計測装置2により求められた最小長さに基づいて決定される。すなわち、筒状のシュリンクフィルム32の周長は、熱収縮する前には包装対象物Oを包囲するのには十分であるが過度に大きくはなく、且つ熱収縮した際には適度な収縮量でシュリンクフィルム32が最小長さとなる大きさに調整される。よって、
図8に示すように、包装対象物Oに比べてより大きな包装対象物O’を包装するためのシュリンクフィルム32’は、包装対象物Oのためのシュリンクフィルム32に対してより大きくなる。このようにフィルム包囲装置3が形成する筒状のシュリンクフィルム32の大きさは、包装対象物Oの大きさや形状に合せて異なるものとなる。
【0028】
次に、筒状のシュリンクフィルム32で包囲された包装対象物Oは、加熱装置4内を通される。加熱装置4は、周囲からシュリンクフィルム32に熱風を当ててシュリンクフィルム32を加熱する。これによりシュリンクフィルム32は熱収縮し、包装対象物Oをたるみ無く包囲して保持した状態となり、シュリンク包装が完了する。
【0029】
このように、当該シュリンク包装機1においては、形状プロファイル計測装置2により求めた最小長さに基づいてシュリンクフィルム32の大きさを決定するようになっているため、包装対象物Oの大きさや形状に合わせてシュリンクフィルム32を適切な大きさとすることが可能となる。
【0030】
図9に示すように、本発明の別の実施形態に係る形状プロファイル計測装置102は、幅方向に対向して配置された投光器12及び受光器14に加えて上下に対向して配置された第2の投光器112及び第2の受光器114をさらに備える。また、移動機構が2つのベルトコンベア110-1、110-2からなっており、上下方向に伝搬する計測光Lは2つのベルトコンベア10の間を通って伝搬するようになっている。上下に配置された第2の投光器112及び第2の受光器114により、包装対象物Oの幅方向での形状プロファイルも計測することができる。したがって、当該形状プロファイル計測装置102においては、高さ方向の形状プロファイルに加えて、幅方向の形状プロファイルも同時に計測することが可能となっている。
【0031】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、包装対象物(計測対象物)を搬送する移動機構として、ベルトコンベアではなく、ローラーコンベアやチェーンコンベアなどの他の形態のコンベアとすることもできるし、又は包装対象物を移動させる他の既知の移動機構とすることもできる。また、移動機構は、包装対象物を移動させるのではなく、包装対象物を静止させた状態で投光器及び受光器を包装対象物に対して移動させるようにしたものとすることもできる。さらには、移動機構が一定の速度で包装対象物を投光器及び受光器に対して相対的に移動させるのではなく、所定の距離を移動したら一時的に停止して停止している間にその位置での形状プロファイルの計測をするようにすることもできる。形状プロファイル計測装置の用途は、シュリンク包装される包装対象物の形状プロファイル計測に限られず、他の物品の形状プロファイル計測において使用することもできる。なお、上記実施形態の説明における具体的な数値は、単に例示として示したものであり、想定される用途や要求される性能などに合せて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 シュリンク包装機
2 形状プロファイル計測装置
3 フィルム包囲装置
4 加熱装置
10 ベルトコンベア(移動機構)
12 投光器
14 受光器
16 発光部
18 受光部
20 駆動ローラ
22 エンコーダ(移動量計測手段)
24 コントローラ(演算部)
30、30’ 形状プロファイル
32、32’ シュリンクフィルム
34、34’ 折れ線
102 形状プロファイル計測装置
110-1 ベルトコンベア
110-2 ベルトコンベア
112 第2の投光器
114 第2の受光器
A0 開始頂点
A1~A5 第1乃至第5の隣接頂点
B1、B2、B3 直線
C 端点
D1~D6 第1乃至第6の線分
Eb、Ed、Eg 線分
L 計測光
O、O’ 包装対象物(計測対象物)
P 台紙
Q 物品
R 不透明部分
S 透明部分
a~h データ点
θa~θg 角度
【要約】
【課題】光を透過又は吸収するような物体であってもその形状プロファイルを計測することが可能となる形状プロファイル計測装置を提供すること。
【解決手段】形状プロファイル計測装置2は、対向して配置された投光器12及び受光器14と、計測対象物Oを搬送するベルトコンベア10と、演算部24とを備える。投光器12は配列方向に並んだ複数の発光部16を有し、各発光部が相互に略平行な計測光Lを出射する。受光器14は複数の発光部に対向して配列方向に並んだ複数の受光部18を有し、各受光部が対応する発光部から出射された計測光Lを受光する。受光部18は、受光した計測光Lの光強度を示す信号を出力する。演算部24は、計測対象物Oが発光部16と受光部18との間で異なる複数の移動方向位置にあるときに受光器14の信号を取得し、取得した信号と複数の移動方向位置に関する情報とに基づいて、計測対象物Oの形状プロファイルを求める。
【選択図】
図2