(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】トレース方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
H05K13/08 Q
H05K13/08 A
(21)【出願番号】P 2021164432
(22)【出願日】2021-10-06
(62)【分割の表示】P 2019561521の分割
【原出願日】2017-12-28
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 一也
(72)【発明者】
【氏名】小野 恵市
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹也
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/130537(WO,A1)
【文献】特開平11-258178(JP,A)
【文献】特開2008-197772(JP,A)
【文献】特開2012-169394(JP,A)
【文献】特開平08-321700(JP,A)
【文献】特開2013-021074(JP,A)
【文献】特開2015-133349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30、13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板製品の生産処理を実行するステップと、
前記基板製品の前記生産処理において実行された画像処理の結果が正常であるか否かを判定するステップと、
前記画像処理の結果が正常と判定される許容範囲にある場合に、前記画像処理の結果の信頼性を示す適合条件を前記画像処理が満たすか否かを判定するステップと、
前記適合条件を前記画像処理が満たすか否かの判定結果に応じて前記画像処理に用いられた画像データをトレーサビリティ情報として記録するステップと、
前記画像処理の結果が正常であると判定した場合にエラー処理を実行せず、前記画像処理の結果が正常でないと判定した場合に前記画像処理の結果に応じたエラー処理を実行するステップと、
を備えるトレース方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレース方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対基板作業機は、基板製品を生産する生産処理において、作業の確実性を向上させるために画像処理を実行する。対基板作業機に適用されるトレース装置は、対基板作業機による生産処理をトレースできるように、トレーサビリティ情報を記録する。特許文献1には、生産処理の実行中に異常が検出された場合に、トレーサビリティ情報として画像処理に用いられた画像データを記録する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、異常と判定すべき画像処理において、種々の原因により誤って正常と判定した場合には、その画像処理に用いられた画像データは、トレース装置による記録の対象とはならない。そのため、検査工程などの後工程において異常が検出されても生産処理をトレースすることができないことがあった。また、画像処理の結果に関わらず全ての画像データを記録する構成では、記録された多量の画像データに基づいて異常の原因となる画像処理を特定することは容易ではない。
【0005】
本明細書は、対基板作業機の生産処理を対象としたトレーサビリティを向上できるトレース方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、基板製品の生産処理を実行するステップと、前記基板製品の前記生産処理において実行された画像処理の結果が正常であるか否かを判定するステップと、前記画像処理の結果が正常と判定される許容範囲にある場合に、前記画像処理の結果の信頼性を示す適合条件を前記画像処理が満たすか否かを判定するステップと、前記適合条件を前記画像処理が満たすか否かの判定結果に応じて前記画像処理に用いられた画像データをトレーサビリティ情報として記録するステップと、前記画像処理の結果が正常であると判定した場合にエラー処理を実行せず、前記画像処理の結果が正常でないと判定した場合に前記画像処理の結果に応じたエラー処理を実行するステップと、を備えるトレース方法を開示する。
【発明の効果】
【0007】
このような構成によると、画像処理の結果が正常であっても一定の信頼性を有しない場合には、その画像処理に用いられた画像データは、トレーサビリティ情報として記録される。つまり、画像処理において異常が疑われる画像データが記録の対象とされる。これにより、画像処理において誤って正常と判定し、後工程において異常が検出された場合に、トレーサビリティ情報として記録された画像データに基づいて、異常の原因となる画像処理を特定することが可能となる。よって、部品装着機の生産処理を対象としたトレーサビリティを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態におけるトレース装置が適用された部品装着機を示す模式図である。
【
図2】装着ヘッドおよびヘッドカメラユニットの一部を拡大して示す側面図である。
【
図3】部品装着機による生産処理を示すフローチャートである。
【
図4】画像処理の結果、および画像処理における許容範囲と適合条件との対応を示す図である。
【
図6】画像処理および適合判定の結果と画像データの記録の要否との対応を示す図である。
【
図7】適合条件の設定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施形態
以下、トレース装置を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。トレース装置は、対基板作業機による生産処理をトレースできるように、トレーサビリティ情報を記録する。本実施形態において、トレース装置が対基板作業機としての部品装着機に適用された態様を例示する。
【0010】
1-1.部品装着機1の構成
部品装着機1は、回路基板(以下、単に「基板」と称する)90に複数の部品P(
図2を参照)を装着して基板製品を生産する。部品装着機1は、
図1に示すように、基板搬送装置10、部品供給装置20、部品移載装置30、部品カメラ51、基板カメラ52、ヘッドカメラユニット60、および制御装置70を備える。
【0011】
基板搬送装置10は、ベルトコンベアおよび位置決め装置などにより構成される。基板搬送装置10は、基板90を搬送方向へと順次搬送する搬送処理、および基板90を機内の所定位置に位置決めする位置決め処理を実行する。基板搬送装置10は、生産処理の実行前に部品装着機1の機内に基板90を搬入した後に位置決めする。基板搬送装置10は、部品装着機1による部品の生産処理が終了した後に、基板90を部品装着機1の機外に搬出する。
【0012】
部品供給装置20は、基板90に装着される部品を供給する。部品供給装置20は、複数のスロット21にセットされたフィーダ22を備える。フィーダ22は、多数の部品が収納されたキャリアテープを送り移動させて、部品を採取可能に供給する。また、部品供給装置20は、例えば比較的大型の部品を、パレット24に載置されたトレイ25上に並べた状態で供給する。部品供給装置20は、収納棚23に複数のパレット24を収納し、装着処理に応じて所定のパレット24を引き出して部品を供給する。
【0013】
部品移載装置30は、部品供給装置20により供給された部品を、基板搬送装置10により機内に搬入された基板90上の所定の装着位置まで移載する。部品移載装置30のヘッド駆動装置31は、直動機構により移動台32を水平方向(X軸方向およびY軸方向)に移動させる。移動台32には、図示しないクランプ部材により装着ヘッド40が交換可能に固定されている。
【0014】
装着ヘッド40は、
図2に示すように、Z軸と平行なR軸回りに回転可能なロータリヘッド41を有する。ロータリヘッド41は、R軸と同心の円周上において周方向に等間隔に配置された複数のホルダ42をZ軸方向に摺動可能に支持する。複数のホルダ42の下端部には、吸着ノズル43が交換可能にそれぞれ取り付けられる。装着ヘッド40は、ホルダ42と吸着ノズル43を一体的に昇降させるとともに、Z軸と平行で且つホルダ42の中心を通るθ軸周りに回転させる。
【0015】
複数の吸着ノズル43のそれぞれには、負圧エア供給源からホルダ42を介して負圧エアが供給される。これにより、複数の吸着ノズル43のそれぞれは、先端部において部品Pを吸着して保持する。なお、上記の負圧エア供給源は、例えば装着ヘッド40の内部に設けられたエアポンプ等により構成される。上記のように、装着ヘッド40は、部品供給装置20により供給された部品Pを保持する。また、装着ヘッド40は、部品Pを保持する吸着ノズル43のθ軸周りの角度、およびZ軸方向の高さを制御する。
【0016】
部品カメラ51、基板カメラ52、およびヘッドカメラユニット60は、CMOSなどの撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ51、基板カメラ52、およびヘッドカメラユニット60は、通信可能に接続された制御装置70による制御信号に基づいて撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを制御装置70に送出する。
【0017】
部品カメラ51は、
図1に示すように、光軸がZ軸方向の上向きとなるように部品装着機1の基台に固定されている。部品カメラ51は、装着ヘッド40の吸着ノズル43に保持された部品を下方から撮像可能に構成されている。基板カメラ52は、光軸がZ軸方向の下向きとなるように部品移載装置30の移動台32に設けられる。基板カメラ52は、基板90を上方から撮像可能に構成されている。
【0018】
ヘッドカメラユニット60は、
図2に示すように、装着ヘッド40に設けられ、移動台32の移動に伴って装着ヘッド40と一体的に移動する。ヘッドカメラユニット60は、装着ヘッド40に取り付けられた吸着ノズル43および吸着ノズル43に保持された部品Pを側方から撮像する。ヘッドカメラユニット60の撮像による画像データは、制御装置70において画像処理され、部品Pの各種検査などに用いられる。上記の各種検査には、例えば部品Pがリード部品である場合に、リード部の平坦度検査やリード部の高さ検査などが含まれる。
【0019】
ヘッドカメラユニット60は、
図2に示すように、光源61と、反射部材62と、カメラ装置63とを備える。光源61は、ロータリヘッド41の中心方向(R軸方向)に光を放射する複数の発光ダイオードなどにより構成される。反射部材62は、円柱状に形成され、ロータリヘッド41の下端にR軸と同軸となるように配置される。反射部材62は、光源61が照射した光を、円筒状の外周面において反射する。
【0020】
カメラ装置63は、光源61および反射部材62により光を照射されたホルダ42、吸着ノズル43、および部品Pを撮像する。ヘッドカメラユニット60の撮像により取得された画像データは、反射部材62を背景とし、ホルダ42や吸着ノズル43、部品Pが存在する範囲が影となるように生成される。なお、画像データは、制御装置70において、例えば二値化などの画像処理を実行されて、背景とのコントラストを強調される。
【0021】
制御装置70は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置70は、基板90に部品を装着する装着処理を生産処理として実行する。制御装置70は、外部のホストコンピュータと通信し、各種情報に基づいて部品移載装置30などの動作を制御する。制御装置70は、
図1に示すように、記憶部71、装着制御部72、およびトレース装置80を有する。
【0022】
記憶部71は、ハードディスク装置などの光学ドライブ装置、またはフラッシュメモリなどにより構成される。この記憶部71には、部品装着機1を動作させるための制御プログラム、部品カメラ51、基板カメラ52、およびヘッドカメラユニット60から制御装置70に送出された画像データ、後述するトレース装置80により記録されたトレーサビリティ情報などが記憶される。トレース装置80の詳細については後述する。
【0023】
装着制御部72は、吸着ノズル43に保持された部品Pを基板90に装着させる装着処理を実行する。より詳細には、装着制御部72は、装着処理において、部品装着機1に複数設けられた各種センサから出力される情報、画像処理の結果などを入力する。そして、装着制御部72は、記憶部71に記憶された制御プログラム、各種センサによる情報、画像処理の結果などに基づき、部品移載装置30などに制御信号を送出する。これにより、装着ヘッド40に支持された複数の吸着ノズル43の位置および角度が制御される。
【0024】
1-2.トレース装置80の概要および詳細構成
トレース装置80は、部品装着機1による装着処理をトレースできるように、トレーサビリティ情報を記録する。上記の「トレーサビリティ情報」とは、装着処理の実行中または実行後に部品が適切に装着されていないような異常が検出された場合に、装着処理における各工程をトレースしてその原因を特定するのに用いられる情報である。本実施形態において、トレーサビリティ情報には、各種の画像処理に用いられた画像データ、および画像処理に用いられたパラメータが含まれる。
【0025】
本実施形態において、トレース装置80は、
図1に示すように、適合判定部81と、情報管理部82と、条件設定部83とを備える。適合判定部81は、部品装着機1による装着処理において実行された画像処理の結果が正常と判定される許容範囲にある場合に、画像処理の結果の信頼性を示す適合条件を画像処理が満たすか否かを判定する。ここで、「画像処理の結果の信頼性」とは、正常と判定された画像処理の結果について、真に正常である度合いに相当する。
【0026】
換言すると、画像処理の結果が一定の信頼性を有しない場合には、画像処理の結果に対して誤って正常と判定した可能性がある。一方で、例えば画像処理の結果が理想値に近く、または想定範囲に収まるなどの事実により、画像処理の結果が一定の信頼性を有する場合には、正常と判定された画像処理の結果は、十分に確からしい状態にある。適合判定部81は、画像処理の結果が一定の信頼性を有するか否かを判定する指標としての適合条件を用いて、画像処理の適合判定を行う。
【0027】
情報管理部82は、適合判定部81による判定結果に応じて画像処理に用いられた画像データをトレーサビリティ情報として記録する。本実施形態において、情報管理部82は、画像処理の結果が異常であった場合に加えて、適合判定部81により画像処理が適合条件を満たさないと判定された場合に、画像処理に用いられた画像データをトレーサビリティ情報として記録する。さらに、情報管理部82は、画像処理に用いられたパラメータを画像データに関連付けてトレーサビリティ情報として記録する。
【0028】
上記の適合条件は、例えば画像処理の結果が部品の座標値であれば、正常と判定される許容範囲において部品が位置する座標値の予定範囲に設定され得る。つまり、適合判定部81は、画像処理の結果として取得された部品の座標値が予定範囲内であれば、その座標値を算出した画像処理は適合条件を満たし、画像処理の結果が一定の信頼性を有すると判定する。
【0029】
なお、適合条件は、上記のように画像処理の結果と比較される条件の他に、画像処理の進行を評価する条件(例えば、画像処理の所要時間)や、一連で実行される後工程の画像処理の結果と比較される条件を設定され得る。また、上記のような種別の適合条件は、任意の値を設定される他に、同一の画像処理が既に複数回に亘り実行されている場合には、統計的な値に設定してもよい。
【0030】
また、上記のような構成によると、トレーサビリティ情報としての画像データにどのような画像処理が実行されたかを示すパラメータ(画像処理の種別、各工程の種別、各工程の実行順序、各工程の設定値など)が含まれる。これにより、トレーサビリティ情報に基づいて装着処理における各工程をトレースする際に、最終的な画像処理後の画像データを再現して画像処理自体の適否を判定することができる。これにより、異常の原因となる画像処理を特定することができる。
【0031】
条件設定部83は、生産処理を管理する作業者による適合条件の入力を受け付ける。さらに、本実施形態において、条件設定部83は、複数回に亘って実行された画像処理の結果に基づいて、統計的な適合条件を設定する。具体的には、条件設定部83は、画像処理の結果の平均値、中央値、または最頻値に基づいて、統計的な適合条件を設定する。つまり、条件設定部83は、例えば統計値が有意となる程度に画像処理が実行されているのであれば、これらの画像処理の結果に基づいて想定される範囲を自動で設定する。
【0032】
なお、条件設定部83は、統計的な適合条件の有意性に応じて採用するか否かを切り換えてもよい。つまり、条件設定部83は、作業者による予定範囲の指定を受け付け、画像処理の実行回数に応じて、予定範囲の指定に基づく適合条件と統計的な適合条件とを切り換えて設定する。このような構成では、条件設定部83は、先ず作業者による予定範囲を適合条件の初期値として適合判定に採用する。そして、条件設定部83は、正常な画像処理の実行回数が所定回数を上回った時点で統計的な適合条件が有意であるとして、その統計的な適合条件を適合判定に採用する。
【0033】
1-3.部品装着機1による装着処理
部品装着機1による装着処理について
図3を参照して説明する。制御装置70の装着制御部72は、装着処理において、先ず、基板90の搬入処理を実行する(ステップ11(以下、「ステップ」を「S」と表記する))。基板90の搬入処理において、基板搬送装置10は、部品装着機1の機内に基板90を搬入するとともに、機内の所定位置に位置決めする。
【0034】
次に、装着制御部72は、複数の吸着ノズル43に部品Pを順次吸着させる吸着サイクルを実行する(S12)。より詳細には、装着制御部72は、部品供給装置20において所定種類の部品Pを供給するフィーダ22またはトレイ25の上方まで装着ヘッド40を移動させる。そして、装着制御部72は、吸着ノズル43を下降させて部品Pを吸着した後に、再び吸着ノズル43を上昇させる。吸着サイクルにおいて、上記のような装着ヘッド40の移動と吸着ノズル43の下降および上昇が繰り返されて、複数の部品Pが吸着ノズル43にそれぞれ保持される。
【0035】
続いて、装着制御部72は、複数の吸着ノズル43にそれぞれ保持された部品Pの保持状態を認識する状態認識処理を実行する(S13)。より詳細には、装着制御部72は、装着ヘッド40を部品カメラ51の上方に移動させ、部品カメラ51に撮像指令を送出する。装着制御部72は、部品カメラ51の撮像により取得された画像データを画像処理して、複数の吸着ノズル43のそれぞれに保持された部品Pの姿勢(位置および角度)を認識する。
【0036】
そして、装着制御部72は、複数の吸着ノズル43に部品Pを基板90に順次装着させる装着サイクルを実行する(S14)。より詳細には、装着制御部72は、基板90における所定の装着位置の上方まで装着ヘッド40を移動させる。このとき、装着制御部72は、状態認識処理(S13)の結果に基づいて、吸着ノズル43の位置および角度を補正する。そして、装着制御部72は、吸着ノズル43を下降させて部品Pを装着した後に、再び吸着ノズル43を上昇させる。装着サイクルにおいて、上記のような装着ヘッド40の移動と吸着ノズル43の下降および上昇が繰り返されて、複数の部品Pが基板90にそれぞれ装着される。
【0037】
制御装置70は、現在の基板90に対して装着する全ての部品Pの装着が終了したか否かを判定し(S15)、装着が終了するまでピックアンドプレースサイクル(S12-S14)を繰り返し実行する。全ての部品Pの装着が終了した場合に(S15:Yes)、装着制御部72は、基板90の搬出処理を実行する(S16)。基板90の搬出処理において、基板搬送装置10は、位置決めされていた基板90を開放するとともに、部品装着機1の機外に基板90を搬出する。
【0038】
1-4.装着処理における画像処理
部品装着機1による装着処理の実行中においては、部品の状態認識処理(S13)を含む種々の画像処理が実行される。ここで、「画像処理」には、二値化やエッジ処理のような1つの工程が含まれるとともに、これらを組み合わせて基板製品の構成品の状態などを結果として出力する処理(例えば、部品Pの状態認識処理(S13)、検査処理)や識別コードの読み取り処理が含まれる。ここで、基板製品の「構成品」には、基板90や基板90に印刷されたクリームはんだ、基板90に装着された部品Pが含まれる。
【0039】
なお、部品装着機1による装着処理において実行される状態認識処理には、上記のような部品の状態認識処理(S13)の他に、種々の対象物(部品Pや基板90など)の状態を認識する処理が含まれる。また、種々の状態認識処理、検査処理、および識別コードの読み取り処理は、吸着サイクル(S12)や装着処理(S14)、基板搬送処理(S11,S16)に並行して実行することができる。さらに、種々の状態認識処理、検査処理、および識別コードの読み取り処理に用いられる画像データには、部品カメラ51の撮像により取得されたものの他に、基板カメラ52やヘッドカメラユニット60、図示しない専用カメラの撮像により取得された画像データを適用することができる。
【0040】
1-4-1.部品Pの状態認識処理および検査処理
部品Pを対象物とした状態認識処理(S13)では、装着ヘッド40の吸着ノズル43に保持された部品Pを、部品カメラ51により下方から撮像して取得された画像データに基づいて、部品Pの有無、装着ヘッド40に対する部品Pの中心の座標値および角度が結果として出力される。なお、下記のような状態認識処理または検査処理が実行された場合に、情報管理部82は、
図4の表1に示すように、画像処理を実行した時刻、結果、所要時間、処理の正否、および処理結果の信頼性を記録する。
【0041】
また、部品Pを対象物とした状態認識処理には、例えばフィーダ22やトレイ25により採取可能に供給された部品Pの状態を認識する処理が含まれることがある。例えば、スロット21へのフィーダ22のセット状態によっては、供給された部品Pの位置が理想位置からずれることがある。そのため、例えばフィーダ22がスロット21にセットされた後に、吸着サイクル(S12)において、そのフィーダ22から供給された部品Pを採取する前に上記のような状態認識処理が実行される。ただし、フィーダ22やトレイ25により供給された部品Pの状態を認識する場合は、部品カメラ51でなく、基板カメラ52が部品Pを上方から撮像して取得された画像データに基づいて、状態認識処理が行なわれる。
【0042】
さらに、例えばLED部品の発光部など部品Pにおける特定の部位を基準に採取を試行する場合には、吸着サイクル(S12)において、部品Pの特定の部位の位置を認識すべく上記のような状態認識処理が実行される。詳細には、制御装置70は、移動台32に設けられた基板カメラ52を部品Pの撮像に流用し、部品供給装置20により供給された部品を撮像する。そして、この撮像により取得された画像データが画像処理され、供給された状態の部品Pの座標値、角度、および特定の部位の座標値が結果として出力される。
【0043】
また、ヘッドカメラユニット60の撮像により取得された画像データに基づく部品Pの状態認識処理には、部品Pの三次元形状の認識や、部品Pを対象とする各種検査(部品Pがリード部品である場合の平坦度検査、リード部の高さ検査など)が含まれる。ここで、本実施形態の「画像処理」には、同一の対象物を別のカメラで撮像し、第一の画像データを用いた一次画像処理(例えば、状態認識処理)と、第二の画像データを用いた二次画像処理(例えば、各種の検査処理)とが含まれる場合がある。
【0044】
1-4-2.基板90の状態認識処理および検査処理
基板製品の構成品である基板90を対象物とした状態認識処理には、例えば基板搬送装置10により位置決めされた基板90の状態を認識する処理が含まれる。具体的には、制御装置70は、基板90の搬入処理(S11)において、基板90の上面に付された複数の基準マークを基板カメラ52により撮像して取得した画像データを処理して、基板90の位置および角度を取得する。制御装置70は、このような状態認識処理の結果に基づいて、部品移載装置30の動作を制御する。
【0045】
また、基板90を対象物とした状態認識処理には、例えば部品装着機1の機内において搬送中の基板90の状態を認識する処理が含まれる。具体的には、制御装置70は、基板の搬入処理(S11)において、基板90のX軸方向の端部を基板カメラ52により撮像して取得した画像データを処理して、搬入または搬出されている基板90の現在の位置を認識する。制御装置70は、このような状態認識処理の結果に基づいて、基板搬送装置10の動作を制御する。
【0046】
さらに、制御装置70は、上記のように複数の基準マークを用いた基板90の状態認識処理を一次画像処理として、複数の基準マークの間隔が規定範囲に収まっているかのピッチ間検査を二次画像処理として実行する。これにより、例えば基板90のスルーホールを基準マークと誤認した場合に、複数の基準マークの間隔が規定範囲に収まらず、基板90の状態認識処理の結果の信頼性が低い(即ち、二次画像処理が一定の信頼性を有しない)ことを認識することができる。
【0047】
1-4-3.識別コードの読み取り処理
制御装置70による画像処理には、基板90や部品Pを供給するトレイ25、吸着ノズル43などに付された識別コードを読み取る処理(以下、「コード読み取り処理」と称する)が含まれる。識別コードは、基板90などの対象物の固有情報である識別符号(ID)を文字列により記録する。識別コードとしては、バーコードや、複数のセルが配列された二次元コードなどを適用し得る。
【0048】
識別コードは、基板90やトレイ25の縁部、吸着ノズル43のフランジ部などに貼付され、または直接的に印刷される。制御装置70は、新たな基板90が部品装着機1に搬入されたとき、収納棚23の内外でトレイ25を交換したとき、吸着ノズル43を自動交換するときなどに、コード読み取り処理を実行する。
【0049】
詳細には、制御装置70は、移動台32に設けられた基板カメラ52を識別コードの撮像に流用し、対象物に付された識別コードを撮像する。そして、この撮像により取得された画像データが画像処理され、識別コードに記録された識別符号が結果として出力される。なお、このようなコード読み取り処理が実行された場合に、情報管理部82は、状態認識処理および検査処理が実行された場合と同様に、画像処理を実行した時刻、結果(読み取った文字列など)、所要時間、処理の正否、および処理結果の信頼性を記録する。
【0050】
1-5.トレース装置80によるトレーサビリティ情報の記録処理
制御装置70による各種の画像処理と、トレース装置80によるトレーサビリティ情報の記録処理との関係について、
図4-
図7を参照して説明する。ここでは、一次画像処理として部品カメラ51を用いた部品Pの状態認識処理を実行し、二次画像処理としてヘッドカメラユニット60を用いた部品Pの検査処理を実行するものとする。
【0051】
制御装置70は、
図5に示すように、先ず部品カメラ51に撮像指令を送出し、部品カメラ51の撮像による画像データ(以下、「一次画像データ」と称する)を取得する(S21)。次に、制御装置70は、一次画像データを画像処理して、部品Pの状態(座標値および角度)を算出する(S22)。続いて、制御装置70は、一次画像処理の結果である部品Pの状態が正常であるか否かを判定する(S23)。
【0052】
具体的には、制御装置70は、部品Pの座標値および角度が許容範囲(
図4の表2を参照)に収まっている場合には、一次画像処理の結果が正常であると判定する(S23:Yes)。この場合に(S23:Yes)、適合判定部81は、一次画像処理の結果の信頼性を示す適合条件を一次画像処理が満たすか否かを判定する(S24)。なお、この適合条件は、例えば作業者により予め指定された予定範囲であって、部品Pが位置する座標値および角度の予定範囲に収まることが初期条件として設定されている。
【0053】
情報管理部82は、一次画像処理が適合条件を満たさない場合に(S24:No)、トレーサビリティ情報の記録処理を実行する(S25)。詳細には、情報管理部82は、一次画像処理に用いられた一次画像データ、および一次画像処理に用いられたパラメータを一次画像データに関連付けて、トレーサビリティ情報として記録する。このように、一次画像データは、一次画像処理の結果が正常と判定されたにもかかわらず、その結果が一定の信頼性を有しないことから記録の対象とされる。
【0054】
一方で、情報管理部82は、一次画像処理が適合条件を満たす場合に(S24:Yes)、その結果が一定の信頼性を有することから、一次画像データのトレーサビリティ情報としての記録処理(S25)の実行を省略する。このとき、情報管理部82は、一次画像処データおよびパラメータについて、例えばリングバッファとして記憶部71に確保された記憶領域に一時的に記憶させてもよい。なお、上記の一連の処理において、情報管理部82は、
図4の表1に示すように、一次画像処理を実行した時刻や結果(部品Pの状態)などを記録する。
【0055】
また、一次画像処理の結果についての正否判定(S23)において、部品Pの座標値または角度が許容範囲に収まっていない場合には、制御装置70は、一次画像処理の結果が異常であると判定する(S23:No)。この場合に(S23:No)、情報管理部82は、トレーサビリティ情報の記録処理を実行する(S26)。詳細には、情報管理部82は、一次画像処理に用いられた一次画像データをトレーサビリティ情報として記録する。このとき、情報管理部82は、一次画像処理に用いられたパラメータを一次画像データに関連付けてトレーサビリティ情報として記録する。
【0056】
そして、制御装置70は、エラー処理を実行する(S27)。上記のエラー処理としては、一次画像処理の結果が異常となったことを作業者に報知することが想定される。これにより、異常の原因の除去作業を促すことができる。また、エラー処理としては、上記の他に、再度の位置画像処理を試行したり、再度の部品Pの吸着を試行したりするリカバリー処理を実行することが想定される。
【0057】
一次画像処理の結果が正常である場合には(S23:Yes)、制御装置70は、二次画像処理に移行する。制御装置70は、先ずヘッドカメラユニット60に撮像指令を送出し、ヘッドカメラユニット60の撮像による画像データ(以下、「二次画像データ」と称する)を取得する(S31)。次に、制御装置70は、二次画像データを画像処理して、部品Pの検査処理を実行する(S32)。続いて、制御装置70は、二次画像処理の結果の正否判定(S33)、および必要に応じて適合判定(S34)を実行する。
【0058】
二次画像処理の結果の正否判定(S33)および適合判定(S34)は、一次画像処理の結果の正否判定(S23)および適合判定(S24)と実質的に同様であるため、詳細な説明を省略する。情報管理部82は、二次画像処理が適合条件を満たさない場合に(S34:No)、トレーサビリティ情報の記録処理を実行する(S35)。詳細には、情報管理部82は、二次画像データおよび二次画像処理に用いられたパラメータをトレーサビリティ情報として記録する。このとき、情報管理部82は、さらに、前工程である一次画像処理の結果の信頼性に関わらず、一次画像データおよび一次画像処理に用いられたパラメータをトレーサビリティ情報として記録する。但し、S25において、一次画像データおよび一次画像処理に用いられたパラメータがトレーサビリティ情報として既に記録されている場合には、情報が重複するため、上記の処理を省略してもよい。
【0059】
また、二次画像処理の結果が異常である場合には(S33:No)、情報管理部82は、トレーサビリティ情報の記録処理を実行し(S36)、二次画像処理に用いられた二次画像データをトレーサビリティ情報として記録する。このとき、情報管理部82は、二次画像処理に用いられたパラメータを二次画像データに関連付けてトレーサビリティ情報として記録する。また、情報管理部82は、さらに、前工程である一次画像処理の結果の信頼性に関わらず、一次画像データおよび一次画像処理に用いられたパラメータをトレーサビリティ情報として記録する。また、二次画像処理におけるエラー処理(S37)は、一次画像処理におけるエラー処理(S27)と実質的に同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0060】
上記のように、画像処理に一連で実行される一次画像処理および二次画像処理が含まれる場合に、情報管理部82は、一次画像データや二次画像データなどをトレーサビリティ情報として適宜記録する(S25,S26,S35,S36)。結果として、
図6に示すように、一次画像データおよび二次画像データは、画像処理の正否判定(S23,S33)で異常と判定された場合のみならず、正常と判定された場合にもその画像処理が適合条件を満たさなければ(S24:No,S34:No)、一定の信頼性を有していないとして記録の対象となる。
【0061】
さらに、一次画像データは、後工程の二次画像処理の結果が異常(S33:No)または適合条件を満たさない(S34:No)に、一次画像処理が適合条件を満たさないとして、即ち一次画像処理の結果が一定の信頼性を有していないとして記録の対象となる(S35,S36)。これにより、例えば二次画像処理の異常が、一次画像処理において本来異常と判定すべきであった場合に、トレーサビリティ情報に基づいて異常の原因を特定することが可能となる。
【0062】
1-6.適合条件の設定処理
画像処理の適合判定(S24,S34)に用いられる適合条件は、画像処理の種類に応じて適宜設定される。具体的には、例えば画像処理が部品Pの状態認識処理ならば部品Pが位置する座標値および角度の予定範囲に設定され得る。なお、この予定範囲は、作業者により予め指定された範囲であってもよいし、条件設定部83が自動で設定してもよい。
【0063】
具体的には、条件設定部83は、複数回に亘って実行された画像処理の結果(
図4の表1を参照)の平均値、中央値、または最頻値に基づいて、統計的な適合条件を設定してもよい。例えば、条件設定部83は、正常と判定された画像処理の結果の90%が含まれる範囲を適合条件として設定する。これにより、以降の適合判定において画像処理の結果が同様の分布を示す場合には、画像処理の結果の10%が一定の信頼性を有しないと判定される。
【0064】
このような統計的な適合条件を自動で設定するには、統計値が有意となる程度に画像処理が実行されている必要がある。そこで、条件設定部83は、統計的な適合条件の有意性に応じて採用するか否かを切り換えてもよい。具体的には、
図7に示すように、条件設定部83は、先ず作業者による予定範囲の指定を受け付ける(S41)。
【0065】
次に、条件設定部83は、正常と判定された画像処理の実行回数が規定回数に到達したかを判定する(S42)。この規定回数は、作業者などが任意に指定してもよい。画像処理の実行回数が規定回数に到達していない場合には(S42:No)、条件設定部83は、作業者により指定された予定範囲を適合条件に設定する(S43)。
【0066】
一方で、画像処理の実行回数が規定回数に到達している場合には(S42:Yes)、条件設定部83は、統計値(平均値など)を算出し(S44)、この算出結果に基づいて統計的な適合条件を設置する(S45)。このように、条件設定部83は、画像処理の実行回数に応じて、予定範囲の指定に基づく適合条件と統計的な適合条件とを切り換えて設定する。
【0067】
なお、画像処理の実行回数が規定回数に到達した後に、条件設定部83は、適合条件を固定としてもよいし、画像処理が実行される度に更新してもよい。また、画像処理の実行回数が規定回数に到達した後に、条件設定部83は、例えば作業者などに統計値を提示し、任意に指定された予定範囲を受け付けてもよい。このような構成によると、より適切な適合条件を設定することが可能となる。
【0068】
また、条件設定部83は、画像処理がコード読み取り処理である場合に、適合条件には、識別コードに記録された文字列が規定の文字を有すること、または規定の文字数であることが含まれるように、適合条件を設定してもよい。ここで、識別コードが記録する識別符号は、対象物が類似の属性を有する場合には規定の文字を有し、また一般に規定の文字数で示される。そこで、条件設定部83は、上記のように適合条件を設定する構成としてもよい。
【0069】
さらに、条件設定部83は、識別コードが二次元コードである場合に、適合条件には、複数のセルの数、または二次元コードのサイズが規定値であり、または二次元コードの印字方向が規定方向であることが含まれるように、適合条件を設定してもよい。このような構成によると、適合判定において、セルの数や二次元コードのサイズに基づいて、画像処理(コード読み取り処理)の結果が一定の信頼性を有するかを判定できる。
【0070】
このような構成によると、種々の原因により識別コードを読み取れたものと誤認し、この誤って正常と判定した結果に基づいて装着処理が行われたとしても、その画像処理(コード読み取り処理)に用いられた画像データがトレーサビリティ情報として記録の対象とされる。これにより、装着処理をトレースして、異常の原因となる画像処理を特定することができる。結果として、原因(識別コードの読み込み異常など)を特定することができるので、原因の除去作業を促し、生産効率の維持を図ることができる。
【0071】
さらに、条件設定部83は、上記のような適合条件に加えて、または換えて、画像処理の進行の評価を適合条件としてもよい。画像処理の進行の評価には、画像処理の所要時間、画像処理に含まれる特定の工程の実行回数などが含まれる。例えば、画像データにおける部品Pの位置および角度を検出する画像処理では、理想位置からテンプレートを走査することから、理想位置から遠いほど所持時間が長くなり、またテンプレートを走査するためのループ処理の実行回数が多くなる。
【0072】
このような適合条件の設定手法は、対象物やその付近に異物が付着していたり、対象物に擦り傷が付いていたりすると、これらが画像データに含まれて、画像処理の進行および画像処理の結果に影響を及ぼすことを利用したものである。また、画像処理がコード読み取り処理である場合には、種々の識別コードに対応するため複数種類の読み取りを試行することがあり、誤った種類の読み取りで正常と判定すると所要時間が予定より短くなったり長くなったりすることがある。そこで、上記の構成のように、所要時間が規定範囲内であることを適合条件とすることにより、画像処理の結果の信頼性を判定することができる。
【0073】
1-7.実施形態の構成による効果
実施形態のトレース装置80は、部品装着機1による基板製品の生産処理において実行された画像処理の結果が正常と判定される許容範囲にある場合に、画像処理の結果の信頼性を示す適合条件を画像処理が満たすか否かを判定する適合判定部81と、適合判定部81による判定結果に応じて画像処理に用いられた画像データをトレーサビリティ情報として記録する情報管理部82と、を備える。
【0074】
このような構成によると、画像処理の結果が正常であっても一定の信頼性を有しない場合には、その画像処理に用いられた画像データは、トレーサビリティ情報として記録される(S25,S35)。つまり、トレース装置80は、画像処理において異常が疑われる画像データを記録の対象とする。これにより、画像処理において誤って正常と判定し、後工程において異常が検出された場合に、トレーサビリティ情報として記録された画像データに基づいて、異常の原因となる画像処理を特定することが可能となる。よって、部品装着機1の生産処理を対象としたトレーサビリティを向上できる。
【0075】
また、実施形態において、条件設定部83は、複数回に亘って実行された画像処理の結果に基づいて、統計的な適合条件を設定する。このような構成によると、過去に実行された画像処理の結果に基づいて、どのような画像処理の結果が一定の信頼性を有するのかを示す適合条件を適切に設定することができる。これにより、信頼性の低い結果を判定した画像処理に用いられた画像データを確実に記録の対象にすることができる。また、適合条件を満たす場合に画像データを記録しない構成とすれば(一定の容量を超えると古いものから順削除する態様を含む)、必要以上に画像処理の結果の信頼性が低いとして画像データが過剰に記録されることを防止できる。
【0076】
また、実施形態において、情報管理部82は、適合判定部81により画像処理が適合条件を満たさないと判定された場合に(S24:No、S34:No)、画像処理に用いられた画像データをトレーサビリティ情報として記録する(S25,S35)。このような構成によると、適合条件を満たす場合に(S24:Yes、S34:Yes)、画像データを記録しない構成(リングバッファに一次的に記憶する構成を含む)とすれば、画像データが過剰に記録されることを防止でき、記憶部71の記憶領域を効率的に使用することができる。
【0077】
2.実施形態の変形態様
2-1.適合判定処理について
実施形態において、トレース装置80は、画像処理の適合判定(S24,S34)の結果に応じてトレーサビリティ情報の記録処理を実行する(S25,S35)。トレース装置80は、適用された対基板作業機(部品装着機1)において実行される画像処理の全てを対象として適合判定および記録処理を実行してもよい。また、トレース装置80は、実行される画像処理の一部を対象として適合判定および記録処理を実行してもよい。
【0078】
具体的には、トレース装置80は、例えばトレーサビリティ情報の記録対象情報に基づいて、適合判定および記録処理を実行する構成としてもよい。上記の記録対象情報には、例えば適合判定を実行する画像処理、または画像処理で撮像される対象物に、トレーサビリティ情報を記録するか否かが関連付けられた情報であり、記憶部71に予め記憶されている。適合判定部81は、記録対象情報に基づいて適合判定の実行の要否を判定し、必要な場合にのみ適合判定を実行する。
【0079】
上記のような構成によると、情報管理部82は、記録対象情報において適合判定の実行が必要であり、且つ画像処理が適合条件を満たさない場合にトレーサビリティ情報の記録処理を実行する。これにより、特定の画像処理または対象物に係るトレーサビリティ情報のみが蓄積されることになる。結果として、不要なトレーサビリティ情報が記録されることを防止できるとともに、処理負荷の軽減を図ることができる。
【0080】
上記の記録対象情報は、適合判定を実行する画像処理、または対象物を具体的に設定される他に、画像処理や対象物の特性により適合処理の実行の要否を設定してもよい。例えば、対象物の特性として対象物の寸法を設定し、適合判定部81は、対象物の寸法が設定値を超えるか否かに基づいて、適合判定の実行の要否を判定し、必要な場合にのみ適合判定を実行する。
【0081】
なお、上記の対象物の特性は、例えば対象物(基板、部品、識別コードなど)の全体または特定部位の寸法、形状、画像データにおける占有面積であってもよい。また、上記の対象物の特性を適合条件として設定してもよい。適合判定部81は、画像処理が対象物の特性を含む適合条件を満たすか否かを判定してもよい。
【0082】
2-2.トレーサビリティ情報について
実施形態において、情報管理部82は、画像処理の結果が異常である場合(S23:No、S33:No)、および適合条件を画像処理が満たさない場合に(S24:No、S34:No)、画像データおよびパラメータをトレーサビリティ情報として記録する構成とした。
【0083】
これに対して、情報管理部82は、上記のように画像データなどをトレーサビリティ情報として分類可能に記録するのであれば、画像処理に用いられた画像データの全てを記録する構成としてもよい。また、情報管理部82は、少なくとも画像処理に用いられた画像データをトレーサビリティ情報として記録するのであれば、必ずしもパラメータをトレーサビリティ情報に含ませなくてもよい。
【0084】
2-3.トレース装置について
実施形態において、トレース装置80が部品装着機1に組み込まれた構成を例示した。これに対して、トレース装置80は、部品装着機1を構成するヘッドカメラユニット60などにおいて画像処理が実行される場合には、ヘッドカメラユニット60などに組み込まれた構成としてもよい。また、トレース装置80は、部品装着機1の外部装置、例えば部品装着機1が構成する生産ラインを統括制御するホストPCに組み込まれた構成としてもよい。
【0085】
実施形態において、対基板作業機は、部品装着機1である構成とした。これに対して、トレース装置80は、基板製品の生産処理を実行する際に画像処理を実行するものであれば、部品装着機1以外の対基板作業機に適用することができる。具体的には、対基板作業機は、部品装着機1とともに生産ラインを構成するはんだ印刷機、部品を装着された回路基板を検査する検査装置であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1:部品装着機(対基板作業機)、 40:装着ヘッド、 51:部品カメラ、 52:基板カメラ、 60:ヘッドカメラユニット、 70:制御装置、 71:記憶部、 72:装着制御部、 80:トレース装置、 81:適合判定部、 82:情報管理部、 83:条件設定部、 90:基板(回路基板、構成品)、 P:部品(構成品)