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特許7212171グルカゴン類似体アゴニストおよびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】グルカゴン類似体アゴニストおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/605 20060101AFI20230117BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 38/28 20060101ALN20230117BHJP
   A61K 9/08 20060101ALN20230117BHJP
   A61K 47/02 20060101ALN20230117BHJP
   A61K 47/22 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
C07K14/605 ZNA
A61K38/26
A61K45/00
A61P3/10
A61K38/28
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/22
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021545481
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 US2020015539
(87)【国際公開番号】W WO2020163125
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】62/801,344
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】アルシーナ-フェルナンデス,ジョルジ
(72)【発明者】
【氏名】コスクン,タマー
(72)【発明者】
【氏名】ガイザー,アンドレア レニー
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527975(JP,A)
【文献】特表2013-523619(JP,A)
【文献】特表2014-510739(JP,A)
【文献】国際公開第2017/210241(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/163473(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 1/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HSXGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQXFVK(4-Pal)LLSTのアミノ酸配列を含む化合物であって、式中、XはQまたはDab(Ac)であり、XはQまたはAである(配列番号2)、化合物。
【請求項2】
がQであり、XがQである(配列番号3)、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がQであり、XがAである(配列番号4)、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がDab(Ac)であり、XがAである(配列番号5)、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
がDab(Ac)であり、XがQである(配列番号6)、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容される緩衝液を含む、医薬組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される緩衝液がヒスチジン緩衝生理食塩水である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
追加の治療薬をさらに含む、請求項またはに記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記追加の治療薬がインスリンである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
個体の低血糖症を治療するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物を含む、組成物
【請求項11】
追加の治療薬と組み合わせて使用される、請求項10に記載の組成物
【請求項12】
前記追加の治療薬がインスリンである、請求項11に記載の組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に生物学および医学に関連し、より具体的には、天然のヒトグルカゴンと比較した場合に、改善された溶解性、改善された化学的安定性、改善された物理的安定性および/またはポンプ使用のための改善された保存適合性を有するグルカゴン類似体アゴニスト(GAA)化合物に関し、かつそれを含む医薬組成物、および低血糖症の治療におけるそれらの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年間、糖尿病の有病率は上昇し続けている。糖尿病の現在の標準治療としては、食事制限および運動、ならびに経口薬および注射可能な血糖降下薬での治療が挙げられる。
【0003】
グルカゴンは、膵臓のランゲルハンス島のα細胞で分泌される29アミノ酸のペプチドホルモン(配列番号1)であり、グルコース恒常性に関与する。通常の生理学的条件下では、血糖が下がるとグルカゴンが増加し、肝臓のグリコーゲンがグルコースに分解されて血流中に放出される。糖尿病を患っている個体では、糖尿病治療の副作用として低血糖症が発生する可能性がある。さらに、そのような個体の低血糖症に対する生理学的グルカゴン応答が損なわれ、グルコースレベルが正常範囲に戻るのがより困難になる可能性がある。治療せずに放置すると、重度または急性の低血糖症は、発作、意識喪失、脳損傷、さらには死などの深刻な問題を引き起こす可能性がある。
【0004】
グルカゴンは、急性低血糖症を治療するための確立された治療法である。実際、緊急のグルカゴン投与により、その投与後数分以内に正常な血糖値を回復することができる。しかしながら、投与のために調製されたグルカゴンにはいくつかの不利点がある。例えば、生理的pHまたはほぼ生理的pHの水性緩衝液において、グルカゴンの溶解度は低くなる。同様に、低いpHまたは高いpHで調合された場合、グルカゴンは、化学的安定性が低く、ゲル化や可溶性凝集体の形成などの物理的安定性も低くなる。これらの不利点を最小限に抑えるために、現在商用のグルカゴンベースの治療法は、投与時に再構成するように指示された凍結乾燥粉末として提供される。緊急事態では、凍結乾燥粉末を再構成することは面倒で不便である。したがって、生理学的条件下でグルカゴンの生物学的性能を維持しながら、非生理学的条件下で十分な水溶性、化学的安定性および物理的安定性を示す治療用途の化合物を提供することが望ましい。
【0005】
酸性緩衝液および生理学的pH緩衝液への溶解性および安定性を改善するためのアミノ酸置換を有するグルカゴン類似体が知られている。例えば、国際特許出願公開第WO2008/086086号、WO2011/0293586、WO2015/094875、WO2015/094876およびWO2015/094878を参照されたい。
【0006】
それにもかかわらず、有効なグルコースコントロールを提供することができ、生理学的条件下でグルカゴンの生物学的性能を維持しながら、非生理学的条件下で十分な溶解性ならびに化学的および物理的安定性も示す、低血糖症を治療するための代替治療薬の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0007】
この必要性に対処するために、本開示は、第一に、以下のアミノ酸配列を含む化合物を記載する。
HSXGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQXFVK(4-Pal)LLST(式I)、式中、XはQまたはDab(Ac)であり、XはQまたはA(配列番号2)であり、C-末端アミノ酸はC末端にカルボン酸を含む。
【0008】
いくつかの例において、化合物が以下のアミノ酸配列を含むかまたは有するように、XはQであり、XはQである。
HSQGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQQFVK(4-Pal)LLST(配列番号3)、式中、C末端アミノ酸はC末端にカルボン酸を含む。
【0009】
他の例では、化合物が以下のアミノ酸配列を含むかまたは有するように、XはQであり、XはAである。
HSQGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQAFVK(4-Pal)LLST(配列番号4)、式中、C末端アミノ酸はC末端にカルボン酸を含む。
【0010】
他の例では、化合物が以下のアミノ酸配列を含むかまたは有するように、XはDab(Ac)であり、XはAである。
HS[Dab(Ac)]GTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQAFVK(4-Pal)LLST(配列番号5)、式中、C末端アミノ酸はC末端にカルボン酸を含む。
【0011】
他の例では、化合物が以下のアミノ酸配列を含むかまたは有するように、XはDab(Ac)であり、XはQである。
HS[Dab(Ac)]GTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQQFVK(4-Pal)LLST(配列番号6)、式中、C末端アミノ酸はC末端にカルボン酸を含む。
【0012】
さらに他の例では、化合物は
HSQGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQQFVK(4-Pal)LLST(配列番号3)、HSQGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQAFVK(4-Pal)LLST(配列番号4)、HS[Dab(Ac)]GTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQAFVK(4-Pal)LLST(配列番号5)、またはHS[Dab(Ac)]GTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQQFVK(4-Pal)LLST(配列番号6)であり、式中、C末端アミノ酸はC末端のカルボン酸を含む。
【0013】
第二に、本明細書の化合物の少なくとも1つおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が記載されている。いくつかの例において、薬学的に許容される担体は、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、クエン酸緩衝生理食塩水またはヒスチジン緩衝生理食塩水などの緩衝液である。特定の例において、緩衝液は、ヒスチジン、ヒスチジン緩衝液、またはヒスチジン緩衝生理食塩水である。他の例では、医薬組成物は、担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含むことができる。
【0014】
第三に、本明細書の少なくとも1つの化合物を個体に投与するためのキットが記載されている。いくつかの例において、キットは、少なくとも1つの化合物を投与するための注射器および針を含む。特定の例において、化合物は、注射器内の水溶液中に事前に調合されている。他の例では、化合物は、ポンプ設定で使用するために、カートリッジ内の水溶液中に事前に調合されている。さらに他の例では、キットは、例えば、ポンプ設定に使用するために別個のカートリッジ内の水溶液中に事前に調合された、インスリンなどの他の抗糖尿病薬、特に速効型インスリン類似体などの少なくとも1つの追加の治療薬を含む。
【0015】
第四に、本明細書の化合物を使用するための方法、特に低血糖症を治療するために化合物を使用するための方法が記載されている。この方法は、少なくとも、それを必要とする個体に、本明細書における有効量の少なくとも1つの化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む。いくつかの例において、少なくとも1つの化合物は、例えば、非経口、静脈内、皮下、筋肉内、または経皮などの任意の標準的な投与経路を介して投与することができる。特定の例において、少なくとも1つの化合物は、皮下(SQ)または筋肉内(IM)投与される。
【0016】
特定の例において、少なくとも1つの化合物は、必要に応じて(すなわち、低血糖症の急性例に応答して)、個体に対してSQ投与される。同様に、他の例において、少なくとも1つの化合物は、毎日(QD)、隔日、週3回、週2回、週1回(すなわち、毎週(QW))、隔週(すなわち、1週おきに)、または毎月、SQに投与することができる。特定の例において、少なくとも1つの化合物は、隔日SQに、週3回SQに、週2回SQに、週1回SQに、隔週SQに、または毎月SQに投与することができる。特定の例において、少なくとも1つの化合物がQW投与される。あるいは、ポンプシステムに関連して使用される場合、少なくとも1つの化合物は、長期的な設定で(すなわち、連続的に多くの日に)、1日当たり複数回のマイクロデリバリーで投与することができる。あるいはなおも、少なくとも1つの化合物は、注射器システムを使用して長期的な設定でマイクロドーズで投与する(すなわち、毎日のマイクロインジェクション)ことができる。
【0017】
この方法はまた、少なくとも1つの化合物を有効量の少なくとも1つの追加の治療薬と組み合わせて投与するステップを含むことができる。いくつかの例において、少なくとも1つの追加の治療薬を、少なくとも1つの化合物と同時に、別々に、または連続して投与することができる。
【0018】
いくつかの例において、少なくとも1つの追加の治療薬を、少なくとも1つの化合物と同じ頻度で(すなわち、毎日、隔日、週に2回、毎週または毎月)投与することができる。他の例において、少なくとも追加の治療薬は、少なくとも1つの化合物とは異なる頻度で投与される。少なくとも1つの追加の治療薬は、例えば、非経口、静脈内、皮下、筋肉内、または経皮などの任意の標準的な投与経路を介して投与することができる。いくつかの例において、少なくとも1つの追加の治療薬の投与経路は、少なくとも1つの化合物と同じであってもよいか、または少なくとも1つの化合物とは異なっていてもよい。
【0019】
いくつかの例において、個体は糖尿病(PwD)、特に1型糖尿病の人である。他の例において、個体は、糖尿病を患っているかもしれないし、患っていないかもしれない、低血糖症の急性例(すなわち、緊急投与)を経験している人である。
【0020】
方法はまた、血糖を測定または取得すること、およびそのような得られた値を1つ以上のベースライン値または以前に得られた値と比較して治療の有効性を評価することなどのステップを含み得る。
【0021】
これらの方法はまた、食餌療法および運動と組み合わせることができ、および/または上記で論じたもの以外の追加の治療薬と組み合わせることができる。
【0022】
さらに、インスリンポンプまたはバイホルモン(例えば、インスリン-グルカゴン)ポンプシステムなどのポンプシステムで本明細書の化合物を使用するための方法が提供される。
【0023】
上記を考慮して、本明細書の化合物の少なくとも1つを含むいくつかの使用が提供される。例えば、本明細書の化合物は、治療、特に低血糖症の治療に使用するために提供することができ、任意選択で、少なくとも1つの化合物との別個の、連続的または同時の組み合わせのための少なくとも1つの追加の治療薬を提供することができる。同様に、本明細書の化合物は、低血糖症を治療するための薬剤を製造する際に使用するために提供することができ、薬剤は、任意選択で、少なくとも1つの追加の治療薬をさらに含み得る。
【0024】
本明細書の化合物の利点は、それらが野生型グルカゴン活性を維持するだけでなく、水溶液中の天然のヒトグルカゴンと比較した場合、高い水溶性、高い化学的安定性、高い物理的安定性、または低いフィブリル化を示すことである。さらに、本明細書の化合物は、天然のヒトグルカゴンと同様の活性(例えば、ヒトグルカゴンと比較した場合の、グルカゴン受容体における効力、作用時間および選択性)を示す。さらに、本明細書の化合物は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体で組換えヒトグルカゴンよりも最大約10倍高い選択性を示し、グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)受容体およびグルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)受容体で活性を示さず、ならびに約5~7の範囲のpHで向上した溶解性を示す。このように、本明細書の化合物は、急性低血糖症の事例(すなわち、緊急投与)を含む低血糖症を治療するのに適している。本明細書の化合物の改善された特性はまた、ポンプ投与のための水溶液中のグルカゴンの調製を可能にする。同様に、化合物は、閉ループ血糖コントロールを提供するために、デュアルチャンバーポンプで速効型インスリン類似体と組み合わせて投与することができる。さらに、本明細書の化合物は、皮下投与時の非常に類似した薬物動態プロファイルに加えて、天然のヒトグルカゴンに非常に類似した会合状態および親水性プロファイルを有する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義と略語
不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」による要素への言及は、文脈が1つおよび1つのみの要素があることを明確に要求しない限り、複数の要素が存在する可能性を排除しない。よって、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0026】
本明細書で使用されるとき、「約」とは、例えば、記載された濃度、長さ、分子量、pH、配列同一性、時間枠、温度、または体積などの値(複数可)の統計的に有意な範囲内を意味する。そのような値または範囲は、所与の値または範囲の典型的には20%以内、より典型的には10%以内、さらにより典型的には5%以内の規模以内であり得る。「約」によって包含される許容される変動は、研究での特定の系に依存し、当業者によって容易に理解され得る。したがって、「約」は、値にデバイスの固有のエラーの変動、値を決定するために使用される方法/プロトコル/手法の変動、またはさらに調査個体間に存在する変動が含まれることを示すために使用される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「活性」、「活性化する」、「活性化すること」などは、以下に記載されるインビトロアッセイなどの当該技術分野で知られているアッセイを使用して測定されるように、受容体に結合する、および受容体での応答を誘導するための本明細書の化合物の能力を意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」は、化学的観点から、1つ以上のアミン基および1つ以上のカルボン酸基の存在によって特徴付けられ、他の官能基を含み得る分子を意味する。当該技術分野で知られているように、標準アミノ酸として指定され、あらゆる生物によって産生されるほとんどのペプチド/タンパク質の構成要素として使用される20個のアミノ酸のセットが存在する。本開示のアミノ酸配列は、20個の天然に存在するアミノ酸の標準的な1文字または3文字のコードを含有する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「類似体」は、標的受容体を活性化し、その受容体の天然アゴニストによって誘発される少なくとも1つのインビボまたはインビトロ効果を誘発する、合成ペプチドなどの化合物を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、それを必要とする個体への単回または複数回投与時に、診断または治療中のそのような個体において所望の効果(すなわち、例えば、血糖の増加、および/または体重もしくは体脂肪の減少などの個体の状態における臨床的に測定可能な差異を生じさせ得る)を提供する、本明細書の1つ以上の化合物、またはその薬学的に許容される塩の量、濃度または用量を意味する。有効量は、既知の手法の使用によって、および同様の状況下で得られた結果を観察することによって、当業者により容易に決定されることができる。個体についての有効量を決定する際には、哺乳動物の種、その大きさ、年齢、および全体的な健康状態、関与する特定の疾患または障害、疾患または障害の程度または関与度または重症度、個体の応答、投与される特定の化合物、投与の様式、投与される調製物の生物学的利用能の特徴、選択される用法、併用薬の使用、ならびに他の関連する状況を含むが、これらに限定されない、多数の因子が考慮される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「フィブリル化」は、グルカゴンが低いまたは高いpHで調合されたときに観察されるゲル化および可溶性会合体形成を意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「50%効果濃度」または「EC50」は、用量反応曲線(例えば、cAMP)などのアッセイエンドポイントの50%の活性化/刺激をもたらす化合物の濃度を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」は、本明細書の化合物のうちの少なくとも1つを、1つ以上の追加の治療薬と同時に、順次に、または1つ以上の追加の治療薬と組み合わせた単一の調合で投与することを意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「グルカゴン類似体アゴニスト」または「GAA」は、グルカゴン、特に天然のヒトグルカゴン(配列番号1)または組換えのヒトグルカゴンと構造的類似性を有するが、それらとは複数の違いを有する化合物を意味する。本明細書の化合物は、グルカゴン受容体に対して親和性およびグルカゴン受容体において活性を有する化合物をもたらすアミノ酸配列を含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、「低血糖症」は、約72mg/dL(約4mmol/L)未満の血糖を意味する。
【0036】
本明細書で使用する場合、「それを必要とする個体」とは、例えば、本明細書に列挙されるものを含む、治療または治療法を必要とする状態、疾患、障害、または症状を有する、ヒトなどの哺乳動物を意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「非標準アミノ酸」は、細胞内で自然に発生し得るが、ペプチド合成には関与しないアミノ酸を意味する。非標準アミノ酸はペプチドの構成要素である可能性があり、多くの場合、ペプチド内の標準アミノ酸の修飾によって(すなわち、翻訳後修飾を介して)生成される。非標準アミノ酸には、上記の標準アミノ酸とは反対の絶対キラリティーを有するD-アミノ酸が含まれる場合がある。本明細書において、「Aib」はアルファアミノイソ酪酸であり、「Dab(Ac)」はアセチル基(Ac)が4位でアミノ基とアミド結合を形成する2,4-ジアミノ酪酸(Dab)であり、「4-パル」は3-(4-ピリジル)-L-アラニン/4-ピリジル-L-アラニンである。
【0038】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される緩衝液」は、当業者に知られている標準的な医薬緩衝液のいずれかを意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「治療する、治療すること」または「治療すること、治療するため」とは、既存の状態、疾患、障害または症状の進行または重症度を軽減、抑制、逆転、減速または停止することを意味する。
【0040】
特定の略語は次のように定義される。「ACN」はアセトニトリルを指す。「ACR」は尿中アルブミン/尿中クレアチニン比を指す。「amu」は原子質量単位を指す。「cAMP」はサイクリックアデノシン一リン酸を指す。「CRC」は完全奏効曲線を指す。「DIC」はジイソプロピルカルボジイミドを指す。「DMF」はジメチルホルムアミドを指す。「DMSO」はジメチルスルホキシドを指す。「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を指す。「EIA/RIA」は酵素イムノアッセイ/ラジオイムノアッセイを指す。「Fmoc」はフルオレニルメトキシカルボニルを指す。「hr」は時間を指す。「HEPES」は4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を指す。「HOBt」はヒドロキシベンゾトリアゾールを指す。「HTRF」は、ホモジナス時間分解蛍光を指す。「IV」は静脈内を指す。「kDa」はキロダルトンを指す。「LC-MS」は液体クロマトグラフィー質量分析法を指す。「min」は分を指す。「MS」は質量分析を指す。「OtBu」はO-tert-ブチルを指す。「Pbf」は、NG-2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニルを指す。「RP-HPLC」は逆相高速液体クロマトグラフィーを指す。「SQ」は皮下を指す。「SEM」は平均値の標準誤差を指す。「tBoc」はtert-ブトキシカルボニルを指す。「TFA」はトリフルオロ酢酸を指す。「Trt」はトリチルを指す。「WGA」はコムギ胚芽凝集素を指す。
【0041】
グルカゴン類似体アゴニスト
本明細書の化合物は、天然のヒトグルカゴン(配列番号1)とは構造上の違いがある。例えば、本明細書の化合物は、天然のヒトグルカゴン(配列番号1)の番号付けに関して、3、16、21、24、25、27および28位のうちの1つ以上で修飾を含む。本明細書の化合物の例示的なアミノ酸配列としては、以下が挙げられる(天然のヒトグルカゴン(配列番号1)の対応する残基に対する特定の変化は太字で示されている)。

ここで、各々のC末端アミノ酸は、C末端にカルボン酸を含み得る。
【0042】
さらに、インビボ適合性および有効性を改善するため、本明細書の化合物は、複数の無機および有機酸/塩基のいずれかと反応して、薬学的に許容される酸/塩基付加塩を形成し得る。薬学的に許容される塩およびそれらを調製するための一般的な手法は、当該技術分野で周知である(例えば、Stahl et al.,「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,」2nd Revised Edition(Wiley-VCH,2011)を参照されたい)。本明細書での使用のための薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、トリフルオロ酢酸塩、塩酸塩、および/または酢酸塩が挙げられる。
【0043】
本明細書の化合物の半減期は、例えば、以下の実施例に記載されるものを含む、当該技術分野で知られている手法を使用して測定することができる。同様に、グルカゴン受容体に対する本明細書の化合物の親和性は、例えば、以下の実施例に記載されるものを含む、受容体結合レベルを測定するための当該技術分野で知られている手法を使用して測定され得、一般に阻害定数(K)値として表される。さらに、グルカゴン受容体における本明細書の化合物の活性は、例えば、以下の実施例に記載されるものを含む当該技術分野で知られている手法を使用して測定することができ、一般にEC50値として表される。
【0044】
本明細書の化合物を、非経口経路によって(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または経皮的に)投与することができる医薬組成物として調合することができる。そのような医薬組成物およびそれを調製するための手法は、当該技術分野においてよく知られている。例えば、Remington,「The Science and Practice of Pharmacy」(D.B.Troy ed.,21st Edition,Lippincott,Williams&Wilkins,2006)を参照されたい。特定の例において、本明細書の化合物は、SQまたはIMに投与される。しかしながら、代替的には、化合物は、例えば、錠剤または経口投与のための他の固体、徐放性カプセル、およびクリーム、ローション、吸入剤などを含む現在使用されている任意の他の形態などの他の薬学的に許容される経路のための形態で調合され得る。
【0045】
本明細書の化合物は、医師によって投与され得るか、または注射を使用して自己投与され得る。ゲージサイズおよび注入容量は、当業者によって容易に決定され得ることが理解される。ただし、注入容量は、約2mL以下、さらには約1mL以下であり、ニードルゲージは、約27G以上、さらには約29G以上であり得る。
【0046】
本開示はまた、本明細書の化合物、またはその薬学的に許容される塩を合成するために有用な新規な中間体および方法を提供し、したがってこれらを包含する。本明細書の中間体および化合物は、当該技術分野で周知のさまざまな手法によって調製することができる。例えば、化学合成を使用する方法は、以下の実施例に例示される。記載される経路の各々についての具体的な合成ステップを、本明細書の化合物を調製する種々の方法において組み合わせることができる。試薬および出発材料は、当業者にとって容易に入手可能である。
【0047】
このように、医薬組成物としては、配列番号2および薬学的に許容される担体を有する有効量の化合物、配列番号3および薬学的に許容される担体を有する有効量の化合物、配列番号4および薬学的に許容される担体を有する有効量の化合物、配列番号5および薬学的に許容される担体を有する有効量の化合物、または配列番号6および薬学的に許容される担体を有する有効量の化合物、またはさらにそれらと薬学的に許容される担体との組み合わせが挙げられ得る。
【0048】
本明細書の化合物は、一般に、広い投与量範囲にわたって有効である。本明細書の化合物またはそれを含む医薬組成物の例示的な用量は、個体の1キログラム(kg)あたりのミリグラム(mg)またはマイクログラム(μg)、またはピコグラム(pg)量であり得る。このようにして、1日用量は約1μg~約100mgとなり得る。
【0049】
ここで、医薬組成物中の本明細書の化合物の有効量は、約0.01mg~約10mg、約0.1mg~約3mg、または約0.01mg~約0.03mgの用量であり得る。ただし、当業者は、いくつかの例において、有効量(すなわち、用量/投薬量)が前述の範囲の下限を下回りかつ十分に適切である可能性があり、一方、他の場合には、有効量は、より多い用量であり得、許容できる副作用を伴って使用され得ることが理解される。
【0050】
さらに、医薬組成物は、生理学的に許容可能なpHを有し得る。いくつかの例において、pHは、約4~約8、または約5~約6の範囲であり得る。
【0051】
本明細書の化合物の少なくとも1つに加えて、医薬組成物には、1つ以上の追加の治療薬、特に他の抗糖尿病薬または減量薬が含まれ得る。いくつかの例において、追加の治療薬は、インスリン、特にHumalog(登録商標)(Eli Lilly and Company;インディアナ州インディアナポリス)などの速効型インスリンであり得る。
【0052】
本明細書の化合物は、キットの一部として提供され得る。いくつかの例において、キットは、本明細書の少なくとも1つの化合物(および任意選択で少なくとも1つの追加の治療薬)を個体に投与するためのデバイスを含む。特定の例において、キットは、本明細書の少なくとも1つの化合物(および任意選択で少なくとも1つの追加の治療薬)を投与するための注射器および針を含む。特定の例において、本明細書の少なくとも1つの化合物(および任意選択で少なくとも1つの追加の治療薬)は、注射器内の水溶液中に予め調合される。
【0053】
代替的に、本明細書の化合物は、インスリンポンプまたは二ホルモン(例えば、インスリン-グルカゴン)ポンプシステムなどのポンプシステムで使用され得る。
【0054】
本明細書の化合物は、標準的な手動または自動化された固相合成手順を使用して、当該技術分野で知られている任意の数のペプチド合成手法により合成され得る。自動ペプチド合成装置は、例えば、Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティー)およびProtein Technologies Inc.(アリゾナ州ツーソン)製である。固相合成用の試薬は、商業的供給源から容易に入手できる。固相合成装置を、干渉基のブロック、反応中のアミノ酸の保護、カップリング、脱保護、および未反応のアミノ酸のキャッピングに関する製造業者の指示に従って使用することができる。
【0055】
通常、N-α-カルバモイルで保護されたアミノ酸と、樹脂に結合した成長中のペプチド鎖のN末端アミノ酸は、DMF、N-メチルピロリドン、塩化メチレンなどの不活性溶媒中において、ジイソプロピル1-カルボジイミドおよび1-ヒドロキシベンゾトリアゾールなどのカップリング剤の合成存在下で、室温でカップリングされる。TFAまたはピペリジンなどの試薬を使用して、Nα-カルバモイル保護基を得られたペプチド樹脂から除去し、ペプチド鎖に付加するために次に望ましいNα-保護アミノ酸を用いてカップリング反応を繰り返す。適切なアミン保護基は当該技術分野でよく知られており、例えば、Green&Wuts,「Protecting Groups in Organic Synthesis,」(John Wiley and Sons,1991)に記載されている。最も一般的に使用される例としては、tBocおよびFmocが挙げられる。合成の完了後、ペプチドは、酸性条件下で標準的な処理方法を使用して、同時の側鎖の脱保護により固相支持体から切断される。
【0056】
当業者は、本明細書に記載のペプチド鎖をC末端カルボン酸を用いて合成できることを理解するであろう。C末端カルボン酸ペプチドの合成には、Wang樹脂とクロロトリチル樹脂をFmoc合成で使用できる。
【0057】
通常、C8またはC18カラムでRP-HPLCを使用し、0.05%~0.1%TFAの水-ACN勾配を使用して、粗ペプチドを精製する。純度は分析用RP-HPLCで確認できる。ペプチドの同一性はMSによって確認できる。ペプチドは、広いpH範囲で水性緩衝液に可溶化できる。
【0058】
グルカゴン類似体アゴニストの使用方法
本明細書の化合物の一使用は、個体、特に糖尿病を患っている個体の血糖コントロールを改善するためのインスリンの補助としてのものである。これに関して、本明細書の化合物を投与することは、過剰なインスリンの投与または遊離によって引き起こされた可能性のある低血糖症の急性例を急速に弱めることによって、血糖コントロールをもたらすことができる。あるいは、糖尿病を患っていない個体において、低血糖症は、特定の薬物療法(例、キニン)、過剰なアルコール摂取、妊娠、肝臓、心臓または腎臓に影響を与える障害(例えば、肝炎)、食欲不振などの摂食障害、過剰なインスリンが原因となる膵臓の腫瘍(例えば、インスリノーマまたはネシジオブラストーシス)、さらには副腎または下垂体の障害に起因する特定のホルモン欠乏症によって引き起こされる可能性がある。したがって、本明細書の化合物を、これらの例においても低血糖症を治療するために使用できると考えられる。
【0059】
この方法は、本明細書に記載のステップを含むことができ、必ずしもそうとは限らないが、記載の順序で実施され得る。しかしながら、他の順序も考えられる。さらに、個々のまたは複数のステップは、時間的に並行しておよび/または重複して、および/または個別に、または複数回繰り返されるステップで実施され得る。さらに、これらの方法は、追加の不特定の工程を含み得る。
【0060】
したがって、そのような方法には、糖尿病を患っているまたはそれに罹患している個体を選択することが含まれ得る。あるいは、方法には、糖尿病を患っている、または糖尿病にかかりやすく、低血糖症の急性例を経験している個体を選択することが含まれ得る。あるいは、方法には、糖尿病を患っていないが、低血糖症の急性例を経験している個体を選択することが含まれ得る。
【0061】
方法にはまた、本明細書に記載されるような医薬組成物の形態であり得る、本明細書の少なくとも1つの化合物の有効量を個体に投与することが含まれ得る。いくつかの例において、少なくとも1つの化合物/医薬組成物は、インスリン、特に速効型インスリン類似体などの1つ以上の追加の治療薬を含むことができる。
【0062】
少なくとも1つの化合物および任意選択の追加の治療薬の濃度/用量/投与量は、本明細書の他の場所で論じられている。
【0063】
投与経路に関して、少なくとも1つの化合物またはそれを含む医薬組成物を、例えば、経口、注射(すなわち、動脈内、静脈内、腹腔内、脳内、脳室内、筋肉内、眼内、門脈内または病変内)、徐放システム、または埋め込みデバイスなどによる既知の方法に従って投与することができる。特定の例において、少なくとも1つの化合物またはそれを含む医薬組成物を、ボーラス注射によって(QDまたはQW)または連続的に(マイクロドージングまたはマイクロインフュージョンを含む)SQ投与することができる。他の例において、少なくとも1つの化合物またはそれを含む医薬組成物を、ボーラス注射によってIM内投与することができる。
【0064】
投与頻度に関して、低血糖症の急性例について、必要に応じて、少なくとも1つの化合物またはそれを含む医薬組成物を投与することができる。あるいは、少なくとも1つの化合物またはそれを含む医薬組成物を、毎日、隔日、週3回、週2回、週1回(すなわち、毎週)、隔週(すなわち、1週おきに)、または毎月、に投与することができる。特定の例において、少なくとも1つの化合物またはそれを含む医薬組成物を、毎日(QD)SQに、隔日SQに、週3回SQに、週2回SQに、週1回(QW)SQに、隔週SQに、または毎月(QM)SQに投与することができる。特定の例において、少なくとも1つの化合物またはそれを含む医薬組成物を、QDまたはQW投与する。他の例において、少なくとも1つの化合物またはそれを含む医薬組成物を、毎日IMに、隔日IMに、週3回IMに、週2回IMに、週1回IMに、隔週IMに、または毎月IMに投与される。
【0065】
少なくとも1つの化合物またはそれを含む医薬組成物が有効量のインスリンと組み合わせて使用される例に関して、インスリンを、少なくとも1つの化合物またはそれを含む医薬組成物と同時に、別々に、または連続して投与することができる速効型インスリンであり得る。この例において、少なくとも1つの化合物および速効型インスリンは、ポンプ設定で使用するために、別個のカートリッジ内の水溶液中に予め調合される。
【0066】
このようにして、インスリンを、少なくとも1つの化合物またはそれを含む医薬組成物と同じ頻度で(すなわち、隔日、週に2回、または特に毎週)投与することができる。あるいは、インスリンを、少なくとも1つの化合物またはそれを含む医薬組成物とは異なる頻度で投与することができる。さらに、インスリンは、少なくとも1つの化合物と同じまたは異なる経路で投与することができる(例えば、両方がSQ、一方がSQ、他方が経口、一方がSQ、他方がIMなど)。
【0067】
この方法は、食事療法および運動と組み合わせることができ、および/または上記で論じたもの以外の追加の治療薬と組み合わせることができることがさらに企図される。
【実施例
【0068】
以下の非限定的な実施例は、限定ではなく例示の目的で提供される。
【0069】
ペプチド合成
実施例1:
実施例1は、以下のアミノ酸配列を有する化合物である。
HSQGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQQFVK(4-Pal)LLST-OH(配列番号3)。
【0070】
構造的に、配列番号3の化合物は以下の通りである。
【化1】

式中、上記の構造は、展開されている16位のAibおよび25位の4-Palを除いて、標準的な1文字アミノ酸コードを示す。
【0071】
ここで、配列番号3の化合物は、Protein Technologies Inc.のSymphony Instrumentでの固相ペプチド合成によって生成される。合成(0.125mmolスケール)は、Fmoc-Thr-(tBu)-Wangレジン(Advanced Chem Tech)から始まり、約0.32mmol/gで置換される。合成では、Fmoc/tBu保護基戦略を使用する。アミノ酸側鎖誘導体は、Arg(Pbf)、Asp(OtBu)、Gln(Trt)、Glu(OtBu)、His(Trt)、Lys(Boc)、Ser(OtBu)、Thr(OtBu)、Trp(Boc)およびTyr(OtBu)である。カップリングを、DICで活性化された約10当量のアミノ酸およびDMF中のシアノヒドロキシイミノ酢酸エチル(Oxyma)(1:1:1のモル比)で実施する。カップリングを室温で3時間実施する。
【0072】
同時の樹脂からの開裂および側鎖保護基の除去を、TFA:トリイソプロピルシラン:1,2-エタンジチオール:水:チオアニソール90:4:2:2:2(v/v)を含む溶液中、室温で2時間実施する。溶液をろ過し、ペプチドを冷ジエチルエーテルで沈殿させ、4000rpmで2分間遠心分離する(冷エーテル洗浄を3回繰り返す)。
【0073】
粗ペプチドを10%酢酸を含む40mLの水に溶解し、C18 RP-HPLCカラム(Waters SymmetryPrep7μm、19x300mm)において18mL/minの流量で精製する。試料は、90分間にわたって16%~36%Bの線形AB勾配で溶出され、ここで、A=水中の0.1%TFAおよびB=ACNである。生成物は約25%Bで溶出する。TFA塩は、結合したTFA画分を0.1%TFA水溶液で2倍の容積に希釈することにより、酢酸塩に変換される。材料をカラムにロードし、続いて50mLの水をカラムにロードし、次いで250mLの0.1M酢酸アンモニウム溶液とさらに50mLの水をロードする。試料は、75分間にわたって5%~20%Bの線形AB勾配で溶出され、ここで、A=2%酢酸水溶液、B=ACNである。生成物は約18%Bで溶出する。純画分を合わせて凍結乾燥する。
【0074】
ペプチドの純度および分子量(MW)を、単一の四重極MS検出器を備えたAgilent 1240 Infinity II LC-MSシステムで確認する。分析用HPLC分離を、Acquity UPLC RP18、1.7μm、2.1mmx100mmカラムで、20分間にわたって10%~40%Bの直線AB勾配で行い、ここで、A=水中の0.05%TFAおよびB=ACN中の0.05%TFAであり、流量は0.5mL/min(波長220nm)である。化合物を>98%の純度に精製し、1原子質量単位(amu)以内の計算値に対応するMWを有することを確認する。MW=3410.8;計算値:M+2H/2=1706.3、M+3H/3=1137.9、M+4H/4=853.7;実測値:M+2H/2=1706.4、M+3H/3=1137.8、M+4H/4=853.7。
【0075】
実施例2:
実施例2は、以下の構造を有する化合物である。
HSQGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQAFVK(4-Pal)LLST-OH(配列番号4)。
【0076】
構造的には、配列番号4の化合物は以下の通りである。
【化2】

式中、上記の構造は、展開されている16位のAibおよび25位の4-Palを除いて、標準的な1文字アミノ酸コードを示す。
【0077】
ここで、配列番号4の化合物は、本質的には、実施例1について記載されるように生成される。樹脂からの開裂および同時の側鎖保護基除去後に、粗ペプチドを、実施例1に記載のように、90分間にわたって16%~36%Bの線形AB勾配を使用して精製し、ここで、A=水中の0.1%TFAおよびB=ACNである。生成物は約24%Bで溶出する。TFA塩は、実施例1に記載されるように、75分間にわたって5%~20%Bの線形AB勾配を使用して酢酸塩に変換され、ここで、A=2%酢酸水溶液およびB=ACNである。生成物は約17%Bで溶出する。純画分を合わせて凍結乾燥する。
【0078】
精製されたペプチドの特徴付けを、実施例1に記載されるように実施し、1原子質量単位(amu)内の計算値に対応するMWを有することが確認される。MW=3353.8;計算値:M+2H/2=1677.8、M+3H/3=1118.9、M+4H/4=839.4;実測値:M+2H/2=1677.8、M+3H/3=1118.8、M+4H/4=839.3。
【0079】
実施例3:
実施例3は、以下の構造を有する化合物である。
HS[Dab(Ac)]GTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQAFVK(4-Pal)LLST-OH(配列番号5)。
【0080】
構造的には、配列番号5の化合物は以下の通りである。
【化3】

式中、構造は、展開されている3位のDab(Ac)、16位のAib、および25位の4-Palを除いて、標準の1文字アミノ酸コードを示す。
【0081】
ここで、配列番号5の化合物は、本質的には、実施例1に記載されるように生成される。Fmoc-Dab(Alloc)-OH構成単位は、Dab3カップリング(直交保護基)に使用されて、合成プロセスの後半で部位特異的なアセチル化を可能にする。N末端残基は、実施例1に記載されるのと同じプロトコルを使用して、Boc-His(Trt)-OHとして組み込まれる。ペプチド樹脂の伸長が終了した後、スカベンジャーとしてのPhSiHの存在下で触媒量のPd(PPhを使用して、Dab3に存在するAlloc保護基を除去する。Dab3位置でのアセチル化は、実施例1に記載されているように、DICおよびOxymaで活性化された酢酸を使用して達成される。樹脂からの開裂および同時の側鎖保護基除去後に、粗ペプチドを、実施例1に記載のように、90分間にわたって16%~36%Bの線形AB勾配を使用して精製し、ここで、A=水中の0.1%TFAおよびB=ACNである。生成物は約25%Bで溶出する。TFA塩は、実施例1に記載されるように、75分間にわたって5%~20%Bの線形AB勾配を使用して酢酸塩に変換され、ここで、A=2%酢酸水溶液およびB=ACNである。生成物は約20%Bで溶出する。純画分を合わせて凍結乾燥する。
【0082】
精製されたペプチドの特徴付けを、実施例1に記載されるように実施し、1原子質量単位(amu)内の計算値に対応するMWを有することが確認される。MW=3367.8;計算値:M+2H/2=1684.8、M+3H/3=1123.5、M+4H/4=842.9;実測値:M+2H/2=1684.8、M+3H/3=1123.4、M+4H/4=842.9。
【0083】
実施例4:
実施例4は、以下の構造を有する化合物である。
HS[Dab(Ac)]GTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQQFVK(4-Pal)LLST-OH(配列番号6)。
【0084】
構造的には、配列番号6の化合物は以下の通りである。
【化4】

式中、構造は、展開している3位のDab(Ac)、16位のAib、および25位の4-Palを除いて、標準の1文字アミノ酸コードを示している。
【0085】
ここで、配列番号6の化合物は、本質的には、実施例3に記載されるように生成される。樹脂からの開裂および同時の側鎖保護基除去後に、粗ペプチドを、実施例1に記載のように、90分間にわたって16%~36%Bの線形AB勾配を使用して精製し、ここで、A=水中の0.1%TFAおよびB=ACNである。生成物は約26%Bで溶出する。TFA塩は、実施例1に記載されるように、75分間にわたって5%~20%Bの線形AB勾配を使用して酢酸塩に変換され、ここで、A=2%酢酸水溶液およびB=ACNである。生成物は約19%Bで溶出する。純画分を合わせて凍結乾燥する。
【0086】
精製されたペプチドの特徴付けを、実施例1に記載されるように実施し、1原子質量単位(amu)内の計算値に対応するMWを有することが確認される。MW=3424.8;計算値:M+2H/2=1713.4;M+3H/3=1142.6、M+4H/4=857.2;実測値:M+2H/2=1713.4;M+3H/3=1142.4、M+4H/4=857.2。
【0087】
インビトロ機能
実施例5:実施例1~4の化合物の溶解性および化学的安定性
方法
実施例1~4の化合物を、H5.5PG/mクレゾール緩衝液(10mMヒスチジン緩衝液pH5.5、19mg/mLプロピレングリコール、3.15mg/mL mクレゾール)、H6PG/mクレゾール緩衝液(10mMヒスチジン緩衝液pH6、19mg/mLプロピレングリコール、3.15mg/mL mCresol)およびH6.5PG/mCresol緩衝液(10mMヒスチジン緩衝液pH6.5、19mg/mLプロピレングリコール、3.15mg/mL mクレゾール)中で調製する。実施例2の化合物の最終濃度は5mg/mLであり、実施例1、3および4の化合物においては2mg/mLである。すべての溶液を0.22μmフィルター(Millex、SLGV004SL)でろ過し、いくつかのHPLCバイアル(DWK LIFE SCIENCES INC、Wheaton 0.3mLバイアル、カタログ番号225326、キャップカタログ番号W22533001)に移す。次いで、試料を4℃および37℃に維持する。試料を、濁度および相分離についてさまざまな時点で視覚的に評価する。
【0088】
化合物の安定性を、RP-HPLCによって60℃に加熱したPhenomenex Aeris Widepore、3.6μm、XB-C18 4.6x100mmカラム(P/NO 00D-4482-E0)において、1.2mL/min(波長220nm)の流量で、5%Bイソクラティック(5分)、5%~25%B(20分)、25%~30%B(30分)、30%~45%B(10分)のAB(A=0.05%TFA/HO;B=0.04%TFA/ACN)勾配で評価する。
【0089】
結果
化合物は、視覚的評価およびRP-HPLCの両方により4週間にわたってpH5.5(緩衝液H5.5PG/mCresol)、pH6(緩衝液H6PG/mCresol)およびpH6.5(緩衝液H6.5PG/mCresol)において4℃および37℃での溶解度を維持した。物理的外観は透明乃至無色で、乳白色ではなく、粒子もない。RP-HPLCによる回収率を以下の表1に示す。
【表1】
【0090】
以下の表2に示すように、RP-HPLCによる化合物の評価では、緩衝液H5.5PG/mCresol(4週間37℃でpH 5.5対T0)および緩衝液H6PG/mCresol(4週間37℃でのpH6対T0)で4.5%未満、緩衝液H6.5PG/mCresol(4週間37℃でpH 6.5対T0)で5.32%≦のメインピーク変化が示されている。
【表2】
【0091】
実施例6:実施例1~4の化合物の物理的安定性
方法
化合物のフィブリル化のレベルを評価するために、チオフラビンT結合アッセイを実行する。実施例1~4の化合物をH6PG/mクレゾール緩衝液(実施例2を5mg/mLで、実施例1、3および4を2mg/mLで)に溶解し、蒸発を防ぐためにCOP-Coex(Zacros Q4 2017)材料からなるポンプバッグに充填する。バッグ内の試料は、攪拌(150rpm、直線方向)の有無にかかわらず4℃および37℃で2週間保管される。
【0092】
異なるサンプルのアリコート(各アリコート100μLおよび3回ずつ)を0および2週間の時点で採取し、次いでプレートに加えた後、10μLの1mMチオフラビンT(HOのストック溶液、pH2.8)(T35516-25G、Sigma Aldrich)を加える。試料を30分間インキュベートする。蛍光を、励起波長として440ηmを使用するSpectramax M5(Moleculer Devices)を使用して測定し、発光波長を、475ηmのカットオフと自動感度調整で480ηmに設定する。生データをSoftmax Pro 5.4.1(Molecular Devices)で収集し、Excel(登録商標)にインポートする。各時点での3つのウェルの平均は、以下の表3に示す報告された蛍光単位になる。
【0093】
結果
【表3】
【0094】
表3に示されるように、実施例1~4の化合物は、視覚的評価およびチオフラビンT結合アッセイの両方によって評価されるように、攪拌ストレスの存在下で2週間、37℃およびpH6で物理的安定性を維持する。さらに、実施例1~4の化合物は、チオフラビンT結合アッセイによって測定されるように、フィブリル化を示さなかった。
【0095】
実施例7:実施例1~4の化合物の会合状態
方法
実施例1~4の化合物を、H5.5PG/mクレゾール緩衝液(10mMヒスチジン緩衝液pH5.5、19mg/mLプロピレングリコール、3.15mg/mL mクレゾール)、H6PG/mクレゾール緩衝液(10mMヒスチジン緩衝液pH6、19mg/mLプロピレングリコール、3.15mg/mL mCresol)およびH6.5PG/mCresol緩衝液(10mMヒスチジン緩衝液pH6.5、19mg/mLプロピレングリコール、3.15mg/mL mクレゾール)中で調製する。実施例2の最終濃度は5mg/mLであり、実施例1、3および4の最終濃度は2mg/mLである。すべての溶液を0.22μmフィルター(Millex、SLGV004SL)でろ過する。分析用超遠心分離(Beckman、モデル-XliおよびモデルOptima)を使用して、干渉検出により、20℃で60,000rpmで約500回(間隔=2分)沈降速度データを収集する。
【0096】
結果
以下の表4に示すように、化合物には、モノマー、トリマー、および高分子量種(HMWS)の混合物が含まれる。
【表4】
【0097】
化合物は、分析用遠心分離により、pH6およびpH6.5よりもpH5.5でわずかに高いモノマーの割合(%)を示している。2mg/mLでは、実施例1、3および4の化合物においては単量体性が高い。試験品の濃度が高い(5mg/mL)ため、実施例2の化合物では、モノマーの割合(%)が減少している。全体として、データは、実施例1~4の化合物の高いモノマー含有量を示しており、これは、動物モデルおよびヒトにおけるSQ投与後のより速い吸収速度をもたらし得る。
【0098】
実施例8:実施例1~4の化合物の親水性データ
方法
実施例1~4の化合物の親水性を、分析用RP-HPLCによって60℃に加熱したPhenomenex Aeris Widepore、3.6μm、XB-C18 4.6x100mmカラム(P/NO 00D-4482-E0)において、1.2mL/min(波長220nm)の流量で、5%Bイソクラティック(5分)、5%~25%B(20分)、25%~30%B(30分)、30%~45%B(10分)のAB(A=0.05%TFA/水;B=0.04%TFA/ACN)勾配で評価する。
【0099】
結果
以下の表5に示すように、化合物は、RP-HPLCによる保持時間がヒトグルカゴンと同等またはわずかに速いことを示しており、これは、ヒトグルカゴンと同等またはわずかに優れた親水性プロファイルを示す(すなわち、保持時間が速いほど親水性が高いことを示す)。
【表5】
【0100】
実施例9:実施例1~4の化合物の結合親和性
方法
1.ヒトグルカゴン受容体結合アッセイ:実施例1~4の化合物の結合は、ヒトグルカゴン受容体(hGCGR、例えば、Lok et al.(1994)Gene 140:203-209(1994)を参照されたい、ヌクレオチド配列については、GenBank Accession No.L20316を参照されたい)を過剰発現する293-HEK細胞株を使用することによって決定される。
【0101】
接着培養物に由来する細胞を使用して、粗血漿膜を調製する。50mMのTris HCl(pH7.5)、およびEDTAを含むcOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤(Roche Diagnostics GmbH;Mannheim,DE)を含有する低張緩衝液中で、凍結細胞ペレットを氷上で溶解させる。Teflon(登録商標)乳棒を備えたガラス製Potter-Elvehjemホモジナイザーを使用して、25ストロークで細胞懸濁液を均質化する。均質化物を4℃、1100xgで10分間遠心分離する。上清を集めて氷上に保存し、ペレットを均質化懸濁液に再懸濁させて再均質化する。均質化物を1100xgで10分間遠心分離する。第2の上清を第1の上清と合わせ、4℃、35000xgで1時間遠心分離する。得られた膜ペレットを、約1~3mg/mLでプロテアーゼ阻害剤を含有する均質化緩衝液に再懸濁し、液体窒素中で急速凍結し、使用するまでアリコートとして-80℃の冷凍庫で保存する。
【0102】
ヒトグルカゴン(配列番号1)を、125I-ラクトペルオキシダーゼ手順によって放射性ヨウ素化し、RP-HPLC(PerkinElmer(NEX207))によって精製する。比放射能は2200Ci/mmolである。125I標識グルカゴン材料中の高プロパノール含有量のために、飽和結合の代わりに相同競合によって、Kの決定を実行する。hGCGR結合についてのKを3.65nMであると推定し、試験した全ての化合物のK値の計算に使用する。
【0103】
受容体結合アッセイを、WGAビーズ(PerkinElmer;マサチューセッツ州ウォルサム)を用いたシンチレーション近接アッセイ(SPA)法を使用して実施する(例えば、Sun et al.(2005)MetabEng.7:38-44を参照されたい)。ヒトグルカゴンおよび実施例1~4の化合物を2mMの濃度でDMSOに溶解し、-20℃で凍結保存する。
【0104】
実施例1~4の化合物およびヒトグルカゴンを、DMSOで段階的に希釈する。最終的に1μMの10μLの希釈試験化合物または冷グルカゴン(非特異的結合(NSB))を、45μLのアッセイ結合緩衝液(25mMのHEPES、pH7.4、2.5mMのCaCl、1mMのMgCl、0.1%(w/v)のバシトラシン、0.003%(w/v)のTween(登録商標)20、およびEDTAを含まないcOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤)を含有するCorning(商標)3604(非結合面)クリアボトムアッセイプレート中に移す。90μLのメンブレン(1.5μg/ウェル)、50μLの125I標識グルカゴン(反応中の最終濃度0.15nM)、および50μLのWGAビーズ(150μg/ウェル)を添加する。DMSO濃度は4.2%を超えない。プレートを、密封し、プレートシェーカーで混合し、室温で12時間静置した後、MicroBeta(商標)シンチレーションカウンター(PerkinElmer)で読み取る。
【0105】
結果は、実施例1~4の化合物の存在下での特定の125I標識グルカゴン結合の割合(%)として計算される。試験化合物の絶対IC50濃度は、125I標識グルカゴンの特異的結合割合(%)と添加した試料の濃度(5.1x-11~1.0x10-6mol/L)の非線形回帰分析によって導出される。IC50濃度を、チェン-プルソフ等式(Cheng&Prusoff(1973)Biochem.Pharmacol.22:3099-3108)を使用して、Kに変換する。
【0106】
2.ラットグルカゴン受容体結合アッセイ:化合物がラットグルカゴン受容体(rGCGR)に結合するかどうかを判定するために、ヒトグルカゴン受容体結合アッセイに本質的に記載されている結合アッセイを実施する。粗原形質膜を、クローン化されたrGCGRで過渡的にトランスフェクトされた懸濁培養中の293-HEK細胞から調製する(Svoboda et al.(1993)Biochem.Biophys.Res.Commun.191:479-486;ヌクレオチド配列については、GenBank Accession No.L04796.1も参照されたい)。25mMのTris HCl(pH7.5)、1mMのMgCl、25単位/mlのDNAse I(Invitrogen;カリフォルニア州カールスバッド)およびEDTA不含Complete(商標)プロテアーゼ阻害剤を含有する低張緩衝液中で、凍結細胞ペレットを氷上で溶解させる。Teflon(登録商標)乳棒を備えた、ガラス製Potter-Elvehjemホモジナイザーを使用して、20ストロークで細胞懸濁液を均質化する。ホモジネートを4℃で、1800×gで15分間、遠心分離する。上清を退避させて、氷上に保存し、ペレットを均質化バッファーに再懸濁して再均質化する。均質物を1800xgで15分間遠心分離する。第2の上清を第1の上清と合わせ、4℃、25000xgで30分間遠心分離する。得られた膜ペレットを、約1~3mg/mLでプロテアーゼ阻害剤を含有する均質化緩衝液(DNAse Iなし)に再懸濁し、液体窒素中で急速凍結し、使用するまでアリコートとして-80℃の冷凍庫で保存する。
【0107】
ヒトグルカゴン(配列番号1)は、125I-ラクトペルオキシダーゼ手順によって放射性ヨウ素化され、逆相HPLC(PerkinElmer(NEX207))によって精製される。比放射能は2200Ci/mmolである。125I標識グルカゴン中の高プロパノール含有量のために、飽和結合の代わりに相同競合によって、Kの決定を実行する。rMR結合についてのKを20.4nMであると推定し、試験した全ての化合物のK値の計算に使用する。
【0108】
SPA受容体結合アッセイおよび結果の計算は、hGCGR結合アッセイに記載されているように実施される。
【0109】
結果
【表6】
【0110】
これらのデータは、実施例1~4の化合物が、ヒトグルカゴンと比較した場合、同様または増加した親和性でrGCGRまたはhGCGRに結合し、その受容体を活性化し、次にグルカゴン依存性生理学的応答を誘発し得ることを示す。
【0111】
実施例10:実施例1~4の化合物の機能的活性
方法
機能的活性アッセイ:放射性リガンド競合結合アッセイは、実施例1~4の化合物および比較化合物[ヒトグルカゴン(配列番号1)、ヒトGIPアミド(配列番号7)およびヒトGLP-1アミド(配列番号8)]についての平衡解離定数(K)を決定するために実行される。このようなアッセイは、HEK-293クローン細胞株を発現する、ヒトGLP-1受容体(hGLP-1R;GenBank Accession No.NM_002062を参照されたい)、hGCGR、およびヒトGIP受容体(hGIP-R;GenBank Accession No.AAA84418.1を参照されたい)を過剰発現するトランスフェクトHEK-293細胞から調製したSPA法および膜を使用する。20μlアッセイ容量中、1X GlutaMAXTM(Gibcoカタログ番号35050)、0.25%FBS(ウシ胎児血清、Gibcoカタログ番号26400)、0.05%画分V BSA(ウシ血清アルブミン、Gibcoカタログ番号15260)、250μMのIBMX、および20mMのHEPES(Gibcoカタログ番号15630)を補充した、DMEM(Gibcoカタログ番号31053)中の試験化合物(20ポイントCRC、2.75倍Labcyte Echo直接希釈)で、各受容体過剰発現細胞株を処理する。室温での60分間インキュベーション後に、得られる細胞内cAMPの増加を、cAMP Dynamic 2 HTRFアッセイキット(62AM4PEJ;CisBio;フランス、コドレ)を使用して定量的に決定する。簡潔には、細胞溶解緩衝液(10μL)中のcAMP-d2コンジュゲートを添加し、続いて同様に細胞溶解緩衝液(10μL)中の、抗cAMP-Eu3+-クリプテート抗体を添加することによって、細胞内のcAMPレベルを検出する。結果として得られる競合アッセイを、室温で少なくとも60分間インキュベートし、その後、PerkinElmer Envision(登録商標)機器(320nmでの励起ならびに665nmおよび620nmでの発光)を使用して検出する。Envision単位(665nm/620nmでの発光*10,000)は存在するcAMPの量に反比例し、cAMP標準曲線を使用して、これを1ウェル当たりのnM cAMPに変換する。各ウェルで生成されたcAMPの量(nM)を、ヒトGLP-1(7-36)NH、ヒトグルカゴン、またはヒトGIP(1-42)NHのいずれかで観察された最大反応の割合(%)変換する。4パラメータロジスティック方程式にフィットさせた、最大反応割合(%)対添加ペプチド濃度を使用する非線形回帰分析によって、相対EC50値および最大割合(%)(E最大)を導出する。
【0112】
ヒトGLP-2受容体(hGLP-2R)の場合、クローン化されたヒトGLP-2発現細胞株(20160624-BE03859-037)を使用して、hGLP-2Rで刺激されたcAMP機能的反応を評価する。細胞を、GLP-2(配列番号9)または実施例1~4の化合物で刺激し、細胞内で生成されたcAMPを、CisBio cAMP Dynamic 2 HTRFアッセイキット(62AM4PEC)を使用して定量する。簡潔には、細胞内のcAMPレベルは、細胞溶解緩衝液の存在下でcAMP-d2捕捉抗体に結合することによって検出される。キットに提供される第2の検出抗体である抗cAMPクリプテートを追加して、競合サンドイッチアッセイを作成する。検出抗体複合体が形成されると、PerkinElmer Envision(登録商標)機器で測定されるシグナルが増加する。
【0113】
凍結保存されたhGLP-2R-HEK-293細胞は、37℃のウォーターバスで迅速に解凍され、0.5%定義FBS(Hyclone SH30070)、GlutaMAX(Gibco 35050)を添加した予熱されたDMEM細胞培地(Gibco 31053)、および20mMのHEPES(HyCloneカタログ番号SH30237.01)に再懸濁される。次に、細胞を室温で5分間100×gでペレット化する。上清を除去し、細胞ペレットを5×10細胞/mlでDMEMに再懸濁する。次に、50μLの細胞(2500細胞/ウェル)を96ウェルハーフエリアブラックプレート(Costar 3875)に播種し、37℃のインキュベータで一晩インキュベートする。試験試料は、DMSO中で2mMのストックとして調製し、必要になるまで-20℃で凍結する。処理の日に、GLP-2、緩衝液対象、および実施例1~4の化合物をDMSOで段階的に希釈し、続いて化合物希釈培地(500μmol/L IBMXを含むアッセイ培地(DMEM、0.1%脂肪酸不含ウシ血清アルブミンを含むGibco 31053P、BSA、7.5%(Gibco 15620);20mM HEPES(pH7.4)、および2mM GlutaMAX)に段階希釈する。反応の前に、細胞を100μL/ウェルのアッセイ培地で洗浄し、20μL/アッセイ培地と置き換え、次いで反応に続いて、20μLの2倍濃縮GLP-2、緩衝液対照、または実施例1~4の化合物のいずれかを化合物希釈培地に添加する。最終DMSO濃度は0.5%を超えず、最終IBMX濃度は250μMである。室温で1時間インキュベートした後、CisBio溶解緩衝液で希釈した20μLのcAMP-d2-capture抗体(CisBio)を添加することによって反応を停止し、TitraMax(商標)シェーカー(Heidolph Instruments GmbH&Co KG;ドイツ、シュヴァーバッハ)を1分間、次いで20μLの検出抗体、抗cAMP Cryptate(CisBio)を添加し、600rpmで1分間混合した後、室温で300rpmで穏やかに振とうした。溶解した細胞と抗体の混合物は、PerkinElmer Envision(登録商標)装置を使用して1時間後に読み取られる。Envisionの単位は、cAMP標準曲線を使用してcAMP/ウェルをpmol/Lに変換された。各ウェルで生成されたcAMPのピコモルは、GLP-2コントロールで観察された最大反応割合(%)に変換される。4パラメータロジスティック方程式(Genedata Screener 13)にフィットさせた、最大反応割合(%)対添加ペプチド濃度を使用する非線形回帰分析によって、相対EC50値を誘導する。
【0114】
クローン化されたラットグルカゴン発現細胞株(rGR C#18、BE03581-029-BE03754-065)は、ラットグルカゴン受容体刺激cAMP機能アッセイに使用される。細胞はグルカゴンまたは試験試料で刺激され、細胞内で生成されたcAMPは、CisBio cAMP Dynamic 2 HTRFアッセイキット(62AM4PEC)を使用して定量化される。簡潔には、細胞内のcAMPレベルは、細胞溶解緩衝液の存在下でcAMP-d2捕捉抗体に結合することによって検出される。キットに提供される第2の検出抗体である抗cAMPクリプテートを追加して、競合サンドイッチアッセイを作成する。検出抗体複合体が形成されると、Perkin-Elmer Envision(登録商標)装置で測定されるシグナルが増加する。
【0115】
実験の日に、凍結保存したratGlucagonReceptor-HEK293細胞を37℃の水浴で迅速に解凍し、0.5%定義FBS(Hyclone SH30070)、GlutaMAX(Gibco 35050)および20mMのHEPES(HyCloneカタログ番号SH30237.01)を添加した予熱したCell Media DMEM(Gibco 31053)に再懸濁する。次に、細胞を室温で5分間100×gでペレット化する。上清を除去し、細胞ペレットをCell Mediaに再懸濁する。試験試料は、DMSO中で2mMのストックとして調製し、必要になるまで-20℃で凍結する。グルカゴン、緩衝液対象、および試験化合物をDMSOで段階的に希釈した後、化合物希釈培地(500μmol/L IBMXを含むアッセイ培地(DMEM、0.1%脂肪酸不含ウシ血清アルブミンを含むGibco 31053P、BSA、7.5%(Gibco 15620);20mM HEPES(pH7.4)、および2mM GlutaMAX)に段階希釈する。反応は、20μLの細胞(2500細胞/ウェル)またはcAMP標準曲線試料を96ウェルプレートハーフエリアブラックプレート(Costar 3694)に添加し、続いて20μLの2X濃縮グルカゴン、化合物希釈培地中の緩衝液対象または試験化合物のいずれかを添加することにより、40μLで実行される。最終DMSO濃度は0.5%を超えず、最終IBMX濃度は250μMである。室温で1時間インキュベートした後、CisBio溶解緩衝液で希釈した20μLのcAMP-d2-capture抗体(CisBio)を添加し、TITRAMAXシェーカーで1分間穏やかに混合することによって反応を停止し、次いで20μLの検出抗体[抗cAMPクリプテート(CisBio)]を添加し、プレートシェーカー上で600rpmで1分間混合した後、室温で300rpmで穏やかに振とうする。細胞溶解物と抗体の混合物は、Perkin-Elmer Envision(登録商標)を使用して1時間後に読み取られる。Envision(登録商標)の単位は、cAMP標準曲線を使用してcAMP/ウェルをpmol/Lに変換された。各ウェルで生成されたcAMPのピコモルは、グルカゴンコントロールで観察された最大反応の割合(%)に変換される。4パラメータロジスティック方程式(Genedata Screener 13)にフィットされた、最大反応割合(%)対添加ペプチド濃度を使用する非線形回帰分析によって、相対EC50値を導出する。
【0116】
結果
【表7】
【0117】
これらのデータは、FBSおよびBSAの存在下で、実施例1~4の化合物が、ヒトグルカゴンよりも高いhGCGRでのアゴニスト活性を有することを示している。加えて、これらのデータは、実施例1~4がヒトグルカゴンよりもhGLP-1Rで弱いアゴニスト活性を有することを示し、これは、実施例1~4がヒトグルカゴンよりも高い程度の選択性を有することを示す。加えて、実施例1~4の化合物は、hGIPRに評価可能に結合せず、およびそれを活性化しない。したがって、実施例1~4は、グルカゴン受容体媒介生理学的反応を開始すると予測されるが、GLP-1RおよびGIPR媒介生理学的反応を開始しないと予測される。
【表8】
【0118】
これらのデータは、有効性に関して、本発明の実施例1~4が、GcgRおよびGLP-1R cAMPアゴニストアッセイにおいて完全に有効であるとして、ヒトグルカゴンと非常に類似して振る舞うことを示している。
【表9】
【0119】
これらのデータ(左の列)は、実施例1~4および天然グルカゴンが同様の効力でラットGCGRを機能的に活性化し、それによりラットにおいてグルカゴン受容体媒介生理学的反応を開始できることを示している。これらのデータ(右の列)は、実施例1~4の化合物が2500nMの最高濃度でhGLP-2RでcAMPを刺激せず、したがってhGLP-2Rを機能的に活性化できないことを示している。このように、それらはGLP-2R媒介生理学的反応を開始しないと予測される。
【0120】
実施例11:実施例1~4の化合物の免疫原性
方法
1.CD4+T細胞アッセイ:実施例1~4のG化合物に対する臨床免疫原性応答の傾向を評価するために、CD8+T細胞枯渇末梢血単核細胞(PBMC)を調製し、多様なヒト白血球抗原(HLA)クラスIIハプロタイプを持つ10人の健康なドナーのコホート由来のカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE;Invitrogen)で標識する。各ドナーは、2.0mLの培地対照、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH;0.33μM)、および実施例1~4の化合物(10μM)を用いて3回試験される。培養液を5%のCOを用いて、37℃で7日間インキュベートする。7日目に、試料を、ハイスループットサンプラー(HTS)を備えたBD LSR II Fortessa(Becton Dickinson;ニュージャージー州フランクリンレイクス)を使用したフローサイトメトリーによって分析する。データを、FlowJo(登録商標)ソフトウェア(FlowJo、LLC/TreeStar;オレゴン州アッシュランド)を使用してデータを解析する。
【0121】
したがって、CD4+t細胞アッセイを使用して、当該技術分野で知られている方法に従ってインビボで免疫応答を誘導する可能性について実施例1~4の化合物を比較し(例えば、Jones et al.(2004)J.Interferon Cytokine Res.24:560-572;およびJones et al.(2005)J.Thromb.Haemost.3:991-1000を参照されたい)、臨床的に試験されたモノクローナル抗体およびペプチドの評価は、インビトロで観察されたT細胞増殖と診療所での免疫原性との間にある程度の相関関係を示している。CD4+T細胞増殖アッセイで30%未満の陽性反応を誘発するタンパク質治療薬は、免疫原性のリスクが低いことに関連している。
【0122】
結果
【表10】
【0123】
これらのデータは、実施例1~4の化合物では、陽性CD4+T細胞応答(CDI>2.5)の頻度が低く、少数の陽性ドナーにおける応答強度が低い(CDI<7)ことを示しており、これは免疫原性のリスクが低いことを示している。
【0124】
インビボ研究
実施例12:実施例1~4の化合物の薬物動態。
方法
1.バイオアナリティクス:実施例1~4の化合物の血漿濃度は、Q Squared Solutions BioSciences LLC(Ithaca、ニューヨーク)またはAlgorithme Pharma(カナダケベック州ラヴァル)で認定された液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)法によって決定される。内部標準としての化合物および類似体は、抗体またはタンパク質の沈殿によって100%種特異的に抽出される。無傷の化合物の集団は、Q Exactive(登録商標)Orbitrap(登録商標)質量分析計(Thermo Fisher Scientific;マサチューセッツ州ウォルサム)によって検出される。
【0125】
2.ブタPK研究:1つの研究(表11)では、オスのユカタンミニチュアブタ(MS)に、プロピレングリコール緩衝液(pH6)(H6PG)を含むヒスチジン中の実施例2の化合物の単回皮下用量(30μg/kg)を投与するか、組換えヒトグルカゴン(rGlucagon、E-kit)を0.010mL/kgの容量で投与する。血液を、投与前、投与後2、5、10、15、20、25、30、45、60、75、90、120、150、180、および240分に採取し、次いで、血漿を、薬物動態学的特性評価のために取得する。
【0126】
別の研究(表12)では、オスのユカタンMSに、H6PG中の実施例2の化合物の単回皮下用量(30μg/kg)を投与するか、または0.010mL/kgの容量でrグルカゴンを投与する。血液を、投与前、投与後2、5、10、15、20、25、30、45、60、75、90、120、150、180、および240分に採取し、次いで、血漿を、薬物動態学的特性評価のために取得する。
【0127】
別の研究(表13)では、オスのユカタンMSに、H6PG中の実施例2の化合物の単回皮下用量(10または30μg/kg)を投与するか、または0.010mL/kgの容量でrグルカゴンを投与する。血液を、投与前、投与後2、5、10、15、20、25、30、45、60、75、90、120、150、180、および240分に採取し、血漿を、薬物動態学的特性評価のために取得する。
【0128】
別の研究(表14)において、オスのユカタンMSに、0.010mL/kgの容量で、H6PG中の実施例3の化合物の単回皮下用量(10または30μg/kg)を投与する。血液を、投与前、投与後2、5、10、15、20、25、30、45、60、75、90、120、150、180、および240分に採取し、血漿を、薬物動態学的特性評価のために取得する。
【0129】
別の研究(表15)では、オスのユカタンMSに、H6PG中の実施例1、実施例3および実施例4の化合物を0.010mL/kgの容量で単回皮下用量(10または30μg/kg)を投与する。血液を、投与前、投与後2、5、10、15、20、25、30、45、60、75、90、120、および150分に採取し、血漿を、薬物動態学的特性評価のために取得する。
【0130】
別の研究(表16)では、オスのユカタンMSに、H6PG中の実施例1、実施例3および実施例4の化合物を0.010mL/kgの容量で単回皮下用量(10または30μg/kg)を投与する。血液を、投与前、投与後2、5、10、15、20、25、30、45、60、75、90、120、および150分に採取し、血漿を、薬物動態学的特性評価のために取得する。
【0131】
結果
【表11】
【0132】
【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】
【0133】
これらのデータは、実施例1~4およびヒト組換えグルカゴンの薬物動態パラメータが、臨床的に適切な用量レベルでの単回投与後のブタモデルにおいて非常に類似していることを示している。このデータにより、実施例1~4およびヒト組換えグルカゴンの薬物動態プロファイルがヒトでも同様であり得ることが予測される。
【0134】
実施例13:ラットモデルにおける血糖値に対する実施例1~4の化合物の効果
方法
1.動物プロトコル:4ヶ月齢のオスのスプラーグドーリーラット(Envigo;インディアナ州インディアナポリス)を使用する。動物を、12時間の明/暗サイクルで温度制御(24℃)した施設内に個別に収容し、動物に食餌および水を自由に摂取させる。施設への1週間の順応後、ラットは治療群にランダム化される(n=4/群)。試験化合物は、緩衝液(10mMヒスチジン、19mg/mL PG、pH6)中に調合される。試験の朝、午前6時に食餌を下げる。食餌を下げてから2時間後、試験化合物を0、3、10、30、または100μg/kgの用量で皮下投与する。血糖値は、投与後0、3、6、9、15、20、30、45、60分にAccu-Check(登録商標)血糖計(Roche Diabetes Care,Inc.;インディアナ州インディアナポリス)により測定される。
【0135】
インスリンは、ELISA(MSD;メリーランド州ロックビル)により、投与後3、9、15、20、30、および60分に測定される。
【0136】
2.統計:結果は、群あたり4匹のラットの平均±標準誤差平均(SEM)として表される。統計的差異は、ダネットの多重比較検定を用いた二元配置分散分析によって、溶媒群の対応する時点と比較して*p<0.05と評価される。
【0137】
結果
【表17】

【表18】

【表19】

【表20】
【0138】
これらのデータは、実施例1~4の化合物がラットモデルにおいて用量依存的に血糖を増加させることを示している。グルコースエクスカーションのプロファイルは、緊急キット緩衝液で調合された10ug/kgの天然組換えグルカゴンの用量と非常に築地している(データは図示せず)。

本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.HSX GTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQX FVK(4-Pal)LLSTのアミノ酸配列を含む化合物であって、式中、X はQまたはDab(Ac)であり、X はQまたはAである(配列番号2)、化合物。
2.X がQであり、X がQである(配列番号3)、上記1に記載の化合物。
3.X がQであり、X がAである(配列番号4)、上記1に記載の化合物。
4.X がDab(Ac)であり、X がAである(配列番号5)、上記1に記載の化合物。
5.X がDab(Ac)であり、X がQである(配列番号6)、上記1に記載の化合物。
6.HSQGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQQFVK(4-Pal)LLST-OH(配列番号3)の化合物。
7.HSQGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQAFVK(4-Pal)LLST-OH(配列番号4)の化合物。
8.HS[Dab(Ac)]GTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQAFVK(4-Pal)LLST-OH(配列番号5)の化合物。
9.HS[Dab(Ac)]GTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQQFVK(4-Pal)LLST-OH(配列番号6)の化合物。
10.上記1~9のいずれかに記載の化合物および薬学的に許容される緩衝液を含む医薬組成物。
11.前記薬学的に許容される緩衝液がヒスチジン緩衝生理食塩水である、上記10に記載の医薬組成物。
12.追加の治療薬をさらに含む、上記10または11に記載の医薬組成物。
13.前記追加の治療薬がインスリンである、上記12に記載の医薬組成物。
14.個体の低血糖症を治療する方法であって、
前記個体に有効量の上記1~9のいずれかに記載の化合物を投与するステップを含む、方法。
15.追加の治療薬を投与することをさらに含む、上記14に記載の方法。
16.前記追加の治療薬がインスリンである、上記15に記載の方法。
17.治療法で使用するための、上記1~9のいずれかに記載の化合物。
18.低血糖症を治療するための、上記1~9のいずれかに記載の化合物。
19.低血糖症を治療するための薬剤を製造するための、上記1~9のいずれかに記載の化合物の使用。
【0139】
配列
以下の核酸配列および/またはアミノ酸配列が、本開示において言及され、参照のために以下に提供される。
配列番号1-ヒトグルカゴン/組換えヒトグルカゴン
HSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNT
配列番号2-グルカゴン類似体アゴニスト
HSXGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQX2FVK(4-Pal)LLST-OH、式中、
QまたはDab(Ac)であり、
はQまたはAである
配列番号3-グルカゴン類似体アゴニスト
HSQGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQQFVK(4-Pal)LLST-OH
配列番号4-グルカゴン類似体アゴニスト
HSQGTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQAFVK(4-Pal)LLST-OH
配列番号5-グルカゴン類似体アゴニスト
HS[Dab(Ac)]GTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQAFVK(4-Pal)LLST-OH
配列番号6-グルカゴン類似体アゴニスト
HS[Dab(Ac)]GTFTSDYSKYLD(Aib)RRAQQFVK(4-Pal)LLST-OH
配列番号7-ヒトGIP(1-42)アミド
YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQ-NH
配列番号8-ヒトGLP-1(7-36)アミド
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR-NH
配列番号9-GLP-2(1-34)酸
HADGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTKITDR-OH
【配列表】
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