(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】窒化物半導体構造体、窒化物半導体デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/365 20060101AFI20230117BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230117BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230117BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20230117BHJP
H01L 21/8232 20060101ALI20230117BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20230117BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20230117BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20230117BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20230117BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20230117BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20230117BHJP
H01S 5/323 20060101ALI20230117BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20230117BHJP
H01L 33/26 20100101ALI20230117BHJP
H01L 21/28 20060101ALN20230117BHJP
H01L 29/417 20060101ALN20230117BHJP
H01L 29/423 20060101ALN20230117BHJP
H01L 29/49 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
H01L21/365
H01L29/78 301B
H01L21/20
H01L27/06 F
H01L27/088 B
H01L27/088 A
H01L29/80 E
H01L29/80 H
H01S5/323 610
H01L33/32
H01L33/26
H01L21/28 301B
H01L29/50 J
H01L29/50 M
H01L29/58 G
(21)【出願番号】P 2021551704
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2020038155
(87)【国際公開番号】W WO2021070910
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2019186371
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 俊幸
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-507853(JP,A)
【文献】特表2008-513327(JP,A)
【文献】特表2009-518874(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0240026(US,A1)
【文献】MISAKI, Takao et al.,Epitaxial growth and characterization of ZnGeN2 by metalorganic vapor phase epitaxy,Journal of Crystal Growth,2004年,Vol. 260,pp. 125-129
【文献】LE, Duc Duy et al.,Growth of single crystal non-polar (11-20) ZnSnN2 films on sapphire substrate,Applied Surface Science,2019年03月19日,Vol. 481,pp. 819-824
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/365
H01L 21/336
H01L 21/20
H01L 21/8232
H01L 21/8234
H01L 21/338
H01S 5/323
H01L 33/32
H01L 33/26
H01L 21/28
H01L 29/417
H01L 29/423
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族元素(ここで、前記III族元素は、周期表の13族の群から選択される元素である)を含み、所定結晶面を有する単結晶のIII族窒化物半導体部と、
前記III族窒化物半導体部の前記所定結晶面上に設けられており、II族元素(ここで、前記II族元素は、周期表の2族の群又は12族の群から選択される元素である)とIV族元素(ここで、前記IV族元素は、周期表の14族の群から選択される元素である)とを含み、前記III族窒化物半導体部とヘテロ接合されている単結晶のII-IV族窒化物半導体部と、を備え、
前記所定結晶面は、(0001)面以外の結晶面であ
り、
前記所定結晶面は、(11-22)面である、
窒化物半導体構造体。
【請求項2】
前記II族元素は、亜鉛である、
請求項1に記載の窒化物半導体構造体。
【請求項3】
前記II-IV族窒化物半導体部では、前記所定結晶面に直交する結晶軸方向が、[001]方向以外の結晶軸方向である、
請求項1又は2に記載の窒化物半導体構造体。
【請求項4】
前記II-IV族窒化物半導体部では、前記所定結晶面に直交する結晶軸方向が、[011]方向である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の窒化物半導体構造体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の窒化物半導体構造体の前記II-IV族窒化物半導体部の少なくとも一部を含む半導体素子を備える、
窒化物半導体デバイス。
【請求項6】
半導体素子を備える窒化物半導体デバイスであって、
前記半導体素子は、III族元素(ここで、前記III族元素は、周期表の13族の群から選択される元素である)を含み所定結晶面を有する単結晶のIII族窒化物半導体部と単結晶のII-IV族窒化物半導体部とを備える窒化物半導体構造体の、前記II-IV族窒化物半導体部の少なくとも一部を含み、
前記II-IV族窒化物半導体部は、前記III族窒化物半導体部の前記所定結晶面上に設けられており、II族元素(ここで、前記II族元素は、周期表の2族の群又は12族の群から選択される元素である)とIV族元素(ここで、前記IV族元素は、周期表の14族の群から選択される元素である)とを含み、前記III族窒化物半導体部とヘテロ接合されており、
前記所定結晶面は、(0001)面以外の結晶面であり、
前記窒化物半導体デバイスは、
前記半導体素子である第1半導体素子とは別に、前記III族窒化物半導体部に形成された第2半導体素子を更に備える、
窒化物半導体デバイス。
【請求項7】
前記II-IV族窒化物半導体部は、
n形半導体領域と、
p形半導体領域と、を有し、
前記半導体素子は、
前記n形半導体領域の少なくとも一部と、
前記p形半導体領域の少なくとも一部と、を含む、
請求項5又は6に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項8】
前記III族窒化物半導体部は、互いに異なる組成を有する複数のIII族窒化物半導体層の積層構造を有する、
請求項5~7のいずれか一項に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項9】
単結晶シリコン基板を更に備え、
前記III族窒化物半導体部は、前記単結晶シリコン基板上に設けられている、
請求項5~8のいずれか一項に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項10】
前記II-IV族窒化物半導体部に形成された前記半導体素子は、光を出射する発光素子である、
請求項5~9のいずれか一項に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項11】
請求項5~10のいずれか一項に記載の窒化物半導体デバイスの製造方法であって、
III族元素(ここで、前記III族元素は、周期表の13族の群から選択される元素である)を含む単結晶のIII族窒化物半導体部の(0001)面以外の所定結晶面上に、II族元素(ここで、前記II族元素は、周期表の2族の群又は12族の群から選択される元素である)とIV族元素(ここで、前記IV族元素は、周期表の14族の群から選択される元素である)とを含むII-IV族窒化物半導体部をエピタキシャル成長させる工程を備える、
窒化物半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体構造体、窒化物半導体デバイス及びその製造方法に関し、より詳細には、III族窒化物半導体部とII-IV族窒化物半導体部とを備える窒化物半導体構造体、その窒化物半導体構造体を備える窒化物半導体デバイス、及びその窒化物半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体層状構造を用いた発光デバイスである発光ダイオードにおいて、ZnGeN2活性層を、GaN等のIII族窒化物層の間に形成することが記載されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された半導体層状構造では、基板上にIII族窒化物層が多結晶層として形成されており、単結晶のIII族窒化物半導体部上にII-IV族窒化物半導体部をエピタキシャル成長させることについて記載されておらず、エピタキシャル成長させる場合の課題についても記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、単結晶のIII族窒化物半導体部上に単結晶のII-IV族窒化物半導体部を備えた構成を実現可能な窒化物半導体構造体、窒化物半導体デバイス及びその窒化物半導体デバイスの製造方法を提供することにある。
【0006】
本開示に係る一態様の窒化物半導体構造体は、III族窒化物半導体部と、II-IV族窒化物半導体部と、を備える。前記III族窒化物半導体部は、単結晶である。前記III族窒化物半導体部は、III族元素を含む。ここで、前記III族元素は、周期表の13族の群から選択される元素である。前記III族窒化物半導体部は、所定結晶面を有する。前記II-IV族窒化物半導体部は、前記III族窒化物半導体部の前記所定結晶面上に設けられている。前記II-IV族窒化物半導体部は、単結晶である。前記II-IV族窒化物半導体部は、II族元素と、IV族元素と、を含む。ここで、前記II族元素は、周期表の2族の群又は12族の群から選択される元素である。前記IV族元素は、周期表の14族の群から選択される元素である。前記II-IV族窒化物半導体部は、前記III族窒化物半導体部とヘテロ接合されている。前記所定結晶面は、(0001)面以外の結晶面である。前記所定結晶面は、(11-22)面である。
【0007】
本開示に係る一態様の窒化物半導体デバイスは、前記窒化物半導体構造体の前記II-IV族窒化物半導体部の少なくとも一部を含む半導体素子を備える。
本開示に係る別の一態様の窒化物半導体デバイスは、半導体素子を備える。前記半導体素子は、III族元素(ここで、前記III族元素は、周期表の13族の群から選択される元素である)を含み所定結晶面を有する単結晶のIII族窒化物半導体部と単結晶のII-IV族窒化物半導体部とを備える窒化物半導体構造体の、前記II-IV族窒化物半導体部の少なくとも一部を含む。前記II-IV族窒化物半導体部は、前記III族窒化物半導体部の前記所定結晶面上に設けられており、II族元素(ここで、前記II族元素は、周期表の2族の群又は12族の群から選択される元素である)とIV族元素(ここで、前記IV族元素は、周期表の14族の群から選択される元素である)とを含み、前記III族窒化物半導体部とヘテロ接合されている。前記所定結晶面は、(0001)面以外の結晶面である。前記窒化物半導体デバイスは、前記半導体素子である第1半導体素子とは別に、前記III族窒化物半導体部に形成された第2半導体素子を更に備える。
【0008】
本開示に係る一態様の窒化物半導体デバイスの製造方法は、上記一態様又は上記別の一態様の窒化物半導体デバイス、の製造方法であって、III族元素を含む単結晶のIII族窒化物半導体部の(0001)面以外の所定結晶面上に、II族元素とIV族元素とを含む単結晶のII-IV族窒化物半導体部をエピタキシャル成長させる工程を備える。ここで、前記III族元素は、周期表の13族の群から選択される元素である。前記II族元素は、周期表の2族の群又は12族の群から選択される元素である。前記IV族元素は、周期表の14族の群から選択される元素である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る窒化物半導体構造体の断面図である。
【
図2】
図2は、ZnGeN
2結晶/AlN結晶/単結晶シリコン基板の積層構造を有する試料の、X線回折のωスキャンによるX線ロッキングカーブの測定結果を示す図である。
【
図3】
図3Aは、ZnGeN
2結晶/AlN結晶/単結晶シリコン基板の積層構造を有する試料の表面SEM像図である。
図3Bは、ZnGeN
2結晶/AlN結晶/単結晶シリコン基板の積層構造を有する試料のAlN劈開面近傍のSEM像図である。
【
図4】
図4は、単結晶ZnGeN
2をc面から見た結晶構造の模式図である。
【
図5】
図5は、単結晶GaNをc面から見た結晶構造の模式図である。
【
図6】
図6は、ZnGeN
2/AlN界面の計算モデルの第1モデル(90/m)を示す図である。
【
図7】
図7は、ZnGeN
2/AlN界面の計算モデルの第2モデル(30/m)を示す図である。
【
図8】
図8は、ZnGeN
2/AlN界面の計算モデルの第3モデル(00/a)を示す図である。
【
図9】
図9は、ZnGeN
2/AlN界面の計算モデルの第4モデル(60Ge/a)を示す図である。
【
図10】
図10は、ZnGeN
2/AlN界面の計算モデルの第5モデル(60Zn/a)を示す図である。
【
図11】
図11A~11Fは、実施形態1に係る窒化物半導体構造体の製造方法を説明するための工程断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態1に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る窒化物半導体構造体の断面図である。
【
図14】
図14A~14Dは、同上の窒化物半導体構造体の製造方法を説明するための工程断面図である。
【
図15】
図15は、実施形態3に係る窒化物半導体構造体の断面図である。
【
図16】
図16A~16Cは、同上の窒化物半導体構造体の製造方法を説明するための工程断面図である。
【
図17】
図17は、実施形態3に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
【
図18】
図18A~18Cは、同上の窒化物半導体デバイスの製造方法を説明するための工程断面図である。
【
図19】
図19A~19Cは、同上の窒化物半導体デバイスの製造方法を説明するための工程断面図である。
【
図20】
図20は、実施形態4に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
【
図21】
図21A~21Cは、同上の窒化物半導体デバイスの製造方法を説明するための工程断面図である。
【
図22】
図22A~22Cは、同上の窒化物半導体デバイスの製造方法を説明するための工程断面図である。
【
図23】
図23A~23Cは、同上の窒化物半導体デバイスの製造方法を説明するための工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
下記の実施形態等において説明する
図1、4~23Cは、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
(実施形態1)
(1)概要
以下では、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1について、
図1に基づいて説明する。
【0012】
窒化物半導体構造体1は、III族窒化物半導体部3と、II-IV族窒化物半導体部4と、を備える。
【0013】
III族窒化物半導体部3は、単結晶である。III族窒化物半導体部3は、III族元素を含む。ここで、III族元素は、周期表の13族の群から選択される元素である。つまり、III族元素は、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、Tl(タリウム)及びNh(ニホニウム)の群から選択される元素である。III族窒化物半導体部3に含まれるIII族窒化物半導体は、III族元素をAIIIとすると、AIIINの一般式で表される。
【0014】
II-IV族窒化物半導体部4は、単結晶である。II-IV族窒化物半導体部4は、II族元素と、IV族元素と、を含む。ここで、II族元素は、周期表の2族の群又は12族の群から選択される元素である。つまり、II族元素は、Be(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ra(ラジウム)、Zn(亜鉛)、Cd(カドミウム)、Hg(水銀)及びCn(コペルニシウム)の群から選択される元素である。IV族元素は、周期表の14族の群から選択される元素である。つまり、IV族元素は、C(炭素)、Si(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(錫)、Pb(鉛)及びFl(フレロビウム)の群から選択される元素である。II-IV族窒化物半導体部4に含まれるII-IV族窒化物半導体は、例えば、II族元素をBIIとし、IV族元素をCIVとすると、BIICIVN2の一般式で表される。
【0015】
III族窒化物半導体部3は、所定結晶面を有する。II-IV族窒化物半導体部4は、III族窒化物半導体部3の所定結晶面上に設けられている。ここにおいて、II-IV族窒化物半導体部4は、III族窒化物半導体部3とヘテロ接合されている。
【0016】
(2)所定結晶面の面方位の検討
以下では、III族窒化物半導体部3に含まれるIII族窒化物半導体としてAlN結晶又はGaN結晶を採用し、II-IV族窒化物半導体部4に含まれるII-IV族窒化物半導体としてZnGeN2結晶を採用する場合についての所定結晶面の面方位の検討内容について説明する。
【0017】
(2.1)III族窒化物半導体のc面上へのII-IV族窒化物半導体の結晶成長
本願発明者は、III族窒化物半導体(例えば、GaN結晶又はAlN結晶)上にII-IV族窒化物半導体(例えば、ZnGeN2結晶)をヘテロエピタキシャル成長させる場合に、回転ドメインの乱立問題が発生することがあるという課題を見出した。この課題は、本願発明者がMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によってAlN結晶上にZnGeN2結晶を結晶成長させる研究開発を行い、そのZnGeN2結晶の結晶性、表面モフォロジ及び断面構造等を評価することで見出したものであり、特許文献1にはこのような課題について示唆も言及もされていない。
【0018】
以下、AlN結晶のc面上にZnGeN2結晶を結晶成長した実験結果を述べる。
【0019】
まず、第1主面及び第1主面とは反対側の第2主面を有する単結晶シリコン基板の第1主面上にMOCVD法によって厚さ246nmのAlN結晶を結晶成長させた試料を用意した。ここにおいて、単結晶シリコン基板の第1主面は、(111)面である。また、結晶成長させたAlN結晶の主面(AlN結晶において単結晶シリコン基板側とは反対側の面)は、c面である。AlN結晶のc面は、(0001)面である。
【0020】
この試料のAlN結晶の主面上にZnGeN2結晶をMOCVD法によって結晶成長させた。これにより、ZnGeN2結晶/AlN結晶/Si基板の積層構造を有する試料を作製した。MOCVD法によってZnGeN2結晶を結晶成長させるときには、Zn、Ge及びNの原料(プリカーサとも呼ばれる)として、それぞれ、ジエチル亜鉛(Zn(C2H5)2)、テトラエチルゲルマニウム(Ge(C2H5)4)及びアンモニア(NH3)を用いた。Zn及びGeの原料としては、それぞれ、ジメチル亜鉛(Zn(CH3)2)及びテトラメチルゲルマニウム(Ge(CH3)4)等を用いてもよい。この場合、原料の炭素含有量が減るので、ZnGeN2結晶の結晶成長温度を原料の分解温度よりも十分に高くしても原料の分解効率を高めてもZnGeN2結晶における炭素の析出を抑えることが可能である。
【0021】
MOCVD法によってZnGeN2結晶を結晶成長させるときの成長条件としては、基板温度(結晶成長温度ともいう)を900度、成長圧力を70kPa、成長時間を4時間とした。「基板温度」は、例えば、単結晶シリコン基板の元になるウェハを支持するサセプタ(susceptor)の温度を代用している。基板温度は、熱電対により測定したサセプタの温度を代用している。「成長圧力」とは、各原料及びキャリアガスをMOCVD装置のリアクタ内に供給している状態におけるリアクタ内の圧力である。この成長条件において、厚さ約0.4μmで鏡面のZnGeN2薄膜を得ることに成功した。なお、本願発明者の知る限り、本実験がMOCVD法による世界で初めてのZnGeN2結晶成長であると思われる。
【0022】
図2は、上述のZnGeN
2結晶/AlN結晶/単結晶シリコン基板の積層構造を有する試料の、X線回折のωスキャン(2θ-ωスキャン)によるX線ロッキングカーブ(X-Ray Rocking Curve:XRC)を示す。
図2では、Siによる複数のピークの他に、ZnGeN
2による複数のピークと、AlNによる複数のピークと、があることが分かる。
図2では、各ピークに、そのピークに対応する結晶及びその面方位をミラー指数とともに記載してある。
図2から、ZnGeN
2結晶は、c軸に配向していることが分かる。つまり、
図2は、c面からなる主面を有するAlN結晶の主面上に、c面からなる主面を有するZnGeN
2結晶がエピタキシャル成長されていることを示している。
【0023】
次に、上述の試料のZnGeN
2結晶をSEM(Scanning Electron Microscope)にて観察した結果について
図3A及び3Bを参照して説明する。
図3Aは、試料のZnGeN
2結晶の表面(主面)を観察したSEM像図である。
図3Bは、AlN結晶の劈開面であるm面近傍のZnGeN
2結晶のSEM像図である。AlN結晶のm面は、(1-100)面である。ミラー指数の指数に付加された“-”の符号は、当該符号に続く一の指数の反転を意味している。なお、
図3Aにおいてその中央付近に見えるクラックは、SiとAlN及びZnGeN
2の熱膨張係数の差に起因して発生したクラックであると考えられ、本論には直接の関係はない。むしろ、クラックが観察されているということは、ZnGeN
2結晶がAlN結晶に対してエピタキシャル成長していることを示している。
【0024】
また、
図3Aは、ZnGeN
2結晶の結晶構造による表面モフォロジの変化を際立たせるため、ZnGeN
2結晶の表面において鏡面よりもわずかに白濁している領域を観察したときのSEM像図である。
図3Aでは、矢印にて指し示すように、ZnGeN
2結晶の主面に膨らんだ平面成長の痕跡を見つけることができる。ZnGeN
2結晶は後述のように2回回転対称性を有する結晶であるから、ZnGeN
2結晶の表面が鏡面ではなくて若干荒れた表面であれば、筋状の模様が見つかるはずだが、そのような模様は観察されていない。
【0025】
一方、
図3Bを見ると、AlN結晶の劈開面からV字型にZnGeN
2結晶が結晶成長していることがわかる。劈開面近傍におけるZnGeN
2結晶の表面には、6回対称の筋状模様が見られる。この筋状模様の方位は、AlN結晶の結晶軸〔11-20〕の方位と一致している。ZnGeN
2結晶は、その結晶成長条件にも依存するものの、結晶構造からの推測ではこのような筋状のモフォロジを呈する。しかし、
図3Aでは、ZnGeN
2結晶の表面が筋状の模様を有していないことから、乱立する回転ドメインの結合との競合によって、
図3Bに示すような不規則なモフォロジとなっていると推考される。
【0026】
以上より、AlN結晶のc面上には回転ドメインが乱立した、つまり、複数のドメインを有するZnGeN2結晶が結晶成長されることが示された。
【0027】
(2.2)II-IV族窒化物半導体において回転ドメインが発生するメカニズム
まず、III族窒化物半導体上に結晶成長したII-IV族窒化物半導体において、回転ドメインの乱立問題が発生することを説明する。
【0028】
図4は、ZnGeN
2結晶の結晶構造の模式図であり、より詳細にはZnGeN
2結晶をZnGeN
2結晶のc軸を表す結晶軸〔001〕の方向から見た結晶構造の模式図である。
図5は、GaN結晶の結晶構造の模式図であり、より詳細にはGaN結晶をGaN結晶のc軸を表す結晶軸〔0001〕の方向から見た結晶構造の模式図である。なお、ここではZnGeN
2結晶及びGaN結晶を例に挙げているが、それぞれ別のII-IV族窒化物半導体及びIII族窒化物半導体を示しても論理の一般性は損なわれない。
【0029】
図4において、小さい球はN原子である。また、
図4において、高密度のドットのハッチングを付してある球は、Ge原子である。また、
図4において、低密度のドットのハッチングを付してある球は、Zn原子である。なお、
図4におけるドットのハッチングは、断面を表すものではなく、図面上でGe原子とZn原子とを区別しやすくするために付してあるにすぎない。
【0030】
図5において、小さい球はN原子である。また、
図5において、ハッチングを付してある球は、Ga原子である。なお、
図5におけるハッチングは、断面を表すものではなく、図面上でN原子とGa原子とを区別しやすくするために付してあるにすぎない。
【0031】
図4及び
図5それぞれの左下には、結晶軸の方向を矢印及びミラー指数(Miller Index)で示してある。
図4の左下においては、ZnGeN
2結晶のc軸を表す結晶軸〔001〕と、結晶軸〔100〕と、結晶軸〔010〕と、を示してある。
図5の左下においては、GaN結晶の結晶構造のc軸を表す結晶軸〔0001〕と、m軸を表す結晶軸〔1-100〕と、a軸を表す結晶軸〔11-20〕と、を示してある。ミラー指数の指数に付加された“-”の符号は、当該符号に続く一の指数の反転を意味している。
【0032】
図4と
図5とを比較すると、N原子は同じサイトに位置していることが分かる。そして、
図5に示したGaN結晶の結晶構造では、Ga原子がN原子のサイト以外のサイトを全て占有している。これにより、GaN結晶は、GaN結晶のc軸を回転中心軸として6回回転対称性を有している。一方、
図4に示したZnGeN
2結晶の結晶構造では、Zn原子及びGe原子が縦方向へ交互に帯状に並んでいる。これにより、ZnGeN
2結晶は、ZnGeN
2結晶のc軸を回転中心軸として2回回転対称性しか有することができない。
図4のように、II-IV族窒化物半導体における2種類のカチオン(ここでは、Zn原子、Ge原子)が整然と並ぶのは、電気的に陽性な2種類のカチオンのイオン性の差による。ここにおいて、「整然と並ぶ」とは、ZnサイトにZn原子が配置され、GeサイトにGe原子が配置され、Zn原子及びGe原子が周期的に規則配列されていることを意味する。ZnGeN
2結晶では、Zn原子の位置とGe原子の位置とが入れ替わる(GeサイトにZn原子が配置され、ZnサイトにGe原子が配置される)と、強い合金散乱によってZnGeN
2結晶の伝導帯及び価電子帯それぞれのバンド端がぼやけ、バンドギャップが縮小する。ZnGeN
2結晶では、Zn原子及びGe原子がランダムに配置されたとすると、ワイドバンドギャップ半導体として期待されるZnGeN
2のバンドギャップが、3.5eVから約2eVまで縮小してしまう。
【0033】
仮に、ZnサイトにZn原子が位置し、GeサイトにGe原子が位置したZnGeN2単結晶を用意でき、ZnGeN2単結晶上にZnGeN2をホモエピタキシャル成長したとする。この場合、ホモエピタキシャル成長されたZnGeN2結晶(以下、ZnGeN2ホモエピタキシャル層ともいう)においても、Zn原子がZnサイトに位置し、Ge原子がGeサイトに位置する。その結果、ZnGeN2ホモエピタキシャル層は、優れた物性を呈することができる。一方で、GaN結晶のc面上にZnGeN2結晶を結晶成長する場合、GaN結晶とZnGeN2結晶とではそれぞれのc軸を回転中心軸とした回転対称性が異なるため、ZnGeN2結晶のカチオンサイトの決定には120度ごとの自由度を持つことになる。
【0034】
ここにおいて、GaN結晶の空間群(space group)は、P63mcであり、ZnGeN2結晶の空間群は、Pna21である。これにより、上述のように、GaN結晶は、6回回転対称性を有し、ZnGeN2結晶は、2回回転対称性を有する。このため、GaN結晶のc面上にZnGeN2結晶を結晶成長させようとすると、120度ごとに原子配置が一致する。ZnGeN2結晶を結晶成長させるときの成長初期においてランダムにZnGeN2の面内結晶軸が決定されるとすると、回転ドメインの乱立問題が発生し、ドメイン同士の結合領域ではZnとGeがランダムに配置されてしまうと考えられる。
【0035】
GaN結晶上においてZnGeN2結晶の面内方位がどのように決定されるかについては、GaN結晶の表面構造やその状態、成長条件等によって決まるので、微視的にコントロールできるものではない。つまり、ZnGeN2結晶の面内方位は場所ごとにランダムに決まってしまう。もし隣接するドメイン(領域)が異なる面内方位を有して成長している場合、隣接し互いに異なる面内方位を有するドメイン同士の結合領域ではZnとGeがランダムに配置されてしまう。すなわち、GaN結晶のc面上に結晶成長したZnGeN2結晶では、結合領域においてバンドギャップが約2eVまで縮まってしまう。このような結合領域を有するZnGeN2を用いた電子デバイスでは、電子デバイスの安定動作に不都合を生じてしまうと考えられる。それゆえに、II-IV族窒化物半導体においてII族元素及びIV族元素それぞれが配置されるサイトを制御することは、電子デバイスへの応用において必要不可欠な事柄であると考えられる。
【0036】
(2.3)計算科学によるZnGeN2/AlN界面の設計
II-IV族窒化物半導体においてII族元素及びIV族元素それぞれが配置されるサイトを制御するためには、III族窒化物半導体において対称性の低い面を利用すること、さらにその面から成長されるII-IV族窒化物半導体の面方位も界面エネルギによって一意に定まることが必要である。界面構造の解析は困難であるため、ここでは計算科学を用いて界面の設計を行なっている。
【0037】
III族窒化物半導体においてc面以外に容易に得られる面方位は、a面及びm面である。III族窒化物半導体においてa面は、(11-20)面である。III族窒化物半導体においてm面は、(1-100)面である。ZnGeN2は、III族窒化物半導体のa面及びm面それぞれの面に対して、一通りの界面を形成するとは限らない。III族窒化物半導体に未結合手がないことを条件に入れても、III族窒化物半導体のa面及びm面それぞれの面に対して、2つか3つの界面モデルが想定される。現実的にどの界面構造を取るかについて、計算科学を用いることで求める。ここでは、AlN結晶とZnGeN2結晶との界面エネルギについて計算しているが、他のIII族窒化物半導体及びII-IV族窒化物半導体との組み合わせにおいても、計算結果の普遍性を損なうことはない。
【0038】
以下に、5つの計算モデルについて、
図6~10を参照して説明する。なお、
図6~10では、AlN結晶のm面又はa面とZnGeN
2結晶との界面を破線で示してある。また、
図6~10においてN原子に重なっている他の原子(Zn原子、Ge原子及びAl原子)は、紙面に直交する方向においてN原子よりも奥に位置している。
【0039】
AlN結晶のm面とZnGeN
2結晶との界面としては、
図6及び7の2通りが考えられる。
図6に示す第1計算モデルは、Zn原子及びGe原子の列が界面に垂直に接している計算モデルであり、90/mモデルと称する。
図7に示す第2計算モデルは、Zn原子及びGe原子の列が界面に斜めに接している計算モデルであり、30/mモデルと称する。
【0040】
AlN結晶のa面とZnGeN
2結晶との界面としては、
図8~10の3通りが考えられる。
図8に示す第3計算モデルは、Zn原子の列及びGe原子の列が界面に対して平行である計算モデルであり、00/aモデルと称する。
図9に示す第4計算モデルは、カチオンの列が界面に対して斜めに接しており、界面におけるカチオンの存在比率がZn:Ge=1:3である計算モデルであり、60Ge/aモデルと称する。
図10に示す第5計算モデルは、カチオンの列が界面に対して斜めに接しており、界面におけるカチオンの存在比率がZn:Ge=3:1である計算モデルであり、60Zn/aモデルと称する。
【0041】
第1~第5計算モデルの各々の計算モデルでは、原子の総数を192個とした。この内訳は、AlN結晶に関し、Al原子の数が48、N原子の数が48であり、ZnGeN2結晶に関し、Zn原子の数が24、Ge原子の数が24、N原子の数が48である。第1~第5計算モデルの各々に関し、モデルの構造緩和を行なった後、モデルの全エネルギを計算している。用いた計算プログラムはVASP(The Vienna Ab-initio Simulation Package)で、平面波展開による擬ポテンシャル法を採用している。
【0042】
界面エネルギは、界面を持つモデルの全エネルギから、それぞれの結晶相が単独にて存在する場合の全エネルギを引いたエネルギとして定義される。界面を持つ場合、各結晶相は格子定数の違いによって、それぞれに歪を受けている。そのため、歪による各結晶相のエネルギ増分も引く必要がある。この歪エネルギの増分は、各結晶相における弾性スティフネス定数を求め、力及び歪のつりあい条件と歪エネルギの最小化によって一意に決定される。しかしながら、方程式群は合計12成分のテンソル量と6つの拘束条件を持ちつつ、異方性に伴う座標変換も内包しており、さらには変分原理を用いた未知数決定も必要となるため、ここでは簡便な方法によって歪エネルギを求めている。
【0043】
以下、上述の簡便な方法について説明する。
【0044】
簡便な方法では、構造緩和した界面モデルを界面においてZnGeN2結晶及びAlN結晶の2つのバルクユニットセルに分割する。そして、界面における2軸のユニットセル長は固定としつつ、残りの1軸を変えながら内部の構造緩和を行ない、全エネルギを得る。ZnGeN2結晶及びAlN結晶それぞれのバルクユニットセルにおいて、残り1軸のユニットセル長の合計は、界面モデルにおける残り1軸のユニットセル長に等しいはずである。これを拘束条件として、全エネルギ和が最小となる残り1軸のユニットセル長の組み合わせを求める。その最小値を、弾性エネルギとして採用する。本方法では、各結晶相におけるねじれの影響は計算に含まれない。しかしながら、ここでは、各結晶相におけるねじれの影響よりも、界面における圧縮応力及び引張応力の影響の方が大きいと仮定しており、界面エネルギの大きさに若干の誤差は含まれると考えられるが、この仮定は本議論の正当性を脅かす仮定ではない。
【0045】
下記表1に、第1~第5の計算モデルの各々での界面に関連する特徴量及び界面エネルギを示した。
【0046】
【0047】
表1から、第1~第5計算モデルのうち計算モデル00/aモデルが最も低い界面エネルギとなる計算モデルであることが分かる。これは、セルあたりの界面エネルギ〔eV/cell〕、結合原子あたりの界面エネルギ〔eV/bond〕、単位面積あたりの界面エネルギ〔eV/nm2〕のどれをとっても同様の結果となっている。特にAlN結晶のa面とZnGeN2結晶との界面に関する第3~第5計算モデルでは、00/aモデルが圧倒的に低い界面エネルギとなる計算モデルであることが分かる。このことは、AlN結晶のa面上へはまず00/aモデルの界面構造を持ちながら結晶成長が始まることを示唆している。これは、AlN結晶のa面に対してはAlN結晶の(11-20)面とZnGeN2結晶の(010)面とが接するようにZnGeN2が結晶成長されやすいことを意味しており、その選択性から、AlN結晶のc面上への結晶成長において見られた回転ドメインの乱立問題は解消されることが予測できる。一方、AlN結晶のm面とZnGeN2結晶との界面に関する第1~第2計算モデルにおいては、30/mモデルが最も低い界面エネルギとなる計算モデルであることが分かる。このことから、AlN結晶のm面に対しては、AlN結晶の(1-100)面とZnGeN2結晶の(210)面とが接するようにZnGeN2が結晶成長されやすいと予測できる。しかしながら、30/mモデルと90/mモデルとでは界面エネルギ差が小さいので、AlN結晶のm面上へのZnGeN2の結晶成長では、AlN結晶のa面上へのZnGeN2の結晶成長に比べると選択性が低いと考えられる。また、仮にm面を主面とするAlN結晶の主面にa面のテラスが存在する場合、ZnGeN2の結晶成長は界面エネルギが低くなるa面から優先的に進んでしまう(ここでの界面構造は00/aモデルとなる)ため、回転ドメインが混在してしまう可能性がある。そのため、回転ドメインの乱立を防止してシングルドメインのZnGeN2を結晶成長させる観点からは、ZnGeN2結晶の下地としては、AlN結晶のm面よりもAlN結晶のa面を用いるほうが望ましいと考えられる。
【0048】
なお、ZnGeN2結晶とAlN結晶との組み合わせにおける界面エネルギについて計算して結晶成長の選択性について議論したが、他のII-IV族窒化物半導体とIII族窒化物半導体との組み合わせについても同様の議論ができ、結論もこれらと等しくなることは容易に想像できる。これは、結晶構造の類似性と相違性が似ていることと、さらには同族原子よりも異族原子での化学的性質が大きく異なる(換言すれば周期表において縦方向よりも横方向の差異が大きい)ためである。例えば、ZnGeN2の代わりにZnSiN2、ZnSnN2、MgGeN2、CaSnN2等、あらゆるII-IV族化合物半導体を採用した場合でも普遍性を損なわない。また、AlNの代わりにGaN、InN等を採用した場合においても同様である。
【0049】
ここでは計算結果を示してはいないが、II-IV族窒化物半導体の結晶構造を見ると、(011)面において、カチオンとしてII族元素(例えば、Zn原子)あるいはIV族元素(例えば、Ge原子)が100%露出している。II-IV族窒化物半導体の(011)面は、III族窒化物半導体では(11-22)面に相当する。一般に高インデックス面は対称性が低いため、AlN結晶の(11-22)面上に形成できるZnGeN2結晶の結晶構造も限定されやすい。すなわち、AlN結晶の(11-22)面に対しては、ZnGeN2結晶の(011)面が界面を形成しやすく、界面のZnGeN2結晶側はZn原子あるいはGe原子が全面を覆う構造となる。すなわち、III族窒化物半導体の(11-22)面とII-IV族窒化物半導体の(011)面との組み合わせにおいても、回転ドメインの乱立問題は回避することができる。
【0050】
以上の説明から分るように、III族窒化物半導体部3の所定結晶面は、c面以外の面であり、例えば、a面、m面であり、m面よりもa面のほうがより好ましい。
【0051】
(3)製造方法
以上の界面構造を実現するには、例えば、a面を主面とするAlN基板を用意し、そのAlN基板の主面上にZnGeN2を結晶成長させればよい。もしくは、m面を主面とするAlN基板の主面上にZnGeN2を結晶成長させてもよい。その結果として、回転ドメインの乱立を回避した、優れた結晶性を有するシングルドメイン(単結晶)のZnGeN2結晶を得ることができる。
【0052】
しかしながら、III族窒化物半導体を用いた実用的な電子デバイスは、現状では、c面を主面とするIII族窒化物半導体を利用している。そのため、c面を主面とするIII族窒化物半導体に比べて流通が乏しい、a面又はm面を主面とするIII族窒化物半導体を利用すると、大幅なコストの増大を招く。よって、c面を主面とするIII族窒化物半導体を利用しつつ、回転ドメインの発生を抑制することが、電子デバイスの実用面において重要となる。
【0053】
以下、III族窒化物半導体としてAlNを含むIII族窒化物半導体部3と、II-IV族窒化物半導体としてZnGeN
2を含むII-IV族窒化物半導体部4と、を備える窒化物半導体構造体1の製造方法について、
図11を参照して説明する。
【0054】
窒化物半導体構造体1の製造方法では、第1工程~第5工程を行う。
【0055】
第1工程では、単結晶シリコン基板2の元になる単結晶シリコンウェハ20(
図11A参照)を準備する。単結晶シリコン基板2は、第1主面21及び第1主面21とは反対側の第2主面22を有する。単結晶シリコンウェハ20は、単結晶シリコン基板2の第1主面21及び第2主面22に対応する第1主面201及び第2主面202を有する。ここにおいて、単結晶シリコン基板2の第1主面21及び単結晶シリコンウェハ20の第1主面201は、(111)面である。
【0056】
第2工程では、単結晶シリコンウェハ20の第1主面201上にIII族窒化物半導体部3の元になる単結晶AlN層30をMOCVD法によって結晶成長させる(
図11A参照)。単結晶AlN層30の厚さは、例えば、246nmである。ここにおいて、単結晶AlN層30の主面301(単結晶AlN層30において単結晶シリコンウェハ20側とは反対側の面)は、c面すなわち(0001)面である。
【0057】
第3工程では、単結晶AlN層30の主面301上に酸化ケイ素膜を堆積させ、その後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を利用して酸化ケイ素膜をパターニングすることによって、各々が酸化ケイ素膜の一部からなる複数の酸化ケイ素部5を形成する(
図11Bでは、複数の酸化ケイ素部5のうち1つの酸化ケイ素部5のみ図示してある)。複数の酸化ケイ素部5の各々は、単結晶シリコンウェハ20の厚さ方向から見て、直線状である。複数の酸化ケイ素部5は、単結晶AlN層30の主面301上でストライプ状に並んでいる。複数の酸化ケイ素部5は、単結晶シリコンウェハ20の厚さ方向から見て、単結晶シリコンウェハ20の厚さ方向に直交する一方向(ここでは、単結晶AlN層30の結晶軸〔11-20〕に沿った方向)において等間隔で並んでいる。ここでいう「等間隔」とは、厳密に同じ間隔でなくてもよく、規定範囲(規定距離±20%)内の間隔であればよい。単結晶シリコンウェハ20の厚さ方向から見て、複数の酸化ケイ素部5の長手方向は、単結晶AlN層30の結晶軸〔1-100〕に沿った方向であり、複数の酸化ケイ素部5の幅方向は、単結晶AlN層30の結晶軸〔11-20〕に沿った方向である。
【0058】
第4工程では、単結晶AlN層30をパターニングすることによって、各々が単結晶AlN層30の一部からなる複数のIII族窒化物半導体部3を形成する(
図11C参照)。第4工程は、複数の酸化ケイ素部5をマスクとして単結晶AlN層30をドライエッチングする第1ステップと、第1ステップの後にエッチングダメージを除去するためのアニール処理を行う第2ステップと、を含む。第4工程を行うことによって形成された複数のIII族窒化物半導体部3の各々の第1側面33は、AlN結晶のa面すなわち(11-20)面である。複数のIII族窒化物半導体部3の各々の第2側面34は、AlN結晶の(-1-120)面である。AlN結晶の(-1-120)面は、結晶学的にAlN結晶の(11-20)と等価な面である。第4工程の第1ステップでは、単結晶AlN層30をドライエッチングするためのエッチングガスとして、塩素系ガスを用いるが、これに限らず、例えば、アルゴンガスを用いてもよい。また、第4工程の第1ステップでは、複数の酸化ケイ素部5をマスクとして単結晶AlN層30をドライエッチングした後、単結晶シリコンウェハ20も所定深さまでドライエッチングする。第4工程の第2ステップでは、アニール処理のアニール条件は、例えば、雰囲気圧力を常圧、雰囲気を窒素ガス雰囲気、アニール温度を700度、アニール時間を1時間とする。なお、第1側面33は、例えば、a面からのオフ角(以下、「第1オフ角」という)が0°よりも大きく5°以下の結晶面でもよい。ここにおいて、「第1オフ角」とは、a面に対する第1側面33の傾斜角である。したがって、第1オフ角が0°であれば、第1側面33は、a面である。また、第4工程の第1ステップにおいて単結晶シリコンウェハ20の一部もエッチングするのは、後述の第5工程においてZnGeN
2を結晶成長させるときに余計なZnGeN
2結晶核が形成されることを回避するためである。
【0059】
第5工程では、第4工程の後に、上述の単結晶シリコンウェハ20と複数のIII族窒化物半導体部3とを含むウェハを、MOCVD装置のリアクタ内に導入して所定位置にセットしてZnGeN
2を結晶成長させる。ZnGeN
2を結晶成長させるときのZn、Ge及びNの原料としては、それぞれ、ジエチル亜鉛、テトラエチルゲルマニウム及びアンモニアを用いる。第5工程では、リアクタ内へウェハを導入した後、ウェハの昇温を開始し、ウェハの温度が400度を超えてからアンモニアをリアクタ内に導入することにより、III族窒化物半導体部3の第1側面33及び第2側面34からN原子が抜けるのを抑制する。ウェハを400度よりもさらに高温に昇温し、単結晶シリコンウェハ20において露出している表面203を窒化することによって窒化ケイ素膜6を形成する(
図11D参照)。窒化反応は、600度以上から顕著に起こり、例えば、700度では、厚さ2nmの緻密な窒化ケイ素膜6が形成される。窒化ケイ素膜6の厚さは、第4工程の第1ステップでの単結晶シリコンウェハ20のドライエッチングにより単結晶シリコンウェハ20の第1主面201に形成された凹部の深さよりも小さい。窒化ケイ素膜6は、ZnGeN
2を結晶成長させるときにマスクの役割を果たす。ウェハをさらに昇温してウェハ温度がZnGeN
2の結晶成長温度(例えば、900度)に到達したら、Zn及びGeそれぞれの原料の供給を開始する。ZnGeN
2の結晶成長では、複数のIII族窒化物半導体部3の各々の第1側面33及び第2側面34からZnGeN
2の結晶成長が開始される。ここにおいて、上述の計算科学の結果より、III族窒化物半導体部3の第1側面33(AlN結晶のa面)に対してはZnGeN
2結晶の(010)面が良好な界面を選択的に形成する。つまり、第5工程では、回転ドメインの乱立を抑制しながら初期成長を実現することができる。
図11Eは、III族窒化物半導体部3の第1側面33から第1側面33に直交する方向(横方向)に結晶成長したZnGeN
2結晶430と、III族窒化物半導体部3の第2側面34から第2側面34に直交する方向(横方向)に結晶成長したZnGeN
2結晶440と、を模式的に図示してある。第5工程では、さらにZnGeN
2の結晶成長を進めると、ZnGeN
2結晶430及びZnGeN
2結晶440それぞれから横方向のみならず主面方向にも結晶成長が起こる。さらには、ZnGeN
2結晶430及びZnGeN
2結晶440は酸化ケイ素部5の上にも覆いかぶさるように結晶成長し、ついにはZnGeN
2結晶430とZnGeN
2結晶440とが酸化ケイ素部5上で結合する。
図11Fでは、ZnGeN
2結晶430とZnGeN
2結晶440とを含むII-IV族窒化物半導体部4と、II-IV族窒化物半導体部4におけるZnGeN
2結晶430とZnGeN
2結晶440との結合領域450と、を図示してある。ここにおいて、互いに回転ドメインの発生を抑制されたZnGeN
2結晶430とZnGeN
2結晶440とが結合されるので、結合領域450においてZn原子及びGe原子がそれぞれZnサイト及びGeサイトに配置されやすい。このため、II-IV族窒化物半導体部4では、結合領域450においてバンドギャップの大幅な縮小を起こすこともない。ZnGeN
2結晶430とZnGeN
2結晶440とを含むII-IV族窒化物半導体部4は、ZnGeN
2単結晶である。II-IV族窒化物半導体部4の主面41は、ZnGeN
2単結晶のc面である。なお、第5工程を行うことにより、II-IV族窒化物半導体部4と窒化ケイ素膜6との間には空隙7が形成される。
【0060】
窒化物半導体構造体1では、III族窒化物半導体部3の第1側面33の面方位が、III族窒化物半導体のa面であって、第2側面34の面方位が結晶学的にa面と等価な面であるが、これに限らず、例えば、第1側面33の面方位がm面であって、第2側面34の面方位がm面と等価な面であってもよい。ただし、この場合、その製造時に第1側面33において局所的にa面が露出していると、m面上にZnGeN2が結晶成長するだけでなく、a面上にZnGeN2が結晶成長して回転ドメインの乱立を招く可能性があるので、第1側面33の加工精度が重要である。ここにおいて、第1側面33は、例えば、m面からのオフ角(以下、「第2オフ角」という)が0°よりも大きく5°以下の結晶面でもよい。ここにおいて、「第2オフ角」とは、m面に対する第1側面33の傾斜角である。したがって、第2オフ角が0°であれば、第1側面33は、m面である。第2側面34の加工精度についても同様である。
【0061】
また、窒化物半導体構造体1は、III族窒化物半導体部3を支持する支持基板として単結晶シリコン基板2を備えているが、支持基板として単結晶シリコン基板2以外の基板を備えていてもよい。すなわち、支持基板の材料は、シリコンに限らない。ただし、窒化物半導体構造体1の製造時にIII族窒化物半導体部3に結晶成長させるZnGeN2に回転ドメインが発生するのを抑制するためには、支持基板からZnGeN2が結晶成長することを避けなければならず、単結晶シリコン基板2の第1主面21側(単結晶シリコンウェハ20の表面203)にZnGeN2が結晶成長されにくい材料(例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素)からなるマスク層を設ける必要がある。
【0062】
(4)効果
実施形態1に係る窒化物半導体構造体1は、III族窒化物半導体部3と、II-IV族窒化物半導体部4と、を備える。III族窒化物半導体部3は、単結晶であり、所定結晶面(第1側面33)を有する。II-IV族窒化物半導体部4は、III族窒化物半導体部3の所定結晶面上に設けられており、単結晶である。II-IV族窒化物半導体部4は、III族窒化物半導体部3とヘテロ接合されている。所定結晶面(第1側面33)は、(0001)面以外の結晶面である。所定結晶面(第1側面33)は、例えば、(11-20)面である。
【0063】
実施形態1に係る窒化物半導体構造体1では、単結晶のIII族窒化物半導体部3上に単結晶のII-IV族窒化物半導体部4を備えた構成を実現可能となる。
【0064】
II-IV族窒化物半導体部4では、所定結晶面に直交する結晶軸方向が、[001]方向以外の結晶軸方向である。これにより、II-IV族窒化物半導体部4では、回転ドメインの発生を抑制することができる。ここにおいて、II-IV族窒化物半導体部4では、所定結晶面(第1側面33)に直交する結晶軸方向が、[010]方向である。これにより、II-IV族窒化物半導体部4では、回転ドメインの発生を抑制することができる。
【0065】
また、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1の製造方法は、単結晶のIII族窒化物半導体部3の(0001)面以外の所定結晶面(第1側面33)上に、II族元素とIV族元素とを含むII-IV族窒化物半導体部4をエピタキシャル成長させる工程(上述の第5工程)を備える。
【0066】
これにより、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1の製造方法では、単結晶のIII族窒化物半導体部3上に単結晶のII-IV族窒化物半導体部4を備えた構成を実現可能となる。
【0067】
実施形態1に係る窒化物半導体構造体1の製造方法では、II-IV族窒化物半導体部4において回転ドメインが乱立するのを防ぐことが可能となり、II-IV族窒化物半導体部4の特性を向上させることが可能となり、ひいては、新規な電子デバイスを実現可能となる。
【0068】
III族窒化物半導体部3及びII-IV族窒化物半導体部4のそれぞれは、不純物を含んでいてもよい。不純物は、成長時に不可避的に混入される不純物に限らず、成長時に意図的にドーピングされる不純物、成長後にドーピングされる不純物であってもよい。成長時に不可避的に混入される不純物は、例えば、H(水素)、Si(シリコン)、C(炭素)及びO(酸素)である。
【0069】
II-IV族窒化物半導体はIII族窒化物半導体と同じ窒素源(例えば、アンモニア)を用いたMOCVD装置を利用して成長できるので、GaN系パワートランジスタの制御ロジックとしてII-IV族窒化物半導体をモノリシック集積する応用が可能となる。
【0070】
実施形態1に係る窒化物半導体構造体1及びその製造方法では、上述の計算と同様に、II-IV族窒化物半導体をZnGeN2とし、III族窒化物半導体をAlNとした組み合わせについて例示したが、II-IV族窒化物半導体とIII族窒化物半導体との組み合わせは、ZnGeN2とAlNとの組み合わせに限らない。実施形態1に係る窒化物半導体構造体1及びその製造方法は、ZnGeN2とAlNとの組み合わせ以外の組み合わせであっても一般性を損なわない。
【0071】
ところで、窒化ガリウム等のIII族窒化物半導体を利用した電子デバイスは、シリコンを利用した電子デバイスと比べて、キャリアの熱励起に起因した熱暴走が起こりにくく、シリコンを利用した電子デバイスの許容動作温度よりも高い温度域においても安定動作させることが可能である。しかしながら、p形III族窒化物半導体では正孔濃度が十分ではなく、抵抗が高いという欠点がある。例えば、p形窒化ガリウムの製造にはマグネシウムをアクセプタ元素として添加するが、価電子帯のエネルギ準位が低く、高濃度にマグネシウムを添加しても、余剰電子を生成する窒素欠陥ができてしまう結果、正孔を補償してしまう。このため、III族窒化物半導体を利用した電子デバイスでは、低抵抗のp形窒化ガリウムを得ることが難しいという課題がある。
【0072】
一方、窒化亜鉛ゲルマニウム(ZnGeN2)にて代表されるII-IV族窒化物半導体は、Znの3d軌道が価電子帯の直下にあるために両者の軌道間の反発が大きく、価電子帯が高エネルギ側で持ち上げられる。その結果、価電子帯の分散も大きくなり、また、正孔の有効質量も小さくなる。そして、アクセプタ準位と価電子帯とが混ざりやすくなる。このような理由によって、ZnをII族元素として持つII-IV族窒化物半導体は、高い正孔濃度が得られることが理論的に予測されている。
【0073】
実施形態1に係る窒化物半導体構造体1では、II-IV族窒化物半導体のII族元素が亜鉛である。これにより、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1では、回転ドメインの乱立を抑えつつ、亜鉛の3d軌道による価電子帯の持ち上げ効果により、より高濃度なp形半導体を実現することが可能となる。よって、ワイドバンドギャップによる低リークな高温動作性と高い正孔濃度とを実現することができることから、今までにない高温動作可能なロジック回路を形成することも可能となる。
【0074】
(5)窒化物半導体構造体の応用例
以下では、窒化物半導体デバイス10について
図12に基づいて説明する。
【0075】
窒化物半導体デバイス10は、窒化物半導体構造体1aを備える。窒化物半導体構造体1aは、窒化物半導体構造体1のII-IV族窒化物半導体部4の代わりにII-IV族窒化物半導体部4aを備える。窒化物半導体デバイス10は、II-IV族窒化物半導体部4aの少なくとも一部を含む半導体素子100を備える。窒化物半導体構造体1aにおいて、窒化物半導体構造体1と同様の構成要素には同一の符合を付して説明を適宜省略する。
【0076】
半導体素子100は、光を出射する発光素子であり、より詳細には、電流狭窄構造及び光閉じ込め構造を有する半導体レーザである。この半導体素子100では、
図12の紙面に直交する方向に光(レーザ光)を出射する。
【0077】
II-IV族窒化物半導体部4aは、II-IV族窒化物半導体部4と同様、III族窒化物半導体部3上に形成されている。
【0078】
II-IV族窒化物半導体部4aは、n形ZnGeN2結晶401と、n形ZnGeN2結晶401の一部の上に形成されているn形ZnGeSnN2結晶402と、n形ZnGeSnN2結晶402上に形成されているZnSnN2結晶403と、ZnSnN2結晶403上に形成されているp形ZnGeSnN2結晶404と、p形ZnGeSnN2結晶404の一部の上に形成されているp形ZnGeN2結晶405と、を有する。II-IV族窒化物半導体部4aは、II-IV族窒化物半導体部4と同様、MOCVD法によってIII族窒化物半導体部3上に結晶成長されている。ただし、n形ZnGeN2結晶401及びn形ZnGeSnN2結晶402では、その成長時に不純物として砒素(As)がドーピングされ、p形ZnGeSnN2結晶404及びp形ZnGeN2結晶405では、その成長時に不純物としてアルミニウム(Al)がドーピングされている。II-IV族窒化物半導体部4aは、III族窒化物半導体部3上にn形ZnGeN2結晶401を結晶成長させた後、n形ZnGeSnN2結晶402、ZnSnN2結晶403、p形ZnGeSnN2結晶404、及びp形ZnGeN2結晶405をこの順に成長させ、その後、n形ZnGeN2結晶401とn形ZnGeSnN2結晶402とZnSnN2結晶403とp形ZnGeSnN2結晶404とp形ZnGeN2結晶405とを含む積層体の一部をp形ZnGeN2結晶405の主面からエッチングすることによってパターニングされている。
【0079】
半導体素子100は、アノード電極8と、カソード電極9と、を有する。アノード電極8は、p形ZnGeN2結晶405上に形成されており、p形ZnGeN2結晶405と電気的に接続されている。カソード電極9は、n形ZnGeN2結晶401上に形成されており、n形ZnGeN2結晶401と電気的に接続されている。
【0080】
半導体素子100では、n形ZnGeN2結晶401、n形ZnGeSnN2結晶402、ZnSnN2結晶403、p形ZnGeSnN2結晶404及びp形ZnGeN2結晶405が、それぞれ、n形コンタクト層、n形クラッド層、活性層、p形クラッド層及びp形コンタクト層を構成している。
【0081】
II-IV族窒化物半導体部4aは、n形半導体領域として、n形ZnGeN2結晶401と、n形ZnGeSnN2結晶402と、を有している。
【0082】
また、II-IV族窒化物半導体部4aは、p形半導体領域として、p形ZnGeSnN2結晶404と、p形ZnGeN2結晶405と、を有している。
【0083】
半導体素子100は、n形半導体領域の少なくとも一部(ここでは、全部)と、p形半導体領域の少なくとも一部(ここでは、全部)と、を含む。
【0084】
以上説明した窒化物半導体デバイス10は、窒化物半導体構造体1aのII-IV族窒化物半導体部4aの少なくとも一部を含む半導体素子100を備える。これにより、窒化物半導体デバイス10では、単結晶のIII族窒化物半導体部3上に単結晶のII-IV族窒化物半導体部4aを備えた構成を実現可能となる。
【0085】
また、窒化物半導体デバイス10では、半導体素子100である半導体レーザがII-IV族窒化物半導体部4aを含んでいるが、これに限らず、半導体素子100である半導体レーザがIII族窒化物半導体部3を含んでいてもよい。この場合、窒化物半導体デバイス10の製造時に、III族窒化物半導体部3に半導体レーザの元になるIII族窒化物半導体積層構造を形成してから、このIII族窒化物半導体積層構造をエッチングによって例えば幅1μmの狭いストライプ状に加工した後、III族窒化物半導体積層構造の側面にアンドープのII-IV族窒化物半導体を結晶成長させると、横に電流狭窄構造及び光閉じ込め構造を有する半導体レーザとすることができる。この半導体レーザでは、従来の半導体レーザにおいてリッジ導波路の残し厚によって起こっていたビーム形状のばらつき問題を解消することができるという利点がある。
【0086】
(実施形態2)
以下では、実施形態2に係る窒化物半導体構造体1bについて、
図13に基づいて説明する。実施形態2に係る窒化物半導体構造体1bに関し、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1と同様の構成要素には同一の符合を付して説明を省略する。
【0087】
窒化物半導体構造体1bは、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1のIII族窒化物半導体部3及びII-IV族窒化物半導体部4の代わりに、III族窒化物半導体部3b及びII-IV族窒化物半導体部4bを備える。
【0088】
実施形態2に係る窒化物半導体構造体1bでは、III族窒化物半導体部3bが、主面31と第1側面330と第2側面340とを含むAlN結晶30bと、AlN結晶30bの第1側面330上に成長された第1GaN結晶35と、AlN結晶30bの第2側面340上に成長された第2GaN結晶36と、を含む。III族窒化物半導体部3では、長手方向に直交する断面の形状が長方形状であったのに対し、III族窒化物半導体部3bは、長手方向に直交する断面の形状が台形状である。
【0089】
II-IV族窒化物半導体部4bは、III族窒化物半導体部3bにおける第1GaN結晶35の主面350上及び第2GaN結晶36の主面360上に結晶成長されている。第1GaN結晶35の主面350が所定結晶面である。第1GaN結晶35の主面350は、第1GaN結晶35の(11-22)面である。第2GaN結晶36の主面360は、第2GaN結晶36の(-1-122)面である。これにより、II-IV族窒化物半導体部4bの回転ドメインの発生を抑制することができる。
【0090】
II-IV族窒化物半導体部4bでは、所定結晶面(主面350)に直交する結晶軸方向が、[011]方向である。これにより、第1GaN結晶35の主面350上に成長されるII-IV族窒化物半導体部4bの回転ドメインの発生を抑制することができる。また、II-IV族窒化物半導体部4bでは、第2GaN結晶36の主面360に直交する結晶軸方向が、[0-11]方向である。これにより、第2GaN結晶36の主面360上に成長されるII-IV族窒化物半導体部4bの回転ドメインの発生を抑制することができる。
【0091】
以下、実施形態2に係る窒化物半導体構造体1bの製造方法について、
図11A、11B及び14A~14Dに基づいて説明する。なお、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1の製造方法と同様の工程については説明を適宜省略する。
【0092】
窒化物半導体構造体1bの製造方法では、第1工程~第7工程を行う。
【0093】
第1工程では、単結晶シリコン基板2の元になる単結晶シリコンウェハ20(
図11A参照)を準備する。単結晶シリコンウェハ20は、第1主面201及び第2主面202を有する。ここにおいて、単結晶シリコン
ウェハ20の第1主面201は、(111)面である。
【0094】
第2工程では、単結晶シリコンウェハ20の第1主面201上にIII族窒化物半導体部3bにおけるAlN結晶30bの元になる単結晶AlN層30をMOCVD法によって結晶成長させる(
図11A参照)。ここにおいて、単結晶AlN層30の主面301(単結晶AlN層30において単結晶シリコンウェハ20側とは反対側の面)は、c面すなわち(0001)面である。
【0095】
第3工程では、単結晶AlN層30の主面301上に酸化ケイ素膜を堆積させ、その後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を利用して酸化ケイ素膜をパターニングすることによって、各々が酸化ケイ素膜の一部からなる複数の酸化ケイ素部5を形成する(
図11Bでは、複数の酸化ケイ素部5のうち1つの酸化ケイ素部5のみ図示してある)。複数の酸化ケイ素部5の各々は、単結晶シリコンウェハ20の厚さ方向から見て、直線状である。複数の酸化ケイ素部5は、単結晶AlN層30の主面301上でストライプ状に並んでいる。複数の酸化ケイ素部5の長手方向は、単結晶AlN層30の結晶軸〔1-100〕に沿った方向であり、複数の酸化ケイ素部5の幅方向は、単結晶AlN層30の結晶軸〔11-20〕に沿った方向である。
【0096】
第4工程では、単結晶AlN層30をパターニングすることによって、各々が単結晶AlN層30の一部からなる複数のAlN結晶30bを形成する(
図14A参照)。第4工程は、複数の酸化ケイ素部5をマスクとして単結晶AlN層30をドライエッチングする第1ステップと、第1ステップの後にエッチングダメージを除去するためのアニール処理を行う第2ステップと、を含む。第4工程を行うことによって形成された複数のAlN結晶30bの各々の第1側面330は、AlN結晶のa面すなわち(11-20)面である。複数のAlN結晶30bの各々の第2側面340は、AlN結晶の(-1-120)面である。AlN結晶の(-1-120)面は、結晶学的にAlN結晶の(11-20)と等価な面である。
【0097】
第5工程では、第4工程の後に、上述の単結晶シリコンウェハ20と複数のAlN結晶30bとを含むウェハを、MOCVD装置のリアクタ内に導入して所定位置にセットする。その後、ウェハの昇温を開始し、ウェハの温度が400度を超えてからアンモニアをリアクタ内に導入することにより、AlN結晶30bの第1側面330及び第2側面340からN原子が抜けるのを抑制する。ウェハを400度よりもさらに高温に昇温し、単結晶シリコンウェハ20において露出している表面203を窒化することによって窒化ケイ素膜6を形成する(
図14B参照)。
【0098】
第6工程では、MOCVD装置内でAlN結晶30bの第1側面330、第2側面340に、それぞれ、第1GaN結晶35、第2GaN結晶36を結晶成長させる(
図14C参照)。これにより、各々がAlN結晶30bと第1GaN結晶35と第2GaN結晶36とを含む複数のIII族窒化物半導体部3bが形成される。第6工程では、所望の成長温度に達した後、MOCVD装置のリアクタ内にGaの原料(例えば、トリメチルガリウム)を供給開始する。このとき、第1GaN結晶35、第2GaN結晶36は、AlN結晶30bの第1側面330及び第2側面340上に結晶成長される。ここにおいて、アンモニアの供給量を減らして結晶成長を行なうと、GaN結晶の(11-22)面は最表面が窒素原子によって構成されているため、この面が不安定化してしまい、結晶成長レートが大幅に低下する。その結果、成長速度が反応律速となって主面350を(11-22)面とするくさび型の第1GaN結晶35及び主面360を(-1-122)面とするくさび型の第2GaN結晶36が形成される。この場合、主面350及び主面360の各々は、原子オーダにて表面構造が揃っている。第1GaN結晶35及び第2GaN結晶36の結晶成長が終わったらGaの原料の供給を停止する。
【0099】
第7工程では、III族窒化物半導体部3bの主面350上及び主面360上に、II-IV族窒化物半導体部4bとなるZnGeN
2結晶を結晶成長させる。ZnGeN
2結晶を結晶成長させるときのZn、Ge及びNの原料としては、それぞれ、ジエチル亜鉛、テトラエチルゲルマニウム及びアンモニアを用いる。第7工程では、第6工程においてGaの原料の供給を停止した後、Znの原料とアンモニアの供給を開始する。Znは蒸気圧が高いことと、Znの窒化物であるZn
3N
2は熱的に安定性が乏しいことから、第1GaN結晶35の主面350(III族窒化物半導体部3bの第1側面)及び第2GaN結晶36の主面360(III族窒化物半導体部3bの第2側面)にZn
3N
2が堆積することはなく、第1GaN結晶35の主面350及び第2GaN結晶36の主面360に原子層オーダでのZnの吸着が起こるだけである。これにより、III族窒化物半導体部3bとII-IV族窒化物半導体部4bとの界面におけるZnGeN
2結晶の初期成長層はZn層ということが一意に決まる。第1GaN結晶35の主面350及び第2GaN結晶36の主面360にZnの吸着が十分に起こった後はGeの原料も供給を開始する。これにより、ZnGeN
2の結晶成長が開始される。ZnGeN
2結晶におけるIII族窒化物半導体部3bとの接合面の面方位は(011)であり、初期成長層がZn層であることから、成長表面における回転ドメインの発生が抑制される。
図14Dでは、
図11Fと同様、ZnGeN
2結晶430とZnGeN
2結晶440とを含むII-IV族窒化物半導体部4bと、II-IV族窒化物半導体部4bにおけるZnGeN
2結晶430とZnGeN
2結晶440との結合領域450と、を図示してある。ここにおいて、互いに回転ドメインの発生を抑制されたZnGeN
2結晶430とZnGeN
2結晶440とが結合されるので、結合領域450においてZn原子及びGe原子がそれぞれZnサイト及びGeサイトに配置されやすい。このため、II-IV族窒化物半導体部4bでは、結合領域450においてバンドギャップの大幅な縮小を起こすこともない。ZnGeN
2結晶430とZnGeN
2結晶440とを含むII-IV族窒化物半導体部4bは、ZnGeN
2単結晶である。II-IV族窒化物半導体部4bの主面41は、ZnGeN
2単結晶のc面である。
【0100】
なお、第7工程では、ZnGeN2結晶の結晶成長を開始させる前に、アルミニウムを含むIII族窒化物半導体を第1GaN結晶35の主面350及び第2GaN結晶36の主面360に堆積させてIII族窒化物半導体部3bの第1側面及び第2側面を形成してもよい。この理由は、ガリウムと窒素との結合エネルギに比べてアルミニウムと窒素との結合エネルギのほうが大きく、ZnGeN2とGaNとの界面における混合を抑制するうえで効果的であるからである。
【0101】
以上説明した窒化物半導体構造体1bの製造方法は、III族元素を含む単結晶のIII族窒化物半導体部3bの(0001)面以外の所定結晶面(主面350)上に、II族元素とIV族元素とを含む単結晶のII-IV族窒化物半導体部4bをエピタキシャル成長させる工程(上述の第7工程)を備える。これにより、窒化物半導体構造体1bの製造方法では、単結晶のIII族窒化物半導体部3b上に単結晶のII-IV族窒化物半導体部4bを備えた構成を実現可能となる。
【0102】
(実施形態3)
以下では、実施形態3に係る窒化物半導体構造体1cについて、
図15に基づいて説明する。実施形態3に係る窒化物半導体構造体1cに関し、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1と同様の構成要素には同一の符合を付して説明を省略する。
【0103】
実施形態3に係る窒化物半導体構造体1cは、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1における支持基板としての単結晶シリコン基板2の代わりに、第1主面21c及び第2主面22cを有するIII族窒化物半導体基板2cを備える。III族窒化物半導体基板2cは、ウルツ鉱型結晶構造を有する。III族窒化物半導体基板2cは、例えば、GaN基板である。また、実施形態3に係る窒化物半導体構造体1cは、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1のIII族窒化物半導体部3及びII-IV族窒化物半導体部4の代わりに、III族窒化物半導体部3c及びII-IV族窒化物半導体部4cを備える。
【0104】
III族窒化物半導体基板2cは、第1主面21cに複数の凹部215を形成してある。複数の凹部215の各々は、III族窒化物半導体基板2cの厚さ方向から見て、直線状である。複数の凹部215は、III族窒化物半導体基板2cの厚さ方向から見てストライプ状に並んでいる。複数の凹部215は、III族窒化物半導体基板2cの厚さ方向から見て、III族窒化物半導体基板2cの厚さ方向に直交する一方向(ここでは、)において等間隔で並んでいる。ここでいう「等間隔」とは、厳密に同じ間隔でなくてもよく、規定範囲(規定距離±20%)内の間隔であればよい。III族窒化物半導体基板2cの厚さ方向から見て、複数の凹部215の長手方向は、III族窒化物半導体基板2cの結晶軸〔1-100〕に沿った方向であり、複数の凹部215の幅方向は、III族窒化物半導体基板2cの結晶軸〔11-20〕に沿った方向である。隣り合う2つの凹部215の間の部分は、第1主面21cの一部と、第1側面213及び第2側面214と、を有する。第1側面213は、隣り合う2つの凹部215のうち一方の凹部215の一内側面であり、第2側面214は、他方の凹部215の一内側面である。第1側面213は、GaN結晶のa面、すなわち、(11-20)面である。第2側面214は、GaN結晶の(-1-120)面である。
【0105】
実施形態3に係る窒化物半導体構造体1cでは、III族窒化物半導体部3cが、GaN結晶により構成されている。III族窒化物半導体部3cにおけるIII族窒化物半導体基板2c側とは反対側の主面31cは、第1面355及び第2面366を含む。第1面355は、GaN結晶の(11-22)面である。第2面366は、GaN結晶の(-1-122)面である。これにより、II-IV族窒化物半導体部4cの回転ドメインの発生を抑制することができる。窒化物半導体構造体1cでは、III族窒化物半導体部3cの第1面355が、所定結晶面である。
【0106】
II-IV族窒化物半導体部4cでは、第1面355に直交する結晶軸方向が、[011]方向である。また、II-IV族窒化物半導体部4cでは、第2面366に直交する結晶軸方向が、[0-11]方向である。これにより、II-IV族窒化物半導体部4cの回転ドメインの発生を抑制することができる。
【0107】
以下、実施形態3に係る窒化物半導体構造体1cの製造方法について、
図16A~16Cに基づいて説明する。なお、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1の製造方法と同様の工程については説明を適宜省略する。
【0108】
窒化物半導体構造体1cの製造方法では、第1工程~第3工程を行う。
【0109】
第1工程では、まず、複数の凹部215を有するIII族窒化物半導体ウェハ20cを準備する(
図16A参照)。III族窒化物半導体ウェハ20cは、III族窒化物半導体基板2cの元になるウェハである。III族窒化物半導体基板2cは、第1主面21c及び第2主面22cを有する。III族窒化物半導体ウェハ20cは、III族窒化物半導体基板2cの第1主面21c及び第2主面22cに対応する第1主面201c及び第2主面202cを有する。
【0110】
第2工程では、III族窒化物半導体ウェハ20cをMOCVD装置のリアクタ内に導入し、窒素源であるアンモニアを流しながら昇温する。III族窒化物半導体部3cを構成するGaN結晶の所望の結晶成長温度に達したら、Gaの原料(例えば、トリメチルガリウム)の供給を開始し、III族窒化物半導体ウェハ20cの第1主面201c上、第1側面213上、第2側面214上及び凹部215の底面上にGaNの結晶成長を開始する。第2工程では、第1側面213及び第2側面214からの結晶成長を抑制するような結晶成長条件を採用する。ここでは、第1側面213及び第2側面214は第1主面201cに比べて窒素が多く露出しているため、第1側面213及び第2側面214への窒素の吸着を抑制するような結晶成長条件が望ましい。このような結晶成長条件は、例えば、アンモニアの供給量を減らす、Gaの原料の供給量を増やす、結晶成長温度を下げてアンモニアの分解効率を下げる、水素ガスと窒素ガスとを含むキャリアガスにおける水素ガスの比率を上げて第1側面213及び第2側面214へ水素を吸着させやすくすることにより第1側面213及び第2側面214への窒素の吸着を阻害する、等の少なくとも1つを含む条件である。このような結晶成長条件を採用すると、
図16Bに示すように第1面355及び第2面366を有するGaN結晶(GaN再成長層)からなるIII族窒化物半導体部3cが形成される。第1面355は、GaN結晶の(11-22)面である。第2面366は、GaN結晶の(-1-122)面である。
【0111】
第3工程では、III族窒化物半導体部3c上にZnGeN
2結晶を含むII-IV族窒化物半導体部4cの結晶成長を行う(
図16C参照)。第3工程では、第1ステップ及び第2ステップを順次行う。第1ステップでは、リアクタ内にアンモニアとZnの原料(例えばジメチル亜鉛)とを供給し、III族窒化物半導体部3cの第1面355及び第2面366にZn原子を吸着させることにより、第1面355及び第2面366をZn原子によって覆う。これにより、ZnGeN
2においてIII族窒化物半導体部3cを構成するGaN結晶に接する面はZn原子によって決定されることになる。第2ステップでは、第1ステップの後、リアクタ内にGeの原料(例えば、テトラメチルゲルマニウム)の供給を開始し、所定の成長時間の間、各原料をリアクタ内に供給し続ける。第3工程では、第1ステップ及び第2ステップを順次行うことにより、ZnGeN
2単結晶をエピタキシャル成長させることができる。ここにおいて、エピタキシャル成長されたZnGeN
2単結晶がII-IV族窒化物半導体部4cである。II-IV族窒化物半導体部4cの主面41は、ZnGeN
2単結晶の(001)面である。第2ステップでは、ZnGeN
2の<001>方向への成長速度が他の方向への成長速度と比べて最も遅くなるように、結晶成長条件を制御することが重要である。結晶成長条件の制御内容としては、例えば、アンモニアの供給量を増やす、キャリアガスを窒素ガスのみにする、窒素ガスと水素ガスとを含むキャリアガスにおける窒素ガスの比率を高くする、成長圧力を大きくする、Geの原料のモル供給量に比べてZnの原料のモル供給量を増やしてZn原子の蒸発を補う、等である。結晶成長条件を適宜制御することにより、主面41を(001)面とする平坦なZnGeN
2単結晶をエピタキシャル成長させることができる。
【0112】
次に、窒化物半導体構造体1cと同様の窒化物半導体構造体1dを備える窒化物半導体デバイス10dについて、
図17に基づいて説明する。なお、窒化物半導体構造体1dに関し、窒化物半導体構造体1cと同様の構成要素には同一の符合を付して説明を省略する。
【0113】
II-IV族窒化物半導体部4dは、p形ZnGeN2単結晶である。窒化物半導体デバイス10dは、窒化物半導体構造体1dを備える。窒化物半導体デバイス10dは、II-IV族窒化物半導体部4dの少なくとも一部を含む半導体素子100dを備える。
【0114】
半導体素子100dは、例えば、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)である。半導体素子100dは、n形ソース領域101及びn形ドレイン領域102と、ソース電極111と、ドレイン電極112と、絶縁膜103と、ゲート電極113と、を有する。n形ソース領域101及びn形ドレイン領域102は、II-IV族窒化物半導体部4dの主面41側においてII-IV族窒化物半導体部4dに形成されている。ソース電極111は、n形ソース領域101上に形成されており、n形ソース領域101と電気的に接続されている。ドレイン電極112は、n形ドレイン領域102上に形成されており、n形ドレイン領域102と電気的に接続されている。絶縁膜103は、II-IV族窒化物半導体部4dの主面41のうちソース電極111及びドレイン電極112により覆われていない領域上に形成されている。ゲート電極113は、絶縁膜103上に形成されている。n形ソース領域101及びn形ドレイン領域102は、例えば、n形ZnGeN2領域である。ソース電極111及びドレイン電極112の材料は、例えば、アルミニウムを含む。絶縁膜103は、例えば、窒化ケイ素膜である。絶縁膜103は、ゲート絶縁膜を兼ねている。絶縁膜103の厚さは、例えば、200nmである。ゲート電極113の材料は、例えば、アルミニウムを含む。
【0115】
以上説明した窒化物半導体デバイス10dは、窒化物半導体構造体1dのII-IV族窒化物半導体部4dの少なくとも一部を含む半導体素子100dを備える。これにより、窒化物半導体デバイス10dでは、単結晶のIII族窒化物半導体部3c上に単結晶のII-IV族窒化物半導体部4dを備えた構成を実現可能となる。
【0116】
また、窒化物半導体デバイス10dは、半導体素子100dとしてMISFETを備えるので、Si系トランジスタと比べて高温動作が可能となる。
【0117】
以下では、窒化物半導体デバイス10dの製造方法について
図18A~19Cに基づいて説明する。窒化物半導体デバイス10dの製造方法に関し、窒化物半導体構造体1cの製造方法と同様の工程については説明を適宜省略する。
【0118】
窒化物半導体デバイス10dの製造方法では、第1工程~第6工程を行う。
【0119】
第1工程では、まず、複数の凹部215を有するIII族窒化物半導体ウェハ20cを準備する(
図18A参照)。
【0120】
第2工程では、III族窒化物半導体ウェハ20cをMOCVD装置のリアクタ内に導入し、窒素源であるアンモニアを流しながら昇温する。GaN結晶の所望の結晶成長温度に達したら、Gaの原料(例えば、トリメチルガリウム)の供給を開始し、III族窒化物半導体ウェハ20cの第1主面201c上、第1側面213上、第2側面214上及び凹部215の底面上にGaNの結晶成長を開始する。第2工程では、第1側面213及び第2側面214からの結晶成長を抑制するような結晶成長条件を採用する。このような結晶成長条件を採用すると、
図18Bに示すように第1面355及び第2面366を有するGaN結晶(GaN再成長層)からなるIII族窒化物半導体部3cが形成される。第1面355は、GaN結晶の(11-22)面である。第2面366は、GaN結晶の(-1-122)面である。
【0121】
第3工程では、III族窒化物半導体部3c上にp形ZnGeN
2単結晶を含むII-IV族窒化物半導体部4dの結晶成長を行う(
図18C参照)。第3工程では、第1ステップ及び第2ステップを順次行う。第1ステップでは、リアクタ内にアンモニアとZnの原料(例えばジメチル亜鉛)とを供給し、III族窒化物半導体部3cの第1面355及び第2面366にZn原子を吸着させることにより、第1面355及び第2面366をZn原子によって覆う。これにより、p形ZnGeN
2単結晶においてIII族窒化物半導体部3cを構成するGaN結晶に接する面はZn原子によって決定されることになる。第2ステップでは、第1ステップの後、リアクタ内にGeの原料(例えば、テトラメチルゲルマニウム)の供給を開始し、所定の成長時間の間、各原料をリアクタ内に供給し続ける。第3工程では、第1ステップ及び第2ステップを順次行うことにより、p形ZnGeN
2単結晶をエピタキシャル成長させることができる。ここにおいて、エピタキシャル成長されたp形ZnGeN
2単結晶がII-IV族窒化物半導体部4dである。II-IV族窒化物半導体部4dの主面(最表面)41は、p形ZnGeN
2単結晶の(001)面である。
【0122】
第4工程では、II-IV族窒化物半導体部4dにおけるn形ソース領域101及びn形ドレイン領域102それぞれの形成予定領域にn形不純物をイオン注入してからアニールを行うことにより、n形ソース領域101及びn形ドレイン領域102を形成する(
図19A参照)。n形不純物であるドナー元素は、II族サイトに置換される場合はアルミニウム又はガリウム等のIII族元素が望ましく、IV族サイトに置換される場合はV族元素である砒素又はリン等が望ましく、窒素サイトに置換される場合はVI族元素である酸素等が望ましい。これらの選択肢の中で、イオン注入によるn形化には、窒素原子との原子半径差の小さな酸素が最も適している。アニール処理のアニール条件は、例えば、雰囲気圧力を常圧、雰囲気を窒素ガス雰囲気、アニール温度を800度、アニール時間を2時間とする。
【0123】
第5工程では、II-IV族窒化物半導体部4dの主面41上に所定パターンの絶縁膜103を形成する(
図19B参照)。ここにおいて、第5工程では、例えば、絶縁膜103の元になる窒化シリコン膜をプラズマCVD法によってII-IV族窒化物半導体部4dの主面41上に形成した後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を利用して窒化シリコン膜をパターニングすることによって、窒化シリコン膜の一部からなる絶縁膜103を形成する。なお、窒化シリコン膜をエッチングする際のエッチング液としては、例えば、フッ化水素酸を含むエッチング液を用いる。
【0124】
第6工程では、例えば、蒸着法等によってソース電極111、ドレイン電極112及びゲート電極113を形成する(
図19C参照)。これにより、半導体素子100dを備える窒化物半導体デバイス10dが形成される。
【0125】
以上説明した窒化物半導体デバイス10dの製造方法は、III族元素を含む単結晶のIII族窒化物半導体部3cの(0001)面以外の所定結晶面上に、II族元素とIV族元素とを含む単結晶のII-IV族窒化物半導体部4dをエピタキシャル成長させる工程(上述の第3工程)を備える。これにより、窒化物半導体デバイス10dの製造方法では、単結晶のIII族窒化物半導体部3c上に単結晶のII-IV族窒化物半導体部4dを備えた構成を実現可能となる。
【0126】
なお、III族窒化物半導体部3cの所定結晶面上にII-IV族窒化物半導体部4dをエピタキシャル成長させる前に、III族窒化物半導体部3cにパワートランジスタ用のデバイス構造を形成しておき、その上に結晶成長したII-IV族窒化物半導体部4dにロジック回路を形成すれば、高温動作が可能な電力制御デバイスを実現することも可能となる。
【0127】
(実施形態4)
以下、実施形態4に係る窒化物半導体構造体1eを備える窒化物半導体デバイス10eについて
図20に基づいて説明する。なお、窒化物半導体デバイス10eに関し、実施形態1で説明した窒化物半導体デバイス10と同様の構成要素には同一の符合を付して説明を適宜省略する。
【0128】
窒化物半導体構造体1eは、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1のIII族窒化物半導体部3及びII-IV族窒化物半導体部4の代わりに、III族窒化物半導体部3e及びII-IV族窒化物半導体部4eを備える。III族窒化物半導体部3e及びII-IV族窒化物半導体部4eに関し、III族窒化物半導体部3及びII-IV族窒化物半導体部4と同様の構成要素には同一の符合を付して説明を適宜省略する。
【0129】
II-IV族窒化物半導体部4eは、III族窒化物半導体部3eの第1側面33e、第2側面34e上に設けられている。第1側面33eが所定結晶面である。II-IV族窒化物半導体部4eは、単結晶である。II-IV族窒化物半導体部4eは、III族窒化物半導体部3eとヘテロ接合されている。所定結晶面は、(0001)面以外の結晶面である。
【0130】
窒化物半導体デバイス10eは、II-IV族窒化物半導体部4eの少なくとも一部を含む半導体素子100e(以下、第1半導体素子100eともいう)を備える。また、窒化物半導体デバイス10eは、第1半導体素子100eとは別に、III族窒化物半導体部3eに形成された第2半導体素子120を更に備える。
【0131】
III族窒化物半導体部3eは、互いに異なる組成を有する複数(ここでは、2つ)のIII族窒化物半導体層の積層構造を有する。より詳細には、III族窒化物半導体部3eは、単結晶シリコン基板2の第1主面21上に形成されている第1のIII族窒化物半導体層311と、第1のIII族窒化物半導体層311上に形成されている第2のIII族窒化物半導体層312と、の積層構造を有する。第1のIII族窒化物半導体層311は、例えば、GaN層である。第2のIII族窒化物半導体層312は、例えば、AlxGa1-xN層である。ここにおいて、0<x<1である。Alの組成比xは、例えば、0.25である。AlxGa1-xN層の厚さは、例えば、25nmである。第2のIII族窒化物半導体層312のバンドギャップは、第1のIII族窒化物半導体層311のバンドギャップよりも大きい。III族窒化物半導体部3eは、第1のIII族窒化物半導体層311と第2のIII族窒化物半導体層312とのヘテロ接合を有する。
【0132】
III族窒化物半導体部3eの第1側面33eは、GaN結晶のa面、すなわち、(11-22)面と、AlxGa1-xN結晶のa面、すなわち、(11-22)面と、を含む。III族窒化物半導体部3eの第2側面34eは、GaN結晶の(-1-120)面と、AlxGa1-xN結晶の(-1-120)面と、を含む。
【0133】
II-IV族窒化物半導体部4eは、n形ZnGeN2層411と、n形ZnGeN2層411に重なっているp形ZnGeN2層412と、の積層構造を有する。p形ZnGeN2層412におけるドーパントは、例えば、アルミニウムである。n形ZnGeN2層411におけるドーパントは、砒素である。n形ZnGeN2層411は、砒素等の不純物をドーピングしなくても形成可能である。n形ZnGeN2層411は、III族窒化物半導体部3eの厚さ方向からの平面視でIII族窒化物半導体部3eに並んでいる。III族窒化物半導体部3eとn形ZnGeN2層411とは、III族窒化物半導体部3eの厚さ方向に沿った一断面において並んでいる。ここにおいて、III族窒化物半導体部3eとn形ZnGeN2層411とは、第1のIII族窒化物半導体層311の結晶軸〔11-20〕及び第2のIII族窒化物半導体層312の結晶軸〔11-20〕に沿った方向において並んでいる。n形ZnGeN2層411の厚さは、III族窒化物半導体部3eの厚さと略同じである。p形ZnGeN2層412の厚さは、n形ZnGeN2層411の厚さよりも薄い。p形ZnGeN2層412の厚さは、例えば、200nmである。II-IV族窒化物半導体部4eの主面41は、ZnGeN2単結晶のc面である。
【0134】
第2半導体素子120は、例えば、nチャネルMESFET(Metal Semiconductor Field Effect Transistor)である。第2半導体素子120は、上述のように、III族窒化物半導体部3eに形成されている。ここにおいて、III族窒化物半導体部3eは、第1のIII族窒化物半導体層311と第2のIII族窒化物半導体層312とのヘテロ接合の近傍に2次元電子ガス(Two-Dimensional Electron Gas)が発生している。2次元電子ガスを含む領域(以下、「2次元電子ガス層」ともいう)は、nチャネル層(電子伝導層)として機能することが可能である。なお、第1のIII族窒化物半導体層311は、GaN層であるが、これに限らない。例えば、第1のIII族窒化物半導体層311は、他のIII族窒化物半導体による多層構造であってもよい。この場合、第1のIII族窒化物半導体層311では、膜内の歪分布と貫通転位密度を自在に制御できるので、第1のIII族窒化物半導体層311の厚さを増大させること、第1のIII族窒化物半導体層311の最表面層の転位密度を下げること等も可能である。
【0135】
第2半導体素子120は、ソース電極121と、ドレイン電極122と、ゲート電極123と、を有する。ソース電極121、ドレイン電極122及びゲート電極123は、第2のIII族窒化物半導体層312の主面上に形成されている。第2のIII族窒化物半導体層312の主面は、第2のIII族窒化物半導体層312における第1のIII族窒化物半導体層311側とは反対側の面である。第2半導体素子120では、第2のIII族窒化物半導体層312の主面上において、ソース電極121とドレイン電極122とが離れている。また、第2半導体素子120では、第2のIII族窒化物半導体層312の主面上において、ソース電極121とドレイン電極122との間にゲート電極123が位置している。ソース電極121及びドレイン電極122の材料は、例えば、チタンを含む。ゲート電極123の材料は、例えば、仕事関数の大きな金属であり、ニッケル又はパラジウムを含む。ゲート電極123を構成する金属は第2のIII族窒化物半導体層312を構成するAlxGa1-xN結晶との仕事関数の違いにより、AlxGa1-xN結晶のバンドを高エネルギ側へ持ち上げるため、ゲート電極123直下には2次元電子ガスがなくなり、ノーマリオフ状態が実現される。
【0136】
第1半導体素子100eは、例えば、pチャネルMISFETである。第1半導体素子100eは、n形ZnGeN2領域413と、ソース電極111eと、ドレイン電極112eと、絶縁膜103eと、ゲート電極113eと、を有する。n形ZnGeN2領域413は、II-IV族窒化物半導体部4eの主面41側においてII-IV族窒化物半導体部4eに形成されている。n形ZnGeN2領域413は、p形ZnGeN2層412とn形ZnGeN2層411とにわたって形成されている。ソース電極111e及びドレイン電極112eは、p形ZnGeN2層412上に形成されている。絶縁膜103eは、p形ZnGeN2層412の主面41のうちソース電極111e及びドレイン電極112eにより覆われていない領域上に形成されている。ゲート電極113eは、絶縁膜103e上に形成されている。第1半導体素子100eでは、第1半導体素子100eの厚さ方向からの平面視で、ゲート電極113eは、ソース電極111eとドレイン電極112eとの間に位置し、n形ZnGeN2領域413と重なっている。ソース電極111e及びドレイン電極112eの材料は、例えば、ニッケルを含む。絶縁膜103eは、例えば、窒化ケイ素膜である。絶縁膜103eは、ゲート絶縁膜を兼ねている。絶縁膜103eの厚さは、例えば、200nmである。ゲート電極113eの材料は、例えば、アルミニウムを含む。
【0137】
以下、窒化物半導体デバイス10eの製造方法について、
図21A~23Cに基づいて説明する。なお、実施形態1で説明した窒化物半導体構造体1の製造方法と同様の工程については説明を適宜省略する。
【0138】
窒化物半導体デバイス10eの製造方法では、少なくとも、第1工程~第12工程を行う。
【0139】
第1工程では、単結晶シリコン基板2の元になる単結晶シリコンウェハ20(
図21A参照)を準備する。単結晶シリコン基板2は、第1主面21及び第2主面22を有する。単結晶シリコンウェハ20は、単結晶シリコン基板2の第1主面21及び第2主面22に対応する第1主面201及び第2主面202を有する。ここにおいて、単結晶シリコンウェハ20の第1主面201は、(111)面である。
【0140】
第2工程では、単結晶シリコンウェハ20の第1主面201上に、III族窒化物半導体部3eの元になるIII族窒化物半導体層303e(
図21A参照)をMOCVD法によって結晶成長させる。ここにおいて、III族窒化物半導体層303eは、単結晶シリコンウェハ20の第1主面201上の第1のIII族窒化物半導体層3301と、第1のIII族窒化物半導体層3301上の第2のIII族窒化物半導体層3302と、の積層構造を有する。第1のIII族窒化物半導体層3301は、単結晶のGaN層である。第2のIII族窒化物半導体層3302は、単結晶のAl
xGa
1-xN層である。また、III族窒化物半導体層303eの主面3331は、c面すなわち(0001)面である。第1のIII族窒化物半導体層3301を結晶成長させるときのGa及びNの原料としては、それぞれ、TMGa(トリメチルガリウム)及びNH
3(アンモニア)を用いる。第2のIII族窒化物半導体層3302を結晶成長させるときのAl、Ga及びNの原料としては、それぞれ、TMAl(トリメチルアルミニウム)、TMGa及びNH
3を用いる。
【0141】
第3工程では、III族窒化物半導体層303eの主面3331上に酸化ケイ素膜50(
図21A参照)を堆積させる。
【0142】
第4工程では、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を利用して酸化ケイ素膜50をパターニングすることによって、各々が酸化ケイ素膜50の一部からなる複数の酸化ケイ素部5を形成する(
図21B参照)。
図21Bでは、複数の酸化ケイ素部5のうち1つの酸化ケイ素部5のみ図示してある。複数の酸化ケイ素部5の各々は、単結晶シリコンウェハ20の厚さ方向から見て、直線状である。複数の酸化ケイ素部5は、III族窒化物半導体層303eの主面3331上でストライプ状に並んでいる。複数の酸化ケイ素部5の長手方向は、第1のIII族窒化物半導体層3301の結晶軸〔1-100〕及び第2のIII族窒化物半導体層3302の結晶軸〔1-100〕に沿った方向である。複数の酸化ケイ素部5の幅方向は、第1のIII族窒化物半導体層3301の結晶軸〔11-20〕及び第2のIII族窒化物半導体層3302の結晶軸〔11-20〕に沿った方向である。
【0143】
第5工程では、III族窒化物半導体層303eをパターニングすることによって、各々がIII族窒化物半導体層303eの一部からなる複数のIII族窒化物半導体部3eを形成する(
図21C参照)。第5工程は、複数の酸化ケイ素部5をマスクとしてIII族窒化物半導体層303eをドライエッチングする第1ステップと、第1ステップの後にエッチングダメージを除去するためのアニール処理を行う第2ステップと、を含む。第5工程を行うことによって形成された複数のIII族窒化物半導体部3eの各々の第1側面33eは、GaN結晶のa面、すなわち、(11-22)面と、Al
xGa
1-xN結晶のa面、すなわち、(11-22)面と、を含む。複数のIII族窒化物半導体部3eの各々の第2側面34eは、GaN結晶の(-1-120)面と、AlGaN結晶の(-1-120)面と、を含む。第5工程の第1ステップでは、III族窒化物半導体層303eをドライエッチングするためのエッチングガスとして、塩素系ガスを用いるが、これに限らず、例えば、アルゴンガスを用いてもよい。また、第5工程の第1ステップでは、複数の酸化ケイ素部5をマスクとしてIII族窒化物半導体層303eをドライエッチングした後、単結晶シリコンウェハ20も所定深さまでドライエッチングする。第5工程の第2ステップでは、アニール処理のアニール条件は、例えば、雰囲気圧力を常圧、雰囲気を窒素ガス雰囲気、アニール温度を700度、アニール時間を1時間とする。
【0144】
第6工程では、単結晶シリコンウェハ20において露出している表面203(
図21C参照)を窒化することによって窒化ケイ素膜6を形成する(
図22A参照)。第6工程では、まず、上述の単結晶シリコンウェハ20と複数のIII族窒化物半導体部3eとを含むウェハを、MOCVD装置のリアクタ内に導入して所定位置にセットする。その後、リアクタ内にNH
3を供給した状態でウェハを400度よりも高い温度に昇温し、単結晶シリコンウェハ20において露出している表面203を窒化することによって窒化ケイ素膜6を形成する。
【0145】
第7工程では、第1ステップと、第2ステップと、を順次行うことによって、II-IV族窒化物半導体部4eを結晶成長させる(
図22B参照)。第1ステップでは、MOCVD装置のリアクタ内でIII族窒化物半導体部3eの所定結晶面上にII-IV族窒化物半導体部4eのn形ZnGeN
2層411を結晶成長させる。第2ステップでは、MOCVD装置のリアクタ内でn形ZnGeN
2層411の主面上にp形ZnGeN
2層412を結晶成長させる。第1ステップの結晶成長は、各原料の供給量(モル供給量)を適宜調整することで実現できる。例えば、まず、Nの原料であるアンモニアの供給量をZnの原料(例えば、ジエチル亜鉛)の供給量及びGeの原料(例えば、テトラエチルゲルマニウム)の供給量の20倍以上の供給量として結晶成長を開始させる、あるいは、水素ガスと窒素ガスとを含むキャリアガスにおける水素ガスの比率を下げ、窒素ガスの比率を高めた状態で結晶成長を開始させる。ここにおいて、ゲルマニウムの原料の供給量に比べて亜鉛の原料の供給量を多くしておく必要がある。これは、n形ZnGeN
2層411での回転ドメインの発生を抑制するために重要である。第1ステップでのn形ZnGeN
2層411の結晶成長は、III族窒化物半導体部3eの第1側面33e及び第2側面34eの各々から横方向へ優先的に結晶成長する横方向成長である。第1ステップでは、例えば、Zn、Ge及びNそれぞれの原料であるジエチル亜鉛、テトラエチルゲルマニウム及びアンモニアの他に、ドーパントであるAsの原料として、アルシン又は有機砒素化合物(トリメチル砒素、トリエチル砒素等)等をリアクタ内に供給する。n形ZnGeN
2層411に関しては、成長時にドーパントの原料を供給しなくても成長可能である。第2ステップでは、アンモニアの供給量を下げたり、キャリアガスにおける窒素ガスの比率を下げる等して結晶成長を開始させる。第2ステップでのp形ZnGeN
2層の結晶成長は、n形ZnGeN
2層411の厚さ方向に沿った縦方向へ優先的に結晶成長する縦方向成長である。第2ステップでは、Zn、Ge及びNそれぞれの原料であるジエチル亜鉛、テトラエチルゲルマニウム及びアンモニアの他に、ドーパントであるAlの原料として、例えば、TMAlをリアクタ内に供給する。第2ステップでは、Znの原料のモル供給量に比べてGeの原料のモル供給量を少なくすることにより、ドーパントであるAlは、優先的にGeサイトに納まって、アクセプタとして機能する。なお、第7工程では、複数の酸化ケイ素部5の各々の上には、ZnGeN
2の結晶成長は起こらない。つまり、複数の酸化ケイ素部5は、選択成長用のマスクとしての機能を有する。また、酸化ケイ素部5は、保護膜としての機能も有し、II-IV族窒化物半導体部4eの構成元素であるZn、Ge等がIII族窒化物半導体部3eに拡散することを防ぐことができる。
【0146】
第8工程では、複数の酸化ケイ素部5をエッチング除去する(
図22C参照)。第8工程では、エッチング液として、例えば、フッ化水素酸を用いる。
【0147】
第9工程では、例えば、フォトリソグラフィ技術、イオン注入技術及びアニール処理等を利用して各II-IV族窒化物半導体部4eにn形ZnGeN
2領域413を形成する(
図23A参照)。ドナー元素としては、ZnGeN
2のII族サイト(Znサイト)に置換される場合はアルミニウム、ガリウム等のIII元素が望ましく、IV族サイト(Geサイト)に置換される場合はV族元素である砒素、リン等が望ましく、ZnGeN
2のNサイトに置換される場合はVI族元素である酸素等が望ましい。イオン注入によるn形化には、これらアルミニウム、ガリウム、砒素、リン及び酸素を含む材料の中で窒素の原子半径に最も近い原子半径を有する酸素が最も適している。アニール処理のアニール条件は、例えば、雰囲気圧力を常圧、雰囲気を窒素ガス雰囲気、アニール温度を800度、アニール時間を2時間とする。n形ZnGeN
2領域413は、p形ZnGeN
2層412の主面からn形ZnGeN
2層411に達する深さよりも深い位置まで形成されている。
【0148】
第10工程では、各絶縁膜103eと各絶縁膜124との元になる窒化シリコン膜を例えばプラズマCVD法等によって形成し、その後、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を利用して窒化シリコン膜をパターニングすることにより、各々が窒化シリコン膜の一部からなる各絶縁膜103e及び各絶縁膜124を形成する(
図23B参照)。窒化シリコン膜のエッチングには、例えば、フッ化水素酸を用いる。第10工程では、II-IV族窒化物半導体部4eの主面41のうち第1半導体素子100eのソース電極111e及びドレイン電極112eそれぞれの形成予定領域と、III族窒化物半導体部3eの主面のうち第2半導体素子120のソース電極121、ドレイン電極122及びゲート電極123それぞれの形成予定領域と、を露出させるように窒化シリコン膜をパターニングする。
【0149】
第11工程では、第1半導体素子100eのソース電極111e、ドレイン電極112e及びゲート電極113eと、第2半導体素子120のソース電極121、ドレイン電極122及びゲート電極123と、を例えば蒸着法等によって形成する(
図23C参照)。第1半導体素子100eにおけるソース電極111e及びドレイン電極112eの各々の材料は、ニッケルである。第1半導体素子100eにおけるゲート電極
113eの材料は、アルミニウムである。第2半導体素子120のソース電極121及びドレイン電極122の各々の材料は、チタンである。第2半導体素子120のゲート電極123の材料は、例えば、ニッケル又はパラジウムである。
【0150】
第12工程では、ダイシングを行うことにより、複数の窒化物半導体デバイス10eを得ることができる。
【0151】
以上説明した実施形態4に係る窒化物半導体デバイス10eでは、II-IV族窒化物半導体部4eに第1半導体素子100eとしてpチャネル型MISFETを形成し、III族窒化物半導体部3eに第2半導体素子120としてnチャネル型MESFETを形成してある。III族窒化物半導体だけでは、pチャネル型のトランジスタを作製することは困難であるが、実施形態4に係る窒化物半導体デバイス10eでは、III族窒化物半導体と同じくワイドギャップでありかつ高温で安定動作可能なII-IV族窒化物半導体部4eにpチャネル型トランジスタを形成することができる。また、実施形態4に係る窒化物半導体デバイス10eでは、適宜の配線を形成することにより、種々の論理ゲートを実現することも可能である。また、III族窒化物半導体を用いたパワートランジスタと、高温動作可能な駆動回路と、をモノリシック集積することができる。
【0152】
実施形態4に係る窒化物半導体デバイス10eでは、III族窒化物半導体部3eの幅方向の両側のII-IV族窒化物半導体部4eの各々にpチャネル型MISFETを形成してあるが、これに限らない。例えば、III族窒化物半導体部3eの幅方向の両側のII-IV族窒化物半導体部4eのうち一方のII-IV族窒化物半導体部4eにMISFETを有し、他方のII-IV族窒化物半導体部4eにダイオード、抵抗素子等を有する構成であってもよい。窒化物半導体構造体1eを備える窒化物半導体デバイス10eでは、シリコンデバイスよりも高温動作可能な電子回路の回路設計及び素子のレイアウトの自由度が高くなる。
【0153】
また、実施形態4に係る窒化物半導体デバイス10eでは、III族窒化物半導体部3eに第2半導体素子120としてMESFETを形成してあるが、第2半導体素子120は必須ではない。また、第2半導体素子120は、MESFETに限らず、他の半導体素子であってもよい。他の半導体素子としては、例えば、縦型トランジスタ、ゲート注入型トランジスタ、双方向トランジスタ、スーパージャンクション型ダイオード等である。また、III族窒化物半導体部3eの積層構造を適宜変更して第2半導体素子120として、発光ダイオード、半導体レーザ、太陽電池等の光デバイスを形成してもよい。この場合、II-IV族窒化物半導体部4eに電子回路として、発光デバイスの駆動回路、半導体レーザの駆動回路、太陽電池のパワーコンディショナ等を形成してもよい。
【0154】
上記の実施形態1~4等は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0155】
例えば、実施形態1に係る窒化物半導体構造体1の製造方法では、ZnGeN2結晶の(001)面が平坦化されるようにZnGeN2を結晶成長させているが、ZnGeN2結晶の(001)面以外の面に半導体素子を形成する場合には、ZnGeN2結晶の(001)面の平坦化の必要性は必ずしもない。この場合、ZnGeN2結晶の側面にデバイス構造を形成すればよいだけである。
【0156】
また、窒化物半導体構造体1では、所定結晶面が、(1-100)面であってもよい。この場合、II-IV族窒化物半導体部4では、所定結晶面に直交する結晶軸方向が、[210]方向であるのが好ましい。これにより、窒化物半導体構造体1では、回転ドメインの乱立を抑えることが可能となる。
【0157】
また、窒化物半導体デバイス10dは、III族窒化物半導体基板2cの代わりに、単結晶シリコン基板と、単結晶シリコン基板上に形成されており、単結晶シリコン基板側とは反対側の主面に複数の凹部215と同様の複数の凹部を有するGaN層と、を含む基板を備えていてもよい。
【0158】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から本明細書には以下の態様が開示されている。
【0159】
第1の態様に係る窒化物半導体構造体(1;1a;1b;1c;1d;1e)は、III族窒化物半導体部(3;3b;3c;3e)と、II-IV族窒化物半導体部(4;4a;4b;4c;4d;4e)と、を備える。III族窒化物半導体部(3;3b;3c;3e)は、単結晶である。III族窒化物半導体部(3;3b;3c;3e)は、III族元素を含む。ここで、III族元素は、周期表の13族の群から選択される元素である。III族窒化物半導体部(3;3b;3c;3e)は、所定結晶面(第1側面33;主面350;第1面355;第1側面33e)を有する。II-IV族窒化物半導体部(4;4a;4b;4c;4d;4e)は、III族窒化物半導体部(3;3b;3c;3e)の所定結晶面(第1側面33;主面350;第1面355;第1側面33e)上に設けられている。II-IV族窒化物半導体部(4;4a;4b;4c;4d;4e)は、単結晶である。II-IV族窒化物半導体部(4;4a;4b;4c;4d;4e)は、II族元素と、IV族元素と、を含む。ここで、II族元素は、周期表の2族の群又は12族の群から選択される元素である。IV族元素は、周期表の14族の群から選択される元素である。II-IV族窒化物半導体部(4;4a;4b;4c;4d;4e)は、III族窒化物半導体部(3;3b;3c;3e)とヘテロ接合されている。所定結晶面(第1側面33;主面350;第1面355;第1側面33e)は、(0001)面以外の結晶面である。
【0160】
第1の態様に係る窒化物半導体構造体(1;1a;1b;1c;1d;1e)では、単結晶のIII族窒化物半導体部(3;3b;3c;3e)上に単結晶のII-IV族窒化物半導体部(4;4a;4b;4c;4d;4e)を備えた構成を実現可能となる。
【0161】
第2の態様に係る窒化物半導体構造体(1;1a;1b;1c;1d;1e)では、第1の態様において、II族元素は、亜鉛である。これにより、第2の態様に係る窒化物半導体構造体(1;1a;1b;1c;1d;1e)では、II-IV族窒化物半導体部(4;4a;4b;4c;4d;4e)の少なくとも一部の領域の導電形をp形とする場合にそのp形の領域の低抵抗化を図ることが可能となる。
【0162】
第3の態様に係る窒化物半導体構造体(1;1a;1b;1c;1d;1e)は、第1又は2の態様に基づく。II-IV族窒化物半導体部(4;4a;4b;4c;4d;4e)では、所定結晶面(第1側面33;主面350;第1面355;第1側面33e)に直交する結晶軸方向が、[001]方向以外の結晶軸方向である。これにより、第3の態様に係る窒化物半導体構造体(1;1a;1b;1c;1d;1e)は、回転ドメインの発生を抑制することが可能となる。
【0163】
第4の態様に係る窒化物半導体構造体(1;1a;1e)では、第1~3の態様のいずれか一つにおいて、所定結晶面(第1側面33;第1側面33e)は、(11-20)面である。これにより、第4の態様に係る窒化物半導体構造体(1;1a;1e)では、回転ドメインの発生を抑制することが可能となる。
【0164】
第5の態様に係る窒化物半導体構造体(1;1a;1e)は、第4の態様に基づく。II-IV族窒化物半導体部(4;4a;4e)では、所定結晶面(第1側面33;第1側面33e)に直交する結晶軸方向が、[010]方向である。これにより、第5の態様に係る窒化物半導体構造体(1;1a;1e)では、III族窒化物半導体部(3;3e)とII-IV族窒化物半導体部(4;4a;4e)との界面エネルギを最も小さくでき、界面構造が一意に定められる。その結果、回転ドメインの乱立を抑えることが可能となる。
【0165】
第6の態様に係る窒化物半導体構造体(1b;1c;1d)では、第1~3の態様のいずれか一つにおいて、所定結晶面(第1主面350;第1面355)は、(11-22)面である。これにより、第6の態様に係る窒化物半導体構造体(1b;1c;1d)では、所定結晶面(第1主面350;第1面355)をII-IV族窒化物半導体部(4b;4c;4d)のII族元素又はIV族元素のいずれかによって原子層レベルで被覆することが可能となり、回転ドメインの乱立を抑えることが可能となる。
【0166】
第7の態様に係る窒化物半導体構造体(1b;1c;1d)は、第6の態様に基づく。II-IV族窒化物半導体部(4b;4c;4d)では、所定結晶面(第1主面350;第1面355)に直交する結晶軸方向が、[011]方向である。
【0167】
第8の態様に係る窒化物半導体構造体(1)では、第1~3の態様のいずれか一つにおいて、所定結晶面(第1側面33)は、(1-100)面である。これにより、第8の態様に係る窒化物半導体構造体(1)では、回転ドメインの乱立を抑えることが可能となる。
【0168】
第9の態様に係る窒化物半導体構造体(1)は、第8の態様に基づく。II-IV族窒化物半導体部(4)では、所定結晶面(第1側面33)に直交する結晶軸方向が、[210]方向である。これにより、第9の態様に係る窒化物半導体構造体(1)では、回転ドメインの乱立を抑えることが可能となる。
【0169】
第10の態様に係る窒化物半導体デバイス(10;10d;10e)は、第1~9の態様のいずれか一つの窒化物半導体構造体(1;1a;1b;1c;1d;1e)のII-IV族窒化物半導体部(4;4a;4b;4c;4d;4e)の少なくとも一部を含む半導体素子(100;100d;100e)を備える。これにより、第10の態様に係る窒化物半導体デバイス(10;10d;10e)では、単結晶のIII族窒化物半導体部(3;3b;3c;3e)上に単結晶のII-IV族窒化物半導体部(4;4a;4b;4c;4d;4e)を備えた構成を実現可能となる。
【0170】
第11の態様に係る窒化物半導体デバイス(10;10d;10e)では、第10の態様において、II-IV族窒化物半導体部(4;4a;4b;4c;4d;4e)は、n形半導体領域(n形ZnGeN2結晶401、n形ZnGeSnN2結晶402、n形ZnGeN2層411)と、p形半導体領域(p形ZnGeSnN2結晶404、p形ZnGeN2結晶405、p形ZnGeSnN2層412)と、を有する。半導体素子(100;100d;100e)は、n形半導体領域(n形ZnGeN2結晶401、n形ZnGeSnN2結晶402、n形ZnGeN2層411)の少なくとも一部と、p形半導体領域(p形ZnGeSnN2結晶404、p形ZnGeN2結晶405、p形ZnGeSnN2層412)の少なくとも一部と、を含む。
【0171】
第12の態様に係る窒化物半導体デバイス(10e)は、第10又は11の態様において、半導体素子(100e)である第1半導体素子(100e)とは別に、III族窒化物半導体部(3e)に形成された第2半導体素子(120)を更に備える。
【0172】
第13の態様に係る窒化物半導体デバイス(10e)では、第10~12の態様のいずれか一つにおいて、III族窒化物半導体部(3e)は、互いに異なる組成を有する複数のIII族窒化物半導体層(第1のIII族窒化物半導体層311、第2のIII族窒化物半導体層312)の積層構造を有する。
【0173】
第14の態様に係る窒化物半導体デバイス(10;10d;10e)は、第10~13の態様のいずれか一つにおいて、単結晶シリコン基板(2)を更に備える。III族窒化物半導体部(3;3e)は、単結晶シリコン基板(2)上に設けられている。
【0174】
第15の態様に係る窒化物半導体デバイス(10)では、第10~14の態様のいずれか一つにおいて、II-IV族窒化物半導体部(4a)に形成された半導体素子(100)は、光を出射する発光素子である。
【0175】
第16の態様に係る窒化物半導体デバイスの製造方法は、第10~15の態様のいずれか一つの窒化物半導体デバイス(10;10d;10e)の製造方法であって、III族元素を含む単結晶のIII族窒化物半導体部(3;3b;3c;3e)の(0001)面以外の所定結晶面(第1側面33;第1主面;第1面355;第1側面33e)上に、II族元素とIV族元素とを含む単結晶のII-IV族窒化物半導体部(4;4a;4b;4c;4d;4e)をエピタキシャル成長させる工程を備える。ここで、III族元素は、周期表の13族の群から選択される元素である。II族元素は、周期表の2族の群又は12族の群から選択される元素である。IV族元素は、周期表の14族の群から選択される元素である。
【符号の説明】
【0176】
1、1a、1b、1c、1d、1e 窒化物半導体構造体
2 単結晶シリコン基板
3、3b、3c、3d III族窒化物半導体部
33 第1側面(所定結晶面)
311 第1のIII族窒化物半導体層
312 第2のIII族窒化物半導体層
350 主面(所定結晶面)
355 第1面(所定結晶面)
4、4a、4b、4c、4d、4e II-IV族窒化物半導体部
401 n形ZnGeN2結晶(n形半導体領域)
402 n形ZnGeSnN2結晶(n形半導体領域)
404 p形ZnGeSnN2結晶(p形半導体領域)
405 p形ZnGeN2結晶(p形半導体領域)
10、10d、10e 窒化物半導体デバイス
100、100d、100e 半導体素子(第1半導体素子)
120 第2半導体素子