(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】部品実装機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
H05K13/08 Q
(21)【出願番号】P 2021552073
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2019041047
(87)【国際公開番号】W WO2021075042
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】櫻山 岳史
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-148896(JP,A)
【文献】特開平07-326895(JP,A)
【文献】特開2011-014946(JP,A)
【文献】特開2003-234598(JP,A)
【文献】特許第4689457(JP,B1)
【文献】特許第6619305(JP,B1)
【文献】特許第6678503(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基材を搬送し、所定の位置に保持する基材搬送保持装置と、
部品供給装置により供給される電子部品を、前記所定の位置に保持された前記回路基材上に装着する部品装着装置と、
前記所定の位置に保持された前記回路基材を含む所定の領域全体を視野に収めることができる撮像装置と、
前記撮像装置に対して前記所定の領域を撮像することを指示する撮像指示部と、
前記撮像指示部の指示に応じて撮像された撮像データに基づいて、前記基材搬送保持装置上に設けられた少なくとも一つの装置マーク及び前記回路基材上に設けられた少なくとも一つの基材マークを検出する第1検出部と、
前記第1検出部により検出された前記装置マーク及び前記基材マークに基づいて、前記電子部品を装着する前記回路基材上の位置を演算する演算部と、
前記部品装着装置に対して、前記演算部により演算された前記回路基材上の位置に前記電子部品を装着させることを指示する装着指示部と、
前記装着指示部による指示に応じて前記部品装着装置が実際に装着した前記回路基材上の位置と、前記演算部により演算された前記回路基材上の位置とのずれ量を検出する第2検出部と、
前記第2検出部により検出された前記ずれ量の一部を、次回前記演算部により演算される前記回路基材上の位置を補正するための補正値としてフィードバックするフィードバック部と、
を有する部品実装機。
【請求項2】
前記撮像装置は、1台以上のカメラにより構成される、
請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記撮像装置は、前記部品実装機の天井部に設置されている、
請求項1又は2に記載の部品実装機。
【請求項4】
前記基材搬送保持装置は、前記回路基材を搬送するためのコンベアレールを備え、
前記装置マークは、前記コンベアレール上に設けられる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の部品実装機。
【請求項5】
前記部品実装機はさらに、
前記ずれ量が所定の範囲内に収束するか否かを判断する第1判断部と、
前記第1判断部により前記ずれ量が所定の範囲内に収束しないと判断する場合、前記部品実装機に異常があると判断する第2判断部と、
を有する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、回路基材に装着された電子部品の装着位置を測定し、装着位置の良否判定を行う部品実装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プリント基板に実装された電子部品の部品種や取付け位置についての良否を検査する検査装置を備えた電子部品実装機が記載されている。
【0003】
この電子部品実装機では、電子部品の実装前に撮像されたプリント基板の画像と、電子部品の実装後に撮像されたプリント基板の画像とを比較することによって、実装された電子部品の種類及び実装された部品位置の異常を検出する。そして、実装に異常が検出されたときに、実装異常の内容として、プリント基板上の他の場所に電子部品が落ちていない場合には、新たな電子部品を供給して、プリント基板面に実装を行うか、実装異常の場所をオペレータに通知する。一方、実装異常の内容として、プリント基板上の他の場所で電子部品が見つかった場合、落ちていた電子部品の場所をオペレータに通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の電子部品実装機では、プリント基板に実装された電子部品の部品種や取付け位置の異常を検出できるものの、検出結果を次の電子部品の実装に反映していないので、再度同じ異常を起こす虞がある。
【0006】
そこで、本願は、回路基材に装着された電子部品の装着位置を測定した結果を次の電子部品の実装に反映させることが可能となる部品実装機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願の部品実装機は、回路基材を搬送し、所定の位置に保持する基材搬送保持装置と、部品供給装置により供給される電子部品を、所定の位置に保持された回路基材上に装着する部品装着装置と、所定の位置に保持された回路基材を含む所定の領域全体を視野に収めることができる撮像装置と、撮像装置に対して所定の領域を撮像することを指示する撮像指示部と、撮像指示部の指示に応じて撮像された撮像データに基づいて、基材搬送保持装置上に設けられた少なくとも一つの装置マーク及び回路基材上に設けられた少なくとも一つの基材マークを検出する第1検出部と、第1検出部により検出された装置マーク及び基材マークに基づいて、電子部品を装着する回路基材上の位置を演算する演算部と、部品装着装置に対して、演算部により演算された回路基材上の位置に電子部品を装着させることを指示する装着指示部と、装着指示部による指示に応じて部品装着装置が実際に装着した回路基材上の位置と、演算部により演算された回路基材上の位置とのずれ量を検出する第2検出部と、第2検出部により検出されたずれ量の一部を、次回演算部により演算される回路基材上の位置を補正するための補正値としてフィードバックするフィードバック部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本願によれば、回路基材に装着された電子部品の装着位置を測定した結果を次の電子部品の実装に反映させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本願の一実施の形態に係る部品実装機の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の部品実装機が備える制御装置を示すブロック図である。
【
図3】回路基材上へ電子部品の実装を繰り返したときの電子部品のずれ量の推移の一例を示す図である。
【
図4】
図2の制御装置が備えるコントローラが実行する実装検査処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本願の一実施の形態に係る部品実装機10の概略構成を示している。なお、
図1において方向に言及する場合には、図中に示される矢印の方向を用いるものとする。
【0012】
部品実装機10は、回路基材(図示せず)を所定の位置まで搬送して固定する基材搬送保持装置22と、基材搬送保持装置22により所定の位置に固定された回路基材全体を一度に視野に収めることができる天井カメラ26と、基材搬送保持装置22に対してX方向及びY方向に移動可能に支持された移動台(図示せず)に設けられた作業ヘッド60を有する部品装着装置24及びマークカメラ27と、基材搬送保持装置22に固定されたパーツカメラ28と、天井カメラ26による撮像や部品装着装置24による実装等を制御する制御装置34と、を備えている。
【0013】
基材搬送保持装置22は、回路基材を所定の位置、つまり、電子部品を配置する所定の実装位置まで搬送する搬送装置50(
図2参照)と、搬送された回路基材を実装位置で固定するクランプ装置52(
図2参照)とを備えている。搬送装置50は、例えば、ベルトコンベアにより回路基材を搬送する装置として構成されており、1対のコンベアレール23の各々に設けられたガイド部材(図示せず)と、1対のコンベアレール23の各々に設けられたコンベアベルト(図示せず)と、コンベアベルトを周回駆動させるベルト周回装置(図示せず)とを備えている。クランプ装置52は、例えば、回路基材を下方から支持する支持部(図示せず)と、回路基材の縁部をクランプするクランプ部(図示せず)とを備えている。なお、回路基材として、回路基板、三次元構造の基材等が挙げられ、回路基板として、プリント配線板、プリント回路板等が挙げられる。
【0014】
部品実装機10の天井部の中央には天井カメラ26としての2台のカメラが並列に配置され、この天井カメラ26により、所定の位置で固定された回路基材を含む所定の矩形領域が上方から撮像される。撮像される矩形領域は、対向する1対の辺の中心線によって2つの区分に区分けされ、区分けされた各区分はそれぞれ1台のカメラの視野に対応している。これによって、回路基材を含む矩形領域全体が2台のカメラによって1度に撮像できる。天井カメラ26は、制御装置34により撮像するタイミングが制御される。
【0015】
基材搬送保持装置22の上方にはX方向ビーム(図示せず)が設けられ、X方向ビームにはY方向移動台(図示せず)がX方向に移動可能に設けられている。Y方向移動台には作業ヘッド60を備えた部品装着装置24とマークカメラ27とがY方向に移動可能に保持されている。マークカメラ27の光軸はX方向及びY方向に直角なZ方向に平行になっている。これらのX方向ビームとY方向移動台はそれぞれボールねじを介してサーボモータ(図示せず)により制御され、このサーボモータはその作動を制御装置34によって制御されている。なお、マークカメラ27は、回路基材上に設けられた、後述の基材マークを撮像するためのカメラである。
【0016】
部品装着装置24は、Y方向移動台に取付けられる作業ヘッド移動装置64と、作業ヘッド移動装置64によりX方向及びY方向と直角なZ方向に昇降可能に案内支持されるとともにサーボモータにより昇降が制御される作業ヘッド60と、この作業ヘッド60から下方へ突設された吸着ノズル66と、から構成されている。吸着ノズル66は、円筒状に形成され、吸着ノズル21は下端において電子部品を吸着保持するようになっている。また、部品装着装置24による実装時期は制御装置34によって制御される。
【0017】
部品実装機10の一端側には、部品供給装置30(
図2参照)が設けられている。基材搬送保持装置22と部品供給装置30の間には、Z方向と平行な光軸を有するパーツカメラ28が基材搬送保持装置22上に設けられている。なお、パーツカメラ28は、電子部品を撮像するためのカメラである。
【0018】
部品供給装置30は、トレイ型部品供給装置78(
図2参照)とフィーダ型部品供給装置80(
図2参照)とを有している。トレイ型部品供給装置78は、トレイ上に載置された状態の部品を供給する装置である。フィーダ型部品供給装置80は、テープフィーダ、スティックフィーダ(図示せず)によって部品を供給する装置である。
【0019】
制御装置34は、
図2に示すように、コントローラ82、複数の駆動回路86、画像処理装置88を備えている。複数の駆動回路86は、搬送装置50、クランプ装置52、作業ヘッド60、作業ヘッド移動装置64、トレイ型部品供給装置78、フィーダ型部品供給装置80に接続されている。コントローラ82は、CPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路86に接続されている。これにより、基材搬送保持装置22、部品装着装置24、及び部品供給装置30等の作動が、コントローラ82によって制御される。また、コントローラ82は、画像処理装置88にも接続されている。画像処理装置88は、天井カメラ26、マークカメラ27及びパーツカメラ28によって得られた撮像データを処理するものであり、コントローラ82は、撮像データから各種情報を取得する。
【0020】
上記のように構成された部品実装機10を使用して、回路基材上に実装した電子部品の検査処理について、
図4のフローチャートに基づいて以下に説明する。以降、各処理の手順の説明において、ステップを「S」と表記する。
【0021】
まず、コントローラ82は、搬送装置50を制御することにより、位置決めされた搬入位置に回路基材を搬入し、回路基材を支持部で支持する。そして、コントローラ82は、クランプ装置52を制御することにより、支持された回路基材をクランプ部にてクランプして固定する(S10)。
【0022】
次に、コントローラ82は、固定された回路基材へ電子部品を実装するように部品装着装置24に対して指示する(S12)。実装では、回路基材上に設けられた基材マーク(図示せず)の位置をマークカメラ27で検出し、この基材マークの位置に基づいて位置補正を行って、装着すべき座標位置を演算する。
【0023】
基材マークは、本実施形態では、回路基材上に複数個設けられ、電子部品毎に基準とすべき2つ以上の基材マークと、その基材マークを基準とした装着位置とが予め決められている。装着位置は、例えば、2つの基材マーク間の距離の1/所定数だけ、一方の基材マークから他方の基材マークの方向に離れた位置というように決められている。したがって、撮像データから、装着対象の電子部品に対応する2つの基材マークを検出し、その2つの基材マーク間の距離を算出し、算出した距離の1/所定数だけ、一方の基材マークから他方の基材マークの方向に離れた位置を装着位置とする。なお、S26において後述するフィードバックずれ量記憶領域に有効なフィードバックずれ量が記憶されている場合には、そのずれ量分補正して、上記装着位置を決定する。
【0024】
そして、吸着ノズル66の先端に吸着した電子部品について、吸着ノズル66の中心線に対する電子部品の芯ずれをパーツカメラ28によって検出し、吸着ノズル66のX方向及びY方向の移動量を補正して、回路基材上の座標位置に実装する。
【0025】
次に、コントローラ82は、天井カメラ26に対して撮像を指示する。これに応じて天井カメラ26は、実装後の回路基材を含む所定の矩形領域を撮像する(S14)。天井カメラ26は、上述のように2台のカメラにより構成されているので、撮像は、2台のカメラで同時に行う。このように撮像を2台のカメラで行うようにしたのは、天井カメラ26は、本実施形態では、回路基材から上方に、例えば500mm以上離れて設置されるので、被写体に対する分解能を上げようとすると、1台のカメラでは困難だからである。しかし、必要な分解能が得られるのであれば、1台のカメラでもよいし、2台のカメラでも必要な分解能が得られなければ、3台以上のカメラを用いるようにしてもよい。
【0026】
また、撮像領域である「回路基材を含む所定の矩形領域」とは、クランプされた回路基材と、その周りの上記1対のコンベアレール23とを含む矩形領域である。各コンベアレール23上には、
図1に示すように、キャリブレーション用マーク23aが2つずつ設けられている。そして、各コンベアレール23上の2つのキャリブレーション用マーク23aは、熱膨張が起き難い素材、例えば石英ガラスの薄板上に、所定の距離、例えば300mm離れて設けられている。なお、コンベアレール23は、本実施形態では、スチール製であるので、石英ガラスの薄板は、コンベアレール23上に固定されている。このようにキャリブレーション用マーク23aは、部品実装機10が電子部品の実装を行っているときに発生する熱による熱膨張の影響をほとんど受けないので、キャリブレーション用マーク23a間の距離は、本実施形態では、300mmとほぼ不変である。したがって、矩形領域の撮像データから、各コンベアレール23上のキャリブレーション用マーク23aを検出し、キャリブレーション用マーク23a間の距離を算出すれば、算出された距離は、実際には300mmに相当する。コントローラ82は、この不変の距離に基づいて、撮像データに対するキャリブレーションを行い、キャリブレーション後の撮像データに基づいて、電子部品を装着すべき回路基材上の装着位置を算出する。
【0027】
なお、装着位置は、上述のように、キャリブレーション後の撮像データに含まれる基材マークに基づいて算出される。
【0028】
このように撮像データ内には、キャリブレーション用マーク23a及び基材マークの両方の画像が含まれている。つまり、同じ撮像データを用いて、キャリブレーションと、装着位置の算出とを行うようにしている。これは、部品実装機10が電子部品の実装を行っているときなどに発生する振動により、キャリブレーション用マーク23a及び基材マークの両方が揺れるので、キャリブレーション用マーク23aに基づいてキャリブレーションを行い、キャリブレーション後の撮像データから検出した基材マークに基づいて装着位置を算出すれば、撮像データに混入する揺れ成分をキャンセルすることができるからである。
【0029】
次に、コントローラ82は、撮像データからキャリブレーション用マーク23a及び基材マークを検出する(S16)。
【0030】
次に、コントローラ82は、S16で検出したキャリブレーション用マーク23aに基づいて、撮像データに対するキャリブレーションを行う(S18)。具体的には、コントローラ82は、まず、各コンベアレール23上の2つのキャリブレーション用マーク23a間の距離を算出する。算出された両距離は、コンベアレール23毎に同じであるので、両距離が異なれば、天井カメラ26は、回路基材を含む所定の矩形領域を正しく撮像していないことを意味する。このため、コントローラ82は、両距離が一致するように撮像データを補正する。なお、本実施形態では、S16のキャリブレーションは、実装検査処理を実行する度に行うようにしているが、これに限らず、所定のタイミングで行うようにしてもよい。また、S16のキャリブレーションとは別に、天井カメラ26のカメラキャリブレーション、つまりマトリックス補正(レンズ歪み補正)を行っておく必要がある。
【0031】
次に、コントローラ82は、S16で検出した基材マークに基づいて、上述のように装着位置を算出する(S20)。
【0032】
そして、コントローラ82は、S14にて得られた撮像データに基づいて、実装した電子部品のずれ量を算出する(S24)。ずれ量の算出は、例えば、電子部品を装着する回路基材上の中心点の座標と、撮像データにおける電子部品の中心点の座標との距離を算出することにより行う。
【0033】
次に、コントローラ82は、算出したずれ量は所定の許容量以内か否かを判断する(S24)。この判断において、算出したずれ量は所定の許容量以内でないと判断される場合(S24:NO)、コントローラ82は、算出したずれ量の一部、例えば、算出したずれ量の1/2を、コントローラ82に備えられた上記RAM内に確保された領域(以下「フィードバックずれ量記憶領域」という)に記憶させる(S26)。このように、算出したずれ量の全部ではなく、その一部をフィードバックずれ量としたのは、ずれ量を算出するときに用いる撮像データに、天井カメラ26による読み取り誤差がどうしても含まれるので、算出したずれ量の全部をフィードバックずれ量とすると、読み取り誤差分もフィードバックされることになり、その読み取り誤差分により装着精度が悪化する虞があるからである。
【0034】
次に、コントローラ82は、カウンタを“1”だけインクリメントした(S28)後、処理をS32に進める。ここで、カウンタは、上記RAM内に確保されたソフトウェアカウンタであり、実装した電子部品のずれ量が所定の許容量以内に収束するか否かを判断するために使用する。
【0035】
一方、S24の判断において、算出したずれ量は所定の許容量以内である場合(S24:YES)、コントローラ82は、カウンタをリセットした(S30)後、処理をS32に進める。
【0036】
S32では、コントローラ82は、カウンタのカウント値≧Nであるか否かを判断する。但し、“N”は、所定の整数値である。この判断において、カウンタのカウント値≧Nであると判断される場合(S32:YES)、コントローラ82は、部品実装機10は装置寿命であると判断し(S34)、カウンタをリセットした(S36)後、実装検査処理を終了する。
【0037】
図3は、ある1つの電子部品を回路基材上へ実装を繰り返したときの電子部品のずれ量の推移の一例を示している。なお、
図3において、矢印の前の推移は、上記S12のフィードバック制御を行う前の推移を示し、矢印の後の推移は、S12のフィードバック制御を行った後の推移を示している。
【0038】
そして、
図3(a)は、S12のフィードバック制御を行うと、実装後の電子部品のずれ量が所定の許容量(図示例では、±α)以内に収束する様子を示している。一方、
図3(b)は、S12のフィードバック制御を行っても、実装後の電子部品のずれ量が所定の許容量(図示例では、±α)以内に収束しない様子を示している。
【0039】
部品実装機10は、長期使用によりガタつきが生じたとしても、同じ動作をする限り、
図3(a)の矢印の前の推移のように、実装後の電子部品のずれ量は所定の許容量以内に入っていないものの、所定の範囲内に収まるという繰返し性は備えている。このような繰返し性を備えた部品実装機10に対して、S12のフィードバック制御を行うと、
図3(a)の矢印の後の推移のように、実装後の電子部品のずれ量は所定の許容量以内に入ることになり、装着精度が低下した装置であっても、新品時の装着精度を維持させることができる。
【0040】
これに対し、
図3(b)の矢印の前の推移のように、部品実装機10が繰返し性を備えなくなると、S12のフィードバック制御を行ったとしても、
図3(b)の矢印の後の推移のように、実装後の電子部品のずれ量は所定の許容量以内に入らない。したがって、
図3(b)の例では、上記S32で、カウンタのカウント値≧Nであると判断されて、上記S34で、部品実装機10は装置寿命であると判断される。
【0041】
一方、S32の判断において、カウンタのカウント値<Nであると判断される場合(S32:NO)、コントローラ82は、実装検査処理を終了する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の部品実装機10は、回路基材を搬送し、所定の位置に保持する基材搬送保持装置22と、部品供給装置30により供給される電子部品を、所定の位置に保持された回路基材上に装着する部品装着装置24と、所定の位置に保持された回路基材を含む所定の領域全体を視野に収めることができる天井カメラ26と、天井カメラ26に対して所定の領域を撮像することを指示する撮像指示部160と、撮像指示部160の指示に応じて撮像された撮像データに基づいて、基材搬送保持装置22上に設けられた少なくとも一つのキャリブレーション用マーク23a及び回路基材上に設けられた少なくとも一つの基材マークを検出する第1検出部162と、第1検出部162により検出されたキャリブレーション用マーク23a及び基材マークに基づいて、電子部品を装着する回路基材上の位置を演算する演算部164と、部品装着装置24に対して、演算部164により演算された回路基材上の位置に電子部品を装着させることを指示する装着指示部166と、装着指示部166による指示に応じて部品装着装置24が実際に装着した回路基材上の位置と、演算部164により演算された回路基材上の位置とのずれ量を検出する第2検出部168と、第2検出部168により検出されたずれ量の一部を、次回演算部164により演算される回路基材上の位置を補正するための補正値としてフィードバックするフィードバック部170と、を有する。
【0043】
このように、本実施形態の部品実装機10では、回路基材に装着された電子部品の装着位置を測定した結果を次の電子部品の実装に反映させることが可能となる。
【0044】
ちなみに、本実施形態において、天井カメラ26は、「撮像装置」の一例である。キャリブレーション用マーク23aは、「装置マーク」の一例である。
【0045】
また、天井カメラ26は、1台以上のカメラにより構成される。
【0046】
これにより、被写体に対する分解能を向上させることができる。
【0047】
また、天井カメラ26は、部品実装機10の天井部に設置されている。
【0048】
これにより、回路基材を含む所定の領域全体を視野に収めることができる。
【0049】
また、基材搬送保持装置22は、回路基材を搬送するためのコンベアレール23を備え、キャリブレーション用マーク23aは、コンベアレール23上に設けられる。
【0050】
これにより、回路基材を含む所定の領域内に、キャリブレーション用マーク23a及び基材マークの両方が含まれるので、撮像データにも、キャリブレーション用マーク23a及び基材マークの両方が含まれる。そして、部品実装機10が電子部品の実装を行っているときなどに発生する振動により、キャリブレーション用マーク23a及び基材マークの両方が揺れるので、キャリブレーション用マーク23aに基づいてキャリブレーションを行い、キャリブレーション後の撮像データから検出した基材マークに基づいて装着位置を算出すれば、撮像データに混入する揺れ成分をキャンセルすることができる。
【0051】
また、部品実装機10はさらに、ずれ量が所定の範囲内に収束するか否かを判断する第1判断部172と、第1判断部172によりずれ量が所定の範囲内に収束しないと判断する場合、部品実装機10に異常があると判断する第2判断部174と、を有する。
【0052】
これにより、部品実装機10の異常を自己判断することができる。
【0053】
ちなみに、装置寿命は、「異常」の一例である。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0055】
(1)上記実施形態では、キャリブレーション用マーク23aも基材マークも複数個設けるようにしたが、これは、方向も特定したいからである。したがって、1個のマークで、例えば形状により、方向を特定できるように構成すれば、複数個設ける必要はない。
【0056】
(2)上記実施形態では、フィードバックずれ量として、実装した電子部品のずれ量の1/2を採用したが、これに限らず、1/4,1/6等、他の値を採用してもよい。但し、ずれ量の全部をフィードバックずれ量とすることはできない。これは、上述のように、ずれ量を算出するときに用いる撮像データに、天井カメラ26による読み取り誤差がどうしても含まれるので、その読み取り誤差により装着精度が悪化するのを防ぐためである。
【0057】
(3)上記実施形態では、S20において、回路基材上の電子部品の装着位置を、撮像データから検出した基材マークに基づいて算出するようにしたが、これに限らず、撮像データから検出したランドに基づいて算出あるいは決定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10:部品実装機 22:基材搬送保持装置 26:天井カメラ 30:部品供給装置 82:コントローラ 160:撮像指示部 162:第1検出部 164:演算部 166:装着指示部 168:第2検出部 170:フィードバック部 172:第1判断部 174:第2判断部