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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】改善された肥料
(51)【国際特許分類】
   C05G 5/12 20200101AFI20230117BHJP
   C05F 1/00 20060101ALI20230117BHJP
   C05C 9/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C05G5/12
C05F1/00
C05C9/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021575951
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 AU2020050701
(87)【国際公開番号】W WO2021000023
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】2019902376
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2020900981
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521552637
【氏名又は名称】インサイテック ファーティライザー プロプライエタリ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、チャールズ ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】デュラック、エレン
(72)【発明者】
【氏名】カーリル、ロヤ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ、ティモシー
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-239906(JP,A)
【文献】国際公開第2010/129988(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105085057(CN,A)
【文献】特表2018-510832(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105820002(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103708982(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B1/00-21/00
C05C1/00-13/00
C05D1/00-11/00
C05F1/00-17/993
C05G1/00-5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離粒子の形態の固体肥料であって、各粒子が以下を含む、前記固体肥料:
N、P、K、及びSの栄養素の少なくとも1つを含む無機材料又は尿素;及び
加熱された有機材料;
ただし、前記無機材料又は尿素及び加熱された有機材料は、各粒子全体に均一に分布し、
該肥料は無菌であり、
該肥料中の炭素は、不安定な炭素になっている
【請求項2】
分離粒子がプリル、粒、又は圧縮された顆粒を含む、請求項1に記載の肥料。
【請求項3】
1%w/w~10%w/wのレオナルダイトをさらに含む、請求項1に記載の肥料。
【請求項4】
硝化抑制剤、非生物的ストレス制御剤、又はそれらの両方をさらに含む、請求項1に記載の肥料。
【請求項5】
分離粒子が平均硬度として少なくとも2.5kg/粒を有するか、分離粒子が平均粒径(mean average diameter)として1~10mmを有するか、又はこれらをいずれも有する、請求項1に記載の肥料。
【請求項6】
分離粒子の形態の固体肥料であって、該固体肥料の各粒子は以下を含む、固体肥料:
N、P、K、及びSの栄養素の少なくとも1つを含む無機材料又は尿素
焙焼有機材料;そして
前記無機材料又は尿素及び有機材料は、均質な混合物として形成され、
該肥料は無菌であり、
該肥料中の炭素は、不安定な炭素を含み不安定になっていて
該肥料は、バイオ炭を含まない。
【請求項7】
窒素が存在する場合、総窒素量は30%w/w以下である、請求項6に記載の肥料。
【請求項8】
焙焼有機材料の水分含量が10%未満である、請求項6に記載の肥料。
【請求項9】
焙焼有機材料が動物廃棄物を含む、請求項6に記載の肥料。
【請求項10】
焙焼有機材料が肥料の少なくとも30%w/wである、請求項6に記載の肥料。
【請求項11】
以下の工程を含む、分離粒子の形態の固体肥料を調製する方法:
有機材料を150℃~400℃未満の加熱で滅菌して、炭素不安定性になっている、無菌の生成物を提供する工程、
N、P、K、又はSの少なくとも1つを含む無機材料又は尿素を、前記有機材料とブレンドして、均質な混合物を生成する工程、及び
前記有機材料と前記無機材料又は尿素との均質な混合物の離散粒子を形成する工程、ただし、肥料中の炭素は、不安定な炭素になっている
【請求項12】
固体肥料が、レオナルダイト、カルシウムリグノスルファート、又はそれらの両方を含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
有機材料の滅菌が、該有機材料を焙焼機内において焙焼して焙焼された、炭素不安定性になっている、無菌の生成物及び焙焼によるガス(gases)の生成を含み;
前記滅菌の工程において、焙焼機の外壁を通した伝導により加熱し;
焙焼気体を液体流(condensates)に濃縮し、該液体流を有機材料と無機材料との前記均質な混合物と合わせることを、分離粒子の形成の最中に行うことをさらに含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
150℃~400℃未満の加熱で行われる有機材料の滅菌が、30分間未満の有機材料の滅菌を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
以下を含む、一工程により圃場に施肥を行う方法:
散布装置に、単一タイプの請求項1に記載の肥料を積載するか又は積載を完了する工程、ただし、散布装置は、ペレット化された材料を制御して処理(dosing)できるように設計されていて、
前記肥料は、固体ペレットを含み、各ペレットは無機材料又は尿素の均質な混合物を含み、該混合物は、N及びPの栄養素、ならびに不安定な炭素を含む焙焼有機廃棄物を含む;及び
前記肥料の圃場への施用を、一工程により行うこと、又は一工程により完了することを、前記散布装置を用いて行うこと、ただし、肥料は、50%の前記N及びPをフィールドの土壌に、最初の1ヶ月で放出し、残りのN及びPを次の1~4ヶ月で放出する。
【請求項16】
同じ栽培期には異なる肥料が該圃場に施用されない、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、AU2020900981及びAU2019902376の優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、改善された肥料に関する。
【背景技術】
【0003】
有機肥料は、主に植物系及び又は動物系の材料(materials)を含む。その材料は、例えば、厩肥、死骸、食品廃棄物、有機産業廃棄物、及び植物性敷料であり得る。有機系及び/又は炭素系の肥料は、土壌の構造の改善、微生物活性の促進、及び又はすべての必須栄養素の土壌への漸進的な放出など、土壌に有益である傾向にある。
【0004】
無機肥料は、天然及び/又は合成の炭化水素並びに大気窒素に由来するものなどの、鉱物及び時には合成化学物質を含有する。無機肥料は、窒素N、カリウムK、及びリンPなどの、植物が成長及び生存するために必要な主要栄養素を含み得る。無機肥料からの栄養素は土壌に浸出することがあり、その施用区域の微生物コロニーに影響を及ぼす可能性がある。この理由及びその他の理由から、無機肥料は、少なくとも土壌が健全である状態を維持するために、有機肥料と共に使用されるのが最も好ましい。
【0005】
有機肥料は、マルチのような密度を有し、嵩高くなりがちである。無機肥料は、乾燥粉末若しくはペレット(顆粒、プリル、パステル(pastelles))又は可溶性溶液を含む液体などの様々な形態で得られる。有機肥料中の栄養素は経時的に緩慢に放出される傾向があり、このため、有機肥料を土壌に施用する必要がある量及び回数が、所与の期間にわたって変わる可能性があることを意味し得る。無機栄養素は、通常、植物にとって直ちに利用可能なものである。無機肥料での過剰施肥、又は誤った配置(placement)若しくは施用(application)の手法は、栄養素の濃度が、植物、特に発芽中又は未成熟の植物を損傷するリスクを増大させるおそれがある。
【0006】
通常、有機肥料、少なくとも死骸/廃棄物を含む有機肥料は、ある場合には、人及び草食動物に有害であり得る病原性微生物によって有機肥料が定着され得ることを考慮して、注意して取り扱うべきである。
【0007】
密度、安全性要件、及び土壌活性の固有の違いにより、有機肥料及び無機肥料は、通常、2つの別々の施用方法で土壌に施用される。時には、有機肥料タイプ及び無機肥料タイプのそれぞれを施用するために、異なる機械が必要とされる。施用のタイミングもまた、肥料のタイプごとに異なるものとしなければならない場合がある。
【0008】
従来技術の肥料の欠点のいくつかを克服又は少なくとも改良する改善された肥料配合物が必要とされている。
【0009】
本明細書で先行技術が参照される場合、そのような参照は、その刊行物が、オーストラリア又は他の国における当該技術分野の共通の一般知識の一部を形成するという承認を成すものではないことを理解されたい。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様では、分離粒子の形態の乾燥固体肥料が提供され、乾燥固体肥料の粒子は有機材料と無機材料との均質な混合物を含み、無機材料はNPKSの栄養素の少なくとも1つを含み、有機材料は、炭素不安定性(carbon-labile)であり実質的に滅菌した又は無菌の(sterile)、有機廃棄物の生成物を含む。
【0011】
第2の態様では、分離粒子の形態の乾燥固体肥料を調製する方法が提供され、その方法は、
有機廃棄物を滅菌して、炭素不安定性であり実質的に滅菌した生成物を提供する工程と、
NPKSの少なくとも1つを含む無機材料を実質的に滅菌した生成物と混合して、混合生成物を生成する工程と、
その混合生成物を結合して、有機材料と無機材料との均質な混合物を提供する工程と、
有機材料と無機材料との均質な混合物を分離粒子に形成する工程と、
を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、結合工程及び混合工程は同時に行われる。
【0013】
当該肥料中の「有機材料と無機材料との均質な混合物」とは、肥料が、混合され実質的に共に結合された2つの材料を含むことを意味する。それらの材料は、共に化学的に結合される必要はないが、少なくとも共に物理的に結合される。当該肥料には、1つの段階で施用される有機肥料と第2の段階で施用される無機肥料とを有する肥料が含まれることを意図しない。これでは2つの不均一な混合物となり、本発明よりも利点が少なくなる。乾燥固体肥料の利点は、既存の施用機器を使用して、有機及び無機の肥料材料を1つの工程で共に施用できることである。これは、大幅なコスト及び時間の節約を意味する。
【0014】
有機廃棄物は、バイオ固体と呼ぶことができる。有機廃棄物は、好ましくは動物廃棄物である。動物廃棄物は、さらなる処理として通常は処分されるか、又はほとんど価値がないと考えられる動物由来のものであり得る。その廃棄物は、動物からの厩肥、死骸、又は(例えば寝床の)畜舎で使用される動物からの他の材料(例えば、毛、皮、体部分)を含むことができる。この廃棄物は敷料を含むことができる。敷料は、家禽の排泄物、こぼれた飼料、体部分、例えば羽毛、及び農作業において寝床として使用される材料の混合物とすることができる。敷料はまた、未使用の寝床材料を含み得る。いくつかの実施形態では、有機廃棄物は植物性廃棄物である。植物性廃棄物は、干し草(場合によっては損傷廃棄干し草)、又は他の農業バイオ固体などの農業廃棄物を含むことができる。本発明の方法又は本発明の肥料の対象となる有機廃棄物は、異なるタイプのバイオ固体の混合物とすることができる。いくつかの実施形態では、動物廃棄物は、肥料組成物の、少なくとも約25、30、40、50、60、70、80、90、又は100重量%の有機成分を含む。
【0015】
一実施形態では、動物廃棄物は鶏廃棄物である。その廃棄物は、鶏の死骸及び又は鶏糞及び/又は鶏の敷料を含むことができる。一部の国では、鶏の廃棄物又は家禽の敷料は、かなりの廃棄流に相当する。一実施形態では、動物廃棄物は豚廃棄物である。その廃棄物は、豚の死骸及び/又は豚糞及び/又は豚の敷料を含むことができる。一実施形態では、動物廃棄物は牛廃棄物である。その廃棄物は、牛の死骸及び又は牛糞及び又は牛の敷料を含むことができる。動物は、廃棄物を生成する他の任意の動物とすることができる。各実施形態では、本発明は、その廃棄物流を、再生された商業的に価値のある生成物に利用するための方法を提供することができる。動物の様々な廃棄物の割合は、本明細書に記載されるように、変えることができる。好ましくは、廃棄物はあまり湿っておらず、そのため、供給流中により多くの敷料及びより少ない厩肥を使用することに利点があり得る。
【0016】
有機廃棄物の土壌への直接施用について制限となるものの1つに、病原微生物の存在がある。例えば、動物廃棄物は、フザリウムゲネラ(fusarium genera)、アペルギルス(apergillus)、及び又はペニシリウム(penicillium)などの微視的真菌類を含み得る。ほとんどのフザリウム真菌は植物栄養菌である。アスペルギルス(aspergillus)及びペニシリウム(penicillium)は土壌中で毒素を形成する。アクチノバチルス(Actinobacillus)、ボルデタラ(Bordetalla)、カンピロバクター(Campylobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、大腸菌(Escherichia coli)、グロビカテラ(Globicatella)、リステリア(Listeria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、サルモネラ(Salmonella)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、及び連鎖球菌(Streptococcus)などの様々な病原体が、鶏の敷料又は鶏の敷料ベースの有機肥料で認められる可能性がある。リステリア(Listeria)及びサルモネラ(Salmonella)は、死亡の原因となることが知られている。本明細書に記載の肥料は、有機廃棄物を実質的に滅菌した生成物である。実質的に滅菌したとは、使用直前に病原体が肥料中に存在しない傾向にあることを意味する。肥料は、実質的に滅菌しているため、滅菌していない肥料よりも取り扱いが安全である。リステリア(Listeria)感染は、妊婦の予想外の流産又は新生児の死亡につながるおそれがある。サルモネラ(Salmonella)、カンピロバクター(Campylobacter)、及び腸管出血性大腸菌(Enterohaemorrhagic Escherichia coli)は、年間数百万人に影響を及ぼし、時には重篤で致命的な結果を伴う最も一般的な食物由来の病原体である。細菌、真菌、及び酵母などを含む病原体は、空気中に存在し、単離されていないか又は他の方法で保護されていないいかなる材料も必然的に汚染することを理解すべきである。したがって、肥料生成物にはいくつかの病原体が存在する可能性があるが、これらの病原体は、滅菌方法がない場合に存在する場合と同じ数ではないはずである。
【0017】
材料を滅菌するためには、化学的、熱的、及び又は物理的な方法を用いることができる。本発明の肥料の有機物は、好ましくは熱滅菌方法に供される。熱滅菌に加えて他の滅菌方法を適用することができることを理解すべきである。滅菌方法は、好ましくは、有機廃棄物を、廃棄物中の病原体を低減又は除去するのに十分な温度にさらすものである。滅菌方法は、病原体を低減又は除去することであり、さらに微生物が増殖するのを抑制する程度まで有機廃棄物の水分含有量を低減してもよい。この水分含有量の低減は、土壌に施用される使用時点までの肥料の有機部分の貯蔵及び輸送にとって重要であり得る。いくつかの実施形態では、滅菌方法は、水分含有量を、重量で最大約1、2、5、10、又は15重量%の全含水量まで低減することができる。
【0018】
熱滅菌方法の間、蒸気及び他の揮発性ガスを、ガス洗浄システム内でフラッシング、捕捉、及び又は凝縮することができる。バルク固体から凝縮蒸気への栄養素損失は低いと考えられる。非凝縮性蒸気は、最終濾過方法によって大気に送ることができる。凝縮物は、現場で貯蔵することができ、任意にその方法によって(湿潤剤として)再生するか、又は処分することができる。一実施形態では、凝縮物は、以下でさらに記載するように、方法の造粒段階で用いられる。凝縮物には他の栄養素が添加され(例えば、APP及び又は尿素)、そして液体肥料として販売することが可能である。
【0019】
一実施形態では、滅菌を行うために有機材料は熱分解に供される。好ましくは、熱分解は有機材料の焙焼(Torrefaction)である。熱分解は、不活性(嫌気性)雰囲気における高温での材料の熱分解である。有機材料の熱分解には、部分的又は完全な酸化(燃焼)を回避するために酸素の制御/除去が必要とされる。有機材料の熱分解は、複数の温度範囲で起こり、通常、異なる最終生成物をもたらす。熱分解は多くの天然有機物について約250℃で始まり、約400℃で炭化する。最低端では、40℃~80℃の間で堆肥化が起こる。通常、150℃~350℃の間で焙焼が起こる。普通、約750℃を超えてバイオ炭が生成される。通常、炭は、600℃を超える温度でより表面活性になる。非常に高い温度、例えば600~700℃を超えて調製されたバイオ炭は、少なくとも農業用途には有用ではない可能性がある。450~500℃あたりで調製されたバイオ炭の中には、農業用途に比較的良好な結果を提供し得るものがある。本発明の方法は、好ましくは焙焼が起こる温度を適用するため、有機廃棄物は焙焼(torrefied)生成物になる。
【0020】
焙焼は、より揮発しにくい材料(例えばタール)の発生を防ぐために十分低い温度で有機材料を「活性化」することができるので、本発明の肥料の調製に適した方法技術であると考えられる。活性化は、基礎をなす炭素マトリックスを変化させる方法である。焙焼(約350℃)の後、有機廃棄物の炭素はより脆くなる傾向があり、粉砕及び圧縮が比較的容易である。焙焼生成物は、バイオ炭と類似しているが同じではない細胞構造を有する。好ましくは、本発明の方法では、有機廃棄物はバイオ炭をもたらす温度にさらされない。
【0021】
乾燥固体肥料を土壌に施用すると、土壌中に存在する細菌が、有機物質の炭素の代謝を開始することができる。有機材料は炭素に富む。肥料の炭素は不安定である。不安定とは、炭素が土壌マトリックス中の微生物に生体利用可能であることを意味する。炭素に富む材料の別の例はバイオ炭であるが、バイオ炭の炭素は不安定ではない傾向がある。したがって、微生物が炭素を使用しにくいので、バイオ炭は本発明の肥料に(として)有用ではない。バイオ炭は、第1に、炭素が大気に再侵入するのを防ぐための隔離媒体、第2に、種子を植える際に使用するための徐放性組成物を表す場合がある。
【0022】
本発明の方法から生じる焙焼構造(torrefied structure)は、微生物の有益な増殖、水及び栄養素の貯蔵のための高表面積の多孔質媒体を提供し得るので、好ましくは土壌の健全性に役立つ。本発明の肥料は、栄養素及び堆肥を同時に供給してもよい。その栄養素は、持続放出され発芽/苗の損傷の問題を引き起こす可能性は低いが、実施形態では伝統的な厩肥及び堆肥よりも放出がより一層迅速で予測可能である形態の栄養素である。
【0023】
当該肥料中の栄養素は、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、及び硫黄(S)の少なくとも1つを含む。その栄養素は、NPKS(すなわち、4つすべて)とすることができる。その栄養素は、1つ又は複数のNPKSとすることができる。いったん滅菌方法に供してから、追加の無機栄養素を有機材料に添加することができる。有機材料もいくつかの栄養素を含有するが、有機成分の滅菌後に無機肥料を添加することによって、一貫性があり、安定的で的確な所望の栄養素含有量が達成されることを理解すべきである。
【0024】
当該肥料を形成するための方法は、NPKSの少なくとも1つを含む無機材料を、実質的に滅菌した有機生成物と混合して、混合生成物を生成する工程を含むことができる。かかる工程はは、通常、有機成分が滅菌方法に供された後に行われるが、場合によってはその前に行うことができる。各無機肥料構成要素は、それらの高い塩及び/又はアンモニウムの含有量、並びにそれらの製造方法に関連する熱/圧力のために既に滅菌されている傾向にあるので、熱処理する必要はない。後に無機材料を添加するためのさらなる論点は、特定の温度によって、提供された形態で無機材料肥料が化学的に変化するか又は溶融する可能性があるということである。
【0025】
混合は、有機材料及び無機材料のそれぞれを粉砕した後に行うことができる。あるいは、有機材料及び無機材料が一緒に粉砕されるように、混合は、有機材料及び無機材料のそれぞれを粉砕する前に行うことができる。いくつかの実施形態では、ミル内の詰まりが少なくなり、焙焼された基材の過粉砕が低減するため、各材料を一緒に粉砕することには利点がある。
【0026】
2つの材料を混合するために、混合は以下の方法によって行うことができる。
・有機構成要素を熱処理(焙焼)する。
・有機構成要素を、無機肥料(及び他の鉱物、例えば反応性リン鉱石及び結合剤)と混合する。次いで、有機/無機混合物を粉砕する。
・次いで、ブレンドした有機及び無機の組成物を圧縮に供して、離散粒子を形成することができる。これは、造粒、押出し、又はペレット化を含む任意の形態とすることができる。この方法は必ずしも外部熱を必要としないが、混合による剪断に起因する熱が存在し得る。いくつかの実施形態では、蒸気又は熱水を使用して造粒を容易にすることができる。この工程では、再生された凝縮物を使用することができる。
・顆粒を研磨に供して、球形(不規則な鋭い縁部がない)及び一貫したサイズを達成することができる。研磨には、通常、噴霧の形態での液体の塗布が必要である。
・次いで、研磨された顆粒を熱乾燥に供して、余分な水分を確実に乾燥させ、貯蔵及び取り扱いを目的として顆粒を生物学的に不活性にすることができる。乾燥した顆粒はまた、肥料施用機器での取り扱い耐久性のために、より良好な硬度を有することになる。
【0027】
顆粒を形成するためにはいくらかの水分が必要である。水分が少なすぎると生成物がほこりっぽくなる。水分含有量が高すぎると、生成物中で病原体が増殖する傾向が高まるおそれがある。焙焼のために、有機混合物のより乾燥したブレンドを選択することによって、水分含有量を低減することができる。最終顆粒の水分含有量は、好ましい実施形態では、5重量%未満であるが1重量%を超える。この水分レベルに達するために、熱乾燥工程における乾燥時間及び又は乾燥温度を調節することができる。あるいは、顆粒を2回以上の乾燥サイクルに供することができる。
【0028】
改善された肥料顆粒の水分含有量は、圧壊強度(硬度)に影響を及ぼす。圧壊強度は、水分含有量が増加するにつれて低下する。一実施形態では、圧壊強度は、例えば尿素の顆粒に匹敵する少なくとも約2.5、3、又は3.5KgFである。改善された肥料の粒子はまた、平均直径が約2~約5mmの範囲にある尿素顆粒と同様のサイズに作られる。得られる圧壊強度に影響を及ぼし得る水を吸収する傾向を低減するために、粒子を被覆することができる。被覆は、粒子の吸湿性を低減させる既知の被覆とすることができる。
【0029】
本発明の肥料では、土壌中で利用可能な栄養素の量を制御することを目的として、無機栄養素が添加される。添加される栄養素の量は、肥料の最終的な用途に基づいて決定することができる。いくつかの実施形態では、肥料が施用される土壌で当業者が実験を行うことになる。その実験の結果は、どの栄養素が標的土壌にとって最良であるかを明らかにするであろう。あるいは、栄養素の要件は、土壌及び/又は植物組織の分析によって決定されてもよい。
【0030】
栄養素は、好ましくは、最大で約15、25、30、45、又は50%のN及びPが、最初の約1、2、又は3ヶ月で利用可能になり、その後の1~3ヶ月から12~18ヶ月にわたって残りが利用可能である徐放性である。一実施形態では、1~12ヶ月にわたる。一実施形態では、N及びPの50%が最初の1ヶ月にわたって利用可能であり、次の1~4ヶ月にわたって残りが利用可能になる。理論に束縛されることを望むものではないが、利用可能な栄養素の大部分は、最初に土壌中の微生物によって使用され、これらの栄養素は、天然の微生物集団の死滅及び分解に際して放出されると考えられる。肥料の炭素材料が食物源として使い果たされると、微生物は増殖しなくなる。
【0031】
無機栄養素と共に有機マトリックスを使用することにより、より多くの窒素量を乾燥固体肥料に装填することができる。普通、土壌中の発芽中の種子又は未成熟の植物に近接した高濃度の肥料塩及び又はアンモニウム窒素は、植物に有害となる。しかし、アンモニウム窒素及び他の塩を結合するのに十分な有機物が周囲の土壌環境にあれば、この問題は回避されるか、又は少なくとも低減され得る。そして、窒素は後に植物に利用可能となり、それは、微生物がエネルギー源として炭素を使用し、タンパク質構成要素としてアンモニウムを使用するためである。当該肥料中のアンモニウム窒素の量は、少なくとも約1、2、5、10、12、又は15%w/wとすることができる。
【0032】
有機材料に添加される窒素Nは、以下のうちの1つ又は複数の形態とすることができる(ただし、以下に限定されない)。
・硫酸アンモニウム
・尿素
・塩化アンモニウム
・硝酸アンモニウム
・無水アンモニア
・尿素硝酸アンモニウム
・硝酸アンモニウムカルシウム
・硝酸カリウム
・硝酸カルシウム
当該肥料中の全窒素の割合は、少なくとも約0、10、20、又は30%w/wとすることができる。一実施形態では、有機材料の最小値を30%と想定すると、全体のNの最大値は30%w/wあたりに制限される。
【0033】
いくつかの実施形態では、無機材料と有機物との組合せは、爆発性になりかねない組合せを提供する可能性がある。肥料が可燃性になる危険性を低減するために、工程を踏むことができる。その工程は、爆発抑制剤の添加を含むことができる。爆発抑制剤は、リン酸二アンモニウム(diammonium phosphate:DAP)とすることができる。
【0034】
有機材料に添加されるリンPは、以下の1つ又は複数の形態とすることができる(ただし以下に限定されない)。
・過リン酸
・骨粉
・リン鉱石
・リン酸二アンモニウム
・リン酸一アンモニウム
・重過リン酸石灰(triple superphosphate)
・リン酸
当該肥料中の全リンの割合は、少なくとも約0.5~約15%w/wとすることができる。
【0035】
有機材料に添加されるカリウムKは、以下のうちの1つ又は複数の形態とすることができる(ただし以下に限定されない)。
・塩化カリウム(カリの塩化物)
・硫酸カリウム
・カリウムシェーナイト(Potassium Schoenite)
・硝酸カリウム
・モラセス由来のカリ
当該肥料中の全カリウムの割合は、少なくとも約0.5~約12%w/wとすることができる。
【0036】
有機材料に添加される硫黄Sは、以下のうちの1つ又は複数の形態とすることができる(ただし、以下に限定されない)。
・硫黄粉末
・硫黄(粒状)
・硫黄ベントナイト
・硫酸アンモニウム
当該肥料中の全硫黄の割合は、少なくとも約1~約16%w/wとすることができる。
【0037】
配合物は、NPKSの少なくとも1つを含むことができ、これは、N及び又はP及び又はK及び又はSを含むことができることを意味する。配合物は、4つすべてのNPKSを含むことができ、又は4つすべてより少ないNPKS栄養素を含むことができる。すべての配合物がNPKSのそれぞれの無機形態を含有するわけではなく、例えば、いくつかは無機形態のNを含有するのみであってもよい。リン酸二アンモニウム、リン酸硫酸アンモニウム、尿素リン酸アンモニウム、リン酸一アンモニウム、硝酸リン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、NPKの1つ又は複数を含むがこれらに限定されない組合せの添加剤も使用することができる。列挙した無機栄養素に加えて、当該肥料は、亜鉛、銅、鉄、マンガン、ホウ素、モリブデン、及び二次栄養素のカルシウム、マグネシウム、及びケイ素を含む微量栄養素を含むことができる。当該肥料中のカルシウムなどの二次栄養素の割合は、少なくとも約0.5~約18%w/wとすることができる。当該肥料中の微量栄養素の割合は、少なくとも約0.01~約2%w/wとすることができる。
【0038】
組成物中には、必ずしも栄養上の利益を提供するのではなく、代わりに他の機能的改善を付与する他の添加剤があってもよい。実施形態では、最終生成物の機械的特性を高めるための添加剤が存在する。実施形態では、配合物は、1つ又は複数の硝化抑制剤を含む。植物が利用可能な硝酸態窒素は浸出及び脱窒損失を受けるため、肥料窒素は多くの農業土壌で非効率的に使用されている。このような損失を低減する1つの方法は、硝化抑制剤で窒素肥料を安定化することである。これは、より安定なアンモニウム形態で窒素が長期間留まるように、硝化細菌の活性を抑制する化合物で土壌を(肥料を介して)処理することによって行われる。硝化抑制剤の一例はジメチルピラゾール(dimethylpyrazole:DMP)である。これにより、損失事象を相殺する硝酸態窒素の滴下供給物が提供される。なお、硝化抑制剤の性能は、様々な理由から、オーストラリアの土壌において変わりやすいことに言及しておく。植物は、アンモニウム窒素を土壌から抽出することもできるが、高濃度のアンモニウム及び関連するアンモニアは植物に有毒であり得る。この毒性は、動物廃棄物中に存在し最終生成物中に微量で検出されたビタミンB6の存在によって、低減できることが知られている。亜鉛も多くのオーストラリアの土壌では低いか又は不足している必須微量栄養素でもある一方で、酸化亜鉛が硝化を抑制することができるという何らかの証拠もある。したがって、いくつかの実施形態では、亜鉛が配合物に添加される。
【0039】
さらに、農作物は、干ばつや塩分などの他の非生物的ストレスに日常的にさらされている。植物が利用可能なケイ素は、植物が非生物的ストレスに対処するのに役立つことができる要素として認識されており、また、ケイ素は、植物細胞壁の構造的な構成要素でもある。サトウキビやイネのような特定の作物は、ケイ素要求量が高く、植物が利用可能なケイ素が枯渇している地域又は土壌で栽培されていることが多い。植物に窒素を供給する効率的な方法は、窒素の放出を調節する抑制剤、及び植物が有害な環境又は化学的要因を相殺するのに役立つ非生物的ストレス制御剤と組み合わせた無機窒素源と有機窒素源とを組み合わせることであると考えられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、有機材料と無機材料の比は、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、45:55、40:60、32.5:67.5、又は30:70である。一実施形態では、基材配合は、有機45%及び無機55%の材料(本明細書ではA基材、時には内部参照である数字を伴って例えばA1と呼ぶ)、又は有機32.5%及び無機67.5%の材料(B基材、時には内部参照である数字を伴って例えばB1、B2、B3などと呼ぶことができる)、又は有機30%及び無機70%の材料(E基材、時には内部参照である数を伴って例えばE1と呼ぶことができる)を含む。
【0041】
一実施形態では、有機材料はバインダと共に焙焼される。バインダ前駆体に有機材料を添加し、次いで焙焼機に送達することができる。一実施形態では、有機材料を焙焼し、次いで、バインダを焙焼後に添加する。バインダは、レオナルダイト(leonardite)とすることができる。バインダは、カルシウムリグノスルファート(CaLigno)とすることができる。レオナルダイト(leonardite)を、土に直接施用するか、又はフミン酸又はフミン酸カリウムの供給源を施用のために提供することにより使用して、土壌の状態を調整してもよい。特に、微生物の活動を迅速に早めて土壌に炭素を閉じ込め保持するレオナルダイト(leonardite)の炭素の地中隔離(geosequestration)の可能性は、褐炭の有機肥料の側面に関する広範な研究の基礎を提供する。
【0042】
レオナルダイト(leonardite)は、肥料組成物の少なくとも約1、5、又は10%w/w/の量で存在することができる。レオナルダイト(leonardite)を鶏糞と潜在的に混合すると、結合剤として広く使用されているカルシウムリグノスルホナートと同様の特性を有する材料が作製される。レオナルダイト(leonardite)はまた、土壌中の栄養素保持、及びリン酸塩などの特定の栄養素の植物取込みも改善することを目的とした様々な農業システムで広く使用されている土壌調整剤であるフミン酸の貴重な供給源としても認識されている。他の焙焼有機廃棄物と混合されたレオナルダイト(leonardite)によって供給される官能性炭素基は、植物のリン取込みを改善し、より効率的なリン肥料を潜在的に提供してもよい。
【0043】
一実施形態では、土壌中の微生物集団の活性を調べることができる。多くの微生物は、炭素質生成物又はガスなどの副産物を生成するが、それを、土壌-微生物活性の指標として使用することができる。微生物が極めて活性であれば、土壌の栄養素含有量はまだ発芽植物に損傷を与える高い閾値ではないと推定することができるため、種子を植えることができる。微生物の活性が低くければ、これは、集団が減少しており、無機化方法によって無機栄養素が遊離されつつあることを示している可能性がある。このような状態で、微生物集団がなお減少していることが望ましいものではない場合(例えば、植物が十分に成熟していない可能性がある、種子をまだ植えなければならない可能性がある、又は他の何らかの理由)、微生物集団を増加させることが得策であり得る。より多くの炭素不安定性肥料を土壌に添加することによって微生物集団を増加させることが可能であり得る。したがって、土壌試験を用いて時間及び場所に関して最適な施肥量を決定することもできる。
【0044】
説明したように、当該方法は、有機材料と無機材料との均質な混合物を分離粒子に形成する工程を含む。当該乾燥固体肥料は、微粉、顆粒、ペレット、又はプリルを含むことができる。任意の形態の離散粒子は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mmのサイズの平均直径を有することができる。いくつかの実施形態では、離散粒子の少なくとも約80、90、95、又は100%が、平均粒径の1標準偏差以内に入る(理想的には、>80、85、又は90%は、約2~約5mmの範囲である)。顆粒は、ペレットのような粉末材料の小さな凝集体である。顆粒は、ペレットよりも崩壊が遅い傾向にあり、発塵が少ない傾向にあり、実施形態では、複数の生成物どうしの結合を可能にし、次いで、その生成物は顆粒を介して均一に分布する。均一に分布するとは、肥料の粒子中の任意の1箇所で、無機及び有機の材料の相対量が他の任意の箇所とほぼ同じであることを意味する。顆粒はまた、散布機械によって施用される場合、より空気力学的であり、したがって、より広い帯状幅を達成することができる。好ましい実施形態では、ペレット化を用いて顆粒を調製する。
【0045】
当該肥料を乾燥固体として記載する。乾燥固体とは、材料をペレット(顆粒)の形態で取り扱うことができることを意味する。例えば、材料を、トラックに積載し、輸送し、次いでペレット化された材料を制御して投与するために設計された機器を使用して施用することができる。肥料を形成するために使用される成分の1つ又は複数は液体であってもよい。
【0046】
当該方法はまた、肥料を施用する工程も含むことができる。肥料は、少なくとも約0.05~約5トン/ヘクタールの割合で施用することができる。いくつかの実施形態では、肥料は、作物の収量を2、20、50、又は100%増加させることができる。作物の登熟を、肥料なしでかかった時間の少なくとも5、8、又は10%早めることができる。いくつかの実施形態では、肥料は、改良しなければ作物に不適な土壌を含む土地の改良に使用することができる。肥料の炭素不安定性は、微生物群を、刺激して消費及び増殖させるが、その後、食物源が枯渇するにつれて死滅、分解させることができる。細菌が死滅するにつれて、そうでなければ不足していた栄養素が放出されることにより、土壌が改良され得る。レオナルダイト(leonardite)は、特に堆肥と組み合わせた場合、土壌に直接添加して、汚染された地面での植物による金属の吸収を低減することができる。
【0047】
ここで、本発明の実施形態を、縮尺通りに描かれていない単なる例示である以下の添付の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】提案した各肥料配合物並びにそれらの有機及び無機の含有量を百分率で示す表である。
図2】本明細書に記載の方法に従って焙焼した有機廃棄物材料中の異なる炭素タイプの絶対シグナル強度の%を示すグラフである。
図3】本明細書に記載の方法に従って焙焼した有機廃棄物材料のC13 NMRスペクトルである。
図4】比較のための(a)亜炭及び(b)植物性廃棄物堆肥のC13 NMRである。
図5】一実施形態による方法の簡略ブロック図である。
図6】一実施形態の詳細な方法フロー図である。
図7】病原体試験結果を含む、有機材料(焙焼後)の%分析結果を示す表1である。
図8】異なる焙焼有機基材の配合量及び栄養素含有量を示す表4である。
図9】カルシウムリグノスルファナートを結合剤として使用した後の顆粒の圧壊強度のグラフである。
図10】予想及び測定された試料B1の栄養素含有量を示す表5である。
図11】大腸菌群の数、圧壊強度、及び水分含有量を示すグラフである。
図12】焙焼された有機基材配合の一例を示す表6である。
図13】本発明の実施形態による肥料の組成を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に、有機廃棄物が鶏廃棄物であり、滅菌方法が焙焼である実施形態を中心に記載する。これらは例として使用されるものであり、他の有機廃棄物が方法の対象となり得ることを理解すべきである。さらに、焙焼が最も好ましいが、当業者は、他の滅菌技術が実施され得ることを理解すべきである。とは言うものの、焙焼は、低温を使用し、それにより有機廃棄物の炭素不安定性をかなり保持することによって、本発明の方法において大きな利点を提供することは確かである。炭素不安定性生成物は、土壌の健全性を最適化し、添加された栄養素と相乗的に働いて、特に有利な肥料を提供する。基材材料(焙焼された鶏廃棄物)を粉末にし、次いで他の構成要素と混合することができる工程における本明細書に記載の中心的方法によって、「設計された」栄養産物がもたらされる。焙焼生成物は、「土壌調整」のために最適化される。無機添加剤は、栄養強度を付加し、植物生産性の改善を目的とする。
【0050】
近くの養鶏場からの未加工有機廃棄物(ブロイラーの敷料、層厩肥(layer manure)、ブロイラーの死体)は、大量に現場に送達することができる。これらの廃棄物は、供給源農場、利用可能な寝床材料、及び季節的な変化に基づいて、栄養素及び炭素含有量が変わる。供給物の比率は、栄養素含有量及び所望の生成物に基づいて少し変えることができる。将来的には、他の有機原料を供給原料として使用し、現場で貯蔵及び取り扱いしてもよい。
【0051】
焙焼方法の前に、動物廃棄物を鋼鉄製又はコンクリート製の貯蔵庫に貯蔵することができる。好ましくは、その廃棄物は、起こり得るバイオハザードを低減するような方法で貯蔵される。動物廃棄物は、特に対象動物が人でもある場合、人にとって特に危険になりかねないので、滅菌前に厳格な健康対策及び安全対策を講じるべきである。バッチ・リボン・ミキサを使用して、厩肥、寝床、及び死骸(廃鶏)などの家禽廃棄物を混合することができる。必要に応じて、有機原料は、処理のため焙焼機に搬送される前に、シュレッダ及び又はハンマーミルの中で調整することができる。
【0052】
フロント・エンド・ローダ(Front End Loader:FEL)は、投入物を所望の比率でホッパに充填することができ、そこで投入物は秤量供給装置を通過し、次いでリボンミキサ中で混合することができる。混合した材料をシュレッダに搬送して、焙焼機に供給する前に材料を粉砕することができる。焙焼は、酸素の非存在下で材料を250~350℃に加熱する。焙焼機は、下方のバーナシステムからの放射及び伝導によってスクリュコンベアを通過する材料を加熱することによってこれを行う。
【0053】
上記によって2つの結果が達成される。
-材料から大量の水分の除去。
-動物廃棄物の供給原料中に存在し得る病原体の変性。
【0054】
当該方法は、これらの結果を達成し得るものの、温度が熱分解点に達していないため、不安定な(使用可能な)形態で炭素を保持する。
【0055】
蒸気及び他の揮発性ガスを、ガス洗浄システムでフラッシングし、捕捉し、凝縮することができるが、バルク固体から凝縮蒸気への栄養素損失は低い。
【0056】
焙焼機は、目的に合った任意の装置とすることができる。一実施形態では、焙焼機は、空気密閉性とするために「窒息状態」で作動される小型スクリュコンベアである。カスタム仕様の耐密スクリュオーガ焙焼機は、ガス燃焼で外部を加熱することができる。廃熱回収のために、焙焼機の上方にスクリュコンベアを取り付けることができる。作動中に、焙焼温度を決定することができる。選択される温度は、焙焼される材料に関する以前の経験に基づく。温度は、約100℃~約350℃の範囲とすることができる。コントローラは、温度を維持するために加熱要素に印加する電力量を設定する。サーモスタットを使用して、確実に温度を設定範囲内に維持することができる。温度が所望のレベルに達した後、湿潤バイオ固体(有機廃棄物)を、焙焼機の入口ポートを通して連続的に導入することができる。有機廃棄物は、スクリュコンベアによって受け取られ、焙焼チャンバに輸送することができる。材料が焙焼機を通過する速度は、コンベアの回転スピードに依存する。熱は、外壁を通る伝導によって、かつ輸送中に固体に加えられる放射加熱を介して加えられる。
【0057】
一実施形態では、焙焼機は、異なる目的の連続した3つのスクリュコンベアで構成することができる。
-主スクリュの前に主バーナからの廃熱で材料を加熱する予熱スクリュ、
-その下で発火するバーナのバンクを有する主スクリュ、
-焙焼機生成物を貯蔵することができるように、温度を低下させるためのウォータージャケット付き冷却スクリュ。
【0058】
ダブル・ナイフ・ゲート・バルブは、各スクリュからの入口及び出口を気体密閉性とすることができる。焙焼機の供給速度は、主スクリュ出口の温度を調整するフィードバックループを介して制御することができ、それにより、供給材料に基づいて推測される生成物水分含有量(約7~10%)となる。出口温度設定は、水分分析に基づいて調節することができ、供給材料の熱分解を許容可能な割合まで最小限に抑えるように制限することができる。
【0059】
すべての焙焼機投入物及び焙焼機ユニット自体は、専用の建物に置くことができる。これは、現場に送達された有機原料中に存在し得る病原体で最終生成物が汚染されるリスクを管理するのに役立ち得る。並列式の3つの焙焼機ユニット(単一供給システム、単一凝縮物システム)とすることができる。
【0060】
固形物が焙焼されると、処理された有機材料を焙焼機から輸送することができる。材料は、焙焼チャンバから適切な容器に重力下で落下させることができる。焙焼された材料は、さらなる取り扱いを容易にするために室温又はそれをちょうど超える温度に冷却することができる。任意に、冷却は、ウォータージャケット付きスクリュコンベアによる焙焼後冷却である。焙焼された材料で充填された容器は、袋のアンローダによって支持された袋とすることができる。所定の間隔で焙焼された材料を試験して、滅菌要件及び水分含有量を確実に満たすことができる。試験上問題があれば、方法を停止し、焙焼機のパラメータを調節することができる。
【0061】
焙焼機生成物は、中間サイロに貯蔵するために隣接する造粒建物に搬送することができる。これらのサイロは、送込みシステムの追加導入を可能にして、農場の焙焼ユニットからの焙焼された材料の将来的な「ハブ・アンド・スポーク」供給を支援するように設計することができる。
【0062】
次いで、得られた焙焼生成物をバッチでリボンミキサ及びハンマーミルに送り、そこで粉砕することができる。材料は、均質な密度になるまで粉砕することができる。この段階で、固体及び液体の無機栄養素を含む無機材料を、工業用ブレンダー内で焙焼生成物に添加して、均質化された混合物を得ることができる。無機肥料(例えば、RPR/SOPブレンド、尿素、DAP/MOPブレンド)は、バルクで現場に送達され、スクリュコンベアを介して貯蔵サイロに降ろされる。他の微量栄養素(例えばZn/Cu/Mo材料)を1トン(T)の袋で送達し、将来必要に応じて使用するために貯蔵しておく設備を備えることができる。
【0063】
レオナルダイト(leonardite)を、全生成物の少なくとも約2、5、10、又は15%の量で添加することができる。レオナルダイト(leonardite)は、1トン(T)の袋で現場に送達され、必要に応じた使用のために貯蔵することができる。レオナルダイト(leonardite)は、病原体を含まない材料であるため焙焼後に添加することができ、造粒を容易にし、土壌の健全性に寄与すると考えられるその高い炭素含有量及びフミン酸の存在のために添加される。
【0064】
焙焼有機物、レオナルダイト(leonardite)、及び無機肥料の均質な混合物を含有する最終生成物顆粒を得るために、ハンマーミル中で各材料を混合し、粉砕して所望の小サイズ化を行い、次いでペレット化又は造粒の方法に送る。ペレット化は、混合物をペレット押出機及び切断機に輸送することを含む。造粒は、任意に連続して配置された3つの球状化ミルを含むことができる。適当なすべての段階で、液体を噴霧して粉塵を低減することができる。供給、混合、及び粉砕の各方法は、粉砕供給物の連続流を湿潤ミキサに送達するように、連続式とすることができる。混合物によっては、他の混合物よりもペレット化により適しているものがある。当業者は、ペレット化及び造粒を試みて、どれが使用された混合物に適するかを確かめることができる。
【0065】
ペレット化の本質は、ペレタイザへのすべての供給物を設定レベルまで湿潤させて、ダイを通過するのに十分な潤滑性で圧力下において材料を十分に化合させることである。水が十分でなかったり、又は多すぎたりすると、ロールヘッド及びダイの閉塞/停滞、並びに脆い生成物及び過剰な微粉が生じる可能性がある。
【0066】
ペレット化を用いて作られた生成物の場合、未加工粉砕供給物は、再生された篩下産物及び水(又は焙焼機凝縮物)が添加されたウェッティングミキサに入って、ペレット化の前に混合物を湿潤させることができる。ペレット化/球状化の方法は、およそ70%の所望サイズの生成物を産すると予想されるため、ペレタイザに供給されたすべての材料の約30%が再生(0.43:1の再生比)のために戻される。
【0067】
湿潤した材料は、並列のペレタイザ(2×50%負荷)に供給し、小さな円筒状の生成物を作製し、次いで一連の球状化ミルに供給してペレットの鋭い縁部を丸め、その形状を球に変えることができる。球状化ミルは、ディスクの周りの垂直壁に生成物を投入する回転ディスクからなり、回転ディスクは、バルク材料がミルの周りを回転する際に、バルク材料にローリング作用を付与する。水(又は焙焼機凝縮物)を添加して縁部の軟化を容易にし、ペレットを可塑化して形状を変化させることができる。球状化はまた、いくつかの微粉の組合せからより大きな所望サイズの粒子を産する。次いで、球状にした材料を、下流の乾燥及び篩過の方法に供給することができる。
【0068】
ガスバーナを使用して、乾燥機ドラムに供給される空気を加熱して顆粒を乾燥させることができる。乾燥機の排気ガスは、抽出ファンが浄化されたガスを大気に排出しながら、バッグハウスを介して捕捉することができる。乾燥した固体肥料生成物は篩過することができる(2デッキ振動篩)。篩上物を篩過した後、生成物に微粉篩を通過させて篩下物を除去することができる。次いで、仕様に合った生成物は回転冷却機ドラム、次いで研磨篩を通過して、粉塵が除去される。微粉篩及び研磨篩からの篩下物は、ペレタイザに戻され再生することができる。任意に、顆粒の形態の乾燥固体肥料生成物は、貯蔵安定性のために、かつ顆粒中の病原体の再増殖を防止する(又は少なくとも低減させる)ために、水分含有量を約10、8、又は5%未満(好ましくは5%未満)の水分とすることができる。
【0069】
冷却及び研磨篩の後は、生成物をバルクトラックに送り込むための施設内の貯蔵サイロに搬送するか、又は現場の袋詰めラインに供給して1Tの袋に貯蔵することができる。最終生成物は、最終生成物の篩過工程に送ることができる。生成物がすべての必要な基準を満たすとみなされると、生成物をバルクで販売するか、又は袋詰めし、販売及び使用のために印を付けることができる。
【0070】

以下の非限定的な例を参照して、本発明の実施形態を例示する。
【0071】
例1-肥料の予想栄養素含有量を決定する方法
肥料配合物の有効性を決定するために、本開示に従って様々な配合物を作製することができる。次いで、当業者は、どの配合物がどのタイプの土壌での使用に最適であり、どのタイプの植物がその土壌での栽培(grown)を意図されるかを決定することができる。例として異なる配合物を提案しており、内部参照のためにこれらにA~Mと記号付けすることができる。
【0072】
一例として、肥料配合物Aは、鶏糞敷料、層厩肥(layer manure)、及び廃鶏を含む有機材料の焙焼によって調製することができる。有機材料を貯蔵し、次いで焙焼機に搬送することができる。約5~約30分間、150℃~約350℃の温度を用いて廃棄物を焙焼することができる。固形物を焙焼すると、処理した有機材料を焙焼機から輸送し、容器に収集する前に冷却することができる。バッチを容器から取り出しリボンミキサに送ってもよく、焙焼された材料を、混合した後に、ミル(例えばハンマーミル)の中で例えば最大20分間(より短い時間を用いることが可能であるが)、粉砕する。硫酸アンモニウム及びAPPなどの液体及び固体無機肥料を粉砕生成物に添加し、混合してもよい。有機成分は、粉砕材料の全重量の約20~80%、バインダは約5~10%、無機成分は約20~70%とすることができる。混合された有機材料及び無機材料は、ペレット化工程に送ることができる。
【0073】
肥料中の炭素(C)、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、硫黄(S)、及びカルシウム(Ca)の予想される分析結果を図1の表1に示す。
【0074】
図1の表1はまた、上記と同様の方法で調製することができる組成物B~Mの提案される配合組成を示す。
【0075】
異なる配合組成に加えて、焙焼機で費やされる時間を、30分~15分、1時間、2時間、3時間に変えてもよい。さらに、温度の影響を150℃から350℃までで調べる。また、粉砕に費やされる時間は、20分より長くても短くてもよい。
【0076】
次いで、肥料のそれぞれを土壌で試験して、植物の生育及び全体的な健康を促進する有効性を決定することができる。
【0077】
例2-焙焼生成物の分析
配合物の焙焼有機成分の滅菌特性を図7に示す。
【0078】
焙焼された材料の炭素不安定性の分析を行った。結果を図2に示す。焙焼された材料は様々な炭素形態を含有する。重要な形態は以下の通りである。
【0079】
カルボキシルC-これには、短鎖有機酸を含むカルボン酸が含まれる。これらは、栄養素の利用可能性に影響を及ぼす土壌方法に寄与する。これらは土壌微生物によって容易に分解可能である。
【0080】
アリールC-これらには、より「成熟した」有機材料の官能基であるベンゼン環構造を組み込んだ芳香族C化合物が含まれる。これらの化合物は、栄養素の利用可能性にも寄与する一方、それらの環構造が微生物分解に対してより耐性であるため、土壌中での滞留時間がより長い。それらはC隔離に寄与し得る。
【0081】
O-アルキルC-このクラスには、すべての多糖(糖タイプ)及び炭水化物化合物が含まれる。これらは、容易に利用可能な微生物基質であるため、局所的な微生物活性を刺激する。この材料はまた、「プライミング」効果も有し得、それによって、あまり利用可能ではない他の土壌C源の無機化を刺激する。
【0082】
アルキルC-このクラスには、脂肪酸、脂質、及び他の長鎖脂肪族化合物が含まれる。これらは、エネルギー源として微生物によって消費される可能性が高い一方、栄養素放出又はC隔離には寄与しない。
【0083】
13C NMRスペクトルを図3に示すが、様々なCクラスは、異なる「化学シフト」でのピークの群として測定されている。約70ppmの大きなピークは、多糖/炭水化物のピークである。このスペクトルの形状は、他の堆肥タイプの有機改良材に見られるものと同様である。したがって、焙焼は、炭素を濃縮し病原体を除去しながら、堆肥化などの他の有機処理の有益性の多くを保持している。亜炭及び堆肥と比較した別のNMRの例を図4に示す。
【0084】
例3-一実施形態による肥料の調製の具体例
図5及び図6のフロー図は、原料から最終顆粒の包装までの方法の概略図を表す。工程は以下に概説され、図5に番号付けされている。
1.有機原料(鶏の敷料、鶏糞、及び鶏の死骸を別々の区画に入れた)。
2.すべての有機原料をリボンミキサに規定の比率(例えば、図13の表)で投入し、十分に混合した後、シュレッダに投入した。
3.焙焼方法に入る前に、混合物を小さく一貫した粒径に細断した。この工程により、一貫したサイズになるため、均一な焙焼(熱分布)が可能であった。
4.細断された混合物を焙焼機ユニットに導入し、混合物を酸素の非存在下で330℃の高温に曝露した。焙焼方法により、混合物の水分が大幅に低減された(40%の水分含有量から10%未満の水分含有量)。
5.次いで、焙焼された有機材料を、規定された比率、例えば図13の表(生成物配合組成による)の無機肥料顆粒及び結合剤と共にミキサに導入した。
6.次いで、有機及び無機の材料の混合物をハンマーミルに導入して粒子を粉砕し、さらに均質性とするために材料を混合した。最終混合ペレットの組成の均質性の一例を図10に示す。
7.次いで、粉砕され均質化された混合物を湿潤ステーションに導入し、そこで液体(水又は液体肥料又は方法からの凝縮物)を混合物に添加してペレット化の準備をした。
8.次いで、湿潤した混合物を造粒のためにペレタイザに導入する。
9.ペレタイザからの顆粒を液体(水又は方法からの凝縮物)と共に研磨機に導入して、顆粒表面をさらに研磨し、均一な球状顆粒を生成した。
10.研磨した顆粒を乾燥機に導入し、過剰な水分含有量を除去した。水分は、少なくとも約1%から最大約9%の範囲内になるまで低減させた。
11.次いで、乾燥した顆粒を、できる限り周囲冷却又はファンによって貯蔵温度まで冷却した。
12.冷却した顆粒を、塊及び大きな粒径についてさらに篩過した後、貯蔵又は包装工程に送った。
【0085】
例4-焙焼された基材の選択
生成物に使用された動物廃棄物を様々な割合で焙焼して「基材」を生成した。これらの基材のうち4つについての栄養素分析結果を図8の表4に示す。各基材の水分含有量は変動し、厩肥/死骸(湿潤)の存在によって増加し、敷料(乾燥材料)の存在によって減少する。しかし、水分含有量の変動以外の、有機供給原料の全体的な栄養素含有量は、最終生成物中の不安定な炭素の量に有意に影響しないことが分かった。これは、得られる炭素含有量が全量の約30~約40%の範囲内であれば、改善された肥料は、焙焼された基材中の敷料/厩肥/死骸の様々な割合を許容できることを意味する。
【0086】
有機廃棄物の3つのバッチも、独立した実験室(SWEP)によって、焙焼後に、栄養素、炭素、及び病原体について分析した。結果を図7の表1に示す。表1に見られるように、焙焼生成物は、大腸菌(E.Coli)、サルモネラ(Salmonella)、及びリステリア(Listeria)(全大腸菌群(<3))が存在しないため、実質的に滅菌されている。大腸菌群を欠いていることは、図11のグラフでも見ることができる。B1及びB4と記号付けした肥料は、大腸菌群を有さず、所望の硬度、及び所望の水分含有量を有している。
【0087】
例5-硬度/圧壊強度
顆粒硬度の尺度である圧壊強度は、顆粒の性能指標として使用される。圧壊強度(顆粒硬度)をさらに改善するために、造粒バインダとしてリグノスルホナートを使用して実験を行った。図9は、そのような1つの実験からの結果を示す。図9のデータから、10%未満の水分含有量では、カルシウムリグノスルファナートを有する顆粒の硬度は、バインダを有していない場合よりも有意に高いことが分かる。
【0088】
例5-改善された肥料配合物
焙焼及び造粒の方法を用い、複数の配合物を生成して、有機材料及び無機材料を含む肥料ペレットを製造した。
【0089】
次いで、混合物及び比率を変えて焙焼した有機材料を無機肥料と混合し、混合物を造粒した。各組成物を図13の表に示す。最終顆粒を栄養素、水分、及び組成の分析のために実験室に送った。
【0090】
異なる土壌構造及び栄養組成物における肥料生成物の効果を理解するために、砂質土壌及び粘土質土壌で土壌インキュベーション及び温室の実験を行った。
【0091】
土壌インキュベーション
・有機材料の分解が両方の土壌タイプで観察されたが、砂質土壌でより明確に見られた。これは、砂質土壌が、粘土質と比較して栄養負荷、有機物、及び微生物活性が低いためである。
・実験期間にわたってカチオンの放出が観察され、これは、CEC、C:N比、及び不安定炭素の間の関係に反映された。
・カリウム及びリンの無機化が見られ、各焙焼有機生成物で、それらの対照と比較して無機化が増加していた。
・各焙焼有機生成物は、それらの対照と比較して、実験期間にわたって同様のアンモニウム及び硝酸塩を有していることが観察され、両方の土壌で大々的な窒素固定化が生じていないことが示された。
・高い有機含有量及び微生物活性のために、アンモニウムNが迅速に硝酸塩Nに変換されることが観察された。
・一部の焙焼有機生成物では、それらの対照と比較して、Nについて放出がより遅く、より制御されていることが観察された。
【0092】
温室
・生成物の性能は、トウモロコシ(粘土質)及びレタス(砂質)の両方について土壌よりも良好であり、収量が増加し、栄養摂取量が向上する。
・農学的効果は、粘土質土壌の肥沃度がより高いため、粘土質土壌よりも砂質土壌でより明らかである。
・生成物(B4)について異なる施用率を試験し、最適範囲を特定した。
・他のすべての処理について、2つの施用率を試験した。生成物によって様々な応答が観察された。
【0093】
圃場試験は追加の堆肥化された鶏糞で処理し、他方、ポット試験は追加の未加工鶏糞で処理した。ABF生成物(例えば、B1、B4、B5、B6、B7、D5など)との比較のため、厩肥/堆肥を添加したが、厩肥又は堆肥は別々に施用し、続いて従来のNPK肥料を施用した。栄養素の利用可能性は、未加工の厩肥又は堆肥化された厩肥のいずれからも同様であると予想され、堆肥化された材料は、単に病原体が少なく、場合によっては窒素が少し少ない(堆肥化中に失われた)。
【0094】
乾燥物収量%は、乾燥物(ポットあたりのグラム数)を対照(肥料施用なし)で除したものである。
【0095】
仮説1:焙焼された有機材料は、厩肥/堆肥と同等又はそれ以上に機能する
確認された事項:真
【表1】
【0096】
C1焙焼有機物には、(まだ)無機材料が添加されていない。この実験は、焙焼された有機材料中の不安定な炭素が、単独で使用される場合、堆肥の厩肥よりも優れていることを実証することを意図している。結果から分かるように、圃場試験における乾燥物%は、一般に、改善された肥料組成物においてその使用を支援する焙焼材料の使用によって増加する。
【0097】
仮説2:共造粒焙焼有機物/無機化学肥料化合物は、厩肥/堆肥+NPK化学肥料ブレンドと同等に機能する
確認された事項:真
【表2】
【0098】
本発明の実施形態によるB4、B5、及びB6の組成物はそれぞれ、32.5%の焙焼有機基材及び67.5%の無機材料を有する。添え字4、5、及び6は、B配合物のそれぞれがわずかに異なる無機配合物を有することを示すために使用している。配合物の正確な栄養素%を図13の表に示す。
【0099】
性能を全体的に考慮する場合、NPKブレンド+堆肥/厩肥では、配合物を2つの別々の工程で作製しなければならず、これは上記の背景技術の項で記載したように、欠点であることに留意すべきである。したがって、本発明の実施形態による肥料B4、B5、及びB6は一工程で添加されているので、圃場試験レタス及び圃場試験ブロッコリーに見られる改善は、相当な改善である。
【0100】
仮説3:共造粒焙焼有機物/化学肥料化合物は、厩肥/堆肥+NPK化学肥料化合物と同等又はそれ以上に機能する
確認された事項:真
【表3】
【0101】
NOPKは、商標、ニトロホスカ(Nitrophoska)と呼ばれることがある。B7で改善された結果は、単独で又は堆肥/厩肥と組み合わせて使用されたニトロホスカ(Nitrophoska)と比較した場合、表に示される結果から明らかであろう。本発明の一実施形態による改善された肥料B7を使用した場合、レタスについての乾燥物収量%は26%から31%に増加した。本発明の一実施形態による改善された肥料B7を使用した場合、トウモロコシについての乾燥物収量%は107%から136%に増加した。
【0102】
仮説4:共造粒焙焼有機物/SOA化合物は、SOAと同等又はそれ以上に機能する
確認された事項見:真
【表4】
【0103】
単独で使用されたSOAと比較した場合、B2で改善された結果は、上記の表に示される結果から明らかであろう。本発明の一実施形態による改善された肥料B2を使用した場合、レタスについての乾燥物収量%は66%から138%に増加した。本発明の一実施形態による改善された肥料B2を使用した場合、トウモロコシについての乾燥物収量%は36%から66%に増加した。
【0104】
仮説5:共造粒焙焼有機物/MAP-S-Zn化合物は、Granulock Zと同等又はそれ以上に機能する
確認された事項:真
【表5】
【0105】
MAP-S-Znは、Incitec Pivot社の登録商標である商標、グラヌロックZ(Granulock Z)と呼ばれる。単独で使用したMAP-S-Znと比較した場合、B3で改善された結果は、上記の表に示される結果から明らかであろう。本発明の一実施形態による改善された肥料B3を使用した場合、レタスについての乾燥物収量%は100%から138%に増加した。本発明の一実施形態による改善された肥料B2を使用した場合、トウモロコシについての乾燥物収量%は32%から56%に増加した。
【0106】
仮説:共造粒焙焼有機物/尿素化合物によって、収量が有意に増加し、Si及びDMP抑制剤を添加するとさらに増加する
確認された事項:真
【表6】
【0107】
ケイ素、亜鉛、及びDMPが添加されたD5で改善された結果は、配合物D1と比較した場合に見ることができる。本発明の一実施形態によるD5を使用した場合、レタスについての乾燥物収量%は38%から77%に増加した。本発明の一実施形態による改善された肥料D5を使用した場合、トウモロコシについての乾燥物収量%は77%から86%に増加した。
【0108】
本明細書で行われるいかなる取り決めも、本発明のいくつかの実施形態に関連すると理解されるべきであり、本発明に関して行われる取り決めであることを意図するものではない。本発明のすべての実施形態に適用されるとみなされる取り決めがある場合、文脈上他に明確に示されない限り、特許の受理又はその後の付与のためにそれらの取り決めに依拠する意図はないので、それらの取り決めを後に記載から削除する権利が留保される。
【0109】
以下の特許請求の範囲及び本発明の前述の記載では、明示的な言語又は必要な含意により文脈上他を要求する場合を除いて、「含む」という単語は包括的な意味で使用され、すなわち、記載された特徴の存在を特定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在又は追加を排除するものではない。
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