(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】製造装置および製造装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B62D 65/18 20060101AFI20230117BHJP
B65G 35/00 20060101ALI20230117BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
B62D65/18 C
B65G35/00 B
B25J13/00 Z
(21)【出願番号】P 2022074944
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2020201695の分割
【原出願日】2020-12-04
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(72)【発明者】
【氏名】西原 重善
(72)【発明者】
【氏名】野阪 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】牧 岳二
(72)【発明者】
【氏名】金剛 光洙
(72)【発明者】
【氏名】土屋 貴志
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-183832(JP,A)
【文献】特開平1-266870(JP,A)
【文献】特開平3-70689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/00-67/00
B25J 1/00-21/02
B23P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入位置と搬出位置とが設けられた搬送路と、
前記搬入位置から前記搬出位置へ向けてワークを保持して自走するシャトルと、
前記シャトルに保持されているワークに対して作業する作業ロボットと、
前記シャトルが前記搬送路の所定の位置にある状態で前記作業ロボットに前記ワークに対して作業させる制御手段と、
を備える製造装置において、
前記搬送路とは別に設けられ、前記搬出位置から前記搬入位置へ前記シャトルを戻すための戻り経路と、
前記戻り経路から前記搬入位置へ前記シャトルを移動させるための第1トラバーサと、
前記搬出位置から前記戻り経路へ前記シャトルを移動させるための第2トラバーサと、
を備えることを特徴とする製造装置。
【請求項2】
前記搬送路は、直列に配置された複数の製造ステージを有することを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記搬送路は、複数の製造ラインを有することを特徴とする請求項1または2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記複数の製造ラインに前記シャトルを振り分けて搬入する分岐装置と、前記複数の製造ラインから搬出された前記シャトルが合流する合流装置と、をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の製造装置。
【請求項5】
前記作業ロボットは、
第1の高さに基台が固定された第1作業ロボットと、
前記第1の高さよりも高い第2の高さに基台が固定された第2作業ロボットと、
を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項6】
搬入位置と搬出位置とが設けられた搬送路と、前記搬入位置から前記搬出位置へ向けてワークを保持して自走するシャトルと、前記シャトルに保持されているワークに対して作業する作業ロボットと、前記搬送路とは別に設けられ、前記搬出位置から前記搬入位置へ前記シャトルを戻すための戻り経路と、前記戻り経路から前記搬入位置へ前記シャトルを移動させるための第1トラバーサと、前記搬出位置から前記戻り経路へ前記シャトルを移動させるための第2トラバーサと、を備える製造装置における制御方法であって、
前記シャトルが前記搬送路の所定の位置にある状態で前記作業ロボットに前記ワークに対して作業させる作業工程と、
前記作業工程の後に、前記第2トラバーサによって前記シャトルを前記搬出位置から前記戻り経路へ移動させる第1の移動工程と、
前記第1の移動工程の後に、前記第1トラバーサによって前記シャトルを前記戻り経路から前記搬入位置へ移動させる第2の移動工程と、
を備えることを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業ロボットを用いる製造装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の製造において、部品配置、穿孔加工、溶接、塗装、計測などを行う作業ロボットを用いる製造ラインでは、製造ラインに沿って各工程を行う作業ロボットを配置し、作業ロボットが配置された各ステージで、製造ラインを搬送されてくるワークを停止させて、作業ロボットにそれぞれの作業を行わせる。例えば、特許文献1の自動車車体の製造方法では、プレス加工工程と、該プレス加工工程にて生産された各種パネルを組み立てる組立工程と、を有する自動車車体の製造方法において、プレス加工工程では各種パネルに対しての種別の穿孔加工を行わず、各種パネルを組み立てた後に種別の穿孔加工を行う。
【0003】
特許文献1に記載されている製造ラインの例では、トランスファ装置を備え、リアフロア・アンド・メンバおよびエンジンコンパートメントをフロントフロアに組み付けるフロアメイン組立ラインに、パネルセットステージ、パネルマリッジステージ、2つの溶接ステージ、組立パネルチェックステージ、後続の加工ステージの各加工ステージが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の自動車車体の製造方法に見られるように、作業ロボットを用いる製造ラインでは、同種の加工にも複数の製造ステージが設けられることがある。1つの製造ステージに多くのロボットを配置すると、ロボット同士の干渉のため、作業の待ち時間が発生したり、1つのロボットの作業可能な範囲が限られたりして、作業の効率が低下する。そのため、製造ステージを分けた方が製造ライン全体としての効率が向上することがある。
【0006】
上述のとおり、作業ロボットを用いる製造ラインでは、作業ロボット同士の干渉を避ける必要と、作業ロボットの配置の制約から、同種の工程であっても複数の製造ステージを設ける必要があった。例えば、自動車の製造ラインにおいて、車体の上側に対して作業を行うロボットと、車体の下側に対して作業を行うロボットを1つの製造ステージに配置することは、困難であった。ロボットを用いる製造ラインでは1つの製造ステージに配置できる作業ロボットの制約から、多くの製造ステージが必要で、製造ラインが長くなる傾向にあった。
【0007】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、搬送路におけるワークの位置決めをシャトルで行う製造装置において、シャトルの効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る製造装置は、
搬入位置と搬出位置とが設けられた搬送路(例えば搬送路3)と、
前記搬入位置から前記搬出位置へ向けてワーク(例えばワーク9)を保持して自走するシャトル(例えばシャトル4)と、
前記シャトルに保持されているワークに対して作業する作業ロボット(例えば第1作業ロボット1A,1B,1C,1D、第2作業ロボット2E,2F,2G)と、
前記シャトルが前記搬送路の所定の位置にある状態で前記作業ロボットに前記ワークに対して作業させる制御手段(例えば制御装置51)と、
を備える製造装置において、
前記搬送路とは別に設けられ、前記搬出位置から前記搬入位置へ前記シャトルを戻すための戻り経路(例えば戻り経路60)と、
前記戻り経路から前記搬入位置へ前記シャトルを移動させるための第1トラバーサ(例えば第1トラバーサ63)と、
前記搬出位置から前記戻り経路へ前記シャトルを移動させるための第2トラバーサ(例えば第2トラバーサ64)と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送路の搬出位置から搬入位置にシャトルを戻す戻り経路を備え、搬送路と戻り経路との間でシャトルをトラバーサで移動させるので、シャトルの効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る製造ステージの平面図である。
【
図2】実施の形態に係る製造ステージを搬送方向にみた断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る製造ラインの平面図である。
【
図4A】実施の形態1に係る第1トラバーサの側面図である。
【
図4B】実施の形態1に係る第2トラバーサの側面図である。
【
図5】本発明の実施の形態2に係る製造ステージの側面図である。(a)はワークが製造ステージに搬入される状態、(b)はワークが第1の位置に停止している状態、(c)はワークが第2の位置に停止している状態、(d)はワークが搬出される状態をそれぞれ示す。
【
図6】実施の形態2に係る製造ラインの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。実施の形態の図面では、図の煩雑を避け理解を容易にするために、汎用の機械要素および締結部材を省略している。それらは周知の技術を用いて実施できる。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態に係る製造ステージの平面図である。以下の図では、ワークの搬送方向をX軸、水平面内で搬送方向に直交する方向をY軸、鉛直方向をZ軸とする。製造ステージ5は、搬送路3であるレール31、32、レール31,32の上を搬送方向に移動しうるシャトル4、第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dおよび第2作業ロボット2E,2F,2Gから構成されている。以下、第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dおよび第2作業ロボット2E,2F,2Gを総称して作業ロボットという。
図1には他に、作業員がワーク9に対して作業したり、第2作業ロボット2E,2F,2Gに対して保守したりするためのデッキ52が示されている。
【0013】
シャトル4はワーク9を保持して、製造ステージ5へのワーク9の搬入位置から製造ステージ5からのワーク9の搬出位置まで、搬送路3を搬送方向に移動可能である。シャトル4はまた、ワーク9を保持した状態で、製造ステージ5内の所定の位置で停止しうる。実施の形態では、ワーク9は
図1には示されていないキャリアに保持されている。シャトル4はワーク9をキャリアごと支持する。
【0014】
図1の製造ステージ5では、4台の第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dと、3台の第2作業ロボット2E,2F,2Gが配置されている。第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dおよび第2作業ロボット2E,2F,2Gの台数はそれぞれ、製造ステージ5によって異なり得る。第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dはそれぞれ、搬送路3から離隔した位置にその基台が固定されている。第2作業ロボット2E,2F,2Gは搬送路3および第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dから離隔した位置にその基台が固定されている。
【0015】
第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dおよび第2作業ロボット2E,2F,2Gはワーク9に対して、例えば、部品配置、穿孔加工、溶接、塗装、接着剤の塗布、計測などの作業を行う。作業ロボットが行う作業は、製造ステージ5ごとに異なっている。
【0016】
図1では、シャトル4が第1の位置で停止している状態が実線で示されている。
図1の一点鎖線で示されるワーク9は、第1の位置で停止している状態を示す。シャトル4は第1の位置より搬送方向下流側の二点鎖線で示される第2の位置に移動して停止しうる。
【0017】
製造ステージ5には、例えば、搬送路3に平行な図示されていないリニアスケールが備えられており、シャトル4の搬送方向の位置を計測する。または、発光素子と受光素子を含む光センサを搬送路に沿って並べて、シャトル4に備えられる遮蔽板で光りが遮られた光センサによってシャトル4の位置を検出してもよい。また、製造ステージ5に搬送方向の位置を計測するレーザ距離計を設置して、シャトル4の搬送方向の位置を計測することもできる。あるいは、搬送路3に直交する方向に撮像するカメラで、シャトル4に付けられたマークを撮像し、画像中のマークの位置でシャトル4の位置を計測することもできる。これらの位置計測手段は組み合わせて用いることができる。例えば、第1の位置をカメラの画像で計測し、レーザ距離計で第1の位置から第2の位置までの変位を計測してもよい。
【0018】
ワーク9が第1の位置に停止している状態で、第1作業ロボット1A,1Bおよび第2作業ロボット2E,2Fは、主にワークの中間部分に対して作業し、第1作業ロボット1C,1Dおよび第2作業ロボット2Gは、主にワークの搬送方向下流側の部分に対して作業する。シャトルが第2の位置に移動して停止すると、ワークも第2の位置に移動する。ワークが第2の位置に停止している状態で、第1作業ロボット1A,1Bおよび第2作業ロボット2E,2Fは、主にワークの搬送方向上流側の部分に対して作業し、第1作業ロボット1C,1Dおよび第2作業ロボット2Gは、主にワークの中間部分に対して作業する。これらの動作は、
図1に示されていない制御装置が、シャトル、第1作業ロボット1A,1B,1C,1D、および、第2作業ロボット2E,2F,2Gに指令して行われる。
【0019】
第1の位置と第2の位置はそれぞれ、ワーク9の種類によって異なっていてもよい。ワーク9の種類は、例えばワーク9に添付されたバーコード、二次元コードまたはICタグを読み取ることによって、識別される。製造ステージ5の制御装置は、読み取った識別コードからワークの種類を判定し、その種類に応じてシャトル4の停止位置と作業ロボットの作業を選択して実行させる。こうすることによって、異なる種類のワーク9を混在させて製造ステージ5に通すことができる。
【0020】
図2は、実施の形態に係る製造ステージを搬送方向にみた断面図である。
図2では、第1作業ロボット1Aと第1作業ロボット1C、第1作業ロボット1Bと第1作業ロボット1D、および、第2作業ロボット2Fと第2作業ロボット2Gは、それぞれ重なっているので、第1作業ロボット1C、1Dおよび第2作業ロボット2Gは表されていない。
図2では、一部のレール32が省略されている。
図2には、製造ステージ5のシャトル4と第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dおよび第2作業ロボット2E,2F,2Gを制御する制御装置51が示されている。制御装置51は製造ステージ5で分散配置されている。
【0021】
第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dの基台11は、床面に近い第1の高さに固定されている。第2作業ロボット2E,2F,2Gの基台21は、第1の高さより高い第2の高さに固定されている。第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dは、主にワーク9の下側に対して作業し、第2作業ロボット2E,2F,2Gは、主にワーク9の上側に対して作業する。
【0022】
実施の形態では、
図2に示されるように、第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dおよび第2作業ロボット2E,2F,2Gは、それぞれ垂直多関節型ロボットが想定されている。製造ステージ5に備えられる作業ロボットは、垂直多関節型ロボットには限らない。例えば、極座標型ロボット、直角座標型ロボット、水平多関節型ロボットまたはパラレルリンク型ロボットなどを用いることができる。作業ロボットは、製造ステージ5で1種類には限らず、異なる型の作業ロボットが混在していてもよい。
【0023】
第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dが固定される第1の高さが、すべての第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dで同じとは限らない。また、第2作業ロボット2E,2F,2Gが固定される第2の高さが、すべての第2作業ロボット2E,2F,2Gで同じとは限らない。例えば、直角座標型ロボットを製造ステージの天井に配置してもよい。第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dと第2作業ロボット2E,2F,2Gを上下に段差をつけて配置することによって、ワーク9の上側に対して作業を行うロボットと、ワークの下側に対して作業を行うロボットを1つの製造ステージ5に配置することができる。
【0024】
1つの製造ステージ5でワーク9を1カ所に停止させたまま作業する場合、作業ロボットの作業範囲を大きくするために、作業ロボットをワーク9の搬送方向に移動可能に設置することが行われている。ところが、第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dと第2作業ロボット2E,2F,2Gを上下に段差をつけて配置すると、第2作業ロボット2E,2F,2Gを移動するための台を第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dを避けて設置する必要があり、移動台を片持ち構造にせざるを得ない。移動台を片持ち構造にすると、第2作業ロボット2E,2F,2Gが振動するため加工精度が低下する。第2作業ロボット2E,2F,2Gの基台を固定したまま作業範囲を確保しようとすると、ロボット同士の干渉が発生する。ロボット同士の干渉を避けるためには待ち時間が発生し、タクトタイムが長くなる。
【0025】
そこで、
図1に示すように、シャトル4が搬送路上の第1の位置に停止した状態で作業ロボットにワーク9に対して作業させたのち、シャトル4を搬送路3上の第1の位置より搬送方向下流側の第2の位置に移動させ、シャトル4が第2の位置に停止した状態で作業ロボットにワーク9に対して作業させることによって、作業ロボットの基台を固定してもロボット同士の干渉を避けながら作業範囲を確保することができる。その結果、2つ以上に分けられていた製造ステージを1つにすることができる。
【0026】
製造ステージをまとめることができるのは、第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dと第2作業ロボット2E,2F,2Gを上下に段差をつけて配置する場合には限られない。製造ステージ5の作業ロボットが同じ高さに配置されていても、製造ステージ5内の第1の位置とそれより下流の第2の位置とでそれぞれ作業ロボットに作業させることによって、作業ロボットを固定したまま作業ロボット同士の干渉を避け、かつ、作業範囲を確保することができる。その結果、複数に分けられていた製造ステージを少ない数の製造ステージ5に組み替えることができるので、製造ステージ5の数を削減することができる。さらに、第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dと第2作業ロボット2E,2F,2Gを上下に段差をつけて配置する場合に、それぞれの基台11,21を固定してもロボット同士の干渉を避けながら作業範囲を確保することができるので、加工精度を低下させることなく、タクトタイムが長くなるのを回避できる。
【0027】
図1および
図2に示すような製造ステージ5を製造ラインに含むことによって、製造ライン全体の製造ステージ数を削減することができる。
図3は、実施の形態1に係る製造ラインの平面図である。実施の形態1では、シャトル4は搬送路を自走する電動搬送装置41である。
図3に示す製造ライン6は、製造ステージ5A、5Bを備える第1製造ライン61と、製造ステージ5C、5Dを備える第2製造ライン62で構成される。
図3では、作業ロボットおよびワーク9が省略されている。ワーク9はキャリア8にそれぞれ保持されている。
【0028】
図3の製造ステージ5A,5B,5C,5Dはいずれも
図1および
図2に示されるような製造ステージ5であるが、第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dおよび第2作業ロボット2E,2F,2Gの数と配置は異なる。また、いずれかの製造ステージ5A,5B,5Cまたは5Dは、シャトル4が第1の位置と第2の位置に停止する構成ではないこともあり得る。
【0029】
第1製造ライン61と第2製造ライン62の間に、搬送路3とは別にシャトル4が搬出側から搬入側に戻るための戻り経路60が設けられている。そして、製造ライン6の搬入側で、戻り経路60から製造ステージ5A,5Cの搬送路3に電動搬送装置41を移動させる第1トラバーサ63が設置されている。また、搬出側で、製造ステージ5B,5Dの搬送路3から戻り経路60に電動搬送装置41を移動させる第2トラバーサ64が設置されている。
【0030】
製造ステージ5A,5B,5C,5Dの搬送路3、戻り経路60、第1トラバーサ63および第2トラバーサ64には、それぞれのレールに平行に図示されていない給電線が設置されている。電動搬送装置41であるシャトル4は、給電線から電力を受けてレールの上を自走する。それぞれのシャトル4は、制御装置51から無線通信を経由して、停止位置と停止または走行の指令が指示される。
【0031】
それぞれワーク9を保持するキャリア8は、第1トラバーサ63の搬送方向上流側の搬入経路から、第1トラバーサ63に送られてくる。キャリア8は例えば、図示しない搬送路に沿って、フリクションローラコンベヤによって搬送される。
【0032】
第1トラバーサ63および第2トラバーサ64はそれぞれ、第1製造ライン61と第2製造ライン62との間でY軸方向に往復動する移送機65を備える。移送機65は2組のレール33を備え、一方のレール33が第1製造ライン61の搬送路3に対応する位置にあるとき、他方のレール33が戻り経路60の位置にあり、他方のレール33が第2製造ライン62の搬送路3に対応する位置にあるとき、一方のレール33が戻り経路60の位置にある。
図3では、第1トラバーサ63の移送機65のレール33は第1製造ライン61と戻り経路60の位置にあり、第2トラバーサ64の移送機65のレール33は戻り経路60と第2製造ライン62の位置にある。
【0033】
図4Aは、実施の形態1に係る第1トラバーサの側面図である。
図4Bは、実施の形態1に係る第2トラバーサの側面図である。
図4Aは、ワーク9を保持するキャリア8を支持する電動搬送装置41が、第1トラバーサ63の移送機65から搬入側の製造ステージ5A,5Cに移動する様子を示す。
図4Bは、ワーク9を保持するキャリア8を支持する電動搬送装置41が、搬出側の製造ステージ5B,5Dから第2トラバーサ64の移送機65に移動する様子を示す。
【0034】
ワーク9はキャリア8に保持されており、電動搬送装置41はワーク9をキャリア8ごと支持する。電動搬送装置41は、ワーク9を保持するキャリア8を支持した状態で、搬送路3を搬送方向に移動可能である。電動搬送装置41は、搬送路3の所定の位置に停止できる。
【0035】
第1トラバーサ63および第2トラバーサ64はそれぞれ、X軸方向の搬送路に直交するY軸の方向に伸びるレールまたは溝を有する基盤66を備えている。移送機65はレールまたは溝に嵌合して回転する車輪67を備え、Y軸方向に移動しうる。第1トラバーサ63および第2トラバーサ64はそれぞれ、移送機65をY軸方向に移動させる駆動機構を備えている。駆動機構は、例えば、ラックアンドピニオン、ねじ送り機構、チェーンとチェーンホイール、ベルトとプーリ、または、圧縮空気もしくは油圧で作動するシリンダ等である。
【0036】
製造ライン6の搬入側で、第1トラバーサ63の移送機65が移動して、移送機65のレール33が搬入側の製造ステージ5A、5Cの搬送路3の位置に一致すると、
図4Aに示すように、電動搬送装置41はレールの継ぎ目を乗り越えて、第1トラバーサ63から製造ステージ5A、5Cに移動できる。また、製造ライン6の搬出側では、第2トラバーサ64の移送機65が移動して、移送機65のレール33が搬出側の製造ステージ5B,5Dの搬送路3の位置に一致すると、
図4Bに示すように、電動搬送装置41はレールの継ぎ目を乗り越えて、製造ステージ5B,5Dから第2トラバーサ64に移動できる。
【0037】
図3に示す状態では、製造ステージ5A,5B,5C,5Dで電動搬送装置41がそれぞれ第1の位置にある。この後、電動搬送装置41がそれぞれ第2の位置に移動して作業が行われる。製造ステージ5B,5Dの作業が完了すると、電動搬送装置41は第2トラバーサ64の移送機65に移動する。移送機65が移動して、キャリア8を保持する電動搬送装置41が戻り経路60の位置に移動すると、電動搬送装置41はキャリア8を開放し、キャリア8は搬送路下流側の搬出経路に送られる。
【0038】
キャリア8を開放したのち、電動搬送装置41は、戻り経路60を第1トラバーサ63に向かって自走する。電動搬送装置41が第1トラバーサ63の移送機65に移動すると、搬入経路からワーク9を保持するキャリア8が新たに送り込まれ、電動搬送装置41は送り込まれたキャリア8を保持する。
【0039】
一方、製造ステージ5Aでは、電動搬送装置41に保持されているワーク9の作業が完了し、次の製造ステージ5Bの電動搬送装置41が第2トラバーサ64に移動すると、製造ステージ5Aにあった電動搬送装置41は、下流側の製造ステージ5Bに移動する。製造ステージ5Aの電動搬送装置41が製造ステージ5Bに移動して製造ステージ5Aが空くと、製造ステージ5Aの搬送路上流側で、キャリアを保持して待機している電動搬送装置41は、製造ステージ5Aに移動する。
【0040】
第1製造ライン61の側の電動搬送装置41が製造ステージ5Aに移動し、第2トラバーサ64から戻った電動搬送装置41が新たにキャリア8を保持すると、移送機65は第2製造ライン62の側に移動し、製造ステージ5Cの搬入側で、キャリアを保持する電動搬送装置41を待機させる。以上のようにして、搬入経路から送られるワーク9は第1製造ライン61と第2製造ライン62に振り分けられ、ワーク9への作業が行われる。
【0041】
図3の例では、製造ライン6は、第1製造ライン61と第2製造ライン62の2本であるが、製造ラインは1本であってもよいし、第1トラバーサ63および第2トラバーサ64を拡張して、3本以上の製造ラインを並行に配置することもできる。また、それぞれの製造ラインに含まれる製造ステージの数は2に限らず、
図1および
図2に示す製造ステージを含む2以上の製造ステージから構成することができる。
【0042】
以上説明したように、実施の形態1の製造ステージ5では、シャトル4が第1の位置に停止した状態で作業ロボットに作業させたのち、シャトル4を搬送方向下流の第2の位置に移動させ、シャトル4が第2の位置に停止した状態で作業ロボットに作業させるので、複数に分けられていた製造ステージを少ない数の製造ステージに組替えることができる。その結果、実施の形態1の製造ステージ5を含む製造ライン6全体で、製造ステージの数を削減できる。
【0043】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2に係る製造ステージの側面図である。(a)はワークが製造ステージに搬入される状態、(b)はワークが第1の位置に停止している状態、(c)はワークが第2の位置に停止している状態、(d)はワークが搬出される状態をそれぞれ示す。実施の形態2では、シャトル4は、製造ステージ5の搬送路3上を、ワーク9の搬入位置と搬出位置との間で往復移動するレシプロ装置42である。実施の形態2でも製造ライン6は、2つの製造ステージ5A、5Bを備える第1製造ライン61と、2つの製造ステージ5C,5Dを備える第2製造ライン62から構成される。
【0044】
レシプロ装置42は、搬送路3に移動可能に支持される移動機43と、移動機43を搬送方向に往復移動させる駆動機44とを備える。駆動機44が移動機43を移動させる機構は例えば、ラックアンドピニオン、ねじ送り機構、チェーンとチェーンホイール、ベルトとプーリ、または、圧縮空気もしくは油圧で作動するシリンダ等である。例えば、機構がラックアンドピニオンの場合、移動機43に電動機とピニオン、駆動機44にラックを配置し、繰り返し曲げ伸ばしできる給電線で移動機43に給電して電動機を作動させ、移動機43を移動させることができる。あるいは、移動機43にラックを配置し、駆動機44に複数のピニオンを配置することもできる。複数のピニオンを同期して回転させると、移動機43が移動するにつれてラックが次々にピニオンに噛み合い、ラックより長く移動機43を移動させることができる。
【0045】
実施の形態2でも、シャトル4は搬送路を自走する電動搬送装置41であってもよい。実施の形態2では、電動搬送装置41の戻り経路はなく、電動搬送装置41は、製造ステージ5の中で、ワーク9の搬入位置と搬出位置との間で往復移動する。
【0046】
図5(a)に示すように、ワーク9を保持するキャリア8が、例えば、フリクションローラコンベヤ等で製造ステージ5A,5Cの第1の位置まで送られると、
図5(b)に示すように、レシプロ装置42の移動機43はキャリア8をリフトアップして支持する。第1の位置で作業が完了すると、
図5(c)に示すように、レシプロ装置42は移動機43を第2の位置に移動させる。第2の位置で作業が完了すると、
図5(d)に示すように、移動機43はキャリア8をリフトダウンして開放し、キャリア8は搬送路3を次の製造ステージ5B,5Dまたは搬出経路に送られる。キャリア8を開放したレシプロ装置42は、移動機43を搬入側の位置に復帰させる。
【0047】
搬送路上流側の製造ステージ5A,5Cのレシプロ装置42から、搬送路下流側の製造ステージ5B,5Dのレシプロ装置42までの搬送路とキャリアを搬送するフリクションローラコンベヤなどの機構は、ワーク9を移載する移載装置53である。移載装置53は、フリクションローラコンベヤに限らず、例えば、上流側のレシプロ装置42からキャリア8をリフトアップして下流側のレシプロ装置42に搬送してリフトダウンする、搬送機でもよい。
【0048】
図6は、実施の形態2に係る製造ラインの平面図である。
図6の製造ラインも、
図3の製造ラインと同様に、製造ステージ5A、5Bを備える第1製造ライン61と、製造ステージ5C,5Dを備える第2製造ライン62から構成される。
図6では、作業ロボットおよびワーク9が省略されている。ワーク9はキャリア8にそれぞれ保持されている。
【0049】
図6の製造ステージ5A,5B,5C,5Dはいずれも
図1および
図2に示されるような製造ステージ5であるが、第1作業ロボット1A,1B,1C,1Dおよび第2作業ロボット2E,2F,2Gの数と配置は異なる。また、いずれかの製造ステージ5A,5B,5Cまたは5Dは、シャトル4が第1の位置と第2の位置に停止する構成ではないこともあり得る。製造ステージ5A,5B,5C,5Dのシャトル4はそれぞれ、
図5に示すように、往復移動するレシプロ装置42である。
【0050】
実施の形態2では、搬入経路から第1製造ライン61と第2製造ライン62にキャリア8を振り分ける分岐装置68と、第1製造ライン61と第2製造ライン62から搬出されたキャリア8を1つの搬出経路に合流させる合流装置69が設けられている。分岐装置68と合流装置69では、例えば、ポイントを切り替えるようにして、キャリア8を2つの搬送路3に分岐させ、また、2つの搬送路3のキャリア8を合流させる。キャリア8は、例えばフリクションローラコンベヤで、搬入側の搬送路3に沿って搬送され、分岐装置68で振り分けられて作業ステージ5Aまたは5Cに搬入される。また、作業ステージ5Bまたは5Dから搬出されたキャリア8は、例えばフリクションローラコンベヤで搬送され、合流装置69で合流される。
【0051】
製造ステージ5A,5B,5C,5Dではそれぞれ、
図5に示すように、搬入されたキャリア8は第1の位置の作業ののち第2の位置の作業が行われ、次の製造ステージまたは搬出経路に送られる。実施の形態2では、シャトル4がレシプロ装置42なので、製造ステージ5の間の移載装置53が必要であるが、シャトル4の戻り経路60は不要である。また、第1トラバーサ63および第2トラバーサ64の代わりに、簡易な構造の分岐装置68および合流装置69を用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1A,1B,1C,1D 第1作業ロボット
11 基台
2E,2F,2G 第2作業ロボット
21 基台
3 搬送路
31,32,33 レール
4 シャトル
41 電動搬送装置
42 レシプロ装置
43 移動機
44 駆動機
5,5A,5B,5C,5D 製造ステージ
51 制御装置
52 デッキ
53 移載装置
6 製造ライン
61 第1製造ライン
62 第2製造ライン
60 戻り経路
63 第1トラバーサ
64 第2トラバーサ
65 移送機
66 基盤
67 車輪
68 分岐装置
69 合流装置
8 キャリア
9 ワーク