(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-16
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】温度センサ、組付体、回転電機、および温度センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20230117BHJP
H02K 11/25 20160101ALI20230117BHJP
【FI】
G01K1/14 L
H02K11/25
(21)【出願番号】P 2022548407
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2022009093
【審査請求日】2022-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145242
【氏名又は名称】株式会社芝浦電子
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】吉原 孝正
(72)【発明者】
【氏名】桐原 雅典
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-33531(JP,A)
【文献】国際公開第2021/070898(WO,A1)
【文献】実開昭55-155936(JP,U)
【文献】特開平8-292106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/08-1/143
H02K 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形の横断面を呈する平角線からなり、それぞれの平面が対向する第1コイル要素および第2コイル要素を含む、車両に備わるコイルの温度を検知するための温度センサであって、
感熱体と、前記感熱体に電気的に接続されるとともに前記感熱体から第1方向に延びる一対の電線と、を含む感熱素子と、
一端が前記一対の電線に電気的に接続され、他端が相手コネクタの端子に電気的に接続される一対のリードフレームと、
前記感熱素子を保持する第1保持部と、
前記相手コネクタに嵌合する嵌合部とが一体化されるとともに、前記一対のリードフレーム
に沿って形成されるハウジングと、を備え、
前記一対のリードフレームはそれぞれ、前記電線との接続部分から前記第1方向に延びる第1部分と、前記第1部分から連なり、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる第2部分と、を含み
、
前記ハウジングは、前記第1保持部が前記第1方向に延びる直方体状に形成され、少なくとも一部が前記第1コイル要素と前記第2コイル要素との間に配設されるとともに、前記第1コイル要素に当接する第1壁と、前記第2コイル要素に当接する第2壁と、を備える、温度センサ。
【請求項2】
前記第1コイル要素と前記第2コイル要素とは、同一方向に延びる並行区間を有しており、前記第1保持部は、前記並行区間の間に配設されている、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記第1保持部と、前記一対のリードフレームを保持する第2保持部とを含んで構成され、前記第2保持部には、前記嵌合部が一体に備えられる、
請求項2に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記第1壁および前記第2壁の少なくとも一方には、前記第1方向に沿って延在し、前記コイルを前記第2方向に位置決めするガイドが突設されている、
請求項
1に記載の温度センサ。
【請求項5】
車両に備わるコイルの温度を検知するための温度センサであって、
感熱体と、前記感熱体に電気的に接続されるとともに前記感熱体から第1方向に延びる一対の電線と、を含む感熱素子と、
一端が前記一対の電線に電気的に接続され、他端が相手コネクタの端子に電気的に接続される一対のリードフレームと、
前記感熱素子を保持する第1保持部と、前記一対のリードフレームを保持する第2保持部と、を含むハウジングと、を備え、
前記一対のリードフレームはそれぞれ、前記電線との接続部分から前記第1方向に延びる第1部分と、前記第1部分から連なり、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる第2部分と、を含み、
前記第2保持部は、前記一対のリードフレームに沿って形成されるとともに、前記相手コネクタと嵌合する嵌合部を一体に備え、
前記コイルは、第1コイル要素と、前記第1コイル要素と同一方向に延びているとともに前記第1コイル要素に対向して位置する第2コイル要素と、を含み、
前記第1保持部は、前記第1コイル要素に当接する第1壁と、前記第2コイル要素に当接する第2壁と、を備え、前記コイルの前記第1コイル要素と前記第2コイル要素との間に配設され、
前記第1壁および前記第2壁の少なくとも一方における短手方向の両端には、前記第1方向に沿って延在する一対のガイドが突設されている、
温度センサ。
【請求項6】
前記一対のガイドは、前記第1壁および前記第2壁の両方にそれぞれ突設され、
前記第1コイル要素および前記第2コイル要素のいずれも、前記一対のガイドの間に配置される、
請求項5に記載の温度センサ。
【請求項7】
車両に備わるコイルの温度を検知するための温度センサであって、
感熱体と、前記感熱体に電気的に接続されるとともに前記感熱体から第1方向に延びる一対の電線と、を含む感熱素子と、
一端が前記一対の電線に電気的に接続され、他端が相手コネクタの端子に電気的に接続される一対のリードフレームと、
前記感熱素子を保持する第1保持部と、前記一対のリードフレームを保持する第2保持部と、を含むハウジングと、を備え、
前記第2保持部は、前記相手コネクタと嵌合する嵌合部を一体に備え、
前記第1保持部は、前記感熱素子を収容する成形体と、前記成形体の内側に充填されて固化した充填材と、を含み、
前記感熱素子には、前記感熱素子を覆った状態で前記成形体の内側に収容される被覆材が設けられ
、
前記コイルは、略矩形の横断面を呈する平角線状であって前記第1方向に延びている第1コイル要素と、前記第1コイル要素と同一方向に延びているとともに前記第1コイル要素に対向して位置する前記平角線状の第2コイル要素と、を含み、
前記第1保持部の前記成形体は、前記第1方向に延びる直方体状に形成され、前記第1コイル要素に当接する第1壁と、前記第2コイル要素に当接する第2壁と、を備える、
温度センサ。
【請求項8】
車両に備わるコイルの温度を検知するための温度センサを含む組付体であって、
前記温度センサは、感熱体と、前記感熱体に電気的に接続されるとともに前記感熱体から第1方向に延びる一対の電線と、を含む感熱素子と、
一端が前記一対の電線に電気的に接続され、他端が相手コネクタの端子に電気的に接続される一対のリードフレームと、
前記感熱素子を保持する第1保持部と、前記一対のリードフレームを保持する第2保持部と、を含むハウジングと、を備え、
前記一対のリードフレームはそれぞれ、前記電線との接続部分から前記第1方向に延びる第1部分と、前記第1部分から連なり、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる第2部分と、を含み、
前記ハウジングは、前記一対のリードフレームに沿って形成されるとともに、前記相手コネクタと嵌合する嵌合部を一体に備え、
前記コイルは、略矩形の横断面を呈する平角線状であって前記第1方向に延びている第1コイル要素と、前記第1コイル要素と同一方向に延びているとともに前記第1コイル要素に対向して位置する前記平角線状の第2コイル要素と、を含み、
前記第1保持部は、前記第1方向に延びる直方体状に形成され、前記第1コイル要素に当接する第1壁と、前記第2コイル要素に当接する第2壁と、を備え、
前記組付体は、
前記温度センサと、
前記コイルに配置された前記温度センサを、前記コイルに固定する又は前記車両に備わる部材に固定する固定部と、を備える、組付体。
【請求項9】
前記第1保持部は
、樹脂成形体により前記第1コイル要素および前記第2コイル要素に固定されている、
請求項8に記載の組付体。
【請求項10】
車両に備わる回転電機であって、
コイルと、
前記コイルの温度を検知するための温度センサと、
前記コイルに配置された前記温度センサを、前記コイルに固定する又は前記車両に備わる部材に固定する固定部と、を備え、
前記温度センサは、
感熱体と、前記感熱体に電気的に接続されるとともに前記感熱体から第1方向に延びる一対の電線と、を含む感熱素子と、
一端が前記一対の電線に電気的に接続され、他端が相手コネクタの端子に電気的に接続される一対のリードフレームと、
前記感熱素子を保持する第1保持部と、前記一対のリードフレームを保持する第2保持部と、を含むハウジングと、を備え、
前記一対のリードフレームはそれぞれ、前記電線との接続部分から前記第1方向に延びる第1部分と、前記第1部分から連なり、前記第1方向とは異なる第2方向に延びる第2部分と、を含み、
前記ハウジングは、前記一対のリードフレームに沿って形成されるとともに、前記相手コネクタと嵌合する嵌合部を一体に備え
、
前記コイルは、略矩形の横断面を呈する平角線状であって前記第1方向に延びている第1コイル要素と、前記第1コイル要素と同一方向に延びているとともに前記第1コイル要素に対向して位置する前記平角線状の第2コイル要素と、を含み、
前記第1保持部は、前記第1方向に延びる直方体状に形成され、前記第1コイル要素に当接する第1壁と、前記第2コイル要素に当接する第2壁と、を備える、
回転電機。
【請求項11】
車両に備わるコイルの温度を検知するための温度センサを製造する方法であって、
前記温度センサは、感熱体と、前記感熱体に電気的に接続されるとともに前記感熱体から第1方向に延びて一対のリードフレームに電気的に接続される一対の電線と、を含む感熱素子と、一端が前記一対の電線に電気的に接続され、他端が相手コネクタの端子に電気的に接続される一対のリードフレームと、前記感熱素子を保持する第1保持部と、前記一対のリードフレームを保持し、前記相手コネクタと嵌合する嵌合部を一体に備える第2保持部と、を含むハウジングと、を備え、
前記コイルは、略矩形の横断面を呈する平角線状であって前記第1方向に延びている第1コイル要素と、前記第1コイル要素と同一方向に延びているとともに前記第1コイル要素に対向して位置する前記平角線状の第2コイル要素と、を含み、
前記第1保持部は、前記第1コイル要素に当接する第1壁と、前記第2コイル要素に当接する第2壁と、を備え、
前記製造する方法は、
前記一対の電線に前記一対のリードフレームを接合して電気的に接続する電線接合ステップと、
前記第1方向に延びる直方体状に形成され、前記第1保持部の外殻をなす成形体の内側に
前記感熱素子を収容する成形体収容ステップと、
前記成形体の内側に充填材を充填することで、前記第1保持部により前記感熱素子を保持する第1保持ステップと、
前記リードフレームを金型に配置して射出成形により前記第2保持部を成形することで、前記第2保持部により前記リードフレームを保持する第2保持ステップと、を備える、温度センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備わるコイルの温度を検知するための温度センサ、組付体、回転電機、および温度センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車に搭載される回転電機のコイルの過大な温度上昇を避けるため、コイルに取り付けられた温度センサを用いてコイルの温度が検知される。
特許文献1の温度センサは、いずれもステータコイルの一部である第1コイル要素と第2コイル要素とが並行している区間に取り付けられており、第1コイル要素に接触する第1センサと、第2コイル要素に接触する第2センサと、第1センサおよび第2センサを収容保持するハウジングとを備えている。
第1センサは、サーミスタ等の感熱素子と、感熱素子から引き出された電線と、コイルに面接触する被覆体とを含んでいる。第2センサも同様である。第1センサの電線および第2センサの電線はそれぞれ、コネクタを介して回路基板等に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる回転電機は、温度センサがステータコイルに取り付けられた後、車両等に組み込まれる。その際に、周囲の部材との干渉を避けるため、回転電機は、その姿勢を適切に変化させながら、車両における所定の位置に所定の向きから収められる。このときに、温度センサに接続された電線が無軌道に延びていると作業を行いづらいので、電線を束ねて、作業の妨げになりにくい場所に退避させておく。そして、回転電機を車両の所定位置に収めた後、電線の束を解いて配線する。回転電機の組み込み工程においては、温度センサの電線に関する作業の繁雑さを無視することができない。
【0005】
以上より、本発明は、車両に備わるコイルの温度を検知する温度センサであって、当該温度センサを備えた装置の車両への組み込みに係る作業性の向上に寄与することができる温度センサ、組付体、回転電機、および温度センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両に備わるコイルの温度を検知するための温度センサであって、感熱体と、感熱体に電気的に接続されるとともに感熱体から第1方向に延びる一対の電線と、を含む感熱素子と、一端が一対の電線に電気的に接続され、他端が相手コネクタの端子に電気的に接続される一対のリードフレームと、感熱素子を保持する第1保持部と、一対のリードフレームを保持する第2保持部と、を含むハウジングと、を備える。
一対のリードフレームはそれぞれ、電線との接続部分から第1方向に延びる第1部分と、第1部分から連なり、第1方向とは異なる第2方向に延びる第2部分と、を含む。
第2保持部は、一対のリードフレームに沿って形成されるとともに、相手コネクタと嵌合する嵌合部を一体に備える。
【0007】
本発明の温度センサにおいて、コイルは、第1コイル要素と、第1コイル要素と同一方向に延びているとともに第1コイル要素に対向して位置する第2コイル要素と、を含み、第1保持部は、第1コイル要素に当接する第1壁と、第2コイル要素に当接する第2壁と、を備えることが好ましい。
【0008】
本発明の温度センサにおいて、第1保持部は、第1方向に延びる直方体状に形成され、コイルの第1コイル要素と第2コイル要素との間に配設されていることが好ましい。
【0009】
本発明の温度センサにおいて、第1壁および第2壁の少なくとも一方における短手方向の両端には、第1方向に沿って延在する一対のコイル用ガイドが突設されていることが好ましい。
【0010】
本発明の温度センサにおいて、一対のガイドは、第1壁および第2壁の両方にそれぞれ突設され、第1コイル要素および第2コイル要素のいずれも、一対のガイドの間に配置されることが好ましい。
【0011】
本発明の温度センサにおいて、第1保持部は、感熱素子を収容する成形体と、成形体の内側に充填されて固化した充填材と、を含み、感熱素子には、感熱素子を覆った状態で成形体の内側に収容される被覆材が設けられることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、車両に備わるコイルの温度を検知するための温度センサを含む組付体であって、温度センサは、感熱体と、感熱体に電気的に接続されるとともに感熱体から第1方向に延びる一対の電線と、を含む感熱素子と、一端が一対の電線に電気的に接続され、他端が相手コネクタの端子に電気的に接続される一対のリードフレームと、感熱素子を保持する第1保持部と、一対のリードフレームを保持する第2保持部と、を含むハウジングと、を備える。
一対のリードフレームはそれぞれ、電線との接続部分から第1方向に延びる第1部分と、第1部分から連なり、第1方向とは異なる第2方向に延びる第2部分と、を含む。
ハウジングは、一対のリードフレームに沿って形成されるとともに、相手コネクタと嵌合する嵌合部を一体に備える。
組付体は、温度センサと、コイルに配置された温度センサを、コイルに固定する又は車両に備わる部材に固定する固定部と、を備える。
【0013】
本発明の組付体において、コイルは、第1コイル要素と、第1コイル要素と同一方向に延びているとともに第1コイル要素に対向して位置する第2コイル要素と、を含み、第1保持部は、第1コイル要素に当接する第1壁と、第2コイル要素に当接する第2壁と、を備え、樹脂成形体により第1コイル要素および第2コイル要素に固定されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、車両に備わる回転電機であって、コイルと、コイルの温度を検知するための温度センサと、コイルに配置された温度センサを、コイルに固定する又は車両に備わる部材に固定する固定部と、を備える。
温度センサは、感熱体と、感熱体に電気的に接続されるとともに感熱体から第1方向に延びる一対の電線と、を含む感熱素子と、一端が一対の電線に電気的に接続され、他端が相手コネクタの端子に電気的に接続される一対のリードフレームと、感熱素子を保持する第1保持部と、一対のリードフレームを保持する第2保持部と、を含むハウジングと、を備える。
一対のリードフレームはそれぞれ、電線との接続部分から第1方向に延びる第1部分と、第1部分から連なり、第1方向とは異なる第2方向に延びる第2部分と、を含む。
ハウジングは、一対のリードフレームに沿って形成されるとともに、相手コネクタと嵌合する嵌合部を一体に備える。
【0015】
また、本発明は、車両に備わるコイルの温度を検知するための温度センサを製造する方法であって、温度センサは、感熱体と、感熱体に電気的に接続されるとともに感熱体から第1方向に延びて一対のリードフレームに電気的に接続される一対の電線と、を含む感熱素子と、一端が一対の電線に電気的に接続され、他端が相手コネクタの端子に電気的に接続される一対のリードフレームと、感熱素子を保持する第1保持部と、一対のリードフレームを保持し、相手コネクタと嵌合する嵌合部を一体に備える第2保持部と、を含むハウジングと、を備える。
製造する方法は、一対の電線に一対のリードフレームを接合して電気的に接続する電線接合ステップと、感熱素子を第1保持部の外殻をなす成形体の内側に収容する成形体収容ステップと、成形体の内側に充填材を充填することで、第1保持部により感熱素子を保持する第1保持ステップと、リードフレームを金型に配置して射出成形により第2保持部を成形することで、第2保持部によりリードフレームを保持する第2保持ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の温度センサ、および本発明の製造方法により得られる温度センサは、相手コネクタと嵌合する嵌合部をハウジングに一体に備え、かつ、感熱素子に接続されるとともに嵌合部まで延びて端子として機能するリードフレームを備えている。そのため、本発明の温度センサからは電線が延びていないので、電線に妨げられることなく、温度センサを備えた装置を車両における所定の位置に容易に組み込むことができる。本発明によれば、温度センサを備えた装置を車両に組み込む前に電線を束ねておく、さらに組み込み後に電線の束を解くといった作業の繁雑さが解消されるので、組み込みに係る作業性を大幅に向上させることができる。加えて、リードフレームが、電線と同じく第1方向に延びる第1部分と、異なる第2方向に延びる第2部分とを備えており、ハウジングの第2保持部が、一対のリードフレームに沿って形成されていることにより、配置の設計自由度を向上させることができる。車両に搭載される機器のコイルの周りは、狭隘であり、組付け作業のためのスペースが限られる。そうした作業条件にあっても、本発明によりリードフレームおよびハウジングには、周りの部材と干渉しないで確実に組付けを行える形状および方向を与えることができるので、組付け作業性を向上させることができる。
また、本発明の製造方法、つまり、第1保持部の外殻をなす成形体の内側に感熱素子を収容するステップ、成形体の内側に充填材を充填するステップ、および、リードフレームを金型に配置して射出成形により第2保持部を成形するステップを含む製法によれば、製造中に成形体および充填材により感熱素子を保護しつつ、相手コネクタとの嵌合時に荷重が掛かるリードフレームを強固にハウジングに保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る温度センサ組付体を示す斜視図である。
【
図2】(a)は、温度センサおよびコイルを示す斜視図である。(b)は、(a)のIIb矢印の向きから示す側面図である。
【
図3】(a)は、温度センサを示す斜視図である。(b)は、温度センサの平面図である。
【
図4】(a)は、
図3(a)のIVa矢印の向きから示す嵌合部の正面図である。(b)は、(a)のIVb-IVb線断面図である。
【
図5】(a)は、
図3(b)のVa-Va線断面図である。(b)は、
図3(b)のVb-Vb線断面図である。
【
図6】(a)~(e)は、第1製造方法による温度センサの製造手順を説明するための図である。
【
図7】(a)~(e)は、第2製造方法による温度センサの製造手順を説明するための図である。
【
図8】(a)は、本発明の変形例に係る温度センサを示す斜視図である。(b)は、(a)のVIIIb矢視側面図である。
【
図9】
図8(a)に示す温度センサの平面図である。
【
図10】(a)~(c)は、一の製造方法による温度センサの製造手順を説明するための図である。
【
図11】(a)および(b)は、
図10に続き、温度センサの製造手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態]
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1、
図2(a)および(b)に示す温度センサ10は、例えば電気自動車等の車両に搭載された回転電機のステータコイルの一部であるコイル要素21,22に取り付けられる。温度センサ10により検知されるコイル要素21,22の温度に基づいて回転電機の動作が制御されることで、ステータコイルの過大な温度上昇を避けることができる。
【0019】
温度センサ10は、コイル要素21,22に取り付けられると組付体1をなす。組付体1は、温度センサ10と、第1コイル要素21および第2コイル要素22と、これら第1コイル要素21および第2コイル要素22と温度センサ10とを固定する固定部としての樹脂成形体3とを備えている。
【0020】
第1コイル要素21および第2コイル要素22はそれぞれ、ステータコイルの温度を検知するために、図示しないステータコイルの本体から引き出されている。第1コイル要素21および第2コイル要素22は、少なくとも図示された範囲に亘り互いに並行して一方向に延びている並行区間21A,22Aを備えている。
以下、第1コイル要素21と第2コイル要素22とを区別する必要がない場合は、単に、コイル要素21,22と称する。
【0021】
これらコイル要素21,22は、略矩形の横断面を呈するいわゆる平角線に相当する。コイル要素21,22は、それぞれの平面が対向した状態で並行している。なお、コイル要素21,22の表面は絶縁被膜により覆われていてもよい。
【0022】
本明細書において、並行区間21A,22Aに亘りコイル要素21,22が延びている方向をx方向(第1方向)と称する。x方向に対し、温度センサ10の平面視において直交する方向をy方向(第2方向)と称する。x方向およびy方向の両方に対して直交する方向をz方向と称する。本実施形態のコイル要素21,22はz方向に並んでいる。
【0023】
〔温度センサの構成〕
本実施形態の温度センサ10の構成を、
図2から
図4を参照して説明する。温度センサ10は、
図2(a)および(b)に示すように、コイル要素21,22の間に配置されるセンサ本体11と、センサ本体11に一体化した嵌合部15とを備えている。嵌合部15は、
図1に模式的に示す相手コネクタ9と嵌合する。つまり、嵌合部15を備えた温度センサ10は、相手コネクタ9に対応するコネクタを兼ねている。
【0024】
センサ本体11の少なくとも一部は、コイル要素21,22の並行区間21A,22Aに沿って、並行区間21A,22Aの間に配置される。
【0025】
嵌合部15は、温度センサ10を例えば車両用の図示しない制御装置の制御回路に電気的に接続するためのコネクタを構成する。この嵌合部15は、例えば、コイル要素21,22の並行区間21A,22Aの延伸方向(x方向)に対して直交する方向(y方向)に延出して形成される。
【0026】
嵌合部15には、図示しないケーブルに設けられた相手コネクタ9が嵌合される。嵌合部15と相手コネクタ9とが嵌合することにより、温度センサ10と、図示しない車両に設けられた制御装置の回路基板とが電気的に接続される。嵌合部15と相手コネクタ9とは、コイル要素21,22との干渉を避けることが可能な任意の位置で接続することができる。本実施形態の嵌合部15は、y方向に向けて配置されているが、この嵌合部15の向きは、嵌合部15と相手コネクタ9とを嵌合させる作業の容易性の観点から、本件発明の組付体1が設けられる測温対象物(コイル21,22)の構造に応じて任意に設定される。
温度センサ10から出力された電気信号は、ケーブルを介して制御回路に入力される。この電気信号に基づいて、制御装置は、演算処理によりコイル要素21,22の温度を測定する。
なお、温度センサ10および相手コネクタ9には、回転電機の動作中におけるステータコイルの温度上昇に適応可能な耐熱性や、剛性等の必要な特性を備える材料が用いられる。
【0027】
センサ本体11は、
図3(a)及び(b)に示すように、感熱素子12と、感熱素子12に電気的に接続される第1リードフレーム131および第2リードフレーム132と、感熱素子12、第1リードフレーム131、および第2リードフレーム132を保持するハウジング14とを備えている。上述の嵌合部15は、ハウジング14に一体に形成されている。
【0028】
感熱素子12は、感熱体121と、一対のクラッド線122と、クラッド線122の一部および感熱体121を被覆して封止する電気絶縁性の封止材123とを備えたサーミスタ素子である。
感熱体121としては、温度変化に対して抵抗値が変化するサーミスタ、白金温度センサ等の温度係数を持つ抵抗体を使用することができる。クラッド線としては、例えば、デュメット線(dumet wire)が用いられる。一対のクラッド線122は、一端がそれぞれ感熱体121に接続され、同じ向きに延伸している。
【0029】
図3(b)に示すように、一対のクラッド線122は、互いがy方向に所定の間隔を開けて、封止材123から後述する第1ハウジング141の後側xbに引き出されている。一方のクラッド線122は、第1リードフレーム131に接続され、他方のクラッド線122は、第2リードフレーム132に接続される。
【0030】
リードフレーム131,132はそれぞれ、金属材料からなる板材を用いた打ち抜き加工により所定の形状に成形される単一の板状の部材である。リードフレーム131,132はいずれも、xy面に沿って平坦な板状に形成されている。
第1リードフレーム131および第2リードフレーム132は、感熱素子12から出力される電気信号を伝送する経路に相当するとともに、相手コネクタ9に備わる相手端子に対して挿抜される端子に相当する。ハウジング14は、当該端子を保持するコネクタハウジングを兼ねている。
以下、第1リードフレーム131および第2リードフレーム132を区別する必要がない場合は、単に、リードフレーム131,132と称する。
【0031】
リードフレーム131,132は、いずれも平面視でL字形状に形成されている。第1リードフレーム131と第2リードフレームは略同一の形状を有しているので、以下、第1リードフレーム131についてのみ説明し、第2リードフレーム132については説明を省略する。
第1リードフレーム131は、第1部分としての第1接続部131Aと、第2部分としての第2接続部131Bと、中間部131Cとを備えている。第1接続部131Aと中間部131Cと第2接続部131Bとは、この順で連続的に形成されている。
第1接続部131Aは、第1リードフレーム131のx方向に延伸形成された直線状の部分に相当し、前側xfの端部がクラッド線122に接続され、後側xbが中間部131Cに連続している。
中間部131Cは、第1接続部131Aと後述の第2接続部131Bとの間に形成された直線状の部分に相当する。この中間部131Cは、第1接続部131Aの延伸方向であるx方向から、当該方向とは直交する方向、すなわちy方向に向けて屈曲している。この中間部131Cが第1接続部131Aと第2接続部131Bとの間に介在していることにより、第1リードフレーム131は、平面視してL字状に形成される。
第2接続部131Bは、中間部131Cに連続し、y方向に直線状に延伸形成されている。この第2接続部131Bは、嵌合部15の内側に突出するように配置されている。そして、嵌合部15に相手コネクタ9の図示しないハウジング(相手ハウジング)の一部が挿入されて、相手コネクタ9と嵌合部15とが嵌合されると、この第2接続部131Bと、相手ハウジングに保持されている相手端子とが接触することで、リードフレーム131と相手端子とが電気的に接続されるようになっている。
同様に、第2リードフレーム132も、第1部分としての第1接続部132Aと、第2部分としての第2接続部132Bと、中間部132Cとを備えている。リードフレーム131,132の第1接続部131A,132Aは、x方向における同じ位置に配置され、リードフレーム131,132の第2接続部131B,132Bは、y方向における同じ位置に配置されている。
リードフレーム131,132は、z方向の同じ位置に、つまり同一のxy面上に配置されている。いずれも屈曲しているリードフレーム131,132にあって、第1リードフレーム131は第2リードフレーム132の屈曲の外周側に配置されている。
【0032】
第1接続部131A,132A間には、一対のクラッド線122との接合に適した所定の間隙が設定されている。第2接続部131B,132B間には、一対の相手端子の位置に対応する所定の間隙が設定されている。
第1接続部131A,132Aには、ハウジング14の内側に挿入可能な幅(y方向の寸法)が与えられ、第2接続部131B,132Bには、相手端子に挿入可能な幅(x方向の寸法)が与えられている。第1接続部131A,132Aおよび第2接続部131B,132Bの幅に対し、中間部131C,132Cの幅が広く設定されていることで、リードフレーム131,132の剛性が十分に確保されている。
【0033】
ハウジング14について、
図3(a)及び(b)を参照して説明する。ハウジング14は、絶縁性を有する樹脂材料からなり、平面視においてL字形状に形成されている。このハウジング14は、感熱素子12を保持する第1保持部としての第1ハウジング141と、一対のリードフレーム131,132を保持する第2保持部としての第2ハウジング142とから構成されている。
【0034】
第1ハウジング141は、x方向(第1方向)に延びる直方体状の中空の部材であって第1ハウジング141の外殻をなしている成形体141Mと、この成形体141Mの内側に充填される充填材16とからなる。この成形体141Mの内部には、感熱素子12および第1接続部131A,132Aが保持される。
【0035】
本実施形態の成形体141Mは、絶縁性の樹脂材料を用いる射出成形により形成されている。成形体141Mは、x方向の前側xfに位置する前壁141Aと、y方向に互いに対向する一対の側壁141B,141Cと、第1壁としての上壁141Dと、上壁141Dに対してz方向に対向する第2壁としての下壁141Eとを含んでいる。
成形体141Mのx方向における後側xbには、矩形状の開口部141Fが形成されている。
【0036】
成形体141Mの樹脂材料としては、例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルホン(PSF/PSU)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアセタール(POM)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等の熱可塑性樹脂、あるいは、フェノール樹脂(PF)、不飽和ポリエステル(UP)、エポキシ樹脂(EP)、シリコーン樹脂(SI)、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂を用いることができる。なお、第2ハウジング142にも、上記と同様の樹脂材料を用いることができる。
【0037】
上壁141Dは第1コイル要素21に当接し、下壁141Eは第2コイル要素22に当接する。
上壁141Dには、y方向に対向する一対のガイド壁141G(第1ガイド)が形成されている。この一対のガイド壁141Gは、それぞれがx方向に沿って延伸形成されている。一対のガイド壁141Gは、上壁141Dのy方向における両端から上方へ突出しており、第1コイル要素21が間に配置されることで第1コイル要素21をy方向に位置決めする。
同様に、下壁141Eには、y方向に対向する一対のガイド壁141H(第2ガイド)が形成されている。この一対のガイド壁141Hも、それぞれがx方向に沿って延伸形成されている。一対のガイド壁141Hは、下壁141Eのy方向における両端から下方へ突出しており、第2コイル要素22が間に配置されることで第2コイル要素22をy方向に位置決めする。
【0038】
成形体141Mの内側には、開口部141Fから感熱素子12が収容されるとともに、
図4(b)に示すように、絶縁性の充填材16が充填されている。成形体141Mに充填された充填材16が固化することにより、成形体141Mの内側で感熱素子12が所定位置に固定される。車両の走行により温度センサ10に振動や衝撃が加えられても、感熱素子12の位置は充填材16により維持される。
【0039】
充填材16としては、ステータコイルの温度上昇時に必要な耐熱温度、および感熱素子12の固定に足りる接着性を有した樹脂材料を適宜に選定して用いることができる。コイル要素21,22の温度変化に対する温度センサ10による検知温度の追従性を高める観点からは、充填材16の熱伝導率が高いことが好ましい。
充填材16に使用可能な樹脂材料としては、例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF/PSU)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の熱可塑性樹脂、あるいは、フェノール樹脂(PF)、不飽和ポリエステル(UP)、エポキシ樹脂(EP)、ポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0040】
充填材16は、金型に、成形体141M、感熱素子12およびリードフレーム131,132を配置して行われる射出成形により、成形体141Mの内側に充填される。充填材16の樹脂材料は、射出成形機により例えば
図4(b)に示す矢印の向きに、成形体141Mの内側の空隙の全体に亘り注入される。
【0041】
第2ハウジング142は、第1リードフレーム131および第2リードフレーム132に沿って形成されている。この第2ハウジング142は、第1リードフレーム131及び第2リードフレーム132の第1接続部131Aの所定範囲と、中間部131C,132Cと、第2接続部131B,132Bの所定範囲とを保持する。第2ハウジング142は、金型にリードフレーム131,132が配置された状態で絶縁性の樹脂材料を用いた射出成形により、嵌合部15を除いて中実に成形されている。
【0042】
第2接続部131B,132Bは、中実部分142Aに用いられる樹脂材料により、相手端子に対して挿抜される力に抗して十分に保持される。
中実部分142Aは、リードフレーム131,132の形状に倣い屈曲しており、コイル要素21,22の間に配置される部分と、コイル要素21,22の間から側方に突出する部分とから平面視においてL字状に形成されている。コイル要素21,22の間に配置される部分には、コイル要素21,22に嵌合部15が安定して支持されるために必要なx方向の長さが与えられている。
中実部分142Aのx方向に延びる部分と、第1ハウジング141と、コイル要素21,22の並行区間21A,22Aの所定範囲とが、樹脂成形体3(
図1)により覆われている。
【0043】
嵌合部15は、中実部分142Aと一体に形成される。この嵌合部15は、略角筒状に形成され、その幅および高さ(x方向、z方向の寸法)は、中実部分142Aと比べて拡大されている。嵌合部15の高さが拡大されているが、コイル要素21,22が延びているx方向とは異なるy方向に向けて配置されていることにより、嵌合部15がコイル要素21,22とは干渉しないようになっている。
嵌合部15は、上壁151と、x方向に対向する一対の側壁152,153と、下壁154とを備えている。嵌合部15が相手コネクタ9のハウジングと嵌合すると、相手端子と、中実部分142Aから嵌合部15の内部空間に突出している第2接続部131B,132Bとが電気的に接続される。
【0044】
上壁151には、相手ハウジングに形成された図示しない係止突起が係止される係止部151Aが形成されている。嵌合部15の開口から見て係止部151Aの後側ybには、相手ハウジングの係止突起が配置される開口151Bが形成されている。
下壁154には、相手コネクタ9のハウジングをガイドする突条154Aが形成されている。突条154Aは、下壁154から嵌合部15の内側に突出し、y方向に延びている。
【0045】
被覆材17は、感熱素子12の全体、および感熱素子12とリードフレーム131,132との接合箇所124とを覆っている。この被覆材17による感熱素子12等の被覆は、成形体141Mに充填材16が充填される前に行われていることが好ましい。被覆材17により予め被覆されていれば、単体の状態では柔軟な構造である感熱素子12が、充填材16の射出成形時における位置および形状の保持に足りる剛性を備えることができるからである。
【0046】
被覆材17としては、充填材16と同様に、ステータコイルの温度上昇時に必要な耐熱温度、および感熱素子12の固定に足りる接着性を有した樹脂材料を用いることができる。充填材16の射出成形前に、例えば、被覆材17として用いられる溶融した樹脂材料を感熱素子12に浸漬し、当該樹脂材料を固化させておくとよい。
被覆材17に用いられる樹脂材料と、充填材16に用いられる樹脂材料とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
〔温度センサの第1製造方法〕
図6(a)~(e)を参照し、本実施形態の温度センサ10を製造する手順の一例を説明する。
リードフレーム作製ステップS01:
金属材料からなる板材から打ち抜きによりリードフレーム131,132を成形する(
図6(a))。
電線接合ステップS02:
リードフレーム131,132の第1接続部131A,132Aに感熱素子12の一対のクラッド線122を接合する(
図6(b))。
【0048】
被覆ステップS03:
感熱素子12の前端12Aから接合箇所124までを含む範囲に被覆材17の樹脂材料を浸漬し、固化させる(
図6(c))。
成形体収容ステップS04:
被覆材17により覆われた状態の感熱素子12を第1ハウジング141の成形体141Mの内側に収容する(
図6(c))。このとき、被覆材17が設けられていることで感熱素子12の形状、姿勢が安定しているので、成形体141Mに感熱素子12を干渉させることなく収容することができる。
【0049】
第1保持ステップS05:
成形体141Mを金型に配置し、射出成形により成形体141Mの内側に充填材16を充填することで、第1ハウジング141に感熱素子12を保持する(
図6(d))。充填材16の充填に先立ち、感熱素子12に被覆材17が設けられているため、成形体141Mに注入される樹脂材料の圧力により、感熱素子12が所定の位置からずれたり一対のクラッド線122が変形して短絡したりすることを防ぐことができる。
【0050】
第2保持ステップS06:
リードフレーム131,132が開口部141Fから突出した状態の第1ハウジング141を金型に配置し、射出成形により第2ハウジング142および嵌合部15を一体成形する(
図6(e))。そうすると、第2ハウジング142にリードフレーム131,132が保持されるとともに、第1ハウジング141と第2ハウジング142とが一体化される。
本実施形態の温度センサ10は、以上のステップS01~S06を経て製造することができる。
【0051】
〔温度センサの第2製造方法〕
本実施形態の温度センサ10は、例えば、
図7(a)~(e)に示す手順によっても製造することができる。
リードフレーム作製ステップS11:
金属材料からなる板材から打ち抜きによりリードフレーム131,132を成形する(
図7(a))。
第2保持ステップS12:
リードフレーム131,132を金型に配置し、射出成形により第2ハウジング142および嵌合部15を一体成形する(
図7(b))。そうすると、第2ハウジング142にリードフレーム131,132が保持される。
【0052】
電線接合ステップS13:
第2ハウジング142から突出しているリードフレーム131,132の第1接続部131A,132Aに感熱素子12の一対のクラッド線122を接合する(
図7(c))。
被覆ステップS14:
感熱素子12の前端12Aから接合箇所124までを含む範囲に被覆材17の樹脂材料を浸漬し、固化させる(
図7(d))。
【0053】
成形体収容ステップS15:
被覆材17により覆われた状態の感熱素子12を第1ハウジング141の成形体141Mの内側に収容する(
図7(d))。上述したように、被覆材17が設けられていることで感熱素子12の形状、姿勢が安定しているので、第1ハウジング141に感熱素子12を干渉させることなく収容することができる。
なお、第2製造方法において用いられる成形体141Mは、内側に充填材16を注入するための開口が前壁141Aに形成されている。
【0054】
第1保持ステップS16:
成形体141Mを金型に配置し、射出成形により前壁141Aの開口から成形体141Mの内側に充填材16を充填する(
図7(e))。感熱素子12には被覆材17が設けられているため、成形体141Mに注入される樹脂材料の圧力により、感熱素子12が所定の位置からずれたり一対のクラッド線122が変形して短絡したりすることを防ぐことができる。成形体141Mへの充填材16の充填により、第1ハウジング141に感熱素子12が保持されるとともに、第1ハウジング141と第2ハウジング142とが一体化される。
【0055】
〔温度センサとコイル要素との組付体の製造〕
製造された温度センサ10は、回転電機のステータコイルのコイル要素21,22に組み付けられる。このとき、
図2(a)に示すように、コイル要素21,22の並行区間21A,22Aの間に第1ハウジング141を挿入し、一対のガイド壁141Gの間には第1コイル要素21を収め、一対のガイド壁141Hの間には第2コイル要素22を収めることにより、温度センサ10を別途位置決めすることなく、コイル要素21,22のそれぞれの中心に対して温度センサ10を容易に位置決めすることができる。そうすると、温度センサ10はコイル要素21,22から均等に受熱するので、コイル要素21,22の平均温度を安定して検知することができる。
【0056】
次いで、温度センサ10および並行区間21A,22Aを金型に配置して射出成形により樹脂成形体3を成形すると、樹脂成形体3により温度センサ10がコイル要素21,22に固定される。そうすると、
図1に示すように、温度センサ10とコイル要素21,22とが組み付けられてなる組付体1が製造される。このとき、ガイド壁141G,141Hにより、金型内における樹脂の圧力により温度センサ10の位置がコイル要素21,22に対してずれるのを防ぐことができる。
【0057】
なお、第1ハウジング141にガイド壁141G,141Hが形成されておらず、上壁141Dおよび下壁141Eが平坦であったとしても、樹脂成形体3の射出成形時の金型内における樹脂の流れを制御することにより、温度センサ10をコイル要素21,22における所定の位置に保つことができる。
【0058】
〔車両への回転電機の組み込み〕
温度センサ10がコイル要素21,22に固定された状態で、回転電機を車両に組み込む。温度センサ10は、感熱素子12に接続されるとともに端子として相手端子に対して挿抜されるリードフレーム131,132を備えているから、従来例とは異なり、温度センサ10からはリード線が延びていない。典型例としては、ステータコイルの温度上昇を考慮して、温度センサ10からリード線が所定の長さに亘り引き出されている。そして、ステータコイルから離れた位置で、リード線の末端に設けられるコネクタと、相手コネクタ9とを嵌合することで、温度センサ10をコネクタ9と、コネクタ9に設けられているケーブルとを介して回路基板に電気的に接続する。こうした典型例に対し、本実施形態の温度センサ10は、使用時の環境温度に適応可能な耐熱性を備えた相手コネクタ9と直接接続される「電線レス」の構造を実現する。
【0059】
温度センサ10から電線が無軌道に延びていないので、車両に回転電機を組み込む際に、電線を一時的に束ねておくといった準備作業が必要ない。回転電機の組込作業は、電線に妨げられることなく、回転電機の姿勢を決められた手順に従い適切に変化させながら、車両における所定の位置に所定の向きから回転電機を収めることができる。その後、電線の束を解くといった作業を行うことなく、嵌合部15と相手コネクタ9とを嵌合させれば温度センサ10の配線が終了する。
【0060】
〔本実施形態による主な効果〕
本実施形態によれば、コネクタの端子を兼ねるリードフレーム131,132と、相手コネクタ9に嵌合する嵌合部15とを備えた温度センサ10が電線を介さずに相手コネクタ9に直接接続されることにより、回転電機の組み込みの際における電線に起因した作業の繁雑さを解消することができる。そのため、回転電機の車両への組み込みに係る作業性を大幅に向上させることができる。
【0061】
また、温度センサ10と相手コネクタ9とが直接接続されることで、温度センサ10および相手コネクタ9を含む構造の小型化を図ることもできる。
【0062】
コイル要素21,22および感熱素子12のクラッド線122が延びているx方向とは異なるy方向に向けて嵌合部15が配置されていることにより、嵌合部15がコイル要素21,22と干渉することなく、一方向に延びているコイル要素21,22における任意の箇所に温度センサ10を配置することができるので、温度センサ10を取り付け可能な位置に係る制約が少ない。さらに、嵌合部15と相手コネクタ9とを嵌合させる作業を容易に行うことができる。
【0063】
本実施形態においては、感熱素子12およびリードフレーム131,132を保持するハウジング14の全体を一度に成形するのではなく、感熱素子12の保持を担う第1ハウジング141を、端子としての第2接続部131B,132Bの保持を担う第2ハウジング142とは別に成形する。第1ハウジング141を成形するときは、ハウジング14の全体を一度に成形するときとは異なり、感熱素子12およびその近傍に限定して樹脂材料を所定の向きに注入することができるから、樹脂の圧力により感熱素子12が変位したり変形したりすることを抑えることができる。特に、予め成形されている成形体141Mに感熱素子12を収容し、成形体141Mの内側に充填材16を注入するならば、樹脂材料が注入される範囲がより限定されるので、感熱素子12の変位や変形を極力抑えることができる。
感熱素子12の変位や変形が抑えられることで、感熱素子12を全体に亘り樹脂材料により所定の位置に固定することができる。そうすると、感熱素子12による温度検知特性のばらつきを抑えることができるので、特性の安定した温度センサ10を提供することができる。
【0064】
[変形例]
次に、
図8~
図11を参照し、本発明の変形例に係る温度センサ30を説明する。温度センサ30は、2つの感熱素子12(12-1,12-2)を備えることにより、コイル要素21,22のそれぞれの温度を個別に検知することが可能である。
以下、上記実施形態の温度センサ10と相違する事項を中心に説明する。
【0065】
温度センサ30は、2つの感熱素子12-1,12-2と、一対のリードフレーム131,132および一対のリードフレーム181,182と、単一の第1ハウジング341および単一の第2ハウジング342からなるハウジング34とを備えている。リードフレーム131,132,181,182はいずれも、平面視においてL字状に形成されている。それらのリードフレームに沿って形成されている第2ハウジング342には、図示しない相手コネクタと嵌合する嵌合部35が形成されている。嵌合部35は、コイル要素21,22が延びているx方向とは異なるy方向に向けて第2ハウジング342に一体に形成されている。
温度センサ30は、上記実施形態の温度センサ10と同様にコイル要素21,22に組み付けられ、コイル要素21,22と共に組付体をなす。
【0066】
感熱素子12-1,12-2は、上記実施形態の感熱素子12と同様に構成され、z方向に所定の間隔をあけた状態に重ねて配置される。感熱素子12-1,12-2のいずれも、クラッド線122がコイル要素21,22の延出方向と同じ向きに延びている状態に配置される。
一対のリードフレーム131,132は、上記実施形態の第1リードフレーム131および第2リードフレーム132と略同様に構成されている。リードフレーム131,132は、感熱素子12-1の一対のクラッド線122と電気的に接続されるとともに、嵌合部35の位置まで延びて相手端子と電気的に接続される。
【0067】
一対のリードフレーム181,182は、第1接続部181A,182Aが感熱素子12-2の一対のクラッド線122と電気的に接続されるとともに、一対のリードフレーム131,132よりもx方向の後側xbにおいて、y方向に屈曲し且つ一対のリードフレーム131,132と同じ高さまでz方向に折り曲げられてy方向に延出している。より具体的には、リードフレーム181は、リードフレーム131が屈曲する位置P1まではリードフレーム131と平面視において重なり、y方向へ屈曲した後、段差181Sの位置までは感熱素子12-2と同じ高さに配置されている。リードフレーム181の段差181Sよりも感熱素子12-2側の第1区間181Dは、感熱素子12-2と同じ高さに配置され、段差181Sよりも嵌合部35側の第2区間181Eは、一対のリードフレーム131,132と同じ高さに配置されている。リードフレーム182も同様であって、リードフレーム132が屈曲する位置P2まではリードフレーム132と平面視において重なり、y方向へ屈曲した後、段差182Sの位置までは感熱素子12-2と同じ高さに配置されている。リードフレーム182も、段差182Sにより区分されている第1区間182Dおよび第2区間182Eを備えている。段差181S,182Sは、y方向における同じ位置に設定されている。
嵌合部35の内側には、
図8(b)に示すように、4つのリードフレーム132,131,182,181の第2接続部132B,131B,182B,181Bがx方向に並んでいる。嵌合部35には、リードフレーム132,131,182,181に個別に対応する4つの端子を備えた相手コネクタが嵌合される。
【0068】
温度センサ30は、例えば、
図10および
図11に示すように、上記実施形態の第1製造方法(
図6)に相当する手順により製造することができる。
電線接合ステップS21:
図10(a)
予め成形されているリードフレーム131,132に感熱素子12-1の一対のクラッド線122を接合する。同様に、予め成形されているリードフレーム181,182に感熱素子12-2の一対のクラッド線122を接合する。
【0069】
被覆ステップS22:
図10(b)
感熱素子12-1,12-2のそれぞれについて、前端12Aから接合箇所124までを含む範囲に被覆材17の樹脂材料を浸漬し、固化させる。
成形体収容ステップS23:
図10(c)
被覆材17により覆われた状態の感熱素子12-1,12-2を第1ハウジング341の外殻をなす成形体341Mの内側に収容する。このとき、それぞれ被覆材17が設けられていることで感熱素子12-1,12-2の形状、姿勢が安定しているので、成形体341Mに感熱素子12-1,12-2を干渉させることなく収容することができる。
【0070】
第1保持ステップS24:
図11(a)
成形体341Mを金型に配置し、射出成形により成形体341Mの内側に充填材16を充填することで、第1ハウジング341に感熱素子12-1,12-2を保持する。充填材16の充填に先立ち、感熱素子12-1,12-2のそれぞれに被覆材17が設けられているため、成形体341Mに注入される樹脂材料の圧力により、感熱素子12-1,12-2が所定の位置からずれたり一対のクラッド線122が変形して短絡したりすることを防ぐことができる。
【0071】
第2保持ステップS25:
図11(b)
リードフレーム131,132,181,182、およびそれらのリードフレームが開口部341Fから突出した状態の第1ハウジング341を金型に配置し、射出成形により第2ハウジング342および嵌合部35を一体成形する(
図6(e))。そうすると、第2ハウジング342にリードフレーム131,132,181,182が保持されるとともに、第1ハウジング341と第2ハウジング342とが一体化される。
以上により、温度センサ30を製造することができる。
その他、温度センサ30は、上記実施形態の第2製造方法(
図7)と同様の方法により製造することもできる。
【0072】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0073】
上記実施形態におけるリードフレーム131,132,181,182やハウジング14,34の形状は、一例に過ぎない。リードフレーム131,132,181,182やハウジング14.34には、嵌合部15,35の向き等に応じて、適宜な形状を与えることができる。
例えば、リードフレーム131,132および第2ハウジング142を、クラッド線122が延びている第1方向としてのx方向から第2方向としてのz方向へと屈曲させることで、嵌合部15をz方向に向けて配置することができる。第1方向と第2方向とは、必ずしも直交している必要はなく、異なる方向であれば足りる。
【0074】
また、第1ハウジング141の成形体141Mあるいは1ハウジング341の成形体341Mは、樹脂材料から成形されたものには限定されず、金属材料から成形されたものであってもよい。一対のクラッド線122間の絶縁およびリードフレーム131,132,181,182間の絶縁は、例えば、被覆材17および充填材16の少なくとも一方により確保することができる。
【0075】
感熱素子12の位置は、感熱素子12の周囲に樹脂材料を充填するのとは異なる方法で固定されていてもよい。例えば、コイル要素21,22および温度センサ10を上側ハウジングと下側ハウジングとの間に挟み、上側ハウジングと下側ハウジングとを係合させることで、コイル要素21,22と温度センサ10との位置を固定することができる。
【0076】
本発明の温度センサ10,30は、必ずしもコイル要素21,22の間に配置されていなくてもよい。本発明の温度センサ10,30が、単一のコイル要素の任意の一面に配置され、単一のコイル要素の温度を検知するものであってもよい。
【0077】
2つの感熱素子12を用いて2つのコイル要素21,22のそれぞれの温度を個別に検知する、あるいは、2つの感熱素子12を用いて単一のコイル要素の温度を検知するようにしてもよい。2つの感熱素子12の一方は第1の温度センサ10に備えられ、他方は第2の温度センサ10に備えられていてもよいし、
図8~
図11に示すように、2つの感熱素子12のいずれも単一の温度センサ30に備えられていてもよい。
【0078】
本発明の温度センサ10による温度検知の対象としては、回転電機のステータコイルの他、例えば、電圧を上昇させる昇圧回路に用いられるコイルであってもよい。本発明の温度センサ10は、回転電機、昇圧器や変圧器等、車両に搭載される装置に備わるコイルの温度を検知するために広く利用することができる。
【0079】
温度センサ10は、コイルの部品に固定されてなる組付体としても製造可能である。例えば、
図1に示すコイル要素21,22が、コイルそのものではなく、コイルの本体に溶接等により固定されるコイル部品に相当するのならば、当該コイル部品と、樹脂成形体3により当該コイル部品に固定された温度センサ10とを備えた組付体1を製造することができる。
【0080】
また、本発明の温度センサ10は、必ずしもコイルに固定される必要はなく、例えば、コイルを支持する部材等、車両に備わる適宜な部材に固定されてもよい。その固定手段は、例えば締結等の適宜な方法であってもよい。上記実施形態の組付体1は、樹脂成形体3に代えて、固定部としての雄ねじ・雌ねじを備えることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 組付体
3 樹脂成形体(固定部)
9 相手コネクタ
10,30 温度センサ
11 センサ本体
12,12-1,12-2 感熱素子
12A 前端
14,34 ハウジング
15,35 嵌合部
16 充填材
17 被覆材
21 第1コイル要素(コイル)
21A 並行区間
22 第2コイル要素(コイル)
22A 並行区間
121 感熱体
122 クラッド線(電線)
123 封止材
124 接合箇所
131 第1リードフレーム
131A 第1接続部(第1部分)
131B 第2接続部(第2部分)
131C 中間部
132 第2リードフレーム
132A 第1接続部(第1部分)
132B 第2接続部(第2部分)
132C 中間部
141,341 第1ハウジング(第1保持部)
141A 前壁
141B,141C 側壁
141D 上壁(第1壁)
141E 下壁(第2壁)
141F 開口部
141G,141H ガイド壁(ガイド)
141M,341M 成形体
142,342 第2ハウジング(第2保持部)
142A 中実部分
151 上壁
151A 係止部
152,153 側壁
151B 開口
154 下壁
154A 突条
181,182 リードフレーム
181A,182A 第1接続部
181B,182B 第2接続部
181D,182D 第1区間
182E,182E 第2区間
181S,182S 段差
S01~S06 ステップ
S11~S16 ステップ
S21~S25 ステップ
x 第1方向
y 第2方向
z 方向
xb x方向の後側
xf x方向の前側
yb y方向の後側
【要約】
車両に備わるコイルの温度を検知する温度センサであって、当該温度センサを備えた装置の車両への組み込みに係る作業性の向上に寄与すること。
温度センサ10は、感熱体121と第1方向xに延びる一対の電線122とを含む感熱素子12と、電線122に接続され、相手コネクタ9の端子に接続される一対のリードフレーム131,132と、感熱素子12を保持する第1保持部141と、リードフレーム131,132を保持する第2保持部142と、を含むハウジング14と、を備える。リードフレーム131,132はそれぞれ、電線122との接続部分から第1方向xに延びる第1部分131A,132Aと、当該第1部分から連なり、第1方向xとは異なる第2方向yに延びる第2部分131B,132Bと、を含む。第2保持部142は、リードフレーム131,132に沿って形成されるとともに、相手コネクタ9と嵌合する嵌合部15を一体に備える。