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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】陽圧缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/16 20060101AFI20230118BHJP
   B65D 1/42 20060101ALI20230118BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20230118BHJP
   B21D 51/26 20060101ALN20230118BHJP
【FI】
B65D1/16 111
B65D1/42
B65D25/20 N
B21D51/26 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019008810
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2019131294
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2018013794
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】眞仁田 清澄
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-050040(JP,A)
【文献】特開平11-208634(JP,A)
【文献】特開2016-155595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/16-1/42
B65D 8/04
B65D 25/20
B21D 51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴を有する缶本体と、該缶本体を陽圧状態で密閉する缶蓋とを備え、前記缶胴の少なくとも一部に凸状の境界稜線によって区画された多数の単位パネルで構成される多面体壁を有し、
前記単位パネルは前記境界稜線としての斜め稜線によって区画される菱形形状で、前記缶胴の中心軸線を通る中心面上に位置する2つの頂点と、中心面に対して対称位置に位置する2つの頂点の計4つの頂点を有し、内圧が加わらない自由状態で、前記中心面に対して対称位置に位置する頂点を結ぶ谷折りの横稜線によって、前記缶胴の内方に屈曲して窪んだ構成となっており、前記缶胴に作用する内圧によって窪みが小さくなる方向に変形し、缶蓋の開封時に元の形状に復元し、復元する際に復元音を発する構成の陽圧缶において、
前記陽圧缶は缶胴径が66.5~67mmのアルミ合金製の絞りしごき缶で、
前記多面体壁は、複数の前記単位パネルが前記缶胴の中心軸線と平行方向に並んだ単位パネル列が、前記缶胴の周方向に全周的に密に配列された構成で、前記単位パネルの横稜線を通る断面の角数が、11角に設定され、
前記単位パネルの最大デプス変化量の最大値が、0.75mm以上1.2mm以下に設定され
前記復元音の音圧レベルが、前記缶胴から40cm離れた位置において、75dB以上に設定されていることを特徴とする陽圧缶。
【請求項2】
缶胴を有する缶本体と、該缶本体を陽圧状態で密閉する缶蓋とを備え、前記缶胴の少なくとも一部に凸状の境界稜線によって区画された多数の単位パネルで構成される多面体壁を有し、
前記単位パネルは前記境界稜線としての斜め稜線によって区画される菱形形状で、前記缶胴の中心軸線を通る中心面上に位置する2つの頂点と、中心面に対して対称位置に位置する2つの頂点の計4つの頂点を有し、内圧が加わらない自由状態で、前記中心面に対して対称位置に位置する頂点を結ぶ谷折りの横稜線によって、前記缶胴の内方に屈曲して窪んだ構成となっており、前記缶胴に作用する内圧によって窪みが小さくなる方向に変形し、缶蓋の開封時に元の形状に復元し、復元する際に復元音を発する構成の陽圧缶において、
前記陽圧缶は缶胴径が66.5~67mmのアルミ合金製の絞りしごき缶で、
前記多面体壁は、複数の前記単位パネルが前記缶胴の中心軸線と平行方向に並んだ単位パネル列が、前記缶胴の周方向に全周的に密に配列された構成で、前記単位パネルの横稜線を通る断面の角数が、11角に設定され、
最大デプス変化量が0.4mm以上の前記単位パネルについての最大デプス変化量の平均値が、0.54mm以上0.75mm以下の範囲に設定され
前記復元音の音圧レベルが、前記缶胴から40cm離れた位置において、75dB以上に設定されていることを特徴とする陽圧缶。
【請求項3】
缶胴を有する缶本体と、該缶本体を陽圧状態で密閉する缶蓋とを備え、前記缶胴の少なくとも一部に凸状の境界稜線によって区画された多数の単位パネルで構成される多面体壁を有し、
前記単位パネルは前記境界稜線としての斜め稜線によって区画される菱形形状で、前記缶胴の中心軸線を通る中心面上に位置する2つの頂点と、中心面に対して対称位置に位置する2つの頂点の計4つの頂点を有し、内圧が加わらない自由状態で、前記中心面に対して対称位置に位置する頂点を結ぶ谷折りの横稜線によって、前記缶胴の内方に屈曲して窪んだ構成となっており、前記缶胴に作用する内圧によって窪みが小さくなる方向に変形し、缶蓋の開封時に元の形状に復元し、復元する際に復元音を発する構成の陽圧缶において、
前記陽圧缶は缶胴径が66.5~67mmのアルミ合金製の絞りしごき缶で、
前記多面体壁は、複数の前記単位パネルが前記缶胴の中心軸線と平行方向に並んだ単位パネル列が、前記缶胴の周方向に全周的に密に配列された構成で、前記単位パネルの横稜線を通る断面の角数が、11角に設定され、
前記単位パネルの最大デプス変化量の最大値が、0.75mm以上1.2mm以下に設定され、かつ、最大デプス変化量が0.4mm以上の前記単位パネルについての最大デプス変化量の平均値が、0.54mm以上0.75mm以下の範囲に設定され、
前記復元音の音圧レベルが、前記缶胴から40cm離れた位置において、75dB以上に設定されていることを
最大特徴とする陽圧缶。
【請求項4】
前記多面体壁は、缶胴の面積の25%以上である請求項1乃至のいずれか1項に記載の陽圧缶。
【請求項5】
前記単位パネルの面積は、130mm以上で180mm以下に設定されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の陽圧缶。
【請求項6】
前記最大デプス変化量は、開封前の内圧が20~300kPaにおける最大デプス変化量である請求項1乃至のいずれか1項に記載の陽圧缶。
【請求項7】
前記開封前の内圧が120~150kPaである請求項に記載の陽圧缶。
【請求項8】
空缶時の単位パネルのパネルデプスである空缶デプスが、1.38mm以上に調整されている請求項1乃至7のいずれか1項に記載に陽圧缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、ビール、酎ハイ等の炭酸系飲料用の缶、内容物の酸化を防ぐ不活性ガスが封入された缶等、缶胴に内圧が作用する陽圧缶に関し、特に、缶胴に複数の単位パネルによって構成される多面体壁を有し、密封状態では単位パネルが内圧によって外側に膨らみ、開封時に元の形状に復元し、復元する際に復元音を発する陽圧缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の陽圧缶としては、たとえば、特許文献1に記載のような陽圧缶が知られている。
この陽圧缶は、缶胴を有する缶本体と、缶本体を陽圧状態で密閉する缶蓋とを備え、缶胴の少なくとも一部に多面体壁を有し、多面体壁は凸条の境界稜線で区画された折り構造の多数の単位パネルで構成されている。単位パネルは、缶胴を部分的に窪ませた形状で、缶胴に作用する内圧によって窪みが小さくなる方向に弾性変形し、缶蓋の開封時に元の窪んだ形状に復元するようになっている。
このように、内容物を密封した状態では、内圧によって単位パネルの窪みによる凹凸が小さく、開封すると、窪み形状が復元し、缶胴の剛性を向上させると共に、視覚的に使用者に強い印象を与え、商品価値を高めるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3915450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は、この多面体壁を有する陽圧缶の商品価値をさらに高めるべく、鋭意研究した結果、開封時に単位パネルの形状が元の形状に復元する際に聞こえる復元音に着目した。
現行の製品についても、復元音が聞こえているものの、プルタブによる缶蓋の引き裂き音と、ガスが抜ける際のガス放出音が大きく先に聞こえ、その後に復元音が聞こえるために、使用者の注意を引き難い。検討の結果、単位パネル復元時のデプス変化量が復元音と関係があるということがわかった。
本発明の目的は、多面体壁を構成する単位パネルの復元音を大きくし、単位パネルが復元する視覚的効果と同時に聴覚的効果を加えた陽圧缶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、
缶胴を有する缶本体と、該缶本体を陽圧状態で密閉する缶蓋とを備え、前記缶胴の少なくとも一部に凸状の境界稜線によって区画された多数の単位パネルで構成される多面体壁を有し、
前記単位パネルは前記境界稜線としての斜め稜線によって区画される菱形形状で、前記缶胴の中心軸線を通る中心面上に位置する2つの頂点と、中心面に対して対称位置に位置する2つの頂点の計4つの頂点を有し、内圧が加わらない自由状態で、前記中心面に対して対称位置に位置する頂点を結ぶ谷折りの横稜線によって、前記缶胴の内方に屈曲して窪んだ構成となっており、前記缶胴に作用する内圧によって窪みが小さくなる方向に変形し、缶蓋の開封時に元の形状に復元し、復元する際に復元音を発する構成の陽圧缶において、
前記陽圧缶は缶胴径が66.5~67mmのアルミ合金製の絞りしごき缶で、
前記多面体壁は、複数の前記単位パネルが前記缶胴の中心軸線と平行方向に並んだ単位パネル列が、前記缶胴の周方向に全周的に密に配列された構成で、前記単位パネルの横稜線を通る断面の角数が、11角に設定され、
前記単位パネルの最大デプス変化量の最大値が、0.75mm以上1.2mm以下に設定され
前記復元音の音圧レベルが、前記缶胴から40cm離れた位置において、75dB以上に設定されていることを特徴とする。
単位パネルは、全周が境界稜線で囲まれている必要はなく、単位パネルの少なくとも一部が境界稜線で区画されている場合も含まれる。
本発明によれば、前記各単位パネルの最大デプス変化量の最大値を0.75mm以上に制御することによって、ガス放出音が聞こえた後でも、十分に聞き取りやすい大きさの復元音を生じさせることができる。これにより、単位パネルが復元する視覚的効果と同時に聴覚的効果が加わり、相乗的に凹凸が現れる際の効果を高めることができる。特に、最大デプス変化量が大きく変化し、視覚的に変化が際立つので、注意を惹かれ、音についても敏感になって復元音を聞き取る効果が高い。また、最大デプス変化量を大きくするには単位パネルを大きくする必要があり、深さに加えて大きい単位パネルが大きく変化することにより視覚的効果を高めることができる。一方、単位パネルを大きくすると、空缶時の軸荷重強度が低下する傾向にあり、最大デプス変化量の最大値の上限を1.2mm以下とすることにより、空缶時の軸荷重強度を維持することができる。
本発明では、内圧で中央が膨らむように変形していた横稜線が一気に元の形状に戻るので、鮮明な復元音を生成することができる。なお、単位パネルが完全に弾性復元する場合だけでなく、一部塑性変形して、完全には元の形状に戻らない場合も含まれる。
また、11角より大きいと、単位パネルの大きさが小さくなるために、最大デプス変化量が小さくなる。一方、11角より小さいと、単位パネルの面積が大きくなり、最大デプス変化量が大きくなるものの、空缶時の軸荷重強度が維持できなくなる。
また、他の発明は、
缶胴を有する缶本体と、該缶本体を陽圧状態で密閉する缶蓋とを備え、前記缶胴の少なくとも一部に凸状の境界稜線によって区画された多数の単位パネルで構成される多面体壁を有し、
前記単位パネルは前記境界稜線としての斜め稜線によって区画される菱形形状で、前記缶胴の中心軸線を通る中心面上に位置する2つの頂点と、中心面に対して対称位置に位置する2つの頂点の計4つの頂点を有し、内圧が加わらない自由状態で、前記中心面に対して対称位置に位置する頂点を結ぶ谷折りの横稜線によって、前記缶胴の内方に屈曲して窪んだ構成となっており、前記缶胴に作用する内圧によって窪みが小さくなる方向に変形し、缶蓋の開封時に元の形状に復元し、復元する際に復元音を発する構成の陽圧缶において、
前記陽圧缶は缶胴径が66.5~67mmのアルミ合金製の絞りしごき缶で、
前記多面体壁は、複数の前記単位パネルが前記缶胴の中心軸線と平行方向に並んだ単位
パネル列が、前記缶胴の周方向に全周的に密に配列された構成で、前記単位パネルの横稜線を通る断面の角数が、11角に設定され、
最大デプス変化量が0.4mm以上の前記単位パネルについての最大デプス変化量の平均値が、0.54mm以上0.75mm以下の範囲に設定され
前記復元音の音圧レベルが、前記缶胴から40cm離れた位置において、75dB以上に設定されていることを特徴とする。
一部の単位パネルは開封時に復元しない場合があるため、最大デプス変化量が0.4mm未満の単位パネルを除くことにより、復元しない単位パネルの影響を除外することができ、多面体壁の復元形態を、正確に評価することができる。
このように平均値を用いることで、最大デプス変化量を安定して評価でき、一定以上の安定した復元音が得られる陽圧缶を実現できる。
空缶時の軸荷重強度については、最大値で評価する場合の上限値1.2mmに対して、平均値で0.75mm程度に設定しておけばよい。
また、さらに他の発明は、
缶胴を有する缶本体と、該缶本体を陽圧状態で密閉する缶蓋とを備え、前記缶胴の少なくとも一部に凸状の境界稜線によって区画された多数の単位パネルで構成される多面体壁を有し、
前記単位パネルは前記境界稜線としての斜め稜線によって区画される菱形形状で、前記缶胴の中心軸線を通る中心面上に位置する2つの頂点と、中心面に対して対称位置に位置する2つの頂点の計4つの頂点を有し、内圧が加わらない自由状態で、前記中心面に対して対称位置に位置する頂点を結ぶ谷折りの横稜線によって、前記缶胴の内方に屈曲して窪んだ構成となっており、前記缶胴に作用する内圧によって窪みが小さくなる方向に変形し、缶蓋の開封時に元の形状に復元し、復元する際に復元音を発する構成の陽圧缶において、
前記陽圧缶は缶胴径が66.5~67mmのアルミ合金製の絞りしごき缶で、
前記多面体壁は、複数の前記単位パネルが前記缶胴の中心軸線と平行方向に並んだ単位パネル列が、前記缶胴の周方向に全周的に密に配列された構成で、前記単位パネルの横稜線を通る断面の角数が、11角に設定され、
前記単位パネルの最大デプス変化量の最大値が、0.75mm以上1.2mm以下に設定され、かつ、最大デプス変化量が0.4mm以上の前記単位パネルについての最大デプス変化量の平均値が、0.54mm以上0.75mm以下の範囲に設定され、
前記復元音の音圧レベルが、前記缶胴から40cm離れた位置において、75dB以上に設定されていることを特徴とする。
このように最大デプス変化量の最大値と平均値を用いることにより、最大デプス変化量が安定し、しかも最大値が大きく、より大きな復元音が得られる陽圧缶を実現できる。
【0006】
また、本発明は次のように構成することができる。
)多面体壁は、缶胴の面積の25%以上とする。
このようにすれば、効果的に音圧レベルを上げることができる。
)単位パネルの面積は、130mm以上で180mm以下に設定される。
130mmより小さいと、変形しにくくなるので、最大デプス変化量が小さくなり、180mmより大きいと、最大デプス変化量は大きくなるものの、空缶時の軸荷重強度が維持できなくなる。
)最大デプス変化量は、開封前の内圧が20~300kPaにおける最大デプス変化量、好適には120~150kPaとする。
本発明は、最大デプス変化量と復元音の間に一定の関係があることを見出したもので、内圧の好適な範囲としては、内圧作用時に、単位パネルの窪みが円筒に近くなるまで十分に変形させ、しかも塑性変形をできるだけ生じさせず、内圧開放時に元の窪み形状まで復帰させる程度の範囲であり、好ましい範囲としては20~300kPa、より好ましい範囲としては、120~150kPaとする。
内圧が高くなると、内圧作用状態のパネルデプスが浅くなり、内圧開放状態のパネルデプスとの差が大きくなり、結果的に最大デプス変化量は大きくなる。最大デプス変化量は空缶デプスやパネルサイズによっても変わる。
様々な要因で最大デプス変化量が決まり、その最大デプス変化量が復元音に関係する。
この内圧の条件設定は、陽圧缶の使用範囲を制限するものではなく測定時の条件を設定するものである。たとえば、120kPaより低圧、あるいは150kPaより高圧で使用されているとしても、この圧力範囲で測定したときに、この範囲となるものを含むものとする。
4)空缶時の単位パネルのパネルデプスである空缶デプスが、1.38mm以上に調整されている。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、多面体壁を構成する単位パネルの復元音を大きくし、単位パネルが復元する視覚的効果と同時に聴覚的効果を加えた陽圧缶を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る陽圧缶を示すもので、(A)は内圧作用状態の正面図、(B)は内圧開放状態の正面図、(C)は(B)のC部の拡大概略斜視図、(D)は(B)のD-D線断面図である。
図2図2は、図1の陽圧缶の単位パネルを示すもので、(A)は正面図、(B)は(A)のB-B線断面図、(C)は(A)のC-C線断面図である。
図3図3(A)は、本発明の陽圧缶の最大デプス変化量の測定方法を示す図、(B)は陽圧缶の復元音の測定方法を示す図である。
図4図4(A)は単位パネルの最大デプス変化量の最大値と復元音の関係、(B)は0.4mm以上の最大デプス変化量の平均値と復元音の関係を示すグラフである。
図5図5(A)は全ての単位パネルの最大デプス変化量の平均値と復元音の関係、(B)は0.3mm以上の最大デプス変化量の平均値と復元音の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る陽圧缶を示すもので、図1(A)は内圧作用状態、図1(B)は内圧開放状態を示している。
陽圧缶1は、缶胴21を有する有底筒状の缶本体2と、缶本体2を陽圧状態で密閉する缶蓋3とを備え、缶胴21の少なくとも一部に多面体壁4を有している。缶本体2は、ストレートに延びる円筒形状の缶胴21と、缶胴21の上端の径を絞ったネック部22と、底部23とを有する構成で、ネック部22上端の口部に缶蓋3が巻締め固定されている。
陽圧缶1は、アルミ合金製の絞りしごき缶であり、一般的に、その容量は160ml~500ml、5℃における缶内圧が20~300[kPa]、缶胴21の板厚が0.075~0.135[mm]、缶胴径が50~70[mm]、缶高さが90~170[mm]の範囲で使用されている。
【0010】
多面体壁4は、缶胴21の周長は変化させずに折り構造によって凹凸形状としたもので、斜め稜線51の折り目で区画された多数の単位パネル5で構成されている。すなわち、所定数の単位パネル5が缶胴21の中心軸線Nと平行方向(以下、単に軸方向という)に配列されてパネル列50を構成し、このパネル列50が缶胴21の周方向に全周的に配列された構成となっている。互いに隣り合うパネル列50の単位パネル5の軸方向の位相は、単位パネル5の軸方向の長さの半分だけずらして配列され、単位パネル5が軸方向及び周方向に密に配列されている。
多面体壁4は、この例では、缶胴21の軸方向中途部分に、帯状に設けられ、多面体壁4の上部及び下部領域は、凹凸の無い円筒面となっている。多面体壁4の面積は、図示例では缶胴に対して50%程度となっているが、復元音を考慮し、缶胴の25%以上とすることが、好適である。
【0011】
図1(C)は、図1(B)のC部拡大図である。
単位パネル5は、内圧が作用しない自由状態(空缶時及び内圧解放時)では、缶胴21の中心軸線Nと直交する面上に位置する谷折りの横稜線52を境界として缶内部に向かって、くの字状に屈曲するように窪んでいる。隣り合うパネル列50は、単位パネル5の長さの半分だけ軸方向にずれているので、周方向に一つ置きに位置するパネル列50の単位パネル5は、軸方向に同一位相にあり、横稜線52が、共通する頂点53を介してつながっている。したがって、単位パネル5の横稜線52の位置で、缶胴21の中心軸線Nと直交方向に切断した断面は、図1(D)に示すように、正多角形状となる。図示例では、12角形状となっているが、12角形に限定されない。なお、頂点53の角は、面取りされている。また、横稜線52については、図示例では直線状に記載しているが、空缶時及び内圧解放時に、±0.5mm程度、缶内方に凸の円弧状、あるいは缶外方に凸の円弧状等の曲線形状となっていてもよい。
内圧作用状態では、個々の単位パネル5は、缶胴21に作用する内圧によって、図1(C)の二点鎖線で示すように、横稜線52が缶胴の円筒面に倣った円弧状に変形する。斜め稜線51についても、缶胴21の円筒面に倣うように変形するが、図1(C)では、簡易的に直線として記載している。
そして、缶蓋3のタブ6を引き起こして開封すると、開封部から内部のガスが放出されてガス放出音が生じると共に、個々の単位パネル5の斜め稜線51及び横稜線52が直線形状に瞬間的に復元し、凹凸形状が現れると共に、その衝撃によって復元音が発生する。
復元音の大きさを決定する要因は、単位パネル5の形状、面積、板厚等、種々の要因が考えられるが、本発明者等は、鋭意検討した結果、単位パネル5の形状の、デプスの変化量である最大デプス変化量と相関関係があることを見出した。
【0012】
以下、図2を参照して、単位パネル5の最大デプス変化量について説明する。
図2(A)は、単位パネル5の正面図、(B)は(A)のB-B線断面図、(C)は(A)のC-C線断面図である。図2(B),(C)において、破線は内圧作用状態、実線
が内圧解放時の復元状態を示している。
この実施形態1における単位パネル5のパネルデプスは、頂点53aと頂点53cを結ぶ線から、横稜線52の中点mまでの、缶胴21の中心軸線Nと直交方向の距離であり、最大デプス変化量dmaxは、内圧作用状態および内圧開放状態における前記パネルデプスの変化量である。
単位パネル5は、図2(A)に示すように、4つの斜め稜線51によって区画される菱形形状で、4つの斜め稜線51をフレームとするドラムのように振動し、この振動によって空気が振動して復元音が発現する。
この単位パネル5は、缶胴21の中心軸線Nを通る中心面M上に位置する2つの頂点53a、53cと、中心面Mに対して対称位置に位置する2つの頂点53b、53dの計4つの頂点を有している。これら4つの頂点53a~53dは、缶胴21を構成する円筒面とほぼ一致する仮想円筒面Y(図2(B)中、二点鎖線で示す)上に位置し、内圧が加わらない自由状態で、中心面Mに対して対称位置に位置する頂点53b、53dを結ぶ谷折りの横稜線52によって、図2(B)の実線で示すように、くの字状に缶胴21の内方に屈曲して窪んだ構成となっている。
内圧作用状態では、図2(B)に破線で示すように、上方三角形部分5Aと下方三角形部分5Bが、軸方向に延ばされるように変形し、横稜線52の中点mが、上下の頂点53a,53cを結ぶ線に近い位置まで変位する。横断面で見ると、図2(C)に破線で示すように、円弧状に変形している。
一方、内圧が開放されると、図2(B)に実線で示すように、単位パネル5は、くの字形状に復元し、横稜線52の中点mは最深部に戻る。横断面で見ると、図2(C)に示すように、破線の円弧状から実線の直線状に復元する。
この中点mが単位パネル5の最も大きく変位する部分で、この中点mにおけるパネルデプスの変化量を最大デプス変化量dmaxとし、全単位パネル5の最大デプス変化量dmaxの最大値で評価して、最大デプス変化量dmaxの最大値が、0.75mm以上1.2mm以下に設定される。
【0013】
最大デプス変化量dmaxが小さいと復元音の大きさは小さく、直前のガス放出音に紛れてしまうが、全単位パネルの最大デプス変化量dmaxの最大値を0.75mm以上に設定することによって、ガス放出音の後でも、十分に聞き取りやすい復元音を生じさせることができる。
開放時時における多面体壁の各単位パネルの復元音については、実験によれば、開封時の復元音の音圧レベルが、缶胴から40cm離れた位置において、75dB程度以上とすることができた。ガス放出音は70dB程度であり、十分に聞き取れる音のレベルとなる。
一方、最大デプス変化量dmaxを大きくすると復元音が鳴りやすくなるものの、単位パネル5の横稜線52の深さが深くなるので、空缶時における軸荷重強度が低下してしまう。最大デプス変化量の最大値の上限が1.2mm以下であれば、空缶時の軸荷重強度を維持しつつ、復元音を大きくすることができる。
また、最大デプス変化量が0.4mm以上の単位パネルについての最大デプス変化量dmaxの平均値が、0.54mm以上0.75mm以下に設定することもできる。
このように平均値を用いれば、各単位パネルの最大デプス変化量を平均化して評価できる。一部の単位パネルでは完全に復元しない場合もあるため、最大デプス変化量が0.4mm未満の単位パネルを除いた平均値をとることにより、完全に復元しない単位パネルの影響を除外することができる。
また、最大デプス変化量dmaxの最大値が、0.75mm以上1.2mm以下に設定され、かつ、最大デプス変化量が0.40mm以上の単位パネルについての最大デプス変化量の平均値が、0.54mm以上0.75mm以下の範囲に設定することもできる。
最大デプス変化量が0.4mm以上の単位パネルについての最大デプス変化量dmaxの平均値としては、好ましくは、0.57mm以上0.75mm以下に設定される。
このように最大デプス変化量の最大値と平均値を用いることにより、凹凸が大きくなって視覚的効果が高く、安定して大きな復元音を生じる陽圧缶を実現することができる。
【0014】
[多面体壁4の角数と最大デプス変化量dmaxの関係]
最大デプス変化量dmaxは、単位パネル5が大きいほど、大きくなる傾向にある。単位パネル5の大きさは、缶胴21の胴径が同じであれば、図1(C)に示した横断面の角数によって幾何学的に決まり、角数が多いほど最大デプス変化量dmaxが小さくなる。逆に角数が少ないほど、単位パネル5が大きくなって変形しやすく、最大デプス変化量dmaxが大きくなる。たとえば、缶胴径が50~70mmの範囲の場合、11角、12角程度に設定すれば、最大デプス変化量dmaxの最大値を、0.75mm以上1.2mm以下の範囲に設定することができる。また、最大デプス変化量が0.40mm以上の単位パネルについての最大デプス変化量の平均値について、0.54mm以上0.75mm以下の範囲に設定することができる。
特に、11角、12角で、単位パネル5の面積を、130mm以上で180mm以下に設定することが好ましい。もっとも、最大デプス変化量dmaxが上記範囲に入っていれば、13角であってもよい。
ここで、単位パネル5の面積は、平面的に展開した状態の面積、すなわち、単位パネル5の上方三角形部分5Aと下方三角形部分5Bの面積を足し合わせた面積である。
【0015】
[最大デプス変化量dmaxの調整]
最大デプス変化量dmaxは、たとえば、空缶時のパネルデプスを調整することによって調整可能である。横稜線52を、缶の内側あるいは外側に円弧状に湾曲させることで空缶時のパネルデプスを調整することができる。すなわち、缶の内側に円弧状に湾曲させれば、最大デプス変化量dmaxは大きくなり、缶の外側に円弧状に湾曲させれば最大デプス変化量dmaxを小さくなる。
【0016】
[評価試験]
以下に、復元音の評価試験について説明する。
評価試験は、単位パネルが菱形形状の次のサンプルを用意した。
(サンプル1)角数:13角、パネル個数:91個、空缶デプス:0.81mm、単位パネル面積:126mm、多面体壁面積:缶胴の68%
(サンプル2)角数:13角、パネル個数:91個、空缶デプス0.85mm、単位パネル面積:126mm、多面体壁面積:缶胴の68%
(サンプル3)角数:13角、パネル個数:91個、空缶デプス0.89mm、単位パネル面積:126mm、多面体壁面積:缶胴の68%
(サンプル4)角数:13角、パネル個数:91個、空缶デプス0.92mm、単位パネル面積:126mm、多面体壁面積:缶胴の68%
(サンプル5)角数:11角、パネル個数:66個、空缶デプス1.38mm、単位パネル面積:177mm、多面体壁面積:缶胴の70%
(サンプル6)角数:11角、パネル個数:66個、空缶デプス1.45mm、単位パネル面積:177mm、多面体壁面積:缶胴の70%
(試験条件)
評価試験の条件は、次の通りである。
・温度:5℃保管(液温は6.5~8℃)、
・缶内圧:120~150kPa
・缶胴の板厚0.092~0.122mm
・缶胴径:66.5~67mm
・缶高さ:121.8~122.2mm
・内容量:350ml
(試験方法)
最大デプス変化量dmaxは、内圧作用状態(5°C:開封前の内圧が120~150kPa)でのパネルデプスを測定し、次に内圧開放状態でのパネルデプスを測定し、その差を計測して求める。パネルデプスの測定方法は、図3(A)に示すように、陽圧缶1のボトム側をバキュームにより水平に保持し、デジマチックインジゲータ100(「デジマチック」は「株式会社ミツトヨ」の登録商標)の測定子101を、垂直に頂点53に当ててその高さをゼロ点とし、陽圧缶1を中心軸線N方向にスライドさせ、デジマチックインジゲータ100を横稜線53の中点mの位置に合わせ、測定子101を横稜線53の中点mに当てて高さを読み取って求める。
デジマチックインジケータ100は、水平の台上に垂直に立設されるスタンド102に固定される支持腕103に支持され、姿勢を垂直に保持される。一方、スタンド102のデジマチックインジケータ100の下方位置に、陽圧缶1を保持し、陽圧缶1の中心軸線Nに沿って水平に移動させる水平移動機構104が設けられている。水平移動機構104は、陽圧缶1の口部を保持する保持部105と、保持部105を水平に移動させるシリンダ機構や送りねじ機構等の伸縮部106とを備えた構成となっている。
パネルデプスは全ての単位パネル5で求め、各単位パネル5の内圧作用状態および内圧開放状態でのパネルデプスの差を最大デプス変化量dmaxとし、その最大値、さらに各単位パネルの最大デプス変化量dmaxの平均値を算出した。平均値は、最大デプス変化量dmaxが0.4mm未満の単位パネルを除いた単位パネルについての最大デプス変化量の平均値である。各サンプルは3缶ずつで、最大デプス変化量の最大値については、最大値の3缶の平均値を(ave)、最大値を(max)、最小値を(min)としている。また、各単位パネルの最大デプス変化量dmaxの平均値については、測定数3缶に対する平均値を(ave)、最大値を(max)、最小値を(min)としている。デジマチックインジゲータは、「株式会社ミツトヨ」製、型番ID-C1012、測定子101は、「株式会社ミツトヨ」製、型番137413を用いた。
一方、復元音の測定は、図3(B)に示すように、缶から40cm離した位置で騒音計120を設置し、音の大きさを測定した。この40cmは、マイク121と陽圧缶1と間の距離Lである。40cmの意味は、実際の開口時の缶と耳のおおよその距離を意味している。また、騒音計120は、床置きとし、台122によって、マイク121の高さを、床から60cm程度の高さに保持した。測定値は時間軸の波形データとして得られる。陽圧缶1を開口すると、始めにプルタブによる缶蓋の引き裂き音が発生し、次いでガス放出音、復元音の順に発生するので、復元音の部分の波形データの最大値を復元音の音圧レベルとしている。周波数重み付け特性はA特性で、時間重み付け特性はFとしている。測定数は3缶で、その平均値を測定結果としている。
騒音計120としては、「リオン株式会社」製、型番NL-42を用い、マイク121の先端にはウインドスクリーンWS-10を取り付けている。
【0017】
(測定結果)
測定結果は、表1に示す通りである。
【0018】
【表1】
【0019】
図4及び図5は、表1のデータをグラフ化したものである。図4(A)には、最大デプ
ス変化量の最大値と復元音の大きさの関係、図4(B)は、単位パネルの内の最大デプス変化量が0.4mm以上のものの平均値と復元音の大きさの関係が示されている。図5(A)には、すべての単位パネルの最大デプス変化量の平均値と復元音の大きさの関係、図5(B)には、最大デプス変化量が0.3mm以上のものの平均値と復元音の大きさの関係が示されている。各グラフにおいて、サンプル1~サンプル6を、それぞれS1~S6として示している。
まず、図4(A)を参照して、最大デプス変化量の最大値と復元音の大きさの関係について説明する。
最大デプス変化量の最大値については、本発明のサンプル5(S5)とサンプル6(S6)については、少なくとも0.74mm~0.86mmと大きく変化して深い立体形状が得られると共に、かつ、76dB以上の復元音を得られている。しかも、本発明のサンプル5,6の単位パネルは11角で、比較例のサンプル1~サンプル4の13角に比べて大きいために、深いだけでなく広い範囲が大きく変化し、視覚的に変化が際立つので、注意を惹かれ、音についても敏感になって復元音を聞き取る効果が高い。
一方、比較例のサンプル3(S3)とサンプル4(S4)については、復元音は75dBを超えているものの、最大デプス変化量は、サンプル4(S4)で、0.74mmまでで、サンプル3では0.66mmまでである。また、サンプル1(S1)とサンプル2(S2)については、復元音についても72dBから78dBの間であり、75dBを超えない場合が生じている。
これらの結果から、最大デプス変化量dmaxの最大値で評価して、最大デプス変化量dmaxの最大値が、0.75mm以上であれば、大きく変化して深い立体形状が得られると共に、かつ、76dB以上の大きい復元音を得ることができる。スコア破断時の音圧レベルは、約60dB、ガス放出音は、70dBであり、ガス放出音の70dBに対して5dB以上大きければ、音圧レベルは、ガス放出音に対して2倍程度大きくなり、明瞭となる。
なお、単位パネルが菱形形状の場合、断面角数が11角と13角の間、12角のものも含まれる。また、13角であっても、最大デプス変化量の最大値を0.75mm以上とすれば、凹凸が深く鮮明となり、視覚的効果を高めると共に、大きな復元音を得ることができる。
[軸荷重強度]
また、最大デプス変化量を大きくするには単位パネルを大きくする必要がある。単位パネルを大きくすると、空缶時の軸荷重強度が低下する傾向にあり、上限を1.2mm程度に設定しておけば、空缶時の軸荷重強度を維持することができる。
【0020】
次に、図4(B)、図5(A)及び図5(B)を参照して、最大デプス変化量の平均値と復元音の大きさの関係について説明する。
図4(A)のように最大デプス変化量の最大値を用いる場合、ばらつきが大きくなる可能性があるので、単位パネルの最大デプス変化量の平均値をとることを検討した。しかし、全ての単位パネルの最大デプス変化量の平均値をとると、図5(A)に示すように、本発明のサンプル5(S5),サンプル6(S6)が、比較例のサンプル(S1)~サンプル4(S4)よりも、最大デプス変化量の平均値は小さいという反対の結果となった。この結果を検討した結果、全ての単位パネルが完全に復元されるわけではなく、一部の単位パネルについて、復元が不完全なものがあるためということがわかった。そこで、0.3mm以上の最大デプス変化量となる単位パネルについての平均値、0.4mm以上の最大デプス変化量となった単位パネルについての平均値について算出し、グラフとしたのが図4(B)と図5(B)である。
0.3mm以上の単位パネルを抽出したものでは、図5(B)に示すように、サンプル5(S5)およびサンプル6(S6)が、サンプル1~サンプル4と交錯する範囲となり、判然としないが、0.4mm以上の単位パネルを抽出すると、図4(B)に示すように、サンプル5(S5)およびサンプル6(S6)が、サンプル1~サンプル4と交錯する
範囲を脱し、サンプル5(S5)およびサンプル6(S6)の最大デプス変化量(平均値)が、サンプル1~サンプル4の最大デプス変化量(平均値)よりも大きく、明確に分かれることが分かった。
【0021】
図4(B)によれば、最大デプス変化量の0.4mm以上の単位パネルの平均値は、本発明のサンプル5(S5)とサンプル5(S6)については、0.57mm~0.67mmであるのに対して、比較例のサンプルサンプル1(S1)~サンプル4(S4)は、0.48~0.53mmであった。
これらの結果から、最大デプス変化量が0.4mm以上の単位パネルの平均値を、0.54mm以上、好ましくは0.57mm以上に設定すれば、完全に復元しない単位パネルの影響を除外することができ、最大値と同様に、本発明のサンプル5(S5)及びサンプル6(S6)を、比較例のサンプル1(S1)~サンプル4(S4)と区別することができる。
このように平均値を用いることで、最大デプス変化量の最大値を用いる場合のように、閾値が大きくなりすぎることがなく、最大デプス変化量を安定して評価でき、一定以上の安定した復元音が得られる陽圧缶を実現できる。
また、空缶時の軸荷重強度を考慮すると、最大値で評価する場合の上限が1.2mmに対して、平均値では、その6割程度として0.75mm程度に設定しておけば、空缶時の軸荷重強度を維持することができる。
なお、単位パネルの最大デプス変化量の最大値が0.75mm以上1.2mm以下の範囲で、かつ、最大デプス変化量が0.4mm以上となる単位パネルについての最大デプス変化量の平均値が、0.54mm以上0.75mm以下の範囲を満たすように設定することもできる。
このようにすれば、最大デプス変化量が安定し、しかも最大値が大きく、より大きな安定した復元音が得られる陽圧缶を実現できる。
なお、多面体壁を構成する単位パネルについては、上記実施形態1の屈曲した菱形形状に限られず、折り構造によって、缶胴の内方に窪んだ形状で、缶胴に作用する内圧によって窪みが小さくなる方向に変形し、缶蓋の開封時に元の形状に復元する種々のパターンに適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 陽圧缶、
2 缶本体
21 缶胴、22 ネック部、23 底部、
3 缶蓋
4 多面体壁
5 単位パネル
5A 上方三角形部分、5B 下方三角形部分
51 斜め稜線、52 横稜線、53(53a~53d) 頂点
50 パネル列
6 :タブ
100 デジマチックインジケータ
120 騒音計
M 中心面
N 中心軸線
dmax 最大デプス変化量
m 横稜線の中点
m2 パネル中心
図1
図2
図3
図4
図5