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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】アーク源
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/32 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
C23C14/32 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020519063
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018000460
(87)【国際公開番号】W WO2019081053
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】62/567,423
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516082866
【氏名又は名称】エリコン サーフェス ソリューションズ アーゲー、 プフェフィコン
【住所又は居所原語表記】Churerstrasse 120 8808 Pfeffikon SZ CH
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(72)【発明者】
【氏名】クラスニッツァー,ジークフリート
(72)【発明者】
【氏名】ハグマン,ユルグ
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0032469(US,A1)
【文献】特開昭61-087865(JP,A)
【文献】特表平03-500469(JP,A)
【文献】特表2004-527662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24 - 14/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却板(11)と、カソード要素としてのターゲット(1)とを備えるカソードアセンブリと、
電極と、
磁気誘導システムと、
を備えるアーク蒸発器であって
記ターゲット(1)は、横断方向に厚みを有し、蒸発されるように配置された前面(1A)と、背面(1B)とを有し、
前記前面(1A)は前記背面(1B)に平行であり、
前記前面(1A)と前記背面(1B)は前記ターゲット(1)の前記厚みによって互いに分離されており、
前記カソードアセンブリは、横断方向に全高を有し、任意の長手方向において全幅の範囲を定める境界を有し、
前記ターゲットは、長手方向において前記カソードアセンブリの中央領域を画定し、前記カソードアセンブリの周辺領域が前記長手方向において前記ターゲットを超えて延在し、
前記電極は、前記ターゲット(1)の前記前面の少なくとも一部を蒸発させるために前記電極と前記ターゲット(1)の前記前面(1A)との間のアークを確立できるように配置され、
前記磁気誘導システムは前記ターゲット(1)の前記背面(1B)の前に配置され、
前記磁気誘導システムは、1つ又はそれ以上の磁場の生成手段を備え、
前記生成手段は、前記ターゲット(1)の断面を通って前記ターゲット(1)の前記前面(1A)の前の空間に沿って延びる磁力線を含む全磁場を生じさせ、前記電極と前記ターゲット(1)の前記前面(1A)との間に前記アークが確立された場合に前記アークが前記ターゲット(1)に接触した結果生じるカソードスポットを誘導し、
アーク源の前記磁気誘導システムは、前記中央領域に配置された、少なくとも1つの磁場の生成手段と、前記周辺領域に配置された、少なくとも1つのさらなる磁場の生成手段とを備え、
生成された前記磁場は、前記アークを誘導して前記ターゲットの前記前面(1A)での前記カソードスポットの経路を制御するため、全磁場を生じさせ、
前記中央領域に配置された生成手段は、磁場を生成する1つの電磁コイル(C3)を備え、
前記周辺領域に配置された生成手段は、2つのさらなる磁場を生成する2つの電磁コイル(C1、C2)を備えることを特徴とする、アーク蒸発器。
【請求項2】
前記磁気誘導システムは、前記生成手段を囲むように配置された強磁性材料(20)を備え、
前記強磁性材料(20)は前記生成手段を囲んで分布し、
前記強磁性材料(20)は前記磁気誘導システムと前記カソードアセンブリとの間に配置されないことを特徴とする、請求項1に記載のアーク蒸発器。
【請求項3】
前記磁気誘導システムは、前記生成手段を囲むように配置された強磁性材料(20)を備え、
前記強磁性材料(20)は前記生成手段を部分的に囲んで分布し、
前記強磁性材料(20)は前記磁気誘導システムと前記カソードアセンブリとの間に配置されず、
前記中央領域に配置された前記電磁コイル(C3)の長さ(S)の上部と、前記周辺領域に配置されているが前記中央領域に配置された前記電磁コイル(C3)に最も近い前記電磁コイル(C2)の長さ(S’)の上部とは、前記強磁性材料(20)で囲まれていないことで、空気を含む空間(Spc)が生じて、生成された磁場の総和から生じる全磁場が、空気を含む空間(Spc)を有しない同様のアーク蒸発器と比較して、前記ターゲット(1)の前記前面(1A)に平行なより多くの磁場線を示すことが可能になることを特徴とする、請求項1に記載のアーク蒸発器。
【請求項4】
記長さ(S)は3mm≦S≦15mmの範囲にあり、
ターゲット直径(D1)は100mm≦D1≦150mmの範囲にあり、
前記カソードアセンブリの全直径(D)は150mm≦D≦200mmの範囲にあることを特徴とする、請求項3に記載のアーク蒸発器。
【請求項5】
前記カソードアセンブリの前記境界は、強磁性材料からなる周囲シールド(15)を備え、
前記周囲シールド(15)は横断方向に全高(H)を有し、
前記全高(H)は、任意の長手方向に延びる磁力線の遮蔽効果を生じさせるコンポーネント(C)を含んで、任意の長手方向における前記磁力線の延長の限界として前記カソードアセンブリの前記境界を確立することを特徴とする、請求項4に記載のアーク蒸発器。
【請求項6】
前記カソードアセンブリは、前記ターゲット直径(D1)の円盤形状ターゲットを備える対称構造を有し、
前記カソードアセンブリは全直径(D)を有し、
前記コンポーネント(C)は、D/20≦C≦D/5の範囲の値を有することを特徴とする、請求項5に記載のアーク蒸発器。
【請求項7】
前記ターゲット直径は100mm≦D1≦150mmの範囲にあり、
前記カソードアセンブリの全直径は150mm≦D≦200mmの範囲にあることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載のアーク蒸発器。
【請求項8】
前記強磁性材料は、純鉄、ARMCO純鉄、構造用鋼又はマルテンサイトクロム鋼であることを特徴とする、請求項から7のいずれか一項に記載のアーク蒸発器。
【請求項9】
前記強磁性材料は構造用鋼S355J2であることを特徴とする、請求項4に記載のアーク蒸発器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のアーク蒸発器を使用して行われるコーティングプロセスであって、
前記磁場の振動を生じさせるコイルシステムを構成する3つの前記電磁コイルを調整することで、前記アーク蒸発器が作動されて、前記ターゲットの前記前面(1A)で動く前記アークが異なる直径の円弧の軌跡を描くよう誘導されるように振動周波数を調整することを特徴とするコーティングプロセス。
【請求項11】
円形の前記ターゲットが使用され、
前記ターゲットは第1の材料(M1)と第2の材料(M2)とを含み、
前記第1の材料(M1)は、蒸発される前記ターゲットの外側環状領域を形成し、
前記第2の材料(M2)は、蒸発される前記ターゲットの内側領域を形成することを特徴とする、請求項10に記載のコーティングプロセス。
【請求項12】
前記ターゲットは、前記ターゲットの表面で操作されている前記円弧の前記直径を変更することで、蒸発されている前記ターゲットの材料が変更されるように配置された2つ又はそれ以上の材料を含むことを特徴とする、請求項11に記載のコーティングプロセス。
【請求項13】
少なくとも2つの前記材料はアルミニウムとチタンであることを特徴とする、請求項12に記載のコーティングプロセス。
【請求項14】
前記アーク蒸発器の作動中に形成されたコーティングが、多層構造、好ましくは多層ナノ層構造を示すことを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載のコーティングプロセス。
【請求項15】
前記振動周波数は0.1Hzから50Hzの間の範囲になるように調整されることを特徴とする、請求項10から14のいずれか一項に記載のコーティングプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変磁場を含む新規なアーク源に関する。
【0002】
本発明のアーク源は、コーティングされる基板表面にコーティング膜を堆積するためのコーティング材料を生成するために蒸発されるカソード材料と、コーティングプロセス中にアーク軌道を制御するため時空間可変磁場を生成する手段とを備える。本発明はまた、本発明のアーク源を備える装置及び本発明のアーク源を使用する方法に関する。
【0003】
以下、ターゲットという用語は、蒸発されるカソード材料を指すために使用される。
【0004】
本発明の文脈において、アーク源という用語は、アーク放電の影響によって蒸発されるカソード材料として操作されるターゲットを含むアーク蒸発器を指すために使用される。
【0005】
本発明は、アーク蒸発器の分野に属し、より詳細には、磁場の発生によってアーク軌道の誘導を生じさせる手段を備えるアーク蒸発器の分野に属する。
【背景技術】
【0006】
アーク蒸発器は、通常、チャンバ自体に加えて、少なくとも1つの電極及び1つのカソードを備え、それらの間に電気アークが確立される。蒸発するカソード表面の侵食を制御して液滴形成を低減する目的でアークの動きのランダムな性質を防止又は低減するため、アークの動きを制御する制御又は磁気誘導システムが開発されている。このような誘導システムは、電気アークの動きに影響を与える磁場を形成し、変更する。この種の様々なシステムを説明する特許又は特許出願の公報が幾つかある。
【0007】
Goikoetxea Larrinagaは、例えば、出願番号12/097,28の米国特許出願において、磁気誘導システムを備えるアーク蒸発器について説明している。この文献では、磁気誘導システムが、カソードアークを制御でき、カソードプレートの広範囲に亘りカソードアークを移動させるように設計されていることが説明されている。より詳細には、磁気誘導システムは、カソード点(カソードスポットともいう)を誘導可能であるべきである。カソード点は、カソードへのアークの衝突点として理解されるべきである。磁気誘導システムを使用することで、カソード点は、実質的に無数の可能な経路の中から個別に選択された経路に従って誘導されるべきである。磁気誘導システムは、蒸発チャンバの完全に外側に配置されるように設計されている。このアーク蒸発器は、カソード要素として使用される蒸発ターゲット(直径100mmの円形の蒸発器ターゲット)と、支持部を形成するように設計された強磁性コアと、磁場を生成する磁気デバイスとを備える。磁気デバイスは、中心極と周辺極、及び第1の磁場を生成する手段と第2の磁場を生成する手段を備え、その結果、それぞれの磁場成分がカソード要素に対応する全磁場に寄与する。
【0008】
現在利用可能なアーク源(即ち、アーク蒸発器)を使用する場合、アーク軌道を誘導してアーク源のターゲット表面でのカソードスポットの経路を制御するために生成される磁場を調整するための適応性が、磁場の時空的変化を可能にするには不十分であるという欠点があり、コーティングプロセス中の同じアーク源の動作中に、カソードスポットの後続する様々な経路をより正確に調整する必要が生じる。
【発明の概要】
【0009】
従来技術のアーク源の上記欠点を考慮して、本発明の主な目的は、生成された磁場の局所特性に関して随意に可変であるだけでなく、生成された磁場の局所(空間的)特性変化の周波数調整に関して随意に調整可能な磁場を生成可能にする代替構成を有する新規なアーク源を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】コーティングチャンバの構成を示す。
図2】コーティングチャンバの別の構成を示す。
図3】従来技術の開放磁気ループの使用(図3aを参照)と本発明の遮断された磁場の使用(図3bを参照)との比較を示す。
図4】2つの円形ターゲットを使用して得られた条件を考慮して計算された磁力線のグラフを示す。
図5】磁石構成で調整できる軸対称構成の範囲の様々な磁場を示す。
図6図6aは、本発明のアーク源の好ましい実施形態に対応する、磁気誘導システムにおいて磁場の生成手段の可能な構成を概略的に示す。図6bは、強磁性材料20が磁場を生成する手段を完全に囲んでいない本発明のさらに好ましい実施形態を概略的に示す。
図7図7aは、より大きい直径を有する円弧の軌跡を示す。図7bは、より小さい直径を有する円弧の軌跡を示す。
図8】3つの異なる材料M1、M2、M3で形成された円形のターゲットを例示的に示す。
図9】コーティングチャンバの壁の高さに沿ってより高密度なパッキング分布で配置された5つの本発明のアーク源を使用して堆積したAlTiNコーティングの堆積速度(任意単位)に関する高い均一性を、同じコーティングチャンバの同じ壁の高さに沿って配置された3つの本発明のアーク源を使用した場合と比較して示す。
図10】本発明ではないアーク源を備えるコーティング構成を使用する場合と、本発明のアーク源を備えるコーティング構成を使用する場合との、堆積速度(任意単位)の比較を示す。
図11】本発明ではないアーク源を備えるコーティング構成を使用する場合と、本発明のアーク源を備えるコーティング構成を使用する場合との、コーティング量/蒸発材料に関して計算されたコーティング効率の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の目的を達成するために、発明者らは、磁場構成に関して高い適応性を可能にするように設計された、本発明の新規なアーク源を提案する。これは、詳細には、本発明の文脈において、空間分布と場の強さが、独立して調整可能に設計されていることを意味する。このようにして、軸対称構成での磁場に対する広い範囲での磁石の調整可能性に関して高い適応性を得ることができる。
【0012】
図5は、磁石構成で調整できる軸対称構成の範囲の様々な磁場を示す。
【0013】
具体的には、本発明のアーク源(アーク蒸発器)は以下を備える。
・冷却板11と、カソード要素としてのターゲット1とを備えるカソードアセンブリ。ターゲット1は、好ましくは円盤形状のターゲットであるが、例えば矩形のターゲットであってもよく、ターゲット1は、交差方向に厚みを有し、蒸発されるように配置された前面1Aと、背面1Bとを有し、前面1Aは背面1Bに平行であり、前面1Aと背面1Bはターゲット1の厚みによって互いに分離されており、カソードアセンブリは、横断方向に全高を有し、任意の長手方向において全振幅の範囲を定める境界を有する。
・ターゲット1の前面の少なくとも一部を蒸発させるために電極とターゲット1の前面1Aとの間のアークを確立できるようにするため、既知の方法で配置された電極(図6a及び図6bに図示せず)。
・ターゲット1の背面1Bの前に配置された磁気誘導システム。磁気誘導システムは、1つ又はそれ以上の磁場の生成手段を備え、該手段は、ターゲット1の断面を通ってターゲット1の前面1Aの前の空間に沿って延びる磁力線を含む全磁場を生じさせ、電極とターゲット1の前面1Aとの間にアークが確立された場合にアークがターゲット1に接触した結果生じるカソードスポットを誘導する。アーク源の磁気誘導システムは、中央領域に配置された、少なくとも1つの磁場の生成手段と、周辺領域に配置された、少なくとも1つのさらなる磁場の生成手段とを備え、このようにして生成された磁場は、アークを誘導してターゲットの前面1Aでのカソードスポットの経路を制御するため、全磁場を生じさせる。
磁気誘導システムにおいて、
・該手段は、磁場を生成するための中央領域における1つの電磁コイルC3と、2つのさらなる磁場を生成するための周辺領域における2つの電磁コイルC1、C2とを備える。
【0014】
特に3つの本発明の電磁コイルを備えた磁石システム(磁気誘導システムともいう)を使用することによる磁場生成の詳細:
すぐ上で述べた好ましい実施形態の好ましい変形例によれば、磁石システムは、電磁コイルのみからなる(以下、この磁石システムをコイルシステムともいう)。
【0015】
中央領域に配置された、少なくとも1つの磁場の生成手段と、周辺領域に配置された、少なくとも1つのさらなる磁場の生成手段とを備えるアーク源の磁気誘導システムを使用することで、このようにして生成された磁場は、アークを誘導してターゲットの前面1Aでのカソードスポットの経路を制御するため、全磁場を生じさせる。これに関して、図6aは、本発明のアーク源の好ましい実施形態に対応する、磁気誘導システムにおいて磁場の生成手段の可能な構成を概略的に示す。この好ましい実施形態において、該手段は、磁場を生成するための中央領域における1つの電磁コイルC3と、2つのさらなる磁場を生成するための周辺領域における2つの電磁コイルC1、C2とを備える。
【0016】
図6a及び図6bは、すぐ上で述べた変形例による概略的な本発明のアーク源2を示す。この変形例では、2つの電磁コイルC1、C2が外部(周辺)の磁石リングとして機能するために使用される。これら2つのコイルC1、C2は、互いに相殺できるように配置される必要がある。これら2つのコイルC1、C2は、例えば、逆平行に分極されてもよい。C1のC2に対する関係(C1/C2)が磁気集束を決定する。本発明のアーク源のこの変形例のコイルシステムは、ターゲットの中心と磁場強度の大きさに影響を与える、中心領域(中央領域)に配置された第3のコイルをさらに備える。このコイルシステムは、同等の永久磁石設定と同じ磁場を生成でき、磁石を動かさずに磁場強度を変更できるという大きな利点を有する。
【0017】
好ましくは、本発明のアーク源は、電磁コイル及び軟磁性材料(強磁性材料ともいう)を備える磁石システムを備える。この好ましい実施形態において、純鉄が非常に適切な軟磁性材料である。また、低炭素鋼が軟磁性材料として適切であり、下記種類の強磁性材料も、この好ましい実施形態の軟磁性材料として適切である。
【0018】
強磁性材料は、飽和度が高く残留磁気が小さい軟鉄材料である。本発明の文脈において、使用するのが好ましい強磁性材料には、純鉄、ARMCO純鉄、構造用鋼(例えば、S235JR又はS355J2)、マルテンサイトクロム鋼(例えば、1.4021)がある。より好ましくは、構造用鋼S355J2が使用されてもよい。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、図6aに示すように、電磁コイルC1、C2、C3は、軟磁性材料20によって囲まれている。
【0020】
本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、磁気誘導システムは、図6aに例示的に示すように、磁場の生成手段を包囲する(言い換えれば、囲む)ように配置された強磁性材料20を備える。強磁性材料20は該手段を囲んで分布しているが、磁気誘導システムとカソードアセンブリとの間に強磁性材料20は配置されていないことに留意されたい。電磁コイルC1、C2、C3は、軟磁性材料20によって囲まれている。
【0021】
図6bは、強磁性材料20が磁場を生成する手段を完全に囲んでいない本発明のさらに好ましい実施形態を概略的に示す。この好ましい実施形態では、中央領域に配置された電磁コイル(この例ではC3)の長さSの上部と、周辺領域に配置されているが中央領域に配置された電磁コイルに最も近い電磁コイル(この例ではC2)の長さS’の上部とは、強磁性材料20で囲まれていないので、空気を含む空間Spcが生じ、このようにして、生成された磁場の総和から生じる全磁場が、空気を含む空間Spcを有しない同様のアーク蒸発器と比較して、ターゲット1の前面1Aに平行なより多くの磁場線を示すことが可能になる。この好ましい実施形態を使用することで、ターゲット直径が100mm≦D1≦150mmの範囲にあり、カソードアセンブリの全直径が150mm≦D≦200mmの範囲にある場合、上部の長さSは3mm≦S≦15mmの範囲にあることが推奨される。
【0022】
本発明の上記実施形態に関して、以下を考慮することが重要である。
・コイル設定の冷却が必要である。
・軟磁性材料は、飽和磁束密度が高く残留磁気が小さい必要がある。
【0023】
3つの本発明の電磁コイルを備えたコイルシステムの電流及び極性を変化させることによる磁場形状の変化:
図6に示すように配置された3つの電磁コイルを備えたコイルシステムを調整することにより、図7a、図7bに例示的に示すように、ターゲット表面で動くアークが異なる直径の円弧の軌跡を描くよう誘導されるように振動周波数を調整することで、磁場を振動させることが可能である。
【0024】
図7aは、より大きい直径を有する円弧の軌跡を示し、これにより、ターゲット境界に近いターゲット表面の領域に含まれるターゲット材料を蒸発させることを可能にする。図7bは、より小さい直径を有する円弧の軌跡を示し、これにより、ターゲットの中心に近いターゲット表面の領域に含まれるターゲット材料を蒸発させることを可能にする。図7a、図7bに示す例では、蒸発されるターゲットの外側環状領域を形成する第1の材料M1としてアルミニウムが使用され、蒸発されるターゲットの内側領域を形成する第2の材料M2としてチタンが使用された。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、アーク源は、上述のような3つの電磁コイルを備えたコイルシステムと、ターゲット表面で操作される円形のアークの直径を変化させることで蒸発されるターゲット材料が変更されるように配置された少なくとも2つの材料を含む円形のターゲットとを備える。
【0026】
図8は、3つの異なる材料M1、M2、M3で形成された円形のターゲットを例示的に示す。第1の材料M1が配置されて、ターゲットの境界を含むターゲットの外側環状領域が形成され、第3の材料M3が配置されて、ターゲットの中心を含む円が形成され、第2の材料M2が配置されて、第3の材料M3で形成される中央領域と第1の材料M1で形成される外側領域との間にあるターゲットの環状領域が形成される。
【0027】
2つ又は3つ又はそれ以上の環状部分又は環状部分及び円形部分を形成する本発明のターゲットに含まれる2つ又は3つ又はそれ以上の材料を蒸発させるため、発明者らは、ターゲット表面で動くアークを、堆積されるコーティングの所望の組成及び構成に従って、ターゲットの各環状部分又は円形部分に含まれる各材料を蒸発させることが可能な直径を有する円弧の軌跡を描くように誘導するために、磁場を振動させることを提案する。
【0028】
本発明の上記の好ましい実施形態は、例えば、振動周波数を変化させることで操作されてもよい。
【0029】
例えば、コーティング堆積が行われている少なくとも一部の間に、0Hzの振動周波数を調整することにより、コーティング堆積条件の変化は生じないであろう。そのような場合、一定のコーティング特性を示すコーティング層を堆積させることが可能である。したがって、1つ又はそれ以上の層を含むコーティングシステムに含まれる1つの層を堆積させることができ、単層コーティングを堆積させることもできる。
【0030】
そうでない場合、0Hzより高い振動周波数(>0Hz)を調整することにより、様々な層を含む構成を有する多層コーティングを堆積させることができ、この様々な層はその構成において周期的に繰り返され、個々の層はそれぞれナノメートルの範囲の厚さを含む所定の層厚さを有し、これにより、ナノ層コーティング及び多層ナノコーティングを生成することが可能になる。
【0031】
本発明の3つのコイルC1、C2、C3を使用することにより、50Hzまで、即ち、0Hzから50Hzの間の値に対応する振動周波数を調整することが可能であった。
【0032】
本発明のアーク源の好ましい使用によれば、アーク源は、振動周波数を0.1Hz以上(例えば、0.1Hzから10Hzの間又は0.1Hzから50Hzの間)の値を有するように調整することで、作動される。
【0033】
本発明のアーク源のさらに好ましい使用によれば、アーク源は、振動周波数を10Hz以上(例えば、10Hzから50Hzの間)の値を有するように調整することで、作動される。
【0034】
本発明のアーク源をこのように作動させることにより、異なる磁場形状間で振動させることが可能である。
【0035】
本発明のアーク源のこの種の動作に関連する利点の詳細:
・可変構造を示す構成を有するコーティングを生成するために使用可能な振動プラズマ特性を組み合わせることができる。例えば、異なる組成及び異なる層厚さを有する層を含む多層構造。
・所望のカソードの経路をよりよく制御することで、ターゲットの侵食に対する制御を向上できる。
・特に金属製のターゲットを使用して非反応性コーティングプロセスが行われる場合、又は、一般にアークスポットの数が少ない材料(例えば、金属又は炭素)からなるターゲットが使用される場合に、ターゲットにアークスポットが彫り込まれることを防ぐ。
・同じアーク源を使用してナノ層構造を生成する。
【0036】
さらに、効率を向上させるためにより高密度のパッキング構成を形成するアーク源を配置可能にするため、本発明のアーク源(アーク蒸発器)は周囲シールド15を備えてもよく、カソードアセンブリの境界は強磁性材料からなる周囲シールド15を備え、周囲シールド15は横断方向に全高Hを有し、全高Hは、任意の長手方向に延びる磁力線の遮蔽効果を生じさせるコンポーネントCを含み、このようにして、任意の長手方向における磁力線の延長の限界としてカソードアセンブリの境界を確立してもよい。
【0037】
周囲のシールド15の全高Hの適切なコンポーネントCを選択するため、カソードアセンブリの寸法を考慮する必要がある。
【0038】
例えば、図6aに概略的に示す例の場合のように、カソードアセンブリがターゲット直径D1の円盤形状ターゲットを備える対称構造を有し、カソードアセンブリが全直径Dを有する場合、周囲シールド15の全高HのコンポーネントCの推奨値は、D/20≦C≦D/5の範囲であってもよい。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、ターゲット直径は100mm≦D1≦150mmの範囲にあり、カソードアセンブリの全直径は150mm≦D≦200mmの範囲にある。
【0040】
図9は、コーティングチャンバの壁の高さに沿ってより高密度なパッキング分布で配置された5つの本発明のアーク源を使用して堆積したAlTiNコーティングの堆積速度(任意単位)に関する高い均一性を、同じコーティングチャンバの同じ壁の高さに沿って配置された3つの本発明のアーク源を使用した場合と比較して示す。比較を可能にするため、両方の場合で同じコーティングパラメータが使用されている。両方の場合において高い均一性が得られるが、特に、より多くのアーク源を使用することで、この場合は5つのアーク源を使用することで、より高い均一性(つまり、<±10%の低い非均一性)が得られることが観察できる。
【0041】
図10は、本発明ではないアーク源を備えるコーティング構成を使用する場合と、本発明のアーク源を備えるコーティング構成を使用する場合との、堆積速度(任意単位)の比較を示す。該速度はコーティングライン毎に考察された。本発明のアーク源を備える構成を使用することにより、約2倍の堆積速度の増加が達成された。
【0042】
図11は、本発明ではないアーク源を備えるコーティング構成を使用する場合と、本発明のアーク源を備えるコーティング構成を使用する場合との、コーティング量/蒸発材料に関して計算されたコーティング効率の比較を示す。本発明のアーク源を備える構成を使用することにより、ターゲットから蒸発した材料の利用において約50%の増加が達成された。これは、本発明のアーク源を使用することにより、ターゲットから蒸発した材料から、コーティングされる基板表面に約50%多く堆積したことを意味する。
【0043】
図10に示す結果:
・本発明ではない例:2つの本発明ではないアーク源。各アーク源は、直径150mmのターゲットを備え、150Aのアーク電流を使用して作動される。2つの本発明ではないアーク源は、400mmのコーティングチャンバの壁の高さに沿って配置されている。
・本発明の例:3つの本発明のアーク源。各アーク源は、直径150mmのターゲットを備え、150Aのアーク電流を使用して作動される。3つの本発明のアーク源は、500mmのコーティングチャンバの壁の高さに沿って配置されている。
【0044】
2つの本発明ではないアーク源の代わりに、3つの本発明のアーク源が使用されたので、堆積速度の増加は1.5倍と予測されたが、約2倍であったので、増加はかなり大きかった。このような結果は、本発明のアーク源を使用することにより達成できる効率の大きな利点の根拠を示す。
【0045】
図11に示す結果:
・本発明ではない例:2つの本発明ではないアーク源。各アーク源は、直径150mmのターゲットを備え、200Aのアーク電流を使用して作動される。2つの本発明ではないアーク源は、400mmのコーティングチャンバの壁の高さに沿って配置されている。
・本発明の例:3つの本発明のアーク源。各アーク源は、直径150mmのターゲットを備え、200Aのアーク電流を使用して作動される。3つの本発明のアーク源は、500mmのコーティングチャンバの壁の高さに沿って配置されている。
【0046】
各々の場合(つまり、本発明でないアーク源を使用する場合と本発明のアーク源を使用する場合)において、効率は、コーティング量を蒸発材料の総量で割った関係を計算することにより、決定された。計算のため、コーティングされた基板上に堆積されたコーティングの総量と、ターゲットから蒸発した材料の総量とが決定された。蒸発した材料の総量は、コーティング後の各ターゲットの侵食を測定し、各ターゲットの蒸発した材料に対応する侵食された量を追加することにより、決定された。本発明のアーク源を使用することにより、約1.5倍の増加が達成された。このような結果は、本発明のアーク源を使用することにより達成できる効率の大きな利点の根拠を示す。
【0047】
上記のように新規で革新的なアーク源を構成するための1つ又はそれ以上の属性を選択することにより、それぞれ次の目的のうち1つ又はそれ以上を達成できる。
同じ種類のアーク源を使用することによりさらに下記の目的の組み合わせを達成するため:
・高い効率と生産性
・磁場変化に対する高い適応性
・反応性気体が気体イオン化又は低イオン化されているか否かに関わらず、例えば、高イオン化窒素ガス又は低イオン化窒素ガスが必要な場合に、反応性雰囲気内で効率的に作動すること
・任意の種類のコーティング(例えば、窒化物、酸化物、炭化物又はこれらのうちの組み合わせ)の堆積に対する適応性
・アーク源作動中の全体的な効率の向上、特に以下による運用コストの削減:
・エネルギー効率の向上
・カソード材料から蒸発したコーティング材料の最大利用に関する効率の向上
・コーティング膜堆積速度の上昇
【0048】
発明者らはさらに、効率を向上させるため、コーティングされる基板表面のより近くにより高密度のパッキング構成でアーク源を配置可能にできるアーク源を構築することを提案する。
【0049】
このようにして、例えば次のようにして効率を向上させることが可能である。
・蒸発されるカソード材料とコーティングされる基板表面との間の距離を短くする、つまり、ターゲットまでの基板の距離を短くする。
・蒸発されるカソードを備えるコーティングチャンバ壁の領域内で、より多くのカソードを互いにより近くに配置する、即ち、アーク源をより高密度でパッキングすることで、蒸発されるカソード材料の表面を増加させる。
・磁場がよりよく集中することを可能にする、即ち、より集中した磁場を得るために使用される磁気手段の適応性と性能を高める。
・蒸発されるカソード材料の表面を小さくする、詳細には、円形のターゲットが使用される場合、ターゲット直径を縮める、即ち、ターゲット直径を小さくする。
【0050】
本発明の文脈における効率の向上に関する上記態様の幾つかをよりよく説明するため、図1及び図2は、コーティングチャンバの2つの異なる構成を示す。図1において、それぞれ直径Dbを有する2つの円形ターゲット1が、コーティングされる基板3から距離Lb離れて、コーティングチャンバ内に配置される。図2において、それぞれ直径Dsを有する3つの円形ターゲット1が、コーティングされる基板3から距離Ls離れて、チャンバ内に配置される。図2は、カソードからカソードまでの距離が短く、さらにカソードから基板までの距離が短い可能性があるため(Lb>Ls)、アーク源をより高密度でパッキングするコーティング構成を示し、これは、詳細には、ターゲット直径が小さい場合(Db>Ds)にも可能である。これは、例えば、図1及び図2に示す構成の概略図を見て比較することで、確認できる。
【0051】
本発明のアーク源の上記実施形態を使用することにより、従来技術の欠点を解消し、以下の利点を得ることができる。
・源の間の「クロストーク」を管理する(「クロストーク」という用語は、磁場クロストーク、即ち、2つ又はそれ以上のアーク源の2つ又はそれ以上の磁場間の磁気干渉を意味する。)。
・利用可能な磁気システムや利用可能なアーク蒸発技術に対応可能な新規な特性を有する新規なアーク源を開発する。
・直径の小さいターゲットを使用する(詳細には、適切なアノードを設計すること、及び、磁場を生成するための適切な磁石システムを設計することによる困難性のため)。
【0052】
周囲シールド(本発明の文脈において、高透磁率の回路に組み込まれた磁気シールドともいう)の使用の詳細:
本発明の新規なアーク源は、図3bに示すように、遮断された磁場を使用することで、源から源までの狭い距離を示すアーク源配置(カソード配置ともいう)を実施可能にする。
【0053】
既に上で説明したように、遮断された磁場(以下、分路された磁気ループともいう)は、本発明によれば、アーク源に軟磁性材料シールド(強磁性材料からなる周囲シールドともいう)(例えば、軟鉄シールド又は低炭素鋼シールド)を設けることにより得られる。このようにして、磁場の生成手段の軟磁性材料の分路(例えば、軟鉄の分路)により、磁気干渉を10倍を超えて低減できる。上記のような軟磁性材料シールド(詳細には、ターゲットを囲む軟鉄シールド又は低炭素鋼シールド)と直径の小さい円形ターゲットとを組み合わせた本発明のアーク源を使用することで、ターゲットをより高密度でパッキングすることが可能になる。この組み合わせは、軸対称のアノード定義についても重要である。詳細には、このようにして、円形ターゲットを囲み、全ての方向に(言い換えれば、アノードを形成する全ての点において対称に)同じ効果を有する1つ又はそれ以上の環状アノードを使用できるためである。
【0054】
図3は、従来技術の開放磁気ループの使用(図3aを参照)と本発明の遮断された磁場の使用(図3bを参照)との比較を示す。
【0055】
この例示的な例から、図3aに示すように、開放磁気ループを使用すると、隣接する源が互いに近くに配置されている場合、隣接する源との干渉が生じるであろうことは明らかである。
【0056】
言い換えれば、第1のアーク源が開放磁気ループを使用して作動される場合、一部の磁力線はアーク源10のターゲット1の横に半径方向の距離に沿って延びる。このような磁力線は、本発明の文脈において、外部磁力線(MLE)といい、図3aに例示的に示されている。この例から、隣接する源が別の源の外部磁力線(MLE)で占められている領域内に含まれる半径方向の距離に配置されている場合、隣接する源との干渉が生じるであろうことは明らかである。
【0057】
本発明をよりよく説明するために、それに沿って外部磁力線(MLE)が延びるアーク源10の横の半径方向の距離を、外部磁力線を含む半径方向の距離といい、図3に示すように、LRDMLEとして示す。
【0058】
本発明によれば、図3bに例示的に示すように、遮断された磁場が使用される。この場合、外部磁力線(MLE)はアーク源10の横の半径方向の大きな距離に沿って延びることができない。そのため、外部磁力線を含む半径方向の距離は実質的にゼロであり、LRDMLE=0である。このようにして、隣接する源との干渉を生じさせずに、互いの間の半径方向の距離が近い2つ又はそれ以上の源を配置できる。
【0059】
図4は、2つの円形ターゲットを使用して得られた条件を考慮して計算された磁力線のグラフを示す。各ターゲットの直径は100mmで、ターゲットは、ターゲットからターゲットまでの距離が約150mmになるよう配置されている(以下、ターゲットからターゲットまでの距離をTT距離ともいう。この距離は、半径方向に隣り合うように配置された2つの隣接するターゲットの間の距離として理解される。該距離は、半径方向において2つの隣接するターゲットのうち一方の中心点から他方の隣接するターゲットの中心点までを測定したものである)。
【0060】
図4において、(軟鉄シールドを備えない)開放磁気ループを備えるアーク源と(軟鉄シールドを備える)分路された磁気ループを備える本発明のアーク源が使用される場合、半径方向に沿った磁場の大きさの分布の違いを観察することが可能である。分路された磁気ループを備える本発明のアーク源が使用される場合、磁場の大きさは、150mm未満のTT距離で軟鉄シールドの影響によって、無視できる程度である、或いは、完全に打ち消される。反対に、開放磁気ループを備えるアーク源が使用される場合、磁場の大きさは、少なくとも250mmのTT距離で、無視できる程度であるのみである。
【0061】
本発明の新規なアーク源は、磁場構成に関して高い適応性を有することができるように設計されてもよい。これは、詳細には、本発明の文脈において、空間分布と磁場の強さが独立して調整可能に設計されていることを意味する。このようにして、軸対称構成での磁場に対する広い範囲での磁石の調整可能性に関して高い適応性を得ることができる。
【0062】
図5は、磁石構成で調整できる軸対称構成の範囲の様々な磁場を示す。
【0063】
本発明は、本発明のアーク蒸発器を使用して行われるコーティングプロセスにも関する。
【0064】
詳細には:
・上記実施形態のいずれかによるアーク蒸発器を使用して行われるコーティングプロセス。アーク蒸発器は、磁場の振動を生成するコイルシステムを構成する3つの電磁コイルを調整することで作動され、これにより、異なる直径を有する円弧の軌跡を描くように、ターゲットの前面1Aで動く弧を誘導するように振動周波数を調整する。
・蒸発されるターゲットの外側の環状領域を形成する第1の材料M1と、蒸発されるターゲットの内側の領域を形成する第2の材料M2とを含む円形ターゲットが使用される、上記のコーティングプロセス。
・ターゲットは、ターゲット表面で操作されている円弧の直径を変更することで蒸発されているターゲット材料が変更されるように配置された2つ又はそれ以上の材料を含む、上記のコーティングプロセス。
・少なくとも2つの材料はアルミニウムとチタンである、上記のコーティングプロセス。
・アーク蒸発器の作動中に形成されたコーティングが多層構造、好ましくは多層ナノ層構造を示す、上記のコーティングプロセスのいずれか。

図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11