(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】無線通信システム、通信制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/00 20090101AFI20230118BHJP
H04W 60/04 20090101ALI20230118BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20230118BHJP
【FI】
H04W48/00 110
H04W60/04
H04W72/04 132
(21)【出願番号】P 2018160881
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【氏名又は名称】大坂 知美
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【氏名又は名称】宮本 一浩
(72)【発明者】
【氏名】岸田 博文
【審査官】田部井 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-116566(JP,A)
【文献】特開2010-136350(JP,A)
【文献】特表2004-512787(JP,A)
【文献】特開2000-036980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信制御装置と、
前記通信制御装置に接続された複数の中継装置と、
前記複数の中継装置と、複数の無線通信回線を介して無線通信をそれぞれ行う複数の移動無線通信装置と
を備える無線通信システムであって、
前記通信制御装置は、複数の前記中継装置それぞれに、
第1の情報を送信し、
複数の前記中継装置それぞれは、前記通信制御装置から受信した前記第1の情報を、通信用に割り当てられた複数の
前記無線通信回線の何れかを介して
、複数の前記移動無線通信装置に送信
し、
複数の前記移動無線通信装置それぞれは、前記複数の無線通信回線をスキャンし
、前記スキャンによって前記第1の情報を受信したとき、前記第1の情報を受信した無線通信回線を、自己が以後の通信で使用する通信回線に設定
し、
前記設定の終了後、前記複数の無線通信回線の前記スキャンを再開する
無線通信システム。
【請求項2】
複数の前記移動無線通信装置それぞれは、前記第1の情報を受信したとき、この移動無線通信装置を識別する第2の情報を、
前記第1の情報を受信した無線通信回線と前記中継装置とを介して前記通信制御装置に送信する
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記通信制御装置は、
前記中継装置の識別情報と、前記中継装置と通信可能な前記移動無線通信装置の識別情報と、前記中継装置に通信用に割り当てられた無線通信回線とが対応付けられた位置情報を記憶し、
複数の前記移動無線通信装置のいずれかから
複数の前記中継装置のいずれかを介して前記第2の情報を受信したときに、この移動無線通信装置が、
該中継装置との間での通信が可能な位置にあると判断
し、この移動無線通信装置の識別情報を該中継装置の識別情報に対応付けて、前記位置情報を更新する
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記通信制御装置は、複数の前記移動無線通信装置同士が前記通信制御装置を介して通信しているとき、これらの移動無線通信装置それぞれに送る情報に、これらの移動無線通信装置それぞれと前記通信制御装置とを中継する複数の前記中継装置のいずれかが通信に用いる無線通信回線を指示する第3の情報を含ませ、
複数の前記移動無線通信装置それぞれは、前記通信制御装置からの情報に、前記第3の情報が含まれるとき、この第3の情報が示す無線通信回線を、自己が以後通信に使用する前記通信回線に設定する
請求項1から3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
複数の中継装置に接続された通信制御装置が、
複数の移動無線通信装置と複数の無線通信回線を介して無線通信をそれぞれ行う複数の前記中継装置それぞれに、第1の情報を送信し、
複数の前記中継装置それぞれが、
前記通信制御装置から受信した前記第1の情報を、通信用に割り当てられた複数の前記無線通信回線の何れかを介して、複数の前記移動無線通信装置に送信し、
複数の前記移動無線通信装置それぞれが、
前記複数の無線通信回線をスキャンし、前記スキャンによって前記第1の情報を受信したとき、前記第1の情報を受信した無線通信回線を、自己が以後
の通信
で使用する通信回線に設定
し、
前記設定の終了後、前記複数の無線通信回線の前記スキャンを再開する
通信制御方法。
【請求項6】
通信制御装置に接続された複数の中継装置と複数の無線通信回線を介して無線通信をそれぞれ行う複数の移動無線通信装置のコンピュータに、
前記複数の無線通信回線をスキャンするステップと、
前記スキャンによって第1の情報を受信したとき、前記第1の情報を受信した無線通信回線を、自己が以後
の通信
で使用する通信回線に設定するステップと
、
前記設定の終了後、前記複数の無線通信回線の前記スキャンを再開するステップと、
を実行させ
るプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、通信制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、通信制御装置(上位装置)と、複数の中継装置(基地局)と、複数の中継装置のいずれかに無線通信回線を介して接続された複数の移動無線通信装置とから構成される無線通信システムが開示されている。移動無線通信装置は、任意の中継装置の通信エリアに移動可能であり、移動無線通信装置間の通信を可能とするためには、どの移動無線通信装置がどの中継装置の通信エリアに位置しているかを把握する必要がある。このため、通信制御装置は、中継装置を周期的に制御して、各中継装置の通信エリアに位置する通信制御装置を特定し、その位置情報を登録する位置情報登録処理を行う。通信制御装置は、登録した情報に基づいて、移動無線通信装置への通信用チャネルの設定などの通信制御処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の無線通信システムでは、通信制御装置の制御に基づいて、複数の中継装置それぞれが、位置情報登録処理と通信制御処理とを行う。このため、その処理負荷が大きく、無線通信システムに必要とされる多数の中継装置のコストを高くなり、ひいては無線通信システムのコストを高くしてしまう。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてされたものであり、中継装置の処理負荷を軽くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる無線通信システムは、
通信制御装置と、
前記通信制御装置に接続された複数の中継装置と、
前記複数の中継装置と、複数の無線通信回線を介して無線通信をそれぞれ行う複数の移動無線通信装置と
を備える無線通信システムであって、
前記通信制御装置は、複数の前記中継装置それぞれに、第1の情報を送信し、
複数の前記中継装置それぞれは、前記通信制御装置から受信した前記第1の情報を、通信用に割り当てられた複数の前記無線通信回線の何れかを介して、複数の前記移動無線通信装置に送信し、
複数の前記移動無線通信装置それぞれは、前記複数の無線通信回線をスキャンし、前記スキャンによって前記第1の情報を受信したとき、前記第1の情報を受信した無線通信回線を、自己が以後の通信で使用する通信回線に設定し、
前記設定の終了後、前記複数の無線通信回線の前記スキャンを再開する。
【0007】
好適には、複数の前記移動無線通信装置それぞれは、前記第1の情報を受信したとき、この移動無線通信装置を識別する第2の情報を、前記第1の情報を受信した無線通信回線と前記中継装置とを介して前記通信制御装置に送信する。
【0008】
好適には、前記通信制御装置は、前記中継装置の識別情報と、前記中継装置と通信可能な前記移動無線通信装置の識別情報と、前記中継装置に通信用に割り当てられた無線通信回線とが対応付けられた位置情報を記憶し、複数の前記移動無線通信装置のいずれかから複数の前記中継装置のいずれかを介して前記第2の情報を受信したときに、この移動無線通信装置が、前記中継装置との間での通信が可能な位置にあると判断し、この移動無線通信装置の識別情報を該中継装置の識別情報に対応付けて、前記位置情報を更新する。
【0009】
好適には、前記通信制御装置は、複数の前記移動無線通信装置同士が前記通信制御装置を介して通信しているとき、これらの移動無線通信装置それぞれに送る情報に、これらの移動無線通信装置それぞれと前記通信制御装置とを中継する複数の前記中継装置のいずれかが通信に用いる無線通信回線を指示する第3の情報を含ませ、複数の前記移動無線通信装置それぞれは、前記通信制御装置からの情報に、前記第3の情報が含まれるとき、この第3の情報が示す無線通信回線を、自己が以後通信に使用する前記通信回線に設定する。
【0012】
また、本発明にかかる通信制御方法は、
複数の中継装置に接続された通信制御装置が、
複数の移動無線通信装置と複数の無線通信回線を介して無線通信をそれぞれ行う複数の前記中継装置それぞれに、第1の情報を送信し、
複数の前記中継装置それぞれが、
前記通信制御装置から受信した前記第1の情報を、通信用に割り当てられた複数の前記無線通信回線の何れかを介して、複数の前記移動無線通信装置に送信し、
複数の前記移動無線通信装置それぞれが、
前記複数の無線通信回線をスキャンし、前記スキャンによって前記第1の情報を受信したとき、前記第1の情報を受信した無線通信回線を、自己が以後の通信で使用する通信回線に設定し、
前記設定の終了後、前記複数の無線通信回線の前記スキャンを再開する。
【0013】
また、本発明にかかるプログラムは、
通信制御装置に接続された複数の中継装置と複数の無線通信回線を介して無線通信をそれぞれ行う複数の移動無線通信装置のコンピュータに、
前記複数の無線通信回線をスキャンするステップと、
前記スキャンによって第1の情報を受信したとき、前記第1の情報を受信した無線通信回線を、自己が以後の通信で使用する通信回線に設定するステップと、
前記設定の終了後、前記複数の無線通信回線の前記スキャンを再開するステップと、
を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無線通信システムにおける複数の中継装置それぞれの通信制御処理の負荷を軽くできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す中継装置への通信チャネルの割り当ての例を示す図である。
【
図3】
図1に示す通信制御装置の構成を示す図である。
【
図5】
図1に示す無線通信システムにおいて、中継装置と、移動無線通信装置と、中継装置に割り当てられた通信チャネルとを例示する図である。
【
図7】
図1に示す移動無線通信装置の構成を示す図である。
【
図8】
図1に示す無線通信システムにおいて、移動無線通信装置、中継装置および通信制御装置により実行される位置情報登録処理の通信シーケンス図である。
【
図9】
図8に示す通信シーケンスにおける登録要求信号送信処理(ステップS12)のフローチャートである。
【
図10】
図8に示す通信シーケンスにおける登録要求信号転送処理(ステップS14)のフローチャートである。
【
図11】
図8に示す通信シーケンスにおける通信チャネル設定処理ステップS16のフローチャートである。
【
図12】
図8に示す通信シーケンスにおける登録信号転送処理(ステップS18)のフローチャートである。
【
図13】
図8に示す通信シーケンスにおける位置情報更新処理(ステップS20)のフローチャートである。
【
図14】通信状態の移動無線通信装置、中継装置および通信制御装置により実行される通信チャネルの割り当てのための処理を例示する通信シーケンス図である。
【
図15】
図14に示す通信シーケンスにおける通信チャネル設定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態にかかる無線通信システム、通信制御装置、移動無線通信装置、通信制御方法およびプログラムを、図面を参照して説明する。なお、実施形態において、同一の構成部分または処理には同一の符号を付す。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態に係る無線通信システム1は、ネットワーク100を介して相互に通信可能に接続された通信制御装置2と、m台の中継装置3-1,3-2,・・・,3-m(m≧3)と、サーバ装置104と、端末装置106と、n台の移動無線通信装置4-1,4-2,・・・,4-n(n≧3)とを含む。なお、以下、「中継装置3-1,3-2,・・・,3-m」のいずれかを特定せずに示すときには適宜「中継装置3」と記載する。同様に、「移動無線通信装置4-1,4-2,・・・,4-n」のいずれかを特定せずに示すときには適宜「移動無線通信装置4」と記載する。
【0018】
無線通信システム1においては、移動無線通信装置4相互間、及び、中継装置3を介した移動無線通信装置4相互間の無線通信回線を介した音声通信及びデータ通信が可能である。なお、以下、「無線通信回線」を、実施形態において「チャネル」と記載し、図面において「CH(CHannel)」と記載する。
【0019】
ネットワーク100は、ディジタル信号の伝送が可能な信号ケーブル、電話回線、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)およびVPN(Virtual Private Network)等から構成される。
【0020】
サーバ装置104は、中継装置3および移動無線通信装置4への通信制御装置2を介した種々の情報の提供などのサービスのための処理を行う。
【0021】
端末装置106は、無線通信システム1のユーザによる操作に応じて、通信制御装置2への情報を受け入れ、ネットワーク100を介して通信制御装置2に伝送する。また、端末装置106は、ネットワーク100を介して通信制御装置2から伝送されてきた情報を、ディスプレイ装置(不図示)に表示し、ユーザに報知する。
【0022】
複数(m台)の中継装置3は、設置型の無線通信装置などから構成される。
中継装置3-i(m≧i≧1)は、移動無線通信装置4との通信が可能な通信エリア110-iを形成する。
図1では、各通信エリア110に移動無線通信装置4を1台のみ図示しているが、移動無線通信装置4の台数は任意であり、0台もありうる。また、通信エリア110-iにある移動無線通信装置4は、他の通信エリア110に移動可能である。従って、各通信エリア110の移動無線通信装置4の台数は変動する。移動無線通信装置4と中継装置3との間の無線通信には、電波産業会(ARIB;Association of Radio Industries and Businesses)により策定された規格に準拠したK本(K≧3)のチャネルが利用される。チャネルそれぞれには規格に従って固有の周波数が割り当てられ、例えば、中継装置3および移動無線通信装置4がARIB STD-T98に準拠する場合には、チャネルの数Kは65である。
【0023】
中継装置3-iには、Kチャネルのうちの固有のチャネルが通信用に割り当てられる。中継装置3-iは、割り当てられたチャネルを介して通信エリア110-i内の移動無線通信装置4と通信を行う。
【0024】
以下の説明では、理解を容易にするため、
図2に例示されるように、中継装置3-iにはK個のチャネルのうちk番目(K≧k≧1)のチャネルk(CHk)が、通信用に割り当てられているものとする。また、中継装置3-iが担当する通信エリア110-iには、n台の移動無線通信装置4-i-j(n≧j≧1)が存在すると仮定する。
【0025】
中継装置3-iに割り当てられたチャネルは、中継装置3-iと移動無線通信装置4-i-jとの間で、半二重伝送に用いられるチャネルである。
【0026】
図1に示す通信制御装置2は、複数の中継装置3を介して複数の移動無線通信装置4の間に通信路を設定し、これらの間で音声およびデータを伝送するための制御を行う。
図3に示されるように、通信制御装置2は、制御回路20、ベースバンド処理(BBP;Base Band Processing)回路220およびネットワークインターフェース(NIF;Network InterFace)回路222を有する。
なお、通信制御装置2を介して、図示せぬ外部ネットワーク上の通信装置との通信も可能である。
【0027】
NIF回路222は、ネットワーク100および中継装置3を介して移動無線通信装置4との間で通信フレームを伝送する。つまり、NIF回路222は、BBP回路220から入力された通信制御情報をヘッダ部に含む通信フレームを、移動無線通信装置4に伝送する。また、NIF回路222は、移動無線通信装置4から伝送されてきた通信フレームを受けて、BBP回路220に出力する。なお、通信制御装置2、中継装置3-iおよび移動無線通信装置4-i-jの間で情報を伝送するための通信フレームとして、例えば、UDP(User Datagram Protocol)パケットが用いられうる。
【0028】
BBP回路220は、NIF回路222から入力された通信フレームのヘッダ部に含まれる通信制御情報を取り出し、制御回路20に出力する。また、BBP回路220は、制御回路20から入力された通信制御情報をヘッダ部に含み、移動無線通信装置4の間で伝送されるデータをペイロード部(データ部とも呼ばれる)に含む通信フレーム部を生成し、NIF回路222に出力する。
【0029】
制御回路20は、通信制御装置2全体の動作を制御する回路であり、
図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を含む演算処理回路202、ROM(Read Only Memory)回路204、RAM(Random Access Memory)回路206、入出力回路(I/O;Input/Output)208、タイマ回路210、表示装置212および操作装置214を有する。制御回路20のこれらの構成要素は、バス200を介して信号および情報を伝送可能に接続される。
【0030】
演算処理回路202は、ROM204に記憶されたプログラムを実行する。
【0031】
ROM204は、不揮発性のメモリ素子を含み、BBP回路220およびNIF回路222を制御するプログラムの命令コード、および、通信制御装置2と移動無線通信装置4との間での通信制御を行うプログラム(いずれも不図示)を記憶する。通信制御を行うプログラムとしては、各移動無線通信装置4に位置情報の送信を要求する登録要求信号を送信する登録要求信号送信処理(
図8:ステップS12)と、各移動無線通信装置4から送信された情報に基づいて、各中継装置3と移動無線通信装置4との対応関係を示す位置情報を更新する位置情報更新処理(
図8:ステップS20)を実行するプログラムを含む。
【0032】
RAM206は、揮発性のメモリ素子を含み、プログラムを実行するために必要とされるデータを記憶し、記憶したデータをプログラムの実行のために演算処理回路202に出力する。つまり、ROM204に記憶されたプログラムは、演算処理回路202により、RAM206をワークメモリとして用いて実行される。
【0033】
RAM206には、中継装置3-iの識別情報と、中継装置3-iと通信可能な移動無線通信装置4-i-jの識別情報と、中継装置3-iに通信用に割り当てられたチャネル(通信チャネル)kとが、
図5に例示されるように対応付けられ、位置情報として記憶され、管理される。なお、識別情報としては、例えば、IPアドレス、コールサインなどが使用されうる。演算処理回路202は、チャネルkを介して、中継装置3-iと移動無線通信装置4-i-jとの間で通信が可能なことをもって、移動無線通信装置4-i-jが、中継装置3-iの通信エリア110-iにあると判断できる。
【0034】
また、演算処理回路202は、
図5に示された位置情報を参照することにより、各通信エリア110-iに存在する移動無線通信装置4-i-jの数nを計数できる。なお、
図2に示された情報は、
図5に示された位置情報に含まれるので、演算処理回路202は、
図2に示された情報を、
図5に示された情報とは別に記憶および管理する必要はない。
【0035】
中継装置3-iと移動無線通信装置4-i-jとを対応付けて記憶し、管理することは、位置情報登録と呼ばれる。この位置情報登録により、異なる通信エリア110の範囲内に存在する移動無線通信装置4の間の通信路の設定が可能となる。例えば、移動無線通信装置4-1(
図1)が、通信相手として移動無線通信装置4-2を指定した場合を考える。この場合、移動無線通信装置4-1(
図1)は、中継装置3-1を介して、移動無線通信装置4-2を通信相手とすることを通信制御装置2に通知する。このとき、制御回路20は、
図5に例示された位置情報を参照することにより、移動無線通信装置4-2が中継装置3-2の通信エリア110-2に位置することを判別し、移動無線通信装置4-1と4-2の間に、中継装置3-1と3-2を介した通信路を設定する。
【0036】
なお、演算処理回路202とROM204とは、中継装置3を介して、後述する登録要求信号S102を、移動無線通信装置4に送信する送信部として機能する。また、演算処理回路202、ROM204、RAM206は、移動無線通信装置4が中継装置3を介して送信してくる識別情報を受信し、識別情報を中継した中継装置3と識別情報が特定する移動無線通信装置4とを
図5に例示するように対応付けて登録する登録部して機能する。また、演算処理回路202、ROM204、RAM206は、登録した情報に基づいて通信を制御する制御部として機能する。
【0037】
図4に示すI/O208は、演算処理回路202から入力され、BBP回路220およびNIF回路222を制御するための信号を、BBP回路220およびNIF回路222に出力する。また、I/O208は、BBP回路220およびNIF回路222からの信号を演算処理回路202に出力する。また、I/O208は、BBP回路220から入力された通信制御情報を演算処理回路202に出力する。また、I/O208は、演算処理回路202からの通信制御情報をBBP回路220に出力する。
【0038】
タイマ回路210は、BBP回路220およびNIF回路222の制御、および、移動無線通信装置4との間の通信制御のタイミングを示す信号を生成し、演算処理回路202に出力する。
【0039】
表示装置212は、LED(Light Emitting Diode)、液晶ディスプレイ装置などを含み、演算処理回路202から入力された情報を表示して通信制御装置2のユーザに示す。操作装置214は、テンキー、キーボードなどを含み、通信制御装置2のユーザの操作を受け入れ、演算処理回路202に出力する。あるいは、表示装置212にGUI(Graphical User Interface)用の画像がさらに表示されてもよい。
【0040】
図1に示す中継装置3は、上述したように、自通信エリア110内の移動無線通信装置4との間で、音声、データおよび通信制御情報を半二重伝送する。また、中継装置3は、通信制御装置2と自通信エリア110内の移動無線通信装置4との間で通信制御情報を中継する。さらに、中継装置3は、他の中継装置との間で、音声、データを中継する。
【0041】
中継装置3は、
図6に示すように、受信用アンテナ300、受信(RX)回路302、送信(TX)回路306、送信用アンテナ308、制御回路30、BBP回路320およびNIF回路322を有する。
【0042】
制御回路30は、
図4に示された通信制御装置2の制御回路20と同様な構成要素を有し、通信を中継する処理及び通信制御処理を行う。通信制御処理は、例えば、通信制御装置2から送信された登録要求信号を管理下の各移動無線通信装置4に転送する登録要求信号転送処理(
図8:ステップS14)と、管理下の移動無線通信装置4から送信されてきた登録信号を通信制御装置2に転送する登録信号転送処理(
図8:ステップS18)等を含む。
【0043】
BBP回路320は、
図3に示された通信制御装置2のBBP回路220と同様な処理を行う。例えば、BBP回路320は、通信制御装置2および移動無線通信装置4から通信フレームを受信して制御回路30に出力する処理、制御回路30からの通信制御情報をヘッダ部に含み、音声データなどをペイロード部に含む通信フレームを生成し、NIF回路322に出力する処理を行う。
【0044】
NIF回路322は、通信制御装置2のNIF回路222と同様な処理を行う。例えば、NIF回路322は、通信制御装置2から通信フレームを、ネットワーク100を介して受信してBBP回路320に出力し、BBP回路320から入力された通信フレームを、ネットワーク100を介して通信制御装置2に送信する。
【0045】
制御回路30は、通信制御装置2(
図3,
図4)の制御回路20と同様な処理を行う。さらに、制御回路30は、RX回路302を制御して、チャネル1~Kのいずれかで、音声、データおよび通信制御情報を含む信号を、移動無線通信装置4から受信用アンテナ300を介して受信させる。また、制御回路30は、TX回路306を制御し、RX回路302と同じチャネルで、音声、データおよび通信制御情報を含む信号を、移動無線通信装置4へ送信用アンテナ308を介して送信させる。
【0046】
RX回路302は、制御回路30の制御に従い、移動無線通信装置4から受信した無線信号から通信フレームを復号し、BBP回路320に出力する。TX回路306は、制御回路30の制御に従い、BBP回路320から入力された通信フレームを含む信号を移動無線通信装置4に送信する。
【0047】
図1に示す移動無線通信装置4は、移動型の無線通信装置から構成され、
図7に示すように、制御回路40、送受信用アンテナ400、音声処理回路404、スピーカ406、マイク408、付加回路410、RX回路412およびTX回路414を有する。
【0048】
制御回路40は、
図4に示された通信制御装置2の制御回路20と同様な構成要素を有するマイクロプロセッサ、即ち、コンピュータであり、通信制御処理等のプログラムを実行する。また、制御回路40は、切換回路402、音声処理回路404、付加回路410、RX回路412、TX回路414およびBBP回路420の制御をさらに行う。また、制御回路40は、中継装置3を介して通信制御装置2から送信された信号をチャネルをスキャンしつつ受信し、登録要求信号を受信したチャネルを自己の以後の通信チャネル(自機が通信に使用するチャネル)として登録すると共に登録信号を返送する通信チャネル設定処理(
図8:ステップS16)を実行する。
【0049】
付加回路410は、ユーザの必要に応じて制御回路40に接続される任意の回路、装置である。
例えば、移動無線通信装置4をナビゲーションシステムとして使用する場合には、付加回路410として、例えば、GPS装置が使用される。この場合、例えば、制御回路40は、中継装置3を介してサーバ装置104にGPS装置で取得した現在位置を通知する。サーバ装置104は、通知された位置情報に基づいて、例えば、地図情報とナビゲーション情報を要求元の移動無線通信装置4に提供する。また、付加回路410としてデータIF回路が使用されたときには、制御回路40は、他の装置との間のデータの伝送を、中継装置3を介して行う。
【0050】
RX回路412は、制御回路40の制御に従って、中継装置3のRX回路302と同様な動作を行う。つまり、RX回路412は、中継装置3からの無線信号を送受信用アンテナ400および切換回路402を介して受信し、通信パケットを復号してBBP回路420に出力する。
【0051】
TX回路414は、制御回路40の制御に従って、中継装置3のTX回路306と同様な動作を行う。つまり、TX回路414は、BBP回路420からの通信フレームを含む信号を、切換回路402および送受信用アンテナ400を介して通信制御装置2に送信する。
【0052】
BBP回路420は、制御回路40の制御に従って、中継装置3のBBP回路320と同様な処理を行う。つまり、BBP回路420は、RX回路412から入力された通信フレームを制御回路40に出力し、制御回路40から入力された通信制御情報をヘッダ部に含み、音声のデータなどをペイロード部に含む通信フレームを生成し、TX回路414に出力する。
【0053】
切換回路402は、制御回路40の制御に従って、RX回路412またはTX回路414を選択し、送受信用アンテナ400に接続する。この切り換えにより、RX回路412およびTX回路414の送受信用アンテナ400の共用が実現される。
【0054】
音声処理回路404は、アナログ/ディジタル(A/D)変換回路、ディジタル/アナログ(D/A)変換回路、音声信号用の増幅回路など(いずれも不図示)を含む。音声処理回路404は、制御回路40の制御に従って、BBP回路420から入力された音声のデータをアナログの音声信号に変換し、スピーカ406を介して出力してユーザに聴かせる。また、音声処理回路404は、制御回路40の制御に従って、マイク408を介して入力されたユーザのアナログの音声信号を音声のデータに変換し、BBP回路420に出力する。
【0055】
RX回路412、BBP回路420、制御回路40は、請求項における受信部の一例に対応し、制御回路40は、請求項における設定部の一例に相当する。
【0056】
次に、上記構成を有する無線通信システム1の動作を説明する。
なお、無線通信システム1においては、異なる通信エリア110に属す移動無線通信装置4間の中継装置3を介した通信、同一通信エリア110に属す移動無線通信装置4間の中継装置3を介した通信、同一通信エリア110に属す移動無線通信装置4間の中継装置3を介さない直接通信など、様々な動作が可能である。
以下では、本実施の形態において特徴的な位置情報登録処理を中心に説明する。
【0057】
図8は、通信制御装置2、中継装置3および移動無線通信装置4により実行される位置情報登録処理の処理シーケンスを示す図である。
位置情報登録処理は、通信制御装置2が位置情報の登録を要求する登録要求信号S100を全中継装置3に送信することにより開始する。そこで、まず、
図9を参照して、登録要求信号S100を送信する登録要求信号送信処理(ステップS12)を説明する。
【0058】
通信制御装置2の制御回路20は、移動無線通信装置4の位置を登録するためのプログラムを実行し、
図9に示すように、ステップS120において、中継装置3の番号を表す処理用のパラメータiを1に初期化する。
【0059】
ステップS122において、制御回路20は、最後に位置情報登録のための処理が終了してから、予め決められた時間、例えば、30~180秒の範囲内のいずれかの時間が経過したか否かを判断する。この時間は、位置情報登録処理を実行する周期に相当し、例えば、端末装置106を介した通信制御装置2へのユーザの操作により設定される。
制御回路20は、予め決められた時間が経過したと判別した場合(ステップS122:YES)、ステップS124の処理に進み、これ以外のときには(ステップS122:NO)、ステップS122の処理に留まる。
【0060】
ステップS124において、制御回路20は、移動無線通信装置4の位置情報登録のために用いられる登録信号の送信を要求する通信制御情報をヘッダ部に含む通信フレームをBBP回路220に生成させる。BBP回路220は、生成した通信フレームをNIF回路222に出力する。NIF回路222は、BBP回路220から入力された通信フレーム、即ち、登録要求信号S100を、ネットワーク100を介して、第iの中継装置3-iに送信する。
【0061】
ステップS126において、制御回路20は、パラメータiの値を1だけ増やす(インクリメントする)。
【0062】
ステップS128において、制御回路20は、パラメータiの値が中継装置3の数mより大きいか否かを判断する。制御回路20は、パラメータiの値が中継装置3の数mより大きいときには(ステップS128:YES)、ステップS120の処理に戻り、これ以外のときには(ステップS128:NO)、制御回路20はステップS124の処理に戻る。
【0063】
以上説明したステップS12の処理により、通信制御装置2から中継装置3-1~3-mの全てに登録要求信号S100が送信される。
【0064】
中継装置3は、登録要求信号S100を受信すると、受信した登録要求信号S100を自己の通信エリア110内に位置する移動無線通信装置4に転送する登録要求信号転送処理(ステップS14)を実行する。
【0065】
この登録要求信号転送処理(ステップS14)の詳細を、中継装置3-iを例に
図10を参照して説明する。なお、
図5の位置情報に示すように、中継装置3-iには、通信用にチャネルkが割り当てられているとする。中継装置3-iの制御回路30は、電源オンの間、
図10に示す登録要求信号転送処理(ステップS14)を時分割的に継続して実行している。制御回路30は、まず、ステップS140において、通信制御装置2から登録要求信号S100を受信したか否かを判断する。
【0066】
制御回路30は、登録要求信号S100を受信していたときには(ステップS140:YES)、ステップS142の処理に進み、これ以外のときには(ステップS140:NO)、ステップS140の処理に留まる。
【0067】
ステップS142において、制御回路30は、RX回路302が、自己に割り当てられているチャネルkを介してキャリアを受信しているか否かを判別する。キャリアを受信しているときは(ステップS142:YES)、チャネルkで他装置が通信中であると解されるので、他装置の通信を妨害しないように、ステップS142の処理に留まり、これ以外のときには(ステップS142:NO)、ステップS144の処理に進む。つまり、制御回路30は、自己に割り当てられたチャネルkを介して移動無線通信装置4との間で情報を送受信できることを確認する。
【0068】
ステップS144において、制御回路30は、TX回路306を制御して、受信した登録要求信号S100を、自己に割り当てられているチャネルkを介して移動無線通信装置4に送信する。なお、通信制御装置2から中継装置3に送信された登録要求信号S100との区別のため、移動無線通信装置4に転送された登録要求信号を登録要求信号S102と表示する。その後、制御回路30はステップS140の処理に戻る。登録要求信号S102は、請求項における第1の情報の一例に相当する。
【0069】
移動無線通信装置4は、
図11に詳細を示す通信チャネル設定処理(ステップS16)を実行し、登録要求信号S102の受信を待機している。具体的には、移動無線通信装置4の制御回路40は、移動無線通信装置4の位置登録のためのプログラムを実行し、登録要求信号S102を受信すると、ステップS160において、自らが他の移動無線通信装置4との間の通信を行っている状態にあるか否かを判断する。
【0070】
制御回路40は、自らが他の移動無線通信装置4との間の通信を行っている状態にあるときには(ステップS160:YES)、その通信を優先するためステップS160の処理に留まり、これ以外のときには(ステップS160:NO)、ステップS162の処理に進む。
【0071】
ステップS162において、制御回路40は、通信チャネルの番号を示す処理用のパラメータjを1に初期化する。
【0072】
ステップS164において、制御回路40は、切換回路402およびRX回路412を制御し、チャネルjにおける信号を受信させる。
【0073】
ステップS166において、制御回路40は、RX回路412により受信され、復号された通信フレームが登録要求信号S102であるか否かを判断する。制御回路40は、登録要求信号を受信したときには(ステップS166:YES)、ステップS168の処理に進み、これ以外のときには(ステップS166:NO)、ステップS172の処理に進む。
【0074】
ステップS168において、制御回路40は、チャネルjを、移動無線通信装置4自体が通信に用いる通信チャネルに設定する。即ち、第1の情報を受信したときに、第1情報が送信されてきた通信回線を以後の通信に使用する通信回線とする。
【0075】
ステップS170において、制御回路40は、BBP回路420を制御し、宛先として通信制御装置2の識別情報、位置情報登録に用いられる情報と自移動無線通信装置4の識別情報、例えば、コールサインとを含む通信フレーム、(以下「登録信号」)を生成させる。制御回路40は、生成した登録信号を、TX回路414に出力させる。さらに、制御回路40は、切換回路402およびTX回路414を制御し、BBP回路420から入力された通信フレーム、即ち、登録信号S104を、チャネルCHjが空いているタイミングで送信させる。識別情報は、請求項における第2の情報の一例である。
【0076】
その後、制御回路40は、パラメータjをインクリメントする(ステップS172)。
【0077】
ステップS174において、制御回路40は、パラメータjの値がチャネルの数Kより大きいか否かを判断する。制御回路40は、パラメータjの値がチャネルの数Kより大きいときには(ステップS174:YES)、全てのチャネルについての処理が終了したので、ステップS160の処理に戻り、これ以外のときには(ステップS174:NO)、未処理のチャネルが残っているので、ステップS164の処理に戻る。
【0078】
以上説明したように、無線通信システム1においては、
登録要求信号送信処理(ステップS12)と転送処理(ステップS14)とにより、通信制御装置2が、登録要求信号S102を複数の移動無線通信装置4に送信させ、
通信制御用チャネル設定処理(ステップS16)により、移動無線通信装置4は、K個のチャネルをスキャンして信号(情報)を受信し、受信した信号が登録要求信号S102であるときに、登録要求信号S102を受信したチャネルを、自装置の以後の通信チャネルに設定する。また、登録要求信号S102を受信した移動無線通信装置4は、位置情報登録に用いられる情報と自装置の識別情報とを含む通信フレームを、登録要求信号S102が送られて来たチャネルを介して通信制御装置2に返送する。
【0079】
中継装置3は、
図12に示す転送処理(ステップS18)を継続的に実行しており、登録信号S104を移動無線通信装置4から受信したとき、これを宛先の通信制御装置2に転送する。
【0080】
具体的には、中継装置3の制御回路30は、
図12に示すように、ステップS180において、通信フレームを受信したか否かを判断する。制御回路30は、受信したときには(ステップS180:YES)、ステップS182の処理に進み、これ以外のときには(ステップS180:NO)、処理を繰り返す。
【0081】
ステップS182において、制御回路30は、移動無線通信装置4から受信した通信フレームを、ネットワーク100を介して宛先に向けて転送する。登録信号S104の場合には、通信制御装置2に転送する。
【0082】
通信制御装置2は、
図13に詳細を示す位置情報更新処理(ステップS20)を継続的に実行しており、登録信号S104の受信を待機している。具体的には、通信制御装置2の制御回路20は、
図5に示された位置情報を変更するためのプログラムを実行する。ステップS200において、制御回路20は、BBP回路220を制御し、中継装置3から伝送されてきた通信フレームが登録信号S104であるか否かを判別する。
【0083】
制御回路20は、受信した通信フレームが登録信号S104であると判別すると(ステップS200:YES)、ステップS202の処理に進み、これ以外のときには(ステップS200:NO)ステップS200の処理に戻る。
【0084】
ステップS202において、制御回路20は、受信した登録信号S104に基づいて、
図5に示す位置情報を更新する処理を行う。例えば、中継装置3-iから新たな移動無線通信装置4-i-jからの登録信号を受信した場合には、
図5に示す位置情報中の中継装置3-iに対応するエントリに移動無線通信装置4-i-jの識別情報を追加して登録する。これにより、中継装置3-iと移動無線通信装置4-i-jとの対応関係が位置情報としてRMA206に登録される。以後、この位置情報に基づいて、移動無線通信装置4-i-jの通信が制御される。なお、制御の内容自体は、従来と同一でよい。また、中継装置3-iから継続的に移動無線通信装置4-i-jからの登録信号を受信した場合にもかかわらず、直近L(例えば、L≧2)回移動無線通信装置4-i-jからの登録信号を受信出来なかった場合には、
図5に示す位置情報中の中継装置3-iに対応するエントリから移動無線通信装置4-i-jの識別情報の登録を削除する。この処理の後、制御回路20は、ステップS200の処理に戻る。
【0085】
このような動作を繰り返すことにより、通信制御装置2のRAM206には、位置情報が適宜更新されて保持される。このため、移動無線通信装置4が通信エリア110を移動した場合には、
図5に示す位置情報が比較的軽い処理で迅速に更新され、移動元の通信エリア110の中継装置3を介した通信は停止し、移動先の通信エリア110の中継装置3と新たに割り当てられた通信チャネルを介して通信が継続される。従って、エリア移動時の処理がスムーズとなり負荷が軽減される。
【0086】
次に、上述の動作を具体例に基づいて説明する。
今、
図5の位置情報に示すように、移動無線通信装置4-1-1が中継装置3-1の通信エリア110-1に位置しているとする。また、中継装置3-1には、通信チャネルとしてCH1が設定されている。
【0087】
この状態では、移動無線通信装置4-1-1は、
図11の処理において、パラメタj=1のときに、通信制御装置2から中継装置3-1とチャネル1を介して、登録要求信号(第1の情報)を受信する(ステップ166:YES)。移動無線通信装置4-1-1は、そのチャネル1を自己の以後の通信チャネルとして登録し(ステップS168)、チャネル1で自己の識別情報(第2の情報)を含む登録信号S104を通信制御装置2宛に返送する(ステップS170)。なお、従前の通信チャネルと今回の通信チャネルが同一であれば、改めて登録する必要はない。
【0088】
通信制御装置2は、登録信号S104を受信し、位置情報上で、中継装置3-1と移動無線通信装置4-1-1との対応関係を維持する。
【0089】
この状態で、移動無線通信装置4-1-1が中継装置3-2の通信エリア110-2に移動する場面を想定する。なお、中継装置3-1の通信エリア110-1と中継装置3-2の通信エリア110-2とは、一部が共通しているものとする。以下、共通している領域を共通領域と呼ぶ。
【0090】
移動無線通信装置4-1-1は、まず、中継装置3-1の通信エリア110-1と中継装置3-2の通信エリア110-2とが共通している共通領域に移動する。
【0091】
この状態では、移動無線通信装置4-1-1は、
図11の処理において、まず、パラメタj=1のときに、中継装置3-1からチャネル1を介して、登録要求信号を受信する(ステップ166:YES)。移動無線通信装置4-1-1は、チャネル1を自己の通信チャネルとして登録し(ステップS168)、チャネル1で自己の識別情報を含む登録信号S104を通信制御装置2宛に返送する(ステップS170)。
【0092】
続いて、移動無線通信装置4-1-1は、パラメータjを2に更新し(ステップS172)、中継装置3-2からチャネル2を介して、信号を受信する(ステップS164)。すると、移動無線通信装置4-1-1は、中継装置3-2からも登録要求信号を受信する(ステップ166:YES)。移動無線通信装置4-1-1は、チャネル2を通信チャネルとして登録し(ステップS168)、チャネル2で自己の識別情報を含む登録信号S104を通信制御装置2宛に返送する(ステップS170)。こうして、移動無線通信装置4-1-1は、チャネル1とチャネル2を通信チャネルとして登録する。
【0093】
通信制御装置2は、中継装置3-1と3-2を介して、移動無線通信装置4-1-1からの登録信号S104を受信する。このため、通信制御装置2は、位置情報上で、中継装置3-1と移動無線通信装置4-1-1との対応関係を維持しつつ、中継装置3-2と移動無線通信装置4-1-1との対応関係を登録する。
【0094】
続いて、移動無線通信装置4-1-1が、共通エリアを離れ、中継装置3-2の通信エリア110-2のみに移動したとする。
【0095】
この状態では、移動無線通信装置4-1-1は、
図11の処理において、まず、パラメタj=1のときに、中継装置3-1から登録要求信号を受信できない(ステップ166:NO)。このため、移動無線通信装置4-1-1は、チャネル1を自己の通信チャネルとして登録できず、登録信号S104を返送することもできない。続いて、移動無線通信装置4-1-1は、パラメータjが2のときに、中継装置3-2からチャネル2を介して、登録要求信号を受信する(ステップ166:YES)。
【0096】
このため、移動無線通信装置4-1-1は、チャネル2のみを自己の通信チャネルとして登録し(ステップS168)、チャネル2で自己の識別情報を含む登録信号S104を通信制御装置2宛に返送する(ステップS170)。通信制御装置2は、中継装置3-2を介して、移動無線通信装置4-1-1からの登録信号S104を受信する。このため、通信制御装置2は、位置情報上で、中継装置3-2と移動無線通信装置4-1-1との対応関係を維持する。一方、中継装置3-1を介して移動無線通信装置4-1-1からの登録信号を受信出来なかった回数をカウントする。
【0097】
このような動作を繰り返して、中継装置3-1を介して移動無線通信装置4-1-1からの登録信号S104を受信出来なかった回数がL回に達すると、位置情報上で、中継装置3-1と移動無線通信装置4-1-1との対応関係を削除する。
【0098】
以上の説明では、1回の通信チャネル設定処理で、複数のチャネルで登録要求信号を受信した場合、登録要求信号を受信したチャネルを全て通信チャネルとして設定することになる。ただし、この発明は、これに限定されず、各移動無線通信装置4の通信チャネルを1チャネルに制限するようにしてもよい。この場合、例えば、ステップS170の処理終了後、制御をステップS160にリターンするようにすればよい。このような処理とすれば、例えば、登録要求信号を最初に受信したチャネルのみが、その移動無線通信装置4の通信チャネルとして登録される。なお、登録要求信号を最後に受信したチャネルのみが、その移動無線通信装置4の通信チャネルとして登録される。
【0099】
一方、音声通信フレームに通信制御情報を含ませることも可能である。この動作を、
図14と
図15を参照して、説明する。
この例では、通信エリア110-1にある移動無線通信装置4-1が通信エリア110-2にある移動無線通信装置4-2が中継装置3を介して他の移動無線通信装置4との間で通信を行っている場合を想定する。
【0100】
なお、
図14においては、図をわかり易くするため、中継装置3を省略して示す。
図14に示されるように、通常の通信の間、通信状態にある移動無線通信装置4-1は、中継装置3およびネットワーク100を介して、通信フレームS220を送信する。
移動無線通信装置4-1は、通信を終了する際に、最後から1つ以上の通信フレームに情報の送信の終了を示す情報をヘッダ部に含める。なお、以下、ヘッダ部に情報の送信の終了を示す情報を含む通信フレームを、「終了フレーム」と呼ぶ。
【0101】
通信制御装置2は、終了フレームが移動無線通信装置4-1から伝送されてくるまで、終了フレーム以外の通信フレームを、移動無線通信装置4-2に順次、転送する。
【0102】
通信制御装置2は、移動無線通信装置4-1から伝送されてきた終了フレームを受信すると、そのヘッダ部に含まれる通信制御情報に、移動無線通信装置4-2に割り当てられるべき通信制御用チャネルを示す情報を含む割当信号を追加する(ステップS222)。この割り当て信号は、請求項の第3の情報の一例に相当する。
【0103】
なお、通信制御装置2は、移動無線通信装置4-2に割り当てられるべきチャネル示す情報を、
図5に示された情報から読み出すか、新たに生成するかする。制御回路20は、新たに移動無線通信装置4-2に割り当てるべきチャネルを示す情報を生成したときには、この情報を用いて、移動無線通信装置4-2に割り当てられたチャネルを示す位置情報、即ち、対応付情報を更新する。
【0104】
通信制御装置2は、ヘッダ部に割当信号が追加された終了フレームS224を、中継装置3を介して移動無線通信装置4-2に転送する(ステップS222)。中継装置3と移動無線通信装置4-2に転送する。中継装置3は、割り当て信号から新たに割り当てられた通信チャネルを認識する。
【0105】
図15は、中継装置3と移動無線通信装置4-2により実行される通信チャネル設定処理S24のフローチャートである。これらの装置の制御回路30又は40は、ステップS240において、通信制御装置2から伝送されてきた終了フレームのヘッダ部に含まれる通信制御情報を取り出す。制御回路30又は40は、通信制御信号に割当信号が含まれているときには(ステップS240:YES)ステップS242の処理に進み、これ以外のときには(ステップS240:NO)ステップS240の処理に留まる。
【0106】
ステップS242において、制御回路30又は40は、割当情報により示されるチャネルを、中継装置3及び移動無線通信装置4-2が以後用いる通信チャネルに設定し、ステップS240の処理に戻る。なお、
図14,
図15の参照により説明した処理は、移動無線通信装置4-2から移動無線通信装置4-1に最終フレームが伝送されるときにも実行される。
【0107】
この実施形態においては、以上説明したように、位置登録および通信チャネルの割り当てが行われるので、位置登録などのために複数の中継装置3それぞれがさらに行うべき処理は非常に少なくて済む。従って、この実施形態によれば、複数の中継装置3それぞれの通信制御処理の負荷を軽くできる。
【0108】
また、無線通信システム1においては、複数の中継装置3それぞれに対応して通信エリア110が設定されるので、通信エリア110の集合によりカバーされる広い範囲における移動無線通信装置4相互間の通信を行うことができる。従って、中継装置3それぞれの無線送信信号の電力が少なくて済む。また、移動無線通信装置4相互間の通信が行われるたび、および、一定の時間間隔で移動無線通信装置4の位置登録が行われる。従って、移動無線通信装置4が通信エリア110の間を移動しても、通信制御装置2は適切な中継装置3を選択して移動無線通信装置4相互間で通信フレームを中継でき、無線通信システム1のユーザに、シームレスな通信サービスを提供することができる。つまり、無線通信システム1においては、ハンドオーバー処理が実現される。
【0109】
図1には、各通信エリア110に移動無線通信装置4が1台ずつ存在する場合が例示されたが、各通信エリア110に存在しうる移動無線通信装置4の数は、予め決められた数以下であればよい。各通信エリア110に存在しうる移動無線通信装置4の数は、例えば、端末装置106からのユーザによる通信制御装置2への操作に応じて設定される。
【0110】
同じ通信エリア110に複数の移動無線通信装置4が存在するときには、これらの移動無線通信装置4の間の通信のために、例えば、この通信エリア110をカバーする中継装置3に割り当てられた通信チャネルが用いられる。また、
図1には、無線通信システム1に、中継装置3および移動無線通信装置4がそれぞれ3台以上、含まれる場合が例示されたが、無線通信システム1には、中継装置3および移動無線通信装置4がそれぞれ2台以上含まれればよい。
【0111】
また、必要に応じて、無線通信システム1が複数の通信制御装置2を含むようにして、通信制御装置2、中継装置3および移動無線通信装置4の処理およびこれらの間の通信シーケンスを変更することができる。
また、送受信される信号、通信フレーム、情報のフォーマットなどは任意である。
【0112】
また、中継装置3および移動無線通信装置4の間のチャネルは、電波産業会により策定された規格ではなく、他の適切な規格に準拠してもよい。また、
図14,
図15には、終了フレームを利用して移動無線通信装置4に通信チャネルを割り当てる処理を例示したが、この処理は、終了フレーム以外の通信フレームを利用して移動無線通信装置4に通信チャネルを割り当てるように変形されうる。
【0113】
また、中継装置3の構成を、RX回路302とTX回路306とがアンテナを共有するように変形することができる。また、移動無線通信装置4の構成を、RX回路302とTX回路306とが別々のアンテナを使用するように変形することができる。
【0114】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示され、発明の範囲を限定しない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることができ、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更がなされ得る。これら実施形態やその変形は、本発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1 無線通信システム
100 ネットワーク
104 サーバ装置
106 端末装置
110 通信エリア
2 通信制御装置
20 制御回路
200 バス
202 演算処理回路
204 ROM
206 RAM
208 I/O
210 タイマ回路
212 表示装置
214 操作装置
220,320,420 BBP回路
222,322,422 NIF回路
3 中継装置
30 制御回路
300 受信用アンテナ
302,412 RX回路
306,414 TX回路
308 送信用アンテナ
4 移動無線通信装置
40 制御回路
400 送受信用アンテナ
402 切換回路
404 音声処理回路
406 スピーカ
408 マイク
410 付加回路