(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 F
(21)【出願番号】P 2019060417
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】日向寺 拓未
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】加戸 稔
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-273329(JP,A)
【文献】特表2009-513100(JP,A)
【文献】特開2008-276742(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0192575(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧変換用のトランスと、該トランスの二次側コイルと直列形態に接続された同期整流用MOSトランジスタと、前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧に基づいて該同期整流用MOSトランジスタをオン、オフ制御する二次側制御回路と、を有するスイッチング電源装置であって、
前記二次側制御回路により検出されたピーク期間及びボトム期間に基づいて、前記同期整流用MOSトランジスタのターンオン時の最小オン時間を設定する最小オン時間設定回路を備えていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記二次側制御回路は、
前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧のピーク期間を検出するピーク期間検出回路と、
前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧のボトム期間を検出するボトム期間検出回路と、を備え、
前記最小オン時間設定回路は、前記ピーク期間検出回路により検出されたピーク期間と前記ボトム期間検出回路により検出されたボトム期間に基づいて、前記同期整流用MOSトランジスタのターンオン時の最小オン時間を設定することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記最小オン時間設定回路は、
検出された前記ピーク期間および前記ボトム期間に応じた設定基準電圧を生成する最小オン時間設定基準電圧生成回路と、
検出された前記ピーク期間と前記ボトム期間の比率に応じた調整信号を生成する調整信号生成回路と、
前記最小オン時間設定基準電圧生成回路により生成された基準電圧と前記調整信号生成回路により生成された調整信号に応じて最小オン時間に相当する最小オン時間信号を生成する最小オン時間信号生成回路と、
を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記最小オン時間設定基準電圧生成回路と前記調整信号生成回路と前記最小オン時間信号生成回路は、それぞれ前記同期整流用MOSトランジスタのスイッチングサイクルごとに、設定基準電圧と調整信号と最小オン時間信号を生成するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記調整信号生成回路は、検出された前記ピーク期間と前記ボトム期間の比率が所定値以上の場合に前記調整信号を生成し、前記最小オン時間信号生成回路は前記調整信号を受けると前記最小オン時間を短くする方向へ調整した最小オン時間信号を生成するように構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記基準電圧をスイッチングサイクルごとに取り込んで保持するサンプルホールド回路と、1サイクル前の基準電圧との差を判定する電圧差判定回路とを備え、1サイクル前の基準電圧との差が所定値より大きい場合に、前記最小オン時間信号生成回路は前記最小オン時間を短くする方向へ調整最小オン時間信号を生成するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
ソース側スイッチとシンク側のスイッチを備え、前記同期整流用MOSトランジスタをオン、オフ制御するゲート駆動電圧を生成するゲートドライバ回路と、
前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧に基づいて該同期整流用MOSトランジスタをオフさせるタイミングを検出するオフタイミング検出回路と、
前記ドレイン電圧に基づいて前記同期整流用MOSトランジスタをオンさせるタイミングを検出するオンタイミング検出回路と、
前記オフタイミング検出回路の検出信号と前記オンタイミング検出回路の検出信号と前記最小オン時間信号に基づいて前記同期整流用MOSトランジスタをオン、オフ制御する制御信号を生成するオン、オフ制御回路と、を備え、
前記オン、オフ制御回路は、前記最小オン時間信号が示す最小オン時間の経過に伴い、前記ゲートドライバ回路のソース側スイッチをオフさせるように構成されていることを特徴とする請求項3~6のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換用のトランスを備えたスイッチング制御方式の直流電源装置に関し、例えばトランスの二次側に同期整流スイッチを設けた絶縁型DC-DCコンバータに利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング電源装置の1つとして、トランスの一次側コイルに間欠的に電流を流すためのスイッチング素子としてのMOSトランジスタ(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)および該素子をオン、オフ制御する制御回路(IC)を備え、一次側コイルに電流を流すことで二次側コイルに誘起された電流をダイオードにより整流し、コンデンサで平滑して出力するスイッチング電源装置(絶縁型DC-DCコンバータ)がある。
【0003】
しかしながら、二次側回路に整流用ダイオードを用いた絶縁型DC-DCコンバータにおいては、整流用ダイオードにおける損失が大きく効率を低下させる原因となる。そこで、二次側回路の整流用ダイオードの代わりに同期整流用のスイッチング素子(MOSトランジスタ)を設けるとともに、二次側制御回路によって二次側スイッチング素子の端子電圧(ソース・ドレイン間電圧)を検出して、ボディダイオードに順方向電流が流れるタイミングで二次側スイッチング素子をターンオン制御することによって、整流素子における損失を減らし高効率化を図るようにした技術がある(例えば特許文献1)。
【0004】
また、二次側同期整流方式のスイッチング電源装置においては、一般に、同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧が所定の判定しきい値以下になったことを検出してターンオン信号を立ち上げるようにしているが、
図9(A),(B)に示すように、ソース・ドレイン電圧VDSが立下り同期整流用MOSトランジスタがオンした直後にリンギングRGが生じるため、このリンギングによりターンオフタイミングの誤検出を起こすことがある。そこで、かかるターンオフ誤検出を防止するため、最小オン時間を設定する技術が知られている(例えば特許文献2)。なお、同期整流用MOSトランジスタのソース端子は、一般に二次側の接地点に接続されるので、以下の説明では、ソース・ドレイン間電圧を単にドレイン電圧と称する。
【0005】
最小オン時間を設定する技術には、最小オン時間を所定の値にする固定方式と最小オン時間を変化させる可変方式があるが、ターンオン直後におけるドレイン電圧VDSのリンギングの長さは、負荷の大きさによって変わるため、固定最小オン時間方式の場合、
図9(B)に示すように、重負荷時に最小オン時間が不足してターンオフ誤検出を起こしたり、
図9(C)に示すように、軽負荷時には最小オン時間が長すぎてターンオフの直前に逆流が流れたりするおそれがある。なお、
図9(B),(C)において、t21,t22は望ましいターンオフのタイミングである。
そこで、特許文献2に記載されている発明においては、二次側導通期間をもとに最小オン時間を設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4862432号公報
【文献】米国特許第9825548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載されている発明のように、二次側導通期間をもとに最小オン時間を設定する方式においては、ノイズの影響などで一次側が突然オフしてトランスに蓄積されるエネルギーが減少すると、この影響で二次側導通期間が短くなり、最小オン時間が二次側導通期間よりも長いゲート駆動パルスが生成されて逆流が流れるおそれがある。また、一次側の制御方式がPWM(パルス幅変調)方式の場合やQR(フライバック擬似共振)方式の場合、一次側オン→二次側オン→一次側オン→二次側オン・・・の繰り返し制御であるため、現サイクルの最小オン時間は一つ前のサイクルの二次側導通期間を元にして決定することとなる。そのため、一次側の挙動が急に大きく変わったような場合に、二次側の最小オン時間が適切な値から大きくかけ離れてしまうといった問題点がある。
【0008】
一方、同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧のピーク期間はほぼ一次側の導通期間とみなせるため、ドレイン電圧のピーク期間を元に最小オン時間を決定する方式も考えられる。この方式は、実質的な負荷の大きさに合わせて最小オン時間を決定できるが、一次側の制御方式がPWM方式の場合やQR方式の場合、ドレイン電圧のピーク値とピーク幅は入力電圧に比例する。そのため、ドレイン電圧のピーク幅のみを基準にすると、最小オン時間が入力電圧の影響を受けてしまうので、入力電圧の影響を受けずに負荷の大きさに合わせて最小オン時間を決定することができないという問題点がある。
また、入力電圧低下時にスイッチングを停止しない制御の場合、特に影響が大きく、二次側導通期間に対して最小オン時間が長くなり過ぎ、大きな逆流が発生する恐れがある。
【0009】
そこで、ドレイン電圧のピーク幅とピーク値の積を利用して最小オン時間を決定することで入力電圧依存をなくすことも考えられるが、かかる機能を有する回路を構成する上ではドレイン電圧をリニアに検出する機能が必要であるとともに、ドレイン電圧は10V~200V程度の広い電圧範囲(条件次第ではもっと広い)を持つため、高い耐圧を有しかつ電圧をリニアに検出する高い性能を持つ回路を設計しなければならず、回路実現の難度が高くなる。
また、PWM方式におけるサブハーモニック発振時には、ドレイン電圧のピーク期間>>二次側導通期間の関係となるため、ドレイン電圧のピーク幅とピーク値の積を元に最小オン時間を決定しても、二次側導通期間に対して最小オン時間が長くなり過ぎ、逆流が流れるおそれがあるという問題点がある。
【0010】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、電圧変換用のトランスおよび二次側同期整流用スイッチング素子を備えたスイッチング電源装置において、ドレイン電圧のピーク値およびピーク幅が入力電圧の変化に応じて変化したとしても、入力電圧の影響を抑えて負荷の大きさに合わせて最小オン時間を決定できるようにすることにある。
本発明の他の目的は、一次側の挙動が急に大きく変わったような場合に、二次側の最小オン時間が最適な値から大きくかけ離れてしまうことがないようにすることにある。
本発明のさらに他の目的は、ドレイン電圧をリニアに検出する回路が不要つまり回路実現の難度が低いとともに、二次側導通期間に対して最小オン時間が長くなり過ぎて逆流が流れるのを防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、この発明は、
電圧変換用のトランスと、該トランスの二次側コイルと直列形態に接続された同期整流用MOSトランジスタと、前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧に基づいて該同期整流用MOSトランジスタをオン、オフ制御する二次側制御回路と、を有するスイッチング電源装置において、
前記二次側制御回路により検出されたピーク期間及びボトム期間に基づいて、前記同期整流用MOSトランジスタのターンオン時の最小オン時間を設定する最小オン時間設定回路を備えるように構成したものである。
ここで、前記二次側制御回路は、例えば、
前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧のピーク期間を検出するピーク期間検出回路と、
前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧のボトム期間を検出するボトム期間検出回路と、を備え、
前記最小オン時間設定回路は、前記ピーク期間検出回路により検出されたピーク期間と前記ボトム期間検出回路により検出されたボトム期間に基づいて、前記同期整流用MOSトランジスタのターンオン時の最小オン時間を設定するように構成する。
【0012】
上記のように構成されたスイッチング電源装置によれば、ピーク期間とボトム期間に基づいて最小オン時間を設定するので、ドレイン電圧のピーク値とピーク幅が入力電圧の増減に応じて変化したとしても、入力電圧の影響を抑えて負荷の大きさに合わせて最小オン時間を決定することができる。また、二次側導通期間をもとに最小オン時間を設定する方式のように、ノイズの影響などで突然一次側がオフして一次側の導通期間が短くなり、併せて二次側導通期間が短くなっても、最小オン時間が二次側導通期間よりも長くなって逆流が流れることがない。さらに、ドレイン電圧のピーク幅とピーク値の積を利用して最小オン時間を決定する方式におけるようなドレイン電圧をリニアに検出する機能が不要であるため、回路実現の難度が高くなるのを回避することができるとともに、二次側導通期間に対して最小オン時間が長くなり過ぎ、逆流が流れるおそれもない。
【0013】
ここで、前記最小オン時間設定回路は、
検出された前記ピーク期間および前記ボトム期間に応じた設定基準電圧を生成する最小オン時間設定基準電圧生成回路と、
検出された前記ピーク期間と前記ボトム期間の比率に応じた調整信号を生成する調整信号生成回路と、
前記最小オン時間設定基準電圧生成回路により生成された基準電圧と前記調整信号生成回路により生成された調整信号に応じて最小オン時間に相当する最小オン時間信号を生成する最小オン時間信号生成回路と、
を備えるように構成することで、実現することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記最小オン時間設定基準電圧生成回路と前記調整信号生成回路と前記最小オン時間信号生成回路は、それぞれ前記同期整流用MOSトランジスタのスイッチングサイクルごとに、設定基準電圧と調整信号と最小オン時間信号を生成するように構成する。
かかる構成によれば、サイクル毎に設定基準電圧と調整信号と最小オン時間信号を生成するので、一次側の挙動が急に大きく変わったような場合に、二次側の最小オン時間が最適な値から大きくかけ離れてしまうことがないようにすることができる。
【0015】
さらに、望ましくは、前記調整信号生成回路は、検出された前記ピーク期間と前記ボトム期間の比率が所定値以上の場合に前記調整信号を生成し、前記最小オン時間信号生成回路は前記調整信号を受けると前記最小オン時間を短くする方向へ調整した最小オン時間信号を生成するように構成する。
かかる構成によれば、調整信号を受けると最小オン時間を短くする方向へ調整するので、一次側と二次側のオンデューティが大きくなるような、通常の動作から外れた領域の動作や、負荷が不安定になったり負荷が急に軽くなったりする動作に対して、最小オン時間が長くなって逆流が流れるのを防止することができる。
【0016】
さらに、望ましくは、前記基準電圧をスイッチングサイクルごとに取り込んで保持するサンプルホールド回路と、1サイクル前の基準電圧との差を判定する電圧差判定回路とを備え、1サイクル前の基準電圧との差が所定値より大きい場合に、前記最小オン時間信号生成回路は前記最小オン時間を短くする方向へ調整最小オン時間信号を生成するように構成する。
かかる構成によれば、一次側の挙動が急に大きく変わったような場合に、二次側の最小オン時間が最適な値から大きくかけ離れてしまうことがないようにすることができる。また、最小オン時間を短くするように調整するので、異常な動作で最小オン時間が長くなって逆流が流れるのを防止することができる。
【0017】
また、望ましくは、ソース側スイッチとシンク側のスイッチを備え、前記同期整流用MOSトランジスタをオン、オフ制御するゲート駆動電圧を生成するゲートドライバ回路と、
前記同期整流用MOSトランジスタのドレイン電圧に基づいて該同期整流用MOSトランジスタをオフさせるタイミングを検出するオフタイミング検出回路と、
前記ドレイン電圧に基づいて前記同期整流用MOSトランジスタをオンさせるタイミングを検出するオンタイミング検出回路と、
前記オフタイミング検出回路の検出信号と前記オンタイミング検出回路の検出信号と前記最小オン時間信号に基づいて前記同期整流用MOSトランジスタをオン、オフ制御する制御信号を生成するオン、オフ制御回路と、を備え、
前記オン、オフ制御回路は、前記最小オン時間信号が示す最小オン時間の経過に伴い、前記ゲートドライバ回路のソース側スイッチをオフさせるように構成する。
かかる構成によれば、最小オン時間経過で先にソース側のスイッチをオフしておくことで、ソース側スイッチとシンク側スイッチの同時オン防止のためのデッドタイム分の待ち時間が短くなり、同期整流用MOSトランジスタのターンオフを高速化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、二次側同期整流用スイッチング素子を備えたスイッチング電源装置において、ドレイン電圧のピーク値およびピーク幅が入力電圧の変化に応じて変化したとしても、入力電圧の影響を抑制して負荷の大きさに合わせて最小オン時間を決定できるようにすることができる。また、一次側の挙動が急に大きく変わったような場合に、二次側の最小オン時間が最適な値から大きくかけ離れてしまうことがないようにすることができる。さらに、ドレイン電圧をリニアに検出する回路が不要つまり回路実現の難度が低いとともに、二次側導通期間に対して最小オン時間が長くなり過ぎて逆流が流れるのを防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明を適用して有効な二次側同期整流方式のスイッチング電源装置の構成例を示す回路構成図である。
【
図2】実施形態のスイッチング電源装置を構成する二次側制御回路の構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態の二次側制御回路におけるタイマー値-電圧変換回路及びMOT(最小オン時間)タイマーの機能を説明するための波形図である。
【
図4】実施形態の二次側制御回路におけるサンプルホールド&電圧比較回路及びMOTタイマーの機能を説明するための波形図である。
【
図5】実施形態の二次側制御回路におけるピーク・ボトム比計算回路の機能を説明するための波形図である。
【
図6】実施形態の二次側制御回路を構成するピーク期間とボトム期間の検出タイマー、タイマー値-電圧変換回路、サンプルホールド&電圧比較回路およびピーク・ボトム比計算回路の具体例を示す回路構成図である。
【
図7】実施形態の二次側制御回路を構成するMOTタイマーの具体例を示す回路構成図である。
【
図8】(A),(B)は実施形態の二次側制御回路を構成するオン・オフ制御回路の具体例を示す回路構成図である。
【
図9】従来の同期整流方式の二次側制御回路におけるMOSトランジスタがターンオフタイミングと固定最小オン時間信号との関係を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した同期整流方式のスイッチング電源装置の一実施形態を示す。
この実施形態におけるスイッチング電源装置は、一次側コイルLpと二次側コイルLsおよび補助巻線Laを有する電圧変換用のトランス10を備え、該トランス10の一次側にNチャネルMOSトランジスタからなるスイッチング素子SWおよびその制御回路(一次側制御回路)11を設け、二次側に同期整流素子としてのMOSトランジスタS0およびその制御回路(二次側制御回路)20を設けた絶縁型DC-DCコンバータとして構成されている。この実施形態では、トランス10に、二次側コイルLsの極性が一次側コイルLpと逆極性のものが使用されており、フライバックコンバータとして動作するように構成されている。
【0021】
一次側のスイッチング素子SWはトランス10の一次側コイルLpと直列に接続されている。一次側制御回路11および二次側制御回路20は、各々1個の半導体チップ上に半導体集積回路(IC)として、または1つのパッケージ内に実装された半導体装置として構成されている。トランス10の補助巻線Laの端子間にはダイオードD1とコンデンサC1とが直列に接続され、補助巻線Laに誘起された電圧をダイオードD1で整流しコンデンサC1で平滑することで、一次側制御回路11の電源電圧Vcc1を生成して一次側制御回路11の電源端子に供給する。
また、この実施例のDC-DCコンバータは、一次側制御回路11に接続され二次側の回路からのフィードバック信号を受ける受光用のフォトトランジスタPTを備え、一次側制御回路11はフィードバック信号に応じてスイッチング素子SWのスイッチング周波数またはデューティ比を変化させて、負荷や入力電圧の変動に対応するように構成されている。
【0022】
一方、トランス10の二次側には、二次側コイルLsの一方の端子と出力端子OUT2との間に接続された同期整流用MOSトランジスタS0と、二次側で生成された電圧を電源電圧とし同期整流用MOSトランジスタS0のドレイン電圧を検出してトランジスタS0のオン、オフ制御信号を生成する二次側制御回路20と、出力端子OUT1-OUT2間に接続され出力電圧VOUTを安定化させる平滑コンデンサC2と、を備える。同期整流用MOSトランジスタS0と二次側制御回路20を、1つのパッケージに集積化してもよい。なお、出力端子OUT1-OUT2間に接続された可変抵抗LDは、負荷の一例もしくは負荷を等価的に記載したものを表わしている。
【0023】
出力端子OUT1には二次側制御回路20の電源端子VCCが接続されており、出力電圧VOUTが二次側制御回路20に電源電圧Vcc2として供給される。また、二次側制御回路20の電源電圧は、トランス10の補助巻線に誘起された電圧を整流して供給するように構成しても良い。
また、トランス10の二次側には、出力端子OUT1-OUT2間に、フィードバック用のフォトダイオードPDおよび誤差アンプE-AMPが接続されている。誤差アンプE-AMPは出力電圧VOUTのレベルに比例した電流をフォトダイオードPDに流すように構成されている。
【0024】
また、二次側のフォトダイオードPDと一次側のフォトトランジスタPTは、絶縁型信号伝達手段としてのフォトインタラプタを構成しており、二次側のフォトダイオードPDから発せられた光が一次側のフォトトランジスタPTにより受光されて光の強度に応じたフィードバック信号が生成され、一次側制御回路11はこのフィードバック信号に応じてスイッチング素子SWを制御する。
【0025】
二次側制御回路20は、二次側スイッチング素子としての同期整流用MOSトランジスタS0のドレイン端子に配線を介して接続される外部端子(ドレイン電圧検出端子)P1の電圧VDSを監視し、所定のタイミングで同期整流用MOSトランジスタS0をオンまたはオフさせる制御信号(ゲート駆動電圧)VGを生成して、外部端子P2を介してトランジスタS0のゲート端子へ出力する。
【0026】
図2には、上記二次側制御回路20の構成例が示されている。
図2に示されているように、二次側制御回路20は、同期整流用MOSトランジスタS0のドレイン端子が接続されるドレイン電圧検出端子P1の電圧VDSと所定のしきい値電圧Vth_on(例えば-200mV)とを比較するコンパレータなどからなるオンタイミング検出回路21、ドレイン電圧検出端子P1の電圧VDSと所定のしきい値電圧Vth_off(例えば0~-150mV)とを比較するコンパレータなどからなるオフタイミング検出回路22を備える。
ここで、オンタイミング検出回路21の判定しきい値Vth_onは、同期整流用MOSトランジスタS0のボディダイオードに電流が流れ始めたことを確実に検出できるように、ボディダイオードの順方向電圧を考慮した電圧に設定される。
【0027】
また、二次側制御回路20は、ドレイン電圧VDSのピーク期間Tp(
図3参照)を検出するピーク期間検出タイマー回路23、ドレイン電圧VDSのボトム期間Tbを検出するボトム期間検出タイマー回路24、これらのタイマー回路23,24が検出したタイマー値を電圧(MOT判定基準電圧)に変換するタイマー値-電圧変換回路25を備える。なお、タイマー回路23,24に、例えば定電流源とコンデンサとからなる電荷充電方式のアナログタイマーを使用することで、タイマー回路23,24とタイマー値-電圧変換回路25を一体の回路として構成することも可能である。
【0028】
さらに、二次側制御回路20は、1サイクル前のタイマー値-電圧変換回路25の出力電圧(最小オン時間設定基準電圧:MOTしきい値Vmot1)を取り込んで保持し現サイクルのタイマー値-電圧変換回路25の出力電圧(MOTしきい値Vmot2)と比較するサンプルホールド&電圧比較回路26、ドレインピーク期間Tpとドレインボトム期間Tbの比を算出するピーク・ボトム比計算回路27、上記ピーク・ボトム比計算回路27の出力等に基づいて最小オン時間を計時するMOTタイマー28を備える。
【0029】
サンプルホールド&電圧比較回路26は、一つ前のサイクルのMOTしきい値と現サイクルのMOTしきい値との差が所定以上大きいとき、MOTタイマー28の出力のパルス幅を短縮させる信号TG1を生成し出力する。また、サンプルホールド&電圧比較回路26は、ドレインピーク期間Tpとドレインボトム期間Tbに応じた電圧(MOTしきい値)Vmotを生成してMOTタイマー28へ供給し、MOTタイマー28はこのMOTしきい値Vmotに応じた時間を計時することでTpとTbに応じたパルス幅を有する最小オン時間信号(パルス)MOTを出力する。具体的には、TpとTbの数値が大きいほど最小オン時間信号MOTのパルス幅は広くなり、TpとTbの数値が小さいほど最小オン時間信号MOTのパルス幅は狭くなる。
【0030】
さらに、二次側制御回路20は、オンタイミング検出回路21の出力ON_SIGとオフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGとMOTタイマー28の出力MOTに基づいて同期整流用MOSトランジスタS0をオン、オフ制御する信号を生成するオン・オフ制御回路29と、生成されたオン、オフ制御信号を受けてゲート駆動電圧VGを外部端子P2より出力するゲートドライバ回路30を備えている。
【0031】
オン・オフ制御回路29は、MOTタイマー28の出力MOTによってオフタイミング検出信号OFF_SIGをマスクする論理回路(例えばANDゲート)とRSフリップフロップなどにより構成され、オンタイミング検出回路21の出力信号ON_SIGが立ち上がるとゲート駆動電圧VGをハイレベルに変化させて同期整流用のMOSトランジスタS0をオンさせ、オフタイミング検出回路22の出力信号OFF_SIGのタイミングでゲート駆動電圧VGをローレベルに変化させてS0をオフさせる制御信号を生成する。このとき、MOTタイマー28から出力される最小オン時間信号MOTによってOFF_SIG信号をマスクしてオン・オフ制御回路29への入力を禁止して、MOT期間内にターンオフして効率が低下することを防ぐように構成されている。
【0032】
次に、
図3~
図5を用いて、二次側制御回路20の動作について説明する。このうち、
図3はタイマー値-電圧変換回路25及びMOTタイマー28の機能を説明するための波形図、
図4はサンプルホールド&電圧比較回路26及びMOTタイマー28の機能を説明するための波形図である。
図3および
図4において、(a)は同期整流用MOSトランジスタS0のドレイン電圧VDS、(b)はドレイン電圧VDSのピーク期間Tpとボトム期間Tbを表わすタイマー値を変換した電圧として生成されるMOTしきい値Vmot、(c)はMOTタイマー28のタイマー値、(d)はMOTタイマー28の出力(最小オン時間信号)MOTの変化をそれぞれ示す。
図3(b)において、実線Dはタイマーの値を、破線Sは実線Dを特定のタイミングでサンプリングして生成される電圧であり、この電圧がMOTタイマー28へMOTしきい値Vmotとして供給される。
【0033】
図3(b)に示されているように、タイマー値(実線D)は、(a)に示すドレイン電圧VDSのピーク期間Tpが終了するターンオンタイミングt1で立ち下り(リセット)、VDSのボトム期間Tbの間(t1~t2)上昇し、電流不連続期間など、VDSがピークでもボトムでもない期間は同一値を維持し、その後次のターンオンタイミングt4まで上昇するという変化を繰り返す。この過程で、ピーク期間Tpとボトム期間Tbの和が小さくなると、
図3(b)の破線Sのようにタイマーのピーク値Vmotは低くなる。
【0034】
そして、MOTしきい値Vmotが低くなると、
図3(c)に示すようにMOTタイマー28のタイマー値がしきい値Vmotに到達するまでの時間が短くなり、
図3(d)に示すようにMOTタイマー28から出力される最小オン時間信号MOTのパルス幅は狭くなる。
上記のように、ドレイン電圧VDSのピーク期間Tpの大きさとボトム期間Tbの大きさの両方に応じて最小オン時間信号MOTのパルス幅を調整することで、ドレイン電圧のピーク値とピーク幅が入力電圧に比例して変化したとしても、入力電圧の影響を抑制して負荷の大きさに合わせて適切な最小オン時間を決定し、最小オン時間が長すぎて逆流が流れる現象が生じるのを防止することができる。なお、
図3および
図4において、(a)のドレイン電圧VDSのt2~t3期間の波形は、軽負荷時の電流不連続モードで現れる共振による波形である。
【0035】
本実施例の二次側制御回路20においては、
図4に示されているように、サンプルホールド&電圧比較回路26でサンプリングした一つ前のサイクルのMOTしきい値Vmot1と現サイクルのMOTしきい値Vmot2との差が所定以上大きいときは、サンプルホールド&電圧比較回路26からMOTタイマー28へ短縮トリガパルスTG1を出力して最小オン時間信号MOTのパルス幅を短縮させる。
すると、MOTタイマー28から出力される最小オン時間信号MOTは、
図4(d)においてもともとは点線で示すように、MOTタイマー28のタイマー値がしきい値Vmotに到達した時点でローレベルに変化する最小オン時間信号MOTが実線で示すように、立下りが早められるようになる。
上記のような最小オン時間信号MOTのパルス幅調整を行うことで、一次側の挙動が急に大きく変わったような場合に、二次側の最小オン時間が最適な値から大きくかけ離れてしまうことがないようにすることができる。
【0036】
次に、
図5を用いてピーク・ボトム比計算回路27及びMOTタイマー28の機能を説明する。
図5において、(a)は同期整流用MOSトランジスタS0のドレイン電圧VDSを単純化した波形、(b)はピーク・ボトム比計算回路27におけるドレイン電圧VDSのピーク期間Tpを検出するタイマーの値(点線)およびピーク期間Tpとボトム期間TbすなわちTp+Tbを検出するタイマーの値(実線)の変化の様子、(c)はピーク・ボトム比計算回路27から出力される信号(パルス)をそれぞれ示す。
図5(c)の信号(パルス)がMOTタイマー28へ短縮トリガパルスTG2として供給される。なお、
図5において、(d)は短縮トリガパルスTG2が供給されたときの、MOTタイマー28の動作を示す。
【0037】
ピーク・ボトム比計算回路27おいては、Tp+Tbを検出するタイマーとは別にピーク期間Tpを検出するタイマーを設け、タイマー値の傾きを変えることで時間に重みを付けている。例えばタイマーを定電流源とコンデンサにより構成した場合には、定電流源の電流値を異ならせることでタイマー値の傾きを変えることができる。そして、ドレイン電圧VDSのピーク期間Tpの終了のタイミング(
図5のt11,t12,t13)で両タイマー値の比較を行い、
Tpのタイマー値>(Tp+Tb)のタイマー値
の時に、次のサイクルの最小オン時間信号MOTを短縮させるトリガパルスTG2(
図5(c))を生成し、出力する。
【0038】
このようにすることにより、ドレイン電圧VDSのピーク期間Tpのタイマー値とボトム期間Tbのタイマー値の比率を算出し、ピーク期間Tpのタイマー値がボトム期間Tbのタイマー値より所定以上大きい場合に、短縮トリガパルスTG2を出力することができる。
そして、上記のような最小オン時間信号MOTのパルス幅調整を行うことで、例えば二次側の負荷が大きく変化するなどしてピーク期間Tpとボトム期間Tbの比率が大きく変わったような場合に、二次側の最小オン時間が最適な値からかけ離れてしまうことがないようにすることができる。
【0039】
図6には、上記二次側制御回路20を構成するピーク期間検出タイマー回路23、ボトム期間検出タイマー回路24、タイマー値-電圧変換回路25、サンプルホールド&電圧比較回路26およびピーク・ボトム比計算回路27の具体的な回路例が示されている。
このうちピーク期間検出タイマー回路23は、
図6に示されているように、ドレイン電圧VDSと所定のしきい値電圧Vt1とを比較してピーク期間の開始点を検出するコンパレータCMP1と、電源電圧端子VCCと接地点との間に直列に接続された定電流源CC1、スイッチS1及びコンデンサC0とから構成され、ボトム期間検出タイマー回路24は、ドレイン電圧VDSと所定のしきい値電圧Vt2とを比較してボトム期間の開始点を検出するコンパレータCMP2と、電源電圧端子VCCと接地点との間に直列に接続された定電流源CC2、スイッチS2及びコンデンサC0とから構成されている。そして、コンデンサC0がタイマー値-電圧変換回路25として機能する。また、コンデンサC0と並列に、コンデンサC0の充電電荷を放電させるリセット用スイッチSrが接続されているとともに、コンパレータCMP2の出力信号の立下りに同期してスイッチSrをオンさせてコンデンサC0の充電電荷を放電させるリセットパルスRPを生成するワンショットパルス生成回路OSPが設けられている。
上記のように本実施例では、ピーク期間検出タイマー回路23とボトム期間検出タイマー回路24及びタイマー値-電圧変換回路25は、コンデンサ(C0)を共通にした一体の回路として構成されている。
【0040】
サンプルホールド&電圧比較回路26は、コンデンサCs1と、該コンデンサCs1の充電ノードN1と上記コンデンサC0の充電ノードN0との間に接続されたサンプリング用のスイッチS3と、コンデンサCs1の充電電圧をインピーダンス変換して後段へ伝達するバッファBFFと、伝達された電圧を保持するためのコンデンサCs2と、バッファBFFとコンデンサCs2の充電ノードN2との間に接続されたホールド用のスイッチS4と、上記スイッチS3,S4をオン、オフする信号を生成するサンプルホールド制御回路SHCを備える。
【0041】
さらに、サンプルホールド&電圧比較回路26は、上記コンデンサCs2の保持電圧が一方の入力端子(+)に入力されたコンパレータCMP3と、コンデンサCs1の充電電圧に所定のオフセットを付与した電圧をコンパレータCMP3の他方の入力端子(-)へ入力するオフセット付与手段OSGとを備えており、コンパレータCMP3は、コンデンサCs2に保持されている1つ前のサイクルの電圧とコンデンサCs1に取り込んだ現サイクルの電圧との差が上記オフセット分以上あると、MOTタイマー28へ短縮トリガパルスTG1を出力する。また、上記コンデンサCs1の保持電圧が、MOTしきい値Vmotとして、MOTタイマー28へ供給される。
【0042】
ピーク・ボトム比計算回路27は、電源電圧端子VCCと接地点との間に直列に接続された定電流源CC3及びコンデンサC3、コンデンサC3と並列に接続されたリセット用のスイッチS5、コンデンサC3の充電電圧とタイマー値-電圧変換回路25のコンデンサC0の充電電圧とを比較するコンパレータCMP4、CMP4の出力をMOTタイマー28への入力信号(パルス)に変換するトリガパルス生成回路TRG2とから構成されている。
定電流源CC3の電流値は定電流源CC1,CC2の電流値よりも大きな値に設定され、スイッチS5はピーク期間検出タイマー回路23のコンパレータCMP1の出力を反転した信号により制御される。これにより、コンデンサC3はドレイン電圧VDSのピーク期間Tpだけ定電流源CC3の電流により充電される。
【0043】
一方、タイマー値-電圧変換回路25のコンデンサC0は、ドレイン電圧VDSのピーク期間Tpとボトム期間Tbを合わせた(Tp+Tb)の間ずっと充電される。
そのため、ピーク・ボトム比計算回路27のコンパレータCMP4は、
Tpのタイマー値>(Tp+Tb)のタイマー値
の関係が成立しているか判定することができる。
そして、上記不等式の関係が成立したときに、コンパレータCMP4はMOTタイマー28へ、トリガパルス生成回路TRG2を介して短縮トリガパルスTG2を出力する。トリガパルス生成回路TRG2は、コンパレータCMP4の出力を判断し、MOTタイマー28が動作するタイミングに合わせて短縮トリガパルスTG2を生成する。なお、コンパレータCMP4の反転入力端子に、所定のオフセットを付与する手段を設けることで、ピーク期間Tpがボトム期間Tbに比べて所定以上大きいときに短縮トリガパルスTG2を出力するように構成しても良い。
【0044】
図7には、上記二次側制御回路20を構成するMOTタイマー28の具体的な回路例が示されている。
図7に示されているように、MOTタイマー28は、電源電圧端子VCCと接地点との間に直列に接続された定電流源CC4及びコンデンサC4、コンデンサC4と並列に接続されたリセット用のスイッチS6からなるタイマー回路TMRを備える。スイッチS6は、前記オンタイミング検出回路21からの検出信号ON_SIGを反転した信号によってオン、オフ制御される。これにより、タイマー回路TMRは、オンタイミング検出信号ON_SIGがハイレベルの間だけ定電流源CC4の電流でコンデンサC4を充電することで、同期整流用MOSトランジスタS0をオンすべき期間に相当するタイマー値を出力する。
【0045】
また、MOTタイマー28は、上記サンプルホールド&電圧比較回路26からの短縮トリガパルスTG1とピーク・ボトム比計算回路27からの短縮トリガパルスTG2との論理和をとるORゲートG1、ORゲートG1の出力に応じてサンプルホールド&電圧比較回路26からのMOTしきい値VmotまたはVmotよりも低い所定の基準電圧Vrefのうち一方を選択する切替えスイッチS7、選択された電圧とタイマー回路TMRのコンデンサC4の充電電圧とを比較するコンパレータCMP5、前記オンタイミング検出回路21からの検出信号ON_SIGと上記コンパレータCMP5の出力を入力とするANDゲートG2を備える。そして、ANDゲートG2の出力が前記最小オン時間信号MOTとして、後段のオン・オフ制御回路29へ供給される。なお、ANDゲートG2の出力を反転した信号と前記オンタイミング検出回路21からの検出信号OFF_SIGとを入力とするANDゲートを設けて、このANDゲートの出力をオン・オフ制御回路29へ供給するように構成しても良い。
【0046】
図8には、上記二次側制御回路20を構成するオン・オフ制御回路29およびゲートドライバ回路30の具体的な回路例が示されている。
図8(A)に示されているように、ゲートドライバ回路30は、電源電圧端子VCCと接地点GNDとの間に直列に接続されたPチャネルMOSトランジスタM1およびNチャネルMOSトランジスタM2からなり、M1とM2の接続ノードに同期整流用MOSトランジスタS0のゲート端子が接続されている。
【0047】
一方、オン・オフ制御回路29は、オンタイミング検出回路21の出力ON_SIGとMOTタイマー28からの最小オン時間信号MOTを入力とする3入力NANDゲートG3と、オフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGとMOTタイマー28からの最小オン時間信号MOTをインバータINVで反転して信号を入力とする3入力ANDゲートG4とを備える。インバータINVの出力信号は、オフタイミング検出回路22の出力OFF_SIGの入力を禁止するマスク信号として機能する。
【0048】
また、オン・オフ制御回路29は、NANDゲートG3とANDゲートG4の出力をそれぞれ遅延する直列のインバータ列からなる遅延回路DLY1,DLY2を備え、遅延回路DLY1により遅延された信号はANDゲートG4へ、また遅延回路DLY2により遅延された信号はNANDゲートG3へそれぞれ帰還入力されることにより、ゲートドライバ回路30を構成するMOSトランジスタM1,M2に貫通電流が流れないようにするデッドタイムが付与されるようになっている。
【0049】
本実施例のオン・オフ制御回路29においては、オンタイミング検出信号ON_SIGによってソース側MOSトランジスタM1がオンされたのちすぐにオフタイミング検出信号OFF_SIGが入ってきたとしても、ANDゲートG4と最小オン時間信号MOTによってマスクされ、最小オン時間の経過に合わせて、ソース側MOSトランジスタM1がオフされて、ソース側、シンク側のMOSトランジスタM1,M2が共にオフとなる。ソース側のMOSトランジスタM1がオフされても、ゲートドライバ回路30の出力電圧VGは同期整流用MOSトランジスタS0のゲート容量によって維持され、S0はオン状態を維持する。そして、遅延回路DLY1の出力は所定の遅延時間後にハイレベルになるため、3入力ANDゲートG4は、遅延回路DLY1の応答を待たずに、オフタイミング検出信号OFF_SIGに合わせてシンク側MOSトランジスタM2をオンできる。
【0050】
これに対し、最小オン時間信号MOTによるソース側トランジスタM1のオフがない場合、同期整流用MOSトランジスタS0のターンオフは、ソース側スイッチ(M1)オフ→シンク側スイッチ(M2)オンの流れで行われる。この際、遅延回路DLY1,DLY2によるデッドタイムの付与で、ソース側とシンク側のスイッチの同時オンによる貫通電流が防止されている。このため、ソース側スイッチM1をオフし遅延回路DLY1による遅延時間が経過しないと、シンク側スイッチM2をオンできないため、同期整流用MOSトランジスタS0のオフに遅れが生じる。
本実施例のオン・オフ制御回路29においては、最小オン時間経過時点で先にソース側スイッチ(M1)をオフさせることで、遅延回路DLY1による遅延時間分の時間を短縮でき、オフタイミング検出信号OFF_SIGが検出されてから同期整流用MOSトランジスタS0のターンオフまでの時間を高速化させることができる。
【0051】
なお、オン・オフ制御回路29は、
図8(A)の構成のものに限定されず、例えば
図8(B)に示すように、ゲートドライバ回路30のPチャネルMOSトランジスタM1を、NチャネルMOSトランジスタに変更した構成でも同様の効果が得られる。そして、この場合、
図8(A)のオン・オフ制御回路29内の3入力NANDゲートG3を3入力ANDゲートに変更し、ディレイ回路DRY1のインバータを1段増やすことで実現できる。なお、ディレイ回路DRY1のインバータを1段増やす代わりに1段減らすようにしても良い。
このように、MOSトランジスタM1をNチャネルMOSトランジスタに変更した場合、ゲート駆動電圧VGの最大値はトランジスタM1のゲート電圧からM1のスレッショルド電圧を引いた値までに制限されるため、ゲート駆動電圧VGの上限を容易にクランプすることができる。
【0052】
以上説明したように、上記実施形態の二次側制御回路においては、二次側同期整流用MOSトランジスタS0のドレイン電圧VDSのピーク期間とボトム期間を元に最小オン時間MOTを設定するMOTタイマー回路28を備えるため、電源装置の動作条件によって最適値が異なる最小オン時間を自動で調整することができる。また、パルス毎(サイクル毎)に最小オン時間を設定するようにしているため、電源装置の起動/停止や負荷の変動など、最適な最小オン時間が大きく変化する過渡時の動作にも速やかに追随することができる。
【0053】
また、二次側の動作ではバーストモードや電流不連続動作時の共振期間など、スイッチングが停止してドレイン電圧VDSが中間電位を取る期間があるが、上記実施形態の二次側制御回路においては、ドレイン電圧VDSのピーク期間とボトム期間のみを基準に使用することで、スイッチング停止期間のドレイン電圧VDSを除去でき、最適な最小オン時間の設定が可能になる。また、ドレイン電圧VDSのピーク期間はAC入力電圧に影響されるが、二次側導通期間に相当するボトム期間は影響されないため、ピーク期間とボトム期間の両方を最小オン時間の設定の基準に使うことで、AC入力電圧の影響を低減できる。
【0054】
さらに、上記実施形態の二次側制御回路においては、ドレイン電圧VDSのピーク期間とボトム期間の比率をみて最小オン時間を調整しているため、一次側と二次側のオンデューティを間接的に算出して最小オン時間を調整することができる。一般的な絶縁型電源装置では、オンデューティは最大でも0.5程度であり、これ以上のオンデューティになる場合は、通常の動作から外れた領域なので、安全のために最小オン時間を小さく設定する必要があるが、上記実施形態ではそのような最小オン時間の調整(短縮)が可能である。
【0055】
具体的な大デューティとなる挙動の例としては、例えばPWM方式の場合、サブハーモニック発振を起こしていると、オンデューティが0.5を超えるが、この場合二次側の導通期間が短くなるため、最小オン時間が長い設定であると逆流が流れてしまう。また、QR(フライバック擬似共振)方式の場合、入力電圧が下がるとオンデューティが0.5を超えるが、QR方式であるためスイッチング周波数も下がり、ピーク期間+ボトム期間が長くなり最小オン時間が最大値を取る状態にもかかわらず、負荷が軽いと必要な最小オン時間は短くなるため、逆流が生じるおそれがある。さらに、一次側にインダクタとコンデンサからなる共振回路を設けたLLC方式の場合、オンデューティが0.5になるよう制御動作するため、0.5から外れる状態は、異常状態かバーストモード動作時で、負荷が不安定か軽いときであるので、オンデューティが大きくなった場合に最小オン時間を長くすると、逆流が発生するおそれがある。
【0056】
さらに、上記実施形態の二次側制御回路においては、最小オン時間の設定値を記憶し、パルス毎(サイクル毎)に比較を行い、最小オン時間の減少量が既定の値より大きい場合、最小オン時間を最短にするにしているため、負荷の急減や異常動作などで、最小オン時間が二次側導通期間よりも長くなって逆流が発生するのを防止することができる。
また、上記実施形態の二次側制御回路においては、二次側同期整流用MOSトランジスタを駆動するゲートドライバのソース(ターンオン)側とシンク(ターンオフ)側のスイッチの駆動信号を分けて、ターンオフの際に、先ずソース側スイッチのオン状態を最小オン時間経過で解除させている。一般的には、ターンオフの際に、ソースのオン解除→同時オン防止のデッドタイム→シンク起動、という流れで制御が行われているが、上記実施形態のように、最小オン時間経過で先にソース側スイッチを遮断しておくことで、同期整流用MOSトランジスタのターンオフを高速化できる。
【0057】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ピーク・ボトム比計算回路27が、ドレイン電圧VDSのピーク期間Tpと(Tp+Tb)の比率に基づいて判定をしているが、タイマー回路23,24およびタイマー値-電圧変換回路25においてピーク期間Tpとボトム期間Tbを別個に計時するように構成して、ピーク・ボトム比計算回路27でTpとTbの比率に基づいて判定をするように構成しても良い。
また、上記実施形態では、各種期間を計時するタイマー回路を、定電流源とコンデンサとからなるアナログタイマー回路で構成しているが、所定周波数のクロック信号を計数するディジタルタイマー回路で構成するようにしても良い。
【0058】
さらに、本発明に係る二次側同期整流制御回路は、
図1に示すようなフライバック方式のスイッチング電源装置(DC-DCコンバータ)に限定されるものではなく、例えばハーブブリッジ方式など他の方式のDC-DCコンバータにも適用可能である。また、一次側にインダクタとコンデンサからなる電流共振回路を設けたLLC共振コンバータにも適用することが可能である。
そして、2個の同期整流用MOSトランジスタを有するハーブブリッジ擬似共振方式のDC-DCコンバータの場合、2個の同期整流用MOSトランジスタをそれぞれに対応して設けられた二次側制御回路で制御しても良いし、2個の同期整流用MOSトランジスタを共通の二次側制御回路で制御するように構成しても良い。
【0059】
また、共通の二次側制御回路で制御するように構成した場合には、二次側の片方のドレイン電圧VDSのピーク/ボトムは、もう一方のドレイン電圧VDSのボトム/ピークに相当するので、片方のドレイン電圧VDSから最小オン時間を設定することで回路規模を減らしたり、両方のドレイン電圧VDSを測定してピーク/ボトムの状態に差異が生じた時に異常と判断したりするといったことも可能である。
【符号の説明】
【0060】
10……トランス、11……一次側制御回路、20……二次側制御回路、21……オンタイミング検出回路、22……オフタイミング検出回路、23……ピーク期間検出タイマー回路、24……ボトム期間検出タイマー回路、25……タイマー値-電圧変換回路(最小オン時間設定基準電圧生成回路)、26……サンプルホールド&電圧比較回路、27……ピーク・ボトム比計算回路(調整信号生成回路)、28……MOTタイマー(最小オン時間信号生成回路)、29……オン・オフ制御回路、30……ゲートドライバ回路、S0……同期整流用MOSトランジスタ