(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】粉体含有化粧料の仕上用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20230118BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230118BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230118BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20230118BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230118BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230118BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20230118BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/02
A61K8/81
A61K8/39
A61K8/86
A61Q1/00
A61Q1/02
A61Q1/12
(21)【出願番号】P 2018115883
(22)【出願日】2018-06-19
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000112266
【氏名又は名称】ピアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】白井 理絵
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友昭
(72)【発明者】
【氏名】難波 真
(72)【発明者】
【氏名】馬面 典男
(72)【発明者】
【氏名】濱田 和彦
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196649(JP,A)
【文献】特開2011-184375(JP,A)
【文献】特開2003-095873(JP,A)
【文献】特開2017-071565(JP,A)
【文献】特開2009-107950(JP,A)
【文献】特開2004-107305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0123472(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体と、界面活性剤とを含み、皮膚上の粉体含有化粧料に塗布されて用いられる、粉体含有化粧料の仕上用組成物であって、
下記の(I)乃至(III)のいずれかを満たす、粉体含有化粧料の仕上用組成物。
(I)前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体は、(A-1)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸とが少なくとも共重合した共重合体であり、且つ、
前記界面活性剤は、(B-1)グリセリン及びジグリセリンと、
クエン酸、乳酸、リノール酸、及びオレイン酸とがエステル結合したエステル化合物群、(B-2)ポリオキシエチレングリセリンと、有機酸としての脂肪酸とがエステル結合したエステル化合物、及び、(B-3)ポリグリセリンと、有機酸としての脂肪酸とがエステル結合したエステル化合物からなる群より選択された少なくとも1種を含む、
(II)前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体は、(A-2)少なくとも2種以上の異なる(メタ)アクリル酸アルキルエステルが共重合した共重合体の粒子であり、各粒子がポリウレタン樹脂で被覆されており、且つ、
前記界面活性剤は、(B-1)グリセリン及びジグリセリンと、
クエン酸、乳酸、リノール酸、及びオレイン酸とがエステル結合したエステル化合物群、及び、(B-2)ポリオキシエチレングリセリンと、有機酸としての脂肪酸とがエステル結合したエステル化合物、のうち少なくとも一方を含む、又は、
(III)前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体は、(A-3)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、スチレンとが少なくとも共重合した共重合体であり、
前記界面活性剤は、(B-1)グリセリン及びジグリセリンと、
クエン酸、乳酸、リノール酸、及びオレイン酸とがエステル結合したエステル化合物群を含む。
【請求項2】
前記界面活性剤に対する、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体の質量比は、0.3以上12.0以下である、請求項1に記載の粉体含有化粧料の仕上用組成物。
【請求項3】
油分の含有量が1質量%未満である、請求項1又は2に記載の粉体含有化粧料の仕上用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ファンデーションなどの粉体含有化粧料のうえに塗布されて使用される、ジェル状おしろいなどに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水を含むジェル状の組成物が知られている。この種の組成物としては、例えば、(a)シリコーン粉末を水に分散させてなるシリコーン粉末分散液を純分量(固形分量)換算で15~50質量%と、(b)保湿剤を0.1~30質量%と、(c)水溶性高分子を0.01~2質量%とを含有する組成物が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の組成物は、例えば化粧下地として使用される。特許文献1に記載の組成物は、上記各成分を所定範囲の量で含むため、塗布中のよれや塗布後の白浮きが抑制されており、さらさら感を有する点で使用感も良好である。
【0004】
ところで、特許文献1に記載の組成物は、予め皮膚に塗布された粉体含有化粧料(ファンデーションなど)のうえに、さらに塗布して用いることができる。これにより、粉っぽさを有する皮膚上のファンデーションにみずみずしい感触を与えて、メークアップを仕上げることができる。即ち、特許文献1に記載の組成物は、粉体含有化粧料の仕上用組成物として使用され得る。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の組成物を、粉体含有化粧料の仕上用組成物として使用すると、ファンデーションのうえではじかれて良好に塗布されなかったり、ファンデーションを浮き上がらせてファンデーションの化粧持ちを悪化させてしまったりする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、皮膚上の粉体含有化粧料に良好に塗布することができ、しかも、皮膚上の粉体含有化粧料の化粧持ちを向上させることができる、粉体含有化粧料の仕上用組成物が要望されている。
【0008】
本発明は、上記問題点、要望点等に鑑み、皮膚上の粉体含有化粧料に良好に塗布することができ、しかも、皮膚上の粉体含有化粧料の化粧持ちを向上させることができる、粉体含有化粧料の仕上用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る粉体含有化粧料の仕上用組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体と、界面活性剤を含み、
上記の界面活性剤は、グリセリン、ポリグリセリン、及びポリオキシエチレングリセリンのうち少なくとも1種と有機酸とのエステル化合物であることを特徴としている。
【0010】
上記の粉体含有化粧料の仕上用組成物では、上記界面活性剤に対する、上記共重合体の質量比は、0.3以上12.0以下であることが好ましい。
【0011】
上記の粉体含有化粧料の仕上用組成物は、油分の含有量が1質量%未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粉体含有化粧料の仕上用組成物は、皮膚上の粉体含有化粧料に良好に塗布することができ、しかも、皮膚上の粉体含有化粧料の化粧持ちを向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】対比光沢測定法によるツヤ感の評価結果を表すグラフ。
【
図2】水分蒸散量測定法による水分蒸散量の評価結果を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る粉体含有化粧料の仕上用組成物の実施形態について以下に説明する。
【0015】
本実施形態の粉体含有化粧料の仕上用組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体と、界面活性剤と、水とを含む。
上記の界面活性剤は、グリセリン、ポリグリセリン、及びポリオキシエチレングリセリンのうち少なくとも1種と有機酸とのエステル化合物である。
以下、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体を(A)成分と称し、また、グリセリン、ポリグリセリン、及びポリオキシエチレングリセリンのうち少なくとも1種と有機酸とのエステル化合物を(B)成分と称することもある。
【0016】
本実施形態の仕上用組成物は、上記の(A)成分と、上記の(B)成分とを含むことから、皮膚上の粉体含有化粧料に良好に塗布することができ、しかも、皮膚上の粉体含有化粧料の化粧持ちを向上させることができる。
【0017】
上記(A)成分は、少なくとも2種類のモノマーの共重合体であって、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが重合した共重合体である。詳しくは、上記(A)成分は、少なくとも2種の異なる(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが重合した共重合体であってもよく、また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、該(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のモノマーとが共重合した共重合体であってもよい。
なお、「(メタ)アクリル酸」という表記は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する。
【0018】
上記(A)成分としては、例えば、以下のものが挙げられる。上記(A)成分は、下記の(A-1)、(A-2)、及び(A-3)からなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。
(A-1)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸とが少なくとも共重合した共重合体
(A-2)少なくとも2種以上の異なる(メタ)アクリル酸アルキルエステルが共重合した共重合体を含むもの
(A-3)(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、該(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の非イオン性モノマーとが少なくとも共重合した共重合体
【0019】
上記(A-1)~(A-3)の成分は、水に溶解した状態であってもよく、微粒子となって水含有溶媒中で分散した状態(例えば、マイクロエマルジョンの状態)であってもよい。微粒子の平均粒径は、10~100nmであってもよい。
【0020】
上記(A-1)~(A-3)の各成分を構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種であってもよく、複数種であってもよい。
【0021】
上記(A-1)成分の共重合体は、炭素数が互いに異なる複数種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが(メタ)アクリル酸と共重合することによって得られたものであってもよい。なお、上記(A-1)の共重合体を構成する(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸の一方のみであってもよく、両方であってもよい。
【0022】
上記(A-1)成分では、(メタ)アクリル酸のカルボキシ基が塩の状態であってもよく、(メタ)アクリル酸のカルボキシ基が遊離状態(-COOHの状態)であってもよい。
【0023】
上記(A-1)成分において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル部分は、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖の炭化水素であることが好ましく、炭素数1~4及び炭素数8の炭化水素であることがより好ましい。詳しくは、上記(A-1)成分は、アルキル部分の炭素数が1~4及び8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸とが共重合した共重合体であることが好ましい。
【0024】
上記(A-1)成分としては、例えば、市販されているものを使用できる。市販されている上記共重合体(以下、製品名)としては、「ヨドゾールGH256F」(アクゾノーベル社製 マイクロエマルジョンの状態)、「ヨドゾールGH800F」(アクゾノーベル社製)、「ヨドゾール GH34F」(アクゾノーベル社製)、「ヨドゾール GH810F」(アクゾノーベル社製)、「DERMACRYL AQF」(アクゾノーベル社製)、「ビニゾール 1076DM2.5」(大同化成工業社製)、「ビニゾール 1086WP」(大同化成工業社製)、「ビニゾール 1087FT」(大同化成工業社製)などが挙げられる。
【0025】
上記(A-2)成分を含む原料として、2種の異なる(メタ)アクリル酸アルキルエステルが共重合した共重合体で形成された中心部(コア部分)と、中心部を被覆する表面部(シェル部分)とを有する粒子が水含有溶媒に分散したものを用いることができる。例えば、斯かる粒子において、2種の異なる(メタ)アクリル酸アルキルエステルが共重合した共重合体が、斯かる共重合体とは異なる樹脂によって覆われている。斯かる粒子において、表面部(シェル部分)は、ポリウレタン樹脂などで形成されてもよい。
上記の中心部(コア部分)を形成する共重合体において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル部分の炭素数は、1~8であってもよい。
上記の表面部(シェル部分)を形成するポリウレタン樹脂は、例えば、ポリアルキレングリコールとジイソシアネート化合物とカルボキシ基含有ジオールとが重合したものであってもよい。ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリウレタン-4であってもよい。
【0026】
上記(A-2)成分を含む原料としては、市販されているものを使用できる。市販品としては、「リカボンドSS-3000」(ジャパンコーティングレジン社製)などが挙げられる。この原料では、上記のコア部分とシェル部分とで構成される粒子が分散した状態にある。
【0027】
上記(A-3)成分の共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、ラジカル重合性非極性モノマーとが少なくとも共重合した共重合体であってもよい。ラジカル重合性非極性モノマーは、例えば、スチレンである。
【0028】
上記(A-3)成分としては、例えば、市販されているものを使用できる。市販されている上記共重合体(以下、製品名)としては、「ヨドゾール GH41F」(アクゾノーベル社製)などが挙げられる。
【0029】
本実施形態の仕上用組成物に含まれる上記(B)成分は、グリセリン、ポリグリセリン(ジグリセリンやトリグリセリンなども含む)、及びポリオキシエチレングリセリンのうち少なくとも1種と有機酸とがエステル結合した化合物である。
【0030】
上記(B)成分としては、例えば、以下のものが挙げられる。上記(B)成分は、下記の(B-1)、(B-2)、及び(B-3)からなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。これらの化合物は、モノエステルであってもよく、ジエステルであってもよく、トリエステルであってもよい。
(B-1)グリセリン及びジグリセリンと、複数種の有機酸とがエステル結合したエステル化合物群(混合物)
(B-2)ポリオキシエチレングリセリンと、有機酸としての脂肪酸とがエステル結合したエステル化合物
(B-3)ポリグリセリンと、有機酸としての脂肪酸とがエステル結合したエステル化合物
【0031】
上記(B)成分としては、皮膚上の粉体含有化粧料により良好に塗布することができ、しかも、皮膚上の粉体含有化粧料の化粧持ちをより向上させることができるという点で、上記(B-1)が好ましい。
【0032】
上記(B-1)成分において、有機酸構造部分の炭素数は、3以上18以下であり、有機酸構造部分のカルボキシ基の数は、1分子あたり1以上3以下であってもよい。
【0033】
上記(B-1)成分を構成する有機酸としては、例えば、炭素数12以上18以下の脂肪酸、又は、分子中にOH基を有し且つ炭素数が3以上6以下のヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0034】
上記の脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸などが挙げられる。飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などが挙げられる。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。また、上記脂肪酸は、直鎖状脂肪酸又は分岐鎖状脂肪酸であってもよい。上記の脂肪酸としては、不飽和脂肪酸が好ましく、オレイン酸及びリノール酸の少なくとも1種がより好ましい。
【0035】
上記のヒドロキシカルボン酸としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸などが挙げられる。
【0036】
上記(B-1)成分としては、クエン酸、乳酸、リノール酸、及びオレイン酸と、グリセリン及びジグリセリンとのエステル化合物(混合物)が好ましい。斯かる化合物は、モノエステルであってもよく、ジエステルであってもよく、トリエステルであってもよい。
斯かるエステル化合物としては、市販されているものを使用できる。例えば、製品名「IMWITOR375(IOI Oleo社製)」などを使用できる。
【0037】
上記(B-2)成分において、ポリオキシエチレングリセリンのポリオキシエチレン構造部分におけるオキシエチレン(-C2H4O-)の平均総付加モル数(1分子あたり)は、10以上30以下であることが好ましく、15以上25以下であることがより好ましい。
【0038】
上記(B-2)成分において、脂肪酸は、炭素数12以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪酸であることが好ましく、ステアリン酸及びイソステアリン酸の少なくともいずれかであることがより好ましい。
【0039】
詳しくは、上記(B-2)成分としては、オキシエチレンの平均付加モル数が10~30のポリオキシエチレングリセリンと、脂肪酸とのエステル化合物が好ましく、オキシエチレンの平均付加モル数が15~25のポリオキシエチレングリセリンと、炭素数16~20の分岐鎖状脂肪酸とのエステル化合物がより好ましい。斯かる化合物は、モノエステルであってもよく、ジエステルであってもよく、トリエステルであってもよい。斯かる化合物としては、モノエステルが好ましい。
【0040】
上記(B-2)成分としては、例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20EO)、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20EO)などが挙げられる。
上記(B-2)成分としては、市販されているものを使用できる。例えば、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20EO)として、製品名「EMALEXGWIS-120(日本エマルジョン社製)」などを使用できる。
【0041】
上記(B-3)成分において、ポリグリセリンにおけるグリセリンの付加モル数は、5以上15以下であることが好ましく、8以上12以下であることがより好ましい。
【0042】
上記(B-3)成分において、脂肪酸は、炭素数12以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪酸であることが好ましく、ミリスチン酸がより好ましい。
【0043】
詳しくは、上記(B-3)成分としては、グリセリンの付加モル数が5以上15以下のポリグリセリンと、脂肪酸とのエステル化合物が好ましく、グリセリンの付加モル数が5以上15以下のポリグリセリンと、炭素数12~16の直鎖状脂肪酸とのエステル化合物がより好ましい。斯かる化合物は、モノエステルであってもよく、ジエステルであってもよく、1分子におけるエステル結合数が3以上であってもよい。斯かる化合物としては、モノエステルが好ましい。
【0044】
上記(B-3)成分としては、例えば、モノミリスチン酸デカグリセリルなどが挙げられる。
上記(B-3)成分としては、市販されているものを使用できる。例えば、モノミリスチン酸デカグリセリルとして、製品名「NIKKOL デカグリン 1-M」(日光ケミカルズ社製)などを使用できる。
【0045】
本実施形態の仕上用組成物では、上記(A)成分は、上記(A-1)成分であることが好ましく、且つ、上記(B)成分は、上記(B-1)成分であることが好ましい。
【0046】
本実施形態の仕上用組成物では、上記(B)成分に対する、上記(A)成分の質量比は、0.3以上12.0以下であることが好ましく、2以上6以下であることがより好ましい。斯かる質量比が0.3以上12.0以下であることにより、皮膚上の粉体含有化粧料をより良好に仕上げることができるという利点がある。
【0047】
本実施形態の仕上用組成物は、上記(A)成分を1質量%以上6質量%以下含む(固形分換算)ことが好ましく、2質量%以上3質量%以下含むことがより好ましい。上記(A)成分を1質量%以上6質量%以下含むことによって、さらさらした使用感を有しつつ粉体含有化粧料の化粧持ちを向上させることができるという利点がある。
また、本実施形態の仕上用組成物は、上記(B)成分を0.5質量%以上3.0質量%以下含む(固形分換算)ことが好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下含むことがより好ましい。上記(B)成分を0.5質量%以上3.0質量%以下含むことによって、皮膚上の粉体含有化粧料により良好に塗布することができ、粉体含有化粧料の化粧持ちをより向上させることができるという利点がある。なお、上記の仕上用組成物は、界面活性剤としては、上記(B)成分のみを含むことが好ましい。
【0048】
本実施形態の仕上用組成物は、通常、上記の(A)成分及び(B)成分以外の成分を含む。仕上用組成物は、例えば、増粘剤、1価アルコールや多価アルコールなどのアルコール類、防腐剤、無機粉体や有機粉体などの粉体、色素などをさらに含んでもよい。
【0049】
上記の多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、キシリトール、ソルビトール、マルチトールなどが挙げられる。
上記の増粘剤としては、例えば、カルボマー、(アクロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、ローカストビーンガム、グアガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、キサンタンガム、ブルラン、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルキトサンサクシナミド、ヒドロキシプロピルキトサン、カルボキシメチルキトサンミリスタミド、セルロースナノファイバー、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム 、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸などが挙げられる。
上記の粉体の材質としては、例えば、シリコーン(例えば、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ポリメチルシルセスキオキサン、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー)、無水ケイ酸、雲母チタン、金雲母、窒化ホウ素、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリアミド(例えば、製品名 ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66など)、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、(HDI/トリメチロールヘキシルラクトン)クロスポリマー、ポリスチレン、スチレンとアクリル酸との共重合体樹脂、ポリ四弗化エチレン、セルロースなどが挙げられる。
上記の色素としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、マンガンバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、アルミニウムパウダー、ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等)、クロロフィル、β-カロチンなどが挙げられる。
【0050】
本実施形態の仕上用組成物は、塗布後に所望の外観に仕上げるために、顔料などの粉体を含んでもよい。しかしながら、上記の仕上用組成物は、比較的多量の粉体を含むと、粉体含有化粧料自体の外観を損ねてしまう可能性がある。従って、本実施形態の仕上用組成物において、粉体及び色素の総含有量は、10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましく、1質量%未満であることがさらに好ましい。
【0051】
本実施形態の仕上用組成物は、水を80質量%以上含んでもよく、85質量%以上含んでもよい。これにより、さっぱりした使用感、みずみずしい使用感をより十分に有することができる。
【0052】
本実施形態の仕上用組成物において、油分の含有量は、1質量%未満であることが好ましい。これにより、油っぽい使用感を抑えることができる。なお、油分とは、水と混ざり合わない有機物である。水と混ざり合わないことは、下記のようにして確認できる。例えば、対象有機物(油分)と水とを容量比で半分ずつ容器に入れ、この容器を室温において手で上下に激しく振り、室温で1分間放置する。放置後に相分離が観察された場合、対象有機物(油分)が水と混ざり合わないと判断できる。
【0053】
本実施形態の仕上用組成物は、液体状、ジェル状などの状態であってもよい。皮膚上の粉体含有化粧料に重ねて塗りやすいという点で、仕上用組成物は、ジェル状であることが好ましい。ジェル状の仕上用組成物の粘度は、20℃において、35,000~57,000mPa・sであることが好ましい。
【0054】
上記の仕上用組成物は、化粧料として使用される。上記の仕上用組成物は、皮膚にすでに塗布された粉体含有化粧料のうえに塗布されて使用される。例えば、上記の仕上用組成物は、皮膚上のファンデーションの外観を整え、また、ファンデーションの化粧持ちを向上させて、メークアップを仕上げるために、ファンデーションのうえに塗布されて使用される。換言すると、上記の仕上用組成物は、例えば、塗布されたファンデーションの化粧持ちを向上させるための、ファンデーションの仕上用組成物である。
【0055】
皮膚に塗布後の粉体含有化粧料は、無機粉体又は有機粉体を含有する化粧料である。具体的には、粉体含有化粧料としては、ファンデーション、日焼け止め剤、アイシャドウ、チーク、白粉などが挙げられる。塗布後の粉体含有化粧料は、油分及び粉体を比較的多く含む塗膜の状態で皮膚を覆っている。従って、粉体含有化粧料を塗布した後において、使用者は、粉っぽさや油っぽさを感じることが多い。また、油分及び粉体が皮膚上に単に付着した状態であることから、こすれによって、皮膚上から塗膜がはがれてしまうこともある。
【0056】
本実施形態の仕上用組成物は、上記の(A)成分及び(B)成分を含む。上記の(A)は、特定の高分子化合物であり、上記の(B)成分は、特定の界面活性剤である。これら成分が組み合わされた仕上用組成物を塗布すると、主に(A)成分によって、粉体含有化粧料の粉体が皮膚に付着した状態を強く保たせることができると考えられる。従って、皮膚上の粉体含有化粧料の化粧持ちを向上させることができると考えられる。
また、上記の仕上用組成物を塗布したときに、塗布された仕上用組成物と、皮膚上の粉体含有化粧料の塗膜とが、主に(B)成分によって、ほどよくなじむ。よって、粉体含有化粧料のうえに、上記の仕上用組成物を均一に塗布、即ち、上記の仕上用組成物を良好に塗布できると考えられる。また、上記の仕上用組成物を塗布しても、粉体含有化粧料の粉体と、仕上用組成物とが互いに混ざり合うことが抑制されるため、粉体含有化粧料が皮膚に付着した状態を保つことができると考えられる。換言すると、既に塗布された粉体含有化粧料の性能を発揮させつつ、粉体含有化粧料の化粧持ちを向上させることができる。
また、上記の(A)成分及び(B)成分は、べたつき感をあまり有しないことから、上記の仕上用組成物を塗布するときに、さっぱりとして使用感を与えることができる。
また、本実施形態の仕上用組成物が油分をほとんど含まない場合(即ち、水系製剤である場合)、使用時のべたつき感を有しないうえに、一般的にルースパウダーやプレストパウダーと称される粉おしろいと比較して、皮膚上の粉体含有化粧料のツヤ感を妨げない。しかも、皮膚からの水分蒸散量を抑えることもできる。
【0057】
本発明の粉体含有化粧料の仕上用組成物は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の実施形態に限定されるものではない。また、本発明では、一般の化粧料において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【実施例】
【0058】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
以下に示す原料を用いて、表1及び表2に示した配合処方で、各実施例及び各比較例の粉体含有化粧料の仕上用組成物を製造した。なお、各原料を一般的な方法によって混合し、撹拌することによって、各仕上用組成物を製造した。
【0060】
「(A)成分」
(A-1):(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体アンモニウム塩 [(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル部分の炭素数 1~4、及び8]
製品名「ヨドゾールGH256F」(アクゾノーベル社製 マイクロエマルジョンの状態)
(A-2):互いに異なる2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが共重合した共重合体(コア部分)と、ポリウレタン-4(シェル部分)との複合体 [(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル部分の炭素数 1~4、及び8]
製品名「リカボンドSS-3000」(ジャパンコーティングレジン社製 エマルジョンの状態)
(A-3):スチレン/アクリル酸アルキルエステル共重合体
製品名「ヨドゾール GH41F」(アクゾノーベル社製)
「非(A)成分」
非(A):ポリアクリル酸ナトリウム
製品名「ビスコメートNP-600」(昭和電工社製)
「(B)成分」
(B-1):クエン酸、乳酸、リノール酸、及びオレイン酸の混合物と、グリセリン及びジグリセリンの混合物とのエステル化反応物(混合物)
製品名「IMWITOR375」(IOI Oleo社製)
(B-2):イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20EO)
製品名「EMALEXGWIS-120」(日本エマルジョン社製)
(B-3):モノミリスチン酸ポリ(デカ)グリセリル
製品名「NIKKOL デカグリン 1-M」(日光ケミカルズ社製)
「非(B)成分」
非(B):トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン20EO
製品名「NIKKOLTS-30V」(日光ケミカルズ社製)
「増粘剤」(アクロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー
「防腐剤」メチルパラベン
「多価アルコール」1,3-ブチレングリコール(1,3-BG)
【0061】
以下の項目について、各仕上用組成物の評価試験をおこなった。
<評価1>ファンデーションの化粧持ち(耐こすれ性)
人工皮革(製品名「プロテインレザー」 イデアテックス ジャパン社製 6cm×5cm)にファンデーションを0.02g塗布し、その上に各仕上げ用組成物を0.03g塗布した。5分後にコピー用紙を重ねて、さらに1kgのおもり入れた瓶を乗せた。コピー用紙を一定方向に引きずり、コピー用紙にファンデーションを転着させる操作を行った。転着しない場合、こすれに強い(○)と評価し、一方、転着した場合、こすれに弱い(×)と評価した。
<評価2>塗布性
人工皮革(製品名「プロテインレザー」 イデアテックス ジャパン社製 6cm×5cm)にファンデーションを0.02g塗布し、その上に各仕上げ用組成物を0.03g塗布して、塗布後の均一性を評価した。目視によって白い点が出なかった場合、均一に塗布できる(○)と評価し、一方、白い点が出た場合、均一に塗布できない(×)と評価した。
<評価3>使用感(べたつき)
人工皮革(製品名「プロテインレザー」 イデアテックス ジャパン社製 6cm×5cm)に各仕上げ用組成物を0.03g塗布した。1分半後に、さらに0.03gの繊維をのせた。エアーで繊維を吹き飛ばす操作を行った。人工皮革上に残った繊維量が少なかった場合、べたつかない(○)と評価し、一方、残った繊維量が多かった場合、べたつく(×)と評価した。
評価結果を表1及び表2に示す。
【0062】
【0063】
【0064】
表1及び表2から把握されるように、(A)成分と(B)成分とを組み合わせたファンデーションの仕上用組成物は、既に塗布されたファンデーション中の粉体を安定的に定着させることができ、これによって、こすれに対する強さが発揮されたと考えられる。よって、ファンデーションの化粧持ちがよくなったと考えられる。しかも、ファンデーションのうえに均一に塗布することができた。
一方、(A)成分又は(B)成分のいずれか一方を欠いた組成物、両方を欠いた組成物は、ファンデーションの化粧持ちが悪いか、又は、ファンデーションのうえに均一に塗布することができなかった。
なお、比較例1において、塗布した組成物は、ファンデーションのうえではじかれ、均一に塗布できなかった。また、比較例3において、塗布した組成物は、ファンデーションを浮き上がらせてしまい、化粧崩れを引き起こした。
【0065】
(その他の評価)
実施例1の仕上用組成物(水系製剤)と、従来の粉おしろい(市販のルースパウダー)との性能比較をおこなった。
「ツヤ感の評価」
・対比光沢測定法
人工皮革にファンデーションを塗布し、さらにルースパウダーを重ねて塗布した。変角光度計「GC5000L」(日本電色工業社製)によって、45°入射光に対する反射光を測定し、45°/0°の対比光沢を算出した。値が高いほどツヤ感が高いと評価した。結果を
図1に示す。
実施例の仕上用組成物は、従来の粉おしろいよりも、塗布済みのファンデーションのツヤ感を高めることができた。
「水分蒸散量の評価」
・水分蒸散量測定法
ジャー容器に水を入れ、容器の開口を塞ぐようにテープを張り、テープの上に試験用サンプルを塗布した。容器ごと40℃の恒温槽に入れ、4時間後までの水分蒸散量を測定した。結果を
図2に示す。
実施例の仕上用組成物は、従来の粉おしろいよりも、4時間後において、水分蒸散量を約35%抑えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の粉体含有化粧料の仕上用組成物は、例えば、皮膚に塗布された粉体含有化粧料(ファンデーションなど)の化粧持ちを改善するために、粉体含有化粧料のうえから(粉体含有化粧料に重ねて)塗布されて、好適に使用できる。