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特許7212371炎症刺激された間葉系幹細胞を含む免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】炎症刺激された間葉系幹細胞を含む免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20230118BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230118BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20230118BHJP
   A61K 31/221 20060101ALN20230118BHJP
【FI】
A61K35/28 ZNA
A61P1/04
A61P3/10
A61P5/14
A61P7/00
A61P7/06
A61P11/06
A61P15/00
A61P17/00
A61P17/06
A61P19/02
A61P21/00
A61P25/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P31/04
A61P37/02
A61P37/06
A61P37/08
A61P43/00 111
C12N5/0775
A61K31/221
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019513066
(86)(22)【出願日】2017-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 KR2017009824
(87)【国際公開番号】W WO2018048220
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2016-0115081
(32)【優先日】2016-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517278646
【氏名又は名称】エスシーエム ライフサイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ソン、スン、ウク
(72)【発明者】
【氏名】イ、テク、ギ
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/125582(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/048107(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0044958(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0802011(KR,B1)
【文献】特表2007-530543(JP,A)
【文献】STEM CELLS AND DEVELOPMENT,2009年,Vol. 18, No. 1,pp. 103-112
【文献】Veterinary Immunology and Immunopathology,2015年,Vol. 165,pp. 107-118
【文献】Cellular Immunology,2008年,Vol. 251,pp. 116-123
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/28
A61P 1/04
A61P 3/10
A61P 5/14
A61P 7/00
A61P 7/06
A61P 11/06
A61P 15/00
A61P 17/00
A61P 17/06
A61P 19/02
A61P 21/00
A61P 25/00
A61P 29/00
A61P 31/04
A61P 37/02
A61P 37/06
A61P 37/08
A61P 43/00
C12N 5/0775
A61K 31/221
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチルコリンを分泌しコリン性ニューロン-類似表現型を示すヒト間葉系幹細胞を含む、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物であって、前記コリン性ニューロン-類似表現型のヒト間葉系幹細胞が、ヒト間葉系幹細胞を共同培養された複数のドナーのPBMCと共に培養することによって、またはヒト間葉系幹細胞を植物性凝集素(PHA)で処理したドナーのPBMCと共に培養することによって調製される幹細胞である、前記免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記ヒト間葉系幹細胞は、CD29、CD44、CD49f、CD73、CD90、CD105、CD146、HLA-class I(HLA-I)及びOct4を発現することを特徴とする、請求項1に記載の免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記免疫疾患または炎症疾患は、自己免疫疾患、移植拒否、関節炎、移植片対宿主病、細菌感染、敗血症及び炎症からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記自己免疫疾患は、クローン病、紅斑病、アトピー、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、慢性疲労症候群、線維筋痛症、強皮症、ベーチェット病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、メニエール症候群(Meniere’s syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、白斑症、子宮内膜症、乾癬、全身性強皮症、喘息及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項3に記載の免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
ヒト間葉系幹細胞に炎症刺激を加えて培養するステップ;を含む、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用のコリン性ニューロン-類似表現型ヒト間葉系幹細胞の製造方法であって、
前記ヒト間葉系幹細胞に炎症刺激を加えて培養するステップが、前記ヒト間葉系幹細胞を共同培養された複数のドナーのPBMCと共に培養すること;または前記ヒト間葉系幹細胞を植物性凝集素(PHA)で処理したドナーのPBMCと共に培養することを含み、
前記コリン性ニューロン-類似表現型ヒト間葉系幹細胞がアセチルコリンを分泌する幹細胞である、前記免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用間葉系幹細胞の製造方法。
【請求項6】
前記ヒト間葉系幹細胞が層分離培養法により分離される、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記コリン性ニューロン-類似表現型ヒト間葉系幹細胞が、CD29、CD44、CD49f、CD73、CD90、CD105、CD146、HLA-class I(HLA-I)及びOct4を発現する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記免疫疾患または炎症疾患が、自己免疫疾患、移植拒否、関節炎、移植片対宿主病、細菌感染、敗血症及び炎症からなる群から選択された1種以上である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記自己免疫疾患が、クローン病、紅斑病、アトピー、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、慢性疲労症候群、線維筋痛症、強皮症、ベーチェット病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、メニエール症候群(Meniere’s syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、白斑症、子宮内膜症、乾癬、全身性強皮症、喘息及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される1種以上である、請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症刺激された間葉系幹細胞を含む免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用間葉系幹細胞の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨中の軟らかい物質である骨髄は、新たな血液細胞で産生される活性組織であり、少なくとも二つのタイプの幹細胞を含む。造血幹細胞(Hematopoietic stem cells、HSCs)は、自己-更新幹細胞であって、全ての血液継代で産生される。前記造血幹細胞とは異なり、非造血由来の稀な幹細胞は、造血作用(hematopoiesis)のための支持的基質構造を供給及び構成する。これは、中間葉継代の体細胞に分化され得る。造血作用に役立つ非-造血幹細胞は、骨髄基質細胞または間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSCs)と定義される。間葉系幹細胞は、様々な成人組織から分離され、中間葉細胞タイプだけではなく、神経細胞のような非間葉系幹細胞タイプにも分化されると知られている。間葉系幹細胞は、本来多能性を有しているが、分化可能性の観点からは、in vivo上の転換分化(transdifferentiation)のための不確実な能力は臨床的適用に対して制限されて使用する可能性がある。
【0003】
今まで多くの化合物免疫抑制剤または抗炎症剤が開発されており、臨床的に最もよく使用される免疫抑制剤としては、シクロスポリン(cyclosporine、Neoral、Cipol A)、アザチオプリン(imuran)、プレドニゾロン(一種のステロイド)がある。前記免疫抑制剤は、抗原刺激から抗体生成に至る過程中、大食細胞による抗原の貪食、リンパ球等による抗原認識、細胞分裂、T細胞とB細胞の分裂、抗体生成等のいくつかの過程を阻害させることで免疫抑制を引き起こす。ほとんど抗腫瘍活性を有しているが、その理由は、DNA障害、DNA合成阻止等を媒介として細胞分裂を阻止するためである。しかし、それによる代表的な副作用として高血圧と腎毒性(腎機能が低下する)があり、この副作用の発生率が高いため、使用するとき、十分に経過を観察しなければならない等の問題があってきた。その他の副作用として、稀に震え、発作、肝炎、胆液貯留、血中尿酸増加、筋肉気力低下、多毛症(hypertrichosis)、歯肉肥大(gingival hypertrophy)等がある。よく使用される抑制剤のうちアザチオプリンは、白血球数値の減少、貧血、血小板減少等、骨髄機能を抑制することもあり、膵臓炎、肝炎、胆汁貯留と共に稀に脱毛、発熱等を示す合併症があり得る。ステロイド製剤の一つであるプレドニゾロンは、免疫抑制剤のうち最も早く使用され始めたが、動脈硬化症を促進させるだけではなく、高血圧、胃潰瘍、糖尿、成長阻害、骨粗鬆症、白内障、緑内障等を起こすので注意すべき薬物であるため、安全な免疫抑制剤または抗炎症剤の必要性が浮上している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
骨中の軟らかい物質である骨髄は、新たな血液細胞で産生される活性組織であり、少なくとも二つのタイプの幹細胞を含む。造血幹細胞(Hematopoietic stem cells、HSCs)は、自己-更新幹細胞であって、全ての血液継代で産生される。前記造血幹細胞とは異なり、非造血由来の稀な幹細胞は、造血作用(hematopoiesis)のための支持的基質構造を供給及び構成する。これは、中間葉継代の体細胞に分化され得る。造血作用に役立つ非-造血幹細胞は、骨髄基質細胞または間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSCs)と定義される。間葉系幹細胞は、様々な成人組織から分離され、中間葉細胞タイプだけではなく、神経細胞のような非間葉系幹細胞タイプにも分化されると知られている。間葉系幹細胞は、本来多能性を有しているが、分化可能性の観点からは、in vivo上の転換分化(transdifferentiation)のための不確実な能力は臨床的適用に対して制限されて使用する可能性がある。
【0005】
今まで多くの化合物免疫抑制剤または抗炎症剤が開発されており、臨床的に最もよく使用される免疫抑制剤としては、シクロスポリン(cyclosporine、Neoral、Cipol A)、アザチオプリン(imuran)、プレドニゾロン(一種のステロイド)がある。前記免疫抑制剤は、抗原刺激から抗体生成に至る過程中、大食細胞による抗原の貪食、リンパ球等による抗原認識、細胞分裂、T細胞とB細胞の分裂、抗体生成等のいくつかの過程を阻害させることで免疫抑制を引き起こす。ほとんど抗腫瘍活性を有しているが、その理由は、DNA障害、DNA合成阻止等を媒介として細胞分裂を阻止するためである。しかし、それによる代表的な副作用として高血圧と腎毒性(腎機能が低下する)があり、この副作用の発生率が高いため、使用するとき、十分に経過を観察しなければならない等の問題があってきた。その他の副作用として、稀に震え、発作、肝炎、胆液貯留、血中尿酸増加、筋肉気力低下、多毛症(hypertrichosis)、歯肉肥大(gingival hypertrophy)等がある。よく使用される抑制剤のうちアザチオプリンは、白血球数値の減少、貧血、血小板減少等、骨髄機能を抑制することもあり、膵臓炎、肝炎、胆汁貯留と共に稀に脱毛、発熱等を示す合併症があり得る。ステロイド製剤の一つであるプレドニゾロンは、免疫抑制剤のうち最も早く使用され始めたが、動脈硬化症を促進させるだけではなく、高血圧、胃潰瘍、糖尿、成長阻害、骨粗鬆症、白内障、緑内障等を起こすので注意すべき薬物であるため、安全な免疫抑制剤または抗炎症剤の必要性が浮上している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記のような課題を解決するために、本発明は、炎症刺激された間葉系幹細胞を含む免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、間葉系幹細胞に炎症刺激を加えて培養するステップ;を含む免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用間葉系幹細胞の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の炎症刺激された間葉系幹細胞は、アセチルコリンを分泌する効果があり、副作用が知られた既存の免疫抑制剤及び炎症抑制剤の代わりとなり得、経済的に使用され得る細胞治療剤として免疫疾患及び炎症疾患の予防または治療に有用に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】aは、本発明のMSCsが線維芽細胞-類似形態を有することを確認した結果を示した図である。bは、本発明のMSCsの脂肪細胞化(adipogenically)、軟骨分化(chondrogenically)及び骨分化(osteogenically)への分化潜在力を確認した結果を示した図である。cは、本発明のMSCsの陽性または陰性マーカーのフローサイトメトリーの結果を示した図である。
図2】aは、PBMCs(PまたはPo)及び混合リンパ球反応(MLR)上でMSCsの有無による同種抗原性(alloantigenic)免疫反応をリンパ球増殖及び活性を通して確認した結果を示した図である。bは、PBMCs(P)、PHA(1μg/ml)処理されたヒトPBMCs(PPHA)にMSCs共同培養の有無によるリンパ球増殖及び活性の結果を示した図である。cは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsでMSCsを共同培養したとき、非正常な形態学的変化を光学顕微鏡で確認した結果を示した図である。dは、MLR-活性化で、eは、PHA-活性化されたPBMCsでMSCsを共同培養後、神経細胞-類似形態的特徴を確認した結果を示した図である。fは、MLR-活性化で、gは、PHA-活性化されたPBMCsでMSCsを共同培養後、神経球-類似細胞クラスター(赤い矢印)を確認した結果を示した図である。
図3】aは、炎症性条件に対するMSCsでスフェロイド個体生成を確認した結果を示した図である。bは、炎症性条件を最小化したとき、MSCsのスフェロイドの生成有無及びMSCs特性変化を確認した結果を示した図である。
図4】aは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、Semi-quantitative RT-PCRを遂行し、nestin、Tuj1、MAP2、NF-M及びGFAPの発現を確認した図である。bは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、nestin、Tuj1及びGFAPのフローサイトメトリーの結果を示した図である。c及びdは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、免疫蛍光染色してnestin、Tuj1、NCAM1、GFAP及びO4の発現程度を確認した図である。
図5】aは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、Semi-quantitative RT-PCRを遂行し、TrkA、TrkB、TrkC及びp75NTR発現を確認した図である。b及びcは、それぞれMLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、qRT-PCRを通してTrkA、TrkB、TrkC及びp75NTR発現を確認した図である。dは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、ウェスタンブロットを遂行し、TrkA、TrkB、TrkC及びp75NTR発現を確認した図である。e及びfは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、免疫蛍光染色を遂行してTrkA発現程度を確認した結果を確認した図である。
図6】aは、MLR-活性化されたPBMCsをSemi-quantitative RT-PCRを遂行し、NGF及びBDNFの発現程度を確認した結果を示した図である。bは、MLR-活性化されたPBMCsにqRT-PCRを遂行し、NGF及びBDNFの発現程度を確認した結果を示した図である。cは、PHA-活性化されたPBMCsをSemi-quantitative RT-PCRを遂行し、NGF及びBDNFの発現程度を確認した結果を示した図である。dは、PHA-活性化されたPBMCsにqRT-PCRを遂行し、NGF及びBDNFの発現程度を確認した結果を示した図である。e乃至hは、ELISAを遂行してMLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsから分泌されたNGF及びBDNFの分泌量を確認した結果を示した図である。
図7】aは、炎症性条件によるMSCsのスフェロイド形成を確認した結果を示した図である。bは、MSCsのスフェロイドのTuj1、NF-M及びMAP2の発現程度を確認した結果を示した図である。
図8】aは、炎症性条件により活性化されたPBMCsのスフェロイド形成を確認した結果を示した図である。bは、混合リンパ球反応(MLR)条件で、MSCsスフェロイドまたはMSCs単一分子膜の比率(1:2、1:5及び1:20)によるリンパ球増殖抑制程度を確認した結果を示した図である。cは、植物性血球凝集素(PHA)条件で、MSCsスフェロイドまたはMSCs単一分子膜の比率(1:2、1:5及び1:20)によるリンパ球増殖抑制程度を確認した結果を示した図である。dは、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)でMSCsスフェロイドのTuj1及びnestinの発現のフローサイトメトリーの確認結果を示した図である。
図9】aは、何の処理もしていないMSCsをneurobasal medium培地に培養した後、Tuj1、nestin、MBP及びNF-Mの発現を確認した結果を示した図である。bは、混合リンパ球反応(MLR)条件のMSCsをneurobasal medium培地に培養した後、Tuj1、nestin、MBP及びNF-Mの発現を確認した結果を示した図である。
図10】aは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、免疫蛍光染色してChAT、TH及びGABAの発現程度を確認した結果を示した図である。bは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、qRT-PCRを遂行してChAT発現程度を確認した図である。cは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、ウェスタンブロットを遂行してChAT発現程度を確認した図である。dは、MLR-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、免疫蛍光染色を通してChAT、NCAM1、MBP、Tuj1、NF-M、nestin、TrkA及びGABAの発現程度を示した図である。eは、MLR-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養した後、PBMCs単独(P及びPo)群と比較してアセチルコリン分泌を確認した結果を示した図である。fは、PHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養した後、PBMCs単独(P)群と比較してアセチルコリン分泌を確認した結果を示した図である。
図11】aは、一般培養またはトランスウェルプレート培養と比較して、炎症性条件でMSCsのコリン性ニューロン-類似表現型への変化を確認した結果を示した図である。bは、調整培地(conditioned medium、CM)条件でMSCsのコリン性ニューロン-類似表現型への変化を確認した結果を示した図である。cは、b条件でChAT、NCAM1、NF-M及びTuj1の発現を確認した結果を示した図である。
図12】aは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、PBMCs単独(P及びPo)群と比較してSemi-quantitative RT-PCRを遂行してnAChRα3、nAChRα5、nAChRα7、nAChRα8、nAChRβ2の発現程度を確認した結果である。bは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、PBMCs単独(P及びPo)群と比較してqRT-PCRを遂行してnAChRα5の発現程度を確認した結果を示した図である。cは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、PBMCs単独(P及びPo)群と比較してqRT-PCRを遂行してnAChRα7の発現程度を確認した結果を示した図である。dは、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、PBMCs単独(P及びPo)群と比較して、ウェスタンブロットを通してnAChRα7の発現程度を確認した結果を示した図である。
図13】炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたPBMCsのフローサイトメトリーの結果を示した図である。
図14】a乃至cは、α-BTXを添加した培地にMLR-活性化PBMCsにMSCsを共同培養後、PBMCs単独(P及びPo)群と比較して各リンパ球増殖、TNF-α及びIFN-γの結果を確認した結果を示した図である。d乃至fは、α-BTXを添加した培地にPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、PBMCs単独(P及びPo)群と比較して各リンパ球増殖、TNF-α及びIFN-γの結果を確認した結果を示した図である。g乃至iは、ACh-Clを添加した培地にMLR-活性化PBMCsにMSCsを共同培養後、PBMCs単独(P及びPo)群と比較して各リンパ球増殖、TNF-α及びIFN-γの結果を確認した結果を示した図である。j乃至lは、ACh-Clを添加した培地にPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、PBMCs単独(P及びPo)群と比較して各リンパ球増殖、TNF-α及びIFN-γの結果を確認した結果を示した図である。
図15】a乃至dは、非特異的コリン性アゴニストであるカルバコール(carbachol)を培地に添加した後、MLR-活性化またはPHA-活性化されたPBMCsにMSCsを共同培養後、PBMCs単独(P及びPo)群と比較して各リンパ球増殖、TNF-α及びIFN-γの結果を確認した結果を示した図である。
図16】aは、CD3/CD28-活性化されたマウス脾臓細胞(2×10)とMSCs(4×10~4×10)を1:5、1:10、1:20、及び1:50の比率で培養後、リンパ球増殖抑制結果を確認した図である。bは、マウスの脾臓細胞処理されたMSCsのコリン性神経細胞類似表現型変化有無を確認した結果を示した図である。cは、マウスの脾臓細胞処理されたMSCsのChAT、NCAM1、Tuj1、NF-M、nestin、MBP及びTHの発現を確認した結果を示した図である。
図17】aは、CD3/CD28-活性化されたラットの脾臓細胞(2×10)とMSCs(4×10~4×10)を1:5、1:10及び1:20の比率で培養後、リンパ球増殖抑制結果を確認した図である。bは、ラットの脾臓細胞で処理されたMSCsのコリン性神経細胞類似表現型変化有無を確認した結果を示した図である。cは、マウスの脾臓細胞処理されたMSCsのChAT、NCAM1、Tuj1、NF-M、nestin、TH及びGABAの発現を確認した結果を示した図である。dは、ラットの脾臓細胞で処理されたMSCs(co culture)で神経成長因子受容体であるTrkA、TrkB、TrkC及びp75NTRのmRNA発現の変化を比較した結果を示した図である。
図18】aは、一時的な(transient)ヒト化GVHDマウスモデルにPBMCs及びMSCs接種してChAT+ nestin+ヒト細胞を確認過程を模式化した図である。bは、ChAT+ nestin+ヒト細胞を確認するために、PBMCs(P1またはP2)または混合されたPBMCs(P1+P2)注入マウスにヒトMSCsを処理した各マウスで抗-ChAT及び抗-nestin抗体の発現程度を確認した結果である。cは、MSC細胞質の有無を確認するために、PBMCs(P1またはP2)または混合されたPBMCs(P1+P2)注入マウスにヒトMSCsを処理した各マウスに生体に適したシリカ-コーティングされた蛍光ナノ粒子を注入した結果を示した結果である(矢印は、MSC細胞質を示す)。
図19】本発明の炎症性刺激に対するMSCsのコリン性抗-炎症メカニズムを模式化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、炎症刺激された間葉系幹細胞を含む免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0011】
前記間葉系幹細胞は、層分離培養法(Subfractionation Culturing Method)で分離され得、前記方法で分離された本発明の間葉系幹細胞は、CD29、CD44、CD49f、CD73、CD90、CD105、CD146、HLA-class I(HLA-I)及びOct4を発現できる。
【0012】
本発明において、「層分離培養法」は、個体から骨髄を採取し、それを培養した後、前記培養上層液だけを新たな容器に移動させて培養し、前記培養で生成される培養上層液だけを分離してコーティング剤が処理された培養容器またはコーティング剤が処理されていない培養容器で繰り返し培養するステップを経て間葉系幹細胞を収得する方法を意味し、KR10-0802011に記載の内容が本発明に全体として参照され得、好ましくは、前記文献に開示されているように層分離培養法を遂行することができる。
【0013】
前記炎症刺激された間葉系幹細胞は、混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction、MLR)条件、類似分裂促進物質(mitogen)処理条件及びサイトカイン(Cytokine)処理条件からなる群から選択された1種以上の培養条件で培養する方法を通して炎症刺激された間葉系幹細胞であってよく、前記類似分裂促進物質は、植物性凝集素(phytohemagglutinin、PHA)、コンカナバリンA(Con A)、PWM(pokeweed mitogen)、リポ多糖、ストレプトリジンS、水銀化合物及び抗リンパ球抗体からなる群から選択された1種以上であり、これに制限されない。
【0014】
本発明において、「混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction、MLR)」は、細胞性免疫機能を試験管で測定する方法の一つであって、臓器移植時、ドナーとレシピエントとの間の組織適合性(histocompatibility)を調査するために利用される試験法である。ドナーとレシピエントのリンパ球を混ぜて細胞培養をしたとき、万一両者の組織的合成抗原が互いに異なれば、リンパ球は分裂を始める。分裂したか否かは、予め培地に加えておいた3HチミジンがDNAに収容されたか否かによって分かる。本発明において、混合リンパ球反応は、互いに異なるドナーで収得した各PBMCsを共に培養することを意味し、ここに間葉系幹細胞を処理して、本発明の炎症刺激された間葉系幹細胞を収得する。
【0015】
本発明において、「類似分裂促進物質(mitogen)」は、細胞分裂を誘発する物質を意味し、免疫学的には、抗原非特異的(多重クローン性)にリンパ球を幼若化して分裂を誘発させることを意味する。
【0016】
本発明において、「植物性凝集素(phytohemagglutinin、PHA)」は、植物由来の細胞凝集活性(aggregation activity of cell)を備えたレクチン[lectin(糖結合タンパク質)]を意味し、T細胞にのみ作用する特徴がある。本発明において、植物性凝集素処理は、ドナーで収得したPBMCsにPHAを処理した後、ここに間葉系幹細胞を処理することを意味し、このような処理を通して本発明の炎症刺激された間葉系幹細胞を収得する。
【0017】
本発明において、「コンカナバリンA(Con A)」は、タチナタマメ(Canavalia ensiformis)の種子から得られた結晶性タンパク質の一つである。Con Aは、T細胞を活性化させるが、B細胞は活性化させず、不溶化するとB細胞も活性化される。また、様々ながん細胞で正常細胞に比べてCon Aに対する高い凝集性を示すため、がん細胞膜構造の特異性を研究する手段として利用されている。
【0018】
本発明において、「炎症刺激された間葉系幹細胞」は、混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction、MLR)、類似分裂促進物質(mitogen)処理及びサイトカイン(Cytokine)処理条件で炎症刺激されるか、好ましくは、混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction、MLR)または植物性凝集素(phytohemagglutinin、PHA)条件で炎症刺激されて間葉系幹細胞が神経細胞と類似した特徴を有することを意味し、本発明の一実施例において、本発明の炎症刺激された間葉系幹細胞は、神経細胞と類似した形態に変化し、神経細胞マーカーであるTuj1、nestin及びMAP2を発現し、星状膠細胞(アストロサイト)マーカーであるGFAP及び希突起神経膠マーカーであるO4のような神経膠マーカーは発現しないことを確認した。
【0019】
前記炎症刺激された間葉系幹細胞は、コリン性ニューロン-類似表現型(cholinergic neuron-like phenotype)に変化し、アセチルコリンを分泌できる。
【0020】
本発明において、「コリン性ニューロン(cholinergic neuron)」は、神経繊維末端から化学伝達物質としてアセチルコリンを分泌するニューロンを意味する。
【0021】
本発明において、「アセチルコリン」は、コリンと酢酸のエステルである神経伝達物質であり、神経の末端で分泌され、神経の刺激を筋肉に伝達する化学物質である。
【0022】
前記組成物には、アセチルコリンのアゴニスト(agonist)をさらに含むことができ、例えば、ACh chloride(ACh-Cl)、カルバコール(carbachol)、エピバチジン(epibatidine)、DMPP(dimethylphenylpiperazinium)、スキサメトニウム(suxamethonium)、シチシン(cytisine)、ニコチン(nicotine)、ニフェン(nifene)、バレニクリン(varenicline)、MDMA(3,4-Methylenedioxymethamphetamine)及びメタンフェタミン(methamphetamine)からなる群から選択された1種以上を選択してさらに含むことができ、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療のためのものであれば、これに制限されない。
【0023】
前記免疫疾患または炎症疾患は、自己免疫疾患、移植拒否、関節炎、移植片対宿主病、細菌感染、敗血症及び炎症からなる群から選択された1種以上であってよく、前記自己免疫疾患は、クローン病、紅斑病、アトピー、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、慢性疲労症候群、線維筋痛症、甲状腺機能低下症、亢進症、強皮症、ベーチェット病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、メニエール症候群(Meniere’s syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、白斑症、子宮内膜症、乾癬、全身性強皮症、喘息及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択された1種以上であってよいが、これに制限されない。
【0024】
本発明の薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。また、薬学組成物の製造には、固体または液体の製剤用添加物を使用することができる。製剤用添加物は、有機または無機のいずれであってもよい。
【0025】
賦形剤としては、例えば、乳糖、ショ糖、白糖、ブドウ糖、トウモロコシデンプン(corn starch)、デンプン、タルク、ソルビトール、結晶セルロース、デキストリン、カオリン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素等が挙げられる。結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、メチルセルロース、アラビアゴム、トラガカント(tragacanth)、ゼラチン、シェラック(shellac)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン(pectin)等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が挙げられる。着色剤としては、通常医薬品に添加することが許可されているものであれば、いずれも使用することができる。これらの錠剤、粒剤には、糖衣、ゼラチンコーティング、その他、必要に応じて適宜コーティングすることができる。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤等を添加することができる。
【0026】
本発明の薬学的組成物は、当業界において通常製造されるいかなる剤形にも製造され得、製剤の形態は、特に限定されるものではないが、好ましくは、外用剤であってよい。本発明の外用剤には、シート剤、液状塗布剤、噴霧剤、ローション剤、クリーム剤、パップ剤、粉剤、浸透パッド剤、噴霧剤、ゲル剤、パスタ剤、リニメント剤、軟膏剤、エアゾール、粉末剤、懸濁液剤、経皮吸収剤等の通常の外用剤の形態が含まれ得る。これらの剤形は、全ての製薬化学に一般的に公知になった処方書である文献に記述されている。
【0027】
本発明の薬学的有効量は、患者の傷の種類、適用部位、処理回収、処理時間、剤形、患者の状態、補助剤の種類等によって変わり得る。使用量は、特に限定されないが、通常、本発明の薬学組成物の1日有効量を患者に適用時、0.00001~10000μgであってよい。前記1日量は、1日に1回、または適当な間隔をおいて1日に2~3回に分けて投与してもよく、数日間隔で間欠投与してもよい。
【0028】
しかし、本発明の薬学的組成物の前記使用量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重、患者の重症度、傷の種類、適用部位、処理回収、処理時間、剤形、患者の状態、補助剤の種類等の様々な関連因子に照らして決定されるものであるので、前記有効量は、いかなる側面にも本発明の範囲を制限するものと理解されてはならない。
【0029】
また、本発明は、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療に使用するための炎症刺激された間葉系幹細胞の用途を提供する。
【0030】
また、本発明は、免疫疾患または炎症疾患の予防または治療剤の製造に使用するための炎症刺激された間葉系幹細胞の用途を提供する。
【0031】
また、本発明は、前記炎症刺激された間葉系幹細胞を個体に投与するステップを含む、個体の免疫反応または炎症反応を抑制する方法を提供する。
【0032】
また、本発明は、前記炎症刺激された間葉系幹細胞を個体に投与するステップを含む、個体の炎症性疾患の予防または治療方法を提供する。
【0033】
本発明において、「個体」とは、牛、犬、豚、鶏、羊、馬、ヒトを含む哺乳動物を意味するが、これに制限されるものではない。
【0034】
前記方法において、前記間葉系幹細胞は、層分離培養法(Subfractionation Culturing Method)で分離されたことを特徴とし得、CD29、CD44、CD49f、CD73、CD90、CD105、CD146、HLA-class I(HLA-I)及びOct4を発現することを特徴とし得る。
【0035】
本発明の方法に使用される炎症刺激された間葉系幹細胞は、混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction、MLR)条件、類似分裂促進物質(mitogen)処理条件及びサイトカイン(Cytokine)処理条件からなる群から選択された1種以上の培養条件で培養されたことを特徴とし得、前記類似分裂促進物質は、植物性凝集素(phytohemagglutinin、PHA)、コンカナバリンA(Con A)、PWM(pokeweed mitogen)、リポ多糖、ストレプトリジンS、水銀化合物及び抗-リンパ球抗体からなる群から選択された1種以上であってよく、炎症刺激された間葉系幹細胞は、コリン性ニューロン-類似表現型(cholinergic neuron-like phenotype)に変わったことを特徴とし得る。
【0036】
前記炎症刺激された間葉系幹細胞は、アセチルコリンを分泌することを特徴とし得、免疫疾患または炎症疾患は、自己免疫疾患、移植拒否、関節炎、移植片対宿主病、細菌感染、敗血症及び炎症からなる群から選択された1種以上であってよい。
【0037】
また、本発明は、間葉系幹細胞に炎症刺激を加えて培養するステップを含む免疫疾患または炎症疾患の予防または治療用間葉系幹細胞の製造方法を提供する。
【0038】
前記炎症刺激は、混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction、MLR)条件、類似分裂促進物質(mitogen)処理及びサイトカイン(Cytokine)処理からなる群から選択された1種以上であり、前記類似分裂促進物質は、植物性凝集素(phytohemagglutinin、PHA)、コンカナバリンA(Con A)、PWM(pokeweed mitogen)、リポ多糖、ストレプトリジンS、水銀化合物及び抗リンパ球抗体からなる群から選択された1種以上であり、好ましくは、混合リンパ球反応条件または植物性凝集素処理であるが、これに制限されない。
【0039】
前記製造方法により製造された間葉系幹細胞は、アセチルコリンを分泌し、免疫抑制剤または抗炎症剤として使用され得る。
【0040】
本発明において、「免疫抑制剤」とは、混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction、MLR)条件、植物性凝集素(phytohemagglutinin、PHA)処理またはサイトカイン(Cytokine)処理条件で培養した間葉系幹細胞またはその培養物を含む製剤であり、免疫反応を抑制して免疫疾患を治療できる製剤を意味する。
【0041】
本発明において、「抗炎症剤」とは、混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction、MLR)条件、植物性凝集素(phytohemagglutinin、PHA)処理またはサイトカイン(Cytokine)処理条件で培養した間葉系幹細胞またはその培養物を含む製剤であり、炎症反応を抑制して炎症疾患を治療できる製剤を意味する。
【0042】
本発明において、用語「培養」は、本発明の間葉系幹細胞を適当に人工的に調節した環境条件で生育させることを意味する。
【0043】
前記本発明の間葉系幹細胞は、通常の培地で生育可能であり、本発明の間葉系幹細胞を培養するために、培養対象、即ち、培養体となる細胞が必要とする栄養物質を含むものであり、特殊な目的のための物質がさらに添加されて混合されたものであってよい。前記培地は、培養器または培養液ともいい、天然培地、合成培地または選択培地を全て含む概念である。
【0044】
培養に使用される培地は、適当な炭素源、窒素源、アミノ酸、ビタミン等を含有した通常の培地内で温度、pH等を調節しながら適切な方式で特定菌株の要件を満たさなければならない。使用され得る炭素源としては、グルコース及びキシロースの混合糖を主炭素源として使用し、それ以外に、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デンプン、セルロースのような糖及び炭水化物、大豆油、ひまわり油、ひまし油、ヤシ油等のような油及び脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸のような脂肪酸、グリセロール、エタノールのようなアルコール、酢酸のような有機酸が含まれる。これらの物質は、個別的にまたは混合物として使用され得る。使用され得る窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、及び硝酸アンモニウムのような無機窒素源;グルタミン酸、メチオニン、グルタミンのようなアミノ酸及びペプトン、NZ-アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類またはその分解生成物、脱脂大豆ケーキまたはその分解生成物等の有機窒素源が使用され得る。これらの窒素源は、単独または組み合わされて使用され得る。前記培地には、リン源としてリン酸第1カリウム、リン酸第2カリウム及び対応するナトリウム-含有塩が含まれ得る。使用され得るリン源としては、リン酸二水素カリウムまたはリン酸水素二カリウムまたは相応するナトリウム-含有塩が含まれる。また、無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン及び炭酸カルシウム等が使用され得る。最後に、前記物質に加えてアミノ酸及びビタミンのような必須成長物質が使用され得る。
【0045】
また、培養培地に適切な前駆体が使用され得る。前記原料は、培養過程で培養物に適切な方式により回分式、流加式または連続式で添加され得るが、特にこれに制限されることはない。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのような基礎化合物またはリン酸または硫酸のような酸化合物を適切な方式で使用して培養物のpHを調節できる。
【0046】
以下、実施例は、専ら本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないということは、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって自明であるだろう。
【0047】
実験例1.材料及び方法
1-1.間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cells、MSCs)の分離、特徴及び培養
MSCsは、KR10-0802011に開示された層分離培養法(Subfractionation Culturing Method)で分離された間葉系幹細胞である。前記MSCsの分離及び特徴は、細胞形状、マーカー発現及び中間葉分化で確認し、その結果を図1に示した。フローサイトメトリーのための抗体は、anti-CD14(BD Biosciences、San Diego、CA、USA)、anti-CD29(Serotec、Kidlington、UK)、anti-CD34(BD Biosciences)、anti-CD44(Serotec)、anti-CD45(BD Biosciences)、anti-CD49f(BD Biosciences)、anti-CD73(BD Biosciences)、anti-CD90(BD Biosciences)、anti-CD105(Serotec)、anti-CD106(BD Biosciences)、anti-CD146(BD Biosciences)、anti-HLA class I(BD Biosciences)、anti-HLA-DR(BD Biosciences)、及びanti-Oct4(BD Biosciences)抗体を利用した。アイソタイプ-マッチされた対照抗体は、対照群として使用した。脂肪細胞、骨形成及び軟骨分化を含む中間葉幹分化可能性は、従来の文献(Jung,K.H.等、Gastroenterology 140、998-1008(2011))を参考にして評価した。MSCsは、10%のウシ胎児血清(Gibco-BRL)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco-BRL)及び1%のマイコゴン(Genlantis、San Diego、CA、USA)で補充された低グルコース(low glucose、Gibco-BRL、Gaithersburg、MD、USA)を含むDulbecco’s modified Eagle’s培地に37度に加湿されたCO培養器で培養した。細胞が70-80%程度に達すると、トリプシン/EDTAを含めて分離した後、追加培養のために、サブ-培養した。
【0048】
1-2.免疫抑制分析及び炎症条件
ヒト末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)は、二人の患者から分離し、各患者の1×10PBMCsを混合リンパ球反応(mixed lymphocyte reaction、MLR)のために96-ウェルプレートに共同-培養した。リンパ球増殖でMSCsの効果を評価するために、4×10MSCsを混合リンパ球反応(MLR)上で5日間共同-培養した。マイトジェン(mitogen)活性のために、2×10PBMCsを1μg/mL植物性凝集素(phytohemagglutinin、PHA)(Sigma、St.Louis、MO、USA)で刺激した。また、4×10MSCsをPBMCsと共に3日間培養した。リンパ球増殖は[H]チミジン(1μCi/well)の取り込み(incorporation)により放出された放射線はβ-カウンター(Perkin-Elmer、Waltham、MA、USA)を利用して分析した。MLRまたはPHA処理によるリンパ球活性で炎症反応を確認した。
【0049】
1-3.ELISA
nAChRアンタゴニスト(antagonist)またはアゴニスト(agonist)を含めて共同-培養した培地を得た。TNF-α(BD Biosciences;cat.# 555212)及びIFN-γ(BD Biosciences;cat.# 555141)に対するELISAキットを利用して分泌された前炎症性サイトカインを定量した。MLRまたはPHAが活性されたPBMCsを培養した培地を利用してNGF(R&D Systems、Minneapolis、MN、USA;cat.# DY256-05)及びBDNF(R&D Systems;cat.# DBD00)に対する分析を遂行した。
【0050】
1-4.RNA分離、semi-quantitative RT-PCR及びquantitative RT-PCR(qRT-PCR)の遂行
総RNAは、easyBlue RNA isolation reagent(Intron、Sungnam、Korea)を利用して分離した。AccuPower cDNA Synthesis Kit(Bioneer、Daejeon、Korea)を利用して1gの総RNAでcDNAを合成した。Semi-quantitative RT-PCRは、AccuPower PCR premix(Bioneer)を利用して遂行した。アンプリコン(amplicons)は、SyberSafe(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を含む1%のアガロースゲルで電気泳動を遂行し、fluorescence image analyzer LAS4000 mini(Fuji PhotoFilm、Tokyo、Japan)を利用して分析した。PCRプライマー配列は、下記表1に示した。前記プライマーは、TrkA(Hs01021011)、TrkB(Hs00178811)、TrkC(Hs00176797)、p75NTR(Hs00609977)、nAChRα7(Hs04189909)、nAChRα5(Hs00181248)、ChAT(Hs00252848)及び18s rRNA(Hs03928985)を増幅するために、Applied Biosystems(Foster City、CA、USA)で購入してqRT-PCRを遂行した。前記qRT-PCRは、real-time thermal cycler(StepOne Real-Time RT-PCR system、Applied Biosystems)で遂行した。
【表1】
【0051】
1-5.フローサイトメトリー
フローサイトメトリーのために、Anti-GFAP(BD Biosciences;51449)、anti-Tuj1(BD Biosciences;560381)及びanti-nestin(BD Biosciences;56130)抗体を利用した。アイソタイプ-マッチされた対照抗体は対照群として利用し、FACS Calibur flow cytometer(BD Biosciences)を利用して分析した。
【0052】
1-6.ウェスタンブロット分析
各実験群の細胞をPBSで2回洗浄した後、溶解緩衝液(50mMのTris-HCl、150mMのNaCl、1mMのエチレンジアミンテトラ酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid)(Sigma)、1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム(sodium orthovanadate)(Sigma)、1mMの塩化フッ素(sodium fluoride)、1mMのフェニルメタンスルホニルフルオリド(phenylmethanesulfonylfluoride)(Sigma)、1%のTriton-X 100、プロテアーゼ阻害カクテル(Pierce、Rockford、IL、USA)及びホスファターゼ阻害カクテル(Pierce)を30分間アイスに置いて処理した。細胞破片は、15,000×gで15分間遠心分離して除去した後、上層液を新たなマイクロチューブに移した。細胞溶解物でタンパク質の濃度は、BCA protein assay reagent kit(Pierce)を利用して測定した。同等なタンパク質は、還元条件下で10%のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して分離し、イモビロンPメンブレン(EMD Millipore)に電気移動を遂行した。免疫検出のために、anti-TrkA(EMD Millipore;cat.# 06-574)、anti-TrkC(Cell Signaling Technology、Danvers、MA、USA;cat.# 3376)、anti-p75NTR(Cell Signaling Technology;cat.# 8238)、anti-ChAT(EMD Millipore;cat.# AB144P)、anti-nAChR 7(Alomone、Jerusalem、Israel;cat.# ANC-007)、またはanti-Actin(Santa Cruz Biotechnology、Dallas、TX、USA;cat.# SC-47778)抗体を一次抗体として利用した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)に供与して二次抗体を処理して培養した後、バンドの強化された化学発光は、West-Zol Plus(Intron)を利用して検出した。
【0053】
1-8.ACh分析
24時間の間MLRまたはPHAで刺激されたMSCsを培養し、各MSCsを収得した。ACh/コリンは、製造会社のマニュアルに従ってEnzychrom Acetylcholine Assay Kit(BioAssay Systems、Hayward、CA、USA;EACL-100)を利用して定量した。
【0054】
1-9.スフェロイド形成確認
細胞接種の前に、1%のPluronic F-127(Sigma、蒸留水に溶解する)をペトリ皿(diameter、100mm)に室温条件で30分間コーティングした後、PBSで十分に洗浄した。総1×10MSCsを1%の非必須アミノ酸(Gibco-BRL)、1%のL-グルタミン(Gibco-BRL)、1%のN2補充剤(Gibco-BRL)、20ng/mlの上皮細胞成長因子(R&D Systems)、20ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子(R&D Systems)を含む皿に接種した後、24-72時間の間培養した。
【0055】
1-10.免疫蛍光染色及び共焦点顕微鏡の使用
各実験群の細胞を4%のパラホルムアルデヒドで固定した後、PBSで溶解された0.5%のTritonX-100(Sigma)を利用して透過化した。前記細胞をanti-TrkA(EMD Millipore、Billerica、MA、USA;cat.# 06-574)、anti-ChAT(EMD Millipore;cat.# AB144P)、anti-Tuj1(EMD Millipore;cat.# MAB1637)、anti-TH(Cell Signaling Technology;cat.# 2792)、anti-NCAM1(EMD Millipore;cat.# CBL275)、anti-MBP(EMD Millipore;cat.# AB980)、anti-O4(Sigma;cat.# O7139)、anti-NF-M(EMD Millipore;cat.# AB1987)、anti-Nestin(EMD Millipore;cat.# MAB5326)、またはanti-GABA(Abcam、Cambridge、MA、USA;cat.# Ab86186)である一次抗体(1:200-1:1000希釈)で4度の条件で一晩標識した。一次抗体と培養した後、前記細胞をAlexaFluor488またはAlexaFluor594-供与された二次抗体(Molecular Probes、Carlsbad、CA、USA)(1:300希釈)で1時間の間培養した。前記細胞を4,6-diamidino-2-phenylindole(DAPI;Molecular Probes)で1分間染色し、それを共焦点顕微鏡(Zeiss LSM510 Meta Confocal Imaging System;Carl Zeiss、Thornwood、NY、USA)を利用して観察した。
【0056】
1-11.コリン性アンタゴニスト(cholinergic antagonist)またはアゴニスト(agonist)処理
α-ブンガロトキシン(α-Bungarotoxin)(EMD Millipore;cat.# 203980)は、nAChRα7のアンタゴニストであり、1Mの濃度で培地に添加した。コリン性アゴニストとして、AChクロリド(ACh chloride)(Sigma;cat.# A6625)及びカルバコール(carbachol)(EMD Millipore;cat.# 212385)を各1nM及び10pMの濃度で添加して実験を遂行した。
【0057】
実施例1.本発明のMSCsの特性確認
本発明のMSCsは、層分離培養法(Subfractionation Culturing Method)で分離した。本発明のMSCsは、従来の濃度勾配遠心分離法(Density gradient centrifugation method)で分離されたMSCsと比較したとき、幹細胞でない他の種類の細胞が混ざっておらず、幹細胞だけが分離されて幹細胞の純度が高い長所がある。前記MSCsを利用して下記一連の実験に使用するMSCsの特性を確認した。
【0058】
具体的には、本発明のMSCsを培養した後、その形態的特性を確認した。また、MSCsの分化潜在力を確認するために、脂肪細胞-特異的脂質液体(adipocyte-specific lipid droplets)であるOil Red Oを利用して視覚化し、軟骨-特異的プロテオグリカン(cartilage-specific proteoglycans)であるSafranin Oを利用して視覚化し、骨-特異的無機化作用(bone-specific mineralization)は、Alizarin Red Sを利用して視覚化した。また、フローサイトメトリーを遂行して本発明のMSCsの特性を確認するために、陽性マーカーであるCD29、CD44、CD49f、CD73、CD90、CD105、CD146、HLA-class I(HLA-I)及びOct4を利用した。陰性マーカーは、CD14、CD34、CD45、CD106及びHLA-DRを含む造血性/内皮マーカーを利用した。その結果を図1に示した。
【0059】
図1のaに示したように、本発明のMSCsは、線維芽細胞-類似形態を示すことを確認した。
【0060】
図1のbに示したように、本発明のMSCsは、脂肪細胞化(adipogenically)、軟骨分化(chondrogenically)及び骨分化(osteogenically)への分化潜在力が存在することを確認した。
【0061】
図1のcに示したように、本発明のMSCsは、陽性マーカーであるCD29、CD44、CD49f、CD73、CD90、CD105、CD146、HLA-class I(HLA-I)及びOct4が正常に発現することを確認した。
【0062】
実施例2.炎症性条件によるMSCsのリンパ球増殖抑制効果、形態学的変化、スフェロイド個体生成有無及び免疫抑制との関係確認
2-1.炎症性条件によるMSCsのリンパ球増殖抑制効果及び形態学的変化の確認
炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)によるヒトMSCsのリンパ球増殖抑制効果及び形態学的変化を確認した。
【0063】
具体的には、前記実験例1-2の方法によって、混合リンパ球反応(MLR)条件は、互いに異なるドナーで収得した各PBMCsを共に培養することであり、植物性血球凝集素(PHA)処理条件は、PBMCsにPHAを処理して生成した条件である。前記炎症性条件によって、互いに異なるドナーで収得した各PBMCs単独群(P及びPo);混合リンパ球反応(MLR)条件に共同培養したMSCs群(MSC in MLR);MSCsのない混合リンパ球反応条件群(MLR);または植物性血球凝集素(PHA)処理条件に共同培養したMSCs群(MSC in PPHA)に対して、同種抗原性(alloantigenic)免疫反応によるリンパ球増殖抑制効果及び形態学的変化を確認した。その結果を図2に示した。
【0064】
図2のaに示したように、混合リンパ球反応(MLR)条件に共同培養したMSCs群で同種抗原性(alloantigenic)免疫反応により誘導されたリンパ球増殖を効果的に抑制することを確認した。
【0065】
図2のbに示したように、植物性血球凝集素(PHA)条件で共同培養したMSCsはリンパ球増殖を抑制することを確認した。
【0066】
図2のcに示したように、混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)条件で共同培養したMSCsの特異的な伸長、フィラメント(filamentation)及び分岐(branching)を含む非正常な形態学的変化が現れることを確認した。
【0067】
図2のd及びeに示したように、混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)条件で共同培養したMSCsの樹状突起-類似細胞のような神経細胞と類似した形態的特徴が現れることを確認した。また、樹状突起-類似経路を通して隣接細胞と連結されることを確認した。
【0068】
図2のf及びgに示したように、炎症性条件でMSCsは神経細胞と類似した形態が現れることを確認した。
【0069】
従って、MSCsは、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で非正常に形態が変わることを確認した。
【0070】
2-2.炎症性条件によるMSCsのスフェロイド個体生成有無及び免疫抑制との関係
炎症性条件に対するMSCsでスフェロイド個体(spheroid entities)生成有無及び前記個体がアノイキス(anoikis)作用機序による死滅より免疫抑制と関連があるかを確認した。
【0071】
具体的には、前記実験例1-2の方法によって、混合リンパ球反応(MLR)条件は、互いに異なるドナーで収得した各PBMCsを共に培養することであり、植物性血球凝集素(PHA)処理条件は、PBMCsにPHAを処理して生成した条件で、スフェロイド個体生成有無を確認した。また、前記混合リンパ球反応(MLR)条件効果に対する中和及び効果を最小化するために、MSCsの付着されていないスフェロイド個体の構造を含む上層液を新たな培地に移して24時間培養した。その結果を図3に示した。
【0072】
図3のaに示したように、MLRの炎症性条件によってMSCsでスフェロイド個体が生成されることを確認した。
【0073】
図3のbに示したように、MLRの炎症性条件を最小化したとき、MSCsでスフェロイド個体でない培地に付着された線維芽細胞-類似MSCs形態が現れることを確認した。
【0074】
従って、炎症性条件を最小化した時は、スフェロイド個体の生成が阻害され、線維芽細胞-類似MSCsで発現されることを確認して、炎症性条件はMSCsでスフェロイド個体(spheroid entities)生成を誘導し、MSCsの特性を変化させることを確認した。
【0075】
実施例3.炎症性条件によるMSCsの神経細胞-類似特性の確認
炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)によってヒトMSCsが神経細胞-類似特性に変わるかを確認した。
【0076】
具体的には、前記実験例1-2の方法によって、神経成長因子受容体発現を確認した。混合リンパ球反応(MLR)条件は、互いに異なるドナーで収得した各PBMCsを共に培養することであり、植物性血球凝集素(PHA)処理条件は、PBMCsにPHAを処理して生成した条件である。前記炎症性条件によって、互いに異なるドナーで収得した各PBMCs単独群(P及びPo);混合リンパ球反応(MLR)条件に共同培養したMSCs群(MSC in MLR);MSCsのない混合リンパ球反応条件群(MLR);または植物性血球凝集素(PHA)処理条件に共同培養したMSCs群(MSC in PPHA)に対して、前記実験例1-4の方法によってSemi-quantitative RT-PCRを遂行してnestin、Tuj1、MAP2、NF-M及びGFAPの発現を確認した。また、実験例1-5の方法によってnestin、Tuj1及びGFAPのフローサイトメトリーを遂行した。また、実験例1-9の方法によって免疫蛍光染色してnestin、Tuj1、NCAM1、GFAP及びO4の発現程度を確認した。その結果を図4に示した。
【0077】
図4のaに示したように、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたMSCsで神経細胞マーカーであるTuj1及びMAP2は発現されることを確認したが、星状膠細胞(アストロサイト)であるGFAPは発現されないことを確認した。
【0078】
図4のbに示したように、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたMSCsでnestin及びTuj1は発現するが、GFAPは発現されないことを確認した。
【0079】
図4のc及びdに示したように、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたMSCsでnestin及びTuj1のような神経細胞マーカーは発現することを確認した。しかし、星状膠細胞(アストロサイト)マーカーであるGFAP及び希突起神経膠マーカーであるO4のような神経膠マーカーは発現しないことを確認した。
【0080】
従って、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたMSCsは不完全及び未成熟神経細胞特徴が抑制され、神経細胞と類似した特徴が現れることを確認した。
【0081】
実施例4.炎症性条件によるMSCsの神経成長因子受容体(neurotrophin receptor)及び神経成長因子の発現の確認
4-1.炎症性条件によるMSCsの神経成長因子受容体の発現の確認
炎症性条件によるMSCsの神経成長因子受容体の発現を確認するために、前記実験例1-2の方法によって、成長因子受容体の発現を確認した。混合リンパ球反応(MLR)条件は、互いに異なるドナーで収得した各PBMCsを共に培養することであり、植物性血球凝集素(PHA)処理条件は、PBMCsにPHAを処理して生成した条件である。前記炎症性条件によって、互いに異なるドナーで収得した各PBMCs単独群(P及びPo);混合リンパ球反応(MLR)条件に共同培養したMSCs群(MSC in MLR);MSCsのない混合リンパ球反応条件群(MLR);植物性血球凝集素(PHA)処理条件に共同培養したMSCs群(MSC in PPHA);または一般MSCにPHA処理群(MSC+PHA)に対して、Trkファミリー(A、B及びC)及びp75NTRを含む神経成長因子受容体の発現を確認した。
【0082】
前記実験例1-4の方法によってSemi-quantitative RT-PCRまたはqRT-PCRを遂行してTrkA、TrkB、TrkC及びp75NTRの発現を確認した。また、実験例1-6の方法によってウェスタンブロットを遂行してTrkA、TrkB、TrkC及びp75NTRの発現を確認した。また、実験例1-9の方法によって免疫蛍光染色してTrkAの発現程度を確認した。その結果を図5に示した。
【0083】
図5のa、b及びcに示したように、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたMSCsでTrkA及びp75NTRの発現は有意的に発現されたことを確認したが、TrkB及びTrkCの発現は低いことを確認した。
【0084】
図5のe及びfに示したように、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたMSCsでTrkAタンパク質が発現されることを確認した。
【0085】
4-2.炎症性条件によるPBMCsの神経成長因子の発現の確認
神経成長因子と知られたNGF(nerve growth factor)及びBDNF(brain-derived growth factor)の発現をPBMCsで確認した。
【0086】
具体的には、前記3-1のような条件で、前記実験例1-4の方法によってSemi-quantitative RT-PCRまたはqRT-PCRを遂行してNGF及びBDNFの発現を確認した。また、実験例1-3の方法によって、ELISAを遂行してNGF及びBDNFの発現を確認した。その結果を図6に示した。
【0087】
図6のa乃至hに示したように、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたPBMCsでNGF及びBDNFがいずれも発現が顕著に増加することを確認した。
【0088】
従って、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたPBMCsで神経成長因子-受容体及び神経成長因子をいずれも発現し、前記MSCsを刺激してMSCsが神経細胞類似特徴が現れることを確認した。
【0089】
実施例5.炎症性条件によるMSCsを構成する神経球-類似スフェロイド(Neurosphere-like spheroids)の神経細胞マーカーの発現及びリンパ球増殖抑制効果の確認
炎症性条件によるMSCsを構成する神経球-類似スフェロイド(Neurosphere-like spheroids)の神経細胞マーカーの発現及びリンパ球増殖抑制効果を確認した。
【0090】

5-1.炎症性条件によるMSCsを構成する神経球-類似スフェロイド(Neurosphere-like spheroids)の神経細胞マーカーの発現の確認
具体的には、前記実施例1に示したように、炎症性条件によるMSCsで楕円体(spheroidal)構造は神経球(neurospheres)と似ており、本発明の炎症性条件によるMSCsを構成する神経球-類似スフェロイド(Neurosphere-like spheroids)の神経球(neurospheres)の特性を確認するために、炎症性条件によるMSCsのスフェロイドを前記実験例1-8の方法によって収得してマトリゲル-コーティングされた培地に置いて培養した後、培地に付着されたスフェロイドを確認した。また、前記スフェロイドの神経細胞マーカーの発現を確認するために、neurobasal medium(Gibco-BRL)、2%のB27 supplement(Gibco-BRL)、1%の非-必須アミノ酸、10ng/mlのBDNF、20ng/mlの上皮細胞成長因子、40ng/mlの塩基性線維芽細胞成長因子及び10ng/mlの線維芽細胞成長因子8(Peprotech、Rehovot、Israel)を含む神経性分化培地に培養した。その後、免疫蛍光染色して神経細胞マーカーであるTuj1、NF-M及びMAP2の発現と神経前駆細胞(neural progenitor cell、NPCs)のマーカーであるnestinの発現を確認した。その結果を図7に示した。
【0091】
図7のaに示したように、炎症性条件によるMSCsは、スフェロイドを成功的に生成させることを確認した。また、図7のbに示したように、神経細胞マーカーであるTuj1、NF-M及びMAP2の発現及び神経前駆細胞(neural progenitor cell、NPCs)のマーカーであるnestinが発現されることを確認し、本発明の炎症性条件によるMSCsを構成する神経球-類似スフェロイド(Neurosphere-like spheroids)の神経球(neurospheres)特性が現れることを確認した。
【0092】
5-2.炎症性条件によるMSCsを構成する神経球-類似スフェロイド(Neurosphere-like spheroids)のリンパ球増殖抑制効果の確認
炎症性条件によるMSCsを構成する神経球-類似スフェロイド(Neurosphere-like spheroids)とPBMCsとの間の関係を確認するために、混合リンパ球反応(MLR)条件で互いに異なるドナーで収得した各PBMCsを共に培養する実験を遂行し、植物性血球凝集素(PHA)処理条件でPBMCsにPHAを処理して3または5日間培養する実験を遂行し、それによるスフェロイド形成を確認した。
【0093】
また、MLR炎症性条件によるMSCスフェロイドがリンパ球増殖を抑制するかを確認するために、細胞数に依存的な単一分子膜で培養されたMSCsと比較した。具体的には、互いに異なるドナーで収得した各PBMCs単独群(PまたはPo);MSCsのない混合リンパ球反応条件群(MLR);MSCsのないPHA条件群(PPHA);MSCsスフェロイドとMLRまたはPHA-活性化されたPBMCsとの間の1:2、1:5及び1:20の比率で培養された群(spheroids);MSCs単一分子膜とMLRまたはPHA-活性化されたPBMCsとの間の1:2、1:5及び1:20の比率で培養された群(monolayer)に対するリンパ球増殖抑制程度を確認した。
【0094】
また、前記実験例1-5に示したように、フローサイトメトリーを遂行し、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)でMSCsスフェロイドのTuj1及びnestinの発現程度を確認した。その結果を図8に示した。
【0095】
図8のaに示したように、前記炎症性条件により活性化されたPBMCs(MLR)で丸い形状のスフェロイドが形成されることを確認し、PBMCs及びMSCスフェロイドの間の相互関係が形成されることを確認した。
【0096】
図8のb及びcに示したように、MLRまたはPHA-活性化されたPBMCsとMSCsスフェロイドの混合培養群(spheroids)で、MSCsスフェロイドの比率が高いほどリンパ球増殖抑制が効果的であることを確認した。また、MLRまたはPHA-活性化されたPBMCsとMSCs単一分子膜の混合培養群(monolayer)でリンパ球増殖抑制がさらに活性化されることを確認した。
【0097】
図8のdに示したように、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)でMSCsスフェロイドのTuj1及びnestinの発現が増加することを確認した。
【0098】
5-3.神経性ポテンシャル(high neurogenic potential)による炎症性条件によるMSCsの神経球-類似スフェロイド(Neurosphere-like spheroids)の神経細胞マーカーの発現の確認
神経性ポテンシャルによる炎症性条件によるMSCsのスフェロイドの神経細胞マーカーの発現を確認するために、対照群として、何の処理もしていないMSCsを2%のN supplement(Gibco-BRL)、1%の非-必須アミノ酸、10ng/mlのBDNF、20ng/mlの上皮細胞成長因子、40ng/mlの塩基性線維芽細胞成長因子及び10ng/mlの線維芽細胞成長因子8を含むneurobasal medium培地に培養して、MSC1及びMSC2で示した。その後、神経細胞マーカーまたは神経前駆細胞マーカーであるTuj1、nestin、MBP及びNF-Mの発現を確認した。
【0099】
また、混合リンパ球反応(MLR)条件で、互いに異なるドナーで収得した各PBMCsをMSCと共同培養して遂行し、2%のN supplement(Gibco-BRL)、1%の非-必須アミノ酸、10ng/mlのBDNF、20ng/mlの上皮細胞成長因子、40ng/mlの塩基性線維芽細胞成長因子及び10ng/mlの線維芽細胞成長因子8を含むneurobasal medium培地に培養して、それぞれMSC1及びMSC2で示した。その後、神経細胞マーカーまたは神経前駆細胞マーカーであるTuj1、nestin、MBP及びNF-Mの発現を確認した。その結果を図9に示した。
【0100】
図9のa及びbに示したように、神経球-類似スフェロイドで神経細胞マーカーが発現されるという事実を確認し、前記神経球-類似スフェロイドは、神経類似細胞のように類似した機能を発揮できることを確認した。
【0101】
実施例6.炎症性条件によるMSCsのアセチルコリン(ACh)の分泌の確認
6-1.炎症性条件によるMSCsのアセチルコリン(ACh)の分泌の確認
炎症性条件によるMSCsは、神経細胞類似特徴を有するものと確認され、神経伝達物質であるアセチルコリン(ACh)の分泌を確認した。
【0102】
具体的には、前記実験例1-2の方法及び1-7の方法のように、混合リンパ球反応(MLR)条件は、互いに異なるドナーで収得した各PBMCsを共に培養することを意味し、植物性血球凝集素(PHA)処理条件は、PBMCsにPHAを処理して生成した条件を意味し、二つの条件を含んで炎症性条件と言及する。前記炎症性条件によって、互いに異なるドナーで収得した各PBMCs単独群(P及びPo);混合リンパ球反応(MLR)条件に共同培養したMSCs群(MSC in MLR);MSCsのない混合リンパ球反応条件群(MLR);または植物性血球凝集素(PHA)処理条件に共同培養したMSCs群(MSC in PPHA)に対して、実験例1-5の方法によって、qRT-PCRを遂行してChAT(choline acetyltransferase)の発現程度を確認した。また、前記実験例1-6の方法によってウェスタンブロットを遂行してChATの発現程度を確認した。また、実験例1-9の方法によって免疫蛍光染色してChAT、TH(tyrosine hydroxylase)及びGABA(γ-aminobutyric acid);またはChAT、NCAM1、MBP、Tuj1、NF-M、nestin、TrkA及びGABA;に対する発現程度を確認した。その結果を図10に示した。
【0103】
図10のaに示したように、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたMSCsでコリン性(cholinergic)であるChATが発現することを確認した。これに対して、GABA性(GABAergic)であるGABA及びドーパミン性(dopaminergic)THは発現しないことを確認した。
【0104】
図10のb及びcに示したように、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたMSCsは、他の条件の細胞よりChATが高く発現されることを確認した。
【0105】
図10のdに示したように、MSCsのスフェロイドは、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)によりMSCsはコリン性に誘導されることを確認した。
【0106】
図10のe及びfに示したように、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたMSCsは、アセチルコリンを分泌することを確認した。
【0107】
6-2.炎症性条件で分泌された水溶性因子(Soluble factors)によりMSCsのコリン性ニューロン-類似表現型への変化確認
炎症性条件で細胞と細胞との間のcontactで惹き起こされたコリン性ニューロン-類似表現型への変化ではなく、ある分泌された水溶性因子(Soluble factors)によりMSCsのコリン性ニューロン-類似表現型への変化をトランスウェルプレートを用いた実験を通して確認した。
【0108】
具体的には、0.4m-poreのトランスウェルプレートに(Corning、Tewksbury、MA、USA)十万個のMSCsを下段ウェルに接種し、混合リンパ球反応(MLR)-活性化されたPBMCs(1×10)(bottom:MSC、insert:P+Po)または培地(bottom:MSC、insert:medium)を挿入して3日間培養した。また、トランスウェルでない一般の培養方法で混合リンパ球反応(MLR)条件でMSCsを培養して(MSC in MLR(co-culture))コリン作動性ニューロン-類似表現型への変化を確認した。
【0109】
また、調整培地(conditioned medium、CM)に培養していないMSCs(no CM);混合リンパ球反応(MLR)条件で活性化されたPBMCsの調整培地(CM)にMSCs培養(CM from MLR);及び混合リンパ球反応(MLR)条件で活性化されたPBMCsの調整培地(CM)にMSCs培養(CM from PPHA)して、前記MSCsのコリン作動性ニューロン-類似表現型への変化を確認した。また、ChAT、NCAM1、NF-M及びTuj1の発現を確認した。その結果を図11に示した。
【0110】
図11のaに示したように、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)で培養されたMSCsの神経-類似形態学的変化は、トランスウェル分析上にも確認された。
【0111】
図11のb及びcに示したように、調整培地(CM)条件でも前記MSCsはコリン作動性ニューロン-類似表現型を示すことを確認し、ChAT、NCAM1、NF-M及びTuj1の発現もまた示されることを確認した。
【0112】
実施例7.炎症性条件によるPBMCsのニコチンコリン性受容体の発現及びコリン性抑制メカニズムを確認
7-1.炎症性条件によるPBMCsのニコチンコリン性受容体の発現の確認
炎症性条件によるPBMCsがニコチンコリン性受容体を発現するかを確認するために、前記実験例1-2の方法によって実験を遂行した。混合リンパ球反応(MLR)条件は、互いに異なるドナーで収得した各PBMCsを共に培養することであり、植物性血球凝集素(PHA)処理条件は、PBMCsにPHAを処理して生成した条件である。前記炎症性条件によって、互いに異なるドナーで収得した各PBMCs単独群(P及びPo);混合リンパ球反応(MLR)条件に共同培養したMSCs群(MSC in MLR);MSCsのない混合リンパ球反応条件群(MLR);または植物性血球凝集素(PHA)処理条件に共同培養したMSCs群(MSC in PPHA)を置いた。
【0113】
実験例1-5の方法によって、Semi-quantitative RT-PCRを遂行してnAChRα3、nAChRα5、nAChRα7、nAChRα8、nAChRβ2の発現程度を確認し、qRT-PCRを遂行してnAChRα5またはnAChRα7の発現程度を確認した。また、前記実験例1-6の方法によってウェスタンブロットを遂行してnAChRα7の発現程度を確認した。その結果を図12に示した。
【0114】
図12のa乃至cに示したように、PBMCsのスフェロイドは、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)によりnAChRα5及びnAChRα7を発現することを確認した。
【0115】
図12のdに示したように、PBMCsのスフェロイドは、炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)によりnAChRα7を発現することを確認した。
【0116】
7-2.MSCsのニコチンコリン性受容体の発現の確認
MSCsがニコチンコリン性受容体を発現するかを確認するために、前記実験例1-2の方法によって実験を遂行した。MSCs単独群(MSC control);混合リンパ球反応(MLR)条件に共同培養したMSCs群(MSC in MLR);または植物性血球凝集素(PHA)処理条件に共同培養したMSCs群(MSC in PPHA)を置いた。その結果を図13に示した。
【0117】
図13に示したように、MSCs単独群は、nAChRα7の発現が少ないか、または示されないことを確認した。
【0118】
従って、前記7-1及び7-2の実施例によって、ニコチンコリン性受容体であるnAChRα7は、免疫細胞であるPBMC細胞でのみ発現されることを確認した。これによって、幹細胞であるMSCで分泌されたアセチルコリンが前記ニコチンコリン性受容体が発現された免疫細胞にのみ結合することを確認した。
【0119】
7-3.炎症性条件によるMSCsのACh-nAChR経路メカニズムの確認
炎症性条件によるMSCsでACh-nAChR経路メカニズムを確認するために、前記実験例1-2及び1-10の方法によって実験を遂行した。混合リンパ球反応(MLR)条件は、互いに異なるドナーで収得した各PBMCsを共に培養することであり、植物性血球凝集素(PHA)処理条件は、PBMCsにPHAを処理して生成した条件である。前記炎症性条件によって、互いに異なるドナーで収得した各PBMCs単独群(P及びPo);混合リンパ球反応(MLR)条件に共同培養したMSCs群(MSC in MLR);MSCsのない混合リンパ球反応条件群(MLR);または植物性血球凝集素(PHA)処理条件に共同培養したMSCs群(MSC in PPHA)を置いた。コリン性アンタゴニスト(antagonist)であるα-BTX(α-bungarotoxin、nAChRα7のアンタゴニスト);コリン性アゴニスト(agonist)であるACh chloride(ACh-Cl、AChRのアゴニスト);または非特異的コリン性アゴニストであるカルバコール(carbachol)を培地に添加した後、各炎症性条件によるMSCsのTNF-α及びIFN-γの活性を確認した。その結果を図14に示した。
【0120】
図14のa乃至cに示したように、炎症性条件である混合リンパ球反応(MLR)条件で培養されたMSCsにより抑制されたリンパ球増殖、TNF-α及びIFN-γがα-BTXと共に培養することでまた活性化されることを確認した。
【0121】
図14のd乃至fに示したように、炎症性条件である植物性血球凝集素(PHA)処理条件で培養されたMSCsにより抑制されたリンパ球増殖、TNF-α及びIFN-γがα-BTXと共に培養することでまた活性化されることを確認した。
【0122】
図14のg乃至iに示したように、炎症性条件である混合リンパ球反応(MLR)条件で培養されたMSCsにより抑制されたリンパ球増殖、TNF-α及びIFN-γがACh-Clと共に培養することで有意的にさらに抑制されることを確認した。
【0123】
図14のj乃至lに示したように、炎症性条件である植物性血球凝集素(PHA)処理条件で培養されたMSCsにより抑制されたリンパ球増殖、TNF-α及びIFN-γがACh-Clと共に培養することで有意的にさらに抑制されることを確認した。
【0124】
図15のa乃至dに示したように、非特異的コリン性アゴニストであるカルバコール(carbachol)を本発明の炎症性条件のMSCs培養培地に添加して培養時、前記MSCsのリンパ球増殖及び炎症性サイトカインの放出を抑制することを確認し、特異的または非特異的コリン性アゴニストのいずれにおいてもACh-nAChR経路メカニズムを確認した。
【0125】
実施例8.マウスまたはラットの炎症細胞処理を通したMSCsの炎症性刺激の有無、形態的変化及び神経細胞類似特性の確認
実施例8-1.マウスまたはラットの炎症細胞処理を通したMSCsの炎症性刺激の有無、形態的変化及び神経細胞類似特性の確認
マウスの炎症関連細胞の一つである脾臓細胞処理を通してMSCsに炎症性刺激の有無を確認し、それによるMSCsの形態的変化及びコリン性神経細胞類似表現型への変化程度を確認した。
【0126】
具体的には、C57BL/6マウス(Orient、Sungnam、Korea)の脾臓細胞(Splenocytes、SP)を1μg/mlのanti-CD3(BD Biosciences)及びanti-CD28(BD Biosciences)抗体(αCD3/CD28)と共に培養して活性した。この後、CD3/CD28-活性化されたマウスの脾臓細胞(2×10)とMSCs(4×10~4×10)を1:5、1:10、1:20、及び1:50の比率で培養し、その形態学的変化を確認した。
【0127】
また、コリン性ニューロンまたは神経前駆細胞関連マーカーであるChAT、NCAM1、Tuj1、NF-M、nestin、MBP及びTHを利用してその発現を確認した。その結果を図16に示した。
【0128】
図16のaに示したように、マウスの脾臓細胞処理されたMSCsは炎症性刺激されず、リンパ球増殖抑制がまともになされないことを確認した。
【0129】
図16のbに示したように、マウスの脾臓細胞処理されたMSCsは炎症性刺激されず、コリン性神経細胞類似表現型に変化しないことを確認した。
【0130】
図16のcに示したように、マウスの脾臓細胞処理されたMSCsは炎症性刺激されず、コリン性ニューロンまたは神経前駆細胞関連マーカーであるChAT、NCAM1、Tuj1、NF-M、nestin、MBP及びTHが発現されないことを確認した。
【0131】
実施例8-2.ラットの炎症細胞処理を通したMSCsの炎症性刺激の有無、形態的変化及び神経細胞類似特性の確認
ラットの炎症関連細胞の一つである脾臓細胞処理を通してMSCsに炎症性刺激の有無を確認し、それによるMSCsの形態的変化及びコリン性神経細胞類似表現型への変化程度を確認した。
【0132】
具体的には、Sprague-Dawleyラット(Orient、Sungnam、Korea)の脾臓細胞(Splenocytes、SP)を1μg/mlのanti-CD3(BD Biosciences)及びanti-CD28(BD Biosciences)抗体(αCD3/CD28)と共に培養して活性した。この後、CD3/CD28-活性化されたマウスの脾臓細胞(2×10)とMSCs(4×10~4×10)を1:5、1:10及び1:20の比率で培養し、その形態学的変化を確認した。
【0133】
また、コリン性ニューロンまたは神経前駆細胞関連マーカーであるChAT、NCAM1、Tuj1、NF-M、nestin、MBP、TH及びGABAを利用してその発現を確認した。また、ラットの脾臓細胞処理されたMSCsの神経成長因子受容体であるTrkA、TrkB、TrkC及びp75NTRのmRNA発現程度を確認した。その結果を図17に示した。
【0134】
図17のaに示したように、ラットの脾臓細胞処理されたMSCsは炎症性刺激されず、リンパ球増殖抑制がまともになされないことを確認した。
【0135】
図17のbに示したように、ラットの脾臓細胞処理されたMSCsは炎症性刺激されず、コリン性神経細胞類似表現型に変化しないことを確認した。
【0136】
図17のcに示したように、ラットの脾臓細胞処理されたMSCsは炎症性刺激されず、コリン性ニューロンまたは神経前駆細胞関連マーカーであるChAT、NCAM1、Tuj1、NF-M、nestin、MBP、TH及びGABAが発現されないことを確認した。
【0137】
図17のdに示したように、ラットの脾臓細胞処理されたMSCsは炎症性刺激されず、神経成長因子受容体であるTrkA、TrkB、TrkC及びp75NTRのmRNA発現が一般のMSCsよりさらに低いことを確認した。
【0138】
従って、MSCsのコリン性ニューロン-類似表現型(cholinergic neuron-like phenotype)への変化及び神経細胞類似特性は、マウスまたはラットでは現れないヒト特異的現象であることを確認した。
【0139】
実施例9.マウス内ヒト細胞のChATまたはnestinの発現有無及びMSC細胞質の発生有無の確認
PBMCs及びMSCs処理によるマウス内ヒト細胞のChATまたはnestinの発現有無及びMSC細胞質の発生有無を確認した。
【0140】
具体的には、図18のaに示したように、一時的な(transient)ヒト化GVHDマウスモデルを作製するために、10週齢のBalb/c雄マウス(Central Lab Animal、Seoul、Korea)(n=3)に8.5Gy(4MV Linac;Siemens、Berlin、Germany)を放射線照射した。照射24時間後、前記マウスにそれぞれPBMCs(P1またはP2;5×10cells/each/head)または混合されたPBMCs(P1+P2;1×10cells/head、混合比は1:1)を注入した。その後、ヒトMSCs(1×10cells/head)を前記マウスにそれぞれ注入して48時間後、前記各マウスを犠牲にさせて二次リンパ器官(脾臓及び表面子宮頸部(superficial cervical)、脇、腸間膜及び鼠蹊部のリンパ節(inguinal lymph nodes))を摘出した後、凍結して各切片を準備した。ChAT nestinヒト細胞を確認するために、前記各マウスにヒト-特異的抗-ChAT及び抗-nestin抗体で免疫蛍光染色してこれを確認した。DAPIは、核の染色を確認するために使用した。また、MSC追跡実験のために、前記各マウスに製造会社のプロトコルによって、MSCの細胞質の有無を確認するために、生体に適したシリカ-コーティングされた蛍光ナノ粒子(Neostem;Biterials、Seoul、Korea)で標識した。その結果を図18に示した。
【0141】
図18のbに示したように、混合されたPBMCs(P1+P2)を注入後、ヒトMSCsを注入したマウスの腸間膜リンパ節(mesenteric lymph nodes)でanti-ChAT及びanti-nestinの抗体が発現されることを確認した。
【0142】
図18のcに示したように、混合されたPBMCs(P1+P2)を注入後、ヒトMSCsを注入したマウスでMSCの細胞質が発見されることを確認した。
【0143】
前記一連の実験を通して、図19に示したように、本発明の炎症性条件(混合リンパ球反応(MLR)条件または植物性血球凝集素(PHA)処理条件)処理は、MSCsを実際のニューロン細胞への転換分化(transdifferentiation)させるのではなく、コリン性ニューロン-類似表現型に変化させるということを確認した。炎症性条件で処理されたMSCsは、神経成長因子受容体(neurotrophin receptor)、ニコチンコリン性受容体の発現が増加し、具体的には、前記神経成長因子受容体のうちTrkA及びp75NTRの発現が有意的に増加し、炎症環境にある免疫細胞で発現された神経成長因子NGF及びBDNFにより刺激を受けてコリン性ニューロン-類似細胞形状に変化することを確認した。また、本発明の炎症性条件で処理されたMSCsは、アセチルコリンを分泌して免疫細胞表面に増加したニコチンコリン性受容体(nicotinic cholinergic receptors)であるnAChRα7を通して活性化された免疫細胞を抑制できることを確認し、このような特性を活用すれば免疫疾患または炎症疾患の予防または治療に利用できる。
図1
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