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  • 特許-組電池 図1
  • 特許-組電池 図2
  • 特許-組電池 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/213 20210101AFI20230118BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20230118BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20230118BHJP
【FI】
H01M50/213
H01M50/291
H01M50/293
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019124833
(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公開番号】P2021012764
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 由加
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-164981(JP,A)
【文献】特開2003-51297(JP,A)
【文献】特開2015-176741(JP,A)
【文献】実開昭59-144869(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒型電池をその側面を互いに当接して多数並べて形成される上下の面と角部をそれぞれ紙から構成されたスペーサーで覆い、更に熱収縮性チューブで全体を包装してなることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記スペーサーは、一枚のシート状の紙材を折り曲げることにより構成された蓋状体であることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記スペーサーは、前記一枚のシート状の紙材の外辺において、リード線の引出口として、その一部を湾状に切り欠いたことを特徴とする請求項1または2に記載の組電池。
【請求項4】
前記スペーサーは、蓋状体の上面においてリード線の接続部として、リード線の引出側に段差を形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項5】
前記スペーサーは電気絶縁紙で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項6】
電気絶縁紙は、コンデンサペーパ、コイル絶縁紙、プレスボード、ポリエステルフィルム加工紙、あるいはファイバー紙から構成されていることを特徴とする請求項5に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の円筒型電池を組み合わせて利用される組電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
組電池として、例えば特許文献1には、複数の円筒型電池をその互いの側面を当接して多数並べ、形成された上下面にスペーサーシートを配置し全体を熱収縮性チューブで包装した組電池が記載されている。特許文献2には、複数の円筒型電池をその互いの側面を当接接着して多数並べ、形成された上下面に平板の外周縁に垂下壁を形成した皿状の当板と称するスペーサーで覆った組電池が記載されている。特許文献3には、隣り合う円筒型電池間に介挿される絶縁部材を備えた組電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-37866号公報
【文献】実開昭51-49428号公報
【文献】特開2015-176741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら組電池は、非常灯用などの予備電源に用いられる。組電池の製造後において、誤って落下事故が発生する場合があり、落下により組電池の組形状が歪んでしまったり、電池が傷付いたりしてしまうことがあり、改善が望まれている。
【0005】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、落下による歪みや衝撃を緩和することにより組電池形状の歪みを防止し、また電池が傷付くことを防止することができる組電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこれら要望に応えるもので、複数の円筒型電池をその側面を互いに当接して多数並べ、形成される上下の面とその周囲の角部をそれぞれ一枚のスペーサーで覆い、更にスペーサー上面を複数の円筒型電池をも含め熱収縮性チューブで全体を包装したものである。スペーサーとしては、合成樹脂の成形により作製しても良いが、外側を包装する熱収縮性チューブを傷付けてはいけないので、その成形は手間取り易く、折り曲げ加工のし易い電気絶縁紙の一種であるプレスボードを用いた。このプレスボードは紙を積層した高密度ボードである。このプレスボードから成るスペーサーを取り付けた後に、熱収縮性チューブを掛けることにより組電池が動かなくなり絶縁強度を向上させることができる。またスペーサーと熱収縮性チューブにより組電池の上下面と周側面の角部稜線を補強することができるため、落下などによる歪みや衝撃を緩和することができ、組電池形状の歪みを解消でき、絶縁強化と短絡の危険性を回避できる。さらに電池が傷つくことも防止できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成で、落下による歪みや衝撃を緩和することにより、組電池形状の歪みを防止し、また電池が傷付くことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る組電池を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。
図2】組電池内で使用されるスペーサーを示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図である。
図3】組電池内で使用される他のスペーサーの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態の組電池について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る組電池10を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。この組電池10は側面周囲が絶縁チューブで覆われている円筒型電池1を10個組合せたもので、互いの側面を直接当接して5個を1列とし合成樹脂などからなる絶縁板2を介し間接的に側面を当接して2列に配列した。
【0010】
本構成では、円筒型電池1としては巻回電極群を用い円筒状に形成されたニッケルカドミウム蓄電池を使用した。この円筒型電池には、アルカリ蓄電池として、上記ニッケルカドミウム蓄電池以外にニッケル水素蓄電池が用いられるが、これ以外にリチウムイオン蓄電池、その他の蓄電池を用いても良いことは言うまでもない。
【0011】
また、絶縁板は必要が無いなら用いずに、互いの側面を直接当接しても良いことは言うまでもない。
【0012】
円筒型電池を配列した円筒型電池群は固定テープなどによりその周囲を固定した後、互いの円筒型電池1をニッケル板などの接続板を用いて直列接続し、一端に位置する2個の円筒型電池1、1の正極端子と負極端子にそれぞれリード線3、3を接続した。
【0013】
なお、円筒型電池1の正・負極端子はそれぞれ上下にあり、列で隣り合う円筒型電池1の上下を反対に配列して直列接続し易いようにした。そして、配列した円筒型電池群の上下面をそれぞれ一枚の電気絶縁紙からなるスペーサー4で覆った。
【0014】
このスペーサー4の詳細を図2に示す。図2において、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図である。このスペーサー4は、厚さ2~5mm程度のシート状の一枚の電機絶縁紙の全周を折り曲げ加工して蓋状体に、例えば弁当蓋のように形成される。このため、電池本数や電池配列構成に応じてスペーサー用の成型型を作成する必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【0015】
また、(c)の右側面図および(d)の左側面図に示す通り、スペーサー4の折り曲げられた垂下壁41の下部を切削加工により湾状に切り欠いて凹欠部42を形成した。これは、この凹欠部42からリード線3、3を引出させるためのものであり、両側面に形成したのは、リード線が右側にあるものや左側にあるもの、あるいは両方にあるものなどに共通して用いることができるようにしたためである。それぞれの場合で専用のスペーサー4を用いたい場合は、凹欠部42をいずれか一方にのみ形成したものでも良いことはもちろんである。このスペーサー4を二つ用意し、それぞれ配列した円筒型電池群の上下面に被せ、凹欠部42からリード線を横方向へ引出させると共に、円筒型電池群の周囲の角部も含め覆った。
【0016】
この際、上面はリード線3、3の接続部として上方へ突出する場合は、第3図に示すようにスペーサー4の上面部43のリード線の引出側に段差44を設けたものを用いることが好ましい。
【0017】
また、上記実施の形態では、スペーサー4を一枚の電気絶縁紙を折り曲げ加工して形成することとしたが、必ずしも一枚の電気絶縁紙で構成する必要はない。例えば、二枚以上の電気絶縁紙を用い、これらを相互に貼り合わせることで一つのスペーサー4を構成することとしても良い。ただし、部材点数の増加を防ぐという観点からは、一枚の電気絶縁紙でスペーサー4を構成することが望ましい。
【0018】
また、スペーサー4に用いる電気絶縁紙の種類について特に記載しなかったが、種々のものを用いることができる。例えば、コンデンサペーパ、コイル絶縁紙、プレスボード、ポリエステルフィルム加工紙、あるいはファイバー紙などを使用することができる。この中で、折り曲げ加工がし易く、紙を積層した高密度ボードであるプレスボードを用いることが好ましい。
【0019】
また、スペーサー4を構成する紙については、少なくとも電気的絶縁性を有していれば良く、必ずしも絶縁紙を用いる必要はない。例えば、蓋状体に形成した紙材の円筒型電池群の収納空間部を臨む内面に、絶縁材を塗布するなどして電気的に絶縁性をもたせるように加工したものを用いることも可能である。
【0020】
次に、蓋状体に形成されたスペーサー4でその上下面が覆われた円筒型電池群を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂から成る熱収縮性チューブ5で、その全体を覆って組電池10を完成させた。なお、熱収縮性チューブ5は、図1に示す通り円筒型電池群の左右の側面は開いている。
【0021】
このように、スペーサーにプレスボードを用いて構成した組電池を75cmの高さから10cm厚の板の上に落下させる落下試験を行い、その崩壊状況を確認した結果、組電池は10個中1個も形状の歪んだものは無かったが、その周囲を覆う熱収縮性チューブに孔が開いたものが1個だけあった。
【0022】
これに対し、比較のために、熱収縮性チューブを用いずプレスボードを接着して被せた組電池は、10個中1個形状に歪みが生じ、円筒型電池の周囲を覆う絶縁チューブに亀裂が入ったものが5個あった。
【0023】
このように本発明の組電池は落下による形状の歪みがなく、さらに円筒型電池の絶縁チューブの亀裂を防止することができた。従って、組電池の出荷前に誤って組電池を落下させたが円筒型電池自体には異常がない場合、本発明品では円筒型電池群を覆う熱収縮チューブを交換するだけで済むが、比較例の組電池では、接続板を取り除き円筒型電池の側面を新たに絶縁チューブで覆って、組み直さなければならなかった。
【符号の説明】
【0024】
1 円筒型電池
2 絶縁板
3 リード線
4 スペーサー
41 垂下壁
42 凹欠部
43 上面部
44 段差
5 熱収縮性チューブ
10 組電池
図1
図2
図3