(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】パラフェニレンビニレンを含む光データ通信システム及び特定のパラフェニレンビニレン
(51)【国際特許分類】
C09K 11/06 20060101AFI20230118BHJP
C07C 255/51 20060101ALI20230118BHJP
C07C 253/30 20060101ALI20230118BHJP
C07C 15/60 20060101ALI20230118BHJP
C07C 2/88 20060101ALI20230118BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20230118BHJP
【FI】
C09K11/06 645
C07C255/51 CSP
C07C253/30
C07C15/60
C07C2/88
C09K11/06
H01L33/50
C09K11/06 615
C09K11/06 625
(21)【出願番号】P 2020569021
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2019064834
(87)【国際公開番号】W WO2019238532
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-06
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ・シュテファニエ・マンゴルト
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ケーネマン
(72)【発明者】
【氏名】ソリン・イヴァノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・キューン
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-529946(JP,A)
【文献】特開2007-258253(JP,A)
【文献】特開2001-131434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11/00-11/89
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- デジタル情報ビット(入力)の変調及びそのアナログ電流信号への変換に用いられる、デジタルからアナログへのコンバーターを備えたデジタル信号プロセッサ及び光源を備えた、少なくとも1種のトランスミッターであって、前記入力が、既にアナログ信号である場合、信号の、アナログ信号への変換は省かれ、前記光源が、蛍光体変換LEDであり、光が、色変換体及びLEDに基づいて生成される、少なくとも1種のトランスミッター、並びに
- 少なくとも1種のレシーバー
を備える、光データ通信システムであって、
前記色変換体が、少なくとも1種の式(
Ia)の化合物
【化1】
(式中、
n1及びn2は、2であり、
R
2
及びR
3
は、それぞれ独立して、水素、
【化2】
、CF
3
、又はCNであり、
式中、
R
81
、R
82
、R
83
、R
84
、R
85
、R
86
、R
87
、R
88
は、それぞれ独立して、水素、又は非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキル、非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルコキシ、非置換若しくは置換C
6
~C
30
アリール、又は非置換若しくは置換C
7
~C
31
アルカリールであり、好ましくは、水素、又は非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキルであり、より好ましくは、R
81
、R
82
、R
84
、R
85
、R
87
、及びR
88
は水素であり、R
83
及びR
86
は、非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキルであり、好ましくは、非置換若しくは置換C
3
~C
8
アルキルであり、
A
2
は
【化3】
であり、
pは1であり、
R
5
及びR
5'
は、それぞれ独立して、非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキル、非置換若しくは置換C
6
~C
30
アリール、又は非置換若しくは置換C
7
~C
31
アルカリールであり、好ましくは、非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキルであり、より好ましくは、非置換若しくは置換C
3
~C
8
アルキルであり、
ここで、点線は結合部位である)
である、
光データ通信システム。
【請求項2】
- 少なくとも1種のトランスミッター、及び
-
波長シフト材料及び検出器を組み合わせたシステムを備えた、少なくとも1種のレシーバー
を備え
る光データ通信システムであって、
前記波長シフト材料が、請求項1に規定の少なくとも1種の化合物を含む、光データ通信システム。
【請求項3】
自由空間光データ通信システムである、請求項1
又は2に記載の光データ通信システム。
【請求項4】
波長シフト材料及び検出器を組み合わせたシステムを備える、光データ通信システム用のレシーバー
であって、前記波長シフト材料が、請求項1に規定の少なくとも1種の化合物を含む、光データ通信システム用のレシーバー。
【請求項5】
デジタル情報ビット(入力)の変調及びそのアナログ電流信号への変換に用いられる、デジタルからアナログへのコンバーターを備えたデジタル信号プロセッサ及び光源を備えた、光データ通信システム用のトランスミッター
であって、前記入力が、既にアナログ信号である場合、信号の、アナログ信号への変換は省かれ、前記光源が、蛍光体変換LEDであり、光が、色変換体及びLEDに基づいて生成され、前記色変換体が、請求項1に規定の少なくとも1種の化合物である、光データ通信システム用のトランスミッター。
【請求項6】
- デジタル情報ビット(入力)の変調及びそのアナログ電流信号への変換に用いられる、デジタルからアナログへのコンバーターを備えたデジタル信号プロセッサ及び光源を備える、少なくとも1種のトランスミッターであって、前記入力が、既にアナログ信号である場合、信号の、アナログ信号への変換は省かれ、前記光源が、蛍光体変換LEDであり、光が、色変換体及びLEDに基づいて生成される、少なくとも1種のトランスミッター、並びに
- 波長シフト材料及び検出器を組み合わせたシステムを備えた、少なくとも1種のレシーバー
を備える、光データ通信システムにおける、請求項
1に規定の化合物の使用
であって、
前記トランスミッター中の色変換体が、請求項1に規定の少なくとも1種の化合物であり、及び/又は、前記レシーバー中の波長シフト材料が、請求項1に規定の少なくとも1種の化合物である、使用。
【請求項7】
式(
Ia)
【化4】
(式中、
n1及びn2は、2であり、
R
2
及びR
3
は、それぞれ独立して、水素、
【化5】
、CF
3
、又はCNであり、
式中、
R
81
、R
82
、R
83
、R
84
、R
85
、R
86
、R
87
、R
88
は、それぞれ独立して、水素、又は非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキル、非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルコキシ、非置換若しくは置換C
6
~C
30
アリール、又は非置換若しくは置換C
7
~C
31
アルカリールであり、好ましくは、水素、又は非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキルであり、より好ましくは、R
81
、R
82
、R
84
、R
85
、R
87
、及びR
88
は水素であり、R
83
及びR
86
は、非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキルであり、好ましくは、非置換若しくは置換C
3
~C
8
アルキルであり、
A
2
は
【化6】
であり、
pは1であり、
R
5
及びR
5'
は、それぞれ独立して、非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキル、非置換若しくは置換C
6
~C
30
アリール、又は非置換若しくは置換C
7
~C
31
アルカリールであり、好ましくは、非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキルであり、より好ましくは、非置換若しくは置換C
3
~C
8
アルキルであり、
ここで、点線は結合部位である)
の化合物。
【請求項8】
(i)式(II
*)
【化7】
の基を、式(III
*)の基及び式(IV
*)の基とカップリングさせる工程
【化8】
(式中、
X及びX'は、それぞれ独立して、ホスホン酸エステル基(V)
【化9】
(式中、R
a及びR
bは、それぞれ独立して、非置換若しくは置換C
1~C
20アルキルであり、好ましくは、非置換若しくは置換C
1~C
20アルキルであり、より好ましくは、エチルである)であり、
n1及びn2は
、2であり、
R
11及びR
12は
、Hであり、
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素、
【化10】
、CF
3
、又はCNであり、
式中、
R
81
、R
82
、R
83
、R
84
、R
85
、R
86
、R
87
、R
88
は、それぞれ独立して、水素、又は非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキル、非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルコキシ、非置換若しくは置換C
6
~C
30
アリール、又は非置換若しくは置換C
7
~C
31
アルカリールであり、好ましくは、水素、又は非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキルであり、より好ましくは、R
81
、R
82
、R
84
、R
85
、R
87
、及びR
88
は水素であり、R
83
及びR
86
は、非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキルであり、好ましくは、非置換若しくは置換C
3
~C
8
アルキルであり、
A
2
は
【化11】
であり、
pは1であり、
oは0であり、
R
6
及びR
6'
はHであり、
R
5
及びR
5'
は、それぞれ独立して、H、又は非置換若しくは置換C
1
~C
20
アルキル、非置換若しくは置換C
6
~C
30
アリール、又は非置換若しくは置換C
7
~C
31
アルカリールであり、
ここで、点線は結合部位である)
を含む、請求項
7に記載の化合物を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラフェニレンビニレンを含む光データ通信システム、パラフェニレンビニレンを含む、光データ通信システム用のレシーバー、パラフェニレンビニレンを含む、光データ通信システム用のトランスミッター、光データ通信システムにおけるパラフェニレンビニレンの使用、特定のパラフェニレンビニレン、及びその調製に関連する。
【背景技術】
【0002】
光データ通信、とりわけ、光無線通信(OWC)、例えば、可視光通信(VLC)、自由空間光通信(free space optical communication; FSO)、及びLi-Fi(Light Fidelity:光忠実度)は、速く、且つ安全な無線通信を実施して、既存の無線技術に取って代わる、又は既存の無線技術を補完することを目的とする、急速に成長する技術分野である。新しい技術、例えば、インターネットオブシングス(産業4.0の基盤である、IP4.0(登録商標)等)、ウェアラブル(すなわち、インプラント又はアクセサリーとして、身に付けることができるマイクロコントローラーを備えたスマート電子デバイス)、及びモバイル通信の全般的な増加により、データ流の急速な増加がもたらされ、新規の通信チャネルが必要とされる。光データ通信システムにおいて、一般に、電気信号は、トランスミッターで光信号に変換される。光学光源は、通常、発光ダイオード(LED)又はレーザーダイオード(LD)のいずれかである。次いで、変調光場は、レシーバーに届く前に、自由空間経路を介して伝搬する。レシーバーにおいて、光信号は、電気信号に再び変換される。
【0003】
Li-Fiは、高速無線通信用にその強度を変化させる、LED照明を用いた、照射を介してデータを伝送するために確立された用語である。オフィス、街路灯、及び家庭におけるLED照明の、広範な使用と共に、Li-Fiは、既存の照明インフラストラクチャへの更なる利点となる。
【0004】
LED照射のための、一つの共通の手法は、蛍光体変換白色LED(phosphor converted white LED)を使用することである。2色法、3色法、及び4色法を採用して、蛍光体変換白色LEDにおける白色光を生成するための波長を最適化する。
【0005】
上記LEDにおいて、通常、青色LED、例えば、InGaNは、周波数(色)変換体である黄色蛍光体でコーティングされ、その結果、青色光の部分が吸収され、より長い波長で再放出されて、2色の白色(2色モード)をもたらす。
【0006】
或いは、白色光LEDは、赤色、緑色、及び青色の各色の混合によって作り出すことができる。この場合、例えば、UV LEDは、赤色、緑色、及び青色の蛍光体(3色モード)でコーティングされる。
【0007】
一般に、青色、シアン色、緑色、及び赤色の各色を組み合わせることによって、4色モードのLEDに基づいた白色が生成されることも公知である(4色の白色)。この場合、例えば、青色LED及び赤色LEDは、シアン色蛍光体及び緑色蛍光体でコーティングされる。
【0008】
中でも、リモート蛍光体LEDの周波数変換体として用いることができる有機化合物は、その可視バンドギャップ、短い放射寿命、及び高いフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)のために、OWCに、とりわけ、VLCに、それぞれLi-Fiに、多くの潜在的に可能な利点をもたらす。実際に、発光ダイオード(LED)は、既存の光源をかつてない程の勢いで置き換えつつある。
【0009】
依然として解決する必要がある、主な問題は、市販の白色LEDの遅い応答である。これまでに、白色光を直接放出することができるLEDは存在しない。白色光LEDは、周波数(色)変換体(蛍光体)として、1種又は複数の発光材料でコーティングされた、又は覆われた発光LEDチップ(2色、3色、又は4色のモードに応じた発光波長)から作り出すことができる(上記の通り)。この概念によれば、発光材料は、LED光源(LEDチップ)に、直接に、空間を介在することなく塗布される。この概念は、「蛍光体オンチップ(phosphor on a chip)」とも称される。蛍光体オンチップLEDにおいて、用いられる発光材料は、一般に、LED発光の一部を吸収し、広域スペクトルを再放出する無機材料である。しばしば、この種のLEDは、クールホワイト光(すなわち、それらは6000Kよりも高い相関色温度CCTを有する)を生じ、その平均演色評価数CRIは、低く、通常、約70~85である。
【0010】
6000K未満のCCTを有する、より心地よく、自然な白色光をもたらすために、異なる概念を用いることができる。この概念によれば、発光材料を、発光LEDチップから所定の距離にあるポリマーマトリックスに溶解させるか、又は分散させる。この構造は、「リモート蛍光体」と称される。
【0011】
しかし、従来の蛍光体のフォトルミネッセンス寿命(蛍光寿命/リン光寿命又は励起状態寿命)は、長すぎて(10ナノ秒より長く、数マイクロ秒までの程度の範囲である)、データ伝送の高速度を支えられない。LED照明を介してデータを伝送するために、IEEE802.15.7-2011標準により、光クロック周波数を最大120Mhzまでが特定され、ナノ秒程度の、LEDのオンオフ時間が必要となる。データ伝送に十分なほど速くあるために、別の選択肢は、青色LED発光のみを使用し、長すぎる蛍光寿命を有する蛍光体によって変換される、他の波長をろ過して除去することである。エネルギーのごく少量(典型的には約6%)が、スペクトルの青色部分にあるので、これらのシステムでは、範囲が限定される。双方向回線を介して無線ネットワークを可能にする、初めての市販のLi-Fi製品、例えば、Lucibel Li-Fiシステムは、既に利用可能であるが、依然として、相当な改善を必要とする。
【0012】
H.Chunらは、彼らの、題名「Visible Light Communication using a Blue GaN μLED and Fluorescent Polymer Colour Converter」のオンライン記事(https://pure.strath.ac.uk/portal/files/44580356/Chun_etal_IEEE_PTL_2015_Visible_light_communication_using_a_blue_GaN_uLED_and_fluorescent.pdf)において、青色GaNμLED及び黄色の蛍光コポリマーによって生じる白色光を用いた高速可視光通信を成し遂げる、新規の技術を説明する。この技術によって、μLEDの青色エレクトロルミネッセンスと、コポリマー周波数変換体の黄色フォトルミネッセンスとの比が改善される。
【0013】
M.T.Sajjadらは、Adv.Optical Mater.2015、3、536~540頁において、VLC用の周波数変換体材料としての蛍光赤色発光ボロンジピロメテン(BODIPY)-オリゴフルオレン星形分子を記載している。
【0014】
M.T.Sajjadらは、Appl.Phys.Lett.110、013302(2017)において、星形有機半導体のブレンドを用いた、可視光通信用の飽和赤色周波数変換体を説明する。M.T.Sajjadらは、彼らの、オンラインで掲載された記事「A novel fast color-converter for visible light communication using a blend of conjugated polymers」(https://pure.strath.ac.uk/portal/files/41605644/Sajjad_etal_ACS_Photonics_2015_Novel_fast_color_converter_for_visible_light_communication.pdf)において、速い色変換体として、半導体ポリマーのブレンド、特に、高蛍光緑色発光ポリ[2,5-ビス(2/,5/-ビス(2//-エチルヘキシルオキシ)フェニル)-p-フェニレンビニレン)(BBEHP-PPV)及び橙赤色発光ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチル-ヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン-ビニレン](MEH-PPV)を用いて、可視光通信のためのハイブリッドLEDにおける市販の蛍光体を置き換えることを説明する。極めて高い変調帯域を有する、広帯域の、平衡型周波数変換体を得て、可視光通信のためのハイブリッドLEDの市販の蛍光体を置き換えることが可能であった。得られる周波数変換体は、緑色発光BBEHP-PPVから橙赤色発光MEH-PPVまでの、部分的なフェルスターエネルギー移動を活用する。得られた3dB変調帯域(電気-電気)は、市販の蛍光体LEDの場合よりも40倍高く、前述の赤色発光有機周波数変換体の場合よりも5倍高かった。
【0015】
OWCシステムのレシーバー側で、半導体光ダイオードは、高周波数での光検出器として一般に使用される。しかし、これらのダイオードの応答時間は、接合静電容量及びキャリア走行時間及び検出器サイズの規模によって制限される。T.G.Tieckeら、Optica、第3巻、第7号、2016年7月、787~792頁において、速い応答時間を維持しながら、光レシーバーの有効面積及び視野を増す方法が示される。これは、波長シフト染料でドープした光導波路(発光集光器)を用いることによって実現される。通信信号と共に変調された入射光は、光入射角とは関係なく、染料分子によって吸収され、その後、異なる波長で再放出される。放出された光の一部は、ファイバーによって集められ、小面積半導体光ダイオードに導かれる。それは、発光検出器(LD)として、発光集光器及び光ダイオードを組み合わせたシステムを示す。しかし、T.G.Tieckeらの文献において、特定の波長シフト染料は説明されていない。
【0016】
US2017/0346556Aでは、入力光信号を受信するように構成された波長シフト素子であって、波長シフト素子が、受信された入力光信号の少なくとも一部を吸収し、受信された入力光信号の吸収された部分から放出光信号を生成するように構成された波長シフト材料を含む、波長シフト素子;複数のプラズモン構造素子を含むプラズモン格子であって、放出光信号の少なくとも一部を受信し、受信された放出光信号の部分を光検出器へ向けるように構成されたプラズモン格子;向けられた放出光信号の部分を受信し、向けられた放出光信号の部分に対応する電流を生成するように構成された光検出器を備える装置が開示されている。波長シフト材料の一例として、各無機材料、カドミウム/セレン化物/硫化カドミウム(CdSe/CdS)量子ドット及びセレン化鉛/硫化鉛(PdSe/PdS)量子ドットが挙げられる。
【0017】
しかし、波長シフト材料としての、従来の蛍光体のフォトルミネッセンス寿命(蛍光寿命/リン光寿命又は励起状態寿命)は、長すぎて(10ナノ秒より長く、数マイクロ秒までの程度の範囲である)、データ伝送の高速度を支えられない。
【0018】
したがって、発光、とりわけ、良好な発光効率を維持しながら、数ナノ秒、好ましくは更により短い程度の蛍光寿命を有する、蛍光体に対する大きな需要がある。
【0019】
更に、光データ通信システムのトランスミッターにおいて蛍光体を使用する場合、同時に、良好な色再現及び色温度を有する点灯デバイスを提供することが可能である必要がある。好ましくは、点灯デバイスは、6500K未満のCCT(相関色温度)、及び80よりも高い平均演色評価数CRI、更により良好なことには、90よりも高い平均演色評価数CRIを有する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】US2017/0346556A
【文献】US2011/0306804
【文献】WO2010/132740
【文献】WO2011/043660
【文献】WO2011/043661
【文献】US2011/0282020
【文献】US2014/0336349
【文献】WO2015/137804
【文献】US2,551,731
【文献】EP-A634445
【文献】WO2012/152812
【文献】US2017/075191A1
【文献】US3957846
【非特許文献】
【0021】
【文献】H.Chunら「Visible Light Communication using a Blue GaN μLED and Fluorescent Polymer Colour Converter」(https://pure.strath.ac.uk/portal/files/44580356/Chun_etal_IEEE_PTL_2015_Visible_light_communication_using_a_blue_GaN_uLED_and_fluorescent.pdf)
【文献】M.T.Sajjadら、Adv.Optical Mater.2015、3、536~540頁
【文献】M.T.Sajjadら、Appl.Phys.Lett.110、013302(2017)
【文献】M.T.Sajjadら、「A novel fast color-converter for visible light communication using a blend of conjugated polymers」(https://pure.strath.ac.uk/portal/files/41605644/Sajjad_etal_ACS_Photonics_2015_Novel_fast_color_converter_for_visible_light_communication.pdf)
【文献】T.G.Tieckeら、Optica、第3巻、第7号、2016年7月、787~792頁
【文献】「Principles of LED light communications」、S.Dimitrov、H.Haas、Cambridge University Press2015、2.1章~2.4章
【文献】Nuyken、「Polystyrenes and Other Aromatic Polyvinyl Compounds」、Kricheldorf、Nuyken、Swift、New York2005、73~150頁及びその参照文献
【文献】Elias、Macromolecules、Weinheim2007、269~275頁
【文献】Elias、Macromolecules、Weinheim2007、343~347頁
【文献】H.Elgalaら、Indoor optical wireless communication:Potential and state-of-the-art、TOPICS IN OPTICAL COMMUNICATIONS、IEEE Communications Magazineにおける記事、2011年10月
【文献】Collinsら、Optics Letters、第39巻、第7号、2014年4月1日、1756~1759頁
【文献】Mulyawanら、IEEE Photonics Technology Letters、第29巻、第3号、2017年2月1日
【文献】Manousiadisら、Optica、第3巻、第7号、2016年7月、702~706頁
【文献】Zhangら、Optical Materials、32(2009)94~98頁
【文献】X.Y.Wang、Chemistry A European Journal、2015、21、24、8867~8873頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、本発明の目的は、光データ通信システムにおいて使用するための、短い発光、とりわけ、短い蛍光寿命を有する、有機発光化合物、とりわけ、蛍光化合物を提供することである。有機発光化合物、とりわけ、蛍光化合物は、好ましくは、短い励起状態寿命を有し、好ましくは、トランスミッターで用いられる場合、良好な色再現演出及び/又は色温度を有する、可視スペクトル領域の電磁放射線を放出する、又は受ける、光データ通信システムのトランスミッター及び/又はレシーバーにおいてとりわけ有用であるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
好ましくは、有機発光化合物、とりわけ蛍光化合物は、以下の特徴のうち1つ又は複数も有するはずである:
- 数ナノ秒程度の、短い励起状態寿命
- とりわけ、青色光及び/又は白色光照射条件下での高い光安定性
- とりわけ、青色光及び/又は白色光照射条件下での高い熱安定性
- 水分及び酸素に対する高い化学的安定性
- 高い発光量子収率(QY)
【0024】
前述の目的は、式(I)のパラフェニレンビニレンを含む光データ通信システム、並びに上記パラフェニレンビニレンを含む、光通信システム用のレシーバー及びトランスミッターそれぞれによって解決されることが明らかになった。
【0025】
本発明は、少なくとも1種の式(I)の化合物
【0026】
【0027】
(式中、
n1及びn2は、それぞれ独立して、1、2、又は3であり、好ましくは、1又は2であり、
m1及びm2は、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R11及びR12は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換の、C1~C20アルキル若しくはC1~C20アルコキシ、C6~C30アリール若しくはC7~C31アルカリールであり、好ましくは、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル、又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシであり、
R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C2~C20アルケニル、非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C3~C20シクロアルキル、非置換若しくは置換C6~C24アリール、3~24個の原子で形成された非置換若しくは置換環を有する脂肪族複素環;3~24個の原子で形成された環を有する、非置換若しくは置換ヘテロアリール;アミノ、CN、CF3、COOC1~C20アルキル、OCOC1~C20アルキル、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、
A2は
【0028】
【0029】
であり、
A1は
【0030】
【0031】
であり、
pは、1又は2であり、好ましくは1であり、
oは、0、1、又は2であり、
q、q'、q''、q'''、s、m3、及びm4は、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
r、r'、r''、r'''、t、及びt'は、それぞれ独立して、0、1、2、又は3であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R4、R4'、R4''、R4'''、R6、R6'、R6''、R6'''、R7、R8、R8'、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、
R5、R5'、R5''、R5'''、R9、R9'、R9''、及びR9'''は、それぞれ独立して、H、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、
ここで、点線は結合部位である)
を含む光データ通信システムに関連する。
【0032】
本発明は、少なくとも1種の式(I)の化合物を含む光データ通信システム用の、レシーバー及びトランスミッター、並びに光データ通信システムにおける、式(I)の化合物の使用に更に関連する。
【0033】
本発明の、更なる一態様は、特定の、新規の、式(I)の化合物及びその調製に関連する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の文脈において、用語「発光化合物」は、蛍光体とも称される。発光化合物は、無機化合物又は有機化合物であってもよい。したがって、本発明の文脈において、用語「蛍光体」及び用語「発光化合物」は、発光材料を説明するために、意味の区別なく用いられる。
【0035】
用語「変換材料」又は「色変換体」は、第1の波長の光子によって励起され、第2の、異なる波長の光子を放出する材料を示す。
【0036】
本発明の文脈において、「蛍光体変換LED(a phosphor-converted LED)」は、LED素子によって放出される光の色を、異なる色へ変換するために、又は変えるために、コーティングされる蛍光体材料層を有するLED素子を示す。
【0037】
量子ドットは、量子力学的性質を呈するほど十分に小さい、半導体材料で製造されたナノ結晶である。量子ドットは、著しく狭い発光スペクトル、すなわち、非常に小さいFWHM(半値全幅)を有するものを示す。ドットの色出力は、結晶のサイズを制御することによって調節することができる。量子ドットのサイズがより小さくなるほど、量子ドットは、より短い波長の光を放出する。
【0038】
本発明の文脈において、所与のスペクトル分布F(A)の、「中心波長」という用語は、下記の平均と定義される:Ac=JA^F(A)dA/JF(A)dA。
【0039】
本発明の文脈において、「青色光」は、通常、350~500nmの範囲、好ましくは、420~495nmの範囲、より好ましくは、440~492nmの範囲の、発光の中心波長を含む、電磁スペクトルの青色範囲の光を意味すると理解される。
【0040】
青色光を生成するのに好適な半導体材料は、炭化ケイ素、セレン化亜鉛、並びに窒化物、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、及び窒化インジウムガリウム(InGaN)である。LEDは、典型的には、そのピーク波長を中心とする、非常に狭い波長分布を有する。標準のInGaN系青色LEDは、サファイア基板上に作製され、ピーク発光波長は通常、445~455nmを中心とする。
【0041】
本発明の文脈において、「赤色光」は、通常、620~780nmの範囲、好ましくは、622~750nmの範囲の、発光の中心波長を含む、電磁スペクトルの赤色範囲の光を意味すると理解される。
【0042】
本発明の文脈において、「緑色光」は、通常、495~577nmの範囲、好ましくは、492~570nmの範囲の、発光の中心波長を含む、電磁スペクトルの緑色範囲の光を意味すると理解される。
【0043】
本発明の文脈において、「黄色光」は、通常、570~597nmの範囲、好ましくは、577~590nmの範囲の、発光の中心波長を含む、電磁スペクトルの黄色範囲の光を意味すると理解される。
【0044】
本発明の文脈において、「シアン色光」は、通常、490~520nmの範囲の、発光の中心波長を含む、電磁スペクトルのシアン色範囲の光を意味すると理解される。
【0045】
白色LEDは、波長によって区別することができない。白色LEDは、ケルビン(K)で測定される、その色温度によって、「クール」ホワイト、「ニュートラル」ホワイト、又は「ウォーム」ホワイトを表す。
【0046】
相関色温度(CCT)は、LEDと同じ白色光を放出するとして人の眼により認識される、黒体放射体の温度である。相関色温度(CCT)は、電気的光源から放出される白色光の色の見え方を記述し、ケルビン単位で測定される。相関色温度(CCT)は、CIE国際基準に従って判定される。白色光源からのCCTは、通常、1500K~20000Kの範囲、とりわけ、2000K~20000Kの範囲である。より高いCCTを有する白色光は、より低いCCTを有する白色光と比較して、短波長領域(青色)において、比較的より高い強度を含み、より長波長領域(赤色)において、比較的より低い強度を含有する。したがって、一般にCCTが高いほど、有意な青色成分又は冷たい色調を有する白色光を示す一方、一般にCCTが低いほど、有意な赤色がかった又は暖かい色調を有する光を示す。4500K~20000Kの範囲のCCTを有する白色光は、しばしば、クールホワイト光と称され、2700K~3200Kの範囲のCCTを有する白色光は、しばしば、ウォームホワイト光と称され、3200K~4500Kの範囲のCCTを有する白色光は、しばしば、ニュートラルホワイトと称される。より暖かな色温度は、とりわけ、ヨーロッパの居住空間にとりわけ好適である。地理的領域及び用途に応じて、ヨーロッパのオフィスでは、約4000KのCCTを有する白色光が、通常好まれるが、一般的なヨーロッパの家庭は、通常、約2700K~3000KのCCTを有する白色光を好む。アジアにおいて、通常、約5000K~6500KのCCTを有する白色光が好まれるが、時折、約2700KのCCTを有する白色光も好まれる。
【0047】
演色(CRI)は、光源が、物体の色を人の眼にどのように見えるようにするか、及び色合いの微妙な変化がどの程度明らかにされるかの尺度である。CIE17.4、国際照明用語集によると、演色(CRI)は、「参照発光物の下での色の見え方との意識的又は無意識的比較による、物体の見え方に対する発光物の効果」として定義される。平均又は一般的な演色評価数Raは、8つのパステルCIE標準(参照)色サンプルR1~R8の色度の差から計算される(CIE13.3-1995)。負の値も可能である。参照源、例えば、黒体放射は、CRI数(Ra)100(最大である)を有するものと定められ、すなわち、値100は、源が、参照と同一になるような色を呈することを示す。CRI評価がより低くなるほど、色が再現される正確性が乏しくなる。多くの一般的な屋内照射用途について、80よりも高いCRI値(Ra)が容認される。一般的な照明について、演色評価数は、85を超えるべきである。正確な演色性が求められる用途において、少なくとも90の、高いCRI Raは、通常、極めて望ましく、その結果、光源によって照らされる物体が、人の眼により自然な呈色を有するように見えることができる。
【0048】
CRI Raは、6種の高度に飽和した色(R9~R14)に対応する係数を含まない。これらのうち、R9は、強い赤色に対応し、色を呈するのに有益であり得る赤色-緑色コントラストに影響を及ぼすことがある。赤色は、しばしば、処理される色に混ぜられることが見られるので、赤色を良好に再現する能力は、色を正確に呈するために重要であることが多い。それ故に、光源が赤色を正確に呈することができない場合、赤みを帯びたものは、くすむことになる。したがって、高いCRI Raを有し、正のR9値を有する光源は、最も鮮やかな色を生じる傾向がある。
【0049】
CIE1931標準測色系によれば、色は、特定の色曲線に従って、人の眼で認識される。標準視感度曲線VAは、人の目の感度の波長依存性を説明する。波長555nmでの単色光(緑色)の場合、視感度曲線は、最大の、可能な値の683lm/Wを有する。光束は、光の認識される出力の尺度である。
【0050】
本出願の明細書で挙げられた残りの部分は、以下に説明される、特定の実施形態で更に特定されない場合、概して、以下の好ましい意味を有する。
【0051】
表現「ハロゲン」は、それぞれの場合で、フッ素、臭素、塩素、又はヨウ素、特に、塩素、臭化物、又はヨウ素を示す。
【0052】
アルコキシ、COOC1~C20アルキル、OCOC1~C20アルキル、C8アルキルアミノ、C6~C10アリールアミノ等のアルキル部分における、「非置換若しくは置換C1~C20アルキル」という用語は、本明細書において使用した場合、通常、1~20個の炭素原子(「C1~C20-アルキル」)、1~18個の炭素原子(「C1~C18-アルキル」)、1~12個の炭素原子(「C1~C12-アルキル」)、1~8個の炭素原子(「C1~C8-アルキル」)、又は3~8個の炭素原子(「C3~C8-アルキル」)を有する、飽和の、直鎖又は分枝の炭化水素基を指す。アルキル基の例は、とりわけ、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、ネオペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、1-エチルペンチル、1-プロピルブチル、2-エチルペンチル、n-オクチル、1-メチルヘプチル、2-メチルヘプチル、1-エチルヘキシル、2-エチルヘキシル、1-プロピルペンチル、2-プロピルペンチル、n-ノニル等である。
【0053】
置換アルキル基は、アルキル鎖の長さに応じて、1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上)の置換基を有する。これらは、好ましくは、互いにそれぞれ独立して、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換シクロアルキルオキシ、非置換若しくは置換シクロアルキルチオ、非置換若しくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、非置換若しくは置換アリールオキシ、非置換若しくは置換アリールチオ、非置換若しくは置換ヘテロアリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換若しくは置換アルコキシ、非置換若しくは置換ポリアルキレンオキシ、非置換若しくは置換アルキルチオ、非置換若しくは置換シクロアルキルオキシ、非置換若しくは置換アリールオキシ、非置換若しくは置換アリールチオ、シアノ、CF3、非置換若しくは置換アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いに独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール、又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換アルキル基は、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、CF3、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される、1つ又は複数の、例えば、1つ、2つ、又は3つの置換基を有し、ここで、E1、E2は、互いに独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、それぞれからそれぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール、又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。
【0054】
置換アルキル基の、特別な実施形態は、1個の水素原子が、アリール基(「アラルキル」、以下で、アリールアルキル又はアリールアルキレンとも称される)、特に、フェニル基により置き換えられているアルキル基である。アリール基は、非置換であっても、置換であってもよく、好適な置換基は、アリールについて以下で示される置換基である。アリール-C1~C4-アルキルの、特定の例には、ベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニル-1-プロピル、2-フェニル-1-プロピル、ナフチルメチル、ナフチルエチル等が挙げられる。
【0055】
置換アルキル基の、更なる特別な実施形態は、これらの基の水素原子のいくつか又は全てを、前述のハロゲン原子によって置き換えられていてもよいアルキル基、例えば、C1~C4-ハロアルキルである。
【0056】
好ましくは、アルキル基は非置換である。
【0057】
「C2~C20アルケニル」という用語は、本明細書において使用した場合、通常、2~20個の炭素原子(「C2~C20-アルケニル」)、2~18個の炭素原子(「C2~C18-アルケニル」)、2~10個の炭素原子(「C2~C10-アルケニル」)、2~8個の炭素原子(「C2~C8-アルケニル」)、又は2~6個の炭素原子(「C2~C6-アルケニル」)を有し、1個又は複数の、例えば、2個又は3個の二重結合を任意の位置に有する、直鎖又は分枝の炭化水素基を指す。置換アルケニル基は、アルケニル鎖の長さに応じて、1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上)の置換基を有する。これらは、好ましくは、互いにそれぞれ独立して、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換シクロアルキルオキシ、非置換若しくは置換シクロアルキルチオ、非置換若しくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、非置換若しくは置換アリールオキシ、非置換若しくは置換アリールチオ、非置換若しくは置換ヘタリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換若しくは置換アルコキシ、非置換若しくは置換ポリアルキレンオキシ、非置換若しくは置換アルキルチオ、非置換若しくは置換シクロアルキルオキシ、非置換若しくは置換アリールオキシ、非置換若しくは置換アリールチオ、シアノ、CF3、非置換若しくは置換アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SOsRAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いにそれぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール、又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換アルケニル基は、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、CF3、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される、1つ又は複数の、例えば、1つ、2つ、又は3つの置換基を有し、ここで、E1、E2は、互いに独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、それぞれからそれぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール、又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。
【0058】
好ましくは、アルケニル基は、非置換である。
【0059】
「C1~C20アルコキシ」という用語は、本明細書において使用した場合、酸素原子を介して結合したアルキル基を指し、すなわち、「アルコキシ」基は、アルキルが上記で定義された通りである-O-アルキルとして表すことができる。好ましいアルコキシ基は、C1~C4-アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、ブトキシ、1-メチルプロポキシ(sec-ブトキシ)、2-メチルプロポキシ(イソブトキシ)、又は1,1-ジメチルエトキシ(tert-ブトキシ)である。
【0060】
したがって、「非置換若しくは置換アルコキシ」という用語は、本明細書において使用した場合、アルキルが、上記で定義された通りに、非置換若しくは置換である、-O-アルキルを指す。
【0061】
好ましくは、アルコキシ基は非置換である。
【0062】
「C3~C20シクロアルキル」という用語は、本明細書において使用した場合、通常、3~20個の炭素原子(「C3~C20-シクロアルキル」)、好ましくは、3~8個の炭素原子(「C3~C8-シクロアルキル」)、又は3~6個の炭素原子(「C3~C6-シクロアルキル」)を有する、単環、又は二環、又は多環式の飽和炭化水素基を指す。3~6個の炭素原子を有する単環式基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。3~8個の炭素原子を有する単環式基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。7~12個の炭素原子を有する二環式基の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.0]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[4.2.1]ノニル、ビシクロ[4.3.1]デシル、ビシクロ[3.3.2]デシル、ビシクロ[4.4.0]デシル、ビシクロ[4.2.2]デシル、ビシクロ[4.3.2]ウンデシル、ビシクロ[3.3.3]ウンデシル、ビシクロ[4.3.3]ドデシル、及びペルヒドロナフチルが挙げられる。多環式環の例は、ペルヒドロアントラシル、ペルヒドロフルオレニル、ペルヒドロクリセニル(perhydrochrysenyl)、ペルヒドロピセニル、及びアダマンチルである。
【0063】
置換シクロアルキル基は、環のサイズに応じて、1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上)の置換基を有することができる。これらは、好ましくは、互いにそれぞれ独立して、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換アルケニル、非置換若しくは置換アルキニル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換シクロアルキルオキシ、非置換若しくは置換シクロアルキルチオ、非置換若しくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、非置換若しくは置換アリールオキシ、非置換若しくは置換アリールチオ、非置換若しくは置換ヘタリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換若しくは置換アルコキシ、非置換若しくは置換ポリアルキレンオキシ、非置換若しくは置換アルキルチオ、非置換若しくは置換シクロアルキルオキシ、非置換若しくは置換アリールオキシ、非置換若しくは置換アリールチオ、シアノ、CF3、非置換若しくは置換アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、-NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いに独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール、又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換シクロアルキル基は、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、CF3、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される、1つ又は複数の、例えば、1つ、2つ、又は3つの置換基を有し、ここで、E1、E2は、互いに独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、それぞれからそれぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール、又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。
【0064】
好ましくは、シクロアルキル基は、非置換である。
【0065】
「3~24個の原子で形成された環を有する脂肪族複素環」という用語は、一般に、3~24環員、好ましくは、4~10環員、より好ましくは、5~8環員、最も好ましくは、5環員又は6環員を有し、炭素原子の他に、環員として、O、N、NRcc、S、SO、及びS(O)2から選択される、1つ、2つ、3つ、又は4つのヘテロ原子又はヘテロ原子含有基を含む、非芳香族の、部分的不飽和又は完全飽和複素環式環を示し、ここで、Rccは、水素、C1~C20-アルキル、C3~C24-シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、C6~C24-アリール、又はヘテロアリールである。ヘテロシクロアルキル基の例は、とりわけ、ピロリジニル、ピペリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロピラニル、2-オキサゾリニル、3-オキサゾリニル、4-オキサゾリニル、及びジオキサニルである。
【0066】
置換脂肪族複素環基は、環のサイズに応じて、1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上)の置換基を有することができる。これらは、好ましくは、互いにそれぞれ独立して、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換アルケニル、非置換若しくは置換アルキニル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換シクロアルキルオキシ、非置換若しくは置換シクロアルキルチオ、非置換若しくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、非置換若しくは置換アリールオキシ、非置換若しくは置換アリールチオ、非置換若しくは置換ヘタリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換若しくは置換アルコキシ、非置換若しくは置換ポリアルキレンオキシ、非置換若しくは置換アルキルチオ、非置換若しくは置換シクロアルキルオキシ、非置換若しくは置換アリールオキシ、非置換若しくは置換アリールチオ、シアノ、CF3、非置換若しくは置換アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、-NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いに独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール、又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換脂肪族複素環基は、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、CF3、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SOsRAr2から選択される、1つ又は複数の、例えば、1つ、2つ、又は3つの置換基を有し、ここで、E1、E2は、互いに独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、それぞれからそれぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール、又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。
【0067】
好ましくは、脂肪族複素環基は、非置換である。
【0068】
本発明の目的のため、「C6~C24アリール」という用語は、フェニル、及び分子の残部に結合した、少なくとも1つの縮合フェニレン環を有する、二環式炭素環又は多環式炭素環を指す。少なくとも1つのフェニレン環を有する、二環式炭素環又は多環式炭素環の例としては、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニル、アントラセニル、フルオレニル、ピレニル等が挙げられる。好ましくは、「アリール」という用語は、フェニル及びナフチルを表す。
【0069】
置換アリールは、その環系の数及びサイズに応じて、1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上)の置換基を有することができる。これらは、好ましくは、互いにそれぞれ独立して、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換アルケニル、非置換若しくは置換アルキニル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換シクロアルキルオキシ、非置換若しくは置換シクロアルキルチオ、非置換若しくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、非置換若しくは置換アリールオキシ、非置換若しくは置換アリールチオ、非置換若しくは置換ヘテロアリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換若しくは置換アルコキシ、非置換若しくは置換ポリアルキレンオキシ、非置換若しくは置換アルキルチオ、非置換若しくは置換シクロアルキルオキシ、非置換若しくは置換アリールオキシ、非置換若しくは置換アリールチオ、シアノ、CF3、非置換若しくは置換アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、-NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いに独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール、又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換アリール基は、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、CF3、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される、1つ又は複数の、例えば、1つ、2つ、又は3つの置換基を有し、ここで、E1、E2は、互いに独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、それぞれからそれぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール、又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。
【0070】
置換アリールは、好ましくは、少なくとも1つのアルキル基で置換されたアリールである(「アルカリール」、以下でアルキルアリールとも称される)。アルカリール基は、芳香族環系のサイズに応じて、1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10個以上)のアルキル置換基を有することができる。アルキル置換基は、非置換であっても、置換であってもよい。これに関して、非置換及び置換のアルキルに関する上記の記載が参照される。特別な実施形態は、アルキルが非置換であるアルカリール基に関する。アルカリールは、好ましくは、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアルキル置換基、好ましくは、1つ、2つ、又は3つのアルキル置換基、より好ましくは、1つ又は2つのアルキル置換基を持つフェニルである。1つ又は複数のアルキル基を含むアリールは、例えば、2-、3-、及び4-メチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-、2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-、3-、及び4-エチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-、及び2,6-ジエチルフェニル、2,4,6-トリエチルフェニル、2-、3-、及び4-n-プロピルフェニル、2-、3-、及び4-イソ-プロピルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-、及び2,6-ジ-n-プロピルフェニル、2,4,6-トリプロピルフェニル、2-、3-、及び4-イソプロピルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-、及び2,6-ジイソプロピルフェニル、2,4,6-トリイソプロピルフェニル、1-、3-、及び4-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-、及び2,6-ジブチルフェニル、2,4,6-トリブチルフェニル、2-、1-、及び4-イソブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-、及び2,6-ジイソブチルフェニル、2,4,6-トリイソブチルフェニル、2-、3-、及び4-sec-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-、及び2,6-ジ-sec-ブチルフェニル、2,4,6-トリ-sec-ブチルフェニル、2-、3-、及び4-tert-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-、及び2,6-ジ-tert-ブチルフェニル、並びに2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニルである。
【0071】
好ましくは、アリール基は非置換である。
【0072】
本発明の文脈において、「3~24個の原子で形成された環を有するヘテロアリール」(ヘテロアリールとも称される)という表現は、複素芳香族の、単環又は多環式基を含む。これらは、環炭素原子に加えて、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ以上のヘテロ原子を環員として有する。ヘテロ原子は、好ましくは酸素、窒素、セレン及び硫黄から選択される。ヘテロアリール基は、好ましくは、5~18個、例えば、5、6、8、9、10、11、12、13、又は14個の環原子を有する。
【0073】
単環式ヘテロアリール基は、好ましくは、5員ヘテロアリール基又は6員ヘテロアリール基、例えば、2-フリル(フラン-2-イル)、3-フリル(フラン-3-イル)、2-チエニル(チオフェン-2-イル)、3-チエニル(チオフェン-2-イル)、1H-ピロール-2-イル、1H-ピロール-3-イル、ピロール-1-イル、イミダゾール-2-イル、イミダゾール-1-イル、イミダゾール-4-イル、ピラゾール-1-イル、ピラゾール-3-イル、ピラゾール-4-イル、ピラゾール-5-イル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、4H-[1,2,4]-トリアゾール-3-イル、1,3,4-トリアゾール-2-イル、1,2,3-トリアゾール-1-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、1,3,5-トリアジン-2-イル、及び1,2,4-トリアジン-3-イルである。
【0074】
多環式ヘテロアリール基は、2つ、3つ、4つ、又は5つ以上の縮合環を有する。縮合環は、芳香族飽和の、又は部分不飽和であってもよい。多環式ヘテロアリール基の例は、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾトリアジニル、ベンゾセレノフェニル、チエノチオフェニル、チエノピリミジル、チアゾロチアゾリル、カルバゾリル(ジベンゾピロリル)、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ナフト[2,3-b]チオフェニル、ナフタ[2,3-b]フリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロインドリジニル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロキノリニル、ベンゾイミダゾール[1,2-a]ベンゾイミダゾリル、及びジヒドロイソキノリニルである。
【0075】
置換ヘテロアリール基は、その環系の数及びサイズに応じて、1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ以上)の置換基を有することができる。これらは、好ましくは、互いにそれぞれ独立して、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換アルケニル、非置換若しくは置換アルキニル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換シクロアルキルオキシ、非置換若しくは置換シクロアルキルチオ、非置換若しくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、非置換若しくは置換アリールオキシ、非置換若しくは置換アリールチオ、非置換若しくは置換ヘテロアリール、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メルカプト、非置換若しくは置換アルコキシ、非置換若しくは置換ポリアルキレンオキシ、非置換若しくは置換アルキルチオ、非置換若しくは置換シクロアルキルオキシ、非置換若しくは置換アリールオキシ、非置換若しくは置換アリールチオ、シアノ、CF3、非置換若しくは置換アルキルカルボニルオキシ、ホルミル、アシル、COOH、カルボキシラート、-COORAr1、-NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択され、ここで、E1及びE2は、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C2~C18-アルキニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、又は非置換若しくは置換C6~C10-アリールであり、RAr1及びRAr2は、互いに独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、非置換若しくは置換ヘテロシクリル、非置換若しくは置換C6~C20-アリール、又は非置換若しくは置換ヘテロアリールである。特に、置換ヘテロアリール基は、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、CF3、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される、1つ又は複数の、例えば、1つ、2つ、又は3つの置換基を有し、ここで、E1、E2、RAr1、及びRAr2は、上記で定義した通りである。
【0076】
好ましくは、ヘテロアリール基は非置換である。
【0077】
「C7~C31アルカリール」という用語は、少なくとも1つのアルキル基で置換されたアリールを指す(「アルカリール」、アルキルアリールとも称される)。アルカリール基は、芳香族環系のサイズに応じて、1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10個以上)のアルキル置換基を有することができる。アルキル置換基は、非置換であっても、置換であってもよい。この点及び好ましいアルカリール基について、非置換及び置換のアリールに関する上記の記載が参照される。
【0078】
好ましくは、アルカリール基は非置換である。
【0079】
「アミノ」という用語は、好ましくは、式-NE1E2を有するアミノ基を指し、ここで、E1及びE2は、それぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C18-アルキル、非置換若しくは置換C2~C18-アルケニル、非置換若しくは置換C3~C20-シクロアルキル、又は非置換若しくは置換C6~C10-アリール、及びアミノであり、或いはE1及びE2は、N原子と一緒になって3~24員環、好ましくは、4~10員環、より好ましくは、5~6員環を形成し、それは、置換されていないか、又は非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換シクロアルキル、非置換若しくは置換アリール、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アルコキシ、ポリアルキレンオキシ、メルカプト、アルキルチオ、シアノ、CF3、NE1E2、-NRAr1CORAr2、-CONRAr1RAr2、-SO2NRAr1RAr2、及び-SO3RAr2から選択される、1つ若しくは複数の、例えば、1つ、2つ、若しくは3つの置換基によって置換されており、ここで、E1、E2、RAr1、及びRAr2は、上記で定義した通りであるか、又は芳香族若しくは脂肪族でもよい、且つ置換されなくても、1つ若しくは複数の、例えば、1つ、2つ、若しくは3つの、前述の置換基で置換されてもよい、1つ若しくは2つの、5員環若しくは6員環で縮合される。好ましいアミノ基は、C1~C8アルキルアミノ及びC6~C10アリールアミノである。アルキルアミノ基のアルキル基、及びアリールアミノ基のアリール基は、それぞれ、前述のアルキル基及びアリール基として定義される。
【0080】
「Ca~CbX基」の表現における「炭素数a~b」は、非置換X基の炭素数であり、任意の置換基の炭素原子を含まない。
【0081】
縮合環系は、脂環式、脂肪族複素環式、芳香族及び複素芳香族環、及びそれらの組合せ、縮合によって結合したヒドロ芳香族を含むことができる。縮合環系は、2個、3個、又はそれ以上(例えば、4個、5個、6個、7個、又は8個の)の環を含む。縮合環系の環が結合する方式に応じて、オルト縮合、すなわち、それぞれの環が、少なくとも1つの縁又は2個の原子を、隣接する各環と共有するものと、炭素原子が3つ以上の環に属するペリ縮合とが区別される。好ましい縮合環系は、オルト縮合環系である。
【0082】
本発明の化合物の下部構造を示す式において点線が現れる場合、それは、残りの分子における結合を示す。
【0083】
式(I)の化合物
本発明による光データ通信システムは、少なくとも1種の式(I)の化合物
【0084】
【0085】
(式中、
n1及びn2は、それぞれ独立して、1、2、又は3であり、好ましくは、1又は2であり、
m1及びm2は、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R11及びR12は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル、又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシであり、
R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C2~C20アルケニル、非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C3~C20シクロアルキル、非置換若しくは置換C6~C24アリール、3~24個の原子で形成された環を有する、非置換若しくは置換脂肪族複素環;3~24個の原子で形成された環を有する、非置換若しくは置換ヘテロアリール;アミノ、CN、CF3、COOC1~C20アルキル、OCOC1~C20アルキル、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、
A2は
【0086】
【0087】
であり、
A1は
【0088】
【0089】
であり、
pは、1又は2であり、好ましくは1であり、
oは、0、1、又は2であり、
q、q'、q''、q'''、s、m3、及びm4は、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
r、r'、r''、r'''、t、及びt'は、それぞれ独立して、0、1、2、又は3であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R4、R4'、R4''、R4'''、R6、R6'、R6''、R6'''、R7、R8、R8'、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、
R5、R5'、R5''、R5'''、R9、R9'、R9''、及びR9'''は、それぞれ独立して、H、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換の、C6~C30アリール若しくはC7~C31アルカリールであり、
ここで、点線は結合部位である)
を含む。
【0090】
式(I)の化合物のn1及びn2は、それぞれ独立して、1、2、又は3であり、好ましくは、1又は2である。
【0091】
式(I)の化合物のm1及びm2は、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2である。
【0092】
式(I)の化合物のR11及びR12は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル、又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシである。
【0093】
式(I)の化合物のR2及びR3は、それぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C2~C20アルケニル、非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C3~C20シクロアルキル、非置換若しくは置換C6~C24アリール、3~24個の原子で形成された環を有する、非置換若しくは置換脂肪族複素環;3~24個の原子で形成された環を有する、非置換若しくは置換ヘテロアリール;アミノ、CN、CF3、COOC1~C20アルキル、OCOC1~C20アルキル、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、水素、非置換若しくは置換C1~C8アルキル、非置換若しくは置換C2~C8アルケニル、非置換若しくは置換C1~C8アルコキシ、非置換若しくは置換C5~C6シクロアルキル、非置換若しくは置換C6~C10アリール、5個若しくは6個の原子で形成された環を有する、非置換若しくは置換脂肪族複素環;5~18個の原子で形成された環を有する、非置換若しくは置換ヘテロアリール;C1~C8アルキルアミノ、C6~C10アリールアミノ、CN、CF3、COOC1~C8アルキル、OCOC1~C8アルキル、又は非置換若しくは置換C7~C11アルカリールであり、より好ましくは、水素、非置換若しくは置換C6~C10アリール、5~18個の原子で形成された環を有する、非置換若しくは置換ヘテロアリール;C1~C8アルキルアミノ、C6~C10アリールアミノ、CN、CF3、又はCOOC1~C8アルキルである。
【0094】
最も好ましくは、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、
【0095】
【0096】
C1~C8アルキルアミノ、C6~C10アリールアミノ、CN、CF3、COO(C1~C8)アルキル、
【0097】
【0098】
(式中、
R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87、及びR88は、それぞれ独立して、水素、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、水素、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキルであり、より好ましくは、R81、R82、R84、R85、R87、及びR88は水素であり、R83及びR86は、非置換若しくは置換C1~C20アルキルであり、好ましくは、非置換若しくは置換C3~C8アルキルであり、
R91、R92、R93、R94、R95、R96、R97、及びR98は、それぞれ独立して、水素、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール、例えば、フェニル、ナフチル、若しくはピレニル、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、水素、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキルであり、
R99及びR100は、それぞれ独立して、水素、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール、例えば、フェニル、ナフチル、若しくはピレニル、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、水素、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキルであり、
ここで、点線は結合部位である)
である。
【0099】
更に最も好ましくは、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、
【0100】
【0101】
CF3、又はCN
(式中、
R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87、及びR88は、それぞれ独立して、水素、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール、例えば、フェニル、ナフチル、若しくはピレニル、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、水素、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキルであり、より好ましくは、R81、R82、R84、R85、R87、及びR88は水素であり、R83及びR86は、非置換若しくは置換C1~C20アルキルであり、好ましくは、非置換若しくは置換C3~C8アルキルである。
A1は
【0102】
【0103】
であり、
q''、q'''、m3、及びm4は、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
r''及びr'''は、それぞれ独立して、0、1、2、又は3であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R4''、R4'''、R6''、R6'''、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C8アルキル又は非置換若しくは置換C1~C8アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C10アリール又は非置換若しくは置換C7~C11アルカリールであり、より好ましくは、Hであり、
R5''及びR5'''は、それぞれ独立して、H、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換の、C6~C30アリール若しくはC7~C31アルカリールであり、好ましくは、H、又は非置換若しくは置換C1~C8アルキル、非置換若しくは置換の、C6~C10アリール若しくはC7~C11アルカリールであり、より好ましくは、非置換C1~C8アルキルであり、
ここで、点線は結合部位である)
である。
【0104】
好ましくは、A1は
【0105】
【0106】
(式中、
m3は、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
r''及びr'''は、それぞれ独立して、0、1、2、又は3であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R6''、R6'''、及びR13は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C8アルキル又は非置換若しくは置換C1~C8アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C10アリール又は非置換若しくは置換C7~C11アルカリールであり、より好ましくは、Hであり、
R5''及びR5'''は、それぞれ独立して、H、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換の、C6~C30アリール若しくはC7~C31アルカリールであり、好ましくは、H、又は非置換若しくは置換C1~C8アルキル、非置換若しくは置換の、C6~C10アリール若しくはC7~C11アルカリールであり、より好ましくは、非置換C1~C8アルキルであり、
ここで、点線は結合部位である)
である。
【0107】
A2は
【0108】
【0109】
(式中、
q、q'、sは、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
r、r'、t、及びt'は、それぞれ独立して、0、1、2、又は3であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R4、R4'、R6、R6'、R6''、R7、R8、及びR8'は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C8アルキル又は非置換若しくは置換C1~C8アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C10アリール又は非置換若しくは置換C7~C11アルカリールであり、より好ましくは、Hであり、
R5、R5'、R9、R9'、R9''、及びR9'''は、それぞれ独立して、H、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換の、C6~C30アリール若しくはC7~C31アルカリールであり、好ましくは、H、又は非置換若しくは置換C1~C8アルキル、非置換若しくは置換の、C6~C10アリール若しくはC7~C11アルカリールであり、より好ましくは、H、又は非置換C1~C8アルキルであり、最も好ましくは、R5及びR5'は、非置換C1~C8アルキルであり、
ここで、点線は結合部位である)
である。
【0110】
好ましくは、A2は、各式
【0111】
【0112】
の基であり、より好ましくは、A2は、式(1)、式(1')、又は式(2)の基であり、最も好ましくは、A2は、式(1)又は式(1')の基であり、
ここで、
式(1)及び式(1')において:
r及びr'は、それぞれ独立して、0、1、2、又は3であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R5及びR5'は、それぞれ独立して、H、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換の、C6~C30アリール若しくはC7~C31アルカリールであり、好ましくは、H、又は非置換若しくは置換C1~C8アルキル、非置換若しくは置換の、C6~C10アリール若しくはC7~C11アルカリールであり、より好ましくは、H又は非置換C1~C8アルキル、最も好ましくは、非置換C1~C8アルキルであり、
ここで、点線は結合部位である;
式(2)において:
q及びq'は、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R4及びR4'は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C8アルキル又は非置換若しくは置換C1~C8アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C10アリール又は非置換若しくは置換C7~C11アルカリールであり、より好ましくは、Hであり、
ここで、点線は結合部位である;
式(3)において:
sは、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R7は、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、H、非置換若しくは置換C1~C8アルキル又は非置換若しくは置換C1~C8アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C10アリール又は非置換若しくは置換C7~C11アルカリールであり、より好ましくは、Hであり、
ここで、点線は結合部位である。
【0113】
更に最も好ましくは、A2は、式(1)の基であり、式中、r及びr'は0であり、R5及びR5'は、非置換C1~C8アルキルである。
【0114】
好ましくは、R5、R5'、R5''、及びR5'''は、それぞれ独立して、非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、非置換若しくは置換C1~C20アルキルであり、より好ましくは、非置換若しくは置換C3~C8アルキルであり、最も好ましくは、非置換C3~C8アルキルである。
【0115】
最も好ましくは、A1は
【0116】
【0117】
である。
【0118】
最も好ましくは、A2は
【0119】
【0120】
である。
【0121】
式(I)において、oは好ましくは0である。
【0122】
更に好ましくは、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物
【0123】
【0124】
(式中、
n1及びn2は、それぞれ独立して、1又は2であり、
R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、
【0125】
【0126】
CF3、又はCNであり、
式中、
R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87、R88は、それぞれ独立して、水素、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール、例えば、フェニル、ナフチル、若しくはピレニル、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、水素、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキルであり、より好ましくは、R81、R82、R84、R85、R87、及びR88は水素であり、R83及びR86は、非置換若しくは置換C1~C20アルキルであり、好ましくは、非置換若しくは置換C3~C8アルキルであり、
A2は
【0127】
【0128】
であり、
pは、1又は2であり、好ましくは1であり、
R5及びR5'は、それぞれ独立して、非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、非置換若しくは置換C1~C20アルキルであり、より好ましくは、非置換若しくは置換C3~C8アルキル、最も好ましくは、非置換C3~C8アルキルであり、
ここで、点線は結合部位である)
によって表される。
【0129】
より好ましくは、式(I)及び式(Ia)において、
pは1であり、
oは0であり、
n1及びn2は、それぞれ独立して、1又は2であり、
q、q'、q''、q'''、s、m3、及びm4は0であり、
r、r'、r''、及びr'''は0である。
【0130】
好ましい、式(I)の化合物は、以下で示される:
【0131】
【0132】
本発明は、式(I*)の化合物として印される、特定の、新規の式(I)の化合物
【0133】
【0134】
(式中、
n1及びn2は、それぞれ独立して、1、2、又は3であり、好ましくは、1又は2であり、
m1及びm2は、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R11及びR12は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル、又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシであり、
R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C3~C20シクロアルキル、非置換若しくは置換C6~C24アリール、3~24個の原子で形成された環を有する脂肪族複素環;3~24個の原子で形成された環を有する、非置換若しくは置換ヘテロアリール;アミノ、CN、CF3、COOC1~C20アルキル、OCOC1~C20アルキル、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、A2が式(3)の基である場合、R2及びR3は、同時にCNではなく、A2が式(2)の基である場合、3~24個の原子で形成された環を有するヘテロアリールは、少なくとも1つのC1~C20アルキル基によって置換されており、
A2は
【0135】
【0136】
であり、
A1は
【0137】
【0138】
であり、
pは、1又は2であり、好ましくは1であり、
oは、0、1、又は2であり、
q、q'、q''、q'''、s、m3、及びm4は、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
r、r'、r''、r'''、t、及びt'は、それぞれ独立して、0、1、2、又は3であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R4、R4'、R4''、R4'''、R6、R6'、R6''、R6'''、R7、R8、R8'、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、
R5、R5'、R5''、R5'''、R9、R9'、R9''、及びR9'''は、それぞれ独立して、H、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C6~C30アリール、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、
ここで、点線は結合部位である)
に更に関連する。
【0139】
新規の、式(I*)の化合物の、残基、基、及び添字の、好ましい定義は、式(I)の化合物に関して前述されたものと同じ定義である。
【0140】
式(I)の化合物及び式(I*)の化合物は、例えば、式
【0141】
【0142】
の基(式中、A1、A2、o、及びpは、上記で定義され、点線は結合部位である)を、単位
【0143】
【0144】
(式中、
R2、R3、n1、n2、R11、R12、m1、及びm2は、上記で定義され、点線は結合部位である)を得るのに好適な基とカップリングさせることによって調製される。好適なカップリング法は、当業者に既知である。
【0145】
好ましくは、式(II)の基のホスホン酸エステル(以下の式(II*)参照)は、アルブーゾフ反応の、対応するハロゲン化物から調製される。上記ホスホン酸エステルを、対応するイリドへ脱プロトン化した後、ウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応において、式(III)及び式(IV)に基づくアルデヒド(以下の式(III*)及び式(IV*)参照)と反応させる。
【0146】
したがって、本発明は、
(i)式(II*)の基を
【0147】
【0148】
式(III*)の基及び式(IV*)の基とカップリングさせる工程
【0149】
【0150】
(式中、
X及びX'は、それぞれ独立して、ホスホン酸エステル基(V)
【0151】
【0152】
(式中、Ra及びRbは、それぞれ独立して、非置換若しくは置換C1~C20アルキルであり、好ましくは、非置換若しくは置換C1~C20アルキルであり、より好ましくは、エチルである)であり、
n1及びn2は、それぞれ独立して、1、2、又は3であり、好ましくは、1又は2であり、
m1及びm2は、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R11及びR12は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、好ましくは、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル、又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシであり、
R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C3~C20シクロアルキル、非置換若しくは置換C6~C24アリール、3~24個の原子で形成された非置換若しくは置換環を有する脂肪族複素環;3~24個の原子で形成された環を有する、非置換若しくは置換ヘテロアリール;アミノ、CN、CF3、COOC1~C20アルキル、OCOC1~C20アルキル、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、A2が式(3)の基である場合、R2及びR3は、同時にCNではなく、A2が式(2)の基である場合、3~24個の原子で形成された環を有するヘテロアリールは、少なくとも1つのC1~C20アルキル基で置換されており、
A2は
【0153】
【0154】
であり、
A1は
【0155】
【0156】
であり、
pは、1又は2であり、好ましくは1であり、
oは、0、1、又は2であり、
q、q'、q''、q'''、s、m3、及びm4は、それぞれ独立して、0、1、2、3、又は4であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
r、r'、r''、r'''、t、及びt'は、それぞれ独立して、0、1、2、又は3であり、好ましくは、0、1、又は2であり、
R4、R4'、R4''、R4'''、R6、R6'、R6''、R6'''、R7、R8、R8'、R13、及びR14は、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換C1~C20アルキル又は非置換若しくは置換C1~C20アルコキシ、非置換若しくは置換C6~C30アリール又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、
R5、R5'、R5''、R5'''、R9、R9'、R9''、及びR9'''は、それぞれ独立して、H、又は非置換若しくは置換C1~C20アルキル、非置換若しくは置換C6~C30アリール、又は非置換若しくは置換C7~C31アルカリールであり、
ここで、点線は結合部位である)
を含む、式(I*)による新規化合物を調製する方法に更に関連する。
【0157】
新規の、式(I*)の化合物を調製する方法において言及された、残基、基、及び添字の、好ましい定義は、式(I)の化合物に関して前述されたものと同じ定義である。
【0158】
方法の、特定の反応条件は、本出願の実施例において言及される。
【0159】
本発明の、式(I)及び式(I*)の化合物は、短いルミネッセンス寿命によって特徴づけられる。ルミネッセンス寿命(減衰時間、放出寿命τ0)は、本発明によれば、測定された減衰時間(励起状態寿命τv)とルミネッセンス量子収率との商であり、すなわち、放出寿命(発光寿命)τ0は、τ0=τv/QYで計算される。QY、τ0、及びτvの測定条件は、実施例の部分で示される。
【0160】
好ましくは、本発明の、式(I)及び式(I*)の化合物のルミネッセンス寿命τ0は、0.1ns~5nsであり、より好ましくは、0.2ns~4.5nsであり、更により好ましくは、0.3ns~4nsであり、最も好ましくは、0.4ns~3.5nsである。
【0161】
本発明の、式(I)及び式(I*)の化合物の、特に有利な点は、極めて短いルミネッセンス寿命(減衰時間)を有することである。こうした短い発光寿命は、データ伝送の高速度を支える。
【0162】
光データ通信システム
本発明による光データ通信システムにおいて、電気信号は、トランスミッターにおいて光信号に変換される。次いで、変調された光信号は、レシーバーに届く前に、伝搬する。レシーバーにおいて、光信号は、電気信号に再び変換される。
【0163】
好ましくは、本発明による光データ通信システムは、自由空間光データ通信システムである。上記自由空間光データ通信システムにおいて、変調された光信号は、レシーバーに届く前に、自由空間経路を介して伝搬する。
【0164】
本発明による光データ通信システム、好ましくは、自由空間光データ通信システムは、屋内環境及び屋外環境で有用である。屋内環境及び屋外環境の、光データ通信システム用の、好ましくは、自由空間光データ通信システム用の、一般的なセットアップは、当業者に既知であり、例えば、「Principles of LED light communications」、S.Dimitrov、H.Haas、Cambridge University Press2015、2.1章~2.4章に説明されている。
【0165】
本発明の光データ通信システムは、好ましくは、
- 少なくとも1つのトランスミッター(T)、及び
- 少なくとも1つのレシーバー(R)
を備え、
ここで、本発明の式(I)又は式(I*)の、少なくとも1種の化合物が、光データ通信システムのトランスミッター及び/又はレシーバーにおいて存在する。
【0166】
本発明は、本発明による式(I)又は式(I*)の、少なくとも1種の化合物を含む光データ通信システム用のレシーバー、本発明による式(I)又は式(I*)の、少なくとも1種の化合物を含む光データ通信システム用のトランスミッター、及び光データ通信システムにおける、本発明による式(I)又は式(I*)の化合物の使用に更に関連する。
【0167】
好ましくは、本発明による光データ通信システムは、
(i)入力(A)、
(ii)トランスミッター(T)、
(iii)光学経路(C)、
(iv)レシーバー(R)、及び
(v)出力(E)
を備え、
ここで、本発明による式(I)又は式(I*)の、少なくとも1種の化合物が、光データ通信システムのトランスミッター及び/又はレシーバーにおいて存在する。
【0168】
図1に、光データ通信システムの一般的な例を示す。
図1において、
Aは入力(A)であり、
Bはトランスミッター(T)であり、
Cは光学経路(C)であり、
Dはレシーバー(R)であり、
Eは出力(E)である。
【0169】
トランスミッターT
トランスミッターにおいて、電気信号は、光信号に変換される。一般に、本発明による、光データ通信システム、とりわけ、光無線通信(OWC)システムで有用なトランスミッターは、当業者に既知である。例えば、「Principles of LED light communications」、S.Dimitrov、H.Haas、Cambridge University Press2015、2.1章~2.4章を参照されたい。
【0170】
本発明の一実施形態において、本発明による式(I)又は式(I*)の、少なくとも1種の化合物は、トランスミッターにおいて存在する。
【0171】
トランスミッターは、一般に、デジタル/アナログコンバーター(DAC)を備えたデジタル信号プロセッサ(DSP)を含み、それは、デジタル情報ビット(入力(A))の変調及びその、アナログ電流信号への変換に用いられる。電流により、光エミッタ、すなわち、光源(L)が作動する。入力(A)が、既にアナログ信号である場合、信号の、アナログ信号への変換は省かれる。
【0172】
光源(L)
光源(L)は、通常、1つ若しくは複数の発光ダイオード(LED)又は1つ若しくは複数のレーザーダイオード(LD)のいずれかであり、好ましくは、1つ又は複数のLEDである。
【0173】
光源(L)は、好ましくは、白色光を生成する。白色光を生成するのに好適なLED及びLDは、当業者に既知である。
【0174】
本発明のトランスミッターにおける、好適な光源(L)は、例えば、UV-LED、蛍光体変換白色LED、有機LED、及びクールホワイトLEDからなる群から選択され、上記クールホワイトLEDは、通常、4000Kから20000Kの間の相関色温度を有する。UV-LEDは、発光ダイオード発光紫外線電磁放射線、すなわち、400nm未満の波長を有する電磁放射線である。
【0175】
本発明の好ましい一実施形態において、蛍光体変換LED、より好ましくは、蛍光体変換白色LEDは、光源(L)として用いられる。蛍光体変換LEDにおいて、光は、波長(色)変換体及びLEDに基づいて生成される。
【0176】
2色法、3色法、及び4色法は、蛍光体変換白色LEDにおける白色光を生成するために波長を最適化するように取り入れられる。LEDにおける白色光を生成するのに好適な2色法、3色法、及び4色法は、上記で言及される(背景技術)。上記方法において、1種又は複数の蛍光体は、色変換体として用いられる。本発明の上記実施形態のトランスミッターにおいて用いられる色変換体は、好ましくは、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物が、トランスミッターにおいて(好ましくは、少なくとも1種の色変換体として)用いられる場合、変調された第1の電磁放射線(放射源から放出された)が、色変換体によって、変調された第2の電磁放射線に変換され、上記第2の電磁放射線が、所望のスペクトル領域に存在し得るという利点をもたらす。
【0177】
先に言及された色変換体は、通常、周波数変換体の形態で使用される。好適な周波数変換体は以下で説明される。
【0178】
したがって、好ましくは、光源(L)は、第1の電磁放射線を放出するための放射源(L1)、及び第2の電磁放射線を放出するための、少なくとも1種の色変換体を含む周波数変換体(L2)を備える。
【0179】
第1の電磁放射線は、好ましくは、少なくとも、350nmから500nmの間のスペクトル領域の波長を含む。このスペクトル領域内で、費用効率の高い放射源が利用可能である。好適な放射源、とりわけ、LEDは、当業者に既知である。350nmから500nmの間(「青色」)のスペクトル領域でLED発光をもたらすのに有用な半導体は、当業者に既知であり、先に言及されている。更に、このスペクトル領域は、より広い可視スペクトル領域に、特に、白色光に変換するために有利である。但し、放射源は、前述されたスペクトル領域又はその一部における電磁放射線のみを放出することができる。更に、放射源は、少なくとも、発光された波長がこのスペクトル領域内である限り、このスペクトル領域外の電磁放射線を放出することもできる。
【0180】
本発明のトランスミッターによって、第1の電磁放射線用に用いられる放射源(L1)は、前述された光源、すなわち、1つ若しくは複数のLED又は1つ若しくは複数のLD、好ましくは、1つ若しくは複数のLEDである。好ましくは、とりわけ、式(I)又は式(I*)の化合物が、トランスミッターにおいて、蛍光体(色変換体)として用いられる場合、放射源は、発光ダイオード(LED)である。特に、放射源は、350nm~500nmの発光の中心波長を有する「青色」LEDである。青色LEDは、青色光を放出する発光ダイオードである。しかし、一般に、350nm~500nmの間の発光の中心波長を有する電磁放射線を放出する、他の放射源も使用することができる。
【0181】
色変換体(蛍光体)
本発明の一実施形態のトランスミッターにおいて用いられる色変換体は、変調された第1の電磁放射線が、変調された第2の電磁放射線に変換され、上記第2の電磁放射線が、所望のスペクトル領域に存在し得るという利点をもたらす。したがって、所望のスペクトル領域の全帯域幅を、データ伝送に用いることができる。したがって、こうしたデータ伝送のための距離及び/又はデータ伝送速度は、増加することがある。
【0182】
本発明のトランスミッターの一実施形態によれば、変調された第2の電磁放射線の波長は、380nm~750nmの範囲である。したがって、トランスミッターによって放出される可視光、特に、白色光が、色変換体で直接生成されて、可視光を最終的に放出する場合、光の色を変換するための更なる要素は不要である。
【0183】
蛍光体材料を用いて、1つ又は複数のLEDによって放出される光を広域スペクトル白色光に変換する。好適な蛍光体変換白色LEDは、当業者に既知であり、上記で全般的に説明されている。
【0184】
好ましくは、色変換体は、0.1~9nsの範囲のルミネッセンス減衰時間を有する。極めて短い減衰時間を有することが、上記で定義される周波数変換体特有の利点である。こうした短い減衰時間により、変換された電磁放射線の変調が、本質的に不変のままであり、したがって、変換された、変調された電磁放射線による信号伝送が可能であるという利点がもたらされる。減衰時間がより長いほど、第1の電磁放射線の変調は曖昧になり、その結果、信号伝送が悪影響を受ける。
【0185】
一実施形態において、式(I)又は式(I*)の化合物は、蛍光体材料(色変換体)として用いられる。式(I)及び式(I*)の化合物は、短いルミネッセンス寿命(減衰時間)、好ましくは、0.1ns~5ns、より好ましくは、0.2ns~4.5ns、更により好ましくは、0.3ns~4ns、最も好ましくは、0.4ns~3.5nsによって特徴づけられる。
【0186】
周波数変換体(L2)
上記の色変換体は、通常、周波数変換体(L2)において用いられる。
【0187】
したがって、一実施形態において、本発明は、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物を含む周波数変換体(L2)に関連する。
【0188】
好ましくは、一実施形態において、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物を含む周波数変換体(L2)は、第1の電磁放射線の元となる放射源から離れた配置で並べられる。好ましくは、放射源の距離は、0.01~10cmの範囲、好ましくは、0.1~8cmの範囲である。こうした配置は、周波数変換体が蛍光体ベースである場合、リモート蛍光体としても既知である。この概念によれば、発光材料(蛍光体)を、発光LEDチップから一定の距離にあるポリマーマトリックス中に、溶解させるか、又は分散させる。したがって、周波数変換体は、放射源に直接施されない。周波数蛍光体の寿命は、有利なことに、こうしたリモート配置によって延びる。
【0189】
周波数変換体(L2)が、2種以上の蛍光体を含む場合、本発明の一実施形態において、複数の蛍光体が、1つの層において、互いに並行して存在することが可能である。
【0190】
別の実施形態において、様々な蛍光体が、様々な層に存在する。
【0191】
特別な一実施形態において、周波数変換体(L2)は、多層構造、好ましくは、2層構造を有し、それぞれの層は、少なくとも1種の蛍光体を含む。この実施形態において、層のうちの1つ、2つ以上であるが全てではない層、又は層の全ては、散乱体を含む。好適な散乱体は、以下で説明される。好ましい散乱体はTiO2である。
【0192】
一実施形態において、周波数変換体(L2)は、一緒に積層されて複合体を形成した複数のポリマー層からなり、様々な蛍光体及び/又は散乱体が、異なるポリマー層に存在してもよい。ポリマー層(ポリマーマトリックス)に好適なポリマーは、以下に説明される。
【0193】
更なる一実施形態において、周波数変換体(L2)の、少なくとも1つのポリマー層は、ガラス繊維で機械的に強化された。
【0194】
好適な周波数変換体(L2)は、任意の、望ましい幾何学配置にあってもよい。周波数変換体は、例えば、フィルム、シート、又はプラークの形態であってもよい。同じく、蛍光体を含んだマトリックスは、液滴形態若しくは半球状形態、又は凸面及び/若しくは凹面の、平面又は球面を有するレンズの形態であってもよい。「キャスト」は、LED又はLEDを含む成分が、少なくとも1種の蛍光体を含むポリマーでキャストされるか、又は完全に包含される実施形態を指す。本発明の一実施形態において、少なくとも1種の蛍光体を含むポリマー層(マトリックス)は、厚さが25~1000マイクロメートル(μm)であり、好ましくは、35~400μm、特に50~300μmである。
【0195】
別の態様において、少なくとも1種の蛍光体を含むポリマー層は、厚さが0.2~5mm、好ましくは、0.3~3mm、及びより好ましくは0.4~1mmである。
【0196】
周波数変換体(L2)が、1つの層からなる場合、又は積層構造を有する場合、好ましい一実施形態において、個々の層は、連続しており、穴又は中断を何ら有さない。
【0197】
ポリマーマトリックス材料
前述されたように、色変換体、一実施形態において、式(I)又は式(I*)の化合物は、好ましくは、リモート蛍光体として配置される。この概念によれば、発光材料(蛍光体)を、ポリマーマトリックス中に、溶解させるか、又は分散させる。
【0198】
したがって、本発明は、ポリマー材料及び少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物を含む組成物にも関連する。好適な、且つ好ましい、式(I)及び式(I*)の化合物は前述され、好適な、且つ好ましいポリマー材料は、以下で説明されるポリマーマトリックス材料である。
【0199】
本発明による周波数変換体(蛍光体)用のポリマーマトリックスは、好ましくは、ポリスチレン、ポリカルボナート、ポリメチルメタクリラート、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリラート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、シリコーン、ポリアクリラート、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンビニルアルコール)-コポリマー(EVA、EVOH)、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスチレンアクリロニトリル(SAN)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリビニルブチレート(PVB)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、2,5-フランジカルボキシラートポリエステル(2,5-furandicarboxylate polyester)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。本発明の一実施形態において、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物は、色変換体として用いられる。
【0200】
好ましくは、ポリマーマトリックス材料は、ポリスチレン、ポリカルボナート、ポリエチレンテレフタラート、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも1種のポリマーを含む。
【0201】
ポリスチレンは、ここでは、とりわけ、スチレン及び/又はスチレンの誘導体の重合から生じるホモ又はコポリマー全てを意味するものと理解される。スチレンの誘導体は、例えば、アルキルスチレン、例えば、α-メチルスチレン、オルト-、メタ-、パラ-メチルスチレン、パラ-ブチルスチレン、とりわけ、パラ-tert-ブチルスチレン、アルコキシスチレン、例えば、パラ-メトキシスチレン、パラ-ブトキシスチレン、パラ-tert-ブトキシスチレンである。一般に、好適なポリスチレンは、10000~1000000g/モル(GPCによる判定)、好ましくは、20000~750000g/モル、より好ましくは、30000~500000g/モルの数平均分子量Mnを有する。
【0202】
本発明の好ましい一実施形態において、周波数変換体のポリマーマトリックスは、スチレン若しくはスチレン誘導体のホモポリマーを含むか、又はホモポリマーである。より詳細には、ポリマーマトリックスは、ポリスチレンからなる。
【0203】
本発明の更に好ましい一実施形態において、ポリマーマトリックスは、スチレンコポリマーを含むか、又はスチレンコポリマーであり、それは、本出願の文脈におけるポリスチレンと同様に見なされる。
【0204】
スチレンコポリマーは、更なる構成要素として、例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、無水マレイン酸、ビニルカルバゾール、又はアクリル酸、メタクリル酸、若しくはイタコン酸のエステルを、モノマーとして含んでもよい。好適なスチレンコポリマーは、一般に、少なくとも20質量%のスチレン、好ましくは少なくとも40質量%、より好ましくは少なくとも60質量%のスチレンを含む。別の実施形態において、スチレンコポリマーは、少なくとも90質量%のスチレンを含む。
【0205】
好ましいスチレンコポリマーは、スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、スチレン-1,1'-ジフェニルエテンコポリマー、アクリルエステル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー(ASA)、メチルメタクリラート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(MABS)である。更なる好ましいポリマーは、α-メチルスチレン-アクリロニトリルコポリマー(AMSAN)である。スチレンホモ又はコポリマーは、例えば、フリーラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合によって、又は有機金属触媒(例えば、チーグラー-ナッタ触媒作用)の影響下で、調製できる。これは、イソタクチック、シンジオタクチック、又はアタクチックポリスチレン又はコポリマーをもたらすことができる。それらは、好ましくは、フリーラジカル重合によって調製される。重合は、懸濁液重合、乳化重合、溶液重合、又は塊状重合として遂行することができる。好適なポリスチレンの製造は、例えば、Oscar Nuyken、Polystyrenes and Other Aromatic Polyvinyl Compounds、Kricheldorf、Nuyken、Swift、New York 2005、73~150頁及びそこに引用されている参照文献;並びにElias、Macromolecules、Weinheim 2007、269~275頁に記載されている。
【0206】
別の好ましい実施形態において、ポリマーマトリックスは、ポリエチレンテレフタラートを含むか、又はポリエチレンテレフタラートである。ポリエチレンテレフタラートは、エチレングリコールとテレフタル酸との縮合によって得ることができる。
【0207】
更なる好ましい一実施形態において、ポリマーマトリックスは、ポリカルボナートを含むか、又はポリカルボナートである。ポリカルボナートは、炭酸と芳香族又は脂肪族ジヒドロキシル化合物とのポリエステルである。好ましいジヒドロキシル化合物は、例えば、メチレンジフェニレンジヒドロキシル化合物、例えば、ビスフェノールAである。ポリカルボナートを調製する1つの手段は、界面重合での好適なジヒドロキシル化合物とホスゲンとの反応である。別の手段は、縮合重合での炭酸のジエステル、例えば、炭酸ジフェニルとの反応である。好適なポリカルボナートの調製は、例えば、Elias、Macromolecules、Weinheim 2007、343~347頁に記載されている。
【0208】
更に好ましい一実施形態において、ポリマーマトリックスは、(i)脂肪族C2~C20-ジオール及び脂環式C3~C20-ジオールから選択される、少なくとも1種のジオールと、(ii)2,5-フランジカルボン酸及び/又はそのエステル形成誘導体、並びに(iii)任意選択で、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、テレフタル酸、2,5-ナフタル酸、及び/又はそのエステル形成誘導体から選択される、少なくとも1種の、更なるジカルボン酸とを反応させることによって得ることができる、少なくとも1種の2,5-フランジカルボキシラートポリエステル (A)を含む。
【0209】
好適な脂肪族C2~C20-ジオールは、好ましくは、直鎖又は分枝のC2~C15-アルカンジオール、とりわけ、直鎖又は分枝のC2~C10-アルカンジオール、例えば、エタン-1,2-ジオール(エチレングリコール)、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール(プロピレングリコール)、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール(ブチレングリコール)、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタン-1,5-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘプタン-1,7-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、ノナン-1,9-ジオール、デカン-1,10-ジオール等である。好適な脂環式C3~C20-ジオールは、好ましくは、C3~C10-シクロアルキレンジオール、例えば、1,2-シクロペンタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘプタンジオール、又は1,4-シクロヘプタンジオールである。他の好適な脂環式C3~C20-ジオールとしては、1,3-シクロヘキサンジメタノール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール、若しくは2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、又はそれらの組合せが挙げられる。特に好ましいジオールは、C2~C6-アルカンジオール、特に、エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、及びそれらの混合物である。より特に好ましいものは、エタン-1,2-ジオール及びプロパン-1,3-ジオールである。とりわけ好ましいものは、エタン-1,2-ジオールである。
【0210】
より特に好ましいものはまた、生物学的に誘導された(「生物由来の」)C2~C10-アルカンジオール、とりわけ、C2~C6-アルカンジオール、例えば、エタン-1,2-ジオール及びプロパン-1,3-ジオールである。生物ベースのエタン-1,2-ジオールは、リグノセルロース系バイオマス源から、そこに含まれる炭水化物の変換によって得てもよい。バイオマスからC2~C10-アルカンジオールを調製する方法は、例えば、US2011/0306804から、当技術分野で公知である。
【0211】
好ましくは、ジオール成分(i)は、好ましいものとして言及した、1種のジオール、とりわけ、エタン-1,2-ジオールのみで構成される。ジオール成分(i)は、2種、3種、又は4種以上の異なるジオールを含むこともできる。2種、3種、又は4種以上の異なるジオールを使用する場合、好ましいものであるとして先に言及したものが好ましい。この場合、成分(i)の総質量に対して、エタン-1,2-ジオールが、好ましくは、主成分である。
【0212】
2,5-フランジカルボン酸のエステル形成誘導体は、とりわけ、2,5-フランジカルボン酸のC1~C10-ジアルキルエステルである。特に好ましいジエステルは、2,5-フランジカルボン酸のC1~C6-ジアルキルエステル、とりわけ、ジメチルエステル及びジエチルエステルである。成分(ii)は、2,5-フランジカルボン酸の、2種、3種、又は4種以上の異なるジエステルも含むことができる。2,5-フランジカルボン酸は、生物ベースの糖類から製造できる。Co、Mn、及び/又はCeを含む触媒を用いた、2,5-二置換フラン、例えば、5-ヒドロキシメチルフルフラールの空気酸化を使用した、2,5-フランジカルボン酸の調製のための経路が、近年、WO2010/132740、WO2011/043660、WO2011/043661、US2011/0282020、US2014/0336349、及びWO2015/137804において報告された。
【0213】
2,5-フランジカルボン酸のジアルキルエステルを調製する経路もまた、例えば、WO2011/043661に記載されている。
【0214】
好ましくは、成分(ii)は、2,5-フランジカルボン酸又は2,5-フランジカルボン酸のジエステルのみで構成される。
【0215】
好ましくは、2,5-フランジカルボキシラートポリエステル(A)は、ポリ(エチレン2,5-フランジカルボキシラート)、ポリ(プロピレン-2,5-フランジカルボキシラート)、ポリ(エチレン-co-プロピレン-2,5-フランジカルボキシラート)、ポリ(ブチレン-2,5-フランジカルボキシラート)、ポリ(ペンチレン-2,5-フランジカルボキシラート)、ポリ(ネオペンチレン-2,5-フランジカルボキシラート)、及びそれらの混合物から選択される。
【0216】
特に、本発明による周波数変換体、一実施形態において、式(I)又は式(I*)の化合物と組み合わせて使用されるポリマーマトリックス材料は、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート)、ポリ(トリメチレン-2,5-フランジカルボキシラート)、及びポリ(ブチレン-2,5-フランジカルボキシラート)からなる群から選択される。より好ましくは、本発明による周波数変換体、一実施形態において、式(I)又は式(I*)の化合物と組み合わせて使用されるポリマーマトリックス材料は、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート)である。
【0217】
更なる特定の一実施形態において、周波数変換体、一実施形態において、式(I)又は式(I*)の化合物と組み合わせて使用されるポリマーマトリックス材料は、上記で定義される、異なる2,5-フランジカルボキシラートポリエステル(A)の混合物(ブレンド)、例えば、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート)とポリ(プロピレン-2,5-フランジカルボキシラート)とのブレンドを含む。
【0218】
ポリ(プロピレン-2,5-フランジカルボキシラート)は、ポリ(トリメチレン-2,5-フランジカルボキシラート)とも称され、ポリ(ブチレン-2,5-フランジカルボキシラート)は、ポリ(テトラメチレン-2,5-フランジカルボキシラート)とも称され、ポリ(ペンチレン-2,5-フランジカルボキシラート)は、ポリ(ペンタメチレン-2,5-フランジカルボキシラート)とも称される。
【0219】
同様に、好適なものは、上記で定義される、少なくとも1種のジオール成分(i)、上記で定義される成分(ii)、並びに1,2-シクロヘキサン-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、テレフタル酸、及び2,6-ナフタル酸及び/又はそのエステル形成誘導体から選択される、少なくとも1種の、更なる二酸又はジエステルの成分(iii)を反応させることによって得ることができる2,5-フランジカルボキシラートポリエステル(A)である。1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、テレフタル酸、及び2,5-ナフタル酸のエステル形成誘導体は、とりわけ、C1~C10-ジアルキルエステルである。特に好ましいエステルは、C1~C6-ジアルキルエステル、とりわけ、ジメチルエステル及びジエチルエステルである。成分(ii)及び成分(iii)を組み合わせて用いる場合、成分(ii)は、通常、成分(ii)及び成分(iii)の総質量に対して、主成分である。例は、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-1,2-シクロヘキサンジカルボキシラート)、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-1,4-シクロヘキサンジカルボキシラート)、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-テレフタラート)、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-2,5-ナフタラート)、又はポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-3,4-フランジカルボキシラート)、好ましくは、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-テレフタラート)、ポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-2,6-ナフタラート、又はポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシラート-co-3,4-フランジカルボキシラート)である。
【0220】
2,5-フランジカルボキシラートポリエステル(A)は、US2,551,731に説明されたように製造することができる。
【0221】
好ましい一実施形態において、酸素を排除して重合されたポリマーが使用される。好ましくは、重合中のモノマーは、合計で1000ppm以下、より好ましくは、100ppm以下、とりわけ好ましくは、10ppm以下の酸素を含んだ。
【0222】
本発明の一実施形態において、好適なポリマーは、光学的に透明なポリマーである。別の実施形態において、好適なポリマーは、不透明なポリマーである。
【0223】
本出願の意味において、光学的に透明は、完全に光学的に透明、及び半透明を意味する。したがって、光学的に透明は、入射光の、少なくとも30%、好ましくは、30%~100%、より好ましくは、少なくとも50%、更により好ましくは、50%~100%、最も好ましくは、少なくとも80%、更により最も好ましくは、80%~100%が、ポリマーを通して入ることを意味する。
【0224】
少なくとも30%、好ましくは、30%~100%、より好ましくは、少なくとも50%、更により好ましくは、50%~100%、最も好ましくは、少なくとも80%、更により最も好ましくは、80%~100%の透明度(光透過率)は、好ましくは、EN410に基づいた光透過率TL(380~780nm)として判定される。
【0225】
不透明ポリマーでは、光波の伝送ができない。言い換えれば、人は、不透明なポリマーを通して見ることができない。不透明性は、光波がポリマーの表面で反射する故に生じる。
【0226】
好適なマトリックスポリマーは、更なる構成要素として、添加剤、例えば、難燃剤、抗酸化剤、光安定剤、UV吸収剤、フリーラジカル捕捉剤、帯電防止剤を含んでもよい。この種の安定剤は、当分野の当業者に公知である。
【0227】
好適な抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤は、例えば、フェノール、とりわけ、立体障害フェノール、例えば、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、若しくはブチルヒドロキシトルエン(BHT)、又は立体障害アミン(HALS)である。この種の安定剤は、例えば、BASF社より、Irganox(登録商標)の商品名で販売されている。場合によっては、酸化防止剤及びフリーラジカル捕捉剤は、二次安定剤、例えば、ホスファイト又はホスホナイト、例えば、BASF社によりIrgafos(登録商標)の商品名で販売されているようなものにより補うことができる。
【0228】
好適なUV吸収剤は、例えば、ベンゾトリアゾール、例えば、2-(2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(BTZ)、トリアジン、例えば、(2-ヒドロキシフェニル)-s-トリアジン(HPT)、ヒドロキシベンゾフェノン(BP)、又はオキサルアニリドである。この種のUV吸収剤は、例えば、BASF社より、Uvinul(登録商標)の商品名で販売されている。
【0229】
本発明の好ましい一実施形態において、好適なマトリックスポリマーは、抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤を何ら含まない。
【0230】
ポリマーマトリックス中の、色変換体、一実施形態において、式(I)又は式(I*)の化合物の濃度は、周波数変換体の厚さ及びポリマーの種類に応じて設定される。薄いポリマー層が使用される場合、有機蛍光着色剤の濃度は、概して、厚いポリマー層の場合よりもより高い。典型的には、マトリックスポリマー中の、色変換体、一実施形態において、式(I)又は式(I*)の化合物の量はまた、到達される相関色温度CCTによっても決まる。当業者は、黄色蛍光着色剤及び赤色蛍光着色剤の濃度を増やすことによって、LEDから放出される光をより長い波長へ調節して、求められるCCTを有する白色光を得ることを理解するであろう。
【0231】
典型的には、赤色着色剤の濃度は、通常、用いられるマトリックスポリマーの量に対して、0.0001~0.5質量%の範囲、好ましくは、0.001~0.1質量%の範囲である。(1種又は複数の)黄色又は黄緑色の着色剤の濃度は、典型的には、用いられるマトリックスポリマーの量に対して、0.002~0.5質量%、好ましくは、0.003~0.4質量%である。
【0232】
例えば、CCT又は演色評価数(CRI)の観点で、黄色着色剤及び赤色着色剤の混合物を使用することが有利であり得る。黄色又は黄緑色の発光着色剤の、赤色着色剤に対する比は、典型的には、1:1~25:1の範囲、好ましくは、2:1~20:1の範囲、より好ましくは、2:1~15:1の範囲、例えば、10:1又は3:1又は4:1である。当業者は、着色剤の比が、選択された光源に依存することを容易に認識するであろう。所望のCCTのために、光が、420nm~480nmの間の発光の中心波長を有する青色LEDによって生成される場合の、黄色着色剤/赤色着色剤の比は、光が、6000~20000Kの間のCCTを有する白色LEDによって生成される場合の、黄色着色剤/赤色着色剤の比と比較して、更により大きくなる。
【0233】
顔料/散乱体
特別な一実施形態において、色変換体、一実施形態において、式(I)又は式(I*)の化合物は、加えて、少なくとも散乱体と共に使用される。好ましくは、色変換体は、加えて、散乱体として、少なくとも1種の無機白色顔料と共に使用される。
【0234】
したがって、本発明は、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物及び少なくとも1種の散乱体を含む組成物に更に関連する。好適な、且つ好ましい、式(I)及び式(I*)の化合物は、前述され、好適な、且つ好ましい散乱体は、以下で説明される。
【0235】
好ましくは、組成物は、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物、少なくとも1種のポリマー材料、及び少なくとも1種の散乱体を含む。好適な、且つ好ましいポリマー材料は、前述されたポリマーマトリックス材料である。
【0236】
好適な散乱体は、DIN 13320に対する平均粒径0.01~10μm、好ましくは、0.1~1μm、より好ましくは、0.15~0.4μmを有する、無機白色顔料、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、リトポン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸カルシウムであり、とりわけ、TiO2をベースとした散乱体である。
【0237】
散乱体は、少なくとも1種の色変換体、少なくとも1種のポリマーマトリックス、及び少なくとも1種の散乱体を含む組成物中に、典型的には、それぞれの場合で、ポリマーマトリックスに対して、0.01~2.0質量%、好ましくは、0.05~1質量%、より好ましくは、0.1~0.5質量%の量で含まれる。
【0238】
好適な光散乱有機剤の例としては、ポリ(アクリラート);ポリ(アルキルメタクリラート)、例えば、ポリ(メチルメタクリラート)(PMMA);ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE);シリコーン系散乱剤、例えば、加水分解されたポリ(アルキルトリアルコキシシラン)、及びそれらの混合物をベースにしたものが含まれる。これらの光散乱剤のサイズ(平均粒径-質量平均)は、通常、0.5~50μmの範囲、好ましくは、1~10μmの範囲である。これらの散乱剤は、典型的には、それぞれの場合で、散乱体を含む層のポリマーに対して、1~10質量%の量で含まれる。有用な散乱剤は、例えば、3~5質量%のPMMA系散乱剤及び1.5~2質量%のシリコーン系散乱剤との混合物である。
【0239】
また、好適なものは、EP-A634445に説明されるような、TiO2と組み合わせた、コア/シェル形態を有する、ビニルアクリラートに基づく高分子粒子を含む、光散乱組成物である。
【0240】
好ましくは、少なくとも1種の散乱剤は、ポリ(メチルメタクリラート)系散乱剤、シリコーン系散乱剤、又はTiO2である。
【0241】
周波数変換体(L2)は、任意選択で、更なる構成要素、例えば、バッキング層を含んでもよい。
【0242】
バッキング層は、周波数変換体に機械的安定性を付与する役割を果たす。バッキング層用の材料のタイプは、透明であり、所望の機械的強度を有する限り、重要ではない。バッキング層用の好適な材料は、例えば、ガラス、又は透明で剛直な有機ポリマー、例えば、ポリカルボナート、ポリスチレン、又はポリメタクリラート若しくはポリメチルメタクリラートである。
【0243】
バッキング層は、概して、0.1mm~10mm、好ましくは、0.2mm~5mm、より好ましくは、0.3mm~2mmの厚さを有する。
【0244】
本発明の一実施形態において、周波数変換体(L2)は、WO2012/152812に開示されるような、酸素及び/又は水に対する、少なくとも1つの障壁層を有する。障壁層用の好適な障壁材料の例は、例えば、ガラス、石英、金属酸化物、SiO2、M2O3とSiO2層の交互層で構成される多層系、窒化チタン、SiO2/金属酸化物多層材料、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、液晶ポリマー(LCP)、ポリスチレン-アクリロニトリル(SAN)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリブチレンナフタラート(PBN)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリビニルブチレート(PBT)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、エチレン酢酸ビニル(EVA)から誘導されるポリマー、及びエチレンビニルアルコール(EVOH)から誘導されるポリマーである。
【0245】
障壁層用の好ましい材料は、ガラス、又はAlO3とSiO2層の交互層で構成される多層系である。
【0246】
好ましくは、好適な障壁層は、酸素に対する透過性が低い。
【0247】
より好ましくは、好適な障壁層は、酸素及び水に対する透過性が低い。
【0248】
周波数変換体(L2)の調製は、一般に当業者に公知である。特に、リモート配置で存在する周波数変換体は、押し出し、印刷、コーティング、又は成形によって形成される。
【0249】
放射源(L1)及び周波数変換体(L2)は、好ましくは、ハウジング内に配置される。ハウジングは、トランスミッターによって電磁放射線を放出するために、部分的に透明である。周波数変換体(L2)は、ハウジングの透明な部分の内部表面に施される。
【0250】
周波数変換体(L2)によって生成された、光、好ましくは、白色光は、トランスミッター(T)によって最終的に放出される第2の電磁放射線である。したがって、トランスミッター(T)は、通常、可視スペクトル領域の電磁放射線を放出する。
【0251】
第2の電磁放射線の、すなわち、好ましくは、白色光の光束値は、好ましくは、少なくとも100lm~30000lmの範囲である。したがって、本発明の好ましい一実施形態において、光データ通信システムは、一方でデータを伝送し、他方で照明光を放出するトランスミッター(T)を備えて形成される。こうした光データ通信システムは、投光照明設備、ランプ、又は任意の他の点灯デバイスを慣例的に使用するところならどこでも、使用することができる。
【0252】
加えて、トランスミッター(T)の光源は、減光することもでき、したがって、認識することができない、より低い光束も生成することができ、故に、照明デバイスが点灯に使用されないときにデータ伝送を実施することもできる。
【0253】
変調器(M)
更に、トランスミッター(T)は、好ましくは、放射源(L1)によって放出された第1の電磁放射線を、伝送すべきデータに応じて変調するように適合させた変調器(M)を備える。
【0254】
変調器(M)は、入力(A)に連結される。入力(A)は、変調器(M)に伝送すべきデータを転送し、変調器(M)は、こうしたデータを変調信号に変換する。
【0255】
例えば、放射源(L1)を形成する青色LEDは、伝送すべきデータに従って変調される第1の電磁放射線として青色光を放出する。こうした変調された青色光は、周波数変換体(L2)によって、変調された第2の電磁放射線を形成する変調された白色光に変換される。
【0256】
第2の電磁放射線は、第1の電磁放射線の変調に対応して変調され、すなわち、データ伝送で用いられた変調は、周波数変換体(L2)で維持される。
【0257】
光キャリアの変調及び復調は、通常、強度変調を介して、例えば、直接検出(IM/DD)を用いて、成し遂げられる。所望の波形態は、光キャリアの瞬時電力に変調され、検出器は、受信された瞬時電力に比例した電流を生成する;すなわち、光波の強度のみが検出され、周波数又は相の情報はない(例えば、H.Elgalaら、Indoor optical wireless communication:Potential and state-of-the-art、TOPICS IN OPTICAL COMMUNICATIONS、IEEE Communications Magazineにおける記事、2011年10月に説明されている通り)。
【0258】
好適な変調技術は、例えば、H.Elgalaら、Indoor optical wireless communication:Potential and state-of-the-art、TOPICS IN OPTICAL COMMUNICATIONS、IEEE Communications Magazineにおける記事、2011年10月にも記載されている。
【0259】
高い平均電力効率は、光パルスの時間依存特性を用いて情報を運ぶシングルキャリア(SC)パルス変調技術を用いることによって成し遂げることができる。複数の技術の中で、2種のスキーム、オンオフキーイング(OOK)及びパルス位置変調(PPM)が広く使用される。OOKは、最も古いフォーマットの1つであり、ハードウェア実装及び統合に関して最も単純である。また、複雑性と性能との間で良好な折り合いも呈する。PPMにおいて、光パルスは、シンボル時間当たり、Sスロットのうちの1つにおいて伝送される。占有スロット位置は、シンボルによって運ばれたビット組合せを示す。PPMは、OOKと比較して信号帯域幅を拡張するが、より高い電力効率をもたらす。その上、PPMの使用は、システム性能に重要な、スロット同期とシンボルレベル同期との両方がレシーバーで要求されるので、OOKよりもより多くのシステムの複雑性を課す。
【0260】
OW(光無線)リンク用の多重副搬送波変調MSM技術もまた、概して好適である。OFDMは、多重副搬送波変調(MSM)の実用化である。OFDMは、高データレートを、直交サブキャリアを伝送することによって成し遂げることができる、並列データ伝送スキームである。OFDMシステムは、複雑なチャネル等化を必要とせず、時変チャネルは、周波数領域チャネル推定を用いて容易に推定することができ、適応変調を、アップリンク/ダウンリンク(UL/DL)要求データレート及びサービスの質(QoS)に基づいて適用することができる。また、OFDMを任意の多重アクセススキームと組み合わせる可能性は、それを屋内OW用途に極めて好ましいものにする。
【0261】
前述したように、本発明によれば、好ましくは、第1の電磁放射線は変調される。こうした変調は、放射源の制御によって実施することができる。別の実施形態によれば、第1の電磁放射線は、この放射線が放射源によって放出された後で、しかし、第2の電磁放射線へ変換する前に、変調することもできる。この場合、変調器(M)は、放射源と周波数変換体との間に配置される。
【0262】
更に別の実施形態によれば、周波数変換体が、制御可能な能動素子である場合、変調器(M)を周波数変換体に連結することができる。しかし、この場合においても、変調は、第1の電磁放射線の変換の前に実施される。
【0263】
本発明によれば、周波数変換体は、好ましくは、第2の電磁放射線が、第1の電磁放射線の変調に対応して変調されるように適合される。特に、変調は、本発明によるトランスミッターによって使用される周波数変換体の、好ましい短い減衰時間のために、本質的に不変のままである。
【0264】
レシーバー(R)
光データ通信システムは、トランスミッター(T)によって放出された変調された電磁放射線の、少なくとも一部を検出するために、レシーバーを追加で含む。レシーバー(R)は、検出器、例えば、光検出器(光ダイオード)、カメラ、又は太陽電池、例えば、コンピュータ又はスマートフォンのカメラを含むことができ、好ましくは、光検出器を含むことができる。光検出器は、光検出器(PD)又はPDの配列であってもよい。検出器、好ましくは、光検出器において、光信号は、電流に再び変換される。
【0265】
レシーバー(R)は、通常、変調された電磁放射線によって照射されるように設置される。
【0266】
電流信号は、任意選択で、レシーバーにおいて存在する、トランスインピーダンス増幅器(TIA)によって、電子的に予備増幅され得る。トランスインピーダンス増幅器(TIA)は、好ましくは、検出器の出力に連結される。
【0267】
レシーバー(R)は、通常、検出器に、好ましくは、光ダイオードに、それぞれ、任意選択で存在するTIAに連結したデータ分析装置を更に含む。データ分析装置は、当分野で既知であるように、検出された変調された電磁放射線からデータを抽出するように適合される。データ分析装置は、アナログ電流信号をデジタル信号に変え、情報ビットを復調するためのアナログ/デジタル変換体(ADC)を備えたデジタル信号プロセッサ(DSP)を含むことができる。復調された情報ビットは、出力(E)を形成する。出力(E)がデジタル信号である場合に、信号のデジタル信号への変換は省かれる。
【0268】
更に、光学フィルターを、検出器、好ましくは、光ダイオード(PD又はPD配列)の前に配置して、光学スペクトルにおいてトランスミッター(T)によって放出された変調された電磁放射線を選択することができる。加えて、光学フィルターは、周囲の光からの干渉を大幅に減らす。
【0269】
変調された電磁放射線を集め、それを、通常小さい検出器上へ濃縮するために、当業者に公知の、集束素子等の、従来の光学を使用することができる。一部の実施形態において、集束素子はレンズを備える。一部の実施形態において、集束素子は、複合放物面集光(CPC)を含む。
【0270】
しかし、検出器として一般に用いられる光ダイオードの応答時間が、接合静電容量及びキャリア走行時間及び検出器サイズの規模によって制限されるので、本発明の、好ましい一実施形態において、とりわけ、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物がレシーバーで用いられる場合、上記の実施形態で説明された検出器のみではなく、波長シフト材料及び検出器、好ましくは、光ダイオード(PD又はPD配列)を組み合わせたシステムが、本発明によるレシーバーにおいて使用される。波長シフト材料は、変調された電磁放射線を集める、従来の光学の代わりに、又は変調された電磁放射線を集める、従来の光学と共に、使用することができる。波長シフト材料は、染料で、好ましくは、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物でドープされた光導波路(通常、ポリマーマトリックス材料)である。波長シフト材料及び検出器、好ましくは、光ダイオードを組み合わせたシステムにおいて、好ましくは、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物は、染料として用いられる。通信信号で変調された入射光(すなわち、好ましくは、トランスミッター(T)によって放出された変調された電磁放射線)は、染料によって、好ましくは、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物によって、光入射角から独立して吸収され、次いで、異なる波長で再び放出される。放出された光の少なくとも一部、理想的な場合では、放出された光の全ては、例えば、ファイバー又はシートによって集められ、検出器、好ましくは、光ダイオード、より好ましくは、小面積光ダイオードに導かれる。
【0271】
好適なレシーバーの構造の一例は、例えば、T.G.Tieckeら、Optica、第3巻、第7号、2016年7月、787~792頁及びUS2017/0346556Aに説明されている。Tieckeらの検出器は、特別な蛍光ファイバーの球状の束を含む。ゴルフボールからテニスボールの間のサイズの束は、いずれの方向からも(青色レーザー)光を吸収することができ、緑色光として再び放出することができる。緑色光は、光をデータに再び変換する、小さいレシーバーに送られる。
【0272】
好適なレシーバーの更なる例は、US2017/075191A1、Collinsら、Optics Letters、第39巻、第7号、2014年4月1日、1756~1759頁、Mulyawanら、IEEE Photonics Technology Letters、第29巻、第3号、2017年2月1日、及びManousiadisら、Optica、第3巻、第7号、2016年7月、702~706頁に示される。
【0273】
好ましくは、本発明によるレシーバーは、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物を含む材料(波長シフト材料)を含む。式(I)又は式(I*)の化合物は、好ましくは、トランスミッター(T)によって放出された変調された電磁放射線、すなわち、第1の波長バンドの波長を有する光子を吸収し、第2の波長バンドの波長を有する、1種又は複数の光子を放出する。
【0274】
波長シフト材料は、好ましくは、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物が、染料として含まれる、好ましくは、ポリマーマトリックス中に存在する、固体である。通常、染料、とりわけ、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物を、ポリマーマトリックス中に分子的に溶解させる。好適なポリマーマトリックス材料は前述されている。更に好適なポリマーマトリックス材料はまた、UV硬化耐性又は熱硬化耐性、例えば、エポキシ、アクリラート、又はシリコーンでもある。
【0275】
波長シフト材料のポリマーマトリックス材料における、染料の濃度、好ましくは、式(I)又は式(I*)の化合物の濃度は、レシーバーの厚さ及びポリマーの種類に応じて設定される。薄いポリマー層が用いられる場合、染料の濃度、好ましくは、式(I)又は式(I*)の化合物の濃度は、概して、厚いポリマー層の場合においてよりもより高い。
【0276】
典型的には、染料の濃度、好ましくは、式(I)又は式(I*)の化合物の濃度は、通常、用いられるマトリックスポリマーの量に対して、0.0001~5質量%の範囲、好ましくは、0.001~0.5質量%の範囲である。
【0277】
染料は、粒子の形態で施すことができ、それは、通常、ポリマーマトリックス中に、分子的に溶解させる。更なる一実施形態において、染料は、少なくとも1種の式(I)又は式(I*)の化合物(波長シフト粒子)を溶解形態で含む、容器(例えば、グラス)に含まれた液体中に溶解させる。
【0278】
波長シフト材料は、曲げることができ、及び/若しくは柔軟であり得るシートの形態で存在することができるか、又は1種又は複数のファイバーで構成され得る。
【0279】
レシーバーは、好ましくは、第2の波長バンドの波長を有する光子を集めるか、及び/又は別段で第2の波長バンドの波長を有する光子を検出器へ向かわせる集束素子を更に含む。一部の実施形態において、集束素子はレンズを備える。一部の実施形態において、集束素子は、複合放物面集光(CPC)を含む。一部の実施形態において、集束素子は、第2の波長バンドの波長を有する光子を吸収し、第3の波長バンドの光子を放出するように構成された、別の波長シフト材料を含む。これらの実施形態において、検出器は、第3の波長バンドの波長を有する光子を検出するように構成される。最後に言及された実施形態において、波長シフト材料は、複数の異なる(重複のない)波長バンドの波長を有する光子を吸収し、放出するように構成され得る。例えば、波長シフト材料は、1種又は複数のタイプの染料を含むことができる。染料は、少なくとも1種の式(I)若しくは式(I*)の化合物、又は当業者に公知の異なる染料を含むことができる。
【0280】
検出器の出力は、好ましくは、検出器によって生成された電流信号を電圧に変えるトランスインピーダンス増幅器(TIA)に連結される(前述の通り)。
【0281】
この点以降において、レシーバーは、上記の、標準のレシーバートポロジーと類似する。
【0282】
本発明の光データ通信システムの1種又は複数の部品の表面、とりわけ、レシーバーの1種若しくは複数の部品及び/又はトランスミッターの1種若しくは複数の部品の表面は、コーティングするか、及び/又は構造化することができる。好適な構造及びコーティングは、当業者に公知である。
【0283】
レシーバーの1種又は複数の部品は、離型、耐熱性、耐化学性、耐腐食性、低摩擦性能、及び耐候性等の性質を改善する、反射防止コーティング及び/又はコーティングで、例えば、SiO2及び/又はフルオロポリマー(フルオロコーティング)を含むコーティングでコーティングすることができる。
【0284】
とりわけ、光データ通信システムにおける、とりわけ、レシーバーにおけるファイバーは、好ましい一実施形態において、クラッディングによってコーティングされる。クラッディングは、典型的には、ファイバー半径の1~10パーセントの厚さでファイバーコアを取り囲む層(「コーティング」)である。その屈折率ncladは、ncoreよりも低い。ファイバー、とりわけ、プラスチックファイバーのクラッディング用の典型的な材料は、PMMA又はフッ素化ポリマー(FP)(フルオロポリマー)である。好適なフルオロポリマーは、当業者に公知である。光ファイバーは、それぞれ、下層のものよりも低い屈折率を有する、1つのクラッディング又は複数のクラッディングを有することができる。クラッディングにより、屈折率を低減した境界面がもたらされ、それによって、光をファイバー内に閉じ込め、伝搬するのに使用されるTIR(全内部反射)を繰り返すことができる。1つのみのクラッディングを有するファイバーは、シングルクラッドファイバーと称され、一方で追加のクラッディングを有するファイバーは、マルチクラッドファイバーと称される。
【0285】
入力(A)及び出力(E)
入力(A)及び出力(E)は、通常、電気的なデジタル信号又はアナログ信号の形態で、転送される情報である。通常、転送される情報は、デジタル情報ビットの形態である。
【0286】
光学経路(C)
光学経路(C)は、概して、当業者に公知の、光通信に好適な、任意の光学経路であってもよい。好ましくは、光学経路(C)は、自由空間、すなわち、光無線チャネルである。
【0287】
光学経路は、屋内環境及び/又は屋外環境にある。好ましくは、光学経路は、屋内環境にある。
【0288】
屋外光無線通信は、超長距離自由空間リンク、中距離/長距離リンク、及び短距離リンクに分けることができる。超長距離自由空間リンクは、例えば、衛星の配置を配信するのに使用される。中距離/長距離リンクは、例えば、建物内ネットワーク又はモバイルバックホールに使用される。短距離リンクは、例えば、車車間通信に使用される。
【0289】
屋内光無線通信は、短距離リンク及び超短距離リンクに分けることができる。短距離リンクは、例えば、光WLAN、飛行中通信、路車間通信、屋内位置調整、及び無線自動化用である。屋内光無線通信は、例えば、家庭、オフィス、及び倉庫における、TVコントロールから、携帯用電子機器、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、携帯情報端末、及びラップトップのIrDA(赤外通信協会)ポートまでの範囲に適用される。超短距離リンクは、例えば、チップ間相互接続及び体内ネットワーク用である。
【0290】
より好ましくは、光学経路は、屋内環境の自由空間である。
【0291】
更なる任意選択の部品
加えて、本発明による光データ通信システムは、トランスミッター(T)によって放出される変調された電磁放射線を更に形づくるために、光学システムを更に含むことができる。例えば、光増幅レンズ、コリメーター、及び/又はディフューザーを使用して、変調された電磁放射線を濃縮し、又は広げることができる。
【実施例】
【0292】
以下の図及び実施例は、本発明を説明するためのものであり、限定するものとして解釈されるべきではない。
【0293】
(比較例1C)
4,4'-ビス[(N-カルバゾール)スチリル]ビフェニル(BSB-Cz)(Zhangら、Optical Materials、32(2009)94~98頁)
【0294】
【0295】
(実施例1.1)
【0296】
【0297】
カルバゾール9.53g(57mmol)、4-ブロモベンズアルデヒド21.31g(114mmol)、K2CO3 11.89g(86mmol)、CuI 1.80g(9.4mmol)の、60mlのDMF中の混合物を、140℃で19時間反応させた。反応混合物を室温まで冷却し、ろ過し、DMFで洗浄し、ろ液を氷で希釈した。残留物をろ過し、水及びエタノールで洗浄した。11.36g(74%)のベージュ色の固体を得た。
【0298】
(実施例1.2)
【0299】
【0300】
実施例1.1の上記化合物0.9g(3.3mmol)の混合物を、4,4-ビス(ジエチルホスホノメチル)-ビフェニル(実施例1.3)0.65g(1.4mmol)、KOtBu 0.41g(3.5mmol)、及び40mlのTHFと、室温で4時間反応させた。
【0301】
反応混合物をエタノールで希釈し、ろ過し、残留物をエタノール及びペンタンで洗浄し、減圧下で乾燥させた。0.95gの黄色の残留物を1,2-ジクロロベンゼンから再結晶化させた。0.77g(79%)の淡黄色固体を得た。
【0302】
(実施例1.3)
ミカエリス・アルブーゾフ反応
【0303】
【0304】
4,4'-ビス-クロロメチルジフェニル5.8g(199.71mmol)を、亜リン酸トリエチル105g(600.00mmol)と159℃で4時間反応させた。過剰量の亜リン酸トリエチルを留去した。残留物をトルエンで希釈した。沈殿生成物をろ過し、トルエンで洗浄し、減圧下で乾燥させた。53.2g(59%)の白色固体を得た。
融点:111℃
【0305】
(実施例2)
【0306】
【0307】
(実施例2.1)
【0308】
【0309】
に従って、対応するベンジル塩化物からの合成を実施した。合成はまた、ミカエリス・アルブーゾフ反応の、後の実施例、又は上記のミカエリス・アルブーゾフ反応(1.3)に従って、対応する臭化物から実施することもできる。
【0310】
(実施例2.2)
【0311】
【0312】
4-(9H-カルバゾール-9-イル)ベンズアルデヒド(実施例1.1)3.00g(11.06mmol)の混合物を、(4-シアノベンジル)-ホスホン酸-ジエチルエステル2.69g(10.53mmol)、KOtBu 1.33g(11.6mmol)、及び100mLのTHFと室温で4時間反応させた。
【0313】
溶媒を反応混合物から取り除いた。残留物を、水及び酢酸エチルで処理した。水性層の不溶性残留物をろ過し、水で洗浄し、減圧下で乾燥させた。1.41g(36%)の黄色固体を得た。
【0314】
抽出による有機相から溶媒を取り除いた。残留物を、MTBE(メチル-tert-ブチルエーテル)と混合し、ろ過し、MTBE及びn-ペンタンで洗浄した。残留物を、減圧下で乾燥させた。1.12g(29%)の黄色固体を得た。
【0315】
(実施例2.3)
【0316】
【0317】
実施例2.2の対応する1.08g(2.9mmol)のニトリルの混合物を、トルエン15mlに溶解させ、0℃まで冷却した。0.54gの1M水素化ジイソブチルアルミニウムの、トルエン(3.8ml、3.8mmol)中溶液を10分以内に添加した。混合物を、この温度で1時間撹拌した。4.5ml の3M塩酸を添加し、2.0mlの1M塩酸を添加した。反応混合物を室温まで温めた。沈殿生成物をろ過によって単離し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥させた。0.65g(60%)の橙色化合物を単離した。
TLC(シクロヘキサン:酢酸エチル 3:1):Rf=0.53
【0318】
(実施例2.4)
【0319】
【0320】
実施例2.3で説明された化合物と4,4-ビス(ジエチルホスホノメチル)-ビフェニル(実施例1.3)とのウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を、実施例1.2に従って、再結晶を省いて実施した。0.77g(71%)の黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:酢酸エチル 3:1):Rf=0
【0321】
(実施例3)
【0322】
【0323】
合成は、実施例1に従って、対応するジヘキシルカルバゾールを原材料として用いて実施した。対応する4,7-ジヘキシルカルバゾールは、X.Y.Wang、Chemistry A European Journal、2015、21、24、8867~8873頁に従って製造された。
【0324】
(実施例3.1)
【0325】
【0326】
3,6-ジヘキシル-9H-カルバゾールと4-ブロモベンズアルデヒドとの反応を、実施例1.1と同様に実施した。反応時間は、140℃で23時間及び150℃で22時間であった。
【0327】
反応混合物を室温まで冷却し、MTBE及び水で抽出した。有機層を、MgSO4で乾燥させ、溶媒を取り除いた。残留物を、液体クロマトグラフィーによって、シクロヘキサン/ジクロロメタンで精製した。6.41g(49%)の黄色の結晶性固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:アセトン 10:1):Rf=0.62
【0328】
(実施例3.2)
【0329】
【0330】
実施例3.1で説明された化合物と4,4-ビス(ジエチルホスホノメチル)-ビフェニル(実施例1.3)とのウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を、実施例1.2に従って実施した。
【0331】
反応混合物の溶媒を取り除いた。残留物を、水及びジクロロメタンで抽出した。有機層をMgSO4で乾燥させ、溶媒を取り除いた。残留物をn-ペンタンに溶解させた。アセトンを添加した。沈殿生成物をろ過し、アセトンで洗浄し、減圧下で乾燥させた。0.86g(86%)の黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:アセトン 10:1):Rf=1
【0332】
(実施例4)
【0333】
【0334】
合成は、実施例2に従って、原材料として対応するジヘキシルカルバゾールを用いて実施した。
【0335】
(実施例4.1)
【0336】
【0337】
4-(3,6-ジヘキシルカルバゾール)-9-イル)ベンズアルデヒド(実施例3.1)と4,4-ビス(ジエチルホスホノメチル)-ビフェニル(実施例2.1)とのウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を、実施例2.2と同様に実施した。
【0338】
反応混合物を水及びジクロロメタンで処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。残留物を、液体クロマトグラフィーによって、シクロヘキサン/ジクロロメタンで精製した。3.75g(91,8)の緑黄色結晶性固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:アセトン 10:1):Rf=0.49
【0339】
(実施例4.2)
【0340】
【0341】
上記のニトリルの反応(実施例4.1)を、実施例2.3と同様に実施した。
【0342】
反応混合物を水及びMTBEで処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。1.85g(87%)の橙黄色結晶性固体を得た。
TLC(ジクロロメタン:シクロヘキサン 3:1):Rf=0.6
【0343】
(実施例4.3)
【0344】
【0345】
上記の化合物(実施例4.2)と4,4-ビス(ジエチルホスホノメチル)-ビフェニル(実施例1.3)とのウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を、実施例1.2に従って実施した。
【0346】
反応混合物をエタノールで希釈した。固体をろ過し、エタノールで洗浄し、乾燥させた。0.92g(86%)の黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:ジクロロメタン 1:3):Rf=0
【0347】
(実施例5)
【0348】
【0349】
(実施例5.1)
【0350】
【0351】
4-ジエチルアミノ-ベンズアルデヒドと、4,4-ビス(ジエチルホスホノメチル)-ビフェニル(実施例2.1)とのウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を、実施例2.2と同様に実施した。
【0352】
反応混合物から溶媒を取り除いた。残留物を塩酸溶液及びジクロロメタンで処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。5.66g(100%)の黄金色固体を得た。
【0353】
(実施例5.2)
【0354】
【0355】
上記のニトリルの反応(実施例5.1)を、実施例2.3と同様に実施した。
【0356】
反応混合物を酢酸エチル及び水で処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。1.97g(62%)の橙色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:酢酸エチル 2:1):Rf=0.59
【0357】
(実施例5.3)
【0358】
【0359】
上記の化合物(実施例5.2)と4,4-ビス(ジエチルホスホノメチル)-ビフェニル(実施例1.3)とのウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を、実施例1.2に従って実施した。
【0360】
反応混合物をエタノールで希釈した。固体をろ過し、エタノール及びn-ペンタンで洗浄した。残留物をNMPで再結晶化し、残留物をメタノール及びn-ペンタンで洗浄し、乾燥させた。0.37g(51%)の黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:ジクロロメタン 1:3):Rf=0
【0361】
(実施例6)
【0362】
【0363】
(実施例6.1)
【0364】
【0365】
4-[(E)-2[4-(ジエチルアミノ)フェニル]ビニル]-ベンズアルデヒドと、ベンジルホスホン酸ジエチルとの反応を実施例2.2と同様に実施した。
【0366】
反応混合物から溶媒を取り除いた。残留物を塩酸溶液及びジクロロメタンで処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。残留物を、液体クロマトグラフィーによって、シクロヘキサン/ジクロロメタンで精製した。0.13g(15%)の黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:ジクロロメタン 1:3):Rf=0.66
【0367】
(実施例7)
【0368】
【0369】
(実施例7.1)
【0370】
【0371】
4-ジエチルアミノ-ベンズアルデヒドと、p-キシリレンジホスホン酸テトラエチルとの反応を実施例1.2と同様に実施した。
【0372】
溶媒を反応混合物から取り除いた。残留物を水及びジクロロメタンで処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。残留物を、液体クロマトグラフィーによって、シクロヘキサン/ジクロロメタンで精製した。残留物をn-ペンタンで処理し、1.32g(81%)の黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:ジクロロメタン 1:3):Rf=0.5
【0373】
(実施例8)
【0374】
【0375】
(実施例8.1)
【0376】
【0377】
2,7-ビス(ブロモメチル)-9,9-ジヘキシル-9H-フルオレンと、亜リン酸トリエチルとの反応を、実施例1.3と同様に実施した。
【0378】
過剰量の亜リン酸トリエチルを留去した。残留物を、液体クロマトグラフィーによって、酢酸エチル/メタノールで精製した。0.93g(79%)の無色の油を得た。
TLC(酢酸エチル:メタノール 20:1):Rf=0.38
【0379】
(実施例8.2)
【0380】
【0381】
上記の化合物(実施例8.1)と、4-[(E)-2-[4-(3,6-ジヘキシルカルバゾール-9-イル)フェニル]ビニル]ベンズアルデヒド(実施例4.1)とのウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を、実施例1.2に従って実施した。
【0382】
溶媒を反応混合物から取り除いた。残留物を水及びジクロロメタンで処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。得られた固体を、液体クロマトグラフィーによって、シクロヘキサン及びジクロロメタンで精製した。0.29g(22%)の緑黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:ジクロロメタン 1:3):Rf=1
【0383】
(実施例9)
【0384】
【0385】
(実施例9.1)
【0386】
【0387】
4-[(E)-2-[4-(3,6-ジヘキシルカルバゾール-9-イル)フェニル]ビニル]ベンズアルデヒド(実施例4.1)と、4,4-ビス(ジエチルホスホノメチル)-ビフェニル(実施例2.1)とのウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を、実施例2.2に従って実施した。
【0388】
反応混合物を水及びジクロロメタンで処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。残留物を、液体クロマトグラフィーによって、シクロヘキサン/ジクロロメタンで精製した。0.12g(18.2%)の黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:ジクロロメタン 1:3)Rf=0.76
【0389】
(実施例9.2)
【0390】
【0391】
上記のニトリルの反応(実施例9.1)を、実施例2.3と同様に実施した。
【0392】
反応混合物を水及びMTBEで処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。96mg(98%)の橙黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:ジクロロメタン 1:3):Rf=0.68
【0393】
(実施例9.4)
【0394】
【0395】
上記の化合物(実施例9.2)と、2,7-ビス(ジエトキシホスホリルメチル)9,9-ジヘキシル-フルオレン(実施例8.1)とのウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を、実施例1.2に従って実施した。
【0396】
反応混合物を水及びジクロロメタンで処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。残留物を、液体クロマトグラフィーによって、シクロヘキサン/ジクロロメタンで精製した。得られた固体をn-ペンタンで処理した。112mg(47%)の黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:ジクロロメタン 1:3):Rf=1
【0397】
(実施例10)
【0398】
【0399】
(実施例10.1)
【0400】
【0401】
テレフタルアルデヒド15mg(0.112mmol)の混合物を、2,7-ビス(ジエトキシホスホリル-メチル)-9,9-ジヘキシルフルオレン (実施例8.1)150mg(0.224mmol)、KOtBu 27mg(0.236mmol)、及び10mLのTHFと、室温で4時間反応させた。
【0402】
反応物から溶媒を取り除いた。残留物を水及びジクロロメタンで処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。液体クロマトグラフィーによって、ジクロロメタン/メタノールで更に精製した後、30mg(13%)の黄色固体を得た。
TLC(酢酸エチル:メタノール 10:1):Rf=0.6~1.0の間
【0403】
(実施例10.2)
【0404】
【0405】
上記の化合物(実施例10.1)と、4-[(E)-2-[4-(3,6-ジヘキシルカルバゾール-9-イル)フェニル]ビニル]ベンズアルデヒド(実施例4.1)とのウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を、実施例1.2に従って実施した。
【0406】
反応物から溶媒を取り除いた。残留物を水及びジクロロメタンで処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。液体クロマトグラフィーによって、シクロヘキサン/ジクロロメタンで更に精製した後、残留物をメタノールで処理した。11mgの緑色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:ジクロロメタン 1:1):Rf=1
【0407】
(実施例11)
【0408】
【0409】
(実施例11.1)
【0410】
【0411】
テレフタルアルデヒド0.5g(3.7mmol)の混合物を、(4-シアノベンジル)-ホスホン酸-ジエチルエステル(実施例2.1)1.98g(7.75mmol)、KOtBu 0.89g(7.75mmol)、及び40mLのTHFと、室温で1時間反応させた。
【0412】
反応混合物から溶媒を取り除いた。残留物をジクロロメタン及び水で処理した。不溶性固体をろ過した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。両方の固体をDMFで再結晶化させた。0.64g(52%)の黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:ジクロロメタン 1:3):Rf=0.35
【0413】
(実施例12)
【0414】
【0415】
(実施例12.1)
【0416】
【0417】
4-ジエチルアミノ-ベンズアルデヒド0.5g(2.79mmol)と4-ホルミルベンゾニトリル0.37g(2.79mmol)との混合物を、p-キシリレンジホスホン酸テトラエチル1.14g(2.93mmol)、KOtBu 0.67g(5.87mmol)、及び40mLのTHFと室温で4時間反応させた。
【0418】
溶媒を反応混合物から取り除いた。残留物をジクロロメタン及び水で処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。残留物を、液体クロマトグラフィーによって、シクロヘキサン及びジクロロメタンで精製した。0.22g(21%)の橙色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:ジクロロメタン 1:3):Rf=0.45
【0419】
(実施例13)
【0420】
【0421】
(実施例13.1)
【0422】
【0423】
テレフタルアルデヒド2.00g(14.76mmol)を、(4-シアノベンジル)-ホスホン酸-ジエチルエステル(実施例2.1)3.78g(14.76mmol)、KOtBu 1.86g(16.24mmol)、及び50mLのTHFと室温で3時間反応させた。
【0424】
溶媒を反応混合物から取り除いた。残留物をジクロロメタン及び水で処理した。有機層を乾燥させ、溶媒を取り除いた。液体クロマトグラフィーによって、シクロヘキサン/ジクロロメタンで更に精製した後、1.59g(44%)の黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:ジクロロメタン 1:3):Rf=0.41
【0425】
(実施例13.2)
【0426】
【0427】
上記の化合物(実施例13.1)と、2,7-ビス(ジエトキシホスホリル-メチル)-9,9-ジヘキシルフルオレン (実施例8.1)とのウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を、実施例1.2に従って実施した。
【0428】
溶媒を反応混合物から取り除いた。残留物を、液体クロマトグラフィーによって、シクロヘキサン/ジクロロメタンで精製し、メタノールで洗浄した。0.44g(74%)の黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:酢酸エチル:メタノール 10:10:1):Rf=0.93
【0429】
(実施例14)
【0430】
【0431】
(実施例14.1)
【0432】
【0433】
trans-4-スチルベンカルボキシアルデヒドと、2,7-ビス(ジエトキシホスホリル-メチル)-9,9-ジヘキシルフルオレン(実施例8.1)とのウィッティヒ・ホーナー・ワズワース・エモンズ反応を、実施例1.2に従って実施した。
【0434】
溶媒を反応混合物から取り除いた。残留物を、液体クロマトグラフィーによって、シクロヘキサン/ジクロロメタンで精製し、メタノールで洗浄した。0.5g(90%)の黄色固体を得た。
TLC(シクロヘキサン:酢酸エチル:メタノール 10:10:1):Rf=0.96
【0435】
調製実施例1~14の蛍光染料(蛍光体)の特性
材料の試験用のフィルムの製造:
実施例に従って合成された蛍光染料を、溶液及び薄膜の両方において特性決定した。フィルムについて、それらは、以下で説明するように、ポリマーで構成されたマトリックスへ組み込まれた。用いられたポリマーは、PMMA(Evonik社製Plexiglas(登録商標)6N)、ポリスチレン(PS)(BASF社製PS168N)、シクロオレフィンポリマー(Zeon社製Zeonex(登録商標))、及びPC(ポリカルボナート)(Covestro社製Macrolon(登録商標)2808)であった。
【0436】
それぞれの場合で用いられたポリマーの量に対して、約2.5gのポリマー及び染料0.01質量%~1質量%を、約5mLの塩化メチレンに溶解させ、TiO2(Kronos2220)0.5質量%をそこに分散させた。得られた溶液/分散液は、アプリケーターフレームを用いてガラス表面にコーティングした(未乾燥膜厚15~30μm)。溶媒を乾燥させた後、フィルムを真空で、50℃で4時間乾燥させた。
【0437】
量子収率の測定
分析サンプルの蛍光量子収率(QY)は、浜松Quantaurusで測定した。これは、積分球(ウルブリヒト球)において、それぞれのサンプルに370nmの光を照射することによって行われた。CCD分光計を用いて、ウルブリヒト球における、サンプルなしの参照測定との比較によって、励起光及びサンプルから放出された蛍光の吸収されない部分が測定される。吸収されない励起光のスペクトル強度の積分及び放出された蛍光のスペクトル強度の積分により、吸収及び蛍光強度それぞれの度合いが与えられ、したがって、それぞれのサンプルの蛍光量子収率を計算することができる。
【0438】
励起状態寿命τv及び放出寿命τ0の判定
調製された薄膜の励起状態寿命(τv)は、10MHzで操作された励起波長370nmを有するパルスダイオードレーザー(Picoquant社)で薄膜を励起し、時間相関単一光子計数(TCSPC)で発光を検出することによって測定される。減衰曲線への、単一指数又は二指数の適合を用いて、励起状態寿命(τv)を判定した。
【0439】
【0440】
二指数適合について、平均寿命は、次式に従って計算された。
【0441】
【0442】
放出寿命τ0は、τ0=τv/QYによって計算される。
【0443】
以下の表(表1及び表2)に結果をまとめる。減衰速度は、発光の最大で決定された。いくつかの材料を異なるマトリックスで測定し、またいくつかのサンプルを、散乱体の影響をみるために、TiO2をフィルムに添加せずに測定した。
【0444】
【0445】
【0446】
TCSPCは、減衰時間約1ns又は1ns未満を正確には測定することができないので、ストリークカメラを、1ns未満の、より正確な時間分解測定に使用した。Acton SpectraPro SP2300分光計を備えた浜松ユニバーサルストリークカメラC10910を使用した。400nmでの励起パルスを、コヒレントChameleon Ti:サファイアオシレーターの出力の第2の高調波から生成し、ストリークカメラをシンクロスキャンモードで操作した。
【0447】
【0448】
【0449】
【0450】
【符号の説明】
【0451】
A 入力(A)
B トランスミッター(T)
C 光学経路(C)
D レシーバー(R)
E 出力(E)