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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】膜ろ過システムおよび膜ろ過方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20230118BHJP
   A01K 63/04 20060101ALI20230118BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20230118BHJP
   C02F 1/78 20230101ALI20230118BHJP
   C02F 1/76 20230101ALI20230118BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20230118BHJP
【FI】
C02F1/44 C
A01K63/04 A
C02F1/44 A
B01D61/14 500
C02F1/78
C02F1/76 C
C02F1/58 L
C02F1/44 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018164380
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020037059
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 明広
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-181973(JP,A)
【文献】特開2014-188473(JP,A)
【文献】特開2008-055385(JP,A)
【文献】特開2003-326258(JP,A)
【文献】特開2015-173995(JP,A)
【文献】特開2017-202467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/04
C02F 1/44
B01D 53/22
B01D 61/00 - 71/82
C02F 1/72 - 1/78
C02F 1/58
C02F 9/02
C02F 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含む、水中生物の飼育水中の懸濁物質を除去する膜ろ過システムであって、
前記飼育水中に過酸化物を発生させる過酸化物発生手段と、
前記過酸化物を発生させた過酸化物含有水を限外ろ過膜または精密ろ過膜を用いてろ過する膜ろ過手段と、
前記膜ろ過手段の後段の、過酸化物を分解処理する過酸化物分解手段と、
前記過酸化物分解手段により分解処理した処理水の少なくとも一部を返送して前記飼育水に添加する返送手段と、
前記過酸化物分解手段の前段の、残留酸化物濃度測定手段と、
を備え、
前記残留酸化物濃度測定手段の測定値に基づいて、前記過酸化物発生手段による前記過酸化物の発生量を制御して、前記過酸化物による前記アンモニア態窒素のブレークポイント処理を行うことを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項2】
請求項1に記載の膜ろ過システムであって、
前記過酸化物発生手段がオゾン発生手段であることを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の膜ろ過システムであって、
前記残留酸化物濃度測定手段は、全ハロゲン量と遊離ハロゲン量とをそれぞれ測定可能であることを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項4】
請求項3に記載の膜ろ過システムであって、
前記残留酸化物濃度測定手段で測定した前記全ハロゲン量と前記遊離ハロゲン量との差が全ハロゲン量の20%以内になるように、前記過酸化物発生手段による前記過酸化物の発生量を制御することを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項5】
ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含む、水中生物の飼育水中の懸濁物質を除去する膜ろ過方法であって、
前記飼育水中に過酸化物を発生させる過酸化物発生工程と、
前記過酸化物を発生させた過酸化物含有水を限外ろ過膜または精密ろ過膜を用いてろ過する膜ろ過工程と、
前記膜ろ過工程の後段の、過酸化物を分解処理する過酸化物分解工程と、
前記過酸化物分解工程において分解処理した処理水の少なくとも一部を返送して前記飼育水に添加する返送工程と、
前記過酸化物分解工程の前段における残留酸化物濃度測定工程と、
を含み、
前記残留酸化物濃度測定工程の測定値に基づいて、前記過酸化物発生工程における前記過酸化物の発生量を制御して、前記過酸化物による前記アンモニア態窒素のブレークポイント処理を行うことを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項6】
請求項5に記載の膜ろ過方法であって、
前記過酸化物発生工程がオゾン発生工程であることを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の膜ろ過方法であって、
前記残留酸化物濃度測定工程において、全ハロゲン量と遊離ハロゲン量とをそれぞれ測定することを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項8】
請求項7に記載の膜ろ過方法であって、
前記残留酸化物濃度測定工程において測定した前記全ハロゲン量と前記遊離ハロゲン量との差が全ハロゲン量の20%以内になるように、前記過酸化物発生工程における前記過酸化物の発生量を制御することを特徴とする膜ろ過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含むハロゲン化物イオン含有水中の懸濁物質を除去する膜ろ過システムおよび膜ろ過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖や水族館のようなアンモニア等の窒素化合物が含まれる海水中の懸濁物質を限外ろ過膜や精密ろ過膜で除去しようとする場合、海水中のアンモニア濃度が高くなると、それ自体が魚等に毒性を示すため、アンモニア態窒素も除去することが望ましい。その対策として、一般的に生物処理を用いるが、システム全体が大規模になり、広い設置スペースが必要となってしまう。
【0003】
また、膜のファウリングを抑制しつつ、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含むハロゲン化物イオン含有水中の懸濁物質およびアンモニア態窒素を除去する方法として、ハロゲン化物イオン含有水中にオゾン処理により過酸化物を発生させ、過酸化物を発生させた過酸化物含有水を限外ろ過膜または精密ろ過膜を用いてろ過する方法(特許文献1参照)がある。
【0004】
しかし、特許文献1の方法では、アンモニア態窒素が十分に除去できていることを確認する手段がなく、例えば原水水質が変動した場合、アンモニア態窒素の除去が不十分になり、安定したアンモニア態窒素の処理を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6251095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含むハロゲン化物イオン含有水について、安定したアンモニア態窒素の処理を行うことができる膜ろ過システムおよび膜ろ過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含む、水中生物の飼育水中の懸濁物質を除去する膜ろ過システムであって、前記飼育水中に過酸化物を発生させる過酸化物発生手段と、前記過酸化物を発生させた過酸化物含有水を限外ろ過膜または精密ろ過膜を用いてろ過する膜ろ過手段と、前記膜ろ過手段の後段の、過酸化物を分解処理する過酸化物分解手段と、前記過酸化物分解手段により分解処理した処理水の少なくとも一部を返送して前記飼育水に添加する返送手段と、前記過酸化物分解手段の前段の、残留酸化物濃度測定手段と、を備え、前記残留酸化物濃度測定手段の測定値に基づいて、前記過酸化物発生手段による前記過酸化物の発生量を制御して、前記過酸化物による前記アンモニア態窒素のブレークポイント処理を行う、膜ろ過システムである。
【0008】
前記膜ろ過システムにおいて、前記過酸化物発生手段がオゾン発生手段であることが好ましい。
【0009】
前記膜ろ過システムにおいて、前記残留酸化物濃度測定手段は、全ハロゲン量と遊離ハロゲン量とをそれぞれ測定可能であることが好ましい。
【0010】
前記膜ろ過システムにおいて、前記残留酸化物濃度測定手段で測定した前記全ハロゲン量と前記遊離ハロゲン量との差が全ハロゲン量の20%以内になるように、前記過酸化物発生手段による前記過酸化物の発生量を制御することが好ましい。
【0011】
また、本発明は、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含む、水中生物の飼育水中の懸濁物質を除去する膜ろ過方法であって、前記飼育水中に過酸化物を発生させる過酸化物発生工程と、前記過酸化物を発生させた過酸化物含有水を限外ろ過膜または精密ろ過膜を用いてろ過する膜ろ過工程と、前記膜ろ過工程の後段の、過酸化物を分解処理する過酸化物分解工程と、前記過酸化物分解工程において分解処理した処理水の少なくとも一部を返送して前記飼育水に添加する返送工程と、前記過酸化物分解工程の前段における残留酸化物濃度測定工程と、を含み、前記残留酸化物濃度測定工程の測定値に基づいて、前記過酸化物発生工程における前記過酸化物の発生量を制御して、前記過酸化物による前記アンモニア態窒素のブレークポイント処理を行う、膜ろ過方法である。
【0012】
前記膜ろ過方法において、前記過酸化物発生工程がオゾン発生工程であることが好ましい。
【0013】
前記膜ろ過方法において、前記残留酸化物濃度測定工程において、全ハロゲン量と遊離ハロゲン量とをそれぞれ測定することが好ましい。
【0014】
前記膜ろ過方法において、前記残留酸化物濃度測定工程において測定した前記全ハロゲン量と前記遊離ハロゲン量との差が全ハロゲン量の20%以内になるように、前記過酸化物発生工程における前記過酸化物の発生量を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含むハロゲン化物イオン含有水について、安定したアンモニア態窒素の処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る膜ろ過システムの一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る膜ろ過システムの他の例を示す概略構成図である。
図3】アンモニアのブレークポイントを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明の実施形態に係る膜ろ過システムの一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0019】
膜ろ過システム1は、過酸化物発生手段として、オゾン発生装置26を備えるオゾン処理装置24と、膜ろ過手段として、限外ろ過膜または精密ろ過膜を有する膜ろ過装置14と、過酸化物を分解処理する過酸化物分解手段として、活性炭処理装置18とを備える。膜ろ過システム1は、原水槽10と、過酸化物含有水槽12と、膜ろ過水槽16と、処理水槽20と、濃縮水槽22とを備えてもよい。
【0020】
図1の膜ろ過システム1において、原水槽10の出口と過酸化物含有水槽12の入口とが配管40により接続され、過酸化物含有水槽12の出口と膜ろ過装置14の入口とがポンプ28およびストレーナ38を介して配管42により接続され、膜ろ過装置14の透過水出口と膜ろ過水槽16の入口とが配管44より接続され、膜ろ過水槽16の出口と活性炭処理装置18の入口とがポンプ30を介して配管46により接続され、活性炭処理装置18の出口と処理水槽20の入口とが配管48より接続され、処理水槽20の出口と原水槽10とがポンプ32を介して返送配管50により接続されている。
【0021】
膜ろ過装置14の濃縮水出口と濃縮水槽22の濃縮水入口とが配管52により接続され、濃縮水槽22の出口とオゾン処理装置24の入口とがポンプ34を介して配管54により接続され、オゾン処理装置24の出口と過酸化物含有水槽12の入口とが配管56により接続されている。オゾン処理装置24の下部にはオゾン発生装置26がバルブ65を介して配管66により接続されている。配管66におけるバルブ65の下流側にはオゾンの流量を測定するフローメータ60が設置されている。オゾン処理装置24の上部の排オゾン出口には、排オゾンを排出する配管64が接続され、配管66におけるバルブ65の上流側から分岐した配管63がバルブ61を介して配管64に接続されている。オゾン処理装置24の上部側面には発生したスカム等を排出する配管62が接続されている。処理水槽20の下部と膜ろ過装置14の2次側とはポンプ36を介して配管58により接続されている。残留酸化物濃度測定手段として、配管56には残留塩素測定装置11が設置されている。
【0022】
本実施形態に係る膜ろ過方法および膜ろ過システム1の動作について説明する。
【0023】
原水槽10に貯留された、懸濁物質を含み、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含むハロゲン化物イオン含有水は、必要に応じて過酸化物含有水槽12に貯留される。ハロゲン化物イオン含有水は、過酸化物含有水槽12において、後述する過酸化物を発生させた過酸化物含有水と混合されて、過酸化物によるアンモニア態窒素のブレークポイント処理が行われた後、混合水としてポンプ28により配管42を通して膜ろ過装置14に供給される。必要に応じて配管42の途中にストレーナ38を設置し、ハロゲン化物イオン含有水中の比較的大きめの固形物が除去されてもよい。
【0024】
膜ろ過装置14において、混合水中の懸濁物質、すなわち原水であるハロゲン化物イオン含有水に含まれていた懸濁物質が限外ろ過膜または精密ろ過膜を用いてろ過されて除去される(膜ろ過工程)。
【0025】
膜ろ過された膜ろ過水(透過水)は、配管44を通して必要に応じて膜ろ過水槽16に貯留された後、ポンプ30により配管46を通して活性炭処理装置18に供給される。活性炭処理装置18において、膜ろ過水中の過酸化物であるハロゲンオキソ酸が活性炭により分解処理され、ハロゲン化物イオンとなる(過酸化物分解工程)。
【0026】
過酸化物が分解処理され、ハロゲン化物イオンを含む処理水は、配管48を通して必要に応じて処理水槽20に貯留された後、ポンプ32により返送配管50を通して原水槽10に返送され、ハロゲン化物イオン含有水に添加される(返送工程)。過酸化物分解手段により分解処理した処理水の少なくとも一部を返送してハロゲン化合物イオン含有水に添加する返送手段として、ポンプ32および返送配管50が機能する。
【0027】
膜ろ過装置14の濃縮水は、配管52を通して必要に応じて濃縮水槽22に貯留された後、ポンプ34により配管54を通してオゾン処理装置24に供給される。
【0028】
オゾン処理装置24には、一方で、オゾン発生装置26で発生させたオゾンが配管66を通して供給される。オゾン処理装置24において、下記式1に示すように、濃縮水に含まれるハロゲン化物イオンとオゾンとの反応により、過酸化物である次亜ハロゲン酸(HXO)等のハロゲンオキソ酸が発生する(過酸化物発生工程)。次亜ハロゲン酸等のハロゲンオキソ酸は酸化力を有し、有機物の酸化や殺菌等に効果がある。なお、排オゾンは、配管64を通して排出され、オゾン処理装置24において発生したスカム等は、配管62を通して排出される。オゾン発生装置26で発生させたオゾンのうちオゾン処理装置24に供給されない分は、配管66,63,64を通して排出される。すなわち、オゾン処理装置24に供給されるオゾンの量は、バルブ61,65の開閉度によって調整される。
【0029】
[式1]
+ O → O + OX
OX + HO → HXO + OH
(ここで、Xは、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)等のハロゲン化物イオンであり、Xは、Cl,Br,I等のハロゲンである。)
【0030】
が塩化物イオンの場合、下記式2に示すように、濃縮水に含まれる塩化物イオンとオゾンとの反応により、過酸化物である次亜塩素酸(HClO)等のハロゲンオキソ酸が発生する。
【0031】
[式2]
Cl + O → O + OCl
OCl + HO → HClO + OH
【0032】
また、Xが臭化物イオンの場合、下記式3に示すように、濃縮水に含まれる臭化物イオンとオゾンとの反応により、過酸化物である次亜臭素酸(HBrO)等のハロゲンオキソ酸が発生する。
【0033】
[式3]
Br + O → O + OBr
OBr + HO → HBrO + OH
【0034】
過酸化物を発生させた過酸化物含有水は、配管56を通して過酸化物含有水槽12に供給され、原水槽10からのハロゲン化物イオン含有水と混合され、上記の通り、過酸化物によるアンモニア態窒素のブレークポイント処理が行われる。
【0035】
膜ろ過装置14の洗浄が必要になった場合は、処理水の一部が逆洗水として処理水槽20からポンプ36により配管58を通して膜ろ過装置14の2次側から1次側に逆流されて、膜が洗浄されてもよい(逆洗工程)。逆洗排水は、配管52を通して濃縮水槽22に供給され、膜ろ過装置14からの濃縮水と混合される。膜ろ過水槽16の膜ろ過水が逆洗水として用いられてもよい。
【0036】
本実施形態に係る膜ろ過システム1では、下記式4に示すように、発生させた次亜ハロゲン酸等のハロゲンオキソ酸がハロゲン化物イオン含有水に含まれるアンモニア態窒素の脱窒反応を起こす(脱窒工程)ため、膜による除濁とハロゲン化物イオン含有水の窒素除去がともに可能となる。
【0037】
[式4]
HXO + NH → NHX + H
3HXO + 2NH → 2N + 3HX + 3H
(ここで、Xは、Cl,Br,I等のハロゲンである。)
【0038】
特に、XがBrの場合、下記式5に示すような、発生させた次亜臭素酸がハロゲン化物イオン含有水に含まれるアンモニア態窒素の脱窒反応を起こしやすい。
【0039】
[式5]
HBrO + NH → NHBr + H
3HBrO + 2NH → 2N + 3HBr + 3H
【0040】
本実施形態に係る膜ろ過システム1において、オゾン発生装置26を備えるオゾン処理装置24等の過酸化物発生装置より生じる次亜臭素酸や臭素酸等の酸化殺菌力を有するハロゲンオキソ酸を含む過酸化物含有水とハロゲン化物イオン含有水との混合水を膜ろ過装置14の膜に供給することによって、有機物や生物等による膜のファウリングを抑制することができる。膜のファウリングを抑制するための次亜塩素酸ナトリウム等の薬品は用いなくてもよい。
【0041】
上記の通り、特許文献1の方法のような従来型の膜ろ過システムおよび膜ろ過方法では、アンモニア態窒素が十分に除去できていることを確認する手段がなく、例えば原水水質が変動した場合、アンモニア態窒素の除去が不十分になる可能性がある。
【0042】
本実施形態に係る膜ろ過システム1では、活性炭処理装置18(過酸化物分解工程)の前段において残留塩素測定装置11により残留酸化物濃度を測定することにより、アンモニア態窒素が十分に処理されていることを確認することができる。よって、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含むハロゲン化物イオン含有水について、安定したアンモニア態窒素の処理を行うことができ、水質が変動してもアンモニア態窒素の除去を十分に行うことができる。
【0043】
ハロゲン化物イオン含有水にアンモニア態窒素が含まれる場合には、オゾン処理装置等の過酸化物発生手段におけるハロゲンオキソ酸の発生量が以下で説明するブレークポイント法で必要とされる量より低い場合には、過酸化物含有水における残留ハロゲンは結合ハロゲンの形態で存在するため、残留ハロゲン濃度を全塩素の測定により算出すると、仮に残留ハロゲンとして検出されても、アンモニア態窒素の除去が不十分になると考えられる。
【0044】
本実施形態に係る膜ろ過システム1では、過酸化物分解手段である活性炭処理装置18の前段に設置された残留酸化物濃度測定手段である残留塩素測定装置11により残留酸化物濃度を測定して、残留酸化物濃度測定手段の測定値に基づいてオゾン処理装置24における過酸化物の発生量が制御される(制御工程)。過酸化物の発生量を制御してアンモニア態窒素のブレークポイント処理を行うことによって、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含むハロゲン化物イオン含有水について、アンモニア態窒素の除去を十分に行うことができ、安定した膜処理を行うことができる。
【0045】
ブレークポイント処理は、被処理水中のアンモニア態窒素の濃度に対して理論値より多めの酸化剤(過酸化物)を添加してアンモニア態窒素を分解、除去する方法である。図3のグラフは、アンモニアを含むアンモニア含有水にハロゲン系酸化剤として次亜塩素酸を添加していった場合の添加次亜塩素酸濃度(mg/L)に対する、遊離塩素と全塩素でそれぞれ測定した残留塩素濃度(mg/L)を示すグラフである。アンモニア含有水に次亜塩素酸を添加していくと、最初は結合塩素が形成されて次亜塩素酸の添加量に伴って残留塩素(全塩素)が増加するが、極大点までくると、残留塩素がクロラミン(結合塩素)の分解に使用されて減少し、極小点に達すると、再び次亜塩素酸の添加量に比例して残留塩素(遊離塩素)が増加する。この極小点はブレークポイントと呼ばれ、このブレークポイントでアンモニアがすべて消費されたことになる。したがって、ブレークポイントを超え、アンモニア態窒素の分解に必要な量の過酸化物を発生させることによって、アンモニア態窒素の除去を十分に行うことができる。残留酸化物濃度測定手段により測定された残留酸化物濃度に基づいて、オゾン処理装置24による過酸化物の発生量を制御することにより、ハロゲン化物イオン含有水の水質が変動してもアンモニア態窒素の除去を十分に行うことができる。
【0046】
残留酸化物濃度測定手段は、残留酸化物量を測定することができるものであればよく、特に制限はないが、全ハロゲン量(遊離ハロゲン量+結合ハロゲン量)および遊離ハロゲン量のうち少なくとも1つを測定することができるものであることが好ましく、全ハロゲン量と遊離ハロゲン量とをそれぞれ測定可能であるものであることがより好ましい。残留酸化物濃度測定手段は、例えば、残留塩素測定手段であり、残留塩素量を測定することができるものであればよく、特に制限はないが、全塩素量(遊離塩素量+結合塩素量)および遊離塩素量のうち少なくとも1つを測定することができるものであることが好ましく、全塩素量と遊離塩素量とをそれぞれ測定可能であるものであることがより好ましい。残留酸化物濃度測定手段としては、全ハロゲン量と遊離ハロゲン量、例えば全塩素量と遊離塩素量の両方を測定することができる測定装置を用いてもよいし、全ハロゲン量、例えば全塩素量を測定することができる測定装置と、遊離ハロゲン量、例えば遊離塩素量を測定することができる測定装置とを用いてもよい。残留酸化物濃度測定手段により、全ハロゲン量と遊離ハロゲン量とをそれぞれ測定し、測定した全ハロゲン量と遊離ハロゲン量との差が全ハロゲン量の20%以内になるように、過酸化物発生手段による過酸化物の発生量を制御することが好ましい。また、残留酸化物濃度測定手段により、全ハロゲン量と遊離ハロゲン量とをそれぞれ測定し、その測定値に基づいて算出される結合ハロゲン量が検出されない状態で、遊離ハロゲン量が所定の値以上になるように、過酸化物発生手段による過酸化物の発生量を制御することが好ましい。例えば、残留塩素測定手段により、全塩素量と遊離塩素量とをそれぞれ測定し、その測定値に基づいて、(全塩素量-遊離塩素量)として算出される結合塩素量が検出されない状態で、遊離塩素量が所定の値以上になるように、過酸化物発生手段による過酸化物の発生量を制御することが好ましい。ここで、「結合ハロゲン量(結合塩素量)が検出されない状態」とは、全ハロゲン量と遊離ハロゲン量との差が全ハロゲン量の20%以内のことであり、例えば、全塩素濃度と遊離塩素濃度の差が±20%以内のことをいう。
【0047】
残留塩素測定装置11の設置位置は、過酸化物分解手段の前段であればよく、配管56でもよいし、過酸化物含有水槽12や膜ろ過水槽16に設置されていてもよいし、配管42,44,46に設置されていてもよい。
【0048】
残留塩素測定手段による測定に基づいてブレークポイントを超えていると判断する方法としては、例えば、オゾンの添加とともに全塩素を継続的に測定(モニタリング)していき、極小点の観測によりブレークポイントを超えていると判断してもよいし、オゾンの添加とともに遊離塩素を継続的に測定して、遊離塩素の上昇の観測によりブレークポイントを超えていると判断してもよいし、オゾンの添加とともに全塩素および遊離塩素をともに継続的に測定して、全塩素の極小点の観測および遊離塩素の上昇の観測によりブレークポイントを超えていると判断してもよいし、オゾンのある添加量のときに全塩素および遊離塩素をともに測定して、全塩素量と遊離塩素量とにほとんど差が見られない場合(例えば、両者の測定値の差が20%以内である場合)に、ブレークポイントを超えていると判断してもよい。
【0049】
例えば、全塩素量と遊離塩素量との差が20%を超えた場合、オゾン処理装置24におけるオゾン発生装置26からのオゾン注入量を増やせばよい(例えば10%程度)。全塩素量と遊離塩素量との差が20%以内になったら、オゾン注入量を減らしてもよいし、そのままオゾン注入量を維持してもよい。この場合、残留塩素測定装置11の測定値に基づいて過酸化物の発生量を制御する制御手段として、オゾン発生装置26が機能してもよいし、オゾン発生装置26の出口のフローメータ60の値に応じて開閉度が調整されるバルブ61およびバルブ65等が機能してもよい。
【0050】
例えば、図示しない制御手段である制御装置と、残留塩素測定装置11、オゾン発生装置26とを、またはフローメータ60、バルブ61、バルブ65とをそれぞれ電気的接続等により接続し、残留塩素測定装置11の測定値をモニタリングし、オゾン処理装置24における過酸化物の発生量を制御してもよい。
【0051】
膜ろ過水中の次亜臭素酸等のハロゲンオキソ酸の濃度が高く、生態等に影響を及ぼすことが懸念されるため、膜ろ過装置14の後段に活性炭処理装置18等の過酸化物分解手段を設ける。膜ろ過装置14の後段に過酸化物分解手段を備えることにより、次亜臭素酸等のハロゲンオキソ酸による生態等への影響を低減することができる。このため、原水が養殖や水族館等の飼育水等である場合に、処理水を原水槽10へ返送しても、生物への影響を低減することができる。
【0052】
図1の例では、処理水の全てが原水槽10に返送されてハロゲン化物イオン含有水に添加されているが、処理水の少なくとも一部が原水槽10に返送されてハロゲン化物イオン含有水に添加されればよい。使用する水量を低減する等の観点から、処理水の全てが原水槽10に返送されることが好ましい。処理水の全てが原水槽10に返送される閉鎖循環系とすることにより、使用する水量を低減することができる等の利点がある。
【0053】
本発明の実施形態に係る膜ろ過システムの他の例の概略を図2に示し、その構成について説明する。
【0054】
膜ろ過システム3は、過酸化物発生手段として、オゾン発生装置26を備えるオゾン処理装置24と、膜ろ過手段として、限外ろ過膜または精密ろ過膜を有する膜ろ過装置14と、過酸化物を分解処理する過酸化物分解手段として、活性炭処理装置18とを備える。膜ろ過システム3は、原水槽10と、過酸化物含有水槽68と、膜ろ過水槽70と、処理水槽72とを備えてもよい。
【0055】
図2の膜ろ過システム3において、原水槽10の出口とオゾン処理装置24の入口とがポンプ74およびストレーナ38を介して配管84により接続され、オゾン処理装置24の出口と過酸化物含有水槽68の入口とが配管86により接続され、過酸化物含有水槽68の出口と膜ろ過装置14の入口とがポンプ76を介して配管88により接続され、膜ろ過装置14の透過水出口と膜ろ過水槽70の入口とが配管90により接続され、膜ろ過水槽70の出口と活性炭処理装置18の入口とがポンプ78を介して配管92により接続され、活性炭処理装置18の出口と処理水槽72の入口とが配管94により接続され、処理水槽72の出口と原水槽10とがポンプ80を介して返送配管96により接続されている。オゾン処理装置24の下部にはオゾン発生装置26がバルブ116を介して配管104により接続されている。配管104におけるバルブ116の下流側にはオゾンの流量を測定するフローメータ112が設置されている。オゾン処理装置24の上部の排オゾン出口には、排オゾンを排出する配管108が接続され、配管104におけるバルブ116の上流側から分岐した配管110がバルブ114を介して配管108に接続されている。オゾン処理装置24の上部側面には発生したスカム等を排出する配管106が接続されている。処理水槽72の下部と膜ろ過装置14の2次側とはポンプ82を介して配管98により接続されている。残留酸化物濃度測定手段として、配管86には残留塩素測定装置13が設置されている。
【0056】
本実施形態に係る膜ろ過方法および膜ろ過システム3の動作について説明する。
【0057】
原水槽10に貯留された、懸濁物質を含み、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含むハロゲン化物イオン含有水は、ポンプ74により配管84を通してオゾン処理装置24に供給される。必要に応じて配管84の途中にストレーナ38を設置し、ハロゲン化物イオン含有水中の比較的大きめの固形物が除去されてもよい。
【0058】
オゾン処理装置24には、一方で、オゾン発生装置26で発生させたオゾンが配管104を通して供給される。オゾン処理装置24において、上記式1に示すように、ハロゲン化物イオン含有水に含まれるハロゲン化物イオンとオゾンとの反応により、過酸化物である次亜ハロゲン酸(HXO)等のハロゲンオキソ酸が発生する(過酸化物発生工程)。発生した過酸化物により、アンモニア態窒素のブレークポイント処理が行われる。次亜ハロゲン酸等のハロゲンオキソ酸は酸化力を有し、有機物の酸化や殺菌等に効果がある。なお、排オゾンは、配管108を通して排出され、オゾン処理装置24において発生したスカム等は、配管106を通して排出される。オゾン発生装置26で発生させたオゾンのうちオゾン処理装置24に供給されない分は、配管104,110,108を通して排出される。すなわち、オゾン処理装置24に供給されるオゾンの量は、バルブ114,116の開閉度によって調整される。
【0059】
が塩化物イオンの場合、上記式2に示すように、ハロゲン化物イオン含有水に含まれる塩化物イオンとオゾンとの反応により、過酸化物である次亜塩素酸(HClO)等のハロゲンオキソ酸が発生する。
【0060】
また、Xが臭化物イオンの場合、上記式3に示すように、ハロゲン化物イオン含有水に含まれる臭化物イオンとオゾンとの反応により、過酸化物である次亜臭素酸(HBrO)等のハロゲンオキソ酸が発生する。
【0061】
過酸化物を発生させた過酸化物含有水は、配管86を通して必要に応じて過酸化物含有水槽68に貯留された後、ポンプ76により配管88を通して膜ろ過装置14に供給される。膜ろ過装置14において、過酸化物含有水中の懸濁物質、すなわち原水であるハロゲン化物イオン含有水に含まれていた懸濁物質が限外ろ過膜または精密ろ過膜を用いてろ過されて除去される(膜ろ過工程)。
【0062】
膜ろ過された透過水(膜ろ過水)は、配管90を通して必要に応じて膜ろ過水槽70に貯留された後、ポンプ78により配管92を通して活性炭処理装置18に供給される。活性炭処理装置18において、膜ろ過水中の過酸化物であるハロゲンオキソ酸が活性炭により分解処理され、ハロゲン化物イオンとなる(過酸化物分解工程)。膜ろ過装置14の濃縮水は、配管102を通して排出される。
【0063】
過酸化物が分解処理され、ハロゲン化物イオンを含む処理水は、配管94を通して必要に応じて処理水槽72に貯留された後、ポンプ80により返送配管96を通して原水槽10に返送され、ハロゲン化物イオン含有水に添加される(返送工程)。過酸化物分解手段により分解処理した処理水の少なくとも一部を返送してハロゲン化合物イオン含有水に添加する返送手段として、ポンプ80および返送配管96が機能する。
【0064】
膜ろ過装置14の洗浄が必要になった場合は、処理水の一部が逆洗水として処理水槽72からポンプ82により配管98を通して膜ろ過装置14の2次側から1次側に逆流されて、膜が洗浄されてもよい(逆洗工程)。逆洗排水は、配管100を通して排出される。膜ろ過水槽70の膜ろ過水が逆洗水として用いられてもよい。
【0065】
本実施形態に係る膜ろ過システム3では、上記式4に示すように、発生させた次亜ハロゲン酸等のハロゲンオキソ酸がハロゲン化物イオン含有水に含まれるアンモニア態窒素の脱窒反応を起こす(脱窒工程)ため、膜による除濁とハロゲン化物イオン含有水の窒素除去がともに可能となる。
【0066】
特に、XがBrの場合、上記式5に示すような、発生させた次亜臭素酸がハロゲン化物イオン含有水に含まれるアンモニア態窒素の脱窒反応を起こしやすい。
【0067】
本実施形態に係る膜ろ過システム3において、オゾン発生装置26を備えるオゾン処理装置24等の過酸化物発生装置より生じる次亜臭素酸や臭素酸等の酸化殺菌力を有するハロゲンオキソ酸を含むハロゲン化物イオン含有水を膜ろ過装置14の膜に供給することによって、有機物や生物等による膜のファウリングを抑制することができる。膜のファウリングを抑制するための次亜塩素酸ナトリウム等の薬品は用いなくてもよい。
【0068】
本実施形態に係る膜ろ過システム3では、活性炭処理装置18(過酸化物分解工程)の前段において残留塩素測定装置13により残留酸化物濃度を測定することにより、アンモニア態窒素が十分に処理されていることを確認することができる。よって、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含むハロゲン化物イオン含有水について、安定したアンモニア態窒素の処理を行うことができ、水質が変動してもアンモニア態窒素の除去を十分に行うことができる。
【0069】
本実施形態に係る膜ろ過システム3では、過酸化物分解手段である活性炭処理装置18の前段に設置された残留酸化物濃度測定手段である残留塩素測定装置13により残留酸化物濃度を測定して、残留酸化物濃度測定手段の測定値に基づいてオゾン処理装置24における過酸化物の発生量が制御される(制御工程)。過酸化物の発生量を制御してアンモニア態窒素のブレークポイント処理を行うことによって、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含むハロゲン化物イオン含有水について、アンモニア態窒素の除去を十分に行うことができ、安定した処理水質を確保することができる。
【0070】
残留塩素測定装置13の設置位置は、過酸化物分解手段の前段であればよく、配管86でもよいし、過酸化物含有水槽68や膜ろ過水槽70に設置されていてもよいし、配管88,90,92に設置されていてもよい。
【0071】
例えば、全塩素量と遊離塩素量との差が20%を超えた場合、オゾン処理装置24におけるオゾン発生装置26からのオゾン注入量を増やせばよい(例えば10%程度)。全塩素量と遊離塩素量との差が20%以内になったら、オゾン注入量を減らしてもよいし、そのままオゾン注入量を維持してもよい。この場合、残留塩素測定装置13の測定値に基づいて過酸化物の発生量を制御する制御手段として、オゾン発生装置26が機能してもよいし、オゾン発生装置26の出口のフローメータ112の値に応じて開閉度が調整されるバルブ114およびバルブ116等が機能してもよい。
【0072】
また、例えば、図示しない制御手段である制御装置と、残留塩素測定装置13、オゾン発生装置26とを、またはフローメータ112、バルブ114、バルブ116とをそれぞれ電気的接続等により接続し、残留塩素測定装置13の測定値をモニタリングし、オゾン処理装置24における過酸化物の発生量を制御してもよい。
【0073】
膜ろ過水中の次亜臭素酸等のハロゲンオキソ酸の濃度が高く、生態等に影響を及ぼすことが懸念されるため、膜ろ過装置14の後段に活性炭処理装置18等の過酸化物分解手段を設ける。膜ろ過装置14の後段に過酸化物分解手段を備えることにより、次亜臭素酸等のハロゲンオキソ酸による生態等への影響を低減することができる。このため、原水が養殖や水族館等の飼育水等である場合に、処理水を原水槽10へ返送しても、生物への影響を低減することができる。
【0074】
図2の例では、処理水の全てが原水槽10に返送されてハロゲン化物イオン含有水に添加されているが、処理水の少なくとも一部が原水槽10に返送されてハロゲン化物イオン含有水に添加されればよい。使用する水量を低減する等の観点から、処理水の全てが原水槽10に返送されることが好ましい。処理水の全てが原水槽10に返送される閉鎖循環系とすることにより、使用する水量を低減することができる等の利点がある。
【0075】
過酸化物発生手段としては、オゾン発生装置を備えるオゾン処理装置の他に、UV照射装置を備えたUV酸化装置等が挙げられる。処理性能等の観点から、オゾン発生装置を備えるオゾン処理装置が好ましい。
【0076】
膜ろ過装置14としては、限外ろ過膜(UF膜)または精密ろ過膜(MF膜)を有するものであればよく特に制限はない。
【0077】
過酸化物分解手段としては、活性炭を充填した活性炭充填塔等の活性炭処理装置18の他に、Pd担持担体、酸化チタン、白金等の過酸化物分解触媒を充填した充填塔等が挙げられ、コスト等の観点から活性炭充填塔等の活性炭処理装置が好ましい。また、過酸化物分解触媒を充填した充填塔への通水方向は、下向流と上向流のどちらでもよいが、過酸化物の分解率を高めるためには下向流が望ましい。
【0078】
本実施形態に係る膜ろ過システムおよび膜ろ過方法は、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含むハロゲン化物イオン含有水中の懸濁物質の除去に適用され、ハロゲン化物イオン含有水は海水であっても、淡水であってもよい。特に、アンモニア態窒素を含む海水の処理に適しており、魚類等の水中生物の養殖や水族館等の魚類等の水中生物の飼育水処理に用いられる閉鎖系循環処理により適している。すなわち、本実施形態に係る膜ろ過システムは、水中生物の飼育水の製造装置または処理装置として、好適に用いることができる。海水には臭化物イオンが通常含まれ、魚類等の水中生物からはアンモニア態窒素が通常排出される。アンモニア態窒素を硝化および脱窒しようとする場合、まず、好気性生物処理によりアンモニア態窒素を硝酸にした後、嫌気性生物処理により硝酸を窒素ガスへ還元して水中から窒素を除去するのが通常であった。このような生物処理を用いる場合、好気条件の硝化槽と嫌気条件の脱窒槽を必要とするため、広い設置スペースが必要である。それに対して、本実施形態に係る膜ろ過システムでは、硝化および脱窒を一つの装置(オゾン処理装置24)で行うことができるため、省スペース化が可能となる。
【0079】
オゾン処理装置24において、ハロゲン化物イオン含有水中のアンモニア態窒素の濃度(ppm)に対して、ハロゲン化物イオンの濃度が5~50倍、オゾンの注入率が2~20倍の濃度比となるように、ハロゲン化物塩およびオゾンのうち少なくとも1つの注入量を調整することが好ましく、ハロゲン化物イオンの濃度が5~25倍、オゾンの注入率が2~10倍の濃度比となるように、ハロゲン化物塩およびオゾンのうち少なくとも1つの注入量を調整することがより好ましい。これは、ハロゲン化物イオン含有水中のアンモニア態窒素の濃度に対して、次亜臭素酸等のハロゲンオキソ酸の量比を1.5モル以上とするために、処理に用いるオゾンの注入率を最適化するものである。オゾン注入率の算出式を下記式6に示す。
【0080】
[式6]
オゾン注入率[mg-O/L] =
オゾン発生装置出口オゾン濃度[mg-O/NL]×(オゾン流量[NL/h]/原水流量[L/h])
【0081】
オゾンの注入率が過剰になると、排オゾン量が多くなり、排オゾンの除去装置が大型化してしまう可能性がある。また、ハロゲン化物イオン含有水中のアンモニア態窒素濃度が上昇した場合は、オゾン注入率を上げるとともに、臭化物塩等のハロゲン化物塩等をハロゲン化物イオン含有水に添加することで処理することができる。ハロゲン化物イオン含有水中のアンモニア態窒素濃度が低下した場合は、オゾン注入率を下げればよい。
【0082】
ハロゲン化物塩としては、塩化ナトリウム等の塩化物塩、臭化ナトリウム等の臭化物塩等が挙げられる。
【0083】
海水の飼育水中のアンモニア態窒素の濃度は通常1ppm以下であり、臭化物イオンの濃度は通常50~60ppm程度、塩化物イオンの濃度は通常18,000~22,000ppm程度である。本実施形態に係る膜ろ過システムおよび膜ろ過方法は、アンモニア態窒素の濃度が10ppm以下程度であり、臭化物イオンの濃度が50ppm~60ppm程度のハロゲン化物イオン含有水の処理に好適に適用することができる。
【実施例1】
【0084】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
<実施例1~3、比較例1,2>
図1に示す膜ろ過システムを用いて、魚の飼育水(アンモニア態窒素濃度:0.1~0.5ppm、臭化物イオン濃度:60~65ppm)について、オゾン注入量を変化させて(実施例1;アンモニア態窒素(NH-N):オゾン(O)=1:1.5(モル比)、実施例2;1:3、実施例3;1:4.5、比較例1;1:0.6、比較例2;1:1)、遊離塩素濃度、全塩素濃度、アンモニア態窒素濃度を測定した。なお、遊離塩素濃度、全塩素濃度は、HACH社の多項目水質分析計DR/4000を用いて、DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法により測定した。アンモニア態窒素濃度は、ポータブル吸光光度計(HACH社製、DR1900)を用いて測定した。実験結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1からわかるように、全塩素量と遊離塩素量との差が全塩素量の20%以内になるようにオゾンを注入することにより、アンモニア態窒素が十分に処理されていた。
【0088】
このように、実施例の方法により、ハロゲン化物イオンおよびアンモニア態窒素を含むハロゲン化物イオン含有水について、安定したアンモニア態窒素の処理を行うことができることがわかった。
【符号の説明】
【0089】
1,3 膜ろ過システム、10 原水槽、11,13 残留塩素測定装置、12,68 過酸化物含有水槽、14 膜ろ過装置、16,70 膜ろ過水槽、18 活性炭処理装置、20,72 処理水槽、22 濃縮水槽、24 オゾン処理装置、26 オゾン発生装置、28,30,32,34,36,74,76,78,80,82 ポンプ、38 ストレーナ、40,42,44,46,48,52,54,56,58,62,63,64,66,84,86,88,90,92,94,98,100,102,104,106,108,110 配管、50,96 返送配管、60,112 フローメータ、61,65,114,116 バルブ。
図1
図2
図3