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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】傾斜センサ
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/06 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
G01C9/06 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018168788
(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公開番号】P2020041888
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】植田 敏嗣
(72)【発明者】
【氏名】播磨 幸一
(72)【発明者】
【氏名】柏木 昇
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕哉
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-084327(JP,A)
【文献】特開2017-090069(JP,A)
【文献】特開2005-169541(JP,A)
【文献】特開2014-178218(JP,A)
【文献】特開2011-038986(JP,A)
【文献】特開2006-145505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 9/06
G01C 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極と、可動電極とを具備するセンサ基板を有し、
前記可動電極の変位による静電容量変化に基づいて、傾斜が検知可能とされており、
前記固定電極は、複数の電極指を備えた第1の櫛歯状電極を有しており、前記可動電極は、複数の電極指を備えた第2の櫛歯状電極を有しており、
前記第2の櫛歯状電極に対し前記センサ基板の厚み方向への揺動範囲を規制する規制部材を備え
前記規制部材は、前記センサ基板を支持する固定基板、及び前記センサ基板を覆う蓋体であり、
前記固定基板は収容凹部を有し、前記センサ基板は、前記収容凹部の底面側の内部に配置されて、前記第2の櫛歯状電極と前記収容凹部の底面との間に前記第2の櫛歯状電極の厚みよりも小さいギャップが形成され、前記収容凹部の開口側に、前記蓋体が配置されて開口が塞がれるとともに、前記第2の櫛歯状電極と前記蓋体との間に前記第2の櫛歯状電極の厚みよりも小さいギャップが形成されることを特徴とする傾斜センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電容量変化に基づいて傾斜を検知可能な傾斜センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、固定電極と可動電極とを有し、可動電極の変位に伴う静電容量変化に基づいて傾斜を検知する傾斜センサが開示されている。固定電極及び可動電極は、櫛歯状電極で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-145505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、傾斜センサに強い衝撃が加わったとき、可動電極を構成する櫛歯状電極が厚さ方向に大きく揺動し、可動電極と固定電極とが厚さ方向に重なる問題があった。
【0005】
このように、可動電極と固定電極とが厚さ方向に重なると、元の状態に戻らず、傾斜の検知が不能になる。
【0006】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、特に、可動電極を構成する櫛歯状電極の揺動範囲を規制できるようにした傾斜センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の傾斜センサは、固定電極と、可動電極とを具備するセンサ基板を有し、前記可動電極の変位による静電容量変化に基づいて、傾斜が検知可能とされており、前記固定電極は、複数の電極指を備えた第1の櫛歯状電極を有しており、前記可動電極は、複数の電極指を備えた第2の櫛歯状電極を有しており、前記第2の櫛歯状電極に対し前記センサ基板の厚み方向への揺動範囲を規制する規制部材を備え、前記規制部材は、前記センサ基板を支持する固定基板、及び前記センサ基板を覆う蓋体であり、前記固定基板は収容凹部を有し、前記センサ基板は、前記収容凹部の底面側の内部に配置されて、前記第2の櫛歯状電極と前記収容凹部の底面との間に前記第2の櫛歯状電極の厚みよりも小さいギャップが形成され、前記収容凹部の開口側に、前記蓋体が配置されて開口が塞がれるとともに、前記第2の櫛歯状電極と前記蓋体との間に前記第2の櫛歯状電極の厚みよりも小さいギャップが形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の傾斜センサによれば、可動電極を構成する櫛歯状電極の揺動範囲を規制することができ、耐衝撃性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の傾斜センサの平面図である。
図2】本実施形態の傾斜センサの断面図である。
図3】本実施形態の傾斜センサを構成する機能部の拡大模式図である。
図4】本実施形態の電極接続部の拡大断面図である。
図5】本実施形態のセンサ基板に形成されたスリット部分の拡大斜視図である。
図6】本実施形態の傾斜センサに設けられた支持部の拡大断面図である。
図7】他の実施形態の傾斜センサの平面模式図である。
図8図8Aは、櫛歯状電極の通常状態を示す断面模式図である。図8Bは、比較例における問題点を説明するための櫛歯状電極の断面模式図である。図8Cは、本実施形態において規制部材を設けたことの効果を説明するための櫛歯状電極及び規制部材の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
図1は、本実施形態の傾斜センサの平面図である。図2は、図1に示す傾斜センサをA―A線に沿って厚さ方向に切断し矢印方向から見た断面図である。図3は、本実施形態の傾斜センサを構成する機能部の拡大模式図である。
【0012】
図1に示す傾斜センサ1は、センサ基板2と、センサ基板2を支持する固定基板3と、を有して構成される。
【0013】
本実施形態では、センサ基板2の材質を限定するものではないが、水晶板であることが好ましい。なお、水晶板は、三方晶系の単結晶である。
【0014】
図1に示すように、センサ基板2には、機能部4が設けられている。機能部4は、センサ基板2をエッチング加工して図1図3の輪郭に沿ってスリットを入れることで形成できる。この実施形態では、機能部4は、2つであるが、数を限定するものではない。ただし、センサ基板2として三方晶系の水晶板を用いることが好ましく、水晶板に対する良好なエッチング加工性を実現するために、機能部4の数は、1つ、2つ、或いは、図7のように3つであることが好ましい。
【0015】
機能部4の構造を図3の拡大模式図を用いて説明する。なお、図3は、機能部4を、固定基板3側から見た裏面図である。機能部4は、固定電極5と、可動電極6とを具備する。固定電極5は、図3の図示左側に位置する左固定電極5aと、図3の図示右側に位置する右固定電極5bとを有して構成される。図3に示すように、左固定電極5a及び右固定電極5bは、夫々、複数本の固定電極指5a1、5b1がX方向に間隔を空けて並設された櫛歯状電極である。各固定電極指5a1、5b1は、X方向に直交するY方向に沿って幅細形状で形成されている。なお、以下では、固定電極指5a1、5b1を合わせて、第1の櫛歯状電極E1と称する。
【0016】
図3に示す各固定電極指5a1、5b1に重ねて、導電薄膜が形成されている。導電薄膜は、例えば、CrとAuのスパッタ膜である。なお、この導電薄膜は、各固定電極指5a1、5b1の少なくとも側面に形成されている。或いは、導電薄膜は、各固定電極指5a1、5b1の表面、裏面及び側面の全周にわたって形成されている。
【0017】
図3に示すように、左固定電極5aには、左固定電極指5a1に積層された導電薄膜と一体となって左配線層7aが、形成されている。左配線層7aは、可動電極6を構成する左錘部6aの側方に沿って延出し、左固定電極指5a1の配置側とは反対側に引き出されている。
【0018】
図3に示すように、右固定電極5bでは、右固定電極指5b1に積層された導電薄膜と一体となって右配線層7bが、形成されている。右配線層7bは、可動電極6を構成する右錘部6bの側方に沿って延出し、右固定電極指5b1の配置側とは反対側に引き出されている。
【0019】
図3に示すように、可動電極6は、左錘部6a、右錘部6b及び、左錘部6aと右錘部6bとを繋ぐ共通電極6c、を有して構成される。図3に示すように、共通電極6cと左錘部6a、及び共通電極6cと右錘部6bは、幅細のばね部6dにより繋がれている。なお、本実施形態では、共通電極6cもばね部6dと同様に幅細で形成されている。傾斜角の印加により、左錘部6a及び右錘部6bが、ばね部6d及び共通電極6cを介してX方向に変位する。なお、共通電極6cは、変位不能な太さで形成されてもよく、その場合、左錘部6a及び右錘部6bが、ばね部6dを介してX方向に変位する。
【0020】
図3に示すように、左錘部6aには、複数本の左可動電極指6a1がX方向に間隔を空けて形成されており、各左可動電極指6a1は、左固定電極指5a1とX方向に交互に間隔を空けながら配列されている。すなわち、各左可動電極指6a1は、左固定電極指5a1の間に位置する櫛歯状電極である。
【0021】
図3に示すように、右錘部6bには、複数本の右可動電極指6b1がX方向に間隔を空けて形成されており、各右可動電極指6b1は、右固定電極指5b1とX方向に交互に間隔を空けながら配列されている。すなわち、各右可動電極指6b1は、右固定電極指5b1の間に位置する櫛歯状電極である。
【0022】
以下では、左錘部6aの左可動電極指6a1及び右錘部6bの右可動電極指6b1を合わせて、第2の櫛歯状電極E2と称する。
【0023】
導電薄膜は、各可動電極指6a1、6b1からばね部6dを介して共通電極6cに重ねて形成される。なお、この導電薄膜は、各可動電極指6a1、6b1の少なくとも側面に形成され、或いは、表面、裏面及び側面の全周にわたって形成される。導電薄膜は、ばね部6d及び共通電極6cの各表面、各裏面及び各側面にわたって形成されることが好ましい。
【0024】
図3に示すように、共通電極6cから延出する中央配線層7c、左固定電極5aから延出する左配線層7a、及び右固定電極5bから延出する右配線層7bが、機能部4から離れる方向に延出している。
【0025】
上記したように、傾斜角の印加により、左錘部6a及び右錘部6bが、X方向に変位すると、左固定電極指5a1と、左可動電極指6a1との間の静電容量、及び、右固定電極指5b1と、右可動電極指6b1との間の静電容量が夫々変動する。このとき生じる、左側と右側との静電容量差に基づいて、傾斜を検知することができる。
【0026】
図3に示す実施形態では、左固定電極指5a1と左可動電極指6a1との間の間隔(スリット幅)、及び右固定電極指5b1と右可動電極指6b1との間の間隔(スリット幅)が略一定とされている。ただし、左側と右側との静電容量の差動の導出の仕方により、間隔を種々変更することができ、例えば、左固定電極指5a1及び右固定電極指5b1の左右ギャップを非対称とすることができる。
【0027】
図1に示すように、左配線層7aは、第1の左配線層7a1と第2の左配線層7a2を備えており、第1の左配線層7a1は、センサ基板2の下面側(固定基板3と対向する側)に設けられ、第2の左配線層7a2は、センサ基板2の上面側に形成されている。
【0028】
図5に示すように、左錘部6aの周囲にスリット8(図3も参照されたい)が形成されており、このスリット8によりセンサ基板2から左錘部6aが切り出されている。なお、右錘部6b、共通電極6c、及び固定電極5についても同様である。
【0029】
図5に示すように、スリット8の側面に沿って導電薄膜9が形成されている。導電薄膜9は、センサ基板2の表面2aや裏面2bにも延出しており、センサ基板2の裏面2bに一部延出した導電薄膜9を、図3では、左配線層7aとして表した。
【0030】
図5に示すように、センサ基板2の裏面2bに形成された左配線層7aは、上記した第1の左配線層7a1に該当し、第1の左配線層7a1から引き出されて第1の左電極パッド10aが形成されている。また、図5に示すように、センサ基板2の表面2aに形成された左配線層7aは、上記した第2の左配線層7a2に該当し、第2の左配線層7a2から引き出されて第2の左電極パッド11aが形成されている。
【0031】
図1に示すように、右配線層7bは、第1の右配線層7b1と第2の右配線層7b2を備えている。そして、センサ基板2の裏面2bに形成された右配線層7bは、第1の右配線層7b1に該当し、第1の右配線層7b1から引き出されて第1の右電極パッド10bが形成されている。また、センサ基板2の表面2aに形成された右配線層7bは、上記した第2の右配線層7b2に該当し、第2の右配線層7b2から引き出されて第2の右電極パッド11bが形成されている。
【0032】
図1に示すように、中央配線層7cは、第1の中央配線層7c1と第2の中央配線層7c2を備えている。そして、センサ基板2の裏面2bに形成された中央配線層7cは、第1の中央配線層7c1に該当し、第1の中央配線層7c1から引き出されて第1の中央電極パッド10cが形成されている。また、センサ基板2の表面2aに形成された中央配線層7cは、上記した第2の中央配線層7c2に該当し、第2の中央配線層7c2から引き出されて第2の中央電極パッド11cが形成されている。
【0033】
図1に示すように、センサ基板2は、横方向aに延びる辺と、横方向aに対して直交する縦方向bに延びる辺を有する矩形状の平面を備える。図1に示す実施形態では、センサ基板2は、横方向aの長さのほうが、縦方向bの長さよりも長く形成されている。
【0034】
図1に示すように、長さの長い横方向aの中央に位置する中央線cの左右に、夫々、一つずつ機能部4が配置されている。各機能部4は、横方向a及び縦方向bから傾く方向に配置されている。ここで、「傾く」とは、図3を示して詳述した各電極指の延出方向が、縦方向b或いは横方向aから傾いた状態を指す。一例であるが、左右の機能部4は夫々、中央線cに対して60°ずつ傾いており、左右の機能部4は、120°間隔で配置されている。図7に示すように、3つの機能部4を有する場合も、各機能部4を、120°間隔で配置することができる。
【0035】
図1に示すように、左右の機能部4には夫々、3つずつ第1の電極パッド10a~10cが電気的に接続されている。図1に示すように、左側の機能部4と電気的に接続された3つの電極パッド10a~10cは、中央線cよりもやや左側にて縦方向bに間隔を空けて一列に配列されている。また、図1に示すように、右側の機能部4と電気的に接続された3つの電極パッド10a~10cは、中央線cよりもやや右側にて縦方向bに間隔を空けて一列配列されている。このように、6つの電極パッド10a~10cは、中央線c付近に集約して配置されている。また、第2の電極パッド11a~11cも各機能部4から中央線c側に配置されているが、第1の電極パッド10a~10cに比べて中央線cからやや離れた位置に配列されている。
【0036】
図1に示すように、左右の機能部4及び各電極パッド10a~10c、11a~11cは、中央線cを対称軸として線対称配置とされている。
【0037】
次に、固定基板3について説明する。本実施形態において、限定されるものではないが、固定基板3は、例えば、多層回路基板(LTCC基板)である。LTCC基板は、導体抵抗の小さいAgやCuを内層導体として用いて多層化されている。
【0038】
図2に示すように、固定基板3には、有底の収容凹部3aが形成されている。この収容凹部3aに、上記したセンサ基板2が配置される。
【0039】
図2に示すように、固定基板3に形成された収容凹部3aは、2段で形成されており、収容凹部3aのうち、底面側の1段目には、センサ基板2が収容される。段差面3bを介した2段目には、蓋体12が配置される。図2に示すように、蓋体12は、段差面3bに、接着層13を介して接合されている。本実施形態において、限定するものではないが、蓋体12は、例えば、ガラス基板である。
【0040】
図2に示すように、センサ基板2と蓋体12との間には、第1のギャップG1が設けられている。また、センサ基板2と固定基板3との間には、第2のギャップG2が設けられている。また、センサ基板2の厚みは、tである。ここで、第1のギャップG1及び第2のギャップG2は、いずれも、センサ基板2の厚みtより小さい。
【0041】
ここで、センサ基板2の厚みは、第2の櫛歯状電極E2の厚みと同じであると見做すことができる。ただし、第1の櫛歯状電極E1と第2の櫛歯状電極E2との厚みが異なる等、センサ基板2の厚みが一様でない場合は、上記したギャップG1、G2や厚みtは、第2の櫛歯状電極E2を基準に規定される。すなわち、第1のギャップG1は、第2の櫛歯状電極E2と蓋体12との間の間隔で規定される。第2のギャップG2は、第2の櫛歯状電極E2と固定基板3との間の間隔で規定される。厚みtは、第2の櫛歯状電極E2の厚みで規定される。
【0042】
図2に示すように、固定基板3の表面(センサ基板2と対向する側の面)3cには、複数の電極接続部14を含む接続構造部15が形成されている。なお、図1では、電極接続部14は、各第1の電極パッド10a~10cの下に重なり見えていないため、図1には符号14を図示していない。以下、接続構造部15について、図4を用いて説明する。
【0043】
図4に示すように、固定基板3の表面3cには、電極配線層16a~16cが形成されている。なお、図4には、電極配線層16aが図示されている。この実施形態では、電極配線層16a~16cは、図1に示すように、全部で6つ設けられている。
【0044】
図1に示すように、3つの電極配線層16a~16cは、中央線cよりも左側の領域であって、縦方向bに間隔を空けて一列に形成されている。残り3つの電極配線層16a~16cは、中央線cよりも右側の領域であって、縦方向bに間隔を空けて一列に形成されている。各電極配線層16a~16cは、中央線cを対称軸として左右対称に形成されている。
【0045】
各電極配線層16a~16cは、LTCC基板の内層導体と電気的に接続されている。
【0046】
図4に示すように、固定基板3の表面3cに形成された電極配線層16a~16c上から固定基板3上に重ねて絶縁保護層17が形成されている。図1に示すように、絶縁保護層17は、例えば、略矩形状で形成されているが、形状を限定するものではない。また、絶縁保護層17の材質は、電気絶縁材料であれば特に問うものではなく、既存材料を使用することができる。
【0047】
図4に示すように、絶縁保護層17には、センサ基板2側の第1の電極パッド10a~10cと対向する位置に複数の貫通孔17aが形成されている。各貫通孔17aからは夫々、電極配線層16a~16cの先端部が露出している。
【0048】
そして、図4に示すように、各貫通孔17a内に電極接続部14が形成され、各電極接続部14と、各電極配線層16a~16cとが電気的に接続されている。電極接続部14は、例えば、はんだ層である。はんだ層は、例えば、AuSnはんだである。また、電極配線層16a~16cは、例えば、Ag配線である。
【0049】
図2に示すように、センサ基板2の各第1の電極パッド10a~10c(符号10b、10cは不図示)と、固定基板3の電極接続部14とが電気的に接合される。これにより、センサ基板2は、固定基板3の上方に第2のギャップG2を有した状態で固定支持される。
【0050】
なお、センサ基板2を、固定基板3上に安定して支持するために、図1及び図2に示すように、センサ基板2と固定基板3との間に、支持部19を設けることが好ましい。支持部19は、センサ基板2とは固定されておらず、センサ基板2を支えているに過ぎない。支持部19とセンサ基板2を固定すると、その接合により応力が発生するため、センサ基板2に歪みが生じる等の不都合が生じる恐れがある。また、センサ基板2を支える箇所も、図1に示すように、機能部4の固定電極の外側部分であって、可動電極の邪魔にならない位置に配置される。支持部19は、機能部4の外側に設けることが好ましく、更に、センサ基板2の外周部の一部に、設けることがより好ましい。本実施形態において、支持部19の形状を限定するものではないが、図1に示すように、ドット状とすることが、応力集中を緩和でき、固定基板3とセンサ基板2との間の接合安定性を良好なものにできて好ましい。
【0051】
また、支持部19は、センサ基板2とは固定されておらず、センサ基板2を支えているに過ぎない。また、センサ基板2を支える箇所も、図1に示すように、機能部4の固定電極の外側部分であって、可動電極の邪魔にならない位置に配置される。
【0052】
また、本実施形態において、支持部19の材質を限定するものではないが、はんだ層を用いて形成することができる。例えば、支持部19は、図6に示すように、下地層19aとはんだ層19bとの積層構造で形成される。例えば、下地層19aは、図4に示す電極配線層16a~16cと同じ材質で形成され、はんだ層19bは、電極接続部14と同じ材質で形成される。
【0053】
ところで、傾斜センサ1に、略上下方向(傾斜センサ1の厚み方向)に強い衝撃が加わると、第2の櫛歯状電極E2が、略上下方向に大きく揺動し、第2の櫛歯状電極E2が、第1の櫛歯状電極E1の表面に乗ってしまう(厚み方向に重なる)ことがあった。
【0054】
図8Aは、櫛歯状電極の通常の状態、すなわち、衝撃が傾斜センサ1に作用せず、櫛歯状電極の揺動が無い状態を示す。
【0055】
図8Bは、比較例である。比較例には、センサ基板2の上下に、第2の櫛歯状電極E2の略上下方向への揺動を規制する規制部材が設けられていない。図8Bに示すように、傾斜センサ1に衝撃が加わると、第2の櫛歯状電極E2である可動電極指6a1、6b1や、共通電極6c、ばね部6dが、略上下方向に大きく揺動し、第2の櫛歯状電極E2が、第1の櫛歯状電極E1に乗り上げてしまう。このように、第1の櫛歯状電極E1と第2の櫛歯状電極E2とが厚み方向で重なってしまうと、互いに吸着し、元の状態に戻らなくなる。このため、傾斜の検知が不能になる。
【0056】
そこで、本実施形態では、センサ基板2の第2の櫛歯状電極E2に対し、センサ基板2の厚み方向(すなわち、上下方向)への揺動範囲を規制する規制部材を設けた。具体的には、センサ基板2を覆う蓋体12を規制部材とした。あるいは、センサ基板2を支持する固定基板3を規制部材とした。本実施形態では、蓋体12及び固定基板2の一方、或いは双方を規制部材とすることができる。
【0057】
図2に示すように、規制部材として蓋体12を設けたことで、図8Cに示すように、第2の櫛歯状電極E2が、第1の櫛歯状電極E1よりも上方に揺動しても、第2の櫛歯状電極E2の揺動範囲を規制することができ、第2の櫛歯状電極E2が、第1の櫛歯状電極E1と厚み方向で重なる不具合を抑制できる。よって、耐衝撃性を向上させることができる。
【0058】
また、センサ基板2を支持する固定基板3を規制部材とすることができ、これにより、図8Cに示すように、第2の櫛歯状電極E2が、第1の櫛歯状電極E1よりも下方に揺動しても、第2の櫛歯状電極E2の揺動範囲を規制することができ、第2の櫛歯状電極E2が、第1の櫛歯状電極E1と厚み方向で重なる不具合を抑制できる。よって、耐衝撃性を向上させることができる。
【0059】
図8Cに示すように、第2の櫛歯状電極E2が、共通電極6cを回転中心として斜めに傾くように揺動する場合は、固定基板3或いは蓋体12のどちらか一方を規制部材として設けることで、第2の櫛歯状電極E2が、第1の櫛歯状電極E1に乗り上げる不具合を極力抑制することができる。ただし、揺動モードによっては、共通電極6cを中心として左右の第2の櫛歯状電極E2が同じ方向に向けて揺動する場合もあるため、センサ基板2の上下に、規制部材として作用する固定電極3と蓋体12とを設けることが、耐衝撃性を安定して向上させることができ好ましい。
【0060】
本実施形態では、第2の櫛歯状電極E2の厚みはtであり、蓋体12(規制部材)と、第2の櫛歯状電極E2との間に、第1のギャップG1が設けられている。そして、厚みt>第1のギャップG1との関係が成り立っている。これにより、第2の櫛歯状電極E2の厚みtを越えて、第2の櫛歯状電極E2が第1の櫛歯状電極E1の表面に重なることを確実に防止できる。
【0061】
また、本実施形態では、第2の櫛歯状電極E2と固定基板3との間に、第2のギャップG2が設けられており、厚みt>第2のギャップG2との関係が成り立っている。これにより、第2の櫛歯状電極E2の厚みtを越えて、第2の櫛歯状電極E2が第1の櫛歯状電極E1の裏面に重なることを確実に防止できる。
【0062】
本実施形態では、センサ基板2を覆う側に、規制部材として蓋体12を用いたが、蓋体12でなくてもよい。すなわち、規制部材は、少なくとも、第2の櫛歯状電極E2と対向する位置に存在すればよい。ただし、蓋体12を用いて、センサ基板2の上方全体を覆うことで、確実かつ容易に耐衝撃性に優れた傾斜センサ1とすることができる。
【0063】
また、本実施形態では、図2に示すように、固定基板3は、収容凹部3aを備え、センサ基板2は、収容凹部3a内に配置される。そして、収容凹部3aの開口が、蓋体12で閉じられた構造とされている。これにより、ギャップG1、G2を簡単且つ安定して調整できる。また、規制部材としての蓋体12を適切に固定支持できる。また、収容凹部3aの開口が蓋体12で閉じられることで、外部の塵埃がセンサ基板2に及ぶことがなく、傾斜の検知精度を安定化でき、長寿命を実現できる。
【0064】
本実施形態では、第1のギャップG1の大きさと第2のギャップG2の大きさとを変えることもできる。例えば、使用用途により、衝撃の加わる方向が決まっている場合、衝撃により可動電極指6a1、6b1が大きく変動する側のギャップを、他方のギャップより狭くすることができる。ただし、図2に示すように、第1のギャップG1の大きさと第2のギャップG2の大きさを同程度とすることで、衝撃が上下どちら方向に印加されても、第2の櫛歯状電極E2が、第1の櫛歯状電極E1の表面や裏面に乗ってしまう不具合を適切に防止することが可能である。
【0065】
ギャップG1、G2の大きさを限定するものではないが、本実施形態では、ギャップG1、G2は、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。また、ギャップG1、G2は、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましい。ギャップG1、G2は小さすぎても、衝撃が加わったときに、第2の櫛歯状電極E2が強く固定基板3や蓋体12に衝突するため、ギャップG1、G2は適度な大きさを有することが好ましい。一例であるが、第1のギャップG1、第2のギャップG2及びセンサ基板2の厚みtを合わせて200μm程度となるように調整する。このとき、センサ基板2の厚みtは100μm程度であり、第1のギャップG1及び第2のギャップG2は夫々50μm程度に設定される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の傾斜センサは、耐衝撃性に優れており、良好な耐環境性、及び耐久性を有する。したがって、本発明の傾斜センサを様々な使用用途に適用できる。例えば、土木や、建築現場等での傾斜角の測定、工場内で製造される製品の水平度検査等に好ましく適用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 :傾斜センサ
2 :センサ基板
3 :固定基板
3a :収容凹部
3b :段差面
4 :機能部
5 :固定電極
5a :左固定電極
5a1 :左固定電極指
5b :右固定電極
5b1 :右固定電極指
6 :可動電極
6a :左錘部
6a1 :左可動電極指
6b :右錘部
6b1 :右可動電極指
6c :共通電極
6d :ばね部
7a :左配線層
7a1 :第1の左配線層
7a2 :第2の左配線層
7b :右配線層
7b1 :第1の右配線層
7b2 :第2の右配線層
7c :中央配線層
7c1 :第1の中央配線層
7c2 :第2の中央配線層
8 :スリット
9 :導電薄膜
10a~10c :第1の電極パッド
11a~11c :第2の電極パッド
12 :蓋体
13 :接着層
14 :電極接続部
15 :接続構造部
16a~16c :電極配線層
17 :絶縁保護層
17a :貫通孔
19 :支持部
19a :下地層
19b :はんだ層
E1 :第1の櫛歯状電極
E2 :第1の櫛歯状電極
G1 :第1のギャップ
G2 :第2のギャップ
a :横方向
b :縦方向
c :中央線
t :厚み




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8