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  • 特許-眼鏡レンズの製造装置および製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】眼鏡レンズの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 13/00 20060101AFI20230118BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20230118BHJP
   B65H 35/07 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
G02C13/00
G02C7/02
B65H35/07 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018186544
(22)【出願日】2018-10-01
(65)【公開番号】P2020056871
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】寒川 正彦
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-201479(JP,A)
【文献】特開2006-178185(JP,A)
【文献】特開平05-132175(JP,A)
【文献】特開2013-227108(JP,A)
【文献】特開2005-141162(JP,A)
【文献】米国特許第05114740(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 ― 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ部材に対してテープ部材を貼り付けて眼鏡レンズを製造する装置であって、
巻物状に巻かれた前記テープ部材を引っ張り状態とすることにより前記テープ部材を台紙部材から剥離する剥離機構と、
剥離された前記テープ部材を接触式にて除電する除電機構と、
除電された前記テープ部材を前記レンズ部材の面に貼り付ける貼付機構であって前記レンズ部材を保持するレンズホルダを有する貼付機構と、
剥離された前記テープ部材を前記貼付機構に搬送する搬送機構と、
を備え
前記除電機構は、前記剥離機構と前記貼付機構との間に設けられ、
空気を吹き付ける方式の除電機構は備えず、
天地方向の天の方向を上方、地の方向を下方とするとき、
引っ張り状態の前記テープ部材であって剥離された状態の前記テープ部材の上方に前記除電機構が配置され、
引っ張り状態の前記テープ部材であって剥離された状態の前記テープ部材の下方に前記レンズホルダが配置され、
前記除電機構は除電ブラシまたは除電不織物であり、
前記除電機構が吊り下げて配置され、且つ、前記除電機構の下端が前記テープ部材の進行方向に対して斜めに接触する際に前記除電機構の上端から下端に延在する方向が前記テープ部材の進行方向に対して鋭角または鈍角である、眼鏡レンズの製造装置。
【請求項2】
前記除電機構は除電不織物であり、
前記除電機構は、前記テープ部材と接触する部分に切り込みを有する、請求項に記載の眼鏡レンズの製造装置。
【請求項3】
除電された前記テープ部材を切り取る切取機構を更に備えた、請求項1または2に記載の眼鏡レンズの製造装置。
【請求項4】
引っ張り状態の前記テープ部材であって剥離された状態の前記テープ部材の下方に、前記搬送機構の一部である貼付前搬送ローラーが配置され、
前記除電機構が前記テープ部材と接触する部分と、前記搬送機構の一部である貼付前搬送ローラーが前記テープ部材と接触する部分とは対向しない、請求項1~3のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造装置。
【請求項5】
レンズ部材に対してテープ部材を貼り付けて眼鏡レンズを製造する方法であって、
巻物状に巻かれた前記テープ部材を引っ張り状態とすることにより前記テープ部材を台紙部材から剥離する剥離工程と、
剥離された前記テープ部材を搬送する搬送工程と、
前記搬送工程中の剥離された前記テープ部材を除電機構を用いて接触式にて除電する除電工程と、
除電された前記テープ部材を前記レンズ部材の面に貼り付ける貼付工程と、
除電された前記テープ部材を切り取る切取工程と、
を有し、
空気を吹き付ける方式の除電工程は有さず、
天地方向の天の方向を上方、地の方向を下方とするとき、
引っ張り状態の前記テープ部材であって剥離された状態の前記テープ部材の上方に前記除電機構を配置し、
引っ張り状態の前記テープ部材であって剥離された状態の前記テープ部材の下方に前記レンズ部材を配置し、
前記除電機構は除電ブラシまたは除電不織物であり、
前記除電機構を吊り下げて配置し、且つ、前記除電機構の下端を前記テープ部材の進行方向に対して斜めに接触させる際に前記除電機構の上端から下端に延在する方向を前記テープ部材の進行方向に対して鋭角または鈍角とする、眼鏡レンズの製造方法。
【請求項6】
前記剥離工程の前では、樹脂製の長尺な前記テープ部材と、樹脂製の長尺な台紙部材とが、テープ部材の片面に設けられた粘着層を介して互いに貼り付き、巻物状に巻かれている、請求項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ部材に対してテープ部材を貼り付けて眼鏡レンズを製造する装置(いわゆる貼付装置)が知られている。この貼付装置としては、非特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
非特許文献1に記載の貼付装置の概要を、図1および図2を用いて説明する。
図1は、従来の貼付装置の概略側断面図である。
図2は、従来の貼付装置において台紙部材からテープ部材を剥離する様子、および、剥離の際の帯電の様子を示す概略拡大側面図である。
【0004】
長尺な台紙部材Dと長尺なテープ部材Tとが、テープ部材Tの片面に設けられた粘着層を介して互いに貼り付き、巻物状(roll-like)に巻かれた状態を例示する。巻物状に巻かれた長尺のこのテープ部材Tを貼付装置100に装着する。具体的には、図1の右下の剥離ローラー21にテープ部材Tをセットする。
【0005】
そして、図1に示すように、巻物状に巻かれたテープ部材Tを、左方に配置されたテープ部材巻取ローラー22および剥離ローラー21の上方に配置された台紙部材巻取ローラー23を用いて引っ張り状態とする。これにより前記テープ部材Tを剥離する。
【0006】
図2に示すように、台紙部材Dからテープ部材Tを剥離した状態で、台紙部材Dを右下の剥離ローラー21下方にて180度折り曲げる。そして、折り曲げられた台紙部材Dを、図1の右上の台紙部材巻取ローラー23に装着する。剥離ローラー21および台紙部材巻取ローラー23を回転させることにより、剥離後の台紙部材Dは、剥離ローラー21により巻き取られる。
【0007】
テープ部材Tは、剥離ローラー21の左方に配置された貼付前搬送ローラー31の上部と接触しながら、水平方向に搬送される。
【0008】
テープ部材Tが水平方向に搬送され続けると、テープ部材Tはレンズ部材Lの上方に位置する。なお、レンズ部材Lは、テープ部材Tの搬送方向且つ下方に2つ並んで配置される。
【0009】
テープ部材Tがレンズ部材Lの上方に位置すると、テープ部材Tの搬送が一時停止される。そして、各レンズ部材Lを下方から保持するレンズホルダ4が上昇し、テープ部材Tの粘着層とレンズ部材Lとを接触させる。
【0010】
その後、テープ部材Tの上方に配置された刃(不図示)が下降し、下方にあるテープ部材Tをレンズ部材Lの面の輪郭形状に合わせて切り取る。
【0011】
その後、レンズホルダ4が下降し、レンズの面の形状の穴が開いた使用後テープ部材Tの搬送が再開される。使用後テープ部材Tは、レンズホルダ4の左方に上下並んで配置された2個の貼付後搬送ローラー32の間を通過し、テープ部材巻取ローラー22に巻き取られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】オプティマルオプティク社HP(<http://www.optimal-optic.de/>)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図2に示すように、テープ部材Tが剥離されることにより、テープ部材Tが帯電する。テープ部材Tが帯電すると、周囲に存在する異物を引き寄せる。そうなると、テープ部材Tに異物が付着したままレンズ部材Lにテープ部材Tが貼り付けられ、眼鏡レンズが製造されることになる。このような眼鏡レンズは不良品となり、歩留まり低下の一因となる。
【0014】
本発明の一実施例は、テープ部材への異物の付着の可能性を減らす技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記目的を達成するために案出されたものである。具体的には、剥離後であって、切取および貼付の前に、テープ部材に対して除電を行うという知見に基づき、以下の態様が案出された。
【0016】
本発明の第1の態様は、
レンズ部材に対してテープ部材を貼り付けて眼鏡レンズを製造する装置であって、
巻物状に巻かれた前記テープ部材を引っ張り状態とすることにより前記テープ部材を剥離する剥離機構と、
剥離された前記テープ部材を除電する除電機構と、
除電された前記テープ部材を前記レンズ部材の面に貼り付ける貼付機構と、
を備えた、眼鏡レンズの製造装置である。
【0017】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
前記除電機構は接触式である。
【0018】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の態様であって、
前記除電機構は除電ブラシである。
【0019】
本発明の第4の態様は、第2の態様に記載の態様であって、
前記除電機構は、前記テープ部材と接触する部分に切り込みを有する。
【0020】
本発明の第5の態様は、第2~第4のいずれかの態様に記載の態様であって、
天地方向の天の方向を上方、地の方向を下方とするとき、
引っ張り状態の前記テープ部材の上方に前記除電機構が配置される。
【0021】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の態様であって、
天地方向の天の方向を上方、地の方向を下方とするとき、
前記貼付機構は、前記レンズ部材を保持するレンズホルダを有し、
前記レンズホルダは、引っ張り状態の前記テープ部材の下方に配置される。
【0022】
本発明の第7の態様は、第2~第6のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記眼鏡レンズの製造装置は、剥離された前記テープ部材を前記貼付機構に搬送する搬送機構を更に備える。
【0023】
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載の態様であって、
前記除電機構が前記テープ部材と接触する部分と、前記搬送機構の一部である貼付前搬送ローラーが前記テープ部材と接触する部分とは対向しない。
【0024】
本発明の第9の態様は、第2~第8のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記除電機構は吊り下げて配置される。
【0025】
本発明の第10の態様は、第9の態様に記載の態様であって、
天地方向の天の方向を上方、地の方向を下方とするとき、
前記除電機構が前記テープ部材と接触する部分を下端としたときの前記除電機構の上下方向の寸法が、引っ張り状態の前記テープ部材から吊り下げ状態の前記除電機構の上端までの上下方向の距離よりも大きくなるよう、前記除電機構が配置される。
別の言い方をすると、テープ部材の搬送方向に対し、除電機構の上端から下端に延在する方向が鋭角(図3に示す。好ましくは5~60°、更に好ましくは10~45°)または鈍角(好ましくは95~150°、更に好ましくは100~135°)を成す。特に鋭角を成すのが好ましい。
【0026】
本発明の第11の態様は、第1~第10のいずれかの態様に記載の態様であって、
除電された前記テープ部材を切り取る切取機構を更に備える。
【0027】
本発明の第12の態様は、
レンズ部材に対してテープ部材を貼り付けて眼鏡レンズを製造する方法であって、
巻物状に巻かれた前記テープ部材を引っ張り状態とすることにより前記テープ部材を剥離する剥離工程と、
剥離された前記テープ部材を除電する除電工程と、
除電された前記テープ部材を前記レンズ部材の面に貼り付ける貼付工程と、
除電された前記テープ部材を切り取る切取工程と、
を有する、眼鏡レンズの製造方法である。
【0028】
本発明の第13の態様は、第12の態様に記載の態様であって、
前記剥離工程の前では、樹脂製の長尺な前記テープ部材と、樹脂製の長尺な台紙部材とが、テープ部材の片面に設けられた粘着層を介して互いに貼り付き、巻物状に巻かれている。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一実施例によれば、テープ部材への異物の付着の可能性を減らす技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、従来の貼付装置の概略側断面図である。
図2図2は、従来の貼付装置において台紙部材からテープ部材を剥離する様子、および、剥離の際の帯電の様子を示す概略拡大側面図である。
図3図3は、本発明の一態様の貼付装置の概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書において、眼鏡レンズの「眼球側の面」とは、眼鏡レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に眼球側に配置される面(例えば凹面)をいい、「物体側の面」とは、物体側に配置される面(例えば凸面)をいう。
本明細書において、天地方向の天の方向を上方、地の方向を下方とするとき、
本明細書において「~」は所定の数値以上且つ所定の数値以下を表す。
【0032】
以下、本発明の実施形態について述べる。以下に詳細な記載が無い内容は、非特許文献1に記載の装置構成または公知の貼付装置100の構成と同様とする。
【0033】
[本発明の一態様に係る眼鏡レンズの製造装置]
本発明の一態様に係る眼鏡レンズの製造装置は、
レンズ部材Lに対してテープ部材Tを貼り付けて眼鏡レンズを製造する装置であって、
巻物状に巻かれた前記テープ部材Tを引っ張り状態とすることにより前記テープ部材Tを剥離する剥離機構と、
剥離された前記テープ部材Tを除電する除電機構と、
除電された前記テープ部材Tを前記レンズ部材Lの面に貼り付ける貼付機構と、
を備えた、眼鏡レンズの製造装置(以降、貼付装置1とも称する。)である。
【0034】
図3は、本発明の一態様の貼付装置1の概略側断面図である。
【0035】
前記剥離機構の構成は、巻物状に巻かれたテープ部材Tを引っ張り状態とすることにより前記テープ部材Tを剥離できれば特に限定は無い。本発明の一態様においては、前記非特許文献1に記載の装置で言うところのテープ部材巻取ローラー22および台紙部材巻取ローラー23がそれに該当する。
【0036】
なお、台紙部材Dを使用しない場合、つまりセロハンテープ(登録商標)のようにテープ部材Tの片面には前記粘着層を設ける一方でもう片面に剥離剤を塗布した剥離層を設け、前記テープ部材Tを巻物状に芯に巻き付けたものを使用する場合、テープ部材巻取ローラー22のみを剥離機構として設けてもよい。
【0037】
また、前記非特許文献1に記載の装置以外にも、テープ部材Tを作業者が引っ張る手動貼付装置が存在する。この手動貼付装置の場合、テープ部材Tを作業者が引っ張り、その状態のままテープ部材Tを保持する部分(セロハンテープ(登録商標)で言うところのテープ部材の切取部分)が剥離機構の少なくとも一部に該当する。
【0038】
前記除電機構の構成には特に限定は無く、テープ部材Tの静電気を除去できればよい。除去態様についても特に限定は無く、コロナ放電により静電気を中和すればよい。
【0039】
前記貼付機構の構成は、除電された前記テープ部材Tを前記レンズ部材Lの面に貼り付けられれば特に限定は無い。本発明の一態様においては、前記非特許文献1に記載の装置で言うところのレンズホルダ4がそれに該当する。
【0040】
このような本発明の一態様ならば、剥離されたテープ部材Tが除電機構により除電される。その結果、テープ部材Tへの異物の付着の可能性を減らす技術を提供できる。
【0041】
[本発明の一態様に係る眼鏡レンズの製造装置の好適例および変形例]
以下、本発明の一態様の好適例について説明し、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの構成の詳細について説明する。
【0042】
除電機構の具体的な態様についてであるが、例えば、テープ部材Tとは直接的には接触しない非接触式の除電機構として電圧印加式除電器(以降、イオナイザーとも称する。)を使用することが挙げられる。イオナイザーを使用する場合、イオン化した空気を吹き付けることにより除電を行う。
【0043】
その一方、除電機構の具体的な態様として、接触式の除電機構を使用するのが好ましい。接触式の除電機構だと、非接触式の除電機構に比べ、装置が大掛かりならずに済む、ひいては、既存の貼付装置100に容易に組み入れ可能となる。
【0044】
また、イオナイザーのように空気を吹き付ける方式の除電機構に比べ、テープ部材Tに対して除電機構を接触させれば済む。これは、空気の吹き付けの際に、雰囲気中の異物(例えば眼鏡レンズの削り滓)を巻き上げずに済み、ひいてはテープ部材Tへの異物の付着の可能性を更に減らせることを意味する。
【0045】
接触式の除電機構の具体的な態様についてであるが、例えば除電ブラシ5を使用することが挙げられる。除電ブラシ5の原理を簡単に説明すると、柄の部分を介してブラシの部分を通電させた状態で、静電気を除去すべき対象とブラシの部分とを接触させる。これにより、静電気を除去すべき対象上の静電気が、ブラシの部分の電子とコロナ放電を起こし、静電気が除去される。なお、除電ブラシ5は公知のものを使用すればよい。例えば、市販品の中でもデンキトール(登録商標)を使用してもよい。
【0046】
接触式の除電機構の別の具体的な態様についてであるが、例えば除電用不織物を使用することが挙げられる。除電ブラシ5と同様、除電用不織物を通電させた状態で、静電気を除去すべき対象と除電用不織物とを接触させる。除電用不織物は公知のものを使用すればよい。例えば、市販品の中でもサンダーロン(登録商標)を使用してもよい。
【0047】
なお、除電機構が除電用不織物の場合、除電用不織物に対し、前記テープ部材Tと接触する部分に切り込みを入れてもよい。これにより、除電用不織物が暖簾のようになり、テープ部材Tの形状に忠実に追従し、除電用不織物がテープ部材Tと良好に接触可能となる。
【0048】
図3に示すように、前記眼鏡レンズの製造装置は、剥離された前記テープ部材Tを前記貼付機構に搬送する搬送機構を更に備える。本発明の一態様では、非特許文献1に記載の貼付前搬送ローラー31および貼付後搬送ローラー32が搬送機構に該当する。なお、先に述べた手動貼付装置の場合、搬送は作業者がテープ部材Tを引っ張ることにより行われる。貼付前搬送ローラー31および貼付後搬送ローラー32のような搬送機構は搬送を補助すべく設けても構わない。
【0049】
非特許文献1に記載のような貼付装置100にしても、先に述べた手動貼付装置にしても、テープ部材Tを引っ張り状態とすることに変わりはない。そして本発明の一態様では、引っ張り状態の前記テープ部材Tの上方に前記除電機構が配置されるのが好ましい。これにより、除電機構を上方から下方に向けて固定配置または吊り下げて配置するだけでテープ部材Tと接触可能となる。
【0050】
引っ張り状態の前記テープ部材Tの上方に前記除電機構が配置される場合、貼付機構の少なくとも一部である、レンズ部材Lを保持するレンズホルダ4を、引っ張り状態の前記テープ部材Tの下方に配置するのが好ましい。これにより、本発明の一態様の貼付装置1にテープ部材Tをセットした際に、テープ部材Tの片面に存在する粘着層が下向きになりレンズ部材Lの物体側の面(凸面)と対向する。そして、テープ部材Tにおけるもう一方の片面(剥離面、粘着層が存在しない)に除電機構が接触する。つまり、粘着層に対して除電機構が存在することにより異物が付着することを事前に抑制できる。
【0051】
なお、前記除電機構が前記テープ部材Tと接触する部分と、前記搬送機構の一部である貼付前搬送ローラー31が前記テープ部材Tと接触する部分とは対向しない構成を採用するのが好ましい。例えばコロナ放電を利用して除電する場合、貼付前搬送ローラー31による影響を排することができるためである。
【0052】
引っ張り状態の前記テープ部材Tの上方に前記除電機構が配置される場合、前記除電機構は吊り下げて配置するのが好ましい。前記除電機構を吊り下げて配置することにより、前記除電機構は、水平面上且つテープ部材Tの搬送方向に垂直方向の回転軸に沿って振り子式に揺動自在な構成となる。これにより、例えばテープ部材Tの水平方向の搬送の際に上下方向に揺れが生じたとしても、除電機構は自重によって振り子式に揺動自在であることから、除電機構はこの揺れに忠実に追従し、除電機構はテープ部材Tと良好に接触可能となる。
【0053】
なお、前記除電機構が前記テープ部材と接触する部分を下端としたときの前記除電機構の上下方向の寸法が、搬送中のテープ部材Tから吊り下げ状態の除電機構の上端までの距離よりも大きいのが好ましい。これにより、貼付装置1内にて除電機構を吊り下げ状態にセットしたとき、除電機構の下端すなわち除電のための通電部分がテープ部材Tと斜めに接触する。別の言い方をすると、テープ部材の搬送方向に対し、除電機構の上端から下端に延在する方向が鋭角(図3に示す。好ましくは5~60°、更に好ましくは10~45°)または鈍角(好ましくは95~150°、更に好ましくは100~135°)を成す。特に鋭角を成すのが好ましい。これにより、除電機構はテープ部材Tの揺れにより忠実に追従し、除電機構はテープ部材Tとより良好に接触可能となる。
【0054】
なお、前記構成とは逆に、除電機構を下方から上方に向けてテープ部材Tと接触させることも本発明の別の一態様に含まれる。また、テープ部材Tを垂直方向に搬送する場合、電機構を水平方向からテープ部材Tと接触させることも本発明の別の一態様に含まれる。
【0055】
本発明の一態様は、切取機構を更に備えるのが好ましい。前記切取機構の構成は、除電された前記テープ部材Tを切り取ることが可能であれば特に限定は無い。本発明の一態様においては、前記非特許文献1に記載の装置で言うところの、テープ部材Tの上方に配置された刃(不図示)がそれに該当する。本発明の一態様では、テープ部材Tの上方に配置された刃が下降し、下方にあるテープ部材Tをレンズ部材Lの面の輪郭形状に合わせて切り取る。
【0056】
先にも述べたが、テープ部材Tを作業者が引っ張る手動貼付装置の場合、該装置に切取機構を設ける代わりに、作業者が手作業で、テープ部材Tをレンズ部材Lの面の輪郭形状に合わせて切り取ってもよい。
【0057】
[本発明の一態様に係る眼鏡レンズの製造方法]
本発明の一態様に係る眼鏡レンズの製造方法は、
レンズ部材Lに対してテープ部材Tを貼り付けて眼鏡レンズを製造する方法であって、
巻物状に巻かれた前記テープ部材Tを引っ張り状態とすることにより前記テープ部材Tを剥離する剥離工程と、
剥離された前記テープ部材Tを除電する除電工程と、
除電された前記テープ部材Tを前記レンズ部材Lの面に貼り付ける貼付工程と、
除電された前記テープ部材Tを切り取る切取工程と、
を有する、眼鏡レンズの製造方法である。
以下、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの製造方法について説明する。なお、以下に記載が無い内容は、先に説明した[本発明の一態様に係る眼鏡レンズの製造装置]に記載の内容と同様とする。
【0058】
まず、準備工程として、巻物状に巻かれたテープ部材Tを前記貼付装置1にセットする。一具体例としては以下の通りである。
台紙部材Dを含めて巻物状に巻かれたテープ部材Tを剥離ローラー21にセットする。
そして、テープ部材Tの先端を、テープ部材巻取ローラー22に固定する。その際に、テープ部材巻取ローラー22と剥離ローラー21との間に、上側を物体側の面(凸面)としたレンズ部材Lを固定したレンズホルダ4を配置する。レンズホルダ4は、引張状態のテープ部材Tの下方に配置する。
また、台紙部材Dの先端を、台紙部材巻取ローラー23に固定する。
【0059】
そして、各ローラーを稼働し、巻物状に巻かれた前記テープ部材Tを引っ張り状態とすることにより前記テープ部材Tを剥離する剥離工程を行う。本発明の一態様では、この剥離は連続的に行われる。
【0060】
その際、前記台紙部材Dおよび前記テープ部材Tは共に樹脂製であれば、本発明の効果を更に効果的に享受できる。既存の多くのテープ部材Tは樹脂製であり、台紙部材Dは紙製であるが、本発明者の調べにより、台紙部材Dも樹脂製である場合、静電気の量が多くなるという知見が得られた。ところが、例え静電気の量が多くなったとしても、本発明の一態様ならば問題無く本発明の効果を奏する。
【0061】
そして、剥離された前記テープ部材Tを除電する除電工程を行う。本発明の一態様では、除電機構をテープ部材Tの上方に配置し、テープ部材Tと接触させる。剥離工程が連続的に行われるため、除電工程も連続的に行われる。
【0062】
そして、除電された前記テープ部材Tを前記レンズ部材Lの面に貼り付ける貼付工程を行う。本発明の一態様では、テープ部材Tの搬送を一時停止し、レンズホルダ4を上昇させ、レンズ部材Lの凸面とテープ部材Tの粘着層とを接触させる。
【0063】
そして、除電された前記テープ部材Tを切り取る切取工程を行う。本発明の一態様では、貼付工程後に、テープ部材Tの上方に配置していた刃を下降させ、下方にあるテープ部材Tをレンズ部材Lの面の輪郭形状に合わせて切り取る。
【0064】
なお、貼付工程と切取工程との順番の前後は問わない。例えば、連続的に除電された後のテープ部材Tをレンズ部材Lの面の輪郭形状に合わせて切り取り、その後、切り取られたテープ部材Tをレンズ部材Lの面に貼り付けても構わない。また、貼付工程と切取工程とを同時に行っても構わない。具体的には、貼付工程にてレンズ部材とテープ部材とを貼り合わせると同時に、レンズホルダに設けられた円環状の刃によりテープ部材を切り取っても構わない。
【0065】
本発明の一態様に係る貼付装置1(揺動自在な除電ブラシ5を採用した図3)を用い、温度20~22℃および湿度40~50%にて前記製造方法を実施したところ、除電ブラシ5が無い場合に比べ、静電気の電圧を3.0~4.5kV低下させることができた。
ちなみに上記例だと、除電ブラシ5を揺動自在ではなく、テープ部材Tに対して垂直方向に固定した場合に比べ、電気の電圧を1.0kV低下させることができた。
いずれにしても、本発明の一態様を採用することにより、テープ部材Tへの異物の付着の可能性を減らせることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0066】
1…貼付装置
21…剥離ローラー
22…テープ部材巻取ローラー
23…台紙部材巻取ローラー
31…貼付前搬送ローラー
32…貼付後搬送ローラー
4…レンズホルダ
5…除電ブラシ
T…テープ部材
D…台紙部材
L…レンズ部材
100…(公知の)貼付装置
図1
図2
図3