(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】縫製品および縫製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B68G 7/05 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
B68G7/05 B
(21)【出願番号】P 2018205827
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】水野 信一
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-106710(JP,A)
【文献】特開2016-059696(JP,A)
【文献】特開2016-088365(JP,A)
【文献】特開2006-116062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 7/05
B60N 2/00-90
A47C 31/02、11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端縁、及び、第1端縁と交わる第2端縁をそれぞれ有するシート状の第1基材および第2基材と、
第3端縁を有するシート状の第3基材と、
前記第1端縁が第1縫い代に含まれるように、互いに揃えた前記第1端縁に沿って前記第1基材と前記第2基材とを縫い合わせる第1糸と、
前記第2端縁および前記第3端縁が第2縫い代に含まれるように、前記第1糸により縫い合わされた前記第1基材および前記第2基材の前記第1縫い代以外の部位が開かれた状態で、前記第1基材および前記第2基材を前記第3基材に縫い合わせる第2糸と、を備え、
前記第1縫い代には、前記第2端縁から離れた位置であって前記第2糸が通る部位を、前記第1端縁から前記第1糸へ向かって切り欠いた切欠部が形成され、
前記第2糸により縫い合わされた前記第1基材、前記第2基材および前記第3基材の第2縫い代以外の部位が開かれて
おり、
前記切欠部は、前記第1端縁から前記第1糸へ向かって凸の弧状に形成されていることを特徴とする縫製品。
【請求項2】
第1端縁、及び、第1端縁と交わる第2端縁をそれぞれ有するシート状の第1基材および第2基材と、
第3端縁を有するシート状の第3基材と、
前記第1端縁が第1縫い代に含まれるように、互いに揃えた前記第1端縁に沿って前記第1基材と前記第2基材とを縫い合わせる第1糸と、
前記第2端縁および前記第3端縁が第2縫い代に含まれるように、前記第1糸により縫い合わされた前記第1基材および前記第2基材の
前記第1端縁を互いに揃えた状態であって、前記第1基材および前記第2基材の前記第1縫い代以外の部位が開かれた状態で、前記第1基材および前記第2基材を前記第3基材に縫い合わせる第2糸と、を備え、
前記第1縫い代には、前記第2端縁から離れた位置であって前記第2糸が通る部位を、前記第1端縁から前記第1糸へ向かって切り欠いた切欠部が形成され、
前記第2糸により縫い合わされた前記第1基材、前記第2基材および前記第3基材の第2縫い代以外の部位が開かれていることを特徴とする縫製品。
【請求項3】
第1端縁、及び、第1端縁と交わる第2端縁をそれぞれ有するシート状の第1基材および第2基材と、
第3端縁を有するシート状の第3基材と、
前記第1端縁が第1縫い代に含まれるように、互いに揃えた前記第1端縁に沿って前記第1基材と前記第2基材とを縫い合わせる第1糸と、
前記第2端縁および前記第3端縁が第2縫い代に含まれるように、前記第1糸により縫い合わされた前記第1基材および前記第2基材の前記第1縫い代以外の部位が開かれた状態で、前記第1基材および前記第2基材を前記第3基材に縫い合わせる第2糸と、を備え、
前記第1縫い代には、前記第2端縁から離れた位置であって前記第2糸が通る部位を、前記第1端縁から前記第1糸へ向かって切り欠いた切欠部が形成され、
前記第2糸により縫い合わされた前記第1基材、前記第2基材および前記第3基材の第2縫い代以外の部位が開かれて
おり、
前記第1糸から前記第1端縁までの距離が前記切欠部の両側で同一であることを特徴とする縫製品。
【請求項4】
前記切欠部のうち前記第1端縁の延長線上の幅は、前記第1端縁から前記第1糸までの距離の2倍以下であることを特徴とする請求項3記載の縫製品。
【請求項5】
シート状の第1基材、第2基材および第3基材を備える縫製品の製造方法であって、
第1端縁、及び、第1端縁と交わる第2端縁をそれぞれ有する前記第1基材および前記第2基材を形成する形成工程と、
前記形成工程により形成された前記第1基材および前記第2基材の前記第1端縁を、ミシンに固定されたガイドに当てながら、前記第1端縁からの距離が一定な第1ラインに沿って前記第1基材と前記第2基材とを第1糸により前記ミシンを用いて縫い合わせ、前記第1端縁側を第1縫い代とする第1縫合工程と、
前記第1縫合工程により縫い合わされた前記第1基材および前記第2基材の
前記第1端縁を互いに揃えた状態であって、前記第1基材および前記第2基材の前記第1縫い代以外の部位を開いた状態で、前記第1ラインと交わる第2ラインに沿って前記第1基材および前記第2基材を前記第3基材に第2糸により縫い合わせ、前記第2端縁側および前記第3基材の第3端縁側を第2縫い代とする第2縫合工程と、を備え、
前記形成工程は、前記第2端縁から離れた位置であって前記第2ライン上の前記第1基材および前記第2基材の一部を、前記第1端縁から前記第1ラインへ向かって切り欠いて切欠部を形成することを特徴とする縫製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製品および縫製品の製造方法に関し、縫い目の合流部の意匠性を向上できる縫製品および縫製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数枚のシート状の基材を縫い合わせて構成される縫製品には、3枚以上の基材を縫い合わせた縫い目が1点で交わる合流部が形成されるものがある(特許文献1)。特許文献1では、第1端縁が第1縫い代に含まれるように第1基材と第2基材とを第1糸により縫い合わせた後、第1縫い代を開くと共に、第1基材および第2基材の第1縫い代以外の部位を開いた状態で、第1基材および第2基材のうち第1端縁と交わる第2端縁が第2縫い代に含まれるように、第1基材および第2基材を第3基材に第2糸により縫い合わせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、第2糸が縫い付けられる第1縫い代の幅が広いため、第1縫い代に第2糸を縫い付けることに起因して第1糸と第2糸とによる縫い目の合流部に発生するしわや膨らみ等が目立ち易くなり、合流部の意匠性を十分に確保できないという問題点がある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、縫い目の合流部の意匠性を向上できる縫製品および縫製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の縫製品は、第1端縁、及び、第1端縁と交わる第2端縁をそれぞれ有するシート状の第1基材および第2基材と、第3端縁を有するシート状の第3基材と、前記第1端縁が第1縫い代に含まれるように、互いに揃えた前記第1端縁に沿って前記第1基材と前記第2基材とを縫い合わせる第1糸と、前記第2端縁および前記第3端縁が第2縫い代に含まれるように、前記第1糸により縫い合わされた前記第1基材および前記第2基材の前記第1縫い代以外の部位が開かれた状態で、前記第1基材および前記第2基材を前記第3基材に縫い合わせる第2糸と、を備え、前記第1縫い代には、前記第2端縁から離れた位置であって前記第2糸が通る部位を、前記第1端縁から前記第1糸へ向かって切り欠いた切欠部が形成され、前記第2糸により縫い合わされた前記第1基材、前記第2基材および前記第3基材の第2縫い代以外の部位が開かれている。
【0007】
また、縫製品の製造方法は、シート状の第1基材、第2基材および第3基材を備える縫製品を製造する方法であって、第1端縁、及び、第1端縁と交わる第2端縁をそれぞれ有する前記第1基材および前記第2基材を形成する形成工程と、前記形成工程により形成された前記第1基材および前記第2基材の前記第1端縁を、ミシンに固定されたガイドに当てながら、前記第1端縁からの距離が一定な第1ラインに沿って前記第1基材と前記第2基材とを第1糸により前記ミシンを用いて縫い合わせ、前記第1端縁側を第1縫い代とする第1縫合工程と、前記第1縫合工程により縫い合わされた前記第1基材および前記第2基材の前記第1縫い代以外の部位を開いた状態で、前記第1ラインと交わる第2ラインに沿って前記第1基材および前記第2基材を前記第3基材に第2糸により縫い合わせ、前記第2端縁側および前記第3基材の第3端縁側を第2縫い代とする第2縫合工程と、を備え、前記形成工程は、前記第2端縁から離れた位置であって前記第2ライン上の前記第1基材および前記第2基材の一部を、前記第1端縁から前記第1ラインへ向かって切り欠いて切欠部を形成する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1から3のそれぞれに記載の縫製品によれば、第1縫い代のうち第2糸が通る部位を第1端縁から第1糸へ向かって切り欠いた切欠部により、第2糸が通る位置の第1縫い代の幅を狭くできる。これにより、第1縫い代に第2糸が縫い付けられることに起因して、第1糸と第2糸とによる縫い目の合流部にしわや膨らみ等が発生しても、そのしわや膨らみ等を目立ち難くできる。その結果、第1糸と第2糸との合流部の意匠性を向上できる。
【0009】
さらに、第2端縁から離れた位置に切欠部が形成されているので、第1端縁と第2端縁との角部を第1端縁に沿って第1糸により縫い合わせることができる。その結果、角部付近で第1基材と第2基材との縫い合わせ位置をずれ難くできるので、そのずれに起因した縫製品のしわや膨らみ等を抑制でき、縫製品の意匠性を向上できる。
【0010】
さらに、請求項1記載の縫製品によれば、切欠部は、第1端縁から第1糸へ向かって凸の弧状に形成されている。これにより、切欠部が三角形状である場合に比べて、第2糸が切欠部の中央からずれても、第2糸が通る部位の第1縫い代の幅を狭くできる。その結果、第1糸と第2糸との合流部の意匠性をより良くできる。
【0011】
請求項2記載の縫製品によれば、第2糸が通る位置の第1縫い代の幅が切欠部によって狭くなっているので、その幅が狭い第1縫い代を潰しながら、第1縫い代に第2糸を縫い付けることができる。そのため、第2糸の縫い付け時、予め第1縫い代を割ることなく、第1基材および第2基材の第1端縁を互いに揃えた状態で、第1縫い代付近に第2糸を連続して縫い付けることができる。よって、第2糸の縫い付け時の作業効率を向上できる。
【0012】
請求項3記載の縫製品によれば、第1糸から第1端縁までの距離が切欠部の両側で同一であるため、例えば第1端縁にガイドを当てながら、第1基材と第2基材とを第1糸によりミシンを用いて縫い合わせることができる。
請求項4記載の縫製品によれば、切欠部のうち第1端縁の延長線上の幅は、第1端縁から第1糸までの距離の2倍以下である。このように切欠部が小さいため、例えば第1端縁をガイドに当てながら第1基材と第2基材とを第1糸で縫い合わせるとき、切欠部の内側にガイドを入り込むことを抑制できる。その結果、請求項3の効果に加え、第1基材と第2基材との縫い合わせ位置をずれ難くできる。
【0013】
請求項5記載の縫製品の製造方法によれば、準備工程では、第2端縁から離れた位置であって第2ライン上の第1基材および第2基材の一部を、第1端縁から第1ラインへ向かって切り欠いて切欠部を形成している。そのため、第1縫合工程では、第1端縁と第2端縁との角部をミシンのガイドに当てながら、第1基材と第2基材とを第1糸によりミシンを用いて縫い合わせることができる。これにより、角部付近で第1基材と第2基材との縫い合わせ位置(第1糸)を第1ラインからずれ難くできるので、そのずれに起因した縫製品のしわや膨らみ等を抑制でき、縫製品の意匠性を向上できる。
【0014】
第2縫合工程では、第1ラインと交わる第2ラインに沿って第1基材および第2基材を第3基材に第2糸により縫い合わせる。第2ライン上を切り欠いた切欠部によって、第2糸が通る位置の第1縫い代の幅を狭くできる。第1縫い代に第2糸が縫い付けられることに起因して、第1糸と第2糸とによる縫い目の合流部にしわや膨らみ等が発生しても、そのしわや膨らみ等を目立ち難くできる。その結果、第1糸と第2糸との合流部の意匠性を向上できる。
【0015】
さらに、第2糸が通る位置の第1縫い代の幅が切欠部によって狭くなっているので、第2縫合工程では、その幅が狭い第1縫い代を潰しながら、第1縫い代に第2糸を縫い付けることができる。そのため、第2縫合工程では、予め第1縫い代を割ることなく、第1基材および第2基材の第1端縁を互いに揃えた状態で、第1縫い代付近に第2糸を連続して縫い付けることができる。よって、第2縫合工程の作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1のII-II線における座席の断面図である。
【
図4】(a)は第1基材と第2基材とを縫い合わせる第1縫合工程前の状態を示す説明図であり、(b)は第1縫合工程を示す説明図である。
【
図5】(a)は第1基材、第2基材および第3基材の斜視図であり、(b)は第1基材および第2基材を第3基材に縫い合わせる第2縫合工程を示す説明図である。
【
図6】(a)は裏面側から見た表皮の斜視図であり、(b)は裏面側から見た従来の表皮の斜視図である。
【
図7】(a)は第2実施形態における第1基材の平面図であり、(b)は第3実施形態における第1基材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、第1実施形態における座席1について説明する。
図1は座席1の斜視図である。
図2は
図1のII-II線における座席1の断面図である。
図1に示すように、座席1は、車両に搭載される座席である。座席1は、着座者の臀部を支持するシートクッション2と、着座者の背もたれとなるシートバック3と、着座者の頭部を支えるヘッドレスト4とを、主に備える。
【0018】
図2に示すように、シートバック3は、弾力性のある軟質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂製のクッション材からなるシートパッド6と、シートパッド6を覆う表皮(縫製品)10と、シートパッドを支持するフレーム(図示せず)とを備える。また、シートクッション2やヘッドレスト4も同様に、表皮10でシートパッド6を覆って構成されている。なお、合成樹脂製等の繊維をウレタン等のバインダで硬化(結合)したもの、合成樹脂製の繊維を熱で溶融して互いに溶着させたもの等からシートパッド6を構成しても良い。
【0019】
図1及び
図2に示すように、表皮10は、第1基材11や第2基材12、第3基材13等の複数のシート状の基材を互いに縫い合わせて構成されている。第1基材11、第2基材12及び第3基材13は、ファブリックや合成皮革、皮革、シート状の発泡合成樹脂などの単層または複数層からなる。第1基材11や第2基材12、第3基材13の表面11c,12c,13c(一部
図5(a)参照)が着座者側に面する。また、第1基材11や第2基材12、第3基材13の裏面11d,12d,13d(一部
図5(a)参照)がシートパッド6側に面する。
【0020】
表皮10には、第1基材11と第2基材12とを縫い合わせる第1糸14と、第1基材11及び第2基材12を第3基材に縫い合わせる第2糸15とが1点でT字状に交わる合流部16が形成されている。なお、実際には、表皮10の表面11c,12c,13c側から第1糸14や第2糸15は殆ど視認できず、第1糸14や第2糸15による縫い目(第1基材11や第2基材12、第3基材13の境界)が見える。
【0021】
表皮10には、第1基材11と第2基材12とが第1糸14により縫い合わされて第1縫い代22が形成されている。また、第1基材11及び第2基材12が第3基材13に第2糸15により縫い合わされて第2縫い代23が形成されている。また、表皮10をシートパッド6に固定するための複数の吊り部材9が第1基材11、第2基材12及び第3基材13に第1糸14および第2糸15によって縫い付けられている。
【0022】
吊り部材9は、帯状のフェルト等のシートから主に構成される。幅方向一方側の側縁に亘って金属製または樹脂製の線材9aが取り付けられ、幅方向他方側の側縁9b側が第1縫い代22や第2縫い代23に重ねられている。線材9aの上には、ホグリングからなる固定部8を通すための貫通孔9cが設けられている。なお、この貫通孔9cは、吊り部材9に予め設けても良いし、吊り部材9を固定部8に固定するときに設けても良い。
【0023】
シートパッド6には、第1糸14や第2糸15による縫い目に沿って複数の溝6a,6bが設けられている。溝6aには第1縫い代22が入り、溝6bには第2縫い代23が入る。この溝6a,6bの底面に沿って、シートパッド6にワイヤ7が埋設されている。このワイヤ7に複数の固定部8を引っ掛けて、溝6a,6b内に複数の固定部8を配置する。そして、この固定部8に吊り部材9の線材9aを引っ掛けて固定する。
【0024】
これにより、表皮10の第1糸14や第2糸15が縫い付けられた部位が溝6a,6b内に吊り込まれて、表皮10がシートパッド6に固定される。なお、吊り部材9の吊り込みによって、第1基材11、第2基材12及び第3基材13のうち第1縫い代22や第2縫い代23以外の部位の裏面11d,12d,13dから、第1糸14や第2糸15を支点にして吊り部材9が立ち上がる。
【0025】
次に
図3から
図6(a)を参照して表皮10の製造方法について説明する。
図3は第1基材11及び第2基材12の平面図である。
図4(a)は第1基材11と第2基材12とを縫い合わせる第1縫合工程前の状態を示す説明図である。
図4(b)は第1縫合工程を示す説明図である。
図5(a)は第1基材11、第2基材12及び第3基材13の斜視図である。
図5(b)は第1基材11及び第2基材12を第3基材13に縫い合わせる第2縫合工程を示す説明図である。
図6(a)は裏面11d,12d,13d側から見た表皮10の斜視図である。
【0026】
図3に示すように、まず、原反などから切り出して、第1基材11、第2基材12及び第3基材13(
図1等参照)をそれぞれ形成する(形成工程)。形成工程により形成された第1基材11の第1端縁11aと第2端縁11bとが直交し、第2基材12の第1端縁12aと第2端縁12bとが直交している。第1端縁11a,12a及び第2端縁11b,12bは直線状である。
【0027】
第1基材11及び第2基材12には、第1端縁11a,12aからの距離L1が一定である仮想の第1ライン18が設定されている。第1ライン18は、後述する第1縫合工程において第1糸14が縫い付けられる位置を示している。また、第1基材11及び第2基材12には、第2端縁11b,12bからの距離L2が一定である仮想の第2ライン19が設定されている。第2ライン19は、後述する第2縫合工程において第2糸15が縫い付けられる位置を示している。なお、距離L1及び距離L2は同一の値である。
【0028】
さらに、形成工程では、第2端縁11b,12bから離れた位置であって第2ライン19上の第1基材11及び第2基材12の一部を、第1端縁11a,12aから第1ライン18へ向かって切り欠いて切欠部20を形成する。切欠部20は、第1基材11の第1端縁11aと第2基材12の第1端縁12aとを揃え、第2端縁11bと第2端縁12bとを揃えたときに、第1基材11及び第2基材12の同じ位置に設けられる。
【0029】
切欠部20は、第1端縁11a,12aから第1ライン18へ向かって凸の弧状に形成されている。より詳しくは、第1端縁11a,12aの延長線と第2ライン19との交点を中心とした半径Rの半円状に切欠部20が形成されている。この半径Rは、距離L1,L2よりも小さく設定されている。このように切欠部20が半円状であれば、自動裁断機によって第1基材11及び第2基材12を切り出すときに、自動裁断機に備えられていることが多い丸孔用の孔あけパンチやドリルを用いて切欠部20を容易に形成できる。
【0030】
形成工程の後は、
図4(a)に示すように、第1基材11の表面11c(
図5(a)参照)と第2基材12の表面12c(
図5(a)参照)とを接触させて、第1基材11と第2基材12とを重ねる。さらに、第2基材12の裏面12d側であって、切欠部20よりも第2端縁11b,12bから離れた部分に吊り部材9を重ねる。そして、第1端縁11a,12a同士を揃え、第2端縁11b,12b同士を揃える。そうすると、第1基材11及び第2基材12の切欠部20も揃う。また、第1端縁11a,12aに吊り部材9の側縁9bを揃える。
【0031】
次いで、ミシン(図示せず)に固定したガイド21に第1端縁11a,12a及び側縁9bを当てる。そして、
図4(b)に示すように、ガイド21に第1端縁11a,12a及び側縁9bを当てながら、第1ライン18に沿って第1基材11と第2基材12と吊り部材9とを第1糸14によりミシンを用いて縫い合わせる(第1縫合工程)。この第1縫合工程により縫い合わされた第1基材11及び第2基材12のうち、第1端縁11a,12aから第1糸14までの部位がそれぞれ第1縫い代22である。
【0032】
ミシンの針(図示せず)から第1端縁11a,12aが当たるガイド21までの距離は、第1端縁11a,12aから第1ライン18までの距離L1と略同一である。そのため、ガイド21に第1端縁11a,12aを当てながら、第1基材11や第2基材12に対してガイド21を縫製方向Aへ相対移動させるようにして第1糸14を縫い付けることで、第1ライン18上に第1糸14を縫い付け易くできる。
【0033】
切欠部20のうち第1端縁11a,12aの延長線上の幅2Rは、半径Rの2倍であって、ガイド21のうち第1縫合工程において第1端縁11a,12aが当たる部位の長さL5よりも狭い。これにより、第1端縁11a,12aをガイド21に当てながら第1基材11と第2基材12とを縫い合わせるとき、切欠部20の内側にガイド21が入り込むことを防止できる。その結果、第1基材11と第2基材12との縫い合わせ位置(第1糸14)を第1ライン18からずれ難くできる。
【0034】
なお、第1端縁11a,12aから第1糸14までの距離である第1縫い代22の幅L3は、距離L1との差が所定の公差以下となるように、第1糸14が第1ライン18からずれていても良い。この幅L3の範囲の最小値よりも切欠部20の第1端縁11a,12aからの深さである半径Rは小さく設定される。これにより、表皮10の表面11c,12c側から切欠部20が見えて表皮10の意匠性が損なわれることを防止できる。
【0035】
第1縫合工程の後は、
図5(a)に示すように、互いに縫い合わされた第1基材11及び第2基材12の第1縫い代22以外の部位を第1糸14を支点に開く。そうすると、その第1縫い代22以外の部位の裏面11d,12dから第1縫い代22が立ち上がる。
【0036】
次いで、第1基材11及び第2基材12の表面11c,12cを第3基材13の表面13cに接触させて、第1基材11及び第2基材12を第3基材13に重ねる。さらに、第1基材11及び第2基材12の第2端縁11b,12bと、第3基材13の第3端縁13aとを揃える。また、第3基材13には、第3端縁13aからの距離L2が一定である仮想の第2ライン19が設定されている。
【0037】
次いで
図5(b)に示すように、第2ライン19に沿って第2糸15により第1基材11及び第2基材12を第3基材13に縫い合わせる(第2縫合工程)。なお、第1基材11及び第2基材12のうち第2端縁11b,12bから第2糸15までの部位と、第3基材13のうち第3端縁13aから第2糸15までの部位とがそれぞれ第2縫い代23である。
【0038】
この第2縫合工程でも第1縫合工程と同様に、ガイド21に第2端縁11b,12b及び第3端縁13aを当てながら、第1基材11、第2基材12及び第3基材13に対してガイド21を縫製方向Bへ相対移動させるようにして第2糸15を縫い付ける。これにより、第2ライン19上に第2糸15を縫い付け易くできる。なお、第2端縁11b,12b及び第3端縁13aから第2糸15までの距離である第2縫い代23の幅L4は、距離L2との差が所定の公差以下となるように、第2糸15が第2ライン19からずれていても良い。
【0039】
第2縫合工程後、
図6(a)に示すように、第1基材11及び第2基材12に対して第3基材13の第2縫い代23以外の部位を第2糸15を支点に開く。そうすると、第1基材11、第2基材12及び第3基材13のうち第1縫い代22及び第2縫い代23以外の部位の裏面11d,12d,13dから第2縫い代23が立ち上がる。また、第1縫い代22のうち第2端縁11b,12bから離れた側の第1部22aに対して、第1縫い代22のうち第2端縁11b,12b側の第2部22bが第2糸15を支点に折れ曲がる。このような状態で表皮10は使用される。
【0040】
裏面11d,12dから立ち上がった第2縫い代23の隅に第1縫い代22が第2糸15により縫い付けられて、その隅の内側で第1縫い代22が折れ曲がる。そのため、第2糸15に拘束されつつ隅の内側で折れ曲がる第1縫い代22の厚さに応じて、第1縫い代22の一部が撓んだり、第2糸15が第1縫い代22によって引っ張られたりする。これにより、表皮10を表面11c,12c,13c側から見た場合、第1糸14と第2糸15と(第1縫い代22と第2縫い代23と)の合流部16が膨れたり、合流部16にしわが発生したりすることがある。
【0041】
しかし、本実施形態の表皮10によれば、第2糸15が通る部位(第2ライン19上)の第1縫い代22の一部を、第1端縁11a,12aから第1糸14(第1ライン18)へ向かって切り欠いた切欠部20が形成されている。これにより、第2糸15が通る部位の第1縫い代22(第1部22aと第2部22bとの境界部)の幅を狭くできる。そのため、第1縫い代22に第2糸15が縫い付けられることに起因して合流部16にしわや膨らみ等が発生しても、そのしわや膨らみ等を目立ち難くできる。その結果、合流部16の意匠性を確保できる。
【0042】
ここで、
図6(b)を参照して、切欠部20を有しない従来の表皮24について説明する。表皮24は、第1糸14により縫い合わされた第1基材11及び第2基材12の第1縫い代25のうち第2端縁11b,12b側の角部26,27を割った状態で、その角部26,27に第2糸15が縫い付けられている。従来の表皮24の第2縫合工程では、第1基材11や第2基材12の第1縫い代25以外の部位の裏面11d,12dへ向かって角部26,27が倒れた状態を維持する必要がある。そのため、表皮24の第2縫合工程では、角部26,27をアイロン等を用いて予め割ったり、角部26,27に第2糸15を縫い付けるときに一旦ミシンを止めて第1基材11及び第2基材12を押さえ直したりする必要がある。
【0043】
これに対して、本実施形態の表皮10では、切欠部20によって第2ライン19上の第1縫い代22の幅が狭くなっているので、第2縫合工程において、その幅が狭い第1縫い代22を潰しながら、第1縫い代22に第2糸15を縫い付けることができる。そのため、第2縫合工程において、予め第1縫い代22を割ることなく、ミシンを用いて第1縫い代22付近に第2糸15を連続して縫い付けることができる。よって、第2縫合工程の作業効率を向上できる。
【0044】
また、従来の表皮24では、第2糸15が縫い付けられた角部26,27が、第1基材11や第2基材12の第1縫い代25以外の部位の裏面11d,12dへ向かって倒れている。その角部27の近くの第2基材12に第1糸14によって縫い付けられている吊り部材9を溝6a(
図2参照)内に吊り込むと、第2基材12の第2縫い代23以外の部位の裏面12dから第1糸14を支点に吊り部材9が立ち上がる。これにより、吊り部材9の吊り込みによって角部27が起き上がろうとし、その角部27に第2糸15が引っ張られて、第1糸14と第2糸15との合流部16にしわ等が発生することがある。
【0045】
本実施形態の表皮10では、切欠部20によって第2糸15が通る位置の第1縫い代22の幅が狭くなっているので、その第1縫い代22が倒れようとする範囲を狭くできる。その結果、吊り部材9を吊り込んで第1縫い代22を溝6a内に固定することに起因して第1糸14と第2糸15との合流部16にしわ等が発生することを抑制できるので、合流部16の意匠性をより良くできる。また、吊り部材9を合流部16に近づけ易くできるので、吊り部材9によって表皮10が引っ張られる範囲を広くでき、表皮10をシートパッド6の表面に追従させ易くできる。
【0046】
第2縫合工程では、第1基材11及び第2基材12の裏面11d,12dから立ち上がった第1縫い代22の上を第2糸15が通るので、その第2糸15によって第1縫い代22の一部が第3基材13側へ引っ張られる。第2糸15が通る部位の第1縫い代22の幅は切欠部20によって狭くなっているので、その部位が第2糸15によって引っ張られても表皮10にしわ等が生じ難い。また、その第2糸15によって引っ張られた部位を支点に第1縫い代22が折れ曲がるので、折れ曲がる部位の第1縫い代22が薄くなり、第1縫い代22に第2糸15が縫い付けられることに起因して合流部16にしわや膨らみ等が発生することをより抑制できる。その結果、合流部16の意匠性をより良くできる。
【0047】
切欠部20は、第2端縁11b,12bから離れた位置に形成されている。そのため、第1縫合工程では、ミシンに固定されたガイド21に第1端縁11a,12aと第2端縁11b,12bとの角部を当てながら、ミシンを用いて第1基材11と第2基材12とを縫い合わせることができる。合流部16の意匠性を確保するために切欠部20を形成しても、角部付近で第1基材11と第2基材12との縫い合わせ位置(第1糸14)を第1ライン18からずれ難くできる。これにより、そのずれに起因した表皮10のしわや膨らみ等を抑制できるので、表皮10の意匠性を向上できる。
【0048】
切欠部20は、第1端縁11a,12aの延長線と第2ライン19との交点を中心とした半径Rの半円状に形成されているので、第2ライン19上の第1縫い代22の幅が最も狭く形成される。半円状の切欠部20の中央に第2ライン19が位置するので、第2ライン19からの第2糸15のずれが小さい程、第2糸15が通る部位の第1縫い代22の幅を狭くできる。
【0049】
切欠部20が半円状なので、切欠部20が三角形状である場合に比べて、第2糸15が切欠部20の中央(第2ライン19)からずれても、第2糸15が通る部位の第1縫い代22の幅を狭くできる。その結果、第1縫い代22に第2糸15が縫い付けられることに起因して合流部16にしわや膨らみ等が発生しても、そのしわや膨らみ等を目立ち難くでき、合流部16の意匠性をより良くできる。
【0050】
次に
図7(a)を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、切欠部20が半円状である場合について説明した。これに対し第2実施形態では、切欠部32が長方形状である場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図7(a)は第2実施形態における第1基材31の平面図である。なお、第2実施形態における第2基材の切欠部は、第1基材31の切欠部32と同一形状であり、第1実施形態と同様に互いに同じ位置に形成されている。
【0051】
図7(a)に示すように、第2実施形態の表皮の第1基材31には、第2端縁11bから離れた位置であって第2ライン19上の第1基材31の一部を、第1端縁11aから第1ライン18へ向かって切り欠いて切欠部32が形成されている。第2ライン19は、切欠部32の中央に位置する。
【0052】
切欠部32は、第1端縁11aから第1ライン18へ向かう深さRが一定であり、第2ライン19に平行な幅2Rが一定である長方形状に形成されている。第1実施形態と同様に、第1縫い代22の幅L3の最小値よりも切欠部32の深さRが小さく設定され、ガイド21の長さL5よりも切欠部32の幅2Rが狭く設定される。なお、切欠部32の幅2Rは、深さRの2倍に限らず、適宜設定可能である。
【0053】
このように、第1端縁11aからの深さRが一定の長方形状に切欠部32が形成されているので、第1基材31を有する表皮では、切欠部32の中央に位置する第2ライン19から第2糸15がずれても、第2糸15が通る部位の第1縫い代22の幅を一定値まで狭くできる。よって、第1縫い代22に第2糸15が縫い付けられることに起因して合流部16にしわや膨らみ等が発生しても、そのしわや膨らみ等を目立ち難くでき、表皮の合流部16の意匠性をより良くできる。
【0054】
特に、第2ライン19からの第2糸15のずれが許容される所定の公差の2倍以上に、切欠部32の幅2Rが設定されている。そのため、第2ライン19からの第2糸15のずれが許容される場合には、深さRが一定の切欠部32によって第2糸15が通る部位の第1縫い代22の幅を一定値まで狭くできる。その結果、第2ライン19からの第2糸15のずれが許容される場合には、表皮の合流部16の意匠性をより良くできる。
【0055】
次に
図7(b)を参照して第3実施形態について説明する。第1実施形態では、切欠部20が半円状である場合について説明した。これに対し第3実施形態では、切欠部36が三角形状である場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図7(b)は第3実施形態における第1基材35の平面図である。なお、第3実施形態における第2基材の切欠部は、第1基材35の切欠部36と同一形状であり、第1実施形態と同様に互いに同じ位置に形成されている。
【0056】
図7(b)に示すように、第3実施形態の表皮の第1基材35には、第2端縁11bから離れた位置であって第2ライン19上の第1基材35の一部を、第1端縁11aから第1ライン18へ向かって切り欠いて切欠部36が形成されている。切欠部36は、第1端縁11aから第1ライン18へ向かう第2ライン19上の深さRが最大となるように三角形状に形成されている。
【0057】
第1実施形態と同様に、第1縫い代22の幅L3の最小値よりも切欠部36の深さRが小さく設定され、切欠部36のうち第1端縁11aの延長線上の幅2Rがガイド21の長さL5よりも狭く設定される。なお、切欠部36の幅2Rは、深さRの2倍に限らず、適宜設定可能である。
【0058】
第2ライン19上の深さRが最大となるように三角形状の切欠部36が形成されているので、第1基材35を有する表皮では、第2ライン19からの第2糸15のずれが小さい程、第2糸15が通る部位の第1縫い代22の幅を狭くできる。よって、第2ライン19からの第2糸15のずれが小さい程、第1縫い代22に第2糸15が縫い付けられることに起因して合流部16にしわや膨らみ等が発生しても、そのしわや膨らみ等を目立ち難くでき、表皮の合流部16の意匠性をより良くできる。
【0059】
また、切欠部36が三角形状なので、形成工程において原反などから自動裁断機によって第1基材35を切り出すときに、合い印を切り欠いて形成するようにして切欠部36を容易に形成できる。即ち、第1基材35に三角形状の切欠部36を設けても、第1基材35の形成スピードを殆ど落ちないようにできる。
【0060】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、シートクッション2やシートバック3、ヘッドレスト4の形状を適宜変更しても良い。シートクッション2やシートバック3以外のもの(例えばヘッドレスト4やアームレスト)の表皮に、合流部16を有する表皮10を用いても良い。
【0061】
上記形態では、座席1が車両に搭載される座席である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。船舶や航空機など車両以外の乗物に座席1を搭載しても良く、家具用の座席1としても良い。また、座席1用の表皮10に限らず、衣服や鞄などの縫製品に本発明を適用しても良い。
【0062】
上記形態では、直線状の第1端縁11a,12aと直線状の第2端縁11b,12bとがそれぞれ直交する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1端縁11a,12aと第2端縁11b,12bとがそれぞれ90°以外で交わっても良い。また、第1端縁11a,12aと第2端縁11b,12bとの角を合わせたときに、第1端縁11aと第1端縁12aとが揃えば、第1端縁11a,12aや第2端縁11b,12bを曲線状などにしても良く、第2端縁11bと第2端縁12bとが揃わなくても良い。第1端縁11a,12aや第2端縁11b,12bが凹曲線状である場合には、ガイド21の長さL5が短い程、第1端縁11a,12aや第2端縁11b,12bをガイド21に沿わせ易くできる。これにより、ガイド21を用いた第1縫合工程や第2縫合工程において、第1ライン18や第2ライン19からの第1糸14や第2糸15のずれを小さくできる。
【0063】
上記形態では、第3基材13が1枚のシート状部材である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1糸14により縫い合わせた第1基材11,31,35及び第2基材12を第3基材として、その第1基材11,31,35及び第2基材12の第2端縁11b,12bを第3基材の第3端縁としても良い。このような第3基材(第1基材11,31,35及び第2基材12)を第1基材11,31,35及び第2基材12に縫い合わせて、合流部16の周囲に4枚のシート状の基材を配置しても良い。また、第3基材を3枚以上のシート状の基材を縫い合わせて構成し、合流部16の周囲に5枚以上のシート状の基材を配置しても良い。
【0064】
上記第1実施形態では、切欠部20が半円状である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。半円状や三角形状、長方形状以外の各種形状に切欠部を形成しても良い。例えば、第1端縁11a,12aから第1ライン18へ向かって凸の半円状以外の弧状に切欠部を形成しても良い。この場合にも、切欠部が三角形状である場合に比べて、第2糸15が切欠部20の中央(第2ライン19)からずれても、第2糸15が通る部位の第1縫い代22の幅を狭くできる。その結果、第1縫い代22に第2糸15が縫い付けられることに起因して合流部16にしわや膨らみ等が発生しても、そのしわや膨らみ等を目立ち難くでき、合流部16の意匠性をより良くできる。
【0065】
上記形態では、第1糸14や第2糸15により第1基材11や第2基材12、第3基材13に吊り部材9が縫い付けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1糸14や第2糸15とは別の糸を用いて第1縫い代22や第2縫い代23に吊り部材9を縫い付けても良い。この場合にも、吊り部材9は、表皮10のうち第1糸14や第2糸15が縫い付けられた部位を溝6a,6b内へ吊り込む。そして、第2糸15の縫い付けにより倒れようとする第1縫い代22の近くに吊り部材9があると、吊り部材9の吊り込みによって第1縫い代22が起き上がろうとする。
【0066】
上記形態では、ホグリングからなる固定部8に吊り部材9が固定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。吊り部材9を溝6a,6b内へ吊り込むことができれば、固定部や吊り部材の形状、互いの固定方法は適宜変更できる。例えば、吊り部材9の線材9aを挟持するクリップからなる固定部を溝6a,6bに配置しても良い。
【0067】
なお、シートパッド6の溝6a,6b内に第1縫い代22や第2縫い代23を接着剤により固定しても良い。合流部16近くの第1縫い代22がシートパッド6に固定される場合には、第2糸15の縫い付けにより倒れようとする第1縫い代22が起き上がろうとする。また、表皮10の裏面11d,12d,13d側に原料の発泡液を注入してシートパッド6を一体発泡して、表皮10をシートパッド6に一体化しても良い。この場合、シートパッド6を発泡成形するときに、第1縫い代22や第2縫い代23によってシートパッド6の表面から凹んだ部位が溝6a,6bである。この場合にも、合流部16近くの第1縫い代22がシートパッド6の溝6a,6b内に固定され、その固定に伴って、第2糸15の縫い付けにより倒れようとする第1縫い代22が起き上がろうとすることがある。
【0068】
いずれの場合でも、切欠部20によって第2糸15が通る位置の第1縫い代22の幅が狭くなっているので、その第1縫い代22が倒れようとする範囲を狭くできる。その結果、第1縫い代22が溝6a内に固定されることに起因して第1糸14と第2糸15との合流部16にしわ等が発生することを抑制できるので、合流部16の意匠性をより良くできる。
【符号の説明】
【0069】
1 座席
6 シートパッド
6a 溝
10 表皮(縫製品)
11,31,35 第1基材
11a,12a 第1端縁
11b,12b 第2端縁
12 第2基材
13 第3基材
14 第1糸
15 第2糸
18 第1ライン
19 第2ライン
20,32,36 切欠部
21 ガイド
22 第1縫い代
23 第2縫い代