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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/00 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
F04C29/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018211177
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020076385
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】島谷 紘史
(72)【発明者】
【氏名】江崎 郁男
(72)【発明者】
【氏名】小川 真
(72)【発明者】
【氏名】宇野 将成
(72)【発明者】
【氏名】藤原 拓朗
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-047496(JP,U)
【文献】特開2003-206878(JP,A)
【文献】特開2005-337015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる筒状とされたハウジングと、
前記ハウジング内に収容されており、冷媒が圧縮される圧縮室が形成されたシリンダを含む圧縮部と、
前記ハウジング内に収容されて前記軸線方向に延び、一方側が前記圧縮室を貫通するシャフトと、
前記ハウジング内に収容され、前記シャフトの他方側の外周面に設けられたロータ、及び前記ハウジング内に収容されるとともに、前記ロータの外側に位置する前記ハウジングの内周面に固定され、前記軸線方向において前記シリンダと対向するステータを含む電動モータと、
前記ステータまたは前記シリンダに設けられ、前記軸線方向に延び、前記ステータ及び前記シリンダに当接される支持部材と、
前記ステータ及び前記シリンダのうち、前記支持部材が固定されていない非固定部材と前記支持部材とを接続する接続部と、
を備え、
前記シリンダは、前記ハウジングに固定されておらず、
前記支持部材は、前記シリンダと対向する前記ステータの面に設けられており、
前記シリンダは、前記圧縮室が形成され、板状とされたシリンダ本体と、前記支持部材側に配置された前記シリンダ本体の面から前記支持部材に向かう方向に突出する突出部と、前記突出部の内側に形成された係合用凹部と、を有し、
前記接続部は、前記係合用凹部が形成された前記突出部と、前記支持部材に設けられ、前記シリンダ本体に向かう方向に延び、前記係合用凹部と係合する係合用突起を有するとともに、弾性変形可能な材料で構成されたフック部と、で構成された
圧縮機。
【請求項2】
前記シリンダの外周面と前記ハウジングの内周面との間には、隙間が形成されている請求項1記載の圧縮機。
【請求項3】
軸線方向に延びる筒状とされたハウジングと、
前記ハウジング内に収容されており、冷媒が圧縮される圧縮室が形成されたシリンダを含む圧縮部と、
前記ハウジング内に収容されて前記軸線方向に延び、一方側が前記圧縮室を貫通するシャフトと、
前記ハウジング内に収容され、前記シャフトの他方側の外周面に設けられたロータ、及び前記ハウジング内に収容されるとともに、前記ロータの外側に配置され、前記軸線方向において前記シリンダと対向するステータを含む電動モータと、
前記ステータまたは前記シリンダに設けられ、前記軸線方向に延び、前記ステータ及び前記シリンダに当接される支持部材と、
前記ステータ及び前記シリンダのうち、前記支持部材と固定されていない非固定部材と前記支持部材とを接続する接続部と、
を備え、
前記シリンダは、前記ハウジングの内周面に固定されており、
前記ステータは、前記ハウジングに固定されておらず、
前記支持部材は、前記シリンダと対向する前記ステータの面に設けられており、
前記ロータと対向する前記シリンダの面に設けられ、前記シャフトを回転可能に支持する軸受を備え、
前記軸受は、前記シリンダの面と接触し、リング形状とされたリング部と、前記リング部の外周面に形成されたおねじ部と、を有し、
前記支持部材は、前記シリンダと対向する前記ステータの面に設けられ、前記ステータの面から前記シリンダに向かう方向に延びる円筒状とされた支持部材本体と、前記シリンダ側に位置する前記支持部材本体の端部の内周面に形成され、前記おねじ部が螺合されるめねじ部と、を有し、
前記接続部は、前記おねじ部と、前記めねじ部と、で構成されている
圧縮機。
【請求項4】
前記ステータの外周面と前記ハウジングの内周面との間には、隙間が形成されている請求項3記載の圧縮機。
【請求項5】
軸線方向に延びる筒状とされたハウジングと、
前記ハウジング内に収容されており、冷媒が圧縮される圧縮室が形成されたシリンダを含む圧縮部と、
前記ハウジング内に収容されて前記軸線方向に延び、一方側が前記圧縮室を貫通するシャフトと、
前記ハウジング内に収容され、前記シャフトの他方側の外周面に設けられたロータ、及び前記ハウジング内に収容されるとともに、前記ロータの外側に位置する前記ハウジングの内周面に固定され、前記軸線方向において前記シリンダと対向するステータを含む電動モータと、
前記ステータまたは前記シリンダに設けられ、前記軸線方向に延び、前記ステータ及び前記シリンダに当接される支持部材と、
前記ステータ及び前記シリンダのうち、前記支持部材が固定されていない非固定部材と前記支持部材とを接続する接続部と、
を備え、
前記シリンダは、前記ハウジングに固定されておらず、
前記支持部材は、前記シリンダと対向する前記ステータの面に設けられており、
前記ロータと対向する前記シリンダの面に設けられ、前記シャフトを回転可能に支持する軸受を備え、
前記軸受は、前記シリンダの面と接触し、リング形状とされたリング部と、前記リング部の外周面に形成されたおねじ部と、を有し、
前記支持部材は、前記シリンダと対向する前記ステータの面に設けられ、前記ステータの面から前記シリンダに向かう方向に延びる円筒状とされた支持部材本体と、前記シリンダ側に位置する前記支持部材本体の端部の内周面に形成され、前記おねじ部が螺合されるめねじ部と、を有し、
前記接続部は、前記おねじ部と、前記めねじ部と、で構成されている圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、冷凍装置や空気調和装置等に使用されている。
圧縮機は、ハウジングと、圧縮室を区画するシリンダを含む圧縮部と、シャフトと、電動モータと、を有する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ハウジングは、圧縮部、シャフト、ロータ、及びステータを収容している。圧縮部は、圧縮室を区画するシリンダを有する。シャフトは、圧縮室を貫通するように配置されている。
電動モータは、シャフトの外周面に設けられたロータと、ロータの外側に設けられたステータと、を有する。
【0004】
特許文献1には、溶接法を用いて、ハウジングの内周面にシリンダ及びステータを固定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-13064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、溶接法を用いて、ハウジングの内周面にシリンダ及びステータを固定すると、溶接時に圧縮部及びステータが熱応力を受けてしまう。
このため、圧縮部及びステータの両方が変形したり、両方の特性が低下したりして、圧縮機の圧縮効率が大きく低下する可能性があった。
【0007】
なお、溶接法以外の固定方法である焼き嵌め法を用いた場合、上記溶接法を用いた場合と同様な問題が発生する。
また、上記溶接法に替えてカシメ法を用いた場合、圧縮部及びステータの両方が物理的な応力を受けるため、この場合も溶接法を用いた場合と同様な問題が発生する可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、ハウジング内に収容された圧縮部またはステータの変形や特性の低下を抑制することで、圧縮効率の低下を抑制可能な圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る圧縮機は、軸線方向に延びる筒状とされたハウジングと、前記ハウジング内に収容されており、冷媒が圧縮される圧縮室が形成されたシリンダを含む圧縮部と、前記ハウジング内に収容されて前記軸線方向に延び、一方側が前記圧縮室を貫通するシャフトと、前記ハウジング内に収容され、前記シャフトの他方側の外周面に設けられたロータ、及び前記ハウジング内に収容されるとともに、前記ロータの外側に位置する前記ハウジングの内周面に固定され、前記軸線方向において前記シリンダと対向するステータを含む電動モータと、前記ステータまたは前記シリンダに設けられ、前記軸線方向に延び、前記ステータ及び前記シリンダに当接される支持部材と、前記ステータ及び前記シリンダのうち、前記支持部材が固定されていない非固定部材と前記支持部材とを接続する接続部と、を備え、前記シリンダは、前記ハウジングに固定されておらず、前記支持部材は、前記シリンダと対向する前記ステータの面に設けられており、前記シリンダは、前記圧縮室が形成され、板状とされたシリンダ本体と、前記支持部材側に配置された前記シリンダ本体の面から前記支持部材に向かう方向に突出する突出部と、前記突出部の内側に形成された係合用凹部と、を有し、前記接続部は、前記係合用凹部が形成された前記突出部と、前記支持部材に設けられ、前記シリンダ本体に向かう方向に延び、前記係合用凹部と係合する係合用突起を有するとともに、弾性変形可能な材料で構成されたフック部と、で構成されている
【0010】
本発明よれば、ステータまたはシリンダに設けられ、軸線方向に延び、ステータ及びシリンダに当接される支持部材と、支持部材及びシリンダのうち、支持部材が固定されていない非固定部材と支持部材とを接続する接続部と、を備えることで、ハウジングに固定されていないシリンダを支持することが可能となる。
これにより、ステータとハウジングとを固定する際に発生する応力(熱的応力、物理的応力等)がシリンダを含む圧縮部に加わることを抑制可能となるので、圧縮部の変形及び特性の低下に起因する圧縮機の圧縮効率の低下を抑制できる。
さらに、このように、係合用凹部が形成された突出部と、支持部材に設けられ、シリンダ本体に向かう方向に延び、係合用凹部と係合する係合用突起を有するとともに、弾性変形可能な材料で構成されたフック部と、で接続部を構成することで、ハウジングに固定されていないシリンダをハウジングに固定されたステータで支持することができる。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係る圧縮機において、前記シリンダの外周面と前記ハウジングの内周面との間には、隙間が形成されていてもよい。
【0012】
このように、シリンダの外周面とハウジングの内周面との間に隙間を形成することで、ハウジング内にシリンダを含む圧縮部を容易に挿入させることができる。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る圧縮機は、軸線方向に延びる筒状とされたハウジングと、前記ハウジング内に収容されており、冷媒が圧縮される圧縮室が形成されたシリンダを含む圧縮部と、前記ハウジング内に収容されて前記軸線方向に延び、一方側が前記圧縮室を貫通するシャフトと、前記ハウジング内に収容され、前記シャフトの他方側の外周面に設けられたロータ、及び前記ハウジング内に収容されるとともに、前記ロータの外側に配置され、前記軸線方向において前記シリンダと対向するステータを含む電動モータと、前記ステータまたは前記シリンダに設けられ、前記軸線方向に延び、前記ステータ及び前記シリンダに当接される支持部材と、前記ステータ及び前記シリンダのうち、前記支持部材と固定されていない非固定部材と前記支持部材とを接続する接続部と、を備え、前記シリンダは、前記ハウジングの内周面に固定されており、前記ステータは、前記ハウジングに固定されておらず、前記支持部材は、前記シリンダと対向する前記ステータの面に設けられており、前記ロータと対向する前記シリンダの面に設けられ、前記シャフトを回転可能に支持する軸受を備え、前記軸受は、前記シリンダの面と接触し、リング形状とされたリング部と、前記リング部の外周面に形成されたおねじ部と、を有し、前記支持部材は、前記シリンダと対向する前記ステータの面に設けられ、前記ステータの面から前記シリンダに向かう方向に延びる円筒状とされた支持部材本体と、前記シリンダ側に位置する前記支持部材本体の端部の内周面に形成され、前記おねじ部が螺合されるめねじ部と、を有し、前記接続部は、前記おねじ部と、前記めねじ部と、で構成されている
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る圧縮機は、軸線方向に延びる筒状とされたハウジングと、前記ハウジング内に収容されており、冷媒が圧縮される圧縮室が形成されたシリンダを含む圧縮部と、前記ハウジング内に収容されて前記軸線方向に延び、一方側が前記圧縮室を貫通するシャフトと、前記ハウジング内に収容され、前記シャフトの他方側の外周面に設けられたロータ、及び前記ハウジング内に収容されるとともに、前記ロータの外側に位置する前記ハウジングの内周面に固定され、前記軸線方向において前記シリンダと対向するステータを含む電動モータと、前記ステータまたは前記シリンダに設けられ、前記軸線方向に延び、前記ステータ及び前記シリンダに当接される支持部材と、前記ステータ及び前記シリンダのうち、前記支持部材が固定されていない非固定部材と前記支持部材とを接続する接続部と、を備え、前記シリンダは、前記ハウジングに固定されておらず、前記支持部材は、前記シリンダと対向する前記ステータの面に設けられており、前記ロータと対向する前記シリンダの面に設けられ、前記シャフトを回転可能に支持する軸受を備え、前記軸受は、前記シリンダの面と接触し、リング形状とされたリング部と、前記リング部の外周面に形成されたおねじ部と、を有し、前記支持部材は、前記シリンダと対向する前記ステータの面に設けられ、前記ステータの面から前記シリンダに向かう方向に延びる円筒状とされた支持部材本体と、前記シリンダ側に位置する前記支持部材本体の端部の内周面に形成され、前記おねじ部が螺合されるめねじ部と、を有し、前記接続部は、前記おねじ部と、前記めねじ部と、で構成されている。
【0014】
本発明によれば、ステータまたはシリンダに設けられ、軸線方向に延び、ステータ及びシリンダに当接される支持部材と、支持部材及びシリンダのうち、支持部材と固定されていない非固定部材と支持部材とを接続する接続部と、を備えることで、ハウジングに固定されていないステータを支持することが可能となる。
これにより、シリンダとハウジングとを固定する際に発生する応力(熱的応力、物理的応力等)がステータに加わることを抑制可能となるので、ステータの変形及び特性の低下に起因する圧縮機の圧縮効率の低下を抑制できる。
さらに、このように、リング形状とされたリング部の外周面に形成されたおねじ部と、シリンダ側に位置する支持部材本体の端部の内周面に形成され、おねじ部が螺合されるめねじ部と、で接続部を構成することで、ステータがハウジングに固定され、シリンダがハウジングに固定されていない場合には、ステータによりシリンダを支持することができ、シリンダがハウジングに固定され、ステータがハウジングに固定されていない場合には、シリンダによりステータを支持することができる。
【0015】
また、上記本発明の一態様に係る圧縮機において、前記ステータの外周面と前記ハウジングの内周面との間には、隙間が形成されていてもよい。
【0016】
このように、ステータの外周面とハウジングの内周面との間に隙間を形成することで、ハウジング内にステータを容易に挿入させることができる。
【0021】
また、上記本発明の一態様に係る圧縮機において、前記支持部材は、前記シリンダと対向する前記ステータの面に設けられ、かつ前記シリンダに当接されており、前記接続部は、前記シリンダのうち、前記支持部材と対向する部分を前記軸線方向に貫通して形成された複数の第1のボルト孔と、前記支持部材のうち、前記第1のボルト孔と対向する部分に形成された第2のボルト孔と、前記支持部材が当接された側とは反対側に位置する前記シリンダの面に配置された頭部、及び前記第1及び第2のボルト孔に締結される軸部を含む第1のボルトと、を有してもよい。
【0022】
このように、シリンダのうち、支持部材と対向する部分を軸線方向に貫通して形成された複数の第1のボルト孔と、支持部材のうち、第1のボルト孔と対向する部分に形成された第2のボルト孔と、支持部材が当接された側とは反対側に位置するシリンダの面に配置された頭部、及び第1及び第2のボルト孔に締結される軸部を含む第1のボルトと、と有する接続部を備えることで、ステータがハウジングに固定され、シリンダがハウジングに固定されていない場合には、ステータによりシリンダを支持することができ、シリンダがハウジングに固定され、ステータがハウジングに固定されていない場合には、シリンダによりステータを支持することができる。
【0023】
また、上記本発明の一態様に係る圧縮機において、前記支持部材は、前記ステータと対向する前記シリンダの面に設けられ、かつ前記ステータに当接されており、前記接続部は、前記ステータのうち、前記支持部材と対向する部分を前記軸線方向に貫通して形成された複数の第3のボルト孔と、前記支持部材のうち、前記第3のボルト孔と対向する部分に形成された第4のボルト孔と、前記支持部材が当接された側とは反対側に位置する前記ステータの面に配置された頭部、並びに前記第3及び第4のボルト孔に締結される軸部を含む第2のボルトと、を有してもよい。
【0024】
このように、ステータのうち、支持部材と対向する部分を軸線方向に貫通して形成された複数の第3のボルト孔と、支持部材のうち、第3のボルト孔と対向する部分に形成された第4のボルト孔と、支持部材が当接された側とは反対側に位置するステータの面に配置された頭部、並びに第3及び第4のボルト孔に締結される軸部を含む第2のボルトと、を有する接続部を備えることで、ステータがハウジングに固定され、シリンダがハウジングに固定されていない場合には、ステータによりシリンダを支持することができ、シリンダがハウジングに固定され、ステータがハウジングに固定されていない場合には、シリンダによりステータを支持することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ハウジング内に収容された圧縮部またはステータの変形や特性の低下を抑制することで、圧縮機の圧縮効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態に係る圧縮機の概略構成を示す断面図である。
図2図1に示す係合用凹部とフック部とが係合していない状態を模式的に示す断面図である。
図3図1に示す接続部を拡大した断面図であり、係合用凹部に対してフック部が係合した状態を模式的に示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る圧縮機の概略構成を示す断面図である。
図5図4に示すおねじ部がめねじ部に螺合された状態から、螺合状態を解除して、おねじ部が形成された上軸受の上方にめねじ部が形成された支持部材を離間させた状態を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る圧縮機の概略構成を示す断面図である。
図7図7に示す支持部材を下方から視た平面図である。
図8】本発明の第3の実施形態の変形例に係る圧縮機の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
図1図3を参照して、第1の実施形態の圧縮機10について説明する。図1において、Oはシャフト23の軸線(以下、「軸線O」という)、Oは偏心軸部39の軸線(以下、「軸線O」という)、Zは軸線O,Oが延びる方向である軸線方向をそれぞれ示している。図1図3において、同一構成部分には、同一符号を付す。
なお、第1の実施形態では、圧縮機10の一例として、ロータリ圧縮機を例に挙げて、以下の説明をする。
【0028】
圧縮機10は、圧縮機本体11と、アキュムレータ12と、ブラケット13と、吸入管14と、を有する。
圧縮機本体11は、ハウジング17と、ガイドパイプ18と、圧縮部21と、シャフト23と、上軸受24と、下軸受25と、電動モータ26と、支持部材27と、接続部28と、吐出管31と、を有する。
【0029】
ハウジング17は、密閉型のハウジングであり、Z方向に延びている。ハウジング17は、柱状とされた内部空間Aを区画している。ハウジング17は、筒状部33と、底部34と、蓋部35と、を有する。
【0030】
筒状部33は、Z方向に延びており、上端及び下端が開放端とされている。筒状部33の下部には、吸入孔33Aが形成されている。
【0031】
底部34は、上部が筒状部33の下端に挿入された状態で、筒状部33に固定されている。これにより、底部34は、筒状部33の下端を塞いでいる。底部34の下部は、筒状部33の下端から下方に突出している。
【0032】
蓋部35は、下部が筒状部33の上端に挿入された状態で、筒状部33に固定されている。蓋部35は、上部が筒状部33の上端から突出している。蓋部35の上端には、貫通部35Aが形成されている。
【0033】
ガイドパイプ18は、両端が開放端とされた筒状の部材であり、吸入孔33Aに挿入された状態で、筒状部33に固定されている。ガイドパイプ18には、吸入管14が挿入されている。ガイドパイプ18は、吸入管14が延びる方向を案内している。
【0034】
圧縮部21は、ハウジング17内に収容されており、内部空間Aの下部に配置されている。
圧縮部21は、シリンダ38と、シャフト23を構成する偏心軸部39と、ピストンロータ41と、ブレード(図示せず)と、ブレード押圧部材(図示せず)と、を有する。
【0035】
シリンダ38は、シリンダ本体51と、圧縮室52と、ブレード収容溝(図示せず)と、冷媒供給路53と、吐出穴(図示せず)と、突出部54と、係合用凹部55と、を有する。
【0036】
シリンダ本体51は、板状とされた部材である。シリンダ本体51は、上面51bと、外周面51aと、を有する。
上面51bは、支持部材27側に配置されたシリンダ本体51の面である。上面51bは、ステータ62の下面62aに設けられた支持部材27と対向している。
外周面51aは、シリンダ本体51の径方向において筒状部33の内周面33aと対向している。外周面51aは、筒状部33(ハウジング17)に固定されていない。
上記構成とされたシリンダ38は、支持部材27と固定されていない非固定部材である。
【0037】
シリンダ本体51の外周面51aと筒状部33の内周面33aとの間には、隙間G1が形成されている。
【0038】
このように、シリンダ本体51の外周面51a(シリンダ38の外周面)と筒状部33の内周面33a(ハウジング17の内周面)との間に隙間G1を形成することで、筒状部33内にシリンダ38を含む圧縮部21を容易に挿入させることができる。
【0039】
圧縮室52は、ハウジング17内に配置されている。圧縮室52は、シリンダ本体51の中央部をZ方向に貫通するように形成されている。圧縮室52は、円柱状とされており、内周面52aを有する。圧縮室52では、冷媒が圧縮される。
【0040】
ブレード収容溝(図示せず)は、シリンダ本体51に形成されている。ブレード収容溝は、圧縮室52と連通しており、圧縮室52の内周面52aからシリンダ本体51の径方向外側に延びている。
【0041】
冷媒供給路53は、シリンダ本体51に形成されている。冷媒供給路53は、圧縮室52の外側に配置されたシリンダ本体51を径方向に貫通している。
これにより、冷媒供給路53の端部のうち、圧縮室52側に位置する一方の端は、圧縮室52に連通している。
【0042】
冷媒供給路53の他方の端は、筒状部33に形成された吸入孔33Aと対向するように配置されている。冷媒供給路53の他方の端部は、吸入管14の先端部14Aを装着可能な形状とされている。
上記構成とされた冷媒供給路53は、吸入管14から供給される気相冷媒を圧縮室52へと導く。
【0043】
吐出穴(図示せず)は、シリンダ本体51の所定位置に設けられている。吐出穴は、圧縮部21の外部に圧縮された気相冷媒(以下、「圧縮冷媒」という)を導出可能な状態で、圧縮室52と連通している。吐出穴には、リード弁(図示せず)が設けられている。
【0044】
突出部54は、シリンダ本体51の上面51bに設けられている。突出部54は、シリンダ本体51の上面51bから支持部材27に向かう方向に突出している。突出部54は、筒状の部材である。
【0045】
係合用凹部55は、突出部54の内周面側に形成されている。係合用凹部55は、突出部54の周方向に間隔を空けて複数形成されている。係合用凹部55は、後述するフック部65を構成する係合用突起68と係合することが可能な形状とされている。
係合用凹部55は、フック部65と同じ数形成されている。
【0046】
偏心軸部39は、シャフト23を構成している。偏心軸部39は、Z方向に延びるシャフト本体56のうち、圧縮室52に挿入された部分に設けられている。これにより、偏心軸部39は、圧縮室52に配置されている。偏心軸部39は、円柱形状とされている。
偏心軸部39の軸線Oは、シャフト本体56の軸線Oからオフセットされた位置に配置されている。
【0047】
ピストンロータ41は、偏心軸部39を収容する収容部41Aを有する。これにより、ピストンロータ41は、偏心軸部39の外側に配置されるとともに、圧縮室52に配置される。ピストンロータ41は、偏心軸部39が回転した際、圧縮室52の内周面52aに沿って転動する。
【0048】
ブレード(図示せず)は、板状の部材であり、少なくとも一部がブレード収容溝内に配置されている。ブレードは、ブレード収容溝が延びる方向と同じ方向に延びている。
ブレードは、ピストンロータ41の外周面に当接された状態でシリンダ本体51の径方向に移動する。
【0049】
ブレード押圧部材(図示せず)は、ブレードの後端側に位置するブレード収容溝に配置されている。ブレード押圧部材は、ブレードの先端をピストンロータ41の外周面に押し当てるための部材である。
【0050】
上記構成とされた圧縮室52では、圧縮室52内に気相冷媒が導入されると、ピストンロータ41の偏心転動により、圧縮室52の容積が徐々に減少して気相冷媒が圧縮される。
そして、圧縮された冷媒の圧力が高まると、リード弁(図示せず)が押し開かれて、シリンダ38の外部に圧縮冷媒が吐出される。
圧縮冷媒は、ハウジング17の上部に設けられた吐出管31を介して、吐出管31と接続された配管(図示せず)内に排出される。
【0051】
シャフト23は、ハウジング17内に収容されており、シャフト本体56と、シャフト本体56に設けられた偏心軸部39と、を有する。
シャフト本体56は、シャフト本体56の一方側が圧縮室52を貫通するように、Z方向に延びている。シャフト本体56の他方側(シャフト23の他方側)は、シャフト本体56の一方側(シャフト23の一方側)の上方に配置されている。
軸線Oは、ハウジング17の軸線と一致している。
【0052】
上軸受24は、ハウジング17内に収容されている。上軸受24は、圧縮室52の上端(開放端)を塞ぐように、シリンダ本体51の上面51bに配置されている。上軸受24は、シリンダ38の直上に位置するシャフト本体56の外周面を囲んでいる。上軸受24は、軸線O回りにシャフト本体56が回転可能な状態で、シャフト本体56を支持している。
【0053】
下軸受25は、ハウジング17内に収容されている。下軸受25は、圧縮室52の下端(開放端)を塞ぐように、シリンダ38の下面に配置されている。下軸受25は、シリンダ38の直下に位置するシャフト本体56の外周面を囲んでいる。下軸受25は、軸線O回りシャフト本体56が回転可能な状態で、シャフト本体56を支持している。
【0054】
電動モータ26は、ハウジング17内に収容されており、ロータ61と、ステータ62と、を有する。
ロータ61は、シャフト本体56の他方側(上部)に設けられている。
ステータ62は、ロータ61の外側に位置する筒状部33の内周面33aに固定されている。ステータ62は、シリンダ本体51から上方に離れた状態で配置されている。
ステータ62の下面62aは、Z方向においてシリンダ本体51の上面51bと対向している。ステータ62の下面62aとシリンダ本体51の上面51bとの間には、筒状の空間が形成されている。
上記構成とされた電動モータ26は、シャフト23を介して、圧縮部21を電動駆動させる。
【0055】
支持部材27は、ステータ62の下面62aに設けられるとともに、ステータ62に固定されている。
支持部材27は、ステータ62とシリンダ本体51との間をZ方向(この場合、ステータ62からシリンダ本体51に向かう方向)に延びる筒状の部材である。支持部材27は、Z方向において突出部54と対向する下面27aを有する。
【0056】
Z方向における支持部材27の長さは、接続部28を構成するフック部65の係合用突起68と係合用凹部55とが係合可能な長さとされている。
支持部材27は、例えば、係合用凹部55の数と同じ数からなる柱状部材で構成してもよいし、1つの円筒状の部材で構成してもよい。支持部材27の材料としては、例えば、樹脂を用いることが可能である。
【0057】
接続部28は、複数のフック部65と、先に説明した突出部54及び係合用凹部55と、を有した構成とされている。
複数のフック部65は、支持部材27の下面27aに設けられている。複数のフック部65は、周方向に間隔を空けて配置されている。
【0058】
フック部65は、支持部67と、係合用突起68と、を有する。
支持部67は、突出部54の内周面に沿うように、支持部材27の下面27aからシリンダ本体51の上面51bに向かう方向(Z方向)に延びている。支持部材27の下端部は、突出部54の径方向において係合用凹部55と対向している。
【0059】
係合用突起68は、支持部材27の下端部の外面に設けられている。係合用突起68は、支持部材27の下端部の外面から筒状部33の内周面33aに向かう方向に突出している。
係合用突起68は、係合用凹部55に対して係合可能な形状とされている。
【0060】
上記構成とされたフック部65は、弾性変形可能な材料(例えば、樹脂)で構成されている。
このため、図2に示す状態(係合用突起68と係合用凹部55とが係合していない状態)から、ステータ62とともに支持部材27を下方に移動させると、係合用凹部55の位置まで係合用突起68が移動して、図1及び図3に示すように、係合用突起68と係合用凹部55とが係合する。
【0061】
このように、係合用突起68と係合用凹部55とが係合することで、支持部材27及びフック部65を介して、ハウジング17に固定されたステータ62により、ハウジング17に固定されていないシリンダ38を支持することが可能となる。
一方、図2に示す状態から、ステータ62とともに支持部材27を上方に移動させると、フック部65が突出部54から離れる。
【0062】
上記構成とされたフック部65は、先に説明した支持部材27と一体に形成することが好ましい。
このように、フック部65は、先に説明した支持部材27と一体に形成することで、フック部65と支持部材27との境界部分の強度を向上させることができる。
【0063】
吐出管31は、貫通部35Aに挿入された状態で、蓋部35に固定されている。吐出管31は、圧縮部21により生成された圧縮冷媒を外部に導出するための管である。吐出管31は、例えば、軸線Oが通過する位置に配置させてもよい。
【0064】
アキュムレータ12は、板状のブラケット13を介して、溶接やボルト等の固定手段によって筒状部33に固定されている。アキュムレータ12は、上端に冷媒を吸入する吸入口12Aを有する。アキュムレータ12は、吸入口12Aから冷媒を取り込み、該冷媒を気液分離させる。
【0065】
吸入管14は、一端がアキュムレータ12内の気相に到達しており、他端が圧縮部21を構成する冷媒供給路53と接続されている。
吸入管14は、ガイドパイプ18を介して、ハウジング17内に挿入されている。吸入管14は、ガイドパイプ18に固定されている。
吸入管14は、圧縮室52にアキュムレータ12内の気相冷媒を供給する。
【0066】
第1の実施形態の圧縮機10によれば、筒状部33の内周面33aに固定され、Z方向においてシリンダ38と対向するステータ62と、圧縮部21を構成するとともに、ハウジング17に固定されていないシリンダ38(非固定部材)と、ステータ62の下面62aに設けられ、ステータ62の下面62aからシリンダ38に向かうZ方向に延び、シリンダ38を支持する支持部材27と、支持部材27の下面27aに設けられたフック部65、シリンダ38を構成する突出部54、及び突出部54に形成された係合用凹部55を有するとともに、シリンダ38と支持部材27とを接続する接続部28と、を備えることで、ハウジング17に固定されていないシリンダ38を支持することが可能となる。
【0067】
そして、シリンダ38をハウジング17に固定しないことで、ステータ62とハウジング17とを固定する際に発生する応力(熱的応力、物理的応力等)がシリンダ38に加わることを抑制可能となる。これにより、シリンダ38を含む圧縮部21(非固定部材)の変形及び特性の低下に起因する圧縮機10の圧縮効率の低下を抑制することができる。
【0068】
なお、第1の実施形態では、一例として、Z方向に1つの圧縮部21を設けた場合を例に挙げて説明したが、Z方向に複数の圧縮部を設けたロータリ圧縮機にも適用可能である。
【0069】
(第2の実施形態)
図4及び図5を参照して、本発明の第2の実施形態に係る圧縮機70について説明する。図4において、図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。図5において、図4に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0070】
第2の実施形態の圧縮機70は、第1の実施形態の圧縮機10を構成する圧縮機本体11に替えて、圧縮機本体71を有すること以外は、圧縮機10と同様に構成されている。
【0071】
圧縮機本体71は、第1の実施形態で説明した圧縮機本体11を構成するシリンダ38、上軸受24、支持部材27、接続部28、及びフック部65に替えて、シリンダ73、上軸受75、支持部材77と、接続部79と、を有するとともに、ハウジング17にステータ62を固定させないで、ハウジング17にシリンダ73を固定させること以外は、圧縮機本体11と同様に構成されている。
【0072】
シリンダ73は、第1の実施形態で説明したシリンダ38の構成要素から突出部54及び係合用凹部55を除き、シリンダ本体51の外周面51aを筒状部33の内周面33aに固定させたこと以外は、シリンダ38と同様に構成されている。
シリンダ本体51の外周面51aを筒状部33の内周面33aに固定させる方法としては、例えば、溶接法、焼き嵌め法、及びカシメ法等の方法を用いることが可能である。
【0073】
上軸受75は、リング部82と、おねじ部83と、筒部84と、を有する。
リング部82は、リング形状とされており、ロータ61と対向するシリンダ本体51の上面51cに設けられている。リング部82は、シリンダ本体51の上面51c(上面51bの内側に配置された面)と接触している。
リング部82は、シャフト本体56の外側に配置されている。おねじ部83は、リング部の外周面に形成されたおねじにより構成されている。
筒部84は、リング部82の上面側に設けられている。筒部84は、リング部82の上面からロータ61に向かう方向に延びている。筒部84は、シャフト本体56の外周面の一部を収容している。
【0074】
支持部材77は、支持部材本体85と、めねじ部86と、を有する。
支持部材本体85は、ステータ62の下面62aに設けられている。支持部材本体85は、ステータ62の下面62aからシリンダ本体51の上面51bに向かう方向に延びている。支持部材本体85の形状は、円筒形状とされている。支持部材本体85の材料としては、例えば、樹脂を用いることが可能である。
めねじ部86は、シリンダ73側に位置する支持部材本体85の端部の内周面85aに形成されている。めねじ部86は、おねじ部83が螺合される部分である。
【0075】
上記構成とされた圧縮機本体71では、ステータ62及び支持部材77からなる構造体を軸線O回りに回すことで、めねじ部86におねじ部83を螺合させる。これにより、ハウジング17に固定されていないステータ62は、シリンダ73を介して、ハウジング17に支持される。
【0076】
また、上記構成とされた圧縮機本体71では、ステータ62の外周面62bと筒状部33の内周面33aとの間には、隙間G2が形成されている。
このように、ステータ62の外周面62bと筒状部33の内周面33aとの間に隙間G2を形成することで、筒状部33内にステータ62を容易に挿入させることができる。
【0077】
接続部79は、上述したおねじ部83及びめねじ部86で構成されている。接続部79は、上軸受75と支持部材77とを接続している。
【0078】
第2の実施形態の圧縮機70によれば、リング形状とされたリング部82の外周面に形成されたおねじ部83を有する上軸受75と、支持部材本体85の端部の内周面85aに形成され、おねじ部83が螺合されるめねじ部86を有する支持部材77と、で構成された接続部79を有することで、ハウジング17に固定されていないステータ62をハウジング17に固定されたシリンダ73により支持することが可能となる。
【0079】
そして、ステータ62をハウジング17に固定しないことで、シリンダ73とハウジング17とを固定する際に発生する応力(熱的応力、物理的応力等)がステータ62に加わることを抑制可能となる。これにより、ステータ62(非固定部材)の変形及び特性の低下に起因する圧縮機10の圧縮効率の低下を抑制することができる。
【0080】
なお、第2の実施形態では、一例として、シリンダ73をハウジング17に固定し、ステータ62をハウジング17に固定しない場合を例に挙げて説明したが、シリンダ73をハウジング17に固定しないで、ステータ62をハウジング17に固定してもよい。
この場合、第1の実施形態の圧縮機10と同様な効果を得ることができる。
【0081】
(第3の実施形態)
図6及び図7を参照して、本発明の第3の実施形態に係る圧縮機90について説明する。
図6において、図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。図7において、図6に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0082】
第3の実施形態の圧縮機90は、第1の実施形態の圧縮機10を構成する圧縮機本体11に替えて、圧縮機本体91を有すること以外は、圧縮機10と同様に構成されている。
【0083】
圧縮機本体91は、第1の実施形態で説明した圧縮機本体11を構成するシリンダ38、支持部材27、接続部28、及びフック部65に替えて、シリンダ93、支持部材95と、第2のボルト孔96と、第1のボルト98と、接続部99と、を有すること以外は、圧縮機本体11と同様に構成されている。
【0084】
シリンダ93は、第1の実施形態で説明したシリンダ38の構成要素から突出部54及び係合用凹部55を除くとともに、第1のボルト孔51Aを有すること以外は、シリンダ38と同様に構成されている。
つまり、シリンダ93は、筒状部33の内周面33aに固定されていない。シリンダ93を構成するシリンダ本体51の外周面51aと筒状部33の内周面33aとの間には、隙間G1が形成されている。
【0085】
第1のボルト孔51Aは、シリンダ本体51の上面51bのうち、支持部材95と対応する部分に形成されている。第1のボルト孔51Aは、シリンダ本体51をZ方向に貫通するように形成されている。第1のボルト孔51Aは、シリンダ本体51の周方向に間隔を空けて複数形成されている。
なお、図7では、一例として、第1のボルト孔51Aを3つ形成した場合を例に挙げて説明したが、第1のボルト孔51Aの数は、複数であればよく、3つに限定されない。
【0086】
支持部材95は、シリンダ93と対向するステータ62の下面62aに設けられている。支持部材95は、ステータ62の下面62aからシリンダ本体51の上面51bに向かうZ方向に延びた円筒状の部材である。
支持部材95の下面95aは、シリンダ本体51の上面51bに当接されている。
支持部材95の材料としては、例えば、樹脂を用いることが可能である。
【0087】
第2のボルト孔96は、Z方向において第1のボルト孔51Aと対向する支持部材95の下部に形成されている。第2のボルト孔96は、第1のボルト孔51Aと連通している。
【0088】
第1のボルト98は、頭部98Aと、軸部98Bと、を有する。頭部98Aは、支持部材95が当接された側とは反対側に位置するシリンダ本体51の下面51dに配置されている。
軸部98Bは、頭部98Aと一体に構成されている。軸部98Bは、第1及び第2のボルト孔51A,96に締結されている。
【0089】
接続部99は、上述した複数の第1のボルト孔51Aと、複数の第2のボルト孔96と、複数の第1のボルト98と、を有した構成とされている。
接続部99は、シリンダ本体51と支持部材95とを接続している。
【0090】
第3の実施形態の圧縮機90によれば、シリンダ本体51のうち、ステータ62の下面62aに設けられた支持部材95と対向する部分をZ方向に貫通して形成された複数の第1のボルト孔51Aと、支持部材95のうち、第1のボルト孔51Aと対向する部分に形成された第2のボルト孔96と、シリンダ本体51の下面51dに配置された頭部98A、並びに第1及び第2のボルト孔51A,96に締結される軸部98Bを含む第1のボルト98と、で構成された接続部99を有することで、ハウジング17に固定されていないシリンダ93をハウジング17に固定されたステータ62により支持することが可能となる。
【0091】
そして、シリンダ93をハウジング17に固定しないことで、ステータ62とハウジング17とを固定する際に発生する応力(熱的応力、物理的応力等)がシリンダ93に加わることを抑制可能となるので、シリンダ93を含む圧縮部(非固定部材)の変形及び特性の低下に起因する圧縮機90の圧縮効率の低下を抑制することができる。
【0092】
なお、第3の実施形態では、ハウジング17にステータ62を固定し、ハウジング17にシリンダ93を固定させない場合を例に挙げて説明したが、ハウジング17にステータ62を固定しないで、ハウジング17にシリンダ93を固定させてもよい。このような構成とされた圧縮機は、第3の実施形態の圧縮機90と同様な効果を得ることができる。
【0093】
次に、図8を参照して、第3の実施形態の変形例に係る圧縮機100について説明する。図8において、第3の実施形態に係る圧縮機90と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0094】
圧縮機100は、第3の実施形態の圧縮機90を構成する圧縮機本体91に替えて、圧縮機本体101を有すること以外は、圧縮機90と同様に構成されている。
【0095】
圧縮機本体101は、第1の実施形態で説明した圧縮機本体11を構成するシリンダ93、支持部材95、第2のボルト孔96、第1のボルト98、及び接続部99に替えて、第2の実施形態で説明したシリンダ73と、第3のボルト孔104と、支持部材105と、第4のボルト孔107と、第2のボルト109と、接続部111と、を有するとともに、ステータ62を筒状部33に固定させていないこと以外は、圧縮機本体11と同様に構成されている。
ステータ62の外周面62bと筒状部33の内周面33aとの間には、隙間G2が形成されている。
【0096】
第3のボルト孔104は、ステータ62を構成するステータコアをZ方向に貫通するように形成されている。第3のボルト孔104は、ステータ62の周方向に間隔を空けて複数形成されている。
【0097】
支持部材105は、ステータ62と対向するシリンダ本体51の上面51bに設けられている。支持部材105の下端は、シリンダ本体51の上面51bに固定されている。
支持部材105は、シリンダ本体51の上面51bからステータ62の下面62aに向かうZ方向に延びている。支持部材105の上面105aは、ステータ62の下面62aに当接されている。
支持部材105は、例えば、1つの円筒状の部材で構成してもよいし、複数の柱状の部材で構成してもよい。支持部材105の材料としては、例えば、樹脂を用いることが可能である。
【0098】
第4のボルト孔107は、支持部材105のうち、第3のボルト孔104と対向する部分に形成されている。第4のボルト孔107は、Z方向に延びている。第4のボルト孔107の長さは、Z方向における支持部材105の長さよりも短くなるように構成されている。
【0099】
第2のボルト109は、頭部109Aと、頭部109Aと一体とされた軸部109Bと、を有する。
頭部109Aは、支持部材105が当接された側とは反対側に位置するステータ62の上面62cに配置されている。
軸部109Bは、Z方向に延びている。軸部109Bは、第3及び第4のボルト孔104,107に締結されている。
【0100】
接続部111は、上述した第3のボルト孔104と、第4のボルト孔107と、第2のボルト109と、を有した構成とされている。
接続部111は、シリンダ73に固定された支持部材105とステータ62とを接続している。
【0101】
第3の実施形態の変形例に係る圧縮機100によれば、支持部材105と対向する部分をZ方向に貫通して形成された複数の第3のボルト孔104と、支持部材105のうち、第3のボルト孔104と対向する部分に形成された第4のボルト孔107と、ステータ62の上面62cに配置された頭部109A、並びに第3及び第4のボルト孔104,107に締結される軸部109Bを含む第2のボルト109と、を有する接続部111を備えることで、シリンダ73に固定された支持部材105とステータ62とを接続して、シリンダ73により、支持部材105を介して、ハウジング17に固定されていないステータ62を支持することが可能となる。
【0102】
そして、ステータ62をハウジング17に固定しないことで、シリンダ73とハウジング17とを固定する際に発生する応力(熱的応力、物理的応力等)がステータ62に加わることを抑制可能となる。これにより、ステータ62(非固定部材)の変形及び特性の低下に起因する圧縮機100の圧縮効率の低下を抑制することができる。
【0103】
なお、第3の実施形態の変形例では、ハウジング17にステータ62を固定しないで、ハウジング17にシリンダ93を固定させた場合を例に挙げて説明したが、ハウジング17にステータ62を固定し、ハウジング17にシリンダ93を固定させない構成としてもよい。このような構成とされた圧縮機は、第3の実施形態の変形例の圧縮機100と同様な効果を得ることができる。
【0104】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0105】
10,70,90,100…圧縮機
11,71,91,101…圧縮機本体
12…アキュムレータ
12A…吸入口
13…ブラケット
14…吸入管
14A…先端部
17…ハウジング
18…ガイドパイプ
21…圧縮部
23…シャフト
24,75…上軸受
25…下軸受
26…電動モータ
27,77,95,105…支持部材
27a,51d,62a,95a…下面
28,79,99,111…接続部
31…吐出管
33…筒状部
33a,52a,85a…内周面
33A…吸入孔
34…底部
35…蓋部
35A…貫通部
38,73,93…シリンダ
39…偏心軸部
41…ピストンロータ
41A…収容部
51…シリンダ本体
51a,62b…外周面
51A…第1のボルト孔
51b,51c,62c,105a…上面
52…圧縮室
53…冷媒供給路
54…突出部
55…係合用凹部
56…シャフト本体
61…ロータ
62…ステータ
65…フック部
67…支持部
68…係合用突起
82…リング部
83…おねじ部
84…筒部
85…支持部材本体
86…めねじ部
96…第2のボルト孔
98…第1のボルト
98A,109A…頭部
98B,109B…軸部
104…第3のボルト孔
107…第4のボルト孔
109…第2のボルト
A…内部空間
G1,G2…隙間
,O…軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8