IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セルプライ・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】スクリーニングキットおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20230118BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230118BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230118BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230118BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
G01N35/10 A
C12M1/00 A
C12M1/34 B
G01N37/00 101
B01J19/00 321
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018566240
(86)(22)【出願日】2017-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 IB2017053530
(87)【国際公開番号】W WO2017216739
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-05-19
(31)【優先権主張番号】102016000061106
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】102016000122158
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518442240
【氏名又は名称】セルプライ・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CELLPLY S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・ボッキ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ファエンツァ
(72)【発明者】
【氏名】ラウラ・ロッキ
(72)【発明者】
【氏名】ダリオ・ビスカリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ペコラーリ
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-200277(JP,A)
【文献】特開2010-217145(JP,A)
【文献】特開2012-173059(JP,A)
【文献】特表2013-527022(JP,A)
【文献】特開2010-214755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10、35/08
C12M 1/00
G01N 37/00
B01J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キットであって、
先端部(20)と、
開口型マイクロウェル(2)のアレイ、少なくとも1つのマイクロチャネル(3)、試薬用および/または1つ以上の生物学的試料用の少なくとも1つの入力ポート(8)、およびそれら用の少なくとも1つの出力ポート(10)を含む逆開口型マイクロウェルシステムであるマイクロ流体デバイス(1)であって、前記入力ポートおよび前記出力ポートは、前記マイクロチャネル(3)の1つ以上とマイクロ流体で連通しており、前記マイクロチャネル(3)は、マイクロメートル寸法の断面積を有し、前記開口型マイクロウェル(2)に流体を供給するマイクロ流体デバイス(1)と
を含み、
前記先端部(20)は、流体分配システムと協働するように意図された近位部(22)および弾性のある遠位部(21)を含み、前記近位部(22)は略管状構成であり、前記遠位部(21)は開口型で先細り、前記遠位部(21)の末端基部(25)が寸法d3の外径を有するプラスチックから形成された前記遠位部(21)の上側基部(24)が寸法d4の外径を有し、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の高さ、すなわち前記遠位部(21)の前記上側基部(24)と前記末端基部(25)との間の距離はh2であり、前記遠位部(21)によって形成される円錐台の半開口部は、(90°-β)であり、前記近位部(22)の高さはh3であり、前記入力ポート(8)は、前記少なくとも1つのマイクロチャネル(3)に通じ、弾性のあるプラスチック製の垂直チャネル(18)を含み、前記垂直チャネル(18)の上方開口部は直径d2を有し、d3<d2であり、前記垂直チャネル(18)は、上側基部(9)および下側基部(12)を有する下方に先細になっているチャネルであり、前記下側基部(12)は寸法d1の直径を有し、前記垂直チャネル(18)は高さh1を有し、前記先細りしたチャネルによって形成される円錐台の準開口部が(90°-α1)であり、前記先端部(20)と前記垂直チャネル(18)は、間に干渉連結を生成するように寸法決めされるキット。
【請求項2】
前記角度βおよびα1は、互いに最大15°の差を有する、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記先端部(20)の前記遠位部(21)が、前記遠位部に沿って前記遠位部(21)の前記末端基部(25)に対して高さh_xに配置された点(28)において寸法d2の直径部分を有し、前記高さh_xは、前記垂直チャネル(18)の前記上側基部(9)と前記マイクロチャネル(3)の入力点との間の距離よりも小さく、前記距離は、任意のコネクタなしでh1であり、d3<d2<d4かつ(90°-α1)<(90°-β)であり、α1は80°と90°との間である、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
d1<d3<d2かつ(90°-α1)>(90°-β)であり、前記先端部(20)が、長さh_xの部分(27)によって前記入力ポート(8)に含まれる前記垂直チャネル(18)に挿入される、請求項1または2に記載のキット。
【請求項5】
前記入力ポート(8)が、高さh4および上側基部(33)および前記垂直チャネル(18)の上側基部(9)と一致する下側基部(9)を有する、中空円錐台の形状のフレア部(30)をさらに備え、前記上側基部(33)は前記下側基部(9)の直径d2より大きい直径d5を有し、前記フレア部(30)を形成する円錐台の半開口部が、(90°-α2)で、(90°-α2)>(90°-β)である、請求項1~4の一項に記載のキット。
【請求項6】
前記入力ポート(8)が、前記フレア部(30)の上方に、下側部分(41)および任意選択で上側部分(42)を含む貯蔵領域(40)をさらに含み、前記任意選択の上側部分(42)は、直径d6の上側基部(43)および下側基部(44)を有する略管状の形状を有し、前記下側部分(41)は下方に先細になっており、前記任意選択の上側部分(42)の前記下側部分(44)と一致する上側基部(44)、および直径d5の下側基部(45)を有し、前記貯蔵領域(40)は高さh5を有し、前記下側部分(41)を形成する円錐台の半開口部は(90°-α3)であり、α3は90°以下である、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
前記入力ポート(8)は、下側部分(51)および任意選択で上側部分(52)を含む貯蔵領域(50)をさらに含み、前記任意選択の上側部分(52)は、直径d6の上側基部(53)および下側基部(54)を有する略管状の形状を有し、前記下側部分(51)は下方に先細になっており、前記任意選択の上側部分(52)の前記下側部分(54)と一致する上側基部(54)、および直径d5の下側基部(55)を有し、前記貯蔵領域(50)は高さh5を有し、前記貯蔵領域(50)を形成する前記円錐台の前記半開口部は(90°-α3)であり、(90°-α3)>(90°-β)である、請求項1~4の一項に記載のキット。
【請求項8】
前記入力ポート(8)が、前記垂直チャネル(18)の前記下側基部(12)と一致する上側基部(12)を有する少なくとも1つのコネクタ(60)を含む、請求項1~7の一項に記載のキット。
【請求項9】
流体のアップロード/排出方法であって、
a)請求項1~8のいずれか一項に記載のキットを製造するステップと、
b)任意選択で、前記先端部(20)に流体を充填するステップと、
c)前記先端部(20)を前記入力ポート(8)の上方に配置し、前記先端部(20)の前記遠位部(21)と前記入力ポート(8)の前記垂直チャネル(18)の間の干渉嵌合位置に達するまでそれを挿入するステップと、
d)前記入力ポート(8)によって前記先端部(20)に含まれる前記流体を前記マイクロ流体デバイス(1)に放出する、または、前記マイクロ流体デバイスに既に含まれている前記流体を先端部自体で吸引するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記角度βおよびα1は、互いに10°または8°異なる、請求項1に記載のキット。
【請求項11】
前記角度βおよびα1は、互いに4°から5°の間の差を有する、請求項1に記載のキット。
【請求項12】
前記先端部(20)の前記遠位部(21)が、前記遠位部に沿って前記遠位部(21)の前記末端基部(25)に対して高さh_xに配置された点(28)において寸法d2の直径部分を有し、前記高さh_xは、前記垂直チャネル(18)の前記上側基部(9)と前記マイクロチャネル(3)の入力点との間の距離よりも小さく、前記距離は、任意のコネクタなしでh1であり、d3<d2<d4かつ(90°-α1)<(90°-β)であり、α1は90°に相当する、請求項1または2に記載のキット。
【請求項13】
前記入力ポート(8)が、前記フレア部(30)の上方に、下側部分(41)および任意選択で上側部分(42)を含む貯蔵領域(40)をさらに含み、前記任意選択の上側部分(42)は、直径d6の上側基部(43)および下側基部(44)を有する略管状の形状を有し、前記下側部分(41)は下方に先細になっており、前記任意選択の上側部分(42)の前記下側部分(44)と一致する上側基部(44)、および直径d5の下側基部(45)を有し、前記貯蔵領域(40)は高さh5を有し、前記下側部分(41)を形成する円錐台の半開口部は(90°-α3)であり、α3は0°である、請求項5に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ゲノミクスに関連する知識の発展に伴い、所与の疾患に一般的に適用される治療からそのような疾患に罹患している特定の個人に特異的に適用される治療に移行する必要性がいっそう医学において感じられている。カスタマイズされた治療アプローチの利点は明白である。それにおいては、治療を受ける患者の不十分な選択が、特定の対象にとって頻繁に高価で効果のない治療を予測し、そのためそれを避けることができるという点ならびに患者に特異的な有害な作用を回避するという点を含み得る、健康に関する出費に至る。
【0002】
腫瘍の療法では、このような必要性は、治療の有効性が一般的に低い場合に特に感じられる。患者が適切に選択していない場合、特定の遺伝子変異を目的とする薬物でも80~90%の症例で効果がない可能性がある(B Majumder et al., Predicting clinical response to anticancer drugs using an ex vivo platform which captures tumour heterogeneity.Nat.Commun.2015,6:6169)。
【0003】
カスタマイズされた医学の効果的な実施を可能にする検査を達成できることを目的として、遺伝子プロファイルおよびタンパク質の発現に基づく検査が首尾よく開発された(Staunton JE et al., Chemosensitivity predicition by transcriptional profiling.PNAS 2001, 98:10787-10792; van’t Veerand LJ, Bernarnds R, Enabling personalised cancer medicine through analysis of gene-expression patterns.Nature 2008, 452:564-570)。しかし、特に腫瘍において、療法の有効性を判定するために、患者の他の特徴と併せた腫瘍の微小環境の関連性が、広く実証されてきた。これらの因子も考慮に入れるために、エクスビボでの機能的アッセイの必要性が強く感じられている(Tian C. et al., Evaluation of a chemoresponse assay as a predictive marker for the treatment of recurrent ovarian cancer:further analysis of a prospective study.British J. Cancer 2014, 111:843-850)。
【0004】
薬物療法の有効性を予測する高い能力を実証したエクスビボの機能的アッセイが現在利用可能である。それにおいて、生物学的試料の収集の直後に分析を実行し、制御された条件下で、インビボで腫瘍の微小環境を表すものと可能な限り類似させて、前記試料を維持することによって、実施されている。例として、国際公開第2010/135468号に方法が記載されている。しかし、利用可能なエクスビボ機能的アッセイは、今日に至るまで重要な制限を呈している。
【0005】
特に、血液学および腫瘍学における薬理学的活性のエクスビボの分析をするために開発されたアッセイは、細胞(ell)死およびアポトーシスを測定するために、主にフローサイトメトリー(FACS)の使用、および/または全細胞集団における細胞生存率および/または増殖を測定するために使用されるキットを含む蛍光または比色アッセイ、例えば代謝アッセイMTT、ATP、MiCKアッセイ(Kravtsov VD & Fabian’s Automated monitoring of apoptosis in cell suspension cultures.Lab.Invest. 1996, 74:557-570)およびDiSCアッセイ(Weisenthal LM et al., A novel dye exclusion method for testing in vitro chemosensitivity of human tumors.Cancer Res. 1983, 43:749-757)などの使用に基づく。このようなアッセイには、必然的にいくつかの制限がある。例えば、フローサイトメトリーは、細胞分裂が検査を実施するための基本的な前提条件であるため、タイムラプスで高含量分析を得ることができず、また細胞凝集物を処理することができず、それによりその状況の細胞の反応を評価することが妨げられる。全集団に関する尺度を提供する技術は、一般に、腫瘍亜集団に限定された分析を実施することが困難であることを特徴とし、したがって、精度が限定される。加えて、記載されたすべての技術において、必要とされる試料の量は、通常重要なものであるが、常に臨床的な実践に適合するわけではない。例えば、サンプリングの処置の侵襲性を低減するため、または転移などの限られたサイズの腫瘍の存在下では、試料は少量、例えば、数千という細胞や数十という細胞までで入手可能であり、試料が液体の生検、すなわち循環腫瘍細胞の単離による場合、記載された技術に従って分析するには不十分な量である。数千個の細胞と数十個の細胞との間の数である生物学的試料を有する場合、このような試料について細胞分析を行うことは、現在存在する機器を用いて実施するには困難であり、実施できる場合でも、分析は試料あたり1つまたはごくわずかな実験条件に依然限られる。10~20の細胞のようなわずかな細胞しか利用できないさらに複雑な場合には、現在利用可能な機能的アッセイを使用して有意なデータを得ることはできない。さらに、機能的アッセイは、現在、典型的に、容易に近づけない専門技術および設備を有する特殊な研究室を必要とする操作者によって実施されている。フローサイトメトリーに基づく分析のプラットフォームは、完全な自動化が提供される場合、複雑でかさばる機械が代表であり、したがって、臨床的な状況、より具体的には診断にまつわる研究室ではほとんど採用できない。同様に、記載された他の技法では、操作を手動で実行することや、検査室全体が診断検査を実行するための可用性が必要となる。次いで、サンプリングの場所から遠く離れた研究室で検査が行われるため、検査の開始が数日遅れ、24~48時間以内に結果を必要とする臨床的な実践のタイミングに適合しなくなることがよくある。
【0006】
国際公開第2012/072822号は上方と下方に開口しているマイクロウェルを有するシステムを記載し、チャネルが前記マイクロウェルを流体連通し、前記マイクロウェルのジオメトリは、内部に、細胞および/または粒子がその残りに導入されたメニスカスの形成を可能にする。任意選択で、前記マイクロウェルは、同じマイクロウェルへの細胞および/または粒子の移動を制御することを可能にする電極を含む。
【0007】
米国特許出願公開第2016/161392号
【0008】
タイムラプスにおいてさえ、生物学的試料を取得してから短時間で、例えば24~48時間以内に答えを出すことができ、分析された細胞に関する高含量のデータ、すなわち形態学的情報を含むものを得ることを可能にする細胞分析に基づき、試料の細胞について検出された情報の動的な分析を可能にする機能的アッセイに対する必要性が、強く感じられる。さらに、前記アッセイは、可能な限り操作者に非依存性で、また微量の生物学的試料を必要とするべきであり、同様にその実行時に使用される試薬および薬物の量を制限し、したがってそのことはコストについても含み、20個の細胞しか有していないなど、量という観点で非常に少ない生物学的試料であっても、信頼性のある結果を提示する能力を維持するようにする。
【0009】
マイクロ流体デバイス内の流体の移動は、典型的には、真空ポンプまたは加圧ポンプおよび/または弁を使用する。ポンプと弁の組み合わせにより、回路内の流体の動きをきめ細かく制御できる。
【0010】
例として、Byun et al.Pumps for Microfluidic Cell Cultures, Electrophoresis 2014, 35:245-257)は、それに関連する細胞の培養およびポンプシステムのためのマイクロ流体デバイスを記載している。また、Au et al.(Microvalves and micropumps for BioMEMS, Micromachines 2011, 2:179-220)は、特定の状況で適用可能にし、他では適用不可能にする独特の特徴を各々有する、特定の組み合わせで使用される多種多様な弁およびポンプについて記載している。
【0011】
入手可能な文献では、マイクロポンプおよびマイクロバルブの選択が基づくべき標準的なパラメータが存在しておらず、そのため特定のシステムごとに特定の研究が必要となるということを示している。
【発明の概要】
【0012】
強く感じられる問題は、嵩張って、購入および管理のコストという観点から要求することの多いポンプと弁に必ずしも頼る必要なく、微小回路における流体の双方向の移動を効率的に管理することである。
【0013】
弁に基づくマイクロ流体デバイスに関連するさらなる問題は、マイクロシステムの弁の統合が高い平行度および/または全体的な寸法の低減を得るよう企図される場合、必要な技術的複雑性が、例えばエラストマーや硬質な材料を統合する必要性に起因して高くなるという点である。
【0014】
本発明は、マイクロ流体デバイスの高精度の充填、ポンプ輸送、および任意選択で流体の排出のための共通の液体取り扱いデバイスの使用を可能にすることによって、問題に対する簡素で有利な解決策を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の方法で使用される開口型逆マイクロウェルシステムの例示的な図であり、斜視図(a)、垂直断面図(b)および上面図(c)である。
【0016】
図2】本発明の方法の別の実施形態で使用される開口型逆マイクロウェルシステムの図であり、斜視図(a)、垂直断面図(b)および上面図(c)である。
【0017】
図3】本発明の方法の好適な実施形態で使用される開口型逆マイクロウェルシステムの図であり、斜視図(a)、垂直断面図(b)および上面図(c)である。
【0018】
図4】本発明の方法のさらに好適な実施形態で使用される開口型逆マイクロウェルシステムの図であり、斜視図(a)、垂直断面図(b)および上面図(c)である。
【0019】
図5】本発明の方法において使用される開口型逆マイクロウェルシステムの一部の断面図である。
【0020】
図6】可視(A)、DAPI蛍光チャネル(B)、FITC蛍光チャネル(C)およびCY5蛍光チャネル(D)で撮影した画像の例である。(E)は、FITCおよびCY5チャネルで取得された画像の重ね合わせの結果である。
【0021】
図7】評価された異なるパラメータによる、図6の細胞集団の分類である。
【0022】
図8】急性骨髄性白血病(AML)に冒された患者から抽出された骨髄の試料の癌細胞の分類である。(A)と(B)はFACSで得られた結果であり、(C)と(D)は本願に記載の方法に従って得られた結果である。(A)および(C)は、標識されていない対照細胞で実施されたベースライン読み取り値であり、矢印で示される閾値を規定することができる。(B)および(D)は、抗CD34抗体陽性細胞または規定の閾値を超える事象の計数である。
【0023】
図9】健康なドナーおよびバーキットリンパ腫細胞株(Raji)から本願に記載の方法に従って抽出した細胞の混合物について得られたデータである。健康なドナーおよび腫瘍細胞から抽出された細胞の混合物の腫瘍細胞の分類(A)、腫瘍集団および健常集団における細胞死の分析(B)、および薬物曝露後の用量反応曲線(C)である。
【0024】
図10】本明細書の方法の代替実施形態で使用される開口型逆マイクロウェルシステムの概略的な断面図であり、またマイクロウェルの電極およびチャネルの下側表面の電極を含む。
【0025】
図11】モノクローナル抗体リツキシマブを用いたSU-DHL-4(RTX)処理および未処理(CTRL)の腫瘍細胞のアッセイである。(A)本発明による方法を用いた処置の時点0分(T0)、および30分(T1)、および60分(T2)後の生細胞(薄灰色)および死細胞(矢印で示す)の結果、(B)フローサイトメトリーによって得られたT0、T1およびT2における生細胞の数、(C)フローサイトメトリーによる処置又は本発明を用いた処置の60分後に得られた細胞数のデータ間の比較である。
【0026】
図12】処理後生存しているSU-DHL-4腫瘍細胞のパーセンテージとして示した細胞数であり、対照細胞(薄灰色)およびリツキシマブで処理した細胞(濃灰色)において、FACSにより得られたもの(四角)、および本発明の方法を用いて得られたもの(丸)がある。
【0027】
図13】本発明による方法を用いて健康なドナーおよび前記Raji腫瘍細胞から抽出された細胞の混合物内のRaji腫瘍細胞の分類である。(A)位相差および蛍光の結果、(B)細胞特異的な形態データ、(C)形態学的(直径)パラメータおよび機能的(CD38発現)パラメータを考慮した細胞の分類、(D)健常細胞(末梢血単核細胞、PBMC)および腫瘍細胞(Raji)の集団から得た形態学的(直径)データおよび機能的(CD38発現)データの統計分析である。
【0028】
図14】経時的な蛍光信号の変化である。細胞特異的モード(A)または細胞集団(B)の全体的な結果として、タイムラプスにおいて得られたデータである。図(A)では、ヒストグラムの列がハイライト表示されており、蛍光信号の最も低い相対的変動である最小の細胞の損傷を受けた亜集団に対応している。図(B)は、グラフ(A)で特定された同一の細胞を含む亜集団に対応する列を示す。
【0029】
図15】自動標識プロセスである。(A)はバックグラウンド信号を示し、(B)は16μL/分の流速で操作することによりマイクロウェルで測定した場合の前記信号の経時的な変化を示す。(A)中の点線は、タイムラプスでの動作ではなく、交互の測定と洗浄とを測定されるバックグラウンド信号を表す。(C)は、細胞について測定された信号の平均をバックグラウンド信号の平均で割ったものとして表される信号/バックグラウンドノイズ比を示す。(D)は、洗浄中のタイムラプスにおける画像収集の代表的な画像を示す。
【0030】
図16】(a)イオノマイシンおよび(b)精製抗体OKT3による刺激の結果としてFluo-4で標識されたJurkat細胞による480nmの波長(FITC)での信号の変動のフローサイトメトリーによる時間分析である。
【0031】
図17】(a)イオノマイシンおよび(b)精製抗体OKT3による刺激の結果としてFluo-4で標識されたJurkat細胞による480nmの波長(FITC)における信号の変動の開口型マイクロウェルシステムにおける時間分析である。破線の曲線は、マイクロウェル内の個々の細胞について得られた信号の連鎖を表す。途切れない曲線は信号の平均値を表す。
【0032】
図18】先端部およびマイクロ流体デバイスを含む、本発明によるキットの図である。
【0033】
図19】本発明によるキットの実施形態の概略図である。(A)先端部、(B)入力領域、(C)入力領域に挿入されている先端部である。
【0034】
図20】本発明によるキットの実施形態の概略図であり、先端部は入力領域に挿入されている。
【0035】
図21】本発明によるキットのさらなる実施形態の概略図である。(A)先端部、(B)入力領域、(C)入力領域に挿入されている先端部である。
【0036】
図22】本発明によるキットのさらなる実施形態の概略図であり、先端部が垂直チャネルおよびコネクタを含む入力領域に挿入されている。
【0037】
図23】本発明によるキットのさらなる実施形態の概略図である。(A)先端部、(B)入力領域、(C)入力領域に挿入された先端部、(D)代替実施形態で入力領域に挿入された先端部である。
【0038】
図24】本発明によるキットのさらなる実施形態の概略図である。(A)先端部、(B)入力領域、(C)入力領域に挿入された先端部、(D)代替実施形態で入力領域に挿入された先端部である。
【0039】
図25】本発明による開口型逆マイクロウェルシステムであり、上面図である。
【0040】
図26】さらなる実施形態による開口型逆マイクロウェルシステムであり、上面図である。
【0041】
図27】マイクロ流体デバイス(1)の排出領域(70)のパネルA、BおよびCにおける3つの実施形態である。
【0042】
図28】マイクロ流体デバイスが挿入された自動管理システムの概略図である(1)。
【発明を実施するための形態】
【0043】
マイクロ流体デバイス(1)、先端部(20)、およびマイクロ流体デバイス(1)の入力領域(18)、前記マイクロ流体デバイス(1)の排出領域(70)を含むキットが本明細書に記載されている。本明細書はまた、前記マイクロ流体デバイス(1)からの1つ以上の流体の導入および/または排出方法、および前記マイクロ流体デバイス(1)における高含有量分析方法に関する。
定義:
【0044】
干渉連結は、本明細書では2つの要素の間の協働を意味し、したがって前記2つの要素は結合されたものとみなすことができる。前記2つの要素、この場合には先端部と垂直チャネルとが干渉によって連結されると、前記先端部内に充填され、前記垂直チャネル内で放出された流体は、チャネル内で移動するように強制され、前記干渉連結は流体が通るのを妨げる、すなわち、前記干渉連結は、2つの要素を相互にシールするものである。
【0045】
コネクタは、本明細書では、2つの区画を流体接続するように適合された任意の管状、円筒形であり、多かれ少なかれ先細り、収束または分岐する要素を意味する。
【0046】
円錐台の準開口部は、前記円錐台を生じる直線が、その回転軸を形成する直線と共に、角度を形成することを意味する。
【0047】
流体:液体または気体の形態である任意の物質。
【0048】
生物学的試料:微生物、動物および/またはヒト、好ましくはヒトから得られた細胞を含む試料であり、前記試料は好ましくは生物学的流体または生検を含む群から選択される。前記試料は、懸濁した細胞を含むか、組織である。好ましい実施形態では、それは血液試料または骨髄穿刺液である。あるいは、前記生物学的試料は、培養された細胞、例えば細胞株、または培養された細胞および患者からの細胞を含む組成物からなる。
【0049】
高含量アッセイ:細胞に対して実施された表現型アッセイ。
【0050】
タイムラプス:時間系列で撮影された同じフィールドの一連のショットを含む撮像技術。
【0051】
エクスビボ:自然条件の変化を最小限にして、生物から得られた組織に対して、生物自体の外部の環境へと行う検査。
マイクロ流体デバイスに1つ以上の流体を導入するためのキットおよび方法:
【0052】
本発明は、先端部(20)、および少なくとも1つのマイクロチャネル(3)と、少なくとも1つの垂直チャネル(18)を含む入力領域(8)とを含むマイクロ流体デバイス(1)を含むキットに関し、前記先端部(20)と前記垂直チャネル(18)は間に干渉連結を生成するように寸法決めされている。
【0053】
前記先端部は、流体分配システムと協働するように意図された少なくとも1つの近位部と、開口型の先細の遠位部とを含む市販の先端部の1つから選択される。
【0054】
図18を参照すると、前記先端部(20)は、流体分配システムと協働するように意図された近位部(22)および遠位部(21)を含み、前記近位部(22)は略管状構成で、前記遠位部(21)は開口型で先細りし、前記遠位部(21)の末端基部(25)が寸法d3の外径を有し、前記遠位部(21)の上側基部(24)が寸法d4の外径を有し、前記入力領域(8)は、任意に1つ以上のコネクタを介して前記少なくとも1つのマイクロチャネル(3)に通じる垂直チャネル(18)を含み、前記垂直チャネル(18)の上方開口部は直径d2を有し、d3<d2であり、前記先端部(20)および前記垂直チャネル(18)は、それらの間に干渉連結を生成するような寸法にされている。
【0055】
前記干渉連結は、典型的には、図19および図20に示されるモードの1つに従って生じる。図19を参照すると、前記先端部(20)と前記チャネル(18)はシールされる接点として前記垂直チャネル(18)の上側基部(9)を有する。図20を参照すると、シールされる接点は垂直チャネル(18)内にあり、この変形版では、先端部(20)の遠位部(21)の末端基部(25)が前記垂直チャネル(18)の内壁に接触する。両方の場合において、シールされる接触が起こる。好ましくは、前記先端部(20)の前記末端部(21)および前記垂直チャネル(18)はプラスチック製であり、システムをガスケットを避けてシールを確実にするのに十分な弾性にする。特に好ましい実施形態では、以下に記載されるシステムの幾何形状は、前記垂直チャネル(18)と前記先端部(20)との間の接触が単一の点では起こらず、表面の部分に分散され、効果的なシールをさらに確実にする。特に、この状態は、前記先端部の前記末端部(21)と前記垂直チャネル(18)の準開口部の角がわずかに異なり、好ましくは10°未満だけ異なる場合に有利に検証される。さらに好ましくは、前記垂直チャネル(18)は円筒であり、必要に応じて下方にわずかに先細になっている。
【0056】
図19Aを参照すると、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の長さはh2であり、前記遠位部(21)によって形成される円錐台の準開口部は、(90°-β)であり、前記近位部(22)の長さはh3である。前記先端部のより包括的な説明については、同図19Aを参照すると、βを測定する角度(26)、および円錐台の前記準開口部の画定を可能にする縦軸xが示されている。
【0057】
図20~24および以下の説明は、本発明のいくつかの特に好ましい実施形態を説明することを意図しており、請求項1にて主張されたものに及ぶ保護の範囲を限定するものではない。
【0058】
好ましい実施形態では、図19を参照すると、前記垂直チャネル(18)は、上側基部(9)と下側基部(12)とを有する下方に先細りしたチャネルであり、前記下側基部(12)は、d1の寸法の直径を有し、前記上側基部(9)はd2の寸法の直径を有し、前記垂直チャネル(18)は高さh1を有し、前記先細りしたチャネル台によって形成される円錐台の準開口部が(90°-α1)である。好ましい実施形態では、α1は90°であり、前記垂直チャネル(18)は円筒である。
【0059】
好ましくは、前記測定値βおよびα1は、互いに15°まで、好ましくは10°、さらにより好ましくは4°~5°の値で異なる。
【0060】
好ましい実施形態では、図19A図19Cを参照すると、前記先端部(20)の前記遠位部(21)は、前記遠位部(21)に沿って前記遠位部の末端基部(25)に対して高さh_xに配置された点(28)において寸法d2の直径部分を有し、前記高さh_xは、前記垂直チャネル(18)の前記上側基部(9)と前記マイクロチャネル(3)の入力点との間の距離よりも小さく、前記距離は、任意のコネクタがなくh1であり、d3<d2<d4かつ(90°-α1)<90°-βであり、好ましくはα1は80°と90°との間で、さらに好ましくは90°に相当する。特に、前記先端部(20)は、長さh_xを有する部分(27)によって前記垂直チャネル(18)である前記入力領域(8)に嵌合する、すなわち、前記先端部がマイクロチャネル(3)に到達する前に干渉連結点に到達して前記入力領域(8)に嵌合する、つまり前記先端部および前記入力領域(8)に含まれる前記垂直チャネル(18)がシール部に到達するとき、前記垂直チャネル(18)に挿入された前記先端部の部分は、前記先端部が前記マイクロチャネル(3)に到達しないようにする。この実施形態では、(90°-α1)<(90°-β)かつh_x=((d2-d3)/2)*tgβであり、好ましくはα1は80°~90°であり、さらに好ましくは90°である。
【0061】
あるいは、図22を参照すると、前記先端部(20)は、長さh_xを有する部分(27)によって前記入力領域(8)に含まれる前記垂直チャネル(18)に嵌合し、ここでd1<d3<d2、(90°-α1)>(90°-β)である。やはり同じ図22を参照すると、任意選択で、前記入力領域(8)は、前記垂直チャネル(18)の下側基部(12)と一致する上側基部(12)を有するコネクタ(60)を備える。
【0062】
代替的な実施形態では、図21を参照すると、前記入力領域(8)は、高さh4および上側基部(33)および前記垂直チャネル(18)の上側基部(9)と一致する下側基部(9)を有する、中空円錐台の形状のフレア部(30)をさらに備え、前記上側基部(33)は前記下側基部(9)の直径d2より大きい直径d5を有し、前記フレア部(30)を形成する円錐台の半開口部が、(90°-α2)で、(90°-α2)>(90°-β)である。
【0063】
好ましくは、図23を参照すると、前記入力領域(8)は、前記フレア部(30)の上方に、少なくとも2つの部分、上側部分(42)および下側部分(41)を含む貯蔵領域(40)をさらに含み、前記上側部分(42)は、直径d6の上側基部(43)および下側基部(44)を有する略管状の形状を有し、前記下側部分(41)は下方に先細になっており、前記上側部分(42)の前記下側部分(44)と一致する上側基部(44)、および直径d5の下側基部(45)を有し、前記貯蔵領域(40)は高さh5を有し、前記下側部分(41)を形成する円錐台の半開口部は(90°-α3)であり、α3は90°以下、好ましくはα3は0°である。
【0064】
また、前記入力領域が前記貯蔵領域(40)を含む場合、前記先端部(20)は、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の長さよりも長い長さだけ前記入力領域(8)に嵌合し、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の前記末端基部(25)と前記貯蔵領域(40)の上側基部(43)との間の距離はh_totであり(h_tot>h2)、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の前記上側基部(24)と前記貯蔵領域(40)の下側基部(45)との間の距離はh_y、2*h_y*cotα3+d5>d4である。
【0065】
あるいは、図23Dを参照すると、前記先端部(20)は、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の長さよりも短い長さだけ前記入力領域(8)に嵌合し、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の前記末端基部(25)と前記貯蔵領域(40)の上側基部(43)との間の距離はh_totであり、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の前記端部基部(25)と前記垂直チャネル(18)の上側基部(9)との間の距離は、h_x+h4+h5であり、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の前記上側基部(24)と前記貯蔵領域(40)の下側基部(45)との間の距離は、h_y、h_y=h2-h_x-h4である。
【0066】
さらなる実施形態では、図24を参照すると、前記入力領域(8)は、少なくとも2つの部分、上側部分(52)および下側部分(51)を含む貯蔵領域(50)をさらに含み、前記上側部分(52)は、直径d6の上側基部(53)および下側基部(54)を有する略管状の形状を有し、前記下側部分(51)は下方に先細になっており、前記上側部分(52)の前記下側基部(54)と一致する上側基部(54)、および直径d5の下側基部(55)を有し、前記貯蔵領域(50)は高さh5を有し、前記貯蔵部分(50)を形成する円錐台の半開口部は(90°-α3)であり、(90°-α3)>(90°-β)である。
【0067】
前記入力領域が前記貯蔵領域(50)を含む場合、前記先端部(20)は、前記先端部(20)の全長よりも小さい長さだけ前記入力領域(8)に嵌合し、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の前記末端基部(25)と前記貯蔵領域(50)の上側基部(53)との間の距離はh_totであり、h_totはh2以下であり、(2*h_tot*cotβ+d3)<d6である。
【0068】
あるいは、図24Dを参照すると、前記先端部(20)は、前記先端部(20)の全長よりも短い長さ前記入力領域(8)に嵌合し、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の前記末端基部(25)と前記貯蔵領域(50)の上側基部(53)との間の距離はh_totであり、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の前記端部基部(25)と前記垂直チャネル(18)の上側基部(9)との間の距離は、h_xであり、h_tot>h2およびh_tot=h_x+h5である。
【0069】
当業者は、さらなる実施形態が可能であることを理解する。
【0070】
前記入力領域(8)に貯蔵タンクが存在することに関与する実施形態は、マイクロ流体デバイスの蒸発が制御されるときは常に有利に使用される。事実、前記貯蔵領域は、長時間のインキュベーション時間が必要な場合にも、望ましくない蒸発作用がないように、マイクロ流体デバイスに充填された流体で、有利にも満たされたままにすることができる。
【0071】
貯蔵領域が任意選択に存在することは、必要である時にのみ使用するための1つ以上の貯蔵タンクを有しながら、体積が最小に低減された垂直チャネル(18)と、任意選択的にコネクタ(60)を有することを可能にし、流体の浪費を避ける。
【0072】
フレア部(30)を有し得ることは、やはり前記フレア部(30)に入るよう入力チャネル(18)の垂直中心軸に沿った中心的ではない様式で、次いで、前記入力チャネル(18)での前記先端部(20)の下方移動中に、フレア部の内壁および入力チャネルに沿って同じ先端部をスライドさせることによって、先端部(20)が屈曲/湾曲できるようにしながら、先端部(20)が前記入力領域(8)に嵌合するように十分に広い開口部を提供するという利点を提供する。
【0073】
任意選択で、前記マイクロ流体デバイス(1)は、インピーダンスメータ較正プレートも備え、前記先端部(20)は、インピーダンス検出システムを備えた分配システムに接続される。
【0074】
任意選択で、前記マイクロ流体デバイスは、前記入力領域(8)の閉鎖要素を備え、例えば前記閉鎖要素はキャップまたは保護フィルムである。この保護フィルムは、一実施形態では、エラストマー材料、例えばシリコーンである。
【0075】
本発明の著者によって強調され、請求項1に記載された驚くべき解決策は、以下に記載される方法を用いて、ポンプや弁を使用せずに、前記先端部と前記垂直チャネルとの間で起こる干渉連結を使用することによってのみマイクロ流体デバイスの1つ以上の流体の導入を管理することを可能にする。
【0076】
特に、記載され、請求されているキットに含まれるマイクロ流体デバイス(1)の流体の装填/排出の方法は、
a)請求項1~8の一項に記載のキットを準備するステップと、
b)任意選択に、前記先端部(20)に流体を充填するステップと、
c)前記先端部(20)を前記入力領域(8)の上方に配置し、前記先端部(20)の前記遠位領域(21)と前記入力領域(8)の前記垂直チャネル(18)との間にある干渉連結位置に到達するまでそれを挿入するステップと、
d)前記先端部(20)に含まれる流体を、前記入力領域(8)を通して前記マイクロ流体デバイス(1)において、または前記マイクロ流体デバイスに既に含まれている流体を同じ先端部(20)が吸引しながら放出するステップと、からなる。
【0077】
この方法が放出ではなく流体の吸引に適用され、前記流体が液体である場合、好都合にも、前記垂直チャネル(18)および前記任意選択のコネクタ(60)がまた前記液体を含んでいるか、前記液体がマイクロ流体デバイスだけに含まれているのではない。表面張力を低下させることによって先端部(20)と接触する液体が存在していることは吸入プロセスを円滑にする。それは前記先端部が、前記マイクロ流体デバイスに含まれる流体を吸引する前に空気を吸引した場合には、より困難となるプロセスである。
マイクロ流体デバイス
【0078】
開口型マイクロウェル2のアレイと、少なくとも1つのマイクロチャネル3と、試薬用および/または1つ以上の生物学的試料用の少なくとも1つの入力ポート8と、それら用の少なくとも1つの出力ポート10とを含む逆開口型マイクロウェルシステムであるマイクロ流体デバイスであって、前記入力および出力ポートは、前記マイクロチャネル3の1つ以上とマイクロ流体で連通しており、前記マイクロチャネル3は、マイクロメートル寸法の断面積を有し、前記マイクロウェル2に流体を供給し、前記逆開口型マイクロウェルシステムは、一実施形態では、温度、湿度およびCOの制御されたインキュベータ、流体分配システム、位相コントラストおよび蛍光画像の取得という機構を含む自動管理システムに挿入されるデバイスも記載される。
【0079】
前記自動化された管理システムは、温度、湿度およびCOの制御されたインキュベータ、マイクロプレートピペットシステム、CMOSまたはCCDカメラなどの画像取得カメラに接続された蛍光および位相差顕微鏡レンズとして当業者に知られている組立要素により達成され、それにおいて前記要素は、それに接続されたハードウェアを介して当業者に知られているソフトウェアによって全体的または部分的に管理される。
【0080】
特に好ましい実施形態では、各マイクロチャネル3は、入力ポート8および出力ポート10に関連付けられている。
【0081】
好ましい実施形態では、マイクロ流体デバイス(1)は、試薬用の少なくとも1つのリザーバ6と1つ以上の生物学的試料用の少なくとも1つのリザーバ7とであるリザーバ6、7も含む。前記リザーバは、プレート、1つ以上のマルチウェルプレート、例えば96ウェルプレート、エッペンドルフチューブを含む群から選択される。前記リザーバ6および7は、2または4、8、16、24、48、96、384であってもよい。
【0082】
図3および図26に概略を示す好ましい実施形態では、前記リザーバ6、7は、前記開口型逆マイクロウェルシステム1に一体化されている。
【0083】
図4に概略を示すさらなる実施形態では、前記試薬のための前記少なくとも1つの入力ポート8はまた、貯蔵領域11を含む。この実施形態では、前記試薬および/または前記生物学的試料は、前記入力ポート8を横断する前に前記貯蔵領域に停留される。また、前記出力ポート10は、任意選択で、貯蔵領域11を備えていてもよい。前記貯蔵領域は、好ましくは、前記入力ポートの上方に配置され、好ましい実施形態では、有利にも上側部分13と下側部分14の2つの部分からなる。前記上側部分13は円筒形状を有し、前記下側部分14は漏斗形状を有し、前記上側部分13は、前記入力ポート8の直径より大きな直径を有する基部を有する円筒であり、前記下側部分14は、前記上側部分を前記入力ポートに接続する漏斗状である。
排出領域
【0084】
さらなる実施形態では、図27を参照すると、少なくとも1つの入力領域(8)を含む前記マイクロ流体デバイス(1)から流体を排出することを意図した前記排出領域(70)は、少なくとも1つの排出チャネル(22)および出力ポート(10)を介して、前記マイクロ流体デバイス(1)と流体接続される排出容器(12)を含む。一実施形態では、前記マイクロ流体デバイス(1)の前記入力領域(8)に加えられた圧力によって押された前記流体は、一方向で前記排出容器(12)に達し、前記流体の体積Vは、前記排出容器(12)の体積以下である。好ましくは、図27Aを参照すると、前記排出チャネル(22)は、前記マイクロ流体デバイス(1)に含まれる少なくとも1つのマイクロチャネル(3)から出て、サイホンである。
【0085】
好ましくは、前記排出チャネル(22)の直径は、前記サイホンが前記マイクロチャネル(3)に含まれる流体に毛細管力を及ぼすようにする。
【0086】
図27Cに概略的に示されるさらなる実施形態では、前記排出チャネル(22)は、少なくとも1つのマイクロチャネル(3)の底部に配置され、それに対してほぼ直交し、前記少なくとも1つのマイクロチャネル(3)を、同じマイクロチャネル(3)の下に配置された前記排出容器(12)と連通させる。
【0087】
さらなる実施形態では、図27Bを参照すると、前記出力ポート(10)は、前記少なくとも1つのマイクロチャネル(3)の底部に配置され、前記マイクロチャネル(3)の下方に位置する第1の排出容器(12a)に至り、前記排出容器(12)に至る前記排出チャネル(22)は、前記第1の排出容器(12a)から突出している。好ましくは、図27Bを参照すると、排出チャネル(22)はサイホンである。
【0088】
前記排出チャネル(22)は、好ましくはマイクロメートル寸法の断面積を有し、前記寸法は100μm~5mm、好ましくは500μm~2mmである。
【0089】
特に好ましい実施形態では、本発明によるキットは、上記のようなマイクロ流体デバイスを含む。
【0090】
さらにより好ましくは、本発明によるキットは、また上記の流体排出領域を特徴とする上記のようなマイクロ流体デバイスを含む。
【0091】
図25に示す好ましい実施形態では、マイクロ流体デバイス(1)は、請求項1~8の一項に記載のキットに含まれるように適合された入力領域(8)、および請求項10に記載の排出領域(70)を含む。
【0092】
したがって、本発明は、マイクロ流体デバイスから流体を充填/排出するための方法であって、
a)請求項1~6の一項に記載の入力領域(8)および排出領域(70)を含むマイクロ流体デバイス(1)を準備することであり、ここで前記マイクロ流体デバイス(1)は少なくとも第1の流体で充填されている、準備することと、
b)任意選択で、前記マイクロ流体デバイス(1)に入る前記少なくとも第1の流体に圧力を加えることと、
c)別法として、排出領域(70)を配置することであり、ここで前記排出チャネル(22)は前記流体を前記マイクロ流体デバイスから毛細管現象によって前記排出チャネルに通すようにする直径を有する、配置することと
を含む方法であり、
前記少なくとも第1の流体の体積Vが前記排出容器(12)の体積以下である場合、前記少なくとも1つの流体は前記排出容器(12)に一方向で到達することを特徴とする方法に関する。
【0093】
さらなる実施形態では、前記方法は、
-前記マイクロ流体デバイス(1)において前記入力領域(8)を通る第2のまたはさらなる流体を導入することであり、ここで前記第1、第2および/またはさらなる流体が、独立して等しいか互いに異なり、液体と気体を含む群から選択される、導入することと、
-任意選択で、前記マイクロ流体デバイス(1)内に存在する場合には、前記マイクロチャネル(3)または前記マイクロチャネル(3)および前記逆開口型マイクロウェル(2)において前記第2および/またはさらなる流体が完全に置き換わり、流体が先に導入されていることと、
をさらに含み、
前記第1、第2および/またはさらなる流体が互いに混合しないことを特徴とする。
【0094】
図26に示されるさらなる実施形態では、マイクロ流体デバイス(1)は開口型逆マイクロウェルマイクロ流体デバイス(2)であり、さらに、試薬用のリザーバ(6)および1つ以上の生物学的試料用のリザーバ(7)を含む。
【0095】
特に有利な実施形態では、前記デバイスは、各々が入力領域(8)と出力領域(10)とを有する16個のマイクロチャネル(3)を含み、前記マイクロチャネル(3)の各々は1200個の開口型逆マイクロウェルに向いている。
【0096】
上記で概説した利点に加えて、本発明による入力領域(8)を含むマイクロ流体デバイス(1)は、
-液体および気体の管理および移送の分野で一般的に使用されているシステムを備えたマイクロ流体デバイスの直接的なインターフェース、すなわちシールの補助のないことを可能にする;
-マイクロ流体デバイスのマイクロチャネル内に圧力下でそれらを挿入することにより、プレートまたは容器から流体を取り出すことが可能であり、そのようなプレートまたは容器に含まれる体積がマイクロチャネルの典型(40μl以下)より大きいまたは遥かに大きく(例えば、50μl以上、300μl、1ml以上)、移送は上記のプレートまたは容器と組み合わせて既に一般的に使用されている標準的な器具を用いて行われる;
-ポンプや弁などの追加の装置を使用せずに、異なるタイプであってもマイクロ流体デバイスに流体のシーケンスを挿入することができる
という理由で特に有利であることに留意されたい。
マイクロ流体デバイスからの流体の充填・排出方法
【0097】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1つの入力領域(8)と、少なくとも1つの出力領域(10)と、少なくとも1つのマイクロチャネル(3)とを含む開口型逆マイクロウェル(2)を有するマイクロ流体デバイス(1)を管理するための方法であり、
-前記マイクロ流体デバイス(1)の前記入力領域(89)を通して少なくとも第1の流体を導入することと、
-任意選択で、前記マイクロ流体デバイス(1)の前記入力領域(8)から第1および第2の流体を導入することであり、ここで前記第1、第2およびさらなる流体は、独立して等しいか互いに異なり、液体および気体を含む群から選択される、導入することと、
-任意選択で、前記マイクロチャネル(3)または前記マイクロチャネル(3)および前記逆開口型マイクロウェル(2)において前記第2またはさらなる流体が完全に置き換わり、流体が先に導入されていることと、
-任意選択で、マイクロチャネル(3)に含まれる流体の体積を前記入力領域(8)から吸引し、前記流体を前記マイクロウェル(2)に残すことと
を含む方法である。
【0098】
一実施形態において、前記方法は、請求項1~8の一項に記載の入力領域(8)、および請求項10に記載の排出領域(70)を含むマイクロ流体デバイス(1)において実施され、前記マイクロ流体デバイス(1)に導入された前記第1の、任意選択で第2の、およびさらなる流体の全体積が前記排出容器(12)の体積よりも小さい場合、前記流体は互いに混合しないことを特徴とする。
生物学的試料の高含量分析法
【0099】
以下に説明する方法は、驚くべきことに、タイムラプスでの分析だけでなく、前記タイムラプス分析中の処理も可能にする。すなわち、本発明の方法では、同じ試料を異なる時間(典型的なタイムラプス分析)でモニタリングすることが可能であるだけでなく、周囲条件が時間と共に制御された自動化された様式で変化する中で、同じ試料を異なる時間に処理することが可能である。例として、本明細書に記載された方法論は、個々の細胞について、薬理学的作用物質への制御された曝露後の形態学的および機能的パラメータの変化を評価することを可能にし、その場合前記作用物質は係るモニタリングの間に追加する。あるいは、同じ技術を用いて、試料の動的分析が可能であり、その場合動的分析は、本明細書では、対象の治療への曝露後の異なる時間に実施される試料分析を意味する。さらに、本発明に従って実施される動的分析により、治療の影響を受けにくい細胞試料を同定して、それを異なる治療に曝すことが可能である。本明細書で特許請求される方法は、任意の分析をする研究室に設置可能なデバイスを有する、タイムラプスである、操作者非依存の処理を伴う大規模高含量アッセイの実施を可能にする。
【0100】
本発明の方法は、その構造が図1に例示されている開口型逆マイクロウェルシステムで実施される。前記開口型逆マイクロウェルシステム1は、マトリクスとして配置された両端で開いた一連のマイクロセル2を含む。前記開口型逆マイクロウェルシステム1は、少なくとも1つのマイクロチャネル3をさらに備え、前記少なくとも1つのマイクロチャネル3は、マイクロメートルマイクロメートルサイズの断面積を有し、前記マイクロウェル2に流体を供給する。前記システムは、試薬および/または生物学的試料のための少なくとも1つの入力ポート8、および/またはその少なくとも1つの出力ポート10をさらに備え、前記入力ポートおよび出力ポートは、前記マイクロチャネル3のうちの1つ以上とマイクロ流体で連通する。
【0101】
特に好ましい実施形態では、各マイクロチャネル3は、入力ポート8および出力ポート10に関連付けられている。
【0102】
好ましい実施形態では、前記試薬は、試薬用の少なくとも1つのリザーバ6と、1つ以上の生物学的試料用の少なくとも1つのリザーバ7とであるリザーバ6、7に収容される。前記リザーバは、プレート、1つ以上のマルチウェルプレート、例えば96ウェルプレート、エッペンドルフチューブを含む群から選択される。前記リザーバ6および7は、2または4、8、16、24、48、96、384であってもよい。
【0103】
図2に概略を示す1つの実施形態では、前記リザーバ6、7は前記開口型逆マイクロウェルシステム1の外部にある。図3に概略を示す好ましい実施形態では、前記リザーバ6、7は前記開口型逆マイクロウェルシステム1に組み込まれている。
【0104】
図4に概略を示すさらなる実施形態では、前記試薬のための前記少なくとも1つの入力ポート8はまた、貯蔵領域11を含む。この実施形態では、前記試薬および/または前記生物学的試料は、前記入力ポート8を横断する前に前記貯蔵領域に停留される。また、前記出力ポート10は、任意選択で、貯蔵領域11を備えていてもよい。前記貯蔵領域は、好ましくは、前記入力ポートの上方に配置され、好ましい実施形態では、有利にも上側部分13と下側部分14の2つの部分からなる。前記上側部分13は円筒形状を有し、前記下側部分14は漏斗形状を有し、前記上側部分13は、前記入力ポート8の直径より大きな直径を有する基部を有する円筒であり、前記下側部分14は、前記上側部分を前記入力ポートに接続する漏斗状である。
【0105】
本発明はまた、生物学的試料の大規模で高含量の分析のための方法であって、前記生物学的試料は上述したように定義され、
a)開口型マイクロウェル2のアレイ、少なくとも1つのマイクロチャネル3、試薬用および/または1つ以上の生物学的試料用の少なくとも1つの入力ポート8、およびそれら用の少なくとも1つの出力ポート10を含む逆開口型マイクロウェルシステムを準備するステップであり、前記入力および出力ポートは、前記マイクロチャネル3の1つ以上とマイクロ流体で連通しており、前記マイクロチャネル3は、マイクロメートル寸法の断面積を有し、前記マイクロウェル2に流体を供給する、ステップと、
b)温度、湿度およびCOの制御されたインキュベータ、流体分配システム、位相コントラストおよび蛍光画像の取得という機構を含む前記逆開口型マイクロウェルシステムの自動管理システムを準備するステップと、
c)前記逆開口型マイクロウェルシステム1を前記自動化システムに配置するステップと、
d)試薬用の前記入力ポート8の1つ以上を介して試薬を充填するステップであり、ここで、前記試薬は、充填緩衝液および/または洗浄液および/または1つ以上の薬物および/または1つ以上の色素、および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーを含む、ステップと、
e)前記入力ポート8の1つ以上を介して前記1つ以上の生物学的試料を充填するステップと、
i)任意選択で、前記細胞を1つ以上の色素および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーで染色するステップと、
j)前記マイクロウェル2の1つ以上から画像を取得するステップであり、ここで前記画像は画像T0と規定される、ステップと、
p)表示された細胞を分類するステップであり、ここで前記分類は、画像T0から検出された形態学的パラメータおよび/または機能的パラメータで行われるステップとを、必ずしもこの順序ではないが、含む方法に関する。
【0106】
一実施形態では、前記開口型逆マイクロウェルシステムは、請求項9に記載のマイクロ流体デバイスであり、さらなる実施形態では、請求項11に記載のマイクロ流体デバイスであるか、請求項1~8の一項に記載のキットをも含むマイクロ流体デバイス19である。
【0107】
前記試薬および生物学的試料が6、7に含まれる一実施形態では、前記リザーバ6、7が、図2に概説されているように、前記開口型逆マイクロウェルシステム1の外部にあり、試薬および少なくとも1つの生物学的試料の前記充填は、手動で、すなわち自動化された流体分配システムによってなされ、リザーバから取り出して入力ポート8に充填する。好ましくは、前記リザーバ6、7は、開口型逆マイクロウェルシステムを備えた自動化システムに挿入される。
【0108】
図3に概略されているさらに好ましい実施形態では、前記リザーバ6、7が前記開口型逆マイクロウェルシステム1に組み込まれ、試薬の前記充填および少なくとも1つの生物学的試料の前記充填は、手動で、すなわち自動化された流体分配システムによってなされ、リザーバから取り出して入力ポート8に充填する。あるいは、前記開口型逆マイクロウェルシステム1に一体化された前記リザーバ6、7は、前記少なくとも1つの入力ポート8と流体連通している。
【0109】
また、前記入力ポート8が前記貯蔵領域11を含む場合、前記リザーバ6、7は上述したように配置されている。すなわち、開口型逆マイクロウェルシステムに対して外部にあるか、組み込まれている。
【0110】
好ましい実施形態では、特定のすぐに使用できるリザーバ6を有するように、前記リザーバ6のいくつかは、方法を実行する数日、または数か月前であっても、方法を実施する前に、前記試薬を事前に充填する。この実施形態では、操作者によって要求される唯一の手動ステップは、前記1つ以上のリザーバ7内の生物学的試料を事前に充填することである。
【0111】
さらに好ましい実施形態では、生物学的試料を充填する前記ステップに加えて、操作者によって行われるさらなる手動ステップは、1つ以上の前記リザーバ6に1つ以上の薬物を充填することである。
【0112】
好ましい実施形態では、試薬および生物学的試料が予め充填された前記開口型逆マイクロウェルシステムに一体化されたまたは外部の前記リザーバ6、7が前記自動化システムに導入される。この実施形態では、入力領域(8)とも呼ばれる前記入力ポートを介した前記充填ステップd)およびe)は、自動化システムに前記開口型逆マイクロウェルシステムを導入する前記ステップc)の後に生じ、それにおいて前記リザーバ6、7は統合されているか、前記開放型逆マイクロウェルシステムと前記リザーバ6、7が外部にあり、好ましくは、前記リザーバ(7)から得た生物学的試料の自動的なピックアップ、また前記マイクロウェル(2)の1つ以上に含まれる細胞の結果としての配置、また任意選択で、前記マイクロウェルの1つ以上における薬物および/または色素、および/または1つ以上の標識された抗体、および/または1つ以上の細胞生存マーカーのその後の導入により、ここで前記色素、および/または1つ以上の標識された抗体および7または細胞生存マーカーは、前記リザーバ(6)から前記入力ポート(8)に供給される。
【0113】
前記形態学的/機能的分類は、単一細胞、単一細胞凝集体、または単一マイクロウェルに含まれる細胞集団全体の分解能を有する蛍光分析に由来する。
【0114】
前記パラメータは、当業者に知られているシステムを使用して自動的に取得され、分析される。
【0115】
形態学的パラメータは、細胞の大きさおよび形状に関する尺度を意味する。機能的パラメータは、特異的抗原の発現のようなマーカーに起因して認められる特徴を意味する。
【0116】
好ましい実施形態では、前記方法はまた、前記開口型逆マイクロウェルシステムを前記自動化システムに導入した後、
f)少なくとも1つの前記マイクロチャネル3を充填緩衝液で満たすことと、
g)前記マイクロウェル(2)の1つ以上から個別にまたはサブグループごとに画像を取得することであり、ここで前記画像がベースライン画像(T baseline)として規定されている、取得することと
を含み、また前記分類ステップp)において、前記分類は、画像T0と前記ベースライン画像との比較によって検出された形態学的パラメータおよび/または機能的パラメータで行われる。
【0117】
さらにより好ましくは、前記方法は、
k)前記薬物の1つ以上を個々にまたは組み合わせて分配するステップであり、ここで前記薬物は、好ましくは、前記リザーバ6から自動化された方法でピックアップされ、前記マイクロウェル2の1つ以上に分配される、ステップと、
l)インキュベーションするステップと
をさらに含む。
【0118】
前記実施形態では、前記方法は例えば薬物の活性へのエクスビボ分析を可能にし、この場合、前記ステップp)において実施された前記生物学的試料に存在する前記細胞の分類が、例えば、同じ生物学的試料に存在する健常な細胞と癌細胞の間の治療への応答の直接的な比較、または異なる処置に対する同じ細胞型の応答の比較を可能にする。
【0119】
さらにより好ましい実施形態において、前記方法は、前記ステップl)の後に、
m)前記インキュベーション中の異なる時間に、前記1つ以上のマイクロウェル2から少なくとも2つの画像を取得するステップであり、ここで前記画像が画像T1、T2、Tnで規定され、ここで、nは2以上の任意の数であり、好ましくは1,000または100であり、さらにより好ましくは25、好ましい実施形態では9である、ステップと、
n)任意選択で、前記画像T1、T2、Tnを前記取得する間に、1つ以上の色素および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーで前記細胞をさらに染色するステップと、
o)任意選択で、前記画像T1、T2、Tnを前記取得する間に、マイクロウェル2またはマイクロウェル2の1つ以上のサブグループ内の前記薬物の1つ以上を個々にまたは組み合わせてさらに分配するステップと
をさらに含み、ステップp)の前記分類することが、画像T0、T1、Tnおよび任意にTbaselineから検出された形態学的パラメータおよび/または機能的パラメータの比較を含む。
【0120】
さらにより好ましくは、前記方法は、前記分類ステップp)の後に、
q)前記分析が細胞特異的であるか、細胞凝集物のレベルで行われるか、前記マイクロウェル2の1つに含まれる細胞集団全体を考慮する細胞生存率の分析
をさらに含む。
【0121】
好ましい実施形態では、前記ステップk)において、前記薬物が少なくとも2つの異なる濃度で分配され、前記細胞生存率分析が存在する場合、検査された1つ以上の薬物についての特定の細胞用量反応曲線を得るに至る。
【0122】
任意選択で、各薬物の希釈は、薬物を希釈剤と混合することによって液体分配システムによって調製される。
【0123】
さらなる実施形態では、この方法は、ステップj)の前記画像取得の後、各マイクロウェル2の平均細胞数の計数と、前記流体分配システムを介した試料のその後の希釈とに関与し、濃度、すなわち各マイクロウェルごとに所望の数の細胞を確保する濃度を達成し、またこのように前記開口型逆マイクロウェルシステムの1つ以上のマイクロチャネルに希釈された試料のその後の充填に関し、そのマイクロチャネルが上記のステップd)で利用される1つ以上のチャネルと異なる。
【0124】
前記ステップk)において、少なくとも2つの薬物の併用投与が必要な場合、前記2つ以上の薬物は、前記薬物を含む少なくとも2つのリザーバ6の内容物を充填前に混合することによって、液体分配システムによって任意選択的に合わせられる。
【0125】
前記方法は、体積が1μl~1ml、好ましくは10μl~100μl、5,000細胞/mL~5,000,000細胞/mLの細胞濃度である生物学的試料を用いることを特徴とする。
【0126】
好ましい実施形態では、前記充填緩衝液は、ウシ胎児血清(FBS)10%、好ましくは細胞死マーカー、典型的にはヨウ化プロピジウム(PI)5μMを補充したRPMI培地を含む。
【0127】
図1が斜視図(a)、垂直断面図(b)および上面図(c)を示し、図5が斜視断面図を示している前記開口型逆マイクロウェルシステム1は、好ましい実施形態では、各マイクロチャネル3あたり1200個のマイクロウェル2および16個のマイクロチャネル3を含み、さらなる実施形態では、それは500個のマイクロウェル2および5個のマイクロチャネル3を含む。
【0128】
好ましい実施形態では、前記方法は、約10~20の細胞のみを含有する生物学的試料を分析し、WO2012/072822に記載されているタイプの開口型逆マイクロウェルシステムを使用する。
【0129】
好ましい実施形態では、前記生物学的試料は、癌に罹患している動物および/またはヒトから得られ、前記生物学的試料は、健常な細胞と癌細胞を含む。
【0130】
すべての細胞は、位相差で、および/またはそれらの細胞が色素で染色される場合、蛍光チャネルで、例えば色素がCMAC(7-アミノ-4-クロロメチルクマリン)である場合、DAPIで獲得される画像で、強調表示される。この方法で使用することができる他の色素は、カルセイン-AM、カルボシアニン、例えばDiD、DiO、DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)を含む群から選択することができる。本方法の目的に使用できる他の色素は、PI、カルセイン-AM、JC1、カスパーゼ3/7、アネキシンVなどの細胞死マーカーである。さらなる実施形態では、標識された抗体が色素として使用される。
【0131】
特に好ましい実施形態では、前記方法は、ステップk)に列挙された前記薬物の1つ以上に最初に曝されて生存している細胞がさらなる薬物治療に再び曝される治療の反復を含み、前記さらなる治療は、前記ステップk)において既に使用されている前記薬物の1つ以上に高濃度で曝露することを伴うか、前記さらなるステップにおいて、前のステップで使用されたもの以外の1つ以上の薬物が使用される。
【0132】
方法の反復は、1つの実施形態では、前記1つ以上のマイクロウェル2において生存している細胞に対して行われ、前記さらなる特別な処置は、前記開口型逆マイクロウェルシステムにおいて、前記マイクロチャネル3が、1つ以上の薬物を含む前記流体を空にして続いて前記さらなる1つ以上の薬物を含む第2の流体で満たされるので、可能になる。空気/流体界面でメニスカスに配置されたままである細胞は、前記マイクロチャネルの流体の変化の影響を受けない。メニスカスに位置する前記細胞は、付着して増殖する細胞ではなくても、流体という視点から、閉鎖したウェルの底に接着して増殖する細胞のように振舞うが、接着において前記細胞に影響を与えずに培地を交換することが一般的に可能である。この実施形態の利点は、懸濁液で増殖する細胞でも使用が見出されることであり、その場合前記メニスカスは、当業者にとって公知である細胞の接着を刺激する基質を使用するなどの、前記細胞に強制的な接着を課すことなくウェルの底を模倣することを可能にする。これは、生物学的試料に最小限の影響を与え、生理学的状況とは異なる外的条件を課すことを防止するので、特に有利である。
【0133】
好ましい実施形態では、前記方法は、
a)開口型マイクロウェル(2)のアレイ、少なくとも1つのマイクロチャネル(3)、試薬用および/または1つ以上の生物学的試料用の少なくとも1つの入力ポート(8)、およびそれら用の少なくとも1つの出力ポート(10)を含む逆開口型マイクロウェルシステム(1)を準備するステップであり、前記入力および出力ポートは、前記マイクロチャネル(3)の1つ以上とマイクロ流体で連通しており、前記マイクロチャネル(3)は、マイクロメートル寸法の断面積を有し、前記マイクロウェル(2)に流体を供給する、ステップと、
b)温度、湿度およびCOの制御されたインキュベータ、流体分配システム、位相コントラストおよび蛍光画像の取得という機構を含む前記逆開口型マイクロウェルシステムの自動管理システムを準備するステップと、
c)前記逆開口型マイクロウェルシステム(1)を前記自動化システムに配置するステップと、
f)任意選択で、少なくとも1つの前記マイクロチャネル(3)を充填緩衝液で満たすステップと、
g)任意選択で、前記マイクロウェル(2)の1つ以上から個々にまたはサブグループごとに画像を取得するステップであり、ここで前記画像は規定のベースライン画像である、ステップと、
d)試薬用の前記入力ポート(8)の1つ以上を介して試薬を充填するステップであり、ここで、前記試薬は、充填緩衝液および/または洗浄液および/または1つ以上の薬物および/または1つ以上の色素、および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーを含み、前記試薬は、試薬用(6)のリザーバに含まれる、ステップと、
e)前記入力ポート(8)の1つ以上を介して前記1つ以上の生物学的試料を充填すること、ここで前記1つ以上の生物学的試料は生物学的試料リザーバ(7)に収容されている、ステップと、
i)任意選択で、前記細胞を1つ以上の色素および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーで染色するステップと、
j)前記マイクロウェル(2)の1つ以上から画像を取得するステップであり、ここで前記画像は画像T0と規定される、ステップと、
k)前記マイクロウェル(2)の1つ以上において、前記ポート(8)を介して前記薬物の1つ以上を分配するステップと、
l)インキュベーションするステップと、
m)前記インキュベーション中の異なる時間に、前記1つ以上のマイクロウェル(2)から少なくとも2つの画像を取得するステップであり、ここで前記画像が画像T1、T2、Tnで規定され、ここで、nは2以上の任意の数であり、好ましくは1,000または100であり、さらにより好ましくは25、好適な実施形態では9である、ステップと、
n)任意選択で、前記画像T1、T2、Tnを前記取得する間に、1つ以上の色素および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーで前記細胞をさらに染色するステップと、
o)任意選択で、前記画像T1、T2、Tnを前記取得する間に、マイクロウェル(2)またはマイクロウェル(2)の1つ以上のサブグループ内の前記薬物の1つ以上を個々にまたは組み合わせてさらに分配するステップと、
p)表示された細胞を分類するステップであり、ここで前記分類することが前記画像T0、T1、Tnおよび任意にTbaselineから検出された形態学的パラメータおよび/または機能的パラメータによりなされる、ステップとを、この順序で含む。
【0134】
癌細胞は、寸法および形状パラメータ、例えば膜の粗さによって、また腫瘍抗原に特異的な標識された抗体との結合によって同定され、ここで、1つ以上の特異的な標識された抗体によって放出される特異的信号の存在または非存在により、細胞型の識別を判定する。例えば、調査中の腫瘍がリンパ腫である場合、抗CD38抗体を腫瘍細胞の示差的分析に使用する。調査中の腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である場合、抗CD34、または抗CD117、または抗HLA-DR、または抗CD33/CD14抗体が使用される。
【0135】
好ましい実施形態では、検査される薬物は、モノクローナル抗体、例えばアレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、イブリツモマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、化学療法薬、例えばシタラビン、イダルビシン、フルダラビン、デシタビン、5-アザシチジン、および小分子、例えばイブルチニブ、イダサヌツリン、ベネトクラクスから選択され、この場合本発明の方法は、モノクローナル抗体の場合には補体媒介性細胞溶解活性、または化学療法薬および小分子の場合には直接的な細胞傷害活性を測定する。
【0136】
本発明の方法を用いて得られた画像の自動分析によって、取得された画像において取り込んだ個々の細胞または細胞のクラスタに関する情報を抽出することが可能になる。
【0137】
前記方法の最後に、マイクロウェルに含まれる細胞を収集し、その後の分析に使用することができる。具体的には、本明細書に記載の方法によって、特定のマイクロチャネルに注入された薬物耐性細胞などの特定の対象の細胞が含まれる1つ以上のウェルを選択し、前記細胞をさらなる開口型逆マイクロウェルシステムのリザーバ(7)の中に再充填し、それらをより多量の希釈液に分配して、単一細胞を含むマイクロウェルを得ることができる。所望の細胞が同定されると、それを単離することができる。アッセイは、RT-PCRなどの当業者に公知のものとして、前記単離された1つ以上の細胞に対して行われる。
【0138】
生物学的試料は、本発明による方法で利用可能になるように、充填または採取/外植することができ、または予め処理することができる。特に、それが血液または骨髄の試料である場合、前記処理は、好ましくは密度勾配で、または溶解緩衝液の使用によって、当業者に公知の技術を用いた赤血球分離ステップを含む。前記試料が懸濁細胞を含む場合、前記細胞を計数し、分配する濃度まで希釈する。あるいは、前記計数および希釈ステップは、システムによって自動的に行われる。試料が生検のものである場合、前記処理は、典型的には、使用されるマイクロ流体と適合するサイズである10μm~1000μmのサイズの断片を単離することを含む。
【0139】
代替の実施形態では、前記生物学的試料は、動物および/またはヒトから得た単離物としてそのまま使用される。
【0140】
図6は、健康なドナーから得られた血液と混合させた細胞株由来の白血病細胞からなる生物学的試料のT1時点で撮影された一連の画像の例を示す。したがって、生物学的試料は、健常なPBMCおよび癌細胞を含む。可視(A)、色素(B)のDAPI蛍光チャネル、標識された抗CD45抗体信号(C)用のFITC蛍光チャネル、および標識された抗CD34抗体(D)用の蛍光チャネルCY5において、画像が得られる。最後に、(E)は前記画像(C)と(D)の重なりを示す。この方法は、細胞の分類に適用した場合に高い感度と高い特異度を有することが実証されており、そのことは画像(E)によって証明される。それにおいて、試料に存在するすべての細胞、すなわち(B)の画像のものが見出されており、すべての細胞はCD45陽性(C)のみで、その一部だけがCd34陽性(D)でもある。形態学的(細胞の直径)および機能的パラメータ(CD45、CD34の発現)により細胞を分析することにより、図7に示すように、前記腫瘍細胞のほぼすべてについて正確な分類がなされ、それはROC曲線から明らかなように、マーカーCD34が高い感度および特異度で腫瘍細胞を同定することを可能にするパラメータであることを明確に示し、実際に存在する細胞の99.8%に等しい曲線下の領域が得られる(CD34 ROC曲線)。むしろ、パラメータCD45は85.2%に等しい曲線下の領域を生成し、そのため感度と特異度が低いことを実証している。この実験は、調査されている腫瘍型について、CD34が選択したマーカーであり、細胞集団の極めて正確な分析を可能にすることを示している。
【0141】
図8は、癌細胞の分類に関連する、取得したデータ解析のグラフを示す。(C)は、色素CMACで染色され、抗CD34/CD45抗体で染色されていない細胞の分布を示す。この分布は、そのような陰性対照において同定された最大の信号を判定し、結果として分類するための最小の閾値を設定することを可能にする。続いて、(D)において、(C)で特定した閾値を維持して、抗CD34/CD45標識後に行った計数を行い、癌細胞として、閾値よりも高い抗体が発する信号を特徴とする細胞を分類する。特に、癌細胞は、例えば抗CD34抗体(CD34+)に対して陽性であり、抗CD34抗体および抗CD45抗体(CD34+/CD45+)の両方に対して陽性であるように分類することができる。この方法の対照として、パネル(A)および(B)は、同じ試料についてフローサイトメトリーによって得られた結果を示す。これらの結果は、本発明の方法で得られたデータが、このタイプの分析および細胞の計数のために選択される技術であるフローサイトメトリーによって、同じ試料について得られたデータと絶対的に比較可能であることを示す。
【0142】
細胞生存性をモニタリングしたいとき、前記ステップi)において、前記細胞を細胞生存マーカーで染色する。例として、ヨウ化プロピジウム(PI)またはアネキシンVは、この点で一般的に使用されるマーカーである。膜が損傷すると、PIは細胞に入り、核酸に結合した後に蛍光を発する。したがって、標識された細胞は、損傷したまたは破壊された膜を有する細胞であり、死んだと考えられるべきである。別の一般的に使用される細胞生存マーカーは、カルセイン-アセトキシメチル(カルセイン-AM)である(Lichtenfels R et al., CARE-LASS calcein-release-assay, an improved fluorescence-based test system to measure cytotoxic T lymphocyte activity.J Immunol. Methods 1994, 172:227-239)。カルセインアセトキシメチルエステルは、細胞膜を受動的に横切り、一旦内部に入ると、細胞内エステラーゼによってカルセインに変換され、カルセインは生存細胞に保持されるが、膜が損傷してそのため死に至ると考えられる細胞により放出される極性蛍光生成物である。
【0143】
図9A図9Bは、リンパ腫細胞株Raji細胞および白血球を含む生物学的試料で実施される分析の例を示す。調査された試料において、薬物、特にリツキシマブによる治療は、本発明の方法に従って行われた。パネル(A)は、形態学的パラメータおよびCD38マーカーを同時に使用して、癌細胞(円形)と健常細胞(正方形)とを区別する、本発明による方法ができることを示す。(B)は、細胞のカルセイン-AMの存在を定量することにより得られた細胞生存率のデータを示し、特に薬物による治療後に放出された信号を最初に放出された信号と比較することにより得られ、それにおいて信号の減少は生存の消失と関連する。この場合、基準の閾値は、試料が薬物に曝されていないチャネルからなる対照を用いて判定される。あるいは、生理学的な信号の消失に関する文献での既知の言及が利用される(Neri S et al., Calcein-Acetyoxymethyl Cytotoxicity Assay:Standardization of a Method Allowing Additional Analyses on Recovered Effector Cells and Supernatants.Clin.Diagn.Lab.Immunol. 2001, 8:1131-1135)。
【0144】
図9Cは、化学療法薬イダルビシンに対する応答分析が実施された白血病細胞株(KG-1、Kasumi-1およびHL-60)からなる異なるモデルについて得られた用量反応曲線を示す。結果は、例えば、感度(IC50=0.0049μM)、平均的な感度(IC50=0.0218μM)、および耐性(IC50=0.2127μM)という点線の垂直線で示される、測定可能な異なるIC50の値によって観察可能な3つの異なる応答レベルを示す。
【0145】
例として、部分的な非酵素的分解の後に、肝臓癌の外植片から得られる生物学的試料を本方法で使用することができる。次いで、生物学的試料を標識し、前記リザーバに充填する。外植から1時間以内に、細胞のクラスタおよび単離された細胞を含む、分析のために準備された開口型逆マイクロウェルシステムが利用可能である。同じクラスタの様々な標識領域に加えて、同じクラスタの体積のいずれかの変化を評価することもできるので、細胞のクラスタに対する薬物の効果を評価できることはまた非常に有利である。異なる焦点面で画像を取得することも可能であり、このようにすると、クラスタの3D画像を再構成することも可能である。
【0146】
図10は、前記マイクロウェル2の周囲および前記マイクロチャネル3の基部に配置された電極5をも含む、開口型予備マイクロウェルシステムの図を示す。前記電極5は、マイクロチャネル3内に存在する細胞4を所望の時間およびモードでマイクロウェル2に運ぶ機能を有する。したがって、電極は、マイクロウェル内の細胞のクラスタの形成を促進し、したがって、特定の細胞、つまり細胞の相互作用も考慮に入れた分析を可能にする。
利点
【0147】
本明細書に記載された方法は、特に腫瘍に関わる疾患に介入する際に強く必要とされる個人化された医学アプローチを容易にする。事実、本明細書に記載の方法は、驚くべきことに、前記方法で使用される開口型逆マイクロウェルシステムがWO2012/072822に記載されているタイプのものである場合に、数個の細胞のみ、例えば約10~20細胞のみを含む場合でさえも生物学的試料をエクスビボで検査すること、特定の患者のための最も有効な薬物の選択および/または特定の患者のための最適な用量の選択を可能にする様々な薬物の効果、および/または1つ以上の薬物療法に対する患者の試料の耐性の判定を可能にする。分析は、生物学的試料の採取直後に実施し、約24時間にわたって完了させる。手早いタイミングにより、生物学的試料内の細胞が、そのエクスビボの特徴を参照して、それらの機能性、生存性および遺伝子発現の顕著な変化を受けないようになる。データが得られる速度により、急性白血病などの迅速な判定が必要な臨床的状況において同じ技術を使用することが可能になる。
【0148】
さらに、必要とされる生物学的試料が微量であることを考慮すると、前記方法は、専用の回収を必要としないので、操作手順に実質的な影響を及ぼさずに適用される。例えば、血液を使用する場合、典型的には、1mL未満の容量で十分である。骨髄の場合、通常複数の検査を行うのに1mLに等しい量は十分な量であり、すなわち、1回の検査を行うには0.1mL以下で十分である。針吸引から得る試料は、十分な材料を提供することができる。
【0149】
本明細書における開発された方法により、アッセイの予測値を改善するための、生理学的な条件に可能な限り近い条件という観点での莫大な利点を伴う、細胞試料および血清試料を含む複雑な試料の使用が可能になる。
【0150】
本明細書に記載された方法は、試料の動的分析(タイムラプス)および動的処理(試料周囲の流体の経時的なプログラム可能な変化を用いて)の両方を実行する、単一細胞までの高分解能の高含量分析を可能にし、それは非常に切望されている機構である。なぜならば、それらは特定の特徴を持つ所与の細胞の経時的な変化をモニターし、比較し、試料の調製と薬物の投与を自動化し、例えば、一連の薬物を含むこと、または生存率、アポトーシスの誘導、または薬物の活性に関連する特定の経路の活性化の評価に関して実験の結果を判定するための薬物によるインキュベーションの期間の終わりに、アネキシンVなどの特定の試薬で標識することを含む複雑なプロトコルを実施することを可能にするからである。
【0151】
本明細書に記載の方法が特に機能的である多くの用途の中で、特定の治療に対する患者の癌細胞の応答性と、同じ種類の腫瘍に罹患している患者集団の癌細胞の平均的な応答性とを迅速かつ自動的に比較する可能性について言及することができる。さらに、例えば文献データを参照して、特定の治療に対する患者の癌細胞の応答性を、同じタイプの腫瘍および/または異なる腫瘍型に関する細胞株の平均的な応答性と比較することが可能である。
【0152】
このプロセスは完全に自動化されており、操作者の介入は最小限であり、すなわち生物学的試料および試薬および薬物をリザーバに充填する場合にのみ行う。いくつかの実施形態では、開口型逆マイクロウェルシステムが既に試薬および薬物を充填されたリザーバを含むとき、介入はもっぱら生物学的試料の充填に限定され、そのためエラーを最小にし、交差汚染の危険性を減少させ、結果の再現性を著しく増加させる。また、生物学的試料をそのまま調製なしで充填することも可能である。つまり、システム自体は、そこに含まれる細胞の数を検出し、それらを最適な希釈度に希釈し、対象のマイクロウェルにそれらを分配することができる。
【0153】
マイクロウェルに入る電極を含む実施形態では、細胞依存性の作用機序を評価するために、個々のマイクロウェルに細胞の特定の群を得ることが可能である。
【0154】
さらなる利点として、マイクロメートルの尺度で作動することによって、試薬および薬物の消費量も制限され、例えば、薬物は、わずか20~50マイクロリットルの体積に希釈され、より多い体積で行う場合の要件に対してかなりの節約となり、使用される薬物が非常に高価である場合、または薬物を開発する段階で、とりわけ生物学的薬物の場合に、その利用可能性が限定されているとき、特に明白な利点があることに留意されたい。
【0155】
特に好ましい実施形態には、生物学的試料の大規模で高含量の分析のための方法であって、
a)請求項9または10に記載のキットを準備するステップと、
b)温度、湿度およびCOの制御されたインキュベータ、流体分配システム、位相コントラストおよび蛍光画像の取得という機構を含む前記逆開口型マイクロウェルシステムの自動管理システムを準備するステップと、
c)前記逆開口型マイクロウェルシステム(1)を前記自動化システムに配置するステップと、
d)試薬用の前記入力ポート(8)の1つ以上を介して試薬を充填するステップであり、ここで、前記試薬は、充填緩衝液および/または洗浄液および/または1つ以上の薬物および/または1つ以上の色素、および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーを含む、ステップと、
e)前記入力ポート(8)の1つ以上を介して前記1つ以上の生物学的試料を充填するステップであり、任意選択で、前記細胞を1つ以上の色素および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーで染色するステップと、
前記マイクロウェル(2)の1つ以上から画像を取得するステップであり、ここで前記画像は画像T0と規定される、ステップと、
表示された細胞を分類するステップであり、ここで前記分類は、画像T0から検出された形態学的パラメータおよび/または機能的パラメータで行われるステップとを、必ずしもこの順序ではないが、含む方法が記載される。
【実施例
【0156】
実施例1:非ホジキンリンパ腫細胞に対するリツキシマブの有効性の評価
【0157】
細胞:SU-DHL-4リンパ腫細胞およびRaji細胞を使用した(ATCC CCL-86)。3×10^5細胞/mLを、10%FBS、1%ピューロマイシン/ストレプトマイシンを補充したRPMI培地中、37℃、95%RH、5%COで培養した。細胞をコンフルエントになったときに分けて増加した。勾配のある遠心分離によって血液からPBMCを単離した。健康なドナーから得た全血を、「ethical principles and guidelines for the protection of humans in research」の指示に従って抗凝固剤で処理したチューブに集めた。赤血球の溶解後、単離したPBMCを10mLの冷HBSSで2回洗浄した。細胞の濃度およびそれらの生存率を、血球計でトリパンブルーで測定した。濃度を100万細胞/mLに調整した。
【0158】
SU-DHL-4またはRaji細胞の異なるバッチを増殖のピーク時に採取し、PBSで洗浄し、トリパンブルーを含む血球計算盤で計数した。細胞の濃度を100万細胞/mLに調整し、フローサイトメトリーについては5nMのカルセインAM(CAM)で標識し、本発明によるアッセイについては250nMで標識した。標識した細胞をPBSで1回洗浄し、RPMIに再懸濁した。新たに単離されたCAM PBMCで標識するために同じプロトコルを用いた。PIおよびフローサイトメトリーによって最終的に細胞生存率を評価した。
【0159】
フローサイトメトリー(比較)
【0160】
各バッチについて10^5CAMで標識された細胞を、96ウェルプレートに2連で播種した。対照群(CTRL)を、PIを補充したRPMIで1.5μMの最終的な濃度まで処置した。処理群を、PIを補充したRPMIで10μg/mLの最終的な濃度までリツキシマブ(RTX)で処理して、1.5μMの最終的な濃度とし、室温で5分間インキュベートした。すぐ後に、ヒト血清(hS)を最終的な濃度1%まで添加した。各ウェルの最終的な容量は200μLであった。hSを添加した後、0分、30分および60分という時間に50μLの試料を採取した。そして、FACS(FACSAria BD、米国)で分析した。
【0161】
開口型ウェルでのアッセイ
【0162】
CAMで標識した細胞の異なるバッチをRPMI中に再懸濁して最終的な濃度を2×10^6/mLにした。フローサイトメトリーに従う手順と同様に、RTX群を10μg/mLのオフチップの最終的な濃度までリツキシマブで処理し、室温で5分間インキュベートした。CTRLおよびRTX細胞を記載のように開口型逆マイクロウェルシステムに播種し、ウェル当たり7細胞以下の最適数を得た。20%FBSでPBSでチャネルをすすいだ。初期条件(Tbaseline)を設定するために、第1の組の画像を取得した。充填した後、CTRLチャンネルを、1%の最終的な濃度までhSと統合したRPMI、および5μMの濃度でPIで処理した。RTXチャネルを、リツキシマブ10μg/mL、1%のHSおよび5μMのPIを添加したRPMIで処理した。タイムラプスによる画像T1、T2、T3、T4を、処置後15分ごとに1時間後まで収集した。
【0163】
顕微鏡検査
【0164】
画像を明視野(BF)で取得して形態学的特徴を評価し、次いで蛍光でDAPIバンド(ex:360/40nm、em:460/50nm)、FITC(ex:480/30nm、em:535/40nm)、TRITC(ex:540/25nm、em:605/55nm)の信号を評価した。すべての画像はNikonカメラで10倍のレンズで取得した。撮像の間、顕微鏡は37℃、95%湿度、5%COの制御された雰囲気で作動していた。
【0165】
表示
【0166】
SU-DHL-4癌細胞をCAMで標識し、次いで開口型マイクロウェルシステムに充填し、RTX群の場合には薬物で処置し、観察した。
【0167】
結果を図11に示す。パネルAは、5~10分のT0、30分のT1、および60分のT3という時間でのCTRLおよびRTX処理試料の一連のタイムラプスによる画像を示す。矢印によって示される細胞は、TRITCチャネル(PI)で獲得された色を示し、死細胞を表す。これらは、RTX群のT2およびT3にのみ存在する。より大きなコントラストで、FITCチャネルで獲得された細胞、すなわちカルセイン-AMで標識された生存細胞が見られる。パネルBは、FACSで得られたデータを示す。パネルCは、FACS分析およびT2の60分という時間での本発明の方法によるヒストグラムを示す。百分率は、カルセイン-AM陽性細胞、すなわち生存細胞の集団を示す。見て取れるように、2つの方法で得られたデータは完全に比較可能である。確認として、図12に線形の様式でデータを提示し、本発明によるシステムを使用して、生細胞および死細胞を経時的に定量することができ、今選択している技術、すなわちフローサイトメトリーと同等のデータを、フローサイトメトリーでは不可能である高含量分析が可能という利点を伴いながらも提供できるという結論に至る。
【0168】
本発明による方法は、フローサイトメトリーでは得られない重要な結果を提供することができることがさらに証明されている。第1に、Raji癌細胞とPMBCとの混合物は、CD38標識のおかげで、癌細胞を染色し選択的に観察することが可能であることが認められた。この目的のために、Raji癌細胞およびPBMCをCAMおよび抗CD38抗体Alexa Fluor 488 1:10で別々に標識した。次いで、細胞の一部を1:1の比で混合した。Raji細胞、PMBCおよびその混合物を、開口型逆マイクロウェルシステムの3つの異なるチャネルに蒔き、次いで観察した。図13に示すように、CAMで染色した全細胞に対して抗CD38抗体で選択的な染色をしたためにAで強調表示されている癌細胞は、本発明の方法によって、特定のマーカーに関連する蛍光(パネルC)だけでなく、形態学的パラメータ(パネルBおよびD)についても容易に強調される。
【0169】
タイムラプスで画像を取得することは、例えば薬物処理によって表される刺激に対するあらゆる細胞の応答の正確な分析をもたらすという利点を有し、ここで、正確な分析は、蛍光の相対的変化を評価することによって得られ、重要な色素での染色の場合、細胞の応答を判定する手段を提供する。最初の染色が均一でない場合でも、各細胞からの信号はその初期値に正規化されている。これと比較して、フローサイトメトリーによって典型的に提供されるように、処理の適用後の絶対的な蛍光分析は、この場合、正確さに劣る結果をもたらす。
【0170】
例えば、図14は、動的分析によって得られた分布、すなわちAにおける相対的な蛍光の変化に対する、Bにおける絶対項で得られたデータの分布を比較する。図14Aの第1の分布は、リツキシマブへの曝露後にRaji細胞について本明細書に記載の方法により得た。減少した信号強度変動を示す細胞は、おそらくは耐性のある細胞の亜集団を表しているか、軽微な損傷を受けたことを表している。この分布を用いて、図中の星印(*)で示すように、変異が45%未満の減少である細胞を選択し、それらを絶対項の変異を示す分析内で分析した(図14B)。特に、この図において、星印が付された列は、前の分析から耐性があると同定された少なくとも1つの細胞の存在を示す。図14Bに示すように、絶対的な分析は、図14Aに示している方法と同じ精度で低度の損傷である細胞を同定する手段を提供してはいない。このことは、絶対的なもので強度が最小であるが、相対的な分析によれば耐性として分類されていない細胞のサブセットを示している列が、ヒストグラムの左側にあるという事実によって証明される。実際に、いずれの星印も列に記されていない。同様に、グラフの右側には、高い信号強度を有するにもかかわらず顕著な信号の消失を示し、したがって、相対的な分析による治療に対して感受性があると考えられるべきである細胞が存在している。
【0171】
実施例2:自動標識プロセス、タイムラプス分析
【0172】
細胞は、開口型逆マイクロウェルシステムのマイクロウェル2に装填される。そのような細胞が収容された培地は、その後、一連の洗浄を繰り返すことによって排除され、この場合係る洗浄物は、前記マイクロチャネル3、洗浄液、例えばHBSSを通る。画像は、前記洗浄操作中の後続の時間に取得され、図15のパネルDは、洗浄から0分および3分、5分、7分、8分、10分および12分後という時間に取得された画像を示す。同じ図15のパネルBおよびCに示しているグラフでは、曲線は、前記洗浄物を使用することによって得られるバックグラウンドノイズが減少したことを示している。パネルAにおいて、本明細書に記載された方法による処置は、その後の遠心分離を必要とする標準的な方法と比較される。特に、菱形で印を付けた連続線は、本発明による方法による経時的な結果を示し、ここで、バックグラウンドノイズの79.1%の減少が、16μL/分の速度での洗浄溶液の5分間の連続注入後に観察可能である。破線は、標準的な遠心分離プロセスによって得られた結果を表し、1000RCFで5分間遠心分離して分けられた4回の洗浄サイクルの後に得られた結果が示されている。三角形の印をつけた連続線は、1000rcfで5分間遠心分離して分けられた2サイクル後に得られた結果を示す。本発明による方法により、同等の結果を得ることが可能であり、生物学的物質の損失を必然的に招く長時間の遠心分離を必要としないという明白な利点を有する。一部の状況でその損失は、分析自体を損なう可能性がある点に対して、ならびに付加的なストレスへ生物学的試料を曝露することに対して重大な意味を持つ可能性があるのである。
【0173】
実施例3:リンパ芽球Tに対するOKT3の有効性の評価
【0174】
Jurkat細胞株(ヒト白血病T細胞)由来の細胞をATCCから入手し、10%不活性化FBS培地、10mMのHepes、2mMのウルトラグルタミンおよび1mMのピルビン酸ナトリウム、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを37℃、5%COで25cmのフラスコに補充したRPMI 1640培地で培養した。
【0175】
OKT3ハイブリドーマを、3%FBSを含む完全なRPMI1640培地においてバイオリアクター(CellLine、Integra Biosciences)で培養し、上清を週に2回、回収した。モノクローナル抗体の精製は、30%と50%の二重の飽和硫酸アンモニウム沈殿を用いて行い、続いてPBSで透析した。OKT3の純度をSDS-PAGEゲルで評価し、抗体の量をNanoDrop(Thermo Scientific)により判定した。次いで、抗体を使用前に-80℃で凍結させた。
【0176】
比較のために、Jurkat細胞の全集団におけるカルシウムシグナルの測定を、プロトコルFluo-4(Life Technologies)に従って行った。1x10のJurkat細胞をHBSSで1回洗浄し、Fluo-4(4ng/μL)により37℃で30分間インキュベートした。HBSSでの洗浄および再懸濁の後、細胞を、1μg/mL、5μg/mLおよび10μg/mLの濃度の精製された抗体OKT3、または代わりにハイブリドーマ培養から得た50μLの上清を用いて処理する。カルシウムの流れの陽性対照として、2μg/mLのイオノマイシン(Sigma-Aldrich)を添加した。このようにして処理した細胞を、次いでフローサイトメーターで分析した。
【0177】
本発明による開口型マイクロウェルでのアッセイのために、Jurkat細胞を、HBSSにおいて20μMのFluo-4で標識し、遠心分離し、開口型逆マイクロウェルシステム用の投入リザーバとして使用される1.5mLエッペンドルフチューブの中で、1.6x10細胞/mLの濃度で、無血清培地(25mMのHepesまたはHBSSを含むRPMI 1640)に再懸濁した。マイクロウェル内にJurkat細胞(マイクロウェルにつき約1~10細胞)を沈着させ、HBSSでチャネルを洗浄した後、イオノマイシン(2μg/mL)またはOKT3(10μg/mL)を含む溶液を、蠕動ポンプを介して、開口型マイクロウェルシステムの特定のマイクロチャネルの中に流れるようにした。画像は、1分の間隔で顕微鏡に接続されたカメラにより取得し、LabViewで開発されたソフトウェアで処理し、各試料細胞の同じ信号の動的なパフォーマンスを定量化した。
【0178】
細胞蛍光測定の結果:試料にイオノマイシン(a)またはOKT3(b)を注入した後の平均的な試料の蛍光の進行をフローサイトメーターで定量し、図16に示す結果を得た。チャートは、蛍光強度の変動の平均を示し、使用されたモデルの機能を確かめる。
【0179】
開口型マイクロウェルにおけるバックグラウンド信号の変動:刺激の非存在下でFluo-4で標識された単一細胞によって放出された信号の変動を、開口型マイクロウェルシステムにおいて細胞を充填した後に定量した。この分析では、信号の増加が38%であることが示された。
【0180】
開口型マイクロウェルにおけるイオノマイシン刺激:イオノマイシンによる刺激は、ベースラインに対して、一連の10回の実験において193%±139%に等しい信号の平均の増加を示した。認められる典型的なパターンは、図17(a)に示しているパターンである。フローサイトメーターでも認められるように、イオノマイシンの刺激の場合、蛍光の初期増加後、信号は安定して高い値に定着する。
【0181】
OKT3による刺激は、信号のピークの増加を示し、ベースラインの値と比較して、一連の3回の実験において平均して178%+/-90%に等しかった。認められる典型的なパターンは、図17(b)に示しているパターンである。フローサイトメーターでも認められるように、OKT3刺激の場合、蛍光の初期の増加後、信号は数分でピーク値に達した。
【0182】
比較実験では、本発明による方法が、選択した方法、すなわちフローサイトメトリーで得られたデータに匹敵するデータを有することを可能にすることを示している。
【0183】
形態1
キットであって、
先端部(20)と、
開口型マイクロウェル(2)のアレイ、少なくとも1つのマイクロチャネル(3)、試薬用および/または1つ以上の生物学的試料用の少なくとも1つの入力ポート(8)、およびそれら用の少なくとも1つの出力ポート(10)を含む逆開口型マイクロウェルシステムであるマイクロ流体デバイス(1)であって、前記入力ポートおよび前記出力ポートは、前記マイクロチャネル(3)の1つ以上とマイクロ流体で連通しており、前記マイクロチャネル(3)は、マイクロメートル寸法の断面積を有し、前記マイクロウェル(2)に流体を供給するデバイスと
を含み、
前記先端部(20)は、流体分配システムと協働するように意図された近位部(22)および遠位部(21)を含み、前記近位部(22)は略管状構成であり、前記遠位部(21)は開口型で先細り、前記遠位部(21)の末端基部(25)が寸法d3の外径を有し、前記遠位部(21)の前記上側基部(24)が寸法d4の外径を有し、前記先端部(20)の前記遠位部(21)の高さ、すなわち前記遠位部(21)の前記上側基部(24)と前記末端基部(25)との間の距離はh2であり、前記遠位部(21)によって形成される円錐台の半開口部は、(90°-β)であり、前記近位部(22)の高さはh3であり、前記入力領域(8)は、前記少なくとも1つのマイクロチャネル(3)に通じる垂直チャネル(18)を含み、前記垂直チャネル(18)の上方開口部は直径d2を有し、d3<d2であり、前記垂直チャネル(18)は、好ましくは上側基部(9)および下側基部(12)を有する下方に先細になっているチャネルであり、前記下側基部(12)は寸法d1の直径を有し、前記垂直チャネル(18)は高さh1を有し、前記先細りしたチャネルによって形成される円錐台の準開口部が(90°-α1)であり、前記先端部(20)と前記垂直チャネル(18)は、間に干渉連結を生成するように寸法決めされるキット。
形態2
前記角度βおよびα1は、互いに最大15°、好ましくは10°または8°異なり、さらにより好ましくは4°から5°の間の差を有する、形態1に記載のキット。
形態3
前記先端部(20)の前記遠位部(21)が、前記遠位部に沿って前記遠位部(21)の前記末端基部(25)に対して高さh_xに配置された点(28)において寸法d2の直径部分を有し、前記高さh_xは、前記垂直チャネル(18)の前記上側基部(9)と前記マイクロチャネル(3)の入力点との間の距離よりも小さく、前記距離は、任意のコネクタなしでh1であり、d3<d2<d4かつ(90°-α1)<(90°-β)であり、好ましくはα1は80°と90°との間で、さらにより好ましくは90°に相当する、形態1または2に記載のキット。
形態4
d1<d3<d2かつ(90°-α1)>(90°-β)であり、前記先端部(20)が、長さh_xの部分(27)によって前記入力領域(8)に含まれる前記垂直チャネル(18)に挿入される、形態1または2に記載のキット。
形態5
前記入力領域(8)が、高さh4および上側基部(33)および前記垂直チャネル(18)の上側基部(9)と一致する下側基部(9)を有する、中空円錐台の形状のフレア部(30)をさらに備え、前記上側基部(33)は前記下側基部(9)の直径d2より大きい直径d5を有し、前記フレア部(30)を形成する円錐台の半開口部が、(90°-α2)で、(90°-α2)>(90°-β)である、形態1~4の1つに記載のキット。
形態6
前記入力領域(8)が、前記フレア部(30)の上方に、下側部分(41)および任意選択で上側部分(42)を含む貯蔵領域(40)をさらに含み、前記任意選択の上側部分(42)は、直径d6の上側基部(43)および下側基部(44)を有する略管状の形状を有し、前記下側部分(41)は下方に先細になっており、前記任意選択の上側部分(42)の前記下側部分(44)と一致する上側基部(44)、および直径d5の下側基部(45)を有し、前記貯蔵領域(40)は高さh5を有し、前記下側部分(41)を形成する円錐台の半開口部は(90°-α3)であり、α3は90°以下、好ましくはα3は0°である、形態5に記載のキット。
形態7
前記入力領域(8)は、下側部分(51)および任意選択で上側部分(52)を含む貯蔵領域(50)をさらに含み、前記任意選択の上側部分(52)は、直径d6の上側基部(53)および下側基部(54)を有する略管状の形状を有し、前記下側部分(51)は下方に先細になっており、前記任意選択の上側部分(52)の前記下側部分(54)と一致する上側基部(54)、および直径d5の下側基部(55)を有し、前記貯蔵領域(50)は高さh5を有し、前記貯蔵部分(50)を形成する前記円錐台の前記半開口部は(90°-α3)であり、(90°-α3)>(90°-β)である、形態1~4の1つに記載のキット。
形態8
前記入口領域(8)が、前記垂直チャネル(18)の前記下側基部(12)と一致する上側基部(12)を有する少なくとも1つのコネクタ(60)を含む、形態1~7の1つに記載のキット。
形態9
開口型マイクロウェルマトリクス(2)、少なくとも1つのマイクロチャネル(3)、試薬用および/または1つ以上の生物学的試料用の少なくとも1つの入力ドア(8)、およびそれ用の少なくとも1つの出力ドア(10)を含む逆の開口型マイクロウェルシステムであるマイクロ流体デバイス(1)であって、前記入力ドアおよび前記出力ドアは、前記マイクロチャネル(3)の1つ以上とマイクロ流体で連通しており、前記マイクロチャネル(3)は、マイクロメートル寸法の断面積を有し、前記マイクロウェル(2)に流体を供給するデバイス。
形態10
少なくとも1つの排出チャネル(22)および1つの出力ドア(10)によって前記マイクロ流体デバイス(1)と流体接続された排出容器(12)を含む、マイクロ流体デバイス(1)に含まれる、排出領域(70)。
形態11
前記マイクロ流体デバイス(1)が少なくとも1つのマイクロチャネル(3)を含み、前記排出チャネル(22)が前記少なくとも1つのマイクロチャネル(3)から出て、サイホンである、形態10に記載の排出領域(70)。
形態12
前記排出チャネル(22)の直径は、前記サイホンが前記マイクロチャネル(3)に含まれる前記流体に毛細管力を及ぼすようにすることを特徴とする、形態10または11に記載の排出領域(70)。
形態13
前記排出チャネル(22)は、前記少なくとも1つのマイクロチャネル(3)の底部に配置され、それとほぼ直交し、前記少なくとも1つのマイクロチャネル(3)を、前記マイクロチャネル(3)自体の下に位置する前記排出容器(12)と接続する、形態10~12の1つに記載の排出領域(70)。
形態14
前記出力ドア(10)は、前記少なくとも1つのマイクロチャネル(3)の前記底部に配置され、第1の排出容器(12a)に入り、前記マイクロチャネル(3)の下方に配置され、前記第1の排出容器(12a)から前記排出チャネル(22)が出て、前記排出容器(12)に入る、形態10~12の1つに記載の排出領域(70)。
形態15
前記排出チャネル(22)がマイクロメートル寸法の断面積を有し、前記寸法が100μmから5mmの間、好ましくは500μmから2mmの間である、形態10~14の1つに記載の排出領域(70)。
形態16
マイクロ流体デバイスから流体を充填/排出するための方法であって、
a)形態10~15の1つに記載の入力領域(8)および排出領域(70)を含むマイクロ流体デバイス(1)を利用可能にすることであり、ここで前記マイクロ流体デバイス(1)は少なくとも1つの第1の流体で充填されていることと、
b)任意選択で、前記マイクロ流体デバイス(1)における前記少なくとも1つの第1の流体入口に圧力を加えることと、
c)別法として、排出領域(70)を利用可能にすることであり、ここで前記排出チャネル(22)は前記流体を前記マイクロ流体デバイスから毛細管現象によって前記排出チャネルに確実に通せるようにする直径を有することと、
を含む方法であり、
前記少なくとも1つの第1の流体の体積Vが前記排出容器(12)の体積以下である場合、前記少なくとも1つの流体は前記排出容器(12)に一方向で到達することを特徴とする方法。
形態17
-前記マイクロ流体デバイス(1)内に前記入力領域(8)によって第2のまたはさらなる流体を入れることであり、ここで前記第1、第2および/またはさらなる流体が、独立して等しい、又は、互いに異なり、液体と気体を含む群から選択されることと、
-任意選択で、前記第2および/またはさらなる流体が、前記マイクロ流体デバイス(1)内に存在する場合には、前記マイクロチャネル(3)または前記マイクロチャネル(3)および前記逆の開口型マイクロウェル(2)において完全に置き換わり、前記流体が先に入ることと
をさらに含み、
前記第1、第2および/またはさらなる流体が互いに混合しないことを特徴とする、形態16に記載の流体を充填/排出するための方法。
形態18
生物学的試料の大規模で高含量の分析のための方法であって、
a)開口型マイクロウェル(2)のアレイ、少なくとも1つのマイクロチャネル(3)、試薬用および/または1つ以上の生物学的試料用の少なくとも1つの入力ポート(8)、およびそれら用の少なくとも1つの出力ポート(10)を含む逆開口型マイクロウェルシステム(1)を準備するステップであり、前記入力および出力ポートは、前記マイクロチャネル(3)の1つ以上とマイクロ流体で連通しており、前記マイクロチャネル(3)は、マイクロメートル寸法の断面積を有し、前記マイクロウェル(2)に流体を供給する、ステップと、
b)温度、湿度およびCO の制御されたインキュベータ、流体分配システム、位相コントラストおよび蛍光画像の取得という機構を含む前記逆開口型マイクロウェルシステムの自動管理システムを準備するステップと、
c)前記逆開口型マイクロウェルシステム(1)を前記自動化システムに配置するステップと、
d)前記入力ポート(8)の1つ以上を介して試薬を充填すること、ここで、前記試薬は、充填緩衝液および/または洗浄液および/または1つ以上の薬物および/または1つ以上の色素、および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーを含む、ステップと、
e)前記入力ポート(8)の1つ以上を介して前記1つ以上の生物学的試料を充填するステップと、
i)任意選択で、前記細胞を1つ以上の色素および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーで染色するステップと、
j)前記マイクロウェル(2)の1つ以上から画像を取得するステップであり、ここで前記画像は画像T0と規定される、ステップと、
p)表示された前記細胞を分類するステップであり、ここで前記分類は、前記画像T0から検出された形態学的パラメータおよび/または機能的パラメータで行われるステップとを含むが、必ずしもこの順序ではない、方法。
形態19
前記試薬および前記少なくとも1つの生物学的試料が、試薬用リザーバ(6)および生物学的試料用リザーバ(7)にそれぞれ収容される、形態18に記載の高含量分析方法。
形態20
前記試薬用リザーバ(6)および前記生物学的試料用リザーバ(7)は、前記開口型逆マイクロウェルシステム(1)に統合され、前記試薬および前記1つ以上の生物学的試料が、導入の前記ステップc)の前に各々、前記試薬用リザーバ(6)および前記生物学的試料用リザーバ(7)の中に事前に充填され、前記入力ポート(8)の1つ以上を介する前記試薬および前記1つ以上の生物学的試料の充填の前記ステップd)およびe)の1つ以上が、前記自動化システムにおける前記逆開口型マイクロウェルシステム(1)の導入の前記ステップ(c)の後に、前記リザーバ(6)からの前記試薬と前記リザーバ(7)からの前記生物学的試料との自動ピックアップ、また前記マイクロウェル(2)の1つ以上に含まれる前記細胞の結果としての配置によってなされる、形態19に記載の高含量分析方法。
形態21
前記試薬用リザーバ(6)および前記生物学的試料用リザーバ(7)は、前記開口型逆マイクロウェルシステム(1)の外部にあり、前記試薬および前記1つ以上の生物学的試料が、前記リザーバ(6)および(7)の中に事前に充填され、前記リザーバ(6)および(7)は、前記逆開口型マイクロウェルシステム(1)の導入の前記ステップc)へと挿入され、前記入力ポート(8)の1つ以上を介する前記試薬および前記1つ以上の生物学的試料の充填の前記ステップd)およびe)の1つ以上が、前記自動化システムにおける前記逆開口型マイクロウェルシステム(1)の導入の前記ステップ(c)の後に、前記リザーバ(6)からの前記試薬と前記リザーバ(7)からの前記生物学的試料との自動ピックアップ、また前記マイクロウェル(2)の1つ以上に含まれる前記細胞の結果としての配置によってなされる、形態19に記載の高含量分析方法。
形態22
前記生物学的試料リザーバ(7)の1つ以上に前記試料を充填する前に生物学的試料調製物も含む、形態18~21の1つに記載の高含量分析方法。
形態23
ステップc)で前記逆開口型マイクロウェルシステムを前記自動化システムに導入した後、
f)少なくとも1つの前記マイクロチャネル(3)を充填緩衝液で満たすことと、
g)前記マイクロウェル(2)の1つ以上から個別にまたはサブグループごとに画像を取得することであり、ここで前記画像がベースライン画像として規定されていることと
をさらに含み、
前記分類ステップp)において、前記分類は、画像T0とベースライン画像との比較によって検出された形態学的パラメータおよび/または機能的パラメータで行われる、形態18~22の1つに記載の高含量分析方法。
形態24
k)前記マイクロウェル(2)の1つ以上において、前記ポート(8)を介して前記薬物の1つ以上を分配するするステップと、
l)インキュベーションするステップと、
をさらに含む、形態18~23の1つに記載の方法。
形態25
前記ステップl)の後に、
m)前記インキュベーション中の異なる時間に、前記1つ以上のマイクロウェル(2)から少なくとも2つの画像を取得するステップであり、ここで前記画像が画像T1、T2、Tnで規定され、ここで、nは2以上の任意の数であり、好ましくは1,000または100、さらにより好ましくは25で、好適な実施形態において9である、ステップと、
n)任意選択で、前記画像T1、T2、Tnを前記取得する間に、1つ以上の色素および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーで前記細胞をさらに染色するステップと、
o)任意選択で、前記画像T1、T2、Tnを前記取得する間に、マイクロウェル(2)またはマイクロウェル(2)の1つ以上のサブグループ内の前記薬物の1つ以上を個々にまたは組み合わせてさらに分配するステップと
をさらに含み、
ステップp)の前記分類は、画像T0、T1、Tnおよび任意選択でTbaselineから検出された形態学的パラメータおよび/または機能的パラメータの比較を含む、形態18~24の1つに記載の方法。
形態26
前記分類ステップp)の後に、
q)前記分析が細胞特異的であるか、細胞凝集物のレベルで行われるか、前記マイクロウェル(2)の1つに含まれる細胞集団全体を考慮する細胞生存率の分析するステップと
をさらに含む、形態18~25の1つに記載の方法。
形態27
前記ステップk)において、前記1つ以上の薬物が少なくとも2つの異なる濃度で分配され、前記細胞生存率がステップq)に従って分析される場合、検査された1つ以上の薬物について細胞特異的な用量反応曲線を得る、形態24に記載の方法。
形態28
前記ステップk)において1つ以上の薬物に曝されて生存している前記細胞が1つ以上の薬物によるさらなる治療に再び曝され、前記1つ以上の薬物が、前記ステップk)において既に使用されているものと同じで異なる濃度である、または前記ステップk)において使用されているものと異なる、形態24~27の1つに記載の方法。
形態29
前記生物学的試料が約10~20個の細胞を含む、形態18~28の1つに記載の方法。
形態30
前記生物学的試料は、癌に罹患している動物および/またはヒトから得られ、前記生物学的試料は、健常な細胞および/または癌細胞を含む、形態18~29の1つに記載の方法。
形態31
前記生物学的試料が、前記入力ポート(8)を介して充填されるか、前記リザーバ(7)に収集/除去されるように予め充填される、形態18~30の1つに記載の方法。
形態32
前記生物学的試料が血液であり、収集の直後に、これらの前記入力ポート(8)を介して装填されるか、前記リザーバ(7)に予め装填され、前記血液は、前記マイクロウェル(2)に導入されると、溶解緩衝液で処置される、形態18~31の1つに記載の方法。
形態33
前記方法の最後に、前記生存している細胞を採取し、その後の分析に使用する、形態18~32の1つに記載の方法。
形態34
a)開口型マイクロウェル(2)のアレイ、少なくとも1つのマイクロチャネル(3)、試薬用および/または1つ以上の生物学的試料用の少なくとも1つの入力ポート(8)、およびそれ用の少なくとも1つの出力ポート(10)を含む逆開口型マイクロウェルシステム(1)を準備するステップであって、前記入力および出力ポートは、前記マイクロチャネル(3)の1つ以上とマイクロ流体で連通しており、前記マイクロチャネル(3)は、マイクロメートル寸法の断面積を有し、前記マイクロウェル(2)に流体を供給する、ステップと、
b)温度、湿度およびCO の制御されたインキュベータ、流体分配システム、位相コントラストおよび蛍光画像の取得という機構を含む前記逆開口型マイクロウェルシステムの自動管理システムを準備するステップと、
c)前記逆開口型マイクロウェルシステム(1)を前記自動化システムに配置するステップと、
f)任意選択で、少なくとも1つの前記マイクロチャネル(3)を充填緩衝液で満たすステップと、
g)任意選択で、前記マイクロウェル(2)の1つ以上から個々にまたはサブグループごとに画像を取得すること、ここで前記画像は規定のベースライン画像である、ステップと、
d)前記入力ポート(8)の1つ以上を介して試薬を充填するステップであり、ここで、前記試薬は、充填緩衝液および/または洗浄液および/または1つ以上の薬物および/または1つ以上の色素、および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーを含み、前記試薬は、試薬リザーバ(6)に含まれる、ステップと、
e)それらの前記入力ポート(8)の1つ以上を介して前記1つ以上の生物学的試料を充填するステップであり、ここで前記1つ以上の生物学的試料は生物学的試料リザーバ(7)に収容されている、ステップと、
i)任意選択で、前記細胞を1つ以上の色素および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーで染色するステップと、
j)前記マイクロウェル(2)の1つ以上から画像を取得するステップであり、ここで前記画像は画像T0と規定される、ステップと、
k)前記マイクロウェル(2)の1つ以上において、前記ポート(8)を介して前記薬物の1つ以上を分配するステップと、
l)インキュベーションするステップと、
m)前記インキュベーション中の異なる時間に、前記1つ以上のマイクロウェル(2)から少なくとも2つの画像を取得するステップであり、ここで前記画像が画像T1、T2、Tnで規定され、ここで、nは2以上の任意の数であり、好ましくは1,000または100、さらにより好ましくは25であり、好適な実施形態では9である、ステップと、
n)任意選択で、前記画像T1、T2、Tnを前記取得する間に、1つ以上の色素および/または1つ以上の標識された抗体および/または1つ以上の細胞生存マーカーで前記細胞をさらに染色するステップと、
o)任意選択で、前記画像T1、T2、Tnを前記取得する間に、マイクロウェル(2)またはマイクロウェル(2)の1つ以上のサブグループ内の前記薬物の1つ以上を個々にまたは組み合わせてさらに分配するステップと、
p)表示された細胞を分類するステップであり、ここで前記分類することが前記画像T0、T1、Tnおよび任意にTbaselineから検出された形態学的パラメータおよび/または機能的パラメータによりなされるステップと、
を含み、これらのステップをこの順に実行する、形態18~33の1つに記載の方法。
形態35
形態10に記載の排出領域(70)をも含む、形態9に記載のマイクロ流体デバイス。
形態36
前記マイクロ流体デバイス(19)が、形態9または35の1つに記載のマイクロ流体デバイスである、形態1~8の1つに記載のキット。
形態37
流体のアップロード/排出方法であって、
a)形態1~8または36の1つに記載のキットを製造するステップと、
b)任意選択で、前記先端部(20)に流体を充填するステップと、
c)前記先端部(20)を前記入口領域(8)の上方に配置し、前記先端部(20)の前記遠位領域(21)と前記入口領域(8)の前記垂直チャネル(18)の間の干渉嵌合位置に達するまでそれを挿入するステップと、
d)前記入口領域(8)によって前記先端部(20)に含まれる前記流体を前記マイクロ流体デバイス(1)に放出する、または、前記マイクロ流体デバイスに既に含まれている前記流体を先端部自体で吸引するステップと
を含む方法。
形態38
前記キットが形態36に記載のキットであり、前記方法が、前記マイクロ流体デバイス(1)の前記入口領域(8)に加えられた圧力によって駆動され、前記流体が前記排出容器(12)に一方向に到達することをさらに含み、前記流体の体積Vが前記排出容器(12)の体積以下である、形態37に記載の方法。
形態39
-形態1~8または36の1つに記載のキットを製造するステップと、
-任意選択で、前記先端部(20)に流体を充填するステップと、
-前記先端部(20)を前記入口領域(8)の上方に配置し、前記先端部(20)の前記遠位領域(21)と前記入口領域(8)の前記垂直チャネル(18)との間の干渉連結位置に達するまでそれを挿入するステップと、
-前記入口領域(8)によって前記先端部(20)に含まれる前記流体を前記マイクロ流体デバイス(1)に放出する、または、前記マイクロ流体デバイスに既に含まれている前記流体を同じ先端部で吸引するステップと
をさらに含む、形態18~34の1つに記載の高含量分析方法。
形態40
前記キットは、形態36に記載のキットであり、前記方法は、前記流体が、前記マイクロ流体デバイス(1)の前記入力領域(8)に加えられた圧力によって押され、前記排出容器(12)に一方向に到達することをさらに含み、前記流体の体積Vが前記排出容器(12)の体積以下である、形態39に記載の高含量分析方法。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図20
図21A
図21B
図21C
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図24A
図24B
図24C
図24D
図25
図26
図27A
図27B
図27C
図28