(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20230118BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20230118BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230118BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230118BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20230118BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20230118BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20230118BHJP
【FI】
B60K11/06
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6556
H01M10/633
(21)【出願番号】P 2019004229
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 崇人
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-220659(JP,A)
【文献】特開2016-107894(JP,A)
【文献】特開2017-054789(JP,A)
【文献】特開2013-147129(JP,A)
【文献】特開2007-331609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0037252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00-11/08,
1/00- 6/12,
7/00- 8/00,16/00
H01M 10/52-10/667
B60H 1/00- 3/06
B60L 1/00- 3/12, 7/00
-13/00,15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内に複数並置された座席近傍に、位置を異にして設けられた複数の吸気口と、
前記複数の吸気口それぞれから独立して吸気する複数の吸気ファンと、
前記複数の吸気ファンの吸気をバッテリに誘導するダクトと、
前記バッテリの温度を検出する温度センサと、
検出された前記バッテリの温度に基づき、前記複数の吸気ファンの合計の吸気流量を導出する吸気導出部と、
搭乗者の着座態様に基づいて、
前記合計の吸気流量を前記複数の吸気ファン
で按分する吸気制御部と、
を備える冷却システム。
【請求項2】
前記吸気制御部は、前記複数並置された座席のうち、搭乗者が着座している座席近傍の吸気口と連通する吸気ファンの吸気流量が、搭乗者が着座していない座席近傍の吸気口と連通する吸気ファンの吸気流量より小さくなるよう制御する請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
搭乗者の着座態様が変化しない所定の更新停止条件が満たされている場合、前記吸気制御部は、前記吸気流量の比率の更新を行わない請求項1
または2に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを冷却する冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車などの電気で動作する車両では、車両外部から電力の供給を受け、車両に搭載されているバッテリに充電している。このようなバッテリは利用時に高温になることが知られている。したがって、吸気ファンを通じて車室内から空気を誘導し、バッテリを冷却する場合がある。
【0003】
また、車室内の空気の温度に基づいて、車室内からの空気の吸入量の上限を変更する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリの冷却媒体である空気は車室内から吸気口を通じて吸引している。したがって、吸気口と搭乗者との位置関係によっては、搭乗者が、吸気口に連通している吸気ファンの回転に基づく音を不快に感じてしまう場合がある。
【0006】
しかし、搭乗者の乗車に応じて吸気ファンの吸気流量を単純に小さくしてしまうと、誘導できる空気量が少なくなり、バッテリの温度上昇を十分に抑制できなくなる。そうすると、燃費や寿命が悪化するばかりでなく、バッテリの最大容量が劣化し、電気による走行が困難になるおそれが生じる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、搭乗者の快適性を維持しつつ、十分な量の空気をバッテリに適切に誘導可能な冷却システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の冷却システムは、車両内に複数並置された座席近傍に、位置を異にして設けられた複数の吸気口と、複数の吸気口それぞれから独立して吸気する複数の吸気ファンと、複数の吸気ファンの吸気をバッテリに誘導するダクトと、バッテリの温度を検出する温度センサと、検出されたバッテリの温度に基づき、複数の吸気ファンの合計の吸気流量を導出する吸気導出部と、搭乗者の着座態様に基づいて、合計の吸気流量を複数の吸気ファンで按分する吸気制御部と、を備える。
【0009】
吸気制御部は、複数並置された座席のうち、搭乗者が着座している座席近傍の吸気口と連通する吸気ファンの吸気流量が、搭乗者が着座していない座席近傍の吸気口と連通する吸気ファンの吸気流量より小さくなるとしてもよい。
【0011】
搭乗者の着座態様が変化しない所定の更新停止条件が満たされている場合、吸気制御部は、吸気流量の比率の更新を行わないとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搭乗者の快適性を維持しつつ、十分な量の空気をバッテリに適切に誘導することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】冷却システムが適用される車両の構成を示す鳥瞰図である。
【
図2】吸気ファンの吸気流量の比率を示した説明図である。
【
図3】バッテリの冷却方法の処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
<冷却システム10>
図1は、冷却システム10が適用される車両1の構成を示す鳥瞰図である。ここでは、車両1の各構成を鉛直上方から視認している。当該車両1において、冷却システム10は、バッテリ20と、インバータ22と、駆動モータ24と、吸気口26と、吸気ファン28と、ダクト30と、温度センサ32と、着座センサ34と、中央制御部36とを含んで構成される。本実施形態における車両1は、駆動モータ24を駆動源とした電気自動車として説明するが、駆動源として駆動モータ24と並行してエンジンが設けられたハイブリッド電気自動車にも適用できる。
【0016】
バッテリ20は、リチウムイオンバッテリ等の二次電池で構成され、外部から供給された電力を充電(蓄電)する。インバータ22は、バッテリ20の直流電力を交流電力に変換し駆動モータ24に出力する。駆動モータ24は、インバータ22を通じてバッテリ20から電力の供給を受け、供給された電力に応じたトルクで車両1を駆動する。
【0017】
バッテリ20は充電時や放電時に高温になるので、車両1の車室1a内から空気を誘導し、バッテリ20を冷却する。ここで、吸気口26は、車室1aに複数並置された座席近傍、例えば、座席サイドや搭乗者の耳元に相当する場所に、位置を異にして複数設けられる。本実施形態では、後部の幅方向において、右側座席2aのさらに右側に吸気口26aを設け、後部の左側座席2bのさらに左側に吸気口26bを設ける例を挙げて説明する。
【0018】
なお、本実施形態における座席は、人一人が着座することを想定した席を示す。したがって、例えば、車室1aの後部の座席が一体的に形成されていたとしても、車両1の幅方向に、着座が想定されている人数分の座席があるもの(例えば、右側座席2a、左側座席2b)として説明する。
【0019】
吸気ファン28(28a、28b)は、複数の吸気口26a、26bそれぞれから独立して吸気する。すなわち、吸気ファン28aは吸気口26aから吸気し、吸気ファン28bは吸気口26bから吸気する。ダクト30は、複数の吸気ファン28a、28bの吸気(冷媒)をバッテリ20に誘導する。ここでは、複数の吸気ファン28a、28bの吸気をそれぞれ独立してバッテリ20に誘導する例を挙げて説明するが、複数の吸気ファン28a、28bの吸気を集約してバッテリ20に誘導してもよい。
【0020】
温度センサ32は、バッテリ20と一体的に設けられ、バッテリ20の温度を検出する。着座センサ34は、座席2a、2bの座面に設けられた圧力センサによって、その座席2a、2bへの人の着座を検知する。ここでは、着座センサ34aが右側座席2aにおける人の着座を検知し、着座センサ34bが左側座席2bにおける人の着座を検知する。なお、着座センサ34は、圧力センサに限られず、人の着座さえ検知できれば足り、例えば、シートベルトの装着やドアの開閉等、既存の様々な検知手段を適用することができる。
【0021】
中央制御部(ECU)36は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。中央制御部36は、車両1全体を統括制御する。また、本実施形態において、中央制御部36は、吸気導出部50、吸気制御部52としても機能する。
【0022】
なお、本実施形態では各機能部(吸気導出部50、吸気制御部52)を中央制御部36に配置する例を挙げて説明するが、これに限られるものではない。具体的には、中央制御部36が有する各機能部は複数の制御装置に分割配置されてもよい。この場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
【0023】
吸気導出部50は、少なくとも、温度センサ32で検出されたバッテリ20の温度に基づき、バッテリ20の冷却に必要な単位時間当たりの空気量(以下、単に「吸気流量」という)を導出する。
【0024】
吸気制御部52は、吸気導出部50が導出した吸気流量に基づいて、複数の吸気ファン28a、28bの回転制御を行う。例えば、バッテリ20の冷却に必要な吸気流量を1とすると、吸気制御部52は、吸気ファン28a、28bによって誘導される吸気流量の合計が1となるように、吸気ファン28aおよび吸気ファン28bそれぞれの吸気流量を決定する。なお、吸気ファン28における吸気流量は回転数に基づいて一意に決定されることとなるので、ここで示す吸気流量は回転数と同義であり、互いに読み替えることもできる。
【0025】
ところで、上述したように、吸気口26a、26bは、車両1の車室1a内に設けられる。吸気口26a、26bはダクト30を通じてそれぞれ吸気ファン28a、28bと連通している。したがって、吸気口26a、26bと、搭乗者との位置関係によっては、搭乗者が、吸気口26a、26bに連通している吸気ファン28a、28bの回転に基づく音を不快に感じてしまう場合がある。しかしながら、バッテリ20の温度上昇を抑制するため、吸気ファン28a、28bの吸気流量を単純に小さくすることはできない。
【0026】
そこで、本実施形態では、複数の吸気ファン28a、28bそれぞれの吸気流量を個々に制御することで、搭乗者の快適性を維持しつつ、十分な量の空気をバッテリ20に適切に誘導する。
【0027】
吸気制御部52は、着座センサ34による搭乗者の着座態様(着座している人数およびその位置)に基づいて、複数の吸気ファン28a、28bの吸気流量の比率を制御する。具体的に、吸気制御部52は、複数並置された座席2a、2bのうち、搭乗者が着座している座席近傍の吸気口26と連通する吸気ファン28の吸気流量が、搭乗者が着座していない座席近傍の吸気口26と連通する吸気ファン28の吸気流量より小さくなるよう制御する。
【0028】
図2は、吸気ファン28a、28bの吸気流量の比率を示した説明図である。車室1aの後部における右側座席2aおよび左側座席2bのいずれにも人が着座していない場合、
図2(a)のように、バッテリ20を冷却するために必要な吸気流量を吸気ファン28a、28bで均等に按分する(吸気ファン28a:吸気ファン28b=50:50)。また、右側座席2aおよび左側座席2bのいずれにも人が着座している場合も、
図2(b)のように、バッテリ20を冷却するために必要な吸気流量を吸気ファン28a、28bで均等に按分する(吸気ファン28a:吸気ファン28b=50:50)。
【0029】
一方、車室1aの後部において、右側座席2aには人が着座しているが、左側座席2bには着座していない場合、
図2(c)のように、右側座席2a近傍の吸気口26aと連通する吸気ファン28aの吸気流量が、左側座席2b近傍の吸気口26bと連通する吸気ファン28bの吸気流量より小さくなるよう、例えば、その比率を吸気ファン28a:吸気ファン28b=20:80とする。
【0030】
また、車室1aの後部における左側座席2bには人が着座しているが、右側座席2aには着座していない場合、
図2(d)のように、左側座席2b近傍の吸気口26bと連通する吸気ファン28bの吸気流量が、右側座席2a近傍の吸気口26aと連通する吸気ファン28aの吸気流量より小さくなるよう、例えば、その比率を吸気ファン28a:吸気ファン28b=80:20とする。
【0031】
なお、ここでは、吸気ファン28aと吸気ファン28bとの吸気流量の比率を20:80あるいは80:20とする例を挙げて説明したが、かかる場合に限らず、その比率は任意に決定することができる。例えば、吸気制御部52は、吸気ファン28の吸気流量に応じ、搭乗者がどの程度不快に感じるか、および、吸気ファン28の効率がどの程度低下するかに応じて、適切な比率を決定するとしてもよい。また、吸気ファン28a、28bの一方のみを動作させ、他方を動作させないとすることもできる。
【0032】
このように、吸気ファン28aと吸気ファン28bとの吸気流量の比率を変化させ、搭乗者が着座している座席近傍の吸気口26と連通する吸気ファン28の吸気流量を下げることで、搭乗者の快適性を維持することができる。
【0033】
なお、このとき、吸気制御部52は、複数の吸気ファン28a、28bの吸気流量の合計が、バッテリ20を冷却するために必要な吸気流量の所定の目標範囲に収まるように、複数の吸気ファン28a、28bの吸気流量の比率を制御する。すなわち、搭乗者の快適性のため、一方の吸気ファン28の吸気流量を減少させたとしても、搭乗者から遠い他方の吸気ファン28の吸気流量を増大させることで、全体としての冷却効率を下げることなく維持する。したがって、所定の目標範囲内の十分な量の空気をバッテリ20に適切に誘導することで、バッテリ20の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0034】
<冷却方法>
図3は、バッテリ20の冷却方法の処理の流れを示したフローチャートである。かかるフローチャートは、所定の割込時間(例えば1分間)毎に実行される。なお、ここでは、バッテリ20の冷却に関する処理のみを説明し、その他の処理については、詳細な説明を省略する。
【0035】
割込時間が経過すると、吸気導出部50は、車両1が所定の走行条件を満たしているか否か判定する(S100)。ここで、走行条件は、バッテリ20を冷却するため、車両1が走行している状態にあるかを判定するための条件である。具体的に、車両1の速度が所定の第1速度(例えば、10km/h)を越えたこと、車両1が前進していること、車両1のドアが全て閉状態であること等が挙げられる。
【0036】
吸気導出部50は、車両1が走行条件を満たしていると判定すると(S100におけるYES)、バッテリ20が所定の冷却条件を満たしているか否か判定する(S102)。なお、吸気導出部50は、車両1が走行条件を満たしていないと判定すると(S100におけるNO)、当該冷却方法の処理を終了する。
【0037】
ここで、冷却条件は、バッテリ20の温度を所定範囲(例えば10℃~45℃)に収めるための上限値を示す。したがって、吸気導出部50は、バッテリ20の温度が所定温度(例えば35℃)以上となると冷却条件を満たすと判定する。
【0038】
吸気導出部50は、バッテリ20が所定の冷却条件を満たしていると判定すると(S102におけるYES)、車両1が所定の更新停止条件を満たしているか否か判定する(S104)。かかる更新停止条件については後ほど詳述する。なお、吸気導出部50は、バッテリ20が所定の冷却条件を満たしていないと判定すると(S102におけるNO)、当該冷却方法の処理を終了する。
【0039】
吸気導出部50は、車両1が更新停止条件を満たしていないと判定すると(S104におけるNO)、温度センサ32で検出されたバッテリ20の温度に基づき、バッテリ20の冷却に必要な吸気流量を導出する(S106)。なお、吸気導出部50は、車両1が更新停止条件を満たしていると判定すると(S104におけるYES)、当該冷却方法の処理を終了する。
【0040】
続いて、吸気制御部52は、着座センサ34a、34bを参照し、車室1aの後部における右側座席2aおよび左側座席2bのいずれにも人が着座しているか、または、いずれにも人が着座していないかを判定する(S108)。そして、右側座席および左側座席のいずれにも人が着座しているか、または、いずれにも人が着座していなければ(S108におけるYES)、吸気制御部52は、吸気導出部50が導出した吸気流量に基づいて、その吸気流量の比率が、吸気ファン28a:吸気ファン28b=50:50となるように吸気ファン28a、28bを回転制御する(S110)。
【0041】
右側座席2aおよび左側座席2bのいずれかに人が着座していると判定されれば(S108におけるNO)、吸気制御部52は、着座センサ34を参照し、右側座席2aに人が着座しているか否か判定する(S112)。そして、右側座席2aに人が着座していれば(S112におけるYES)、吸気制御部52は、吸気導出部50が導出した吸気流量に基づいて、その吸気流量の比率が、吸気ファン28a:吸気ファン28b=20:80となるように吸気ファン28a、28bを回転制御する(S114)。
【0042】
右側座席2aに人が着座していないと判定されれば(S112におけるNO)、左側座席2bにのみ人が着座していることになるので、吸気制御部52は、吸気導出部50が導出した吸気流量に基づいて、その吸気流量の比率が、吸気ファン28a:吸気ファン28b=80:20となるように吸気ファン28a、28bを回転制御する(S116)。
【0043】
なお、ステップS110、S114、S116のいずれにおいても、吸気制御部52は、複数の吸気ファン28a、28bの吸気流量の合計が、バッテリ20を冷却するために必要な吸気流量の所定の目標範囲に収まるように、複数の吸気ファン28a、28bの吸気流量の比率を制御する。
【0044】
このような吸気ファン28a、28bの吸気流量の比率制御は、搭乗者の着座態様を常時監視し、その変化に追従する。例えば、一人の搭乗者が、右側座席2aから左側座席2bに移動した場合、吸気制御部52は、吸気流量の比率を、吸気ファン28a:吸気ファン28b=20:80から、吸気ファン28a:吸気ファン28b=80:20となるように変化させる。しかし、搭乗者の着座態様が変化しないことが予め分かっている場合においてまでステップS106~ステップS116の処理を必ず行うとすると処理負荷が大きくなる。
【0045】
そこで、上記のステップS104では、車両1が所定の更新停止条件を満たしているか否か判定し、車両1が更新停止条件を満たしていると判定すると(S104におけるYES)、ステップS106~ステップS116の処理を行うことなく、当該冷却方法の処理を終了する。こうすることで、搭乗者の着座態様が変化しない状況下において、無駄に、ステップS106~ステップS116の処理を行わなくて済み、処理負荷および消費電力の抑制を図ることができる。
【0046】
ここで、更新停止条件は、搭乗者の着座態様が変化しない(車室1a内を移動しない)条件である。具体的に、車両1の速度が所定の第2速度(例えば、80km/h)を越えたこと(高速道路を走行していること)、シートベルトが締結状態にあること、着座センサ34が搭乗者の移動を検知しない状態が所定時間(例えば5分)経過したこと等が挙げられる。
【0047】
以上、説明した冷却システム10により、搭乗者の快適性を維持しつつ、所定の目標範囲内の十分な量の空気をバッテリ20に適切に誘導することで、バッテリ20の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0048】
また、コンピュータを冷却システム10の吸気導出部50や吸気制御部52として機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
例えば、上述した実施形態では、複数の吸気ファン28として、吸気ファン28a、28bの2つを挙げて説明したが、複数であればよく、例えば、3以上で構成されていてもよい。このとき、搭乗者の座席から遠い吸気ファンより、近い吸気ファンの方が、吸気流量が小さくなるように回転制御すればよい。
【0051】
また、
図3のフローチャートでは、ステップS104において更新停止条件を満たさない場合にのみ複数の吸気ファン28a、28bの吸気流量の比率を更新する例を挙げて説明した。しかし、かかる場合に限らず、人が移動したときのみ更新すれば足り、例えば、着座センサ34が人の移動を検知した場合にのみ吸気流量の比率を更新するとしてもよい。
【0052】
なお、本明細書の冷却方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、バッテリを冷却する冷却システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
10 冷却システム
20 バッテリ
26 吸気口
28 吸気ファン
30 ダクト
52 吸気制御部