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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】可変パッド
(51)【国際特許分類】
   E01B 9/68 20060101AFI20230118BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20230118BHJP
   C08F 32/00 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
E01B9/68
C08J5/00
C08F32/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019028117
(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公開番号】P2020133246
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】503423096
【氏名又は名称】RIMTEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187388
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 天光
(72)【発明者】
【氏名】矢口 直幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 実
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大悟
(72)【発明者】
【氏名】枡田 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正基
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-016202(JP,U)
【文献】特開2018-190908(JP,A)
【文献】特開2009-155911(JP,A)
【文献】国際公開第2013/137231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 9/68
C08J 5/00
C08F 32/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイプレートと前記タイプレート上に固定されたレールとの間に挿入され、且つ、前記タイプレートと前記レールとの間の隙間を埋めるように厚さが調整された可変パッドにおいて、
前記タイプレートと前記レールとの間に配置された第1袋体部と、
前記第1袋体部の内部に充填された第1樹脂部と、
を有し、
前記第1樹脂部は、ノルボルネン環構造を有する第1モノマーを含む重合性組成物を重合した重合体よりなり、
前記第1袋体部は、ポリエチレンよりなる第1内表面層を含み、
ポリエチレンよりなる前記第1内表面層と前記第1樹脂部とが互いに溶着されることにより接着され、一体化される、可変パッド。
【請求項2】
タイプレートと前記タイプレート上に固定されたレールとの間に挿入され、且つ、前記タイプレートと前記レールとの間の隙間を埋めるように厚さが調整された可変パッドにおいて、
前記タイプレートと前記レールとの間に配置された第1袋体部と、
前記第1袋体部の内部に充填された第1樹脂部と、
を有し、
前記第1樹脂部は、ノルボルネン環構造を有する第1モノマーを含む重合性組成物を重合した重合体よりなり、
前記第1袋体部は、ポリエチレンよりなる第1内表面層を含み、
ポリエチレンよりなる前記第1内表面層と前記第1樹脂部とが互いに溶着されることにより接着され、一体化され、
前記重合体よりなり且つ幅10mm、厚さ4mm及び長さ80mmを有する第1試験片を作製し、作製された前記第1試験片を、前記第1試験片のうち拘束されている第1部分の第1端部であって前記第1試験片のうち拘束されていない第2部分側の前記第1端部から、前記第2部分のうち前記第1部分の厚さ方向の荷重が印加される第3部分までの距離が11mmとなるように、片持ち梁状に固定し、前記第3部分に前記荷重を印加して変形させる第1速度を5mm/分とし且つ温度を-20℃とした条件で、前記第3部分に前記荷重を印加して変形させる曲げ試験を行ったときに、前記第1試験片は、前記第1部分の厚さ方向における前記第3部分の変形量が10mmでも破損しない、可変パッド。
【請求項3】
タイプレートと前記タイプレート上に固定されたレールとの間に挿入され、且つ、前記タイプレートと前記レールとの間の隙間を埋めるように厚さが調整された可変パッドにおいて、
前記タイプレートと前記レールとの間に配置された第1袋体部と、
前記第1袋体部の内部に充填された第1樹脂部と、
を有し、
前記第1樹脂部は、ノルボルネン環構造を有する第1モノマーを含む重合性組成物を重合した重合体よりなり、
前記第1袋体部は、ポリエチレンよりなる第1内表面層を含み、
ポリエチレンよりなる前記第1内表面層と前記第1樹脂部とが互いに溶着されることにより接着され、一体化され、
前記重合体よりなり且つJIS K 7161-2「プラスチック-引張特性の求め方-第2部:型成形,押出成形及び注型プラスチックの試験条件」1B形のダンベル形状を有する第1試験片を作製し、作製された前記第1試験片のうち前記第1試験片の長さ方向における第1の側の第1端部を第1保持部により保持し、前記第1試験片のうち前記長さ方向における前記第1の側と反対側の第2端部を第2保持部により保持し、前記第1試験片が前記長さ方向に伸びるように前記第1保持部を前記第2保持部に対して相対移動させる第1速度を20mm/分とし且つ温度を-20℃とした条件で、前記第1試験片を前記長さ方向に伸ばす第1引張試験を行ったときに、前記第1試験片が破断した時の前記第1試験片の伸び量が23mm以上である、可変パッド。
【請求項4】
タイプレートと前記タイプレート上に固定されたレールとの間に挿入され、且つ、前記タイプレートと前記レールとの間の隙間を埋めるように厚さが調整された可変パッドにおいて、
前記タイプレートと前記レールとの間に配置された第1袋体部と、
前記第1袋体部の内部に充填された第1樹脂部と、
を有し、
前記第1樹脂部は、ノルボルネン環構造を有する第1モノマーを含む重合性組成物を重合した重合体よりなり、
前記第1袋体部は、ポリエチレンよりなる第1内表面層を含み、
ポリエチレンよりなる前記第1内表面層と前記第1樹脂部とが互いに溶着されることにより接着され、一体化され、
前記重合体よりなり且つJIS K 7161-2「プラスチック-引張特性の求め方-第2部:型成形,押出成形及び注型プラスチックの試験条件」1B形のダンベル形状を有する第1試験片を作製し、作製された前記第1試験片のうち前記第1試験片の長さ方向における第1の側の第1端部を第1保持部により保持し、前記第1試験片のうち前記長さ方向における前記第1の側と反対側の第2端部を第2保持部により保持し、前記第1試験片が前記長さ方向に伸びるように前記第1保持部を前記第2保持部に対して相対移動させる第1速度を20mm/分とし且つ温度を-20℃とした条件で、前記第1試験片を前記長さ方向に伸ばす第1引張試験を行ったときに、前記第1試験片が破断した時のエネルギーが38J以上である、可変パッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の可変パッドにおいて、
前記可変パッドは、前記タイプレートと前記レールとの間に、弾性板よりなる軌道パッドと重ねられた状態で挿入されている、可変パッド。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の可変パッドにおいて、
前記レールは、第1方向に延在し、
前記可変パッドは、更に、
前記タイプレートよりも前記第1方向における第2の側に配置され、内部が前記第1袋体部の内部と連通し、且つ、前記第1袋体部と一体的に形成された第2袋体部と、
前記第2袋体部の内部に充填され、前記重合体よりなり、且つ、前記第1樹脂部と一体的に形成された第2樹脂部と、
を有し、
前記第2樹脂部の厚さは、前記第1樹脂部の厚さよりも厚い、可変パッド。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の可変パッドにおいて、
前記重合性組成物は、ノルボルネン環構造を有し、且つ、前記第1モノマーの種類と異なる種類の第2モノマーをさらに含み、
前記第1モノマーは、ジシクロペンタジエンよりなり、
前記第2モノマーは、以下の一般式(1):
【化2】
(一般式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表し、RとR又はRとRは共同して、アルキリデン基を形成していてもよく、Rおよび/またはRとRおよび/またはRとが環構造を形成していてもよい。pは0、1又は2を表す。)
で示される化合物の1種以上よりなる、可変パッド。
【請求項8】
請求項に記載の可変パッドにおいて、
前記第2モノマーが、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5-エチリデンノルボルネン、8-エチリデンテトラシクロドデセン及びトリシクロペンタジエンからなる群から選択された1種以上よりなる、可変パッド。
【請求項9】
請求項又はに記載の可変パッドにおいて、
前記重合性組成物における前記第1モノマーの含有量と前記重合性組成物における前記第2モノマーの含有量との合計を100質量部としたとき、前記重合性組成物における前記第2モノマーの含有量が4質量部以上である、可変パッド。
【請求項10】
請求項3又は4に記載の可変パッドにおいて、
前記重合体よりなり且つJIS K 7161-2「プラスチック-引張特性の求め方-第2部:型成形,押出成形及び注型プラスチックの試験条件」1B形のダンベル形状を有する第2試験片を作製し、作製された前記第2試験片のうち前記第2試験片の長さ方向における第3の側の第3端部を第3保持部により保持し、前記第2試験片のうち前記長さ方向における前記第3の側と反対側の第4端部を第4保持部により保持し、前記第2試験片が前記長さ方向に伸びるように前記第3保持部を前記第4保持部に対して相対移動させる第2速度を20mm/分とし且つ温度を60℃とした条件で、前記第2試験片を前記長さ方向に伸ばす第2引張試験を行ったときに、前記第2試験片が破断した時のエネルギーが66Jを超える、可変パッド。
【請求項11】
請求項3、4又は10に記載の可変パッドにおいて、
前記重合体よりなり且つ幅13mm、厚さ13mm及び長さ13mmを有する第3試験片を作製し、作製された前記第3試験片の長さ方向に圧縮する第3速度を1mm/分とした条件で、JIS K 7181「プラスチック-圧縮特性の求め方」及びJIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に基づいて前記第3試験片を前記長さ方向に圧縮する圧縮試験を行ったときに、前記第3試験片の圧縮降伏点が、-20℃、23℃及び60℃のいずれの温度においても52MPa以上である、可変パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道軌道におけるレール高さを調整するための部材として、軌道スラブ又は枕木上に固定されたタイプレートと、タイプレート上に固定されたレールとの間に挿入され、且つ、タイプレートとレールとの間の隙間を埋めるように厚さが調整された可変パッドが用いられている。この可変パッドは、袋体部を有し、タイプレートとレールとの間に袋体部を挿入した後、袋体部の内部に例えば重合硬化することにより樹脂となる液状の重合性組成物を注入し、任意の厚さに調整した後、液状の重合性組成物を重合硬化させることにより、タイプレートとレールとの間の隙間を充填するものである。このとき、注入される液状の重合性組成物の量を調整することにより、可変パッドの厚さが調整される。
【0003】
なお、このような可変パッドと互いに重ねられる軌道パッドとしては、ノルボルネン系樹脂よりなるものがある。国際公開第2013/137231号(特許文献1)には、鉄道レール用軌道パッドにおいて、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)である非共役ポリエン[C-1]、および、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)である非共役ポリエン[C-2]に由来する構造単位を含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体を含有する組成物を架橋して得られる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/137231号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した可変パッドとして、タイプレートよりもレールの延在方向における一方の側に配置されたリブ部を有するものがある。リブ部の厚さは、可変パッドのうちタイプレートとレールとの間の部分、即ち本体部の厚さよりも厚い。
【0006】
このような場合、レールが温度の変化に伴って伸縮する際にレールがレールの延在方向に移動、即ちふく進することにより、リブ部に応力が集中して破損するおそれがある。また、このようなレールの伸縮の際のリブ部への応力の集中は、例えば-20℃等の20℃程度よりも著しく低い温度で発生する。そのため、このような低温において、リブ部が破損することにより可変パッドが破損しやすくなる。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、タイプレートと、タイプレート上に固定されたレールとの間に挿入され、且つ、タイプレートとレールとの間の隙間を埋めるように厚さが調整された可変パッドにおいて、低温においても破損しにくい可変パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
本発明の一態様としての可変パッドは、タイプレートとタイプレート上に固定されたレールとの間に挿入され、且つ、タイプレートとレールとの間の隙間を埋めるように厚さが調整された可変パッドである。当該可変パッドは、タイプレートとレールとの間に配置された第1袋体部と、第1袋体部の内部に充填された第1樹脂部と、を有し、第1樹脂部は、ノルボルネン環構造を有する第1モノマーを含む重合性組成物を重合した重合体よりなる。
【0010】
また、他の一態様として、当該可変パッドは、タイプレートとレールとの間に、弾性板よりなる軌道パッドと重ねられた状態で挿入されていてもよい。
【0011】
また、他の一態様として、レールは、第1方向に延在し、可変パッドは、更に、タイプレートよりも第1方向における第1の側に配置され、内部が第1袋体部の内部と連通し、且つ、第1袋体部と一体的に形成された第2袋体部と、第2袋体部の内部に充填され、重合体よりなり、且つ、第1樹脂部と一体的に形成された第2樹脂部と、を有してもよい。第2樹脂部の厚さは、第1樹脂部の厚さよりも厚くてもよい。
【0012】
また、他の一態様として、第1袋体部は、ポリエチレンよりなる第1内表面層を含み、第1内表面層と第1樹脂部とが互いに接着されていてもよい。
【0013】
また、他の一態様として、重合性組成物は、ノルボルネン環構造を有し、且つ、第1モノマーの種類と異なる種類の第2モノマーをさらに含み、第1モノマーは、ジシクロペンタジエンよりなり、第2モノマーは、以下の一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表し、RとR又はRとRは共同して、アルキリデン基を形成していてもよく、Rおよび/またはRとRおよび/またはRとが環構造を形成していてもよい。pは0、1又は2を表す。)
で示される化合物の1種以上よりなるものであってもよく、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5-エチリデンノルボルネン、8-エチリデンテトラシクロドデセン及びトリシクロペンタジエンからなる群から選択された1種以上よりなるものであってもよい。
【0014】
また、他の一態様として、重合性組成物における第1モノマーの含有量と重合性組成物における第2モノマーの含有量との合計を100質量部としたとき、重合性組成物における第2モノマーの含有量が4質量部以上であってもよい。
【0015】
また、他の一態様として、重合体よりなり且つ幅10mm、厚さ4mm及び長さ80mmを有する第1試験片を作製し、作製された第1試験片を、第1試験片のうち拘束されている第1部分の第1端部であって第1試験片のうち拘束されていない第2部分側の第1端部から、第2部分のうち第1部分の厚さ方向の荷重が印加される第3部分までの距離が11mmとなるように、片持ち梁状に固定し、第3部分に荷重を印加して変形させる第1速度を5mm/分とし且つ温度を-20℃とした条件で、第3部分に荷重を印加して変形させる曲げ試験を行ったときに、第1試験片は、第1部分の厚さ方向における第3部分の変形量が10mmでも破損しなくてもよい。
【0016】
また、他の一態様として、重合体よりなり且つJIS K 7161-2「プラスチック-引張特性の求め方-第2部:型成形,押出成形及び注型プラスチックの試験条件」1B形のダンベル形状を有する第2試験片を作製し、作製された第2試験片のうち第2試験片の長さ方向における第2の側の第2端部を第1保持部により保持し、第2試験片のうち長さ方向における第2の側と反対側の第3端部を第2保持部により保持し、第2試験片が長さ方向に伸びるように第1保持部を第2保持部に対して相対移動させる第2速度を20mm/分とし且つ温度を-20℃とした条件で、第2試験片を長さ方向に伸ばす第1引張試験を行ったときに、第2試験片が破断した時の第2試験片の伸び量が23mm以上であってもよい。
【0017】
また、他の一態様として、重合体よりなり且つJIS K 7161-2「プラスチック-引張特性の求め方-第2部:型成形,押出成形及び注型プラスチックの試験条件」1B形のダンベル形状を有する第3試験片を作製し、作製された第3試験片のうち第3試験片の長さ方向における第3の側の第4端部を第3保持部により保持し、第3試験片のうち長さ方向における第3の側と反対側の第5端部を第4保持部により保持し、第3試験片が長さ方向に伸びるように第3保持部を第4保持部に対して相対移動させる第3速度を20mm/分とし且つ温度を-20℃とした条件で、第3試験片を長さ方向に伸ばす第2引張試験を行ったときに、第3試験片が破断した時のエネルギーが38J以上であってもよい。
【0018】
また、他の一態様として、重合体よりなり且つJIS K 7161-2「プラスチック-引張特性の求め方-第2部:型成形,押出成形及び注型プラスチックの試験条件」1B形のダンベル形状を有する第4試験片を作製し、作製された第4試験片のうち第4試験片の長さ方向における第4の側の第6端部を第5保持部により保持し、第4試験片のうち長さ方向における第4の側と反対側の第7端部を第6保持部により保持し、第4試験片が長さ方向に伸びるように第5保持部を第6保持部に対して相対移動させる第4速度を20mm/分とし且つ温度を60℃とした条件で、第4試験片を長さ方向に伸ばす第3引張試験を行ったときに、第4試験片が破断した時のエネルギーが66Jを超えてもよい。
【0019】
また、他の一態様として、重合体より且つ幅13mm、厚さ13mm及び長さ13mmを有する第5試験片を作製し、作製された第5試験片の長さ方向に圧縮する第5速度を1mm/分とした条件で、JIS K 7181「プラスチック-圧縮特性の求め方」及びJIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に基づいて第5試験片を長さ方向に圧縮する圧縮試験を行ったときに、第5試験片の圧縮降伏点が、-20℃、23℃及び60℃のいずれの温度においても52MPa以上であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様を適用することで、タイプレートと、タイプレート上に固定されたレールとの間に挿入され、且つ、タイプレートとレールとの間の隙間を埋めるように厚さが調整された可変パッドにおいて、低温においても破損しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態の可変パッドの断面図である。
図2】実施の形態の可変パッドの断面図である。
図3】実施の形態の可変パッドの断面図である。
図4】片持ち曲げ試験治具を用いて試験片に対して片持ち曲げ試験を行う際の配置を示す側面図である。
図5】片持ち曲げ試験治具を用いて試験片に対して片持ち曲げ試験を行う際の配置を示す平面図である。
図6】比較例1、比較例2及び実施例1の各試験片について片持ち曲げ試験を行って得られた、試験片が破損した時の変形量を示すグラフである。
図7】引張試験治具を用いて試験片に対して引張試験を行う際の配置を示す正面図である。
図8】引張試験治具を用いて試験片に対して引張試験を行う際の配置を示す側面図である。
図9】比較例3、比較例4及び実施例2の各試験片について引張試験を行って得られた、試験片が破断した時の伸び量を示すグラフである。
図10】比較例9、比較例10及び実施例5の各試験片について圧縮試験を行って得られた、圧縮弾性率を示すグラフである。
図11】比較例9、比較例10及び実施例5の各試験片について圧縮試験を行って得られた、圧縮降伏点を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0024】
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0025】
さらに、実施の形態で用いる図面においては、構造物を区別するために付したハッチング(網掛け)を図面に応じて省略する場合もある。
【0026】
なお、以下の実施の形態においてA~Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
【0027】
(実施の形態)
<可変パッド>
始めに、本発明の一実施形態である実施の形態の可変パッドについて説明する。図1乃至図3は、実施の形態の可変パッドの断面図である。図1は、レールの長さ方向に垂直な断面図であり、図2及び図3は、レールの幅方向に垂直な断面図である。図1乃至図3は、本実施の形態の可変パッドを、タイプレート、軌道パッド及びレールと合わせて示す。また、図3は、図2のうち可変パッド周辺を拡大して示す。
【0028】
図1乃至図3に示すように、レールRAの長さ方向、即ちレールRAが延在する方向である延在方向をX1方向とし、レールRAの幅方向をY1方向とし、レールRAの頭頂面に垂直な方向、即ち鉛直方向をZ1方向とする。
【0029】
図1乃至図3に示すように、本実施の形態の可変パッド1は、タイプレート2と、タイプレート2上に固定されたレールRAとの間に、鉛直方向において軌道パッド3が上側に位置するように軌道パッド3と互いに上下に重ねられた状態で挿入されている。軌道パッド3は、例えばゴム等の弾性体よりなる。軌道パッド3の弾性体の弾性定数(ヤング率等)は、例えば後述する可変パッド1の樹脂部1bの弾性定数よりも小さい。
【0030】
タイプレート2は、軌道スラブ又は枕木よりなり且つレールRAを支持する支持体4上に、例えばボルト5を用いて固定されている。レールRAは、タイプレート2上に、例えば板ばね部材6及びボルト7を用いて固定されている。
【0031】
なお、本実施の形態では、可変パッド1が、タイプレート2とレールRAとの間に、鉛直方向において軌道パッド3が上側に位置するように軌道パッド3と互いに上下に重ねられた状態で挿入されている例について説明するが、可変パッド1は、鉛直方向において軌道パッド3が下側に位置するように軌道パッド3と互いに上下に重ねられた状態で挿入されていてもよい。或いは、タイプレート2とレールRAとの間に、軌道パッド3が挿入されず、可変パッド1のみが挿入されていてもよい。即ち、本実施の形態の可変パッド1は、タイプレート2とレールRAとの間に、鉛直方向において軌道パッド3と互いに上下に重ねられた状態で挿入されている場合に適用可能であり、更には、タイプレート2とレールRAとの間に、可変パッド1のみが挿入されている場合に適用可能である。
【0032】
可変パッド1は、タイプレート2とレールRAとの間の隙間を埋めるように厚さが調整されている。本実施の形態の可変パッド1は、袋体部1aと、樹脂部1bと、を備えている。樹脂部1bは、袋体部1aの内部に充填されている。
【0033】
樹脂部1bは、袋体部1aに注入された液状の重合性組成物が重合硬化したものである。例えば、タイプレート2上でレールRAをレールRAが設置される設置位置よりも高い位置に上昇させた状態で、タイプレート2とレールRAとの間に軌道パッド3と袋体部1aとを互いに上下に重ねた状態で挿入する。次に、袋体部1aに形成された注入口(図示は省略)から、袋体部1aの内部に、液状の重合性組成物を注入する。次に、レールRAを設置位置まで下降させた状態で、注入された重合性組成物を重合硬化させることにより、樹脂部1bの厚さがタイプレート2とレールRAとの間の隙間を埋めるように調整された状態で、袋体部1aの内部に樹脂部1bが充填される。
【0034】
本実施の形態の可変パッド1は、本体部11と、リブ部12と、リブ部13と、を備えている。
【0035】
本体部11は、タイプレート2と軌道パッド3との間、即ちタイプレート2とレールRAとの間に配置されている。本体部11は、袋体部1aの一部である袋体部11aと、樹脂部1bの一部である樹脂部11bと、を有する。袋体部11aは、タイプレート2と軌道パッド3との間、即ちタイプレート2とレールRAとの間に配置されている。樹脂部11bは、袋体部11aの内部に充填されている。
【0036】
樹脂部11bは、袋体部11aに注入された液状の重合性組成物が重合硬化することにより形成されたものである。前述したように、レールRAを設置位置よりも高い位置に上昇させた状態で、タイプレート2とレールRAとの間に挿入された袋体部11aの内部に、液状の重合性組成物を注入した後、レールRAを設置位置まで下降させた状態で、注入された重合性組成物を重合硬化させることにより、袋体部11aの内部に樹脂部11bが充填される。即ち、樹脂部11bは、タイプレート2と軌道パッド3を介したレールRAとに挟まれた状態で液状の重合性組成物が重合硬化することにより形成される。このような方法により、本体部11の厚さと軌道パッド3の厚さとの総和が、タイプレート2とレールRAの底面との間の距離に等しくなるので、本体部11は、タイプレート2とレールRAとの間の隙間を埋めるように厚さが調整されることになる。
【0037】
リブ部12は、タイプレート2及び軌道パッド3よりもX1方向における一方の側(第1の側)に配置されている。リブ部12は、袋体部1aの他の部分である袋体部12aと、樹脂部1bの他の部分である樹脂部12bと、を有する。袋体部12aは、タイプレート2及び軌道パッド3よりもX1方向における一方の側(第1の側)に配置されている。袋体部12aの内部は袋体部11aの内部と連通し、且つ、袋体部12aは、袋体部11aと一体的に形成されている。樹脂部12bは、袋体部12aの内部に充填され、且つ、樹脂部11bと一体的に形成されている。なお、タイプレート2とレールRAとの間に、軌道パッド3が挿入されず、可変パッド1のみが挿入されている場合には、リブ部12は、タイプレート2よりもX1方向における一方の側(第1の側)に配置されることになる。
【0038】
樹脂部12bは、袋体部1aのうち、平面視においてタイプレート2と軌道パッド3とに挟まれた部分である袋体部11aからX1方向における一方の側(第1の側)にはみ出した部分である袋体部12aに注入された液状の重合性組成物が重合硬化することにより形成されたものである。
【0039】
前述したように、樹脂部11bは、タイプレート2と軌道パッド3を介したレールRAとに挟まれた状態で液状の重合性組成物が重合硬化することにより形成されるものの、樹脂部12bは、タイプレート2と軌道パッド3とに挟まれていない状態で液状の重合性組成物が重合硬化することにより形成される。そのため、Z1方向における樹脂部12bの厚さは、Z1方向における樹脂部11bの厚さよりも厚い。また、樹脂部12bの上面は、樹脂部11bの上面よりも高く、樹脂部12bの下面は、樹脂部11bの下面よりも低い。即ち、Z1方向におけるリブ部12の厚さは、Z1方向における本体部11の厚さよりも厚い。また、リブ部12の上面は、本体部11の上面よりも高く、リブ部12の下面は、本体部11の下面よりも低い。なお、タイプレート2とレールRAとの間に、軌道パッド3が挿入されず、可変パッド1のみが挿入されている場合には、リブ部12の上面は、本体部11の上面と等しい高さに配置されるものの、リブ部12の下面は、本体部11の下面よりも低いので、Z1方向におけるリブ部12の厚さは、Z1方向における本体部11の厚さよりも厚くなる。
【0040】
リブ部13は、タイプレート2及び軌道パッド3よりもX1方向における他方の側(第1の側と反対側)に配置されている。リブ部13は、袋体部1aの更に他の部分である袋体部13aと、樹脂部1bの更に他の部分である樹脂部13bと、を有する。袋体部13aは、タイプレート2及び軌道パッド3よりもX1方向における他方の側(第1の側と反対側)に配置されている。袋体部13aの内部は袋体部11aの内部と連通し、且つ、袋体部13aは、袋体部11aと一体的に形成されている。樹脂部13bは、袋体部13aの内部に充填され、且つ、樹脂部11bと一体的に形成されている。なお、タイプレート2とレールRAとの間に、軌道パッド3が挿入されず、可変パッド1のみが挿入されている場合には、リブ部13は、タイプレート2よりもX1方向における他方の側(第1の側と反対側)に配置されることになる。
【0041】
樹脂部13bは、袋体部1aのうち、平面視においてタイプレート2と軌道パッド3とに挟まれた部分である袋体部11aからX1方向における他方の側(第1の側と反対側)にはみ出した部分である袋体部13aに注入された液状の重合性組成物が重合硬化することにより形成されたものである。なお、袋体部1aが袋体部11aからX1方向における一方の側にはみ出しているが他方の側にはみ出していない場合には、可変パッド1は、本体部11と、リブ部12と、を備えるものの、リブ部13を備えない場合がある(リブ部12とリブ部13とが逆の場合もある。)。
【0042】
前述したように、樹脂部11bは、タイプレート2と軌道パッド3を介したレールRAとに挟まれた状態で液状の重合性組成物が重合硬化することにより形成されるものの、樹脂部13bは、タイプレート2と軌道パッド3とに挟まれていない状態で液状の重合性組成物が重合硬化することにより形成される。そのため、Z1方向における樹脂部13bの厚さは、Z1方向における樹脂部11bの厚さよりも厚い。また、樹脂部13bの上面は、樹脂部11bの上面よりも高く、樹脂部13bの下面は、樹脂部11bの下面よりも低い。即ち、Z1方向におけるリブ部13の厚さは、Z1方向における本体部11の厚さよりも厚い。また、リブ部13の上面は、本体部11の上面よりも高く、リブ部13の下面は、本体部11の下面よりも低い。なお、タイプレート2とレールRAとの間に、軌道パッド3が挿入されず、可変パッド1のみが挿入されている場合には、リブ部13の上面は、本体部11の上面と等しい高さに配置されるものの、リブ部13の下面は、本体部11の下面よりも低いので、Z1方向におけるリブ部13の厚さは、Z1方向における本体部11の厚さよりも厚くなる。
【0043】
本実施の形態では、樹脂部11b、12b及び13bは、いずれもノルボルネン環構造を有する単量体(モノマー)を含む重合性組成物15を重合した重合体14、所謂ノルボルネン系樹脂よりなる。
【0044】
上記したように、可変パッド1がリブ部12又はリブ部13を有し、本体部11に含まれる樹脂部11b、リブ部12に含まれる樹脂部12b、及び、リブ部13に含まれる樹脂部13bが、いずれも、例えば、可変パッドの樹脂部として従来より使われている材料であるポリエステル系樹脂よりなる場合を考える。このような場合、レールRAが温度の変化に伴って伸縮する際にレールRAがレールRAの延在方向に移動、即ちふく進することにより、リブ部12又はリブ部13に応力が集中して破損するおそれがある。また、このようなレールRAの伸縮の際のリブ部12又はリブ部13への応力の集中は、例えば-20℃等の20℃程度よりも著しく低い温度で発生する。そのため、このような低温において、リブ部12又はリブ部13が破損することにより可変パッド1が破損しやすくなる。
【0045】
一方、本実施の形態では、樹脂部11b、12b及び13bは、いずれもノルボルネン系樹脂よりなる。
【0046】
後述する図4乃至図6を用いて説明するように、本発明者らは、ノルボルネン系樹脂よりなる試験片に対して片持ち曲げ試験を-20℃で行って得られた強度を、ポリエステル系樹脂よりなる試験片に対して片持ち曲げ試験を-20℃で行って得られた強度と比較した結果、-20℃においてノルボルネン系樹脂よりなる試験片がポリエステル系樹脂よりなる試験片よりも高い強度を有することを見出した。
【0047】
また、後述する図7乃至図9を用いて説明するように、本発明者らは、ノルボルネン系樹脂よりなる試験片に対して引張試験を室温(23℃)及び-20℃で行って得られた強度を、ポリエステル系樹脂よりなる試験片に対して引張試験を同様の温度で行って得られた強度と比較した結果、-20℃においてノルボルネン系樹脂よりなる試験片がポリエステル系樹脂よりなる試験片よりも高い強度を有すること、及び、ポリエステル系樹脂とノルボルネン系樹脂との間で、-20℃における強度の差が、室温における強度の差に比べて大きいことを見出した。
【0048】
従って、樹脂部11b、12b及び13bが、いずれもノルボルネン系樹脂よりなることにより、-20℃の低温でレールRAの伸縮の際のリブ部12又はリブ部13に応力が集中した場合でも、リブ部12及び13が破損すること、即ち可変パッド1が破損することを防止できることが明らかになった。即ち、低温においても破損しにくい可変パッド1が得られることが明らかになった。
【0049】
なお、可変パッド1、タイプレート2及び軌道パッド3の形状並びに袋体部1aの内部に注入される液状の重合性組成物の注入量及び圧力によっては、可変パッド1がリブ部12及びリブ部13のいずれも有していないときでも、樹脂部11bがノルボルネン系樹脂よりなる場合、樹脂部11bがノルボルネン系樹脂以外の樹脂よりなる場合に比べて、可変パッド1が破損することを防止する効果が高まる。或いは、樹脂部12b及び13bのいずれかの厚さが、樹脂部11bの厚さと略等しいときでも、樹脂部11bがノルボルネン系樹脂よりなる場合、樹脂部11bがノルボルネン系樹脂以外の樹脂よりなる場合に比べて、可変パッド1が破損することを防止する効果が高まる。
【0050】
上記特許文献1記載の技術では、重合体は、チタン、ジルコニウムなど4族の所謂チーグラー触媒を用いるエチレン、α-オレフィン、環状オレフィン(ノルボルネン系樹脂)の共重合体であり、α-オレフィン部と環状オレフィン部がランダムであり一部はどちらかが続く構造となったりして生産法や規模により不均一になる可能性があるのに対し、本実施の形態では、重合体は、メタセシス触媒を用いたノルボルネン系樹脂のみの(共)重合体であり、ビニレン部と環状オレフィン部が交互に配置されるため均一性に富む。また、上記特許文献1記載の技術では、溶液を用いる重合で得られるのに対し、本実施の形態では、バルク重合で得られる。
【0051】
袋体部1aとして、即ち袋体部11a、12a及び13aとして、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる外表面層(外層)1cと、例えばナイロンよりなる中間層1dと、前述したように、ポリエチレンよりなる内表面層1eと、を含むものを用いることができる。このとき、袋体部1aが、即ち袋体部11a、12a及び13aのいずれもが、ポリエチレンよりなる内表面層(内層)1eを含むことになる。また、好適には、内表面層1eと樹脂部1bとが、即ち内表面層1eと樹脂部11b、12b及び13bとが、互いに接着されている。
【0052】
樹脂部1bが、ポリエステル系樹脂よりなる場合を考える。このような場合、ポリエステル系樹脂が硬化する際に、ポリエチレンよりなる内表面層1eと樹脂部1bとが互いに接着されず、一体化されない。そのため、レールRAが温度の変化に伴って伸縮する際にレールRAがふく進することにより、袋体部1aと樹脂部1bとが互いにずれる。袋体部1aと樹脂部1bとが互いにずれることにより、袋体部1aが破損しやすくなるか、又は、樹脂部1bが破損しやすくなり、可変パッド1が破損しやすくなる。
【0053】
可変パッド1の破損を防止する方法として、軌道パッド3の上面、即ち軌道パッド3のうちレールRAの底面と接触する接触面に、鋼板を設け、摩擦力の小さい金属同士、即ちレールRAと鋼板との間で滑りを発生させることにより、レールRAがふく進する際のふく進力を開放、即ちふく進力が軌道パッド3に伝達されないようにする方法が考えられる。
【0054】
しかし、袋体部1aが、ポリエチレンよりなる内表面層1eを含む場合、以下の理由から、可変パッド1が破損しやすくなるという問題は解決されていない。即ち、樹脂部1bは、上記したようにそれぞれ3種類の素材の各々が積層された構造を有する袋体部1aに液状の重合性組成物を注入し、注入された重合性組成物を重合硬化させることにより製造されるものの、袋体部1aの内表面層1eがポリエチレンよりなるため、袋体部1aと樹脂部1bとは互いに接着せず、袋体部1aと樹脂部1bとは互いに一体化しない。そのため、レールRAが温度の変化に伴って伸縮する際にレールRAがふく進した場合、ポリエチレンよりなる内表面層1eと樹脂部1bとの間で滑りが発生するので、本来ふく進力を開放するために軌道パッド3の上面に設けられている鋼板と軌道パッド3との間で滑りが発生せず、樹脂部1bに応力が集中し、リブ部12又はリブ部13が破損しやすくなり。可変パッド1が破損しやすくなる。
【0055】
一方、本実施の形態では、樹脂部1bが、ノルボルネン系樹脂よりなる。このような場合、ノルボルネン系樹脂が硬化する際に発熱する発熱量が大きいので、ポリエチレンよりなる内表面層1eと樹脂部1bとが互いに溶着されることにより接着され、一体化される。そのため、レールRAが温度の変化に伴って伸縮する際にレールRAがふく進した場合でも、袋体部1aと樹脂部1bとが互いにずれることを防止又は抑制することができる。従って、袋体部1aと樹脂部1bとが互いにずれにくくなるので、袋体部1aが破損することを防止又は抑制することができ、樹脂部1bが破損することを防止又は抑制することができ、可変パッド1が破損することを防止又は抑制することができる。また、軌道パッド3の上面、即ち軌道パッド3のうちレールRAの底面と接触する接触面に、鋼板を設ける必要もない。
【0056】
<重合体及び重合性組成物>
次に、本実施の形態の可変パッド1において、袋体部11a、12a及び13aの内部に充填されている重合体、並びに、その重合体を形成するための原料としての重合性組成物、の好適な組成について説明する。
【0057】
前述したように、本実施の形態では、樹脂部11b、12b及び13bは、いずれもノルボルネン環構造を有する単量体(モノマー)を含む重合性組成物15を重合した重合体14、所謂ノルボルネン系樹脂よりなる。
【0058】
本願明細書におけるノルボルネン系樹脂とは、ノルボルネン環構造を有する1種類の単量体(モノマー)が重合されてなる重合体(ポリマー)、又は、ノルボルネン環構造を有する複数種類の単量体(モノマー)が重合されてなる共重合体(コポリマー)を意味する。言い換えれば、本願明細書におけるノルボルネン系樹脂とは、1種類のノルボルネン系モノマーが重合されてなる重合体、又は、複数種類のノルボルネン系モノマーが重合されてなる共重合体を意味する。従って、重合体14は、ノルボルネン系樹脂であればよく、特に限定されるものではない。
【0059】
なお、本明細書において、両者を区別するため、便宜上、第1モノマー及び第2モノマーと記載するが、いずれもノルボルネン系モノマーである。
【0060】
しかし、重合体14を、品質安定性により優れたものとする観点からは、ノルボルネン系樹脂よりなる重合体14として、ノルボルネン系モノマー及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物15が塊状重合により重合硬化されてなる重合体を用いることが、好ましい。また、重合性組成物15としては、ノルボルネン系モノマー及びメタセシス重合触媒を含有するものであればよく、特に限定されるものではない。しかし、増粘が抑制されやすいことから、以下に記載するノルボルネン系モノマーと触媒液とを含有するものを用いることが、好ましい。
【0061】
ノルボルネン系モノマー、即ちノルボルネン環構造を有する単量体として、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体;ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエン二量体)、ジヒドロジシクロペンタジエン等の三環体;テトラシクロドデセン等の四環体;シクロペンタジエン三量体等の五環体;シクロペンタジエン四量体等の七環体;等を挙げることができる。これらのノルボルネン系モノマーは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;エチリデン基等のアルキリデン基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;等の置換基を有してもよい。さらに、これらのノルボルネン系モノマーは、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、オキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等の極性基を有してもよい。
【0062】
このようなノルボルネン系モノマーの具体例としては、ジシクロペンタジエン(DCPD)、トリシクロペンタジエン(TCPD)、シクロペンタジエン-メチルシクロペンタジエン共二量体、5-エチリデンノルボルネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5-シクロヘキセニルノルボルネン、1,4,5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,4-メタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-エチリデン-1,4,5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、6-エチリデン-1,4-メタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,4,5,8-ジメタノ-1,4,4a,5,6,7,8,8a-ヘキサヒドロナフタレン、エチレンビス(5-ノルボルネン)等が挙げられる。ノルボルネン系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
上記ノルボルネン系モノマーのうち、入手が容易であり、反応性に優れ、得られるノルボルネン系樹脂の耐熱性に優れる点から、三環体、四環体又は五環体のノルボルネン系モノマーが好ましく、三環体のノルボルネン系モノマーがより好ましく、ジシクロペンタジエンが特に好ましい。
【0064】
なお、重合体が、ノルボルネン環構造を有するか否かは、例えば核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)を用いて分析することができる。
【0065】
好適には、重合体14は、ノルボルネン環構造を有する第1モノマーと、ノルボルネン環構造を有し、且つ、第1モノマーの種類と異なる種類の第2モノマーと、が重合、即ち共重合されてなる共重合体よりなる。このとき、重合硬化して重合体14となる重合性組成物15は、ノルボルネン環構造を有し、且つ、第1モノマーの種類と異なる種類の第2モノマーを含むことになる。ここで、第1モノマーは、ジシクロペンタジエンよりなる。第2モノマーは、前記一般式(1)で示される化合物の1種以上よりなり、好ましくはノルボルネン、テトラシクロドデセン、5-エチリデンノルボルネン、8-エチリデンテトラシクロドデセン及びトリシクロペンタジエンからなる群から選択された1種以上よりなる。
【0066】
なお、前記一般式(1)において、R~Rがそれぞれ独立して表す炭素数1~20の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~20のアルキル基;フェニル基、2-ナフチル基等の炭素数6~20のアリール基;及びシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~20のシクロアルキル基;等が挙げられる。RとR又はRとRが共同して形成するアルキリデン基の例としては、メチリデン基(=CH)、エチリデン基(=CH-CH)、及びプロピリデン基(=CH-C)等が挙げられる。またRおよび/またはRとRおよび/またはRとが形成する環構造の例としては、シクロペンタン環、シクロペンテン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環等が挙げられる。
【0067】
重合体14が上記した種類の第1モノマーと上記した種類の第2モノマーとを組み合わせて重合されてなる場合、重合体14がその組み合わせ以外の種類のモノマーを組み合わせて重合されてなる場合に比べ、可変パッド1の製造時に、重合性組成物15が硬化する際の収縮量が小さくなる。そのため、重合性組成物15の硬化後に、当該硬化に起因して可変パッド1又は重合体14よりなる樹脂部1bに印加される応力が小さくなり、重合性組成物15の重合硬化後に、重合体14よりなる樹脂部1bにボイド又はクラックが発生すること、即ち樹脂部1bが割れることを、防止又は抑制することができる。また、可変パッド1を-20℃程度の低温で使用する時に、可変パッド1が冷却される際に可変パッド1又は重合体14よりなる樹脂部1bに印加される応力も小さくなるため、可変パッド1の使用時に、重合体14よりなる樹脂部1bにボイド又はクラックが発生すること、即ち樹脂部1bが割れることを、防止又は抑制する効果が、より大きくなる。
【0068】
より好適には、重合体14の原料として用いられる重合性組成物15における第1モノマーの含有量と重合性組成物15における第2モノマーの含有量との合計を100質量部としたとき、重合性組成物15における第2モノマーの含有量が4質量部以上である。即ち、重合性組成物15における第1モノマーの含有量が96質量部以下である。
【0069】
重合性組成物15における第2モノマーの含有量が4質量部以上の場合、重合性組成物15における第2モノマーの含有量が4質量部未満の場合に比べ、可変パッド1の製造時に、重合性組成物15が硬化する際、過剰の架橋が抑えられ収縮量がより小さくなる。そのため、重合性組成物15の重合硬化後に、当該硬化に起因して可変パッド1又は重合体14よりなる樹脂部1bに印加される応力がより小さくなり、重合性組成物15の硬化後に、重合体14よりなる樹脂部1bにボイド又はクラックが発生すること、即ち樹脂部1bが割れることを、より防止又はより抑制することができる。また、可変パッド1を-20℃程度の低温で使用する時に、可変パッド1が冷却される際に可変パッド1又は重合体14よりなる樹脂部1bに印加される応力もより小さくなるため、可変パッド1を-20℃程度の低温で使用する時に、重合体14よりなる樹脂部1bにクラックが発生すること、即ち樹脂部1bが割れることを、防止又は抑制する効果が、さらにより大きくなる。
【0070】
但し好適には、重合性組成物15における第1モノマーの含有量と重合性組成物15における第2モノマーの含有量との合計を100質量部としたとき、重合性組成物15における第2モノマーの含有量が50質量部以下である。即ち、重合性組成物15における第1モノマーの含有量が50質量部以上である。さらに好適には、第2モノマーの含有量は5質量部以上45質量部以下であり、またさらに好適には、第2モノマーの含有量は6質量部以上40質量部以下である。
【0071】
重合性組成物15における第2モノマーの含有量が50質量部以下の場合、重合性組成物15における第2モノマーの含有量が50質量部を超える場合に比べ、可変パッド1の製造時に、重合性組成物15が重合硬化する際に、架橋により化学構造上安定であるより好ましい重合硬化物を与える。
【0072】
なお、重合体14が、第1モノマーと第2モノマーとが重合されてなるものであること、並びに、重合体14における第1モノマー及び第2モノマーの含有量については、重合体14について、例えばNMRによる分析を行って測定することができる。
【0073】
前述したように、重合性組成物15は、メタセシス重合触媒系の触媒成分を含有することが好ましい。メタセシス重合触媒は、ノルボルネン系モノマーを開環重合できるものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0074】
重合触媒成分は、メタセシス重合触媒が好ましい。メタセシス重合触媒は、ノルボルネン系モノマーを開環重合することができる触媒であればよく、特に限定されない。メタセシス重合触媒は、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が結合してなる錯体である。遷移金属原子としては、第5族、第6族及び第8族(長周期型周期表、以下同じ)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、第5族の原子としては例えばタンタルが挙げられ、第6族の原子としては、例えばモリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、例えばルテニウムやオスミウムが挙げられる。
【0075】
第6族のタングステンやモリブデンを中心金属とするメタセシス重合触媒としては、六塩化タングステン等の金属ハロゲン化物;タングステン塩素酸化物等の金属オキシハロゲン化物;酸化タングステン等の金属酸化物;及びトリドデシルアンモニウムモリブデートやトリ(トリデシル)アンモニウムモリブデート等の有機金属酸アンモニウム塩等を用いることができる。これらの中では、有機モリブデン酸アンモニウム塩が好ましい。これらのメタセシス重合触媒を用いる場合には、重合活性を制御する目的で、活性剤(共触媒)として有機アルミニウム化合物又は有機スズ化合物を併用することが好ましい。
【0076】
本発明では、メタセシス重合触媒として、第5族、第6族及び第8族の金属原子を中心金属とする金属カルベン錯体を用いることも好ましい。金属カルベン錯体の中では、第8族のルテニウムやオスミウムのカルベン錯体が好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。塊状重合時の触媒の活性が優れるため、生産性に優れるからである。ルテニウムカルベン錯体の中では、少なくとも2つのカルベン炭素がルテニウム金属原子に結合しており、該カルベン炭素のうち少なくとも一つにはヘテロ原子を含む基が結合しているルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状開環重合時の触媒活性に優れるため、得られる重合体には未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、生産性良く良質な重合体が得られる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。メタセシス重合触媒は、一種類のみを使用してもよく、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
【0077】
メタセシス重合触媒の含有量は、反応に使用する全モノマー1モルに対して、好ましくは0.005ミリモル以上であり、より好ましくは0.01~50ミリモル、さらに好ましくは0.015~20ミリモルである。
【0078】
その他の任意成分としては、活性剤、活性調節剤、エラストマー、酸化防止剤等が挙げられる。
【0079】
活性剤は、上述したメタセシス重合触媒の共触媒として作用し、該触媒の重合活性を向上させる化合物である。活性剤としては、例えば、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のアルキルアルミニウムハライド;これらのアルキルアルミニウムハライドの、アルキル基の一部をアルコキシ基で置換したアルコキシアルキルアルミニウムハライド;有機スズ化合物等が用いられる。活性剤の使用量は、特に限定されないが、通常、重合性組成物で使用する全メタセシス重合触媒1モルに対して、0.1~100モルが好ましく、より好ましくは1~10モルである。
【0080】
活性調節剤は、2以上の反応原液を混合して重合性組成物を調製し、型内に注入して重合を開始させる際に、注入途中で重合が開始することを防止するために用いられる。
【0081】
メタセシス重合触媒として周期表第5族又は第6族の遷移金属の化合物を用いる場合の活性調節剤としては、メタセシス重合触媒を還元する作用を持つ化合物等が挙げられ、アルコール類、ハロアルコール類、エステル類、エーテル類、ニトリル類等を用いることができる。中でもアルコール類及びハロアルコール類が好ましく、ハロアルコール類がより好ましい。
【0082】
アルコール類の具体例としては、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ヘキサノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール等が挙げられる。ハロアルコール類の具体例としては、1,3-ジクロロ-2-プロパノール、2-クロロエタノール、1-クロロブタノール等が挙げられる。
【0083】
メタセシス重合触媒として、特にルテニウムカルベン錯体を用いる場合の活性調節剤としては、ルイス塩基化合物が挙げられる。ルイス塩基化合物としては、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト、n-ブチルホスフィン等のリン原子を含むルイス塩基化合物;n-ブチルアミン、ピリジン、4-ビニルピリジン、アセトニトリル、エチレンジアミン、N-ベンジリデンメチルアミン、ピラジン、ピペリジン、イミダゾール等の窒素原子を含むルイス塩基化合物等が挙げられる。また、ビニルノルボルネン、プロペニルノルボルネン及びイソプロペニルノルボルネン等の、アルケニル基で置換されたノルボルネンは、モノマーとして機能すると同時に、活性調節剤としても働く。これらの活性調節剤の使用量は、用いる化合物によって適宜調整すればよい。
【0084】
エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)及びこれらの水素化物等が挙げられる。エラストマーを重合性組成物に溶解させて用いることにより、その粘度を調節することができる。また、エラストマーを添加することで、得られる重合体の耐衝撃性を改良できる。エラストマーの使用量は、重合性組成物中の全モノマー100質量部に対して、好ましくは0.5~20質量部、より好ましくは2~10質量部である。
【0085】
酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、アミン系等の各種のプラスチック・ゴム用酸化防止剤が挙げられる。
【0086】
また、重合性組成物は、任意成分として、重合性組成物の粘度が後述の好適な範囲内でフィラーを含有してもよい。
【0087】
供給前の反応原液の温度は、好ましくは10~60℃であり、反応原液の粘度は、例えば30℃において、通常、5~3,000mPa・s、好ましくは50~1,000mPa・s程度である。
【実施例
【0088】
以下、実施例に基づいて本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0089】
[重合性組成物の準備]
(製造例1)
製造例1では、ジシクロペンタジエンよりなる第1モノマーと、ベンジリデン{1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン}ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムよりなるメタセシス重合触媒と、を含有する重合性組成物を準備した。得られた重合性組成物は20℃に維持した。メタセシス重合触媒の使用量は、使用した全モノマー1モルに対して0.055ミリモルであった。また、重合性組成物の25℃での粘度は、B型粘度計による測定で10mPa・s以下であった。
【0090】
(製造例2)
製造例2では、ジシクロペンタジエンよりなる第1モノマーと、トリシクロペンタジエンよりなる第2モノマーと、トリドデシルアンモニウムモリブデートよりなるメタセシス重合触媒及び共触媒としてアルキルアルミニウムを含有する重合性組成物を準備した。また25℃におけるB型粘度計による測定で250mPa・sとなるように重合性組成物にスチレンブタジエンゴムを溶解させた。かかる重合性組成物を20℃に維持した。重合性組成物における第1モノマーの含有量と重合性組成物における第2モノマーの含有量との合計を100質量部としたとき、重合性組成物における第2モノマーの含有量は7質量部であった。メタセシス重合触媒の使用量は、使用した全モノマー1モルに対して0.8ミリモルであった。
【0091】
[重合性組成物の重合硬化の評価]
次に、製造例1及び製造例2の重合性組成物を、20℃の環境下、型枠内に注入、樹脂流動がなくなるまで放置(予備硬化)した後、80℃の加熱温度及び1時間の加熱時間の条件で熱処理して重合硬化させることにより、製造例1及び製造例2の重合性組成物の重合硬化の評価を視認により行った。製造例2の重合性組成物を20℃の環境下、半割型の一方側を70℃、他方側を40℃にした型枠内直前で混合しながら注入した。重合硬化の評価を視認により行ったところ、重合性組成物は熱処理せずとも十分に硬化した。
【0092】
その結果、製造例1及び製造例2の重合性組成物のいずれも上面が平坦化された状態で、容易に重合硬化したことが確認された。そのため、製造例1及び製造例2の重合性組成物のいずれも、袋体部の内部に容易に注入することができ、容易に重合硬化させることができることが確認できた。
【0093】
詳細の説明は省略するが、製造例2のトリシクロペンタジエンに代え、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5-エチリデンノルボルネン及び8-エチリデンテトラシクロドデセンその他の前記一般式(1)で示される化合物を用いた場合も、同様の結果が得られた。従って、重合性組成物が、ジシクロペンタジエンよりなる第1モノマーと、第2モノマーとを含む場合であって、且つ、第2モノマーが、前記一般式(1)で示される化合物の少なくとも1種類以上、好ましくはノルボルネン、テトラシクロドデセン、5-エチリデンノルボルネン、8-エチリデンテトラシクロドデセン及びトリシクロペンタジエンからなる群から選択された1種以上よりなる場合、第2モノマーがそれ以外の種類のモノマーよりなる場合に比べて、重合硬化させて形成される樹脂組成物にボイドが発生しにくく、高品質な樹脂組成物が形成されることが明らかになった。
【0094】
[片持ち曲げ試験]
以下では、実施例1並びに比較例1及び比較例2の試験片を作製し、作製された試験片に対して、材料試験機に備えられた片持ち曲げ試験治具を用いて片持ち曲げ試験を行った。
【0095】
(実施例1並びに比較例1及び比較例2)
ジシクロペンタジエンよりなる第1モノマーと、トリシクロペンタジエンよりなる第2モノマーと、製造例2で記載したメタセシス重合触媒と、を含有する重合性組成物、即ち製造例2による重合性組成物を準備した。得られた重合性組成物は20℃に維持した。ここで、重合性組成物における第1モノマーの含有量と重合性組成物における第2モノマーの含有量との合計を100質量部としたとき、重合性組成物における第2モノマーの含有量は7質量部であった。また、重合性組成物の25℃での粘度は、B型粘度計による測定で250mPa・sであった。メタセシス重合触媒の使用量は、使用した全モノマー1モルに対して0.8ミリモルであった。
【0096】
このようにして得られた重合性組成物を、20℃の環境下、型枠内に注入し、樹脂流動がなくなるまで放置(予備硬化)した後、80℃の加熱温度及び1時間の加熱時間の条件で熱処理して重合硬化させることにより、幅10±0.5mm、厚さ4±0.5mm及び長さ80±0.5mmの短冊形状を有し、ノルボルネン系樹脂よりなる、実施例1の重合体の試験片を作製した。
【0097】
一方、重合性組成物をポリエステル系樹脂に代えたこと以外は実施例1の重合体の試験片の作製方法と同様にして、ポリエステル系樹脂よりなる、比較例1の重合体の試験片を作製した。
【0098】
また、重合性組成物を比較例1とは別のポリエステル系樹脂に代えたこと以外は実施例1の重合体の試験片の作製方法と同様にして、比較例1とは別のポリエステル系樹脂よりなる、比較例2の重合体の試験片を作製した。
【0099】
図4は、片持ち曲げ試験治具を用いて試験片に対して片持ち曲げ試験を行う際の配置を示す側面図である。図5は、片持ち曲げ試験治具を用いて試験片に対して片持ち曲げ試験を行う際の配置を示す平面図である。
【0100】
図4及び図5に示すように、試験片TE1が片持ち曲げ試験治具21に保持されている状態で、試験片TE1の長さ方向をX2方向とし、試験片TE1の幅方向をY2方向とし、試験片TE1の厚さ方向をZ2方向とした。
【0101】
図4及び図5に示すように、片持ち曲げ試験を行う際の材料試験機MA1は、片持ち曲げ試験治具21と、恒温槽22と、を備えていた。片持ち曲げ試験治具21は、保持部23と、押圧部24と、を有していた。保持部23は、ストッパ25aが設けられた本体25と、固定板26と、固定板26を本体25に固定する2本のネジ27と、を含んでいた。X2方向における試験片TE1の一方の側がストッパ25aに接触し、試験片TE1が本体25と固定板26とに上下から挟まれた状態で、2本のネジ27により固定板26を本体25に固定することにより、試験片TE1は保持部23により保持されていた。
【0102】
押圧部24は、Z2方向に移動可能、且つ、材料試験機MA1に備えられたロードセル(図示は省略)により荷重が測定可能に設けられており、保持部23のうち他方の側、即ちストッパ25a側と反対側の位置PS1からX2方向において距離DS1だけ離れた位置PS2で、試験片TE1に対して、Z2方向における下側に向かう荷重LD1を印加することができた。このとき、位置PS1は、試験片TE1のうち拘束されている部分PA1の端部EP1であって試験片TE1のうち拘束されていない部分PA2側の端部EP1が位置する位置であった。また、位置PS2は、部分PA2のうち部分PA1の厚さ方向の荷重が印加される部分PA3が位置する位置であった。なお、距離DS1は、11mmであった。本体25のうち、ストッパ25a側と反対側の端部における角部25bは半径4mmの曲率を有するように加工され、押圧部24の先端部24aは半径5mmの曲率を有するように半円筒状に加工されていた。
【0103】
図4及び図5に示すように、比較例1、比較例2及び実施例1の各試験片について、試験片TE1を保持部23により保持して片持ち梁状に固定した状態で、位置PS2において、即ち部分PA3を押圧部24により押圧して部分PA3に荷重LD1を印加することにより部分PA3を下方に変形させることにより片持ち曲げ試験を行い、試験片TE1が破損した時の変形量を測定した。部分PA3に荷重LD1を印加して変形させる速度である変形速度を5mm/分とした。また、可変パッド1が実際に寒冷地で使用されている状況を考慮し、試験環境温度、即ち恒温槽22内の温度を、-20±2℃とした。
【0104】
図6は、比較例1、比較例2及び実施例1の各試験片について片持ち曲げ試験を行って得られた、試験片が破損した時の変形量を示すグラフである。図6の縦軸は、試験片が破損した時の変形量を示す。
【0105】
なお、図6では、比較例1及び比較例2については、実際に試験片TE1が破損した時の変形量を示すものの、実施例1については、本体25の高さHG1を10mm、及び、22mmとし、変形量の許容範囲の上限値を10mm、22mmのいずれとした場合でも、試験片TE1が破損せずに本体25よりも更に下の部分に接触してしまったため、それ以上変形させることができなかった。
【0106】
図6に示すように、ポリエステル系樹脂よりなる比較例1及び比較例2の試験片は、いずれも約4~6mmの変形量で破損した。一方、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例1の試験片は、変形量の許容範囲の上限値を10mmとした場合も22mmとした場合も破損しなかった。
【0107】
即ち、ノルボルネン環構造を有するモノマーを含む重合性組成物15(図3参照)を重合した重合体14(図3参照)よりなり且つ幅10mm、厚さ4mm及び長さ80mmを有する試験片TE1を作製し、作製された試験片TE1を、試験片TE1のうち拘束されている部分PA1の端部EP1であって試験片TE1のうち拘束されていない部分PA2側の端部EP1が位置する位置PS1から、部分PA2のうち部分PA1の厚さ方向の荷重LD1が印加される部分PA3が位置する位置PS2までの距離が11mmとなるように、片持ち梁状に固定し、部分PA3に荷重LD1を印加して変形させる速度である変形速度を5mm/分とし且つ温度を-20℃とした条件で、部分PA3に荷重を印加して変形させる片持ち曲げ試験を行ったときに、試験片TE1は、部分PA1の厚さ方向における部分PA3の変形量が10mmでも22mmでも破損しないことが明らかになった。
【0108】
言い換えれば、当該条件で片持ち曲げ試験を行ったときに、試験片TE1が破損した時の部分PA1の厚さ方向における部分PA3の変形量が10mm以上であること、更に言い換えれば、当該条件で片持ち曲げ試験を行ったときに、試験片TE1が破損しないで変形することができる部分PA3の、部分PA1の厚さ方向における変形量が10mm以上であることが、明らかになった。なお、変形量の許容範囲の上限値を22mとしても試験片TE1が破損しなかったため、試験片TE1が破損しないで変形することができる部分PA3の、部分PA1の厚さ方向における変形量は10~22mmであった。
【0109】
これにより、片持ち曲げ試験において、本発明者らは、-20℃においてノルボルネン系樹脂よりなる試験片がポリエステル系樹脂よりなる試験片よりも高い強度を有すること、及び、ポリエステル系樹脂とノルボルネン系樹脂との間で、-20℃における強度の差が大きいことを見出した。
【0110】
また、図3に示す可変パッド1に対してレールRAがX1方向にふく進することによりリブ部12に応力FR1が集中し、リブ部12がZ1方向において下側に押圧される場合とは、図4及び図5に示す片持ち曲げ試験において試験片TE1が長さ方向であるX2方向に沿うように片持ち梁状に固定された状態でZ2方向における下側に向かう荷重LD1が印加される場合に相当する。従って、図4及び図5に示す片持ち曲げ試験において、-20℃においてノルボルネン系樹脂よりなる試験片がポリエステル系樹脂よりなる試験片よりも高い強度を有することは、-20℃においてレールRAがふく進することによりリブ部12に応力FR1が集中しても可変パッド1が破損しにくくなることを意味する。
【0111】
よって、片持ち曲げ試験において、樹脂部11b、12b及び13bが、いずれもノルボルネン系樹脂よりなることにより、-20℃の低温でレールRAが伸縮する際にリブ部12及び13に応力が集中した場合でも、リブ部12及び13が破損すること、即ち可変パッド1が破損することを防止でき、低温においても破損しにくい可変パッド1が得られることが明らかになった。
【0112】
なお、詳細の説明は省略するが、第2モノマーとして、トリシクロペンタジエン(製造例2)に代え、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5-エチリデンノルボルネン及び8-エチリデンテトラシクロドデセンその他の前記一般式(1)で示される化合物を用いた場合も、片持ち曲げ試験において実施例1と同様の結果が得られた。また、製造例2に代えて製造例1により準備された重合性組成物を用いた場合も同様の結果が得られた。更に、上記各種試験片について、可変パッド1と別に作製した試験片を用いた場合のみならず、可変パッド1から切り出して加工した試験片を用いた場合も、片持ち曲げ試験において同様の結果が得られた。
【0113】
[引張試験]
次に、実施例2並びに比較例3及び比較例4の試験片を作製し、作製された試験片に対して、材料試験機に備えられた引張試験治具を用いて引張試験を行った。
【0114】
(実施例2並びに比較例3及び比較例4)
実施例1の重合体の試験片の作製方法と同様にして、JIS K7161-2 「プラスチック-引張特性の求め方-第2部:型成形,押出成形及び注型プラスチックの試験条件」1B形のダンベル形状を有し、実施例1の試験片と同種(製造例2)のノルボルネン系樹脂よりなる、実施例2の重合体の試験片を作製した。このJIS K7161-2 「プラスチック-引張特性の求め方-第2部:型成形,押出成形及び注型プラスチックの試験条件」1B形のダンベル形状は、以下の形状であった。
全長:150mm
幅の狭い平行部分の長さ:60.0±0.5mm
半径:60±0.5mm
幅の広い平行部分までの間隔:108±1.6mm
エッジ部の幅:20.0±0.2mm
狭い部分の幅:10.0±0.2mm
厚さ:4.0±0.2mm
標線間距離:50.0±0.5mm
つかみ具間距離:115±1mm
【0115】
一方、重合性組成物を代えたこと以外は実施例2の重合体の試験片の作製方法と同様にして、比較例1の試験片と同種のポリエステル系樹脂よりなる、比較例3の重合体の試験片を作製した。
【0116】
また、重合性組成物を代えたこと以外は実施例2の重合体の試験片の作製方法と同様にして、比較例2の試験片と同種のポリエステル系樹脂よりなる、比較例4の重合体の試験片を作製した。
【0117】
図7は、引張試験治具を用いて試験片に対して引張試験を行う際の配置を示す正面図である。図8は、引張試験治具を用いて試験片に対して引張試験を行う際の配置を示す側面図である。
【0118】
図7及び図8に示すように、試験片TE2が引張試験治具31に保持されている状態で、試験片TE2の長さ方向をX3方向とし、試験片TE2の幅方向をY3方向とし、試験片TE2の厚さ方向をZ3方向とした。
【0119】
図7及び図8に示すように、引張試験を行う際の材料試験機MA2は、引張試験治具31と、恒温槽32と、を備えていた。引張試験治具31は、上つかみ具33と、下つかみ具34と、を有していた。上つかみ具33は、切込み35aが形成された本体35と、本体35のうち切込み35aを挟んで対向した2枚の保持板35bを挟んで固定する2本のボルト36と、を含んでいた。下つかみ具34は、2枚の保持板37と、2枚の保持板37を挟んで固定する固定部材(図示は省略)と、を含んでいた。
【0120】
X3方向における試験片TE2の上側の幅の広い平行部分としての端部EP2が上つかみ具33につかまれ、X3方向における試験片TE2の下側の幅の広い平行部分としての端部EP3が下つかみ具34につかまれた状態で、試験片TE2は上つかみ具33及び下つかみ具34により保持されていた。言い換えれば、試験片TE2のうち試験片TE2の長さ方向における上側(第2の側)の端部EP2が、上側保持部としての上つかみ具33により保持され、試験片TE2のうち試験片TE2の長さ方向における下側(第2の側と反対側)の端部EP3が、下側保持部としての下つかみ具34により保持されていた。上つかみ具33及び下つかみ具34は、一方が他方に対してX3方向に相対移動可能、且つ、少なくとも一方が材料試験機MA2に備えられたロードセル(図示は省略)により荷重が測定可能に設けられており、試験片TE2に対してX3方向に引っ張って伸ばすことができた。なお、2本のボルト36の直径は8mmであった。
【0121】
図7及び図8に示すように、比較例3、比較例4及び実施例2の各試験片について、試験片TE2を上つかみ具33と下つかみ具34とにより保持した状態で、試験片TE2が試験片TE2の長さ方向に伸びるように上つかみ具33を下つかみ具34に対して相対移動させることにより試験片TE2を試験片TE2の長さ方向に伸ばす引張試験を行い、試験片TE2が破断した時の伸び量を測定した。試験片TE2が試験片TE2の長さ方向に伸びるように上つかみ具33を下つかみ具34に対して相対移動させる速度である引張速度を20mm/分とした。また、可変パッド1が実際に寒冷地で使用されている状況を考慮し、試験環境温度、即ち恒温槽32内の温度を、-20±2℃とした。
【0122】
比較例3、比較例4及び実施例2の各試験片について引張試験を行って得られた、試験片が破断した時の伸び量を、表1に示す。表1には、試験片が破断した時の最大応力及びエネルギーを合わせて示す。
【0123】
【表1】
【0124】
比較例3、比較例4及び実施例2の各々については、同種の3つの試験片を用いた。表1では、比較例3の3つの試験片について、比較例3-1、比較例3-2及び比較例3-3と表記し、比較例4の3つの試験片について、比較例4-1、比較例4-2及び比較例4-3と表記し、実施例2の3つの試験片について、実施例2-1、実施例2-2及び実施例2-3と表記している。
【0125】
図9は、比較例3、比較例4及び実施例2の各試験片について引張試験を行って得られた、試験片が破断した時の伸び量を示すグラフである。図9の縦軸は、同種の3つの試験片の各々が破断した時の伸び量の平均値を示す。
【0126】
図9及び表1に示すように、ポリエステル系樹脂よりなる比較例3の試験片については、試験片が破断した時の伸び量は、同種の3つの試験片で7~8mmとなり、3つの試験片の間の平均値は、7mmであった。また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例4の試験片については、試験片が破断した時の伸び量は、同種の3つの試験片で10~13mmとなり、3つの試験片の間の平均値は、12mmであった。一方、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例2の試験片については、試験片が破断した時の伸び量は、同種の3つの試験片で23~47mmとなり、3つの試験片の間の平均値は、33mmであった。
【0127】
即ち、ノルボルネン環構造を有するモノマーを含む重合性組成物15(図3参照)を重合した重合体14(図3参照)よりなり且つJIS K 7161-2「プラスチック-引張特性の求め方-第2部:型成形,押出成形及び注型プラスチックの試験条件」1B形のダンベル形状を有する試験片TE2を作製し、作製された試験片TE2のうち試験片TE2の長さ方向(X3方向)における上側(第2の側)の端部EP2を上側保持部としての上つかみ具33により保持し、試験片TE2のうち長さ方向(X3方向)における下側(第2の側と反対側)の端部EP3を下側保持部としての下つかみ具34により保持し、試験片TE2が長さ方向(X3方向)に伸びるように上つかみ具33を下つかみ具34に対して相対移動させる速度である引張速度を20mm/分とし且つ温度を-20℃とした条件で、試験片TE2を長さ方向(X3方向)に伸ばす引張試験を行った。当該条件で引張試験を行ったときに、試験片TE2が破断した時の試験片TE2の伸び量が23mm以上であることが明らかになった。
【0128】
また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例3の試験片については、試験片が破断した時の最大応力は、同種の3つの試験片で52~57MPaとなり、3つの試験片の間の平均値は、55MPaであった。また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例4の試験片については、試験片が破断した時の最大応力は、同種の3つの試験片で46~58MPaとなり、3つの試験片の間の平均値は、53MPaであった。一方、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例2の試験片については、試験片が破断した時の最大応力は、同種の3つの試験片で68~69MPaとなり、3つの試験片の間の平均値は、68MPaであった。
【0129】
このように、実施例2の最大応力は比較例3及び比較例4のいずれの最大応力に比べても大きいことからも、-20℃の低温においては、ノルボルネン系樹脂の弾性率が、ポリエステル系樹脂の弾性率よりも大きく、ノルボルネン系樹脂の強度がポリエステル系樹脂の強度よりも高いことが明らかになった。
【0130】
また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例3の試験片については、試験片が破断した時のエネルギーは、同種の3つの試験片で6~7Jとなり、3つの試験片の間の平均値は、7Jであった。また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例4の試験片については、試験片が破断した時のエネルギーは、同種の3つの試験片で9~17Jとなり、3つの試験片の間の平均値は、14Jであった。一方、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例2の試験片については、試験片が破断した時のエネルギーは、同種の3つの試験片で38~88Jとなり、3つの試験片の間の平均値は、59Jであった。
【0131】
このように、実施例2の破断した時のエネルギーは比較例3及び比較例4のいずれの破断した時のエネルギーに比べても大きいことからも、-20℃の低温においては、ノルボルネン系樹脂の破断した時のエネルギーがポリエステル系樹脂の破断した時のエネルギーよりも高いことが明らかになった。
【0132】
即ち、作製された試験片TE2のうち試験片TE2の長さ方向(X3方向)における上側(第3の側)の端部EP2を上側保持部としての上つかみ具33により保持し、試験片TE2のうち長さ方向(X3方向)における下側(第3の側と反対側)の端部EP3を下側保持部としての下つかみ具34により保持し、試験片TE2が長さ方向(X3方向)に伸びるように上つかみ具33を下つかみ具34に対して相対移動させる速度である引張速度を20mm/分とし且つ温度を-20℃とした条件で、試験片TE2を長さ方向(X3方向)に伸ばす引張試験を行った。当該条件で引張試験を行ったときに、試験片TE2が破断した時のエネルギーが38J以上であることが明らかになった。
【0133】
(実施例3並びに比較例5及び比較例6)
また、比較例3の試験片と同種のポリエステル系樹脂よりなる比較例5の試験片、比較例4の試験片と同種のポリエステル系樹脂よりなる比較例6の試験片、及び、実施例2の試験片と同種のノルボルネン系樹脂よりなる実施例3の試験片を作製し、作製された試験片に対して、温度を-20℃に代えて23℃とした以外は同一の条件で引張試験を行った。比較例5、比較例6及び実施例3の各試験片について引張試験を行って得られた、試験片が破断した時の伸び量を、表2に示す。表2には、試験片が破断した時の最大応力及びエネルギーを合わせて示す。
【0134】
【表2】
【0135】
比較例5、比較例6及び実施例3の各々については、同種の3つの試験片を用いた。表2では、比較例5の3つの試験片について、比較例5-1、比較例5-2及び比較例5-3と表記し、比較例6の3つの試験片について、比較例6-1、比較例6-2及び比較例6-3と表記し、実施例3の3つの試験片について、実施例3-1、実施例3-2及び実施例3-3と表記している。
【0136】
グラフによる図示は省略するが、表2に示すように、ポリエステル系樹脂よりなる比較例5の試験片については、試験片が破断した時の伸び量は、同種の3つの試験片で9~11mmとなり、3つの試験片の間の平均値は、10mmであった。また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例6の試験片については、試験片が破断した時の伸び量は、同種の3つの試験片で38~48mmとなり、3つの試験片の間の平均値は、44mmであった。また、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例3の試験片については、試験片が破断した時の伸び量は、同種の3つの試験片で92~100mmとなり、3つの試験片の間の平均値は、95mmであった。
【0137】
ただし、ポリエステル系樹脂よりなる比較例5の試験片については、試験片が破断した時の最大応力は、同種の3つの試験片で53~55MPaとなり、3つの試験片の間の平均値は、54MPaであった。また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例6の試験片については、試験片が破断した時の最大応力は、同種の3つの試験片で26~27MPaとなり、3つの試験片の間の平均値は、27MPaであった。また、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例3の試験片については、試験片が破断した時の最大応力は、同種の3つの試験片で51~55MPaとなり、3つの試験片の間の平均値は、53MPaであった。
【0138】
また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例5の試験片については、試験片が破断した時のエネルギーは、同種の3つの試験片で9~11Jとなり、3つの試験片の間の平均値は、10Jであった。また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例6の試験片については、試験片が破断した時のエネルギーは、同種の3つの試験片で32~39Jとなり、3つの試験片の間の平均値は、36Jであった。一方、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例3の試験片については、試験片が破断した時のエネルギーは、同種の3つの試験片で141~157Jとなり、3つの試験片の間の平均値は、147Jであった。
【0139】
即ち、実施例3の破断した時のエネルギーは比較例5の破断した時のエネルギーよりも大きいものの、比較例5と実施例3との間で破断した時の最大応力が略等しいことから、23℃の室温においては、ノルボルネン系樹脂の強度が高いためというよりは、ノルボルネン系樹脂の弾性率がそれほど大きくないために、試験片が破断した時の伸び量及びエネルギーが大きくなったと考えられる。
【0140】
以上の結果をまとめると、引張試験において、本発明者らは、-20℃においてノルボルネン系樹脂よりなる試験片がポリエステル系樹脂よりなる試験片よりも高い強度を有すること、及び、ポリエステル系樹脂とノルボルネン系樹脂との間で、-20℃における強度の差が、室温における強度の差に比べて大きいことを見出した。
【0141】
また、図3に示す可変パッド1に対してレールRAがX1方向にふく進することによりリブ部12に応力FR1が集中し、リブ部12がX1方向に押圧される場合とは、図7及び図8に示す引張試験において試験片TE2が長さ方向であるX3方向に沿うように上つかみ具33と下つかみ具34とにより保持された状態でX3方向に伸ばされる場合に相当する。従って、図7及び図8に示す引張試験において、-20℃においてノルボルネン系樹脂よりなる試験片がポリエステル系樹脂よりなる試験片よりも高い強度を有することは、-20℃においてレールRAがふく進することによりリブ部12に応力FR1が集中しても可変パッド1が破損しにくくなることを意味する。
【0142】
よって、引張試験において、樹脂部11b、12b及び13bが、いずれもノルボルネン系樹脂よりなることにより、-20℃の低温でレールRAが伸縮する際にリブ部12及び13に応力が集中した場合でも、リブ部12及び13が破損すること、即ち可変パッド1が破損することを防止でき、低温においても破損しにくい可変パッド1が得られることが明らかになった。
【0143】
なお、詳細の説明は省略するが、第2モノマーとして、トリシクロペンタジエン(製造例2)に代え、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5-エチリデンノルボルネン及び8-エチリデンテトラシクロドデセンその他の前記一般式(1)で示される化合物を用いた場合も、引張試験において実施例2乃至実施例4と同様の結果が得られた。また、製造例2に代えて製造例1により準備された重合性組成物を用いた場合も同様の結果が得られた。更に、上記各種試験片について、可変パッド1と別に作製した試験片を用いた場合のみならず、可変パッド1から切り出して加工した試験片を用いた場合も、引張試験において同様の結果が得られた。
【0144】
(実施例4並びに比較例7及び比較例8)
また、比較例3の試験片と同種のポリエステル系樹脂よりなる比較例7の試験片、比較例4の試験片と同種のポリエステル系樹脂よりなる比較例8の試験片、及び、実施例2の試験片と同種のノルボルネン系樹脂よりなる実施例4の試験片を作製し、作製された試験片に対して、温度を-20℃に代えて60℃とした以外は同一の条件で引張試験を行った。比較例7、比較例8及び実施例4の各試験片について引張試験を行って得られた、試験片が破断した時の伸び量を、表3に示す。表3には、試験片が破断した時の最大応力及びエネルギーを合わせて示す。
【0145】
【表3】
【0146】
比較例7、比較例8及び実施例4の各々については、同種の3つの試験片を用いた。表3では、比較例7の3つの試験片について、比較例7-1、比較例7-2及び比較例7-3と表記し、比較例8の3つの試験片について、比較例8-1、比較例8-2及び比較例8-3と表記し、実施例4の3つの試験片について、実施例4-1、実施例4-2及び実施例4-3と表記している。
【0147】
グラフによる図示は省略するが、表3に示すように、ポリエステル系樹脂よりなる比較例7の試験片については、試験片が破断した時の伸び量は、同種の3つの試験片で16~22mmとなり、3つの試験片の間の平均値は、18mmであった。また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例8の試験片については、試験片が破断した時の伸び量は、同種の3つの試験片で42~56mmとなり、3つの試験片の間の平均値は、49mmであった。一方、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例4の試験片については、同種の3つの試験片で、試験片の伸び量がそれぞれ65mm、75mm及び75mmを超えても、破断しなかった。なお、表3では、例えば、試験片の伸び量が65mmを超えても試験片が破断しなかったことを、「>65」と表示している。
【0148】
ただし、ポリエステル系樹脂よりなる比較例7の試験片については、試験片が破断した時の最大応力は、同種の3つの試験片で37~38MPaとなり、3つの試験片の間の平均値は、38MPaであった。また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例8の試験片については、試験片が破断した時の最大応力は、同種の3つの試験片で9~10MPaとなり、3つの試験片の間の平均値は、9MPaであった。一方、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例4の試験片については、同種の3つの試験片で、最大応力がそれぞれ33MPa、34MPa及び35MPaを超えても、破断しなかった。
【0149】
また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例7の試験片については、試験片が破断した時のエネルギーは、同種の3つの試験片で14~22Jとなり、3つの試験片の間の平均値は、17Jであった。また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例8の試験片については、試験片が破断した時のエネルギーは、同種の3つの試験片で9~15Jとなり、3つの試験片の間の平均値は、12Jであった。一方、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例4の試験片については、同種の3つの試験片で、エネルギーが66J、83J及び84Jを超えても、破断しなかった。
【0150】
表3から、実施例4の破断した(と仮定した)時のエネルギーは比較例7及び比較例8のいずれの破断した時のエネルギーに比べても大きいことからも、60℃の高温においても、ノルボルネン系樹脂の破断した(と仮定した)時のエネルギーがポリエステル系樹脂の破断した時のエネルギーよりも高いことが明らかになった。
【0151】
以上の結果をまとめると、引張試験において、本発明者らは、-20℃から60℃までの広範な温度範囲においてノルボルネン系樹脂よりなる試験片がポリエステル系樹脂よりなる試験片よりも高い強度を有することを見出した。
【0152】
即ち、作製された試験片TE2のうち試験片TE2の長さ方向(X3方向)における上側(第4の側)の端部EP2を上側保持部としての上つかみ具33により保持し、試験片TE2のうち長さ方向(X3方向)における下側(第4の側と反対側)の端部EP3を下側保持部としての下つかみ具34により保持し、試験片TE2が長さ方向(X3方向)に伸びるように上つかみ具33を下つかみ具34に対して相対移動させる速度である引張速度を20mm/分とし且つ温度を60℃とした条件で、試験片TE2を長さ方向(X3方向)に伸ばす引張試験を行った。当該条件で引張試験を行ったときに、試験片TE2が破断した時のエネルギーが66Jを超えることが明らかになった。
【0153】
[圧縮試験]
次に、実施例5並びに比較例9及び比較例10の試験片を作製し、作製された試験片に対して、圧縮試験を行った。
【0154】
(実施例5並びに比較例9及び比較例10)
実施例2並びに比較例3及び比較例4の重合体の試験片の作製方法と同様にして、ノルボルネン環構造を有するモノマーを含む重合性組成物15(図3参照)を重合した重合体14(図3参照)よりなり且つ幅13mm、厚さ13mm及び長さ13mmを有する、実施例5並びに比較例9及び比較例10の試験片を作製した。作製された試験片に対して、試験片の長さ方向に圧縮する速度を1mm/分とし温度を-20℃、23℃又は60℃とした条件で、JIS K 7181「プラスチック-圧縮特性の求め方」及びJIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に基づく圧縮試験を行った。具体的には、試験片に対して、破断するまで圧縮した。このとき測定した応力とひずみの関係から、下記式(数1)により圧縮強さσ(MPa)を求め、下記式(数2)により圧縮降伏点(圧縮降伏応力とも称する)σ(MPa)を求め、下記式(数3)により圧縮弾性率E(MPa)を求めた。
σ=F/(bh)・・・(数1)
ここで、Fは破断までの最大荷重(N)、bは試験片幅(mm)、hは試験片厚さ(mm)である。
σ=F/(bh)・・・(数2)
ここで、Fは降伏荷重(N)である。
=(σ-σ)/(ε-ε)・・・(数3)
ここで、σはひずみεにおける応力(MPa)であり、σはひずみεにおける応力(MPa)である。なお、本圧縮試験での圧縮弾性率は、ε=0.005からε=0.01までのひずみ範囲から求めた。
【0155】
このようにして実施例5並びに比較例9及び比較例10の試験片について求められた圧縮弾性率及び圧縮降伏点の結果を図10及び図11並びに表4に示す。図10は、比較例9、比較例10及び実施例5の各試験片について圧縮試験を行って得られた、圧縮弾性率を示すグラフである。図11は、比較例9、比較例10及び実施例5の各試験片について圧縮試験を行って得られた、圧縮降伏点を示すグラフである。
【0156】
【表4】
【0157】
図11及び表4に示すように、ポリエステル系樹脂よりなる比較例9の試験片については、圧縮降伏点は、-20℃から60℃の温度範囲において、58~159MPaであり、60℃では58MPaであった。また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例10の試験片については、圧縮降伏点は、-20℃から60℃の温度範囲において、6~84MPaであり、60℃では6MPaであった。また、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例5の試験片については、圧縮降伏点は、-20℃から60℃の温度範囲において、52~92MPaであり、60℃では52MPaであった。即ち、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例5の試験片については、圧縮降伏点は、-20℃、23℃及び60℃のいずれの温度においても52MPa以上であった。
【0158】
また、実施例5の試験片の60℃における圧縮降伏点に対する-20℃における圧縮降伏点の比は1.8であり、比較例9の試験片の同様の比が2.7であり、比較例10の試験片の同様の比が14であるのに比べて、小さかった。即ち、実施例5の圧縮降伏点の温度依存性は、比較例9及び比較例10のいずれの圧縮降伏点の温度依存性に比べても小さかった。
【0159】
可変パッドの強度に対しては、一般的に、「圧縮降伏点が20MPa以上」であることが望ましいと考えられている。また、ポリエステル系樹脂よりなる比較例9の試験片では、60℃における圧縮降伏点が6MPaであり、上記した「圧縮降伏点が20MPa以上」という条件を満たさなかった。
【0160】
一方、ノルボルネン系樹脂よりなる実施例5の試験片では、60℃においても圧縮降伏点が52MPaであり、-20℃から60℃の広範な温度範囲において、「圧縮降伏点が20MPa以上」という条件を容易に満たしていた。即ち、-20℃から60℃の広範な温度範囲において、ノルボルネン系樹脂よりなる試験片がポリエステル系樹脂よりなる試験片よりも高い強度を有し、且つ、ノルボルネン系樹脂よりなる試験片がポリエステル系樹脂よりなる試験片よりも高い圧縮降伏点を有することが明らかになった。
【0161】
なお、詳細の説明は省略するが、第2モノマーとして、トリシクロペンタジエン(製造例2)に代え、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5-エチリデンノルボルネン及び8-エチリデンテトラシクロドデセンその他の前記一般式(1)で示される化合物を用いた場合も、圧縮試験において実施例5と同様の結果が得られた。また、製造例2に代えて製造例1により準備された重合性組成物を用いた場合も同様の結果が得られた。更に、上記各種試験片について、可変パッド1と別に作製した試験片を用いた場合のみならず、可変パッド1から切り出して加工した試験片を用いた場合も、圧縮試験において同様の結果が得られた。
【0162】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0163】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0164】
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明は、可変パッドに適用して有効である。
【符号の説明】
【0166】
1 可変パッド
1a、11a、12a、13a 袋体部
1b、11b、12b、13b 樹脂部
1c 外表面層
1d 中間層
1e 内表面層
2 タイプレート
3 軌道パッド
4 支持体
5、7、36 ボルト
6 板ばね部材
11 本体部
12、13 リブ部
14 重合体
15 重合性組成物
21 片持ち曲げ試験治具
22、32 恒温槽
23 保持部
24 押圧部
24a 先端部
25、35 本体
25a ストッパ
25b 角部
26 固定板
27 ネジ
31 引張試験治具
33 上つかみ具
34 下つかみ具
35a 切込み
35b、37 保持板
DS1 距離
EP1、EP2、EP3 端部
FR1 応力
HG1 高さ
LD1 荷重
MA1、MA2 材料試験機
PA1、PA2、PA3 部分
PS1、PS2 位置
RA レール
TE1、TE2 試験片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11