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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】車載用バッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/296 20210101AFI20230118BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20230118BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20230118BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20230118BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20230118BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20230118BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20230118BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20230118BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20230118BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20230118BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20230118BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230118BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230118BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230118BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20230118BHJP
   H01M 10/6553 20140101ALI20230118BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20230118BHJP
【FI】
H01M50/296
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/249
H01M50/262 S
H01M50/50 101
H01M50/503
H01M50/505
H01M50/588
H01M50/591
H01M50/593
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6551
H01M10/6553
H01M10/6554
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019053499
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020155340
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】中里 ユカ
(72)【発明者】
【氏名】成毛 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 農
(72)【発明者】
【氏名】家永 諭
(72)【発明者】
【氏名】神戸 健
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-229266(JP,A)
【文献】特開2013-114951(JP,A)
【文献】特開2014-203747(JP,A)
【文献】特表2001-507856(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031169(WO,A1)
【文献】特開2019-192536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 50/50
H01M 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部接続端子が形成された複数の電池セルと、
前記電池セルが整列する方向に於いて端部側に配置され、良熱伝導体から成るエンドプレートと、
一端側が前記外部接続端子に電気的に接続され、他端側が前記エンドプレートの上方に配置されたバスバーと、
前記エンドプレートと前記バスバーとの間に配置され、前記バスバーから前記エンドプレートに伝導する熱を経由させる伝熱プレートと、
前記バスバーと前記伝熱プレートとの間に配置されたシートと、
前記伝熱プレートを周囲から囲む枠状の部材であるホルダと、を具備し、
前記伝熱プレートと前記ホルダとの間隙は、前記シートにより覆われることを特徴とする車載用バッテリ。
【請求項2】
前記ホルダの外周部に形成された壁状部を有することを特徴とする請求項1に記載の車載用バッテリ。
【請求項3】
前記ホルダの上面には、前記バスバーを囲むように溝が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載用バッテリ。
【請求項4】
前記溝に高低差を形成することを特徴とする請求項3に記載の車載用バッテリ。
【請求項5】
前記溝の底面を傾斜面とすることを特徴とする請求項3に記載の車載用バッテリ。
【請求項6】
前記エンドプレートにフィン構造を形成することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の車載用バッテリ。
【請求項7】
前記エンドプレートの上面は、外側に向かって下方に傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の車載用バッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用バッテリに関し、特に、複数のバッテリセルを接続するバスバーを有する車載用バッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用バッテリは、その内部に板状のバッテリセルを多数有している。特許文献1には、この種の車載用バッテリが記載されている。
【0003】
具体的に説明すると、特許文献1に記載された電池モジュールは、複数の単電池セルの外部端子同士がブスバによって電気的に接続されている。また、ブスバに直接接触され、ブスバを覆う伝熱カバーを備えている。更に、伝熱カバーは、絶縁性を有する熱伝導性部材であり、単電池セルの電池容器に直接接触されている。これにより、充放電の際に電極群で発生する熱を効率よく電池容器表面に伝えることで、単電池セルを効果的に冷却できると共に、電池モジュールの小型化を図ることができる。ここで、特許文献1に於けるブスバが、本願発明のバスバーに相当している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-80625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した背景技術に係る電池モジュールでは、電池モジュールを取り巻く雰囲気の温度条件および湿度条件によっては、水分に対する対策が必ずしも十分とは言えない課題があった。
【0006】
具体的には、電池モジュールを取り巻く外部雰囲気が多湿な状態であり、且つ、電池モジュールのバスバーと外部雰囲気との間に大きな温度差が発生した場合、外部雰囲気に含まれる水分がバスバーの表面で結露する。この結露水が電池セル側に流入すると、電池セルのショートや故障を招く恐れがある。
【0007】
また、電池モジュールの充電時および放電時に於いてバスバーは熱を発する。特に、バスバーがボルト等により他の部材と接合される接合部分は電気抵抗値が高い異種材料界面であるため、接合部分に大電流が流れると大きな熱を発する。よって、電池セルの更なる性能向上や寿命向上のためには、バスバーの放熱性を更に向上することができる構成が望ましい。
【0008】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、電池モジュールの充放電時に於ける放熱性を更に向上し、また、結露水による漏電やショートを防止して安全を担保する車載用バッテリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車載用バッテリは、外部接続端子が形成された複数の電池セルと、前記電池セルが整列する方向に於いて端部側に配置され、良熱伝導体から成るエンドプレートと、一端側が前記外部接続端子に電気的に接続され、他端側が前記エンドプレートの上方に配置されたバスバーと、前記エンドプレートと前記バスバーとの間に配置され、前記バスバーから前記エンドプレートに伝導する熱を経由させる伝熱プレートと、前記バスバーと前記伝熱プレートとの間に配置されたシートと、前記伝熱プレートを周囲から囲む枠状の部材であるホルダと、を具備し、前記伝熱プレートと前記ホルダとの間隙は、前記シートにより覆われることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記ホルダの外周部に形成された壁状部を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記ホルダの上面には、前記バスバーを囲むように溝が形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記溝に高低差を形成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記溝の底面を傾斜面とすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記エンドプレートにフィン構造を形成することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記エンドプレートの上面は、外側に向かって下方に傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車載用バッテリは、外部接続端子が形成された複数の電池セルと、前記電池セルが整列する方向に於いて端部側に配置され、良熱伝導体から成るエンドプレートと、一端側が前記外部接続端子に電気的に接続され、他端側が前記エンドプレートの上方に配置されたバスバーと、前記エンドプレートと前記バスバーとの間に配置され、前記バスバーから前記エンドプレートに伝導する熱を経由させる伝熱プレートと、前記バスバーと前記伝熱プレートとの間に配置されたシートと、前記伝熱プレートを周囲から囲む枠状の部材であるホルダと、を具備し、前記伝熱プレートと前記ホルダとの間隙は、前記シートにより覆われることを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、エンドプレートとバスバーとの間に伝熱プレートが介在することで、バスバーから発生する熱をエンドプレートに積極的に伝導させることができ、バスバーが過熱することを防止できる。更に、伝熱プレートの周囲にホルダを配置し、伝熱プレートとホルダとの間隙をシートで覆っていることから、バスバーの表面に結露が発生しても、その結露水をシートの上面を経由して、ホルダに導くことができる。よって、結露水によりバスバーとエンドプレートとが不用意に伝導することを防止できる。
【0017】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記ホルダの外周部に形成された壁状部を有することを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、ホルダの外周部に壁状部を有することで、結露水が外部に流出すること壁状部で抑止できる。
【0018】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記ホルダの上面には、前記バスバーを囲むように溝が形成されることを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、ホルダの溝に結露水を貯留し、結露水の外部流出を防止できる。
【0019】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記溝に高低差を形成することを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、溝の底部に高低差を形成することで、溝に貯留する結露水が、バッテリ側に流動することを防止できる。
【0020】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記溝の底面を傾斜面とすることを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、溝の底面を傾斜面とすることで、溝に貯留する結露水が、バッテリ側に流動することを防止できる。
【0021】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記エンドプレートにフィン構造を形成することを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、エンドプレートのフィン構造により、エンドプレートからの放熱を促進できる。
【0022】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記エンドプレートの上面は、外側に向かって下方に傾斜していることを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、エンドプレートの上面が傾斜面であることで、この傾斜を利用して結露水を外側に向かって導き、結露水がバッテリセル側に進入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係る車載用バッテリを備えた車両を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は平面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る車載用バッテリを示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る車載用バッテリを示す分解斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る車載用バッテリを示す図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)に示す車載用バッテリの切断面線A-Aに於ける拡大断面図である。
図5】本発明の他の形態に係る車載用バッテリを示す拡大断面図である。
図6】本発明の他の形態に係る車載用バッテリを示す拡大断面図である。
図7】本発明の他の形態に係る車載用バッテリを示す拡大断面図である。
図8】本発明の他の形態に係る車載用バッテリを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る車載用バッテリを図面に基づき詳細に説明する。以下の説明に於いて、前後後方とは、車載用バッテリ10に於いて電池セル11が積層される方向である。左右方向とは、前方から車載用バッテリ10を見た場合の左右方向である。
【0025】
図1(A)は、車載用バッテリ10を搭載した車両30を説明する斜視図である。図1(B)は、車載用バッテリ10の配設状態を説明する平面図である。
【0026】
図1(A)に示す如く、自動車や電車等の車両30には、モータや様々な電装部品に電力を供給するための車載用バッテリ10(図1(B)参照)が搭載されている。車両30が自動車の場合には、近年、EV(Electrical Vehicle)車、HEV(Hybrid Electrical Vehicle)車やPHEV(Plug-in Hybrid Electrical Vehicle)車等が普及している。そして、これらの車両30にも、高い蓄電機能を有した複数の車載用バッテリ10が搭載されている。
【0027】
車両30は、車体31と、車両30の底面33近傍に規定されたバッテリ配置領域32に配設された複数の車載用バッテリ10と、車載用バッテリ10から供給される電力により駆動される駆動モータ(図示せず)と、駆動モータの駆動力で回転するタイヤ(図示せず)と、を有している。
【0028】
図1(B)に示す如く、車両30のバッテリ配置領域32には、行列状に複数の車載用バッテリ10が配設されている。車載用バッテリ10は、例えば、直方体形状であり、車両30の前後方向に沿ってその長手方向が配置されている。そして、複数の車載用バッテリ10が、バッテリ配置領域32に効率良く配置され、多くの車載用バッテリ10が搭載されることで、車両30の連続走行距離を伸ばすことができる。
【0029】
具体的には、車両30のバッテリ配置領域32では、最前列には、2個の車載用バッテリ10が配設されている。一方、2列目から4列目には、各列4個の車載用バッテリ10が配設されている。車載用バッテリ10どうしは、後述する接続バスバー28を介して、互いに電気的に接続される。
【0030】
図2は車載用バッテリ10を前側上方から見た斜視図である。車載用バッテリ10は、前後方向に配列された複数の電池セル11を有している。車載用バッテリ10は、全体として、前後方向に沿って細長く形成された略直方体形状を呈している。
【0031】
電池セル11は、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の2次電池であり、個々の電池セル11は略板形状を呈している。
【0032】
バスバー13は、電池セル11同士を電気的に接続する接続手段である。バスバー13は、アルミニウムや銅などの金属から成り、所定形状に曲折加工された板状金属部材であり、車載用バッテリ10の上面に於いて、左方側端部に配置されている。バスバー13の後方部分は、セルバスバー22を介して、各電池セル11の接続端子と電気的に接続されている。ここでは、2つのセルバスバー22を示しているが、セルバスバー22は、全ての電池セル11に対応して設けられる。バスバー13の前方部分は、エンドプレート12の上面に配置されている。
【0033】
スタッドボルト21は、バスバー13の前方部分を貫通する部材である。車載用バッテリ10は、スタッドボルト21を介して、ここでは図示しない他の車載用バッテリ10と電気的に接続される。
【0034】
エンドプレート12は、車載用バッテリ10の前後方向両端部に配置される板状の部材である。具体的には、エンドプレート12は、最前方に配置される電池セル11の前側、および、最後方の電池セル11の後側に配置される。ここでは、電池セル11の後方に配置されるエンドプレート12を図示していない。エンドプレート12を、前後方向の両端部に配置することで、温度変化に伴う電池セル11の膨張により、前後方向に於ける車載用バッテリ10の寸法が変化することを抑止できる。エンドプレート12の材料としては、電池セル11の膨張変形を抑制できる剛性を有し、更にバスバー13からの熱を良好に伝導できる良熱伝導体を採用できる。エンドプレート12の具体的な材料としては、例えばアルミニウム等の金属を採用できる。
【0035】
エンドプレート12の前面上方部分には、フィン構造20が形成されている。フィン構造20は、フィン構造20の前面を前方に向かって突出された複数のリブ状部位から形成される。フィン構造20を形成することで、エンドプレート12の前面上方部分の表面積を増大させ、エンドプレート12と外部雰囲気との熱交換を促進できる。また、ここでは図示しないが、車載用バッテリ10の後端に配置されるエンドプレート12の外面上方部分にもフィン構造20が形成される。
【0036】
ホルダ16は、エンドプレート12の上面に配置される略枠状の部材である。ホルダ16の材料としては、絶縁性を有する樹脂等を採用できる。
【0037】
図3は車載用バッテリ10を示す分解斜視図である。この図を参照して、エンドプレート12の上面には、下方側から、伝熱プレート14、ホルダ16、シート15およびバスバー13が配置される。
【0038】
伝熱プレート14は、良熱伝導体から成る板状の部材であり、その下面はエンドプレート12の上面に当接し、その上面はシート15を介してバスバー13の下面に当接している。伝熱プレート14の具体的な材料としては、金属、アクリル等の合成樹脂、ゴム、ゲル状の物質等を採用することができる。伝熱プレート14の上面は、ホルダ16の内縁部の上面と略同一平面上に配置される。
【0039】
ホルダ16は、略枠状に形成された樹脂から成る部材であり、その周縁部に壁状部17が形成されている。また、ホルダ16の上面内部を窪ませることで、図4(B)に示す溝18が形成されている。ホルダ16を上方から見た場合、ホルダ16の中央には矩形の開口部26が形成される。この開口部26(図3参照)に、伝熱プレート14が収納される。
【0040】
シート15は、例えばPP(polypropylene)等の樹脂から成る薄い矩形の樹脂シートであり、ホルダ16および伝熱プレート14の上面に配置され、且つバスバー13の下面に当接する。シート15は、ホルダ16の開口部26よりも大きい略矩形形状を呈している。即ち、前後方向および左右方向に於いて、シート15は、ホルダ16の開口部26よりも若干大きく形成されている。係る構成のシート15により、伝熱プレート14とホルダ16との境界を、シート15で被覆することができる。また、シート15の下面には、ホルダ16および伝熱プレート14の上面に密着するための接着材層が形成されている。
【0041】
バスバー13は、上記したように、図2に示した電池セル11どうしを接続する接続手段である。バスバー13の前方側部分は、エンドプレート12の上面に沿って左右方向に向かって延在している。後述するように、バスバー13の前方部分は、シート15および伝熱プレート14を介して、エンドプレート12と熱的に結合されており、バスバー13が充放電時に高温化しても、その熱はエンドプレート12を外部して放出されるので、バスバー13の過熱が防止されている。
【0042】
図4(A)は車載用バッテリ10を示す正面図であり、図4(B)は図4(A)に示す車載用バッテリ10の切断面線A-Aに於ける拡大断面図である。
【0043】
図4(A)を参照して、バスバー13の略中央部を貫通する貫通孔にスタッドボルト21が挿入されている。また、スタッドボルト21は、バスバー13の上面に載置された接続バスバー28も貫通している。接続バスバー28は、車載用バッテリ10どうしを接続する接続手段である。スタッドボルト21はナット27に螺入されている。係る構成により、バスバー13と接続バスバー28とは締結され、電気的に接続される。バスバー13の中央部に於いて、スタッドボルト21を介して接続バスバー28を接続することで、接続バスバー28の接続距離を短くすることができる。
【0044】
また、左右方向に於けるエンドプレート12の外側には、バインドバー23が配置されている。バインドバー23は、積層した電池セル11をエンドプレート12で挟みこんで束ねるための板状の部材である。エンドプレート12とバインドバー23とは固定ボルト24で締結されている。更に、エンドプレート12の下部には、車載用バッテリ10を、ここでは図示しない電池パックの筐体に固定するためのモジュール固定ブラケット25が固定されている。
【0045】
図4(B)を参照して、ホルダ16の上面内側部分を窪ませることで溝18が形成されている。ホルダ16を上方から見た場合、溝18は枠状に形成されている。また、ホルダ16の最外周部を上方に向かって壁状に突出させることで壁状部17が形成されている。尚、ここでは、図4(A)に示したナット27および接続バスバー28を図示していない。
【0046】
シート15は、伝熱プレート14とバスバー13との間に配置されている。また、シート15の下面は、伝熱プレート14の上面のみならず、ホルダ16の上面であって溝18よりも内側の部分も被覆している。また、シート15は、防水性に優れた樹脂などの可撓性材料から成る。よって、シート15は、伝熱プレート14およびホルダ16の上面の形状に追従して変形している。更に、シート15の下面は接着材等を介して、伝熱プレート14の上面およびホルダ16の上面に接着している。
【0047】
エンドプレート12の上面に於いて、伝熱プレート14は、ホルダ16に囲まれており、伝熱プレート14とホルダ16との間には、僅かながら間隙が存在している。シート15は、この間隙を上方から塞いでいる。よって、使用状況においてバスバー13の表面に形成された結露水は、シート15の上面を伝ってホルダ16の溝18まで導かれる。その結露水はホルダ16の溝18に貯留し、その後に蒸発する。よって、結露水が伝熱プレート14とホルダ16との間に進入することを防止できる。
【0048】
本実施形態の車載用バッテリ10によれば、バスバー13およびその周辺部材の過熱を防止することができる。具体的には、車載用バッテリ10の充放電を行う際には、バスバー13に大電流が通過するため、異種材料界面が存在するバスバー13およびその周辺部は発熱する。本実施形態では、バスバー13は、伝熱プレート14を介して、エンドプレート12と熱的に結合している。また、エンドプレート12は、車載用バッテリ10の端部に配置される板状部材であるため、十分な表面積を有している。よって、バスバー13が通電することで発生する熱は、伝熱プレート14を介してエンドプレート12に伝導した後に、外部雰囲気に放出される。よって、充放電時におけるバスバー13の加熱が防止され、更に、電池セル11の過熱による性能劣化や寿命劣化が防止される。
【0049】
更に、図4(A)を参照して、バスバー13の左右方向に沿って伸びる部分の下面全域は、伝熱プレート14の上面に当接している。係る構成により、伝熱プレート14を介してバスバー13とエンドプレート12とが接する面積を大きくすることができ、バスバー13の放熱性を向上することができる。
【0050】
更に本実施形態では、エンドプレート12の上方に於いて、伝熱プレート14を取り囲むようにホルダ16を配置し、伝熱プレート14とホルダ16との間隙をシート15で被覆している。係る構成とすることで、バスバー13の表面に付着した結露水は、シート15の上面を伝わって、ホルダ16の溝18に貯留する。よって、伝熱プレート14とホルダ16との間隙に、結露水が侵入することがないので、伝熱プレート14とエンドプレート12とが不用意に導通してしまうことを防止できる。
【0051】
図5以降の図を参照して、他の形態の車載用バッテリ10を説明する。
【0052】
図5は、他の形態に係る車載用バッテリ10を示す拡大断面図である。ここでは、図4等に示した車載用バッテリ10と比較して、ホルダ16の壁状部17が高く形成されている。具体的には、壁状部17の上端部を、電池セル11の上端部よりも上方に配置している。このようにすることで、ホルダ16の内部に多量の結露水を貯留することができ、結露水が電池セル11の側に進入することを防止する効果を顕著にできる。
【0053】
図6は、更なる他の形態に係る車載用バッテリ10の拡大断面図である。以下の説明では、前方に配置される溝18を溝181と称し、後方に配置される溝18を溝182と称する。また、溝181は底面191を有し、溝182は底面192を有する。
【0054】
ここでは、底面191と底面192との間に高低差を形成している。具体的には、前方配置される溝181の底面191を、後方に配置される溝182の底面192よりも下方に配置している。底面191と底面192の高低差L1は、例えば1mmである。
【0055】
係る構成とすることで、バスバー13の表面に発生した結露水は、ホルダ16に向かって流動する。具体的には、バスバー13から溝181に流入した結露水は、溝181に留まる。また、底面191が底面192よりも低いことから、バスバー13から溝182に流入した結露水は、溝181に移動する。これにより、結露水を、電池セル11から離れる方向に向かって流動させることができ、結露水が電池セル11に接触することを防止できる。
【0056】
図7は、更なる他の形態に係る車載用バッテリ10の拡大断面図である。ここでは、底面191および底面192が、前方に向かって下方に傾斜する傾斜面を呈している。底面191および底面192が、水平面から傾斜する角度θ1は例えば、2度程度である。また、底面191および底面192は、同一平面上に配置されている。
【0057】
係る構成とすることで、バスバー13の表面に発生した結露水は、ホルダ16の内部に於いて前方に向かって流動する。具体的には、バスバー13から溝181に流入した結露水は、溝181に留まる。また、底面191および底面192が傾斜面であることから、バスバー13から溝182に流入した結露水は、溝181に移動する。これにより、結露水を、電池セル11から離れる方向に向かって流動させることができ、結露水が電池セル11に接触することを防止できる。
【0058】
図8は、更なる他の形態に係る車載用バッテリ10の拡大断面図である。ここでは、エンドプレート12の上面が、前方に向かって下方に傾斜する傾斜面を呈している。また、ホルダ16の底面191および底面192も、前方に向かって下方に傾斜する傾斜面を呈している。エンドプレート12の上面、底面191および底面192が、水平面から傾斜する角度θ2は例えば、5度程度である。
【0059】
係る構成とすることで、バスバー13の表面に発生した結露水は、ホルダ16の内部に於いて前方に向かって流動する。具体的には、バスバー13から溝181に流入した結露水は、溝181に留まる。また、底面191および底面192が傾斜面であることから、バスバー13から溝182に流入した結露水は、溝181に移動する。これにより、結露水を、電池セル11から離れる方向に向かって流動させることができ、結露水が電池セル11に接触することを防止できる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、上記した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 車載用バッテリ
11 電池セル
12 エンドプレート
13 バスバー
14 伝熱プレート
15 シート
16 ホルダ
17 壁状部
18、181、182 溝
191、192 底面
20 フィン構造
21 スタッドボルト
22 セルバスバー
23 バインドバー
24 固定ボルト
25 モジュール固定ブラケット
26 開口部
27 ナット
28 接続バスバー
30 車両
31 車体
32 バッテリ配置領域
33 底面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8