(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】通気弁
(51)【国際特許分類】
E03C 1/122 20060101AFI20230118BHJP
F16K 24/06 20060101ALN20230118BHJP
【FI】
E03C1/122 A
F16K24/06 A
(21)【出願番号】P 2019074304
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】水野 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-101455(JP,A)
【文献】特開2019-167742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/122
F16K 21/00-24/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出口と、前記流出口へ向けて空気を通過させる通気口と、が形成された通気弁本体と、
前記通気口と前記流出口との間に配置されかつ前記通気口を開閉自在に覆う閉鎖部を有し、前記通気弁本体に移動可能に支持された弁体と、
前記通気口を閉じる方向に前記弁体を付勢する付勢部材と、を備え、
前記通気弁本体の前記弁体よりも前記流出口側に、前記弁体が前記通気口を閉じているときに前記流出口の中心線に沿って見たときに径方向の内側に延び、内径が前記閉鎖部の外径よりも小さい水浸入抑制部が設けられ
、
前記水浸入抑制部は、前記流出口の中心線と平行な線に対して傾斜した複数のフィンを含んでおり、
前記流出口の中心線に沿って見たときに、前記フィンは、前記流出口の周方向に沿って並んでおり、互いに周方向に離間している、通気弁。
【請求項2】
前記水浸入抑制部に孔が形成されている、請求項1に記載の通気弁。
【請求項3】
前記流出口の中心線に沿って見たときの前記水浸入抑制部の面積は、前記孔の開口面積よりも大きい、請求項2に記載の通気弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
排水管路に負圧が生じると、排水管路に接続された排水機器の封水が破られるおそれがある。そこで従来から、内部が負圧になると開く通気弁を排水管路に設けることが推奨されている。排水管路に通気弁を設けることにより、負圧発生時に通気弁から外気を導入することができ、負圧状態を解消することができる。これにより、排水機器の封水を保護することができる。
【0003】
例えば、特許文献1にそのような通気弁が開示されている。特許文献1に開示された通気弁は、横向きに延びる配管の上部に取り付けられる。この通気弁は、上下に開口する通気口と、通気口を開閉するように上下に移動可能な弁体と、弁体を閉じる方向(上方向)に付勢する付勢手段と、弁体よりも下方に形成された流出口とを備えている。配管内に負圧が生じると、弁体が負圧により下方に引っ張られ、通気口が開かれる。通気口から導入された外気は、流出口を通じて配管内に導入される。これにより、配管の負圧状態が解消される。
【0004】
通気弁は、配管内の負圧状態を解消するため、外気を流出口から配管内に速やかに導入する必要がある。外気を速やかに導入する観点からは、流出口は大きいほど好ましい。特許文献1に開示された通気弁では、流出口の内径は弁体の外径よりも大きく設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、流出口は配管の内部に向かって開口しているので、配管を流れる排水が跳ね上がると、流出口から通気弁の内部に入り込むことがある。この際、排水に混じった異物などが通気弁の内部に付着する場合がある。それにより、通気弁の性能が低下するおそれがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、外気を円滑に導入することができると共に、跳ね上がった排水が内部に浸入しにくい通気弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通気弁は、流出口と前記流出口へ向けて空気を通過させる通気口とが形成された通気弁本体と、前記通気口と前記流出口との間に配置されかつ前記通気口を開閉自在に覆う閉鎖部を有し、前記通気弁本体に移動可能に支持された弁体と、前記通気口を閉じる方向に前記弁体を付勢する付勢部材と、を備えている。前記通気弁本体の前記弁体よりも前記流出口側に、前記弁体が前記通気口を閉じているときに前記流出口の中心線に沿って見たときに径方向の内側に延び、内径が前記閉鎖部の外径よりも小さい水浸入抑制部が設けられている。
【0009】
上記通気弁によれば、通気弁本体における弁体の閉鎖部よりも流出口側に、水浸入抑制部が設けられている。そのため、配管内の排水が跳ね上がった場合、跳ね上がった排水は水浸入抑制部に妨げられ、通気弁本体の内部に浸入しにくい。よって、通気弁の性能を良好に保つことができる。
【0010】
本発明の好ましい一態様によれば、前記水浸入抑制部に孔が形成されている。なお、ここで言う「孔」には、周囲が閉じられた孔と、周囲の一部が開かれた孔との両方が含まれる。
【0011】
水は空気よりも粘性が大きいため孔に捕らわれやすいが、空気は水よりも粘性が小さいため孔を通過しやすい。上記態様によれば、水浸入抑制部は、空気を通過させやすい一方、排水の浸入を抑制しやすい。したがって、外気の円滑な導入と排水の浸入抑制とを高度に両立させることができる。
【0012】
なお、前記流出口の中心線に沿って見たときの前記水浸入抑制部の面積は、前記孔の開口面積よりも大きい方が好ましい。
【0013】
本発明によれば、前記水浸入抑制部は、前記流出口の中心線と平行な線に対して傾斜した複数のフィンを含んでいる。前記流出口の中心線に沿って見たときに、前記フィンは、前記流出口の周方向に沿って並んでおり、互いに周方向に離間している。
【0014】
本発明によれば、フィンは傾斜しているので、流出口に向かって跳ね上がった水がフィンの間を通過するためには、流れ方向を変える必要がある。ところが、水は空気よりも比重が大きいため、慣性力が大きく、流れ方向が変わりにくい。そのため、跳ね上がった排水はフィンによって妨げられやすい。一方、空気の流れ方向は容易に変わるので、通気口から導入された外部の空気は、フィンの間を通過しやすい。よって、上記態様によれば、水浸入抑制部は、空気を通過させやすい一方、排水の浸入を抑制しやすい。したがって、外気の円滑な導入と排水の浸入抑制とを高度に両立させることができる。
【0015】
他の発明の一態様によれば、前記水浸入抑制部は、弾性材料からなる環状板を有している。前記弁体が開いたときに、前記通気口から前記流出口に向かって流れる空気の圧力を受けて前記環状板が弾性変形し、前記環状板の内径が大きくなるよう構成されている。
【0016】
上記態様によれば、弁体が開いたときには水浸入抑制部の内径が大きくなるので、水浸入抑制部を通過する空気の抵抗は小さくなる。一方、弁体が閉じているときの水浸入抑制部の内径は、弁体が開いたときの水浸入抑制部の内径よりも小さい。そのため、水浸入抑制部は、排水の浸入を抑制しやすい。よって、上記態様によれば、水浸入抑制部は、空気を通過させやすい一方、排水の浸入を抑制しやすい。したがって、外気の円滑な導入と排水の浸入抑制とを高度に両立させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外気を円滑に導入することができると共に、跳ね上がった排水が内部に浸入しにくい通気弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図7】通気弁および配管の
図2のVII-VII線断面図である。
【
図12】カバーを回転させる前の通気弁および配管の断面図である。
【
図13】カバーの回転作業の一例を示す平面図である。
【
図14】(a)は他の実施形態に係る水浸入抑制部の部分断面図であり、(b)は部分斜視図である。
【
図15】他の実施形態に係る水浸入抑制部の部分断面図である。
【
図16】他の実施形態に係る水浸入抑制部の部分断面図であり、(a)は通気口が閉じている状態を表し、(b)は通気口が開いている状態を表している。
【
図17】押え板、ゴム板、および流出口カバーの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る通気弁1の斜視図である。
図2、
図3、
図4、
図5は、それぞれ通気弁1の平面図、正面図、左側面図、底面図である。
図6は
図2のVI-VI線断面図、
図7は
図2のVII-VII線断面図である。通気弁1は、排水管路の配管100(
図7参照)に取り付けられ、配管100内に負圧が生じると、外気を導入することによってその負圧状態を解消するものである。
【0020】
通気弁1は、通気弁本体5(
図1参照)と、弁体50(
図6参照)と、弁体50を付勢する付勢部材60(
図6参照)とを備えている。
【0021】
図1に示すように、通気弁本体5は、本体10と、カバー20と、流出口カバー30とを含んでいる。通気弁本体5は、本体10、カバー20、および流出口カバー30が互いに組み立てられることによって構成されている。
【0022】
図8は本体10の斜視図である。本体10は、外筒部11と、外筒部11の内側に配置された内筒部12と、外筒部11と内筒部12とを連結する複数の連結棒13とを有している。
【0023】
外筒部11の外周面には、組立溝14が形成されている。組立溝14には、カバー20の突起25(
図1参照)が嵌め込まれる。組立溝14は、突起25が挿入される挿入孔14aと、傾斜した上縁14bとを有している。上縁14bは、挿入孔14aから離れるほど下方に向かうように傾斜している。本実施形態では、外筒部11の外周面に、3つの組立溝14が形成されている。
【0024】
内筒部12には、後述する弁体50の軸部52が挿入される軸孔15が形成されている。内筒部12は、外筒部11と同心円状に配置されている。
【0025】
連結棒13は、内筒部12から外筒部11に延びている。ここでは連結棒13の個数は4つであるが、特に限定されない。本実施形態では、連結棒13は放射状に配置されている。連結棒13は、軸線CAに沿って見たときに、径方向に真っ直ぐに延びている。ただし、特に限定されない。連結棒13は、軸線CAに沿って見たときに曲がっていてもよい。例えば、連結棒13は渦巻き状に形成されていてもよい。本実施形態では、連結棒13は板状に形成されている。連結棒13の表面13aは、軸線CAと平行な線19に対して傾斜している。連結棒13の表面13aは、周方向の一方(
図8の軸線CA周りの時計回り方向。矢印Q参照)に行くほど下方に向かうように傾斜している。
【0026】
図7に示すように、外筒部11の上部11aは下部11bよりも内径が小さくなっており、上部11aと下部11bとの間には、段差が形成されている。この段差は、弁体50を受ける弁座16を構成している。弁座16の内側には、弁体50によって開閉される通気口17が形成されている。通気口17は上下方向に開口している。
【0027】
弁体50は、閉鎖部51および軸部52を有する本体53と、シール材54と、シール材54を本体53に押さえつける押さえ部品55と、を有している。
【0028】
図9は弁体50の本体53の斜視図である。
図9に示すように、本体53の閉鎖部51は、軸線CAに沿って見たときに円状に形成されている。軸部52は円柱状に形成され、閉鎖部51から上方に延びている。閉鎖部51および軸部52は一体的に形成されている。
図7に示すように、閉鎖部51は、シール材54を介して弁座16に当接する環状部51aと、環状部51aから下方に延びる筒部51bとを含んでいる。筒部51bが設けられていることにより、閉鎖部51の剛性が高められている。
【0029】
シール材54は、板状かつ環状に形成されており、閉鎖部51の環状部51a上に配置されている。シール材54の材料は特に限定されないが、例えば、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等のゴムである。押さえ部品55は、軸部52に嵌め込まれており、シール材54を上方から閉鎖部51に向かって押さえつけている。これにより、閉鎖部51にシール材54が固定されている。ただし、ここで説明した構成は一例に過ぎない。閉鎖部51にシール材54を接着等することにより、押さえ部品55を省略してもよい。閉鎖部51の環状部51aが十分なシール性能を有している場合、シール材54はなくてもよい。
【0030】
カバー20は、通気口17の上方を覆うカバーとしての役割を果たす。
図1に示すように、カバー20は、本体10の外筒部11に係合する流入側筒状部21と、天板部22とを有している。天板部22は、軸線CAに対して垂直に設けられており、通気口17の上方に配置されている。流入側筒状部21は、天板部22から軸線方向に延びている。流入側筒状部21の内側には、本体10の組立溝14に嵌め込まれる前述の突起25が設けられている。突起25が組立溝14に嵌め込まれることにより、
図7に示すように、カバー20はシール材18を挟んで本体10に組み立てられる。
図3に示すように、流入側筒状部21には流入口27が形成されている。流入口27は通気口17よりも上方に配置されている。本実施形態では、流入口27は側方に開口している。すなわち、流入口27は軸線CAと垂直な方向に開口している。ただし、流入口27の位置および向きは特に限定されない。
【0031】
図1に示すように、カバー20は、天板部22に一体的に形成された2本の引っ掛け棒23を有している。2本の引っ掛け棒23は、軸線CAを挟んで互いに反対側に配置されている。引っ掛け棒23は天板部22から上方に延びている。また、天板部22には、補強リブ24が設けられている。補強リブ24は、引っ掛け棒23および天板部22に連結されている。
【0032】
流出口カバー30は、本体10の下部に取り付けられている。
図10は流出口カバー30の斜視図である。
図11は流出口カバー30の断面図である。
図10に示すように、流出口カバー30は、流出側筒状部31と、水浸入抑制部32とを有している。流出側筒状部31の下側には、流出口37が形成されている。流出口37は上下方向に開口している。流出口37は、通気口17よりも下方に配置されている。
【0033】
水浸入抑制部32は、配管100内を流れる排水が跳ね上がった場合(
図7の矢印A1参照)に、その排水が内部に浸入することを抑制する部分である。水浸入抑制部32は径方向の内側に延びた部分であり、本実施形態では、複数のフィン33により構成されている。フィン33は、流出側筒状部31から径方向の内側に延びている。
図5に示すように、本実施形態では、水浸入抑制部32の内径R32は、軸線CAからフィン33の内端までの距離により定義される。水浸入抑制部32の内径R32は、弁体50の閉鎖部51の外径R51よりも小さい。
【0034】
図10に示すように、フィン33同士は互いに離間している。フィン33は、周方向に沿って並んでおり、互いに周方向に離間している。フィン33は、流出口37の中心線37cと平行な線37dに対して傾斜している。また、フィン33は、中心線37cと垂直な面(本実施形態では水平面)に対して傾斜している。そのため、空気が隣り合うフィン33の間を通過するときに、空気の流れ方向は中心線37cに対して斜めの方向となる(
図10および
図11の矢印A2参照)。なお、本実施形態では、流出口37の中心線37cは軸線CAと一致している。
【0035】
図5に示すように、流出口37の中心線37cに沿って見たときに、フィン33同士は周方向に離間している。ただし、限定されない。流出口37の中心線37cに沿って見たときに、フィン33同士は周方向に離間していなくてもよく、フィン33同士は部分的に重なっていてもよい。本実施形態では、流出口37の中心線37cに沿って見たときに、フィン33が離間しているので、フィン33の間にはスリット孔33gが形成されている。ここでは、スリット孔33gは、周囲が閉じた孔ではなく、周囲の一部(中心線37c側の部分)が開いた孔である。本明細書において、「孔」には、周囲が閉じた孔と、周囲の一部が開いた孔との両方が含まれる。本実施形態では、流出口37の中心線37cに沿って見たときに、水浸入抑制部32の面積は、スリット孔33gの開口面積よりも大きくなっている。すなわち、流出口37の中心線37cに沿って見たときに、フィン33の全体の面積は、スリット孔33gの全体の開口面積よりも大きい。なお、ここで言うスリット孔33gの開口面積とは、スリット孔33gの中心線37c側が閉じていると仮定した場合の開口面積のことである。
【0036】
通気弁本体5および弁体50の材料は特に限定されないが、ここでは、通気弁本体5の本体10およびカバー20の材料はABS樹脂であり、流出口カバー30の材料はPP(ポリプロピレン)樹脂である。弁体50の本体53および押さえ部品55の材料はABS樹脂である。
【0037】
付勢部材60は、通気口17を閉じる方向に弁体50を付勢する部材である。本実施形態は、弁体50が下方に移動すると通気口17が開放され、弁体50が上方に移動すると通気口17が閉鎖される。付勢部材60は、弁体50を上方に付勢するように構成されている。本実施形態では、付勢部材60は、磁力を利用して弁体50を付勢するように構成されている。
図7に示すように、付勢部材60は、弁体50の軸部52に設けられた第1磁石61と、通気弁本体5の本体10に設けられた第2磁石62と、通気弁本体5のカバー20に設けられた吸引体63とを有している。
【0038】
弁体50の軸部52の上部には、合成樹脂製(本実施形態ではABS樹脂製)の環状部材56が嵌め込まれている。第1磁石61は、この環状部材56に取り付けられている。なお、環状部材56は必ずしも必要ではなく、第1磁石61が軸部52に直接取り付けられていてもよい。第1磁石61は環状に形成されている。第1磁石61は、第1磁石61の中心線と軸線CAとが一致するように配置されている。
【0039】
第2磁石62は、本体10の内筒部12に取り付けられている。第2磁石62は第1磁石61の下方に配置されている。言い換えると、第2磁石62は、第1磁石61に対して弁体50の閉鎖部51の方に配置されている。第2磁石62も環状に形成されている。
図7に示すように、弁体50の軸部52は第2磁石62を貫通している。第2磁石62は、第2磁石62の中心線と軸線CAとが一致するように配置されている。第2磁石62は、第1磁石61に反発力を与えるように構成されている。第1磁石61および第2磁石62は、対向する面同士が同じ極性を有するように構成されている。
【0040】
吸引体63は、第1磁石61に吸引力を与える部材である。本実施形態では、吸引体63は金属により構成されているが、吸引体63は磁石であってもよい。また、吸引体63は金属以外の磁性体であってもよい。本実施形態では、吸引体63は、環状の金属板により構成されている。吸引体63は、カバー20の天板部22に取り付けられており、第1磁石61の上方に配置されている。吸引体63は、第1磁石61に対して弁体50の閉鎖部51と反対の方に配置されている。吸引体63は、吸引体63の中心線と軸線CAとが一致するように配置されている。
【0041】
以上が通気弁1の構成である。次に、通気弁1の動作について説明する。
【0042】
第1磁石61は、第2磁石62から反発力を受け、吸引体63から吸引力を受けている。そのため、第1磁石61は第2磁石62および吸引体63から上向きの力を受けている。第1磁石61は弁体50に取り付けられているので、弁体50は第1磁石61を介して上向きの力を受けている。弁体50は、付勢部材60により上向きの力を受けている。よって、配管100内に負圧が発生していない通常時には、弁体50は通気口17を閉じている。
【0043】
配管100内に負圧が発生すると、弁体50の上方と下方との間に圧力差が生じる。その圧力差により弁体50に下向きの力が作用する。この下向きの力が、付勢部材60による上向きの力よりも大きくなると、弁体50は下向きに移動する。その結果、通気口17は開放される。通気口17が開放されると、外部の空気が流入口27、通気口17、および流出口37を通過し、配管100内に導入される。このように、通気弁1が開くことにより、外部から配管100内に空気が導入される。
【0044】
配管100内に空気が導入されることにより、配管100の内部圧力は上昇する。これにより、負圧状態は解消される。弁体50の上方と下方との間の圧力差が小さくなると、弁体50に作用する下向きの力が付勢部材60による上向きの力よりも小さくなる。その結果、弁体50は上向きに移動し、通気口17は閉鎖される。
【0045】
このように、配管100に通気弁1が設けられていることにより、配管100内に負圧が発生しても、通気弁1が開くことにより、負圧状態は直ちに解消される。
【0046】
次に、通気弁1の組立方法について説明する。前述したように、通気弁1は通気弁本体5と弁体50とを備え、通気弁本体5は本体10、カバー20、および流出口カバー30を有している。まず、本体10の内筒部12の軸孔15(
図8参照)に弁体50の軸部52を下方から挿通し、軸部52の先端に環状部材56を取り付ける。次に、本体10の下部に流出口カバー30を取り付ける。また、本体10の周囲に環状のシール材18を取り付け、カバー20の突起25(
図1参照)が本体10の挿入孔14aに嵌まるように、上方からカバー20を本体10に取り付ける。これにより、通気弁1が組み立てられる。なお、本体10に対するカバー20の取り付けと、本体10に対する流出口カバー30の取り付けとは、どちらが先でも構わない。
【0047】
次に、通気弁1の設置方法の一例について説明する。
図12に示すように、配管100には、通気弁1を取り付けるための筒状の取付口101が設けられている。まず、通気弁1を取付口101に挿入する。次に、カバー20を回転させる。この際、例えば
図13に示すように、ドライバ200などの工具を引っ掛け棒23に引っ掛け、カバー20を回転させるようにしてもよい。これにより、カバー20に大きな回転力を付与することができる。カバー20が回転すると、カバー20の突起25が本体10の組立溝14の上縁14b(
図8参照)に沿って移動する。その結果、カバー20は回転すると共に下向きに移動し、シール材18が押しつぶされる(
図7参照)。このようにして、通気弁1は取付口101に気密に取り付けられる。
【0048】
通気弁1のメンテナンス時または交換時には、上記説明と逆の順序により、通気弁1を取付口101から取り外すことができ、通気弁1を分解することができる。ところで、通気弁1が長期間にわたって取付口101に取り付けられている場合、カバー20が固着してしまい、カバー20を本体10に対して回転させにくいことがある。しかし、上述のように、例えばドライバ200などの工具を引っ掛け棒23に引っ掛けることとすれば、カバー20に大きな回転力を付与することができるので、カバー20を比較的容易に回転させることができる。そのため、通気弁1のメンテナンスまたは交換を容易に行うことができる。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る通気弁1には、通気弁本体5の弁体50よりも流出口37側に、流出口37の中心線37cに沿って見たときに径方向の内側に延び、内径R32が弁体50の閉鎖部51の外径51Rよりも小さい水浸入抑制部32が設けられている。そのため、配管100内で跳ね上がった排水(
図7の矢印A1参照)は水浸入抑制部32に妨げられ、通気弁1の内部に浸入することが抑制される。これにより、排水に混じった異物などが通気弁本体5または弁体50に付着することは抑制される。また、水浸入抑制部32の内径R32は弁体50の閉鎖部51の外径51Rよりも小さいので、排水が通気弁本体5の内部に浸入してしまったとしても、通気口17の近傍には浸入しにくい。そのため、通気口17の近傍に異物が付着することが抑制され、弁体50の作動不良は生じにくい。通気弁1が長期間にわたって使用されたとしても、通気口17の気密性の低下を抑えることができる。
【0050】
なお、水浸入抑制部32の内径R32は特に限定されないが、通気口17の内径よりも小さい場合、排水が通気口17の近傍に浸入することを更に抑制することができる。
【0051】
逆に、水浸入抑制部32の内径R32を通気口17の内径以上に設定することとすれば、流出口37の空気抵抗を低減することができるので、通気口17が開かれたときに外気をより円滑に導入することができる。
【0052】
図5に示すように、本実施形態によれば、流出口37の中心線37cに沿って見たときに、水浸入抑制部32にスリット孔33gが形成されている。水は空気よりも粘性が大きいためスリット孔33gに捕らわれやすいが、空気は水よりも粘性が小さいためスリット孔33gを通過しやすい。本実施形態によれば、水浸入抑制部32は、空気を通過させやすい一方、排水の浸入を抑制しやすい。したがって、通気口17が開かれたときの外気の円滑な導入と、排水の浸入抑制とを高度に両立させることができる。
【0053】
本実施形態によれば、水浸入抑制部32は、流出口37の中心線37cと平行な線37dに対して傾斜した複数のフィン33を含んでいる。フィンは傾斜しているので、跳ね上がった排水がフィン33の間を通過するためには、流れ方向を変える必要がある。ところが、水は空気よりも比重が大きいため、慣性力が大きく、流れ方向が変わりにくい。そのため、跳ね上がった排水はフィン33によって妨げられやすい。一方、空気の流れ方向は容易に変わるので、通気口17から導入された外部の空気は、フィン33の間を通過しやすい。よって、本実施形態に係る水浸入抑制部32は、空気を通過させやすい一方、排水の浸入を抑制しやすい。したがって、外気の円滑な導入と排水の浸入抑制とを高度に両立させることができる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、前記実施形態は一例に過ぎず、他にも様々な実施形態が可能である。次に、水浸入抑制部32の構成が異なる他の実施形態について簡単に説明する。
【0055】
図14(a)および(b)に示すように、他の実施形態に係る水浸入抑制部32は、流出側筒状部31から内側に延びる環状部34aにより構成されている。環状部34aには、周方向に並んだ複数の孔34bが形成されている。この実施形態の孔34bは、周囲が閉じた孔である。孔34bの形状は特に限定されない。孔34bの形状は、例えば、円、楕円、四角形などであってもよい。本実施形態においても、水浸入抑制部32の内径は、弁体50の閉鎖部51の外径R51よりも小さい。流出口37の中心線37cに沿って見たときの水浸入抑制部32の面積は、孔34bの開口面積(全ての孔34bの合計の開口面積)よりも大きい。その他の構成は前記実施形態と同様である。本実施形態においても、外気の円滑な導入と排水の浸入抑制とを高度に両立させることができる。
【0056】
図15に示すように、水浸入抑制部32は、流出側筒状部31から内側に延びる複数の突出片35aにより構成されていてもよい。突出片35aは周方向に並んでいる。隣り合う突出片35aの間には、スリット孔35bが形成されている。本実施形態においても、水浸入抑制部32の内径(流出口37の中心線37cと突出片35aの内端との距離)は、弁体50の閉鎖部51の外径R51よりも小さい。流出口37の中心線37cに沿って見たときの水浸入抑制部32の面積は、スリット孔35bの開口面積(全てのスリット孔35bの合計の開口面積)よりも大きい。その他の構成は前記実施形態と同様である。本実施形態においても、外気の円滑な導入と排水の浸入抑制とを高度に両立させることができる。
【0057】
図16(a)および(b)に示すように、水浸入抑制部32は、通気口17から流出口37に向かって流れる空気の圧力を受けて弾性変形する弾性材料により構成されていてもよい。水浸入抑制部32は、例えば、環状のゴム板36により構成されていてもよい。この実施形態では、ゴム板36は、流出口カバー30と押え板38との間に挟まれることにより支持される。
図17は、押え板38、ゴム板36、および流出口カバー30の分解斜視図である。押え板38は、環状部38aと、環状部38aから径方向の内側に延びる複数のリブ38bとを備えている。これらのリブ38bにより、ゴム板36の上方への変形が防止される。
【0058】
図16(a)に示すように、弁体50が通気口17を閉じているときには、通気口17から流出口37に向かう空気の流れはないので、ゴム板36は変形しない。一方、
図16(b)に示すように、弁体50が通気口17を開くと、通気口17から流出口37に向かって空気が流れ、ゴム板36はこの空気の圧力を受けて下方に弾性変形する。ゴム板36の変形後のゴム板36の内径R32´は変形前の内径R32よりも大きくなる。ここでは、変形前の内径R32は通気口17の内径R17よりも小さいが、変形後の内径R32´は通気口17の内径R17よりも大きくなる。したがって、弁体50が通気口17を開いているときには、外気を円滑に導入することができ、弁体50が通気口17を閉じているときには、跳ね上がった排水の浸入を十分に抑制することができる。本実施形態によれば、外気の円滑な導入と排水の浸入抑制とを更に高度に両立させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 通気弁
5 通気弁本体
17 通気口
32 水浸入抑制部
33 フィン
33g スリット孔
34b 孔
35b スリット孔
36 ゴム板(環状板)
37 流出口
50 弁体
51 閉鎖部
52 軸部
60 付勢部材