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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】通気弁
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20230118BHJP
   F16K 24/06 20060101ALN20230118BHJP
【FI】
E03C1/122 A
F16K24/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019074305
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020172963
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】水野 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096377(JP,A)
【文献】特開2010-024618(JP,A)
【文献】特開平08-093021(JP,A)
【文献】実開昭57-083907(JP,U)
【文献】特開2002-355628(JP,A)
【文献】特開2015-140816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/122
F16K 21/00-24/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口と、流出口と、前記流入口から前記流出口に至る空気通路の途中に設けられた通気口と、が形成された通気弁本体と、
前記通気口を開閉自在に覆うように前記通気弁本体に移動可能に支持された弁体と、
前記通気口を閉じる方向に前記弁体を付勢する付勢部材と、
前記通気弁本体または前記弁体に設けられ、前記通気弁本体の内部を流れる空気を前記弁体の中心線周りに旋回させるように整流する整流機構と、を備え、
前記弁体は、前記通気口を開閉自在に覆う閉鎖部と、前記閉鎖部から延びる軸部と、を有し、
前記軸部の軸線は、前記弁体の中心線に沿って延びており、
前記通気弁本体は、外筒部と、前記外筒部の内側に配置され、前記弁体の前記軸部が挿通される軸孔が形成された内筒部と、前記内筒部と前記外筒部とを連結するように前記内筒部から前記外筒部に延び、互いに周方向に離間して配置された複数の連結棒と、を有し、
前記連結棒の表面は、前記軸部の軸線と平行な線に対して傾斜しており、
前記整流機構の少なくとも一部は、前記連結棒により構成されている、通気弁
【請求項2】
流入口と、流出口と、前記流入口から前記流出口に至る空気通路の途中に設けられた通気口と、が形成された通気弁本体と、
前記通気口を開閉自在に覆うように前記通気弁本体に移動可能に支持された弁体と、
前記通気口を閉じる方向に前記弁体を付勢する付勢部材と、
前記通気弁本体または前記弁体に設けられ、前記通気弁本体の内部を流れる空気を前記弁体の中心線周りに旋回させるように整流する整流機構と、
前記弁体に設けられ、前記弁体の中心線から径方向の外側に延び、互いに周方向に離間して配置された複数のリブと、を備え
前記リブの表面は、前記弁体の中心線と平行な線に対して傾斜しており、
前記整流機構の少なくとも一部は、前記リブにより構成されている、通気弁
【請求項3】
流入口と、流出口と、前記流入口から前記流出口に至る空気通路の途中に設けられた通気口と、が形成された通気弁本体と、
前記通気口を開閉自在に覆うように前記通気弁本体に移動可能に支持された弁体と、
前記通気口を閉じる方向に前記弁体を付勢する付勢部材と、
前記通気弁本体または前記弁体に設けられ、前記通気弁本体の内部を流れる空気を前記弁体の中心線周りに旋回させるように整流する整流機構と、を備え、
前記通気弁本体は、前記弁体の中心線に対して垂直に配置された天板部と、前記天板部から前記弁体の中心線の方向に延びる流入側筒状部と、を有し、
前記流入口は、前記流入側筒状部に形成され、
前記天板部の前記弁体側の面に、径方向の外側に延び、互いに周方向に離間して配置された複数の整流板が形成され、
前記整流機構の少なくとも一部は、前記整流板により構成されている、通気弁
【請求項4】
前記弁体は、前記通気口を開閉自在に覆う閉鎖部と、前記閉鎖部から延びる軸部と、を有し、
前記軸部の軸線は、前記弁体の中心線に沿って延びている、請求項2または3に記載の通気弁。
【請求項5】
前記通気口および前記流出口は、前記弁体の中心線に沿った方向に開口している、請求項1~3のいずれか一つに記載の通気弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
排水管路に負圧が生じると、排水管路に接続された排水機器の封水が破られるおそれがある。そこで従来から、内部が負圧になると開く通気弁を排水管路に設けることが推奨されている。排水管路に通気弁を設けることにより、負圧発生時に通気弁から外気を導入することができ、負圧状態を解消することができる。これにより、排水機器の封水を保護することができる。
【0003】
例えば、特許文献1にそのような通気弁が開示されている。特許文献1に開示された通気弁は、上下に開口する通気口と、通気口を開閉するように上下に移動可能な弁体と、弁体を閉じる方向(上方向)に付勢する付勢手段と、通気口よりも上方に設けられた流入口と、通気口よりも下方に設けられた流出口とを備えている。配管内に負圧が生じると、弁体が負圧により下方に引っ張られ、通気口が開かれる。空気は流入口、通気口、流出口を順に通過し、配管内に導入される。これにより、配管の負圧状態が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-74483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通気口が開いたときに、通気弁の内部には流入口から流出口に向かう空気の流れが生じる。この際、空気の流れが乱れると、弁体に不安定な力が作用する。その結果、弁体の開閉動作が円滑に行われない場合がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、内部の気流の乱れによる弁体の作動不良が生じにくい通気弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る通気弁は、流入口と、流出口と、前記流入口から前記流出口に至る空気通路の途中に設けられた通気口と、が形成された通気弁本体と、前記通気口を開閉自在に覆うように前記通気弁本体に移動可能に支持された弁体と、前記通気口を閉じる方向に前記弁体を付勢する付勢部材と、前記通気弁本体または前記弁体に設けられ、前記通気弁本体の内部を流れる空気を前記弁体の中心線周りに旋回させるように整流する整流機構と、を備えている。
【0008】
上記通気弁によれば、負圧が生じると弁体が引っ張られ、弁体が移動することによよって通気口が開かれる。空気は流入口、通気口、流出口を順に流れる。この際、空気は整流機構により、弁体の中心線周りに旋回するように整流される。そのため、弁体に作用する力が安定し、弁体は円滑に移動しやすくなる。したがって、弁体の開閉動作は円滑に行われ、弁体の作動不良は生じにくい。
【0009】
本発明の好ましい一態様によれば、前記弁体は、前記通気口を開閉自在に覆う閉鎖部と、前記閉鎖部から延びる軸部と、を有している、前記軸部の軸線は、前記弁体の中心線に沿って延びている。
【0010】
上記態様によれば、空気は整流機構により、弁体の軸部の軸線周りに旋回するように整流される。そのため、弁体に作用する力が安定し、弁体は軸線方向に沿って円滑に移動しやすくなる。したがって、弁体の開閉動作は円滑に行われ、弁体の作動不良は生じにくい。
【0011】
前記通気口および前記流出口は、前記弁体の中心線に沿った方向に開口していることが好ましい。
【0012】
本発明の好ましい一態様によれば、前記通気弁本体は、外筒部と、前記外筒部の内側に配置され、前記弁体の前記軸部が挿通される軸孔が形成された内筒部と、前記内筒部と前記外筒部とを連結するように前記内筒部から前記外筒部に延び、互いに周方向に離間して配置された複数の連結棒と、を有している。前記連結棒の表面は、前記軸部の軸線と平行な線に対して傾斜している。前記整流機構の少なくとも一部は、前記連結棒により構成されている。
【0013】
上記態様によれば、上記連結棒により、空気は弁体の軸部の軸線周りに旋回するように整流される。これにより、弁体の開閉動作が円滑に行われる。
【0014】
本発明の好ましい一態様によれば、前記通気弁は、前記弁体に設けられ、前記弁体の中心線から径方向の外側に延び、互いに周方向に離間して配置された複数のリブを有している。前記リブの表面は、前記弁体の中心線と平行な線に対して傾斜している。前記整流機構の少なくとも一部は、前記リブにより構成されている。
【0015】
上記態様によれば、弁体に設けられたリブにより、空気は弁体の中心線周りに旋回するように整流される。これにより、弁体の開閉動作が円滑に行われる。
【0016】
本発明の好ましい一態様によれば、前記通気弁本体は、前記弁体の中心線に対して垂直に配置された天板部と、前記天板部から前記弁体の中心線の方向に延びる流入側筒状部と、を有している。前記流入口は、前記流入側筒状部に形成されている。前記天板部の前記弁体側の面に、径方向の外側に延び、互いに周方向に離間して配置された複数の整流板が形成されている。前記整流機構の少なくとも一部は、前記整流板により構成されている。
【0017】
上記態様によれば、通気弁本体の天板部に設けられた整流板により、空気は弁体の中心線周りに旋回するように整流される。これにより、弁体の開閉動作が円滑に行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内部の気流の乱れによる弁体の作動不良が生じにくい通気弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る通気弁の斜視図である。
図2】通気弁の平面図である。
図3】通気弁の正面図である。
図4】通気弁の左側面図である。
図5】通気弁の底面図である。
図6】通気弁の図2のVI-VI線断面図である。
図7】通気弁および配管の図2のVII-VII線断面図である。
図8】通気弁本体の本体の斜視図である。
図9】弁体の本体の斜視図である。
図10】流出口カバーの斜視図である。
図11】流出口カバーの断面図である。
図12】カバーを回転させる前の通気弁および配管の断面図である。
図13】カバーの回転作業の一例を示す平面図である。
図14】通気弁本体の本体の平面図である。
図15図14のXV-XV線断面図である。
図16】他の実施形態に係る通気弁の弁体の斜視図である。
図17】他の実施形態に係る通気弁の天板部の裏面図である。
図18】他の実施形態に係る通気弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係る通気弁1の斜視図である。図2図3図4図5は、それぞれ通気弁1の平面図、正面図、左側面図、底面図である。図6図2のVI-VI線断面図、図7図2のVII-VII線断面図である。通気弁1は、排水管路の配管100(図7参照)に取り付けられ、配管100内に負圧が生じると、外気を導入することによってその負圧状態を解消するものである。
【0021】
通気弁1は、通気弁本体5(図1参照)と、弁体50(図6参照)と、弁体50を付勢する付勢部材60(図6参照)とを備えている。
【0022】
図1に示すように、通気弁本体5は、本体10と、カバー20と、流出口カバー30とを含んでいる。通気弁本体5は、本体10、カバー20、および流出口カバー30が互いに組み立てられることによって構成されている。
【0023】
図8は本体10の斜視図である。本体10は、外筒部11と、外筒部11の内側に配置された内筒部12と、外筒部11と内筒部12とを連結する複数の連結棒13とを有している。
【0024】
外筒部11の外周面には、組立溝14が形成されている。組立溝14には、カバー20の突起25(図1参照)が嵌め込まれる。組立溝14は、突起25が挿入される挿入孔14aと、傾斜した上縁14bとを有している。上縁14bは、挿入孔14aから離れるほど下方に向かうように傾斜している。本実施形態では、外筒部11の外周面に、3つの組立溝14が形成されている。
【0025】
内筒部12には、後述する弁体50の軸部52が挿入される軸孔15が形成されている。内筒部12は、外筒部11と同心円状に配置されている。
【0026】
連結棒13は、内筒部12から外筒部11に延びている。ここでは連結棒13の個数は4つであるが、特に限定されない。本実施形態では、連結棒13は放射状に配置されている。連結棒13は、軸線CAに沿って見たときに、径方向に真っ直ぐに延びている。ただし、特に限定されない。連結棒13は、軸線CAに沿って見たときに曲がっていてもよい。例えば、連結棒13は渦巻き状に形成されていてもよい。本実施形態では、連結棒13は板状に形成されている。連結棒13の表面13aは、軸線CAと平行な線19に対して傾斜している。連結棒13の表面13aは、周方向の一方(図8の軸線CA周りの時計回り方向。矢印Q参照)に行くほど下方に向かうように傾斜している。
【0027】
図7に示すように、外筒部11の上部11aは下部11bよりも内径が小さくなっており、上部11aと下部11bとの間には、段差が形成されている。この段差は、弁体50を受ける弁座16を構成している。弁座16の内側には、弁体50によって開閉される通気口17が形成されている。通気口17は上下方向に開口している。
【0028】
弁体50は、閉鎖部51および軸部52を有する本体53と、シール材54と、シール材54を本体53に押さえつける押さえ部品55と、を有している。
【0029】
図9は弁体50の本体53の斜視図である。図9に示すように、本体53の閉鎖部51は、軸線CAに沿って見たときに円状に形成されている。軸部52は円柱状に形成され、閉鎖部51から上方に延びている。閉鎖部51および軸部52は一体的に形成されている。図7に示すように、閉鎖部51は、シール材54を介して弁座16に当接する環状部51aと、環状部51aから下方に延びる筒部51bとを含んでいる。筒部51bが設けられていることにより、閉鎖部51の剛性が高められている。
【0030】
シール材54は、板状かつ環状に形成されており、閉鎖部51の環状部51a上に配置されている。シール材54の材料は特に限定されないが、例えば、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等のゴムである。押さえ部品55は、軸部52に嵌め込まれており、シール材54を上方から閉鎖部51に向かって押さえつけている。これにより、閉鎖部51にシール材54が固定されている。ただし、ここで説明した構成は一例に過ぎない。閉鎖部51にシール材54を接着等することにより、押さえ部品55を省略してもよい。閉鎖部51の環状部51aが十分なシール性能を有している場合、シール材54はなくてもよい。
【0031】
カバー20は、通気口17の上方を覆うカバーとしての役割を果たす。図1に示すように、カバー20は、本体10の外筒部11に係合する流入側筒状部21と、天板部22とを有している。天板部22は、軸線CAに対して垂直に設けられており、通気口17の上方に配置されている。流入側筒状部21は、天板部22から軸線方向に延びている。流入側筒状部21の内側には、本体10の組立溝14に嵌め込まれる前述の突起25が設けられている。突起25が組立溝14に嵌め込まれることにより、図7に示すように、カバー20はシール材18を挟んで本体10に組み立てられる。図3に示すように、流入側筒状部21には流入口27が形成されている。流入口27は通気口17よりも上方に配置されている。本実施形態では、流入口27は側方に開口している。すなわち、流入口27は軸線CAと垂直な方向に開口している。ただし、流入口27の位置および向きは特に限定されない。
【0032】
図1に示すように、カバー20は、天板部22に一体的に形成された2本の引っ掛け棒23を有している。2本の引っ掛け棒23は、軸線CAを挟んで互いに反対側に配置されている。引っ掛け棒23は天板部22から上方に延びている。また、天板部22には、補強リブ24が設けられている。補強リブ24は、引っ掛け棒23および天板部22に連結されている。
【0033】
流出口カバー30は、本体10の下部に取り付けられている。図10は流出口カバー30の斜視図である。図11は流出口カバー30の断面図である。図10に示すように、流出口カバー30は、流出側筒状部31と、水浸入抑制部32とを有している。流出側筒状部31の下側には、流出口37が形成されている。流出口37は上下方向に開口している。流出口37は、通気口17よりも下方に配置されている。
【0034】
水浸入抑制部32は、配管100内を流れる排水が跳ね上がった場合(図7の矢印A1参照)に、その排水が内部に浸入することを抑制する部分である。水浸入抑制部32は径方向の内側に延びた部分であり、本実施形態では、複数のフィン33により構成されている。フィン33は、流出側筒状部31から径方向の内側に延びている。図5に示すように、本実施形態では、水浸入抑制部32の内径R32は、軸線CAからフィン33の内端までの距離により定義される。水浸入抑制部32の内径R32は、弁体50の閉鎖部51の外径R51よりも小さい。
【0035】
図10に示すように、フィン33同士は互いに離間している。フィン33は、周方向に沿って並んでおり、互いに周方向に離間している。フィン33は、流出口37の中心線37cと平行な線37dに対して傾斜している。また、フィン33は、中心線37cと垂直な面(本実施形態では水平面)に対して傾斜している。そのため、空気が隣り合うフィン33の間を通過するときに、空気の流れ方向は中心線37cに対して斜めの方向となる(図10および図11の矢印A2参照)。なお、本実施形態では、流出口37の中心線37cは軸線CAと一致している。
【0036】
図5に示すように、流出口37の中心線37cに沿って見たときに、フィン33同士は周方向に離間している。ただし、限定されない。流出口37の中心線37cに沿って見たときに、フィン33同士は周方向に離間していなくてもよく、フィン33同士は部分的に重なっていてもよい。本実施形態では、流出口37の中心線37cに沿って見たときに、フィン33が離間しているので、フィン33の間にはスリット孔33gが形成されている。ここでは、スリット孔33gは、周囲が閉じた孔ではなく、周囲の一部(中心線37c側の部分)が開いた孔である。本明細書において、「孔」には、周囲が閉じた孔と、周囲の一部が開いた孔との両方が含まれる。本実施形態では、流出口37の中心線37cに沿って見たときに、水浸入抑制部32の面積は、スリット孔33gの開口面積よりも大きくなっている。すなわち、流出口37の中心線37cに沿って見たときに、フィン33の全体の面積は、スリット孔33gの全体の開口面積よりも大きい。なお、ここで言うスリット孔33gの開口面積とは、スリット孔33gの中心線37c側が閉じていると仮定した場合の開口面積のことである。
【0037】
通気弁本体5および弁体50の材料は特に限定されないが、ここでは、通気弁本体5の本体10およびカバー20の材料はABS樹脂であり、流出口カバー30の材料はPP(ポリプロピレン)樹脂である。弁体50の本体53および押さえ部品55の材料はABS樹脂である。
【0038】
付勢部材60は、通気口17を閉じる方向に弁体50を付勢する部材である。本実施形態は、弁体50が下方に移動すると通気口17が開放され、弁体50が上方に移動すると通気口17が閉鎖される。付勢部材60は、弁体50を上方に付勢するように構成されている。本実施形態では、付勢部材60は、磁力を利用して弁体50を付勢するように構成されている。図7に示すように、付勢部材60は、弁体50の軸部52に設けられた第1磁石61と、通気弁本体5の本体10に設けられた第2磁石62と、通気弁本体5のカバー20に設けられた吸引体63とを有している。
【0039】
弁体50の軸部52の上部には、合成樹脂製(本実施形態ではABS樹脂製)の環状部材56が嵌め込まれている。第1磁石61は、この環状部材56に取り付けられている。なお、環状部材56は必ずしも必要ではなく、第1磁石61が軸部52に直接取り付けられていてもよい。第1磁石61は環状に形成されている。第1磁石61は、第1磁石61の中心線と軸線CAとが一致するように配置されている。
【0040】
第2磁石62は、本体10の内筒部12に取り付けられている。第2磁石62は第1磁石61の下方に配置されている。言い換えると、第2磁石62は、第1磁石61に対して弁体50の閉鎖部51の方に配置されている。第2磁石62も環状に形成されている。図7に示すように、弁体50の軸部52は第2磁石62を貫通している。第2磁石62は、第2磁石62の中心線と軸線CAとが一致するように配置されている。第2磁石62は、第1磁石61に反発力を与えるように構成されている。第1磁石61および第2磁石62は、対向する面同士が同じ極性を有するように構成されている。
【0041】
吸引体63は、第1磁石61に吸引力を与える部材である。本実施形態では、吸引体63は金属により構成されているが、吸引体63は磁石であってもよい。また、吸引体63は金属以外の磁性体であってもよい。本実施形態では、吸引体63は、環状の金属板により構成されている。吸引体63は、カバー20の天板部22に取り付けられており、第1磁石61の上方に配置されている。吸引体63は、第1磁石61に対して弁体50の閉鎖部51と反対の方に配置されている。吸引体63は、吸引体63の中心線と軸線CAとが一致するように配置されている。
【0042】
以上が通気弁1の構成である。次に、通気弁1の動作について説明する。
【0043】
第1磁石61は、第2磁石62から反発力を受け、吸引体63から吸引力を受けている。そのため、第1磁石61は第2磁石62および吸引体63から上向きの力を受けている。第1磁石61は弁体50に取り付けられているので、弁体50は第1磁石61を介して上向きの力を受けている。弁体50は、付勢部材60により上向きの力を受けている。よって、配管100内に負圧が発生していない通常時には、弁体50は通気口17を閉じている。
【0044】
配管100内に負圧が発生すると、弁体50の上方と下方との間に圧力差が生じる。その圧力差により弁体50に下向きの力が作用する。この下向きの力が、付勢部材60による上向きの力よりも大きくなると、弁体50は下向きに移動する。その結果、通気口17は開放される。通気口17が開放されると、外部の空気が流入口27、通気口17、および流出口37を通過し、配管100内に導入される。このように、通気弁1が開くことにより、外部から配管100内に空気が導入される。
【0045】
配管100内に空気が導入されることにより、配管100の内部圧力は上昇する。これにより、負圧状態は解消される。弁体50の上方と下方との間の圧力差が小さくなると、弁体50に作用する下向きの力が付勢部材60による上向きの力よりも小さくなる。その結果、弁体50は上向きに移動し、通気口17は閉鎖される。
【0046】
このように、配管100に通気弁1が設けられていることにより、配管100内に負圧が発生しても、通気弁1が開くことにより、負圧状態は直ちに解消される。
【0047】
次に、通気弁1の組立方法について説明する。前述したように、通気弁1は通気弁本体5と弁体50とを備え、通気弁本体5は本体10、カバー20、および流出口カバー30を有している。まず、本体10の内筒部12の軸孔15(図8参照)に弁体50の軸部52を下方から挿通し、軸部52の先端に環状部材56を取り付ける。次に、本体10の下部に流出口カバー30を取り付ける。また、本体10の周囲に環状のシール材18を取り付け、カバー20の突起25(図1参照)が本体10の挿入孔14aに嵌まるように、上方からカバー20を本体10に取り付ける。これにより、通気弁1が組み立てられる。なお、本体10に対するカバー20の取り付けと、本体10に対する流出口カバー30の取り付けとは、どちらが先でも構わない。
【0048】
次に、通気弁1の設置方法の一例について説明する。図12に示すように、配管100には、通気弁1を取り付けるための筒状の取付口101が設けられている。まず、通気弁1を取付口101に挿入する。次に、カバー20を回転させる。この際、例えば図13に示すように、ドライバ200などの工具を引っ掛け棒23に引っ掛け、カバー20を回転させるようにしてもよい。これにより、カバー20に大きな回転力を付与することができる。カバー20が回転すると、カバー20の突起25が本体10の組立溝14の上縁14b(図8参照)に沿って移動する。その結果、カバー20は回転すると共に下向きに移動し、シール材18が押しつぶされる(図7参照)。このようにして、通気弁1は取付口101に気密に取り付けられる。
【0049】
通気弁1のメンテナンス時または交換時には、上記説明と逆の順序により、通気弁1を取付口101から取り外すことができ、通気弁1を分解することができる。ところで、通気弁1が長期間にわたって取付口101に取り付けられている場合、カバー20が固着してしまい、カバー20を本体10に対して回転させにくいことがある。しかし、上述のように、例えばドライバ200などの工具を引っ掛け棒23に引っ掛けることとすれば、カバー20に大きな回転力を付与することができるので、カバー20を比較的容易に回転させることができる。そのため、通気弁1のメンテナンスまたは交換を容易に行うことができる。
【0050】
図8を参照しながら前述したように、本実施形態に係る通気弁1によれば、通気弁本体5の連結棒13の表面13aは、軸線CAと平行な線19に対して傾斜している。連結棒13の表面13aは、周方向の一方(図8の軸線CA周りの時計回り方向。矢印Q参照)に行くほど下方に向かうように傾斜している。図14は、通気弁本体5の本体10の平面図である。図15は、図14のXV-XV線断面図である。前述のように、弁体50が下方に移動して通気口17が開かれると、流入口27から導入された空気は、通気口17を通過し、流出口37から流出する。通気弁本体5の内部には、流入口27、通気口17、流出口37の順に空気が流れる。
【0051】
ここで、連結棒13の表面13aが傾斜していることにより、図15に示すように、流入口27から流入した空気は、連結棒13によって流れ方向がある程度変えられる。これにより、空気は軸線CA周りに旋回するように整流される(図14および図15の矢印A3参照)。本実施形態では、これら連結棒13により整流機構が構成されている。
【0052】
したがって、本実施形態に係る通気弁1によれば、通気弁本体5の内部を流れる空気は、弁体50の軸部52の軸線CA周りに旋回するように整流されるため、通気弁本体5内における気流の乱れは抑制される。弁体50が気流から受ける力は、バランス良く安定する。よって、弁体50は振れにくくなり、軸線方向に沿って円滑に移動しやすくなる。弁体50の開閉動作は円滑に行われる。本実施形態によれば、気流の乱れによる弁体50の作動不良が生じにくい通気弁1を実現することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、通気口17および流出口37は上下方向に開口している。すなわち、通気口17および流出口37は軸線方向に開口している。そのため、通気弁本体5の内部における気流の乱れは、より小さく抑えられる。したがって、弁体50の開閉動作は、より一層円滑に行われる。
【0054】
本実施形態によれば、整流機構は、外筒部11と内筒部12とを連結する連結棒13によって構成されている。連結棒13は、外筒部11と内筒部12とを連結する役割を果たすと共に、空気を整流する役割を果たす。本実施形態によれば、整流のための新たな部材は追加せずに、連結棒13を整流機構として兼用することとした。したがって、部品点数の増加を防ぐことができる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、前記実施形態は一例に過ぎず、他にも様々な実施形態が可能である。次に、整流機構の構成が異なる他の実施形態について簡単に説明する。
【0056】
前記実施形態において、本体10の外筒部11(図8参照)の内周面に複数のフィンを設け、これらのフィンにより整流機構を構成してもよい。
【0057】
図16に示すように、弁体50の閉鎖部51に複数のリブ57を設け、これらのリブ57により整流機構を構成してもよい。リブ57は、軸部52から径方向の外側に延びており、互いに周方向に離間して配置されている。リブ57の表面57aは、軸線CAと平行な線57cに対して傾斜している。本実施形態では、押さえ部品55は省略されている。ただし、押さえ部品55を設け、押さえ部品55に上記リブ57を設けるようにしてもよい。その他の構成は前記実施形態と同様である。本実施形態においても、整流機構は、通気弁本体5の内部を流れる空気を軸部52の軸線CA周りに旋回させるように整流することができる。また、通気弁本体5の内部を流れる空気がリブ57を押す力により、弁体50に回転力が生じる。そのため、弁体50は回転しながら開閉移動する。これにより、弁体50の直進安定性が向上し、弁体50の回動動作はより円滑に行われる。
【0058】
図17および図18に示すように、カバー20の天板部22の裏側(弁体50側の面)に複数の整流板28を設け、これらの整流板28により整流機構を構成してもよい。整流板28は、径方向の外側に延び、互いに周方向に離間して配置されている。図17に示すように、整流板28は螺旋状に形成されている。整流板28の下端は、流入口27の上端よりも下方に位置している。整流板28と流入口27とは、上下方向について部分的に重なる位置に配置されている。その他の構成は前記実施形態と同様である。本実施形態においても、整流機構は、通気弁本体5の内部を流れる空気を軸部52の軸線CA周りに旋回させるように整流することができる。
【0059】
なお、前述した整流機構は適宜組み合わせて用いることができる。整流機構を構成する前述の連結棒13(図14参照)、弁体50の閉鎖部51に設けられるリブ57a(図16参照)、および、天板部22の裏側に設けられる整流板28は、単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
また、前述の整流機構の構成は例示に過ぎず、通気弁本体5の内部を流れる空気を軸線CA周りに旋回させるように整流する整流機構として、他にも様々な構成を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 通気弁
5 通気弁本体
11 外筒部
12 内筒部
13 連結棒
17 通気口
21 流入側筒部
22 天板部
27 流入口
28 整流板
37 流出口
50 弁体
51 閉鎖部
52 軸部
57 リブ
60 付勢部材
CA 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
図12
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図14
図15
図16
図17
図18