IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボッシュ株式会社の特許一覧

特許7212575リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法
<>
  • 特許-リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法 図1
  • 特許-リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法 図2
  • 特許-リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法 図3
  • 特許-リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法 図4
  • 特許-リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法 図5
  • 特許-リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法 図6
  • 特許-リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法 図7
  • 特許-リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法 図8
  • 特許-リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法 図9
  • 特許-リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法 図10
  • 特許-リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】リニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20230118BHJP
   F16H 59/50 20060101ALI20230118BHJP
   F16H 59/68 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
F16H61/12
F16H59/50
F16H59/68
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019075469
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020172983
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 晃
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-283325(JP,A)
【文献】特開2014-105805(JP,A)
【文献】特開平11-082724(JP,A)
【文献】特開平01-199079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12,61/16-61/24,
61/66-61/70,63/40-63/50
F16K 31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機(5)に供給される作動油圧を通電電流の大きさに応じて制御するリニアソレノイドバルブの制御装置(41)において、
前記リニアソレノイドバルブ(31、32)の有するインダクタンス関連情報(In)を取得する取得部(42)と、
前記取得部(42)で取得された前記インダクタンス関連情報(In)に異常があるか否かを判断する判断部(44)と、
前記判断部(44)で前記インダクタンス関連情報(In)に異常があると判断された場合に、前記通電電流のディザ変更仕様を決定する計算部(45)と、
前記計算部(45)から取得した前記ディザ変更仕様に基づいてディザ変更制御を実行する実行部(46)と、
を備え
前記計算部(45)が、前記インダクタンス関連情報の履歴(In-his)に基づいて、前記ディザ変更仕様を決定する、リニアソレノイドバルブの制御装置(41)。
【請求項2】
自動変速機(5)に供給される作動油圧を通電電流の大きさに応じて制御するリニアソレノイドバルブの制御装置(41)において、
前記リニアソレノイドバルブ(31、32)の有するインダクタンス関連情報(In)を取得する取得部(42)と、
前記取得部(42)で取得された前記インダクタンス関連情報(In)に異常があるか否かを判断する判断部(44)と、
前記判断部(44)で前記インダクタンス関連情報(In)に異常があると判断された場合に、前記通電電流のディザ変更仕様を決定する計算部(45)と、
前記計算部(45)から取得した前記ディザ変更仕様に基づいてディザ変更制御を実行する実行部(46)と、
を備え、
前記計算部(45)が、前記ディザ変更制御において取得された情報の履歴(Di-his)に基づいて、前記ディザ変更仕様を決定する、リニアソレノイドバルブの制御装置(41)。
【請求項3】
自動変速機(5)に供給される作動油圧を通電電流の大きさに応じて制御するリニアソレノイドバルブの制御装置(41)において、
前記リニアソレノイドバルブ(31、32)の有するインダクタンス関連情報(In)を取得する取得部(42)と、
前記取得部(42)で取得された前記インダクタンス関連情報(In)に異常があるか否かを判断する判断部(44)と、
前記判断部(44)で前記インダクタンス関連情報(In)に異常があると判断された場合に、前記通電電流のディザ変更仕様を決定する計算部(45)と、
前記計算部(45)から取得した前記ディザ変更仕様に基づいてディザ変更制御を実行する実行部(46)と、
を備え、
前記ディザ変更仕様は、ディザ周波数の変更速度(fdv)またはディザ振幅の変更速度(adv)を含む、リニアソレノイドバルブの制御装置(41)。
【請求項4】
前記ディザ変更制御が、前記通電電流のディザ周波数が時間とともに低くなるようにする制御、または、前記通電電流のディザ振幅が時間とともに大きくなるようにする制御である
請求項1から3のいずれか一項に記載のリニアソレノイドバルブの制御装置(41)。
【請求項5】
前記インダクタンス関連情報とは、前記リニアソレノイドバルブ(31、32)の有するインダクタンス、または、前記リニアソレノイドバルブに電圧が印加された際の電流の立ち上がり特性である
請求項1から4のいずれか一項に記載のリニアソレノイドバルブの制御装置(41)。
【請求項6】
自動変速機(5)に供給される作動油圧を通電電流の大きさに応じて制御するリニアソレノイドバルブ(31、32)の制御方法において、
取得部(42)が、前記リニアソレノイドバルブ(31、32)の有するインダクタンス関連情報(In)を取得するステップ(S10)と、
判断部(44)が、前記インダクタンス関連情報(In)に異常があるか否かを判断するステップ(S30)と、
計算部(45)が、前記インダクタンス関連情報(In)に異常があると判断された場合に、前記通電電流のディザ変更仕様を決定するステップ(S50)と、
実行部(46)が、前記ディザ変更仕様に基づいてディザ変更制御を実行するステップ(S60)と、
を備え
前記ディザ変更仕様は、前記インダクタンス関連情報の履歴(In-his)に基づいて決定される、リニアソレノイドバルブ(31、32)の制御方法。
【請求項7】
自動変速機(5)に供給される作動油圧を通電電流の大きさに応じて制御するリニアソレノイドバルブ(31、32)の制御方法において、
取得部(42)が、前記リニアソレノイドバルブ(31、32)の有するインダクタンス関連情報(In)を取得するステップ(S10)と、
判断部(44)が、前記インダクタンス関連情報(In)に異常があるか否かを判断するステップ(S30)と、
計算部(45)が、前記インダクタンス関連情報(In)に異常があると判断された場合に、前記通電電流のディザ変更仕様を決定するステップ(S50)と、
実行部(46)が、前記ディザ変更仕様に基づいてディザ変更制御を実行するステップ(S60)と、
を備え、
前記ディザ変更仕様は、前記ディザ変更制御において取得された情報の履歴(Di-his)に基づいて決定される、リニアソレノイドバルブ(31、32)の制御方法。
【請求項8】
自動変速機(5)に供給される作動油圧を通電電流の大きさに応じて制御するリニアソレノイドバルブ(31、32)の制御方法において、
取得部(42)が、前記リニアソレノイドバルブ(31、32)の有するインダクタンス関連情報(In)を取得するステップ(S10)と、
判断部(44)が、前記インダクタンス関連情報(In)に異常があるか否かを判断するステップ(S30)と、
計算部(45)が、前記インダクタンス関連情報(In)に異常があると判断された場合に、前記通電電流のディザ変更仕様を決定するステップ(S50)と、
実行部(46)が、前記ディザ変更仕様に基づいてディザ変更制御を実行するステップ(S60)と、
を備え、
前記ディザ変更仕様は、ディザ周波数の変更速度(fdv)またはディザ振幅の変更速度(adv)を含む、リニアソレノイドバルブ(31、32)の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機に供給される作動油圧を通電電流の大きさに応じて制御するリニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機をリニアソレノイドバルブを用いた油圧システムで制御する場合、コンタミや摩耗によりリニアソレノイドバルブの性能が劣化すると、制御油圧が不安定になり変速がスムースに行えなくなる。
【0003】
ディザ電流を用いてリニアソレノイドバルブに侵入した砂粒などの異物を除去し、正常な作動を回復するようにした自動変速機の制御装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-82724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は砂粒などの異物の除去を目的とするものではあるが、リニアソレノイドバルブの摩耗などによる性能劣化を改善することはできなかった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、摩耗などによりリニアソレノイドバルブの性能が劣化しても、性能劣化を改善し、油圧が不安定になることを防ぎ、自動変速機のスムースな変速を可能とするリニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリニアソレノイドバルブの制御装置は、自動変速機に供給される作動油圧を通電電流の大きさに応じて制御するリニアソレノイドバルブの制御装置において、前記リニアソレノイドバルブの有するインダクタンス関連情報を取得する取得部と、前記取得部で取得された前記インダクタンス関連情報に異常があるか否かを判断する判断部と、前記判断部で前記インダクタンス関連情報に異常があると判断された場合に、前記通電電流のディザ変更仕様を決定する計算部と、前記計算部から取得した前記ディザ変更仕様に基づいてディザ変更制御を実行する実行部と、を備えるリニアソレノイドバルブの制御装置である。
【0008】
前記ディザ変更制御が、前記通電電流のディザ周波数が時間とともに低くなるようにする制御、または、前記通電電流のディザ振幅が時間とともに大きくなるようにする制御であることが好ましい。
【0009】
前記計算部が、前記インダクタンス関連情報の履歴に基づいて、前記ディザ変更仕様を決定することが好ましい。
【0010】
前記計算部が、前記ディザ変更制御において取得された情報の履歴に基づいて、前記ディザ変更仕様を決定することが好ましい。
【0011】
前記インダクタンス関連情報とは、前記リニアソレノイドバルブの有するインダクタンス、または、前記リニアソレノイドバルブに電圧が印加された際の、電流の立ち上がり特性であることが好ましい。
【0012】
前記ディザ変更仕様は、ディザ周波数の変更速度またはディザ振幅の変更速度を含むことが好ましい。
【0013】
本発明に係るリニアソレノイドバルブの制御方法は、自動変速機に供給される作動油圧を通電電流の大きさに応じて制御するリニアソレノイドバルブの制御方法において、前記リニアソレノイドバルブの有するインダクタンス関連情報を取得するステップと、前記インダクタンス関連情報に異常があるか否かを判断するステップと、前記インダクタンス関連情報に異常があると判断された場合に、前記通電電流のディザ変更仕様を決定するステップと、前記ディザ変更仕様に基づいてディザ変更制御を実行するステップと、を備えるリニアソレノイドバルブの制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、摩耗などによりリニアソレノイドバルブの性能が劣化しても、性能劣化を改善し、油圧が不安定になることを防ぎ、自動変速機のスムースな変速を可能とするリニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態が用いられる車両の駆動系の全体構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に用いられるディザ周波数、ディザ振幅の説明図である。
図3】本発明の実施形態に用いられるディザ変更制御について説明する図である。
図4】本発明の実施形態に係るリニアソレノイドバルブの制御装置の主要な構成を機能ブロック図で表したものである。
図5】本発明の実施形態に用いられるリニアソレノイドバルブにおける電流の立ち上がり特性に関する例を説明する図である。
図6】本発明の実施形態に係る判断部がインダクタンス関連情報Inに異常があるか否かの判断に関する例を説明する図である。
図7】本発明の実施形態に係る判断部がインダクタンス関連情報Inに異常があるか否かの判断に関する別の例を説明する図である。
図8】本発明の実施形態に用いられるディザ振幅の変更速度について説明するための図である。
図9】本発明の実施形態に係るリニアソレノイドバルブの制御方法について説明するフローチャートである。
図10】本発明の実施形態に係るリニアソレノイドバルブの制御方法の変形例について説明するフローチャートである。
図11】本発明の実施形態に係るリニアソレノイドバルブの制御方法の別の変形例について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照して、本発明であるリニアソレノイドバルブの制御装置及びその制御方法に関する実施の形態について具体的に説明する。尚、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては、特に説明がない限り同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0017】
(車両の駆動系の全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るリニアソレノイドバルブの制御装置およびリニアソレノイドバルブの制御方法が用いられる車両の駆動系の全体構成を概略的に示している 。エンジン1の回転動力が自動変速機5を介して駆動輪9に伝達される。自動変速機5の前後に各種の駆動伝達装置3,7が設けられている。
【0018】
自動変速機5は、ベルト式の無段変速機構であり、 プライマリプーリ11と、セカンダリプーリ12と、これら一対のプーリ11、12の間 に巻き掛けられたベルト13と、を備える。
【0019】
プライマリプーリ11およびセカンダリプーリ12は、いずれも固定円錐板と、固定円 錐板に対して対向させた状態で配置された可動円錐板と、を備え、これら一対の円錐板の間にV字状の溝が形成されている。可動円錐板は、背部に油圧シリンダ 21、22を備え、油圧シリンダ21、22に供給される作動油の圧力を調節することで、固定円錐板に対して可動円錐板を同軸上で移動させ、V溝の幅を変化させることができる。これにより、各プーリ11、12のシーブ面とベルト13との接触径が変更され、自動変速機5の変速比が無段階に変化する。
【0020】
自動変速機5の各プーリ11、12(油圧シリンダ21、22)に 供給される作動油の圧力を調整する油圧制御回路30が設けられている。油圧制御回路30は、複数の油路およびリニアソレノイドバルブ31、32を含む複数のバルブを有している。リニアソレノイドバルブ31、32は油圧シリンダ21、22に供給される作動油の圧力を調節する。
【0021】
リニアソレノイドバルブ31、32はいわゆる公知のリニアソレノイドバルブであり、それぞれ内部にコイル31c、32cを有している。以下特に説明が無い場合には、リニアソレノイドバルブに電圧を印加する、または、リニアソレノイドバルブに通電する等の表現は、それぞれ、リニアソレノイドバルブが有するコイルに電圧を印加する、または、リニアソレノイドバルブが有するコイルに通電するということである。
【0022】
油圧制御回路30は変速機制御装置40により制御される。変速機制御装置40は電子制御装置として構成され、中央演算装置(CPU)、RAMおよびROM等の各種記憶装置、入出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータからなる。変速機制御装置40はリニアソレノイドバルブ31、32を制御するリニアソレノイドバルブの制御装置41を有している。リニアソレノイドバルブの制御装置41はリニアソレノイドバルブ31、32にディザ電流を通電し、リニアソレノイドバルブ31、32を駆動する。リニアソレノイドバルブの制御装置41は自動変速機5に供給される作動油の圧力を、リニアソレノイドバルブ31、32の通電電流の大きさに応じて制御する。
【0023】
(ディザ電流)
図2は、横軸が時間t、縦軸が電流Iであり、通常時にリニアソレノイドバルブ31、32に通電されるディザ電流を説明するための図である。尚、図2は。通常時に通電されるディザ電流は、所定のディザ周波数fdcまたは、所定のディザ振幅adcを有する変動電流である。尚、τdcはディザ電流の周期である。
【0024】
(ディザ変更制御)
後述する判断部が条件を満たすと判断する場合には、リニアソレノイドバルブの制御装置41は、通常制御時のディザ電流の通電を止め、ディザ変更制御を実行する。ディザ変更制御とは、一例ではディザ周波数が時間とともに低くなるようにする制御であり、別の例としてはディザ振幅が時間とともに大きくなるようにする制御である。図3(a)はディザ周波数が時間とともに低くなるようにディザ変更制御を行った場合のリニアソレノイドバルブ31、32に流れる電流の例である。図3(a)中にはディザ周波数ではなく、ディザの周期(τ1、τ2)が記載されている。ディザの周期から計算されるディザ周波数がf1=1/τ1、f2=1/τ2と時間とともに低くなっている。図3(b)はディザ振幅が時間とともに大きくなるようにディザ変更制御を行った場合のリニアソレノイドバルブ31、32に流れる電流の例である。ディザ振幅がa1、a2と時間とともに大きくなっている。
【0025】
(リニアソレノイドバルブの制御装置)
図4は、リニアソレノイドバルブの制御装置41に備えられた構成のうちリニアソレノイドバルブの性能劣化を改善する部分を機能的なブロック図で表したものである。リニアソレノイドバルブの制御装置41は、取得部42と、記憶部43と、判断部44と、計算部45と、実行部46とを有している。さらに、実行部46はスイッチ素子SW1およびスイッチ素子SW2と連結している。実行部46の信号はスイッチ素子SW1、2の入力端子に入力される。一方、スイッチ素子SW1、2の電源端子は例えば車両が有するバッテリ等の電源(VB)に連結され、スイッチ素子SW1、2の出力端子はリニアソレノイドバルブ31、32の有するコイル31C、32Cの一端部とそれぞれ連結される。コイル31C、32Cの他端部は電流検出素子Sen1、2の一端部とそれぞれ連結し、電流検出素子Sen1、2の他端部は例えば接地電極(GND)に連結される。スイッチ素子SW1、2は、例えばリニアソレノイドバルブ31、32への通電、非通電を制御する機能や、リニアソレノイドバルブ31、32に印加される電圧を制御する機能を有している。また、スイッチ素子SW1、2は例えばトランジスタやFET(電界効果トランジスタ)を含んで構成されている。
【0026】
(取得部)
取得部42は、リニアソレノイドバルブ31、32の有するインダクタンス関連情報Inを取得する。インダクタンス関連情報Inは、例えばリニアソレノイドバルブ31、32に流れる電流の立ち上がり特性に関する情報であり、また、例えばリニアソレノイドバルブ31、32が有するインダクタンスである。電流の立ち上がり特性に関する情報とは、例えばコイルに電圧が印加された後所定の電流値に到達するまでの時間であり、または、コイルに電圧が印加された後所定時間経過時に到達する電流値である。また、別の例としてインダクタンス関連情報Inは、リニアソレノイドバルブ31、32に流れる電流の立ち下がり特性に関する情報であってもよい。以下、電流の立ち上がり特性の例について説明するが、電流の立ち下がり特性の例に置き換えてもよい。
【0027】
図5は、リニアソレノイドバルブ31、32における電流の立ち上がり特性に関する例を説明するための図である。図5(b)はリニアソレノイドバルブ31、32に印加された電圧を示す。時刻tsの時点で一定電圧Vcが印加されている。図5(a)は、電圧Vcの印加にともなってリニアソレノイドバルブ31、32に流れる電流Iを示す。
【0028】
ここで、図5(a)中のAは、各リニアソレノイドバルブが有するアーマチャが、電圧の印加に伴って移動した場合の電流の立ち上がり特性を示す。図5(a)中のBは、電圧を印加したにもかかわらず、アーマチャの摺動抵抗が大きく、動かない場合の電流の立ち上がり特性を示す。このように、アーマチャが動かないBの場合には、アーマチャが動くAの場合に比べ電流の立ち上がり時間が遅くなる。
【0029】
例えば、所定の電流値Icに到達するまでの時間tを、電流の立ち上がり特性とし、インダクタンス関連情報Inと定めることができる。この場合には、アーマチャが動く場合における電流の立ち上がり特性すなわちインダクタンス関連情報InはtAであり、アーマチャが動かない場合における電流の立ち上がり特性すなわちインダクタンス関連情報InはtBとなる。
【0030】
例えば、所定の時間Tc経過時に到達する電流値を、電流の立ち上がり特性とし、インダクタンス関連情報Inと定めることもできる。この場合には、アーマチャが動く場合における電流の立ち上がり特性すなわちインダクタンス関連情報InはIAであり、アーマチャが動かない場合における電流の立ち上がり特性すなわちインダクタンス関連情報InはIBとなる。
【0031】
また、例えば電流の立ち上がり特性を基にインダクタンスを求めて、それをインダクタンス関連情報Inとしてもよい。アーマチャが動かないBの場合のインダクタンスは、アーマチャが動くAの場合のインダクタンスに比べ大きな値となる。インダクタンスの取得方法は上述のものに限られず、公知の種々の方法を使ってインダクタンスを取得することができる。
【0032】
(記憶部)
記憶部43は、取得部42が取得したインダクタンス関連情報Inをインダクタンス関連情報の履歴In-hisとして取得した時刻とともに記憶する。
また、記憶部43は、後述するディザ変更制御において取得された各種情報をディザ変更制御の履歴Di-hisとして記憶する。各種情報については後述するフローチャートの説明で述べる。
【0033】
(判断部)
判断部44は、取得部42から取得したインダクタンス関連情報Inに異常があるか否かを判断する。判断部44は、インダクタンス関連情報Inに異常が無い場合にはディザ変更制御を開始しない、または、ディザ変更制御中には終了すると判断する。判断部44は、インダクタンス関連情報Inに異常がある場合にはディザ変更制御を開始する、または、ディザ変更制御中には継続すると判断する。
【0034】
また、判断部44は、ディザ変更制御の実行時間が所定の時間を経過したか否かを判断する。
【0035】
インダクタンス関連情報Inに異常がある場合とは、例えば電流の立ち上がり特性に異常がある場合である。図6図7はそれぞれ判断の一例を説明するための図である。尚、図6図7において、横軸は時間tであり、図6(a)、図7(a)の縦軸は電流I、図6(b)、図7(b)の縦軸は電圧Vである。
【0036】
まず、図6の例について説明する。判断部44は、リニアソレノイドバルブ31、32のコイルに一定電圧Vcが印加された後の電流の立ち上がり特性を取得し、所定の時間Tc経過時の電流値が所定の閾値Ithより小さい場合には(図6のIb)、電流の立ち上がり特性に異常がある、すなわち、インダクタンス関連情報Inに異常があると判断し、所定の時間Tc経過時の電流値が所定の閾値Ith以上の場合には(図6のIa)、電流の立ち上がり特性に異常がない、すなわち、インダクタンス関連情報Inに異常がないと判断する。
【0037】
次に、図7の例について説明する。判断部44は、リニアソレノイドバルブ31、32のコイルに一定電圧Vcが印加された後の電流の立ち上がり特性を取得し、所定の電流値Ic到達時の時間が所定の閾値Tthより長い場合には(図7のTb)、電流の立ち上がり特性に異常がある、すなわち、インダクタンス関連情報Inに異常があると判断し、所定の電流値Ic到達時の時間が所定の閾値Tth以下の場合には(図7のTa)、電流の立ち上がり特性に異常がない、すなわち、インダクタンス関連情報Inに異常がないと判断する。アーマチャの摺動抵抗が大きく動かない場合には、電流の立ち上がり時間が遅くなり、インダクタンス関連情報Inに異常があると判断される。
【0038】
インダクタンス関連情報Inがインダクタンスである場合には、検出又は取得されたインダクタンスが閾値Lthより大きい場合にはインダクタンスが異常である、すなわち、インダクタンス関連情報Inに異常があると判断し、検出又は取得されたインダクタンスが閾値Lth以下の場合には、インダクタンスに異常がない、すなわち、インダクタンス関連情報Inに異常がないと判断してもよい。
【0039】
判断部44がディザ変更制御の開始を決定すると、計算部45は、記憶部43から取得したインダクタンス関連情報の履歴In-hisに基づいてディザ変更仕様を決定する。
【0040】
ディザ変更制御がディザ周波数を時間とともに低くなるようにする制御である場合には、ディザ変更仕様は例えばディザ周波数の変更速度fdvであり、さらに、ディザ変更仕様がディザ変更制御中における最大ディザ周波数maxや最小ディザ周波数minを含んでいてもよい。また、ディザ変更制御がディザ振幅を時間とともに大きくなるようにする制御である場合には、ディザ変更仕様は例えばディザ振幅の変更速度advであり、さらに、ディザ変更仕様がディザ変更制御中における最大ディザ振幅admaxや最小ディザ振幅adminを含んでいてもよい。
【0041】
例えば、計算部45は、インダクタンス関連情報の履歴In-hisとして記憶部43に記憶された電流の立ち上がり特性の履歴に応じて、ディザ周波数の変更速度fdv、ディザ振幅の変更速度advを決定することができる。同様に、計算部45は、インダクタンス関連情報の履歴In-hisとして記憶部43に記憶されたインダクタンスの履歴に応じて、ディザ周波数の変更速度fdv、ディザ振幅の変更速度advを決定してもよい。例えば、電流の立ち上がり特性の履歴から電流の立ち上がり特性の変化の速度を算出し、変化の速度が速いほど、ディザ周波数の変更速度fdv、またはディザ振幅の変更速度advが速くなるように決定することができる。また、例えば、インダクタンスの履歴からインダクタンスの変化の速度を算出し、変化の速度が速いほど、ディザ周波数の変更速度fdv、またはディザ振幅の変更速度advが速くなるように決定してもよい。
【0042】
図8は、横軸が時間t、縦軸が電流Iであり、ディザ振幅の変更速度advについて説明するための図である。時間t0の間に、C(実線)のディザ振幅はaC1からaC2に変化しているのに対して、D(破線)のディザ振幅はaD1からaD2に変化している。このことから、C(実線)のディザ振幅の変更速度advCは(aC2-aC1)/t0と、D(破線)のディザ振幅の変更速度advDは(aD2-aD1)/t0と計算される。図から明らかなようにaC2-aC1<aD2-aD1であるので、advC<advDである。したがって、ディザ振幅の変更速度が速くなるということは、C(実線)の状態からD(破線)の状態になることである。
【0043】
また、計算部45は、記憶部43に記憶されたディザ変更制御の履歴Di-hisに基づいてディザ変更仕様を決定することができる。例えば、計算部45は、前回のディザ変更制御に要した時間が前々回のディザ変更制御に要した時間に比べ短くなっている場合には、今回のディザ変更制御におけるディザ周波数の変更速度fdvまたはディザ電流の振幅の変更速度advを前回ディザ変更制御時のディザ周波数の変更速度fdvまたはディザ電流の振幅の変更速度advよりも遅くするように決定してもよい。逆に、計算部45は、前回のディザ変更制御に要した時間が前々回のディザ変更制御に要した時間に比べ長くなっている場合には、今回のディザ変更制御におけるディザ周波数の変更速度fdvまたはディザ電流の振幅の変更速度advを前回ディザ変更制御時のディザ周波数の変更速度fdvまたはディザ電流の振幅の変更速度advよりも速くするように決定してもよい。
【0044】
(実行部)
実行部46は、別途決定または取得されたリニアソレノイドバルブ31に流す第1の目標電流I_sol1、および別途決定または取得されたリニアソレノイドバルブ32に流す第2の目標電流I_sol2を取得する。以下、簡単のために第1の目標電流I_sol1と第2の目標電流I_sol2をまとめて目標電流I_solとする。リニアソレノイドバルブ31、32に流す目標電流I_solは、油圧シリンダ21、22に供給される油圧の目標値と実際の油圧等に基づいて決定される。
【0045】
実行部46は、ディザ変更制御が実行されていない期間すなわち通常制御時においては、通常制御時のディザ仕様である通常ディザ周波数fdcまたは通常ディザ振幅adcを記憶部43等から取得する。そして、実行部46は、リニアソレノイドバルブ31、32に流れる電流が、目標電流I_solとなりかつ通常ディザ周波数fdcを有するように、または目標電流I_solとなりかつ通常ディザ振幅adcを有するように、駆動信号を生成する。当該駆動信号がスイッチ素子SW1、2に入力されると、リニアソレノイドバルブ31、32が通電され、リニアソレノイドバルブ31、32が駆動される。実行部46は、リニアソレノイドバルブ31、32に通電される電流を検知する電流検知素子Sen1、2からのフィードバックを受信する閉ループ制御回路として構成されていてもよい。
【0046】
ディザ変更制御の開始決定後、実行部46は、計算部45からディザ変更仕様を取得する。実行部46は計算部45から取得した前記ディザ変更仕様に基づいてディザ変更制御を実行する。すなわち、実行部46は、リニアソレノイドバルブ31、32に流れる電流が、目標電流I_solとなりかつ計算部45から取得したディザ変更仕様を有するように、駆動信号を生成する。当該駆動信号がスイッチ素子SW1、2に入力されると、駆動信号に基づいてリニアソレノイドバルブ31、32が通電される。ここで、リニアソレノイドバルブ31、32に流れる電流が目標電流I_solになるとは、リニアソレノイドバルブ31、32に流れる平均電流が目標電流I_solになるということである。
【0047】
本発明のリニアソレノイドバルブの制御装置によれば、リニアソレノイドバルブ31、32のアーマチャの摺動部に摩耗等に起因する摺動抵抗が生成され、当該摺動抵抗が大きくなってアーマチャの動きが悪くなった場合には、インダクタンス関連情報Inに基づいて、アーマチャの動きが悪くなったことを判断することができる。
【0048】
また、本発明のリニアソレノイドバルブの制御装置によれば、ディザ変更制御によって、例えば、ディザ電流の振幅adが時間とともに大きくなるように制御がなされると、アーマチャに加えられる力の振幅が時間とともに大きくなるので、アーマチャが微振動を起こす。この微振動により潤滑油が流入し、摩耗部が平滑され、アーマチャの動きが改善される。また、ディザ変更制御によって、ディザ周波数が時間とともに低くなるよう制御がなされた場合にも、アーマチャの微振動が誘発され、この微振動により潤滑油が流入し、摩耗部が平滑され、同様に、アーマチャの動きが改善される。
【0049】
また、本発明のリニアソレノイドバルブの制御装置によれば、インダクタンス関連情報の履歴In-hisに基づいてディザ変更仕様を決定することができるので、インダクタンス関連情報の履歴In-hisの変化が大きく、アーマチャの動作が急速に悪化している場合には、ディザ変更仕様である、例えば、ディザ振幅の変更速度advやディザ周波数の変更速度fdvを速くすることにより、アーマチャの劣化を早期に改善することができる。
【0050】
また、本発明のリニアソレノイドバルブの制御装置によれば、ディザ変更制御の履歴Di-hisに基づいてディザ変更仕様を決定することができるので、以前実施されたディザ変更制御におけるインダクタンス関連情報Inの改善量や改善速度に応じて、ディザ変更仕様を決定することができ、ディザ振幅の変更速度advやディザ周波数の変更速度fdvを適切に設定することができる。
【0051】
(リニアソレノイドバルブの制御方法)
次に、上述したリニアソレノイドバルブの制御装置によって実行されるリニアソレノイドバルブの制御方法について図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0052】
ステップS10で、取得部42がインダクタンス関連情報Inを取得する。続いて、ステップS20で、記憶部43は、取得したインダクタンス関連情報Inをインダクタンス関連情報の履歴In-hisとして取得した時刻とともに記憶する。
【0053】
ステップS30で、判断部44はインダクタンス関連情報Inに異常があるか否かを判断する。異常がある場合にはステップS40に進み、異常がない場合には本フローを終了する。インダクタンス関連情報Inに異常がある場合とは、前述のリニアソレノイドバルブの制御装置で説明した通りある。
【0054】
ステップS40で、ディザ変更制御の開始を決定し、その後ステップS50に進む。ディザ変更制御とは、ディザ周波数が時間とともに低くなるようにする制御であり、または、ディザ振幅が時間とともに大きくなるようにする制御である。
【0055】
ステップS50で、計算部45は、インダクタンス関連情報の履歴In-hisに基づいてディザ変更仕様を決定し、ステップS60に進む。ディザ変更制御がディザ周波数を時間とともに低くなるようにする制御である場合には、ディザ変更仕様は、例えばディザ周波数の変更速度fdvであり、さらに、ディザ変更仕様がディザ変更制御中における最大ディザ周波数maxや最小ディザ周波数minを含んでいてもよい。また、ディザ振幅adが時間とともに大きくなるようにする制御である場合には、ディザ変更仕様は、例えばディザ振幅の変更速度advであり、さらに、ディザ変更仕様がディザ変更制御中における最大ディザ振幅admaxや最小ディザ振幅adminを含んでいてもよい。
【0056】
ステップS60で、実行部46は計算部45から取得した前記ディザ変更仕様に基づいてディザ変更制御を実行する。すなわち、実行部46は、リニアソレノイドバルブ31、32に流れる電流が、目標電流I_solとなりかつ計算部45から取得したディザ変更仕様を有するように、駆動信号を生成する。当該駆動信号がスイッチ素子SW1、2に入力されると、駆動信号に基づいてリニアソレノイドバルブ31、32がそれぞれ通電される。目標電流I_solは、油圧シリンダ21、22に供給される油圧の目標値と実際の油圧等に基づいて別途決定または取得されるリニアソレノイドバルブ31、32に流す目標電流である。
【0057】
続くステップS70で、取得部42はディザ変更制御中のインダクタンス関連情報Inを取得する。
【0058】
続いて、ステップS80で、判断部44は、ディザ変更制御中のインダクタンス関連情報Inに異常があるか否かを判断する。異常がある場合にはステップS90に進み、異常がない場合にはステップS100に進む。
【0059】
ステップS90で、判断部44は、ディザ変更制御の実行時間が所定の時間を超えたか否かを判断する。所定時間を超えた場合には、ステップS100に進み、所定時間以内の場合には、ステップS60に戻り、ディザ変更制御を継続する。また、ディザ変更制御がディザ周波数を時間とともに低くなるように制御する場合であって、所定時間以内にディザ周波数が最小ディザ周波数fdminに達した場合には、ディザ周波数を最大ディザ周波数fdmaxに戻し、再びディザ周波数を時間とともに低くなるように制御してもよい。ディザ振幅が時間とともに大きくなるように制御する場合も同様である。
【0060】
ステップS100では、ディザ変更制御を終了し、ステップS110に進む。
【0061】
ステップS110では、記憶部43がディザ変更制御において取得された情報をディザ変更制御の履歴Di-hisとして記憶し、その後本フローを終了する。ディザ変更制御の履歴Di-hisとして記憶される情報には、ディザ変更仕様、ディザ変更制御の開始が決定された際のインダクタンス関連情報Ins、ディザ変更制御の終了が決定された際のインダクタンス関連情報Inf、ディザ変更制御におけるインダクタンス関連情報Inの改善量、ディザ変更制御に要した時間、およびディザ変更制御においてインダクタンス関連情報Inの異常が解消されたか否か等が含まれていてよい。尚、ディザ変更制御におけるインダクタンス関連情報Inの改善量は、ディザ変更制御の開始が決定された際のインダクタンス関連情報Insとディザ変更制御の終了が決定された際のインダクタンス関連情報Infとの差から計算されてもよい。ディザ変更仕様については、前述の通りである。
【0062】
本発明のリニアソレノイドバルブの制御方法によれば、リニアソレノイドバルブ31、32のアーマチャの摺動部に摩耗等に起因する摺動抵抗が生成され、当該摺動抵抗大きくなってアーマチャの動きが悪くなった場合には、インダクタンス関連情報Inに基づいて、アーマチャの動きが悪くなったことを判断することができる。
【0063】
また、本発明のリニアソレノイドバルブの制御方法によれば、ディザ変更制御によって、例えば、ディザ電流の振幅が時間とともに大きくなるように制御がなされると、アーマチャに加えられる力の振幅が時間とともに大きくなるので、アーマチャが微振動を起こす。この微振動により潤滑油が流入し、摩耗部が平滑され、アーマチャの動きが改善される。また、ディザ変更制御によって、ディザ周波数が時間とともに低くなるよう制御がなされた場合にも、アーマチャの微振動が誘発され、この微振動により潤滑油が流入し、摩耗部が平滑され、同様に、アーマチャの動きが改善される。
【0064】
また、本発明のリニアソレノイドバルブの制御方法によれば、インダクタンス関連情報の履歴In-hisに基づいてディザ変更仕様を決定することができるので、インダクタンス関連情報の履歴In-hisの変化が大きく、アーマチャの動作が急速に悪化している場合には、ディザ変更仕様である、例えば、ディザ振幅の変更速度advやディザ周波数の変更速度fdvを速くすることにより、アーマチャの劣化を早期に改善することができる。
【0065】
(リニアソレノイドバルブの制御方法の変形例)
次に、リニアソレノイドバルブの制御方法の変形例について図9に示すフローチャートに基づいて説明する。変形例は、ステップS50に代えてステップS51を有する。以下ステップS50に対するステップS51の違いについて説明する。
【0066】
ステップS50では、計算部45は、インダクタンス関連情報の履歴In-hisに基づいてディザ変更仕様を決定したが、ステップS51では、計算部45は、ディザ変更制御の履歴Di-hisに基づいてディザ変更仕様を決定する。例えば、計算部45は、前回のディザ変更制御に要した時間が前々回のディザ変更制御に要した時間に比べ短くなっている場合には、今回のディザ変更制御におけるディザ周波数の変更速度fdvまたはディザ電流の振幅の変更速度advを前回ディザ変更制御時のディザ周波数の変更速度fdvまたはディザ電流の振幅の変更速度advよりも遅くするように決定してもよい。逆に、計算部45は、前回のディザ変更制御に要した時間が前々回のディザ変更制御に要した時間に比べ長くなっている場合には、今回のディザ変更制御におけるディザ周波数の変更速度fdvまたはディザ電流の振幅の変更速度advを前回ディザ変更制御時のディザ周波数の変更速度fdvまたはディザ電流の振幅の変更速度advよりも早くするように決定してもよい。
【0067】
また、例えば、計算部45は、前回のディザ変更制御におけるインダクタンス関連情報Inの改善量が前々回のディザ変更制御におけるインダクタンス関連情報Inの改善量に比べ大きくなっている場合にはディザ周波数の変更速度fdvまたはディザ電流の振幅の変更速度advを遅くし、小さくなっている場合にはディザ周波数の変更速度fdvまたはディザ電流の振幅の変更速度advを速くするようにディザ変更仕様を決定してもよい。
【0068】
また、前回、前々回の情報だけでなく、計算部45は、ディザ変更制御の履歴Di-hisに記録された任意の履歴から、新たなディザ周波数の変更速度fdvまたはディザ電流の振幅の変更速度advを決定してもよい。
【0069】
本発明のリニアソレノイドバルブの制御方法の変形例によれば、ディザ変更制御の履歴Di-hisに基づいてディザ変更仕様を決定することができるので、以前実施されたディザ変更制御におけるインダクタンス関連情報Inの改善量や改善速度に応じて、ディザ変更仕様を決定することができるので、例えば、ディザ振幅の変更速度やディザ周波数の変更速度fdvを適切に設定することができる。
【0070】
さらに、リニアソレノイドバルブの制御方法の別の変形例は、ステップS50に代えてステップS52を有するものである。ステップS52では、計算部45は、インダクタンス関連情報の履歴In-hisと、ディザ変更制御の履歴Di-hisの両方に基づいてディザ変更仕様を決定する。(図10参照)
【0071】
本発明のリニアソレノイドバルブの制御方法の別の変形例によれば、インダクタンス関連情報の履歴In-hisに基づいてディザ変更仕様を決定することができるので、インダクタンス関連情報の履歴In-hisの変化が大きく、アーマチャの動作が急速に悪化している場合には、ディザ変更仕様である、例えば、ディザ振幅の変更速度advやディザ周波数の変更速度fdvを速くすることにより、アーマチャの劣化を早期に改善することができる。かつ、ディザ変更制御の履歴Di-hisに基づいてディザ変更仕様を決定することができるので、以前実施されたディザ変更制御におけるインダクタンス関連情報Inの改善量や改善速度に応じて、ディザ変更仕様を決定することができるので、例えば、ディザ振幅の変更速度advやディザ周波数の変更速度fdvを適切に設定することができる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0073】
1:エンジン、3:駆動伝達装置、5:自動変速機、7:駆動伝達装置、9:駆動輪、11:プライマリプーリ、12:セカンダリプーリ、13:ベルト、21:油圧シリンダ、22:油圧シリンダ、30:油圧制御回路、31:リニアソレノイドバルブ、31c:コイル、32:リニアソレノイドバルブ、32c:コイル、40:変速機制御装置、41:リニアソレノイドバルブの制御装置、42:取得部、43:記憶部、44:判断部、45 計算部、46 実行部、In インダクタンス関連情報、In-his インダクタンス関連情報の履歴、Di―his ディザ変更制御の履歴、SW スイッチ素子、Sen 電流検知素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11