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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】膜反応器用の高度な二重スキン膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20230118BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20230118BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20230118BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20230118BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20230118BHJP
   B01D 63/06 20060101ALI20230118BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20230118BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
B01D71/02 500
B01D53/22
B01D69/00
B01D69/10
B01D69/12
B01D63/06
B01D63/08
C01B3/56 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019531252
(86)(22)【出願日】2017-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2017081835
(87)【国際公開番号】W WO2018104455
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】62/431,733
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513273694
【氏名又は名称】テクニッシュ ウニバルシテイト アイントホーフェン
(73)【特許権者】
【識別番号】519204630
【氏名又は名称】テクナリア リサーチ アンド イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルッチ、ファウスト
(72)【発明者】
【氏名】アラチベル、アルバ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン サント アナランド、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】パチェコ タナカ、デイビッド・アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデズ ゲサラガ、エカイン
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0176060(US,A1)
【文献】特開2006-095521(JP,A)
【文献】特開2014-073926(JP,A)
【文献】PACHECO TANAKA D A ET AL,Preparation of ''pore-fill'' type Pd-YSZ-γ-Al2O3 composite membrane supported on α-Al2O3 tube for hydrogen separation,JOURNAL OF MEMBRANE SCIENCE,2008年07月15日,Vol. 320, No. 1-2,pages 436-441
【文献】D.A. PACHECO, TANAKA ET AL,Fabrication of Hydrogen-Permeable Composite Membranes Packed with Palladium Nanoparticles,ADVANCED MATERIALS,2006年03月03日,Vol. 18, No. 5,pages 630-632
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
C01B 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素透過膜装置であって、
(a)孔径100nmの多孔質αアルミナ支持層と、
(b)前記多孔質αアルミナ支持層の上に直接配置され、1μmの厚さを有する水素選択性Pd95Ag膜と、
(c)前記水素選択性Pd95Ag膜の上に配置され、0.5μmの厚さを有する、50%イットリア安定化ジルコニア(YSZ)及び50%γ/Alからなる材料の多孔質保護層とを含むことを特徴とする水素透過膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に水素の製造に関する。本発明は、特に、セラミックのナノ多孔質保護層で覆われたPdの薄膜を有する二重スキン膜に関する。
【背景技術】
【0002】
パラジウム系膜は、高純度の水素を生成物とする水素分離装置としての使用でよく知られている。高い水素流束、大きな選択透過性を有し、および低価格の膜を製造するために、過去数十年にわたり多大な研究努力が費やされてきた。小規模の用途のための超高純度水素の製造は、現在、メタン(または他の供給原料、例えばエタノールおよびメタノール)を水蒸気改質し、続けてPd系膜によって水素の分離を行う技術(または他の技術)を用いて研究されている。水素を製造しそしてその場で分離するための膜を反応器へ組み込むことにより、必要なプロセス単位の数が減少する。さらに、このプロセス統合から、生成物の1つが連続的に除去されるので供給材料から水素への変換率を増加させ、それによりル・シャトリエの原理にしたがって平衡がシフトするなど、他の多くの利点がもたらされる。
【0003】
2種類の膜反応器の構成、すなわち充填床と流動床が主に研究されてきた。充填床膜反応器、特にPd支持付き膜のような高い選択透過性を有する膜においては、その性能が低い熱伝達率によって生ずる低温(コールド)スポットや濃度分極によって大きく損なわれる。流動床膜反応器(FBMR)では、反応器内で触媒が活発に動き循環すると、質量および熱伝達率の両方が高まる。膜を用いる流動床膜反応器を工業的に利用する場合、水素製造能力および選択層の厚さによって変わる必要な膜数が問題となる。自立型の膜とするには膨大な数の膜を必要とするが、薄膜に支持される膜は最も興味深い選択肢となろう。層が薄くなればなるほど、透過H流束が大きくなり、したがって必要な膜面積が小さくなる(したがって、これはPdコストの面から二重の利益がある)。しかし、薄い層(4~5μm未満)は一般に完全に稠密ではなく、他のガスが通過する可能性がある小孔が存在し、これが透過水素の純度を低下させる。また、膜が高い選択透過性を示したとしても、それらは、流動床膜反応器に組み込まれると流動触媒の作用による侵食に耐性を有していなければならない。
【0004】
金属支持膜は、セラミック支持膜と比較してはるかに高い機械的強度を提供し、反応器に一体に組み込むことが比較的容易である。しかし、それを高温(>400℃)で流動床膜反応器において長期使用することには限度があり、この限度が存在する理由は選択層中に存在する原子の移動のためまたは流動粒子による摩滅のために欠陥が現れることがあるからである。
【0005】
必要とされているのは、流動床膜反応器に一体に組み込まれる粒子に対抗する高い透過性および選択透過性および耐摩耗性を有する水素透過膜である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
当技術分野におけるこの必要性を満たすために、水素透過膜装置であって、
(a)水素選択性Pd膜またはPd合金膜と、
(b)ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、γ/Al、YSZ-γ/Al、シリカ、チタニア、マグネシア、セリア、窒化物、および炭化ケイ素からなる群から選択される材料を含む多孔質保護層とを含むことを特徴とする水素透過膜装置が提供される。
【0007】
本発明の一態様によれば、前記多孔質保護層の孔は、1~400nmの範囲、または1~50nmの範囲、または2~20nmの範囲の孔径を有する。
【0008】
本発明の別の態様によれば、本発明の装置は、多孔質支持層をさらに含む。ここで前記多孔質支持層は、金属、セラミック、または金属とセラミックの組み合わせを含む。さらに、前記セラミック多孔質支持層は、酸化物、窒化物、および炭化物からなる群から選択される材料を含む。本発明の一実施形態では、前記多孔質支持層は、2nm~50000nmの範囲内の孔径を有する。
【0009】
本発明のさらに別の態様によれば、前記水素選択性Pd膜または前記Pd合金膜は、0.5μm~150μmの範囲の厚さを有する。
【0010】
本発明のさらなる態様によれば、前記多孔質保護層は、0.5μm~150μmの範囲の厚さを有する。
【0011】
本発明の一態様によれば、前記多孔質保護層は、細孔を有し、前記多孔質保護層は、前記細孔内に触媒をさらに含み、前記触媒は、Pt、Ni、Rh、Ru、Ag、およびPdからなる群から選択される物質である。
【0012】
本発明の別の態様では、本発明の装置は、前記水素透過膜装置を包入するハウジングをさらに含み、前記ハウジングは透過物側端および被保持物側端を有する。この実施形態の一態様によれば、前記ハウジングは、ステンレス鋼、カーバイド、セラミック、およびハステロイ(登録商標)からなる群から選択される材料を含む。ここで、前記ハウジングは、水素製造反応容器のなかに配置され、製造された水素は前記ハウジングの前記被保持物側端から前記ハウジングの前記透過物側端へ通過する。さらにある態様では、前記ハウジングは、管状プレート、マイクロチャネルプレート、平面プレート、および平行プレートからなる群から選択される形状を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、透過性の測定のための構成のPIDを示す図である。
図1B図1Bは、本発明の一実施形態による、二重スキン膜を有する反応容器を示す図である。
図2A図2Aは、選択性(Pd系)膜および多孔質保護層を有する二層システムを示す図である。
図2B図2Bは、選択性膜の下に多孔質無機支持層をさらに含むシステムを示す図である。
図2C図2Cは、2つの副層からなる保護層を示す図である。
図2D図2Dは、DS-2(2D)の二重スキン膜のSEM断面画像を示す図である。
図2E図2Eは、DS-3(2E)の二重スキン膜のSEM断面画像を示す図である。
図3図3は、本発明の実施形態による、400℃で空気中において活性化した後の300℃から500℃までの測定された水素流束(H Flux)を、水素圧力差の関数として示す図である。
図4図4は、本発明の実施形態による、400℃で空気中において活性化した後の300℃から500℃までのH透過能に基づくアレニウスプロットを示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態による、DS-2膜についての300℃~500℃の温度範囲および1バールの圧力差におけるH透過度(H permeance)およびH/N選択透過性(Perm-selectivity)を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態による、表2「文献に報告されているPd系支持体付き膜の透過特性」を示す図である。
図7図7は、長期試験中の膜DS-2の水素および窒素の透過率(permeance)および理想H/H選択透過性(Ideal H/N perm-selectivity)を示す図である。最初の250時間はガラスビーズなし。試験の残りの時間は、バブリング流動化方式で粒子の存在下で行われた。本発明の実施形態による、試験中の温度(Temperature)、圧力およびU/Umfのプロファイルは図の上に表されている。
図8A図8Aは、二元混合物の算出されたn値(0.783)超での貫入力(driving force)に対する400℃でのDS-2の水素膜貫通流束(H flux)を示す図である(H/Nが存在)。本発明の実施形態では、総供給流量:10L/分であった。
図8B図8Bは、二元混合物の算出されたn値(0.783)での貫入力に対する400℃でのDS-2の水素膜貫通流束(H flux)を示す図である(H/Nとともにガラスビーズが存在)。本発明の実施形態では、総供給流量:10L/分であった。
図8C図8Cは、二元混合物の計算されたn値(0.783)での貫入力に対する400℃でのDS-2の水素膜貫通流束(H flux)を示す図である(H/COが存在)。本発明の実施形態では、総供給流量:10L/分であった。
図8D図8Dは、二元混合物の計算されたn値(0.783)での貫入力に対する400℃でのDS-2の水素膜貫通流束(H flux)を示す(H/COとともにガラスビーズが存在し、体積当たりのH純度は50~100%)。本発明の実施形態では、総供給流量:10L/分であった。
図9A図9Aは、本発明の実施形態による、ガラスビーズの不存在下および存在下での、400℃の二元混合物の異なる総流量でのDS-2のH膜貫通流束(H flux)を示す図である(Hが50質量%のH-N混合物)。
図9B図9Bは、本発明の実施形態による、ガラスビーズの不存在下および存在下での、400℃の二元混合物の異なる総流量でのDS-2のH膜貫通流束(H flux)を示す図である(Hが90質量%のH-N混合物)。
図9C図9Cは、本発明の実施形態による、ガラスビーズの不存在下および存在下での、400℃の二元混合物の異なる総流量でのDS-2のH膜貫通流束(H flux)を示す図である(Hが50%および90質量%のH-CO混合物)。
図10図10は、選択層に4重量%の銀を有するDS-1膜の長期試験を示す図である(横軸:0~2500時間)。高活性アルミナ粒子上に支持されたRhを400時間後に導入した。温度と圧力のプロファイルを上に示す。本発明により、試験(3)の間U/Umfは一定に保たれた。
図11図11は、選択層に4重量%の銀を有するDS-3膜の550℃での長期試験を示す図である(横軸:0~700時間)。本発明により、高活性アルミナ粒子上に支持されたRhを試験の開始時に導入した。
図12図12は、本発明による、バブリング流動化方式でRh系触媒の存在下でのM33およびM15-DSの4バールの圧力差における水素(および窒素)の透過率および理想H/H選択透過性を示す図である(横軸:200~900時間)。
図13図13は、従来のPdAg膜と2枚の二重スキン膜の400℃での正規化H流束(Normalized H flux)を示す。本発明により各試験に使用した粒径は表4に概略を示す(横軸:0~150時間)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に開示されるのは、流動床膜反応器に一体に組み込まれる、高い透過性および選択透過性および粒子に対する耐摩耗性を有する水素透過膜である。一実施形態によれば、このような膜が、非常に薄い選択性Pd系層の上に保護層を堆積させることによって製造される。別の実施形態では、Pd-Ag層が同時ELP(無電解メッキ)によって形成され、保護層はディップコーティングによって形成される。金属多孔質支持体の一実施形態では、水素選択層を堆積させる前に、セラミック相互拡散バリアをディップコーティングによって堆積させる。
【0015】
一実施形態によれば、本発明は、多孔質基材と、多孔質基材上に堆積されたパラジウム核層とを有する水素透過膜装置であって、パラジウム核層のパラジウム核が多孔質基材の細孔内に配置され、パラジウム核層の上にPd-Ag層が堆積され、Pd-Ag層の上にメソ多孔質セラミック層が堆積される、該装置を含む。
【0016】
膜の透過特性を、単一ガス試験および二元ガス混合物を用いた試験によって調べた。本発明によれば、セラミック支持体付き二重スキン膜は、高い水素透過性およびH/N選択透過性を示した。さらに、長期試験中の2種類の粒子(ガラスビーズおよび高活性アルミナ上のRh)についての流動化条件下での膜の耐性を提示する。TiO系の触媒との相互作用も流動化条件下で提示し、これを保護層のない従来の膜と比較する。
【0017】
従来の金属支持付き膜と本発明の二重スキン(DS)膜とを流動化条件下で試験し、それらの性能を比較して膜の長期安定性を調べた。400~500℃の温度範囲で、従来の支持付き膜は、流動化触媒の存在下で初期の理想H/N透過選択性の著しい低下が生ずるが、本発明のDS膜は同じ条件ではるかに高い選択性を維持することが判明した。
【0018】
ここでDS膜の調製について述べる。一実施形態によれば、α-Alから作製された非対称形状の多孔質管状基材(10/4mm o.d./i.d.)を、Rauschert Kloster Veilsdorfから入手し、孔径100nmの最上層を有する多孔質支持体として使用した。この多孔質基材を、既に公知の手順にしたがって、ガラスシーラント(ASF-1761、旭硝子)を使用して高密度セラミックチューブと接合した。
【0019】
Pd-Ag層の同時堆積の前に、支持体を酢酸パラジウムのクロロホルム溶液に浸漬し、続いてヒドラジンで還元することによって多孔性基材をパラジウム核で活性化した。パラジウムシードを有する管状支持体を、Pd-Ag層の同時堆積のためにめっき浴に浸漬した。この実施例で使用された浴の組成は表1にまとめられている。共蒸着を64℃で1時間かけて行った。最後の45分間の堆積の間、管の内側から真空を適用して支持体の細孔を塞いだ。
【0020】
【表1】
【0021】
Pd-Ag層の堆積後、試料を蒸留水で洗浄し、一晩乾燥させ、550℃で4時間還元雰囲気中(10体積%のH/90体積%のN)でアニールした。加熱(3℃/分)および冷却工程中に窒素を供給した。最後に、ディップコーティング法によって、薄い(<1μm)メソ多孔質セラミック層(50%YSZ/50%γ/Al)をPd-Ag層の上に堆積させた。
【0022】
さらなる実施形態において、金属支持膜は、ハステロイ(登録商標)X(0.2μmろ材グレード)多孔質支持体上にセラミック相互拡散バリアをコーティングすることによって作製される。水素選択層(4~5μm)は、PdおよびAgを含み、無電解メッキによって堆積される。多孔質セラミック層(保護層)を、DS膜上にディップコーティングし、続いて550℃で焼成することによって堆積させる。
【0023】
ここでDS膜の物理化学的特性化について、DS膜の断面を走査電子顕微鏡(FEI Quanta 250 FEG)によって分析した。各膜について、少なくとも4回の測定を実施して層の厚さを決定した。選択層中のPd-Ag組成は、層の堆積前後のめっき浴中の銀およびパラジウムの濃度をICP-OES(Varian Vista MPX誘導結合型プラズマ発光分光計)によって測定することによって計算した。保護層の孔径および表面積はBETにより特性化した。
【0024】
透過度測定のために、セラミック支持膜の一端を高密度(稠密)金属管に接続し、そして他端をグラファイトのへらを使用して金属タップで閉じた。7Nmを与えるトルクレンチで締め付けてコネクターを膜に結合した。コネクターを有する膜の全長は150mmであった。密封を十分にしてから、膜をエタノールに浸している間に膜の内側からヘリウムを供給することによって漏れ試験を行った。封止部分から気泡は検出されず、適切に密封されていることが示された。最後に、膜を乾燥させてエタノールを除去し、反応器に一体に組み込んだ。ガス透過度測定(単一ガス試験およびガス混合物)のために使用された透過度測定用構成を図1Aに示す。シェル・チューブモジュールは、内径42.7mmのステンレス鋼から作製した。シェル側のガス圧力は、被保持物側に接続された背圧制御装置で制御した。膜の透過物側を大気圧に保った。実験中に掃引ガスは適用せず、水素流束は自動質量流量計(Defender 220)で測定し、窒素流束は、流速>0.2mL/分を自動石鹸膜流量計(堀場、モデルVP1)で測定し、<0.2mL/分を別の石鹸泡流量計で測定した。単一ガス試験は窒素と水素を用いて300~500℃の温度で実施した。H-NおよびH-COの混合ガスによる混合ガス透過試験を400℃で行った。本発明はさらに、ガス混合物から水素ガスを分離/精製するための構成とすることができる。
【0025】
図1Bは、本発明による反応容器の概略断面図を示す。ガス混合物は反応容器に沿って供給され分配される。ガス混合物は触媒床と反応して水素を生成する。純粋な水素は水素選択性複合膜を通過した後、収集される。
【0026】
金属支持膜の場合、同一条件下で両方の膜の性能を評価し比較するために、両膜を同時に単一の反応器に一体化した。
【0027】
図2A図2Eは、本発明のいくつかの例示的な実施形態を示す図である。図2Aは、選択膜と多孔質保護層とを含む二層システムを示す。一態様では、膜の選択性を向上させるために、保護層が選択膜の欠陥部上に堆積される。ここで、選択膜は高密度(例えばパラジウムおよびその合金、ペロブスカイト)または微孔質(例えば炭素)選択膜である。別の実施形態によれば、選択膜は任意の無機水素選択性膜材料である。別の実施形態では、膜は図2Aに示すように自己支持型か、または図2Bに示すように多孔質無機支持体上に支持される。さらに、多孔質保護層は、金属酸化物(例えば、アルミナ、ZrO、YSZ、シリカ、チタニア、セリア、マグネシア)、窒化物、および/または炭化ケイ素などの材料のなかの1種類の材料か、複数種の材料の混合物からなる。
【0028】
本発明のさらなる実施態様において、保護層は単一層または多層からなる。図2Cは、2つの副層からなる保護層を示す。一実施形態では、保護層は、0.2nm~6μm、より好ましくは500nm~2μmの厚さを有するか、または0.5μm~150μmの範囲の厚さを有する。多孔質保護層は、様々な技術によって膜上にコーティングすることができ、そのような技術としては、限定しないが、ゾル-ゲル、ディップコーティング、湿式粉末スプレー、大気圧プラズマスプレー、スプレーコーティング、スパッタリング(PVD-マグネトロンスパッタリング)、または化学蒸着(CVD)等が挙げられる。
【0029】
選択層および保護層の厚さは、DS-2膜の断面(図2D)およびDS-3膜の断面(図2E)のSEM画像によって決定されている。選択層の厚さは、DS-2およびDS-3については、それぞれ約1μm(±0.26)および約1.8(±0.23)μmと決定された。DS-2保護層の厚さは約0.5μm(±0.06)で、DS-3はもう少し厚く、約0.67μm(±0.10)であった。DS-3膜の断面のEDSマッピングは、パラジウム、銀、アルミニウムおよび酸素について行った。これらの画像から、Pd-Ag選択層がアルミナ支持体とセラミック保護層との間に配置されていることを確認した。保護層の表面積(300m/g)および孔径(1nm~5nm)は、BETによって特性化した。
【0030】
DS膜は任意の形状およびサイズを有することができるが、優先的には管状または平面状である。さらに、保護層は、流動床条件などにおける機械的損傷から保護するように構成される。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、反応器内に適切な触媒床(流動化床または充填床)を備えて、水素ガスを製造するように構成される。ここで、本実施形態の手法は、触媒を含む反応容器に、炭素含有ガス(メタノール、エタノール、メタン、またはプロパン)と水蒸気(および/または酸素)との混合物を導入することを含む。さらに、本実施形態の手法は、水素選択膜を介して混合物から水素ガスを分離することを含む。
【0032】
別の実施形態では、保護層は、水素の生成を含む反応において触媒と選択膜との間の化学反応を防ぐように構成される。例えば、ZnOまたはTiOを含有する触媒は、Pd膜と反応して水素透過性能を低下させる可能性がある。
【0033】
さらなる実施形態では、保護層は、有機ガスを含む反応(例えば、Pd膜によるプロパン脱水素化)での炭素の堆積などの、水素選択膜の表面上の炭素の形成を防止または減少するように構成される。保護層はさらに、水素選択膜と反応して水素透過を減少させるか膜を破壊するHSに対するバリアとして構成される。保護層は、HSと反応する材料の層とし、このガスが選択層に到達しないようにできる。さらに別の態様では、保護層は触媒膜反応器として作用するように官能化される。例えば、細孔内に触媒を導入し、そこで水素が生成され、次いで生成された水素が選択膜が通過する。保護層はさらに、選択膜を損ない得る物質と相互作用し得る活性化合物を細孔内に導入することによって官能化される。
【0034】
空の反応器における膜透過特性に注目すると、Pd系膜を通る水素の流れを記述する方程式は、シーベルトの法則によって次のように記述される。
式中、Jは水素流束、Peは透過率、tは選択層の厚さ、pH2はそれぞれ透過物側と被保持物側の水素分圧、そしてnは圧力指数である。
【0035】
図3には、異なる温度(300~500℃)および異なる膜前後の圧力差でDS-2膜を通る3つの水素の流束が示されている。水素流束(J)および
についての最良の適合条件は、(2分間400℃で空気中で活性化した後)0.783の圧力指数値nで見出された。Pd系膜については、律速段階がパラジウムのバルクを通る拡散である場合、圧力指数は0.5に等しくなければならない。決定されたn値は0.5からずれるので、これはメソ多孔質保護層(1~5nmの孔径)中のクヌーセン拡散および/または多孔質支持体(100nmの孔径)内の粘性流が全体の水素透過速度に及ぼす影響を示し得る。これら両方のケースが律速段階の場合には、n値は1になろう。さらに、薄膜における律速段階は、バルク拡散ではなく表面反応である。したがって、n値は0.5より大きい。
【0036】
300~500℃の温度範囲で測定された流束を用いて、膜を通る水素透過のための活性化エネルギーを推定した。透過度は、以下のアレニウスの関係式に従い、温度に依存する。
式中、Qは膜の透過度、Qは前指数因子、Eaは活性化エネルギー、Rは一般ガス定数、Tは絶対温度である。この式の仮定の1つは、圧力指数nが温度によって変化しないということである。
【0037】
計算された透過度の自然対数を1/RTの関数としてプロットすることにより(図4参照)、活性化エネルギーは5.11kJmol-1に決定された。この活性化エネルギーは、メソ多孔質保護層、高密度金属層および支持体を通る透過を含む集中値である。この値はMelendezら[10]によって報告された値に近い。Melendezらは、同様の銀含有量(5.7~9重量%)を有し、選択層が同じ範囲の厚さ(0.46~1.29μm)を有する膜について、5.47~7.81kJmol-1の範囲の活性化エネルギーを報告している。選択層の厚さ、層の粒子の微細構造および製造方法などの多くのパラメータが活性化エネルギーに影響を及ぼし得る。
【0038】
単一ガス試験中に測定された水素および窒素流束を使用して、膜のH/N理想選択透過性を計算した。異なる温度(300~500℃)および1バールの圧力差における水素透過度およびH/N透過選択性を図5に示す。1バールの圧力差での窒素漏れは、300℃と500℃でそれぞれ2×10-10molm-2-1Pa-1と1.7×1010molm-2-1Pa-1であった。クヌーセン透過のメカニズムは、おそらくPd-Ag層が存在しないメソ多孔質保護層を通る透過によるものと考えられる。
【0039】
図6の表2において、3μmより薄い既知の支持体付きPd系膜の透過特性が列記されている。厚さ1.4μmのPd77Ag23層が、300℃および1バールの圧力差で22.5×10-6molm-2-1Pa-1の水素流束でマイクロチャネル反応器内に支持されていることが報告されている。試験開始時のこの膜の選択度は5700であった。しかし、7日間の試験の後、この値は390に減少した。管状の支持体付きPd系膜に関しては、PVD-MSによって形成されPSSチューブに移された約1.9~3.9μmの厚さのPd77Ag23膜で最大の水素流束であったことも報告されている。400℃において、1バールの圧力差でのH流束は14.9×10-6molm-2-1Pa-1であり、選択度は7700であった。セラミック多孔質基材上に支持された非常に薄い(0.49μm)Pd91Ag膜についても同様の流束が報告された。しかし、この高い流束は選択透過性の低下を犠牲にして達成されたものである(48)。異なる厚さを有する膜を試験し、最良の選択度(3500)は、400℃において9.2×10-6molm-1Pa-1の高いH透過度を有するより厚い膜で測定された。報告された400℃での流束と選択性の最良の組み合わせは、10000超の選択度を有する厚さ2.5μmのPd80Ag20膜において、1barの圧力差で5.1×10-6molm-2-1Pa-1のH流束が測定されたケースである。本発明により、同程度の流速(4.6×10-6molm-2-1Pa-1)および約26000のH/N選択透過性を有し、約1μmの選択層を有する膜(5重量%のAgを含むDS-2)を作製した。
【0040】
この膜(DS-2)の性質をガラスビーズの不存在下で単一ガスと二元ガスの混合物を用いた試験で調べた。図7のグラフの灰色の背景で示す最初の250時間に示すように、250~350μmの粒径を有するガラスビーズを導入するために反応器を室温まで冷却した。触媒の体積は膜を完全に覆うのに十分であった。続いて、反応器を再び350℃に加熱し、粒子を100時間流動化(U/Umf=2)した。その後、流動化速度をU/Umf=3に、温度を400℃(1バールの膜前後圧)に上げた。粒子の導入前に実施したのと同様の二元ガス混合物試験を反復して行い、床から膜への物質移動限度に対する流動化粒子の存在の影響を評価した。総流量は10~20L/分の間で変動した。したがって、流動化速度および粒子混合が増加するので、膜表面はより多く摩耗させられた。H/N選択透過性は約25000であり、粒子の導入後には、選択度性は低下し始め、長期試験の終わりまで減少した(975時間後に選択度は5500に減少した)。ガラスビーズを用いた流動化試験中、被保持物側の下流のフィルタは2回目詰まりした。フィルタを洗浄することができるように温度を300℃に下げた(図7の温度および圧力のピークを参照)。灰色の粉末が見つかり、これはXRDによって特性化した。得られた回折図はガラスビーズ(主にSiOからなる)に対応する。これは、おそらく反応器壁および膜表面の侵食が原因で、試験中に粒子が壊れていたことを示している。長期試験が終了してモジュールが冷却されると、保護層が膜の表面から除去されたことが観察された。選択度が低下したので、漏れの位置を突き止めるために漏れ試験を実施した。上記のように、膜をエタノールに浸漬しながら、膜の内側から膜をヘリウムで1バールに加圧した。膜のどの部分がガス漏れを起こしているかを評価するために、膜をゆっくり浸漬した。すると、膜表面ではなくシール(上部と下部の両方のシール(密閉部))が漏れの原因であることがわかった。したがって、たとえ保護層が除去されたとしても、選択層は依然として無傷であった。保護層は、硬質ガラス粒子と膜表面との衝突により除去されたと考えられる。これを評価するために、ガラスと比較してより高い硬度を有する実際の触媒粒子を用いて他の試験を行った。
【0041】
二元混合物については、水素供給量を50~100体積%に変えてH-NおよびH-COの二元混合物を用いて膜DS-2(5重量%の銀を含む)を試験した。透過度試験は、総供給流量を10L/分に固定して400℃で行った。流動性ガラスビーズの存在下でこれらの実験を反復した。この場合、異なる供給流量を調べた(10、15および20L/分)。全ての場合において、透過物側は大気圧に維持された。
【0042】
図8Aおよび図8Cは、NまたはCOを10体積%のみHに混合されたとしても、水素流束がNまたはCOの存在下で著しく減少したことを示す。H流束の減少は、調べた全ての混合物について非常に類似しているので、COと膜との相互作用(または逆の水・ガスシフト)は観察されなかった。これらの結果は、気相での濃度物質移動境界層の形成を示唆しており、これは膜表面近傍でのH濃度を低下させる。濃度分極と呼ばれるこの現象は、たとえ被保持物側のH体積分率が依然として高いとしても、高いH透過性を有する膜について顕著になる。
【0043】
ガラスビーズを反応器に導入して(図8Bおよび図8D)、同じ二元ガス混合物試験を行った。その結果は、流動床試験の場合のH透過流束が空管内の場合の実験と比較してわずかに高いことを示していたが、これは、流動床が粒子の移動のためにガス混合を増大させ、したがって外部への物質移動限度が低下する(すなわち、膜表面近くの濃度プロファイルの厚さが減少する)ことを立証している。しかし、この改善は各混合物について低い膜間圧力でのみ観察された。一例として、50体積%のHを含むH-N混合物の場合、水素の分圧が1.4バールより低いとき、ガラスビーズの存在下でH流束はより大きくなる(図9A)。90体積%のHを有する混合物を供給した場合には、この値は1.7バールに増加した(図11B)。これらの圧力を超えると、流動床内の水素流束は空の管内で測定されたものよりも低くなる。これは別の現象の発生に関連している可能性がある。高流束では、粒子は膜表面に向かって引きずられ、膜に近接した高密度化ゾーンが形成され、それがさらなる物質移動抵抗を誘発して流束が減少する。
【0044】
総供給流量もまた、図9A図9Cに示されるように水素流束に影響を及ぼす。ガラスビーズの存在下では、総供給流量が増加するにつれて、透過H流束も増加する。しかし、透過物側での水素回収は減少し、単位供給流量に対する膜表面積は減少し、したがって水素回収について膜の効果は減少する。H-COの混合物についても同じ傾向が観察された(図8C参照)。
【0045】
ここで、セラミック支持体付きDS膜における活性化アルミナ付きRhに注目する。選択層中に4重量%の銀を有する別の膜(DS-1)を、Johnson Matthey(登録商標)によって提供される触媒を用いて、より長時間の流動条件下で試験した。触媒は、0.5重量%のロジウム(Rh)を担持した改質アルミナ粒子(粒径100~300μm)とした。ガラス粒子とは異なり、活性化アルミナ支持体付きRh粒子は非球形で硬度がより高かった。このことにより、ガラスビーズ実験と比較して、膜表面の磨耗はより激しいことが予想され、選択性がより速く減少することが予想される。反応器への膜の一体化前の400℃での窒素透過度は4.15×10-10molm-2-1Pa-1であり、そしてシールの漏れ試験の間に膜表面上の欠陥が既に確認されていた。この値は最初の350時間の間に増加した(図8A図8C参照)。透過度が一定(350時間)になるまで水素透過試験および窒素透過試験を実施した。この間に、単一ガス試験および二元ガス混合物試験が行なわれた(これらの結果は本明細書に含まれない)。この時点で、1バールの圧力差での膜の理想選択透過性は300℃と500℃でそれぞれ約2800と約3700であり、N透過度は約1.4・10-9molm-2-1Pa-1まで増加した。続いて、反応器を200℃に冷却し、触媒を導入して膜を完全に浸漬した。床は、400℃、1バールの圧力差で自由バブリング流動化方式で(U/Umf=3)で流動化した。HおよびN透過度を1500時間超にわたってモニタした。この間、理想選択透過率は2000前後、H透過度は3.35×10-6molm-2-1Pa-1に維持された。その後、温度を450℃に上げて7日間維持した。最後に、温度を500℃に上昇させた。図10から明らかなように、温度が450℃に上昇すると、窒素漏れが劇的に増加し始める。実験終了時の窒素漏洩量は500℃で3×10-8molm-2-1Pa-1であった。
【0046】
膜表面およびシール部を室温でより詳細に調べた。この長期試験の後、保護層が膜の表面に残っていることが観察されたが、このことは前の膜の層除去の主な原因は表面の磨耗ではなかったことを示している。膜をエタノールに浸漬し、1気圧のガスを導入することによって、ヘリウム漏れ試験を行った。両端のシール部で漏れが観察されたが、上側シール部では漏れがより多かった。全窒素漏出における膜表面の寄与を定量化するために、両方のシール部を気密樹脂で覆った。膜の表面の窒素漏れの寄与は全漏れのわずか8%であると計算された。したがって、この長期試験(~2500時間)の後、膜の性能はわずか8%しか影響を受けておらず、主な漏れはシール部で観察されたと結論付けることができる。
【0047】
4重量%の銀を有する第3の膜(DS-3)を、先の膜DS-1と同じ触媒(アルミナ系、図11を参照)で~700時間流動化条件下で550℃および1バールの圧力差の条件下で試験した。550℃でのDS-3の水素透過度は、500℃でのDS-2(3.2×10-6molm-2-1Pa-1)よりも低い(1.3×10-6molm-2-1Pa-1)。この結果は、DS-3の選択層の厚さ(約1.86μm)が、DS-2(約1μm)のそれと比較して厚いことに部分的に関係している可能性があるが、保護層の厚さの差違(DS-2とDS-3のそれぞれの厚さは約0.5μmと約0.67μm)も影響した可能性がある。
【0048】
図9A図9Cに示すように、理想H/N選択透過性は、DS-2の場合ほど高くはなかった。これはDS-3の低い水素透過度に関係するだけでなく、むしろ窒素漏れの一因となっている膜表面に見られる大きな欠陥に関係している。N漏れの増加は最初の250時間の間に非常に速かった。理想選択透過性が概ね50に低下したときに実験を止めた。DS-1膜について行われたように、漏れの寄与は、シールを気密樹脂で覆う前後に内側をヘリウムで加圧することによって室温で定量化した。試験開始以来、欠陥のあるDS-3の場合には、漏洩に対する膜の全寄与は20%であった。セラミック支持体上への支持体付き膜のシールを改善するためにさらなる研究がされるべきである。
【0049】
従来の金属支持膜および二重スキン(DS)膜について、長期試験においてFBMRで性能を比較するために流動化条件下で試験した。
【0050】
水素透過度、理想H/N選択透過性、活性化エネルギー、およびn値などの主な膜透過特性を得るために、その膜を最初に300~500℃の温度範囲で純粋なガス(HおよびN)を用いて空の反応器で試験した(表3に概略を記載)。膜は500℃および4バールの圧力差で非常に類似した水素透過度(1.34~1.55×10-6molm-2-1Pa-1)を示すことが観察された。同じ条件下での金属支持膜(M33)の選択透過性は90000を超えていたが、二重スキン膜ではそれは事実上無限大であった。両方の膜の活性化エネルギーは非常に類似しており、10kJmol-1未満であることが見出された。保護層の追加後、圧力指数(n値)は0.62~0.71に増加したが、これは、クヌーセン拡散および多孔質保護層内の粘性流の影響に関連していた可能性がある。これらのメカニズムは両方とも圧力指数が1であることを示しているので、この実験で観察されるように、多孔質層の追加はn値の増加をもたらし得る。
【0051】
【0052】
触媒が反応器に組み込まれると、M33膜の理想選択透過性は最初の数時間で約14000に低下する。この値は、窒素漏れが4バールの圧力差で8.76×10-11~1.4×10-96molm-2-1Pa-1に増加したことによって、400および500℃で利用したとき、615時間後に約1000までさらに減少した(図12)。一方、DS-膜(M15-DS)は同じ条件下で窒素漏れを示さず、従来の金属支持体付き膜よりもはるかに優れた耐摩耗性を示している。バブリング流動化方式での試験中、試験構成を2回冷却したが、これらの温度変化の結果として両方の膜の漏れは増加しなかった(図12)。
【0053】
これらの実験結果は、二重スキン膜が流動化条件下ではるかに優れた性能を示すことを実証している。今後の研究は、より高い温度で二重スキン膜の性能を試験することが中心となろう。
【0054】
以上のように、多孔性保護層を金属支持体付きPd系膜に付加することにより、流動化条件下での膜の性能の安定性が高まり、流動床膜反応器におけるそれらの適用への道が開かれた。実際、保護層を有していない膜は流動化条件下での窒素漏れの著しい増加を示すが、一方、二重スキン膜は400~500℃および4バールの圧力差の条件で利用して615時間以上安定したままであることが観察された。
【0055】
チタニア系触媒に関しては、セラミック支持体付きの従来のPd系膜(E54)が、TiO系の粒子の存在下で相互作用を受けることが報告された。図13に示すことができるように、粒子が膜反応器内で流動化するにつれて水素流束は小さくなる。膜の崩壊後分析は膜表面にTiの存在を示したが、これは強い化学的相互作用が起こったことを意味する。この試験中に使用された粒径は76~106μmであった。より大きい粒度分布(100~305μm)を有するセラミック支持付き二重スキン(DS-44)を用いて同じ試験を行った。水素流束は140時間を超えても小さくならない(図13参照)。さらに、DS-44のH/N選択透過性は、試験前後で10000を超えるFBMRでほぼ同程度である。より小さい粒子が膜と相互作用できるか否かを知るために、微粒子(<100μm)を反応器に組み込んだ。そのために、反応器を窒素中で室温に冷却した。窒素漏れは、400℃での3.7×10-10molm-2-1Pa-1から20℃で2.4×10-9molm-2-1Pa-1まで増加する。N漏れのこの増加は、シール部分に関連している可能性があり、小粒子の一体化による試験の後に調べた。反応器を400℃に加熱した後、膜を水素にさらした。測定された水素流束は、微粒子なしの前の実験におけるよりも大きかった。さらに、H流束は試験中に減衰せず、したがって粒子と膜との間の相互作用は観察されなかった。各試験で使用した各膜の説明および粒径を表4に概略を示す。ここに見ることができるように、粒径100~305μmの粒子であるE54およびDS-44について、最初に空の反応器内およびFBMR内で測定された水素透過度は低い。しかし、DS-44は50時間後に(空の反応器内で)初期値をほぼ回復するが、E54は減少し続ける。305μm未満の粒子のDS-44の場合、FBMRでH透過度は最初の1時間で少し増加し、110時間を超えても概ね一定のままであった。選択度は、窒素漏れの増加のために前の試験よりも低かった。シール部を通しての漏洩は総漏洩の約90%であることが分かった。
【0056】
【0057】
本発明を、いくつかの例示的な実施形態によって説明してきたが、これらの実施形態は限定的ではなく、あらゆる面について例示であることを意図している。したがって、本発明は、多くの改変された実施形態で実施可能であり、それら改変形態は当業者によって本明細書に含まれる説明から導き出すことができる。そのような改変形態はすべて、特許請求の範囲の請求項の記載およびそれらの法的な均等物によって定められる本発明の範囲および精神の範囲内にあると見なされる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13