(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】構造化口腔内分散性フィルム
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20230118BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20230118BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230118BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20230118BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230118BHJP
A61K 47/30 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
A61K9/70
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/14
A61K47/36
A61K47/30
(21)【出願番号】P 2019543759
(86)(22)【出願日】2018-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2018053920
(87)【国際公開番号】W WO2018149983
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】102017103346.7
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】デニース・シュタイナー
(72)【発明者】
【氏名】アルノー・クヴァーデ
【審査官】鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/009001(WO,A1)
【文献】特開2010-132653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/70
A61K 47/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内分散性フィルムの製造方法であって、以下の工程
i)薬学的に許容し得る溶媒、薬学的に許容し得るマトリックス材料、及び薬学的に許容し得る結着剤の懸濁液を形成し、前記溶媒は、薬学的に許容し得るマトリックス材料を実質的に溶解することはなく、一方、薬学的に許容し得る結着剤をその溶媒中に溶解するように選択されている、工程、
ii)中性支持体上に懸濁液を流
延し、それにより湿潤フィルムを形成する工程、及び
iii)湿潤フィルムを乾燥させ、多孔質の乾燥フィルムを得る工程、
を含み、
工程iii)から得た乾燥フィルムに、薬学的に許容し得る溶媒中の医薬有効成分の懸濁液又は溶液を適用し、次に、そのフィルムを乾燥させる工程iv)を少なくとも1回施し、
少なくともその細孔に比例して医薬有効成分が充填された口腔内分散性の乾燥フィルムを得ることを含み、
薬学的に許容されるマトリックス材料および結着剤の合計量における薬学的に許容される結着剤の割合は、0.1から0.5の範囲であり、懸濁液の合計重量に対する溶媒の割合は、0.4から0.9の範囲である、前記方法。
【請求項2】
工程iii)において、熱を中性支持体を介して下方から供給することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程iii)において、熱を上方から供給することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程iv)から得た乾燥フィルムに、薬学的に許容し得る溶媒中の薬学的に許容し得る結着剤の懸濁液又は溶液を適用する工程v)を施し、少なくともその細孔に比例して医薬有効成分が充填され、かつ結着剤の保護層で被覆された口腔内分散性の乾燥フィルムを得ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アルコール、エステル、又はそれらの混合物を薬学的に許容し得る溶媒として使用する
ことを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
多糖類を、薬学的に許容し得るマトリックス材料として使用することを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
薬学的に許容し得るマトリックス材料の平均粒径が、10~200μmの範囲であることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
合成ポリマー又は多糖類を薬学的に許容し得る結着剤として使用することを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
薬学的に許容されるマトリックス材料と結着剤との合計量中の薬学的に許容し得る結着剤の割合が、0.2~0.4の範囲内であることを特徴とする、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
懸濁液の合計重量に対する溶媒の割合が、0.68~0.8の範囲にある請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルムの、湿潤した層の厚みが、400μm~1500μmの範囲を有することを特徴とする、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
乾燥を、40℃~80℃の範囲内の温度で実施することを特徴とする、請求項1~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
薬学的に許容し得る溶媒中の医薬有効成分の懸濁液又は溶液が、有効成分の安定剤を更に含むことを特徴とする、請求項1~12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
乾燥後のフィルムが有効成分充填量を0.01~10mg/cm
2の範囲で有すること
を特徴とする、請求項1~13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14の何れか1項に記載の方法により得られる口腔内分散性乾燥フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下面は閉塞した表面を有し、かつ、その上面は有効成分を充填出来るような多孔質である構造化された口腔内分散性フィルムに関する。 本発明はまた、そのような口腔内分散性フィルムを製造する方法、及び医薬としての有効成分を充填した口腔内分散性フィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の最も一般的な投与方法の一つは、依然として医薬物質の経口投与である。 慣用的な経口投与の形態は、例えば錠剤又はカプセルであり、これらは医薬物質の経口投与のための担体系として使用されている。
【0003】
一般に、錠剤又はカプセル剤は飲み込むが、これは患者が利用可能な液体を保有していることが必要であり、それがあって、患者はこの投与形態を利用することが出来る。然しながら、時において、高齢の患者又は子供においては、飲み込む(嚥下する)のが困難であるため、これらの患者は錠剤、若しくはカプセル剤の服用を拒絶するか、又は只々不承不承に服用している可能性がある。更に、可能性としては、患者が錠剤及びカプセル剤を口の中に長時間保持し、その後吐き出すかも知れない。 その結果、服薬遵守性がおろそかになり、治癒の進達、又は治療の成功に悪影響を及ぼす。
【0004】
ここに述べた問題に対処するために、近年、特に粒状材料又は口腔フィルムなどの医薬投与形態が開発されてきており、それは、特に液体を付随することなく摂取出来、しかも口腔内で急速に崩壊する。 経口フィルムは、その層の厚みが小さくかつ、広い表面を有し、そして最短時間(即ち大抵の場合30秒以下)で口腔内で溶解することを特に特徴とする。 患者は必要に応じていつでもどこでも、また、見立たぬようにそれを摂取することができる。同時に投与するためのいかなる液体も必要ない、というのは、口腔内の唾液がフィルムを溶解し、かつ有効成分を放出するのに十分であるからである。
【0005】
医薬及び非医薬有効成分を含有する経口フィルム及びその製造方法は、とりわけ、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2007/009800号
【文献】国際公開第2007/009801号
【文献】国際公開第03/011259号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
製薬業界及び研究分野における焦点は、ここ数年で、継続的テーラーメイド医療(tailoring)及び、患者の個々のニーズに合致する剤形の開発に向かって、ますますシフトしている。 従って、将来的には、個別化された医薬品を用いて、有効成分の用量を患者の年齢、性別、及び体格に直接、合わせてテーラーメイドすることが可能になるはずである。このようなテーラーメイド医療を費用効果的に実施出来るようにするために、これまでに確立された剤形の上に新たな要件が課される。
【0008】
例えば、有効成分を含まない担体物質が開発されており、これは後の工程段階における薬局又は病院で、患者のための1種若しくはそれ以上の薬学的有効成分の用量を直接充填することができる。近年のこれらの新しくかつ将来を見据えた開発の一つは、口腔内分散性フィルムの分野における研究により構成されていた。これらは粘膜と接触すると直接付着するため、小さな子供や年配の患者が吐き出すことは出来なくなる。更に、それらは嚥下困難な患者への医薬有効成分の投与を容易にする。 有効成分は、その後、粘膜を介して体内に吸収されるか、又は嚥下した場合は腸を介して体内に吸収される。
【0009】
個別化した医薬品の技術範囲内の適用について、おそらく適切であると考えられる口腔内分散性フィルムの例は、国際公開第2013/023775号に記載されている。記載されたフィルムは、フィルム形成性物質を含有する基層と、更にフィルム形成性物質と有効成分とを含有する上層とを具有する2層構造を有する。上層は、多数の層に印刷することにより、基層に適用しても良く、これにより、6cm2のフィルム表面当たり最高で1.12mgの装填量を達成出来るだろう。
【0010】
然しながら、このフィルム、及び従来知られている他の口腔内分散性フィルムの重大な欠点は、現在に至る迄、少量の有効成分量しか吸収出来なかったという事実にある。結果として、この剤形はこれまで高効力の有効成分に限定されていた。
【0011】
このような背景に対して、有効成分量をより多く吸収することが出来、然し、他方で、その使用に際しては簡便であるという利点を提供する口腔内分散性フィルムの適用形態が必要とされている。本発明はこの必要性に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の問題を、不均一な多孔度がその断面に亘り存在する口腔内分散性フィルムにより対処するものである。特に本明細書に記載したフィルムは、その表面の片方(即ち、その上面)が特に高い多孔度を有し、これによりこの側からフィルムに適用される有効成分の吸収が可能となり一方、この側とは反対側にある(即ち、その下面)は閉塞した表面を有する。このような構造を
図1に図式的に示した。驚くべきことに、このようなフィルムは本発明者らが実施した試験の技術的範囲内である、請求項1に記載した方法により、容易に製造できることが明らかとなった。
【0013】
従って、本発明の第1の態様は、多孔質の口腔内分散性フィルムを製造する以下の工程、
i)薬学的に許容し得る溶媒、薬学的に許容し得るマトリックス材料、及び薬学的に許容し得る結着剤の懸濁液を形成し、前記溶媒は、薬学的に許容し得るマトリックス材料を実質的に溶解せず、一方、薬学的に許容し得る結着剤をその溶媒に溶解するように選択されている、
ii)懸濁液を中性支持体上に流延し、それによって湿潤フィルムを形成し、次に
iii)湿潤フィルムを乾燥させて乾燥フィルムを得る、
を含む方法に関する。
【0014】
用語「口腔内分散性フィルム」とは、本明細書中で使用する場合、長方形、正方形又は他の所望の形状を含む任意の形状の薄膜又は薄型シートを意味し、例えば患者の口腔粘膜と接触した結果として湿潤した時に、又は、経口で摂取する場合、例えば舌の上に置くか、又は舌下に投与した時に、崩壊する。本明細書に記載の口腔内分散性フィルムの厚さ及びサイズは、使用者の口腔に合わせ、そして同様に所望の溶解時間に合わせて調整しても良い。
【0015】
薬学的に許容し得るマトリックス材料が溶媒に「実質的に溶解しない」とは、薬学的に許容し得るマトリックス材料の溶媒への溶解度が、周囲温度(23℃)で測定した各々の場合に、1g/L以下、好ましくは0.5g/L以下、特に好ましくは0.1g/L以下である限りにおいて解釈されるべき仕様である。その 溶解度に関して、ここでは懸濁液が中性支持体に適用される時点で、特定量以上の薬学的に許容し得るマトリックス材料は溶媒中に溶解すべきではないことを注意すべきである。その結果、薬学的に許容し得るマトリックス材料は、特定量の薬学的に許容し得るマトリックス材料が溶媒中で最大に溶解した時点で中性支持体へ適用される時に溶媒中に非常に僅かしか溶解しない材料でも良い。 然しながら、溶解度に関する上記の詳細は、好ましくは、薬学的に許容し得るマトリックス材料の、平衡条件下の溶媒中での溶解度、に関連する。
【0016】
薬学的に許容し得る結着剤が溶媒中に「溶解する」という規定は、本発明の技術範囲内であると理解するべきであり、薬学的に許容し得る結着剤が溶媒中で、少なくとも10g/l、好ましくは少なくとも50g/lそして、最も好ましくは少なくとも100g/lの溶解度を有することを意味する。
【0017】
本発明の技術範囲内において、「中性支持体」は、適用する懸濁液とは如何なる相互作用もしない支持体を意味する。中性支持体は、湿潤フィルムを一度乾燥させて得られた乾燥フィルムが、フィルムが裂けたり若しくは破れたりすることなく、中性支持体から容易に剥離できるようなものであることが好ましい。
【0018】
工程iii)に記載した湿潤フィルムを乾燥する技術の範囲内において、乾燥フィルムを得るために、熱を下方から又は上方から供給することは、原理的には可能である。「下方から」及び「上方から」という表現は、熱源をフィルムの上方又は下方に配置することを意味する。
【0019】
特に好ましい実施形態では、工程iii)における熱は、都合良く、下方から中性支持体を介して供給する。これは、一方では熱源を中性支持体の下に配置するという点で実施しても良いことである、然しながら、熱を特によく吸収する材料を中性支持体の下に配置し、しかも、元の熱源からの熱がこの材料に伝達されることも可能である。そのような熱伝達に適した材料は、例えば、中性支持体の真下に位置する金属又はセラミック基板である。
【0020】
上述したように、上記方法により得られる口腔内分散性フィルムの鍵となる利点は、有効成分を後から「充填」出来るという事実にある。換言すれば、多孔性口腔内分散性フィルムに、例えば溶液又は懸濁液として、後から適用される有効成分は、有効成分が均一に充填されたフィルムを形成するように、口腔内分散性フィルムの孔に組み入れる。このフィルムは、概して、均一な有効成分濃度を有さない、というのは、フィルム材料がより多孔質である上面の有効成分濃度は、フィルムがより固体である下面のそれよりも、当然高くなるからである、然しながら、従来の2層構造は全く具備せず、口腔内分散性フィルムの表面にのみ有効成分が1層で存在する。
【0021】
結果として、上記の方法の好ましい実施態様は、工程iii)の後、そこで得られた乾燥フィルムに、薬学的に許容し得る溶媒中の薬学的有効成分の懸濁液又は溶液をこの乾燥フィルムに適用し、次にこの乾燥フィルムを乾燥させる、という少なくとも1つの工程iv)を施す工程を含む。この手法の結果として、口腔内分散性乾燥フィルムが得られ、少なくともその細孔に比例して薬学的有効成分が充填されている。
【0022】
場合によっては、このようにして得たフィルムに保護層を設けることが好都合であり得る。従って、上記方法の一実施形態では、もし、iv)から得たフィルムが、薬学的に許容し得る溶媒中の薬学的有効成分の懸濁液又は溶液を工程iv)から得た乾燥フィルムに適用する工程v)を施されるならば好都合であり得る。この取り組みの結果として、口腔内分散性乾燥フィルムが得られ、少なくともその細孔に比例して医薬有効成分が充填され、しかも結着剤の保護層により被覆されている。
【0023】
上述の薬学的に許容し得る溶媒は、原則として、先行技術において知られている薬学的に許容し得る溶媒の何れでも良い。特に、モノ若しくはポリアルコール(例えばグリコール)を含むアルコール、エステル、ケトン及びそれらの混合物が考えられる溶媒である。薬学的に許容し得る溶媒の一つの成分として、水も可能であるが、溶媒中のその割合は最小限に制限するべきである、と言うのは、口腔内分散性フィルムは口腔内の液体と接触した際に溶解すべきだからである。従って、マトリックス材料と組み合わせる水を相当量の割合で使用すると、口腔内分散性フィルムの多孔性表面構造の形成を損なう可能性があるため、水の割合は、溶媒の総量に対して、最大20体積%、好ましくは最大10体積%、そして特に好ましくは最大5体積%に制限するべきである。
【0024】
特に、1~6個の炭素原子、特に2、3又は4個の炭素原子を有する短鎖アルコール、例えば、メタノール、エタノール、及び1-プロパノール並びに2-プロパノールを含むプロパノールなど、がアルコールとして適している。適切な多価アルコールとしては、就中、エチレングリコール及びプロピレングリコールが含まれる。薬学的に許容し得る溶媒として、特に好ましいアルコールはエタノールである。適切なエステル溶媒は、例えば酢酸エチルである。薬学的に許容し得る適切なケトン溶媒はアセトンである。前述の溶媒の混合物も使用して良い。
【0025】
合成ポリマーと天然ポリマーの両方共に、例えば、特に変性した又は変性していない形態の多糖類は、薬学的に許容し得る適切なマトリックス材料と見なし得る。例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、架橋ポリビニルピロリドン及びそれらのコポリマーが好ましい合成ポリマーとして挙げ得る。特に好ましい多糖類には、セルロース及びその誘導体、例えば特にヒドロキシアルキルメチルセルロース及び好ましくはヒドロキシエチルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、デンプン誘導体、変性デンプン、例えばマルトデキストリン、二糖及びオリゴ糖(糖単位2~10個を有する)並びにグリコマンナンが含まれる。更に適切な薬学的に許容し得るマトリックス材料はアルギン酸塩である。
【0026】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、特に、ヒドロキシプロピルの割合が5%~15%であり、メチルの割合が25%~35%であり、かつ、20℃における2%水溶液の粘度が約6MPa・sであるヒドロキシプロピルメチルセルロースを薬学的に許容し得る特に適切なマトリックス材料として挙げることができる。ヒドロキシプロピルとメチルの量は、そのポリマー中のモノマー単位に関係する相対的な量に関係している。従って、10%のヒドロキシプロピルを含むポリマーでは、ポリマーの10%、即ちポリマー中の10個のモノマー単位中にヒドロキシプロピル置換基を1個を含む。
【0027】
薬学的に許容し得る適切なマトリックス材料の具体的な例としては、商業的に入手可能な、別種のヒドロキシプロピルメチルセルロース製品があり、これは商品名Pharmacoat 606(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、粘度6MPa・s、信越化学工業株式会社、日本)、Methocell E3及びMethocell E5(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、粘度3MPa・s及び5MPa・s、各々Dow Chemical Company、米国)として入手できる。同様に、乳糖もマトリックス材料として特に適している。
【0028】
薬学的に許容し得るマトリックス材料は、上述した特定のマトリックス材料の複数の混合物、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとラクトースとの混合物も含んでいても良い。
【0029】
医薬品のマトリックス材料の粒子サイズは、本発明の技術範囲内でいくつかの重要性が想定されている、と言うのは、粒子サイズが湿潤フィルムを乾燥した後に形成する細孔の型及び大きさにある程度の影響を及ぼすからである。薬学的に許容し得るマトリックス材料の適切な平均粒径は、10~200μm、特に50~150μm、好ましくは70~130μm、更に特に好ましくは80~120μmの範囲内にあっても良い。
【0030】
この場合の粒子サイズは、体積で重み付けした粒子サイズを示し、レーザー回折法により、決定する。
【0031】
薬学的に許容し得る結着剤に関しては、合成ポリマー、例えばポリビニルピロリドンの形態、又は好ましくはセルロース誘導体、特にヒドロキシプロピルセルロースの形態の多糖類は、本発明の技術範囲内で引用しても良い。ヒドロキシプロピルセルロースを好ましい結着剤として挙げても良く、就中、Sigma Aldrich社からHPCの形態で入手出来る。
【0032】
特に好ましいマトリックス材料/結着剤の組み合わせとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(マトリックス)/ヒドロキシプロピルセルロース(結着剤)又はラクトース(マトリックス)/ヒドロキシプロピルセルロース(結着剤)である。
【0033】
薬学的に許容し得るマトリックス材料と結着剤との合計量に対する薬学的に許容し得る結着剤の量は、本発明の技術範囲において、重要であると当然考えている。結着剤の含有量が非常に低い場合、下面を閉塞したフィルムを得ることが出来ず、これはフィルム強度を著しく低下させることが判明している。対照的に、結着剤含有量が過度に高い場合、密度が遥かに高いフィルムが形成され、これはより低い多孔性を有し、その後に適用される医薬有効成分を吸収するフィルムの能力を著しく低下させた。薬学的に許容し得るマトリックス材料と結着剤との合計量における薬学的に許容し得る結着剤の適切な割合は、0.1~0.5、特に0.2~0.4、好ましくは0.25~0.33、特に好ましくは0.27~0.31の範囲として特定化することができる。
【0034】
上述した方法の技術範囲内である溶媒量も、重要であると当然考えている。溶媒量が少な過ぎると、懸濁液の粘度は高くなり過ぎるため、不均一な膜厚をもたらし、しかも懸濁液の適用に使用するノズルが詰まるというリスクが高まることが判明した。他方で、溶媒の割合が高過ぎるのは好ましくない、と言うのは、本発明の技術範囲内である乾燥工程内でフィルム製品からその溶媒を除去する必要があり、これはエネルギーの観点からマイナスの効果を有するからである。 懸濁液の合計重量に対する溶媒の適切な割合は、0.4~0.9、特に0.68~0.8、好ましくは0.7~0.76、特に好ましくは0.71~0.75の範囲の割合でも良い。
【0035】
医薬有効成分は、原則として、経口投与に適したものなら如何なる医薬有効成分でも良い。特に、医薬品有効成分は経口投与に適している。適切な医薬品有効成分の例としては、抗アレルギー薬、抗不整脈薬、抗生物質、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、強心薬、利尿薬、血圧降下薬、麻酔薬、神経筋遮断薬、及び昇圧剤などの性ホルモンである。具体的な例としては、アセトアミノフェン、アドレナリン、アルプラゾラム、ベシル酸アムロジピン、アナストロゾール、アポモルフィン、アリピプラゾール、アトルバスタチンカルシウム、バクロフェン、ベンゾカイン、ベンゾカイン/メントール、ベンジダミン、ブプレノルフィン、ブプレノルフィン/ナロキソン、ブプレノルフィン/ナロキソン/セチリジン、セチリジン、特にセチリジンHClの形態、カンナビノイド、クロルフェニラミン、クロミプラミン、DBP-166、デキサメタゾン、デキストロメトルファン、デキストロメトルファン/フェニレフリン、ジクロフェナク、ジフェンヒドラミン、特に塩酸ジフェンヒドラミンの形態、ジフェンヒドラミン/フェニレフリン、ドネペジル、特に塩酸ドネペジルの形態、ドロナビノール、エピネフリン、エスシタロプラム、ファモチジン、フェンタニル、グリメピリド、GLP-1ペプチド、グラニセトロン、インスリン、インスリンナノ粒子、インスリン/GLP-1ナノ粒子、INT-0020、INT-0022、INT-0023、INT-0025、INT-0030、INT-0036、INT-0031/2012、ケトプロフェン、フマル酸ケトチフェン、カフェイン、レボセチリジン、ロペラミド、ロラタジン、塩酸メクリジン、メチルフェニデート、マレイン酸ミダゾラム、塩酸ミロデナフィル、モンテルカスト、特にモンテルカストナトリウムの形態、多量体-001、ナロキソン、ニコチン、ニトログリセリン、オランザピン、塩酸オロパタジン、オンダンセトロン、特に塩酸オンダンセトロンの形態、オキシブチニン、ペクチン、ペクチン/メントール、ペクチン/アスコルビン酸、PediaSUNAT(アルテスネート及びアモジアキン)、ピロキシカム、フェニレフリン、特にフェニレフリン臭化水素酸塩又は塩酸塩、プレドニゾロン、プソイドエフェドリン、リスペリドン、リバスチグミン、リザトリプタン、特にリザトリプタン安息香酸塩、セレギリン、センナグリコシド、クエン酸シルデナフィル、シメチコン、SPO-1202、SPO-1201、SPO-1113、SPO-1108 SPO-111、スマトリプタン、タダラフィル、テストステロン、トリアムシノロンアゼトニド、トリプタン、トロピカミド、ボグリボース、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、特に酒石酸ゾルピデム。 更に、この医薬有効成分は、メントールなどの口腔衛生に適しているものでも良い。この医薬有効成分は、異なる有効成分の混合物であっても良い。
【0036】
口腔内分散性フィルムは、ワクチンの支持体として使用しても良く、この場合の医薬有効成分は、例えばロタウイルスワクチンなどのワクチンの形態で存在する。
【0037】
口腔内分散性フィルム中の医薬有効成分の量は、好ましくは0.001~10mg/cm2、特に0.01~10mg/cm2、より好ましくは2~8mg/cm2、最も好ましくは3~7mg/cm2の範囲にある。
【0038】
医薬有効成分の代わりに、本発明による口腔内分散性フィルムには、1種又はそれ以上のビタミンを充填しても良く、例えば、ビオチン、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD3、ビタミンE及びビタミンCの形態で、ナトリウム塩又はカリウム塩などの電解質及びそれらの混合物、カフェインなどの刺激剤、及びガラナ抽出物、高麗人参抽出物、若しくはクランベリー抽出物などの植物抽出物、又はそれらの混合物が挙げられる。従って、本発明は、医薬有効成分の懸濁液又は溶液を適用する工程iv)を伴う上述の方法に関するが、然し、ここでは、さらなる実施形態として、医薬有効成分に代えて、ビタミン、電解質、刺激剤、及び植物抽出物から選択された1種又はそれ以上の懸濁液又は溶液をフィルムに適用するものである。
【0039】
湿潤フィルムとして流延した後の口腔内分散性フィルムは、好ましくは、400μm~1500μmの範囲、好ましくは800~1200μmの範囲の湿潤層の厚みを有する。乾燥フィルム層の特に適切な厚みとしては、150μm~600μm、特に290~350μmの範囲が挙げられる。
【0040】
フィルムは更に、便宜上、理論的多孔度として、0.4~0.7、の範囲、特に0.52~0.7の範囲、好ましくは0.55~0.68の範囲、そして、特に好ましくは0.58~0.66の範囲を有する。この場合、理論上の多孔度εは、下式に従って計算される。
【数1】
ここで、V
SOFTはフィルムの体積を定義し、m
SOFTはフィルムの質量を定義し、ρ
SOFTはフィルムの平均密度を定義する。上記で説明したように、本発明によるフィルムの全断面に亘り、多孔度は均一ではない。従って、ここで定義する多孔度は、フィルムの全断面に亘る多孔度の平均値を構成している。
【0041】
工程iii)の技術範囲内で、又は上記工程iv)及びv)の文脈上において、乾燥は、使用する溶媒が蒸発するのに適した都合の良い温度範囲で実施する。ここで、乾燥温度は、少なくとも乾燥工程の開始段階では、薬学的に許容し得る溶媒の沸点若しくは沸点よりわずかに低い領域の温度にあるように、一方で 溶媒が出来るだけ迅速な蒸発を達成するため、然し、その場合、他方では溶媒が沸騰し、膜の均一性に有害となり得る泡の形成を避けるように適切に選択される。上記の薬学的に許容し得る適切な溶媒のほとんどについて、温度範囲は40~80℃、好ましくは45~70℃、特に好ましくは48~60℃が適切であるとしても良い。
【0042】
口腔内分散性フィルムを製造するための上記方法の技術範囲内で、工程i)の懸濁液の形成中に、前もって医薬有効成分を添加することが可能であり、その医薬有効成分は、その時、フィルム内に直接組み込まれ、これは工程ii)及びiii)の流延し乾燥する技術範囲である。この場合、上記で説明した工程iv)を介して、更に有効成分、工程i)で使用した有効成分とは異なるものでも良い、を多孔質口腔内分散性フィルムに更に導入することが可能である。例えば、同じ有効成分を使用して、基本的な充填量から開始する有効成分の量を、患者のニーズに合わせて個別に調整しても良い。工程iv)で使用される有効成分が工程i)で使用される有効成分と異なる場合、この第2の有効成分に関しても同様に柔軟に、問題の患者に合わせて有効成分の量をテイラーメイド医療(to tailor)のために使用しても良い。
【0043】
工程iv)の薬学的有効成分を都合よく安定化するために、有効成分の安定剤を、薬学的に許容し得る溶媒中の有効成分の懸濁液又は溶液に追加的に添加しても良い。上記方法の一実施形態における、この安定剤は、工程i)で使用した薬学的に許容し得る結着剤である。従って、安定剤として特に適する材料はヒドロキシプロピルセルロースである。代替的又は追加的に、合成ポリマー安定剤を使用しても良い。好適な合成ポリマー安定剤としては、例えばビニルピロリドンポリマー及びコポリマー、特にビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーであり、例えば、BASF社、ドイツにより商品名Kollidon(登録商標)VA 64として販売されている。
【0044】
上述の成分の他にも、工程i)の懸濁液の形成のために、更なる成分を添加しても良いが、然し、医薬有効成分の懸濁液又は溶液を適用する工程iv)についての技術範囲内でもある。そのような成分の例としては、例えば、Brij35(例えば、Merck KGaA社、ドイツ)として商業的に入手可能なポリオキシエチレンラウリルエーテルなどの親水化剤、香料、着臭剤、芳香物質及び/又は染料及び/又は顔料などの着色剤である。
【0045】
上述の発明の更なる態様は、上記のような方法により得られる口腔内分散性乾燥フィルムに関する。この乾燥フィルムは、その表面状態に関して、懸濁液又は溶液の導入を可能にする片方の側が多孔質であるのに対して、このフィルムの他方の側には、懸濁液又は 溶液は単に塗布することができるが、フィルム材料には浸透しないような、閉塞した表面、を具備していることを特徴とする。このフィルムのこの構造は、上述した方法により達成される。
【0046】
このフィルムは、好ましくは下面から20μmの距離、好ましくは下面から10μmの距離から細孔を含むか、又はフィルムは少なくとも細孔に比例して医薬有効成分が充填されているものである場合、追跡可能な有効成分量を含む。
【0047】
本発明の一態様は、少なくともその細孔に比例して医薬有効成分が充填され、かつ上記のような工程iv)を含む方法で製造可能である口腔内分散性乾燥フィルムに関する。対応する口腔内分散性フィルムは、特に薬剤として使用しても良い。
【0048】
最後に述べた態様の好ましい実施形態に関して、上記の説明を参照しても良い。
【0049】
本発明のさらなる態様の最後は、乾燥した層の厚みが100~600μmの範囲であり、理論的多孔度が0.4~0.7の範囲であり、かつ引張強度が0.4~4Nmm-2の範囲である口腔内分散性乾燥フィルムに関し、このフィルムは、成分として薬学的に許容し得るマトリックス材料と薬学的に許容し得る結着剤を含む。乾燥した層の厚み及び理論的多孔度、並びに結着剤及びマトリックス材料の好ましい実施形態に関して、上記の説明を参照しても良い。フィルムは、好ましくは、フィルムの片側に閉塞した表面を有し、かつ反対側に多孔質である構造を有し、閉塞した表面に適用された液体はこの閉塞した表面に残り、一方で、フィルムの多孔質側に適用された液体はフィルムに浸透することができる。更に、口腔内分散性乾燥フィルムは、これを「実施例」の項で記載したように決定した場合、好ましくは5~250秒の範囲の崩壊時間を有する。
【0050】
これらのフィルムの好ましい崩壊時間は、10~120秒、特に20~60秒の時間として挙げても良い。これに代えて、或いはこれに加えて、引張強度は0.6~2.5Nmm-2が好ましく、0.8~1.8Nmm-2の引張強度が特に好ましい。
【0051】
フィルムの細孔は、薬学的有効成分で充填することが出来、これにより、上記の値より低くなった理論的な多孔度を提供しても良い。この場合、口腔内分散性乾燥フィルムは、薬学的に許容し得るマトリックス材料と薬学的に許容し得る結着剤の他に、薬学的有効成分をも含む。
【0052】
本発明は、いくつかの実証的な実施例に基づいて以下に説明するが、これらは、いかなる意味においても本出願の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0053】
実施例1
以下の試験を、マトリックス/結着剤比の異なる懸濁液に基づいて実行した。この目的に使用する懸濁液には、溶媒としてエタノール、マトリックス材料としてHMPC(Pharmacoat 606)、結着剤としてHPC(Sigma Aldrich)を含む。懸濁液は、HPCをエタノールに溶解し、続いてマトリックス材料を添加することにより製造した。このようにして得た懸濁液を16時間脱気し、次いで自動フィルムアプリケーターZAA 2300(Zehntner社、スイス)を使用してPETフィルムに適用した。適用速度は10mms-1であり、基板からの距離は1000μmであった。フィルムを炉内で50℃で30分間乾燥させた後、基板から剥がした。
【0054】
フィルムの製造に使用した懸濁液中におけるエタノール含有量はcEtOH=0.735であった。マトリックス材料と結着剤(cHPC)との合計量に対する結着剤の割合は、0.25~0.33の範囲で変化させた。このようにして得た各フィルムについて、以下の方法に基づいて、フィルム厚、崩壊時間、及びフィルム強度を決定した。
【0055】
厚さ:乾燥した層の厚みは、Mitutoya Deutschland GmbH社製のデジタル式ダイヤルインジケーター、これは0.001mmの精度でサンプル上の円形接触域(直径約3mm)を備えている、を使用して独立した10個の測定値の平均値として決定した。
【0056】
崩壊時間:崩壊時間はSFaB(スライドフレーム及びボール)法を使用して決定し、これはSteinerによりInternational Journal of Pharmaceutics、vol.511、2016、p.804-813.に記述されている。この目的のために、3×4cmの寸法のフィルムをフレームに固定し、開口した細孔がアセンブリの上側になるようにした。測定の開始は、蒸留水の最初の液滴0.9ml(T=37℃)の上にボール(ステンレス、mBall=4g、d=10mm)を置いた時とした。この目的のために、3×4cmの寸法のフィルムをフレームに固定し、開口した細孔がアセンブリの上側になるようにした。測定の開始は、蒸留水の最初の液滴0.9ml(T=37℃)の上にボール(ステンレス、mBall=4g、d=10mm)を置いた時とした。一旦、測定を始めると、残りの水をフィルム表面に適用した。崩壊時間は、ボールがフィルムを通って、200mm下方のアセンブリの基体上に落下するまでを、水による口腔内分散性フィルムが崩壊するのに要する時間として定義した。相互比較性を改善するために、測定した崩壊時間と膜厚との商として、特定の崩壊時間を算出した。
【0057】
引張強度:引張強度は、材料試験機(8136/20N、Zwick有限合資会社)を使用し、5x35mmの試験片で決定した。試験片を2つの把持機の間で固定し、5mm/minの速度で引き離した。口腔内分散性フィルムが引き裂かれるまでの最大力Fmaxを記録し、フィルムの機械的強度として特定した。フィルムの引張強度は、Fmaxと断面積との商として算出した。
【0058】
厚み測定の結果を以下の表1に示す。崩壊時間と引張強度の結果を
図2に示す。
【表1】
【0059】
結着剤濃度の増加とともに厚さが減少し、フィルム全体の多孔度が低下することがわかった。これにより、有効成分を吸収する収容力を低下させる。一方、結着剤の含有量が低いと、閉塞した表面を下面で得ることは、もはや保証出来ないことが観察された。
【0060】
更に、
図2から、結着剤の含有量が増加するにつれて、フィルムの引張強度だけでなく、その崩壊時間も増加すると推論することができる。
【0061】
実施例2:典型的な有効成分による口腔内分散性フィルムの充填
本発明による口腔内分散性フィルム中の典型的な有効成分の分布の測定を可能にするために、フィルムへの充填は、酸化アルミニウム懸濁液(x
50=100nm、溶媒=エタノール)を用いることによる明確な検出に関して試験した。次に、フィルム内の酸化アルミニウムの分布をSEM/EDX(元素追跡)によって測定した(
図3を参照)。これらの試験により、フィルム内の細孔への粒子の組み込みが可能であり、かつ懸濁液は口腔内分散性フィルムの閉塞した下面まで浸透したことを示すことが出来た。又、多孔質マトリックスフィルムは充填中に溶解しなかったことを示すことも出来た。
【0062】
実施例3:適用サイクルと粒子濃度の変動
これらのテストでは、アントラキノン懸濁液(x50=400nm)を使用した。これらには、アントラキノンの他に、安定剤としてのHPCがcHPC=0.25の濃度(懸濁液中のアントラキノンの合計量に対して)で含まれている。懸濁液の濃度は0.05~0.2の範囲で変化させ、かつ懸濁液はフィルムに1~5回適用した。懸濁液は、塗布ノズルを介して220mm/分の速度下、25μm/分の体積でフィルム表面に適用した。試験に使用したフィルムは、実施例1で説明したように、cHPC=0.28のフィルムである。
【0063】
得られたフィルムの各々について、アントラキノンの充填を決定した。これらの試験結果を
図4に示す。
【0064】
試験から、適用サイクルを5回行うことにより、アントラキノン濃度0.2を有する6.1mg/cm2の最大充填量が実現できることを示した。これは、アントラキノン4.9mg/cm2の充填に相当する。従って、6cm2の口腔内分散性フィルムの標準変数を考慮すると、これにより最大約30mgの有効成分充填が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】
図1は、本発明のフィルムの構造を図式的に示したものである。
【
図2】
図2は、崩壊時間と引っ張り強度の関連を示す測定結果である。
【
図3】
図3は、フィルム内の酸化アルミニウムの分布をSEM/EDXにより測定した結果を示す。
【
図4】
図4は、本発明における適用サイクルと粒子濃度の変動を示す。