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特許7212624低下した粘度を有する高タンパク酸性液体乳製品、それを製造する方法及び関連する成分
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  • 特許-低下した粘度を有する高タンパク酸性液体乳製品、それを製造する方法及び関連する成分 図1
  • 特許-低下した粘度を有する高タンパク酸性液体乳製品、それを製造する方法及び関連する成分 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】低下した粘度を有する高タンパク酸性液体乳製品、それを製造する方法及び関連する成分
(51)【国際特許分類】
   A23C 21/10 20060101AFI20230118BHJP
   A23C 9/13 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
A23C21/10
A23C9/13
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019544074
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2018053665
(87)【国際公開番号】W WO2018149869
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】17156770.4
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514140089
【氏名又は名称】アーラ フーズ エエムビエ
【氏名又は名称原語表記】Arla Foods amba
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,ブリット
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイセ,ペーター ランボルク
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,セーレン バング
(72)【発明者】
【氏名】ミュアー,ロバート
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533726(JP,A)
【文献】国際公開第2013/187519(WO,A1)
【文献】特開2015-171373(JP,A)
【文献】米国特許第05096731(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0010768(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4%(w/w)の総量のタンパク質を含む高タンパク酸性液体乳製品を製造する方法において、
a)液体組成物を提供するステップであって、前記液体組成物は、
- 少なくとも4%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、前記ホエータンパク質の少なくとも30%(w/w)は、変性ホエータンパク質の不溶性粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 最大で50ミクロンの体積加重平均粒径、D[4,3]を有し、
- 総タンパク質の少なくとも90%(w/w)は、ホエータンパク質である、ステップと、
b)ステップa)の前記液体組成物を、酸性化剤を使用する少なくとも1つの酸性化ステップ及び少なくとも1つの熱処理ステップに任意の順序で供し、それにより酸性熱処理液体組成物を得るステップと、
c)任意選択により、前記酸性熱処理液体組成物を均質化するステップと、
d)任意選択により、ステップb)又はステップc)の前記酸性熱処理液体組成物に由来する酸性乳製品をパッケージングするステップと
を含み、Ca2+及びMg2+カチオンは、前記酸性熱処理液体組成物中で前記タンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100の重量比を得るのに十分な量でステップbの前に存在し、且つ/又はステップb)中若しくはその後に添加され、前記Ca 2+ 及びMg 2+ カチオンの総量は、少なくとも100mg/100mlであり、前記酸性化剤は、ステップb)の前記液体組成物のpHを最大5.5のpHに低下させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記ホエータンパク質の総量は、少なくとも6%(w/w)であることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記ホエータンパク質は、少なくとも40%(w/w)、好ましくは少なくとも50%(w/w)、さらにより好ましくは少なくとも60%(w/w)の変性ホエータンパク質の不溶性粒子を含むことを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法において、前記総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で90、好ましくは最大で50であることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法において、ステップa)の前記液体組成物は、脂質をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法において、ステップa)の前記液体組成物は、炭水化物をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法において、ステップb)の前記少なくとも1つの熱処理ステップは、生存可能な大腸菌(Escherichia coli)の少なくとも5-log10低下を得るのに十分な時間にわたり、少なくとも60℃の温度に加熱することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法において、前記少なくとも1つの熱処理ステップは、酸性化前の熱処理及び/又は酸性化後の熱処理を含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法において、
- ステップb)は、前記液体組成物を酸性化前の熱処理、次いで酸性化ステップに供することを含むか、又は
- ステップb)は、前記液体組成物を酸性化前の熱処理、次いで酸性化ステップ、次いで酸性化後の熱処理に供することを含むか、又は
- ステップb)は、前記液体組成物を酸性化ステップ、次いで酸性化後の熱処理に供することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項1乃至の何れか1項に記載の方法において、前記酸性化剤は、細菌培養物を含むこと、及び/又は化学的酸性化剤を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
少なくとも4%(w/w)の総量のタンパク質を含む高タンパク酸性液体乳製品において、
- 少なくとも4%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、前記ホエータンパク質の少なくとも30%は、変性ホエータンパク質の不溶性粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 最大で50ミクロンの体積加重平均粒径、D[4,3]を有し、
- 総タンパク質の少なくとも90%(w/w)は、ホエータンパク質であり、及び
- 前記高タンパク酸性液体乳製品は、前記タンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100の重量比を有し、前記Ca 2+ 及びMg 2+ カチオンの総量は、少なくとも100mg/100mlであり、及び
- 前記高タンパク酸性液体乳製品は、最大5.5のpHを有することを特徴とする、高タンパク酸性液体乳製品。
【請求項12】
請求項11に記載の高タンパク酸性液体乳製品において、5℃において300/sの剪断速度で最大で2500cPの粘度を有することを特徴とする、高タンパク酸性液体乳製品。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の高タンパク酸性液体乳製品において、例えば撹拌型ヨーグルト又は飲料ヨーグルトなどのヨーグルトであることを特徴とする、高タンパク酸性液体乳製品。
【請求項14】
Ca2+及び/又はMg2+カチオンを含むタンパク質粉末において、
- 少なくとも20%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、前記ホエータンパク質の少なくとも30%(w/w)は、変性ホエータンパク質の不溶性粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 水中に懸濁された場合、最大で50ミクロンの体積加重平均粒径、D[4,3]を有し、
- 総タンパク質の少なくとも90%(w/w)は、ホエータンパク質であり、及び
- 前記タンパク質粉末は、前記タンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100の重量比を有することを特徴とする、タンパク質粉末。
【請求項15】
請求項14に記載のタンパク質粉末の使用において、少なくとも4%(w/w)の総量のタンパク質を含み、かつ、5℃及び300/sの剪断速度で最大で2500cPの粘度を有する高タンパク酸性液体乳製品を製造するためのものであることを特徴する、使用。
【請求項16】
請求項15に記載の使用において、前記高タンパク酸性液体乳製品は、
- 少なくとも4%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、前記ホエータンパク質の少なくとも30%は、変性ホエータンパク質の不溶性粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 最大で50ミクロンの体積加重平均粒径、D[4,3]を有し、及び
- 前記タンパク質の総量と前記Ca2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100の重量比を有し、前記Ca 2+ 及びMg 2+ カチオンの総量は、少なくとも100mg/100mlであり、及び
- 最大5.5のpHを有することを特徴とする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高タンパク酸性液体乳製品を製造する新規な方法に関する。本発明は、新規な高タンパク酸性液体乳製品、タンパク質/ミネラル組成物並びに高タンパク質含有量及び低粘度を有する液体乳製品の製造のためのこれらの使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、変性され、微粒子化されたホエータンパク質濃縮物は、高タンパク酸性液体乳製品を製造するための成分として使用されている。これらのタンパク質調製物は、高齢の栄養不良の人々であろうが、又は例えば手術後の筋肉蓄積の増大のためにタンパク質を必要とする病人であろうが、余分のタンパク質を必要とする人々のための栄養補助食品を製造するための重要な供給源である。
【0003】
国際公開第2015/059248A1号パンフレットは、低い含有量の可溶性ホエータンパク質を有するが、高い総タンパク質含有量を有する変性ホエータンパク質組成物を含む高タンパク酸性乳製品を開示している。カゼインが総タンパク質の相当の部分を形成し得る。カゼイノマクロペプチドは、製品の粘度を低く保つのに重要な役割を果たすことが示されている。
【0004】
欧州特許出願公開第2862446A1号明細書は、80~150℃の条件下で30分間~1秒間、低温殺菌され得る、中性pH6.8~8.0を有するカルシウム濃縮改変ホエータンパク質組成物を製造する方法に関する。熱処理に供される原料ホエー液体のカルシウム含有量は、400~700mg/100g固形物である。タンパク質含有量は低く、即ち1.3質量%以下である。
【0005】
国際公開第2010/120199号パンフレットは、乱流の条件下でホエータンパク質原材料を熱処理することを伴う、改変ホエータンパク質濃縮物を製造する方法を開示している。改変WPCは、例えば、プロセスチーズ又はヨーグルトの製造に使用することができ、ここで、改変ホエータンパク質濃縮物は、相当量のミルクタンパク質で補充されている。
【0006】
独国特許出願公開第102012216990A1号明細書は、ホエータンパク質の熱沈殿による、ホエータンパク質の微粒子化のプロセスが開示されている。この方法は、ホエータンパク質をそれらの等電点未満に加熱してタンパク質を変性させ、この熱タンパク質変性後、pHが等電領域内に増大したときにのみホエータンパク質沈殿を行うことを含み、ここで、タンパク質含有量は、0.60重量%未満であり、出発基質のミネラル含有量は、0.55重量%未満である。微粒子は、機械的応力なしで形成される。
【発明の概要】
【0007】
ホエータンパク質の高い含有量を有するが、依然として低い粘度を有する高タンパク液体乳製品を調製することは困難である。高タンパク質乳製品をカルシウム及びマグネシウムなどのミネラルで強化すると、それが最終製品の粘度を増大させ、また味に影響を与えるため、さらに困難となることが一般に知られている。
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、高い含有量のホエータンパク質を有し、ミネラル、例えばCa2+及びMg2+カチオンに富んだ高タンパク液体乳製品の調製物が、最終製品の粘度を増大させることなく得られることを発見した。これは、飲みやすい製品を製造すること及び栄養飲料中のタンパク質の濃度を増大させることを可能にする。
【0009】
したがって、本発明の態様は、高タンパク酸性液体乳製品を製造する方法にであって、
a)液体組成物を提供するステップであって、液体組成物は、
- 少なくとも4%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも30%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 最大で50ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- 総タンパク質の少なくとも60%(w/w)、好ましくは少なくとも80%(w/w)、さらにより好ましくは少なくとも90%(w/w)は、ホエータンパク質である、ステップと、
b)ステップa)の液体組成物を、酸性化剤を使用する少なくとも1つの酸性化ステップ及び少なくとも1つの熱処理ステップに任意の順序で供し、それにより酸性熱処理液体組成物を得るステップと、
c)任意選択により、酸性熱処理液体組成物を均質化するステップと、
d)任意選択により、ステップb)又はステップc)の酸性熱処理液体組成物に由来する酸性乳製品をパッケージングするステップと
を含み、Ca2+及びMg2+カチオンは、酸性熱処理液体組成物中でタンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100の重量比を得るのに十分な量でステップbの前に存在し、且つ/又はステップb)中若しくはその後に添加される、方法に関する。
【0010】
本発明の別の態様は、高タンパク酸性液体乳製品であって、
- 少なくとも4%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも30%は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 最大で50ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- 総タンパク質の少なくとも60%(w/w)、好ましくは少なくとも80%(w/w)、さらにより好ましくは少なくとも90%(w/w)は、ホエータンパク質であり、
- 高タンパク酸性液体乳製品は、タンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100の重量比を有する、高タンパク酸性液体乳製品に関する。
【0011】
本発明のさらなる別の態様は、タンパク質/ミネラル粉末であって、
- 少なくとも20%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも30%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 水中に懸濁された場合、最大で50ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- 総タンパク質の少なくとも60%(w/w)、好ましくは少なくとも80%(w/w)、さらにより好ましくは少なくとも90%(w/w)は、ホエータンパク質であり、及び
- タンパク質/ミネラル粉末は、タンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100の重量比を有する、タンパク質/ミネラル粉末に関する。
【0012】
本発明のさらなる態様は、5℃及び300/sの剪断速度で最大2500cPの粘度を有する高タンパク酸性液体乳製品を製造するための成分としての、本明細書に記載されるタンパク質/ミネラル粉末の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、熱処理後且つ酸性化前に測定した、異なる液体組成物(参照、+CaCl、+HPO又は+ミルクミネラル組成物)の粘度を示す。pHは、6.0~6.5である。
図2図2は、酸性化後且つ均質化後に測定した、異なる液体組成物(参照、+CaCl、+HPO又は+ミルクミネラル組成物)の粘度を示す。pHは、4.0~5.0である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の態様は、高タンパク酸性液体乳製品を製造する方法であって、
a)液体組成物を提供するステップであって、液体組成物は、
- 少なくとも4%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも30%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 最大で50ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- 総タンパク質の少なくとも80%(w/w)は、ホエータンパク質である、ステップと、
b)ステップa)の液体組成物を、酸性化剤を使用する少なくとも1つの酸性化ステップ及び少なくとも1つの熱処理ステップに任意の順序で供し、それにより酸性熱処理液体組成物を得るステップと、
c)任意選択により、酸性熱処理液体組成物を均質化するステップと、
d)任意選択により、ステップb)又はステップc)の酸性熱処理液体組成物に由来する酸性乳製品をパッケージングするステップと
を含み、Ca2+及びMg2+カチオンは、酸性熱処理液体組成物中でタンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100の重量比を得るのに十分な量でステップbの前に存在し、且つ/又はステップb)中若しくはその後に添加される、方法に関する。
【0015】
本発明との関連において、「高タンパク質」という用語は、対象の組成物又は製品が少なくとも4%(w/w)の総量のタンパク質を含むことを意味する。
【0016】
本発明との関連において、「酸性」という用語は、対象の組成物又は製品が25℃で最大で5.5のpHを有することを意味する。本明細書で提供されるpH値は、特に明記しない限り、10℃で測定されている。
【0017】
本発明との関連において、「液体組成物」という用語は、注ぐことができ、液体の外観を有するが、水に加えて分散粒子及び他の固形物を含む場合がある含水組成物に関する。液体組成物は、好ましくは、少なくとも50%(w/w)の量の水を含む。
【0018】
本発明との関連において、「ホエータンパク質」という用語は、ミルク又は凝固ミルクの漿液相中に存在するタンパク質に関する。ミルクの漿液相のタンパク質は、乳清タンパク質又は理想ホエー(ideal whey)タンパク質と呼ばれることもある。本明細書で使用される場合、「ホエータンパク質」という用語は、天然ホエータンパク質と、変性及び/又は凝集形態のホエータンパク質との両方を包含する。
【0019】
本発明との関連において、「ホエー」という用語は、ミルクからカゼインを除去した後に残る液体組成物に関する。
【0020】
カゼインは、例えば、ミセルカゼインを含まないか又は実質的に含まず、天然ホエータンパク質を含む液体透過物を与える精密濾過によって除去され得る。この液体透過物は、理想ホエー、漿液又は乳清と呼ばれることもある。
【0021】
或いは、カゼインは、ミルク組成物を、カッパ-カゼインをパラ-カッパ-カゼインとペプチドのカゼイノマクロペプチド(CMP)に切断し、それによってカゼインミセルを不安定化して、カゼインを沈澱させるレンネット酵素と接触させることによってミルクから除去し得る。レンネット沈澱カゼインを取り囲む液体は、多くの場合、スイートホエーと呼ばれ、一般にミルク中に含まれるホエータンパク質に加えてCMPを含む。
【0022】
カゼインは、酸沈澱により、即ちミルクのpHをカゼインの等電点において、カゼインミセルを分解し沈殿させるpH4.6未満に低下させることによってもミルクから除去することができる。酸沈澱カゼインを取り囲む液体は、多くの場合、酸ホエー又はカゼインホエーと呼ばれ、CMPを実質的に含まない。
【0023】
本発明との関連において、「天然アルファラクトアルブミン」、「天然ベータラクトグロブリン」、「天然CMP」、「可溶性アルファラクトアルブミン」、「可溶性ベータラクトグロブリン」又は「可溶性CMP」という用語は、可溶性で非変性のアルファラクトアルブミン、ベータラクトグロブリン又はCMPに関し、好ましくは、実施例1.2による解析で標準のアルファラクトアルブミン、ベータラクトグロブリン又はCMPと同じ保持時間を有する。
【0024】
本発明で使用されるホエータンパク質は、哺乳動物のミルク、例えばヒト、乳牛、ヒツジ、ヤギ、水牛、ラクダ、ラマ、ウマ及び/又はシカのミルク由来のホエータンパク質であることが好ましい。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ホエータンパク質は、ウシのホエータンパク質である。
【0025】
本発明との関連において、「不溶性ホエータンパク質粒子」という用語は、変性ホエータンパク質の不溶性粒子に関する。不溶性ホエータンパク質粒子は、62000gで30分間の遠心分離により分離することができる。不溶性ホエータンパク質粒子は、通常、適当なpH(例えば、pH5~8)のホエータンパク質溶液に大きい剪断をかけながら加熱することによって生成される。剪断は、例えば、かき取り表面熱交換器又はホモジナイザーなどを用いて機械的に剪断することにより、又は溶液に乱流を促進する大きい線流量を加えることにより与えられ得る。
【0026】
また、低剪断又は非剪断粒子化法を用いて変性ホエータンパク質組成物を調製することもできる。そのような方法は、通常、熱処理時の比較的低濃度のホエータンパク質の使用と、pH及びカルシウム濃度の正確な制御とを伴う。
【0027】
不溶性ホエータンパク質粒子の量(タンパク質の総量に対する%w/w)は、実施例1.1に従って決定される。
【0028】
「粒径」及び「体積加重平均粒径」という用語は、本明細書で使用される場合、体積加重平均粒径、D[4,3]を指す。体積加重平均粒径は、実施例1.1に従って測定される。
【0029】
本発明との関連において、「総タンパク質」という用語は、組成物又は製品の純タンパク質の総量に関し、非タンパク性窒素(NPN)を無視する。総タンパク質は、実施例1.4に従って測定される。
【0030】
本発明との関連において、2つの成分A及びB間の「重量比」(w/w)は、成分Bの重量で除算した成分Aの重量として決定される。したがって、組成物が9%(w/w)のA及び6%(w/w)のBを含む場合、重量比は、9%/6%=1.5であろう。
【0031】
本発明との関連において、「Y及び/又はX」という句は、「Y」又は「X」又は「Y及びX」を意味する。同じ論理の方向において、「n、n、...、ni-1及び/又はn」という句は、「n」、若しくは「n」、若しくは...、若しくは「ni-1」、若しくは「n」又は成分:n、n、...ni-1及びnの任意の組み合わせを意味する。
【0032】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物のホエータンパク質の総量は、少なくとも6%(w/w)である。好ましくは、液体組成物のホエータンパク質の総量は、少なくとも8%(w/w)である。より好ましくは、液体組成物のホエータンパク質の総量は、少なくとも10%である。最も好ましくは、液体組成物のホエータンパク質の総量は、少なくとも12%(w/w)である。
【0033】
例えば、ホエータンパク質の総量は、4~25%(w/w)の範囲、好ましくは6~20%(w/w)の範囲、好ましくは8~18%(w/w)の範囲、より好ましくは10~16%(w/w)の範囲、さらにより好ましくは12~14%(w/w)の範囲であり得る。
【0034】
上記に述べたように、ホエータンパク質は、相当量の不溶性ホエータンパク質粒子を含む。
【0035】
ホエータンパク質は、例えば、ホエータンパク質の総量に対して少なくとも30%(w/w)の量の不溶性ホエータンパク質粒子を含むことができる。好ましくは、ホエータンパク質は、ホエータンパク質の総量に対して少なくとも40%(w/w)の量の不溶性ホエータンパク質粒子を含む。より好ましくは、ホエータンパク質は、ホエータンパク質の総量に対して少なくとも50%(w/w)の量の不溶性ホエータンパク質粒子を含むことができる。さらにより好ましくは、ホエータンパク質は、ホエータンパク質の総量に対して少なくとも60%(w/w)の量の不溶性ホエータンパク質粒子を含む。より好ましくは、ホエータンパク質は、ホエータンパク質の総量に対して少なくとも70%(w/w)の量の不溶性ホエータンパク質粒子を含む。より好ましくは、ホエータンパク質は、ホエータンパク質の総量に対して少なくとも80%(w/w)の量の不溶性ホエータンパク質粒子を含む。さらにより好ましくは、ホエータンパク質は、ホエータンパク質の総量に対して少なくとも90%(w/w)の量の不溶性ホエータンパク質粒子を含む。より好ましくは、ホエータンパク質は、ホエータンパク質の総量に対して約100%(w/w)の量の不溶性ホエータンパク質粒子を含む。
【0036】
より好ましくは、ホエータンパク質は、タンパク質の総量に対して30~100%(w/w)の範囲、好ましくは40~90%(w/w)の範囲、より好ましくは、50~80%(w/w)の範囲、さらにより好ましくは60~80%(w/w)の範囲の量の不溶性ホエータンパク質粒子を含む。
【0037】
不溶性ホエータンパク質粒子は、1~30%(w/w)の範囲の濃度の溶解ホエータンパク質の熱変性により生成することができる。ホエータンパク質濃度が略5%(w/w)より高い場合、変性中及び/又は変性後に高い剪断レベルを用いて、大きすぎる粒子の形成を回避する。
【0038】
不溶性ホエータンパク質粒子及び不溶性ホエータンパク質粒子を含む供給源の製造に関するさらなる詳細は、米国特許第6,605,311号明細書、国際公開第2008/063,115号パンフレット、独国特許出願公開第19950240A1号明細書、独国特許出願公開第102012216990A1号明細書、国際公開第2010/120199号パンフレット、国際公開第2007/110411号パンフレット及び国際公開第2015/059248A1号パンフレットに見出され、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、不溶性ホエータンパク質粒子源は、1~30%(w/w)の量の可溶性ホエータンパク質を含み、且つpH5~8の範囲のpHを有する溶液を、ホエータンパク質の総量に対して少なくとも30%(w/w)の不溶性ホエータンパク質粒子を得るのに十分な時間にわたり、少なくとも70℃の温度に供することにより調製される変性ホエータンパク質製品である。変性ホエータンパク質製品は、任意選択により粉末に変換され得る。
【0040】
可溶性ホエータンパク質を含む溶液は、好ましくは、総固形物に対して少なくとも50%のタンパク質を含有する。より好ましくは、可溶性ホエータンパク質を含む溶液は、総固形物に対して少なくとも60%のタンパク質を含有する。さらにより好ましくは、可溶性ホエータンパク質を含む溶液は、総固形物に対して少なくとも70%のタンパク質を含有する。より好ましくは、可溶性ホエータンパク質を含む溶液は、総固形物に対して少なくとも80%のタンパク質を含有する。より好ましくは、可溶性ホエータンパク質を含む溶液は、総固形物に対して少なくとも90%のタンパク質を含有し、さらにより好ましくは、可溶性ホエータンパク質を含む溶液は、総固形物に対して約100%のタンパク質を含有する。
【0041】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物は、最大で50ミクロンの体積加重平均粒径を有する。好ましくは、液体組成物は、最大で40ミクロンの体積加重平均粒径を有する。より好ましくは、液体組成物は、最大で30ミクロンの体積加重平均粒径を有する。さらにより好ましくは、液体組成物は、最大で20ミクロンの体積加重平均粒径を有する。より好ましくは、液体組成物は、最大で10ミクロンの体積加重平均粒径を有する。さらにより好ましくは、液体組成物は、最大で5ミクロンの体積加重平均粒径を有する。より好ましくは、液体組成物は、最大で1ミクロンの体積加重平均粒径を有する。
【0042】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物は、0.2~50ミクロンの範囲の体積加重平均粒径を有する。さらにより好ましくは、液体組成物は、0.3~30ミクロンの範囲の体積加重平均粒径を有する。より好ましくは、液体組成物は、0.4~20ミクロンの範囲の体積加重平均粒径を有する。好ましくは、液体組成物は、0.5~10ミクロンの範囲の体積加重平均粒径を有する。最も好ましくは、液体組成物は、0.5~5ミクロンの範囲の体積加重平均粒径を有する。
【0043】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物のタンパク質の総量は、少なくとも4%(w/w)である。本発明の別の好ましい実施形態では、液体組成物のタンパク質の総量は、少なくとも6%(w/w)である。好ましくは、液体組成物のタンパク質の総量は、少なくとも8%(w/w)である。より好ましくは、液体組成物のタンパク質の総量は、少なくとも10%である。最も好ましくは、液体組成物のタンパク質の総量は、少なくとも12%(w/w)である。
【0044】
例えば、タンパク質の総量は、4~25%(w/w)の範囲であり得る。好ましくは、タンパク質の総量は、6~22%(w/w)の範囲であり得る。より好ましくは、タンパク質の総量は、8~18%(w/w)の範囲であり得る。より好ましくは、タンパク質の総量は、10~16%(w/w)の範囲であり得る。より好ましくは、タンパク質の総量は、12~14%(w/w)の範囲であり得る。さらにより好ましくは、タンパク質の総量は、11~13%(w/w)の範囲であり得る。
【0045】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物の総タンパク質の少なくとも80%(w/w)がホエータンパク質である。好ましくは、液体組成物の総タンパク質の少なくとも85%(w/w)がホエータンパク質である。より好ましくは、液体組成物の総タンパク質の少なくとも90%(w/w)がホエータンパク質である。さらにより好ましくは、液体組成物の総タンパク質の少なくとも95%(w/w)がホエータンパク質である。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物の総タンパク質の98~100%(w/w)がホエータンパク質である。
【0046】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物のタンパク質の総量は、最大で20%(w/w)のカゼインを含む。より好ましくは、液体組成物のタンパク質の総量は、最大で15%(w/w)のカゼインを含む。より好ましくは、液体組成物のタンパク質の総量は、最大で10%(w/w)のカゼインを含む。
【0047】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物のタンパク質の総量は、最大で5%(w/w)のカゼインを含む。好ましくは、液体組成物のタンパク質の総量は、最大で4%(w/w)のカゼインを含む。さらにより好ましくは、液体組成物のタンパク質の総量は、最大で3%(w/w)のカゼインを含む。
【0048】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)の液体組成物のホエータンパク質は、3~30%(w/w)のカゼイノマクロペプチド(CMP)、好ましくは10~20%(w/w)のCMPを含む。より好ましくは、ステップa)の液体組成物のホエータンパク質は、10~30%(w/w)のカゼイノマクロペプチド(CMP)、さらにより好ましくは15~25%(w/w)のCMPを含み得る。
【0049】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物は、少なくとも100mg/100mlの総量のCa2+及びMg2+カチオンを含む。好ましくは、液体組成物は、少なくとも120mg/100mlの総量のCa2+及びMg2+カチオンを含む。より好ましくは、液体組成物は、少なくとも150mg/100mlの総量のCa2+及びMg2+カチオンを含む。より好ましくは、液体組成物は、少なくとも200mg/100mlの総量のCa2+及びMg2+カチオンを含む。さらにより好ましくは、液体組成物は、少なくとも300mg/100ml、例えば少なくとも320mg/100mlなどの総量のCa2+及びMg2+カチオンを含む。
【0050】
例えば、液体組成物のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、120~800mg/100mlの範囲であり得る。好ましくは、液体組成物のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、120~350mg/100mlの範囲であり得る。より好ましくは、液体組成物のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、130~325mg/100mlの範囲であり得る。さらにより好ましくは、液体組成物のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、150~325mg/100mlの範囲であり得る。好ましくは、液体組成物のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、150~350mg/100mlの範囲であり得る。
【0051】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で90である。より好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で80である。さらにより好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で70である。
【0052】
本発明の別の好ましい実施形態では、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で50である。より好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で35である。さらにより好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で25である。
【0053】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、5~100の範囲である。より好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、10~50の範囲である。さらにより好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、15~35の範囲である。
【0054】
本発明の別の好ましい実施形態では、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、10~90の範囲である。より好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、15~80の範囲である。さらにより好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、20~70の範囲である。
【0055】
Ca2+及びMg2+カチオンは、例えば、不溶性塩中に結合した及び/又は液体組成物の成分と錯化した、溶解したイオンの形態で存在し得る。
【0056】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、Ca2+及びMg2+カチオンの少なくとも50%(w/w)が溶解形態で液体組成物中に存在する。好ましくは、Ca2+及びMg2+カチオンの少なくとも70%(w/w)が溶解形態で液体組成物中に存在する。より好ましくは、Ca2+及びMg2+カチオンの少なくとも90%(w/w)が溶解形態で液体組成物中に存在する。さらにより好ましくは、Ca2+及びMg2+カチオンの少なくとも95%(w/w)が溶解形態で液体組成物中に存在する。
【0057】
高濃度の溶解Ca2+及びMg2+を得るのに好適な供給源は、Ca2+及びMg2+の水溶性塩、例えばCaCl又はMgClなどである。
【0058】
本発明との関連において、「水溶性」という用語は、対象の成分が脱塩水中において25℃で少なくとも2g/100mLの溶解度を有することを意味する。
【0059】
本発明との関連において、「水不溶性」という用語は、対象の成分が脱塩水中において25℃で最大で1g/100mLの溶解度を有することを意味する。
【0060】
溶解形態のCa2+及びMg2+カチオンの相対的な量は、液体組成物中のCa2+及びMg2+カチオンの総量を測定し、続いて液体組成物の試料を62000gで30分間の遠心分離にかけ、上清中のCa2+及びMg2+カチオンの総量を決定することにより容易に決定することができる。溶解形態のCa2+及びMg2+カチオンの相対的な量は、上清中に留まる、液体組成物のCa2+及びMg2+カチオンの総量の百分率として決定される。
【0061】
本発明の別の好ましい実施形態では、Ca2+及びMg2+カチオンの最大で49%(w/w)が溶解形態で液体組成物中に存在する。好ましくは、Ca2+及びMg2+カチオンの最大で30%(w/w)が溶解形態で液体組成物中に存在する。より好ましくは、Ca2+及びMg2+カチオンの最大で20%(w/w)が溶解形態で液体組成物中に存在する。さらにより好ましくは、Ca2+及びMg2+カチオンの最大で10%(w/w)が溶解形態で液体組成物中に存在する。
【0062】
高濃度の不溶性Ca2+及びMg2+を得るのに好適な供給源は、Ca2+及びMg2+の水不溶性塩、例えばリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムなどである。不溶性Ca2+の特に興味深い供給源は、ミルクミネラル粉末であり、これは、多くの場合、Ca2+に加えて相当量のMg2+も含む。
【0063】
カルシウムは、多くの場合、マグネシウムよりも多量に液体組成物中に存在する。Ca2+とMg2+との間の重量比は、例えば、1~1000の範囲、好ましくは10~100の範囲であり得る。
【0064】
或いは、カルシウムよりもマグネシウムが多量に液体組成物中に存在し得る。したがって、Ca2+とMg2+との間の重量比は、例えば、0.001~1の範囲、好ましくは0.01~0.1の範囲であり得る。
【0065】
液体組成物は、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、銅又はそれらの組み合わせなどの他の二価カチオンをさらに含むことができる。しかしながら、これらは、典型的には少なくともカルシウムよりも低い濃度で存在する。したがって、タンパク質とCa2+及びMg2+の総量との間の重量比を計算する際、カルシウム及びマグネシウム以外の他の二価金属カチオンを考慮する必要はない。
【0066】
果実、脂質、炭水化物、ビタミン、甘味料、炭水化物系安定剤及び/又は乳化剤などの他の成分の添加は、ステップb)中、好ましくは酸性化後、且つ酸性化後の熱処理前に行われ得る。いくつかの実施形態では、他の成分の添加は、ステップb)の熱処理ステップ後に行われる。
【0067】
いくつかの特に好ましい実施形態では、酸性液体組成物は、酸性化後の熱処理に供され、続いてステップc)の均質化に供され、最終的に、好ましくは無菌条件下において、無菌化された果実調製物と混合され、最終的にパッケージングされる。
【0068】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップa)の液体組成物は、脂質をさらに含む。いくつかの実施形態では、脂質は、ミルク脂質及び/又は野菜脂質を含む。例えば、液体組成物は、例えば、クリーム、バター、バター脂肪、無水ミルク脂肪、ホエー脂肪及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のミルク脂質源を含むことができる。
【0069】
好ましい実施形態では、脂質源は、クリームを含むか又はさらにクリームから本質的になる。
【0070】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、脂質の少なくとも50%(w/w)は、ミルク脂肪球の形態である。好ましくは、脂質の少なくとも70%(w/w)は、ミルク脂肪球の形態である。より好ましくは、脂質の少なくとも80%(w/w)は、ミルク脂肪球の形態である。さらにより好ましくは、脂質の少なくとも90%(w/w)は、ミルク脂肪球の形態である。
【0071】
不溶性ホエータンパク質粒子の供給源は、例えば、総固形物に対して0.1~9%(w/w)の範囲のミルク脂質も含むことができる。不溶性ホエータンパク質粒子の供給源は、例えば、例えば総固形物に対して1~6%(w/w)の範囲のミルク脂質を含むことができる。
【0072】
野菜脂質は、野菜脂肪を含むか又はさらに野菜脂肪からなることができる。
【0073】
野菜脂肪は、菜種油、ヒマワリ油、オリーブ油、パーム脂肪、パーム核脂肪及びココナッツ脂肪並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の脂肪を含むことができる。
【0074】
加えて、上述した植物油の水素付加型も野菜脂肪として有用であり得る。
【0075】
好ましい実施形態では、ステップa)の液体組成物は、最大で3%(w/w)の量の脂質を含む。好ましくは、ステップa)の液体組成物は、最大で2%(w/w)の量の脂質を含む。さらにより好ましくは、ステップa)の液体組成物は、最大で1%(w/w)の量の脂質を含む。
【0076】
好ましい実施形態では、ステップa)の液体組成物は、少なくとも4%(w/w)の量の脂質を含む。好ましくは、ステップa)の液体組成物は、少なくとも7%(w/w)の量の脂質を含む。さらにより好ましくは、ステップa)の液体組成物は、少なくとも10%(w/w)の量の脂質を含み、さらにより好ましくは、ステップa)の液体組成物は、少なくとも11%(w/w)の量の脂質を含む。
【0077】
例えば、ステップa)の液体組成物は、0.1~20%(w/w)の範囲の量の脂質を含む。一実施形態では、ステップa)の液体組成物は、4~18%(w/w)の範囲の量の脂質を含む。別の実施形態では、ステップa)の液体組成物は、6~15%(w/w)の範囲の量の脂質を含む。好ましい実施形態では、ステップa)の液体組成物は、8~12%(w/w)の範囲の量の脂質を含む。最も好ましくは、ステップa)の液体組成物は、10~11%(w/w)の範囲の量の脂質を含む。
【0078】
ステップa)の液体組成物は、炭水化物をさらに含むことができる。炭水化物は、例えば、二糖及び/又は単糖を含むことができる。
【0079】
炭水化物は、通常、ショ糖、麦芽糖、乳糖、右旋糖、ブドウ糖、果糖、ガラクトース若しくはそれらの組み合わせを含むか又はさらにこれらからなる。
【0080】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物は、少なくとも5%(w/w)の総量の炭水化物を含む。好ましくは、液体組成物は、少なくとも10%(w/w)の総量の炭水化物を含み、さらにより好ましくは、液体組成物は、少なくとも15%(w/w)の総量の炭水化物を含み、さらにより好ましくは、液体組成物は、最大で20%(w/w)の総量の炭水化物を含む。好ましくは、液体組成物は、例えば、少なくとも30%(w/w)の総量の炭水化物を含む。
【0081】
別の好ましい実施形態では、炭水化物の総量は、7~16%(w/w)の量で存在する。好ましくは、炭水化物の総量は、8~12%(w/w)の量で存在する。
【0082】
本発明者らは、液体酸性乳製品の改善された安定性及び低下されたゲル形成傾向が、炭水化物の総量が少なくとも7%(w/w)、例えば7~16%(w/w)の範囲である場合に得られると思われることを認めた。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態では、液体組成物は、最大で4%(w/w)の総量の炭水化物を含む。好ましくは、液体組成物は、最大で3%(w/w)の総量の炭水化物を含む。さらにより好ましくは、液体組成物は、最大で2%(w/w)の総量の炭水化物を含む。さらにより好ましくは、液体組成物は、最大で0.5%(w/w)の総量の炭水化物を含む。最も好ましくは、液体組成物は、最大で0.01%(w/w)の総量の炭水化物を含む。炭水化物は、例えば、乳糖を含むか又はさらに乳糖からなり得る。
【0084】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物は、最大で10%(w/w)、好ましくは最大で4%(w/w)、さらにより好ましくは最大で3(w/w)、さらにより好ましくは最大で2%(w/w)、例えば最大で1%(w/w)、例えば最大で0.5%(w/w)などの総量の乳糖を含む。
【0085】
別の好ましい実施形態では、乳糖の総量は、0.5~10%(w/w)、例えば2~4%(w/w)などの量で存在する。
【0086】
或いは、液体組成物は、乳糖が低減されている(100g当たり1.0g未満の乳糖)か又はさらに乳糖を含まない(100g当たり0.01g未満の乳糖)。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態では、液体組成物は、最大で4%(w/w)の総量の乳糖を含む。好ましくは、液体組成物は、最大で3%(w/w)の総量の乳糖を含む。さらにより好ましくは、液体組成物は、最大で2%(w/w)の総量の乳糖を含み、さらにより好ましくは、液体組成物は、最大で0.5%(w/w)の総量の乳糖を含む。
【0088】
液体組成物は、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ビタミンB12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、コリン、ビタミンB8、それらの塩、それらの誘導体及びそれらの組み合わせなどの1種以上のビタミン及び同様の他の成分をさらに含むことができる。
【0089】
より多くのビタミンの1つの含有量は、例えば、液体組成物の乾燥重量に対して0.01~1%(w/w)の範囲、好ましくは0.1~0.5%(w/w)の範囲であり得る。
【0090】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ビタミンは、ビタミンDを含むか又はさらにビタミンDから本質的になる。
【0091】
いくつかの好ましい実施形態では、液体組成物は、0.5~2.5マイクログラム/100mlの範囲の量のビタミンDを含み、より好ましくは、液体組成物は、1.0~1.5マイクログラム/100mlの範囲の量のビタミンDを含む。さらにより好ましくは、液体組成物は、1.1~1.3マイクログラム/100mlの範囲の量のビタミンDを含み、より好ましくは、液体組成物は、1.15~1.25マイクログラム/100mlの範囲の量のビタミンDを含む。好ましい実施形態では、液体組成物は、1.2マイクログラム/100mlの量のビタミンDを含む。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態では、液体組成物は、ビタミンD及びビタミンKの両方を含む。
【0093】
本発明者らは、Ca2+及び/又はMg2+カチオン並びにビタミンDの両方で強化した高タンパク酸性液体乳製品が依然として容認可能な感覚特性を有することを見出した。
【0094】
ステップa)の液体組成物は、典型的には、4~50%(w/w)の範囲の量の総固形物(TS)を含む。好ましくは、ステップa)の液体組成物は、例えば、10~45%(w/w)の範囲の量の総固形物(TS)を含む。より好ましくは、ステップa)の液体組成物は、20~40%(w/w)の範囲の量の総固形物(TS)を含む。さらにより好ましくは、ステップa)の液体組成物は、28~38%(w/w)の範囲の量の総固形物(TS)を含む。より好ましくは、ステップa)の液体組成物は、25~36%(w/w)の範囲の量の総固形物(TS)を含む。
【0095】
ステップa)の液体組成物は、追加の成分、例えば甘味料、炭水化物安定剤及び乳化剤などを単独で又は組み合わせでさらに含むことができる。
【0096】
液体組成物は、より多くの非炭水化物天然又は人工甘味料の1つをさらに含むことができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、液体組成物は、糖ではない1種以上の天然甘味料を含む。これらの天然甘味料は、第2の甘味料の成分として、単独で又は記載した炭水化物甘味料と組み合わせて提供することができる。天然非炭水化物甘味料は、例えば、ラカンカ(Momordica Grosvenorii)(モグロシドIV又はV)抽出物、ルイボス抽出物、ハニーブッシュ抽出物、ステビア抽出物、レバウジオシドA、タウマチン、ブラゼイン、グリチルリチン酸及びその塩、クルクリン、モネリン、フィロズルチン(Phylloducin)、ルブソシド、マビンリン、ズルコシドA、ズルコシドB、シアメノシド、モナチン及びその塩(モナチンSS、RR、RS、SR)、ヘルナンズルチン、フィロズルチン、グリシフィリン、フロリジン、トリロバチン、バイユノシド、オスラジン、ポリポドシドA、プテロカリオシドA、プテロカリオシドB、ムクロジオシド、フロミソシドI、ペリアンドリンI、アブルソシドA、シクロカリオシドI、エリトリトール、イソマルツロース並びに/又は天然ポリオール、例えばマルチトール、マンニトール、ラクチトール、ソルビトール、イノシトール、キシリトール、トレイトール、ガラクチトールなど、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、液体組成物は、1種以上の人工甘味料を含む。これらの人工甘味料は、第1の甘味料成分として、単独で又は上記のような他の甘味料と組み合わされて提供され得る。非炭水化物の人工甘味料は、例えば、アスパルテーム、シクラメート、スクラロース、アセスルファムK、ネオテーム、サッカリン、ネオヘスピリジンジヒドロカルコン、ステビア抽出物、レバウジオシドA、タウマチン、ブラゼイン、グリチルリチン酸及びその塩、クルクリン、モネリン、フィロズルチン、ルブソシド、マビンリン、ズルコシドA、ズルコシドB、シアメノサイド、モナチン及びその塩(モナチンSS、RR、RS、SR)並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態では、甘味料は1種以上の高甘味度甘味料(HIS)を含むか又はそれらから構成されることが特に好ましい。HISは、天然及び人工甘味料の何れにも見出され、通常、スクロースの少なくとも10倍の甘味度を有する。有用なHISの非限定的な例は、アスパルテーム、シクラメート、スクラロース、アセスルファムK、ネオテーム、サッカリン、ネオヘスピリジンジヒドロカルコン及びこれらの組み合わせである。
【0100】
本発明との関連において、「高強度甘味料」という用語は、ショ糖により提供される甘味強度の少なくとも10倍の1g当たりの甘味強度(25℃の水中で試験して)を提供する甘味料に関する。
【0101】
HISを使用する場合、その総量は、通常、0.01~2%(w/w)の範囲である。例えば、HISの総量は、0.05~1.5%(w/w)の範囲であり得る。或いは、HISの総量は、0.1~1.0%(w/w)の範囲であり得る。
【0102】
甘味料は、1種以上のポリオール甘味料をさらに含むか又はそれから構成されることが好ましくあり得る。有用なポリオール甘味料の非限定的な例は、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、ソルビトール、イノシトール、キシリトール、トレイトール、ガラクチトール及びそれらの組み合わせである。
【0103】
ポリオール甘味料を使用する場合、その総量は、通常、1~20%(w/w)の範囲である。例えば、ポリオール甘味料の総量は、2~15%(w/w)の範囲であり得る。或いは、ポリオール甘味料の総量は、4~10%(w/w)の範囲であり得る。
【0104】
液体組成物は、例えば、ローカストビーンゴム、グァーゴム、アルギネート、セルロース、キサンタンゴム、カルボキシメチルセルロース、微結晶セルロース、カラギーナン、ペクチン、イヌリン及びそれらの混合物などの炭水化物系安定剤をさらに含むことができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、炭水化物系安定剤のレベルを低減又はさらに回避することができる。したがって、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物は、最大で1%(w/w)の炭水化物系安定剤、好ましくは最大で0.1%(w/w)の炭水化物系安定剤を含み、さらにより好ましくは炭水化物系安定剤を含まない。
【0106】
液体組成物は、1種以上の乳化剤をさらに含み得る。使用される適切な乳化剤は、モノ-及びジ-グリセリド、モノ-及びジ-グリセリドのクエン酸エステル、モノ-及びジ-グリセリドのジアセチル酒石酸エステル、ポリソルベート、レシチン又は脂肪酸のポリオールエステル(脂肪酸のプロピレングリコールモノエステルなど)並びに天然乳化剤(卵黄、バターミルク、生アカシアゴム、米ぬか抽出物又はこれらの混合物など)である。
【0107】
より多くの乳化剤の1つの含有量は、液体組成物の総固形物に対して、例えば0.01~3%(w/w)の範囲、例えば0.1~0.5%(w/w)の範囲であり得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、乳化剤が単独で又は炭水化物系安定剤と組み合わせて使用される。
【0109】
液体組成物のpHは、25℃で測定した場合、典型的には6.0~7.0の範囲である。好ましくは、pHは、6~6.5の範囲である。
【0110】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、液体組成物は、
- 少なくとも20%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも30%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含む変性ホエータンパク質製品、
- 任意選択により脂質源、
- 任意選択により炭水化物源、
- 任意選択により追加の成分、
- 水
を混合し、それにより混合物を調製することによって調製される。
【0111】
変性ホエータンパク質製品は、好ましくは、ホエータンパク質濃縮物又はホエータンパク質分離物をベースとする。好ましくは、変性ホエータンパク質製品は、少なくとも70%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも50%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含む。さらにより好ましくは、変性ホエータンパク質製品は、少なくとも75%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも60%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含む。
【0112】
変性ホエータンパク質製品は、好ましくは、最大で5ミクロンの体積加重平均粒径を有する。好ましくは、変性ホエータンパク質製品は、好ましくは、最大で4ミクロンの体積加重平均粒径を有する。より好ましくは、変性ホエータンパク質製品は、好ましくは、最大で3ミクロンの体積加重平均粒径を有する。さらにより好ましくは、変性ホエータンパク質製品は、好ましくは、最大で2ミクロンの体積加重平均粒径を有する。最も好ましくは、変性ホエータンパク質製品は、好ましくは、最大で1ミクロンの体積加重平均粒径を有する。
【0113】
好ましい実施形態では、混合物は、脂質源をさらに含む。好ましい実施形態では、脂質源は、クリームを含むか又はさらにクリームから本質的になる。好ましくは、脂質源は、0.1~20%(w/w)の範囲の量で混合物中に存在する。より好ましくは、脂質源は、8~12%(w/w)の範囲の量で混合物中に存在する。
【0114】
好ましい実施形態では、混合物は、炭水化物源をさらに含む。好ましい実施形態では、炭水化物源は、0.1~30%(w/w)の量で混合物中に存在する。より好ましくは、炭水化物源は、7~16%(w/w)の範囲の量で混合物中に存在する。
【0115】
混合物は、追加の成分、例えばビタミン、甘味料、炭水化物安定剤、乳化剤、果実などを単独で又は組み合わせでさらに含むことができる。
【0116】
混合物は、液体組成物として直接使用することができる。或いは、混合物は、例えば、水和、予備加熱及び/又は均質化などの追加の加工に供され得る。
【0117】
液体組成物は、成分を適量の水と混合し、混合物の成分を典型的には1~60℃の範囲の温度、例えば1~10℃の範囲の温度で0.5~24時間、好ましくは1~2時間水和させることにより、有利に調製することができる。
【0118】
ステップa)の液体組成物は、例えば、水和混合物を40~65℃の範囲の温度、好ましくは55~65℃の範囲の温度に予備加熱した後、混合物を均質化することにより提供することができる。均質化ステップは、典型的には、100~1000bar、好ましくは200~300barの総圧力低下を伴い、例えば単一又は2ステップモードで行うことができる。好ましくは、均質化は、第1段階で150~250barの圧力低下及び第2段階で20~70barの圧力低下を有する2段階モードで行われる。
【0119】
液体混合物のpHは、典型的にはpH6~8の範囲、好ましくはpH6~7の範囲、例えばpH6.1~6.7の範囲などである。
【0120】
ステップb)は、液体組成物を少なくとも1つの酸性化ステップ及び少なくとも1つの熱処理ステップに供することを伴う。これらのステップは、任意の順序で実行することができる。
【0121】
ステップb)の熱処理は、酸性化前に行われる熱処理ステップであり得、その場合、酸性化前の熱処理と呼ばれる。或いは、ステップb)の熱処理は、酸性化前に行われる熱処理ステップであり得、その場合、酸性化後の熱処理と呼ばれる。
【0122】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)は、液体組成物を酸性化前の熱処理、次いで酸性化ステップに供することを含む。
【0123】
酸性化前の熱処理の使用は、酸性化が、例えば、細菌培養物と、微生物増殖を加速できる高温とを用いた長時間のインキュベーションを伴う場合に特に有用である。
【0124】
本発明の別の好ましい実施形態では、ステップb)は、液体組成物を酸性化前の熱処理、次いで酸性化ステップ、次いで酸性化後の熱処理に供することを含む。
【0125】
酸性化後のステップの利益は、酸性液体組成物の微生物負荷が低減され、製品の貯蔵寿命が延長することである。
【0126】
本発明のさらなる別の好ましい実施形態では、ステップb)は、液体組成物を酸性化ステップ、次いで酸性化後の熱処理に供することを含む。しかしながら、酸性化前の熱処理は、省略される。この実施形態は、例えば、細菌培養物を使用せずに化学的酸性化剤が液体組成物に直接添加され、10℃を超える長時間のインキュベーションが必要でない場合に興味深い。
【0127】
本発明の好ましい実施形態では、ステップb)の少なくとも1つの熱処理ステップは、生存可能な大腸菌(Escherichia coli)の少なくとも5-log10低下を得る、即ち99.999%が死滅するのに十分な時間にわたり、少なくとも60℃の温度に加熱することを含む。
【0128】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)の少なくとも1つの熱処理ステップは、生存可能な大腸菌(Escherichia coli)の少なくとも5-log10低下を得るのに十分な時間、例えば少なくとも15秒間にわたり、少なくとも72℃の温度に加熱することを含む。
【0129】
本発明の別の好ましい実施形態では、ステップb)の少なくとも1つの熱処理ステップは、生存可能な大腸菌(Escherichia coli)の少なくとも5-log10低下を得るのに十分な時間、例えば少なくとも5分間、好ましくは5~20分間の範囲の時間にわたり、少なくとも80℃の温度に加熱することを含む。
【0130】
本発明の好ましい実施形態では、ステップb)の少なくとも1つの熱処理ステップの温度は、5~15分間の時間で80~95℃の範囲である。
【0131】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、酸性化後のプロセスは、酸性液体組成物を68~95℃に25~60秒間加熱する。これは、酸性乳製品の貯蔵寿命を延長するサーミゼーション(thermisation)プロセスとして認知され、またサーミゼーションプロセスとして用いられ得る。
【0132】
本発明者らは、本発明がサーミゼーションに供された高タンパク酸性液体乳製品の粘度も低下させる兆候を認めた。
【0133】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)の熱処理ステップに次いで、液体組成物を最大で50℃の温度に冷却する。これは、特に、好ましくは次いで最大で50℃又はインキュベーションが行われる温度に冷却する、酸性化前の熱処理の場合である。
【0134】
或いは、冷却は、液体組成物を最大で10℃、好ましくは最大で6℃の温度に冷却し得る。
【0135】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップb)とステップc)との間に能動的な冷却を行うことなく、酸性化後の熱処理の直後にステップc)の均質化が行われる。これらの実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品を好適な容器に温充填(warm-fill)し、密封することがさらに有利である。
【0136】
ステップb)では、ステップa)の液体組成物は、酸性化剤を使用する少なくとも1つの酸性化ステップに供される。
【0137】
本発明の好ましい実施形態では、酸性化剤は、一般にスターター培養物と呼ばれる細菌培養物であり、その場合、酸性化剤の添加は、冷却液体組成物の接種と認知することができ、その場合、接種された液体組成物が得られる。
【0138】
したがって、本発明のいくつかの実施形態では、酸性化剤は、化学酸性化剤を含む。
【0139】
本発明との関連において、「化学酸性化剤」という用語は、混合物のpHを段階的に又は瞬時に低下させることができる化合物に関する。
【0140】
化学酸性化剤は、例えば、食品として認められる酸(食品酸とも呼ばれる)及び/又はラクトンであり得る。有用な酸の例には、クエン酸、酒石酸及び/又は酢酸などのカルボン酸がある。有用なラクトンの例には、グルコノデルタラクトン(GDL)がある。
【0141】
本発明のいくつかの実施例では、化学酸性化剤は、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、リン酸又はグルコノデルタラクトンからなる群から選択される1種以上の成分を含む。
【0142】
化学酸性化剤の有効濃度は、液体組成物の特定の組成に依る。一般に、化学酸性化剤は、混合物のpHを最大でpH5.5、好ましくはpH5.0、例えばpH4.6に低下させるのに十分な量を使用することが好ましい。
【0143】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、酸性化剤は、スターター培養物を含むか又はスターター培養物である。
【0144】
原理的には、ヨーグルトタイプの酸性乳製品の製造に従来使用されている任意の種類のスターター培養物を使用し得る。乳業で使用されているスターター培養物は、普通、乳酸菌の菌株の混合物であるが、単一の菌種のスターター培養物も本発明において有用であり得る。したがって、好ましい実施形態では、本プロセスの1種以上のスターター培養物は、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、リューコノストック属(Leuconostoc)、ラクトコーカス属(Lactococcus)及びストレプトコッカス属(Streptococcus)からなる群から選択される乳酸菌の菌種である。これらの乳酸菌の菌種の1種以上を含む市販のスターター培養物が本発明において有用であり得る。
【0145】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、スターター培養物は、1種以上の耐塩性スターター培養物を含む。
【0146】
酸性化剤が細菌性の場合、液体組成物のpHは、最大でpH5.5、好ましくは最大でpH5.0、例えば最大でpH4.6などまで低下させることが一般に好ましい。
【0147】
酸性化剤の添加量は、通常、液体組成物の量に比べて比較的少ない。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態では、酸性化剤は、液体組成物を最大で1.05倍に、好ましくは最大で1.01倍に、さらにより好ましくは最大で1.005倍に希釈する。
【0149】
香味料及び/又は芳香剤は、ステップa)において又は代替的にステップb)中及び/若しくはその後に液体組成物に添加されて、香味のついた酸性乳製品を得ることができる。香味料は、固体として添加し得るが、液体の形態で添加することが好ましい。しかしながら、多くの場合、香味料は、酸性化後に添加することが好ましい。
【0150】
香味料は、果実として添加することができる。果実は、2~30%(w/w)、例えば5~25%(w/w)、例えば15~25%(w/w)など、例えば略20%(w/w)の量で添加することができる。果実は、例えば、イチゴ、ラズベリー、ブルーベリー、リンゴ又はダイオウ及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0151】
ステップb)中、酸性化剤は、ステップa)の液体組成物のpHを低下させることができる。
【0152】
液体組成物が、接種された液体組成物の場合、液体組成物は、スターター培養物が代謝的に活性となって酸性液体組成物を生成することが可能な条件下でインキュベートされる。いくつかの好ましい実施形態では、接種液体組成物は、所望のpHに達するまで、25℃~43℃、好ましくは36~42℃の温度でインキュベートされる。発酵は、温度を約10℃に低下させることによって止めることができる。
【0153】
液体組成物が化学酸性化剤を含む場合、化学酸性化剤は、通常、混合物の一部を形成すると直ちに混合物のpHを低下させ始める。ラクトン及び徐々に溶解する酸などの化学酸性化剤は、それらが水と反応又は溶解するにつれ、pHを徐々に低下させるであろう。
【0154】
ステップb)における液体組成物の温度は、通常、20~50℃の範囲、好ましくは32~45℃の範囲である。
【0155】
ステップc)は、酸性熱処理液体組成物を均質化することを伴い、また任意選択である。したがって、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、方法は、ステップc)を含む。本発明の別の好ましい実施形態では、方法は、ステップc)を含まない。
【0156】
均質化は、乳製品技術の分野で周知のプロセスであり、したがって例えば1段階又は2段階プロセスとして行うことができる。
【0157】
液体組成物の均質化は、例えば、2段階プロセスとして実行することができ、第1段階(酸性化前の液体組成物の均質化)は、100~300barの圧力を用い、第2段階(酸性化後の液体組成物の均質化)は、少なくとも20bar、例えば少なくとも30bar、例えば少なくとも50又は少なくとも100barの圧力低下を用いる。
【0158】
したがって、均質化の総圧力低下は、5~1000bar、例えば40~300bar、例えば50~250barの範囲であり得る。
【0159】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ステップc)の均質化は、ヨーグルトを滑らかにするのに多くの場合に使用されるプロセスステップと同様に、5~80barの総圧力低下、例えば10~60barの総圧力低下などを伴う。
【0160】
別の好ましい実施形態では、均質化ステップc)後に低温殺菌果実及び/又は他の成分が添加される。
【0161】
ステップd)は、ステップb)又はc)の酸性熱処理液体組成物に由来する高タンパク酸性液体乳製品をパッケージングすることを伴い、また任意選択である。
【0162】
高タンパク液体酸性乳製品が別の食品の成分として使用される場合、パッケージングは必要でない。そのため、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本方法は、したがって、ステップd)を含まない。
【0163】
しかしながら、本発明の別の好ましい実施形態では、本発明の方法は、ステップd)を含む。
【0164】
本発明との関連において、「酸性熱処理液体組成物に由来する高タンパク酸性液体乳製品」という表現は、高タンパク酸性液体乳製品の固形物の少なくとも30%が酸性熱処理液体組成物により提供されていることを意味する。好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品の固形物の少なくとも50%が酸性熱処理液体組成物により提供されている。より好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品の固形物の少なくとも70%が酸性熱処理液体組成物により提供されている。さらにより好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品の固形物の少なくとも90%が酸性熱処理液体組成物により提供されている。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品の固形物の実質的に全部が酸性熱処理液体組成物により提供されている。
【0165】
いくつかの好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品は、酸性熱処理液体組成物と任意選択により1種以上の追加の成分とを含むか又はさらにそれらからなる。
【0166】
いくつかの好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品は、少なくとも40%(w/w)の酸性熱処理液体組成物と最大で60%(w/w)の追加の成分とを含む。好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品は、少なくとも50%(w/w)の酸性熱処理液体組成物と最大で50%(w/w)の追加の成分とを含む。より好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品は、少なくとも60%(w/w)の酸性熱処理液体組成物と最大で40%(w/w)の追加の成分とを含む。さらにより好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品は、少なくとも70%(w/w)の酸性熱処理液体組成物と最大で30%(w/w)の追加の成分とを含む。
【0167】
本明細書に記載したように、追加の成分は、例えば、果実調製物及び/又は甘味料であり得る。
【0168】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、酸性熱処理液体組成物は、高タンパク酸性液体乳製品である。
【0169】
パッケージングステップd)は、任意の適切なパッケージング技術を伴い得、高タンパク酸性液体乳製品のパッケージングには、任意の適切な容器が使用され得る。
【0170】
ステップd)のパッケージングは、例えば、無菌のパッケージング、即ち製品が無菌の条件下でパッケージングされることを伴い得る。例えば、無菌のパッケージングは、無菌充填システムを使用して行うことができ、好ましくは製品を1つ以上の無菌の容器に充填することを伴う。
【0171】
有用な容器の例としては、例えば、瓶、カートン、ブリック容器、ポーチ及び/又は袋が挙げられる。
【0172】
パッケージングは、室温又はそれより低い温度で行われることが好ましい。したがって、製品の温度は、パッケージング中、最大で30℃が好ましく、好ましくは最大で25℃、さらにより好ましくは最大で20℃、例えば最大で10℃である。
【0173】
パッケージング中の製品の温度は、例えば、2~30℃の範囲、好ましくは5~25℃の範囲であり得る。
【0174】
或いは、例えば方法が酸性製品流の熱処理を伴う場合、パッケージングは、少なくとも55℃の温度により行われ得る。したがって、パッケージング中、製品の温度は、好ましくは、少なくとも60℃、例えば少なくとも65℃などであり得る。
【0175】
パッケージング中の製品の温度は、例えば、55~75℃の範囲、好ましくは60~70℃の範囲であり得る。
【0176】
本発明者らは、高タンパク酸性液体乳製品の貯蔵寿命が、ヨーグルト様製品が依然として暖かいうちに充填/パッケージングすることにより改善されることを見出した。製品のパッケージは、続いて、一般に室温又は最大で10℃、例えば略4~5℃などの温度に冷却される。
【0177】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品を製造する方法は、
a)液体組成物を提供するステップであって、液体組成物は、
- 10~14%(w/w)の範囲の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも50%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 最大で15ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- 総タンパク質の少なくとも90%(w/w)は、ホエータンパク質であり、
- 液体組成物は、好ましくは、ミルク脂肪球の形態の少なくとも5%(w/w)の脂質を含む、ステップと、
b)ステップa)の液体組成物を、酸性化前の熱処理ステップ、次いで酸性化剤を使用した酸性化ステップに供するステップであって、酸性化剤は、細菌培養物であり、酸性化ステップは、pHが最大で4.6に達するまで行われ、それにより酸性熱処理液体組成物を得る、ステップと、
c)酸性熱処理液体組成物を均質化するステップと、
d)ステップc)の酸性熱処理液体組成物に由来する酸性乳製品をパッケージングするステップであって、酸性化に由来する酸性乳製品は、少なくとも60%(w/w)のステップc)の酸性熱処理液体組成物と、任意選択により果実調製物とを含む、ステップと
を含み、Ca2+及びMg2+カチオンは、酸性熱処理液体組成物中でタンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の10~90、好ましくは20~80、より好ましくは30~70の範囲の重量比を得るのに十分な量でステップb)の前に存在し、且つ/又はステップb)中若しくはその後に添加される。
【0178】
本発明の別の好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品を製造する方法は、
a)液体組成物を提供するステップであって、液体組成物は、
- 10~14%(w/w)の範囲の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも50%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 最大で15ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- 総タンパク質の少なくとも90%(w/w)は、ホエータンパク質であり、
- 液体組成物は、好ましくは、ミルク脂肪球の形態の最大で4%(w/w)の脂質を含む、ステップと、
b)ステップa)の液体組成物を、酸性化前の熱処理ステップ、次いで酸性化剤を使用した酸性化ステップに供するステップであって、酸性化剤は、細菌培養物であり、酸性化ステップは、pHが最大で4.6に達するまで行われ、それにより酸性熱処理液体組成物を得る、ステップと、
c)酸性熱処理液体組成物を均質化するステップと、
d)ステップc)の酸性熱処理液体組成物に由来する酸性乳製品をパッケージングするステップであって、酸性化に由来する酸性乳製品は、少なくとも60%(w/w)のステップc)の酸性熱処理液体組成物と、任意選択により果実調製物とを含む、ステップと
を含み、Ca2+及びMg2+カチオンは、酸性熱処理液体組成物中でタンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の10~90、好ましくは20~80、より好ましくは30~70の範囲の重量比を得るのに十分な量でステップb)の前に存在し、且つ/又はステップb)中若しくはその後に添加される。
【0179】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載した方法に従って得ることができる高タンパク酸性液体乳製品に関する。
【0180】
本発明の別の態様は、高タンパク酸性液体乳製品であって、
- 少なくとも4%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも30%は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 最大で50ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- 総タンパク質の少なくとも80%(w/w)は、ホエータンパク質であり、
- 高タンパク酸性液体乳製品は、タンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100の重量比を有する、高タンパク酸性液体乳製品に関する。
【0181】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、少なくとも100mg/100mlを含む。好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、少なくとも120mg/100mlを含む。より好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、少なくとも150mg/100mlを含み、より好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、少なくとも200mg/100ml、例えば少なくとも300mg/100mlを含む。
【0182】
例えば、高タンパク酸性液体乳製品のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、120~800mg/100mlの範囲であり得る。好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、120~600mg/100mlの範囲であり得る。より好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、130~500mg/100mlの範囲であり得る。さらにより好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、140~400mg/100mlの範囲であり得る。好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、150~350mg/100mlの範囲であり得る。
【0183】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品の総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で90である。より好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で80である。さらにより好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で70である。
【0184】
本発明の別の好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品の総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で50である。より好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で35である。さらにより好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で25である。
【0185】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、5~100の範囲である。より好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、10~50の範囲である。さらにより好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、15~35の範囲である。
【0186】
本発明の別の好ましい実施形態では、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、10~90の範囲である。より好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、15~80の範囲である。さらにより好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、20~70の範囲である。
【0187】
高タンパク酸性液体乳製品は、例えば、鉄、亜鉛、銅又はそれらの組み合わせなどの他の二価カチオンをさらに含むことができる。
【0188】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本明細書に記載した高タンパク酸性液体乳製品は、例えば、撹拌型ヨーグルト又は飲料ヨーグルトなどのヨーグルトである。
【0189】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品は、低粘度の飲めるヨーグルトとして認知され得る飲料ヨーグルトである。飲料ヨーグルトは、例えば、最大で400cP、典型的には4~400cPの範囲の粘度を有することができる。例えば、飲料ヨーグルトの粘度は、10~300cPの範囲であり得る。飲料ヨーグルトの粘度は、例えば、15~250cPの範囲であり得る。或いは、飲料ヨーグルトの粘度は、20~200cPの範囲であり得る。粘度は、実施例1.3に従って5℃において300/sの剪断速度で測定される。
【0190】
本発明の別の実施形態では、乳製品は、例えば、最大で2500cP、典型的には350~2500cPの範囲の粘度を有し得る撹拌型ヨーグルトである。例えば、撹拌型ヨーグルトの粘度は、400~2000cPの範囲であり得る。撹拌型ヨーグルトの粘度は、例えば、500~1500cPの範囲であり得る。或いは、撹拌型ヨーグルトの粘度は、600~1250cPの範囲であり得る。粘度は、実施例1.3に従って5℃において300/sの剪断速度で測定される。
【0191】
本発明者らは、液体乳製品中の相当量のCa2+及び/又はMg2+カチオンの存在が製品の粘度を低下させるために有利であることを見出した。例えば、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比が最大で100である場合、本発明者らは、より少量のCa2+及びMg2+カチオンを含む同様の製品と比較して粘度が低下されることを見出した。
【0192】
高タンパク酸性液体乳製品は、例えば、上述したステップa)の液体組成物との関連において述べたタイプ及び量のタンパク質成分、甘味料、安定剤、脂質、ビタミン及びミネラルを含むことができる。
【0193】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品は、
- 10~14%(w/w)の範囲の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも50%は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 最大で15ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- 総タンパク質の少なくとも90%(w/w)は、ホエータンパク質であり、
- 高タンパク酸性液体乳製品は、好ましくは、ミルク脂肪球の形態の少なくとも5%(w/w)の脂質を含み、
- 高タンパク酸性液体乳製品は、最大で4.6のpHを有し、
- 高タンパク酸性液体乳製品は、タンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の10~90、好ましくは20~80、より好ましくは30~70の範囲の重量比を有する。
【0194】
本発明の別の好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品は、
- 10~14%(w/w)の範囲の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも50%は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 最大で15ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- 総タンパク質の少なくとも90%(w/w)は、ホエータンパク質であり、
- 高タンパク酸性液体乳製品は、最大で4%(w/w)の脂質を含み、
- 高タンパク酸性液体乳製品は、最大で4.6のpHを有し、及び
- 高タンパク酸性液体乳製品は、タンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の10~90、好ましくは20~80、より好ましくは30~70の範囲の重量比を有する。
【0195】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品のホエータンパク質は、3~30%(w/w)のカゼイノマクロペプチド(CMP)、好ましくは10~20%(w/w)のCMPを含む。より好ましくは、高タンパク酸性液体乳製品のホエータンパク質は、10~30%(w/w)のカゼイノマクロペプチド(CMP)、さらにより好ましくは15~25%(w/w)のCMPを含むことができる。
【0196】
本発明の別の態様は、タンパク質/ミネラル粉末であって、
- 少なくとも20%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも30%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 水中に懸濁された場合、最大で50ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- 総タンパク質の少なくとも80%(w/w)は、ホエータンパク質であり、
- タンパク質/ミネラル粉末は、タンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100の重量比を有する、タンパク質/ミネラル粉末に関する。
【0197】
本発明との関連において、「タンパク質/ミネラル粉末」という用語は、少なくともCa2+及び/又はMg2+カチオンを含む組成物に関する。典型的には、ミネラル組成物は、Ca2+及びMg2+カチオンの両方を含むであろう。
【0198】
本発明との関連において、「粉末」という用語は、最大で10%(w/w)、好ましくは最大で7%(w/w)、さらにより好ましくは最大で5%(w/w)の量の水を含む製品に関する。粉末は、例えば、少なくとも40%(w/w)の総量のホエータンパク質を含み得、ホエータンパク質の少なくとも30%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である。好ましくは、粉末は、少なくとも50%(w/w)の総量のホエータンパク質を含み得、ホエータンパク質の少なくとも30%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である。より好ましくは、粉末は、少なくとも60%(w/w)の総量のホエータンパク質を含み得、ホエータンパク質の少なくとも30%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である。
【0199】
さらにより好ましくは、粉末は、少なくとも70%(w/w)の総量のホエータンパク質を含み得、ホエータンパク質の少なくとも30%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である。
【0200】
粉末のホエータンパク質は、好ましくは、少なくとも50%(w/w)の不溶性ホエータンパク質粒子を含む。したがって、粉末は、例えば、少なくとも40%(w/w)の総量のホエータンパク質を含み得、ホエータンパク質の少なくとも50%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である。好ましくは、粉末は、少なくとも50%(w/w)の総量のホエータンパク質を含み得、ホエータンパク質の少なくとも50%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である。より好ましくは、粉末は、少なくとも60%(w/w)の総量のホエータンパク質を含み得、ホエータンパク質の少なくとも50%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である。さらにより好ましくは、粉末は、少なくとも70%(w/w)の総量のホエータンパク質を含み得、ホエータンパク質の少なくとも50%(w/w)は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である。
【0201】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、タンパク質/ミネラル粉末は、水中に懸濁された場合、最大で50ミクロンの体積加重平均粒径を有する。好ましくは、タンパク質/ミネラル粉末は、最大で40ミクロンの体積加重平均粒径を有する。より好ましくは、タンパク質/ミネラル粉末は、水中に懸濁された場合、最大で30ミクロンの体積加重平均粒径を有する。さらにより好ましくは、タンパク質/ミネラル粉末は、水中に懸濁された場合、最大で20ミクロンの体積加重平均粒径を有する。より好ましくは、タンパク質/ミネラル粉末は、水中に懸濁された場合、最大で10ミクロンの体積加重平均粒径を有する。さらにより好ましくは、タンパク質/ミネラル粉末は、水中に懸濁された場合、最大で5ミクロンの体積加重平均粒径を有する。より好ましくは、タンパク質/ミネラル粉末は、水中に懸濁された場合、最大で1ミクロンの体積加重平均粒径を有する。
【0202】
より好ましくは、タンパク質/ミネラル粉末は、水中に懸濁された場合、1~50ミクロンの範囲の体積加重平均粒径を有する。さらにより好ましくは、タンパク質/ミネラル粉末は、水中に懸濁された場合、5~40ミクロンの範囲の体積加重平均粒径を有する。より好ましくは、タンパク質/ミネラル粉末は、水中に懸濁された場合、10~30ミクロンの範囲の体積加重平均粒径を有する。好ましくは、タンパク質/ミネラル粉末は、水中に懸濁された場合、2~15ミクロンの範囲の体積加重平均粒径を有する。最も好ましくは、タンパク質/ミネラル粉末は、水中に懸濁された場合、5~10ミクロンの範囲の体積加重平均粒径を有する。
【0203】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、タンパク質/ミネラル粉末は、
- 70~90%(w/w)の範囲の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも50%は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 水中に懸濁された場合、最大で50ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- 総タンパク質の少なくとも80%(w/w)は、ホエータンパク質であり、
- タンパク質/ミネラル粉末は、タンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100、好ましくは最大50の重量比を有する。
【0204】
或いは、タンパク質/ミネラル粉末は、相当量の脂質及び炭水化物を含み得、加えてタンパク質及びミネラルを含む。ステップa)の液体組成物は、そのような粉末を適量の水と混合することにより有利に調製することができる。
【0205】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、粉末は、5~35%(w/w)の範囲、好ましくは10~30%(w/w)の範囲の量の総量の脂質を含む。
【0206】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、粉末は、5~55%(w/w)の範囲の総量の炭水化物を含む。好ましくは、粉末は、20~50%(w/w)の範囲の総量の炭水化物を含む。さらにより好ましくは、粉末は、24~45%(w/w)の総量の炭水化物を含む。
【0207】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、タンパク質/ミネラル粉末は、
- 20~50%(w/w)の範囲の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも50%は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 水中に懸濁された場合、最大で50ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- 10~35%(w/w)の範囲の総量の脂質を有し、
- 20~50%(w/w)の範囲の総量の炭水化物を有し、
総タンパク質の少なくとも80%(w/w)は、ホエータンパク質であり、
前記タンパク質/ミネラル粉末は、タンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100、好ましくは最大50の重量比を有する。
【0208】
本発明のさらなる別の態様は、5℃、300/sで最大で2500cPの粘度を有する高タンパク酸性液体乳製品を製造するための、本明細書に記載されるタンパク質/ミネラル粉末によるタンパク質/ミネラル粉末の使用に関する。
【0209】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、本発明は、高タンパク酸性液体乳製品の使用であって、高タンパク酸性液体乳製品は、
- 少なくとも4%(w/w)の総量のホエータンパク質であって、ホエータンパク質の少なくとも30%は、不溶性ホエータンパク質粒子の形態である、ホエータンパク質を含み、
- 最大で50ミクロンの体積加重平均粒径を有し、
- タンパク質の総量とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の最大100の重量比を有する、使用に関する。
【0210】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、高タンパク酸性液体乳製品は、少なくとも100mg/100mlの総量のCa2+及びMg2+カチオンを含む。好ましくは、液体組成物のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、少なくとも120mg/100mlを含む。より好ましくは、液体組成物のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、少なくとも150mg/100mlを含み、より好ましくは、液体組成物のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、少なくとも200mg/100ml、例えば少なくとも300mg/100mlを含む。
【0211】
例えば、液体組成物のCa2+及びMg2+カチオンの総量は、120~800mg/100mlの範囲、例えば150~350mg/100mlの範囲、例えば130~325mg/100mlの範囲、150~350mg/100mlの範囲であり得る。
【0212】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、タンパク質/ミネラル粉末の総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で90である。より好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で80である。さらにより好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で70である。
【0213】
本発明の別の好ましい実施形態では、タンパク質/ミネラル粉末の総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で50である。より好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で35である。さらにより好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、最大で25である。
【0214】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、5~100の範囲である。より好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、10~50の範囲である。さらにより好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、15~35の範囲である。
【0215】
本発明の別の好ましい実施形態では、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、10~90の範囲である。より好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、15~80の範囲である。さらにより好ましくは、総タンパク質とCa2+及びMg2+カチオンの総量との間の重量比は、20~70の範囲である。
【0216】
多くの場合、タンパク質/ミネラル粉末は、カルシウム及び/又はマグネシウムに加えて、他の二価金属カチオンを含む。そのような追加の二価金属カチオンの例は、例えば、鉄、亜鉛、銅又はそれらの組み合わせである。
【0217】
本発明の態様の1つの説明中で記載された実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも適用されることに留意すべきである。
【0218】
本願に引用されている全ての特許文献及び非特許文献は、参照することにより、その全内容が本明細書に組み込まれる。
【0219】
以下では、本発明を次の非限定的実施例でさらに詳細に説明する。
【実施例
【0220】
実施例1:解析方法
実施例1.1:I)不溶性ホエータンパク質粒子の量の定量、及びII)製品の体積加重平均粒径、D[4,3]
第I部)不溶性ホエータンパク質粒子の量の定量化:
製品の不溶性ホエータンパク質粒子の量を次の手順によって決定する:
1.試験する試料の5%(水中w/w)縣濁液を作製する。試験する製品が縣濁液である場合、この懸濁液は、総固形分5%(w/w)に標準化する必要がある。
2.得られた縣濁液を穏やかなかき混ぜ(撹拌)により1時間水和させる。
3.分析する製品が粉末である場合、縣濁液を200barにおいて15℃で均質化する。
4.縣濁液の第1部分を62000gで30分間遠心分離する。手順は、SIGMA Laborzentrifugen GmbH製の冷却遠心機3-30K及び85mLチューブ(注文番号15076)を使用して、略15℃で行い、チューブ及び試料の総重量が96gとなるまでチューブに5%縣濁液を満たす。
5.得られた上清を集め、総タンパク質(純タンパク質)を解析する。上清の総タンパク質の量を「A」と称する。
6.懸濁液の第2部分(遠心分離にかけらていない)の総タンパク質(純タンパク質)を解析する。懸濁液の総タンパク質の量を「B」と称する。
【0221】
不溶性ホエータンパク質粒子の量は、次のように計算する:(B-A)/B×100%(w/w)。
【0222】
第II部)製品の体積加重平均粒径、D[4,3]の決定:
1.上記の第I部)のステップ1~3に従い、試験する製品の懸濁液を調製する。
2.1mL試料を24mLの2g/l SDSと混合し、穏やかな撹拌により混合する。
3.十分な量の希釈試料を、分散剤としての脱イオン水を含むサンプリングユニット内に移動して、5~10%、最も一般的には7~8%のレーザー掩蔽を得た。
4.静的光散乱による粒度分布解析を開始し、体積加重平均サイズ、D[4,3]に関する値を決定する。
【0223】
HydroLV試料分散ユニットを備えたMalvern Mastersizer 3000(Malvern Instruments Ltd.、Worcestershire、UK)を使用して粒度分布解析を行う。
【0224】
パラメーター:粒子屈折率1.4(実数部)、0.1(虚数部)及び分散剤屈折率1.33を使用し、2000rpmで撹拌し、各試料につき15秒間の最低10回の測定を行った。
【0225】
データ解析:ミー散乱モデル(残渣<2%)を使用して、汎用設定を用いてデータを適合させ、非球形粒子に関して計算した。
【0226】
実施例1.2:天然アルファラクトアルブミン、ベータラクトグロブリン及びCMPの測定。
天然アルファラクトアルブミン、ベータラクトグロブリン及びCMPの含有量をHPLC30解析により0.4ml/分で解析した。25μlの濾過試料を、溶離液(465g MilliQ水、417,3gアセトニトリル及び1mLトリフルオロ酢酸からなる)中で平衡化した、取り付けられたプレカラムPWxl(6mmx4cm、Tosohass、日本)と直列に接続した2 TSKgel3000PWxl(7.8mm 30cm、Tosohass、日本)カラムに注入し、UV検出器を210nmで使用した。35対応する標準タンパク質について得られたピーク面積を試料のものと比較することにより、天然アルファラクトアルブミン(Cアルファ)、ベータラクトグロブリン(Cベータ)及びカゼイノマクロペプチド(CCMP)の含有量の定量を行った。
【0227】
実施例1.3:粘度の測定
40mm 2.0°コーン及びプレートジオメトリーを搭載したレオメーター(TA Instruments Ltd製のModel Discovery HR-2)上で液体製品の粘度を測定した。
【0228】
測定は5℃で行った(液体試料及びレオメーターの関連部分の温度は何れも5℃であった)。
【0229】
手順:
1.試料の調製
プロセス中、各試料を瓶に入れ、研究室の冷却器(5℃)に1日置き、その温度にした。
【0230】
2.セットアップ
TA instruments DHR-2上で製品を測定するためのプログラムをセットアップする。「試料の測定」を参照されたい。コーン及びプレートジオメトリーを取り付ける。システムの温度を5℃で平衡化し、システムの調整を検証する。
【0231】
3.試料の測定
分析する試料のみを冷却貯蔵庫から取り出す。切断端部を有するプラスチックピペットを使用して、試料をゆっくり混合して均質性を確実にする。45mmのローディングギャップを使用して、試料をペルチェプレートの中心にやさしく置き、測定ギャップをゆっくり56μmまで閉鎖して、測定前の構造破壊を最小限にする。
【0232】
測定を開始する前に5剪断速度(1/s)の30秒間の前剪断を適用して、試料を調整する。240,0sの継続時間を有する線形モードの流動勾配を20,0の初期剪断速度から700,0/sの最終剪断速度までサンプリング間隔1秒/ptで適用する。
【0233】
4.洗浄
分析が終了した際、測定ジオメトリーを分解し、水及び石鹸、その後、冷水で洗浄して、次の測定前にシステムを温める。ジオメトリーを拭いて乾かし、次の試料のために再度取り付ける。
【0234】
結果:
特に明記しない限り、粘度は、300/sの剪断速度での単位センチポアズ(cP)で提示する。測定したcP値が大きいほど粘度が高い。
【0235】
材料:
この手順は、以下を必要とする:
- TA instruments Discovery HR-2レオメーター
ジオメトリー:TA Instruments製の鋼のペルチェプレートを有する40mm 2.0°コーンプレート(Part# 511406.901)。
【0236】
実施例1.4:総タンパク質の測定
タンパク質の総含有量(純タンパク質)は、以下の方法で測定する。
1)ISO 8968-1/2|IDF 020-1/2-Milk-Determination of nitrogen content-Part1/2:Determination of nitrogen content using the Kjeldahl methodにより、試料の総窒素を測定する。
2)ISO 8968-4|IDF 020-4-Milk-Determination of nitrogen content-Part4:Determination of non-protein-nitrogen contentにより、試料の非タンパク質性窒素を測定する。
3)(mtotal nitrogen-mnon-protein-nitrogen6.38としてタンパク質の総量を算出する。
【0237】
実施例1.5:粉体中の水分含有量の測定
食品の水分含有量は、ISO 5537:2004(Dried milk-Determination of moisture content(Reference method))により測定する。NMKLは、「Nordisk Metodikkomite for Neringsmidler」の略語である。
【0238】
実施例1.6:灰分の測定
食品の灰分は、NMKL 173:2005“Ash,gravimetric determination in foods”により測定する。
【0239】
実施例1.7:溶液の総固形物の測定
溶液の総固形物は、NMKL 110 2nd Edition,2005(Total solids(Water)-Gravimetric determination in milk and milk products)により測定し得る。NMKLは、「Nordisk Metodikkomite for Neringsmidler」の略語である。
【0240】
溶液の水分含有量は、100%-総固形物の相対量(%w/w)として算出することができる。
【0241】
実施例1.8:乳糖の総量の測定
乳糖の総量は、ISO 5765-2:2002(IDF 79-2:2002)“Dried milk,dried ice-mixes and processed cheese-Determination of lactose content-Part2:Enzymatic method utilizing the galactose moiety of the lactose”により測定する。
【0242】
実施例1.9:変性度の測定
変性ホエータンパク質組成物のタンパク質の変性度は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)により解析した。Waters 600 E Multisolvent Delivery System、Waters 700 Satellite Wisp Injector及びWaters H90 Programmable Multiwavelength Detector(Waters、Milford、MA、USA)を使用した。溶出緩衝液は、0.15M Na2S04、0.09M KH2P04及び0.01M K2HP04で構成した。流量は0.8mL・min-1、温度は20℃とした。
【0243】
解析24時間前に、リン酸ナトリウム緩衝剤(0.02M)を用いて変性ホエータンパク質組成物の懸濁液を調製し、最終たんぱく質含有量0.1%(w/v)を得た。さらに、1mg・mL-1濃度の、アルファラクトアルブミン(Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Steinheim、Germany)及びベータラクトグロブリン(Sigma-Aldrich Chemie GmbH)並びにカゼイノマクロペプチドの標準溶液を調製した。注入前に溶液を撹拌し、濾過(0.22ミクロン)した。試料25マイクロLを注入した。210及び280nmの吸光度を測定した。全ての変性ホエータンパク質組成物試料及び標準液で、タンパク質の総含有量を実施例1.4に従って求めた。
【0244】
天然ホエータンパク質の含有量の定量的解析を、試料に対応する標準タンパク質で得られたピーク面積を比較することによって行った。その後、変性ホエータンパク質組成物の変性ホエータンパク質含有量を、試料のタンパク質総含有量とそれらの定量化した天然タンパク質とから計算した。変性度を(wtotal protein-wsolutble protein)/wtotal protein 100%(式中、wtotal proteinは、総タンパク質の重量、wsolutble proteinは、可溶性タンパク質の重量である)として算出した。
【0245】
実施例1.10:カルシウム、マグネシウム、ナトリウム及びカリウムの総量の決定。
試料を最初にマイクロ波消化を用いて分解し、次いでICP機器を使用してミネラルの総量を測定する手順により、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム及びカリウムカチオンの総量を決定する。
【0246】
機器:
マイクロ波は、Anton Paarからであり、ICPは、PerkinElmer Inc製のOptima 2000DVである。
【0247】
材料:
1M HNO
2% HNO中のイットリウム
5% HNO中のカルシウム、マグネシウム、ナトリウム及びカリウムに関する好適な標準。
【0248】
前処理:
所定の量の粉末を秤量し、この粉末をマイクロ波消化チューブに移動する。5mLの1M HNOを加える。試料をマイクロ波の説明書に従ってマイクロ波内で消化する。消化したチューブを通風室内に配置し、蓋を除去し、揮発性のガスを気化させる。
【0249】
測定手順:
既知の量のMilli-Q水を使用して、前処理試料をデジチューブに移動する。2% HNO3中のイットリウムの溶液を消化チューブに加え(50mL希釈試料当たり約0.25mL)、Milli-Q水を使用して既知の体積に希釈する。製造業者により記載された手順を用いて試料をICP上で分析する。
【0250】
10mLの1M HNO及び2% HNO中のイットリウムの0.5mL溶液の混合物を、Milli-Q水を使用して最終体積100mLに希釈することにより、盲試料を調製する。
【0251】
予想される試料濃度を一括する濃度を有する少なくとも3つの標準試料を調製する。
【0252】
実施例2:不溶性ホエータンパク質粒子を含む変性ホエータンパク質製品の製造
変性ホエータンパク質製品を以下の方法で製造した。
溶液:
スイートホエータンパク質濃縮物の水溶液を、ホエータンパク質濃縮物を水に溶解して乾燥物質含有量16%を得、及びpHを6.4に調節することによってスイートホエータンパク質濃縮物の水溶液を調製した。
【0253】
変性及び微粒子化
6+6かき取り表面熱交換器(SSHE)(APV Shear Agglomerator、APV/SPX製、Denmark)において変性及び微粒子化を行った。
【0254】
保持セルを通過(60秒)後、生成物をSSHEで、次いでプレート式熱交換器(PHE)で10℃に冷却した。
【0255】
熱処理(80℃で10分間)中、タンパク質が変性し、5ミクロン未満の体積加重平均粒径を有する粒子が形成した。不溶性ホエータンパク質粒子の量は、略55%(w/w)であった。
【0256】
生成物の縣濁液を貯蔵タンクにポンプで送り、その後、その一部を噴霧乾燥により乾燥して粉末とした。
【0257】
実施例3:高タンパク酸性液体乳製品の製造。
以下の成分及び次の手順によって高タンパク酸性液体乳製品の試料を調製した。
【0258】
手順:
乾燥成分を液体とブレンドした後、5℃で1時間水和させた。水和後、混合物を65℃に予備加熱し、次いで42℃で各々250bar及び50barの2段階で均質化した。続いて、プレート式熱交換器を使用して混合物を80℃の温度まで5分間熱処理し、次いで42℃に冷却した。冷却後、熱処理混合物を0.02%の量のヨーグルトスターター培養物(Culture YO-mix401、Chr.Hansen A/S、Denmark)と混合し、接種混合物を4.6未満のpHに達するまで42℃でインキュベートした。
【0259】
酸性混合物をスムージングバルブ及び50barの圧力低下を用いて42℃で滑らかにした。
【0260】
得られた、滑らかにされた高タンパク酸性液体乳製品を、最終的に5℃に冷却し、パッケージングした。本発明者らは、上記のような高タンパク酸性液体乳製品の体積加重平均粒径が典型的には5~10ミクロンの範囲であることを見出した。
【0261】
成分及び試料組成物:
使用した成分の概略を下記の表2に示す。この実施例では、Ca2+及びMg2+カチオンを「ミルクミネラル濃縮物」の形態で試料1及び2に加えた。ミルクミネラル組成物の組成を表1に示す。
【0262】
表2の試料の粘度は、実施例1.3に記載したように測定した。したがって、粘度は、
- 低温殺菌及び均質化後(即ち酸性化前)
- 酸性化後(pH4.6へと発酵)、及び
- 最終的な均質化及び冷却後
に測定した。
【0263】
結果:
「参照」及び「試料2」に関する粘度データを下記の表3にまとめる。
【0264】
データは、既に低温殺菌及び均質化した後でも、参照と試料2の粘度に僅かな相違が存在したことを示す。試料2の粘度は、71cPであったが、参照の粘度は、92cPであった。
【0265】
この相違は、発酵によるpH4.6への酸性化後、粘度を測定した際により顕著になった。試料2の粘度は,303cPのみであったが、参照の粘度は、8401cPであった。
【0266】
粘度の相違は、均質化後の最終製品においても相当のものであった。試料2の粘度は、55cPであったが、参照の粘度は、183cPであった。
【0267】
このように、高タンパク液体乳製品へのカルシウムの添加は、驚くべきことに、最終製品のみでなく、製品の調製中にも粘度を低下させることが見出された。
【0268】
酸性液体組成物の低下した粘度の利点は、均質化に必要なエネルギーが低くなることである。それにより、高タンパク酸性液体乳製品は、より低い費用で製造することができる。
【0269】
200mgを含む試料1の粘度も測定し、試料2と同様の低下した粘度のパターンが観察された。
【0270】
実施例4:高タンパク酸性液体乳製品に対するCaCl、HP0及びミルクミネラル(不溶性Ca/PO)の添加の効果
この実施例の目的は、酸性化前又は後の、可溶性Caイオン若しくはカルシウム及びリン酸イオンの両方を含むミルクミネラル組成物(表1)の添加又はリン酸イオン自体の添加が粘度に影響を与えるか否かを研究することであった。目的は、ミルクミネラル沈殿物中のリン酸イオン及びカルシウムイオンの両方が、低下した粘度に寄与するか否かを研究することでもあった。
【0271】
試料は、実施例3の手順に従って調製した。
【0272】
下記のプロトコルを使用して試料を試験した:
1)低温殺菌後の混合物の5100g試料及び均質化後の最終製品の5~100g試料を試験する。
2)pHを測定する。
3)実施例1.3に記載した方法を用いて粘度を測定し、3回繰り返す。
4)CaCl、ミルクミネラル組成物又はHPOを下記の表4に従って添加する。
5)混合物を約1時間撹拌する。
6)5℃で約1時間冷却する。
7)pHを測定する。
8)粘度を測定し、3回繰り返す。
9)試料を5℃で一晩静置する。
10)pHを測定する。
11)粘度を測定し、3回繰り返す。
12)62000xg/30分で遠心分離する。
【0273】
結果:
粘度データを下記の表4にまとめる。
【0274】
結果を図1及び2にも可視化する。図1は、CaCl、HPO又はミルクミネラル組成物を熱処理後且つ酸性化前に液体組成物に添加した後に測定した粘度を示す一方、図2は、酸性化及び均質化後に測定した粘度を示す。
【0275】
このように、酸性化前に(図1を参照されたい)、CaイオンがCaClとして添加された試料の粘度が、カルシウムを添加されていない参照と比較して増大することが見出された。これは、中性pHのカルシウムイオンが微粒子化されたタンパク質を交差結合し、それにより粘度を増大させ得ることに起因する可能性がある。さらに、本発明者らは、カルシウムイオンがミルクミネラル組成物の形態で添加された際に効果を見出さなかった。これは、ミルクミネラル組成物が中性pHで溶解せず、それにより効果を有さなかったことに起因する可能性が最も高い。
【0276】
図2は、粘度を低下させる正の作用が、Caイオン自体又はミルクミネラル組成物中に存在するCaイオンから生じたことを明白に示している。粘度レベルは、酸性化後、参照試料と比較して、カルシウムイオンを添加した試料で有意に低かった(10時間後)。
【0277】
リン酸イオンの添加が酸性化後に液体組成物の粘度に影響を与えなかったことも図から明らかである。実際に、図2を参照すると、参照試料及びリン酸イオンを有する試料の10時間後の粘度レベルは、酸性化後、10時間後に同じレベルである。
【0278】
ミルクミネラル組成物の一部としての又はそれ自体のカルシウムイオンの添加の両方が最終的な液体乳製品の粘度の相当の低下をもたらすことが示された。したがって、不溶性ホエータンパク質粒子は、驚くべきことに、大量のカルシウムイオンなどの二価金属イオンに低pH(pH4.6など)で結合することができ、それにより液体乳製品組成物の粘度を低下させることが示された。
図1
図2