(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】オレフィン類重合用触媒、オレフィン類重合用触媒の製造方法、オレフィン類重合体の製造方法およびプロピレン-α-オレフィン共重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20230118BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
C08F4/654
C08F10/00 510
(21)【出願番号】P 2019544395
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2018030103
(87)【国際公開番号】W WO2019064967
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2017190716
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 元基
(72)【発明者】
【氏名】菅野 利彦
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-147601(JP,A)
【文献】特開2011-184538(JP,A)
【文献】特開2010-168546(JP,A)
【文献】特開2013-216772(JP,A)
【文献】特開2011-184537(JP,A)
【文献】特開2013-216730(JP,A)
【文献】特開平10-158319(JP,A)
【文献】特表2012-500319(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0223959(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00- 4/82
C08F 10/00- 10/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有する固体触媒成分、
有機アルミニウム化合物、
下記一般式(I)
R
1Si(OR
2)
3 (I)
(式中、R
1基は炭素数6~12の直
鎖アルキル
基であり、R
2基は炭素数2~4の直鎖アルキル基である。)
で表される外部電子供与性化合物、および
下記一般式(II)
(R
3R
4N)
n(R
5HN)
pSiR
6
q(OR
7)
r (II)
(式中、R
3、R
4およびR
5基は炭素数1~12の直鎖アルキル基、炭素数3~12の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R
3、R
4およびR
5基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R
6基
は炭素数3~10の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R
7基はメチル基またはエチル基であり、nは
0、pは
0、qは0~3の実数、rは0~4の実数で、n+p+q+r=4であり、R
3R
4N基が複数存在する場合、各R
3R
4N基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R
5HN基が複数存在する場合、各R
5HN基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R
6基が複数存在する場合、各R
6基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、OR
7基が複数存在する場合、各OR
7基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)
で表される外部電子供与性化合物を含み、
上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物および上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物の合計量に対し、上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物を51~99モル%、上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物を1~49モル%含む
ことを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
【請求項2】
請求項1に記載のオレフィン類重合用触媒の製造方法であって、
マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有する固体触媒成分、
有機アルミニウム化合物、
下記一般式(I)
R
1Si(OR
2)
3 (I)
(式中、R
1基は炭素数6~12の直
鎖アルキル
基であり、R
2基は炭素数2~4の直鎖アルキル基である。)
で表される外部電子供与性化合物、および
下記一般式(II)
(R
3R
4N)
n(R
5HN)
pSiR
6
q(OR
7)
r (II)
(式中、R
3、R
4およびR
5基は炭素数1~12の直鎖アルキル基、炭素数3~12の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R
3、R
4およびR
5基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R
6基
は炭素数3~10の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R
7基はメチル基またはエチル基であり、nは
0、pは
0、qは0~3の実数、rは0~4の実数で、n+p+q+r=4であり、R
3R
4N基が複数存在する場合、各R
3R
4N基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R
5HN基が複数存在する場合、各R
5HN基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R
6基が複数存在する場合、各R
6基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、OR
7基が複数存在する場合、各OR
7基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)
で表される外部電子供与性化合物を、
上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物および上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物の合計量に対し、上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物が51~99モル%、上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物が1~49モル%になるように、相互に接触させる
ことを特徴とするオレフィン類重合用触媒の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のオレフィン類重合用触媒の存在下、プロピレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンの共重合を行なうことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のオレフィン重合用触媒の存在下におけるプロピレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンの共重合反応物からなることを特徴とするプロピレン-α-オレフィン共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン類重合用触媒、オレフィン類重合用触媒の製造方法、オレフィン類重合体の製造方法およびプロピレン-α-オレフィン共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン製の自動車部品、家電製品、容器やフィルム等は、オレフィン重合により得られた (共)重合体パウダーを溶融、ペレット化した後、各種の成型機により成型して製造される。この時、特に大型の成型品を射出成型により製造する際には、溶融ポリマーの高い流動性(メルトフローレート、MFR)を要求されることがある。
一方で、製造される成型品に対しては製品強度が求められ、しかも大型成型品用途のポリマーには成型安定性までもが求められるようになっている。
【0003】
このため、得られる重合体のMFRが高いとともに、立体規則性が高く、分子量分布かつ高MFRのオレフィン類重合体を得るべく、多くの研究がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開平3-174112号公報)には、マグネシウム、チタン、ハロゲン、及び電子供与体を必須成分とする固体触媒成分、助触媒成分(有機金属化合物)並びにアルキルトリアルコキシシラン化合物(外部電子供与体)を含むプロピレン重合用の触媒系を使用することによって非常に高い溶融流れ性を有するプロピレン重合体を製造する方法が開示されている。
しかしながら、上述の発明をもってしても、高MFRをもたらす水素レスポンスの高さと引き換えに、重合活性持続性は低下することから、エチレンなどプロピレン以外のモノマーとの共重合性能の点においては未だ改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下、本発明は、重合活性持続性に優れ、立体規則性およびMFRが高く、成型性が良好なα-オレフィン(共)重合体を好適に製造し得るオレフィン類重合用触媒を提供するとともに、オレフィン類重合用触媒の製造方法、オレフィン類重合体の製造方法およびプロピレン-α-オレフィン共重合体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術課題を解決するために本発明者等が鋭意検討したところ、特定の構造を有する2種類のアルコキシシラン化合物を特定の量比で含有するオレフィン重合用触媒により、上記技術課題を解決しうることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有する固体触媒成分、
有機アルミニウム化合物、
下記一般式(I)
R1Si(OR2)3 (I)
(式中、R1基は炭素数6~12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数6~12のシクロアルキル基であり、R2は炭素数2~4の直鎖アルキル基である。)
で表される外部電子供与性化合物、および
下記一般式(II)
(R3R4N)n(R5HN)pSiR6
q(OR7)r (II)
(式中、R3、R4およびR5基は炭素数1~12の直鎖アルキル基、炭素数3~12の 分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R3、R4およびR5基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R6基は炭素数1~10の直鎖アルキル基、炭素数3~10の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R7基はメチル基またはエチル基であり、nは0~2の実数、pは0~2の実数、qは0~3の実数、rは0~4の実数で、n+p+q+r=4であり、R3R4N基が複数存在する場合、各R3R4N基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R5HN基が複数存在する場合、各R5HN基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R6基が複数存在する場合、各R6基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、OR7基が複数存在する場合、各OR7基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)
で表される外部電子供与性化合物を含み、
上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物および上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物の合計量に対し、上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物を51~99モル%、上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物を1~49モル%含む
ことを特徴とするオレフィン類重合用触媒、
(2)上記(1)に記載のオレフィン類重合用触媒の製造方法であって、
マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有する固体触媒成分、有機アルミニウム化合物、下記一般式(I)
R1Si(OR2)3 (I)
(式中、R1基は炭素数6~12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数6~12のシクロアルキル基であり、R2基は炭素数2~4の直鎖アルキル基である。)
で表される外部電子供与性化合物、および
下記一般式(II)
(R3R4N)n(R5HN)pSiR6
q(OR7)r (II)
(式中、R3、R4およびR5基は炭素数1~12の直鎖アルキル基、炭素数3~12の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R3、R4およびR5基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R6基は炭素数1~10の直鎖アルキル基、炭素数3~10の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R7基はメチル基またはエチル基であり、nは0~2の実数、pは0~2の実数、qは0~3の実数、rは0~4の実数で、n+p+q+r=4であり、R3R4N基が複数存在する場合、各R3R4N基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R5HN基が複数存在する場合、各R5HN基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R6基が複数存在する場合、各R6基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、OR7基が複数存在する場合、各OR7基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)
で表される外部電子供与性化合物を、
上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物および上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物の合計量に対し、上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物が51~99モル%、上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物が1~49モル%になるように、
相互に接触させる
ことを特徴とするオレフィン類重合用触媒の製造方法、
(3)上記(1)に記載のオレフィン類重合用触媒の存在下、プロピレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンの共重合を行なうことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法、
(4)上記(1)に記載のオレフィン重合用触媒の存在下におけるプロピレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンの共重合反応物からなることを特徴とするプロピレン-α-オレフィン共重合体、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、α-オレフィン類の重合に際し、重合活性持続性に優れ、立体規則性およびMFRが高く、成型性が良好なα-オレフィン(共)重合体を好適に製造し得るオレフィン類重合用触媒を提供するとともに、オレフィン類重合用触媒の製造方法、オレフィン類重合体の製造方法およびプロピレン-α-オレフィン共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
先ず、本発明に係るオレフィン類重合用触媒について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、
マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有する固体触媒成分、
有機アルミニウム化合物、
下記一般式(I)
R1Si(OR2)3 (I)
(式中、R1基は炭素数6~12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数6~12のシクロアルキル基であり、R2基は炭素数2~4の直鎖アルキル基である。)
で表される外部電子供与性化合物(以下、第一の外部電子供与性化合物と称することがある)、および
下記一般式(II)
(R3R4N)n(R5HN)pSiR6
q(OR7)r (II)
(式中、R3、R4およびR5基は炭素数1~12の直鎖アルキル基、炭素数3~12の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R3、R4およびR5基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R6基は炭素数1~10の直鎖アルキル基、炭素数3~10の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R7基はメチル基またはエチル基であり、nは0~2の実数、pは0~2の実数、qは0~3の実数、rは0~4の実数で、n+p+q+r=4であり、R3R4N基が複数存在する場合、各R3R4N基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R5HN基が複数存在する場合、各R5HN基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R6基が複数存在する場合、各R6基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、OR7基が複数存在する場合、各OR7基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)
で表される外部電子供与性化合物(以下、第二の外部電子供与性化合物と称することがある)を含み、
上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物および上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物の合計量に対し、上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物を51~99モル%、上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物を1~49モル%含む
ことを特徴とするものである。
【0011】
(外部電子供与性化合物)
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、下記一般式(I)
R1Si(OR2)3 (I)
(式中、R1基は炭素数6~12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数6~12のシクロアルキル基であり、R2基は炭素数2~4の直鎖アルキル基である。)
で表される外部電子供与性化合物を含む。
【0012】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物中のR1基は、炭素数6~12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数6~12のシクロアルキル基である。
【0013】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、R1基が直鎖アルキル基である場合、直鎖アルキル基としては、炭素数6~11の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数6~10の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数6~9の直鎖アルキル基がさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、R1基が分岐鎖アルキル基である場合、分岐鎖アルキル基としては、炭素数6~11の分岐鎖アルキル基が好ましく、炭素数6~10の分岐鎖アルキル基がより好ましく、炭素数6~9の分岐鎖アルキル基がさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、R1基がシクロアルキル基である場合、シクロアルキル基としては、炭素数6~11のシクロアルキル基が好ましく、炭素数6~10のシクロアルキル基がより好ましく、炭素数6~9のシクロアルキル基がさらに好ましい。
【0014】
また、R1基としては、上記炭素数を有する直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
【0015】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物中のR2基は、炭素数2~4の直鎖アルキル基であり、エチル基またはプロピル基が好ましい。
【0016】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物としては、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-ヘプチルトリエトキシシランまたはn-オクチルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物としては、上記化合物から選ばれる一種または二種以上を適宜選択すればよい。
【0017】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物および後述する一般式(II)で表される外部電子供与性化合物の合計量に対し、上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物を、51~99モル%含み、55~99モル%含むことが好ましく、60~99モル%含むことがより好ましく、75~99モル%含むことがさらに好ましい。
【0018】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物を上記の割合で含むものであることにより、高い共重合活性持続性を容易に得ることができるとともに、得られる重合体のMFRおよびブロック率が高く、エチレンおよびプロピレンを重合させた場合における共重合体中のEPR含量が高いという優れた技術的効果を容易に発揮することができる。
【0019】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、下記一般式(II)
(R3R4N)n(R5HN)pSiR6
q(OR7)r (II)
(式中、R3、R4およびR5基は炭素数1~12の直鎖アルキル基、炭素数3~12の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R3、R4およびR5基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R6基は炭素数1~10の直鎖アルキル基、炭素数3~10の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R7基はメチル基またはエチル基であり、nは0~2の実数、pは0~2の実数、qは0~3の実数、rは0~4の実数で、n+p+q+r=4であり、R3R4N基が複数存在する場合、各R3R4N基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R5HN基が複数存在する場合、各R5HN基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R6基が複数存在する場合、各R6基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、OR7基が複数存在する場合、各OR7基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)
で表される外部電子供与性化合物を含む。
【0020】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のR3、R4およびR5基は炭素数1~12の直鎖アルキル基、炭素数3~12の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基である。
【0021】
一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のR3、R4またはR5基が直鎖アルキル基である場合、直鎖アルキル基としては、炭素数1~10の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数1~6の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数2~4の直鎖アルキル基がさらに好ましい。
一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のR3、R4またはR5基が分岐鎖アルキル基である場合、分岐鎖アルキル基としては、炭素数3~9の分岐鎖アルキル基が好ましく、炭素数3~6の分岐鎖アルキル基がより好ましい。
一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のR3、R4またはR5基がシクロアルキル基である場合、シクロアルキル基としては、炭素数3~10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数4~8のシクロアルキル基がより好ましく、炭素数4~6のシクロアルキル基がさらに好ましい。
【0022】
R3、R4またはR5基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基等を挙げることができる。
【0023】
一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物において、R3、R4およびR5基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0024】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のR6基は、炭素数1~10の直鎖アルキル基、炭素数3~10の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基である。
【0025】
一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のR6基が直鎖アルキル基である場合、直鎖アルキル基としては、炭素数1~8の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数1~7の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖アルキル基がさらに好ましい。
一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のR6基が分岐鎖アルキル基である場合、分岐鎖アルキル基としては、炭素数3~10の分岐鎖アルキル基が好ましく、炭素数3~8の分岐鎖アルキル基がより好ましい。
一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のR6基がシクロアルキル基である場合、シクロアルキル基としては、炭素数4~10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数4~6のシクロアルキル基がより好ましく、炭素数5~6のシクロアルキル基がさらに好ましい。
【0026】
後述するように、R6基が複数存在する場合、各R6基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよいが、複数のR6基の炭素数の合計が、5以上であることが好ましく、5~15であることが好ましく、5~12であることがより好ましく、5~10であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のR7基は、メチル基またはエチル基である。
【0028】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のnは、0~2の実数であり、0または2が好適であり、0がより好適である。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のpは、0~2の実数であり、0または2が好適であり、0がより好適である。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のqは、0~3の実数であり、1~3の実数であることが好ましく、2~3の実数であることがより好ましく、具体的には、2であることが好適である。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のrは、0~4の実数であり、1~3の実数であることが好ましく、2~3の実数であることがより好ましく、具体的には、2であることが好適である。
【0029】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中のn、p、qおよびrの合計(n+p+q+r)は4である。
【0030】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物中にR3R4N基が複数存在する場合、各R3R4N基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R5HN基が複数存在する場合、各R5HN基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R6基が複数存在する場合、各R6基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、OR7基が複数存在する場合、各OR7基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0031】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物としては、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシランまたはジイソプロピルジメトキシシラン等を挙げることができる。
一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物としては、上記化合物から選ばれる一種または二種以上を適宜選択すればよい。
【0032】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物および後述する一般式(II)で表される外部電子供与性化合物の合計量に対し、上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物を、1~49モル%含み、1~45モル%含むことが好ましく、1~40モル%含むことがより好ましく、1~25モル%含むことがさらに好ましい。
【0033】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物を上記の割合で含むものであることにより、得られる重合体の立体規則性、MFRおよびブロック率が高いとともに分子量分布が広く、また、エチレンおよびプロピレンを重合させた場合における共重合体中のEPR含量が高いという優れた技術的効果を容易に発揮することができる。
【0034】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記一般式(I)および一般式(II)で表される特定の外部電子供与性化合物を、特定の比で含有することにより、α-オレフィン類の重合に際し、重合活性持続性に優れ、立体規則性およびMFRが高く、成型性が良好なα-オレフィン(共)重合体を好適に製造することができる。
【0035】
(固体触媒成分)
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有する固体触媒成分を含む。
マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有するオレフィン類重合用の固体触媒成分としては、マグネシウム化合物と、四価のチタンハロゲン化合物と、内部電子供与性化合物との接触反応物を挙げることができる。
【0036】
上記マグネシウム化合物としては、ジアルコキシマグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムおよびアルコキシマグネシウムハライド等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記マグネシウム化合物の内、ジアルコキシマグネシウムまたはマグネシウムジハライドが好ましく、具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム、マグネシウムジクロライド、マグネシウムジブロマイド、マグネシウムジイオダイド等が挙げられ、ジエトキシマグネシウムおよびマグネシウムジクロライドが特に好ましい。
【0037】
上記マグネシウム化合物のうち、ジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得たものでもよい。
【0038】
上記ジアルコキシマグネシウムは、顆粒状または粉末状であるものが好ましく、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。
【0039】
ジアルコキシマグネシウムとして球状のものを使用した場合、より良好な粒子形状を有し(より球状で)狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時に生成した重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成した重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の発生を抑制することができる。
【0040】
上記球状のジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的には、その粒子の円形度が、3以下であるものが好ましく、1~2であることがより好ましく、1~1.5であることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度とは、ジアルコキシマグネシウム粒子を500個以上走査型電子顕微鏡により撮影し、撮影した粒子を画像解析処理ソフトにより処理することで各粒子の面積Sと周囲長Lを求め、各ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度を下記式
各ジアルコキシマグネシウム粒子の円形度=L2÷(4π×S)
により算出したときの算術平均値を意味し、粒子の形状が真円に近づくほど、円形度は1に近い値を示す。
【0041】
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、平均粒子径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)で1~200μmであることが好ましく、5~150μmであることがより好ましい。
ジアルコキシマグネシウムが球状である場合、上記平均粒径は1~100μmであることが好ましく、5~60μmであることがより好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。
【0042】
また、ジアルコキシマグネシウムの粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものであることが好ましい。
具体的には、ジアルコキシマグネシウムは、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、5μm以下の粒子が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。一方、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、100μm以上の粒子が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は体積積算粒度分布における積算粒度で90%の粒径、D10は体積積算粒度分布における積算粒度で10%の粒径である。)で表すと3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
【0043】
上記球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58-41832号公報、特開昭62-51633号公報、特開平3-74341号公報、特開平4-368391号公報、特開平8-73388号公報等に例示されている。
【0044】
上記マグネシウム化合物は、反応時に溶液状または懸濁液状であることが好ましく、溶液状または懸濁液状であることにより、反応を好適に進行させることができる。
【0045】
上記マグネシウム化合物が固体である場合には、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒に溶解することにより溶液状のマグネシウム化合物とすることができ、またはマグネシウム化合物の可溶化能を有さない溶媒に懸濁することによりマグネシウム化合物懸濁液とすることができる。
なお、マグネシウム化合物が液体状である場合には、そのまま溶液状のマグネシウム化合物として用いてもよいし、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒にさらに溶解して溶液状のマグネシウム化合物として用いてもよい。
【0046】
固体のマグネシウム化合物を可溶化しうる化合物としては、アルコール、エーテルおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられ、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコールが好ましく、2-エチルヘキサノールが特に好ましい。
一方、固体のマグネシウム化合物に対して可溶化能を有さない媒体としては、マグネシウム化合物を溶解することがない、飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0047】
固体触媒成分を構成する四価のチタンハロゲン化合物としては、特に制限されないが、下記一般式(III)
Ti(OR8)rX4-r (III)
(式中、R8は炭素数1~4のアルキル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を示し、rは0または1~3の整数である。)
で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の一種以上であることが好適である。
【0048】
チタンハライドとしては、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライドが挙げられる。
また、アルコキシチタンハライドとしては、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n-ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ-n-ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ-n-ブトキシチタンクロライド等から選ばれる一種以上が挙げられる。
四価のチタンハロゲン化合物としては、チタンテトラハライドが好ましく、チタンテトラクロライドがより好ましい。
これらのチタン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
【0049】
固体触媒成分を構成する内部電子供与性化合物としては、特に制限されないが、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物であることが好ましく、例えば、アルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒト類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si-O-C結合またはSi-N-C結合を含む有機ケイ素化合物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0050】
内部電子供与性化合物としては、モノエーテル類、ジエーテル類、エーテルカーボネート類等のエーテル化合物や、モノカルボン酸エステル類、ポリカルボン酸エステル類などのエステル類がより好ましく、芳香族ジカルボン酸ジエステル等の芳香族ポリカルボン酸エステル類、脂肪族ポリカルボン酸エステル類、脂環族ポリカルボン酸エステル類、ジエーテル類、およびエーテルカーボネート類から選ばれる一種以上がさらに好ましい。
【0051】
本発明のオレフィン類重合用触媒において、芳香族ジカルボン酸ジエステルは、下記一般式(IV)
(R9)jC6H4-j(COOR10)(COOR11) (IV)
(式中、R9は炭素数1~8のアルキル基またはハロゲン原子を示し、R10およびR11は炭素数1~12のアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよく、また、置換基R9の数jは0、1または2であり、jが2のとき、各R9は同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物を挙げることができる。
【0052】
一般式(IV)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、R9は、ハロゲン原子または炭素数1~8のアルキル基である。
【0053】
R9がハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれる一種以上の原子が挙げられる。
【0054】
R9が炭素数1~8のアルキル基である場合、炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルペンチル基、イソオクチル基、2,2-ジメチルヘキシル基から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0055】
R9としては、メチル基、臭素原子、フッ素原子が好ましく、メチル基、臭素原子がより好ましい。
【0056】
一般式(IV)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、R10およびR11は炭素数1~12のアルキル基であり、R10およびR11は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0057】
炭素数1~12のアルキル基としては、エチル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基を挙げることができ、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、またはネオペンチル基であることが好ましい。
【0058】
一般式(IV)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、置換基R9の数jは0、1または2であり、jが2のとき、各R9(2つのR9)は同一であっても異なっていてもよい。
jが0である場合、一般式(IV)で表わされる化合物はフタル酸ジエステルであり、jが1または2である場合、一般式(IV)で表わされる化合物は置換フタル酸ジエステルである。
jが1の場合、一般式(IV)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、R9が、ベンゼン環の3位、4位または5位の位置の水素原子と置換してなるものが好ましい。
jが2の場合、一般式(IV)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルにおいて、R9が、ベンゼン環の4位および5位の位置の水素原子と置換してなるものが好ましい。
【0059】
一般式(IV)で表わされる芳香族ジカルボン酸ジエステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ-n-ペンチル、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸ジネオペンチル、フタル酸ジ-n-ヘキシル、フタル酸ジテキシル、フタル酸メチルエチル、フタル酸(エチル)n-プロピル、フタル酸エチルイソプロピル、フタル酸(エチル)n-ブチル、フタル酸エチルイソブチル、フタル酸(エチル)n-ペンチル、フタル酸エチルイソペンチル、フタル酸エチルネオペンチル、フタル酸(エチル)n-ヘキシル等のフタル酸ジエステル、4-クロロフタル酸ジエチル、4-クロロフタル酸ジ-n-プロピル、4-クロロフタル酸ジイソプロピル、4-クロロフタル酸ジ-n-ブチル、4-クロロフタル酸ジイソブチル、4-ブロモフタル酸ジエチル、4-ブロモフタル酸ジ-n-プロピル、4-ブロモフタル酸ジイソプロピル、4-ブロモフタル酸ジ-n-ブチル、4-ブロモフタル酸ジイソブチル等のハロゲン置換フタル酸ジエステル、4-メチルフタル酸ジエチル、4-メチルフタル酸ジ-n-プロピル、4-メチルフタル酸ジイソプロピル、4-メチルフタル酸ジ-n-ブチルまたは4-メチルフタル酸ジイソブチル等のアルキル置換フタル酸ジエステル等が挙げられる。
【0060】
内部電子供与性化合物として、脂肪族ポリカルボン酸エステル類を使用する場合、脂肪族ポリカルボン酸エステル類としては、飽和脂肪族ポリカルボン酸エステルや、不飽和脂肪族ポリカルボン酸エステルを挙げることができる。
上記飽和脂肪族ポリカルボン酸エステルとしては、マロン酸ジエステル類、コハク酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、アジピン酸ジエステル類、グルタル酸ジエステル類等が挙げられる。マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、アルキレン置換マロン酸ジエステル、コハク酸ジエステルから選ばれる1種または2種以上がより好ましい。
また、上記不飽和脂肪族ポリカルボン酸エステルとしては、マレイン酸ジエステル等を挙げることができ、マレイン酸ジエステルまたはアルキル置換マレイン酸ジエステルから選ばれる1種または2種以上がより好ましい。
【0061】
内部電子供与性化合物としてコハク酸ジエステルを使用する場合、コハク酸ジエステルとしては、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、メチルコハク酸ジエチル、2,3-ジイソプロピルコハク酸ジエチル等が挙げられ、コハク酸ジエチルまたは2,3-ジイソプロプルコハク酸ジエチルが好ましい。
【0062】
内部電子供与性化合物としてマレイン酸ジエステルを使用する場合、マレイン酸ジエステルとしては、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ-n-プロピル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ-n-ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ-n-ペンチル、マレイン酸ジネオペンチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジオクチル等を例示することができ、これらの中でも、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ-n-ブチル、及びマレイン酸ジイソブチルが好ましい。
【0063】
内部電子供与性化合物としてアルキル置換マレイン酸ジエステルを使用する場合、アルキル置換マレイン酸ジエステルとしては、イソプロピルブロモマレイン酸ジエチル、ブチルブロモマレイン酸ジエチル、イソブチルブロモマレイン酸ジエチル、ジイソプロピルマレイン酸ジエチル、ジブチルマレイン酸ジエチル、ジイソブチルマレイン酸ジエチル、ジイソペンチルマレイン酸ジエチル、イソプロピルイソブチルマレイン酸ジエチル、イソプロピルイソペンチルマレイン酸ジメチル、(3-クロロ-n-プロピル)マレイン酸ジエチル、ビス(3-ブロモ-n-プロピル)マレイン酸ジエチル、ジメチルマレイン酸ジブチル、ジエチルマレイン酸ジブチル等を例示することができ、これらの中でも、ジメチルマレイン酸ジブチル、ジエチルマレイン酸ジブチル及びジイソブチルマレイン酸ジエチルが好ましい。
【0064】
内部電子供与性化合物としてマロン酸ジエステルを使用する場合、マロン酸ジエステルとしては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジ-n-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジ-n-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジネオペンチル等が挙げられ、これらの中でもマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルまたはマロン酸ジイソブチルが好ましい。
また、内部電子供与性化合物としては、置換マロン酸ジエステルが好適である。
【0065】
内部電子供与性化合物として置換マロン酸ジエステルを使用する場合、置換マロン酸ジエステルとしては、アルキル置換マロン酸ジエステル、ハロゲン置換マロン酸ジエステル、ハロゲン化アルキル置換マロン酸ジエステル等が挙げられ、上記の中でも、アルキル置換マロン酸ジエステルおよびハロゲン置換マロン酸ジエステルが好ましく、アルキル置換マロン酸ジエステルがより好ましい。
【0066】
上記アルキル置換マロン酸ジエステルとしては、ジアルキルマロン酸ジエステルまたはアルキリデンマロン酸ジエステルが好ましく、エチルシクロペンチルマロン酸ジメチル、エチルシクロペンチルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル等のジアルキルマロン酸ジエステルや、ベンジリデンマロン酸ジメチルまたはベンジリデンマロン酸ジエチル等のアルキリデンマロン酸ジエステルがより好ましい。
【0067】
また、脂環族ポリカルボン酸エステルとしては、飽和脂環族ポリカルボン酸エステルおよび不飽和脂環族ポリカルボン酸エステルが挙げられる。具体的には、シクロアルカンジカルボン酸ジエステルやシクロアルケンジカルボン酸ジエステル等が挙げられる。
内部電子供与性化合物としてシクロアルカンジカルボン酸ジエステルを使用する場合、シクロアルカンジカルボン酸ジエステルとしては、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸ジエステル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸ジエステル、シクロヘプタン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、シクロヘプタン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、シクロオクタン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、シクロオクタン-1,3-ジカルボン酸ジエステル、シクロノナン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、シクロノナン-1,3-ジカルボン酸ジエステル、シクロデカン-1,2-ジカルボン酸ジエステル、シクロデカン-1,3-ジカルボン酸ジエステルなどが挙げられる。
【0068】
内部電子供与性化合物としてジエーテル類を使用する場合、ジエーテル類としては、下記一般式(V);
R12
kH(3-k)C-O-(CR13R14)m-O-CR15
nH(3-n) (V)
(一般式(V)中、R12とR15は、ハロゲン原子または炭素数1~20の有機基であって、互いに同一であっても異なっていてもよく、R13とR14は、水素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子または炭素数1~20の有機基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。炭素数1~20の有機基は、酸素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、およびホウ素原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよく、炭素数1~20の有機基が複数存在する場合、複数の有機基は互いに結合して環を形成していてもよく、kは0~3の整数であり、kが2以上の整数である場合、複数個存在するR12は互いに同一でも異なっていてもよく、mは1~10の整数であり、mが2以上の整数である場合、複数個存在するR13およびR14はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、nは0~3の整数であり、nが2以上の整数である場合、複数個存在するR15は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表わされる化合物を用いることができる。
【0069】
一般式(V)で表わされる化合物において、R12またはR15がハロゲン原子である場合、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子または臭素原子である。
また、R12またはR15が炭素数1~20の有機基である場合、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0070】
一般式(V)で表わされる化合物において、炭素数1~20の有機基が複数存在する場合、複数の有機基は互いに結合して環を形成していてもよい。この場合、環を構成する複数の有機基としては、(1)R12同士(kが2以上である場合)、(2)R15同士(nが2以上である場合)、(3)R12同士(mが2以上である場合)、(4)R14同士(mが2以上である場合)、(5)R12とR13、(6)R12とR14、(7)R12とR15、(8)R13とR14、(9)R13とR15、(10)R14とR15の組み合せを挙げることができ、このうち、(8)R13とR14の組み合せが好ましく、R13とR14が互いに結合してフルオレン環等を形成しているものがより好ましい。
【0071】
一般式(V)で表される化合物として、具体的には、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、3,3-ビス(メトキシメチル)-2,6-ジメチルヘプタン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン等から選ばれる一種以上が挙げられ、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、3,3-ビス(メトキシメチル)-2,6-ジメチルヘプタン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれる一種以上が好ましく、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれる一種以上がより好ましい。
【0072】
一般式(V)で表わされる化合物において、kは0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。kが2以上の整数である場合、複数個存在するR12は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(V)で表わされる化合物において、mは1~10の整数であり、1~8の整数であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。mが2以上の整数である場合、複数個存在するR13およびR14は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(V)で表わされる化合物において、nは0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。nが2以上の整数である場合、複数個存在するR15は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0073】
内部電子供与性化合物としてエーテルカーボネート類を使用する場合、エーテルカーボネート類としては、下記一般式(VI);
R16-O-C(=O)-O-Z-OR17 (VI)
(一般式(VI)中、R16およびR17は、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3~20の直鎖状アルケニル基または分岐アルケニル基、炭素数1~20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルケニル基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基、炭素数6~24のハロゲン置換芳香族炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2~24の窒素原子含有炭化水素基(但し、結合末端がC=N基であるものを除く)、結合末端が炭素原子である炭素数2~24の酸素原子含有炭化水素基(但し、結合末端がカルボニル基であるものを除く)、または結合末端が炭素原子である炭素数2~24のリン含有炭化水素基(但し、結合末端がC=P基であるものを除く)を示し、R16およびR17は同一であっても異なっていてもよく、Zは、炭素原子又は炭素鎖を介して結合する結合性基を示す。)で表わされる化合物を用いることができる。
【0074】
一般式(VI)で表わされる化合物において、R16またはR17炭素数1~20の直鎖状アルキル基である場合、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1~12の直鎖状アルキル基が挙げられる。
【0075】
R16またはR17が炭素数3~20の分岐アルキル基である場合、例えばイソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの2級炭素または3級炭素を有するアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数3~12の分岐アルキル基が挙げられる。
【0076】
R16またはR17が炭素数3~20の直鎖状アルケニル基である場合、例えば、アリル基、3-ブテニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基、10-ドデセニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数3~12の直鎖状アルケニル基が挙げられる。
【0077】
R16またはR17が炭素数3~20の分岐アルケニル基である場合、例えば、イソプロペニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、2-エチル-3-ヘキセニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数3~12の分岐アルケニル基が挙げられる。
【0078】
R16またはR17が炭素数1~20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基である場合、例えば、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化n-プロピル基、ハロゲン化n-ブチル基、ハロゲン化n-ペンチル基、ハロゲン化n-ヘキシル基、ハロゲン化n-ペンチル基、ハロゲン化n-オクチル基、ハロゲン化ノニル基、ハロゲン化デシル基、ハロゲン置換ウンデシル基、ハロゲン置換ドデシル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数1~12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基が挙げられる。
【0079】
R16またはR17が炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルキル基である場合、例えば、ハロゲン化イソプロピル基、ハロゲン化イソブチル基、ハロゲン化2-エチルヘキシル基、ハロゲン化ネオペンチル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルキル基が挙げられる。
【0080】
R16またはR17が炭素数2~20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基である場合、例えば、2-ハロゲン化ビニル基,3-ハロゲン化アリル基、3-ハロゲン化-2-ブテニル基、4-ハロゲン化-3-ブテニル基、パーハロゲン化-2-ブテニル基、6-ハロゲン化-4-ヘキセニル基、3-トリハロゲン化メチル-2-プロペニル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数2~12のハロゲン置換アルケニル基が挙げられる。
【0081】
R16またはR17が炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルケニル基である場合、例えば、3-トリハロゲン化-2-ブテニル基、2-ペンタハロゲン化エチル-3-ヘキセニル基、6-ハロゲン化-3-エチル-4-ヘキセニル基、3-ハロゲン化イソブテニル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルケニル基が挙げられる。
【0082】
R16またはR17が炭素数3~20のシクロアルキル基である場合、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、テトラメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ブチルシクロペンチル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3~12のシクロアルキル基が挙げられる。
【0083】
R16またはR17が炭素数3~20のシクロアルケニル基である場合、例えば、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、ノルボルネン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3~12のシクロアルケニル基が挙げられる。
【0084】
R16またはR17が炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルキル基である場合、例えば、ハロゲン置換シクロプロピル基、ハロゲン置換シクロブチル基、ハロゲン置換シクロペンチル基、ハロゲン置換トリメチルシクロペンチル基、ハロゲン置換シクロヘキシル基、ハロゲン置換メチルシクロヘキシル基、ハロゲン置換シクロヘプチル基、ハロゲン置換シクロオクチル基、ハロゲン置換シクロノニル基、ハロゲン置換シクロデシル基、ハロゲン置換ブチルシクロペンチル基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3~12のハロゲン置換シクロアルキル基が挙げられる。
【0085】
R16またはR17が炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルケニル基である場合、例えば、ハロゲン置換シクロプロペニル基、ハロゲン置換シクロブテニル基、ハロゲン置換シクロペンテニル基、ハロゲン置換トリメチルシクロペンテニル基、ハロゲン置換シクロヘキセニル基、ハロゲン置換メチルシクロヘキセニル基、ハロゲン置換シクロヘプテニル基、ハロゲン置換シクロオクテニル基、ハロゲン置換シクロノネニル基、ハロゲン置換シクロデセニル基、ハロゲン置換ブチルシクロペンテニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数3~12のハロゲン置換シクロアルケニル基が挙げられる。
【0086】
R16またはR17が炭素数6~24の芳香族炭化水素基である場合、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基、1-フェニルブチル基、4-フェニルブチル基、2-フェニルヘプチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、1,8-ジメチルナフチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数6~12の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0087】
R16またはR17が炭素数6~24のハロゲン置換芳香族炭化水素基である場合、ハロゲン化フェニル基、ハロゲン化メチルフェニル基、トリハロゲン化メチルフェニル基、パーハロゲン化ベンジル基、パーハロゲン化フェニル基、2-フェニル-2-ハロゲン化エチル基、パーハロゲン化ナフチル基、4-フェニル-2,3-ジハロゲン化ブチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数6~12のハロゲン置換芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0088】
なお、前記一般式(VI)で表わされる化合物中、R16またはR17がハロゲン原子を含有する基である場合、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子または臭素原子が挙げられる。
【0089】
また、R16またはR17が、結合末端が炭素原子である炭素数2~24のリン含有炭化水素基(但し、結合末端がC=P基であるものを除く)である場合、例えば、ジメチルホスフィンメチル基、ジブチルホスフィノメチル基、ジシクロヘキシルホスフィノメチル基、ジメチルホスフィンエチル基、ジブチルホスフィノエチル基、ジシクロヘキシルホスフィノエチル基などのジアルキルホスフィノアルキル基、ジフェニルホスフィノメチル基、ジトリルホスフィノメチル基などのジアリールホスフィノアルキル基、ジメチルホスフフィノフェニル基、ジエチルホスフフィノフェニル基等のフォスフィノ基置換アリール基などが挙げられ、好ましくは炭素数2~12のリン含有炭化水素基が挙げられる。
【0090】
なお、R16またはR17の結合末端とは、一般式(VI)で表わされる化合物において、R16またはR17が結合する酸素原子側末端の原子又は基を意味する。
【0091】
R16としては、炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3~12の直鎖状アルケニル基または分岐アルケニル基、炭素数1~12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数3~12の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基または分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基、炭素数3~12のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3~12のハロゲン置換シクロアルケニル基、または炭素数6~12の芳香族炭化水素基が好ましく、
炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3~12の直鎖状アルケニル基または分岐アルケニル基、炭素数1~12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基、または炭素数6~12の芳香族炭化水素基がより好ましく、
炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐アルキル基、および炭素数6~12の芳香族炭化水素基がさらに好ましい。
【0092】
R17としては、炭素数1~12の直鎖状アルキル基、結合末端が-CH2-である炭素数3~12の分岐アルキル基、結合末端が-CH2-である炭素数3~12の分岐アルケニル基、結合末端が-CH2-である炭素数1~12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、結合末端が-CH2-である炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルキル基、結合末端が-CH2-である炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルケニル基、結合末端が-CH2-である炭素数4~12のシクロアルキル基、結合末端が-CH2-である炭素数4~12のシクロアルケニル基、結合末端が-CH2-である炭素数4~12のハロゲン置換シクロアルキル基、結合末端が-CH2-である炭素数4~12のハロゲン置換シクロアルケニル基または結合末端が-CH2-である炭素数7~12の芳香族基炭化水素基が好ましく、炭素数1~12の直鎖状炭化水素基、結合末端が-CH2-である炭素数3~12の分岐アルキル基または結合末端が-CH2-である炭素数7~12の芳香族基炭化水素基がより好ましい。
【0093】
なお、R17の結合末端とは、一般式(VI)で表わされる化合物において、R17が結合する酸素原子側末端を意味する。
【0094】
R16およびR17の組み合わせとしては、上述した各基のうち、好ましいもの同士の組み合わせを挙げることができ、より好ましい同士の組み合せであることが好ましい。
【0095】
一般式(VI)で表わされる化合物において、Zは、カーボネート基とエーテル基(OR17基)を結合する二価の結合性基である、炭素原子または炭素鎖を介して結合する結合性基であり、例えば、Zが結合する2つの酸素原子間を炭素鎖で結合する結合性基を挙げることができ、該炭素鎖が2個の炭素原子で構成されている結合性基であることが好ましい。
【0096】
Zは、炭素数1~20の直鎖状アルキレン基、炭素数3~20の分岐アルキレン基、ビニレン基、炭素数3~20の直鎖状アルケニレン基または分岐アルケニレン基、炭素数1~20の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3~20の分岐ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3~20の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基または分岐ハロゲン置換アルケニレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルケニレン基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルキレン基、炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルケニレン基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基、炭素数6~24のハロゲン置換芳香族炭化水素基、炭素数1~24の窒素原子含有炭化水素基、炭素数1~24の酸素原子含有炭化水素基、または炭素数1~24のリン含有炭化水素基であることが好ましい。
【0097】
Zは、炭素数2のエチレン基、炭素数3~12の分岐アルキレン基、ビニレン基、炭素数3~12の直鎖状アルケニレン基または分岐アルケニレン基、炭素数2~12の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルキレン基、炭素数3~12の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基または分岐ハロゲン置換アルケニレン基、炭素数3~12のシクロアルキレン基、炭素数3~12のシクロアルケニレン基、炭素数3~12のハロゲン置換シクロアルキレン基、炭素数3~12のハロゲン置換シクロアルケニレン基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、炭素数6~12のハロゲン置換芳香族炭化水素基、炭素数2~12の窒素原子含有炭化水素基、炭素数2~12の酸素原子含有炭化水素基、または炭素数2~12のリン含有炭化水素基であり、
特に好ましい基は、炭素数2のエチレン基および炭素数3~12の分岐アルキレン基から選ばれる2座の結合性基であることがより好ましい(なお、2座の結合性基とは、Zが結合する2つの酸素原子間が炭素鎖で結合され、当該炭素鎖が2個の炭素原子で構成されているものを意味する)。
【0098】
Zが炭素数1~20の直鎖状アルキレン基である場合、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基など挙げられ、好ましくは、炭素数2~12の直鎖状アルキレン基である。更に好ましくはエチレン基が挙げられる。
【0099】
Zの炭素数3~20の分岐アルキレン基である場合、例えば、1-メチルエチレン基、2-メチルトリメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルヘキサメチレン基、4-メチルヘプタメチレン基、4-メチルオクタメチレン基、5-メチルノナメチレン基、5-メチルデカメチレン基、6-メチルウンデカメチレン基、7-メチルドデカメチレン基、7-メチルトリデカメチレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3~12の分岐アルキレン基が挙げられる、より好ましくは、1-メチルエチレン基、2-メチルエチレン基、1-エチルエチレン基が挙げられる。
【0100】
Zが炭素数3~20の直鎖状アルケニレン基である場合、例えば、プロペニレン基、ブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基、オクタデセニレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3~12の直鎖状アルケニレン基が挙げられる。
【0101】
Zが炭素数3~20の分岐アルケニレン基である場合、例えば、イソプロペニレン基、1-エチルエテニレン基、2-メチルプロペニレン基、2,2-ジメチルブテニレン基、3-メチル-2-ブテニレン基、3-エチル-2-ブテニレン基、2-メチルオクテニレン基、2,4-ジメチル-2-ブテニレン基などが挙げられ、好ましくは、連結部がエテニレン基である炭素数3~12の分岐アルケニレン基が挙げられ、より好ましくは、イソプロペニレン基、1-エチルエテニレン基が挙げられる。
【0102】
Zが炭素数1~20の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基である場合、例えば、ジクロロメチレン基、クロロメチレン基、ジクロロメチレン基、テトラクロロエチレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3~12の直鎖状ハロゲン置換アルキレン基が挙げられ、より好ましくは、クロロエチレン基、フルオロエチレン基、ジクロロエチレン基、ジフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基が挙げられる。
【0103】
Zが炭素数1~20の分岐ハロゲン置換アルキレン基である場合、例えば、1,2-ビスクロロメチルエチレン基、2,2-ビス(クロロメチル)プロピレン基、1,2-ビスジクロロメチルエチレン基、1,2-ビス(トリクロロメチル)エチレン基、2,2-ジクロロプロピレン基、1,1,2,2-テトラクロロエチレン基、1-トリフルオロメチルエチレン基、1-ペンタフルオロフェニルエチレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルキレン基が挙げられ、より好ましくは、1-クロロエチルエチレン基、1-トリフルオロメチルエチレン基、1,2-ビス(クロロメチル)エチレン基が挙げられる。
【0104】
Zが炭素数1~20の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基である場合、例えば、ジクロロエテニレン基、ジフルオロエテニレン基、3,3-ジクロロプロペニレン基、1,2-ジフルオロプロペニレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3~12の直鎖状ハロゲン置換アルケニレン基が挙げられ、より好ましくは、ジクロロエテニレン基、ジフルオロエテニレン基が挙げられる。
【0105】
Zが炭素数1~20の分岐ハロゲン置換アルキレン基である場合、例えば、3,4-ジクロロ-1,2-ブチレン基、2,2-ジクロロ-1,3-ブチレン基、1,2-ジフルオロ-1,2-プロピレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数3~12の分岐ハロゲン置換アルキレン基が挙げられ、より好ましくは、クロロメチルエテニレン基、トリフルオロメチルエテニレン基、3,4-ジクロロ-1,2-ブテニレン基が挙げられる。
【0106】
Zが炭素数3~20のシクロアルキレン基である場合、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロプロピレン基、2-メチルシクロプロピレン基、シクロブチレン基、2,2-ジメチルシクロブチレン基、2,3-ジメチルシクロペンチレン基、1,3,3-トリメチルシクロヘキシレン基、シクロオクチレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3~12のシクロアルキレン基が挙げられ、より好ましくは、1,2-シクロアルキレン基、あるいは炭化水素基置換-1,2-シクロアルキレン基が挙げられる。
【0107】
Zが炭素数3~20のシクロアルケニレン基である場合、例えば、シクロペンテニレン基、2,4-シクロペンタジエニレン基、シクロヘキセニレン基、1,4-シクロヘキサジエニレン基、シクロヘプテニレン基、メチルシクロペンテニレン基、メチルシクロヘキセニレン基、メチルシクロヘプテニレン基、ジシクロデシレン基、トリシクロデシレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3~12のシクロアルケニレン基が挙げられ、より好ましくは、1,2-シクロアルケニレン基、あるいは炭化水素基置換-1,2-シクロアルケニレン基が挙げられる。
【0108】
Zが炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルキレン基である場合、例えば、3-クロロ-1,2-シクロペンチレン基、3,4,5,6-テトラクロロ-1,2-シクロヘキシレン基、3,3-ジクロロ-1,2-シクロプロピレン基、2-クロロメチルシクロプロピレン基、3,4-ジクロロ-1,2-シクロブチレン基、3,3-ビス(ジクロロメチル)-1,2-シクロブチレン基、2,3-ビス(ジクロロメチル)シクロペンチレン基、1,3,3-トリス(フルオロメチル)-1,2-シクロヘキシレン基、3-トリクロロメチル-1,2-シクロオクチレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3~12のハロゲン置換シクロアルキレン基が挙げられる。
【0109】
Zが炭素数3~20のハロゲン置換シクロアルケニレン基である場合、例えば、5-クロロ-1,2-シクロ-4-ヘキセニレン基、3,3,4,4-テトラフルオロ-1,2-シクロ-6-オクテニレン基などが挙げられ、好ましくは、炭素数3~12のハロゲン置換シクロアルケニレン基が挙げられる。
【0110】
Zが炭素数6~24の芳香族炭化水素基である場合、例えば、1,2-フェニレン、3-メチル-1,2-フェニレン、3,6-ジメチル-1,2-フェニレン、1,2-ナフチレン、2,3-ナフチレン、5-メチル-1,2-ナフチレン、9,10-フェナンスリレン、1,2-アントラセニレン等が挙げられ、好ましくは、炭素数6~12の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0111】
Zが炭素数6~24のハロゲン置換芳香族炭化水素基である場合、例えば、3-クロロ-1,2-フェニレン、3-クロロメチル-1,2-フェニレン、3,6-ジクロロ-1,2-フェニレン、3,6-ジクロロ-4,5-ジメチル-1,2-フェニレン、3-クロロ-1,2-ナフチレン、3-フルオロ-1,2-ナフチレン、3,6-ジクロロ-1,2-フェニレン、3,6-ジフルオロ-1,2-フェニレン、3,6-ジブロモ-1,2-フェニレン、1-クロロ-2,3-ナフチレン、5-クロロ-1,2-ナフチレン、2,6-ジクロロ-9,10-フェナンスリレン、5,6-ジクロロ-1,2-アントラセニレン、5,6-ジフルオロ-1,2-アントラセニレン等が挙げられ、好ましくは、炭素数6~12のハロゲン置換芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0112】
Zが炭素数1~24の窒素原子含有炭化水素基である場合、例えば、1-ジメチルアミノエチレン基、1,2-ビスジメチルミノエチレン基、1-ジエチルアミノエチレン基、2-ジエチルアミノ-1,3-プロピレン基、2-エチルアミノ-1,3-プロピレン基、4-ジメチルアミノ-1,2-フェニレン基、4,5-ビス(ジメチルアミノ)フェニレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数2~12の窒素原子含有炭化水素基が挙げられる。
【0113】
Zが炭素数1~24の酸素原子含有炭化水素基である場合、例えば、1-メトキシエチレン基、2,2-ジメトキシ-1,3-プロパニレン基、2-エトキシ-1,3-プロパニレン基、2-t-ブトキシ-1,3-プロパニレン基、2,3-ジメトキシ-2,3-ブチレン基、4-メトキシ-1,2-フェニレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数2~12の酸素原子含有炭化水素基が挙げられる。
【0114】
Zが炭素数1~24のリン含有炭化水素基である場合、例えば、1-ジメチルフォスフィノエチレン基、2,2-ビス(ジメチルフォスフィノ)-1,3-プロパニレン基、2-ジエチルフォスフィノ-1,3-プロパニレン基、2-t-ブトキメチルフォスフィノ-1,3-プロパニレン基、2,3-ビス(ジフェニルフォスフィノ)-2,3-ブチレン基、4-メチルフォスフェート-1,2-フェニレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素数1~12のリン含有炭化水素基が挙げられる。
【0115】
なお、Zがシクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、ハロゲン置換シクロアルキレン基、ハロゲン置換シクロアルケニレン基、芳香族炭化水素基またはハロゲン置換芳香族炭化水素基等の環状の基である場合、Zが結合する2つの酸素原子間は炭素鎖で結合され、該炭素鎖が2個の炭素原子で構成されている結合性基とは、環状を構成する炭素鎖の中の隣接する2個の炭素鎖が、当該Zが結合する2つの酸素原子間にある炭素鎖であることを意味する。
【0116】
一般式(VI)で表される化合物の具体例としては、(2-エトキシエチル)メチルカーボネート、(2-エトキシエチル)エチルカーボネート、(2-エトキシエチル)フェニルカーボネートが特に好ましい。
【0117】
内部電子供与性化合物としては、特に、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-n-プロピル、フタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、ジメチルマレイン酸ジブチル、ジエチルマレイン酸ジブチル、ジイソブチルマレイン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、メチルコハク酸ジエチル、2,3-ジイソプロピルコハク酸ジエチル、マロン酸ジ-n-ブチル、マロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン、(2-エトキシエチル)エチルカーボネート、(2-エトキシエチル)フェニルカーボネート、ベンジリデンマロン酸ジメチル、ベンジリデンマロン酸ジエチルおよびベンジリデンマロン酸ジブチルから選ばれる一種以上が好ましい。
【0118】
上記固体触媒成分は、マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および内部電子供与性化合物の接触反応物からなる。
【0119】
上記マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および内部電子供与性化合物の接触、反応は、第三成分であるポリシロキサンの存在下に行ってもよい。
【0120】
ポリシロキサンとは、主鎖にシロキサン結合(-Si-O-結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02~100cm2/s(2~10000センチストークス)、より好ましくは0.03~5cm2/s(3~500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンを意味する。
【0121】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジシロキサンとしてヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1、3-ジクロロテトラメチルジシロキサン、1、3-ジブロモテトラメチルジシロキサン、クロロメチルペンタメチルジシロキサン、1,3-ビス(クロロメチル)テトラメチルジシロキサン、また、ジシロキサン以外のポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10~80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
【0122】
上記マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物、内部電子供与性化合物(および場合によりポリシロキサン)を接触させ、反応させる処理は、不活性有機溶媒の存在下に行うことが好ましい。
上記不活性有機溶媒としては、常温(20℃)下において液体で、かつ沸点50~150℃であるものが好ましく、常温下において液体で、かつ沸点50~150℃である芳香族炭化水素化合物または飽和炭化水素化合物がより好ましい。
上記不活性有機溶媒として、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の直鎖脂肪族炭化水素化合物、メチルヘプタン等の分岐状脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記不活性有機溶媒のうち、常温下において液体で、沸点が50~150℃である芳香族炭化水素化合物が、得られる固体触媒成分の活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性を向上させることができるため、好適である。
【0123】
マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および内部電子供与性化合物は、適宜不活性有機溶媒の存在下に混合することにより、接触、反応させることができる。
【0124】
上記反応時の温度は、0~130℃が好ましく、40~130℃がより好ましく、30~120℃がさらに好ましく、80~120℃が一層好ましい。また、反応時間は、1分間以上が好ましく、10分間以上がより好ましく、30分間~6時間がさらに好ましく、30分間~5時間が一層好ましく、1~4時間がより一層好ましい。
【0125】
上記反応に先だって低温熟成を施してもよい。
【0126】
低温熟成は、反応時の温度よりも低温で各成分を接触させる予備反応であって、低温熟成時の温度は、-20~70℃が好ましく、-10~60℃がより好ましく、-10~30℃がさらに好ましい。また、低温熟成時間は、1分間~6時間が好ましく、5分間~4時間がより好ましく、30分間~3時間がさらに好ましい。
【0127】
マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および内部電子供与性化合物類を接触、反応させる際、マグネシウム化合物1モルに対する四価のチタンハロゲン化合物の使用量は、0.5~100モルであることが好ましく、1~50モルであることがより好ましく、1~10モルであることがさらに好ましい。
【0128】
マグネシウム化合物、四価のチタンハロゲン化合物および内部電子供与性化合物を接触、反応させる際、マグネシウム化合物1モルに対する内部電子供与性化合物の使用量は、0.01~10モルであることが好ましく、0.01~1モルであることがより好ましく、0.02~0.6モルであることがさらに好ましい。
また、不活性有機溶媒を使用する場合、不活性有機溶媒の使用量は、マグネシウム化合物1モルに対し、0.001~500モルであることが好ましく、0.5~100モルであることがより好ましく、1.0~20モルであることがさらに好ましい。
【0129】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行うことが好ましい。
上記反応終了後、反応生成物は、反応液を静置し、適宜、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)とするか、さらに熱風乾燥等により乾燥状態にした上で、洗浄処理することが好ましい。
【0130】
上記反応終了後、反応液を静置し、上澄み液を適宜除去した上で、得られた反応生成物を洗浄処理する。
上記洗浄処理は、通常洗浄液を用いて行われる。
洗浄液としては、上記不活性有機溶媒と同様のものを挙げることができ、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の常温下で液体、かつ、沸点が50~150℃の直鎖脂肪族炭化水素化合物や、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の常温下で液体、かつ、沸点が50~150℃の環式脂肪族炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、オルトジクロロベンゼン等の常温下で液体、かつ、沸点が50~150℃の芳香族炭化水素化合物等から選ばれる一種以上が好ましい。
上記洗浄液を使用することにより、反応物中から、副生成物や不純物を容易に溶解し、除去することができる。
【0131】
上記洗浄処理は、0~120℃の温度下で行うことが好ましく、0~110℃の温度下で行うことがより好ましく、30~110℃の温度下で行うことがさらに好ましく、50~110℃の温度下で行うことが一層好ましく、50~100℃の温度下で行うことがより一層好ましい。
【0132】
洗浄処理は、反応生成物に対して所望量の洗浄液を加えて攪拌した後、フィルトレーション法(濾過法)もしくはデカンテーション法により、液相を除去することにより行うことが好ましい。
また、後述するように、洗浄回数が複数回(2回以上)である場合には、反応生成物に対して最後に添加した洗浄液を除去することなく、そのまま次工程の反応に供することもできる。
【0133】
上記各成分を接触、反応させた後、洗浄処理することにより、反応生成物中に残留する未反応原料成分や反応副生成物(アルコキシチタンハライドや四塩化チタン-カルボン酸錯体等)の不純物を除去することができる。
【0134】
上記洗浄処理後に適宜後処理を施してもよい。
上記後処理を施す場合、例えば、上記反応終了後に得られた反応物や、上記洗浄処理後に得られた洗浄物に対し、四価のチタンハロゲン化合物をさらに接触させる態様や、四価のチタンハロゲン化合物をさらに接触させた後に洗浄する態様を挙げることができる。上記後処理における洗浄は、上述した反応生成物の洗浄と同様に行うことができる。
【0135】
上記各成分の接触反応物は、通常、懸濁液状であり、当該懸濁液状の生成物は、静置し、上澄み液を除去してウェット状(スラリー状)としたり、さらに熱風乾燥等により乾燥することにより固体触媒成分を得ることができる。
【0136】
上記固体触媒成分において、マグネシウム原子の含有量は、10~70質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~40質量%がさらに好ましく、15~25質量%が特に好ましい。
上記固体触媒成分において、チタン原子の含有量は、0.5~8.0質量%が好ましく、0.5~5.0質量%が好ましく、0.5~3.5質量%がさらに好ましい。
上記固体触媒成分において、ハロゲン原子の含有量は、20~88質量%が好ましく、30~85質量%がより好ましく、40~80質量%がさらに好ましく、45~75質量%が一層好ましい。
【0137】
本発明に係るオレフィン重合用触媒において、内部電子供与性化合物の含有割合は、1.5~30質量%が好ましく、3.0~25質量% がより好ましく、6.0~25質量%がさらに好ましい。
【0138】
本出願書類において、固体触媒成分中のマグネシウム原子の含有量は、固体触媒成分を塩酸溶液で溶解し、EDTA溶液で滴定するEDTA滴定方法により測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、固体触媒成分中のチタン原子の含有量は、JIS 8311-1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、固体触媒成分中のハロゲン原子の含有量は、固体触媒成分を硫酸と純水の混合溶液で処理して水溶液とした後、所定量を分取し、硝酸銀標準溶液でハロゲン原子を滴定する硝酸銀滴定法により測定した値を意味するものとする。
本出願書類において、固体触媒成分中の内部電子供与性化合物の含有量は、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC-14B)を用いて下記の条件で測定したときに、予め既知濃度に基づいて測定した検量線を用いて求められる結果を意味する。
<測定条件>
カラム:パックドカラム(φ2.6×2.1m, Silicone SE-30 10%,Chromosorb WAWDMCS 80/100、ジーエルサイエンス(株)社製)
検出器:FID(Flame IonizationDetector,水素炎イオン化型検出器)
キャリアガス:ヘリウム、流量40ml/分
測定温度:気化室280℃、カラム225℃、検出器280℃、または気化室265℃、カラム180℃、検出器265℃
【0139】
(有機アルミニウム化合物)
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物、一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有する固体触媒成分とともに、有機アルミニウム化合物を含む。
【0140】
上記有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(VII)
R18
pAlQ3-p (VII)
(式中、R18は炭素数1~6のアルキル基であり、Qは水素原子またはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数である。)
で表される有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0141】
一般式(VII)で表わされる有機アルミニウム化合物において、R18は炭素数1~6のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等を挙げることができる。
【0142】
上記一般式(VII)で表わされる有機アルミニウム化合物において、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、Qがハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0143】
上記一般式(VII)で表わされる有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドから選ばれる一種以上を挙げることができ、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好適である。
【0144】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、外部電子供与性化合物として、一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物以外の化合物を含むものであってもよい。
このような外部電子供与性化合物としては、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物が挙げられ、具体的には、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、有機ケイ素化合物、中でもSi-O-C結合を有する有機ケイ素化合物等が挙げられる。
【0145】
上記外部電子供与性化合物のなかでも、安息香酸エチル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-エトキシ安息香酸エチル、p-トルイル酸メチル、p-トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のエステル類、1,3-ジエーテル類、Si-O-C結合を含む有機ケイ素化合物が好ましく、Si-O-C結合を有する有機ケイ素化合物が特に好ましい。
【0146】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物の含有割合は、本発明の効果が得られる範囲において任意に選定することができ、特に限定されない。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、固体触媒成分中のチタン原子1モルあたり、有機アルミニウム化合物を、1~2000モル含むことが好ましく、50~1000モル含むことがより好ましい。
また、本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類重合用触媒中に含有される固体触媒成分中のチタン原子1モルあたり、上記一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および上記一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物を、合計で、1~200モル含むことが好ましく、2~150モル含むことがより好ましく、5~100モル含むことがさらに好ましい。
さらに、本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、オレフィン類重合用触媒中に含有される有機アルミニウム化合物1モルあたり、一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物を、合計で、0.001~10モル含むことが好ましく、0.002~2モル含むことがより好ましく、0.002~0.5モル含むことがさらに好ましい。
【0147】
本発明によれば、α-オレフィン類の重合に際し、重合活性持続性に優れ、立体規則性およびMFRが高く、成型性が良好なα-オレフィン(共)重合体を好適に製造し得るオレフィン類重合用触媒を提供することができる。
【0148】
次に、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法は、本発明のオレフィン類重合用触媒を製造する方法であって、
マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有する固体触媒成分、
有機アルミニウム化合物、
下記一般式(I)
R1Si(OR2)3 (I)
(式中、R1基は炭素数6~12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数6~12のシクロアルキル基であり、R2基は炭素数2~4の直鎖アルキル基である。)
で表される外部電子供与性化合物、および
下記一般式(II)
(R3R4N)n(R5HN)pSiR6
q(OR7)r (II)
(式中、R3、R4およびR5基は炭素数1~12の直鎖アルキル基、炭素数3~12の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R3、R4およびR5基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R6基は炭素数1~10の直鎖アルキル基、炭素数3~10の分岐鎖アルキル基または炭素数3~12のシクロアルキル基であり、R7基はメチル基またはエチル基であり、nは0~2の実数、pは0~2の実数、qは0~3の実数、rは0~4の実数で、n+p+q+r=4であり、R3R4N基が複数存在する場合、各R3R4N基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R5HN基が複数存在する場合、各R5HN基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、R6基が複数存在する場合、各R6基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、OR7基が複数存在する場合、各OR7基は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。)
で表される外部電子供与性化合物を、
上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物および上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物の合計量に対し、上記一般式(I)で表される外部電子供与性化合物が51~99モル%、上記一般式(II)で表される外部電子供与性化合物が1~49モル%になるように、
相互に接触させる
ことを特徴とするものである、
【0149】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法において、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与性化合物を含有する固体触媒成分の詳細や、有機アルミニウム化合物の詳細や、一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物、一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物の詳細は、上述した内容と同様である。
また、各成分の接触割合については、上述したオレフィン類重合用触媒の構成成分の含有割合に対応する量を接触することが好ましい。
【0150】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法において、上記各成分を接触させる順序は任意であるが、例えば、以下の接触順序を例示することができる。
(i)(α)固体触媒成分→(γ)一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物→(β)有機アルミニウム化合物
(ii)(β)有機アルミニウム化合物→(γ)一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物→(α)固体触媒成分
(iii)(γ)一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物→(α)固体触媒成分→(β)有機アルミニウム化合物
(iv)(γ)一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物→(β)有機アルミニウム化合物→(α)固体触媒成分
上記接触例(i)~(iv)において、接触例(ii)が好適である。
なお、上記接触例(i)~(iv)において、「→」は接触順序を意味し、例えば、「(α)オレフィン類重合用固体触媒成分→(β)有機アルミニウム化合物→(γ)一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物」は、(α)固体触媒成分中に(β)有機アルミニウム化合物を添加して接触させた後、(γ)一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物を添加して接触させることを意味する。
【0151】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒の製造方法においては、固体触媒成分、有機アルミニウム化合物、一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物を、オレフィン類不存在下で接触させてもよいし、オレフィン類の存在下で(重合系内で)接触させてもよい。
【0152】
上記固体触媒成分、有機アルミニウム化合物、一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物の接触は、固体触媒成分や調製造後のオレフィン類重合用触媒の劣化を防止するため、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気下、或いはプロピレン等のモノマー雰囲気下で行うことが好ましい。
また、操作の容易性を考慮すると、不活性溶媒等、分散媒の存在下において行うことも好ましく、不活性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物等が用いられ、脂肪族炭化水素がより好ましく、中でもヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンがより好ましい。
【0153】
上記各成分を接触させる際の接触温度は、-10℃~100℃が好ましく、0℃~90℃がより好ましく、20℃~80℃がさらに好ましい。接触時間は1分間~10時間が好ましく、10分間~5時間がより好ましく、30分間~2時間がさらに好ましい。
接触温度及び接触時間を上記の範囲とすることで、オレフィン類重合用触媒の重合活性や得られる重合体の立体規則性を向上させ易くなり、結果として得られるオレフィン類重合体の機械的物性、加工性、生産性が向上し易くなる。
【0154】
本発明によれば、α-オレフィン類の重合に際し、重合活性持続性に優れ、立体規則性およびMFRが高く、成型性が良好なα-オレフィン(共)重合体を好適に製造し得るオレフィン類重合用触媒を簡便に製造する方法を提供することができる。
【0155】
次に、本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、本発明に係るオレフィン類重合触媒の存在下、プロピレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンの共重合を行なうことを特徴とするものである。
【0156】
プロピレンと他のα-オレフィン類の単量体との共重合を行う場合、プロピレンと少量のエチレンをコモノマーとして、1段で重合するランダム共重合と、第一段階(第一重合槽)でプロピレンの単独重合を行い、第二段階(第二重合槽)あるいはそれ以上の多段階(多段重合槽)でプロピレンとエチレン等の他のα-オレフィンとの共重合を行う、いわゆるプロピレン-エチレンブロック共重合が代表的であり、プロピレンと他のα-オレフィンとのブロック共重合が好ましい。
【0157】
ブロック共重合により得られるブロック共重合体とは、2種以上のモノマー組成が連続して変化するセグメントを含む重合体であり、モノマー種、コモノマー種、コモノマー組成、コモノマー含量、コモノマー配列、立体規則性などポリマーの一次構造の異なるポリマー鎖(セグメント)が1分子鎖中に2種類以上繋がっている形態のものをいう。
【0158】
共重合されるオレフィン類としては、炭素数2~20のα-オレフィン(炭素数3のプロピレンを除く)であることが好ましく、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキサン等を挙げることができ、これ等のオレフィン類は一種以上併用することができる。共重合されるオレフィン類としては、エチレンまたは1-ブテンが好適であり、エチレンが特に好適である。
【0159】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができる。
また、重合対象となるオレフィン類は、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。
【0160】
オレフィン類の重合は、例えば、オートクレーブ等の反応炉内において、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の存在下、オレフィン類を導入し、加熱、加圧状態下に行う。
【0161】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、重合温度は、通常200℃以下であるが、100℃以下が好ましく、活性や立体規則性の向上の観点からは、60~100℃がより好ましく、70~90℃がさらに好ましく、75~80℃が一層好ましい。本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、重合圧力は、10MPa以下が好ましく、6MPa以下がより好ましく、5MPa以下がさらに好ましい。
【0162】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法においては、上記重合温度範囲において、比較的高温下でホモ重合した場合でも水素活性に優れ高い立体規則性およびMFRを有する重合体を高い生産性の下で作製することができるとともに、高温下で共重合した場合においても、優れた水素活性と共重合活性を達成し、耐衝撃性に優れた共重合体を製造することができる。
また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応は一段で行ってもよいし、二段以上で行ってもよい。
【0163】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、プロピレンと他のα-オレフィン類とのブロック共重合反応は、通常、本発明に係るオレフィン類重合用触媒の存在下、前段でプロピレン単独あるいは、プロピレンと少量のα-オレフィン(エチレン等)とを接触させ、次いで後段でプロピレンとα-オレフィン(エチレン等)とを接触させることにより実施することができる。なお、上記前段の重合反応を複数回繰り返し実施してもよいし、上記後段の重合反応を複数回繰り返し多段反応により実施してもよい。
【0164】
プロピレンと他のα-オレフィン類とのブロック共重合反応は、具体的には、前段で(最終的に得られる共重合体に占める)ポリプロピレン部の割合が20~90質量%になるように重合温度および時間を調整して重合を行ない、次いで後段において、プロピレンおよびエチレンあるいは他のα-オレフィンを導入し、(最終的に得られる共重合体に占める)エチレン-プロピレンゴム(EPR)などのゴム部割合が10~80質量%になるように重合することが好ましい。
前段及び後段における重合温度は共に、200℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、75~80℃がさらに好ましく、重合圧力は、10MPa以下が好ましく、6MPa以下がより好ましく、5MPa以下がさらに好ましい。
上記共重合反応においても、連続重合法、バッチ式重合法のいずれの重合法も採用することができ、重合反応は1段で行なってもよいし、2段以上で行なってもよい。
また、重合時間(反応炉内の滞留時間)は、前段または後段の各重合段階のそれぞれの重合段階で、あるいは連続重合の際においても、1分~5時間であることが好ましい。
重合方法としては、シクロヘキサン、ヘプタン等の不活性炭化水素化合物の溶媒を使用するスラリー重合法、液化プロピレン等の溶媒を使用するバルク重合法、実質的に溶媒を使用しない気相重合法が挙げられ、バルク重合法または気相重合法が好適であり、後段の反応は一般的にはEPRのPP粒子からの溶出を抑える目的から気相重合反応であることが好ましい。
【0165】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類を重合(以下、適宜、本重合と称する。)するにあたり、重合対象となるオレフィン類に対して本発明に係るオレフィン類重合用触媒の構成成分の一部または全部を接触させることにより、予備的な重合(以下、適宜、予備重合と称する。)を行ってもよい。
【0166】
予備重合を行うに際して、本発明のオレフィン類重合用触媒の構成成分およびオレフィン類の接触順序は任意であるが、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いで固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。または、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いで一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物および一般式(II)で表されるアルコキシシラン化合物を含む外部電子供与性化合物を接触させ、さらに固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。
予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類、あるいはスチレン等のモノマーを用いることができ、予備重合条件も、上記重合条件と同様である。
【0167】
上記予備重合を行うことにより、触媒活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性および粒子性状等を一層改善し易くなる。
【0168】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法によれば、プロピレン等のα-オレフィン類から、立体規則性およびMFRが高く、成型性が良好なα-オレフィン(共)重合体を簡便に製造することができる。
【0169】
次に、本発明に係るプロピレン-α-オレフィン共重合体について説明する。
本発明に係るプロピレン-α-オレフィン共重合体は、本発明に係るオレフィン重合用触媒の存在下におけるプロピレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンの共重合反応物からなることを特徴とするものである。
【0170】
本発明に係るプロピレン-α-オレフィン共重合体は、上述した本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法により製造され得るものである。
【0171】
本発明に係るプロピレン-α-オレフィン共重合体は、EPR(エチレン-プロピレンゴム)等のゴム部を高い含有率で含有し、ブロック率も高いことから、優れた耐衝撃性を容易に発揮することができる。
【実施例】
【0172】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0173】
(製造例1)
<固体触媒成分(A-1)の製造>
撹拌装置を備え、内部が窒素ガスで充分に置換された内容積500mlのフラスコに、四塩化チタン30mlおよびトルエン20mlを装入して、混合溶液を形成した。次いで、平均粒径32μmの球状ジエ卜キシマグネシウム(円形度1.10)10.0g (87.4ミリモル)、トルエン50mlおよびフタル酸ジ-n-ブチル3.6mlを用いて形成した懸濁液を、10℃の液温に保持した前記混合溶液中に添加した。
その後、液温を10℃から90℃まで昇温し、90℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた固体生成物を90℃のトルエン100mlで4回洗浄し、新たに四塩化チタン30mlおよびトルエン70mlを加え、110℃に昇温し、110℃で2時間攪拌しながら反応させた。
反応終了後、40℃のn-ヘプタン100mlで10回洗浄して、固体触媒成分(A-1)を得た。得られた固体触媒成分中のチタン含有率を測定したところ、2.7重量%であった。
【0174】
(製造例2)
<固体触媒成分(A-2)の製造>
製造例1における内部電子供与性化合物を、フタル酸ジ-n-ブチル3.6ml(13.6ミリモル)から2,3-ジイソプロピルコハク酸ジエチル3.6ml(13.6ミリモル)に変更した以外は、製造例1と同様にして、固体触媒成分(A-2)を調製した。
なお、得られた固体触媒成分のチタン含有率は3.2質量%であった。
【0175】
(実施例1)
<重合触媒の調製及びプロピレン重合>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの攪拌機付きオートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、第一の外部電子供与性化合物としてn-ヘキシルトリエトキシシラン(NHTES)0.125ミリモルおよび第二の外部電子供与性化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.007ミリモルを装入後、前記固体触媒成分(A-1)をチタン原子換算で0.00264ミリモル装入してオレフィン重合用触媒を形成した。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ95モル%と5モル%であった。
次いで、水素ガス4.0リットルおよび液化プロピレン1.4リットルをオートクレーブに装入し、20℃で5分間予備重合を行った後、70℃まで昇温し、70℃で1時間の重合反応を行い、プロピレン重合体を得た。
なお、下記式により固体触媒成分1g当たりの重合活性は50,600(g-pp/g-cat)であった。
また、得られたプロピレン重合体について、重合体の溶融流れ性(MFR)および重合体のp-キシレン可溶分の割合(XS)を測定した。結果を表1に示す。
<プロピレン重合活性>
プロピレン重合活性(g-pp/g-触媒)=ポリプロピレンの質量(g)/オレフィン類重合用触媒中の固体触媒成分の質量(g)
<重合体の溶融流れ性(MFR)>
重合体の溶融流れ性を示すメルトフローレート(MFR)(g/10分間)を、ASTM D 1238、JIS K 7210に準じて測定した。
<重合体のp-キシレン可溶分の割合(XS)>
攪拌装置を具備したフラスコ内に、4.0gの重合体(ポリプロピレン)と、200mlのp-キシレンを装入し、外部温度をキシレンの沸点以上(約150℃)とすることにより、フラスコ内部のp-キシレンの温度を沸点下(137~138℃)に維持しつつ、2時間かけて重合体を溶解した。その後1時間かけて液温を23℃まで冷却し、不溶解成分と溶解成分とを濾過分別した。上記溶解成分の溶液を採取し、加熱減圧乾燥によりp-キシレンを留去し、得られた残留物の重量を求め、生成した重合体(ポリプロピレン)に対する相対割合(質量%)を算出して、キシレン可溶分(XS)とした。
【0176】
(実施例2)
第一の外部電子供与性化合物であるn-ヘキシルトリエトキシシラン(NHTES)を同モルのn-オクチルトリエトキシシラン(NOTES)に変更した以外は実施例1と同様にして、重合触媒の形成、プロピレン重合および得られたプロピレン重合体の評価を行った。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ95モル%と5モル%であった。
結果を表1に示す。
【0177】
(比較例1)
第一の外部電子供与性化合物であるn-ヘキシルトリエトキシシラン(NHTES)使用量を0.118ミリモルから0.131ミリモルに変更し、第二の外部電子供与性化合物であるジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、重合触媒の形成、プロピレン重合および得られたプロピレン重合体の評価を行った。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ100モル%と0モル%であった。
結果を表1に示す。
【0178】
(比較例2)
第一の外部電子供与性化合物であるn-ヘキシルトリエトキシシラン(NHTES)0.118ミリモルを同モルのプロピルトリエトキシシラン(PTES)に変更した以外は、実施例1と同様にして、重合触媒の形成、プロピレン重合および得られたプロピレン重合体の評価を行った。
このとき、PTESおよびDCPDMSの合計量に対するPTESおよびDCPDMSの量比は、それぞれ95モル%と5モル%であった。
結果を表1に示す。
【0179】
(実施例3)
固体触媒成分(A-1)に代えて、同量の固体触媒成分(A-2)を用いた以外は実施例1と同様にして、重合触媒の形成、プロピレン重合および得られたプロピレン重合体の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0180】
(比較例3)
固体触媒成分(A-1)に代えて、同量の固体触媒成分(A-2)を用いた以外は比較例1と同様にして、重合触媒の形成、プロピレン重合および得られたプロピレン重合体の評価を行った。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ100モル%と0モル%であった。
結果を表1に示す。
【0181】
(実施例4)
第一の外部電子供与性化合物であるn-ヘキシルトリエトキシシラン(NHTES)使用量を0.125ミリモルから0.188ミリモルに変更し、第二の外部電子供与性化合物であるジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)使用量を0.007ミリモルから0.010ミリモルに変更した以外は実施例1と同様にして、重合触媒の形成、プロピレン重合および得られたプロピレン重合体の評価を行った。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ95モル%と5モル%であった。
結果を表1に示す。
【0182】
(実施例5)
第一の外部電子供与性化合物であるn-ヘキシルトリエトキシシラン(NHTES)0.127ミリモルから0.188ミリモルに変更し、第二の外部電子供与性化合物であるジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.007ミリモルをジイソプロピルジメトキシシラン(DIPDMS)0.010ミリモルに変更した以外は実施例1と同様にして、重合触媒の形成、プロピレン重合および得られたプロピレン重合体の評価を行った。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ95モル%と5モル%であった。
結果を表1に示す。
【0183】
(実施例6)
第一の外部電子供与性化合物であるn-ヘキシルトリエトキシシラン(NHTES)0.125ミリモルをn-オクチルトリエトキシシラン(NOTES)0.188ミリモルに変更し、第二の外部電子供与性化合物であるジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)使用量を0.007ミリモルから0.010ミリモルに変更した以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成、プロピレン重合および得られたプロピレン重合体の評価を行った。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ95モル%と5モル%であった。
結果を表1に示す。
【0184】
【0185】
表1より、実施例1~実施例6においては、特定の構造を有する2種類のアルコキシシラン化合物を特定の量比で含有するオレフィン重合用触媒を用いることにより、得られる重合体は、MFRが高いとともにXSが低く高い立体規則性が維持されていることから、溶融成型性に優れ機械的強度が良好な成形品が得られることが分かる。
一方、表1より、比較例1~比較例3においては、オレフィン重合用触媒が、特定の構造を有する2種類のアルコキシシラン化合物を特定の量比で含有するものでなかったり(比較例1および比較例3)、特定構造を有さないアルコキシシラン化合物を含有するものである(比較例2)ために、得られる重合体のMFRが低かったり(比較例2)XSが高く立体規則性や結晶性に劣る(比較例1)ことが分かる。
【0186】
(実施例7)
<重合触媒の調製およびエチレン-プロピレン共重合>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム2.4ミリモル、第一の外部電子供与性化合物としてn-ヘキシルトリエトキシシラン(NHTES)0.228ミリモル、第二の外部電子供与性化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.012ミリモルおよび上記で得た固体触媒成分(A-1)6mgを装入し、オレフィン類重合用触媒(エチレン-プロピレン共重合触媒)を調製した。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ95モル%と5モル%であった。
上記で調製したオレフィン類重合用触媒(エチレン-プロピレン共重合触媒)を含む攪拌機付オートクレーブに対し、液化プロピレン15モル(1.2リットル)と水素ガス0.20MPa(分圧)を装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、1段目のプロピレン重合反応(ホモ段)を70℃で75分間行なった後、常圧に戻し、次いでオートクレーブ内(リアクター内)を窒素置換してからオートクレーブの計量を行ない、生成した一部のポリマーを分取し、1段目重合(ホモ段)の重合活性(ホモ活性)(g-PP/g-cat)を、計量後のオートクレーブ重量からオートクレーブの風袋質量を差し引いた値(g)を使用した固体触媒成分量(g)で割ることによって算出し、算出し、また、一部分取したポリマーのMFRを測定した。
次に、計量後のオートクレーブに配管を接続し、エチレンとプロピレンを、エチレン/プロピレンモル比が1.0/1.0となるように上記オートクレーブ内(リアクター内)に投入後、70℃まで昇温し、エチレン/プロピレン/水素を、それぞれ1分あたりのガス供給量(リットル/分)が2/2/0.086の割合となるよう導入しつつ、1.2MPa、70℃、60分間の条件で反応させることにより、エチレン-プロピレン共重合体を得た。
得られたエチレン-プロピレン共重合体について、エチレン-プロピレンブロック共重合活性(ICP活性)、MFR、ブロック率(CV)、EPR含有率およびエチレン含有量(EPR成分中、キシレン不溶分中)を、以下の方法により測定した。
結果を表2に示す。
【0187】
<エチレン-プロピレンブロック共重合活性(ICP活性)(g-ICP/(g-cat))>
固体触媒成分1g当たりのエチレン-プロピレンブロック共重合時におけるエチレン-プロピレンブロック共重合活性(ICP活性)は、以下の式により算出した。
ICP活性(g-ICP/g-cat)= (I+J-F)/(エチレン-プロピレン共重合用触媒に含まれる固体触媒成分の質量(g))
(ここで、Fはオートクレーブ質量(g)、Iは共重合反応終了後のオートクレーブ質量(g)、Jはホモ重合後に一部抜き出したポリマー量(g)である。)
【0188】
<ブロック率(CV)>
エチレン-プロピレン共重合体のブロック率を、下記式により求めた。
ブロック率(質量%)={(I-G+J)÷(I-F)}× 100
(ここで、Fはオートクレーブ質量(g)、Gは1段目重合(ホモ段の重合)終了後、未反応モノマーを除去した後のオートクレーブ質量(g)、Iは共重合反応終了後のオートクレーブ質量(g)、Jはホモ重合後に一部抜き出したポリマー量(g)である。)
【0189】
<EPR含有率(エチレン-プロピレンブロック共重合体中のキシレン可溶分量)>
撹拌装置を具備したフラスコ内に、5.0gの共重合体(エチレン-プロピレンブロック共重合体)と、250mlのp-キシレンを装入し、外部温度をキシレンの沸点以上(約150℃)とすることにより、フラスコ内部のp-キシレンの温度を沸点下(137~138℃)に維持しつつ、2時聞かけて重合体を溶解した。その後1時聞かけて液温を23℃まで冷却し、キシレン可溶分(EPR)とキシレン不溶分(XI)を漏過分別した。
上記可溶分を溶液ごと採取し、加熱減圧乾燥によりp-キシレンを留去し、得られた残留物の重量を求め、生成した重合体(エチレン-プロピレンブロック共重合体)に対する相対割合(質量%)を算出して、EPR含有率とした。
【0190】
<エチレン含有率(キシレン可溶分(EPR)中およびキシレン不溶分(XI)中)>
EPR中のエチレン含有率は、上記EPR含有率測定操作においてキシレン抽出して得たキシレン可溶分(EPR)を少量サンプリングし、ホットプレスにてフィルム状に成形後、フィルム厚みおよびフーリエ変換赤外分光装置(FT-IR) (Thermonicolet社製、Avatar)を用いて測定した吸光度から、複数の含量既知サンプルより作成した検量線をもとに算出した。
キシレン不溶分(XI)中のエチレン含有率は、上記EPR含有率測定操作においてキシレン抽出して得たキシレン不溶分(XI)を少量サンプリングし、ホットプレスにてフィルム状に成形後、上記EPR中のエチレン含有率と同様にして算出した。
【0191】
(実施例8)
n-ヘキシルトリエトキシシラン(NHTES)の使用量を0.228ミリモルから0.342ミリモルに変更し、さらにジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)の使用量を0.012ミリモルから0.018ミリモルに変更した以外は実施例7と同様にして、エチレン-プロピレン共重合触媒の形成、エチレン-プロピレン共重合および得られたエチレン-プロピレン共重合体の評価を行った。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ95モル%と5モル%であった。
結果を表2に示す。
【0192】
(実施例9)
第二の外部電子供与性化合物をジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)から同モルのジイソプロピルジメトキシシラン(DIPDMS)に変更した以外は、実施例7と同様にして、エチレン-プロピレン共重合触媒の形成、エチレン-プロピレン共重合および得られたエチレン-プロピレン共重合体の評価を行った。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ95モル%と5モル%であった。
結果を表2に示す。
【0193】
(実施例10)
第一の外部電子供与性化合物をn-ヘキシルトリエトキシシラン(NHTES)から同モルのn-オクチルトリエトキシシラン(NOTES)に変更する以外は、実施例7と同様にしてエチレン-プロピレン共重合触媒の形成、エチレン-プロピレン共重合および得られたエチレン-プロピレン共重合体の評価を行った。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ95モル%と5モル%である)。
結果を表2に示す。
【0194】
(実施例11)
固体触媒成分(A-1)6mgに代えて、同量の固体触媒成分(A-2)を用いた以外は実施例7と同様にして、エチレン-プロピレン共重合触媒の形成、エチレン-プロピレン共重合および得られたエチレン-プロピレン共重合体の評価を行った。
結果を表2に示す。
【0195】
(比較例4)
n-ヘキシルトリエトキシシラン(NHTES)の使用量を0.216ミリモルから0.240ミリモルに変更し、さらに第二の外部電子供与性化合物であるジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)を添加しなかった以外は実施例7と同様にして、エチレン-プロピレン共重合触媒の形成、エチレン-プロピレン共重合および得られたエチレン-プロピレン共重合体の評価を行った。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ100モル%と0モル%であった。
結果を表2に示す。
【0196】
(比較例5)
第一の外部電子供与性化合物を添加せず、さらに、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)の使用量を0.024ミリモルから0.240ミリモルに変更した以外は、実施例7と同様にして、エチレン-プロピレン共重合触媒の形成、エチレン-プロピレン共重合および得られたエチレン-プロピレン共重合体の評価を行った。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ0モル%と100モル%であった。
結果を表2に示す。
【0197】
(比較例6)
第一の外部電子供与性化合物をn-ヘキシルトリエトキシシラン(NHTES)0.216ミリモルから同モルのプロピルトリエトキシシラン(PTES)に変更した以外は、実施例7と同様にして、エチレン-プロピレン共重合触媒の形成、エチレン-プロピレン共重合および得られたエチレン-プロピレン共重合体の評価を行った。
このとき、第一の外部電子供与性化合物および第二の外部電子供与性化合物の合計量に対する第一の外部電子供与性化合物と第二の外部電子供与性化合物の量比は、それぞれ95モル%と5モル%であった。
結果を表2に示す。
なお、表2中、ホモ段重合活性とエチレン-プロピレンブロック共重合活性(ICP活性)の和をトータル重合活性として併記する。
【0198】
【0199】
表2より、実施例7~実施例11においては、特定の構造を有する2種類のアルコキシシラン化合物を特定の量比で含有するオレフィン共重合用触媒を用いることにより、ホモ重合時および共重合時の重合活性が共に高くトータル重合活性も高いことから重合反応時の重合活性および重合活性持続性がいずれも優れることが分かり、また、得られる共重合体はMFRが高くエチレン含有量およびブロック率が共に高いことから、溶融成型性に優れ機械的強度が良好な成形品が得られることが分かる。
一方、表2より、比較例4~比較例6においては、オレフィン重合用触媒が、特定の構造を有する2種類のアルコキシシラン化合物を特定の量比で含有するものでなかったり(比較例4および比較例5)、特定構造を有さないアルコキシシラン化合物を含有するものである(比較例6)ために、ホモ重合時および共重合時の重合活性が共に低くトータル重合活性も低いことから重合時の重合活性および重合活性持続性がいずれも劣ったり(比較例4および比較例6)、得られる重合体のMFRが低い(比較例5)ことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0200】
本発明によれば、α-オレフィン類の重合に際し、重合活性持続性に優れ、立体規則性およびMFRが高く、成型性が良好なα-オレフィン(共)重合体を好適に製造し得るオレフィン類重合用触媒を提供するとともに、オレフィン類重合用触媒の製造方法、オレフィン類重合体の製造方法およびプロピレン-α-オレフィン共重合体を提供することができる。