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特許7212626プリント配線板用樹脂組成物、樹脂付銅箔、銅張積層板、及びプリント配線板
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  • 特許-プリント配線板用樹脂組成物、樹脂付銅箔、銅張積層板、及びプリント配線板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】プリント配線板用樹脂組成物、樹脂付銅箔、銅張積層板、及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20230118BHJP
   C08L 35/00 20060101ALI20230118BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20230118BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20230118BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230118BHJP
   C08L 77/10 20060101ALI20230118BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230118BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230118BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20230118BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
C08L79/08 Z
C08L35/00
C08L79/04 Z
C08L101/12
C08L63/00 A
C08L77/10
C08K3/013
C08K3/36
C08K5/3445
H05K1/03 610N
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019548159
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2018037165
(87)【国際公開番号】W WO2019073891
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2017196984
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】細井 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】米田 祥浩
(72)【発明者】
【氏名】松島 敏文
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/168732(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/121164(WO,A1)
【文献】特開平9-227851(JP,A)
【文献】特開平10-279799(JP,A)
【文献】特開2007-196471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 3/40
C08K 5/00 - 5/59
H05K 1/00 - 1/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド樹脂と、
前記マレイミド樹脂100重量部に対して150重量部以上1200重量部以下の量のポリイミド樹脂であって、末端ないし側鎖の官能基として、カルボキシル基、スルホン酸基、チオール基、及びフェノール性水酸基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するポリイミド樹脂と、
前記マレイミド樹脂100重量部に対して15重量部以上120重量部以下の量のポリカルボジイミド樹脂と、
を含む、プリント配線板用樹脂組成物。
【請求項2】
前記マレイミド樹脂100重量部に対して350重量部以下の量の熱可塑性エラストマーをさらに含む、請求項1に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項3】
前記マレイミド樹脂100重量部に対して500重量部以下の量のエポキシ樹脂をさらに含む、請求項1又は2に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項4】
前記マレイミド樹脂100重量部に対して200重量部以下の量の芳香族ポリアミド樹脂をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂成分合計量100重量部に対して300重量部以下の量のフィラーをさらに含み、前記樹脂成分合計量が、前記マレイミド樹脂、前記ポリイミド樹脂、前記ポリカルボジイミド樹脂、存在する場合には前記熱可塑性エラストマー、存在する場合には前記エポキシ樹脂、及び存在する場合には前記芳香族ポリアミド樹脂を含む、樹脂成分の合計量である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項6】
前記フィラーがシリカ粒子である、請求項5に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項7】
前記マレイミド樹脂が、ビフェニル骨格、4,4’-ジフェニルメタン骨格又はフェニルメタン骨格を有するマレイミド樹脂である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリイミド樹脂が、ポリイミド樹脂単体として、周波数1GHzにおいて、誘電率が2.0~5.0、誘電正接が0.0005~0.010である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項9】
硬化促進剤としてイミダゾールを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項10】
銅箔と、前記銅箔の少なくとも一方の面に設けられた請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる樹脂層とを含む、樹脂付銅箔。
【請求項11】
前記銅箔の前記樹脂層側の表面における、JIS B0601-2001に準拠して測定される十点平均粗さRzjisが2.0μm以下である、請求項10に記載の樹脂付銅箔。
【請求項12】
前記樹脂層が硬化された状態において、前記樹脂層が、周波数3GHzにおいて、0.005以下の誘電正接を有する、請求項10又は11に記載の樹脂付銅箔。
【請求項13】
前記樹脂層が硬化された状態において、JIS C6481-1996に準拠して測定される、前記樹脂層及び前記銅箔間の剥離強度が0.20kN/m以上である、請求項10~12のいずれか一項に記載の樹脂付銅箔。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載の樹脂付銅箔を備え、前記樹脂層が硬化されている、銅張積層板。
【請求項15】
請求項10~13のいずれか一項に記載の樹脂付銅箔を備え、前記樹脂層が硬化されている、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用樹脂組成物、樹脂付銅箔、銅張積層板、及びプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅張積層板やプリント配線板の製造に用いられる銅箔として、プリプレグ等の樹脂基材との密着性を向上させるべく、片面に樹脂層を備えた樹脂付銅箔が知られている。なお、プリプレグとは、合成樹脂板、ガラス板、ガラス織布、ガラス不織布、紙等の基材に合成樹脂を含浸させた複合材料の総称である。例えば、特許文献1(特許第5118469号公報)には、銅箔の表面にフィラー粒子含有樹脂層を備えた樹脂層付銅箔が開示されており、フィラー粒子含有樹脂層が、芳香族ポリアミド樹脂ポリマー、エポキシ樹脂、及び硬化促進剤を含み、かつ、アミノ系シランカップリング剤であるフェニルアミノシランで処理したフィラー粒子を含む半硬化樹脂層であることが記載されている。
【0003】
ところで、プリント配線板が携帯用電子機器等の電子機器に広く用いられている。特に、近年の携帯用電子機器等の高機能化に伴い、大量の情報の高速処理をすべく信号の高周波化が進んでおり、高周波用途に適したプリント配線板が求められている。このような高周波用プリント配線板には、高周波信号を品質低下させることなく伝送可能とするために、伝送損失の低減が望まれる。プリント配線板は配線パターンに加工された銅箔と絶縁樹脂基材とを備えたものであるが、伝送損失は、銅箔に起因する導体損失と、絶縁樹脂基材に起因する誘電体損失とから主としてなる。したがって、樹脂層付銅箔を高周波用途に採用するにあたり、樹脂層に起因する誘電体損失を抑制することが望まれる。そのためには、樹脂層の優れた誘電特性、特に誘電正接が低いことが求められる。しかしながら、引用文献1に開示されるような樹脂層付銅箔は、プリプレグ等の樹脂基材との密着性の向上を実現できるものの、誘電正接が高く、誘電特性に劣ることから、高周波用途には不向きであった。
【0004】
一方、低誘電正接を有する様々な樹脂組成物が提案されている。例えば、特許文献2(特開2016-079220号公報)には、分子内にイミド基及びカルボジイミド基を有する化合物と、エポキシ化合物、シアネート化合物、及びマレイミド化合物から選ばれる一種以上の熱硬化性化合物とを含有する、樹脂組成物が開示されている。また、特許文献3(特開2016-079354号公報)には、(A)両末端にエチレン性不飽和基を有する変性ポリフェニレンエーテル、(B)エポキシ樹脂、(C)スチレン系熱可塑性エラストマー、(D)1分子中にイミド基とアクリレート基とを有する化合物、及び(E)硬化触媒を含有する樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献4(国際公開第2017/014079号)には、銅箔の少なくとも片面に樹脂層を備えた樹脂付銅箔が開示されており、樹脂層が、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、及び芳香族ポリアミド樹脂を含む樹脂混合物と、イミダゾール系硬化触媒とを含むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5118469号公報
【文献】特開2016-079220号公報
【文献】特開2016-079354号公報
【文献】国際公開第2017/014079号
【発明の概要】
【0006】
近年では高周波用途における更なる高性能化のニーズに伴い、より一層優れた誘電特性(より一層低い誘電正接)を有する樹脂組成物が望まれている。この点、極めて低い誘電正接を呈する材料としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が知られているが、硬く脆い性質のため穴開け等の加工がしにくく、また、熱可塑性樹脂であるが故にプレス加工時に約300℃もの高温に加熱しなければならず、結果として製造工程の複雑化と製造コストの上昇を招く。一方で、プリント配線板用樹脂組成物には、銅張積層板又はプリント配線板とされた場合に、優れた層間密着性及び耐熱性を呈することも望まれる。
【0007】
本発明者らは、今般、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂及びポリカルボジイミド樹脂を所定の割合で配合することにより、高周波用途に適した優れた誘電特性(極めて低い誘電正接)を呈することができ、かつ、銅張積層板又はプリント配線板とされた場合に、優れた層間密着性及び耐熱性を発揮可能な樹脂組成物を提供できるとの知見を得た。
【0008】
したがって、本発明の目的は、高周波用途に適した優れた誘電特性(極めて低い誘電正接)を呈することができ、かつ、銅張積層板又はプリント配線板とされた場合に、優れた層間密着性及び耐熱性を発揮可能なプリント配線板用樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の一態様によれば、
マレイミド樹脂、
前記マレイミド樹脂100重量部に対して150重量部以上1200重量部以下の量のポリイミド樹脂と、
前記マレイミド樹脂100重量部に対して15重量部以上120重量部以下の量のポリカルボジイミド樹脂と、
を含む、プリント配線板用樹脂組成物が提供される。
【0010】
本発明の他の一態様によれば、銅箔と、前記銅箔の少なくとも一方の面に設けられた、前記樹脂組成物からなる樹脂層とを含む、樹脂付銅箔が提供される。
【0011】
本発明の他の一態様によれば、前記樹脂付銅箔を備え、前記樹脂層が硬化されている、銅張積層板が提供される。
【0012】
本発明の他の一態様によれば、前記樹脂付銅箔を備え、前記樹脂層が硬化されている、プリント配線板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】例1~24における誘電特性評価のためのサンプルの作製手順を示す図である。
図2】例1~24における耐熱性評価及び銅箔密着性の評価のためのサンプルの作製手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
プリント配線板用樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、プリント配線板(特に絶縁樹脂層)に用いられるものである。この樹脂組成物は、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリカルボジイミド樹脂を含む。樹脂組成物におけるポリイミド樹脂の含有量は、マレイミド樹脂100重量部に対して、150重量部以上1200重量部以下の量である。また、樹脂組成物におけるポリカルボジイミド樹脂の含有量は、マレイミド樹脂100重量部に対して、15重量部以上120重量部以下である。このようにマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂及びポリカルボジイミド樹脂を所定の割合で配合することで、高周波用途に適した優れた誘電特性(極めて低い誘電正接)を有しながらも、銅張積層板又はプリント配線板とされた場合に、優れた層間密着性及び耐熱性を発揮可能な樹脂組成物を提供することができる。このような低い誘電正接は誘電体損失の低下に寄与し、その結果、高周波用途における伝送損失の低下を実現することができる。また、銅箔及び樹脂層間での優れた密着性及び耐熱性は、銅張積層板又はプリント配線板の製造に用いられた際に、回路剥がれ等の不具合を防止して製品歩留まりの向上を実現することができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、ネットワーク機器における高周波デジタル通信用のプリント配線板用の絶縁層として好ましく適用可能である。そのようなネットワーク機器の例としては、(i)基地局内サーバー、ルーター等、(ii)企業内ネットワーク、(iii)高速携帯通信の基幹システム等が挙げられる。
【0015】
特に、前述したように、極めて低い誘電正接を呈する材料としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が知られているが、硬く脆い性質のため穴開け等の加工がしにくく、また、熱可塑性樹脂であるが故にプレス加工時に約300℃もの高温に加熱しなければならず、製造工程の複雑化と製造コストの上昇を招く欠点があった。この点、本発明の樹脂組成物によれば、極めて低い誘電正接を呈するものでありながら、PTFEほど硬くないため格段に加工がしやすく、しかもより低めの温度(例えば約200℃)、すなわち通常のプレス温度程度でプレス加工が行えることから、プリント配線板の製造工程の簡略化及び低コスト化を実現することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物はPTFEのより良い代替品となりうる。したがって、本発明の樹脂組成物によれば、低誘電正接用として現在PTFEが採用されている基板ないし部品の望ましい置き換えを実現可能である。
【0016】
マレイミド樹脂は誘電正接の低下と耐熱性の向上に寄与する。マレイミド樹脂は1つ又はそれ以上のマレイミド基を有する化合物であれば特に限定されないが、典型的にはビスマレイミド樹脂である。マレイミド樹脂ないしビスマレイミド樹脂を構成する分子骨格の例としては、ビフェニル骨格、4,4’-ジフェニルメタン骨格、フェニルメタン骨格、フェニレン骨格、ジフェニルエーテル骨格、及びこれらの組み合わせが挙げられる。中でも、ビフェニル骨格、4,4’-ジフェニルメタン骨格又はフェニルメタン骨格を有するマレイミド樹脂が、耐熱性の更なる向上、及び誘電正接を低くする観点から好ましい。2種以上のマレイミド樹脂を組み合わせて用いてもよい。とりわけ、ビフェニル骨格を有するマレイミド樹脂が、耐熱性及びクラック耐性が一層高い点から最も好ましい。マレイミド樹脂の他の例としては、大和化成工業株式会社製の、BMI-1000、BMI-2000、BMI-3000、BMI-3000H、BMI-4000、BMI-5000、BMI-5100、BMI-7000等が挙げられる。
【0017】
ポリイミド樹脂は、誘電特性の向上(特に誘電正接の低減)に寄与する。樹脂組成物におけるポリイミド樹脂の含有量は、マレイミド樹脂100重量部に対して、150重量部以上1200重量部以下であり、好ましくは180重量部以上1150重量部以下、より好ましくは300重量部以上1000重量部以下、さらに好ましくは350重量部以上550重量部以下である。このような含有量であると、良好な耐熱性を確保しながら、優れた誘電特性を発現することができる。ポリイミド樹脂は所望の誘電特性、密着性及び耐熱性が得られるかぎり特に限定されないが、エポキシ樹脂と良好に相溶されたワニス及び塗膜を形成できる点から、有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂(以下、有機溶剤可溶性ポリイミドという)が好ましい。ポリイミド樹脂が可溶とされるこの有機溶剤は溶解度パラメータ(SP値)が7.0~17.0のものが好ましく、そのような有機溶剤の好ましい例としては、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド,シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールアセテート、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。特に、分子末端にエポキシ基と反応可能な官能基を少なくとも一つ有するものを用いるものが硬化後の耐熱性を保持する点で好ましい。具体的には、ポリイミド樹脂は、その末端ないし側鎖の官能基として、カルボキシル基、スルホン酸基、チオール基、及びフェノール性水酸基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するのが好ましい。このような官能基を有することで、ポリイミド樹脂の有機溶剤可溶性及びエポキシ樹脂との相溶性が向上する。また、熱処理時にエポキシ樹脂と重合反応が促進され、更にはポリイミド樹脂同士の重合反応が促進されることによって、より耐熱性が高く、かつ、誘電特正接の低い硬化物を得ることができる。これらの中でも、末端又は側鎖の官能基としてカルボキシル基を有するポリイミド樹脂を用いるのがより好ましい。
【0018】
好ましい有機溶剤可溶性ポリイミドとしては、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をイミド化反応させたものが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物の例としては、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物等、あるいはこれらの芳香族環にアルキル基やハロゲン原子の置換基を持つ化合物、及びそれらの任意の組合せ等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物の耐熱性を向上させる点で、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、又は2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主とするポリイミド樹脂が好ましい。
【0019】
一方、ジアミンの例としては、3,4’-ジアミノジフェニルスルヒド、4,4’-ジアミノジフェニルスルヒド、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0020】
特に、ポリイミド樹脂単体として、周波数1GHzにおいて、誘電率が2.0~5.0、誘電正接が0.0005~0.010の範囲を取り得るポリイミド樹脂が、本発明の樹脂組成物に供するものとして好ましく、より好ましくは誘電率が2.0~4.0、誘電正接が0.001~0.005の範囲を取り得るポリイミド樹脂である。
【0021】
また、ポリイミド樹脂単体としての軟化点は、硬化物の耐熱性を十分に保持する観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは120℃以上である。軟化点の測定はJIS K 7196:2012によって測定することができる。ここで、「ポリイミド樹脂単体」とは、ポリイミド樹脂が溶解しているワニスから溶剤含有量が0.1重量%以下となるまで溶剤を蒸発乾固させて得られた固化物を指す。また、硬化物の耐熱性をより保持しながらも有機溶剤への溶解性能を保持する点で、ポリイミド樹脂単体としてのガラス転移点が130℃以上であるのが好ましく、より好ましくは150~190℃である。このガラス転移点は、動的粘弾性測定により定められるものである。
【0022】
ポリカルボジイミド樹脂は誘電正接の低下に寄与する。ポリカルボジイミド樹脂は、カルボジイミド結合(-N=C=N-)の繰り返しを含む樹脂である。樹脂組成物におけるポリカルボジイミド樹脂の含有量は、マレイミド樹脂100重量部に対して、15重量部以上120重量部以下であり、好ましくは20重量部以上110重量部以下、より好ましくは25重量部以上100重量部以下、さらに好ましくは35重量部以上80重量部以下である。ポリカルボジイミド樹脂の例としては、日清紡ケミカル株式会社製のV-03、V-07等が挙げられる。
【0023】
所望により、本発明の樹脂組成物は熱可塑性エラストマー(TPE)をさらに含んでもよい。樹脂組成物における熱可塑性エラストマーの含有量は、マレイミド樹脂100重量部に対して、350重量部以下が好ましく、より好ましくは25~300重量部、さらに好ましくは50~250重量部である。このような範囲内で熱可塑性エラストマーを含むことで、誘電正接が低下し、かつ、加熱後の密着性が向上する利点がある。熱可塑性エラストマー(TPE)の例としては、スチレン系エラストマー(TPS)、オレフィン系エラストマー(TPO)、塩化ビニル系エラストマー(TPVC)、ウレタン系エラストマー(TPU)、エステル系エラストマー(TPEE,TPC)、アミド系エラストマー(TPAE,TPA)、及びそれらの組合せが挙げられ、好ましくはスチレン系エラストマーである。スチレン系エラストマーは水添及び非水添のいずれであってもよい。すなわち、スチレン系エラストマーは、スチレン由来の部位を含む化合物であって、スチレン以外にもオレフィン等の重合可能な不飽和基を有する化合物由来の部位を含んでもよい重合体である。スチレン系エラストマーの重合可能な不飽和基を有する化合物由来の部位に二重結合が存在する場合、二重結合部は水添されているものであってもよいし、水添されていないものであってもよい。スチレン系エラストマーの例としては、JSR株式会社製TR、JSR株式会社製SIS、旭化成株式会社製タフテック(登録商標)、株式会社クラレ製セプトン(登録商標)、株式会社クラレ製ハイブラー(登録商標)等が挙げられる。
【0024】
所望により、本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂をさらに含んでもよい。樹脂組成物におけるエポキシ樹脂の含有量は、マレイミド樹脂100重量部に対して、500重量部以下が好ましく、より好ましくは10~300重量部、さらに好ましくは25~100重量部である。このような範囲内でエポキシ樹脂を含むことで、銅箔に対する密着性、つまり常態剥離強度が向上する利点がある。エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有し、電気及び電子材料用途に使用可能なものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。硬化物の耐熱性を保持する点から芳香族エポキシ樹脂又は多官能エポキシ樹脂が好ましく、より好ましくはフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂又はビフェニルノボラック型エポキシ樹脂である。
【0025】
所望により、本発明の樹脂組成物は、芳香族ポリアミド樹脂をさらに含んでもよい。樹脂組成物における芳香族ポリアミド樹脂の含有量は、マレイミド樹脂100重量部に対して、200重量部以下が好ましく、より好ましくは5~180重量部、さらに好ましくは10~150重量部、最も好ましくは70~120重量部である。このような範囲内で芳香族ポリアミド樹脂を含むことで、銅箔に対する密着性、つまり常態剥離強度が向上する利点があるが、誘電正接が高くなってしまい、また吸水により寸法変化が生じやすくなる。芳香族ポリアミド樹脂とは、芳香族ジアミンとジカルボン酸との縮重合により合成されるものである。上記縮重合に用いる芳香族ジアミンの例としては、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-キシレンジアミン、3,3’-オキシジアニリン等、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。また、上記縮重合に用いるジカルボン酸の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。芳香族ポリアミド樹脂に耐熱性を付与するためには、ジカルボン酸は芳香族ジカルボン酸であるのが好ましく、芳香族ジカルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。特に、分子内にフェノール性水酸基を含有する芳香族ポリアミド樹脂が好ましい。また、この芳香族ポリアミド樹脂は、耐熱性を損なわない範囲で、柔軟鎖として芳香族ポリアミド樹脂に可とう性を付与する化学結合を分子内に適宜有していてもよく、ポリアミド樹脂との架橋性ポリマーアロイとして一部が凝集状態で存在するものであってもよい。柔軟鎖として芳香族ポリアミド樹脂に可とう性を付与する化学結合をもたらす化合物の例としては、例えばブタジエン、エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、カルボン酸ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、ポリクロロプレン、シロキサン等が挙げられる。芳香族ポリアミド樹脂の例としては、日本化薬株式会社製のBPAM-155が挙げられる。
【0026】
所望により、本発明の樹脂組成物はフィラーをさらに含んでいてもよい。フィラーの添加により、樹脂層の誘電正接を望ましく低減することができる。フィラーは樹脂組成物に使用可能な公知のものが適宜使用可能であり、好ましくは無機フィラーである。好ましい無機フィラーの例としては、シリカ、アルミナ、タルク等の粒子が挙げられるが、特に好ましくは誘電正接を低減させる観点からシリカ粒子である。フィラーの粒径は特に限定されないが、樹脂層の表面平滑性保持とワニスの混合時の凝集抑制の点から、平均粒径レーザー回折散乱式粒度分布測定により測定される平均粒径D50が0.01~2.0μmが好ましく、より好ましくは0.01~1.5μmであり、さらに好ましくは0.01~1.0μmである。樹脂組成物におけるフィラーの含有量は、樹脂成分合計量100重量部に対して、300重量部以下であり、好ましくは10~250重量部、より好ましくは20~200重量部、さらに好ましくは40~150重量部である。ここで、樹脂成分合計量は、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、熱可塑性エラストマー(存在する場合)、及びエポキシ樹脂(存在する場合)、及び芳香族ポリアミド樹脂(存在する場合)を含む、樹脂成分の合計量であり、上記以外の他の樹脂(例えばフェノール樹脂)を含む場合にはそのような他の樹脂をも含めた合計量である。このような含有量であると、誘電正接に優れながらも、剥離強度の低下も回避できる。
【0027】
無機フィラーを含有させる場合、特定の表面処理を施したフィラー粒子を用いるのが好ましい。こうすることにより、樹脂層と銅箔との密着性をより良好なものとし、当該樹脂層付銅箔と、プリプレグとをより強固に密着させることができる。その結果、剥離強度をより向上させることができ、デラミネーションの発生を抑えることができる。特に、フィラー粒子はシランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤として、アミノ官能性シランカップリング剤、アクリル官能性シランカップリング剤、メタクリル官能性シランカップリング剤、エポキシ官能性シランカップリング剤、オレフィン官能性シランカップリング剤、メルカプト官能性シランカップリング剤、ビニル官能性シランカップリング剤等の種々のシランカップリング剤を用いることができる。上記の中でも、アミノ官能性シランカップリング剤、アクリル官能性シランカップリング剤、メタクリル官能性シランカップリング剤、ビニル官能性シランカップリング剤等がより好ましい。このようにフィラー粒子に対して、上記表面処理を施すことにより、溶剤との濡れ性が向上し、樹脂溶液中にフィラー粒子を良好に分散させることができる。その結果、フィラー粒子が層内に均一に分散した樹脂層を得ることができる。また、フィラー粒子に対して上記表面処理を施すことにより、フィラー粒子と、上述した樹脂組成物との相溶性を良好なものとすることができ、フィラー粒子と樹脂組成物との密着性も良好なものとすることができる。アミノ官能性シランカップリング剤の例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。メタクリル官能性シランカップリング剤及びアクリル官能性シランカップリング剤の例としては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。ビニル官能性シランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルフェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシランを用いてもよい。これらのシランカップリング剤を用いた表面処理の方法は、特に限定されるものではなく、適宜、適切な方法を用いて行うことができる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、硬化促進剤としてイミダゾールを含むのが好ましい。イミダゾール系硬化促進剤は、樹脂成分との硬化反応後にイオンとして遊離することなく樹脂の一部として分子構造に取り込まれるため、樹脂層の誘電特性や絶縁信頼性を優れたものとすることができる。イミダゾール系硬化促進剤の含有量は、樹脂層の組成等の諸条件を勘案しながら望ましい硬化をもたらす量を適宜決定すればよく、特に限定されない。イミダゾール系硬化促進剤の例としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の好ましい例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられ、この中でも、樹脂層の半硬化(Bステージ)状態での化学的安定性の点からフェニル基を有するイミダゾール系硬化促進剤である2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールがより好ましい例として挙げられる。この中で特に好ましくは2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。
【0029】
樹脂付銅箔
本発明の樹脂組成物は、樹脂付銅箔の形態で提供されるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、銅箔と、銅箔の少なくとも一方の面に設けられた樹脂組成物からなる樹脂層とを含む、樹脂付銅箔が提供される。本発明の樹脂組成物を含む樹脂層を採用することで、樹脂層が高周波用途に適した優れた誘電特性(極めて低い誘電正接)を有しながらも、銅張積層板又はプリント配線板とされた場合に、優れた層間密着性及び耐熱性を発揮させることができる。このような銅箔及び樹脂層間での優れた密着性及び耐熱性は、銅張積層板又はプリント配線板の製造に用いられた際に、回路剥がれ等の不具合を防止して製品歩留まりの向上を実現することができる。また、低い誘電正接は誘電体損失の低下に寄与し、その結果、高周波用途における伝送損失の低下を実現することができる。したがって、本発明の樹脂付銅箔は、ネットワーク機器における高周波デジタル通信用のプリント配線板用の絶縁層及び導体層として好ましく適用可能である。そのようなネットワーク機器の例としては、(i)基地局内サーバー、ルーター等、(ii)企業内ネットワーク、(iii)高速携帯通信の基幹システム等が挙げられる。
【0030】
具体的には、本発明の樹脂付銅箔は、樹脂層が硬化された状態において、樹脂層が、周波数3GHzにおいて、0.005以下の誘電正接を有するのが好ましく、より好ましくは0.004以下、さらに好ましくは0.003以下である。なお、この誘電正接は、典型的には0.001以上、より典型的には0.002以上の値を有するものとなる。また、本発明の樹脂付銅箔は、樹脂層が硬化された状態において、JIS C6481-1996に準拠して測定される、樹脂層及び銅箔間の剥離強度(実施例において後述する剥離強度R)が0.20kN/m以上であるのが好ましく、より好ましくは0.40kN/m以上、さらに好ましくは0.60kN/m以上である。なお、この剥離強度は、一般に高いほど好ましいが、製品として典型的には1.4kN/m以下、より典型的には1.2kN/m以下の値を有するものとなる。
【0031】
樹脂層の厚さは特に限定されないが、0.1~100μmであるのが好ましく、より好ましくは0.5~70μmであり、さらに好ましくは1.0~50μmである。これらの範囲内の厚さであると樹脂組成物の塗布により樹脂層の形成がしやすいとともに、銅箔との間で十分な密着性を確保しやすい。
【0032】
樹脂層は、それ自体で銅張積層板やプリント配線板における絶縁層を構成するものであってよい。また、樹脂層は、銅張積層板やプリント配線板におけるプリプレグと張り合わせるためのプライマー層として銅箔表面に形成されるものであってもよい。この場合、樹脂付銅箔の樹脂層はプライマー層として、プリプレグと銅箔の密着性を向上することができる。したがって、本発明の樹脂付銅箔は、樹脂層上にプリプレグを備えていてもよい。なお、この樹脂層は、上述した樹脂組成物が硬化されたものであってもよく、又は、上述の樹脂組成物が、半硬化(Bステージ)状態である樹脂組成物層として提供され、後の工程として熱間プレスで接着硬化に供されるものであってもよい。この熱間プレスは、予め真空到達させた後、温度150~300℃、温度保持時間30~300分、圧力10~60kgf/cmの範囲の条件下で硬化される真空熱間プレス法が採用可能である。
【0033】
銅箔は、電解製箔又は圧延製箔されたままの金属箔(いわゆる生箔)であってもよいし、少なくともいずれか一方の面に表面処理が施された表面処理箔の形態であってもよい。表面処理は、金属箔の表面において何らかの性質(例えば防錆性、耐湿性、耐薬品性、耐酸性、耐熱性、及び基板との密着性)を向上ないし付与するために行われる各種の表面処理でありうる。表面処理は金属箔の少なくとも片面に行われてもよいし、金属箔の両面に行われてもよい。銅箔に対して行われる表面処理の例としては、防錆処理、シラン処理、粗化処理、バリア形成処理等が挙げられる。
【0034】
銅箔の樹脂層側の表面における、JIS B0601-2001に準拠して測定される十点平均粗さRzjisが2.0μm以下であるのが好ましく、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。このような範囲内であると、高周波用途における伝送損失を望ましく低減できる。すなわち、高周波になるほど顕著に現れる銅箔の表皮効果によって増大しうる銅箔に起因する導体損失を低減して、伝送損失の更なる低減を実現することができる。銅箔の樹脂層側の表面における十点平均粗さRzjisの下限値は特に限定されないが、樹脂層との密着性向上の観点からRzjisは0.005μm以上が好ましく、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上である。
【0035】
銅箔の樹脂層側の表面には、上記十点平均粗さRzjisの数値範囲を保つ範囲において樹脂層との耐熱密着性を格段に向上できる点で、粒子状突起が形成されているのが好ましい。この粒子状突起を構成する金属は、プリント配線板の高周波伝送損失を低減できる点で、銅であるのが好ましい。粒子状突起は、樹脂層との密着性を物理的なアンカー効果として確保しながらも、銅箔を配線層として形成したときの高周波伝送特性を高く保つことができる点で、平均粒径が10~300nmであるのが好ましく、さらに好ましくは50~200nmである。また、上記の観点から、粒子状突起は40~280個/μmの面密度で存在するのが好ましく、より好ましくは80~250個/μmである。これらの粒子状突起は、走査型電子顕微鏡により5,000~50,000倍で表面観察することにより個々の粒子を識別できる。平均粒径は、任意の20個の粒子に対する粒子輪郭の面積円相当径の平均値によって算出できるものである。粒子状突起の形成手法の例としては、電解処理、ブラスト処理、及び酸化還元処理が挙げられるが、粒子の均一形成の観点からは、電解処理が好ましく、より好ましくは銅電解処理である。例えば、電解処理液として、銅濃度10~20g/L、フリー硫酸濃度15~100g/L、9-フェニルアクリジン濃度100~200mg/L、及び塩素濃度20~100mg/Lの水溶液を用いて電解めっきを行うことにより、粒子状突起を好ましく形成することができる。
【0036】
銅箔の厚さは特に限定されないが、0.1~100μmであるのが好ましく、より好ましくは0.15~40μmであり、さらに好ましくは0.2~30μmである。これらの範囲内の厚さであると、プリント配線板の配線形成の一般的なパターン形成方法である、MSAP(モディファイド・セミアディティブ)法、SAP(セミアディティブ)法、サブトラクティブ法等の工法が採用可能である。もっとも、銅箔の厚さが例えば10μm以下となる場合などは、本発明の樹脂付銅箔は、ハンドリング性向上のために剥離層及びキャリアを備えたキャリア付銅箔の銅箔表面に樹脂層を形成したものであってもよい。
【0037】
銅張積層板
本発明の樹脂組成物ないし樹脂付銅箔はプリント配線板用銅張積層板の作製に用いられるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、上記樹脂付銅箔を備えた銅張積層板、又は上記樹脂付銅箔を用いて得られた銅張積層板が提供される。この場合、上記樹脂付銅箔の樹脂層は硬化されている。この銅張積層板は、本発明の樹脂付銅箔と、この樹脂付銅箔の樹脂層に密着して設けられる絶縁基材層とを備えてなる。この場合、樹脂層は絶縁基材層との密着性を向上させるためのプライマー層として機能しうる。樹脂付銅箔は絶縁樹脂層の片面に設けられてもよいし、両面に設けられてもよい。絶縁樹脂層は、絶縁性樹脂を含んでなる。絶縁基材層は、ガラス繊維入りプリプレグ、ガラス板、セラミック板、樹脂フィルム、又はそれらの組合せであるのが好ましい。プリプレグとして用いる絶縁性樹脂の好ましい例としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。樹脂層は複数の層で構成されていてよい。この中でも、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリイミド樹脂は銅張積層板の伝送特性を向上される意味でも好ましく、本発明の樹脂付銅箔における樹脂層との密着性が特に優れるものとなる。樹脂フィルムとして用いる絶縁樹脂の例としては、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。なお、銅張積層板を形成するための方法は各種考えられるが、典型的には本発明の樹脂付銅箔を絶縁基材層に張り合わせる方法で形成されるものである。その他には、絶縁基材層に樹脂層を先に塗布した後に、銅箔を樹脂層の表面に張り合わせ、絶縁基材層及び樹脂層を硬化させる方法も考えられる。言い換えれば、事後的に樹脂付金属箔としての層構成が備わった形態も、本発明の一つの形態に含まれるものとする。
【0038】
プリント配線板
本発明の樹脂組成物ないし樹脂付銅箔はプリント配線板の作製に用いられるのが好ましい。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、上記樹脂付銅箔を備えたプリント配線板、又は上記樹脂付銅箔を用いて得られたプリント配線板が提供される。この場合、上記樹脂付銅箔の樹脂層は硬化されている。本態様によるプリント配線板は、絶縁樹脂層と、銅層とがこの順に積層された層構成を含んでなる。また、絶縁樹脂層については銅張積層板に関して上述したとおりである。いずれにしても、プリント配線板は公知の層構成が採用可能である。プリント配線板に関する具体例としては、プリプレグの片面又は両面に本発明の樹脂付銅箔を接着させ硬化した積層体とした上で回路形成した片面又は両面プリント配線板や、これらを多層化した多層プリント配線板等が挙げられる。また、他の具体例としては、樹脂フィルム上に本発明の樹脂付銅箔を形成して回路を形成するフレキシブルプリント配線板、COF、TABテープ、ビルドアップ多層配線板、半導体集積回路上へ樹脂付銅箔の積層と回路形成を交互に繰りかえすダイレクト・ビルドアップ・オン・ウェハー等が挙げられる。特に、本発明の樹脂付銅箔は、ネットワーク機器における高周波デジタル通信用のプリント配線板用の絶縁層及び導体層として好ましく適用可能である。そのようなネットワーク機器の例としては、(i)基地局内サーバー、ルーター等、(ii)企業内ネットワーク、(iii)高速携帯通信の基幹システム等が挙げられる。
【実施例
【0039】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0040】
例1~18
樹脂組成物を含んでなる樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを用いて樹脂付銅箔を製造し、その評価を行った。具体的には以下のとおりである。
【0041】
(1)樹脂ワニスの調製
まず、樹脂ワニス用原料成分として、以下に示される樹脂成分、イミダゾール系硬化促進剤及び無機フィラーを用意した。
‐ エポキシ樹脂:日本化薬株式会社製、NC-3000H(ビフェニルアラルキル型、エポキシ当量288g/Eq)
‐ マレイミド樹脂:日本化薬株式会社製、MIR-3000(ビフェニルアラルキル型、官能基当量275g/Eq)
‐ ポリイミド樹脂:荒川化学工業株式会社製、PIAD-301(末端官能基:カルボキシル基、溶媒:シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン及びエチレングルコールジメチルエーテルの混合液、誘電率(1GHz):2.70、誘電正接(1GHz):0.003、軟化点:140℃)
‐ フェノール樹脂(明和化成株式会社製、MEH-7500)
‐ ポリカルボジイミド樹脂:日清紡ケミカル株式会社製、カルボジライトV-09GB
‐ 熱可塑性エラストマー:旭化成株式会社製、タフテックMP10
‐ 芳香族ポリアミド樹脂:日本化薬株式会社製、BPAM-155(フェノール性水酸基含有ポリブタジエン変性芳香族ポリアミド樹脂)
‐ 無機フィラー:アドマテックス株式会社製、SC-2050MTX(平均粒径D50=0.5μm、表面フェニルアミノシラン処理品)
‐ イミダゾール系硬化促進剤:四国化成工業株式会社製、2P4MHZ
【0042】
表1~3に示される配合比(質量比)でかつ固形分割合が30重量部となるように、上記樹脂ワニス用原料成分と有機溶剤(シクロペンタノン)を秤量した。秤量した樹脂ワニス用原料成分及び溶剤をフラスコに投入し、常温で30分間プロペラ式攪拌装置にて撹拌させて樹脂成分を溶剤に溶解させ、樹脂ワニスを回収した。
【0043】
(2)樹脂単体の評価
上記(1)で得られた樹脂ワニスを、厚さ18μmの電解銅箔の電極面(十点平均粗さRzjis:0.5μm、JIS B0601-2001に準拠して測定)に、乾燥後塗工厚みを50μmの厚さに狙って塗工した。塗工した樹脂ワニスをオーブンで乾燥させ、半硬化(Bステージ)状態とした。こうして図1に示されるように銅箔12の片面に樹脂層14を備えた樹脂付銅箔10を2枚作製した。図1に示されるように、2枚の樹脂付銅箔10を樹脂層14同士が重なるように積層して、プレス温度190℃、温度保持時間90分、プレス圧力40kgf/cmの条件で真空プレスを行い、樹脂層14を硬化状態とした。こうして硬化された樹脂層14の厚さは100μmであった。プレス後の積層体から銅箔をエッチングして除去し、樹脂層14単独からなる樹脂フィルムを得た。
【0044】
<誘電特性評価-誘電正接>
上記得られた樹脂フィルムについて、ネットワークアナライザー(キーサイト社製、PNA-L N5234A)を用いてSPDR誘電体共振器法により、3GHzにおける誘電正接を測定した。この測定はASTMD2520(JIS C2565)に準拠して行った。得られた誘電正接(Df)を以下の基準に従い、3段階で評価した。
‐ 評価A:0.005未満
‐ 評価B:0.005以上0.016未満
‐ 評価C:0.016以上
【0045】
(3)樹脂層をプライマー層として用いた銅張積層板及びプリント配線板の評価
(3-1)電解銅箔の作製
厚さ18μmの電解銅箔をそれぞれ以下の方法により作製した。
【0046】
<電解銅箔>
硫酸銅溶液中で、陰極にチタン製の回転電極(表面粗さRa=0.20μm)を、陽極にDSAを用い、溶液温度45℃、電流密度55A/dmで電解し、原箔を作製した。この硫酸銅溶液の組成は、銅濃度80g/L、フリー硫酸濃度140g/L、ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド濃度30mg/L、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体濃度50mg/L、塩素濃度40mg/Lとした。その後、原箔の電解液面に対して下記(a)~(c)の表面処理を順次行った。
(a)亜鉛-ニッケル被膜形成
‐ ピロリン酸カリウム濃度:80g/L
‐ 亜鉛濃度:0.2g/L
‐ ニッケル濃度:2g/L
‐ 液温:40℃
‐ 電流密度:0.5A/dm
(b)クロメート層形成
‐ クロム酸濃度:1g/L、pH11
‐ 溶液温度:25℃
‐ 電流密度:1A/dm
(c)シラン層形成
‐ シランカップリング剤:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3g/L水溶液)
‐ 液処理方法:シャワー処理
こうして得られた電解銅箔Aの表面処理面は、十点平均粗さRzjisが0.5μm(JIS B0601-2001に準拠して測定)であり、粒子状突起は無いものであった。
【0047】
(3-2)樹脂付銅箔の作製
上記(1)で得られた樹脂ワニスを、上記で得られた厚さ18μmの電解銅箔の電極面(十点平均粗さRzjis:0.5μm、JIS B0601-2001に準拠して測定)に、乾燥後塗工厚みを4.0μmの厚さに狙って塗工した。塗工した樹脂ワニスをオーブンで乾燥させ、半硬化(Bステージ)状態とすることで、銅箔22の片面に樹脂層24を備えた樹脂付銅箔20を作製した。
【0048】
<耐熱性評価-耐熱保持時間>
樹脂付銅箔を最外層として、2枚のプリプレグ(パナソニック株式会社製MEGTRON-6、実厚さ200μm)と共に積層して厚さ0.25mmの樹脂基材26を得た。図2に示されるように、プレス温度190℃、温度保持時間120分、プレス圧力30kgf/cmの条件で真空プレスを行い、樹脂層24を硬化状態として銅張積層板28を得た。なお、樹脂層24は銅張積層板28の作製において、樹脂基材26と接合するためのプライマー層として機能するといえる。こうして硬化された樹脂層24の厚さは4.0μm、樹脂基材26の厚さは0.2mmであった。得られた銅張積層板28に耐熱性評価用の基板作製を行った。具体的には、銅張積層板28を6.35mm×6.35mm平方に切り出した。熱機械分析装置(TMA)を用いて288℃に加熱された石英プローブを、切り出した銅張積層板28の表面に接触させて、デラミネーション(回路剥離や基材剥離)が発生するまでの時間(分)を測定し、耐熱保持時間(分)とした。この測定はIPC-TM-650(No.2.4.24.1)に準拠して行った。得られた耐熱保持時間を以下の基準に従い、4段階で評価した。結果は表1~3に示されるとおりであった。
‐ 評価A:60分以上(非常に良い)
‐ 評価B:30分以上60分未満(良い)
‐ 評価C:10分以上30分未満(許容可能)
‐ 評価D:10分未満(悪い)
【0049】
<銅箔密着性-剥離強度R>
上記得られた銅張積層板28に剥離強度測定試験用の回路形成を行った。具体的には、銅張積層板28の両面にドライフィルムを張り合わせて、エッチングレジスト層を形成した。そして、その両面のエッチングレジスト層に、10mm幅の剥離強度測定試験用の回路を露光現像し、エッチングパターンを形成した。その後、銅エッチング液で回路エッチングを行い、エッチングレジストを剥離して回路22aを得た。こうして形成された回路22aを樹脂層24から剥離して、回路22a及び樹脂層24間の剥離強度R(kN/m)を測定した。この剥離強度Rの測定はJIS C 6481-1996に準拠して行った。得られた剥離強度Rを以下の基準に従い、4段階で評価した。結果は表1~3に示されるとおりであった。
‐ 評価A:0.60kN/m以上(非常に良い)
‐ 評価B:0.40kN/m以上0.60kN/m未満(良い)
‐ 評価C:0.20kN/m以上0.40kN/m未満(許容可能)
‐ 評価D:0.20kN/m未満(悪い)
【0050】
<260℃オーブンベーク評価-耐熱剥離強度T>
上記剥離強度Rと同様の手順により回路22aを形成した試験片を作製した。この試験片を260℃のオーブンで15分間加熱した。その後、オーブンから取り出し、室温まで冷却した後、回路22aを樹脂層24から剥離して、回路22a及び樹脂層24間の剥離強度(kN/m)を耐熱剥離強度Tとして測定した。この耐熱剥離強度Tの測定もJIS C 6481-1996に準拠して行った。耐熱剥離強度Tを剥離強度Rで除して100を乗じることにより熱後維持率(100×T/R)(%)を算出した。得られた熱後維持率(100×T/R)(%)を以下の基準に従い、4段階で評価した。結果は表1~3に示されるとおりであった。
‐ 評価A:60%以上(非常に良い)
‐ 評価B:40%以上60%未満(良い)
‐ 評価C:25%以上40%未満(許容可能)
‐ 評価D:25%未満(悪い)
【0051】
<半田耐熱性評価>
上記得られた銅張積層板28を50mm×50mmの矩形に切り出して、3枚の試験片を用意した。各試験片の一方の面については表面に露出する銅箔の半分を銅エッチング液でエッチングする一方、各試験片の他方の面については表面に露出する銅箔のすべてを銅エッチング液でエッチングして、測定用サンプルを得た。この測定用サンプルを288℃の半田浴に10秒間浮かべる熱処理を10回行った後、外観変化を目視で観察し、膨れの発生の有無を確認した。確認結果を以下の基準に従い、3段階で評価した。結果は表1~3に示されるとおりであった。
‐ 評価A:3枚のサンプルの全てで膨れが発生しなかった。
‐ 評価B:3枚のサンプルのうち1枚又は2枚においてのみ膨れが発生した。
‐ 評価C:3枚のサンプルの全てで膨れが発生した。
【0052】
例19(比較)
マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂及び熱可塑性エラストマーを用いず、代わりにフェノール樹脂(明和化成株式会社製、MEH-7500)260重量部を用い、かつ、エポキシ樹脂を100重量部としたこと以外は、例9と同様にして、樹脂ワニスの調製及び各種評価を行った。結果は表3に示されるとおりであった。
【0053】
例20(比較)
マレイミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂及び熱可塑性エラストマーを用いず、エポキシ樹脂100重量部及びポリイミド樹脂40重量部のみを樹脂成分として用いたこと以外は、例9と同様にして、樹脂ワニスの調製及び各種評価を行った。結果は表3に示されるとおりであった。
【0054】
例21(比較)
ポリカルボジイミド樹脂、ポリイミド樹脂及びエポキシ樹脂を用いず、ビスマレイミドを100重量部及び熱可塑性エラストマー50重量部のみを樹脂成分として用いたこと以外は、例9と同様にして、樹脂ワニスの調製及び各種評価を行った。結果は表3に示されるとおりであった。
【0055】
例22(比較)
マレイミド樹脂を100重量部に対し、ポリイミド樹脂を130重量部と少なくし、かつ、ポリカルボジイミド樹脂を130重量部と多くしたこと以外は、例13と同様にして、樹脂ワニスの調製及び各種評価を行った。結果は表3に示されるとおりであった。
【0056】
例23(比較)
マレイミド樹脂を100重量部に対し、ポリイミド樹脂を1250重量部と多くし、かつ、ポリカルボジイミド樹脂を10重量部と少なくしたこと以外は、例13と同様にして、樹脂ワニスの調製及び各種評価を行った。結果は表3に示されるとおりであった。
【0057】
例24(比較)
マレイミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂及び熱可塑性エラストマーを用いず、代わりに芳香族ポリアミド樹脂200重量部、エポキシ樹脂100重量部、及びポリイミド260重量部を用いたこと以外は、例10と同様にして、樹脂ワニスの調製及び各種評価を行った。結果は表3に示されるとおりであり、誘電正接はそれなりには低いものの例1~18と比べれば高いものであった。また、例24の樹脂組成物はポリアミドを含むため、吸水により成形品の寸法変化が生じやすいといった欠点がある。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】

図1
図2