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特許7212630進行性の病気の患者のための治療の開始及び種類を決定するための意思決定システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】進行性の病気の患者のための治療の開始及び種類を決定するための意思決定システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20230118BHJP
【FI】
G16H20/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019555966
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 US2018024143
(87)【国際公開番号】W WO2018191001
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】15/483,491
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519171963
【氏名又は名称】コタ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドバーグ スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ペコラ アンドリュー
【審査官】玉木 宏治
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-526125(JP,A)
【文献】特表2000-514938(JP,A)
【文献】特開2003-050868(JP,A)
【文献】特開2014-199557(JP,A)
【文献】特表2017-501481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
致命的又は致死的な進行性の病気の治療を受けている患者のための患者ケアサービスを決定する方法であって、
(a)プロセッサを備えるシステムによって、患者個人健康情報を含むデータを受け取ることにより患者の症状を識別するステップと、
(b)前記システムによって、前記患者個人健康情報を含む前記データを分析することにより前記患者の苦痛レベルを決定するステップと、
(c)前記システムによって、前記患者の苦痛レベル及び前記患者の症状の重症度を含む基準に基づいてスコアを確立するステップと、
(d)前記患者の前記個人健康情報を含むデータに基づいて前記患者を複数のノードアドレスの1つのノードアドレスに分類するステップであって、前記ノードアドレスは事前に選択された変数のセットを表すプレフィックス、中間値、及びサフィックスを含む離散的区切り付数字列として表され、前記ノードアドレスは前記予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策のグループに関連付けられる、ステップと、
(e)前記システムによって、前記スコアに基づいて、前記予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策のグループから予め決められた患者ケアサービスの方策を選択することによって、前記致命的又は致死的な進行性の病気の臨床経過及び前記患者の苦痛レベルに適した1又は2以上の患者ケアサービスを決定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
第1の事業体によって前記患者に提供される前記1又は2以上の患者ケアサービスの品質及び/又は妥当性を、他の事業体によって他の患者に提供される患者ケアサービスの品質及び/又は妥当性と比較するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策のグループから予め決められた患者ケアサービスの方策を選択することは、前記スコアに基づくケアの積極性及び治療の積極性を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記予め決められた患者ケアサービスの方策を選択することは、前記スコアと前記スコアに対する1又は2以上の閾値との比較に基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記個人健康情報を含むデータに基づいて前記患者を前記ノードアドレスに分類するステップは、前記事前に選択された変数のセットを前記データ内の前記患者の属性と照合するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策のグループの各方策は、当該治療サイクルに対する予め決められた費用に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記選択された治療方針は、治癒的治療、進行を遅らせる治療、又は緩和治療を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記患者個人健康情報を含む前記データは、前記患者の苦痛レベルを確立するのに効果的な患者質問票の結果を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記患者個人健康情報を含む前記データは、パフォーマンスステータス、痛み、最愛の人への負担であるという認識、経済的負担についての認識、及び前記患者の憂鬱感のうちの少なくとも1つに関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
更新された前記患者個人健康情報を含む更新データを受け取るステップと、
前記更新された患者個人健康情報を含む前記更新データを分析して、更新スコアを決定するステップと、
前記更新スコアに基づいて、前記予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策のグループから予め決められた患者ケアサービスの別の方策を選択することにより前記患者の治療を修正するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
致命的又は致死的な進行性の病気の治療を受けている患者のための患者ケアサービスを決定するためのコンピュータプログラム命令を格納する非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータプログラム命令は、少なくとも1つのプロセッサ上で実行されたときに、前記少なくとも1つのプロセッサに対して、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法を実行させる、ことを特徴とする非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
致命的又は致死的な進行性の病気の治療を受けている患者のための患者ケアサービスを決定するためのシステムであって、
患者個人健康情報を含むデータを格納するデータベースと、
患者分析システムと、
を備え、
前記患者分析システムが、
少なくとも1つのプロセッサと、
コンピュータプログラム命令を格納するメモリと、
を含み、
前記コンピュータプログラム命令は、前記少なくとも1つのプロセッサ上で実行されたときに、前記少なくとも1つのプロセッサに対して、
(a)前記患者個人健康情報を含むデータを受け取ることにより患者の症状を識別するステップと、
(b)前記患者個人健康情報を含む前記データを分析することにより前記患者の苦痛レベルを決定するステップと、
(c)前記患者の苦痛レベル及び前記患者の症状の重症度を含む基準に基づいて、前記患者の苦痛レベルを前記致命的又は致死的な進行性の病気の臨床経過と相関付けるスコアを確立するステップと、
(d)前記患者の前記個人健康情報を含むデータに基づいて前記患者を複数のノードアドレスの1つのノードアドレスに分類するステップであって、前記ノードアドレスは事前に選択された変数のセットを表すプレフィックス、中間値、及びサフィックスを含む離散的区切り付数字列として表され、前記ノードアドレスは前記予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策のグループに関連付けられる、ステップと、
(e)前記スコアに基づいて、前記予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策のグループから予め決められた患者ケアサービスの方策を選択することによって、前記致命的又は致死的な進行性の病気の臨床経過及び前記患者の苦痛レベルに適した1又は2以上の患者ケアサービスを決定するステップと、
を含む動作を実行させる、ことを特徴とするシステム。
【請求項13】
前記動作は更に、第1の事業体によって前記患者に提供される前記1又は2以上の患者ケアサービスの品質及び/又は妥当性を他の事業体によって他の患者に提供される患者ケアサービスの品質及び/又は妥当性と比較するステップを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策のグループから予め決められた患者ケアサービスの方策を選択することは、前記スコアに基づくケアの積極性及び治療の積極性を決定することを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記予め決められた患者ケアサービスの方策を選択することは、前記スコアと前記スコアに対する1又は2以上の閾値との比較に基づいている、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記個人健康情報を含むデータに基づいて前記患者を前記ノードアドレスに分類するステップは、前記事前に選択された変数のセットを前記データ内の前記患者の属性と照合するステップを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策のグループの各方策は、当該治療サイクルに対する予め決められた費用に関連する、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記選択された治療方針は、治癒的治療、進行を遅らせる治療、又は緩和治療を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記患者個人健康情報を含む前記データは、前記患者の苦痛レベルを確立するのに効果的な患者質問票の結果を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
前記患者個人健康情報を含む前記データは、パフォーマンスステータス、痛み、最愛の人への負担であるという認識、経済的負担についての認識、及び前記患者の憂鬱感のうちの少なくとも1つに関連する、請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
前記動作は更に、
更新された患者個人健康情報を含む更新データを受け取るステップと、
前記更新された患者個人健康情報を含む前記更新データを分析して、更新スコアを決定するステップと、
前記更新スコアに基づいて、前記予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策のグループから予め決められた患者ケアサービスの別の方策を選択することにより前記患者の治療を修正するステップと、
を含む、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月10日出願の米国特許出願第15/483,491号に対する優先権を主張するものであり、その開示内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
記載の発明は、概して、致命的又は致死的な進行性疾患を患う患者のための治療方針の決定に関し、より具体的には、重病を有する患者の治療計画の客観的で定量的で標準化された意思決定に関する。
【背景技術】
【0003】
緩和ケアは、延命に焦点を合わせるのではなく患者の生活の質を高めることに焦点を合わせて、典型的には致死的又は致命的である重篤な進行性の病気(癌、肺病、心臓病、神経障害、又は気腫などの他の慢性進行性疾患)の患者のための専門的なタイプの医療的ケアである。緩和ケアは、患者の根本的な疾患又は病気の治療を提供するが、疾患に起因する症状、痛み、ストレスの緩和を提供することに焦点を合わせている。緩和ケア治療は、重病の何れの段階でも患者に提供できる。緩和ケアサービスを受けることは、それ自体、寿命を延ばすように設計された付加的な治療を妨げるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願第14/507,640号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでの調査によると、適時に緩和ケアサービスが利用されていないことが分かっている(例えば、死亡の30日以上前)。緩和ケア治療が遅れるか又はそれがない場合には、通常、医療的ケアがより積極的なものとなり、医療費が増加する。重病の過程で早期に緩和ケア治療を開始することは、特に患者の終末期において生活の品質パラメータを最適にするのに効果的とすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1又は2以上の実施形態によれば、患者の苦痛レベルを評価して、致命的又は致死的な進行性の病気に対する患者の治療を開始及び提供する臨床処置方針を選択するための患者分析システムが提供される。有利には、本明細書に記載の患者分析システムは、限定されるものではないが患者の緩和ケア治療を含む患者ケアサービスを開始及び/又は推奨及び/又は実施するための客観的で定量的で標準化された意思決定を可能にする。また、患者分析システムは、ヘルスケア提供者間のケアの品質を評価するためのベンチマークツールとして機能することもできる。
【0007】
1又は2以上の実施形態によれば、患者のための患者ケアサービスを決定するためのシステム、非一時的コンピュータ可読媒体、及び方法が提供される。このような一実施形態によれば、患者のための患者ケアサービスを決定することは、患者が緩和ケアに相応しいか否かを判定することを含む。患者の症状は、患者個人健康情報を含むデータを受け取ることによって識別される。患者の苦痛レベルは、患者個人健康情報を含むデータを分析することによって決定される。スコアは、患者の苦痛レベル及び患者の症状の重症度を含む基準に基づいて確立される。該スコアは、患者の苦痛レベルを、致命的又は致死的な進行性の病気の臨床経過と相関付ける。致命的又は致死的な進行性の病気の臨床経過及び患者の苦痛レベルに適した1又は2以上の患者ケアサービスは、患者への治療の開始及び/又は推奨及び/又は実施に関するスコアに基づいて決定される。
【0008】
1又は2以上の実施形態によれば、データは、限定されるものではないが、最愛の人への負担であるという認識、及び患者の憂鬱感を含む、パフォーマンスステータス、痛み、相互に関係のあるデータの領域をカバーするデータなどの患者の苦痛レベルを表すデータとすることができる。検査を受ける領域は、特定の疾患に関連する苦痛の症状及び/又は兆候を反映することを目的として、疾患に基づいて修正することができる。データは、患者質問票の結果とすることができる。
【0009】
1又は2以上の実施形態によれば、1又は2以上の患者ケアサービスを決定するステップは、スコアに基づいて患者に関連する予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策のグループから予め決められた患者ケアサービスの方策を選択するステップを含むことができる。「予め決められた患者ケアサービスの方策」は、固定費用で当該治療サイクルにわたる包括的なケアを含むタイプのケアを含むことができる。「予め決められた患者ケアサービスの方策」はまた、治療方針、治療意図又はこれら両方を含むこともでき、治療は、治癒力のあるものであるか、進行を遅らせるか、緩和するか、又はホスピスであり、ケアの積極性及び治療の積極性を含む。
【0010】
1又は2以上の実施形態によれば、患者は、患者個人健康情報を含むデータに基づいて、患者をノードアドレス(すなわち、CNA)に分類することにより、予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の治療方針と関連付けることができ、ここでノードアドレスは、臨床的に関連する変数のセットを表す。一例では、変数のセットは、データ内の患者の属性と照合されて、患者をノードアドレスに分類する。ノードアドレスは、予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策に関連することができる。ノードアドレスは、変数のセットを表すプレフィックス、中間値、及びサフィックスを含む離散的区切り付数字列として表すことができる。1つの実施形態では、予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策の各々は、予め決められた費用に関連する。
【0011】
1又は2以上の実施形態によれば、患者個人健康情報を含むデータは、各質問の回答を関連付けて、等級値を用いて患者質問票で疾患の1又は2以上の症状を評価して、その症状がどの程度の患者の生活に影響を与えるかを表す評点を等級値と関連付けることによって分析される。各質問に対して、選択された回答の等級値が、選択された評点の等級値と組み合わせて(例えば、乗算され)、初期スコアが決定される。各質問に関する初期スコアは、組み合わされて(例えば、加算により)、質問票の最終的な累積苦痛スコアが決定できる。該累積苦痛スコアは、1又は2以上の等級値閾値に基づいて、事前に選択された緩和ケア方策を開始及び/又は推奨すること及び/又はその方策で患者を治療することに使用することができる。
【0012】
本開示のこれらの及び他の利点は、以下の詳細な説明及び添付図面を参照することにより当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】1つの実施形態による通信システムの高レベル概略図を示す。
図2】1つの実施形態による、患者を分析及び評価して、患者を治療するための臨床処置方針を決定するためのシステムアーキテクチャを示す図である。
図3】1つの実施形態による例示的な患者質問票を示す図である。
図4】1つの実施形態による、患者ケア分析システムと相互作用する臨床転帰トラッキング及び分析モジュールのシステムアーキテクチャを示す図である。
図5】1つの実施形態による、患者ケアサービスを選択するための方法のフローチャートを例示的に示す図である。
図6】1つの実施形態によるコンピュータの高レベルブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、1又は2以上の実施形態による通信システム100の高レベル概略図を示している。通信システム100は、1又は2以上のコンピューティングデバイス102-A、...、102-N(集合的に、コンピューティングデバイ102と呼ばれる)を含む。コンピューティングデバイス102は、例えば、コンピュータ、ワークステーション、サーバ、データベース、タブレット、又はモバイルデバイスなどの任意のタイプのコンピューティングデバイスを含むことができる。エンドユーザは、コンピューティングデバイス102を操作して、ネットワーク104経由で互いに通信する。ネットワーク104は、任意のタイプのネットワーク又は異なるタイプのネットワークの組み合わせを含むことができ、有線及び/又は無線構成で任意の好適なネットワーク技術を使用して実装することができる。例えば、ネットワーク104は、インターネット、イントラネット、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、仮想プライベートネットワーク(VPN)などのうちの1又は2以上を含むことができる。
【0015】
コンピューティングデバイス102のエンドユーザは、ネットワーク104経由で通信して患者分析システム106と対話して、患者を治療するための臨床処置方針を決定することができる。特に有用な一実施形態では、患者分析システム206は、患者を分析して評価して、患者の緩和ケア治療計画向けの臨床処置方針を決定して、生活の質及び転帰を最適にする。本明細書では、患者を分析するための患者分析システム106について説明しているが、患者分析システム106は、任意の被験者についての任意の医療又は非医療関連分析に使用できることを理解されたい。
【0016】
幾つかの実施形態では、通信システム100はまた、患者データを格納するための電子医療記録(EMR)データベース108を含むこともできる。コンピューティングデバイス102及び患者分析システム106のエンドユーザは、ネットワーク104経由でEMRデータベース108と対話して、患者データを取得、格納、及び/又は操作することができる。EMRデータベース108に格納された患者データは、例えば診断又は治療などの医療ケアサービスを受ける過程で取得、使用、又は開示された任意の情報を含むことができる。
【0017】
エンドユーザは、コンピューティングデバイス102上で実行されるウェブブラウザ、コンピューティングデバイス102上で実行されるアプリケーション、又はコンピューティングデバイス102上で実行されるアプリのインタフェース、或いは患者分析システム106と対話するための任意の他の好適なインタフェースを介して、患者分析システム106及び/又はEMRデータベース108と対話することができる。
【0018】
有利には、本発明の実施形態は、患者を分析して、患者を治療するための臨床処置方針を決定するように構成された患者分析システム106を提供する。1つの実施形態では、患者分析システム106は、患者に対する緩和ケア治療を含む臨床処置方針を決定する。従って、本発明の実施形態による患者分析システム106は、患者を治療するための臨床処置方針を決定するための客観的で定量的で標準化された意思決定を助長することにより、コンピュータ関連技術における改良を提供する。本発明はまた、ヘルスケア提供者の応答を患者の苦痛と比較する(例えば、終末期におけるケアの品質のベンチマーキング)及び/又はヘルスケア提供者間での緩和ケアの開始及び/又は治療の相違点を識別するための客観的で定量的で標準的な方法を提供する。
【0019】
図2は、1又は2以上の実施形態による、患者を分析して評価して、患者を治療するための臨床処置方針を決定するためのシステムアーキテクチャ200を示している。システムアーキテクチャ200は、患者分析システム202を含む。1つの実施形態では、患者分析システム202は、図1の患者分析システム106である。
【0020】
患者分析システム202は、分析エンジン206を含む。分析エンジン206は、入力204から患者分析情報を提供するように構成される。1つの実施形態では、入力204は、ユーザから受け取ることができる。例えば、入力204は、図1におけるネットワーク104経由でコンピューティングデバイス102のエンドユーザから受け取ることができる。ユーザを含めることができる。入力204は、患者から直接受け取ること、或いは患者の苦痛レベルを認識している別の事業体(例えば、家族の一員又は介護者、医師又は他のヘルスケア専門家、医療サービスの支払者(例えば、保険会社又は保険会社の代表者)、又は任意の他の事業体から受け取ることができる。
【0021】
別の実施形態では、入力204は、外部データベースから受け取った又は取り出された、以前に格納されたデータとすることができる。例えば、入力204は、図1におけるネットワーク104経由でEMRデータベース108から受け取ること又はこのデータベースから取り出すことができる。一例では、EMRデータベース108は、このデータベースに格納されたデータを分析して関連患者データを識別して、この関連患者データを入力204として患者分析システム202に送信することができる。別の例では、患者分析システム202(例えば、患者分析システム202の分析エンジン206)は、EMRデータベース108と相互作用して関連患者データを識別して、この関連患者データを入力204として取り出すことができる。関連患者データは、任意の好適な方法を使用してEMRデータベース108から識別することができる。1つの実施形態では、関連患者データは、当技術分野で公知の方法を使用して識別することができる(例えば、EMRデータベース108又は分析モジュール206によって)。
【0022】
入力204は、患者の苦痛レベルを分析するための個人健康情報を含む任意のデータを含むことができる。入力204として受け取ったデータは、任意の好適な形式とすることができる。1つの実施形態では、データは、例えばXML(拡張可能マークアップ言語)形式での構造化されたデータである。別の実施形態では、データは、構造化されていないデータであり、例えば当技術分野で公知の方法を使用して関連データを抽出することによって構造化される。例えば、構造化されていないデータは、例えば、テキストの段落、手書きのメモ、患者カルテの図面などとすることができる。
【0023】
1つの実施形態では、入力204は、例えば、パフォーマンスステータス、痛み又は他の疾患関連苦痛、最愛の人への負担であるという認識、ヘルスケアの経済的費用に関連する負担についての認識、及び患者の不安又は憂鬱感についての領域をカバーするデータなどの患者の苦痛レベルに関するデータを含むことができる。例えば、入力204は、患者の質問票の結果を含むことができる。患者質問票は、疾患特有の患者質問票とすることができる。例えば、患者質問票は、例えば、癌、肺疾患、心疾患、神経障害、又は任意の他の進行性疾患などの特定の進行性疾患を対象にすることができる。
【0024】
1つの実施形態では、入力204はまた、疾患の客観的な兆候又は症状(例えば、老人ホームの記録又は痛みの薬物使用を文書化した投薬記録による、ベッドで過ごす定量化可能な時間)又は苦痛レベルに関する医療専門家による評価(例えば、抑鬱症の診断に関する精神科の入力など)を含むこともできる。
【0025】
図3は、1つの実施形態による例示的な患者質問票300を示している。患者質問票300は、癌に特有のものであり、患者の苦痛レベルを評価するための質問302を含む。例えば、患者質問票300は、例えば、パフォーマンスステータス、痛み又は他の疾患関連苦痛、最愛の人への負担であるという認識、経済的負担であるという認識、及び患者の憂鬱感などの癌の症状を評価することにより患者の苦痛レベルを評価するための質問302を含む。患者質問票300は、7つの質問302を有して示されているが、癌の症状を評価するのに適した任意の数の質問を含むことができる。ユーザは、質問302に関連する症状を最も正確に表す質問302ごとに複数の回答304のうちの1又は2以上を選択する(例えば、図1のコンピューティングデバイス102を使用して)。また、ユーザは、各質問302に対する評点306を選択して、症状の重症度が等級づけされる。一例では、症状の評点306は、その症状がどの程度患者の生活に影響を与えるかを表す。図3に示されている例示的な実施形態では、ユーザは、以下の回答、すなわち、全くない、中程度、及び非常に、のうちの1つから評点306を選択する。また、症状を等級づけすることについての他の形態を採用することもできる。
【0026】
患者質問票300は、患者について認識している任意のユーザにより記入することができる。例えば、患者質問票300は、患者、患者と関係のある人物(例えば、家族の一員又は友人)、医師又は他のヘルスケア専門家、医療サービスの支払者(例えば、保険会社又は保険会社の代表者)、或いは任意の他の好適な事業体により記入することができる。患者分析システム202は、図2における入力204として患者質問票300の結果を受け取ることができる。
【0027】
患者質問票300は、癌特有の患者質問票として示されているが、同様の患者質問票が、任意の疾患又は任意のタイプの疾患に対して提供できることを理解されたい。例えば、患者質問票300における質問302及び/又は回答304は、何れかの進行性疾患に特に関連する症状を評価するように変更することができる。例えば、患者質問票300は、進行性肺疾患と診断された患者を評価するように変更でき、1又は2以上の質問302及び/又は回答304で置き換えることができる(例えば、息切れを評価するための質問を含むように)。
【0028】
図2における患者分析システム202の分析エンジン206は、入力204を分析するように構成される。1つの実施形態では、分析エンジン206は、入力204に関するスコアを決定することにより入力204を分析する。このスコアは、患者の苦痛レベル(例えば患者のパフォーマンスステータスなどの複数の属性を組み合わせたものであり、これは、患者の挙動を、事前に設定された基準、痛み又は他の疾患関連苦痛、最愛の人への負担であるという認識、経済的負担であるという認識、及び患者の不安及び/又は憂鬱感と比較することによる患者の挙動の評価を意味する)を表すことができる。例えば、当技術分野で公知のものなどの任意の好適なスコアリングアルゴリズムを使用することができる。
【0029】
一例では、分析エンジン206は、各回答304及び各評点306を等級値(例えば、ポイント値)と関連付けることにより、患者質問票(例えば、図3の患者質問票300)の結果を分析することができる。それぞれの質問302ごとの初期スコアは、選択された回答304の等級値を選択された評点306の等級値と組み合わせることにより(例えば、選択された回答304の等級値に選択された評点306の等級値を乗算することにより)決定される。患者質問票300のスコアは、それぞれの質問302ごとの初期スコアを組み合わせることにより(例えば、それぞれの質問302ごとのスコアを加算することにより)決定される。また、患者質問票300を採点するための他の手法を採用することもできる。
【0030】
患者分析システム202における転帰決定エンジン208は、分析エンジン206によって決定されたスコアに基づいて、患者を治療するための臨床処置方針を決定するように構成される。1つの実施形態では、治療を開始するか否か、治療の積極性、及び患者のケアの積極性のうちの1又は2以上の決定は、このスコアに基づいて行われる。例えば、スコアが所定の閾値を満たしている(例えば、満たしている又は超過している)ときに、治癒力のある、進行を遅らせるのに効果的である、又は緩和ケア治療である治療方針、治療意図又はこれら両方が、提案又は要求され得る。
【0031】
別の実施形態では、異なる臨床処置方針が、異なる閾値(又は異なる値の範囲)に関連することもできる。このようにして、患者を治療するための臨床処置方針は、最終スコアが満たすそれぞれの閾値又は値の範囲に関連する臨床処置方針として決定される。1つの実施形態では、異なる値又は異なる値の範囲に関連する異なる臨床処置方針は、値が増加又は減少するにつれて、重症度が増加する範囲にあり得る。例えば、臨床処置方針の重症度は、治療を行わないことから蘇生させないことまでに及ぶことができる。
【0032】
患者分析システム202は、転帰決定エンジン208により決定された臨床処置方針を、患者の治療のための出力210として戻す。1つの実施形態では、患者分析システム202は、入力204を繰り返して分析して、経時的に患者を監視し、それに応じて臨床処置方針を修正又は変更する。例えば、患者分析システム202は、医療事象の後(例えば、あらゆる医師の健康診断の後、重大な医学的症状の後)などで、周期的な時間間隔(例えば、毎日、毎週、毎月、毎年)にわたって入力204を分析して、更新スコアを決定することができ、患者の治療のための新しい臨床処置方針は、この更新スコアに基づいて決定することができる。
【0033】
1つの実施形態では、患者分析システム202は、患者に緩和ケア治療を提供するための臨床処置方針を出力210として決定する。このようにして、患者分析システム202は、患者のための緩和ケア治療を決定するための標準的で客観的で定量的な意思決定を助長し、それによって、患者の生活の質及び転帰が最適になる。
【0034】
1つの実施形態では、患者分析システム202によって決定されたスコアは、ヘルスケア提供者間で品質ベンチマークを開発及び/又は評価するのに使用することができる。例えば、ある特定の総苦痛スコアを有する患者をケアする医師の治療方針パターンは、同様の苦痛スコアを有する患者をケアする異なる医師の治療方針パターンと比較することができる。一例では、化学療法剤の投与及び/又はホスピス紹介及び/又は正式な緩和ケア相談の割合は、同様の総苦痛スコアを有する患者を治療する医師間で比較することができる。このようにして、患者分析システムは、緩和ケアの問題に関して重病を有する患者間でのケアの品質の標準的で客観的で定量的な尺度を助長する。
【0035】
1つの実施形態では、ヘルスケア提供者及び/又は保険業界及び/又は他の事業体は、患者分析システム202によって決定されたスコアを使用して、患者ケアサービス(例えば、緩和ケアサービス)へのアクセス及び/又は規定された集団に対する治療の妥当性を評価することができる。例えば、病院は、その患者の有意の割合が、緩和ケアサービスの拡張及び/又は追加のヘルスケア要員の雇用を促す所定の苦痛スコア閾値を超過していることに気付くことができる。例えば、保険会社は、対象となる受益者の或る割合が、緩和ケアプログラムを拡張すること及び/又は既存のプログラムへのアクセスプログラムに対して特定の受益者をターゲットにすることを促す所定の苦痛スコアを超過することに気付くことができる。
【0036】
図4は、1又は2以上の実施形態による、図2の患者分析システム206と相互作用して、患者の治療のための患者ケアサービスの予め決められた方策を選択するための臨床転帰トラッキング及び分析(COTA)システム又はモジュール402のシステムアーキテクチャ400を例示的に示している。COTAモジュール402は、例えば図1のネットワーク104経由で患者分析システム206と相互作用することができる。COTAモジュール402及び患者分析システム206は、システムアーキテクチャ400において別個のコンポーネントとして示されているが、COTAシステム402及び患者分析システム206は、単一のコンポーネントとして統合すること、又は任意の数の別個のコンポーネント要素に切り離すことができることを理解されたい。COTAモジュール402は更に、2014年10月6日出願の「Clinical Outcome Tracking and Analysis(臨床転帰トラッキング及び分析)」と題する米国特許出願第14/507,640号明細書で説明されており、その開示内容全体は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0037】
COTAモジュール402は、患者を1又は2以上のCOTAノードアドレス(CNA)に割り当てる。CNAは、患者のグループ(又はデータ)を臨床的に関連するセットに分類するのに使用できる1又は2以上の事前に選択された変数(例えば、専門家による)を表す。例えば、患者は、その患者の属性にマッチする変数を表すCNAを割り当てられる。患者の属性は、EMRデータベース108から決定することができる。この変数は、例えば、診断、人口統計、転帰、表現型、又は患者のグループを臨床的に関連する集合に分類できる任意の他の変数を含むことができる。CNAは、任意の好適な形式で表されて、1又は2以上の事前に選択された変数を示すことができる。
【0038】
1つの実施形態では、CNAは、変数のリストである(変数を表す文字と変数内で選択されたものを表す数字との関数として)。例えば、文字Aは、性別又は性別変数を表し、数字1及び2は、女性患者及び男性患者を表し、文字Bは、人種変数を表し、数字1から4は、異なる人種を表す、などとすることができる。従って、CNAは、A1-2、B1-4、...、N1として表すことができる。
【0039】
別の実施形態では、CNAは、ピリオドで区切られた複数の離散的数字列として表され、各数字列は、1又は2以上の変数(例えば、疾患、表現型、治療の種類、進行/トラッキング、性別など)を示している。例えば、第1の数字列は、特定の疾患を表し、第2の数字列は、疾患の種類を表し、第3の数字列は、疾患のサブタイプを示し、更なる数字列は、表現型を示すことができる。従って、この例では、第1の数字列は、癌を示す01とすることができ、第2の数字列は、胸部腫瘍を示す02とすることができ、第3の数字列は、乳癌を示す01とすることができ、第4の数字列は、表現型の特定の特性を表す1201とすることができるので、ノードアドレスは、01.02.01.1201となる。ノードアドレスは、任意の数の数字列を含むことができ、4つの数字列に限定されるものではないことを理解されたい。
【0040】
各CNAは、予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策(例えば、患者を治療するための臨床処置方針)に関連することができる。1つの実施形態では、予め決められた患者ケアサービスの方策は、治療方針、治療意図、ケアの積極性、又は治療の積極性を規定する。別の実施形態では、予め決められた患者ケアサービスの方策は、予め決められた経済的費用で特定の治療サイクルにわたって患者を包括的にケアするための医療サービスのバンドルを表す。各方策は、例えば、1又は2以上の医療専門家、病院、グループ、保険会社などが、患者ケア及び/又は費用を最適にするように決定した1又は2以上の患者ケアサービスを含むことができる。一例では、方策は、画像スキャンの回数、薬剤又は薬剤の選択、薬剤をいつ投与するかについてのスケジュール、手術又は処置、経過観察訪問の回数及び頻度などを示すことができる。患者ケアサービスのバンドル化は、特にリスクのある契約に有用であり得る。例えば、ノードアドレス(特定の疾患に関連)に対応する各方策は、ユーザ(例えば、医師、患者など)が適切な方策を選択することを可能にする予め決められた費用を有することができる。この費用は、この特定の疾患又はノードアドレスに関連する履歴データに基づいて決定すること又は取り決めることができる。有利には、サービスのバンドル化は、特定疾患に対する費用の確実性を保険会社及び/又は病院に提供する。このことはまた、記録を処理して維持する費用を削減する。更に、医療専門家は、予め決められた臨床経過を事前に認識することになり、それによって、より低コストでより良い転帰を得るためのインセンティブが医師に与えられる。
【0041】
各ノードアドレスは、例えば各ノードアドレスを表す数字の離散的区切り付数字列に基づいて、数十兆個の可能性のある順列を、数を少なくした臨床的に意味のある順列に減少させる。幾つかの実施形態によれば、このことは、必要なケアと不要なケアの回避とを警告するのに必要な時間内での、可能性のある最低コストで最適な臨床転帰として表される理想値からの最初の挙動及びその後の結果として生じる臨床転帰及びコスト成果の差異の分析を可能にし、それにより、ケアの価値が高まり、このことは、可能性のある最低コストで臨床転帰がより良くなることを意味する。幾つかの実施形態によれば、CNAは、特定の治療、臨床試験、又は薬剤の候補として特定の患者を識別することを可能にする。幾つかの実施形態によれば、CNAは、医師及び他のヘルスケア提供者を管理することにおいて健康計画、病院、及び医師の診療を支援する請求データへの接続を有する分析インタフェースを提供する。幾つかの実施形態によれば、CNAは、各ノードアドレスを表す離散的区切り付数字列と順列の削減とに基づいて、処理要件及び処理時間を削減してリアルタイム監視を効率的にする。このリアルタイム監視は、例えば挙動の変動が生じる可能性が高い重要な時点の予測を可能にし、治療フローを中断して、ケアの過剰/過少利用を回避して挙動の変動を防止する。
【0042】
幾つかの実施形態によれば、患者分析システム206は、患者を分析して、出力210として患者に割り当てられたCNAに関連する1又は2以上の方策のうちの1つを選択する。例えば、患者分析システム202の分析エンジン206(図2)は、緩和ケアを開始又は推奨するためにスコアを決定して患者を評価することにより図3の患者質問票300の結果を分析することができる。例示的な基準は、例えば、患者の緩和ケア治療を推奨及び/又は開始するための、患者のパフォーマンスステータス、痛み、最愛の人への負担であるという認識、経済的負担であるという認識、及び患者の精神状態(例えば、不安、憂鬱感)を含むことができる。患者分析システム202の転帰決定エンジン208(図2)は、スコアに基づいて、緩和ケア治療のために患者に割り当てられたCNAに関連する予め決められた方策のうちの1つを選択する。例えば、予め決められた方策の各々は、閾値(又はスコア値の範囲)に関連することができる。予め決められた方策の各々は、異なるレベルの緩和ケア治療(例えば、緩和ケア治療を伴わない完全な疾患修飾又は延命治療から、疾患修飾又は延命治療を伴わない完全な緩和ケア、ホスピスに至るまで)を表すことができる。スコアが満たす閾値に関連する予め決められた方策は、患者の適切なレベルの緩和治療を提供するように選択される。1つの実施形態では、患者分析システム202は、患者を継続的に(例えば、周期的な時間間隔で、医療イベントの後などに)分析して、スコアが変化するときに、他の予め決められた方策が選択されて、治療が調整又は修正できる。従って、緩和ケア治療は、治療中の基礎疾患の臨床経過を追従するように継続的に修正することができる。
【0043】
図5は、1又は2以上の実施形態による、患者分析システム202の動作の方法500のフローチャートを示している。
【0044】
ステップ502において、患者の症状は、患者個人健康情報を含むデータを受け取ることによって識別される。このデータは、ユーザから(例えば、図1のコンピューティングデバイス102を使用して)又は外部データベース(例えば、図1のEMRデータベース108)から受け取ることができる。データは、例えば、パフォーマンスステータス、痛み又は疾患関連苦痛、最愛の人への負担であるという認識、経済的負担であるという認識、及び患者の不安及び/又は憂鬱感についての領域をカバーするデータなどの患者の苦痛レベルを表すデータとすることができる。1つの実施形態では、データは、患者質問票(例えば、図3の患者質問票300)の結果とすることができる。
【0045】
ステップ504において、患者の苦痛レベルは、患者個人健康情報を含むデータを分析することによって決定される。1つの実施形態では、患者の苦痛レベルは、患者の進行性疾患の現在の状態に特有の1又は2以上の症状を評価するためにユーザによって選択された患者質問票300の回答304に基づいて決定される。
【0046】
ステップ506において、1又は2以上の基準に基づいてスコアが確立される。これらの基準は、例えば、患者の苦痛レベルと患者の症状の重症度とを含むことができる。1つの実施形態では、苦痛レベルは、ステップ504において決定され、患者の症状の重症度は、患者質問票300においてユーザによって選択された評点306に基づいて判定されて、患者の進行性疾患の現在の状態に特有の1又は2以上の症状の重症度が評価される。1つの実施形態では、スコアは、苦痛レベル(すなわち、選択された各回答304)及び患者の症状の各重症度(すなわち、評点306)を等級値と関連付けて、選択された回答の等級値と選択された評点とを組み合わせて(例えば、乗算して)、各質問に関するスコアを決定することによって確立される。各質問に関するスコアは、組み合わされて(例えば、追加されて)、患者質問票300の最終スコアが決定される。
【0047】
ステップ508において、致命的又は致死的な進行性の病気の臨床経過及び患者の苦痛レベルに適した1又は2以上の患者ケアサービスが、スコアに基づいて選択される。1又は2以上の患者ケアサービスは、1又は2以上の閾値に基づいて決定することができる。
【0048】
1つの実施形態では、1又は2以上の患者ケアサービスは、スコアに基づくケアの積極性及び治療の積極性に基づいて、固定費用、又は治療方針、治療意図もしくはこれら両方に基づいて、患者に関連する予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策のグループから予め決められた患者ケアサービスの方策を選択することによって決定される。治療方針は、治癒的治療、進行を遅らせる治療、又は緩和治療を含むことができる。1つの実施形態では、患者は、患者個人健康情報を含むデータに基づいて患者をノードアドレス(すなわち、CNA)に分類することによって、予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策に関連付けられ、このノードアドレスは、変数のセットを表す。一例では、変数のセットは、データ内の患者の属性と照合されて、患者がノードアドレスに分類される。ノードアドレスは、予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策に関連する。ノードアドレスは、変数のセットを表すプレフィックス、中間値、及びサフィックスを含む離散的区切り付数字列として表すことができる。1つの実施形態では、予め決められた患者ケアサービスの1又は2以上の方策の各々は、予め決められた費用に関連する。
【0049】
1つの実施形態では、患者個人健康情報を含む更新データを受け取ることができ、ステップ502から508が、この更新データに対して繰り返されて、更新スコアが決定されて、1又は2以上の患者ケアサービスのうちの別の1つが、この更新スコアに基づいて決定できる。
【0050】
本明細書に記載のシステム、装置、及び方法は、書類の形態で実施することができる。例えば、図2の入力204は、手書きのメモ及び患者カルテ上の図面を含むことができる。患者カルテは、書類上で分析されて、1又は2以上の患者ケアサービスの出力210が決定できる。
【0051】
追加的に又は代替的に、本明細書に記載のシステム、装置、及び方法は、デジタル回路を使用して、又は公知のコンピュータプロセッサ、メモリユニット、記憶装置、コンピュータソフトウェア、及びその他のコンポーネントを使用する1又は2以上のコンピュータを使用して実装することができる。コンピュータは、典型的に、命令を実行するためのプロセッサと、命令及びデータを格納するための1又は2以上のメモリとを含む。コンピュータはまた、例えば1又は2以上の磁気ディスク、内部ハードディスク及びリムーバブルディスク、光磁気ディスク、光ディスクなどの1又は2以上の大容量記憶装置を含むこと、又はそれらに結合することができる。
【0052】
本明細書に記載のシステム、装置、及び方法は、クライアントサーバ関係で動作するコンピュータを使用して実装することができる。このようなシステムでは、クライアントコンピュータは、典型的に、サーバコンピュータから離れて位置しており、ネットワーク経由で相互作用する。クライアントサーバ関係は、それぞれクライアントコンピュータ及びサーバコンピュータ上で動作するコンピュータプログラムによって規定されて制御することができる。
【0053】
本明細書に記載のシステム、装置、及び方法は、ネットワークベースのクラウドコンピューティングシステム内で実装することができる。このようなネットワークベースのクラウドコンピューティングシステムでは、ネットワークに接続されているサーバ又は別のプロセッサが、ネットワーク経由で1又は2以上のクライアントコンピュータと通信する。クライアントコンピュータは、例えば、クライアントコンピュータ上に存在して動作するネットワークブラウザアプリケーションを介してサーバと通信することができる。クライアントコンピュータは、サーバ上にデータを格納し、ネットワーク経由でデータにアクセスすることができる。クライアントコンピュータは、ネットワーク経由でデータ要求又はオンラインサービス要求をサーバに送信することができる。サーバは、要求されたサービスを実行して、クライアントコンピュータにデータを提供することができる。サーバはまた、クライアントコンピュータに、例えば、計算を実行させること、特定のデータを画面に表示させることなどの特定の機能を実行させるように適合したデータを送信することができる。例えば、サーバは、クライアントコンピュータに、図5のステップのうちの1又は2以上を含む、本明細書に記載の方法ステップのうちの1又は2以上を実行させるように適合したデータを送信することができる。図5のステップのうちの1又は2以上を含む本明細書に記載の方法の特定のステップは、サーバによって、又はネットワークベースのクラウドコンピューティングシステム内の別のプロセッサによって実行することができる。図5のステップのうちの1又は2以上を含む本明細書に記載の方法の特定のステップは、ネットワークベースのクラウドコンピューティングシステム内のクライアントコンピュータによって実行することができる。図5のステップのうちの1又は2以上を含む本明細書に記載の方法のステップは、サーバによって、及び/又はネットワークベースのクラウドコンピューティングシステム内のクライアントによって、任意の組み合わせで実行することができる。
【0054】
本明細書に記載のシステム、装置、及び方法は、プログラム可能なプロセッサによって実行されるように、例えば非一時的機械可読記憶装置などの情報記憶媒体で有形に具体化されたコンピュータプログラム製品を使用して実装でき、図5のステップのうちの1又は2以上を含む本明細書に記載の方法ステップは、このようなプロセッサにより実行可能な1又は2以上のコンピュータプログラムを使用して実装することができる。コンピュータプログラムは、コンピュータにおいて特定の動作を実行する又は特定の結果をもたらすのに直接又は間接的に使用できるコンピュータプログラム命令のセットである。コンピュータプログラムは、コンパイル又は解釈実行される言語を含む、任意の形式のプログラミング言語で記述でき、コンピュータプログラムは、スタンドアロンプログラムとして、又はコンピューティング環境で使用されるのに適したモジュール、コンポーネント、サブルーチン、又はその他のユニットとしての形態を含む任意の形態で展開することができる。
【0055】
本明細書に記載のシステム、装置、及び方法を実装するために使用できる例示的なコンピュータの高レベルブロック図600図6に示されている。コンピュータ602は、データ記憶装置612及びメモリ610に動作可能に結合されたプロセッサ604を含む。プロセッサ604は、このような動作を規定するコンピュータプログラム命令を実行することにより、コンピュータ602の全体的な動作を制御する。コンピュータプログラム命令は、データ記憶装置612又は他のコンピュータ可読媒体に格納されて、コンピュータプログラム命令の実行が求められるときにメモリ610にロードすることができる。従って、図5の方法ステップは、メモリ610及び/又はデータ記憶装置612に格納されたコンピュータプログラム命令によって規定されて、コンピュータプログラム命令を実行するプロセッサ604によって制御することができる。例えば、コンピュータプログラム命令は、図5の方法ステップを実行するように当業者によってプログラムされたコンピュータ実行可能コードとして実装することができる。従って、プロセッサ604は、コンピュータプログラム命令を実行することにより、図5の方法ステップを実行する。また、コンピュータ602は、ネットワーク経由で他のデバイスと通信するための1又は2以上のネットワークインタフェース606を含むこともできる。コンピュータ602はまた、コンピュータ602とのユーザ対話を可能にする1又は2以上の入出力デバイス608(例えば、ディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカ、ボタンなど)を含むこともできる。
【0056】
プロセッサ604は、汎用マイクロプロセッサ及び専用マイクロプロセッサの両方を含むことができ、コンピュータ602の唯一のプロセッサ又は複数のプロセッサのうちの1つとすることができる。プロセッサ604は、例えば、1又は2以上の中央処理装置(CPU)を含むことができる。プロセッサ604、データ記憶装置612、及び/又はメモリ610は、1又は2以上の特定用途向け集積回路(ASIC)及び/又は1又は2以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含むこと、それらにより補完すること、又はそれらに組み込むことができる。
【0057】
データ記憶装置612及びメモリ610は、各々、有形の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。データ記憶装置612及びメモリ610は、各々、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダブルデータレート同期ダイナミックランダムアクセスメモリ(DDR RAM)などの高速ランダムアクセスメモリ、又はその他のランダムアクセスソリッドステートメモリデバイスを含むことができ、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの1又は2以上の磁気ディスク記憶装置、光磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリデバイス、又は消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク読み出し専用メモリ(DVD-ROM)ディスクなどの半導体メモリデバイス、又はその他の不揮発性固体記憶装置などの不揮発性メモリを含むことができる。
【0058】
入出力デバイス608は、プリンタ、スキャナ、ディスプレイ画面などの周辺機器を含むことができる。例えば、入出力デバイス608は、ユーザへの情報を表示するための陰極線管(CRT)又は液晶ディスプレイ(LCD)モニタなどの表示デバイスと、キーボードと、ユーザがコンピュータ602に入力を提供できるマウス又はトラックボールなどのポインティングデバイスとを含むことができる。
【0059】
図1のコンピューティングデバイス102、患者分析システム106、及びEMRデータベース108、図2の患者分析システム202のコンポーネント、及び図4のCOTAモジュール402を含む、本明細書に記載のシステム及び装置の何れか又は全ては、コンピュータ602などの1又は2以上のコンピュータを使用して実装することができる。
【0060】
当業者であれば、実際のコンピュータ又はコンピュータシステムの実装形態は、他の構造を有することができ、同様に他のコンポーネントを含むことができること、及び図6は、説明のための、コンピュータのコンポーネントの一部の高レベル表現であることを認識するであろう。
【0061】
前述の詳細な説明は、限定的でなく、あらゆる点で説明的で例示的であると理解すべきであり、本明細書で開示する本発明の範囲は、詳細な説明からではなく、特許法で許可されている完全な権利の幅に従って解釈される特許請求の範囲によって定まる。本明細書に示し説明した実施形態は、単に説明した本発明の原理を例示するものであり、当業者であれば、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく様々な修正を実施できることを理解されたい。当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、他の様々な特徴の組み合わせを実装することができる。
【符号の説明】
【0062】
100 通信システム
102-A、102-N コンピューティングデバイス
104 ネットワーク
106 患者分析システム
108 EMRデータベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6