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特許7212633二重微細組織部品の改良型の製造のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】二重微細組織部品の改良型の製造のための方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 7/06 20060101AFI20230118BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
B22F7/06 D
B22F3/10 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019562587
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2018064535
(87)【国際公開番号】W WO2018220213
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】1754877
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1853418
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】306047664
【氏名又は名称】サフラン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リシャール,セバスチャン・ジャン
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-299106(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02233232(EP,A1)
【文献】米国特許第03717442(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未焼結部品と呼ばれる未焼結材料(10、12)からなる少なくとも2個の部品を結合するための方法であって、
未焼結の一体型組立体を形成するように、少なくとも2個の未焼結部品(10、12)を前記部品の接合領域(14)において組み立てるステップと、
未焼結の一体型組立体を脱バインダ処理するステップと、
最終部品(1)を形成する緻密な一体型組立体を得るように、一体型組立体を焼結するステップと、
を備え、
異なる粒径を有する少なくとも2個の部品を有する最終部品(1)を製造するように、2個の未焼結部品(10、12)がそれぞれ、異なる粉末組成を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
少なくとも2個の未焼結部品(10、12)が、異なる粒度分布を有する粉末組成を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
未焼結部品(10、12)が、16μm未満、25μm未満または45μm未満のD90を有する粉末を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2個の未焼結部品(10、12)が、異なる粉末化学組成を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
結合ビード部(16)が接合領域(14)の形状に沿って延び、かつ、均一な未焼結の一体型組立体を形成するように、結合ビード部(16)を未焼結部品に追加するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
結合ビード部(16)が、未焼結部品の組成に類似した組成を有することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
結合ビード部と組み立てようとする未焼結部品とが、同一の組成を有することを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
2個の未焼結部品はそれぞれ粉末の粒度あるいは化学組成が異なり且つ同じ比率の充填剤を含む混合物から製造される、請求項1に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「成形した後で脱バインダ処理する」方法によって金属部品またはセラミック部品、例えば、PIM(粉末射出成形)法、特に、共焼結によって結合する方法による、金属部品またはセラミック部品の製造の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
それ自体が公知の従来の方法においては、「成形した後で脱バインダ処理する」形式の方法、特にPIM法による部品の製造は、
フィードストックまたは「未焼結」材料を用意するステップ、
成形ステップ(「未焼結」部品を得るステップ)、
脱バインダ処理ステップ、および
焼結ステップ(緻密な部品)
という4つのステップを含む。
【0003】
成形は例えば、3Dプリントによって実施されることも可能であるし、または、特定の場合のPIM法においては、成型によって実施されることもあり得る。フィードストック(未焼結材料)を用意するステップは、主に製造しようとする部品を形成する1種以上の金属材料および/またはセラミック材料の粉末と、ポリマーベースを含有の1種(以上)の熱可塑性バインダとを混合するステップからなる。このステップは一般に、混合物の良好な均一性を確保するために、ミキサーおよび/または押出機を使用して、高いせん断速度で実施される。将来の部品の凝集を確実するために、比較的多量の粉末が1種以上のバインダ中に取り込まれていなければならない。混合物が多すぎる粉末を含む場合、この結果として、高すぎる粘度をもたらし、これにより、成型ステップを困難にし、クラックの出現を促す。対照的に、混合物が多すぎるバインダを含む場合、製造使用とする部品が脱バインダ処理ステップ中に崩れる危険性が高まる。
【0004】
PIM法の場合、成型ステップは、プラスチック産業における射出プレスに類似した射出プレスの中に、フィードストック(従来は顆粒の形態)を配置することからなる。「成形した後で脱バインダ処理する」形式に属する他の方法の場合、この成型ステップは特に、3Dプリントであってよい。次いで、緻密な(最終)部品に所望される形状をすでに実質的に有する、未焼結部品と呼ばれる部品が得られる。
【0005】
脱バインダ処理ステップは、当該1種以上の熱可塑性バインダの種類に適応させた方法によって、1種以上の熱可塑性バインダを除去することからなる。このステップが不完全に制御される場合、この脱バインダ処理ステップは、欠陥、例えばクラックまたは化学物質による汚染の出現により、製造中の部品が損傷する原因になる可能性がある。脱バインダ処理ステップが終了したとき、部品は多孔性である。
【0006】
焼結ステップは、最終部品を得るために、脱バインダ処理済みの未焼結部品を凝固させ、緻密化することからなる。したがって、部品は加熱されるが、この凝固および緻密化には、フィードストックの初期組成に依存する体積収縮が伴われる。このステップは、高温において実施されるが、脱バインダ処理済みの未焼結部品が完全には溶融されないように実施され、熱の影響により、材料のグレインが結合される。固相で焼結すること(部品の材料のすべてが、固体形態である)と、液相(部品の材料の一部が、融点に達している)中で焼結することとは、区別される。焼結ステップが終了したときには、最終部品である緻密な部品が得られる。
【0007】
別個の事柄としてさらには、航空機産業は、この数年間で格段の進歩がなされており、例えば航空機のエンジンまたはヘリコプターのタービン部品を形成する材料の温度特性を高めることを可能にしている。しかしながら、達成される温度の上昇は限定的なままであり、所与の材料の化学組成および微細組織は、単独では、仕様および技術的な必要性によって設定される目的を達成することができないと認められ始めている。
【0008】
これは、(所与の材料から形成された)部品の性能が、最適化された均一な微細組織を求めて、要求される様々な機械的特性間の最良の兼ね合いをもたらす、当該部品の能力に依拠するためである。さらに、これらの特性は、両立しないことが多い。
【0009】
現在の材料の限界を押し上げる手段は、エンジン部品の微細組織を、部品の環境で前記部品にかかる局所応力に適合させることである。
【0010】
これは、二重微細組織(dual microstructure)(部品のある部分の化学組成または粒径と、別の部分の化学組成または粒径とが異なる)または勾配を有する(部品に沿って次第に変化していく粒径または化学組成を有する)微細組織を同じ部品に生成することになる。例えば、タービンエンジンの中で最も熱機械的な応力を受ける部品の1つであるタービンディスクの場合は、適度な温度におけるトラクション特性および疲労特性を求めて、ディスク開口部として、いわゆる「細粒」組織を有することと、高温における最良のクリープ特性およびクラック特性を得るために、同じディスクのリムに、いわゆる「大粒」組織を有することとが必要である。
【0011】
現在、勾配のある構造(または二重構造)を有する部品を製造するために知られた最良の方法は、例えば欧州特許出願公開第3037194号明細書において示されたような熱処理である。しかしながら、この熱処理は、微細組織が改変されてはならない部品の区域に比較して、微細組織を改変する必要がある部品の区域の正確な場所に対する精度が不十分な可能性がある。さらに、エラーが起きた場合、部品全体が廃棄処分されるべきであるが、これにより、高い代償を伴う損失が発生する可能性がある。
【0012】
さらに、PIMにおいて使用される(二重微細組織を有する最終部品を作製するための)オーバーモールド法は、射出ステップ中に用いられる圧力が、オーバーモールドすべき未焼結部品を壊すことが事実上不可能なものであるため、非常に制限されている。より大まかに言うと、着目される「成形した後で脱バインダ処理」する方法にかかわらず、一旦着目される構造用部分組立体の様々な部品が仕上げられたら、より大きなサイズの構造用部分組立体を組み立てることは、困難である。
【0013】
PIM法(または「成形した後で脱バインダ処理する」形式に属する任意の他の方法)の利点の1つは、相異なる部品を共焼結する可能性であり、すなわち、焼結ステップの上流上で異なる部品を組み立て、これによって、焼結に並行させて相異なる部品の結合も達成する可能性である。これは例えば、直接成形するには幾何学的形状が複雑すぎる部品を製造することを可能にしており、したがって、過度に複雑なこれらの部品を分解して、形成が容易であり、後で、焼結ステップ中に結合されることになる、単位部品からできた部分組立体に変えることが可能である。様々な未焼結部品は、焼結ステップの前に、未焼結状態で直接組み立てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】欧州特許出願公開第3037194号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明が克服することを目的とする技術的な課題は、「成形した後で脱バインダ処理する」形式の方法、特にPIM法によって、エンジン部品の微細組織を局所的に適応させる必要性に応えて、エンジン部品を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明は、未焼結部品と呼ばれる未焼結材料からできた少なくとも2個の部品を結合する方法であって、
未焼結の一体型組立体を形成するように、少なくとも2個の未焼結部品を前記部品の接合領域において組み立てるステップと
未焼結の一体型組立体を脱バインダ処理するステップと、
最終部品を形成する緻密な一体型組立体を得るように、一体型組立体を焼結するステップと
を備え、
異なる粒径を有する少なくとも2個の部品を含む最終部品を生じさせるように、2個の未焼結部品がそれぞれ異なる粉末組成を有することを特徴とする、
方法を提案する。したがって、この方法は、異なる粒度分布または異なる化学的性質を有する粉末を含有し、これにより、共焼結後には、二重微細組織を有する単一の部品を得ることができる、同じ比率の充填剤を有するフィードストックから形成された2個の未焼結部品の共焼結の使用を利用することを可能にする。
【0017】
ここでの「粒度分布」という用語は、フィードストックに含まれる粉末の粒子のサイズを表すために使用されており、「粒径」は、微細組織にある特徴的な要素を表すために使用されていることを、ここで述べておく。これらの2種の量は、演繹的には、互いに対していかなる関連性もない。
【0018】
主張されている本方法の別の利点は、結合すべき異なる部品に起因する組立体の健全性のモニタリングが、脱バインダ処理ステップ(したがって、焼結ステップ)の上流側において実施されることが可能なことである。したがって、廃棄処分するとき、発生する損失は度合いが減じており、理由としては、組立ステップが、当該ステップを経ると、すでに脱バインダ処理済み、またはすでに焼結済みの未焼結だった部品とは著しく異なり、製造中の部品の付加価値が低いステップであるという点がある。脱バインダ処理または焼結の後に検出された欠陥は、付加価値が高い部品の廃棄につながり、この廃棄は、経済的な観点において害悪である。
【0019】
本発明による結合方法は、互いに対して独立に利用される、または互いを組み合わせて利用される以下の特徴またはステップの内の1種以上を含むことができる:
少なくとも2個の未焼結部品が、粒度分布が異なる粉末組成を有すること、
少なくとも2個の未焼結部品が、16μm未満、25μm未満または45μm未満のD90を有する粉末を含むこと、
少なくとも2個の未焼結部品が、異なる粉末化学組成を有すること。
【0020】
本発明による結合方法は、
少なくとも2個の未焼結部品を、これらの部品の接合領域において接触させるステップと、
結合ビード部が接合領域の形状に沿って延び、かつ、均一で未焼結の一体型組立体を形成するように、結合ビード部を未焼結部品に追加するステップと、
未焼結の一体型組立体を脱バインダ処理するステップと、
最終部品を形成する緻密で均一な一体型組立体を得るように単一部材型組立体を焼結するステップと
を連続するステップとして含むこともできる。
【0021】
この本発明の方法の代替形態は、従来技術に対していくつかの利点を有し、特に、接合領域の表面がもはや、制限を加える特徴、または可能性としてはあり得る脆弱性の発生源ではないという利点を有する。これは、結合ビード部を追加することが、必要に応じて結合部(接合領域)の表面を拡張することを可能にするためである。さらに、接触させる対象の表面同士はもはや、例えば機械加工によって、上流側において調製される必要がなく、すなわち、接触させる対象の表面同士は、結合ビード部が、接触するあらゆる欠陥に対処するため、完全に協同する必要がない。
【0022】
本発明による結合方法は、互いに対して独立に利用される、または互いを組み合わせられた状態で利用される、以下の特徴またはステップの内の1種以上を含むことができる:
脱バインダ処理ステップに先行して、結合ビード部を再加工するように機械加工するステップ、
結合ビード部が、未焼結部品の組成に類似した組成を有すること、
組み立てようとする未焼結部品どうしが、同一の組成を有すること、
結合ビード部と未焼結部品とが、同一の組成を有すること、
結合ビード部を追加することが、射出スクリューによって実施され、射出スクリューにある1個のノズルが、軟化済みの未焼結材料から製造された溶接ビード部を堆積させるように、接合領域に向いていること、
結合ビード部を追加することが、接合領域と接触した状態で固体状の未焼結材料からできたストリップを位置決めし、ホットエアガンによってこのストリップを加熱することによって、実施されること、
結合ビード部を追加することが、自動化されていること。
【0023】
本発明は、本明細書において上述された方法によって組み立てられた少なくとも2個の部品を含む、最終部品を形成する緻密な一体型組立体であって、最終部品が、異なる粒径を有する少なくとも2個の部分を有するように、2個の未焼結部品が、異なる粉末組成を有することを特徴とする、最終部品を形成する緻密な一体型組立体にも関する。
【0024】
本発明による最終部品は、異なる粉末化学組成または異なる粒度分布を有する粉末組成を有する未焼結部品を含むこともできる。
【0025】
焼結済みの部品は後で、二重微細組織がすでに生成されているため、実施が簡単である、標準的で均一な熱処理を経て生じることが可能である。
【0026】
添付の図面を参照しながら、非限定的な例として与えられた下記の記述を読めば、本発明はより深く理解され、本発明に関する他の詳細、特徴および利点もより明確に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】微細組織が差異化されなければならない2つの部分を有する、部品の斜視図である。
図2】主張されている本方法の第1の代替形態によって結合すべき2個の部品の間に結合ビード部を追加するステップの斜視図である。
図3】主張されている本方法の第2の代替形態による、結合すべき2個の部品の間に結合ビード部を追加するステップの斜視図である。
図4図2および図3の代替形態の内の一方または他方による、均一で未焼結の一体型組立体の断面模式図である。
図5】本明細書の上記において示された代替形態の内の一方または他方による、機械加工するステップ後の均一で未焼結の一体型組立体の断面模式図である。
図6】共焼結する従来技術による方法によって得られた、最終部品の断面模式図である。
図7】主張されている本方法の代替形態の内の一方または他方によって得られた、最終部品の断面模式図である。
図8】意図して拡大された状態で図示されている、微細組織が差異化された図1の部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本出願において、「フィードストック」または「未焼結材料」という用語は、
製造しようとする部品を形成する少なくとも1種の金属および/またはセラミック材料と、
ポリマーベースを含有する1種(以上)の熱可塑性バインダと、
の混合物を意味する。
【0029】
この混合物は従来、顆粒の形態を有する。
【0030】
さらに、本出願において、「未焼結部品」という用語は、すでに成形されているが、まだ脱バインダ処理されていない、製造プロセスの最中にある部品を意味する。したがって、この未焼結部品は、緻密な最終部品の大まかな形状を有するが、まだ焼結ステップを受けていないため、まだ最終的な寸法を有さない。焼結ステップは、体積収縮と呼ばれる現象を伴うが、この体積収縮とは、部品の寸法の減少を必然的に伴う、寸法収縮現象である。この体積収縮は、フィードストックの初期組成、特に、前記フィードストック中におけるフィラーの比率に依存する。配合物中において、フィラーは、機械的手段によってマトリックス中に分散された、固体状の非混和性物質である。したがって、フィラーの比率は、フィードストック中における粉末の体積に対応する。
【0031】
図1において見てとることができるように、使用者は、相異なる微細組織を有する2個の部品(または部品10、12)を含む最終部品1を製造しようとしている。
【0032】
例えば、使用者は、表面上には(例えば、疲労の影響下でクラックが開始するのを遅らせるために)小さなグレインを有し、部品の残り部分には(例えば、クリープに対する抵抗性を得るために)より大きなグレインを有する、最終部品1を得ようとしている。
【0033】
ここで提示された方法による製造法は、粗大な粉末粒度分布を備えるフィードストックを使用して第1の未焼結部品10を成形することと、より微細な粒度分布を備えるフィードストックを使用して第2の未焼結部品12を成形することとからなる(図8を参照されたい)。2個の部品10、12は、本明細書の上記において提示された成型ステップ(または成形ステップ)で終わる、PIM法(または、例えば3Dプリント方式である、未焼結部品を成形するための任意の他の方法)によって製造される。
【0034】
したがって、2個の未焼結部品10、12は、未焼結の一体型組立体を形成するように、これらの未焼結部品10、12の接合領域14のところに組み立てられる。この未焼結状態の組立は特に、本明細書の下記において詳細に説明されているように、未焼結材料製の結合ビード部を追加することによって実施されることが可能である。
【0035】
図2および図3において見てとることができるように、使用者は、2個の部品、例えば、プレート10および中空シリンダー12を結合しようとしている。2個の部品10と12は、いわゆる「未焼結」部品であり、すなわち、本明細書の上記において言及されたように、脱バインダ処理ステップをまだ通過していない。
【0036】
したがって、2個の未焼結部品10、12は、これらの2個の未焼結部品10、12の接合領域14において接触させる。フィードストック中にある結合ビード部16自体は、結合ビード部16が接合領域14の形状に沿って延びるように、未焼結部品10、12に追加される。その後、組立体は、均一な未焼結の一体型組立体を形成する。
【0037】
図2に示された実施形態によれば、結合ビード部16の堆積は、射出スクリュー18にあるノズル20が接合領域14に向いている、射出スクリュー18を使用して実施される。ノズル20の出口温度は、未焼結部品10、12の成型ステップ中の射出温度と実質的に同じである。例えば、本出願人によって今日使用されているフィードストックであるInconel718(R)の場合、ノズル20の温度は、190℃である。本方法のより良好な制御のために、射出スクリュー18が、本方法の自動化を可能にする制御ユニット24に接続された、ロボットアーム22に取り付けられていてもよい。
【0038】
図3に示された実施形態によれば、結合ビード部16を追加することは、次の2つのステップで実施される:
第一に、固体状未焼結材料製のストリップ26を接合領域14と接触させ、
第二に、ストリップ26の材料を軟化させて結合ビード部16を形成するように、前記固体状未焼結材料製のストリップ26が、ホットエアガン28によって加熱される。
【0039】
前述の実施形態に関しては、ホットエアガン28は、制御ユニット24に接続されたロボットアーム24に固定されていてもよい。このホットエアガン28の固定は、本明細書の上記において言及されたように、結合ビード部16を追加するステップのより良好な制御を可能にする。
【0040】
配合物Inconel718(R)からできた未焼結材料に関しては、ホットエアガン28の出口の空気温度は、100℃超でなければならない。
【0041】
2個の未焼結部品10、12は、同一の組成を有することもできるし、または、後述されるように、異なる組成を有してもよい。結合ビード部16に関しては、結合ビード部16は、組み立てようとする2個の部品10、12の組成に類似した組成を有することが可能であり、または、組み立てようとする2個の部品10、12の組成と同一の組成を有することが可能である(2個の部品10、12自体は、同一の組成を有することを条件とする)。
【0042】
類似した組成とは、
焼結ステップ中において、均一で未焼結の一体型組立体にある他の成分10、12、16のそれぞれに同一の(または実質的に同一の)体積収縮を起こすための、均一で未焼結の一体型組立体にある他の成分10、12、16の組成と同じ比率のフィラーと、
均一で未焼結の一体型組立体にある他の成分10、12、16の緻密化速度と同一の(または実質的に同一の)緻密化速度と、
均一で未焼結の一体型組立体にある他の成分10、12、16の焼結範囲と適合する焼結範囲と
を有する、組成を意味する。
【0043】
結合ビード部16の追加に続いて、本方法は、機械加工ステップを含むことができる:結合ビード部16が未焼結状態であるとき、結合ビード部16は、脱バインダ処理ステップの前であっても、図4および図5に示されたようにある半径またはある特定の形状を付与するために、機械加工によって直ちに再加工されることが可能である。
【0044】
脱バインダ処理前に機械加工する利点は、より硬い最終部品を機械加工する場合に比べて必要とするエネルギーが少ないことである。さらに、付加価値がより低い未焼結部品を対象にした機械加工のエラーは、付加価値が高い最終部品を対象にした機械加工のエラーの場合より与える影響が小さい。
【0045】
さらに、図6および図7において見てとることができるように、本出願において記述された方法は、PIM部品を結合するときに、接合領域14が、組み立てようとする部品10、12と接触している初期表面30、32のすべてによって範囲が定められることを必然的に伴う、従来技術から知られた共焼結によって課される制約の克服を可能にする(図6を参照されたい)。本出願の方法によって提案された解決法により、結合ビード部16と、組み立てようとする部品10、12との間にある接触面34、34’、36、38が、接合領域14を構成する(図7を参照されたい)。したがって、以前は2つの接触面30、32のみがあった場所には、4つの接触面34、34’、36、38が存在する。これらの4つの接触面34、34’、36、38が存在することから生じる直接的な利点は、結合後の接合領域14の機械的強度が改善されることである。
【0046】
したがって、結合ビード部16の追加後、均一な単一部材型組立体は、2個の部品10、12および結合ビード部16を含む最終部品1(図5を参照されたい)を一体的に形成する。接合領域14は、少なくとも4つの表面34、34’、36、38(第1の表面36は、第1の部品10に属し、第2の表面38は、第2の部品12に属し、第3および第4の表面34、34’は、結合ビード部16に属する)を含み、焼結するステップ中には、第1の表面36が第3の表面34と協同し、第2の表面38が第4の表面34’と協同し、最終部品1の機械的強度の補強を可能にする。
【0047】
さらに、本明細書の上記において言及されたように、接触している未焼結部品10、12の表面30、32の共焼結は、必要ではない。すなわち、接合領域14の形状に沿って延びるように第2のステップにおいて追加された、結合ビード部16の表面34、34’と接触している未焼結部品10、12の表面36、38の共焼結によって結合が実施されるため、結合すべき異なる表面34と、表面34’と、表面36と、表面38との接触は、満足なものであり、焼結ステップの上流側における調製を必要としない。
【0048】
結合ビード部16の追加および可能性としてあり得る機械加工に続いて、均一で未焼結の一体型組立体は脱バインダされた後、図7および図8において見てとることができるような、最終部品である均一で緻密な一体型組立体を得るように焼結される。
【0049】
したがって、本出願において記述された組み立てられた未焼結部品を製造する完全な方法の一例に関する説明は、例えば、Inconel718(R)製の部品の場合におけるものであり、すなわち、
組み立てようとする部品、例えば別々になった2個の部品10、12を射出し、
Inconel718(R)製の結合ビード部16を追加することによって、本出願において主張された方法による部品10、12を組み立て、
必要に応じて、可能性としてはあり得る機械加工による再加工を、接合領域14において行い、
Inconel718(R)に関して規定された従来のプロトコルに従って脱バインダ処理し、
Inconel718(R)に関して規定された従来の方法に従って焼結する。
【0050】
焼結の最中、第2の未焼結部品12に対応する粒度分布がより微細な粉末を含む一体型組立体の部分は、より微細なグレインを有するが、第1の未焼結部品10に対応する粒度分布がより大きな粉末を含む最終部品1の部分は、より大きなグレインを有する(図8を参照されたい)。
【0051】
2個の未焼結部品10、12が、すでに異なる粒度分布を有するため、焼結済みの一体型組立体は、後で、標準的で均一な熱処理を経て生じることが可能であり、二重微細組織が、焼結ステップにおいて生成される。
【0052】
同じ種類の結果は、未焼結部品10、12のそれぞれの粒度分布ではなく、未焼結部品10、12のそれぞれの粉末の化学組成を変更することによって、得られることが可能であり、例えば、炭素含量を変更可能なニッケルベースの超合金を使用することによって、得られることが可能である。この種類の超合金においては、炭素が炭化物の形態で析出するが、この析出炭素の含量は多かれ少なかれ、焼結中のグレインの巨大化を妨害する。
【0053】
特に、第1の化学的性質を有する粉末を含む第1のフィードストック(第1の部品10)、および第2の化学的性質を有する粉末を含む第2のフィードストック(第2の部品12)の使用による。これは、例えば、第1の化学的性質を有する粉末である炭素の比率が高いRene77(R)製の合金、および、第2の化学的性質を有する粉末である炭素含有量が低いRene77(R)製の合金であり得る。したがって、Rene77(R)に関しては炭素含量が、焼結中のグレインの巨大化に影響を与えることにより、二重組織を有する、焼結された一体型組立体が得られる。
【0054】
様々な実施形態が、異なる粒度分布を有する最終部品1を得ることを可能にする。例えば、16μm未満、25μm未満または45μm未満のD90を有するInconel718(R)の粉末を用いる。例えば660ppmの炭素または160ppmの炭素を含有するRene77(R)の利用によって、異なる化学組成を有する2種の粉末の場合を考慮することも可能である。これらのD90の測定値は、別々に利用される、各部品を形成するフィードストック中に使用された粉末の粒度分布に関連する。
【0055】
パラメータD90は、部品を構成する粒子のサイズの分布曲線上のポイントを表している。この特定のポイントは、着目される部品の総体積に対して90%の粒子が、どのサイズを有するのかを指し示している。例えば、D90が844nmである場合、着目される部品の粒子の内の90%は、844nm以下の直径を有し、したがって、着目される部品の粒子の内の10%は、より大きなサイズを有する。この測定は特に、レーザー回折によって実施されることが可能である。従来、ある部品の粒度分布をキャラクタリゼーションするために、D10、D50およびD90が測定される。D10は常にD50より小さく、D50はD90より小さい。これらの値が近いほど、粉末の粒子のサイズがより均一になっていく。
【0056】
技術的な制限事項は、異なる2種のフィードストック(未焼結部品10、12)を使用して未焼結状態の最終部品1を成形することにある。実際、これらの2種のフィードストックが、類似したフィラーの比率(粉末/バインダの比率)を有し、これにより、焼結中の未焼結部品10、12のそれぞれと同一または実質的に同一である体積収縮を保証することが、重要である。
【0057】
未焼結部品10、12の焼結範囲が適合し合うことも、必要とされる。
【0058】
未焼結部品10および12の成形が、2個の未焼結部品10、12の間にある接合部に健全な界面14を得ることを可能にすることも、確実にされなければならない。
【0059】
本出願において記述された組み立てられた未焼結部品を製造する完全な方法に関する説明は例えば、Inconel718(R)製の部品を用いて実施され、すなわち、
組み立てようとする部品、例えば、一方の部品が粒度分布Aを有し、他方の部品が粒度分布Bを有する、別々になった2個の部品10、12を射出し、
本出願において主張された方法によって、部品10、12を組み立て、
必要に応じて、可能性としてはあり得る機械加工による再加工を、接合領域14において行い、
Inconel718(R)に関して規定された従来のプロトコルに従って脱バインダ処理し、
Inconel718(R)に関して規定された従来のプロトコルに従って焼結する。
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