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特許7212646歯科治療装置用の電気コードおよび対極付き電気コード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】歯科治療装置用の電気コードおよび対極付き電気コード
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20230118BHJP
   A61C 5/40 20170101ALI20230118BHJP
【FI】
A61C19/04 A
A61C5/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020094460
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021186245
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】川上 誠二
(72)【発明者】
【氏名】大川 真一
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-035009(JP,A)
【文献】特表2000-515398(JP,A)
【文献】特開平11-244304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/04
A61C 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科治療装置用の電気コードであって、
前記歯科治療装置は、第1対極と第2対極と第3対極とを用いて患者に対する歯科の高周波治療を行うことができるように構成されており、
前記歯科治療装置に接続される共通の接続端子と、
前記第1対極の端子が脱着可能に接続される第1端子と、
前記第2対極の端子が脱着可能に接続される第2端子と、
前記第3対極の端子が脱着可能に接続される第3端子と、
前記接続端子と、前記第1端子、前記第2端子および前記第3端子とをそれぞれ接続する第1ケーブル、第2ケーブルおよび第3ケーブルと、を備え、
前記接続端子を基端部として、前記第1ケーブルと、前記第2ケーブルおよび前記第3ケーブルの束とが分かれており、前記第2ケーブルおよび前記第3ケーブルは、少なくとも、先端側において分かれている、電気コード。
【請求項2】
記第3対極は、前記患者の患部に当接されるファイルと前記ファイルを保持するファイルホルダとを含み、
前記第1対極は、前記患者の体の一部に当接されて前記ファイルと前記患者とを含む高周波発生回路を形成する高周波用第1対極であり、
前記第2対極は、前記患者の体の一部に当接されて前記ファイルと前記患者とを含む根管長測定回路を形成する高周波用第2対極である、請求項1に記載の電気コード。
【請求項3】
前記第2ケーブルおよび前記第3ケーブルが分かれる分岐部よりも先端側に設けられて前記第2ケーブルおよび前記第3ケーブルを束ねる結束部を更に備え、
前記結束部と前記第2端子および前記第3端子との間では、前記第2ケーブルおよび前記第3ケーブルが互いに遊離している、請求項1または2に記載の電気コード。
【請求項4】
前記結束部は、前記第2ケーブルおよび前記第3ケーブルに沿ってスライド可能である、請求項3に記載の電気コード。
【請求項5】
前記第1対極の端子である基端が前記第1端子に着脱可能に接続され、先端に前記第1対極が取り付けられる中継ケーブルを更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気コード。
【請求項6】
前記第1ケーブルは、前記第2ケーブルよりも短く、且つ前記第3ケーブルよりも短い、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気コード。
【請求項7】
前記第2ケーブルは前記第3ケーブルよりも短い、請求項6に記載の電気コード。
【請求項8】
前記歯科治療装置は、前記患者の歯牙の根管長を測定する根管長測定機能を備え、
前記第3端子には、前記第3対極として、前記患者の患部に当接されるファイルと前記ファイルを保持するファイルホルダとが接続され、
前記第2端子には、前記第2対極として、前記患者の体の一部に当接されて前記ファイルと前記患者とを含む根管長測定回路を形成する測定用第2対極が接続される、請求項1~7のいずれか一項に記載の電気コード。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の電気コードと、
前記第1端子に接続された前記第1対極と、
前記第2端子に接続された前記第2対極と、
前記第3端子に接続された前記第3対極と、を備える、対極付き電気コード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療装置用の電気コードおよび対極付き電気コードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、特許文献1に記載された歯科治療装置が知られている。この装置では、治療工具であるファイルがファイルホルダの先端に取り付けられ、モータの駆動によってファイルを回転させる。ファイル回転駆動モードでは、ファイルの先端位置を検知しながら根管の切削拡大が行われる。高周波出力モードでは、ファイルは、患部の焼灼等の高周波治療に用いられる。ファイルを通じて高周波電流を患部に印加させる場合、ファイルの先端が歯牙の根尖付近や骨等の組織等に当てられる一方、受動電極が、歯肉や口唇等の患者の体の一部に当てられる。また、根管長の測定の際にも、受動電極は、歯肉や口唇等の患者の体の一部に当てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5619441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、歯科治療用の装置にファイルや受動電極等を接続するために、電気コードが用いられる。たとえば、装置にファイルを接続するための一本の電気コードと、装置に受動電極を接続するための別の一本の電気コードが用いられる。しかしながら、従来は、これらの電気コードに関して、ユーザにとっての使いやすさ(ユーザビリティ)に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、ユーザにとっての使いやすさを向上させることができる電気コードおよび対極付き電気コードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、歯科治療装置用の電気コードであって、歯科治療装置は、第1対極と第2対極と第3対極とを用いて患者に対する歯科治療を行うことができるように構成されており、歯科治療装置に接続される接続端子と、第1対極の端子が脱着可能に接続される第1端子と、第2対極の端子が脱着可能に接続される第2端子と、第3対極の端子が脱着可能に接続される第3端子と、接続端子と、第1端子、第2端子および第3端子とをそれぞれ接続する第1ケーブル、第2ケーブルおよび第3ケーブルと、を備える。
【0007】
この電気コードによれば、歯科治療装置と、第1対極と第2対極と第3対極とを用いて、患者に対する歯科治療が行われる。これらの第1対極と第2対極と第3対極は、本発明の電気コードを介して、歯科治療装置に接続される。電気コードは、歯科治療装置と、第1端子、第2端子および第3端子とをそれぞれ接続する第1ケーブル、第2ケーブルおよび第3ケーブルと、を備えるので、従来別々に用意されていた複数のケーブルが一体化されており、ユーザが電気コードを取り扱い易い。たとえば、電気コードの接続端子を、歯科治療装置に接続するだけで接続が完了する。よって、この電気コードによれば、ユーザにとっての使いやすさを向上させることができる。
【0008】
歯科治療装置は、歯科の高周波治療機能を備えてもよい。第3対極は、患者の患部に当接されるファイルとファイルを保持するファイルホルダとを含み、第1対極は、患者の体の一部に当接されてファイルと患者とを含む高周波発生回路を形成する高周波用第1対極であり、第2対極は、患者の体の一部に当接されてファイルと患者とを含む根管長測定回路を形成する高周波用第2対極であってもよい。この場合、ファイルおよびファイルホルダと高周波用第1対極によって、あるいは、ファイルおよびファイルホルダと高周波用第2対極によって、高周波治療に必要な所定の回路が形成される。これらの3種類の対極が1つの電気コードに接続されているため、ユーザが高周波治療を行い易い。
【0009】
上記の電気コードが、少なくとも第2ケーブルおよび第3ケーブルを束ねる結束部を更に備え、結束部と第2端子および第3端子との間では、第2ケーブルおよび第3ケーブルが互いに遊離していてもよい。第2対極と第3対極が患者の口腔部等の近い位置で用いられる場合には、第2ケーブルおよび第3ケーブルが結束部で束ねられることにより、これらのケーブルを1本のケーブルのように扱うことができ、取り扱い易い。また、結束部よりも先端側では、第2ケーブルおよび第3ケーブルが互いに遊離しているので、第2ケーブルおよび第3ケーブルを自由に動かすことができる。よって、第2対極と第3対極とを患者の体に対して自由に位置させることができる。
【0010】
結束部は、第2ケーブルおよび第3ケーブルに沿ってスライド可能であってもよい。第2ケーブルおよび第3ケーブルに沿ってスライド可能な結束部によれば、第2ケーブルおよび第3ケーブルを自由に動かすことができる範囲(長さ)を適宜に変更可能である。歯科治療の形態や患者の姿勢等に応じて、ユーザによってより使い易いケーブルの状態を作り出すための調整が可能である。
【0011】
上記の電気コードが、第1対極の端子である基端が着脱可能に第1端子に接続され、先端に第1対極が取り付けられる中継ケーブルを更に備えてもよい。この場合、中継ケーブルが第1端子に着脱可能に接続されるので、第1対極が歯科治療に必要となる場合にのみ、中継ケーブルを第1端子に接続すればよい。第1対極が歯科治療に必要でない場合には、中継ケーブルを第1端子から取り外すことで、電気コード全体をコンパクト化できる。不要なケーブルが電気コードから取り除かれるので、より一層作業性に優れる。
【0012】
第1ケーブルは、第2ケーブルよりも短く、且つ第3ケーブルよりも短くてもよい。この構成によれば、第1ケーブルに第1対極が接続されない場合に、第1ケーブルが邪魔にならない。
【0013】
第2ケーブルは第3ケーブルよりも短くてもよい。この構成によれば、第3ケーブルに接続される第3対極をユーザが動かせる範囲(空間的な領域)が広がる。一方、第2ケーブルは、必要最小限の長さとされることができる。
【0014】
歯科治療装置は、患者の歯牙の根管長を測定する根管長測定機能を備えてもよい。第3端子には、第3対極として、患者の患部に当接されるファイルとファイルを保持するファイルホルダとが接続され、第2端子には、第2対極として、患者の体の一部に当接されてファイルと患者とを含む根管長測定回路を形成する測定用第2対極が接続されてもよい。この場合、高周波治療に用いられる電気コードを、根管長測定に用いることができる。
【0015】
本発明の別の態様として、上記のいずれかの電気コードと、第1端子に接続された第1対極と、第2端子に接続された第2対極と、第3端子に接続された第3対極と、を備える対極付き電気コードが提供されてもよい。この対極付き電気コードによれば、第1対極と第2対極と第3対極とを用いて、患者に対する歯科治療が行われる。上述した理由により、ユーザにとっての使いやすさを向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高周波治療等の歯科治療を行う際における、ユーザにとっての使いやすさを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る電気コードが組み込まれた歯科治療システムの一例を示す図である。
図2図1中の電気コードを示す図である。
図3】歯科治療システムを用いて患者に対する歯科治療を行っている状態を示す図である。
図4図1中の電気コードに第1~第3対極が取り付けられた対極付き電気コードを示す図である。
図5図5(a)は第1端子に接続される中継ケーブルおよび第1対極を示す図、図5(b)は第2端子に接続される第2対極を示す図、図5(c)は第3端子に接続される第3対極を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る電気コードが組み込まれた歯科治療システムの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
まず、図1を参照して、本実施形態の電気コード10および対極付き電気コード4が組み込まれた歯科治療システムSについて説明する。歯科治療システムSは、歯科の高周波治療機能を備えた歯科治療装置1を有している。歯科治療装置1は、患者100(図3参照)の歯牙103に対する高周波治療を可能とする。高周波治療とは、歯科治療の一種であり、たとえば患部の歯牙の根管内部等を焼灼する治療である。この高周波治療としては、たとえば上述した特許文献1に記載されたものと同様である。歯科治療システムSは、歯科治療装置1と、高周波治療を行うための高周波用対極棒(第1対極、高周波用第1対極)11と、高周波用対極フック(第2対極、高周波用第2対極)12と、高周波治療器(第3対極)13とを備える。歯科治療システムSでは、これらの対極に対する電気的な接続のため、電気コード10および中継ケーブル40が用いられている。電気コード10の接続端子10aが、歯科治療装置1の第1差込み部3aに差し込まれることにより、電気コード10および中継ケーブル40が歯科治療装置1に接続されている。
【0020】
高周波治療器13は、患者100の患部である歯牙103に当接されるファイル17と、ファイル17を保持するファイルホルダ14と、ファイルホルダ14に接続されたケーブル18とを含む。ファイルホルダ14は、絶縁性材料からなり、ユーザである歯科医師の手によって把持される。ファイルホルダ14は、ベース部15と、ベース部15から突出するホルダ部16とを含む。ホルダ部16の図示しない取り付け孔部に、ファイル17が挿入され、ファイル17がファイルホルダ14によって保持される。高周波用対極棒11、高周波用対極フック12、および高周波治療器13としては、いずれも従来歯科の高周波治療に用いられていた公知の部材が適用されてよい。
【0021】
歯科治療装置1は、高周波用対極棒11と高周波用対極フック12と高周波治療器13とを用いて、患者100に対する歯科治療を行うことができるように構成されている。より具体的には、歯科治療装置1は、根管内におけるファイル17の先端の位置を検出しながら、根管内部等の患部を焼灼する。歯科治療装置1は、根管長測定器2と、根管長測定器2の背面側に取り付けられた高周波出力装置3とを有する。根管長測定器2は、高周波出力装置3から出力された検出信号を入力することで、患部の根管長を測定する。根管長測定器2は、根管長に相当する根管位置レベルを表示すると共に歯科治療装置1における装置の運転条件又は駆動状態等を表示するディスプレイ2aと、ユーザによる各種操作を受け付ける操作部2bとを含む。高周波出力装置3は、電気コード10を介して、高周波治療器13のファイル17から高周波電流を出力するよう、歯科治療装置1の各部を制御する。
【0022】
本明細書において、患者100に対する歯科治療とは、高周波治療、根管拡大治療、および根管測定処置を含む。歯科治療システムSでは、これらの治療又は処置の種類に応じて、用いる電極が選択される。
【0023】
歯科治療用の電気コード10は、歯科治療システムSにおける歯科治療装置1と各対極との接続のためのコードであると共に、他の歯科治療、すなわち根管長測定機能における歯科治療システムSA(図6参照)における歯科治療装置1Aと各対極との接続のためのコードでもある。すなわち、電気コード10は、複数種類の歯科治療に対応できるように構成されている。以下、図1図3を参照して、電気コード10について詳細に説明する。
【0024】
図1および図2に示されるように、電気コード10は、高周波出力装置3の側面に設けられた第1差込み部3aに接続される接続端子10aを備えている。電気コード10は、この接続端子10aを基端部(根元)として、3つの対極に向けて3本のケーブルに分かれた構成を有する。電気コード10は、いわば三股コードである。
【0025】
電気コード10は、高周波治療に用いられる場合には、高周波用対極棒11を接続するための中継ケーブル40と組み合わせて利用される。電気コード10は、高周波用対極棒11の端子である中継ケーブル40の基端41(図5(a)に示される接続ピン41a)が着脱可能に接続される第1端子31と、高周波用対極フック12の端子である接続ピン部12bが着脱可能に接続される第2端子32と、高周波治療器13の端子である接続ピン13a(図5(c)参照)が接続される第3端子33とを備える。電気コード10は、さらに、接続端子10aと第1端子31とを接続する第1ケーブル21と、接続端子10aと第2端子32とを接続する第2ケーブル22と、接続端子10aと第3端子33とを接続する第3ケーブル23とを備える。
【0026】
これらの第1ケーブル21、第2ケーブル22および第3ケーブル23は、それぞれ、所望の電気回路を構成できる構造を備えており、内部に設けられた配線と、配線を被覆し絶縁する被覆部とを含んでいる。第1ケーブル21、第2ケーブル22および第3ケーブル23のそれぞれの具体的構成は、公知の歯科治療装置用のケーブルと同様である。
【0027】
本実施形態の電気コード10は、3種類の対極に接続された第1ケーブル21、第2ケーブル22および第3ケーブル23が、一体化されている点で特徴的である。この一体化により、ユーザである歯科医師にとって、使いやすさ(ユーザビリティ)が向上している。図1および図2に示されるように、電気コード10は、第2ケーブル22と第3ケーブル23とが結合された(すなわち一体化された)集合ケーブル20を有する。電気コード10のうち、接続端子10aから、第2ケーブル22と第3ケーブル23が分岐し始める分岐部25までの間では、第2ケーブル22と第3ケーブル23とは平行に束ねられており、分離不可能となっている。すなわち、第2ケーブル22と第3ケーブル23とは、共通の被覆部によって被覆され、外見上は1本のケーブルに見えるようになっている。さらに、分岐部25よりも先端側(第2端子32や第3端子33に近い側)では、第2ケーブル22および第3ケーブル23は分離可能になっている。言い換えれば、電気コード10は、分岐部25よりも先端側において、第2ケーブル22と第3ケーブル23とが合わさった束領域R1と、第2ケーブル22と第3ケーブル23とが遊離する遊離領域R2とを有する。
【0028】
なお、第2ケーブル22と第3ケーブル23とが束ねられることで、これらが物理的に近くなり、高周波治療中においても高周波用対極フック12の方に電流が流れてしまう傾向がある(ノイズ)。よって、ファイル17につながる第3ケーブル23と高周波用対極フック12につながる第2ケーブル22との間に、シールド機能を持たせる構成としてもよい。その場合には、高周波用対極フック12が小型化され得る。
【0029】
より具体的には、電気コード10は、第2ケーブル22および第3ケーブル23を束ねる結束部26を備えている。結束部26と、第2端子32および第3端子33との間では、第2ケーブル22および第3ケーブル23は、互いに遊離している。さらには、結束部26は、第2ケーブル22および第3ケーブル23に沿ってスライド可能である。この構成により、ユーザが結束部26の位置を適宜に調整することで、第2ケーブル22および第3ケーブル23、すなわち高周波用対極フック12および高周波治療器13の位置(空間的な位置)を自由に調整することができる。
【0030】
一方、図1に示されるように、中継ケーブル40は、高周波治療を行うときにのみ、電気コード10に接続される。中継ケーブル40の基端41は電気コード10の第1端子31に接続され、中継ケーブル40の先端42には、患者100の手101(図3参照)によって握られる高周波用対極棒11が取り付けられる。電気コード10が使用される際、第2ケーブル22の第2端子32と第3ケーブル23の第3端子33とは双方に患者の口へ向かい、第1ケーブル21の第1端子31(中継ケーブル40および高周波用対極棒11)はユーザの手の方へ向かう。第2ケーブル22および第3ケーブル23は、結束部26で束ねられることにより、バラつかず、利便性を向上させる。第1ケーブル21は、それらと(使用時に延びる)方向が異なるため、第2ケーブル22および第3ケーブル23から独立していた方がよい。よって、第1ケーブル21を第2ケーブル22および第3ケーブル23とは束ねない構成は、利便性を向上させる。
【0031】
図2に示されるように、電気コード10においては、各ケーブルの長さが好適に設定されている。第1ケーブル21は、第2ケーブル22よりも短く、且つ、第3ケーブル23よりも短い。すなわち、第1ケーブル21の長さL1は、第2ケーブル22の長さL2よりも小さい。第1ケーブル21の長さL1は、第3ケーブル23の長さL3よりも小さい。電気コード10の全体では、長さL1<長さL2<長さL3の関係が成り立っている。すなわち、第2ケーブル22は第3ケーブル23よりも短くなっている。なお、図4に示されるように、高周波用対極棒11、高周波用対極フック12および高周波治療器13を取り付けた状態でも、これらの長さの大小関係は変わらず、同じである。なお、第1ケーブル21の長さL1が、第2ケーブル22の長さL2より大きくてもよい。第1ケーブル21の長さL1が、第3ケーブル23の長さL3より大きくてもよい。
【0032】
これらの各対極の取付けに際しては、誤ったケーブルに各対極が取り付けられることを防止する仕組みが存在する。図5(a)~図5(c)に示されるように、第1端子31の差込み穴31aと中継ケーブル40の接続ピン41aの形状(直径や断面形状を含む、以下同じ)、中継ケーブル40の先端42の差込み穴42aと高周波用対極棒11の接続ピン11aの形状、第2端子32の差込み穴32aと高周波用対極フック12の接続ピン部12bの形状、および第3端子33の差込み穴33aと高周波治療器13の接続ピン13aの形状は、いずれも、互いに異なっている。これらは、誤った組み合わせで差し込み又は挿入しようとしても、差し込み又は挿入できないようになっている。すなわち、正しい組み合わせにおいてのみ、嵌合または係合が可能とされている。
【0033】
続いて、図3を参照して、歯科治療システムSによる高周波治療について説明する。治療時には、各対極が取り付けられた対極付き電気コード4(図4参照)が、歯科治療装置1に接続される。まず、歯科治療装置1がユーザである歯科医師と患者100の近くに置かれた状態で、患者100の手101で高周波用対極棒11を握らせ、患者の口唇102(口角)に高周波用対極フック12のフック部12aを引っ掛ける。そして、歯科医師が、ファイル17を保持した高周波用ファイルホルダ14を持って、患者100の口腔内の歯牙103の根管にファイル17を挿入する。なお、高周波用対極フック12のフック部12aは、高周波発生回路に流れる電流が比較的大きいため、後述の歯科治療システムSAにおける通常の根管長測定/切削拡大に用いられる測定用対極フック12A(図6参照)よりも幅の広い板材を有している。高周波用対極フック12の面積(大きさ)が大きいのは、人体への接触部の接触面積を確保するためである。
【0034】
このとき、高周波用対極フック12、患者100、およびファイルホルダ14のファイル17で、根管長測定電流の第1ループが形成される。また、高周波用対極棒11、患者100、およびファイルホルダ14のファイル17で、高周波電流の第2ループが形成される。第1ループによって、測定されたファイル17の根管長における位置を確認しながら、第2ループにおける、高周波電流の出力をフットコントローラ51で操作することができる。なお、フットコントローラ51は、フットコントローラ用ケーブル50を介して歯科治療装置1の第2差込み部3bに接続されている。根管長測定の第1回路(第1ループ)と、高周波治療の第2回路(第2ループ)とは、同時に形成されるのではなく、時系列で分けて形成される。すなわち、第1ループと第2ループとがスイッチさせる(切り替えられる)。上記操作の結果、適切な高周波治療が実現される。なお、フットコントローラ51が、歯科治療装置1と無線通信可能な無線フットコントローラであってもよい。
【0035】
本実施形態の電気コード10および対極付き電気コード4を用いた歯科治療では、高周波治療の場合は、高周波用対極棒11と高周波用対極フック12が受動電極であり、高周波治療器13が能動電極である。
【0036】
本実施形態の電気コード10によれば、歯科治療装置1と、高周波用対極棒11と高周波用対極フック12と高周波治療器13とを用いて、患者100に対する歯科治療が行われる。これらの高周波用対極棒11と高周波用対極フック12と高周波治療器13は、本実施形態の電気コード10を介して、歯科治療装置1に接続される。電気コード10は、歯科治療装置1と、第1端子31、第2端子32および第3端子33とをそれぞれ接続する第1ケーブル21、第2ケーブル22および第3ケーブル23と、を備えるので、従来別々に用意されていた複数のケーブルが一体化されており、ユーザが電気コード10を取り扱い易くなっている。たとえば、電気コード10の接続端子10aを、歯科治療装置1に接続するだけで接続が完了する。よって、この電気コード10によれば、ユーザにとっての使いやすさ(ユーザビリティ)を向上させることができる。より詳細には、使用時のコードの絡まりや、複数本の電気コードを接続しなければならないこと等、煩わしい事象が解消されている。よって、コードを使用する際、または収納する際の不便さが解消されている。
【0037】
言い換えれば、電気コード10により歯科医師の根管長測定器2(高周波測定器)の利便性を向上させている。3本のケーブルがまとめられているため、これらのケーブルが、歯科医師の高周波治療の邪魔にならない。
【0038】
また、ファイル17およびファイルホルダ14と高周波用対極棒11によって、あるいは、ファイル17およびファイルホルダ14と高周波用対極フック12によって、高周波治療に必要な所定の回路が形成される。これらの3種類の対極が1つの電気コード10に接続されているため、ユーザが高周波治療を行い易い。
【0039】
高周波用対極フック12と高周波治療器13が患者の口腔部等の近い位置で用いられる場合には、第2ケーブル22および第3ケーブル23が結束部26で束ねられることにより、これらのケーブル22,23を1本のケーブルのように扱うことができ、取り扱い易い。また、結束部26よりも先端側では、第2ケーブル22および第3ケーブル23が互いに遊離しているので、第2ケーブル22および第3ケーブル23を自由に動かすことができる。よって、高周波用対極フック12と高周波治療器13とを患者の体に対して自由に位置させることができる。
【0040】
第2ケーブル22および第3ケーブル23に沿ってスライド可能な結束部26によれば、第2ケーブル22および第3ケーブル23を自由に動かすことができる範囲(長さ)を適宜に変更可能である。歯科治療の形態や患者の姿勢等に応じて、ユーザによってより使い易いケーブルの状態を作り出すための調整が可能である。
【0041】
また、中継ケーブル40が第1端子31に着脱可能に接続されるので、高周波用対極棒11が歯科治療に必要となる場合にのみ、中継ケーブル40を第1端子31に接続すればよい。高周波用対極棒11が歯科治療に必要でない場合には、中継ケーブル40を第1端子31から取り外すことで、電気コード全体をコンパクト化できる。不要なケーブルが電気コードから取り除かれるので、より一層作業性に優れる。
【0042】
より具体的に説明すると、図6に示されるように、患者100の歯牙103の根管長を測定する根管長測定機能を備えた歯科治療装置1Aを備えた歯科治療システムSAに、電気コード10が用いられてもよい。この場合、第3端子33には、第3対極として、患者の患部に当接されて根管を切削するファイル45とファイル45を保持すると共に回転させるインスツルメント44(ハンドピース43)が接続されてもよい。なお、第3端子33には、根管長測定用の第3対極として、患者100の患部に当接されるファイルとファイルを保持するファイルホルダとが接続されてもよい。第2端子32には、第2対極として、患者100の体の一部に当接されてファイルと患者とを含む根管長測定回路を形成する測定用対極フック(第2対極、測定用第2対極)12Aが接続される。根管長測定器2の背面側には、ハンドピース43のモータを駆動制御するモータドライバを備えた根管拡大器制御装置5が取り付けられ、根管拡大器制御装置5の差込み部5aに、接続端子10aが挿し込まれる。この場合、高周波治療に用いられる電気コード10を、根管長測定にも用いることができる。すなわち、電気コード10は、高周波治療における電気コードと根管長測定における電気コードとを兼ねる。本実施形態の電気コード10および対極付き電気コード4を用いた歯科治療では、根管拡大治療の場合は、測定用対極フック12Aが受動電極であり、ハンドピース43が能動電極である。根管測定処置の場合は、測定用対極フック12Aが受動電極であり、ハンドピース43が能動電極である。なお、ハンドピース43の他にもスケーラや根管充填機(プラガタイプ、フィルタイプ)などの歯科用インスツルメントが接続されてもよい。
【0043】
第1ケーブル21は、第2ケーブル22よりも短く、且つ第3ケーブル23よりも短い。よって、第1ケーブル21に高周波用対極棒11が接続されない場合に、第1ケーブル21が邪魔にならない。
【0044】
第2ケーブル22は第3ケーブル23よりも短い。よって、第3ケーブル23に接続される高周波治療器13をユーザが動かせる範囲(空間的な領域)が広がる。一方、第2ケーブル22は、必要最小限の長さとされることができる。歯科治療においては、上顎、下顎、各歯牙のいずれもが治療箇所となる可能性があるが、柔軟な長さが必要とされる高周波治療器13の第3ケーブル23が最も長く、根管長測定器2からの距離が比較的決まっている高周波用対極フック12の第2ケーブル22、高周波用対極棒11の第1ケーブル21がそれぞれ比較的短くなっており、無駄にコードが引き回されず、高周波治療の邪魔にならない。
【0045】
電気コード10と、高周波用対極棒11と、高周波用対極フック12と、高周波治療器13と、を備える対極付き電気コード4によれば、高周波用対極棒11と高周波用対極フック12と高周波治療器13とを用いて、患者に対する歯科治療が行われる。上述した理由により、ユーザにとっての使いやすさを向上させることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、第2対極としての高周波用対極フック12又は測定用対極フック12Aは、患者100の口唇102に引っ掛けられる態様に限られない。第2対極は、患者100の体の一部に貼り付けられてもよい。
【0047】
少なくともいずれかの対極が、対応する端子に対して着脱可能であってもよいが、対応する端子と一体化されて着脱不能であってもよい。すなわち、図5に示されるような着脱可能な構造でなく、一体化された構造であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1,1A…歯科治療装置、2…根管長測定器、3…高周波出力装置、4…対極付き電気コード、5…根管拡大器制御装置、10…電気コード、11…高周波用対極棒(高周波用第1対極)、12…高周波用対極フック(高周波用第2対極)、12A…測定用対極フック(測定用第2対極)、13…高周波治療器、14…ファイルホルダ、17…ファイル、20…集合ケーブル、21…第1ケーブル、22…第2ケーブル、23…第3ケーブル、31…第1端子、32…第2端子、33…第3端子、43…ハンドピース、S,SA…歯科治療システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6