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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】乳化剤を含む経皮送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20230118BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230118BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230118BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61P25/04
A61P19/02
A61P29/00
A61P21/00
A61P29/00 101
A61P17/02
A61P17/00
A61P43/00 105
A61K47/10
A61K47/24
A61K47/34
A61K47/44
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/14
A61K31/485
A61K31/196
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020512848
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2018073498
(87)【国際公開番号】W WO2019043172
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】17189273.0
(32)【優先日】2017-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ガーブリエル・ヴァウアー
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ザイベルツ
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-505107(JP,A)
【文献】特開昭63-227517(JP,A)
【文献】特表2016-520638(JP,A)
【文献】特表2007-532577(JP,A)
【文献】特表2010-510259(JP,A)
【文献】特表2006-514977(JP,A)
【文献】特表2003-503445(JP,A)
【文献】特開2014-132020(JP,A)
【文献】特表平08-504757(JP,A)
【文献】特開2014-065727(JP,A)
【文献】特表2005-501865(JP,A)
【文献】国際公開第2005/123046(WO,A1)
【文献】DOW CORNING,「Dow Corning(R) 9011 Silicone Elastomer Blend」,Product Information Personal Care [online],2016年06月,<URL:https://www.essence-plus.com/essence-plus689/program_download/good/201610111554294533.pdf> 検索日2022年5月13日
【文献】International Journal of Toxicology,2014年,Vol.33 (Suppl.2),pp.65S-115S
【文献】DOW CORNING,「Dow Corning(R) 9011 Silicone Elastomer Blend」,Product Information Personal Care [online],2016年06月,<URL:https://www.essence-plus.com/essence-plus689/program_download/good/201610111554294533.pdf> 検索日2022年5月13日
【文献】International Journal of Toxicology,2014年,Vol.33 (Suppl.2),pp.65S-115S
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性薬剤含有層構造を含む、活性薬剤の経皮投与のための経皮治療システムであって、
該活性薬剤含有層構造は、
A) 裏打ち層、及び
B) 二相マトリックス層
を含み、該二相マトリックス相は、
a) 少なくとも1つのポリマー70~100質量%を含む組成物を有する連続的外部相、
b) 活性薬剤、及び活性薬剤が内部相中で溶剤と溶液を形成するような十分な量の、活性薬剤のための溶剤を含む組成物を有する不連続内部相[ここで不連続内部相は、連続的外部相中に分散された沈着物を形成する]、
並びに
c) 二相マトリックス層に基づいて0.1~20質量%の量の乳化剤を有し、
ここで乳化剤は、約500~1500rpmで等質量の連続的外部相の組成物と約1時間試験管中で混合された場合に、約20℃にて約24時間の貯蔵後に、試験管中の分離した相の高さ及び試験管中の総含有物の高さを比較することにより決定して、20%未満の相分離を示す連続的外部相の組成物との混合物を生じる乳化剤からなる群より選択され
ここで乳化剤はPEG-12ジメチコンとPEG/PPG-19/19ジメチコンの混合物に基づくものである、上記経皮治療システム。
【請求項2】
二相マトリックス層は、乳化剤を0.1質量%から20質量%未満、又は0.5~10質量%、又は0.5~5質量%含有する、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
連続的外部相中の少なくとも1つのポリマーはポリシロキサン又はポリイソブチレンである、請求項1または2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
連続的外部相中の少なくとも1つのポリマーは感圧接着性ポリマーである、請求項1~のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
活性薬剤は、二相マトリックス層に基づいて1~30質量%の量で含有され、かつ/又
は活性薬剤は、二相マトリックス層に基づいて0.1~5mg/cm2の量で含有される、請求項1~のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
活性薬剤は、ブプレノルフィン及びジクロフェナクからなる群より選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
二相マトリックス層は60g/m2より大きい面積質量を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
活性薬剤のための溶剤は、カルボン酸、4個より多い炭素原子を有する長鎖アルコール、脂肪アルコール、脂肪アルコールのポリオキシエチレンエーテル、4個より多い炭素原子を有する長鎖エステル、脂肪酸エステル又はそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
活性薬剤は、カルボン酸中の溶液で、二相マトリックス層の不連続内部相において活性
薬剤-カルボン酸混合物を形成する、請求項に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
二相マトリックス層は、粘性増加物質を、好ましくは二相マトリックス層の約0.1質量%~約8質量%の量でさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
活性薬剤のための溶剤はカルボン酸であり、そしてカルボン酸は二相マトリックス層に基づいて2~20質量%、好ましくは5~15質量%、特に6~12質量%の量で含有される、請求項1~10のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
活性薬剤含有層構造は活性薬剤含有自己接着性層構造であり、そして好ましくは二相マトリックス層は皮膚接触層である、請求項1~11のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
活性薬剤がブプレノルフィンであり、疼痛を処置する方法における使用のための、好ましくは経皮治療システムが患者の皮膚上に7日間適用される疼痛を処置する方法における使用のための、請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
活性薬剤がジクロフェナクであり、変形性関節症、肩関節周囲炎、筋痛、腰背痛、リウ
マチ、挫傷、肉離れ、腰痛、関節症、汗腺膿瘍又は多系統萎縮症のような疼痛/炎症に罹患した患者を処置する方法における使用のための、請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項15】
治療有効量のジクロフェナクは、約24時間のヒト患者の皮膚上での投与期間の間、経皮治療システムにより約24時間提供される、請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の経皮治療システムを製造する方法の間に、二相コーティング混合物中に分散された沈着物の最大寸法を低減するための、PEG-12ジメチコンとPEG/PPG-19/19ジメチコンの混合物に基づく乳化剤の使用。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の経皮治療システムの二相マトリックス層中に分散された沈着物の最大寸法を低減するための、PEG-12ジメチコンとPEG/PPG-19/19ジメチコンの混合物に基づく乳化剤の使用。
【請求項18】
二相マトリックス層の不連続内部相の最大球寸法を制御するための、不連続内部相及び連続的外部相を有する活性薬剤含有二相マトリックス層を用いた経皮治療システムにおけるPEG-12ジメチコンとPEG/PPG-19/19ジメチコンの混合物に基づく乳化剤の使用。
【請求項19】
活性薬剤及び内部相において活性薬剤が溶剤とともに溶液を形成するように十分な量の活性薬剤のための溶剤を含む組成物を有する不連続内部相を含む二相コーティング混合物を安定化する方法であって、該内部相はポリマーを含む連続的外部相中に分散された沈着物を形成し、
該方法は、約500~1500rpmで等質量の連続的外部相の組成物と約1時間試験管中で混合された場合に、約24時間約20℃で貯蔵した後、試験管中の分離した相の高さ及び試験管中の総含有物の高さを比較することにより決定して、20%未満の相分離を示す連続的外部相の組成物との混合物を生じる乳化剤からなる群より選択される乳化剤と、二相コーティング混合物を混合することにより安定化するものであり、
ここで乳化剤はPEG-12ジメチコンとPEG/PPG-19/19ジメチコンの混合物に基づくものである、上記方法。
【請求項20】
(1) 請求項19に従って安定化された二相コーティング混合物を製造する工程、
(2) 安定化された二相コーティング混合物を、所望の面積質量を生じる量でフィルム上にコーティングする工程、
(3) 溶媒を蒸発させて、所望の面積質量を有する二相マトリックス層を生じる工程を含む、二相マトリックス層の製造方法。
【請求項21】
(1)
a. ポリマー、
b. 活性薬剤
c. 活性薬剤のための溶剤
d. PEG-12ジメチコンとPEG/PPG-19/19ジメチコンの混合物に基づく乳化剤、
e. 溶媒、
f. 場合により粘性増加物質
を含む安定化された二相コーティング混合物を供給する工程、
(2) 安定化された二相コーティング混合物を、所望の面積質量を生じる量でフィルム上にコーティングする工程、
(3) 溶媒を蒸発させて、所望の面積質量を有する二相マトリックス層を生じる工程、
(4) 二相マトリックス層を裏打ち層に積層して、活性薬剤含有層構造を得る工程、
(5) 場合により、活性薬剤含有層構造をさらなる皮膚接触層に積層する工程、
(6) 場合により、ブプレノルフィン含有自己接着性層構造から所望の放出面積を有する個々のシステムを打ち抜く工程、及び
(7) 場合により、裏打ち層及び活性薬剤非含有感圧接着剤層も含む、ブプレノルフィン含有自己接着性層構造の個々のシステムよりも大きい活性薬剤非含有自己接着性層に、個々のシステムを接着する工程
を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の経皮治療システムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、連続的外部相中に分散された不連続内部相を含む二相構造を含む経皮治療システム(TTS)、それらの製造方法及び使用、それらを用いる対応する処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
経皮治療システム(TTS)は、いわゆるマトリックス型TTS及びいわゆるリザーバ型TTSの、活性薬剤送達のための二種類のTTSに主に分類され得る。
【0003】
マトリックス型TTSにおいて、活性薬剤は、ポリマー担体、すなわちマトリックス内に均一に溶解されているかかつ/又は分散されており、この担体が活性薬剤及び場合により残りの成分とともにマトリックス層を形成する。このようなシステムにおいて、マトリックス層はTTSからの活性薬剤の放出を制御する。
【0004】
リザーバ型TTSにおいて。活性薬剤は液体リザーバ中に存在する。このようなシステムにおいて、活性薬剤の放出は、好ましくは速度制御膜により制御される。特に、リザーバは裏打ち層と速度制御膜との間で密封される。さらに、リザーバ型TTSは、典型的には皮膚接触層を更に含み、ここでリザーバ層及び皮膚接触層は、速度制御膜で隔てられ得る。リザーバ型TTSの利点は、しばしば過飽和のリザーバに起因する高い活性薬剤利用である。しかし、リザーバの損傷する場合には、用量ダンピングが起こり得る。
【0005】
マイクロリザーバTTSは、当該分野においてマトリックス型TTSとリザーバ型TTSとの混合形態であると考えられ、そして活性薬剤輸送及び活性薬剤送達の概念において均一な単相マトリックス型TTS及びリザーバ型TTSと異なる。マイクロリザーバTTSは、少なくとも2つの相、すなわち分散された内部相及び内部相沈着物(deposits)を取り囲む外部相を含む。外部相中の内部相の限られた溶解性は、このような二相構造を生じるための要件である。マイクロリザーバTTSは、内部相中に含有される活性薬剤がほんのわずかしか外部相中に溶解しないので、マトリックス型TTSと比較して改善された活性薬剤利用を通常特徴とし、従ってマイクロリザーバシステムから皮膚へ移行させる望みを支持する。マイクロリザーバTTSの現在の問題は、特にTTSの製造過程の間の二相構造の不十分な安定化である。
【0006】
例えば、コーティングしようとする二相組成物は、通常はバッチで製造され、その後、塗工機が組成物をコーティングする準備ができるまでしばらくの間貯蔵される。通常の日常的な製造方法において組成物の製造と組成物のコーティングとの間の時間は、混合した後に組成物をコーティングステーションに移し、そして直接コーティングする場合はほとんどゼロにすることができ、そして塗工機の不具合の時間もしくは週末の間又はコーティングプロセス中断の他の理由で貯蔵するために数日間程度、例えば4~6日間であり得る。二相組成物が混合工程において製造された後、システムは相分離する傾向がある。内部相沈着物は合体する傾向があり、そして形成されたより大きな沈着物は貯蔵の間に沈殿し得る。
【0007】
さらに、コーティングプロセスの間、せん断力が二相コーティング組成物に対して作用し、内部相の強い合体、そしてコーティング組成物内及び最終の二相マトリックス層における合体した内部相沈着物の制御できない分布を生じる。
【0008】
いかなる理論に拘束されることも望まないが、沈着物の寸法及び寸法分布は、TTSからの活性薬剤送達に影響を及ぼすと考えられている。大きな沈着物は、活性薬剤の放出が速すぎ、そして投薬期間の開始時の望ましくない高い活性薬剤送達(「薬物バースト」としても知られる)及び開始時の活性薬剤の損失が投薬期間の後の駆動力の喪失をもたらすためより長い投薬期間の間のシステムの不具合を生じると考えられている。従って活性薬剤の透過は予測不可能であり、速すぎたり、十分に長くなかったり、十分に連続的でなかったりするかもしれない。
【0009】
従って、沈着物の寸法及び寸法分布を十分に制御する必要性がある。沈着物は特に混合とコーティングの間の貯蔵時間の間及びコーティングプロセスの間に融合を防止されなければならない。
【0010】
二相コーティング組成物における沈着物(液滴)の開始寸法を低減するために、組成物は均一化され得る。しかし、内部相の融合は、二相コーティング組成物の貯蔵の間に、そして特にコーティングプロセスの間のせん断応力下でなお観察され得る。
【0011】
特許文献1は、ブプレノルフィンの経皮投与のためのマイクロリザーバTTSに関し、そして沈着物の融合及び沈着物の対応する寸法増加を粘性増加物質の使用により制御することができるということを示す。粘性増加物質が、製造の間接着剤溶液(外部相)内及び乾燥されたブプレノルフィン含有層の貯蔵の間接着剤マトリックス(外部相)内の沈着物(内部相)の粘性を増加させるということが述べられている。
【0012】
特許文献1において、商業的規模の製造のために必要なスケールアップ及び必要なコーティング精度をもたらすためにローラーコーターが必要であると述べられる。ローラーコーターにおけるコーティングの間にコーティング混合物に加えられるせん断力は、エリクセン塗工機を使用する場合のような実験室スケールのコーティング技術とは異なりより高い。ローラーコーターにおけるせん断力は、沈着物のさらなる融合を引き起こす。粘性増加物質が二相システムに対して安定化効果を有することが示されたが、マトリックス層の沈着物は、ローラーコーターを使用した二相マトリックス層の製造の間に加えられるせん断力のような高いせん断力下でいくらかの寸法増加をなお受ける。従って、特に二相システムの製造プロセスの間に、特にコーティングプロセスの間に沈着物の合体を妨げることがなお望ましい。
【0013】
活性薬剤送達における可変性に対する寛容性は、可能な過剰投与又は過少量投与及び例えば適用期間の開始時の活性薬剤の過剰放出により引き起こされる可能な皮膚刺激を考慮すると非常に限定されているので、マイクロリザーバTTSの可変性は十分に制御される必要がある。
【0014】
従って、改善されたマイクロリザーバTTSの必要性が当該分野にある。
【0015】
本明細書において引用される全ての参考文献及び刊行物は、あらゆる目的のためにそれら全体として参照により本明細書に加入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】WO 2014/195352
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
発明の目的及び要旨
二相マトリックス層の改善された安定性を有する、活性薬剤の経皮投与のためのマイクロリザーバTTSを提供することは、本発明の特定の実施態様の目的である。
【0018】
せん断力に対する改善された抵抗性を有する、活性薬剤の経皮投与のためのマイクロリザーバTTSを提供することは、本発明の特定の実施態様の目的である。
【0019】
改善された活性薬剤放出を有する、活性薬剤の経皮投与のためのマイクロリザーバTTSを提供することは、本発明の特定の実施態様の目的である。
【0020】
より一定で連続的な活性薬剤の経皮投与のためのマイクロリザーバTTSを提供することは、本発明の特定の実施態様の目的である。
【0021】
活性薬剤利用の高い活性薬剤の経皮投与のためのマイクロリザーバTTS、すなわち、少なくとも1日(24時間)、少なくとも3日(72時間)、又は約7日(168時間)患者の皮膚へに投与期間の間に適切な活性薬剤送達特性を提供するために高過剰量の活性薬剤を必要としないTTSを提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0022】
マイクロリザーバTTSを製造する改善された方法を提供することは、本発明の特定の実施態様の目的である。
【0023】
マイクロリザーバTTSの製造プロセスにおける改善された再現性を提供することは、本発明の特定の実施態様の目的である。
【0024】
二相組成物の貯蔵特性を改善することは、本発明の特定の実施態様の目的である。
【0025】
二相組成物の内部相沈着物の寸法を制御することは、本発明の特定の実施態様の目的である。
【0026】
TTSを製造するプロセスの間に二相組成物の内部相沈着物の寸法増加を防止することは、本発明の特定の実施態様の目的である。
【0027】
合体に対する二相組成物の内部相の改善された抵抗性を提供することは、本発明の特定の実施態様の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
これらの目的及びその他は本発明により達成され、本発明は、一局面によれば、活性薬剤含有層構造を含む活性薬剤の経皮投与のための経皮治療システムに関し、該活性薬剤含有層構造はA)裏打ち層、及びB)二相マトリックス層を含み、該二相マトリックス層は、a)少なくとも1つのポリマー70~100質量%を含む組成物を有する連続的外部相、b)活性薬剤、及び活性薬剤が内部相中で溶剤と溶液を形成するような十分な量の、活性薬剤のための溶剤(dissolver)(例えば、カルボン酸)を含む組成物を有する不連続内部相、[ここで、不連続内部相は、連続的外部相中に分散された沈着物を形成する]、並びにc)二相マトリックス層に基づいて0.1~20質量%の量の乳化剤を有し、ここで乳化剤は、約500~1500rpmで等質量の連続的外部相の組成物と約1時間試験管中で混合された場合に、約20℃にて約24時間の貯蔵後に、試験管中の分離した相の高さ及び試験管中の総含有物の高さを比較することにより決定して、20%未満の相分離を示す連続的外部相の組成物との混合物を生じる乳化剤からなる群より選択される。
【0029】
一つの特定の局面によれば、本発明は、二相マトリックス層の不連続内部相の最大球寸法を制御するための、不連続内部相及び連続的外部相を有する活性薬剤含有二相マトリックス層を用いた経皮治療システムにおけるポリシロキサンに基づく乳化剤の使用に関する。
【0030】
1つの特定の局面によれば、本発明は、不連続内部相及び連続的外部相を有する活性薬剤含有二相マトリックス相を用いた経皮治療システムにおける、二相マトリックス層の不連続内部相の最大球寸法を制御するための、ポリイソブチレンに基づく乳化剤、エトキシ化ヒマシ油に基づく乳化剤、及びポロキサマーに基づく乳化剤からなる群より選択される乳化剤の使用に関する。
【0031】
1つの特定の局面によれば、本発明は、活性薬剤及び内部相において活性薬剤が溶剤とともに溶液を形成するように十分な量の活性薬剤のための溶剤(例えば、カルボン酸)を含む組成物を有する不連続内部相を含む二相コーティング混合物を安定化する方法に関し、該内部相はポリマーを含む連続的外部相中に分散された沈着物を形成し、該方法は、約500~1500rpmで等質量の連続的外部相の組成物と約1時間試験管中で混合された場合に、約24時間約20℃で貯蔵した後、試験管中の分離した相の高さ及び試験管中の総含有物の高さを比較することにより決定して、20%未満の相分離を示す連続的外部相の組成物との混合物を生じる乳化剤からなる群より選択される乳化剤と、二相コーティング混合物を混合することにより安定化するものである。
【0032】
1つの特定の局面によれば、本発明は:(1)前の段落に従って安定化された二相コーティング混合物を製造する工程、(2)安定化された二相コーティング混合物を、所望の面積質量を生じる量でフィルム上にコーティングする工程、(3)溶媒を蒸発させて、所望の面積質量を有する二相マトリックス層を生じる工程を含む、二相マトリックス層の製造方法に関する。
【0033】
1つの特定の局面によれば、本発明は:(1)(a)ポリマー、(b)活性薬剤、(c)活性薬剤のための溶剤、(d)乳化剤、(e)溶媒、(f)場合により粘性増加物質を含む安定化された二相コーティング混合物を供給する工程、(2)安定化された二相コーティング混合物を、所望の面積質量を生じる量でフィルム上にコーティングする工程、(3)溶媒を蒸発させて、所望の面積質量を有する二相マトリックス層を生じる工程、(4)二相マトリックス層を裏打ち層に積層して、活性薬剤含有層構造を得る工程、(5)場合により、活性薬剤含有層構造をさらなる皮膚接触層に積層する工程、(6)場合により、ブプレノルフィン含有自己接着性層構造から所望の放出面積を有する個々のシステムを打ち抜く工程、及び(7)場合により、裏打ち層及び活性薬剤非含有感圧接着剤層も含む、ブプレノルフィン含有自己接着性層構造の個々のシステムよりも大きい活性薬剤非含有自己接着性層に、個々のシステムを接着する工程を含む、本発明に従う経皮治療システムの製造方法に関する。
【0034】
定義
本発明の意義の範囲内で、用語「経皮治療システム」(TTS)は、それにより活性薬剤(例えば、ブプレノルフィン又はジクロフェナク)が経皮送達を介して、例えば処置しようとする局所領域又は全身循環に投与されるシステムを指し、そして場合により存在する剥離ライナーを除去した後に、適用される個々の投薬単位全体が患者の皮膚に適用され、そしてこれは活性薬剤含有層構造中に治療有効量の活性薬剤、及び場合により活性薬剤含有層構造の上にさらなる接着性オーバーレイを含む。活性薬剤含有層構造は、剥離ライナー(取り外し可能な保護層)上に位置し得、したがって、TTSは剥離ライナーをさらに含み得る。本発明の意義の範囲内で、用語「TTS」は特に、例えば、イオン泳動又はマイクロポレーションを介する能動送達を除く、経皮送達を提供するシステムを指す。経皮治療システムはまた、経皮薬物送達システム(TDDS)又は経皮送達システム(TDS)とも呼ばれ得る。
【0035】
本発明に従う二相マトリックス層を有するTTSは、「マイクロリザーバTTS」としても知られる。
【0036】
本発明の意義の範囲内で、用語「活性薬剤含有層構造」は、治療有効量の活性薬剤を含有する層構造を指し、そして裏打ち層及び少なくとも1つの二相マトリックス層を含む。好ましくは、活性薬剤含有層構造は活性薬剤含有自己接着層構造である。
【0037】
用語「治療有効量」は、TTSにより患者に投与された場合に、例として疼痛の処置のような処置を提供するために十分なTTS中の活性薬剤の量を指す。TTSは通常は、皮膚及び処置しようとする局所領域又は全身循環に実際に供給されるよりもシステム中により多くの活性物質(active)を含有する。この過剰量の活性薬剤は、処置しようとする局所領域又は全身循環へのTTSからの送達のための十分な駆動力を提供するために通常必要である。
【0038】
本発明の意義の範囲内で、用語「活性物質」、「活性薬剤」など(例として用語「ブプレノルフィン」又は「ジクロフェナク」)は、いずれかの薬学的に許容しうる化学形態及び形態学的形態及び物理的状態の活性薬剤(例えば例として、ブプレノルフィン又はジクロフェナク)を指す。これらの形態としては、限定することなく、その遊離塩基/遊離酸の形態の活性薬剤、プロトン化又は部分的にプロトン化した活性薬剤、それらの塩、共結晶及び特に無機又は有機酸/塩基の付加により形成される酸/塩基付加塩、例えば例として、ブプレノルフィン塩酸塩又はブプレノルフィンマレイン酸塩、溶媒和物、水和物、クラスレート、錯体など、さらには微粉化、結晶性及び/又は非晶質であり得る粒子の形態の活性薬剤、並びに前述の形態のいずれかの混合物が挙げられる。本発明において、活性薬剤は、二相マトリックス層の内部相において溶剤とともに溶液を形成する。それにもかかわらず、活性薬剤は二相マトリックス層の外部相中に部分的に分散されていてもよい。
【0039】
活性薬剤がTTSの製造において特定の形態で使用されると述べられる場合、これは、この形態の活性物質と活性薬剤含有層構造中の他の成分との間の最終TTSにおける相互作用、例えば塩形成又は複合体化を排除しない。これは、たとえ活性薬剤がその遊離塩基/酸形態で含まれても、最終TTSにおいてプロトン化もしくは部分的にプロトン化されて/もしくは脱プロトンもしくは部分的に脱プロトンされた形態で又は酸付加塩の形態で存在していてもよく、又は塩の形態で含まれる場合、その部分は最終TTS中で遊離塩基として存在していてもよいということを意味する。
【0040】
TTSの製造の間にTTSに含められる活性薬剤出発物質は、粒子の形態であっても、かつ/又は溶解されていてもよい。活性薬剤は、例えば活性薬剤含有層構造中に粒子の形態でかつ/又は溶解された形態で存在し得る。
【0041】
本発明の意義の範囲内で、用語「粒子」は、個々の粒子を含む固形粒状材料を指し、それらの寸法は材料と比較して無視できる。特に粒子は固体であり、これらとしてはプラスチック/非晶質を含む変形可能な固形物、及び結晶性物質が挙げられる。
【0042】
本発明の意義の範囲内で、「分散された沈着物」に関して使用される用語「沈着物」は、二相マトリックス層内の識別可能な、例えば視覚的に識別可能な領域を指す。このような沈着物は、例えば液滴及び球である。本発明の意義の範囲内で、用語液滴は、好ましくは二相コーティング組成物における沈着物について使用され、そして用語球は、好ましくは二相マトリックス層における沈着物について使用される。沈着物は顕微鏡の使用により同定され得る。沈着物の寸法を、必要な検出限界に依存して10倍と400倍との間の拡大倍率で異なる位置において二相マトリックス層の写真を撮ることにより、光学顕微鏡測定(カメラ、例えばLeica DSC320を含む例えばLeica MZ16により)により決定することができる。画像解析ソフトウェアを使用することにより、沈着物の寸法を決定することができる。
【0043】
本発明の意義の範囲内で、沈着物の寸法は、二相マトリックス層の顕微鏡写真を使用して測定された沈着物の直径を指す。
【0044】
本発明の意義の範囲内で、用語「マトリックス層」は、活性薬剤を含有し、そして放出面積を提供する層を指す。本発明に従うTTSのマトリックス層は二相であり、すなわち、70~100質量%の少なくとも1つのポリマーを含む連続的外部相、並びに活性薬剤及び活性薬剤が内部相において溶剤とともに溶液を形成するように十分な量の活性薬剤のための溶剤を含む組成物を有する不連続内部相を有する二相マトリックス層である。連続的外部相中の少なくとも1つのポリマーが感圧接着性ポリマーである場合、二相マトリックス層は、TTSの接着層にも相当し得、その結果さらなる皮膚接触層は存在しない。あるいは、さらなる皮膚接触層は、接着層として存在し得、かつ/又は接着性オーバーレイが設けられる。さらなる皮膚接触層は、典型的には活性薬剤を含有しないように製造される。しかし、濃度勾配に起因して、活性薬剤は二相マトリックス層からさらなる皮膚接触層へと、時間が経つにつれて平衡に達するまで移動する。さらなる皮膚接触層は、二相マトリックス層上に存在していても、二相マトリックス層と膜、好ましくは速度制御膜で隔てられていてもよい。好ましくは、二相マトリックス層は十分な接着特性を有し、すなわち自己接着性であり、その結果さらなる皮膚接触層は存在しない。
【0045】
好ましくは、本発明に従う二相マトリックス層は、本明細書に記載される溶媒含有コーティング組成物(溶媒ベースのマトリックス層)をコーティングしそして乾燥した後に得られる。このような溶媒ベースのマトリックス層は、乾燥した二相マトリックス層とも記載することができる。あるいは、二相マトリックス層は、溶融塗工し、そして冷却した後に得られる(ホットメルトベースのマトリックス層)。本発明に従う二相マトリックス層は、好ましくは乾燥した二相層である。(活性薬剤含有)二相マトリックス層はまた、同じ組成の2つまたはそれ以上のこのような固化した層(例えば、乾燥または冷却された層)を積層して所望の面積質量を得ることにより製造され得る。
【0046】
本発明の意義の範囲内で、用語「感圧接着剤」(「PSA」とも略される)は、特に指の圧力で接着し、永続的に粘着性であり、強い保持力を発揮し、そして残留物を残さずに滑らかな表面から取り外せるべき材料を指す。感圧接着剤層は、皮膚と接触した場合、「自己接着性」である、すなわち、皮膚に対する接着を提供し、その結果典型的には皮膚上の固定のためにさらなる補助を必要としない。「自己接着性」層構造としては、皮膚接触のための感圧接着剤層が挙げられ、これは感圧接着剤二相マトリックス層の形態又はさらなる層、すなわち感圧接着剤皮膚接触層の形態で提供され得る。接着性オーバーレイは接着を促進するためになお使用され得る。感圧接着剤の感圧接着特性は、使用されるポリマー又はポリマー組成物に依存する。
【0047】
本発明の意義の範囲内で、用語「皮膚接触層」は、投与の間患者の皮膚と直接接触する、活性薬剤含有層構造に含まれる層を指す。これは二相マトリックス層であってもよい。TTSがさらなる皮膚接触層を含む場合、活性薬剤含有層構造の他の層は、皮膚と接触せず、そして必ずしも自己接着特性を有する必要はない。上で概説したように、二相マトリックス層に付着されたさらなる皮膚接触層は、時間が経つにつれて活性薬剤の一部を吸収する。さらなる皮膚接触層は付着を増強するために使用され得る。さらなる皮膚接触層及び二相マトリックス層の寸法は、通常は同一の広がりを持ち、そして放出面積に対応する。しかし、さらなる皮膚接触層の面積はまた、二相マトリックス層の面積よりも大きくてもよい。このような場合、放出面積はなお二相マトリックス層の面積を指す。
【0048】
本発明の意義の範囲内で、用語「面積質量」は、特定の層、例えば二相マトリックス層のコーティング及び乾燥後、または溶融塗工及び冷却後の質量を指し、g/mで与えられる。面積質量値は、製造変動性に起因して±10%、好ましくは±7.5%の許容誤差がある。
【0049】
別の指示がなければ、「%」は質量%を指す。
【0050】
本発明の意義の範囲内で、用語「ポリマー」は、1つ又はそれ以上のモノマーを重合させることにより得られるいわゆる繰り返し単位からなる物質を指し、これらとしては、1種類のモノマーからなるホモポリマー及び2つ又はそれ以上の種類のモノマーからなるコポリマーが挙げられる。ポリマーは、コポリマーの場合いずれかのモノマー配置、例えば交互、統計(statistical)、ブロックコポリマー、又はグラフトポリマーの、鎖状ポリマー、星形ポリマー、櫛形ポリマー、ブラシ(brush)ポリマーのような構造であり得る。最小分子量は、ポリマーの種類によって変化し、当業者に公知である。ポリマーは、例えば2000より大きい、好ましくは5000より大きい、そしてより好ましくは10,000ダルトンより大きい分子量を有していてもよい。それに応じて、2000未満、好ましくは5000未満又はより好ましくは10,000ダルトン未満の分子量を有する化合物は、通常オリゴマーと呼ばれる。
【0051】
本発明の意義の範囲内で、用語「接着性オーバーレイ」は、活性薬剤を含まず、かつ活性薬剤含有構造より面積が大きく、そして皮膚に接着するさらなる面積をもたらすが、活性薬剤の放出面積はない自己接着層構造を指す。それによりこれはTTSの全体的な接着特性を増強する。接着性オーバーレイは、密封又は非密封特性をもたらし得る裏打ち層及び接着剤層を含む。好ましくは、接着性オーバーレイの裏打ち層は非密封特性をもたらす。
【0052】
本発明の意義の範囲内で、用語「裏打ち層」は、二相マトリックス層を支持するか又は接着性オーバーレイの裏打ちを形成する層を指す。TTSにおける少なくとも1つの裏打ち層及び通常は二相マトリックス層の裏打ち層は、貯蔵及び投与の期間の間、層に含有される活性薬剤に対して実質的に不透過性であり、したがって規制上の要件に従う活性物質損失又は相互汚染を予防する。好ましくは、裏打ち層は密封性でもあり、水及び水蒸気に対して実質的に不透過性であることを意味する。裏打ち層に適した材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリウレタン、及びそれらの混合物が挙げられる。したがって適切な裏打ち層は、例えばPETラミネート、EVA-PETラミネート及びPE-PETラミネートである。織物又は不織裏打ち材料も適している。
【0053】
本発明に従うTTSを、インビトロ皮膚透過試験で測定される特定のパラメーターにより特徴づけすることができる。
【0054】
一般に、フランツ拡散セルでヒト又は動物の皮膚を用いて、そして好ましくはデルマトームで採皮された(dermatomed)厚さ200μm~800μmの分層ヒト皮膚及びインタクトな表皮を用いて、そして受容体媒体が例えば60体積%のリン酸緩衝液pH5.5、30体積%のジプロピレングリコール及び10体積%のアセトニトリルを含有し得るように、最大40体積%の有機溶媒、例えばエタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、ジプロピレングリコール、PEG 400を加えるか又は加えずに、リン酸緩衝液pH5.5又は7.4を受容体媒体として用いてインビトロ透過試験が行われる(0.1%食塩水アジドを用いて32℃)。
【0055】
別の指示がなければ、インビトロ透過試験は、デルマトームで採皮された厚さ800μmの分層ヒト皮膚及びインタクトな表皮を用いて、受容体媒体としてリン酸緩衝液pH5.5を用いて行われる(0.1%食塩水アジドを用いて32℃)。受容体媒体中に透過された活性物質の量を、一定間隔で有効なHPLC法を使用してUV光度検出器を用いてサンプル体積を採取することにより決定する。受容体媒体は、サンプル体積を取るときに完全に又は部分的に新鮮な媒体に置き換えられ、そして透過された活性物質の測定された量は、2つの最後のサンプリング時点の間に透過した量に関連し、それまでに透過された総量には関連しない。
【0056】
したがって、本発明の意義の範囲内で、パラメーター「透過された量」は、μg/cmで示され、そして特定の経過時間にサンプル間隔で透過された活性物質の量に関連する。例えば、受容体媒体中に透過された活性物質の量が、例えば0、2、4、8、12及び24時間目に測定される上記のインビトロ透過試験において、活性物質の「透過された量」は、例えば8時間目から12時間目までののサンプル間隔で示されることができ、そしてこれは受容体媒体が8時間目に完全に交換された場合の12時間目での測定に対応する。
【0057】
透過された量を、特定の時点での透過された活性物質の累積量に相当する「累積透過量」として示すこともできる。例えば、受容体媒体中に透過された活性物質の量が、例えば0、2、4、8、12、及び24時間目に測定された上記のようなインビトロ透過試験において、12時間目の活性物質の「累積透過量」は、0時間~2時間、2時間~4時間、4時間~8時間、及び8時間~12時間に透過された量の合計に相当する。
【0058】
本発明の意義の範囲内で、特定の経過時間での特定のサンプル間隔の間のパラメーター「皮膚透過速度」はμg/cm-時間(hr)で表され、そしてμg/cmで示される上記のようなインビボ透過試験により測定された上記サンプル間隔での透過された量を上記サンプル間隔の時間数で割ったものから計算される。例えば、受容体媒体中へ透過された活性物質の量が0、2、4、8、12及び24時間目に測定された上記のインビトロ透過試験における皮膚透過速度は、12時間目の「皮膚透過速度」は、8時間から12時間までのサンプル間隔における透過された量を4時間で割ったものとして計算される。
【0059】
「累積皮膚透過速度」は、累積透過量を経過時間で割ることによりそれぞれの累積透過量から計算することができる。例えば、受容体媒体中に透過された活性物質の量が、例えば0、2、4、8、12及び24時間目に測定される上記のインビトロ透過試験において、12時間目の「累積皮膚透過速度」は、12時間の累積透過量(上を参照のこと)を12時間で割ったものとして計算される。
【0060】
本発明の意義の範囲内で、上記のパラメーター「透過された量」及び「皮膚透過速度」(さらに「累積透過量」及び「累積皮膚透過速度」)は、少なくとも3つのインビトロ透過試験実験から計算された平均値を指す。別の指示がなければ、これらの平均値の標準偏差(SD)は、式:
【数1】
[式中、nはサンプルサイズであり、
【数2】
は観察された値であり、そして
【数3】
は観察された値の平均値である]
を使用して計算された補正されたサンプル標準偏差を指す。
【0061】
試験間の絶対平均値の比較を可能にするために、同じ活性成分を含む参照処方を内部標準として使用してもよい。例えば、ジクロフェナク送達システムについて市販の参照製品Voltaren(R)パッチ及びブプレノルィン送達システムについて市販の参照製品Norspan(R)、または将来のこれらのシステムに基づいた市販の製品が内部標準として使用され得る。値、例えば前及び後の試験におけるそれぞれの参照製品の累積値の比較を使用して、試験ごとの差異を考慮に入れるための補正因子を得ることができる。
【0062】
本発明の意義の範囲内で、用語「長時間」は、少なくとももしくは約24時間、少なくとももしくは約48時間、少なくとももしくは約84時間、少なくとももしくは約168時間、少なくとももしくは約1日、少なくとももしくは約3.5日、もしくは少なくとももしくは約7日の期間に関し、又は約24時間~約168時間もしくは1~7日、もしくは約24時間~約84時間もしくは1~3.5日の期間に関する。
【0063】
本発明の意義の範囲内で、用語「室温」は、実験が行われる実験室における室内で見られる未修正の温度を指し、そして通常は15~35℃、好ましくは約18~25℃の範囲内にある。
【0064】
本発明の意義の範囲内で、用語「患者」は、処置の必要性を示唆する特定の症状の臨床病態を示した被験体、状態について予防的に(preventatively)もしくは予防的に(prophylactically)処置される被験体、又は処置しようとする状態と診断された被験体を指す。
【0065】
本発明の意義の範囲内で、用語「コーティング組成物」及び「コーティング混合物」は、溶媒中にマトリックス層の全ての成分を含む組成物を指し、これは裏打ち層又は剥離ライナー上にコーティングされて乾燥するとマトリックス層を形成し得る。
【0066】
本発明の意義の範囲内で、用語「感圧接着組成物」は、少なくとも溶媒(例えば、n-ヘプタン又は酢酸エチル)との混合物である感圧接着剤を指す。
【0067】
本発明の意義の範囲内で、用語「溶解する」は、溶液を得るプロセスを指し、この溶液は透明であり、裸眼で見えるようないずれの粒子も含有しない。
【0068】
本発明の意義の範囲内で、用語「溶媒」はいずれかの液体物質を指し、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレン、ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン及びそれらの混合物のような揮発性有機液体である。用語「活性薬剤のための溶剤」は、それが活性薬剤を可溶化することができ、かつそれを用いて活性薬剤-溶剤混合物を小さい沈着物(例えば、液滴)の形態でポリマーに基づいて製造されたマトリックス層中に分散させることが可能である溶媒のみを指すという点において区別されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1Aは、比較例1のジクロフェナク含有二相コーティング混合物を示す。図1Bは、比較例1のジクロフェナク含有二相マトリックス層を示す。
図2図2Aは、比較例2のジクロフェナク含有二相コーティング混合物を示す。図2Bは、比較例2のジクロフェナク含有二相マトリックス層を示す。
図3図3Aは、実施例1のジクロフェナク含有二相コーティング混合物を示す。図3Bは、実施例1のジクロフェナク含有二相マトリックス層を示す。
図4図4Aは、実施例2のジクロフェナク含有二相コーティング混合物を示す。図4Bは、実施例2のジクロフェナク含有二相マトリックス層を示す。
図5図5Aは、Voltaren(R)パッチ、比較例2、及び実施例2の96時間の時間間隔にわたる累積透過量を示す。図5Bは、Voltaren(R)パッチ、比較例2、及び実施例2の96時間の時間間隔にわたる皮膚透過速度を示す。
図6図6Aは、比較例3のブプレノルフィン含有二相コーティング混合物を示す。図6Bは、比較例3のブプレノルフィン含有二相マトリックス層を示す。
図7図7Aは、実施例4のブプレノルフィン含有二相コーティング混合物を示す。図7Bは、実施例4のブプレノルフィン含有二相マトリックス層を示す。
図8図8Aは、実施例5のブプレノルフィン含有二層コーティング混合物を示す。図8Bは、実施例5のブプレノルフィン含有二相マトリックス層を示す。
図9図9Aは、Norspan(R)、比較例3、実施例4、及び実施例5の168時間の時間間隔にわたる累積透過量を示す。図9Bは、Norspan(R)、比較例3、実施例4、及び実施例5の168時間の時間間隔にわたる皮膚透過速度を示す。
図10図10Aは、実施例7のブプレノルフィン含有二相コーティング混合物を示す。図10Bは、実施例7のブプレノルフィン含有二相マトリックス層を示す。
図11図11Aは、実施例8のブプレノルフィン含有二相コーティング混合物を示す。図11Bは、実施例8のブプレノルフィン含有二相マトリックスを示す。
図12図12Aは、比較例3、実施例7、及び実施例8の168時間の時間間隔にわたる累積透過量を示す。図12Bは、比較例3、実施例7、及び実施例8の168時間の時間間隔にわたる皮膚透過速度を示す。
図13A】実施例13Aは、実施例10a~10hに従う混合試験の結果を示す。
図13B】実施例13Bは、実施例10i~10rに従う混合試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
詳細な説明
TTS構造
本発明の特定の実施態様によれば、、活性薬剤の経皮投与のための経皮治療システムは活性薬剤含有層構造を含み、該活性薬剤含有層構造は、
A) 裏打ち層、及び
B) 二相マトリックス層
を含み、該二相マトリックス相は、
a) 少なくとも1つのポリマー70~100質量%を含む組成物を有する連続的外部相、
b) 活性薬剤、及び活性薬剤が内部相中で溶剤と溶液を形成するような十分な量の、活性薬剤のための溶剤を含む組成物を有する不連続内部相
[ここで不連続内部相は、連続的外部相中に分散された沈着物を形成する]、
並びに
c) 二相マトリックス層に基づいて0.1~20質量%の量の乳化剤
を有する。
【0071】
適切な乳化剤は、約500~1500rpmで等質量の連続的外部相の組成物と約1時間試験管中で混合された場合に、約20℃にて約24時間の貯蔵後に、試験管中の分離した相の高さ及び試験管中の総含有物の高さを比較することにより決定して、20%未満の相分離を示す連続的外部相の組成物との混合物を生じる乳化剤からなる群より選択される。
【0072】
いずれの理論に拘束されることも望まないが、乳化剤はTTSの製造の間及び貯蔵の間、特にせん断力が加えられる場合の二相マトリックス層の製造プロセスの間、二相構造(外部相中に分散された内部相)を安定化すると考えられている。内部相沈着物のより均一な寸法分布に起因して、合体に対する抵抗性は増加し、そして沈着物の直径は有意に増加しない。
【0073】
本発明の特定の実施態様によれば、二相マトリックス層はTTSの皮膚接触層である。
【0074】
本発明の特定の他の実施態様によれば、さらなる速度制御膜及び/又はさらなる皮膚接触層(活性薬剤を含まないかまたは活性薬剤を含有する)が存在していてもよい。
【0075】
本発明の特定の実施態様によれば、TTSは、経皮治療システム全体の接着特性を増強するために、それに付着された活性薬剤含有自己接着層構造に加えて、より大きな活性薬剤非含有自己接着層構造、例えば周辺の接着剤または接着性オーバーレイを含む。上記活性薬剤非含有自己接着層構造は裏打ち層も含む。特定の実施態様において、このさらなる層はベージュ色である。上記第二の活性薬剤非含有自己接着層構造の面積は、TTSの全体の寸法を増大するが、放出面積は増大しない。活性薬剤含有及び活性薬剤非含有自己接着層構造中の感圧接着剤は、同じであっても異なっていてもよい。
【0076】
本発明によれば、活性薬剤含有層構造は、裏打ち層及び活性薬剤含有二相マトリックス層を含む。特定の実施態様において、活性薬剤含有層構造はこれら2つの要素からなる。
【0077】
本発明の好ましい実施態様において、活性薬剤含有層構造は活性薬剤含有自己接着層構造であり、裏打ち層及び(活性薬剤含有)感圧接着二相マトリックス層を含む。活性薬剤含有層構造は、さらなる皮膚接触層をさらに含み得る。
【0078】
二相マトリックス層
本発明に従うTTSの二相マトリックス層は、連続的外部相中に分散された内部相の沈着物、及び乳化剤を含有する。
【0079】
本発明によれば、活性薬剤含有二相層の連続的外部相は、少なくとも1つのポリマー70質量%~100質量%を含む組成物である。
【0080】
本発明によれば、不連続内部相は、活性薬剤、及び活性薬剤が内部相中で溶剤と溶液を形成するような十分な量の活性薬剤のための溶剤を含む組成物である。
【0081】
本発明によれば、乳化剤は二相マトリックス層中に0.1~20質量%の量で含有され、そして約500~1500rpmで等質量の連続的外部相の組成物と約1時間試験管中で混合された場合に、約20℃にて約24時間の貯蔵後に、試験管中の分離した相の高さ及び試験管中の総含有物の高さを比較することにより決定して、20%未満の相分離を示す連続的外部相の組成物との混合物を生じる乳化剤からなる群より選択される。
【0082】
本発明の好ましい実施態様において、乳化剤は、二相マトリックス層に基づいて0.1から20質量%未満、または0.5~10質量%、または0.5~8質量%、または0.5~5質量%の量で含有される。
【0083】
活性薬剤は、二相マトリックス層に基づいて1~30質量%の量、好ましくは1~15質量%の量、より好ましくは2~12質量%の量で含有され得る。
【0084】
活性薬剤はまた、二相マトリックス層に基づいて0.1~5mg/cmの量、好ましくは0.5~1.5mg/cmの量、より好ましくは3~5mg/cmの量で含有され得る。
【0085】
活性薬剤のための溶剤は、活性薬剤が内部相中で溶剤と溶液を形成するような十分な量で存在する。従って二相マトリックス層に含有される活性薬剤のための溶剤の量は、活性薬剤及び溶剤に依存する。
【0086】
本発明の好ましい実施態様において、活性薬剤のための溶剤は、二相マトリックス層に基づいて2~20質量%の量、好ましくは5~15質量%の量、より好ましくは6~12質量%の量で含有される。
【0087】
本発明の好ましい実施態様において、活性薬剤のための溶剤は、カルボン酸類(例えば、C~C24)、4つより多い炭素原子を有する長鎖アルコール(例えばC~C26)、脂肪アルコールのポリオキシエチレンエーテル、4つより多い炭素原子を有する長鎖エステル(例えば、C~C26)、またはそれらの混合物からなる群より選択される。
【0088】
本発明の好ましい実施態様において、活性薬剤のための溶剤は、カルボン酸(例えば、C~C24)、4つより多い炭素原子を有する長鎖アルコール(例えば、C~C26)、脂肪アルコール、脂肪アルコールのポリオキシエチレンエーテル、4つより多い炭素原子を有する長鎖エステル(例えば、C~C26)、脂肪酸エステル、またはそれらの混合物からなる群より選択される。好ましくは、活性薬剤はカルボン酸中の溶液で、二相マトリックス層の不連続内部相において活性薬剤-カルボン酸混合物を形成する。
【0089】
本発明の好ましい実施態様において、活性薬剤のための溶剤は、カルボン酸、脂肪アルコール、脂肪アルコールのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸エステル、またはそれらの混合物からなる群より選択される。好ましくは、活性薬剤はカルボン酸中の溶液で、二相マトリックス層の不連続内部相において活性薬剤-カルボン酸混合物を形成する。
【0090】
適切なカルボン酸は、C~C24カルボン酸からなる群より選択され得、これらとしては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、レブリン酸、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0091】
本発明の特定の実施態様によれば、ブプレノルフィンが活性薬剤として使用される場合、二相マトリックス層は、レブリン酸中に溶解されたブプレノルフィンの分散された沈着物を含有する。
【0092】
本発明の特定の他の実施態様によれば、ジクロフェナクが活性薬剤として使用される場合、二相マトリックス層は、オレイン酸中に溶解されたジクロフェナクの分散された沈着物を含有する。
【0093】
レブリン酸及びオレイン酸は、ポリマー接着剤の有機溶媒中にはやや溶けにくい。結果として、活性薬剤及び活性薬剤のためのこのような溶剤(レブリン酸またはオレイン酸)の液体混合物は、ポリマー混合物中に分散され得、分散は有機溶媒の除去後も保持される。この種のマトリックス層において、活性薬剤の溶解性は、実質的に活性薬剤のための溶剤の量のみに依存する。
【0094】
本発明の特定の好ましい実施態様において、カルボン酸(例えば、オレイン酸またはレブリン酸)は、二相マトリックス層に基づいて2~20質量%、好ましくは5~15質量%、特に6~12質量%の量で含有される。
【0095】
本発明のさらに別の実施態様において、カルボン酸(例えば、オレイン酸またはレブリン酸)及び活性薬剤は、経皮治療システムに0.3:1~5:1、好ましくは0.5:1~2:1、特に2:1~5:1の量の比で含有される。
【0096】
例えばレブリン酸のようなカルボン酸は、同様に皮膚を通して吸収され得るので、TTS中の量は、適用時間が経過するにつれて少なくなり得、そして例えばブプレノルフィンのような活性薬剤の溶解性の減少をもたらし得る。結果として、枯渇に起因する例えばブプレノルフィンのような活性薬剤の熱力学的活量の減少は、次いで活性薬剤/カルボン酸沈着物、例えばブプレノルフィン/レブリン酸沈着物またはジクロフェナク/オレイン酸沈着物中の減少した薬物溶解性により相殺される。
【0097】
本発明に従う二相マトリックス層は、60g/mより大きい、または60g/mより大きく200g/mまで、好ましくは70m/gより大きく120g/mまで、より好ましくは80~120g/m、そしてなおより好ましくは80~100g/mの面積質量を有し得る。
【0098】
特定の実施態様によれば、二相マトリックス層は80~120g/mの面積質量を有し、そしてジクロフェナクナトリウムは二相層の1~15質量%の量で含有される。
【0099】
特定の実施態様によれば、二相マトリックス層は80~120g/mの面積質量を有し、そしてブプレノルフィン塩基は二相層の1~15質量%の量で含有される。
【0100】
本発明の好ましい実施態様において、二相マトリックス層は感圧接着性二相マトリックス層である。
【0101】
特定の実施態様によれば、二相マトリックス層は、溶媒含有二相コーティング混合物から、フィルム上にコーティングし、そして溶媒を蒸発させた後に得られる。
【0102】
本発明の特定の実施態様において、二相マトリックス層における不連続内部相の含有量は、二相マトリックス層の体積に基づいて5~40体積%である。
【0103】
本発明によれば、分散した沈着剤は、50μm未満、好ましくは40μm未満、より好ましくは30μm未満、特に20μm未満の最大球寸法を有し得る。内部相沈着物(球)の寸法を、上により詳細に記載したように、光学顕微鏡測定により決定することができる。
【0104】
本発明の特定の実施態様において、二相マトリックス層は粘性増加物質をさらに含み、これは好ましくは二相マトリックス層の約0.1質量%~約15質量%、好ましくは約0.1%~約8質量%の量で含有される。
【0105】
適切な粘性増加物質は、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、高分子量ポリアクリル酸及び/又はそれらの塩及び/又はそれらの誘導体、例えばエステル、ポリビニルピロリドン、コロイド状シリコーンジオキシド、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、キサンタンガム、ベントナイト、カラゲナン及びグアーガム、並びにそれらの混合物からなる群より選択され得る。特定の実施態様において、本発明に従うTTSは、このような粘性増加物質を含有しない。
【0106】
粘性増加物質が含有される本発明の特定の実施態様において、粘性増加物質は、ポリビニルピロリドン、より好ましくは可溶性ポリビニルピロリドンである。用語「可溶性ポリビニルピロリドン」は、少なくともエタノール中に、好ましくは水、ジエチレングリコール、メタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、クロロホルム、塩化メチレン、2-ピロリドン、マクロゴール400、1,2プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、グリセロール、トリエタノールアミン、プロピオン酸及び酢酸中にも10%より多く溶解するポリビニルピロリドンを指す。市販されているポリビニルピロリドン類の例としては、BASFにより供給されるKollidon(R) 12 PF、Kollidon(R) 17 PF、Kollidon(R) 25、Kollidon(R) 30及びKollidon(R) 90 FまたはポビドンK90Fが挙げられる。市販されているポリビニルピロリドン類の例としては、BASFにより供給されるKollidon(R) 12 PF、Kollidon(R) 17 PF、Kollidon(R) 25、Kollidon(R) 30及びKollidon(R) 90 F、またはポビドンK90Fが挙げられる。特に、粘性増加物質は、K値30または90、好ましくは90を有する可溶性ポリビニルピロリドンである。本発明の意義の範囲内で、K値は、「ポビドン(Povidone)」についてPh.Eur.及びUSPモノグラフに従って水中のポリビニルピロリドンの相対粘度から計算される値を指す。
【0107】
本発明に従うTTSの二相マトリックス層は、1つまたはそれ以上の抗酸化剤を更に含み得る。適切な抗酸化剤は、二亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール及びそのエステル、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールまたは没食子酸プロピル、好ましくは二亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル及びトコフェロールである。抗酸化剤は、二相マトリックス層の約0.001~約0.5%の量で都合よく存在し得る。
【0108】
本発明に従う二相マトリックス層は、上述の成分に加えて、例えば、可溶化剤、フィラー、増粘剤、活性薬剤透過性を増加させる意味で角質層のバリア特性に影響を及ぼす物質、pH調節剤、及び保存料の群からの他の様々な賦形剤または添加剤を更に含み得る。
【0109】
一般に、さらなる添加剤が必要とされないことが本発明にしたがって好ましい。特定の実施態様において、添加剤はTTS中に存在しない。
【0110】
さらなる皮膚接触層を使用する場合、活性薬剤のための溶剤、活性薬剤、任意の粘性増加物質及び任意のさらなる賦形剤または添加剤のような二相マトリックス層の成分は、時間が経つにつれてさらなる皮膚接触層に移動し得る。しかしこれは、成分及び皮膚接触層の材料に依存する。
【0111】
本発明の特定の実施態様において、二相マトリックス層は、カルボン酸(例えば、オレイン酸またはレブリン酸)中の溶液の活性薬剤、及び粘性増加物質(例えば、ポリビニルピロリドン)を含み、二相層の不連続内部相において粘性増加物質、カルボン酸及び活性薬剤を含有する混合物を形成する。
【0112】
本発明の特定の他の実施態様において、二相マトリックス層は、カルボン酸(例えば、オレイン酸またはレブリン酸)中の溶液の活性薬剤を含み、そして粘性増加物質(例えばポリビニルピロリドン)は二相マトリックス層中に存在しない。
【0113】
乳化剤
本発明によれば、経皮治療システムは、二相マトリックス層に基づいて0.1~20質量%の量の乳化剤を含み、ここで乳化剤は、約500~1500rpmで等質量の連続的外部相の組成物と約1時間試験管中で混合された場合に、約20℃にて約24時間の貯蔵後に、試験管中の分離した相の高さ及び試験管中の総含有物の高さを比較することにより決定して、20%未満の相分離を示す連続的外部相の組成物との混合物を生じる乳化剤からなる群より選択される。相分離がそれ以上の20%であると観察される場合、試験された乳化剤は適していないと本発明内で理解されるべきである。
【0114】
乳化剤試験のための混合は、メカニカルシェイカー、例えばIKA Vibrax-VXRを用いて行われ得、ここで混合は3~5段階の間で調整される。しかし、他のメカニカルシェイカーを使用してもよい。
【0115】
二相マトリックス層は、0.1から20質量%未満、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは0.5~8質量%、そして特に0.5~5質量%の本発明の従う乳化剤を含有し得る。
【0116】
本発明に従って適切な乳化剤は、ポリシロキサンに基づく乳化剤、ポリイソブチレンに基づく乳化剤、エトキシ化ヒマシ油に基づく乳化剤、ポロキサマーに基づく乳化剤、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0117】
本発明の特定の実施態様において、乳化剤はポリシロキサンに基づく。好ましくは、本発明に従う乳化剤は、ポリエチレングリコールと共重合または交差重合された(crosspolymerized)少なくとも1つのポリジメチルシロキサンを含み、ここで好ましくは少なくとも1つのポリジメチルシロキサンは、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールと共重合されている。ポリジメチルシロキサンと共重合するために使用されるポリエチレングリコールは、5~30、好ましくは5~25、特に10~20または7~20のエチレンオキシド繰り返し単位平均数を有する。
【0118】
ポリシロキサンに基づく適切な乳化剤は、ジメチコンPEG-7ホスフェート、ジメチコンPEG-10ホスフェート、ジメチコンPEG/PPG-7/4ホスフェート、ジメチコンPEG/PPG-12/4ホスフェート、PEG/PPG-3/10ジメチコン、PEG/PPG-4/12ジメチコン、PEG/PPG-6/11ジメチコン、PEG/PPG-8/14ジメチコン、PEG/PPG-14/4ジメチコン、PEG/PPG-15/15ジメチコン、PEG/PPG-16/2ジメチコン、PEG/PPG-17/18ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、PEG/PPG-19/19 v、PEG/PPG-20/6ジメチコン、PEG/PPG-20/15ジメチコン、PEG/PPG-20/20ジメチコン、PEG/PPG-20/29ジメチコン、PEG/PPG-22/23ジメチコン、PEG/PPG-22/24ジメチコン、PEG/PPG-25/25ジメチコン、PEG/PPG-27/27 ジメチコン界面活性剤-可溶化剤-PEG/PPG-20/23ジメチコン、PEG/PPG-23/6ジメチコンからなる群より選択され得る。乳化剤がPEG-12ジメチコンクロスポリマー、PEG-10ジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、ビス-イソブチルPEG/PPG-18/18ジメチコンコポリマー、及びそれらの混合物、特にPEG-12ジメチコンクロスポリマー、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、及びそれらの混合物からなる群より選択されるポリシロキサンに基づくものであることが本発明に従う好ましい実施態様である。
【0119】
好ましい実施態様において、本発明に従う乳化剤は、PEG-12ジメチコン及びPEG/PPG-19/19ジメチコンの混合物に基づく。さらに別の好ましい実施態様において、本発明に従う乳化剤はPEG-12ジメチコンである。
【0120】
本発明に従う乳化剤は好ましくはポリシロキサンに基づき、そして溶媒1~95質量%を含有する分散液として使用される。
【0121】
本発明に従う乳化剤は、好ましくはポリシロキサンに基づくものであり、そしてシクロペンタシロキサン、ジメチコン、並びにC13-16イソパラフィン及びC10-13イソパラフィンの混合物からなる群より選択される溶媒を含む分散液として使用される。
【0122】
本発明の特定の実施態様において、乳化剤はPEG-12ジメチコンクロスポリマーに基づくものであり、そしてPEG/PPG-18/18ジメチコンに基づく85~90質量%のシクロペンタシロキサンを含有する分散液として使用され、そしてPEG/PPG-19/19 ジメチコンに基づく85~90質量%のシクロペンタシロキサンを含有する分散液として使用され、そして40~60質量%のシクロペンタシロキサンを含有する分散液として使用され、またはPEG-12 ジメチコン及びPEG/PPG-19/19 ジメチコンの混合物に基づき、そしてここでPEG/PPG-19/19 ジメチコンは、40~60質量%のシクロペンタシロキサンを含有する分散液として使用される。本発明に従う乳化剤は、PEG-12 ジメチコン及びPEG/PPG-19/19 ジメチコンの混合物に基づき、そしてここでPEG/PPG-19/19 ジメチコンは、40~60質量%のシクロペンタシロキサンを含有する分散液として使用され、PEG-12 ジメチコンとPEG/PPG-19/19 ジメチコン分散液との質量比は0.5:1~1:5、好ましくは1:1~1:3、特に1:1.1~1:2.3である。
【0123】
本発明の別の特定の実施態様において、乳化剤はポリイソブチレンに基づく。好ましくは、本発明に従う乳化剤は、ポリイソブチレンに基づく親水性乳化剤である。
【0124】
ポリイソブチレンに基づく乳化剤はコハク酸誘導体に連結された少なくとも1つのポリイソブチレンを含むことが好ましい。好ましくは、ポリイソブチレンは数平均分子量Mn=300~10,000を有する。コハク酸誘導体に連結された少なくとも1つのポリイソブチレンを含むポリイソブチレンに基づく乳化剤は、例えば、製品名LAKPOL(PIBSA)、例えばLAKPOL 1110(PIBSA)で入手可能である。
【0125】
ポリイソブチレンに基づく乳化剤がコハク酸誘導体に連結された少なくとも1つのポリイソブチレンを含む場合、コハク酸誘導体は、好ましくはエチレンオキシド繰り返し単位の平均数1~50、または1~10を有する少なくとも2つのポリエチレングリコールを含む親水性化合物に連結される。
【0126】
本発明の別の特定の実施態様において、乳化剤はエトキシ化ヒマシ油に基づく。適切なエトキシ化ヒマシ油は、オキシエチレン単位20~50、好ましくは30~40のポリオキシルヒマシ油、及びオキシエチレン単位30~70、好ましくは35~60のポリオキシル硬化ヒマシ油からなる群より選択される。好ましくは、エトキシ化ヒマシ油は、ポリオキシル35硬化ヒマシ油、ポリオキシル40ヒマシ油、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、ポリオキシル60硬化ヒマシ油、及びそれらの混合物からなる群より選択される。好ましくは、乳化剤はポリオキシル35硬化ヒマシ油である。
【0127】
本発明の別の特定の実施態様において、乳化剤はポロキサマーに基づく。ポリオキシエチレン-プロピレングリコールコポリマー及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーとしても知られるポロキサマーは、Lutrol(R)、Monolan(R)、Pluronic(R)、Supronic(R)、Synperonic(R)のようなポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマーのファミリーの商標名としてポリマーの分野で知られている。
【0128】
好ましくは、ポロキサマーは20℃で液体である。特に、ポロキサマーの2つのポリエチレンオキシドブロックは、エチレンオキシド繰り返し単位数12を有し、そしてポロキサマーのプロピレンオキシドブロックは、プロピレンオキシド繰り返し単位数20を有する。
【0129】
本発明によれば、商標名Lutrol(R)、Monolan(R)、Pluronic(R)、Supronic(R)、Synperonic(R)で市販されているポロキサマーが好ましく、特に、Lutrol(R) L44が好ましい。
【0130】
本発明に従う乳化剤は、本発明に従う経皮治療システムの製造プロセスの間の二相コーティング混合物中に分散された沈着物の最大寸法を減少させる。
【0131】
さらに、本発明に従う乳化剤は、本発明に従う経皮治療システムの二相マトリックス層中に分散された沈着物の最大寸法を減少させる。
【0132】
ポリマー
本発明に従うTTSは、二相マトリックス層の連続的外部相中に少なくとも1つのポリマーを含む。
【0133】
好ましくは、連続的外部相中の少なくとも1つのポリマーは疎水性ポリマーである。
【0134】
ポリシロキサン、ポリイソブチレン、またはスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマーに基づくポリマーが好ましい。本発明の特定の実施態様において、連続的外部相中の少なくとも1つのポリマーはポリシロキサンまたはポリイソブチレンである。
【0135】
本発明の特定の実施態様において、連続的外部相中の少なくとも1つのポリマーは、感圧接着性ポリマーである。
【0136】
本発明の特定の実施態様において、連続的外部相の組成物は、感圧接着組成物である。
【0137】
本発明の特定の実施態様において、連続的外部相中のポリマーは、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、スチレン及びブタジエンのコポリマー、スチレン及びイソプレンのコポリマーからなる群より選択される感圧接着性ポリマーである。
【0138】
本発明の特定の実施態様において、連続的外部相中の少なくとも1つのポリマーは、ポリシロキサンまたはポリイソブチレンに基づく感圧接着性ポリマーである。
【0139】
ホットメルトコーティングに適した感圧接着性ポリマーは、160℃で60Pa・s以下、80Pa・s以下、100Pa・s以下、120Pa・s以下または多くとも150Pa・sの動的粘性を示す。感圧接着性ポリマーの160℃での動的粘性に依存して、ワックス、シリコーンオイル、グリセリン、脂肪酸もしくは多価アルコールとのグリセリンからの縮合物、または酢酸ラウリル、または特にグリセロールモノラウレート、酢酸ラウリル、式R-C(O)-OR’のワックス、アルキルメチルシロキサンワックス、シロキシ化(siloxated)ポリエーテルワックス、有機ワックスまたはグリセリンのような軟化剤の添加が、ホットメルト製造プロセスの間、適切な方法で感圧接着性ポリマーの粘性を調整するために必要とされ得る。
【0140】
溶媒含有コーティング混合物に適した感圧接着性ポリマーは、160℃で150Pa・sより高い動的粘度を示し、従ってホットメルト製造プロセスに適するように軟化剤を加える必要がある。
【0141】
少なくとも1つのポリマー(例えば、感圧接着剤)が二相マトリックス層に含有され、そして存在する場合はさらなる接着性オーバーレイ中にさらに含有されていてもよい。
【0142】
好ましい感圧接着剤は、通常はn-ヘプタン及び酢酸エチルのような溶媒中で供給され使用される。感圧接着剤の固体含有量は、通常は30%と80%との間である。
【0143】
本発明に従う適切なポリマーは、例えば商標名Bio-PSA(ポリシロキサン)、OppanolTM(ポリイソブチレン)、またはJSR-SIS(ストレン-イソプレン-スチレンコポリマー)で市販されている。
【0144】
ポリシロキサンに基づく感圧接着剤は、シリコーン系感圧接着剤、またはシリコーン感圧接着剤とも呼ばれ得る。ポリシロキサンに基づく感圧接着剤は、好ましくは60%と80%との間の固体含有量を有し得る。このようなシリコーン系PSAは、他の有機感圧接着剤とは異なり、抗酸化剤、安定剤、可塑剤、触媒または他の潜在的に抽出可能な成分のような添加剤を必要としない。これらの感圧接着剤は、適切な粘性及び湿った皮膚を含む様々なタイプの皮膚への急速な結合、適切な接着及び粘着品質、皮膚への長続きする接着、高度の可撓性、水分の透過性、並びに多くの活性物質及びフィルム基材に対する適合性を提供する。それらに十分なアミン抵抗性を与えることが可能であり、したがって、アミンの存在下での増加された安定性を与えることが可能である。このような感圧接着剤は、ポリマー中樹脂(resin-in-polymer)の概念に基づくものであり、この概念ではシラノール末端ブロックポリジメチルシロキサンのシリカ樹脂との縮合反応により、ポリシロキサンが製造され、これはアミン安定性のために、残留シラノール官能基がトリメチルシロキシ基でさらにキャッピングされる。シラノール末端ブロックポリジメチルシロキサン含有量は、粘弾性挙動の粘性成分に寄与し、そして接着剤のぬれ特性及び展延特性に影響を与える。樹脂は増粘剤及び補強剤として作用し、そして弾性成分に参加する。シラノール末端ブロックポリジメチルシロキサンと樹脂との間の正しいバランスは、正しい接着特性をもたらす。
【0145】
市販されているシリコーン系PSA組成物の例としては、Dow Corningにより製造されそして典型的にn-ヘプタンまたは酢酸エチル中で供給される標準的BIO-PSAシリーズ(7-4400、7-4500及び7-4600シリーズ)、及びアミン適合性(末端キャップ)BIO-PSAシリーズ(7-4100、7-4200及び7-4300シリーズ)が挙げられる。例えば、BIO-PSA 7-4201は、25℃での溶液粘度450mPa s及びヘプタン中の固体含有量約60%並びに0.01rad/sで30℃での複素粘度1×10ポアズで特徴づけられる。BIO-PSA 7-4301は、25℃での溶液粘度500mPa s及びヘプタン中の固体含有量約60%並びに0.01rad/sで30℃での複素粘度5×10ポアズを有する。
【0146】
ポリシロキサンは、n-ヘプタン、酢酸エチルまたは他の揮発性シリコーン液のような溶媒中で供給されそして使用される。本発明についてはn-ヘプタンが好ましい。ポリシロキサンの溶媒中の固体含有量は、通常60と85%との間、好ましくは70と80%との間である。当業者は、固体含有量が適切な量の溶媒を加えることにより改変され得ることを知っている。
【0147】
本発明に従うポリシロキサンに基づく好ましい感圧接着剤は、約150mPa sより高い、又は約200mPa s~約700mPa sの、25℃及びn-ヘプタン中の固体含有量60%での溶液粘度により特徴づけられる。これらはまた、好ましくはスピンドル数5を備えたBrookfield RVT粘度計を使用して50rpmで測定して、0.01rad/s、30℃で約1x10ポアズ又は約lx10~約9x10ポアズの複素粘度により特徴づけられ得る。
【0148】
本発明に従う適切なポリイソブチレンはOppanol(R)の商標名で入手可能である。高分子量ポリイソブチレン(B100/B80)と低分子量ポリイソブチレン(B10、B11、B12、B13)との組み合わせが使用され得る。低分子量ポリイソブチレン対高分子量ポリイソブチレンの適切な比は、100:1~1:100の範囲内、好ましくは95:5~40:60、より好ましくは90:10~80:20の範囲内である。ポリイソブチレン組み合わせの好ましい例は、85/15の比のB10/B100である。Oppanol(R)B100は、粘度平均分子量M 1,110,000、及び質量平均分子量M 1,550,000、及び平均分子量分布M/M2.9を有する。Oppanol(R)B10は、粘度平均分子量M 40,000、及び質量平均分子量M 53,000、及び平均分子量分布M/M3.2を有する。特定の実施態様において、ポリブテンはポリイソブチレンに加えられ得る。溶媒中のポリイソブチレンの固体含有量は、通常は30と70%との間、好ましくは35と65%との間である。当業者は、固体含有量が適切な量の溶媒を加えることにより改変され得ることを知っている。
【0149】
活性薬剤
活性薬剤は、患者への経皮送達に適したいずれの成分でもよい。適切な活性薬剤としては、限定されないが、ブプレノルフィン及びジクロフェナクが挙げられる。
【0150】
本発明に従う特定の実施態様において、活性薬剤は全身処置に適した活性薬剤、すなわち、全身循環への投与のための活性薬剤である。
【0151】
本発明に従う別の特定の実施態様において、活性薬剤は局所処置に適した活性薬剤、すなわち処置しようとする局所領域への局所投与のための活性薬剤である。
【0152】
本発明によれば、活性薬剤はTTS中に上で定義されたようないずれかの形態で存在し得る。
【0153】
従って、特定の実施態様において、二相マトリックス層中の活性物質は、遊離塩基の形態で含まれ得る。
【0154】
他の特定の実施態様において、二相マトリックス層中の活性物質は、薬学的に許容しうる化学的及び形態学的形態並びに物理状態の形態、例えば薬学的に許容しうる塩の形態で含まれ得る。
【0155】
特定の実施態様において、二相マトリックス層は、遊離塩基の形態の活性薬剤を組み込むことにより得ることができる。さらなる実施態様において、二相マトリックス層は、その薬学的に許容しうる塩の形態の活性薬剤を組み込むことにより得ることができる。
【0156】
多くの場合、活性薬剤は連続的外部相のポリマー内には溶解しないが、不連続内部相内に溶解し、これが連続的外部層のポリマー内に組み込まれたマイクロリザーバを形成する。
【0157】
システム中に組み込まれる活性薬剤の量は、多くの因子に依存し、これらとしては、限定されないが、特定の活性薬剤、所望される治療効果、及びそのシステムが治療を提供する期間が挙げられる。大部分の活性薬剤については、皮膚を通る活性薬剤の移動が経皮送達における律速段階である。従って、活性薬剤の量及び放出速度は、典型的には、長期間にわたってゼロ次時間依存性を特徴とする経皮送達を生じるように選択される。システム中の活性薬剤の最小量は、システムが治療を提供しようとする期間における皮膚または他の基材を通過する活性薬剤の量に基づいて選択される。
【0158】
本発明の好ましい実施態様において、活性薬剤は1~50mgの量で経皮治療システム中に含有される。
【0159】
本発明のさらに別の好ましい実施態様において、活性薬剤は二相マトリックス層に基づいて1~30質量%、好ましくは1~15質量%、より好ましくは2~12質量%の量で含有される。
【0160】
本発明の更に別の好ましい実施態様において、活性薬剤は、二相マトリックス層に基づいて0.1~5mg/cm、好ましくは0.5~1.5mg/cm、または3~5mg/cmの量で含有される。
【0161】
本発明に従う特定の実施態様において、活性薬剤はブプレノルフィン及びジクロフェナクからなる群より選択される。
【0162】
本発明に従う特定の実施態様において、活性薬剤はブプレノルフィン塩基であり、ここでブプレノルフィン含有層は、好ましくは遊離塩基の形態のブプレノルフィンを組み込むことにより得ることができる。ブプレノルフィン塩基が活性薬剤である場合、ブプレノルフィン塩基は二相マトリックス層の1~15質量%、好ましくは8~12質量%または5~7質量%の量で含有される。
【0163】
本発明に従う特定の実施態様において、活性薬剤はジクロフェナクナトリウムである。ジクロフェナクナトリウムが活性薬剤である場合、ジクロフェナクナトリウムナトリウムは二相マトリックス層の1~15質量%、好ましくは2~8質量%、より好ましくは3~5質量%の量で含有される。
【0164】
本発明の特定の実施態様において、活性薬剤はブプレノルフィンであり、少なくとも1つのポリマーはポリシロキサン又はポリイソブチレンに基づく感圧接着剤であり、乳化剤はポリシロキサンに基づき、そして二相マトリックス層はレブリン酸を更に含有し、そしてここで好ましくはレブリン酸及びブプレノルフィンは経皮治療システム中に0.5:1~2:1の量の比で含有される。
【0165】
本発明の別の特定の実施態様において、活性薬剤はジクロフェナクであり、少なくとも1つのポリマーはポリシロキサン又はポリイソブチレンに基づく感圧接着剤であり、乳化剤はポリシロキサンに基づき、そして二相マトリックス層はオレイン酸をさらに含有し、そしてここで好ましくはオレイン酸及びジクロフェナクは経皮治療システム中に2:1~5:1の量の比で含有される。
【0166】
製造方法
一局面によれば、本発明は、活性薬剤及び内部相において活性薬剤が溶剤とともに溶液を形成するように十分な量の活性薬剤のための溶剤(例えば、カルボン酸)を含む組成物を有する不連続内部相を含む二相コーティング混合物を安定化する方法に関し、該内部相はポリマーを含む連続的外部相中に分散された沈着物を形成し、
該方法は、約500~1500rpmで等質量の連続的外部相の組成物と約1時間試験管中で混合された場合に、約24時間約20℃で貯蔵した後、試験管中の分離した相の高さ及び試験管中の総含有物の高さを比較することにより決定して、20%未満の相分離を示す連続的外部相の組成物との混合物を生じる乳化剤からなる群より選択される乳化剤と、二相コーティング混合物を混合することにより安定化するものである。
【0167】
さらなる局面によれば、本発明は、上記方法により得ることができる安定化された二相コーティング混合物に関し、ここで二相コーティング混合物中の分散された沈着物は55μm未満の最大滴定寸法を有する。
【0168】
本発明はさらに、
(1) 本発明に従って安定化された二相コーティング混合物を製造する工程、
(2) 安定化された二相コーティング混合物を、所望の面積質量を生じる量でフィルム上にコーティングする工程、
(3) 溶媒を蒸発させて、所望の面積質量を有する二相マトリックス層を生じる工程
を含む、二相マトリックス層の製造方法に関する。
【0169】
本発明はさらに、
(1)
a. ポリマー(例えば、ポリシロキサン又はポリイソブチレン)、
b. 活性薬剤(例えば、ブプレノルフィン又はジクロフェナク)、
c. 活性薬剤のための溶剤(例えば、レブリン酸又はオレイン酸)、
d. 乳化剤(例えば、ポリシロキサン又はポリイソブチレンに基づく乳化剤)、
e. 溶媒(例えば、n-ヘプタン及びエタノール又はn-ヘキサン及びメタノール)、
f. 場合により粘性増加物質(例えば、ポリビニルピロリドン)及び/又はさらなる賦形剤もしくは添加剤、
を含む安定化された二相コーティング混合物を供給する工程、
(2) 安定化された二相コーティング混合物を、所望の面積質量を生じる量でフィルム上にコーティングする工程、
(3) 溶媒を蒸発させて、所望の面積質量を有する二相マトリックス層を生じる工程、
(4) 二相マトリックス層を裏打ち層に積層して、活性薬剤含有層構造を得る工程、
(5) 場合により、活性薬剤含有層構造をさらなる皮膚接触層に積層する工程、
(6) 場合により、ブプレノルフィン含有自己接着性層構造から所望の放出面積を有する個々のシステムを打ち抜く工程、及び
(7) 場合により、裏打ち層及び活性薬剤非含有感圧接着剤層も含む、ブプレノルフィン含有自己接着性層構造の個々のシステムよりも大きい活性薬剤非含有自己接着性層に、個々のシステムを接着する工程
を含む、経皮治療システムを製造する方法に関する。
【0170】
本発明の特定の好ましい実施態様によれば、上記製造方法の工程1において、レブリン酸はブプレノルフィンのための溶剤として使用され、これら2つはエタノール中に溶解され、そしてその後、ヘプタン中のポリシロキサンに基づく感圧接着剤中に懸濁されて、ブプレノルフィン含有二相混合物を生じる。
【0171】
本発明の特定の他の好ましい実施態様によれば、上記製造方法の工程1において、オレイン酸はジクロフェナクのための溶剤として使用され、これら2つはメタノールに溶解され、そしてその後、ヘプタン中のポリシロキサンに基づく感圧接着剤又はヘキサン中のポリイソブチレンに基づく感圧接着剤中に懸濁されて、ジクロフェナク含有二相混合物を生じる。
【0172】
放出特徴
本発明に従うTTSは、処置しようとする局所領域に、又は全身循環に、予め規定された長期間の間、好ましくは24、84、又は168時間、活性薬剤を経皮投与するために設計される。
【0173】
活性薬剤の皮膚透過速度が治療効果のために十分であるか否かは、同じ活性薬剤を含むフランツ拡散セル皮膚透過速度を、本発明に従うTTSのフランツ拡散セル皮膚透過速度と比較することにより決定することができる。
【0174】
一実施態様によれば、活性薬剤としてブプレノルフィンを含有する本発明の1つの特定の局面に従うTTSは、96時間から168時間までの72時間の時間間隔で市販のブプレノルフィン参照経皮治療システム(例えば、BuTrans(R))との比較試験において測定した場合に、治療上有効なブプレノルフィンの皮膚透過速度を生じる。
【0175】
1つの特定の実施態様によれば、活性薬剤としてブプレノルフィンを含有する本発明の1つの特定の局面に従うTTSは、市販のブプレノルフィン参照経皮治療システム(例えば、BuTrans(R))が72時間から168時間までの96時間の時間間隔で提供される比較試験において測定された場合、治療上有効であるブプレノルフィンの皮膚透過速度を生じる。好ましくは、市販のブプレノルフィン参照経皮治療システムを用いる比較試験において8時間から168時間の160時間の時間間隔で測定された場合に治療上有効な皮膚透過速度を生じる。
【0176】
一実施態様によれば、活性薬剤としてブプレノルフィンを含有する本発明の1つの特定の局面に従うTTSは、約168時間のヒト患者の皮膚上の投与期間の間、約168時間治療有効量のブプレノルフィンを提供する。
【0177】
一実施態様によれば、活性薬剤としてジクロフェナクを含有する本発明の1つの特定の局面に従うTTSは、市販のジクロフェナク参照経皮治療システム(例えば、Voltaren(R)パッチ)を用いて8時間から24時間までの16時間の時間間隔で比較試験において測定した場合に、治療上有効なジクロフェナクの皮膚透過速度を生じる。
【0178】
一実施態様によれば、活性薬剤としてジクロフェナクを含有する本発明の1つの特定の局面に従うTTSは、市販のジクロフェナク参照経皮治療システム(例えば、Voltaren(R)パッチ)を用いて8時間から48時間までの40時間の時間間隔で比較試験において測定した場合にジクロフェナクの治療上有効な皮膚透過速度を生じる。
【0179】
一実施態様によれば、活性薬剤としてジクロフェナクを含有する本発明の1つの特定の局面に従うTTSは、市販のジクロフェナク参照経皮治療システム(例えば、Voltaren(R)パッチ)を用いて8時間から72時間の64時間の時間間隔で比較試験において測定された場合に、治療上有効なジクロフェナクの皮膚透過速度を生じる。
【0180】
一実施態様によれば、活性薬剤としてジクロフェナクを含有する本発明の1つの特定の局面に従うTTSは、約24時間のヒト患者の皮膚上の投与の間、約24時間有効量のジクロフェナクを提供する。
【0181】
一実施態様によれば、活性薬剤としてジクロフェナクを含有する本発明の1つの特定の局面に従うTTSは、約72時間のヒト患者の皮膚上の投与の間、約72時間有効量のジクロフェナクを提供する。
【0182】
処置方法/医学的用途
本発明の特定の実施態様によれば、治療有効量の活性薬剤(例えば、ブプレノルフィン又はジクロフェナク)は、1~7日間(24~168時間)の投与期間の間上記経皮治療システムにより1~7日間(24~168時間)提供される。
【0183】
本発明に従うTTSは、投与期間の間活性薬剤のより一定の投与を可能にするという利点を有する。
【0184】
一局面によれば、活性薬剤としてブプレノルフィンを含有する本発明の1つの特定の局面に従い、そして上に詳細に記載されるTTSは、処置方法における使用のため、特に疼痛を処置する方法における使用のためのものである。
【0185】
該方法は、特にヒト患者の皮膚上で7日間(168時間)のTTSの適用を含む。本発明に従う特定の他の方法によれば、TTSは、少なくとも1日間、又は3日間、又は3.5日間、又は4日間、又は7日間、ヒト患者の皮膚上に適用され得る。
【0186】
本発明に従うTTSは、特に、TTSがヒト患者の皮膚上に7日間適用される処置方法における使用のためのものである。本発明の特定の局面によれば、TTSは、TTSがヒト患者の皮膚上に少なくとも1日間、又は3日間、又は3.5日間、又は4日間、又は7日間適用される処置方法における使用のためのものである。
【0187】
特定の実施態様において、活性薬剤がブプレノルフィンである本発明に従うTTSは、経皮治療システムが患者の皮膚上に少なくとも3.5日間適用される疼痛を処置する方法における使用のためのものである。
【0188】
好ましい実施態様において、活性薬剤がブプレノルフィンである本発明に従うTTSは、経皮治療システムが患者の皮膚上に7日間適用される疼痛を処置する方法における使用のためのものである。
【0189】
一局面によれば、活性薬剤としてジクロフェナクを含有し、そして上で詳細に記載される本発明の1つの特定の局面に従うTTSは、変形性関節症、肩関節周囲炎、筋痛、腰背痛、リウマチ、挫傷、肉離れ(pulled muscles)、腰痛、関節症、汗腺膿瘍、又は多系統萎縮症のような疼痛/炎症に罹患している患者を処置する方法における使用のためのものである。
【0190】
本発明は、特に、ヒト患者の皮膚上で1日間(24時間)のTTSの適用を含む。本発明に従う特定の他の方法によれば、TTSは、ヒト患者の皮膚上に少なくとも1.5日間、又は2日間、又は3日間の適用され得る。
【0191】
本発明に従うTTSは、特に、TTSがヒト患者の皮膚上に1日間適用される処置方法における使用のためのものである。本発明の特定の局面によれば、TTSは、TTSがヒト患者の皮膚上に少なくとも1.5日間、又は2日間、又は3日間適用される処置方法における使用のためのものである。
【0192】
特定の実施態様において、活性薬剤がジクロフェナクである本発明に従うTTSは、変形性関節症、肩関節周囲炎、筋痛、腰背痛、リウマチ、挫傷、肉離れ、腰痛、関節症、汗腺膿瘍、又は多系統萎縮症のような疼痛/炎症に罹患している患者を処置する方法における使用のためのものであり、ここで経皮治療システムは患者の皮膚上に1日間適用される。
【0193】
特定の実施態様において、活性薬剤がジクロフェナクである本発明に従うTTSは、変形性関節症、肩関節周囲炎、筋痛、腰背痛、リウマチ、挫傷、肉離れ、腰痛、関節症、汗腺膿瘍、又は多系統萎縮症のような疼痛/炎症に罹患している患者を処置する方法における使用のためのものであり、ここで経皮治療システムは患者の皮膚上に3日間適用される。
【実施例
【0194】
本発明は、ここで添付の実施例を参照してより十分に記載される。しかし、当然のことながら、以下の記載は説明のためのみのものであり、いかなるようにも本発明の制限と解釈されるべきではない。
【0195】
比較例1
ジクロフェナクナトリウム含有接着コーティング混合物の組成を以下の表1にまとめる。
【0196】
【表1】
【0197】
適切な容器、例えばステンレス製又はガラスの容器で、ジクロフェナクナトリウム3.3gをメタノール9.9gに溶解した。続けて、オレイン酸9.9gを加え、そして混合物を均一になるまで撹拌した。60質量%の固体含有量を有するn-ヘキサン中の溶液の形態のポリイソブチレン/ポリブチレン接着剤124.7g及びガソリン32.8gを加えた。この混合物を撹拌して、ジクロフェナクナトリウム1.8質量%を含むジクロフェナク含有接着混合物180.6gを固体含有量48.5%で得た。
【0198】
ジクロフェナク含有接着混合物を、予備研究及び商業プラントにおけるコーティングプロセスを模倣して代表的せん断力を加えるために実験用ロールコーターを使用して、滑りやすく(abhesively)備え付けられたホイル上にコーティングした。
【0199】
溶媒の除去により約90g/mのマトリックス層の面積質量を生じるようにコーティング厚さを選択した。これによりこのマトリックス層中ジクロフェナクナトリウム3.75質量%及びオレイン酸11.25質量%となった。次いで二相マトリックス層を裏打ち層と積層し得る。
【0200】
ジクロフェナクナトリウム含有接着コーティング混合物及びマトリックス層の顕微鏡画像を、Nikon S/N 237789顕微鏡を使用して撮影した。図1Aは、比較例1のジクロフェナクナトリウム含有接着コーティング混合物の顕微鏡画像を示し、そして図1Bは、比較例1のマトリックス層の顕微鏡画像を示す。顕微鏡検査の間、コーティング混合物中の液滴寸法(直径)及びマトリックス層中の球の寸法(直径)を決定した。図1Bは、コーティング手順の間に発生した合体に起因して乾燥されたマトリックス層中に50μmより大きい多数の球を示す。コーティング混合物中の最大液滴寸法及びマトリックス層中の最大球寸法を以下の表2にまとめる。
【0201】
【表2】
【0202】
比較例2
ジクロフェナクナトリウム含有接着コーティング混合物の組成を以下の表3にまとめる。
【0203】
【表3】
【0204】
適切な容器、例えばステンレス製又はガラスの容器で、ジクロフェナク4.9gをメタノール14.6gに溶解した。続いて、オレイン酸14.6gを加え、そしてこの混合物を均一になるまで撹拌した。固体含有量73質量%を有するn-ヘプタン中の溶液の形態のポリシロキサン接着剤151.4gを加えた。この混合物を撹拌して、固体含有量70.1%でジクロフェナクナトリウム2.6質量%を含むジクロフェナク含有接着剤混合物185.5gを得た。
【0205】
ジクロフェナク含有接着混合物を、予備研究及び商業プラントにおけるコーティングプロセスを模倣して代表的なせん断力を加えるために実験用ロールコーターを使用して、滑りやすく備え付けられたホイル上にコーティングした。
【0206】
溶媒の除去により約90g/mのマトリックス層の面積質量を生じるようにコーティング厚さを選択した。これにより、このマトリックス層においてジクロフェナクナトリウム3.75質量%及びオレイン酸11.25質量%となった。次いで二相マトリックス層を裏打ち層と積層することができる。
【0207】
ジクロフェナクナトリウム含有接着コーティング混合物の顕微鏡画像を、Nikon S/N 237789顕微鏡を使用して撮影した。図2Aは、比較例2のジクロフェナクナトリウム含有接着コーティング混合物の顕微鏡画像を示し、そして図2Bは、比較例2のマトリックス層の顕微鏡画像を示す。顕微鏡検査の間に、マトリックス層における液滴寸法(直径)及びマトリックス層における球の寸法(直径)を決定した。図2Bは、乾燥されたマトリックス層中及びまた結晶化したジクロフェナクナトリウム中における30μmより大きい多数の球を示す。コーティング混合物中の最大液滴寸法及びマトリックス層中の最大旧寸法を以下の表4にまとめる。
【0208】
【表4】
【0209】
実施例1
ジクロフェナクナトリウム含有接着コーティング混合物の組成を以下の表5にまとめる。
【0210】
【表5】
【0211】
適切な容器、例えばステンレス製又はガラスの容器で、ジクロフェナクナトリウム3.2gをメタノール9.7gに溶解した。続いて、オレイン酸9.7gを加えた。シクロペンタシロキサン(及び)PEG-12ジメチコンクロスポリマーを加え、そしてこの混合物を均一になるまで撹拌した。固体含有量60質量%を有するn-ヘキサン中のポリイソブチレン/ポリブチレン接着剤を加え、続いてガソリン34.1gを加えた。この混合物を撹拌して、ジクロフェナクナトリウム1.8質量%を含むジクロフェナク含有接着混合物176.8gを固体含有量48.6%で得た。
【0212】
ジクロフェナク含有接着混合物を、予備研究及び商業プラントにおけるコーティングプロセスを模倣して代表的なせん断力を加えるために実験用ロールコーターを使用して、滑りやすく備え付けられたホイル上にコーティングした。
【0213】
溶媒の除去により約90g/mのマトリックス層の面積質量を生じるようにコーティング厚さを選択した。これにより、このマトリックス層においてジクロフェナクナトリウム3.75質量%及びオレイン酸11.25質量%となった。
【0214】
二相マトリックス層を裏打ち層と積層して、ジクロフェナクナトリウム含有層構造を得た。
【0215】
次いで個々のシステム(TTS)を、ジクロフェナクナトリウム含有層構造から打ち抜いた。
【0216】
特定の実施態様において、上記のTTSは接着性オーバーレイを備えていてもよい。オーバーレイを、打ち抜いた又は切断した個々のシステム上に積層し、次いでこれをオーバーレイのみを型で切り取ることにより打ち抜き、そして一次包装材料の袋中に密封する。
【0217】
ジクロフェナクナトリウム含有接着コーティング混合物及びマトリックス層の顕微鏡をNikon S/N 237789顕微鏡を使用して撮影した。図3Aは、実施例1のジクロフェナク含有接着コーティング混合物の顕微鏡画像を示し、そして図3Bは、実施例1のマトリックス層の顕微鏡画像を示す。顕微鏡検査の間、コーティング混合物中の液滴寸法(直径)及びマトリックス層中の球寸法(直径)を決定した。図3Bは、乾燥されたマトリックス層において球の拡大は発生していなかったことを示す。コーティング混合物中の最大液滴寸法及びマトリックス層中の最大球寸法を以下の表6にまとめる。
【0218】
【表6】
【0219】
実施例2
ジクロフェナクナトリウム含有接着コーティング混合物の組成を以下の表7にまとめる。
【0220】
【表7】
【0221】
適切な容器、例えばステンレス製又はガラスの容器で、ジクロフェナクナトリウム4.8gをエタノール4.5gに溶解した。続いて、オレイン酸14.3g、PEG-12 ジメチコン1.6g及びシクロペンタシロキサン/PEG/PPG-19/19ジメチコン3.5gを加え、そして混合物を均一になるまで撹拌した。固体含有量72.3質量%を有するn-ヘプタン中の溶液の形態のポリシロキサン接着剤140.9gを加えた。この混合物を均一になるまで撹拌して、固体含有量70.8%を有するジクロフェナクナトリウム2.7質量%を含むジクロフェナク含有接着混合物179.4gを得た。
【0222】
ジクロフェナク含有接着混合物を、予備研究及び商業プラントにおけるコーティングプロセスを模倣して代表的なせん断力を加えるために実験用ロールコーターを使用して、滑りやすく備え付けられたホイル上にコーティングした。
【0223】
溶媒の除去により約90g/mのマトリックス層の面積質量を生じるようにコーティング厚さを選択した。これにより、このマトリックス層においてジクロフェナクナトリウム3.75質量%、オレイン酸11.25質量%、PEG-12 ジメチコン1.25質量%及びシクロペンタシロキサン/PEG/PPG-19/19ジメチコン2.75質量%となった。
【0224】
二相マトリックス層を裏打ち層と積層して、ジクロフェナクナトリウム含有層構造を得た。
【0225】
次いで個々のシステム(TTS)を、ジクロフェナクナトリウム含有層構造から打ち抜いた。
【0226】
特定の実施態様において、上記のTTSは接着性オーバーレイを備えていてもよい。オーバーレイを、打ち抜いた又は切断した個々のシステム上に積層し、次いでこれをオーバーレイのみを型で切り取ることにより打ち抜き、そして一次包装材料の袋中に密封する。
【0227】
ジクロフェナクナトリウム含有接着コーティング混合物及びマトリックス層の顕微鏡画像を、Nikon S/N 237789顕微鏡を使用して撮影した。図4Aは、実施例2のジクロフェナクナトリウム含有接着コーティング混合物の顕微鏡画像を示し、そして図4Bは、実施例2のマトリックス層の顕微鏡画像を示す。顕微鏡検査の間、コーティング混合物中の液滴寸法(直径)及びマトリックス層中の球寸法(直径)を決定した。図4Bは、乾燥されたマトリックス層において球の拡大は発生していなかったことを示す。コーティング混合物中の最大液滴寸法及びマトリックス層中の最大球寸法を以下の表8にまとめる。
【0228】
【表8】
【0229】
実施例3
実施例3において、比較例2、実施例2、及びVoltaren(R)パッチ30mg(Dojin Iyaku-Kako Co.、Ltd.製)のインビトロ皮膚透過を、OECDガイドライン(2004年4月13日採択)に従い、Franz拡散セル(9ml Franz拡散セル)を用いて行われたインビトロ実験により決定した。美容整形からの分層ヒト皮膚(女性腹部、生年月日1961年)を使用した。デルマトームを使用して、皮膚を500μmの厚さに準備し、表皮はインタクトなままであった。長期の試験(96時間)のために、推奨される200~400μm皮膚の代わりに500μm皮膚を使用する。使用した受容体媒体は、抗細菌剤(antibacteriological agent)として0.1%食塩水アジド(saline azide)を含むリン酸緩衝液pH5.5であり32±1℃で使用した。1.156 cmの面積を有するダイカットを比較例2から打ち抜き、そして市販製品Voltaren(R)パッチの1.156cmダイカットに対して試験した。Franzセルの受容体媒体中の32±1℃でのジクロフェナクナトリウムの濃度を測定した。結果を表9~11及び図5A及び5Bに示す。
【0230】
【表9】
【0231】
【表10】
【0232】
【表11】
【0233】
比較例3
ブプレノルフィン塩基含有接着コーティング混合物の組成を以下の表12にまとめる。
【0234】
【表12】
【0235】
10l容器で、ポリビニルピロリドン1.00kg及びエタノール3.00kgを溶解して25% PVP予備溶液を形成した。均一化/混合容器:Becomix LabミキサーRW 30 Exにおいて、PVP予備溶液1.368kg、レブリン酸0.958kg、パルミチン酸アスコルビル0.027kg及びエタノール0.912kgの主要部分を撹拌することにより懸濁させた。規定量のブプレノルフィンを秤量し、そして均一化/混合容器に加え、続いて、ブプレノルフィンの秤量に使用した容器をエタノールの残りの部分でリンスした。この混合物を、ブプレノルフィン含有溶液が形成されるまで、少なくとも1時間撹拌下に維持した。固体含有量73質量%を有するn-ヘプタン中の溶液の形態のポリシロキサン接着剤15.048kg及びn-ヘプタン0.319kgを均一化/混合容器に加えた。固体含有量68%を有するブプレノルフィン6.8%を含むブプレノルフィン含有接着混合物(ブプレノルフィン塩基含有接着混合物)が形成されるまで、少なくとも2時間この混合物を撹拌した。その後、この混合物を、動静翼(rotor-stator)装置を使用して約2250rpmで均一化ユニットを使用して均一化した。
【0236】
24時間以内に、ブプレノルフィン塩基含有接着混合物を、乾燥トンネル、いくつかの乾燥区域、巻き戻し及び積層ステーションを含むパイロットプラントロールコーターを使用して、ポリエチレンテレフタレートホイル(例えば、3MからのScotchpak)上にコーティングした。約30~50℃で乾燥することにより溶媒を除去した。約8分で乾燥トンネル内にマトリックス層が残った。溶媒の除去によりマトリックス層の面積質量が120g/mとなるようにコーティング厚さを選択した。これにより、このマトリックス層においてブプレノルフィン塩基10質量%及びレブリン酸7質量%及びポリビニルピロリドン2.5質量%となった。乾燥したフィルムを裏打ち層(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)ホイル 19μm)に積層して、ブプレノルフィン含有自己接着層構造を得た。
【0237】
次いで、個々のシステム(TTS)をブプレノルフィン含有自己接着層構造から打ち抜いた。
【0238】
特定の実施態様において、上記のTTSは、好ましくは丸められた角を有するより大きな表面積のさらなる自己接着層を備えていてもよく、これは活性成分を含有しない感圧接着マトリックス層を含み、そして好ましくはベージュ色に着色された裏打ち層(オーバーテープ)を有する。これは、TTSが、その物理特性のみに基づいて皮膚に十分に接着しない場合、かつ/又はブプレノルフィン含有マトリックス層が、無駄を避ける目的のために、目立った角(四角又は長方形の形状)を有する場合に、有利である。
【0239】
次いでオーバーテープのみを打ち抜くことにより、TTSを含むオーバーテープ打ち抜き、そして一次包装材料の袋に密封した。
【0240】
ブプレノルフィン含有接着混合物及びマトリックス層の顕微鏡画像を、Nikon S/N 237789顕微鏡を使用して撮影した。図6Aは、比較例3のブプレノルフィン塩基含有接着混合物の顕微鏡画像を示し、そして図6Bは、比較例3のマトリックス層の顕微鏡画像を示す。顕微鏡検査の間、マトリックス層における液滴寸法(直径)及びマトリックス層中の球の寸法(直径)を決定した。コーティング混合物における最大液滴寸法及びマトリックス層における最大球寸法を以下の表13にまとめる。
【0241】
【表13】
【0242】
実施例4
ブプレノルフィン塩基含有接着コーティング混合物の組成を以下の表14にまとめる。
【0243】
【表14】
【0244】
適切な容器、例えばステンレス製又はガラスの容器で、ブプレノルフィン12.8gを、レブリン酸8.96g、エタノール12.8g、PEG-12 ジメチコン3.2g及びシクロペンタシロキサン/PEG/PPG-19/19 ジメチコン3.84g中でブプレノルフィンが完全に溶解するまで懸濁させた。固体含有量73質量%を有するn-ヘプタン中の溶液の形態のポリシロキサン接着剤135.9g及び固体含有量を調整するためのn-ヘプタン3.0gを加えた。この混合物を均一になるまで撹拌して、固体含有量0.9%を有しブプレノルフィン7.09質量%を含むブプレノルフィン含有接着混合物180.5gを得た。
【0245】
ブプレノルフィン含有接着混合物を、予備研究及び商業プラントにおけるコーティングプロセスを模倣して代表的なせん断力を加えるために実験用ロールコーターを使用して、滑りやすく備え付けられたホイル上にコーティングした。
【0246】
溶媒の除去により約90g/mのマトリックス層の面積質量を生じるようにコーティング厚さを選択した。これにより、このマトリックス層においてブプレノルフィン10質量%、レブリン酸7質量%、PEG-12ジメチコン2.5質量%及びシクロペンタシロキサン/PEG/PPG-19/19 ジメチコン3質量%となった。
【0247】
二相マトリックス層を裏打ち層と積層してブプレノルフィン含有層構造を得た。
【0248】
次いで個々のシステム(TTS)をブプレノルフィン含有層構造から打ち抜いた。
【0249】
特定の実施態様において、上記のTTSは接着性オーバーレイを備えていてもよい。オーバーレイを、打ち抜いた又は切断した個々のシステム上に積層し、次いでこれをオーバーレイのみを型で切り取ることにより打ち抜き、そして一次包装材料の袋中に密封する。
【0250】
ブプレノルフィン塩基含有接着コーティング混合物及びマトリックス層の顕微鏡画像を、Nikon S/N 237789顕微鏡を使用して撮影した。図7Aは、実施例4のブプレノルフィン含有接着コーティング混合物の顕微鏡画像を示し、そして図7Bは、実施例4のマトリックス層の顕微鏡画像を示す。顕微鏡検査の間に、マトリックス層中の液滴寸法(直径)及びマトリックス層中の球の寸法(直径)を決定した。図7Bは、乾燥したマトリックス層において球の拡大が起こっていなかったことを示す。コーティング混合物における最大液滴寸法及びマトリックス層における最大球寸法を以下の表15にまとめる。
【0251】
【表15】
【0252】
実施例5
ブプレノルフィン塩基含有接着コーティング混合物の組成を以下の表16にまとめる。
【0253】
【表16】
【0254】
適切な容器、例えばステンレス製又はガラスの容器で、ブプレノルフィン12.5gを、レブリン酸8.8g、PVP溶液12.5g、エタノール8.3g、1.8g PEG-12 ジメチコン及び2.1gシクロペンタシロキサン/PEG/PPG-19/19 ジメチコン中に懸濁し、そしてブプレノルフィンが完全に溶解するまで撹拌した。固体含有量73質量%を有するn-ヘプタン中の溶液の形態のポリシロキサン接着剤133.8g及び固体含有量を調整するためのn-ヘプタン3.0gを加えた。この混合物を均一になるまで撹拌して、固体含有量68.4%を有しブプレノルフィン6.84質量%を含むブプレノルフィン含有接着混合物182.8gを得た。
【0255】
ブプレノルフィン含有接着混合物を、予備研究及び商業プラントにおけるコーティングプロセスを模倣して代表的なせん断力を加えるために実験用ロールコーターを使用して、滑りやすく備え付けられたホイル上にコーティングした。
【0256】
溶媒の除去により90g/mのマトリックス層の面積質量を生じるようにコーティング厚さを選択した。これにより、このマトリックス層においてブプレノルフィン10質量%、レブリン酸7質量%、ポリビニルピロリドン(PVP)2.5質量%、PEG-12ジメチコン1.4質量%及びシクロペンタシロキサン/PEG/PPG-19/19 ジメチコン1.7質量%となった。
【0257】
二相マトリックス層を裏打ち層と積層してブプレノルフィン含有層構造を得た。
【0258】
次いで個々のシステム(TTS)をブプレノルフィン含有層構造から打ち抜いた。
【0259】
特定の実施態様において、上記のTTSは接着性オーバーレイを備えていてもよい。オーバーレイを、打ち抜いた又は切断した個々のシステム上に積層し、次いでこれをオーバーレイのみを型で切り取ることにより打ち抜き、そして一次包装材料の袋中に密封する。
【0260】
ブプレノルフィン塩基含有接着コーティング混合物及びマトリックス層の顕微鏡画像を、Nikon S/N 237789顕微鏡を使用して撮影した。図8Aは、実施例5のブプレノルフィン含有接着コーティング混合物の顕微鏡画像を示し、そして図8Bは実施例5のマトリックス層の顕微鏡画像を示す。顕微鏡検査の間に、マトリックス層中の液滴寸法(直径)及びマトリックス層中の球の寸法(直径)を決定した。図8Bは、乾燥したマトリックス層において球の拡大が起こっていなかったことを示す。コーティング混合物中の最大液滴寸法及びマトリックス層中の最大球寸法を以下の表17にまとめる。
【0261】
【表17】
【0262】
実施例6
実施例6において、比較例3、実施例4、実施例5、及びNorspan(R)のインビトロ皮膚透過を、OECDガイドライン(2004年4月13日採択)に従ってFranz拡散セル(9ml Franz拡散セル)を用いて行われたインビトロ実験により決定した。美容整形からの分層ヒト皮膚(女性腹部、生年月日1986年)を使用した。デルマトームを使用して、皮膚を800μmの厚さに準備し、表皮はインタクトなままであった。長期の試験(168時間)のために、推奨される200~400μm皮膚の代わりに800μm皮膚を使用する。使用した受容体媒体は、抗細菌剤として0.1%食塩水アジドを含むリン酸緩衝液pH5.5であり32±1℃の温度で使用した。1.191cmの面積を有するダイカットを比較例3、実施例4及び実施例5から打ち抜き、そして市販製品Norspan(R)パッチの1.191cmダイカットに対して試験した。Franzセルの受容体媒体中の32±1℃でのブプレノルフィンの濃度を測定した。結果を表18~20及び図9A及び9Bに示す。
【0263】
【表18】
【0264】
【表19】
【0265】
【表20】
【0266】
実施例7
ブプレノルフィン塩基含有接着コーティング混合物の組成を以下の表21にまとめる。
【0267】
【表21】
【0268】
適切な容器、例えばステンレス製又はガラスの容器で、ブプレノルフィン4.5gを、レブリン酸5.1g、エタノール4.5g、2.8g PEG-12 ジメチコン及び4gシクロペンタシロキサン/PEG/PPG-19/19ジメチコン中にブプレノルフィンが完全に溶解するまで懸濁した。固体含有量72.3質量%を有するn-ヘプタン中の溶液の形態のポリシロキサン接着剤79.1gを加えた。混合物を均一になるまで撹拌して、ブプレノルフィン4.5質量%を含む固体含有量73.6%を有するブプレノルフィン含有接着混合物100gを得た。
【0269】
ブプレノルフィン含有接着混合物を、予備研究及び商業プラントにおけるコーティングプロセスを模倣して代表的なせん断力を加えるために実験用ロールコーターを使用して、滑りやすく備え付けられたホイル上にコーティングした。
【0270】
溶媒の除去により約90g/mのマトリックス層の面積質量を生じるようにコーティング厚さを選択した。これにより、このマトリックス層においてブプレノルフィン6.1質量%、レブリン酸6.9質量%、PEG-12 ジメチコン3.8質量%及びシクロペンタシロキサン/PEG/PPG-19/19 ジメチコン5.4質量%となった。
【0271】
二相マトリックス層を裏打ち層と積層してブプレノルフィン含有層構造を得た。
【0272】
次いで個々のシステム(TTS)をブプレノルフィン含有層構造から打ち抜いた。
【0273】
特定の実施態様において、上記のTTSは接着性オーバーレイを備えていてもよい。オーバーレイを、打ち抜いた又は切断した個々のシステム上に積層し、次いでこれをオーバーレイのみを型で切り取ることにより打ち抜き、そして一次包装材料の袋中に密封する。
【0274】
ブプレノルフィン塩基含有接着コーティング混合物及びマトリックス層の顕微鏡画像を、Nikon S/N 237789顕微鏡を使用して撮影した。図10Aは実施例7のブプレノルフィン含有接着コーティング混合物の顕微鏡画像を示し、そして図10Bは実施例7のマトリックス層の顕微鏡画像を示す。顕微鏡検査の間、マトリックス層中の液滴寸法(直径)及びマトリックス層中の球の寸法(直径)を決定した。図10Bは、乾燥したマトリックス層において球の拡大は起こっていなかったことを示す。コーティング混合物中の最大液滴寸法及びマトリックス層中の最大球寸法を以下の表22にまとめる。
【0275】
【表22】
【0276】
実施例8
ブプレノルフィン塩基含有接着コーティング混合物の組成を以下の表23にまとめる。
【0277】
【表23】
【0278】
適切な容器、例えばステンレス製又はガラスの容器で、ブプレノルフィン4.5gをレブリン酸5.1g、エタノール4.5g、PEG-12 ジメチコン2.0g及びシクロペンタシロキサン/PEG/PPG-19/19ジメチコン3.0g中でブプレノルフィンが完全に溶解するまで懸濁した。固体含有量72.3質量%を有するn-ヘプタン中の溶液の形態のポリシロキサン接着剤80.9gを加えた。この混合物を均一になるまで撹拌して、ブプレノルフィン4.5質量%を含む固体含有量73.1%を有するブプレノルフィン含有接着混合物100gを得た。
【0279】
ブプレノルフィン含有接着混合物を、予備研究及び商業プラントにおけるコーティングプロセスを模倣して代表的なせん断力を加えるために実験用ロールコーターを使用して、滑りやすく備え付けられたホイル上にコーティングした。
【0280】
溶媒の除去により約90g/mのマトリックス層の面積質量を生じるようにコーティング厚さを選択した。これにより、このマトリックス層においてブプレノルフィン6.2質量%、レブリン酸7.0質量%、PEG-12 ジメチコン2.7質量%及びシクロペンタシロキサン/PEG/PPG-19/19 ジメチコン4.1質量%となった。
【0281】
二相マトリックス層を裏打ち層に積層してブプレノルフィン含有層構造を得た。
【0282】
次いで個々のシステム(TTS)をブプレノルフィン含有層構造から打ち抜いた。
【0283】
特定の実施態様において、上記のTTSは接着性オーバーレイを備えていてもよい。オーバーレイを、打ち抜いた又は切断した個々のシステム上に積層し、次いでこれをオーバーレイのみを型で切り取ることにより打ち抜き、そして一次包装材料の袋中に密封する。
【0284】
ブプレノルフィン塩基含有接着コーティング混合物及びマトリックス層の顕微鏡画像を、Nikon S/N 237789顕微鏡を使用して撮影した。図11Aは実施例8のブプレノルフィン含有接着コーティング混合物の顕微鏡画像を示し、そして図11Bは実施例8のマトリックス層の顕微鏡画像を示す。顕微鏡検査の間、コーティング混合物中の液滴寸法(直径)及びマトリックス層中の球寸法(直径)を決定した。マトリックス層中の球の最大寸法は1μmより小さく、従って図11Bには示されていない。コーティング混合物中の最大液滴寸法及びマトリックス層中の最大球寸法を以下の表24にまとめる。
【0285】
【表24】
【0286】
実施例9
実施例9において、比較例3並びに実施例7及び8のインビトロ皮膚透過を、Hanson Research Corp. (Chatsworth CA、USA)によるMicroette PlusTMシステムを用いて行われたインビトロ実験により決定し、このシステムは、拡散セルからの自動サンプリング及びサンプル分析のためにHPLCバイアル中に集めることを提供する。Microette PlusTMシステムはThomas Franz博士(J. of Invest. Dermatology、64:190-195、1975)によって最初に広められた縦型拡散セルで動作する。拡散セルとして、7ml受容体媒体を使用した。美容整形からの分層ヒト皮膚(男性腹部、生年月日1974年)を使用した。デルマトームを使用して、皮膚を800μmの厚さに準備し、表皮はインタクトなままであった。長期の試験(168時間)のために、推奨される200~400μm皮膚の代わりに800μm皮膚を使用する。使用した受容体媒体は、抗細菌剤として0.1%食塩水アジドを含むリン酸緩衝液pH5.5であり32±1℃の温度で使用した。1.16cmの面積を有するダイカットを実施例7及び8から打ち抜き、そして1.16cmダイカットを使用して比較例3に対して試験した。サンプリング間隔で媒体は自動的に部分的に(2.5mlのアリコート)除去され、そして当体積の新鮮な媒体で置き換えられる。32±1℃でのセルの受容体媒体中のブプレノルフィンの濃度をHPLC分析により決定した。結果を表25~27並びに図12A及び12Bに示す。
【0287】
【表25】
【0288】
【表26】
【0289】
【表27】
【0290】
実施例10
実施例10において、二相システムの外部相に適した乳化剤を、接着剤10g(例えば、Dow Corning(R) BIO-PSA 7-4201)及び可能性のある乳化剤10gを透明50ml試験管中で混合することにより決定した。試験管を密封し、そして約1時間メカニカルシェイカーで(構成10から3~5の間に調整したIKA Vibrax-VXRを使用して)振盪した。振盪時間が終了した後、試験管を室温で実験室内で(約20℃)約24時間保存した。その後、試験管の写真を撮影し、そして含まれる混合物を相分離について調べた。混合物中の分離した相の比率を、試験管中の分離した相の高さ(cm)を試験管中の総含有物の高さ(cm)と比較することにより(例えば、試験管の底から相のメニスカスの最低点までを定規で測定される)決定した。例えば、試験管中の分離した相の高さが1cmであり、そして試験管中の総含有物の高さが4cmである場合、相分離は25%である。完全な相分離は、各相が相含有量の50%を占める場合に起こる。分離した相が試験管中の総含有物の20%未満に達する場合、乳化剤は試験された接着剤に適しているとみなされる。この予備試験の結果を表28並びに図13A及び13Bに示す。
【0291】
【表28】
【0292】
本発明は、特に以下のさらなる項目に関する:
1. 活性薬剤含有層構造を含む、活性薬剤の経皮投与のための経皮治療システムであって、該活性薬剤含有層構造は、
A) 裏打ち層、及び
B) 二相マトリックス層
を含み、該二相マトリックス相は、
a) 少なくとも1つのポリマー70~100質量%を含む組成物を有する連続的外部相、
b) 活性薬剤、及び活性薬剤が内部相中で溶剤と溶液を形成するような十分な量の活性薬剤のための溶剤を含む組成物を有する不連続内部相
[ここで不連続内部相は、連続的外部相中に分散された沈着物を形成する]、
並びに
c) 二相マトリックス層に基づいて0.1~20質量%の量の乳化剤
を有し、
ここで乳化剤は、約500~1500rpmで等質量の連続的外部相の組成物と約1時間試験管中で混合された場合に、約20℃にて約24時間の貯蔵後に、試験管中の分離した相の高さ及び試験管中の総含有物の高さを比較することにより決定して、20%未満の相分離を示す連続的外部相の組成物との混合物を生じる乳化剤からなる群より選択される、上記経皮治療システム。
【0293】
2. 二相マトリックス層は、乳化剤を0.1質量%から20質量%未満含有する、項目1に記載の経皮治療システム。
【0294】
3. 二相マトリックス層は、乳化剤を0.5~10質量%含有する、項目1に記載の経皮治療システム。
【0295】
4. 二相マトリックス層は、乳化剤を0.5~8質量%含有する、項目1に記載の経皮治療システム。
【0296】
5. 二相マトリックス層は、乳化剤を0.5~5質量%含有する、項目1に記載の経皮治療システム。
【0297】
6. 乳化剤は、ポリシロキサンに基づく乳化剤、ポリイソブチレンに基づく乳化剤、エトキシ化ヒマシ油に基づく乳化剤、ポロキサマーに基づく乳化剤、及びそれらの混合物からなる群より選択される、項目1~5のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0298】
7. 乳化剤がポリシロキサンに基づくものである、項目1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0299】
8. 乳化剤は、少なくともポリエチレングリコールと共重合又は交差重合された少なくとも1つのポリジメチルシロキサンを含む、項目1~7のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0300】
9. ポリエチレングリコールは、平均数10~20のエチレンオキシド繰り返し単位を有する、項目8に記載の経皮治療システム。
【0301】
10. 少なくとも1つのポリジメチルシロキサンは、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールと共重合されている、項目8又は9に記載の経皮治療システム。
【0302】
11. ポリプロピレングリコールは、平均数7~20のプロピレンオキシド繰り返し単位を有する、項目10に記載の経皮治療システム。
【0303】
12. 乳化剤は、PEG-12ジメチコンクロスポリマー、PEG-10ジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、ビス-イソブチルPEG/PPG-18/18ジメチコンコポリマー、及びそれらの混合物からなる群より選択されるポリシロキサンに基づくものである、項目1~9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0304】
13. 乳化剤は、PEG-12ジメチコンクロスポリマー、PEG-12ジメチコン、PEG/PPG-18/18ジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、及びそれらの混合物からなる群より選択されるポリシロキサンに基づくものである、項目1~9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0305】
14. 乳化剤は、PEG-12ジメチコン及びPEG/PPG-19/19ジメチコンの混合物に基づくものである、項目1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0306】
15. 乳化剤はPEG-12ジメチコンである、項目13に記載の経皮治療システム。
【0307】
16. 乳化剤はポリシロキサンに基づくものであり、そして溶媒1~95質量%を含有する分散液として使用される、項目1~15のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0308】
17. 乳化剤はポリシロキサンに基づくものであり、そしてシクロペンタシロキサン、ジメチコン、並びにC13-16イソパラフィン及びC10-13イソパラフィンの混合物からなる群より選択される溶媒を含む分散液として使用される、項目1~16のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0309】
18. 乳化剤はPEG-12ジメチコンクロスポリマーに基づくものであり、そしてシクロペンタシロキサン85~90質量%を含有する分散液として使用される、項目1~9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0310】
19. 乳化剤はPEG/PPG-18/18ジメチコンに基づくものであり、そしてシクロペンタシロキサン85~90質量%を含有する分散液として使用される、項目1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0311】
20. 乳化剤はPEG/PPG-19/19ジメチコンに基づくものであり、そしてシクロペンタシロキサン40~60質量%を含有する分散液として使用される、項目1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0312】
21. 乳化剤はPEG-12ジメチコン及びPEG/PPG-19/19ジメチコンの混合物に基づくものであり、そしてここでPEG/PPG-19/19ジメチコンはシクロペンタシロキサン40~60質量%を含有する分散液として使用される、項目1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。。
【0313】
22. PEG-12ジメチコン及びPEG/PPG-19/19ジメチコン分散液の質量比は0.5:1~1:5である、項目21に記載の経皮治療システム。
【0314】
23. PEG-12ジメチコン及びPEG/PPG-19/19ジメチコン分散液の質量比は1:1~1:3である、項目21に記載の経皮治療システム。
【0315】
24. PEG-12ジメチコン及び PEG/PPG-19/19ジメチコン分散液の質量比は1:1.1~1:2.3である、項目21に記載の経皮治療システム。
【0316】
25. 乳化剤はポリイソブチレンに基づくものである、項目1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0317】
26. 乳化剤はポリイソブチレンに基づく親水性乳化剤である、項目1~6、及び25のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0318】
27. 乳化剤は、コハク酸誘導体に連結された少なくとも1つのポリイソブチレンを含む、項目1~6、25、及び26のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0319】
28. 少なくとも1つのポリイソブチレンは、数平均分子量Mn=300~10,000を有する、項目27に記載の経皮治療システム。
【0320】
29. コハク酸誘導体は、平均数1~50、又は1~10のエチレンオキシド繰り返し単位を有する少なくとも2つのポリエチレングリコールを含む親水性化合物に連結されている、項目27又は28に記載の経皮治療システム。
【0321】
30. 乳化剤はエトキシ化ヒマシ油に基づくものである、項目1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0322】
31. エトキシ化ヒマシ油は、ポリオキシル35硬化ヒマシ油、ポリオキシル40ヒマシ油、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、ポリオキシル60硬化ヒマシ油、及びそれらの混合物からなる群より選択される、項目30に記載の経皮治療システム。
【0323】
32. 乳化剤はポリオキシル35硬化ヒマシ油である、項目1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0324】
33. 乳化剤はポロキサマーに基づくものである、項目1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0325】
34. ポロキサマーは20℃で液体である、項目33に記載の経皮治療システム。
【0326】
35. ポロキサマーの2つのポリエチレンオキシドブロックは、エチレンオキシド繰り返し単位数12を有し、そしてポロキサマーのプロピレンオキシドブロックは、プロピレンオキシド繰り返し単位数20を有する、項目33又は34のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0327】
36. 連続的外部相中の少なくとも1つのポリマーは疎水性ポリマーである、項目1~35のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0328】
37. 連続的外部相中の少なくとも1つのポリマーはポリシロキサン又はポリイソブチレンである、項目1~36のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0329】
38. 連続的外部相の組成物は感圧接着組成物である、項目1~37のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0330】
39. 連続的外部相中の少なくとも1つのポリマーは感圧接着性ポリマーである、項目1~38のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0331】
40. 連続的外部相中の少なくとも1つのポリマーは、ポリシロキサン又はポリイソブチレンに基づく感圧接着性ポリマーである、項目1~39のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0332】
41. 二相マトリックス層中の不連続内部相の含有量は、二相マトリックス層の体積に基づいて5~40体積%である、項目1~40のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0333】
42. 分散した沈着物は20μm未満の最大球寸法を有する、項目1~41のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0334】
43. 活性薬剤は、1~50mgの量で経皮治療システムに含有される、項目1~42のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0335】
44. 活性薬剤は、二相マトリックス層に基づいて1~30質量%の量で含有される、項目1~43のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0336】
45. 活性薬剤は、二相マトリックス層に基づいて1~15質量%の量で含有される、項目1~44のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0337】
46. 活性薬剤は、二相マトリックス層に基づいて2~12質量%の量で含有される、項目1~45のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0338】
47. 活性薬剤は、二相マトリックス層に基づいて0.1~5mg/cmの量で含有される、項目1~46のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0339】
48. 活性薬剤は、二相マトリックス層に基づいて0.5~1.5mg/cmの量で含有される、項目1~48のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0340】
49. 活性薬剤は、二相マトリックス層に基づいて3~5mg/cmの量で含有される、項目1~48のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0341】
50. 活性薬剤は、ブプレノルフィン及びジクロフェナクからなる群より選択される、項目1~49のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0342】
51. 活性薬剤はブプレノルフィン塩基である、項目1~50のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0343】
52. ブプレノルフィン含有層は、遊離塩基の形態のブプレノルフィンを組み込むことにより得ることができる、項目51に記載の経皮治療システム。
【0344】
53. ブプレノルフィン塩基は、二相マトリックス層の1~15質量%の量で含有される、項目51又は52のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0345】
54. ブプレノルフィン塩基は、二相マトリックス層の8~12質量%の量で含有される、項目51~53のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0346】
55. ブプレノルフィン塩基は、二相マトリックス層の5~7質量%の量で含有される、項目51~53のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0347】
56. 活性薬剤はジクロフェナクナトリウムである、項目1~50のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0348】
57. ジクロフェナクナトリウムは、二相マトリックス層の1~15質量%の量で含有される、項目56に記載の経皮治療システム。
【0349】
58. ジクロフェナクナトリウムは二相マトリックス層の2~8質量%の量で含有される、項目56又は57のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0350】
59. ジクロフェナクナトリウムは、二相マトリックス層の3~5質量%の量で含有される、項目56~58のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0351】
60. 二相マトリックス層は60g/mより大きい面積質量を有する、項目1~59のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0352】
61. 二相マトリックス層は80~120g/mの面積質量を有する、項目1~60のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0353】
62. 二相マトリックス層は80~100g/mの面積質量を有する、項目1~61のいずれか1項に記載の経皮治療システム
63. 活性薬剤のための溶剤は、カルボン酸、4個より多い炭素原子を有する長鎖アルコール、脂肪アルコール、脂肪アルコールのポリオキシエチレンエーテル、4個より多い炭素原子を有する長鎖エステル、脂肪酸エステル又はそれらの混合物からなる群より選択される、項目1~62のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0354】
64. 活性薬剤は、カルボン酸中の溶液で、二相マトリックス層の不連続内部相において活性薬剤-カルボン酸混合物を形成する、項目63に記載の経皮治療システム。
【0355】
65. 二相マトリックス層は粘性増加物質を更に含む、項目1~64のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0356】
66. 粘性増加物質は、二相マトリックス層の約0.1質量%~約8質量%の量で含有される、項目65に記載の経皮治療システム。
【0357】
67. 上記粘性増加物質は、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、高分子量ポリアクリル酸及び/又はそれらの塩及び/又はそれらの誘導体、例えばエステル、ポリビニルピロリドン、コロイド状シリコーンジオキシド、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、キサンタンガム、ベントナイト、カラゲナン及びグアーガム、並びにそれらの混合物からなる群より選択される、項目65又は66のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0358】
68. 粘性増加物質はポリビニルピロリドンである、項目65~67のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0359】
69. 二相マトリックス層は、粘性増加物質及びカルボン酸を更に含み、粘性増加物質、カルボン酸及び活性薬剤を含有する混合物を二相マトリックス層の不連続内部相中で形成する、項目1~68のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0360】
70. 二相マトリックス層は、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、高分子量ポリアクリル酸及び/又はそれらの塩及び/又はそれらの誘導体、例えばエステル、ポリビニルピロリドン、コロイド状シリコーンジオキシド、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、キサンタンガム、ベントナイト、カラゲナン及びグアーガム、並びにそれらの混合物からなる群より選択される粘性増加物質を含有しない、項目1~68のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0361】
71. 活性薬剤のための溶剤はカルボン酸であり、そして該カルボン酸は二相マトリックス層に基づいて2~20質量%の量で含有される、項目1~70のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0362】
72. カルボン酸は二相マトリックス層に基づいて5~15質量%の量で含有される、項目71に記載の経皮治療システム。
【0363】
73. カルボン酸は、二相マトリックス層に基づいて6~12質量%の量で含有される、項目72に記載の経皮治療システム。
【0364】
74. カルボン酸及び活性薬剤は、0.3:1~5:1の量の比で経皮治療システムに含有される、項目70~73のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0365】
75. カルボン酸及び活性薬剤は、0.5:1~2:1の量の比で経皮治療システムに含有される、項目74に記載の経皮治療システム。
【0366】
76. カルボン酸及び活性薬剤は、2:1~5:1の量の比で経皮治療システムに含有される、項目74に記載の経皮治療システム。
【0367】
77. カルボン酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、レブリン酸、及びそれらの混合物からなる群より選択される、項目69~76のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0368】
78. 活性薬剤含有層構造は、活性薬剤含有自己接着層構造である、項目1~77のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0369】
79. 二相マトリックス層は皮膚接触層である、項目1~78のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0370】
80. 活性薬剤含有層構造は、さらなる皮膚接触層を更に含む、項目1~78のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0371】
81. 活性薬剤はブプレノルフィンであり、少なくとも1つのポリマーは、ポリシロキサン又はポリイソブチレンに基づく感圧接着剤であり、乳化剤はポリシロキサンに基づくものであり、そして二相マトリックス層はレブリン酸をさらに含有する、項目1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0372】
82. 活性薬剤はブプレノルフィンであり、少なくとも1つのポリマーは、ポリシロキサン又はポリイソブチレンに基づく感圧接着剤であり、乳化剤はポリシロキサンに基づくものであり、そして二相マトリックス層はレブリン酸をさらに含有し、そしてここでレブリン酸及びブプレノルフィンは、0.5:1~2:1の量の比で経皮治療システムに含有される、項目1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0373】
83. 活性薬剤はジクロフェナクであり、少なくとも1つのポリマーは、ポリシロキサン又はポリイソブチレンに基づく感圧接着剤であり、乳化剤はポリシロキサンに基づくものであり、そして二相マトリックス層はオレイン酸を更に含有する、項目1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0374】
84. 活性薬剤はジクロフェナクであり、少なくとも1つのポリマーは、ポリシロキサン又はポリイソブチレンに基づく感圧接着剤であり、乳化剤はポリシロキサンに基づくものであり、そして二相マトリックス層はオレイン酸を更に含有し、そしてここでオレイン酸及びジクロフェナクは、2:1~5:1の量の比で経皮治療システムに含有される、項目1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0375】
85. 市販のブプレノルフィン参照経皮治療システムを用いる比較試験において、72時間から168時間までの96時間の時間間隔で測定された場合に、治療上有効なブプレノルフィンの皮膚透過速度を生じる、項目1~55及び60~82のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0376】
86. 市販のブプレノルフィン参照経皮治療システムを用いる比較試験において、96時間から168時間までの72時間の時間間隔で測定された場合に、治療上有効なブプレノルフィンの皮膚透過速度を生じる、項目1~55、及び60~82のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0377】
87. 市販のブプレノルフィン参照経皮治療システムを用いる比較試験において、8時間から168時間までの160時間の時間間隔で測定された場合に、治療上有効なブプレノルフィンの皮膚透過速度を生じる、項目1~55、及び60~82のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0378】
88. 市販のジクロフェナク参照経皮治療システムを用いる比較試験において、8時間から24時間までの16時間の時間間隔で測定された場合に、治療上有効なジクロフェナクの皮膚透過速度を生じる、項目1~50、56~80、83、及び84のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0379】
89. 市販のジクロフェナク参照経皮治療システムを用いる比較試験において、8時間から48時間までの40時間の時間間隔で測定された場合に、治療上有効なジクロフェナクの皮膚透過速度を生じる、項目1~50、56~80、83、及び84のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0380】
90. 市販のジクロフェナク参照経皮治療システムを用いる比較試験において、8時間から72時間までの64時間の時間間隔で測定された場合に、治療上有効なジクロフェナクの皮膚透過速度を生じる、項目1~50、56~80、83、及び84のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0381】
91. 活性薬剤はブプレノルフィンである、疼痛の処置方法における使用のための、項目1~55、60~82、及び85~87のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0382】
92. 活性薬剤はブプレノルフィンであり、経皮治療システムが患者の皮膚上に7日間適用される疼痛の処置方法における使用のための、項目1~55、60~82、及び85~87のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0383】
93. 活性薬剤はジクロフェナクであり、変形性関節症、肩関節周囲炎、筋痛、腰背痛、リウマチ、挫傷、肉離れ、腰痛、関節症、汗腺膿瘍、又は多系統萎縮症のような疼痛/炎症に罹患している患者を処置する方法における使用のための、項目1~50、56~80、83、84、及び88~90のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0384】
94. 活性薬剤はジクロフェナクであり、そして約24時間のヒト患者の皮膚上での投与期間の間、上記経皮治療システムにより治療有効量のジクロフェナクが約24時間提供される、項目1~50、56~80、83、84、及び88~90に記載の経皮治療システム。
【0385】
95. 活性薬剤はジクロフェナクであり、そして約72時間のヒト患者の皮膚上での投与期間の間、上記経皮治療システムにより治療有効量のジクロフェナクが約72時間提供される、項目1~50、56~80、83、84、及び88~90に記載の経皮治療システム。
【0386】
96. 項目1~95のいずれか1項に記載の経皮治療システムを製造する方法の間に、二相コーティング混合物中に分散された沈着物の最大寸法を低減するための乳化剤の使用。
【0387】
97. 項目1~95のいずれか1項に記載の経皮治療システムの二相マトリックス層中に分散された沈着物の最大寸法を低減するための乳化剤の使用。
【0388】
98. 二相マトリックス層の不連続内部相の最大球寸法を制御するための、不連続内部相及び連続的外部相を有する活性薬剤含有二相マトリックス層を用いた経皮治療システムにおけるポリシロキサンに基づく乳化剤の使用。
【0389】
99. 不連続内部相及び連続的外部相を有する活性薬剤含有二相マトリックス層を用いた経皮治療システムにおける、二相マトリックス層の不連続内部相の最大球寸法を制御するための、ポリイソブチレンに基づく乳化剤、エトキシ化ヒマシ油に基づく乳化剤、及びポロキサマーに基づく乳化剤からなる群より選択される乳化剤の使用。
【0390】
100. 活性薬剤及び内部相において活性薬剤が溶剤とともに溶液を形成するように十分な量の活性薬剤のための溶剤を含む組成物を有する不連続内部相を含む二相コーティング混合物を安定化する方法であって、該内部相はポリマーを含む連続的外部相中に分散された沈着物を形成し、該方法は、約500~1500rpmで等質量の連続的外部相の組成物と約1時間試験管中で混合された場合に、約24時間約20℃で貯蔵した後、試験管中の分離した相の高さ及び試験管中の総含有物の高さを比較することにより決定して、20%未満の相分離を示す連続的外部相の組成物との混合物を生じる乳化剤からなる群より選択される乳化剤と、二相コーティング混合物を混合することにより安定化するものである、上記方法。
【0391】
101. 二相コーティング混合物中に分散された沈着物が55μm未満の最大液滴寸法を有する、項目100に記載の方法により得ることができる安定化された二相コーティング混合物。
【0392】
102. (1) 項目100又は101のいずれか1項に従って安定化された二相コーティング混合物を製造する工程、
(2) 安定化された二相コーティング混合物を、所望の面積質量を生じる量でフィルム上にコーティングする工程、
(3) 溶媒を蒸発させて、所望の面積質量を有する二相マトリックス層を生じる工程
を含む、二相マトリックス層の製造方法。
【0393】
103. 項目102に記載の方法により得ることができる二相マトリックス層。
【0394】
104. (1)
a. ポリマー、
b. 活性薬剤
c. 活性薬剤のための溶剤
d. 乳化剤、
e. 溶媒、
f. 場合により粘性増加物質
を含む安定化された二相コーティング混合物を供給する工程、
(2) 安定化された二相コーティング混合物を、所望の面積質量を生じる量でフィルム上にコーティングする工程、
(3) 溶媒を蒸発させて、所望の面積質量を有する二相マトリックス層を生じる工程、
(4) 二相マトリックス層を裏打ち層に積層して、活性薬剤含有層構造を得る工程、
(5) 場合により、活性薬剤含有層構造をさらなる皮膚接触層に積層する工程、
(6) 場合により、ブプレノルフィン含有自己接着性層構造から所望の放出面積を有する個々のシステムを打ち抜く工程、及び
(7) 場合により、裏打ち層及び活性薬剤非含有感圧接着剤層も含む、ブプレノルフィン含有自己接着性層構造の個々のシステムよりも大きい活性薬剤非含有自己接着性層に、個々のシステムを接着する工程
を含む、項目1~90のいずれか1項に記載の経皮治療システムの製造方法。
【0395】
105. 活性薬剤含有層構造を含む、活性薬剤の経皮投与のための経皮治療システムであって、該活性薬剤含有層構造は、
A) 裏打ち層、及び
B) 二相マトリックス層
を含み、該二相マトリックス相は、
a) 少なくとも1つのポリマー70~100質量%を含む組成物を有する連続的外部相、
b) 活性薬剤、及び活性薬剤が内部相中で溶剤と溶液を形成するような十分な量の活性薬剤のための溶剤を含む組成物を有する不連続内部相
[ここで不連続内部相は、連続的外部相中に分散された沈着物を形成する]、
並びに
c) 二相マトリックス層に基づいて0.1~20質量%の量の乳化剤
を有し、
ここで乳化剤は、ポリシロキサンに基づく乳化剤、ポリイソブチレンに基づく乳化剤、エトキシ化ヒマシ油に基づく乳化剤、ポロキサマーに基づく乳化剤、及びそれらの混合物からなる群より選択される、上記経皮治療システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B