(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】神経学的障害及び他の障害を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20230118BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230118BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230118BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20230118BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230118BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230118BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230118BHJP
【FI】
A61K38/08 ZNA
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/00
A61P43/00 111
A61K38/16
A61K47/64
(21)【出願番号】P 2020546164
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(86)【国際出願番号】 US2018067876
(87)【国際公開番号】W WO2019135992
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-06-15
(32)【優先日】2018-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】302057661
【氏名又は名称】ラッシュ・ユニバーシティ・メディカル・センター
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パハン, カリパーダ
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/203613(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015106731(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0039901(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0181476(US,A1)
【文献】国際公開第2009/017255(WO,A1)
【文献】特表2016-516053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における障害を治療する
ための医薬であって
、治療的有効量の、MyD88のTLR2相互作用ドメインを含むペプチドを含む組成
物を含み、
前記MyD88のTLR2相互作用ドメインは配列PGAHQK(配列番号1)を含み、前記治療的有効量は、少なくともTLR2-MyD88シグナル伝達を減少させる量であり、前記障害は
アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病及び多系統萎縮症からなる群から選択される神経学的障害である、
医薬。
【請求項2】
前記ペプチドは、アンテナペディアホメオドメインをさらに含む、
請求項1に記載の
医薬。
【請求項3】
前記アンテナペディアホメオドメインは、
配列PGAHQK(配列番号1)の
N末端に連結する、
請求項2に記載の
医薬。
【請求項4】
ペプチド配列は、drqikiwfqnrrmkwkkpgahqk(配列番号2)である、
請求項3に記載の
医薬。
【請求項5】
前記組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体をさらに含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の
医薬。
【請求項6】
前記組成物は、鼻腔内投与される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の
医薬。
【請求項7】
前記患者は、ヒト患者である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の
医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は、2018年1月2日に出願された米国仮特許出願第62/612,906号明細書の出願日の優先権を主張し、その内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究及び開発の下でなされた発明に対する権利に関する声明
本発明は、米国陸軍医学研究・兵器司令部(W81XWH-12-1-0065)及びNIH(AG050431)からの助成金、アルツハイマー協会からのゼニス・フェロー賞(ZEN-17-438829)及び米国退役軍人局からの功労賞(1I01BX003033)の政府支援を受けて実施された。連邦政府は、本発明について一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、概して、自己免疫障害を含む神経学的障害及び他の障害を治療する方法に関する。本発明の一態様は、骨髄分化一次応答88(MyD88)への結合によるToll様受容体2(TLR2)活性化が疾患の病態形成において役割を果たす障害を治療する方法に関する。一実施形態では、方法は、MyD88によるTLR2の活性化を阻害する、ペプチド配列を含む組成物の投与を含む。
【背景技術】
【0004】
アルツハイマー病(AD)は、記憶喪失をもたらす最も一般的なヒト神経変性障害である。ADは、遺伝的、環境的及び生活習慣的因子の混合物の影響を受ける多因子性障害であると広く考えられている(1-3)。神経病理学的に、ADは、老人斑及び神経原線維の濃縮体(NFT)の存在によって特徴付けられる(4-6)。いくつかの研究(7-13)も、グリア活性化とそれに伴う炎症とが疾患病態形成において重要な役割を果たしていること、及び神経炎症の調節がADにおける神経変性の減弱に治療的利益を有し得ることを示唆している。
【0005】
Toll様受容体(TLR)は、主に細菌、細菌産物、ウイルス、ウイルス産物及びフラジェリンに応答することにより、自然免疫と適応免疫との間の重要な接点として機能する(14、15)。現在、11種の異なるTLRがヒトに存在することが報告されており、全ての主要なCNS細胞型は、TLRを発現することが知られている(15、16)。しかし、小グリア細胞は、これまでに知られているほぼ全てのTLRを発現する、CNSの唯一の細胞である(16)。TLR3の他に、全てのTLRは、下流シグナル伝達のためにMyD88を必要とする(14、15)。本発明者ら(17)及び他の研究者ら(18、19)は、小繊維Aβペプチドが小グリア細胞の炎症のためにTLR2を必要とすることを示した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、患者における障害を治療する方法であって、障害は、TLR2-MyD88シグナル伝達が疾患の病態形成において役割を果たすものである、方法を提供する。一実施形態では、方法は、このような治療を必要とする患者に、治療的有効量の、MyD88のTLR2相互作用ドメインを含有するペプチドを含む組成物を投与するステップを含む。治療的有効量は、少なくともTLR2-MyD88シグナル伝達を減少させる量である。
【0007】
一実施形態では、MyD88のTLR2相互作用ドメインは、配列PGAHQK(配列番号1)を含む。別の実施形態では、MyD88のTLR2相互作用ドメインは、配列PGAHQK(配列番号1)を含む6~10個のアミノ酸を含有する。なおも別の実施形態では、ペプチドは、MyD88のTLR2相互作用ドメインを含むペプチドのN末端に連結するアンテナペディアホメオドメインをさらに含む。別の実施形態では、ペプチド配列は、drqikiwfqnrrmkwkkpgahqk(配列番号2)である。なおも別の実施形態では、ペプチドは、細胞内送達細胞及び血液脳関門を越えるアクセスの少なくとも1つを提供する送達ベクターに連結する。
【0008】
特定の実施形態では、障害は、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病又は多系統萎縮症などの神経学的障害である。他の実施形態では、障害は、例えば、多発性硬化症又はリウマチ様関節炎などの自己免疫障害である。なおも他の実施形態では、障害は、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、ウイルス感染症、敗血症又は脳膿瘍である。
【0009】
本発明の別の態様は、細胞内送達細胞及び血液脳関門を越えるアクセスの少なくとも1つを提供する送達ベクターに連結するペプチド配列PGAHQK(配列番号1)を含む組成物を提供する。一実施形態では、送達ベクターは、アンテナペディアホメオドメインである。別の実施形態では、組成物は、配列drqikiwfqnrrmkwkkpgahqk(配列番号2)を有するペプチドを含む。
【0010】
組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体も含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、鼻腔内投与される。他の実施形態では、組成物は、経口、皮下、関節内、皮内、静脈内、腹腔内及び筋肉内経路からなる群から選択される経路によって投与される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A-S】認知機能障害なし(NCI)、軽度認知機能障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)と臨床的に診断された症例のCNSにおけるTLR2、TLR4及びMyD88のレベルのモニタリングである。NCI(淡青色)、MCI(濃青色)及びAD(灰色)からの前頭前皮質ホモジネート(25μg)は、TLR2、TLR4及びMyD88について免疫ブロットされた。アクチンを使用して、濃度測定(NIH ImageJ)によって得られた信号を正規化した。クーマシーを使用して、タンパク質負荷が検証された。12のNCI症例、11のMCI症例及び10のAD症例は、3回の独立した実験で泳動された。MyD88(B)は、NCI(p<.001)及びMCI(p<.001)の両方と比較してADで有意に上昇した。クラスカル・ワリス検定によると、TLR2(C)は、MCI対象(p<.05)と比較してADで有意に高かった。TLR4(D)は、3群間で有意差がなかった。クラスカル・ワリス検定によると、MyD88(E;.371、p=.033)及びTLR2(F;.463、p=.007)は、Braakスコアと正に相関した。TLR4(G;-.012、p=.947)とBraakスコアとの間にこのような相関は認められなかった。MyD88は、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア(H;-.538、p=.001)及び全体的認知性zスコア(GCS)指標(I;-.475、p=-.005)と負に相関した。しかし、TLR2と、MMSE(J;-.278、p=.117)及びGCS(K;-.177、p=.326)とでは、負の相関は、有意でなかった。TLR4は、MMSE(L;-.173、p=.336)及びGCS(M;.047、p=.794)とも負の相関がなかった。kDa、キロダルトン;OD、光学濃度。NCI及びAD脳の海馬切片は、Iba-1(小グリア細胞)とTLR2、又はTLR4、又はMyD88とで二重標識された。TLR2(N、皮質;O、CA1)、MyD88(P、皮質;Q、CA1)及びTLR4(R、皮質;S、CA1)に対して陽性の細胞は、4つの異なる症例のそれぞれの2枚の切片(1スライド当たり2枚の画像)でカウントされた。ap<0.001対NCI、2標本t検定による。NS、有意でない。
【
図2A-H】TLR2及びMyD88の相互作用を破壊するためのペプチドの設計である。(A)マウスのTLR2(青色)及びMyD88(緑色)の剛体インシリコドッキングポーズ(静電エネルギー=-7.750KCal/mol;脱溶媒和エネルギー=-24.99Kcal/mol;VDWエネルギー=105.25Kcal/mol;総エネルギー=-22.216KCal/mol)は、MyD88のCDループの245~250個のアミノ酸とTLR2のBBループとの間の強い相互作用を示す。そのため、MyD88(TIDM)のこのドメインに対応するペプチドを使用して、TLR2とMyD88との間の相互作用が解離される。B)TLR2-MyD88相互作用は、wtTIDMペプチドと複合体化された(静電エネルギー=-4.516KCal/mol;脱溶媒和エネルギー=-24.027KCal/mol;VDWエネルギー=16.724KCal/mol;総エネルギー=-26.871KCal/mol)。C)cMycタグ付きC末端TLR2(cTLR2)組換えタンパク質の生成。増加する用量のwtTIDM(D)及びmTIDM(E)とcTLR2との生体外結合親和性は、表面プラズモン共鳴分析を用いて調べられた(3回の独立した実験でn=2複製物/用量)。F)wtTIDM(丸)及びmTIDM(四角)ペプチドの濃度と対比した結合応答値のプロット。G)cTLR2タンパク質(黒色)単独及びwtTIDM(緑色)との融解曲線。熱シフト分析は、融解温度の4.96℃のシフト(ΔTm)を示した(3回の独立した実験でn=2複製物/用量)。H)cTLR2タンパク質(黒)単独及びmTIDMペプチド(赤)との融解曲線は、0.87℃のΔTmを示した(3回の独立した実験でn=2複製物/用量)。
【
図3A-L】wtTIDMによる、TLR2及びMyD88の相互作用の選択的破壊である。wtTIDMと、TLR1、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7及びTLR9との相互作用のインシリコ分析。剛体相互作用分析は、インシリコ解析ツールpydockを使用して実施された。TLR1-wtTIDM(A)、TLR4-wtTIDM(B)、TLR5-wtTIDM(C)、TLR6-wtTIDM(D)、TLR7-wtTIDM(E)及びTLR9-wtTIDM(F)の複合体が示された。G)wtTIDM及びmTIDMペプチドと共に1時間プレインキュベートされたBV-2小グリア細胞は、無血清条件下において1μMの小繊維Aβ1-42で刺激された。1時間後、細胞抽出物は、抗MyD88抗体で免疫沈降され、TLR2の免疫沈降物のウエスタンブロットがそれに続いた。対照として、細胞抽出物が正常なIgGで免疫沈降された。入力は、TLR2及びMyD88でも免疫ブロットされた。H)バンドは、スキャンされ、値(TLR2/入力)は、対照(3回の独立した実験でn=2複製物/条件)に対する相対値として示された。結果は、2標本t検定で分析された。I)wtTIDM及びmTIDMペプチドと共に1時間プレインキュベートされたBV-2小グリア細胞は、無血清条件下においてLPSで刺激された。1時間後、細胞抽出物は、抗MyD88抗体で免疫沈降され、TLR4の免疫沈降物のウエスタンブロットがそれに続いた。対照として、細胞抽出物が正常なIgGで免疫沈降された。入力は、TLR4及びMyD88でも免疫ブロットされた。J)バンドは、スキャンされ、値(TLR4/入力)は、対照(3回の独立した実験でn=2複製物/条件)に対する相対値として示された。結果は、2標本t検定で分析された。K)BV-2小グリア細胞は、pLenti-cMyc-cTlr2レンチビリオンで形質導入され、形質導入の48時間後、細胞は、wtTIDM及びmTIDMで1時間処理され、小繊維Aβ1-42での刺激がそれに続いた。1時間後、細胞抽出物は、抗MyD88抗体で免疫沈降され、c-Mycの免疫沈降物のウエスタンブロットがそれに続いた。免疫枯渇(ID)画分も、対照としてc-Mycについて免疫ブロットされた。L)バンドは、スキャンされ、値(c-Myc/入力)は、対照(3回の独立した実験でn=2複製物/条件)に対する相対値として示された。結果は、2標本t検定で分析された。
【
図4A-R】小グリア細胞におけるNF-κB活性化の誘導及び炎症促進性分子の発現に対するwtTIDM及びmTIDMペプチドの効果である。10μMのwtTIDM/mTIDMペプチドと共に1時間プレインキュベートされたBV-2小グリア細胞は、無血清条件下において、1μMの小繊維Aβ1-42(A~C)、1μMのMPP+(D~F)、250ng/mlのLTA(G~I)、1μg/mlのLPS(J~L)、1μMのフラジェリン(M~O)及び1μMのCpG DNA(P~R)で刺激された。刺激の1時間後、EMSAにより、核抽出物中でNF-κBの活性化がモニターされた(A、小繊維Aβ;D、MPP+;G、LTA;J、LPS;M、フラジェリン、P;CpG DNA)。刺激の4時間後、リアルタイムPCRにより、IL-1β(B、E、H、K、N及びQ)及びiNOS(C、F、I、L、O及びR)のmRNA発現がモニターされた(B~C、小繊維Aβ;E~F、MPP+;H~I、LTA;K~L、LPS;N~O、フラジェリン;Q~R、CpG DNA)(3回の独立した実験でn=2複製物/条件)。ap<0.001対対照;bp<0.001対刺激、2標本t検定による。
【
図5A-Q】鼻腔内送達後、wtTIDMペプチドは、海馬に侵入してグリア活性化を抑制し、Tgマウスの海馬の斑を減少させる。Tgマウス(6ヶ月齢)にwtTIDMペプチド(0.1mg/kg体重)の1回用量が鼻腔内経路を介して投与された。処置の60分後、マウスは、無菌生理食塩水で灌流されて海馬が均質化され、上清がエレクトロスプレーイオン化共役質量分析法(ESI-MS)により、wtTIDMについて分析された(A、wtTIDM標準;B、未処置Tg;C、wtTIDM処置Tg)。Tgマウスは、鼻腔内経路を介してwtTIDM及びmTIDMペプチド(0.1mg/kg体重/2日)で処置された。30日後、海馬切片は、Iba-1及びP-p65(D)と、Iba-1及びiNOSとで二重標識された(
図16)。Iba-1(E、CA1;F、CA3)、P-p65(G、CA1;H、CA3)及びiNOS(I、CA1;J、CA3)に対して陽性の細胞は、1群当たり6匹の異なるマウス(n=6)のそれぞれの2枚の切片(1スライド当たり2枚の画像)でカウントされた。ap<0.001対非Tg;bp<0.001対Tg、2標本t検定による。全群のマウス(1群当たりn=4)の海馬抽出物は、iNOSについて免疫ブロットされた(K)。ローディング対照として、アクチンが泳動された。バンドは、スキャンされ、値(L、iNOS/アクチン)は、非Tg対照に対する相対値として示された。ap<0.001対非Tg;bp<0.001対Tg、2標本t検定による。M)海馬切片は、82E1 mAbで免疫標識された。アミロイド斑(N、皮質;O、海馬)は、1群当たり6匹の異なるマウスのそれぞれの2枚の切片(1スライド当たり2枚の画像)でカウントされた。ap<0.001対非Tg;bp<0.001対Tg、2標本t検定による。P)海馬抽出物(1群当たりn=4)は、6E10 mAbを使用したウエスタンブロットにより、Aβについて分析された。矢頭は、4kDaのAβバンドを示す。バンドは、スキャンされ、値(Aβ/アクチン)は、非Tg対照に対する相対値として示された(Q)。ap<0.001対非Tg;bp<0.001対Tg、2標本t検定による。
【
図6A-N】mTIDMではなく、wtTIDMペプチドの鼻腔内送達は、Tgマウスの海馬における生体内神経細胞アポトーシスを阻害し、記憶及び学習を改善する。Tgマウス(6ヶ月齢)は、鼻腔内経路を介してwtTIDM及びmTIDMペプチド(0.1mg/kg体重/2日)で処置された。処置の30日後、マウスを殺処分し、海馬切片は、TUNELとNeuN(A)とで二重標識された。TUNEL陽性細胞(B、CA1;C、CA3)は、1群当たり6匹の異なるマウス(n=6)のそれぞれの2枚の切片(1スライド当たり2枚の画像)でカウントされた。ap<0.001対非Tg;bp<0.001対Tg、2標本t検定による。全群のマウス(n=4)の海馬抽出物は、切断されたカスパーゼ3について免疫ブロットされた(D)。ローディング対照として、アクチンが泳動された。E)バンドは、スキャンされ、値(切断されたカスパーゼ3/アクチン)は、非Tg対照に対する相対値として示された。結果は、1群当たり4匹のマウスの平均値+SEMとして表される。ap<0.001対非Tg;bp<0.001対Tg、2標本t検定による。PSD-95、NR2A及びGluR1のタンパク質レベルは、ウエスタンブロットによって海馬抽出物中でモニターされた(F)。バンドは、スキャンされ、値(G、PSD-95/アクチン;H、NR2A/アクチン;I、GluR1/アクチン)は、非Tg対照に対する相対値として示された。結果は、1群当たり4匹のマウスの平均値+SEMとして表される。ap<0.001対非Tg;bp<0.001対Tg、2標本t検定による。マウスは、バーンズ迷路(J、遅延;K、誤り数)及びT字型迷路(L、正の方向転換数;M、負の方向転換数)について試験された。短期記憶は、識別指数で表される新規物体認識試験によってもモニターされた(N)。各群で8匹のマウス(n=8)が使用され、結果は、一方向ANOVAによって分析された。
【
図7A-V】mTIDMではなく、wtTIDMペプチドは、マウスを実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)及びコラーゲン誘発関節炎(CIA)から保護する。A)EAEは、MOG35-55免疫によってオスのC57/BL6マウスで誘導され、免疫後10目から、マウスは、鼻腔内経路を介してwtTIDM及びmTIDMペプチド(0.1mg/kg体重/日)で処置された。マウス(2回の独立した実験で1群当たりn=6)は、毎日採点された。一方向反復測定ANOVAによって明らかなように、wtTIDMペプチドは、EAEを有意に保護した[F2、94=22.59(>Fc=3.093)]。免疫後22目にEthovision XT 13.0オープンフィールド行動システム(Noldus)を使用して、一般的な運動活動がモニターされた(B、全体的な運動活動を表すヒートマップ画像;C、移動距離;D、立ち上がり行動;E、速度;F、加速度)及びロータロッド(G)。足跡解析(H、歩幅、I、足跡長、J、揺れ長さ、K、つま先の広がり)も実施された。L)CIAは、ウシII型コラーゲン免疫化によってオスのDBA/1Jマウスで誘導され、免疫後29目から、マウスは、腹腔内注射を介してwtTIDM及びmTIDMペプチド(1mg/kg体重/日)で処置された。マウス(2回の独立した実験で1群当たりn=6)は、毎日採点された。一方向反復測定ANOVAは、wtTIDMペプチドがCIAを有意に保護することを示す[F2、45=4.927(>Fc=3.093)]。免疫後60目に一般的な運動活動がEthovisionシステムによってモニターされた(M、全体的な運動活動を表すヒートマップ画像;N、移動距離;O、立ち上がり行動;P、速度)、ロータロッド(Q)、握力(R)。足跡解析(S、歩幅;T、足跡長さ;U、揺れ長さ;V、つま先の広がり)も実施された。6匹のマウス(1群当たりn=6)が2回の独立した実験で使用された。ap<0.001及びbp<0.05対対照;cp<0.001及びdp<0.05対EAE又はCIA、2標本t検定による。
【
図8A-D】認知機能障害(NCI)なし及びアルツハイマー病(AD)と臨床的に診断された症例のCNSにおけるTLR2、TLR4及びMyD88のモニタリングである。NCIとAD脳の海馬切片は、Iba-1(小グリア細胞)及びTLR2(A)と、Iba-1及びMyD88(B)と、Iba-1及びTLR4(C)とで二重標識された。結果は、4つの異なる脳のそれぞれからの2枚の切片の分析を表す。Iba1(D、皮質;E、CA1)に対して陽性の細胞は、4つの異なる症例のそれぞれの2枚の切片(1スライド当たり2枚の画像)でカウントされた。ap<0.001対NCI、2標本t検定による。
【
図9A-D】非Tg及びTg(5XFAD)マウスのCNSにおけるTLR2の状態である。A~B)6ヶ月齢非Tg及びTgマウス脳の海馬切片は、Iba-1(小グリア細胞)とTLR2とで二重標識された。結果は、6匹の異なるマウスのそれぞれからの2枚の切片の分析を表す。C)全群のマウス(n=4)の海馬抽出物は、TLR2について免疫ブロットされた。ローディング対照として、アクチンが泳動された。D)バンドは、NIH画像化Jソフトウェアを使用してスキャンされ、値(TLR2/アクチン)は、非Tg対照に対する相対値として示された。ap<0.001対非Tg、2標本t検定による。
【
図10A-D】非Tg及びTg(5XFAD)マウスのCNSにおけるMyD88の状態である。A~B)6ヶ月齢非Tg及びTgマウス脳の海馬切片は、Iba-1(小グリア細胞)とMyD88とで二重標識された。結果は、6匹の異なるマウスのそれぞれからの2枚の切片の分析を表す。C)全群のマウス(n=4)の海馬抽出物は、MyD88について免疫ブロットされた。ローディング対照として、アクチンが泳動された。D)バンドは、NIH画像化Jソフトウェアを使用してスキャンされ、値(MyD88/アクチン)は、非Tg対照に対する相対値として示された。ap<0.001対非Tg、2標本t検定による。
【
図11A-G】異なるマウスTLRのTLR相互作用ドメイン構造を構築するための、インシリコ相同性モデル化ストラテジーの実装である。TIR(A、TLR1;B、TLR2;C、TLR4;D、TLR5;E、TLR6;F、TLR7;G、TLR9)の初期構造は、Expert Protein Analytical System(ExPASy)のオンライン高分子分析ツールであるDeep View 3.7β2を使用してモデル化された。モデル化された各構造の品質は、Quality Measurement Analysysツール(QMEAN)を使用して評価された。
【
図12A-E】TLR2タンパク質のTIRドメインと複合体化したwtTIDM及びmTIDMのドッキング解析である。A)TLR2及びwtTIDMペプチドのTIRドメインのインシリコ構造分析。ドッキングポーズは、pydock剛体タンパク質間ドッキングツールから得られた。j molビューアから最も安定な構造が得られ、提示された。B)同様の分析がmTIDMを用いて実施された。C)さらなる分析は、wtTIDMとTLR2との間の強い静電的相互作用(約2.31A°:左)及びwtTIDMとmTIDMとの弱い相互作用(約7.26A°:右)を明らかにした。(D)TLR2のBBループ(青色)とMYD88のCDループ(緑色)との間の複合体の拡大図。VDW液滴が互いに重なり合っていることが示された。E)MYD88(ピンク色)のVDW雲は、wtTIDM(緑色)と複合体化すると、TLR2(青色)のVDW雲から離れたところに移動した。
【
図13A-F】小グリア細胞における炎症促進性分子の発現に対するwtTIDM及びmTIDMペプチドの効果である。10μMのwtTIDM/mTIDMペプチドと共に1時間プレインキュベートされたBV-2小グリア細胞は、1μMの小繊維Aβ1-42(A)、1μMのMPP+(B)、250ng/mlのLTA(C)、1μg/mlのLPS(D)、1μMのフラジェリン(E)及び1μMのCpG DNA(F)で刺激された。刺激の4時間後、RT-PCRによってIL-1β及びiNOSのmRNA発現がモニターされた(3回の独立した実験でn=2複製物/条件)。
【
図14A-D】小グリア細胞におけるNF-κB活性化のポリIC媒介活性化及び炎症促進性分子の発現に対するwtTIDM及びmTIDMペプチドの効果である。10μMのwtTIDM/mTIDMペプチドと共に1時間プレインキュベートされたBV-2小グリア細胞は、50μMのpolyICによって刺激された。A)刺激の1時間後、EMSAにより、核抽出物中でNF-κBの活性化がモニターされた。刺激の4時間後、半定量的RT-PCR(B)及びリアルタイムPCR(C、IL-1β;D、iNOS)により、IL-1β及びiNOSのmRNA発現がモニターされた(3回の独立した実験でn=2複製物/条件)。ap<0.001対対照;bp<0.001対刺激、2標本t検定による。
【
図15A-F】小グリア細胞におけるp65及びp50の小繊維Aβ及びLPS誘導核転移に対するwtTIDMペプチドの効果である。10μMのwtTIDMペプチドと共に1時間プレインキュベートされたBV-2小グリア細胞は、無血清条件下において、1μMの小繊維Aβ1-42(A~C)又は1μg/mlのLPS(D~F)のいずれかで刺激された。異なる分間隔において、ウエスタンブロットにより、核抽出物中でp65及びp50(A、小繊維Aβ;D、LPS)のレベルがモニターされた。ローディング対照として、ヒストンH3が泳動された。バンドは、スキャンされ、p65/H3(B及びE)及びp50/H3(C及びF)の値は、対照に対する相対値として示された(3回の独立した実験でn=2複製物/条件)。ap<0.05、bp<0.001対対照;cp<0.01対30分間の刺激;dp<0.05対15分間の刺激;NS、有意でない、2標本t検定による。
【
図16A-F】wtTIDMペプチドは、TLR2(-/-)小グリア細胞における、小繊維Aβ1-42ペプチドが媒介するNF-κBの活性化及び炎症促進性分子の発現を阻害できないままであった。WT(A)及びTLR2(-/-)(B)マウスから単離された一次小グリア細胞は、異なる濃度のwtTIDMペプチドで1時間処理され、無血清条件下における1μMの小繊維Aβ1-42での刺激がそれに続いた。刺激の1時間後、EMSAにより、NF-κBの活性化がモニターされた。WT(C及びD)及びTLR2(-/-)(E及びF)小グリア細胞は、異なる濃度のwtTIDM及びmTIDMペプチドで1時間処理され、無血清条件下における1μMの小繊維Aβ1-42での刺激がそれに続いた。刺激の18時間後、ELISAにより、上清中のTNFα(C及びE)及びIL-1β(D及びF)のレベルがモニターされた(3回の独立した実験でn=2複製物/条件)。ap<0.001対対照;bp<0.001対刺激、2標本t検定による。
【
図17】鼻腔内投与後、wtTIDMペプチドは、Tgマウスの海馬に侵入する。wtTIDMペプチドは、製造業者のプロトコルに従ってAlexa 680-SE NIR色素(Life Technologies)で標識され、Alexa 680標識ペプチド(2.5μg)は、各マウスの鼻腔内に投与された。また、対照としてAlexa680-SE NIR色素が投与された。60分後、マウス(各群でn=3)は、PBS及びパラホルムアルデヒドで灌流され、脳の海馬領域が700及び800nmチャネルでOdyssey(ODY-0854、Licor-Inc)赤外線スキャナ内でスキャンされた。赤色の背景は、800nmのフィルターに由来した一方、緑色の信号は、700nmのチャネルのAlexa 680標識NBDペプチドに由来した。
【
図18A-B】鼻腔内送達後、wtTIDMペプチドは、Tgマウスの海馬におけるNF-κBの活性化を抑制した。Tgマウス(6ヶ月齢)は、鼻腔内経路を介してwtTIDM及びmTIDMペプチド(0.1mg/kg体重/2日)で処置された。処置の30日後、全群のマウスの海馬抽出物は、ホスホ-p65について免疫ブロットされた(A)。ローディング対照として、アクチンが泳動された。バンドは、スキャンされ、値(p-p65/アクチン)は、非Tg対照に対する相対値として示された(2回の独立した実験でn=4)。ap<0.001対非Tg;bp<0.001対Tg、2標本t検定による。
【
図19】mTIDMではなく、wtTIDMペプチドの鼻腔内送達は、Tgマウスの海馬におけるiNOSの小グリア細胞発現を抑制する。Tgマウス(6ヶ月齢)は、鼻腔内経路を介してwtTIDM及びmTIDMペプチド(0.1mg/kg体重/2日)で処置された。処置の30日後、マウスを殺処分し、海馬切片をIba-1及びiNOSで二重標識した。結果は、1群当たり6匹の異なるマウスのそれぞれからの2枚の切片の分析を表す。
【
図20A-B】mTIDMではなく、wtTIDMペプチドの鼻腔内送達は、Tgマウスの海馬におけるアミロイド斑の負荷を低下させる。A)Tgマウス(6ヶ月齢)は、鼻腔内経路を介してwtTIDM及びmTIDMペプチド(0.1mg/kg体重/2日)で処置された。処置の30日後、82E1 mAbを使用したウエスタンブロットにより、全群のマウス(1群当たりn=4)の海馬抽出物をAβのタンパク質レベルについて分析した。ローディング対照として、アクチンが泳動された。B)バンドは、スキャンされ、値(Aβ/アクチン)は、非Tg対照に対する相対値として示された。結果は、2標本t検定で分析された。
【
図21A-F】mTIDMではなく、wtTIDMペプチドの鼻腔内送達は、Tgマウスの血清及び海馬におけるAβ1-40及びAβ1-42のレベルを低下させる。Tgマウス(6ヶ月齢)は、鼻腔内経路を介してwtTIDM及びmTIDMペプチド(0.1mg/kg体重/2日)で処置された。処置の30日後、血清(A及びB)、及びTBS抽出(C及びD)、及び(TBS+トリトンX-100)(E及びF)抽出海馬組織中において、Aβ1-40(A、C及びE)及びAβ1-42(B、D及びF)のELISA定量化が実施された。6匹のマウス(1群当たりn=6)が2回の独立した実験で使用された。非Tgと対比してap<0.01及びcp<0.001;Tgと対比してbp<0.01及びdp<0.001、2標本t検定による。
【
図22A-B】mTIDMではなく、wtTIDMペプチドの鼻腔内送達は、Tgマウスの海馬におけるタウのリン酸化を減少させる。A)Tgマウス(6ヶ月齢)は、鼻腔内経路を介してwtTIDM及びmTIDMペプチド(0.1mg/kg体重/2日)で処置された。処置の30日後、全群のマウスの海馬抽出物(1群当たりn=4)は、ウエスタンブロットによってホスホ-タウ及び全タウについて分析された。B)バンドは、スキャンされ、値(P-タウ/タウ)は、非Tg対照に対する相対値として示された。結果は、2標本t検定で分析された。
【
図23A-D】wtTIDM及びmTIDMペプチドの鼻腔内送達は、Tgマウスの自発運動活性を調節しない。Tgマウス(6ヶ月齢)は、鼻腔内経路を介してwtTIDM及びmTIDMペプチド(0.1mg/kg体重/2日)で処置された。処置の30日後、マウスは、一般的な自発運動活性について試験された(A、動きの数;B、水平活動;C、休止時間;D、常同行動回数)。各群で8匹のマウス(2回の独立した実験でn=8)が使用された。NS、有意でない。
【
図24A-H】wtTIDMペプチドの鼻腔内送達は、Tlr2を欠失したFAD5X Tgマウス(Tg-Tlr2-/-)において斑を減少させず、記憶力を改善しない。A)Tlr2-/-マウスはTg(5XFADマウス)と交配され、6ヶ月齢の非Tg、Tg(5XFAD)、Tg-Tlr2-/-(F7)及びTlr2-/-マウスについて、Tlr2、App695及びPsen1導入遺伝子DNA発現の代表的なPCRが示される。非Tg、Tg、Tg-Tlr2-/-及びTlr2-/-マウスの平均体重(B)及び湿潤脳重量(C)。湿潤脳重量について、嗅小葉及び脳幹が除去された。Tg-Tlr2-/-マウス(6ヶ月齢)は、鼻腔内経路を介してwtTIDMペプチド(0.1mg/kg体重/2日)で処置された。処置の30日後、海馬切片を6E10 mAbで免疫標識した(D)。アミロイド斑は、1群当たり4匹の異なるマウスのそれぞれの2枚の切片(1スライド当たり2枚の画像)でカウントされた(E)。マウスは、バーンズ迷路について試験された(F、トラックプロット;G、遅延;H、誤り数)。各群で4匹のマウス(n=4)が使用された。NS、有意でない、2標本t検定による。
【
図25A-D】wtTIDM及びmTIDMペプチドでの処置後におけるEAEマウスの足跡解析である。歩行路上に白紙の短冊が貼られて、黒インクが使用され、紙の上に異なる群(A、対照;B、EAE;C、EAE+wtTIDM;D、EAE+mTIDM)のマウスの足跡が得られた。各群について、合計30~40のステップが判定された。4つの異なる足跡の測定、すなわち歩幅(SL)、足跡長(PL)、揺れ長さ(SWL)及びつま先の広がり(TS)は、記録されたマウスの足跡からセンチメートル単位で計算された。SLは、同一足の連続した2つの足跡の前縁間の距離を指す一方、SWLは、移動距離に垂直な足間の距離を指し、PLは、足跡領域の長さの測定値を示す。他方、TSは、足跡の第1趾と第5趾との間の距離を示す。6匹のマウス(1群当たりn=6)が2回の独立した実験で使用された。
【
図26A-D】wtTIDM及びmTIDMペプチドでの処置後における、CIAを有するマウスの足跡解析である。歩行路上に白紙の短冊が貼られて、黒インクが使用され、紙の上に異なる群(A、対照;B、CIA;C、CIA+wtTIDM;D、CIA+mTIDM)のマウスの足跡が得られた。各群について、合計30~40のステップが判定された。マウスの記録された足跡から、4つの異なる足跡測定(SL、PL、SWL及びTS)がセンチメートル単位で計算された。6匹のマウス(1群当たりn=6)が2回の独立した実験で使用された。
【
図27】小繊維Aβ1-42ペプチドの形態である。小繊維Aβ1-42ペプチド(Bachem Bioscience)は、新鮮に可溶化された50μMのペプチドを無菌蒸留水中において37℃で5日間インキュベートすることによって調製された。小繊維Aβ1-42ペプチドの形態は、透過電子顕微鏡法によって調べられた。
【
図28A-B】鼻腔内wtTIDMペプチドは、A53T α-syn Tgマウスの黒質における小グリア細胞炎症を減弱させる。A53Tマウス(オス;9ヶ月齢;1群当たりn=6)は、0.1mg/kg体重/日の用量で30日間、鼻腔内経路を介してTIDMペプチドで処置され、Iba-1及び誘導性酸化窒素シンターゼ(iNOS)に対する黒質切片の二重標識免疫蛍光分析がそれに続いた(A)。選択された領域の拡大画像が下段に示される。iNOS(+ve)細胞は、1群当たり6匹のマウスのそれぞれの2枚の切片でカウントされ、細胞/mm2として提示された。
【
図29A-B】鼻腔内wtTIDMペプチドは、A53T α-syn Tgマウスの黒質における小グリア細胞のアルギナーゼ-1の発現を刺激する。A53Tマウス(オス;9ヶ月齢;1群当たりn=6)は、0.1mg/kg体重/日の用量で30日間、鼻腔内経路を介してTIDMペプチドで処置され、Iba-1及びアルギナーゼ-1(ARG1)に対する黒質切片の二重標識免疫蛍光分析がそれに続いた(A)。選択された領域の拡大画像が下段に示される。ARG(+ve)細胞は、1群当たり6匹のマウスのそれぞれの2枚の切片でカウントされ、細胞/mm2として提示された。
【
図30A-C】鼻腔内wtTIDMペプチドは、A53T α-syn Tgマウスの黒質におけるα-シヌクレイン症を減少させる。A53Tマウス(オス;9ヶ月齢;1群当たりn=6)は、0.1mg/kg体重/日の用量で30日間、鼻腔内経路を介してTIDMペプチドで処置され、α-synに対する黒質抽出物のウエスタンブロット分析がそれに続いた(A)。バンドは、スキャンされ、A53T対照に対する相対値として示された(B、モノマーα-syn;C、オリゴマーα-syn)。結果は、1群当たり6匹のマウスの平均値+SEMである。
【
図31A-D】鼻腔内wtTIDMペプチドは、A53T α-syn Tgマウスの黒質におけるα-シヌクレイン症を減少させる。A53Tマウス(オス;9ヶ月齢;1群当たりn=6)は、0.1mg/kg体重/日の用量で30日間、鼻腔内経路を介してTIDMペプチドで処置され、TH及びα-syn(mjfr1 Ab)に対する黒質切片の二重標識免疫蛍光分析がそれに続いた(A)。選択された領域の拡大画像が一番左の列に示される。α-syn陽性細胞体の総面積(B)、平均サイズ(C)及び統合密度(D)が計算された。1群当たり6匹のマウスの2枚の黒質切片のそれぞれからの5つの細胞が分析された。
【
図32A-B】鼻腔内wtTIDMペプチドは、A53T α-syn Tgマウスの黒質におけるα-シヌクレイン症を減少させる。A53Tマウス(オス;9ヶ月齢;1群当たりn=6)は、0.1mg/kg体重/日の用量で30日間、鼻腔内経路を介してTIDMペプチドで処置され、小グリア細胞マーカーIba-1及びα-syn(mjfr1 Ab)に対する黒質切片の二重標識免疫蛍光分析がそれに続いた(A)。選択された領域の拡大画像が一番左の列に示される。(α-syn+Iba-1)陽性細胞体の平均蛍光強度(MFI)が計算された。1群当たり6匹のマウスの2枚の黒質切片のそれぞれからの5つの細胞が分析された。
【
図33A-E】鼻腔内wtTIDMペプチドは、A53T α-syn Tgマウスの自発運動活性を改善する。A53Tマウス(オス;9ヶ月齢;1群当たりn=6)は、0.1mg/kg体重/日の用量で30日間、鼻腔内経路を介してTIDMペプチドで処置され、Ethovision XT 13.0 オープンフィールド行動システム(Noldus)による自発運動活性のモニタリングがそれに続いた(A、トラックプロット;B、移動累積期間;C、距離;D、速度;E、ロータロッド)。結果は、1群当たり6匹のマウスの平均値+SEMである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。好ましい方法及び材料が以下に記載されるが、ただし、本発明の実施又は試験において、本明細書に記載されるものと類似した又は均等な方法及び材料が使用され得る。
【0013】
本発明の説明に関連して(特に以下の特許請求の範囲に関連して)、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その」及び類似した参照の使用は、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含するものと解釈される。本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、範囲内に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略表記法として機能することのみを意図しており、各別個の値は、あたかもそれが本明細書で個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で特に断りのない限り又は他に文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供されるあらゆる全ての実施例又は例示的言語(例えば、「などの」、「例えば」)の使用は、単に本発明の理解を容易にすることを意図し、別段の特許請求がない限り、本発明の範囲の限定を提起するものではない。本明細書のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠なものとして任意の非特許請求の要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0014】
「患者」という用語は、ヒト患者又は獣医学の患者を指す。
【0015】
「治療効果」という用語は、本明細書の用法では、例えば神経学的、自己免疫性又は他の本明細書で開示されたものなどのヒト患者又は獣医学の患者の障害に屈することに関連する病理学的症状、疾患進行若しくは生理学的状態の改善又はそれに対する抵抗を誘導するか、寛解させるか又は別の様式で引き起こす効果を意味する。薬物に関して使用される「治療的有効量」という用語は、ヒト患者又は獣医学の患者に治療的効果を与える薬物の量を意味する。TLR2/MyD88相互作用の選択的破壊を提供する組成物及び方法は、炎症を阻害し、神経学的及び他の疾患病理を弱める。
【0016】
本出願人は、TLR2及びMyD88のレベルがAD患者及び5XFADマウスの前頭前皮質及び海馬において生体内で増加したことを実証した。誘導されたTLR2の特異的標的化に対して利用できる選択肢はない。本出願人は、MyD88のTLR2相互作用ドメイン(TIDM)に対応するペプチドを設計し、これは、二本鎖RNA、細菌LPS、フラジェリン、CpG DNA及び1-メチル-4-フェニルピリジニウム(MPP+)媒介性の小グリア細胞活性化を調節することなく、誘導されたTLR2シグナル伝達及び小繊維Aβ媒介性小グリア細胞炎症を特異的に阻害した。さらに、TIDMペプチドの鼻腔内投与により、5XFADマウスにおいて、海馬小グリア細胞活性化の低下、Aβ負荷の低下、神経細胞アポトーシスの抑制、記憶及び学習の改善がもたらされ、ADにおけるTIDMペプチドの治療的有望性が強調された。
【0017】
本発明は、概して、上昇したTLR2活性化が疾患の病態形成において役割を果たす疾患を治療するための組成物及び方法に関する。方法の一実施形態は、他のTLRではなく、TLR2のBBループのみに結合してTLR2とMyD88との間の結合を破壊する、MyD88のTLR2相互作用ドメイン(TIDM)に対応するペプチド配列を含む組成物の治療的有効量を投与することを含む。組成物は、TLR2によってのみ伝達されるシグナル伝達経路を阻害する。
【0018】
一実施形態は、患者において障害を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に、治療的有効量の、MyD88のTLR2相互作用ドメインを含むペプチドを含む組成物を投与するステップを含む方法を提供する。治療的有効量は、少なくともTLR2-MyD88シグナル伝達を減少させる量である。障害は、TLR2-MyD88シグナル伝達が疾患の病態形成において役割を果たすものである。例えば、障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、ハンチントン病又は多系統萎縮症などの神経学的障害であり得る。別の実施形態では、障害は、多発性硬化症又はリウマチ様関節炎などの自己免疫障害である。なおも別の実施形態では、障害は、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、ウイルス感染症、敗血症又は脳膿瘍である。
【0019】
一実施形態では、MyD88のTLR2相互作用ドメインを含むペプチドは、配列PGAHQK(配列番号1)を含む。他の実施形態では、ペプチドは、配列番号1を含む6~10個のアミノ酸を含有する。例えば、ペプチドは、配列番号1を含む6、7、8、9又は10個のアミノ酸を含有し得る。他の実施形態では、ペプチドは、12、13、14又は15個未満のアミノ酸を含む。
【0020】
別の実施形態では、ペプチドは、細胞内送達細胞及び血液脳関門を越えるアクセスの少なくとも1つを提供する送達ベクターに連結する。送達ベクターは、他の組成のペプチドであり得る。一実施形態では、送達ベクターは、アンテナペディアホメオドメインである。例えば、アンテナペディアホメオドメインは、MyD88のTLR2相互作用ドメインを含むペプチドのN末端に連結する。好ましい一実施形態では、ペプチド配列は、drqikiwfqnrrmkwkkpgahqk(配列番号2)である。
【0021】
ADの疾患過程の機序を解読し、効果的な神経防護の治療アプローチを開発して、疾患進行を減速させるか又は食い止めることが最も重要である。TLRは、病原体関連の分子パターン及び内因性損傷関連の分子パターンを感知することにより、自然免疫応答を消散させることが知られている(15)。CNSの小グリア細胞は、これまでに知られているほとんどのTLRを発現し、本発明者らは、以前に、小繊維Aβ1-42が小グリア細胞炎症を刺激するために、様々なTLRの中でもTLR2を必要とすることを示した(17)。したがって、いくつかの研究は、TLR2とAβとの間の直接的相互作用を実証することによって又はCD14を介してこの知見を拡張している(18、19、33)。ここで、本発明者らは、アルツハイマー病におけるTLR2の重要な役割について記載する。本発明者らは、MCI又はNCIを有する人々と比較して、AD認知症を有する人々の海馬及び前頭前皮質でより高いレベルのTLR2を検出した。いくつかの研究は、Aβ媒介性小グリア細胞活性化におけるTLR4の関与を報告しているが、本発明者らは、AD認知症を有する人々のCNSではより高レベルのTLR4を見いだしておらず、本発明者らの知見の特異性が示唆される。Tlr2多型は、ADの易罹患性に影響を及ぼすことが報告されており(34)、AD患者のPBMCも、増加したレベルのTLR2を発現する(35)。TLR2と矛盾なく、AD認知症を有する人々のCNSにおけるMyD88の上方制御も観察され、興味深いことに、TLR2及びMyD88は、いずれもBraakスコアと正に相関した。MyD88は、認知機能とも負に相関した。
【0022】
TLR2は、自然免疫の重要なメンバーであるが、TLR2を標的とする特異的阻害剤はなかった。そのため、TLR2とMyD88との間の相互作用の構造分析を通じて、本発明者らは、MyD88のTLR2相互作用ドメイン(TIDM)に対応するペプチドをCDループから設計した。TLR2のBBループは、MyD88のCDループと相互作用するため、wtTIDMペプチドは、TLR2とMyD88との間の結合を阻害する。興味深いことに、wtTIDMペプチドは、他のTLRではなく、TLR2のBBループを特異的に標的化する様式でドッキングし、それによりTLR2によって伝達されるシグナル伝達経路のみを阻害する。TLR2及び小繊維Aβ1-42を特異的に標的化するwtTIDMペプチドは、小グリア細胞活性化のためにTLR2を必要とするため(17、18)、wtTIDMペプチドは、MPP+、ポリIC(TLR3の作動薬)、LPS(TLR4の作動薬)、フラジェリン(TLR5の作動薬)及びCpG DNA(TLR9の作動薬)によってではなく、LTA(TLR2の既知の作動薬)及び小繊維Aβ1-42によってのみ誘導される小グリア細胞NF-κBの活性化及び炎症を阻害し、wtTIDMペプチドによるTLR2経路の選択的阻害が示唆される。さらに、TLR2:MyD88相互作用の破壊と矛盾なく、wtTIDMペプチドは、TLR2の非存在下で機能しない。
【0023】
未修飾ペプチドは、通常、血液、腎臓又は肝臓における急速なタンパク質分解及び/又は加速された腎クリアランスに起因する短い半減期を有し、これは、ほとんどのペプチド治療法の大きい課題である。しかし、ショウジョウバエ(Drosophila)のアンテナペディアホメオドメイン由来の細胞浸透性ペプチド(アンテナペディアのホメオドメイン)であるペネトラチンは、正荷電残基が豊富であり、カーゴペプチドが細胞内に移動することを促進して迅速なタンパク質分解を回避することが示されている(36、37)。さらに、未修飾ペプチドは、CNSに侵入せず、本発明者らは、ペネトラチンが緊密な内皮網状組織を突破し、BBBを越えてペプチドを輸送し得ることを認識した(23、38)。そのため、本発明者らは、ペネトラチン含有wtTIDMペプチドの有効性をTgマウスで試験し、wtTIDMペプチドが小グリア細胞の炎症を軽減し、神経細胞のアポトーシスを減少させ、認知機能をADの毒性から保護することを実証した。本発明者らの結論は、以下に基づく。第一に、鼻腔内投与後、TIDMペプチドは、海馬に侵入した。第二に、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドがTgマウスのNF-κBの海馬活性化及び小グリア細胞の炎症を阻害した。第三に、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドがTgマウスの海馬の神経細胞とNMDA及びAMPA受容体タンパク質とをアルツハイマー病の毒性から保護した。第四に、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドがTgマウスの空間的学習及び記憶も改善した。さらに、本発明者らは、研究期間中に使用されたTIDM処置マウスのいずれにおいても、いかなる薬物関連副作用(例えば、脱毛、食欲減退、体重減少、有害な感染症など)も見いださなかった。しかし、一研究では、TLR2の遺伝子ノックダウンは、APP Tgマウスの認知低下を加速させることが示されている(39)。TLR2の完全なノックダウンは、基底並びに誘導TLR2シグナル伝達経路を一掃するため、それは、間違いなく可能である。さらに、TLR2は、MyD88依存型経路及び非依存型経路の両方を介して機能することが示されており(40、41)、本発明者らの発見の長所は、TIDMペプチドが基底TLR2活性を阻害することなく、MyD88依存型誘導TLR2シグナル伝達経路のみを標的とすることである。
【0024】
斑がADの記憶喪失に直接関連するかどうかにかかわらず、アミロイド斑は、ADの病理学的特徴の1つであり、mTIDMではなく、wtTIDMペプチド処置がTgマウスの海馬の斑負荷を減少させたことも重要である。しかし、現在のところ、本発明者らは、wtTIDMペプチド処置がどのように斑の減少に結び付いているかを理解していない。β-セクレターゼ1(BACE1)は、Aβの形成を開始する重要な酵素であり、NF-κBの阻害がAβ誘導BACE1プロモータートランス活性化を防ぐこと、及び野生型又はスウェーデン変異型βAPPの過剰発現が、NF-κB応答要素を欠くBACE1プロモーターコンストラクトのトランス活性化を変更しないことが示されている(42)。wtTIDMペプチドは、NF-κBの小繊維Aβ誘導活性化を抑制するため、wtTIDMペプチドは、NF-κB-BACE1経路の減弱を介してTgマウスの斑負荷を軽減することが可能である。
【0025】
ADの進行を止めるための効果的な治療法はない。Aricept(登録商標)、Exelon(登録商標)、Razadyne(登録商標)、Cognex(登録商標)などの様々なコリンエステラーゼ阻害剤の投与がADの標準的治療である(43)。しかし、それには、いくつかの副作用と不満足な結果が伴うことが多い。本明細書では、本発明者らは、TLR2及びMyD88のレベルがAD患者のCNSで上方制御されていること、TLR2及びMyD88がBraakスコアと正に相関すること、wtTIDMペプチドが他のシグナル伝達経路を調節せずにTLR2のみを標的化すること、及び鼻腔内投与後、wtTIDMペプチドが海馬に到達し、海馬のNF-κB活性化を抑制し、小グリア細胞炎症を阻害し、脳の斑負荷を低下させ、神経細胞アポトーシスを弱め、Tgマウスの学習及び記憶を保護することを実証している。これらの結果は、鼻腔内wtTIDMペプチドによるTLR2の選択的標的化がADにおける治療的重要性を有し得ることを示唆する。さらに、wtTIDMペプチドはまた、マウスの機能障害を改善し、EAE及びCIAの疾患プロセスを抑制した。したがって、ADに加えて、TIDMペプチドは、他の多くの障害に対する機会を開き得る。
【0026】
医薬組成物及び投与様式
本明細書で開示される治療方法は、ペプチド組成物又はペプチド組成物の医薬組成物を投与する任意の数の様式を含み得る。投与様式としては、錠剤、丸薬、糖衣丸、硬質及び軟質ゲルカプセル、顆粒、ペレット、水性、若しくは脂質、若しくは油性、若しくは他の溶液、水中油型エマルションなどのエマルション、リポソーム、水性又は油性懸濁液、シロップ剤、エリキシル剤、固体エマルション、固体分散体又は分散性粉末が挙げられ得る。経口投与のための医薬組成物の調製では、ペプチド組成物は、例えば、アラビアガム、滑石、デンプン、糖類(例えば、マンニトース、メチルセルロース、ラクトースなど)、ゼラチン、界面活性剤、ステアリン酸マグネシウム、水性又は非水性溶剤、パラフィン誘導体、架橋剤、分散剤、乳化剤、潤滑剤、保存剤、香味剤(例えば、エーテル性油)、溶解促進剤(例えば、安息香酸ベンジル又はベンジルアルコール)又は生物学的利用能促進剤(例えば、GELUCIRE)などの一般に知られて使用されている、アジュバント及び賦形剤と混合され得る。医薬組成物中では、薬剤は、例えば、ナノ微粒子などの微粒子組成物中に分散され得る。
【0027】
非経口投与では、ペプチド組成物又はペプチド組成物の医薬組成物は、例えば、水、緩衝液、可溶化剤含有又は非含有の油、界面活性剤、分散剤又は乳化剤などの生理学的に許容可能な希釈剤に溶解又は懸濁され得る。油としては、例えば、限定されるものではないが、オリーブ油、落花生油、綿実油、大豆油、ヒマシ油及びゴマ油が使用され得る。より一般的に言えば、非経口投与では、薬剤又は薬剤の医薬組成物は、水性、脂質、油性若しくは他の種類の溶液若しくは懸濁液の形態であり得るか、又はリポソーム若しくはナノ懸濁液の形態で投与することさえできる。
【0028】
本開示によって想定される治療方法において、ペプチド組成物は、単独で又は薬学的に許容可能な担体若しくは賦形剤と共に組成物中で使用され得る。本明細書の用法では、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、あらゆるタイプの無毒で不活性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、封入材料又は製剤助剤を意味する。薬学的に許容可能な担体の役割を果たし得る材料のいくつかの例は、ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖類;コーンスターチ及びジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース並びにその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;滑石;カカオ脂及び坐薬ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーンオイル及び大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチル及びエチルラウレートなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質非含有水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール及びリン酸緩衝液溶液;並びにラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの他の無毒の適合性潤滑剤であり、且つ着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味剤及び香料、保存料及び抗酸化剤も配合者の判断次第で組成物中に存在し得る。他の適切な薬学的に許容可能な賦形剤は、その内容が明示的に参照により本明細書に援用される”Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Pub.Co.,New Jersey,1991に記載されている。
【0029】
特定の実施形態では、ペプチド組成物は、ヒト及び他の動物に経口投与され得る。組成物は、投与のために製剤化され得、製剤化の方法は、当技術分野で周知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,19th Edition(1995)を参照されたい)。
【0030】
いくつかの実施形態では、製剤は、徐放性製剤であり得、これは、ペプチド組成物を長期にわたり着実に放出することを意味する。他の実施形態では、製剤は、遅延放出製剤であり得、これは、投与直後よりも後の時点でペプチド組成物を放出することを意味する。
【0031】
本開示に従って使用するための医薬組成物は、無菌、非発熱性液体溶液若しくは懸濁液、コーティングされたカプセル、凍結乾燥粉末又は当技術分野で公知の他の形態であり得る。
【0032】
経口投与のための固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸薬、粉末及び顆粒が挙げられる。このような固体剤形中では、活性化合物は、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムなど、少なくとも1つの不活性の薬学的に許容可能な賦形剤又は担体、及び/又はa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸などの充填剤又は増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース及びアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの湿潤剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えばアセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセリンなどの湿潤剤、h)カオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤、及びi)滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物などの潤滑剤と混合される。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、剤形は、緩衝剤も含み得る。
【0033】
類似タイプの固体組成物は、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用する、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤としても用いられ得る。
【0034】
錠剤、糖衣丸、カプセル、丸薬及び顆粒の固体剤形は、腸内コーティング及び製剤処方技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティング及びシェルを用いて調製され得る。それらは、任意選択的に不透明剤を含有し得、それらは、腸管の特定部分のみで又は優先的に活性成分を任意選択的に遅延様式で放出する組成物であり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。
【0035】
活性化合物は、上述したように、1つ又は複数の賦形剤と共に微小カプセル化された形態でもあり得る。錠剤、糖衣丸、カプセル、丸薬及び顆粒の固体剤形は、腸内コーティング、放出制御コーティング及び製剤処方技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティング及びシェルを用いて調製され得る。このような固体剤形中では、活性化合物は、スクロース、ラクトース又はデンプンなどの少なくとも1つの不活性希釈剤と混合され得る。このような剤形は、通常の慣行のように、例えばステアリン酸マグネシウム及び微結晶セルロースなどの打錠潤滑剤及び他の打錠補助剤など、不活性希釈剤以外の追加的な物質も含み得る。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、剤形は、緩衝剤も含み得る。それらは、任意選択的に不透明剤を含有し得、それらは、腸管の特定部分のみで又は優先的に活性成分を任意選択的に遅延様式で放出する組成物であり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。
【0036】
経口投与のための液体剤形としては、薬学的に許容可能なエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水;又はエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、EtOAc、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、ピーナツ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル並びにそれらの混合物などの他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤などの当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含有し得る。不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、例えば、湿潤剤、乳化及び懸濁剤、甘味剤、香味料及び芳香剤などのアジュバントも含み得る。
【実施例】
【0037】
実施例1 - ヒト対象
Rush Religious Order Study(RROS)(44、45)から得られた、認知機能障害なし(NCI;n=12)、軽度認知機能障害(MCI;n=11)及びAD(n=10)の死亡前臨床診断を有する33症例を分析した(表S1)。全ての参加者は、詳細な年次臨床評価及び死亡時の脳供与に同意した。
【0038】
実施例2 - 臨床的及び神経病理学的評価
NCI、MCI及びADの診断のための臨床基準は、別の場所で報告されている(44、46)。ミニメンタルステート検査(MMSE)と一連の19の認知性検査とを含む、最終的な臨床及び神経心理学的検査を死亡前2年以内に実施した。19の検査を含む全体的認知性zスコア(GCS)は、全ての症例で利用できた(47)。神経原線維濃縮体(NFT)のBraak病期診断(48)は、以前記載された通り実施した(44)。AD以外の病理学的所見(例えば、脳卒中、パーキンソン病、レビー小体型認知症)を有する対象は、研究から除外した。組織及び臨床情報は、健康情報プライバシー管理規則の保護下にある。
【0039】
実施例3 - 組織サンプル及びウエスタンブロット法
上前頭前皮質(ブロードマン野9)は、解凍を防ぐためのドライアイス上での剖検時、白質を含まない状態で解剖し、アッセイまで-80℃に維持した。組織を均質化し、前述されたように(22)処理した。組織抽出物及び細胞溶解産物(30μg)は、連続緩衝系中の8又は10%ビス-トリスSDSポリアクリルアミドゲル上で電気泳動し、セミドライブロッター(Pierce)を用いてニトロセルロース膜(BioRad)に転写して、前述されたように(22、49-51)免疫ブロットした。ブロットをバイナリに変換し、ImageJ(NIH)を使用して分析し、ローディング対照(β-アクチン)に対して正規化した。
【0040】
実施例4 - C末端TLR2(cTLR2)の調製
TLR2完全長コンストラクト(pLenti-cmyc-DDK/tlr2)は、Origeneから購入した。TOPO TAクローニングキット(K5310-00;Life Technologies)を使用して、c-mycでタグ付けされたcTLR2(640~784個のアミノ酸)をレンチベクターにクローニングした。簡潔に述べると、TLR2のC末端TIRドメインの上流にコザック配列を組み込んだ。次に、cTLR2をレンチベクターにクローニングし、HEK293FT細胞を使用したレンチウイルス内のパッケージングがそれに続いた。48時間後、培地を採取し、Lenti-X濃縮器で濃縮した(カタログ番号631231;Clontech)。この濃縮レンチウイルスsupをウイルス形質導入に使用した。Mycアフィニティカラムを通過させることにより、cTLR2タンパク質をHEK293細胞溶解産物から単離した。10kD分子カットオフ濾過システムを使用することにより、精製タンパク質を脱塩し濃縮した。
【0041】
実施例5 - 表面プラズモン共鳴
TLR2とTIDMペプチドとの結合を分析するために、Reichert4SPR機器(Reichert Technologies,Buffalo,NY)を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)実験を実行した。TLR2を捕捉するために、500kDaのカルボキシメチルデキストランゴールドセンサースライド(Reichert Inc.)を使用して、結合アッセイを実施した。タンパク質の固定化は、0.8mg/mLのTLR2溶液を用いて、PBS中で30μl/分の流速で3分間であった。分析物の結合について、PBS泳動用緩衝液中の異なる濃度のwtTIDM及びmTIDMペプチドを2.5分間30μl/分の速度で注入し、3分間の解離期がそれに続いた。センサー表面は、緩衝液を40μl/分で最低15分間流すことにより、各解離サイクル後に再生させた。システムソフトウェアを用いて標準操作手順に従い、TLR2結合表面で得られた信号から、参照セルで得られた信号を差し引いた。差し引かれた信号の濃度依存性を分析し、TLR2とwtTIDMペプチド及びTLR2とmTIDMペプチドの結合親和性を判定した。
【0042】
実施例6 - 熱シフトアッセイ
前述されたように(52、53)、Applied Biosystems 7500の標準リアルタイムサーマルサイクラー装置内で熱シフトアッセイを実施した。各反応では、キットで提供される18μLの熱シフト緩衝液及び1~2μLの色素に精製タンパク質(0.5μg~1μg)を添加した。反応は、96ウェルPCRプレートを暗所で設定し、次の二段階プログラムを用いて、サーマルサイクラー装置に入れた[(25℃で2分間)1サイクル;(27℃で15秒間、26℃で1分間)70サイクル;両方の段階で1℃の自動増分]。クエンチャーフィルターなし、パッシブフィルターなしで、フィルターをROXに設定した。
【0043】
実施例7 - インシリコ構造分析
本発明者らは、Expert Protein Analytical System(ExPASy)のオンライン高分子分析ツールであるDeep View3.7β2を利用して、様々なTLR(TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7及びTLR9)のTIRドメインの構造をモデル化した。モデル化された構造の品質を評価するために、本発明者らは、モデル全体の包括的な品質を推定する複合スコア付けツールであるQuality Measurement Analysysツール(QMEAN)及びモデル内の異なる領域の局所的な残基毎の分析を使用した。残基レベルの相互作用は、Cβ原子ポテンシャルによって評価し、長距離相互作用は、全原子ポテンシャルによって検証した。溶媒和ポテンシャルを実装し、残基の埋没状況を分析した。各構造の局所的な幾何配置は、3つの連続アミノ酸にわたるねじれ角ポテンシャルによって分析した。wtTIDM又はmTIDMペプチドのいずれかとTIRドメインとのドッキングポーズは、pydock剛体タンパク質間ドッキングツールから導出した。
【0044】
実施例8 - 動物及びTIDMペプチド鼻腔内送達
B6SJL-Tg(APPSwFlLon、PSEN1*M146L*L286V)6799Vas/J遺伝子組換え(5XFAD、本明細書ではTgと称される)マウスは、Jackson Laboratories(Bar Harbor,ME)から購入した。6ヶ月齢のオスのTgマウスをwtTIDM又はmTIDMペプチド(0.1mg/Kg体重/2日)で30日間鼻腔内処置した。簡潔に述べると、TIDMペプチドを5μlの生理食塩水に溶解し、マウスを背臥位に保ち、ピペットマンを使用して生理食塩水を1つの鼻孔に送達した。
【0045】
実施例9 - 慢性EAEの誘導及びTIDMペプチドによる処置
オスのC57BL/6マウスは、本発明者らによって記載されたように(54、55)、100μgのMOG35-55で免疫化した。マウスに対して、免疫後(dpi)0日目及び2日目に2用量の百日咳毒素(150ng/マウス)も投与した。免疫後10日目から開始して、wtTIDM又はmTIDMペプチド(0.1mg/kg体重/日)をマウスに鼻腔内投与した。
【0046】
実施例10 - コラーゲン誘発関節炎(CIA)の誘導及びTIDMペプチドによる処置
オスのDBA/1Jマウス(8~9週齢)は、フロイントの不完全アジュバントに乳化した100μgのウシII型コラーゲン及び結核菌(M.tuberculosis)H37RAを用いて、尾の付け根で皮内免疫化した。免疫後21日目に100μgのウシII型コラーゲンの腹腔内注射によりマウスを追加免疫化した。wtTIDM又はmTIDMペプチド(1mg/Kg体重/日)を免疫後29日目から開始してマウスを処置した。
【0047】
実施例11 - 小繊維Aβ1-42の調製
小繊維Aβ1-42(Anaspec,Fremont,CA)は、50μMで新鮮に可溶化したペプチドを滅菌蒸留水中において37℃で5日間インキュベートすることによって調製した(56)。小繊維Aβ1-42の形態については、
図27を参照されたい。
【0048】
実施例12 - 半定量的RT-PCR分析
製造業者のプロトコルに従い、Ultraspec-II RNA試薬(Biotecx Laboratories,Inc.,Houston,TX)を使用して、海馬から全RNAを単離した。混入しているあらゆるゲノムDNAを除去するために、全RNAをDNaseで消化した。RT-PCRは、RT-PCRキット(Clontech,Mountain View,CA)を使用して、前述されたように(23、57)実行した。
【0049】
実施例13 - リアルタイムPCR分析
DNaseで消化されたRNAは、前述されたように(23、57)、ABI-Prism7700配列検出システム(Applied Biosystems,Foster City,CA)内でリアルタイムPCRによって分析した。
【0050】
実施例14 - 電気泳動移動度シフト分析(EMSA)
核抽出物を単離し、前述されたように(22、23)、EMSAを実行した。
【0051】
実施例15 - バーンズ迷路及びT字型迷路:
迷路実験は、本発明者らによって記載されたように(52、57)実施した。簡潔に述べると、バーンズ迷路のために、マウスを2日間連続して訓練し、3日目の試験がそれに続いた。各訓練セッション後、迷路及び脱出トンネルを中性洗剤で徹底的に洗浄し、慣れた物体からのマウスの匂いに起因する本能的な匂い回避を避けた。3日目に、動物が脱出トンネルに入るように動機付けるのに十分な光及び熱を生成する高ワット数の光で迷路を照射し、遅延(4本の足が全て脱出ボックスの床にある前の時間)及び誤り(4本の足が全て脱出ボックスの床にある前の不正確な応答)を測定できるようにした。
【0052】
T字型迷路では、マウスを食物枯渇状態でT字型迷路に2日間慣れさせ、動物が10分間の訓練期間中に食物報酬を少なくとも5回得られるようにもした。各試験では、マウスを出発地点に30秒間置き、次に常に着色フードチップでおびき寄せ、右側方向転換を強制した。各訓練セッション後、T字型迷路を中性洗剤で徹底的に洗浄した。3日目にマウスを正の方向転換及び負の方向転換について試験した。報酬側は、常に視覚的な手がかりに関連付けられる。動物が食物報酬を食べる回数は、正の方向転換と見なされる。
【0053】
実施例16 - 新規物体認識タスク
他の研究者ら(58)及び本発明者ら(57)によって記載されたように、新規物体認識タスクを実施して短期記憶をモニターした。簡潔に述べると、訓練中、赤外線センサーで囲まれた四角い新規な箱(長さ20インチ×高さ8インチ)にマウスを入れた。互いに18インチ離れた環境の特定の場所に、着色、形状及び質感が変化する2つのプラスチック製の玩具(2.5インチ~3インチ)を配置した。マウスは、環境及び物体を15分間自由に探索でき、次に個々のホームケージに戻された。30分後、マウスは、同じ場所に2つの物体がある環境に戻されたが、今度はなじみ深い物体の1つを第3の新規物体に置き換えた。次に、再び15分間、マウスに両方の物体を自由に探索させた。物体は、中性洗剤で徹底的に洗浄した。
【0054】
実施例17 - 免疫組織化学検査。
免疫蛍光顕微鏡観察のために、マウスをケタミン-キシラジン注射剤で麻酔し、PBS、次にPBS中の4%(w/v)パラホルムアルデヒドで灌流し、各マウスからの脳の解剖がそれに続いた(23、59)。簡潔に述べると、サンプルを4℃において、0.05%Tween 20(PBST)と10%スクロースとを含有するPBS中で3時間、次に30%スクロースを含有するPBS中で一晩インキュベートした。次に、脳を-80℃でO.C.T(Tissue Tech)に包埋し、従来の凍結切片作成のために処理した。凍結切片(30μm)を冷エタノール(-20℃)で処理し、PBS中の2回の洗浄、PBST中の3%BSAによるブロッキング及び2つの抗体による二重標識がそれに続いた(表S3)。PBST中での3回の洗浄後、切片をCy2及びCy5と共にさらにインキュベートした(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.)。サンプルをマウントし、Olympus IX81蛍光顕微鏡下で観察した。タッチカウントモジュールを利用してOlympus Microsuite Vソフトウェアを使用し、カウント分析を実施した。
【0055】
実施例18 - DNAの断片末端標識:
これは、前述されたように(10、22)、市販のキット(TdT FragELTM,Calbiochem)を使用して実施した。
【0056】
実施例19 - Aβ1-42及びAβ1-40のELISA
海馬組織をTBS中で均質化し、×150,000gで30分間ペレット化した。ペレットを3容積(wt/vol元の組織重量)のTBS+1%トリトンX-100に再懸濁し、×150,000gで30分間ペレット化して上清を回収し保存した。製造業者の使用説明(BioLegend)に従ってELISAを実施する前にサンプルのタンパク質濃度をアッセイして10倍に希釈した。
【0057】
実施例20 - 統計学的解析
ヒト組織の臨床及び生化学的データは、外れ値、非正規性及び不均等サンプルサイズに対してより堅固なノンパラメトリック検定(すなわちクラスカル・ワリス検定又はフィッシャーの正確確率検定、多重比較のためのダンの補正を伴う)を用いて診断間で比較した。両側スピアマン順位相関は、認知試験スコアとタンパク質光学密度との間の可変的な関連性を評価した。これらの測定基準は、臨床群間で有意差がなかったため、相関関係は、人口統計情報(すなわち年齢、性別など)について調整しなかった。SPSS 19(IBM)を用いて統計学的検定を実施し、有意性はα=.05(両側)に設定した。
【0058】
マウスの行動尺度は、SPSSを使用して独立した一方向ANOVAによって調べた。試験群間の分散の均質性は、Leveneの検定を用いて調べた。事後解析は、必要に応じて、チューキー検定又はGames-Howell検定を用いて実施した。他のデータは、3つの独立した実験の平均値±SDとして表した。平均値間の統計学的差異は、スチューデントのt検定(両側)によって計算した。0.05未満のp値(p<0.05)は、統計学的に有意であると見なされた。
【0059】
実施例21 - 研究承認
ラッシュ大学医療センターのヒト調査委員会は、RROS試験を承認した。米国国立衛生研究所ガイドラインに従い、動物を飼育して実験が実施され、ラッシュ大学医療センター施設内動物管理使用委員会によって承認された。
【0060】
実施例22 - ADにおけるTLR2の上方制御:
ADの病態形成におけるTLR2の役割を調べるために、本発明者らは、AD認知症(n=10)、軽度認知機能障害(MCI;n=11)を有して死亡した個人及び認知機能障害がない年齢をマッチさせた個人(NCI;n=12)の33人の対象からの前頭前皮質(PFC; ブロードマン野9)における免疫ブロット分析により、TLR2のレベルをモニターした(表S1)。年齢、性別、死後の間隔、脳重量又はBraakスコアに関して、群間に有意差は認められなかった(表S1)。比較のために、本発明者らは、TLR4を含めた。TLR3以外のTLRは、全てMyD88を用いているため、本発明者らは、MyD88についても調査した。PFCにおけるTLR2及びMyD88の両方のレベルは、群間で有意に変化し、NCI及びMCI症例と比較して、AD症例は、TLR2及びMyD88をより多く発現していた(
図1A~C及び表S2)。対照的に、TLR4レベルは、群間に有意差はなかった(
図1A及びD;表S2)。スピアマン順位相関は、前頭前皮質のTLR2及びMyD88レベルの両方がBraak病期診断と正に相関することを示した(
図1E~F及び表S2)。他方、本発明者らは、TLR4とBraakスコアとの間にいかなる関連性も見いださなかった(
図1G及び表S2)。重要なことに、MyD88は、ミニメンタルステート検査(MMSE)及び全体的認知性zスコア(GCS)とも負の相関がある(
図1H~M及び表S2)。
【0061】
これらの知見を立証するために、本発明者らは、海馬切片の二重標識免疫蛍光分析を実施した。予測通り、Iba-1(小グリア細胞マーカー)のレベルは、NCIと比較してADの大脳皮質及び海馬でより高かった(
図8A~E)。ウエスタンブロットの結果と同様に、本発明者らは、NCIと比較して、ADの大脳皮質及び海馬でより高いレベルのTLR2(
図8A及び
図1N~O)及びMyD88(
図8B及び
図1P~Q)を観察した。この場合も、TLR4の発現には差がなかった(
図8C及び
図1R~S)。
【0062】
実施例23 - 5XFAD遺伝子組換え(Tg)マウスにおけるTLR2の上方制御:
次に、本発明者らは、5XFAD Tgマウスの海馬におけるTLR2及びMyD88の状態を調べた。AD対象のCNSで観察されたのと同様に、本発明者らは、Tgマウスの皮質及び海馬の異なる部分において、齢数をマッチさせた非Tgマウスと比較してより高いレベルのTLR2(
図9A~B)とMyD88(
図10A~B)を認めた。本発明者らは、Tgマウスの大脳皮質と海馬において、Iba-1免疫反応性の増加及び多くのIba-1陽性細胞とTLR2(
図9B)及びMyD88(
図10B)との共局在も見いだした。ウエスタンブロット実験でも、非Tgマウスと比較して、Tgマウスの海馬でTLR2(
図9C~D)及びMyD88(
図10C~D)が増加していることが確認された。
【0063】
実施例24 - TLR2の特異的標的化のためのMyD88のTLR2相互作用ドメイン(TIDM)に対応するペプチドの設計
TLR2の特異的阻害剤がないことから、本発明者らは、治療目的でTLR2の標的化を試みた。リガンド結合後、TLR2は、MyD88を介して機能する(14、15)。そのため、本発明者らは、剛体タンパク質間相互作用ツールを応用して、TLR2のTLR相互作用ドメイン(TIR)とMyD88との間の相互作用をモデル化した。マウスTLRのTIRの結晶構造が入手できなかったため、本発明者らは、インシリコ相同性モデル化ストラテジーを採用し、全ての異なるTLRからTIRの三次元構造を構築した(
図11A~G)。以前の知見(20)と同様に、本発明者らのインシリコモデル化解析から導き出されたMyD88及びTIRの複合体のドッキングポーズは、TLR2のBBループがMyD88のCDループと強いファンデルワールス(VDW)相互作用によって結合していることを明らかにした(
図2A)。そのため、本発明者らは、MyD88のTLR2相互作用ドメイン(TIDM)に対応する以下のペプチドをCDループから設計して、TLR2とMyD88との間の相互作用を破壊した。
野生型(wt)TIDM:drqikiwfqnrrmkwkkPGAHQK(配列番号2)
変異型(m)TIDM:drqikiwfqnrrmkwkkPGWHQD(配列番号3)
【0064】
本発明者らは、これらのペプチドの
N末端にアンテナペディアホメオドメイン(小文字)を付加し、細胞透過性を促進した。MyD88セグメントは、大文字であり、変異の位置に下線が引かれている。興味深いことに、TLR2のTIRとMyD88との間の相互作用をwtTIDMペプチドでモデル化すると、本発明者らは、MyD88がある程度の回転に関連し、そのCDループがTLR2 BBループから遠く離れたままになることを観察した(
図2B)。Pydock解析によると、wtTIDMペプチドは、TLR2のTIRドメインのCDループ、αBらせん及びBBループの境界面にドッキングしていることが分かった(
図12A)。wtTIDMペプチドのその特定のポーズは、そのVDW表面をTLR2のBBループ上に分布させ(
図12A)、これは、mTIDMペプチドの場合に可能でなかった(
図12B)。本発明者らは、CDループの保存ヒスチジン残基(H82)のNE1原子とwtTIDMペプチドのヒスチジン残基(H4)のND原子との間に強い静電相互作用(2.31A°)があることを観察した(
図12C)。mTIDMとTLR2とのドッキング構造は、CDループのH82残基とmTIDMペプチドのH4残基との間に非常に弱い静電相互作用(7.26A°)があったことを明確に示した(
図12C、右パネル)。さらに、リジンからアスパラギン酸へのwtTIDMの変異は、負の雲を生じさせ、これは、mTIDMのC末端もBBループからさらに遠ざけて、αBらせんの溝に向けて移動させた(
図12B)。本発明者らは、TLR2とMyD88の2つの近い残基との間のVDW液滴の距離を測定することにより、その複合体におけるVDW相互作用の可能性も測定した(
図12D)。本発明者らは、wtTIDMの非存在下において、MyD88とTLR2との間に有意なVDWの重なりがあることを観察した。しかし、wtTIDMと複合体化した場合、TLR2のBBループとMyD88のCDループとは、互いに離れた位置にあり、VDW相互作用のいかなる可能性も否定された(
図12E)。wtTIDM及びmTIDMのTLR2に対する親和性を別の角度から比較するために、本発明者らは、表面プラズモン共鳴(SPR)分析を実施した。本発明者らは、最初に、TLR2タンパク質全体をクローニングして精製した。しかし、それは、安定しておらず、TLR2タンパク質全体も利用できないため、本発明者らは、ウイルスクローニングストラテジーを介してTLR2タンパク質(cTLR2)のC末端TIRドメインのみを調製し、mycアフィニティカラムによってタンパク質を精製した(
図2C)。動態プロット(
図2D~E)は、wtTIDM及びmTIDMの両方の増加する用量がcTLR2との結合を示したことを明確に示した。しかし、cTLR2に対して、wtTIDMは、mTLDMよりもはるかに強い親和性を示した(
図2D~F)。平衡時のSPR応答対ペプチド濃度のプロット(
図2F)によると、cTLR2に対するwtTIDM(Kd=8μM)の親和性は、mTIDM(Kd=19μM)の約2.5倍強かった。さらなる実証のために、本発明者らは、熱シフトアッセイを実施し、それは、10μMのwtTIDMペプチドがcTLR2の融解曲線を強くシフトさせることを明らかにした(
図2G)。他方、mTIDMでは、非常にわずかなシフトのみが観察された(
図2H)。総合して、これらの結果は、wtTIDMがTLR2とMyD88との間の相互作用を強く妨害する強力な小分子ペプチドであることを示唆する。
【0065】
次に、本発明者らは、wtTIDMが他のTLRに対して同様の親和性を有するかどうかを調べた。興味深いことに、本発明者らのインシリコ分析では、wtTIDMペプチドは、TLR1(
図3A)、TLR4(
図3B)、TLR5(
図3C)、TLR6(
図3D)、TLR7(
図3E)及びTLR9(
図3F)のBBループから離れてドッキングすることが明らかになり、wtTIDMは、他のTLRではなく、TLR2のBBループを特異的に標的化することが示唆された。
【0066】
次に、本発明者らは、wtTIDMペプチドが内因性TLR2とMyD88との間の物理的結合を破壊し得るかどうかを調べた。以前、本発明者らは、小繊維Aβ1-42がTLR2を介して小グリア細胞を活性化することを記述している(17)。本明細書では、TLR2に対する抗体を用いたMyD88免疫沈降物の免疫ブロット分析により、本発明者らは、小繊維Aβ1-42処理が小グリア細胞におけるTLR2とMyD88との間の結合を増大させること、及びこの相互作用が、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドによって阻害されることを見いだした(
図3G~H)。入力は、異なる処理条件下における等量のTLR2及びMyD88の存在を示した(
図3G)。特異性を理解するために、TLR4とMyD88との間の相互作用に対するwtTIDMペプチドの効果を調べた。LPSは、TLR4のプロトタイプ作動薬である。LPS処理は、小グリア細胞におけるTLR4とMyD88との間の結合を増大させ(
図3I~J)、TLR2:MyD88相互作用の抑制(
図3G~H)とは対照的に、wtTIDMペプチドは、TLR4とMyD88との間の相互作用に影響を及ぼさなかった(
図3I~J)。次に、本発明者らは、wtTIDMが、MyD88と、新たに形成されたMycタグ付きC末端TLR2(cTLR2)との間の相互作用を妨げ得るかどうかを調べた。そのため、小グリア細胞をpLenti-cMyc-cTlr2レンチビリオンで形質導入し、48時間の形質導入後、wtTIDM/mTIDMの存在下又は非存在下で細胞を小繊維Aβ1-42で1時間処理した。c-Mycに対する抗体を用いたMyD88の免疫沈降物の免疫ブロット分析は、Aβ1-42で処理された小グリア細胞で新たに形成されたcTLR2とMyD88との間の相互作用が、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドによって阻害されたことを示した(
図3K~L)。
【0067】
実施例25 - TIDMペプチドは、1-メチル-4-フェニルピリジニウム(MPP+)、二本鎖RNA(ポリIC)、細菌性リポ多糖類(LPS)、フラジェリン及びCpG DNAではなく、小繊維Aβ1-42及びリポテイコ酸(LTA)によって誘導される小グリア細胞炎症を阻害する:
異なるTLRを発現する小グリア細胞は、神経変性、炎症、ウイルス感染及び細菌感染などの様々な病理学的条件下で活性化される(7、21)。そのため、本発明者らは、TIDMペプチドが、異なる刺激によって誘導される小グリア細胞活性化を抑制できるかどうかを調査した。様々な濃度のwtTIDM及びmTIDMペプチドで1時間前処置された小グリア細胞は、小繊維Aβ1-42(ADの病因試薬)、MPP+(パーキンソン病毒素)、LTA(TLR2の作動薬)、ポリIC(TLR3の作動薬)、LPS(TLR4の作動薬)、フラジェリン(TLR5の作動薬)及びCpG DNA(TLR9の作動薬)で刺激した。予測通り、小繊維Aβ(
図4A)、MPP+(
図4D)、LTA(
図4G)、ポリIC(
図14A)、LPS(
図4J)、フラジェリン(
図4M)及びCpG DNA(
図4P)は、小グリア細胞においてNF-κB活性化を誘導した。しかし、wtTIDMペプチドは、小繊維Aβ媒介及びLTA媒介のNF-κB活性化を阻害した(
図4A及び4G)。対照的に、wtTIDMペプチドは、小グリア細胞における、MPP+(
図4D)、ポリIC(
図14A)、LPS(
図4J)、フラジェリン(
図4M)及びCpG DNA(
図4P)によって誘導されるNF-κBの活性化を抑制できないままであった。mTIDMペプチドは、いずれの刺激によって誘導されたNF-κBの活性化にも影響を及ぼさなかったことから、これらの結果は特異的であった。古典的なNF-κB経路の活性化は、IκBαのリン酸化と、それに続くp65及びp50の核転位を伴う。そのため、本発明者らは、活性化された小グリア細胞におけるp65及びp50の核転移に対するwtTIDMペプチドの効果についても調査した。予想通り、小グリア細胞では、小繊維Aβ1-42(
図15A~C)及びLPS(
図15D~F)に応答して、p65及びp50の核転移が増加していることが観察された。しかし、wtTIDMペプチド処理は、LPS(
図15D~F)ではなく、小繊維Aβ1-42(
図15A~C)で刺激された小グリア細胞において、p65及びp50の核転移を阻害し、wtTIDMペプチドの特異性が示唆された。これらの結果を確認するために、本発明者らは、NF-κB活性化によって駆動される炎症促進性分子であるIL-1β及びiNOSの発現もモニターした。全ての刺激は、小グリア細胞において、IL-1β及びiNOSの発現を誘導した(
図4B~C、4E~F、4H~I、4K~L、4N~O、4Q~R、
図13A~F及び
図14B~D)。NF-κB活性化に対するwtTIDMの効果と矛盾なく、wtTIDMペプチドは、MPP+(
図13B及び
図4E~F)、ポリIC(
図14B~D)、LPS(
図S6D及び
図4K~L)、フラジェリン(
図13E及び
図4N~O)及びCpG DNA(
図13F及び
図4Q~R)ではなく、小繊維Aβ(
図13A及び
図4B~C)及びLTA(
図13C及び
図4H~I)によってのみ誘導される炎症促進性分子の発現を阻害した。これらの結果は、wtTIDMペプチドが、他のTLRではなく、TLR2の作動薬によって誘導される、小グリア細胞炎症を特異的に阻害することを示唆する。
【0068】
実施例26 - wtTIDMペプチドは、TLR2の非存在下で小グリア細胞の小繊維Aβ1-42誘導活性化を阻害しない:
wtTIDMペプチドは、TLR2とMyD88との間の物理的結合を破壊することから、本発明者らは、機械論的な原理証明として、Tlr2-/-小グリア細胞のAβ1-42誘導活性化に対するwtTIDMペプチドの効果を調べた。BV-2小グリア細胞と同様に、小繊維Aβ1-42ペプチドは、WTマウスから単離された初代小グリア細胞においてNF-κBの活性化を強く誘導し、これは、wtTIDMペプチドによって阻害された(
図16A)。他方、小繊維Aβ1-42ペプチドは、Tlr2-/-小グリア細胞においてNF-κBのDNA結合活性を弱く誘導した(
図16A)。しかし、WT小グリア細胞とは対照的に、wtTIDMペプチドは、Tlr2-/-小グリア細胞における、小繊維Aβ1-42が誘導するNF-κBの活性化を阻害できないままであった(
図16A~B)。さらに確認するために、本発明者らは、上清中の一般的な炎症促進性サイトカイン(TNFα及びIL-1β)のレベルも測定した。NF-κB活性化と同様に、小繊維Aβ1-42によるTNFα及びIL-1β産生の誘導は、WT小グリア細胞と比較してTlr2-/-小グリア細胞で低かった(
図16C~F)。しかし、wtTIDMペプチドは、Tlr2-/-、小グリア細胞ではなく、WTで、小繊維Aβ1-42ペプチドが誘導するTNFα及びIL-1β産生を阻害した(
図16C~F)ことから、wtTIDMペプチドがその機能を示すためにTLR2が必要であることが示唆された。
【0069】
実施例27 - wtTIDMペプチドの鼻腔内投与は、5XFAD Tgマウスの海馬において炎症を阻害し、斑負荷を低減し、タウの過剰リン酸化を減少させる:
グリア炎症がAD及び他の神経変性障害における神経細胞の喪失に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある(7、9、22~24)。wtTIDMペプチドは、小繊維Aβ1-42媒介小グリア細胞活性化を特異的に阻害したことから、本発明者らは、5XFADTgマウスにおけるその治療的翻訳可能性を試験することにした。本発明者らは、まず、wtTIDMペプチドが海馬に侵入できるかどうかを判定した。TgマウスをTIDMペプチドの鼻腔内投与で処置し、投与の60分後、本発明者らは、エレクトロスプレーイオン化共役質量分析法により、Tgマウスの海馬中にwtTIDMペプチドを検出した(
図5A及びC)。対照的に、生理食塩水処置されたTgマウスの海馬は、wtTIDMペプチドのいかなるピークも示さなかった(
図5B)。wtTIDMペプチドのレベルは、生理食塩水処置されたTgマウスでは皆無であったのと比較して、wtTIDM処置されたTgマウスの海馬では、脳組織1グラム当たり23.33±14.14ngであった。赤外線スキャンにより、本発明者らは、鼻腔内処置後の海馬からもTIDMペプチドを検出した(
図17)。したがって、鼻腔内投与後、TIDMペプチドは、海馬に侵入する。
【0070】
次に、本発明者らは、鼻腔内TIDMペプチドがTgマウスの海馬におけるNF-κB活性化を調節できるかどうかを調査した。海馬切片の二重標識免疫蛍光によって見られるように、Iba-1及びホスホ-p65のレベルは、非Tgマウスと比較してTgマウスで顕著により高かった(
図5D~H)。しかし、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドによるTgマウスの鼻腔内処置は、Tgマウスの海馬におけるIba-1及びホスホ-p65の両方の抑制をもたらした(
図5D~H)。これは、海馬組織のウエスタンブロット分析によっても確認された(
図18A~B)。さらに、活性化された小グリア細胞は、iNOSを発現することが知られている(21、25)。したがって、Tgマウスの海馬小グリア細胞もiNOSに対して陽性であった(
図19及び
図5I~J)。しかし、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドは、Tgマウスの海馬におけるiNOSの発現を抑制した(
図19及び
図5I~J)。ウエスタンブロット分析も、mTIDMではなく、wtTIDMペプチド処置による海馬のiNOS発現の阻害を確認した(
図5K~L)。
【0071】
アミロイド斑は、5XFAD Tgマウスでモデル化されたAD病理の重要な特徴である(26、27)。そのため、次に、本発明者らは、wtTIDM処置がTgマウスの海馬からアミロイド斑の負荷を軽減できるかどうかを調べた。82E1 mAbを用いた海馬切片の免疫染色(
図5M~O)及び6E10 mAb(
図5P~Q)及び82E1 mAb(
図20A~B)を用いた海馬組織のウエスタンブロット分析は、非Tgマウスと比較して、Tgマウスの海馬における顕著により高いAβペプチドのレベルを示した。同様に、血清(
図21A~B)、TBS抽出海馬画分(
図21C~D)及び(TBS+Triton X-100)抽出海馬画分(
図21E~F)のELISAも、非Tgマウスと比較して、TgマウスでAβ1-40及びAβ1-42が有意に増加していることを実証した。しかし、有意なAβの減少は、mTIDMではなく、wtTIDM処置で見られた(
図20A~B、
図21A~F及び
図5M~Q)。これらの結果は、wtTIDMの鼻腔内投与が5XFADマウスの海馬におけるAβ負荷を軽減できることを示唆する。
【0072】
タウの過剰リン酸化は、AD病理の別の突出した特徴である(28、29)。5XFADマウスの海馬では、学習及び記憶障害の出現よりもはるかに早い段階でSer396におけるタウの過剰リン酸化が起こることが示されている(30)。そのため、本発明者らは、TIDMペプチド処置がTgマウスの海馬における生体内タウリン酸化の状態に及ぼす影響を調べた。免疫ブロット分析は、非Tgマウスと比較した、Tgマウスの海馬抽出物中のホスホ-タウの著しい上昇を示す(
図22A~B)。しかし、Tgマウスを、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドで処置した場合、タウタンパク質の総レベルに影響を及ぼすことなく、海馬のホスホ-タウの抑制がもたらされ(
図22A~B)、wtTIDMペプチド処置がTgマウスの海馬におけるタウリン酸化を減少させるのに適切であることが示唆された。
【0073】
実施例28 - wtTIDMペプチドの鼻腔内投与による5XFAD Tgマウスにおける神経細胞アポトーシスの減少並びに記憶及び学習の保護:
神経炎症は、神経細胞のアポトーシスに関連し得るため、次に、本発明者らは、wtTIDMペプチド処置がTgマウスの海馬における神経細胞のアポトーシスを減少できるかどうかを調べた。Tgマウスの海馬では、非Tgマウスと比較して、いくつかのTUNEL陽性体がNeuNと共局在していた(
図6A~C)。しかし、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドが海馬の神経細胞のアポトーシスを弱めた(
図6A~C)。この結果は、切断されたカスパーゼ3の検出によって確認された。予測通り、切断されたカスパーゼ3のレベルは、Tgマウスの海馬において増加した(
図6D~E)。しかし、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドによるTgマウスの処置は、海馬において切断されたカスパーゼ3の上昇したレベルが減少し(
図6D~E)、wtTIDMペプチド処置がTgマウスの海馬における生体内での神経細胞のアポトーシスを減少できることが示唆された。したがって、可塑性関連分子(PSD-95、NR2A及びGluR1)のレベルは、非Tgマウスと比較してTgマウスの海馬で低下した(
図6F~I)。しかし、神経細胞アポトーシスの抑制と矛盾なく、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドによるTgマウスの処置が海馬における生体内PSD-95、NR2A及びGluR1タンパク質の有意な回復をもたらした(
図6F~I)。
【0074】
ADにおける神経保護の最終的な目的は、記憶の改善及び/又は保護である。海馬の主な機能は、長期記憶及び空間的学習を生成的し整理することである。そのため、本発明者らは、wtTIDMペプチドがTgマウスの記憶及び学習を保護するかどうかを調べた。予測通り、Tgマウスは、非Tgマウスと比較して、バーンズ迷路において食物報酬の穴を見つけるのにはるかに長時間かかり、より多くの誤り[p<0.001(=0.0000251)]でより長い遅延[p<0.001(=0.0000213)]を示した。しかし、遅延[F3,28=93.153、p<0.001(=0.0000112)](
図6J)及び誤り数[F3,28=36.339、p<001(=0.0000863)](
図6K)によって示されるように、wtTIDM処置は、Tgマウスの記憶機能を有意に改善した。wtTIDMペプチド処置マウスの記憶機能は、mTIDM処置マウスと比較してより小さい遅延[p<0.001(=0.0000600)]及びより少ない誤り[p<0.001(=0.0000579)]で報酬の穴の位置を探し当てるのにも優れていた。同様に、T字型迷路上において、未処置Tgマウスは、齢数をマッチさせた非Tgマウスよりも少ない正の方向転換数[p<0.001(=0.0000440)]及びより多い負の方向転換数[p<0.001(=0.000223)]も示した(
図6L~M)。しかし、wtTIDM処置は、Tgマウスによる成功裏の正の方向転換[F3,28=31.475、p<0.001(=0.0000411](
図6L)及びより少ない誤り数[F3,28=26.653、p<0.001(=0.0000235](
図6M)にも有意な効果を示した。この場合も、wtTIDM処置マウスは、mTIDM処置Tgマウスと比較してより多数の正の方向転換[p<0.001(=0.0000954)]及びより少数の負の方向転換[p<0.001(=0.000123)]を示した(
図6L~M)。本発明者らは、新規物体認識(NOR)試験により、Tgマウスの短期記憶もモニターした。Tgマウスは、齢数をマッチさせた非Tgマウスと比較して、NOR試験において識別指数で証明される有意な欠損[p<0.001(=0.0000149)]を示した(
図6N)。しかし、wtTIDMペプチド処置マウスは、未処置Tg又はmTIDM処置Tgマウスと比較して、短期記憶において有意な改善(p<0.001)を示した(
図6N)。他方、Tgマウスと非Tgマウスとの総運動量は、ほぼ同様であった(
図23)。さらに、wtTIDM又はmTIDMペプチドは、運動回数、水平活動、休止時間及び常同行動から明らかなように(
図23A~D)、Tgマウスの総運動活動を調節せず、wtTIDMペプチド処置による記憶の改善が総運動活動のいかなる変化にも起因するものではないことが示唆された。
【0075】
実施例29 - wtTIDMペプチドは、5XFAD Tgマウスにおいて斑を減少させ、記憶を改善するためにTLR2を必要とする:
wtTIDMペプチドが、生体内でそのその機能を提示するために、実際にTLR2を必要とすることを立証するために、本発明者らは、Tlr2-/-マウスとTgマウスを交配し、Tlr2をヌルにした5XFADマウス(Tg-Tlr2-/-)を作製した。Tlr2ノックダウンは、5XFAD導入遺伝子の挿入又は発現を変化させず、その逆も同様であった(
図S24A)。6ヶ月齢WT、Tlr2-/-、Tg及びTg-Tlr2-/-マウスは、総体重又は湿潤脳重量に関して有意差がなかった(
図24B~C)。本発明者らはまた、この齢数の遺伝子型間で食事、糞便塊、社会的交流及び興奮をはじめとする顕性表現型のいかなる差異も見いださなかった。wtTIDMペプチドは、Tgマウスにおいて斑負荷を減少させ、空間的学習及び記憶を改善したが(
図5~6)、Tg-Tlr2-/-マウスではそれができないままであり(
図24D~G)、wtTIDMペプチドは、Tlr2の非存在下で効果がないことが示唆された。
【0076】
実施例30 - mTIDMではなく、wtTIDMペプチドは、マウスの実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)及びコラーゲン誘発関節炎(CIA)の疾患プロセスを抑制する:
自然免疫経路の重要なメンバーであるMyd88依存型TLR2シグナル伝達は、多様な感染性及び自己免疫障害の病態形成に重要な役割を果たす(31、32)。そのため、本発明者らは、wtTIDMペプチドの機能が5XFADマウスのみに限定されるか又は他の疾患モデルでも機能するかどうかを調べた。EAEは、多発性硬化症(MS)の広く使用されている動物モデルであり、EAEの慢性型は、MOG35-55で免疫化されたオスのC57/BL6マウスにおいてモデル化される。5XFADマウスにおけるその効果と同様に、wtTIDMペプチドを用いたEAEマウスの鼻腔内投与は、EAEの臨床症状を強く阻害した(
図7A)。ダネットの多重比較分析で群間の平均値を比較する間、本発明者らは、EAEとEAE+wtTIDMとの間に平均値の有意差があることを見いだした(調整後p<0.001)。他方、mTIDMペプチドは、効果がなく(
図7A)、効果の特異性が示唆された。予測通り、EAEの誘導は、ヒートマップ解析(
図7B)、移動距離(
図7C)、立ち上がり行動(
図7D)、速度(
図7E)及び加速度(
図7F)によって明らかなように、マウスの自発運動活性を低下させた。足跡解析(
図25)も、正常なマウスと比較して、EAEマウスにおける歩幅(
図7G)、及び点長さ(
図7H)の減少、及び揺れ長さ(
図7I)、及びつま先の広がり(
図7J)の増加を示した。本発明者らは、EAEマウスで足指の引きずりが頻繁であることも見いだした(
図25)。しかし、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドによる鼻腔内処置は、EAEマウスの自発運動活性を改善し、足跡を正常化した(
図7A~K及び
図25)。CIAは、広く使用されているリウマチ様関節炎の動物モデルである。EAEマウスと同様に、mTIDMではなく、wtTIDMペプチドがマウスにおけるCIAの臨床症状も減少させた(
図7L)。ダネットの多重比較分析で群間の平均値を比較する間、本発明者らは、CIAとCIA+wtTIDMとの間に平均値の有意差があることを見いだした[調整後p=0.0148(<0.05)]。wtTIDMペプチドはまた、自発運動活性を増強し(
図7N~R)、足跡の挙動を改善した(
図7S~V及び
図26)。
【0077】
実施例31 - MyD88のTLR2相互作用ドメイン(TIDM)ペプチドの投与は、α-シヌクレイン症を減少させる:パーキンソン病、多発性萎縮症、レビー小体型認知症とのかかわり合い
パーキンソン病(PD)の病理学的所見としては、SNpcのドーパミン作動性神経細胞の選択的喪失と、生き残った神経細胞中のレビー小体型のα-synタンパク質の細胞質内凝集の存在とが挙げられる。PDに加えて、α-synの蓄積は、レビー小体型認知症(DLB)及び多系統萎縮症(MSA)の重要な病理学的特徴でもある。したがって、レビー小体の病理を減少させることは、PD、DLB及びMSAにおいて治療的に重要である。小グリア細胞の活性化は、レビー小体疾患の病態形成に重要な役割を果たしており、小繊維α-synは、小グリア細胞の活性化のためにTLR2を必要とすることが示されている。最近、本発明者らは、MyD88のTLR2相互作用ドメイン(TIDM)に対応するペプチドがTLR2の活性化を選択的に阻害することを実証している。この研究は、α-シヌクレイン症の軽減におけるTIDMペプチドの重要性を強調する。野生型(wt)TIDMペプチドの鼻腔内投与は、A53T遺伝子組換えマウスの黒質における誘導性酸化窒素シンターゼ(iNOS)の小グリア細胞発現を減少させた(
図28A~B)。wtTIDMペプチドは、iNOSの発現を阻害したが、本発明者らは、wtTIDM処置後、A53Tマウスの黒質におけるアルギナーゼ-1の増加を観察し(
図29A~B)、wtTIDMペプチドにより、小グリア細胞活性化がM1からM2モードに切り替えることが示唆された。wtTIDMペプチドによるA53Tマウスの毎日の鼻腔内処置はまた、オリゴマー及びモノマーα-synの減少(
図30A~C)並びにチロシンヒドロキシラーゼ陽性ドーパミン作動性神経細胞内のα-syn封入体の抑制(
図31A~D)をもたらした。本発明者らは、wtTIDMペプチド処置後、A53Tマウスの黒質における小グリア細胞α-synの減少も観察した(
図32A~B)。最終的に、wtTIDMペプチド処置は、A53Tマウスの自発運動活性を改善した(
図33A~E)。変異TIDMペプチドは、A53Tマウスでいかなるこのような保護効果も示さなかったため、これらの結果は、特異的であった。したがって、wtTIDMペプチドの鼻腔内処置は、PD、MSA及びDLBに有益であり得る。
【0078】
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