(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20230118BHJP
【FI】
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2020572840
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 CN2019102048
(87)【国際公開番号】W WO2021031204
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】515330421
【氏名又は名称】有研稀土新材料股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】劉 栄輝
(72)【発明者】
【氏名】劉 元紅
(72)【発明者】
【氏名】李 彦峰
(72)【発明者】
【氏名】陳 暁霞
(72)【発明者】
【氏名】馬 小楽
(72)【発明者】
【氏名】薛 原
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207703(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159175(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDチップ、
発光を吸収し且つ可視光を発光する光吸収体
、および/または可視光発光材料、および近赤外発光材料を含む光学装置であって、
前記光学装置において、前記LEDチップの励起下で発光する650~1000nm波長の光パワーがAであり、前記LEDチップの励起下で発光する350~650nm波長の光パワーがBであり、B/A*100%が0.1%~10%である、ことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記LEDチップの発光ピーク波長は、420~470nmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記光吸収体の分子式は、(La、Y、Lu)
3~xSi
6N
11:xCe
3+および(Lu、Y、Gd)
3~y(Al、Ga)
5O
12:yCe
3+中の1つまたは2つであり、0.35≦x≦1.5、0.15≦y≦0.45である、ことを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記光吸収体は、発光ピーク波長420~470nmの発光を吸収し、460nmの励起下で500~780nm波長の可視光を発光し、光吸収体の外部量子効率は0.001~0.05である、ことを特徴とする請求項3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記近赤外発光材料は、分子式aSc
2O
3・A
2O
3・bCr
2O
3およびLn
2O
3・cE
2O
3・dCr
2O
3中の1つを含み、A元素は少なくともAlおよびGa元素中の1つを含み、Ga元素を必ず含み、Ln元素は少なくともY、Lu、Gd元素中の1つを含み、Y元素を必ず含み、E元素は少なくともAlおよびGa元素中の1つを含み、Ga元素を必ず含み、0.001≦a≦0.6、0.001≦b≦0.1、1.5≦c≦2、0.001≦d≦0.2であり、上記2つの分子式はそれぞれβ-Ga
2O
3構造およびガーネット構造を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の光学装置。
【請求項6】
前記可視光発光材料は、分子式(La、Y、Lu)
3~eSi
6N
11:eCe
3+、(Lu、Y、Gd)
3~z(Al、Ga)
5O
12:zCe
3+中の1つまたは2つであり、0.001≦e≦0.15、0.001≦z≦0.15である、ことを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項7】
前記近赤外発光材料は、分子式aSc
2O
3・A
2O
3・bCr
2O
3およびLn
2O
3・cE
2O
3・dCr
2O
3中の1つを含み、A元素は少なくともAlおよびGa元素中の1つを含み、Ga元素を必ず含み、Ln元素は少なくともY、Lu、Gd元素中の1つを含み、Y元素を必ず含み、E元素は少なくともAlおよびGa元素中の1つを含み、Ga元素を必ず含み、0.001≦a≦0.6、0.001≦b≦0.1、1.5≦c≦2、0.001≦d≦0.2であり、上記2つの分子式はそれぞれβ-Ga
2O
3構造およびガーネット構造を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項8】
前記β-Ga
2O
3構造の近赤外発光材料は、In元素をさらに含むことができる、ことを特徴とする請求項5または7に記載の光学装置。
【請求項9】
前記近赤外発光材料の粒子径の中央値D50は15~40μmであり、
LEDチップ、
発光を吸収し且つ可視光を発光する光吸収体、および近赤外発光材料を含む場合、前記近赤外発光材料と前記光吸収体との合計質量に占める前記近赤外発光材料の割合が60~80%であり、
LEDチップ、
発光を吸収し且つ可視光を発光する光吸収体、可視光発光材料、および近赤外発光材料を含む場合、前記近赤外発光材料と前記光吸収体と前記可視光発光材料との合計質量に占める前記近赤外発光材料の割合が45~80%であり、
LEDチップ、可視光発光材料、および近赤外発光材料を含む場合、前記近赤外発光材料と前記可視光発光材料との合計質量に占める前記近赤外発光材料の割合が50~80%であることを特徴とする請求項5または7に記載の光学装置。
【請求項10】
前記近赤外発光材料はLEDチップの上方に配置され、
発光を吸収し且つ可視光を発光する光吸収体および/または可視光発光材料は近赤外発光材料の上方に配置される、ことを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線光学の技術分野に関し、特にLEDチップ、光吸収体および/または可視光発光材料、および近赤外発光材料の光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティ監視、バイオメトリクス、3Dセンシング、食品/医療検査分野での近赤外線の応用が国内外で注目を集めている。その中でも、近赤外線LEDは、指向性が高く、消費電力が低く、体積が小さいなどの利点があるため、国際的な研究ホットスポットになっている。現在、近赤外線LEDは、主に近赤外半導体チップによって実現され、例えば、730nm、750nm、850nmおよび940nm波長の赤外線チップが主にセキュリティ分野で使用されているが、特に短波赤外線チップは使用中に非常に深刻なレッドバースト現象が発生するため、通常、1つまたは複数の白色光LEDを外部に取り付けて、夜間検出プロセス中の光を補償し、赤外線チップのレッドバースト現象を低減させている。この実現方法では、白色光LEDランプビーズおよび赤外線LEDランプビーズの駆動電流の差が大きく、発光装置全体の使用寿命に悪影響を及ぼし、赤外線チップの価格が高く、複数のチップでパッケージングするプロセスも複雑になり、コストが高く、赤外線LED光学装置の応用および普及が制限される。
【0003】
LEDチップを使用して近赤外発光材料を組み合わせてパッケージングする方法は、調製プロセスが簡単で、コストが低く、発光効率が高いなどの利点を有し、近赤外発光材料の発光波長が豊富で、近赤外用途向けの各種特定波長を実現することができる。現在、この実現方法の主な問題は、近赤外の発光パワーをさらに改善する必要があり、白色光パワーを制御可能に調整することが難しいことである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、LEDチップ、光吸収体および/または可視光発光材料、および近赤外発光材料を組み合わせた光学装置を提供することである。該光学装置は、同じLEDチップを使用して近赤外および可視光発光を同時に実現し、レッドバーストが発生しない利点を有し、パッケージングプロセスを大幅に簡素化し、パッケージングコストを削減し、同時にスペクトル中の白色光成分の調整・制御も実現できる。
【0005】
上記の発明目的を達成するために、本発明の技術的解決策は、以下の通りである。
【0006】
LEDチップ、光吸収体および/または可視光発光材料、および近赤外発光材料を含み、近赤外発光材料、光吸収体および/または可視光発光材料は、LEDチップの励起下で発光する650~1000nm波長の光パワーがAであり、近赤外および可視光発光材料は、LEDチップの励起下で発光する350~650nm波長の光パワー、およびLEDチップで近赤外および可視光発光材料が励起された後LEDチップの350~650nm波長の残留発光パワーの両者の合計がBであり、B/A*100%が0.1%~10%である、光学装置である。
【0007】
本発明中のLEDチップは、同じLEDチップ、例えば、青色光LEDチップであり、1つまたは複数の青色光LEDチップが同時に存在し、近赤外発光の光パワーを増強することができる。
【0008】
好ましくは、前記LEDチップの発光ピーク波長は、420~470nmの範囲にある。
【0009】
好ましくは、前記光吸収体の分子式は、(La、Y、Lu)3~xSi6N11:xCe3+および(Lu、Y、Gd)3~y(Al、Ga)5O12:yCe3+中の1つまたは2つであり、0.35≦x≦1.5、0.15≦y≦0.45である。
【0010】
好ましくは、光吸収体は、発光ピーク波長420~470nmの発光を吸収し、460nmの励起下で500~780nm波長の可視光を発光し、光吸収体の外部量子効率は0.001~0.05である。
【0011】
好ましくは、前記近赤外発光材料は、分子式aSc2O3・A2O3・bCr2O3およびLn2O3・cE2O3・dCr2O3中の1つを含み、A元素は少なくともAlおよびGa元素中の1つを含み、Ga元素を必ず含み、Ln元素は少なくともY、Lu、Gd元素中の1つを含み、Y元素を必ず含み、E元素は少なくともAlおよびGa元素中の1つを含み、Ga元素を必ず含み、0.001≦a≦0.6、0.001≦b≦0.1、1.5≦c≦2、0.001≦d≦0.2であり、上記2つの分子式はそれぞれβ-Ga2O3構造およびガーネット構造を有する。
【0012】
好ましくは、前記可視光発光材料は、分子式(La、Y、Lu)3~eSi6N11:eCe3+、(Lu、Y、Gd)3~z(Al、Ga)5O12:zCe3+中の1つまたは2つであり、0.001≦e<0.15、0.001≦z<0.15である。
【0013】
好ましくは、前記近赤外発光材料は、分子式aSc2O3・A2O3・bCr2O3およびLn2O3・cE2O3・dCr2O3中の1つを含み、A元素は少なくともAlおよびGa元素中の1つを含み、Ga元素を必ず含み、Ln元素は少なくともY、Lu、Gd元素中の1つを含み、Y元素を必ず含み、E元素は少なくともAlおよびGa元素中の1つを含み、Ga元素を必ず含み、0.001≦a≦0.6、0.001≦b≦0.1、1.5≦c≦2、0.001≦d≦0.2であり、上記2つの分子式はそれぞれβ-Ga2O3構造およびガーネット構造を有する。
【0014】
好ましくは、前記β-Ga2O3構造の近赤外発光材料は、In元素をさらに含むことができる。
【0015】
好ましくは、前記近赤外発光材料の粒子径の中央値D50は15~40μmであり、近赤外発光材料は、可視光発光材料との合計質量の50~80%を占める。
【0016】
好ましくは、前記近赤外発光材料はLEDチップの上方に配置され、光吸収体および/または可視光発光材料は近赤外発光材料の上方に配置される。
【0017】
以上のように、本発明は、LEDチップ、光吸収体および/または可視光発光材料、および近赤外発光材料を含む光学装置を提供し、近赤外発光材料、光吸収体および/または可視光発光材料は、LEDチップの励起下で発光する650~1000nm波長の光パワーがAであり、近赤外発光材料、光吸収体および/または可視光発光材料は、LEDチップの励起下で発光する350~650nm波長の光パワーがBであり、LEDチップで近赤外発光材料、光吸収体および/または可視光発光材料が励起された後LEDチップの350~650nm波長の残留発光パワーがCであり、(B+C)/A*100%は0.1%~10%である。
【0018】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は、以下の通りである。
【0019】
(1)該光学装置は、LEDチップを使用して近赤外発光材料および可視光発光材料を組み合わせて実現され、同じLEDチップを使用して近赤外および可視光発光を同時に実現し、パッケージングプロセスを大幅に簡素化し、パッケージングコストを削減する、
(2)該光学装置は、高い発光効率/優れた信頼性、強力な干渉防止能力、白色光を補償できるなどの特徴を有する、
(3)本発明によって提供される可視光と近赤外線を組み合わせた光学装置は、レッドバースト現象を解消し、白色光部分の光パワーを調整・制御でき、セキュリティ監視などの分野で良好な応用が期待されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による好ましい実施例で提供される発光装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の目的、技術的解決策および利点をより明確にするために、具体的な実施形態と併せて図面を参照して、本発明を以下でさらに詳細に説明する。これらの説明は単なる例示であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。なお、以下の説明では、本発明の概念を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の構造および技術の説明を省略する。
【0022】
本発明は、LEDチップ、光吸収体および/または可視光発光材料、および近赤外発光材料を含む光学装置を提供し、近赤外発光材料、光吸収体および/または可視光発光材料は、LEDチップの励起下で発光する650~1000nm波長の光パワーがAであり、近赤外および可視光発光材料は、LEDチップの励起下で発光する350~650nm波長の光パワー、およびLEDチップで近赤外および可視光発光材料が励起された後LEDチップの350~650nm波長の残留発光パワーの両者の合計がBであり、B/A*100%は0.1%~10%である。
【0023】
該光学装置において、350~650nm波長発光の主な作用は、650~1000nm波長の発光によって引き起こされるレッドバースト現象を弱めることであるが、350~650nm波長の発光パワーが高すぎると強い視覚的な衝撃が発生し、白色光のめまいが発生するため、本技術的解決策により、B/A*100%が0.1%~10%であることを実現できる。
【0024】
好ましくは、前記LEDチップの発光ピーク波長は、420~470nmの範囲にある。
【0025】
好ましくは、前記光吸収体の分子式は、(La、Y、Lu)3~xSi6N11:xCe3+および(Lu、Y、Gd)3~y(Al、Ga)5O12:yCe3+中の1つまたは2つであり、0.35≦x≦1.5、0.15≦y≦0.45である。
【0026】
好ましくは、光吸収体は、発光ピーク波長420~470nmの発光を吸収し、460nmの励起下で500~780nm波長の可視光を発光し、光吸収体の外部量子効率は0.001~0.05である。光吸収体の主な作用は、LEDチップで可視光および近赤外発光材料が励起された後LEDチップの残留発光を吸収し、光吸収体の外部量子効率が低すぎると可視光パワーが不足し、外部量子効率が高すぎると残留可視光の発光が強すぎて、可視光および赤外線光パワーを効果的に制御できない。
【0027】
好ましくは、前記近赤外発光材料は、分子式aSc2O3・A2O3・bCr2O3およびLn2O3・cE2O3・dCr2O3中の1つを含み、A元素は少なくともAlおよびGa元素中の1つを含み、Ga元素を必ず含み、Ln元素は少なくともY、Lu、Gd元素中の1つを含み、Y元素を必ず含み、E元素は少なくともAlおよびGa元素中の1つを含み、Ga元素を必ず含み、0.001≦a≦0.6、0.001≦b≦0.1、1.5≦c≦2、0.001≦d≦0.2であり、上記2つの分子式はそれぞれβ-Ga2O3構造およびガーネット構造を有する。
【0028】
好ましくは、前記可視光発光材料の分子式は、(La、Y、Lu)3~eSi6N11:eCe3+、(Lu、Y、Gd)3~z(Al、Ga)5O12:zCe3+中の1つまたは2つであり、0.001≦e≦0.15、0.001≦z≦0.15である。該光学装置において、可視光発光材料の分子式の括弧内の元素は単独で存在することも、2つまたは3つの元素が共存することもできる。その主な目的は、可視光発光材料の発光波長、半値幅および発光強度などの性能を調整するためである。光学装置の色座標、色温度、色レンダリング能力、光パワーなどの包括的な性能を調整するために、可視光発光材料は、(Ca、Sr、Ba)2Si5N8:Eu2+、(Sr、Ca)AlSiN3:Eu2+、(Ba、Ca、Sr)Si2O2N2:Eu2+、β-SiAlON:Eu2+をさらに含むことができ、1つまたは複数の可視光発光材料を使用して光学装置の光色パラメータを調整することができる。
【0029】
好ましくは、前記近赤外発光材料は、分子式aSc2O3・A2O3・bCr2O3およびLn2O3・cE2O3・dCr2O3中の1つを含み、A元素は少なくともAlおよびGa元素中の1つを含み、Ga元素を必ず含み、Ln元素は少なくともY、Lu、Gd元素中の1つを含み、Y元素を必ず含み、E元素は少なくともAlおよびGa元素中の1つを含み、Ga元素を必ず含み、0.001≦a≦0.6、0.001≦b≦0.1、1.5≦c≦2、0.001≦d≦0.2であり、上記2つの分子式はそれぞれβ-Ga2O3構造およびガーネット構造を有する。
【0030】
好ましくは、前記β-Ga2O3構造の近赤外発光材料はIn元素をさらに含むことができ、上記β-Ga2O3構造の近赤外発光材料にIn元素を導入することにより、近赤外発光材料の発光性能をさらに調整・制御できる。
【0031】
好ましくは、前記近赤外発光材料の粒子径の中央値D50は15~40μmであり、近赤外発光材料は、可視光発光材料との合計質量の50~80%を占める。近赤外発光材料の粒子径の中央値D50は、赤外波長発光性能を直接決定する。好ましくは、粒子径の中央値D50が15μm以上の近赤外発光材料は、赤外波長光パワーの強度を顕著に高めることができる。しかしながら、結晶粒が大きすぎると近赤外線の効果的な透過に影響を及ぼし、近赤外線の光パワーが低下するため、粒子径の中央値D50は最大40μmである。
【0032】
好ましくは、前記近赤外発光材料はLEDチップの上方に配置され、光吸収体および/または可視光発光材料は近赤外発光材料の上方に配置される。近赤外発光材料はLEDチップの上方に配置されると、近赤外発光材料のLEDチップ発光の効果的な吸収を確保し、高い近赤外発光パワーを達成し、光吸収体および/または可視光発光材料は近赤外発光材料の上方に配置されると、光学装置中の350~650nm波長発光を全体的に制御でき、350~650nm波長および650nm~1000nm波長の2つの波長発光パワーを調整・制御できる。
【0033】
なお、本発明の保護範囲は、上記のすべての材料の特定の分子式に限定されず、元素含有量の範囲を微調整することによって達成される本発明と同様の効果も、本発明の保護範囲内に含まれ、例えば、(La、Y、Lu)3Si6N11:Ce3+分子式中の元素含有量がそれぞれ2~4、5~7、8~13の範囲で微調整されて得られた本発明と同様の効果も、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0034】
本発明に係る光学装置は、特定の作製方法を限定するものではないが、以下の作製方法によって光学装置の光パワーを高めることができる。
【0035】
LEDチップをホルダーおよびヒートシンクに固定し、回路を半田付けして、本発明の光吸収体および/または可視光発光材料、近赤外発光材料の粉末材料を別々または同時にシリカゲルまたは樹脂に一定の割合で均一に混合する。次に、撹拌・脱泡して、蛍光変換層混合物を取得する。蛍光変換層混合物をディスペンサーまたはスプレーによってLEDチップ上を覆い、ベーキングによって硬化させ、最後にパッケージングして、必要なLED発光装置を取得する。または、光吸収体および/または可視光発光材料、近赤外発光材料の粉末材料を、本発明の割合でガラス材料、プラスチック材料に均一に混合し、ガラス材料、プラスチック材料の通常の方法に従い蛍光ガラス、蛍光プラスチックを調製し、または直接焼成して蛍光セラミックにした後、蛍光ガラス、蛍光プラスチックまたは蛍光セラミックをLEDチップと組み合わせて、パッケージングして本発明の光学装置を取得する。
【0036】
以下、本発明の実施例および実施形態は、本発明に係る近赤外線装置を説明するためのものであり、本発明はこれらの実施例および実施形態に限定されない。
【0037】
実施例1
以下の光学装置を提供する。その構成要素は、波長440nmの青色光LEDチップ、分子式Y2.65Ga5O12:0.35Ce3+の光吸収体材料、分子式Y2O3・1.6Ga2O3・0.06Cr2O3の近赤外発光材料であり、近赤外発光材料のD50粒子径は18μmであり、近赤外発光材料は、発光材料の総質量の65%を占め、光吸収体材料の外部量子効率は0.003である。本発明の近赤外発光材料を樹脂と均一に混合し、撹拌・脱泡して、近赤外蛍光変換層混合物を得、該混合物をスプレーによってLEDチップ表面を覆い、ベーキングによって硬化させ、近赤外蛍光層を形成する。その後、光吸収体材料とシリカゲルを均一に混合して、近赤外蛍光変換層にコーティングし、硬化させ、パッケージングした後、必要なLED発光装置を取得する。1000mAの電流で点灯試験を行ったところ、本発光装置の白色光フラックスは3.5lmであり、350nm~1000nm波長の総光パワーは749mWであり、650nm~1000nm波長の光パワーAは720mWであり、350nm~650nm波長の光パワーBは29mWであり、光パワーの比がB/A*100%=4%であった。
【0038】
実施例2~4の作製方法および発光装置の構造は、実施例1と同じであり、各実施例の発光材料および光吸収体材料の分子式および性能特性に応じて、それぞれの比率に従って混合すれば得られる。
【0039】
実施例5
以下の光学装置を提供する。その構成要素は、波長455nmの青色光LEDチップ、分子式Y2.65Ga5O12:0.35Ce3+の光吸収体材料、分子式La2.9Si6N11:0.1Ce3+の可視光材料、分子式Y2O3・1.6Ga2O3・0.06Cr2O3の近赤外発光材料であり、近赤外発光材料のD50粒子径は30μmであり、近赤外発光材料は発光材料の総質量の80%を占め、光吸収体材料の外部量子効率は0.003である。本発明の近赤外発光材料とシリカゲルを均一に混合し、撹拌・脱泡し、近赤外蛍光変換層混合物を得、該混合物をディスペンサーによってLEDチップ表面を覆い、ベーキングによって硬化させる。その後、光吸収体材料とシリカゲルを均一に混合して近赤外蛍光変換層にコーティングし、硬化させた。次に、可視光発光材料とシリカゲルを均一に混合して光吸収体層にコーティングし、硬化させ、パッケージングした後、必要なLED発光装置を取得する。1000mAの電流で点灯試験を行ったところ、本発光装置の白色光フラックスは10lmであり、350nm~1000nm波長の総光パワーは666mWであり、650nm~1000nm波長の光パワーAは640mWであり、350nm~650nm波長の光パワーBは26mWであり、光パワー比がB/A*100%=4%であった。
【0040】
実施例6~9の作製方法および発光装置の構造は、実施例5と同じであり、各実施例の発光材料および光吸収体材料の分子式および性能特性に応じて、それぞれの比率に従って混合すれば得られる。
【0041】
実施例10
以下の光学装置を提供する。その構成要素は、波長420nmの青色光LEDチップ、分子式Y2.65Ga5O12:0.35Ce3+の光吸収体材料、分子式La2.9Si6N11:0.1Ce3+の可視光材料、分子式(Y0.7Al0.3)2O3・1.6Ga2O3・0.04Cr2O3の近赤外発光材料であり、近赤外発光材料のD50粒子径は38μmであり、近赤外発光材料は発光材料の総質量の80%を占め、光吸収体材料の外部量子効率は0.003である。本発明の近赤外発光材料とシリカゲルを均一に混合し、撹拌・脱泡し、近赤外蛍光変換層混合物を得、該混合物をディスペンサーによってLEDチップ表面を覆い、ベーキングによって硬化させる。その後、可視光発光材料および光吸収体材料とシリカゲルを均一に混合して近赤外発光材料層にコーティングし、硬化させ、パッケージングした後、必要なLED発光装置を取得する。1000mAの電流で点灯試験を行ったところ、本発光装置の白色光フラックスは9lmであり、350nm~1000nm波長の総光パワーは631mWであり、650nm~1000nm波長の光パワーAは590mWであり、350nm~650nm波長の光パワーBは41mWであり、光パワー比がB/A*100%=7%であった。
【0042】
実施例11および12の作製方法および発光装置の構造は、実施例10と同じであり、各実施例の発光材料および光吸収体材料の分子式および性能特性に応じて、それぞれの比率に従って混合すれば得られる。
【0043】
実施例13
以下の光学装置を提供する。その構成要素は、波長455nmの青色光LEDチップ、分子式La2.9Si6N11:0.1Ce3+の可視光材料、分子式Y2O3・1.6Ga2O3・0.03Cr2O3の近赤外発光材料であり、近赤外発光材料のD50粒子径は15μmであり、近赤外発光材料は発光材料の総質量の70%を占める。本発明の近赤外発光材料と樹脂を均一に混合し、撹拌・脱泡し、近赤外蛍光変換層混合物を得、該混合物をスプレーによってLEDチップ表面を覆い、ベーキングによって硬化させ、近赤外蛍光変換層を形成する。その後、可視光材料とシリカゲルを均一に混合して近赤外蛍光変換層にコーティングし、硬化させ、パッケージングした後、必要なLED発光装置を取得する。1000mAの電流で点灯試験を行ったところ、本発光装置の白色光フラックスは20lmであり、350nm~1000nm波長の総光パワーは634mWであり、650nm~1000nm波長の光パワーAは610mWであり、350nm~650nm波長の光パワーBは24mWであり、光パワー比がB/A*100%=4%であった。
【0044】
実施例14
以下の光学装置を提供する。その構成要素は、波長455nmの青色光LEDチップ、分子式La2.9Si6N11:0.1Ce3+の可視光材料、分子式0.6Sc2O3・Ga2O3・0.1Cr2O3の近赤外発光材料であり、近赤外発光材料のD50粒子径は35μmであり、近赤外発光材料は発光材料の総質量の80%を占める。本発明の近赤外発光材料とシリカゲルを均一に混合し、撹拌・脱泡し、近赤外蛍光変換層混合物を得、該混合物をディスペンサーによってLEDチップ表面を覆い、ベーキングによって硬化させる。その後、可視光発光材料とシリカゲルを均一に混合して近赤外蛍光変換層にコーティングし、硬化させ、パッケージングした後、必要なLED発光装置を取得する。1000mAの電流で点灯試験を行ったところ、本発光装置の白色光フラックスは18lmであり、350nm~1000nm波長の総光パワーは657mWであり、650nm~1000nm波長の光パワーAは608mWであり、350nm~650nm波長の光パワーBは49mWであり、光パワー比がB/A*100%=8%であった。
【0045】
実施例15および16の作製方法および発光装置の構造は、実施例14と同じであり、各実施例の発光材料および光吸収体材料分子式および性能特性に応じて、それぞれの比率に従って混合すれば得られる。
【0046】
実施例17
以下の光学装置を提供する。その構成要素は、波長470nmの青色光LEDチップ、分子式(Lu0.3Y0.7)2.6(Al0.8Ga0.2)5O12:0.4Ce3+の光吸収体材料、外部量子効率が0.006、分子式Y2O3・1.6Ga2O3・0.06Cr2O3の近赤外発光材料であり、近赤外発光材料のD50粒子径は28μmであり、近赤外発光材料は発光材料の総質量の78%を占める。本発明の近赤外および可視光材料をそれぞれ蛍光セラミックシートに作製し、近赤外蛍光セラミックシートをLEDチップの上方に組み合わせ、可視光蛍光セラミックシートを近赤外蛍光セラミックシートの上方に組み合わせ、パッケージングして光学装置を取得する。1000mAの電流で点灯試験を行ったところ、本発光装置の白色光フラックスは5.8lmであり、350nm~1000nm波長の総光パワーは657mWであり、650nm~1000nm波長の光パワーAは620mWであり、350nm~650nm波長の光パワーBは37mWであり、光パワー比がB/A*100%=6%であった。
【0047】
実施例18
以下の光学装置を提供する。その構成要素は、波長480nmの青色光LEDチップ、分子式La1.5Si6N11:1.5Ce3+の光吸収体材料、光吸収体の外部量子効率が0.01、分子式Y2O3・2(Ga0.5Al0.5)2O3・0.03Cr2O3の近赤外発光材料であり、近赤外発光材料のD50粒子径は45μmであり、近赤外発光材料は発光材料の総質量の60%を占める。本発明の近赤外および光吸収体材料をガラス材料に混合し、それぞれ近赤外蛍光ガラスおよび可視光蛍光ガラスに調製し、近赤外蛍光ガラスとLEDチップを組み合せ、可視光蛍光ガラスを近赤外蛍光ガラスの上層に覆い、パッケージングして光学装置を取得する。1000mAの電流で点灯試験を行ったところ、本発光装置の白色光フラックスは4.5lmであり、350nm~1000nm波長の総光パワーは704mWであり、650nm~1000nm波長の光パワーAは658mWであり、350nm~650nm波長の光パワーBは46mWであり、光パワー比がB/A*100%=7%であった。
以下の表1は、本発明のすべての実施例の発光材料、吸光材料の構成および発光性能を示す。
【0048】
【0049】
以上の表のデータから分かるように、本発明の光学装置中の蛍光粉末は、LEDチップで効果的に励起され、可視光発光材料、近赤外発光材料および光吸収体材料と組み合わせて光学装置を取得し、白色光および近赤外線の二重発光を実現し、白色光部分および近赤外線パワーを効果的に調整・制御でき、セキュリティなどの分野で良好な応用が期待されている。以上のように、本発明は、LEDチップ、光吸収体および/または可視光発光材料、および近赤外発光材料を含む光学装置を提供し、近赤外発光材料、光吸収体および/または可視光発光材料は、LEDチップの励起下で発光する650~1000nm波長の光パワーがAであり、近赤外および可視光発光材料は、LEDチップの励起下で発光する350~650nm波長の光パワー、およびLEDチップで近赤外および可視光発光材料が励起された後LEDチップの350~650nm波長の残留発光パワーの両者の合計がBであり、B/A*100%は0.1%~10%である。該光学装置は、LEDチップを使用して赤外発光材料および光吸収体および/または可視光発光材料を組み合わせて実現され、同じLEDチップを使用して近赤外および可視光発光を同時に実現し、強い近赤外発光および弱い可視光発光を実現し、パッケージングプロセスが簡素化され、パッケージングコストを削減し、高い発光効率/優れた信頼性の特徴を有する。
【0050】
なお、本発明の上記の具体的な実施形態は、本発明の原理を例示または説明するために使用され、本発明に対する限定を構成しないことを理解されたい。したがって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われた修正、等価置換、改良なども、すべて本発明の保護範囲に含まれることに理解されたい。なお、本発明の添付の特許請求の範囲は、添付の請求の範囲および境界、またはそのような範囲および境界の同等の形態に含まれるすべての変更および修正を網羅することを意図している。
【符号の説明】
【0051】
1 近赤外発光材料層
2 半導体チップ
3 ピン
4 ヒートシンク
5 ベース
6 光吸収体材料