(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】エアゾール製品
(51)【国際特許分類】
B65D 83/68 20060101AFI20230118BHJP
B65D 81/32 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
B65D83/68 120
B65D81/32 V
(21)【出願番号】P 2021117738
(22)【出願日】2021-07-16
(62)【分割の表示】P 2020504608の分割
【原出願日】2018-03-09
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】坪内 誠
(72)【発明者】
【氏名】尾形 謙
(72)【発明者】
【氏名】石田 祥平
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-079082(JP,A)
【文献】特開2003-300570(JP,A)
【文献】特開2015-163658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 83/08-83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器から突出するステムを有するバルブユニットと、前記ステムに嵌合するアクチュエータとを有するエアゾール製品であって、
前記エアゾール容器が、複数の区画された収容空間と、前記収容空間に対応した流入口と、前記流入口を開閉するシール部材が前記流入口ごとに設けられた、1つ以上のバルブユニットとを有し、
前記複数の収容空間の内の少なくとも1つが、発泡性液体を含む収容物を収容する発泡性液体収容部であり、
前記複数の収容空間の内の他の少なくとも1つが、
液化ガスのみで構成された発泡剤を
収容物として収容する発泡剤収容部であり、
前記発泡剤収容部には、前記発泡剤のみ、または圧縮ガスのみで構成された噴射剤と前記発泡剤との組み合わせ、または前記発泡剤と分離しない成分と前記発泡剤との組み合わせ、または前記噴射剤と前記発泡剤と分離しない成分と前記発泡剤との組み合わせ、のいずれかの組み合わせの収容物のみを収容し、
前記発泡剤収容部に対応する前記流入口が、前記発泡剤収容部から前記発泡剤の液相を吐出するように構成され、
前記エアゾール容器が、1つの容器と前記容器内に収容される1つ以上の発泡性液体収容部を有し、
前記発泡剤収容部が、前記容器内の前記発泡性液体収容部の外部の空間で構成され、
前記発泡性液体収容部に対応する前記流入口から吐出した前記発泡性液体と前記発泡剤収容部に対応する前記流入口から吐出した前記発泡剤は、前記アクチュエータ内
に吐出された勢いのみで混合するように構成されていることを特徴とするエアゾール製品。
【請求項2】
前記アクチュエータが、前記ステムに嵌合する嵌合部と、前記流入口からの吐出物を混合する混合部と、混合された吐出物を吐出する吐出口とを有することを特徴とする請求項1に記載のエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアゾール容器から突出するステムを有するバルブユニットと、前記ステムに嵌合するアクチュエータとを有するエアゾール製品に関し、特に、内容物を泡沫状に吐出するのに好適なエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器から突出するステムを有するバルブユニットと、ステムに嵌合するアクチュエータとを有するエアゾール製品は周知であり、アクチュエータから容器内の内容物を泡沫状に吐出するものも周知である。
例えば、特許文献1には、耐圧性のエアゾール容器(外容器11)と、エアゾール容器(外容器11)内に収納され、容積可変の隔壁を備えている収容空間(内容器12)と、収容空間(内容器12)と連通しているバルブユニット(エアゾールバルブ13)と、収容空間(内容器12)内に充填され、発泡性液体(水性原液)と発泡剤(親油性液化ガス)とからなる発泡性組成物と、収容空間(内容器12)とエアゾール容器(外容器11)との間の加圧室Sに充填される加圧剤Bとを有したエアゾール製品(発泡性エアゾール製品10)が記載されている。
【0003】
このエアゾール製品(発泡性エアゾール製品10)は、加圧剤Bの圧力を、発泡性組成物の圧力以下且つ、大気圧よりも高く設定することで、収容空間(内容器12)内に気相を保つことが可能となり、エアゾール容器(外容器11)を上下に振ることにより発泡性組成物を乳化して均一な発泡性液体(水性原液)と発泡剤(親油性液化ガス)の分散相とすることができ、安定した状態の発泡体を吐出できる。
【0004】
また、使用時に収容空間(内容器12)内の気相部と大気とが連通し、使用直後に収容空間(内容器12)内の気相部のガスの一部が大気に抜け出ることがあるが、同時に収容空間(内容器12)内の圧力が低下するため、加圧剤Bの圧力により収容空間(内容器12)は収縮されて液密に近い状態となる。これによって、エアゾール製品(発泡性エアゾール製品10)を正立状態または倒立状態で吐出操作しても、収容空間(内容器12)内の液相部分を確実に吐出することができる。
さらに、一つのエアゾール容器(外容器11)内に2つの収容空間(内容器12)を収容することも可能であり、同時または別々に2種の発泡性組成物を発泡体として吐出可能なエアゾール製品(発泡性エアゾール製品10)を、コンパクトなサイズで提供することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1で公知のエアゾール製品には、未だ改善の余地があった。
すなわち、エアゾール製品の静置状態において、発泡性液体と発泡剤とが同じ内容器内で分離して存在しているものに関しては、使用前にエアゾール製品を振盪して乳化させる必要があり、手間がかかるとともに、エアゾール製品を振盪させた後、吐出することなく静置した場合、発泡性液体の性質によっては内容器内の気相部分に泡沫が充満してしまうことがあり、次回使用時までに消泡できていないと、エアゾール製品を再度振盪させても、発泡性液体と発泡剤とが十分に乳化できない虞があった。
【0007】
また、発泡性液体の種類によっては、発泡剤と触れることで劣化や性質の変化が進行するものがあるため、1つの内容器内に発泡性液体と発泡剤の両方を入れることができない虞があった。
【0008】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡単な構成で、保管時にエアゾール容器内で発泡性液体と発泡剤とが触れずに、エアゾール容器を振盪させることなく発泡性液体と発泡剤とを十分に乳化して良好な発泡体を吐出可能なエアゾール製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエアゾール製品は、エアゾール容器から突出するステムを有するバルブユニットと、前記ステムに嵌合するアクチュエータとを有するエアゾール製品であって、前記エアゾール容器が、複数の区画された収容空間と、前記収容空間に対応した流入口と、前記流入口を開閉するシール部材が前記流入口ごとに設けられた、1つ以上のバルブユニットとを有し、前記複数の収容空間の内の少なくとも1つが、発泡性液体を含む収容物を収容する発泡性液体収容部であり、前記複数の収容空間の内の他の少なくとも1つが、液化ガスのみで構成された発泡剤を収容物として収容する発泡剤収容部であり、前記発泡剤収容部には、前記発泡剤のみ、または圧縮ガスのみで構成された噴射剤と前記発泡剤との組み合わせ、または前記発泡剤と分離しない成分と前記発泡剤との組み合わせ、または前記噴射剤と前記発泡剤と分離しない成分と前記発泡剤との組み合わせ、のいずれかの組み合わせの収容物のみを収容し、前記発泡剤収容部に対応する前記流入口が、前記発泡剤収容部から前記発泡剤の液相を吐出するように構成され、前記エアゾール容器が、1つの容器と前記容器内に収容される1つ以上の発泡性液体収容部を有し、前記発泡剤収容部が、前記容器内の前記発泡性液体収容部の外部の空間で構成され、前記発泡性液体収容部に対応する前記流入口から吐出した前記発泡性液体と前記発泡剤収容部に対応する前記流入口から吐出した前記発泡剤は、前記アクチュエータ内に吐出された勢いのみで混合するように構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明のエアゾール製品によれば、エアゾール容器は、複数の区画された収容空間と、収容空間に対応した流入口と、流入口を開閉するシール部材が流入口ごとに設けられた、1つ以上のバルブユニットとを有し、複数の収容空間の内の少なくとも1つが、発泡性液体を含む収容物を収容する発泡性液体収容部であり、複数の収容空間の内の他の少なくとも1つが、液化ガスのみで構成された発泡剤を収容物として収容する発泡剤収容部であり、発泡剤収容部には、発泡剤のみ、または圧縮ガスのみで構成された噴射剤と発泡剤との組み合わせ、または発泡剤と分離しない成分と発泡剤との組み合わせ、または噴射剤と発泡剤と分離しない成分と発泡剤との組み合わせ、のいずれかの組み合わせの収容物のみを収容し、発泡性液体収容部に対応する流入口から吐出した発泡性液体と発泡剤収容部に対応する流入口から吐出した発泡剤は、アクチュエータ内に吐出された勢いのみで混合するため、発泡性液体と発泡剤とが、互いを混合することで反応・変質するようなものでも、使用直前まで互いを隔離した状態で保管できる。
また、アクチュエータ内に吐出された勢いのみで発泡性液体と発泡剤とを混合するため、使用直前に容器を振ることなく泡沫状に吐出できる。
また、発泡剤収容部に対応する流入口が、発泡剤収容部から発泡剤の液相を噴出するように構成されているため、発泡剤の気相を吐出することがなく、確実に発泡剤の液相と発泡性液体とをアクチュエータ内で混合でき、泡沫状に吐出できる。
また、エアゾール容器が、1つの容器と容器内に収容される1つ以上の発泡性液体収容部を有し、発泡剤収容部が、容器内の発泡性液体収容部の外部の空間で構成されているため、発泡性液体収容部を、発泡剤の気相の圧力で圧迫して吐出することができ、発泡剤の他に吐出用のガスを用意する必要がない。
さらに、発泡剤を低圧力のものにし、発泡剤収容部に発泡剤とともに噴射剤として圧縮ガスを充填すれば、発泡剤を噴射剤としても使用する場合に比べて、高温状態でも圧力の急激な上昇を抑えることもできる。
【0011】
請求項2に記載の構成によれば、アクチュエータが、ステムに嵌合する嵌合部と、流入口からの吐出物を混合する混合部と、混合された吐出物を吐出する吐出口とを有しており、発泡性液体と発泡剤とは、バルブユニットの先に設けられたアクチュエータ内で初めて合流し混合されるため、アクチュエータ内に混合された発泡性液体と発泡剤の残液が固着した場合でも、新しいアクチュエータに交換、または洗浄するのみで良好な泡沫状吐出を維持することができる。
また、異なる形状のアクチュエータを付け替えることで、吐出する泡の状態を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエアゾール製品100の断面図。
【
図2】参考例に係るエアゾール製品200の説明図。
【符号の説明】
【0013】
100、200 ・・・ エアゾール製品
110、210 ・・・ エアゾール容器
111、211 ・・・ マウンテンカップ
120、220 ・・・ バルブユニット
120A、220A ・・・ 液相バルブユニット
121、221 ・・・ ステム
122、222 ・・・ 流入口
122A、222A ・・・ 液相流入口
123、223 ・・・ シール部材
130、230 ・・・ アクチュエータ
131、231 ・・・ 吐出口
132、232 ・・・ 嵌合部
133、233 ・・・ 吐出流路
140 ・・・ 発泡剤収容部
240 ・・・ 噴射剤収容部
241 ・・・ 発泡剤収容部
141、242 ・・・ 発泡性液体収容部
142、243 ・・・ 残量低減部材
143 ・・・ ディップチューブ
LG ・・・ 発泡剤
S ・・・ 収容物
B ・・・ 噴射剤
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の一実施形態に係るエアゾール製品100について、図面に基づいて説明する。
【0015】
ここで、本発明の発泡性液体の具体的用途として、洗顔剤、クレンジング剤、シェービング剤、育毛剤、ハンドソープ、スタイリング剤等があり、それぞれの組成の一例を表1乃至表6に示す。
なお、本発明で使用できる発泡性液体の用途や組成は、この限りではない。
【0016】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0017】
エアゾール製品100は、
図1に示すように、エアゾール容器110の口部に2つのバルブユニット120がマウンテンカップ111で固定され、2つのステム121が上方に突出している、いわゆるデュアルバルブタイプの製品である。
エアゾール容器110内の収容空間は、可撓性を有する発泡性液体収容部141と、発泡性液体収容部141の外部である発泡剤収容部140の2つの収容空間に区画されている。
発泡性液体収容部141の内部は、発泡性液体を含む収容物Sが密に収容されており、発泡剤収容部140には、発泡剤LGが収容されている。
【0018】
バルブユニット120の下部には、バルブユニット120の内外を連通する流入口122が設けられており、2つのバルブユニット120の内の一方は、流入口122に発泡性液体収容部141の内部の収容物Sを吐出するように接続されるとともに、他方のバルブユニット120A(以下、「液相バルブユニット120A」という。)は、流入口122に中空状のディップチューブ143が接続されており、発泡剤収容部140内に収容された発泡剤LGの液相部を吐出するように構成されている。
2つのバルブユニット120の上方に突出したステム121はシール部材123を有し、ステム121には、嵌合部132を介してアクチュエータ130が取付けられており、アクチュエータ130内に設けられた吐出流路133は、2つのステム121を連通し、収容物Sと発泡剤LGを合流させた後、吐出口131から吐出可能に構成されている。
【0019】
次に、エアゾール製品100による、収容物Sと発泡剤LGの泡沫状吐出について説明する。
まず、アクチュエータ130を下方に押圧することで、シール部材123による流入口122とステム121内の流路との閉塞が解除されてバルブユニット120および液相バルブユニット120Aが開放し、発泡剤収容部140に収容された発泡剤LGの気相部の圧力によって、発泡剤LGの液相部がディップチューブ143を通りステム121から吐出されるとともに、発泡性液体収容部141も圧力を受けて収容物Sがステム121から吐出される。
発泡剤LGと収容物Sは、アクチュエータ130内の吐出流路133で合流する。
このとき、発泡剤LGと収容物Sとは、発泡剤LGの気相部の圧力を受けた勢いで吐出流路133内で激しくぶつかり合って混合される。
【0020】
これによって、エアゾール容器110を振盪することなく、収容物Sと発泡剤LGとを乳化状態にできる。
さらに、発泡剤LGは乳化状態で徐々に気化膨張して細かい無数の気泡をつくるため、アクチュエータ130の吐出口131から収容物Sを泡沫状に吐出することができる。
なお、本実施形態では、発泡性液体収容部141内には、流入口122に残量低減部材142が取付けられており、最後まで、収容物Sの吐出量を安定させるとともに残量を低減させるように構成されている。
【0021】
また、収容物Sは、発泡性液体収容部141が発泡剤収容部140から受ける圧力によって吐出されるため、保存時に収容物Sと発泡剤LGが触れることはなく、収容物Sに圧力を与えるような材料を混合する必要もない。
さらに、発泡剤LGを低圧力のものにし、発泡剤収容部140に発泡剤LGとともに噴射剤として圧縮ガスを充填した場合は、発泡剤LGを噴射剤としても使用する場合に比べて、高温状態でも圧力の急激な上昇を抑えることができる。
【0022】
また、発泡性液体収容部141によって収容物Sと発泡剤LGとが隔離された状態で保管できるため、収容物Sと発泡剤LGとを混合することで反応・変質してしまうものでも、使用直前まで互いを混ぜることなく保管できる。
また、収容物Sと発泡剤LGとは、アクチュエータ130内で初めて合流するため、吐出後に収容物Sと発泡剤LGの残液がアクチュエータ130内に固着して吐出流路133内を塞いでしまう場合でも、アクチュエータ130を交換、または洗浄するのみで再び良好な泡沫状吐出を維持することができるとともに、吐出流路133の形状が異なるアクチュエータ130に付け替えることで、吐出する泡の状態を容易に変化させることができる。
【0023】
次に、参考例のエアゾール製品200について、図面に基づいて説明する。
なお、エアゾール製品100と共通する各部材の説明は省略する。
参考例のエアゾール製品200は、
図2に示すように、エアゾール容器210内の収容空間には可撓性を有する発泡性液体収容部242および可撓性を有する発泡剤収容部241が設けられ、発泡性液体収容部242の外部および発泡剤収容部241の外部には噴射剤収容部240がさらに設けられており、エアゾール容器210内は3つの収容空間に区画されている。
【0024】
発泡性液体収容部242の内部は、発泡性液体を含む収容物Sが密に収容されており、発泡剤収容部241の内部は、発泡性液体を発泡させるための発泡剤LGが密に収容されている。
噴射剤収容部240は、吐出時に発泡性液体収容部242および発泡剤収容部241を圧迫するための圧力を与える噴射剤Bが収容されている。
【0025】
これによって、発泡剤収容部241内の発泡剤LGは、発泡性液体収容部242内の収容物Sを吐出させるための圧力を必要とせず、低圧力の発泡剤LGを使用可能であり、噴射剤収容部240内の噴射剤Bは、発泡剤LGよりも十分に大きな圧力を維持するように収容されているため、発泡剤収容部241内の発泡剤LGは、気相部分をほぼ発生させることがなく、発泡剤収容部241内は液密状態を維持できる。
なお、噴射剤Bと発泡剤LGとの圧力差によっては、発泡剤収容部241内に気相が発生することがあるが、そのような場合はディップチューブ等を用いて液相部分を吸い上げるようにしてもよい。
【0026】
バルブユニット220の下部には、バルブユニット220の内外を連通する流入口222が設けられており、2つのバルブユニット220の内の一方は、流入口222に発泡性液体収容部242の内部の収容物Sを吐出するように接続されるとともに、他方のバルブユニット220A(以下、「液相バルブユニット220A」という。)は、流入口222に接続された発泡剤収容部241内に収容された発泡剤LGを吐出するように構成されている。
【0027】
次に、参考例のエアゾール製品200による、収容物Sと発泡剤LGの泡沫状吐出について説明する。
まず、アクチュエータ230を下方に押圧することで、シール部材223による流入口222とステム221内の流路との閉塞が解除されてバルブユニット220および液相バルブユニット220Aが開放し、噴射剤収容部240に収容された噴射剤Bの圧力を、発泡性液体収容部242と発泡剤収容部241とが受けて、収容物Sと発泡剤LGの液相部がステム221から吐出される。
発泡剤LGと収容物Sは、アクチュエータ230内の吐出流路233で合流する。
【0028】
このとき、発泡剤LGと収容物Sとは、噴射剤Bの圧力を受けた勢いで吐出流路233内で激しくぶつかり合って混合される。
これによって、エアゾール容器210を振盪することなく、収容物Sと発泡剤LGとを乳化状態にできる。
さらに、発泡剤LGは乳化状態で徐々に気化膨張して細かい無数の気泡をつくるため、アクチュエータ230の吐出口231から収容物Sを泡沫状に吐出することができる。
【0029】
なお、本参考例は、発泡性液体収容部242内には、流入口222に残量低減部材243が取付けられており、最後まで、収容物Sの噴出量を安定させるとともに残量を低減させるように構成されている。
また、噴射剤Bを液化ガスで構成した場合、収容物Sと発泡剤LGを吐出させることにより噴射剤Bの気相部分の圧力が低下しても、噴射剤Bの液相部分が気化して噴射剤Bの圧力を補填するため、収容物Sおよび発泡剤LGの吐出圧力の低下を防止できる。
また、発泡剤LGを低圧力のものにし、噴射剤Bを圧縮ガスで構成した場合、液化ガスを噴射剤として使用する場合に比べて、高温状態でも圧力の急激な上昇を抑えることができる。
【0030】
ここで、発泡剤として使用されるガスの種類としては、一般的にエアゾール製品に使用されている既知の液化ガスのみを使用することができ、噴射剤として使用されるガスの種類としては、一般的にエアゾール製品に使用されている既知の圧縮ガスのみを使用することができる。
発泡剤として使用される液化ガスの種類としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、またはこれらを含む液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロカーボンなどがあり、これらの複数種を混合して用いてもよく、また、噴射剤として使用される圧縮ガスの種類としては、例えば、窒素、炭酸ガス、圧縮空気、酸素、ヘリウム、亜酸化窒素などがあり、これらの複数種を混合して用いてもよい。
【0031】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0032】
なお、上述した実施形態では、1つのエアゾール容器に2つのバルブユニットを有するいわゆるデュアルバルブタイプであるとして説明したが、本発明の構成はこれに限定されず、例えば、バルブユニットの数が3つ以上であってもよく、1つのバルブユニットを有する複数のエアゾール容器で複数の収容空間を構成してもよく、1つのバルブユニットに複数の流入口および複数の流入口のそれぞれに対応したシール部材を設けてもよい。
【0033】
また、上述した実施形態では、液相バルブユニットから液化ガスを吐出するものとして説明したが、液相バルブユニットから吐出するものの構成はこれに限定されず、例えば、液化ガスに液化ガスと分離しない香料成分を混合させていてもよい。
また、上述した実施形態では、液相バルブユニットは、中空状のディップチューブに接続されており、発泡剤収容部内に収容された液化ガスの液相部を吐出するように構成されているものとして説明したが、液化ガスの吐出方法はこれに限定されず、例えば、ディップチューブを接続せずに、エアゾール容器を倒立状態にして吐出してもよく、柔軟な素材で形成されたディップチューブの先端に錘をつけて、エアゾール容器の向きに関わらず常にディップチューブの先端が液化ガスの液面よりも下方に位置して液化ガスの液相を吸い上げるようにしてもよい。
【0034】
また、上述した実施形態では、発泡剤と収容物とは、発泡剤の気相部の圧力を受けた勢いで吐出流路内で激しくぶつかり合って混合されることで、エアゾール容器を振盪することなく、収容物と発泡剤とを乳化状態にすると説明したが、発泡剤と収容物との関係はこれに限定されず、例えば、発泡剤が収容物に溶解するような組合せでもよい。