(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム及び材料分離回収方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20230118BHJP
B07B 1/28 20060101ALI20230118BHJP
B07B 4/02 20060101ALI20230118BHJP
B07B 9/00 20060101ALI20230118BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20230118BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
B29B17/02
B07B1/28 Z
B07B4/02
B07B9/00 A
B09B3/35
B29B17/04
(21)【出願番号】P 2021192250
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】594173636
【氏名又は名称】株式会社タケエイ
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】渡邉貴典
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-82501(JP,A)
【文献】特開2004-113385(JP,A)
【文献】特開2001-50901(JP,A)
【文献】特開平8-1095(JP,A)
【文献】特開2008-55845(JP,A)
【文献】特開2010-173182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00- 17/04
C08J 11/00- 11/28
B07B 1/00- 15/00
B09B 1/00- 5/00
A47G 27/00- 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みタイルカーペットの材料分離回収システムであり、
前記使用済みタイルカーペットである、パイル層及び裏側支持層を含むタイルカーペット体を破砕する破砕設備と、
前記破砕されたタイルカーペット体を微粉砕する微粉砕設備と、
前記微粉砕された粉砕タイルカーペット体の構成材料を選別する選別設備と、
前記選別設備の投入側と排出側のそれぞれに設けられ、前記粉砕タイルカーペット体に帯電している静電気を除去する除電設備と、
を含
み、
前記選別設備が、複数の選別装置から構成されてなり、
前記除電設備が、
前記複数の選別装置の各々の選別装置の前記粉砕タイルカーペット体の投入口付近及び次の選別装置へと送られる前記粉砕タイルカーペット体の排出口付近、にそれぞれ設けられた除電装置であり、
前記複数の選別装置が、振動篩、風力選別機及び比重差選別機であり、
前記比重差選別機が、
傾斜して設けられた選別多孔振動板と、
前記選別多孔振動板に向かって風を吹き上げるブロワと、
前記選別多孔振動板の重量物排出口側の上部に設けられた整流板と、
を有し、軽比重物は前記選別多孔振動板の下端方向に移動し、軽量物排出口から排出され、重比重物は前記選別多孔振動板の上端方向に移動して、重量物排出口から排出されるようにした比重差選別装置であり、前記整流板により、前記ブロワの風が軽比重物側に流れるように構成されてなる、
使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム。
【請求項2】
前記破砕設備が、
投入口と、
破砕刃が外周面に形成され、回転自在とされてなる破砕ロータと、
前記破砕ロータの外周面に沿って配置された固定刃と、
を有する一軸破砕装置である、
請求項1記載の使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム。
【請求項3】
前記破砕設備と前記微粉砕設備の間に金属検知機が設けられ、前記破砕されたタイルカーペット体中の金属を検出してなる、請求項1又は2記載の使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム。
【請求項4】
前記振動篩が、第一振動篩と第二振動篩とを含み、前記第一振動篩で分級された前記粉砕タイルカーペット体をさらに第二振動篩で分級してなる、請求項
1~3いずれか1項記載の使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム。
【請求項5】
前記風力選別機が、循環型風力選別機である、請求項
1~4いずれか1項記載の使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム。
【請求項6】
前記風力選別機が、循環型風力選別機であり、
前記複数の選別装置が、前記第一振動篩、前記第二振動篩、前記循環型風力選別機及び前記比重差選別機であり、前記第一振動篩のふるい網上に残った前記粉砕タイルカーペット体が前記循環型風力選別機へと送られ、前記循環型風力選別機の重量物側排出口から排出された前記粉砕タイルカーペット体が、前記比重差選別機へと送られて選別されるようにした、請求項
4記載の使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム。
【請求項7】
請求項1~
6いずれか1項記載の使用済みタイルカーペットの材料分離回収システムを用いて、使用済みタイルカーペットから構成材料を分離回収するようにした使用済みタイルカーペットの材料分離回収方法であり、
前記使用済みタイルカーペットである、パイル層及び裏側支持層を含むタイルカーペット体を破砕する破砕工程と、
前記破砕されたタイルカーペット体を微粉砕する微粉砕工程と、
前記微粉砕された粉砕タイルカーペット体の構成材料を選別する選別工程と、
を含み、
前記選別工程において、前記粉砕タイルカーペット体に帯電している静電気を除去する除電工程を含む、
使用済みタイルカーペットの材料分離回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みタイルカーペットから構成材料を高精度で分離回収するための使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム及び材料分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内構造物、特にオフィス、商業施設や住宅などのフロアにタイルカーペットが広く用いられている。タイルカーペットは、一般に、パイル層と呼ばれるカーペット生地とされた表面の繊維層と、前記繊維層の下に形成された炭酸カルシウム等を主成分とするバッキング層と、前記バッキング層の下に形成された塩化ビニル樹脂等を主成分とする裏打ち層と、から構成されている。
【0003】
図14に、タイルカーペットの一部概略模式図を示す。
図14において、符号86がタイルカーペットであり、繊維のパイル層79の下に炭酸カルシウム等を主成分とするバッキング層81が形成され、前記バッキング層81の下に塩化ビニル樹脂等を主成分とする裏打ち層82が形成されている。バッキング層81及び裏打ち層82がパイル層79を支持する裏側支持層84である。
【0004】
このように繊維のパイル層と、炭酸カルシウム等を主成分とするバッキング層、そして塩化ビニル樹脂等を主成分とする裏打ち層とが貼り合わせられているため、リサイクルをしにくいのがタイルカーペットの難点である。そして、タイルカーペットは、統一した規格で製造されているわけではないため、製品によっては塩化ビニル等の樹脂部分が厚いものとか、逆にカーペット生地の繊維部分が厚いものなど、パイル層、バッキング層及び裏打ち層の厚みが製品毎に異なっている。そのため、樹脂の混合率が製品によって区々であったり、塩化ビニル等の樹脂の量やカーペット生地の繊維の毛の硬さや太さなども区々であったりする。このように、タイルカーペット製品によって性状がそれぞれ異なるというのもリサイクルをさらにしにくくする要因である。
【0005】
使用済みタイルカーペットの材料を分離回収するシステムとして、例えば、特許文献1~3に記載された方法やシステムがある。
【0006】
一方、昨今ではSustainable Development Goals(SDGs、持続可能な開発目標)の取り組みが高いレベルで求められており、特許文献1~3に記載された方法やシステムによる材料の分離回収よりもさらに精度よく分離回収を行う必要がある。しかしながら、使用済みタイルカーペットのパイル層、バッキング層及び裏打ち層の材料を分離回収するにあたっては、パイル層の繊維が樹脂に付着し易いため、使用済みタイルカーペットの樹脂を含む各構成材料を高精度で分離回収するのが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-127140
【文献】特開2013-193011
【文献】特開2021-025170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、使用済みタイルカーペットから、各構成材料を高精度で分離回収できるようにした、使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム及び材料分離回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の使用済みタイルカーペットの材料分離回収システムは、使用済みタイルカーペットの材料分離回収システムであり、前記使用済みタイルカーペットである、パイル層及び裏側支持層を含むタイルカーペット体を破砕する破砕設備と、前記破砕されたタイルカーペット体を微粉砕する微粉砕設備と、前記微粉砕された粉砕タイルカーペット体の構成材料を選別する選別設備と、前記選別設備の投入側と排出側のそれぞれに設けられ、前記粉砕タイルカーペット体に帯電している静電気を除去する除電設備と、を含む、使用済みタイルカーペットの材料分離回収システムである。
【0010】
前記破砕設備が、投入口と、破砕刃が外周面に形成され、回転自在とされてなる破砕ロータと、前記破砕ロータの外周面に沿って配置された固定刃と、を有する一軸破砕装置であるのが好適である。
【0011】
前記破砕設備と前記微粉砕設備の間に金属検知機が設けられ、前記破砕されたタイルカーペット体中の金属を検出してなるのが好適である。
【0012】
前記選別設備が、複数の選別装置から構成されてなり、前記除電設備が、前記複数の選別装置の各々の選別装置の前記粉砕タイルカーペット体の投入口付近及び次の選別装置へと送られる前記粉砕タイルカーペット体の排出口付近、にそれぞれ設けられた除電装置であるのが好適である。
【0013】
前記複数の選別装置が、振動篩、風力選別機及び比重差選別機であるのが好適である。
【0014】
前記振動篩が、第一振動篩と第二振動篩とを含み、前記第一振動篩で分級された前記粉砕タイルカーペット体をさらに第二振動篩で分級してなるのが好適である。
【0015】
前記風力選別機が、循環型風力選別機であるのが好適である。
【0016】
前記複数の選別装置が、前記第一振動篩、前記第二振動篩、前記循環型風力選別機及び前記比重差選別機であり、前記第一振動篩のふるい網上に残った前記粉砕タイルカーペット体が前記循環型風力選別機へと送られ、前記循環型風力選別機の重量物側排出口から排出された前記粉砕タイルカーペット体が、前記比重差選別機へと送られて選別されるようにするのが好適である。
【0017】
前記比重差選別機が、傾斜して設けられた選別多孔振動板と、前記選別多孔振動板に向かって風を吹き上げるブロワと、前記選別多孔振動板の重量物排出口側の上部に設けられた整流板と、を有し、軽比重物は前記選別多孔振動板の下端方向に移動し、軽量物排出口から排出され、重比重物は前記選別多孔振動板の上端方向に移動して、重量物排出口から排出されるようにした比重差選別装置であり、前記整流板により、前記ブロワの風が軽比重物側に流れるように構成されてなるのが好適である。
【0018】
本発明の使用済みタイルカーペットの材料分離回収方法は、前記使用済みタイルカーペットの材料分離回収システムを用いて、使用済みタイルカーペットから構成材料を分離回収するようにした使用済みタイルカーペットの材料分離回収方法であり、前記使用済みタイルカーペットである、パイル層及び裏側支持層を含むタイルカーペット体を破砕する破砕工程と、前記破砕されたタイルカーペット体を微粉砕する微粉砕工程と、前記微粉砕された粉砕タイルカーペット体の構成材料を選別する選別工程と、を含み、前記選別工程において、前記微粉砕された粉砕タイルカーペット体に帯電している静電気を除去する除電工程を含む、使用済みタイルカーペットの材料分離回収方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、使用済みタイルカーペットから、各構成材料を、高精度で分離回収できるようにした、使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム及び材料分離回収方法を提供することができるという著大な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る使用済みタイルカーペットの材料分離回収システムの一つの実施の形態を示す概略構成説明図である。
【
図2】本発明に用いられる一軸破砕装置の構造概略断面図である。
【
図3】本発明に用いられる一軸破砕装置の破砕ロータを示す要部斜視図である。
【
図4】本発明に用いられる循環型の風力選別機の構造概略図である。
【
図5】本発明に用いられる比重差選別機の構造概略図である。
【
図6】本発明に係る使用済みタイルカーペットの材料分離回収方法の工程例を示すフローチャートである。
【
図9】製品(1)及び製品(2)でリサイクルしたリサイクルタイルカーペット1の写真並びに製品(3)でリサイクルしたリサイクルタイルカーペット2の写真である。
【
図10】状態(F)における除電設備の有無による比較写真である。
【
図11】製品(1)における除電設備の有無による比較写真である。
【
図12】製品(1)における整流板の有無による比較写真である。
【
図13】左側の写真が製品(1)を1000粒並べて検査している様子を示し、右側の写真が製品(1)を1000粒検査した結果見つけた繊維付着品である。
【
図14】タイルカーペットの一部概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0022】
図1において、符号10は、本発明に係る使用済みタイルカーペットの材料分離回収システムの一つの実施の形態を示す。また、
図6は、本発明に係る使用済みタイルカーペットの材料分離回収方法の工程例である。これら
図1及び
図6に基づいて、
図2~
図5及び
図7~
図14を参照しながら説明する。
【0023】
使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム10は、使用済みタイルカーペットから構成材料を高精度で分離回収するための使用済みタイルカーペットの材料分離回収システムである。
図14に示したように、タイルカーペット86は、一般に、繊維のパイル層79の下に炭酸カルシウム等を主成分とするバッキング層81が形成され、前記バッキング層81の下に塩化ビニル樹脂等を主成分とする裏打ち層82が形成されているが、本発明では、これらの構成材料をそれぞれ精度よく分離回収できる。本願明細書では、バッキング層81及び裏打ち層82を、パイル層79を支持する裏側支持層84と称する。
【0024】
パイル層79の繊維の例としては、例えばナイロン繊維(以下、「ナイロン」ということがある)などの化学繊維であるが、その他の繊維でも適用可能である。バッキング層81の構成材料としては、炭酸カルシウム等の充填剤である。裏打ち層82の樹脂の例としては、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂である。また、以下の本発明の実施の形態では、パイル層79の繊維の例としてナイロン樹脂製の繊維、裏打ち層82の樹脂として塩化ビニル樹脂、バッキング層の主な構成材料としては、炭酸カルシウム(以下、「炭カル」ということがある)の例を示した。
【0025】
使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム10は、前記使用済みタイルカーペットである、パイル層79及び裏側支持層84を含むタイルカーペット体12を破砕する破砕設備14と、前記破砕されたタイルカーペット体12(「破砕タイルカーペット体16」と称することもある)を微粉砕する微粉砕設備22と、前記微粉砕された粉砕タイルカーペット体24の構成材料を選別する選別設備26と、前記選別設備26の投入側と排出側のそれぞれに設けられ、前記粉砕タイルカーペット体24に帯電している静電気を除去する除電設備28と、を含む、構成とされている。
【0026】
前記破砕設備14としては、一軸破砕装置が好ましい。
図2及び
図3に一軸破砕装置の例を示す。
図2及び
図3において、破砕設備14は、投入口17と、破砕刃29が外周面27に形成され、回転自在とされてなる破砕ロータ19と、前記破砕ロータ19の外周面に沿って配置された固定刃31と、を有する一軸破砕装置である。
【0027】
投入口17から投入されたタイルカーペット体12は、破砕ロータ19によって破砕されるが、一軸破砕装置である破砕設備14には、押し込み装置21が設けられており、押し込み装置21によって、タイルカーペット体12は破砕ロータ19に押し付けられて、破砕される(
図6のステップS100)。
図1の(A)における破砕されたタイルカーペット体12(破砕タイルカーペット体16)の状態の写真を
図7(A)に示す。25は破砕されたタイルカーペット体12が通過するスクリーンであり、破砕されてスクリーン25を通ったタイルカーペット体12は、排出口23から排出される。
【0028】
破砕ロータ19は、
図3に示すように、回転軸33を有し、外周面27に多数の破砕刃29が形成されている。一軸破砕装置としては、公知の一軸破砕装置が使用できるが、特に、
図2及び
図3に示すような一軸破砕装置が好適である。本発明に適用できる破砕設備14の例としては、例えば、一軸破砕装置として、富士車輌株式会社の「フジマルチカッター」(登録商標)等がある。
【0029】
従来は、使用済みタイルカーペットを分離回収処理する場合には、パイル層79と裏側支持層84とを分離してから、細断処理などを行っていたが、本発明では、パイル層79と裏側支持層84とを分離することなく、使用済みタイルカーペットをそのまま破砕設備14に投入して処理できる利点がある。このため、従来のように、パイル層79と裏側支持層84とを分離してから処理する場合と比べて、使用済みタイルカーペットを分離回収する処理速度が各段に向上し、また、コスト削減にも繋げる利点がある。
【0030】
なお、図示例では、使用済みタイルカーペットである前記タイルカーペット体12は投入ロボット34により、自動で一枚ずつ前記投入口17に投入されるように構成されている。これにより、前記タイルカーペット体12の投入から、その構成材料の分離回収まで、人の手を介さずに自動で操業されるようになっている。
【0031】
前記破砕されたタイルカーペット体12、つまり破砕タイルカーペット体16は、搬送機構30で搬送され、金属検知機36に送られる。金属検知機36では、次の前記微粉砕設備22による微粉砕の前に、前記破砕された破砕タイルカーペット体16中の金属や金属を含んだ破砕タイルカーペット体16を検出するように構成されている(
図6のサブステップSS200)。また、金属検知機36には、開閉扉の付いた金属排出口38が設けられており、検知された金属類40は金属排出口38から排出される。金属検知機36としては、種々の市販されている金属検知機36が適用可能である。
【0032】
金属検知機36によって金属が検出されなかった破砕タイルカーペット体16は搬送コンベア50によって前記微粉砕設備22へと搬送される。前記微粉砕設備22では、破砕タイルカーペット体16が微粉砕される(
図6のステップS102)。
【0033】
前記微粉砕設備22としては、多数の回転刃51が設けられ、前記回転刃51が高速で回転することで、破砕タイルカーペット体16を細かい粉砕タイルカーペット体24にできる微粉砕装置であれば、公知の微粉砕装置がいずれも適用できる。特に、破砕タイルカーペット体16を3mm以下の細かい粉砕タイルカーペット体24にできる微粉砕装置が好適であり、ロストルの篩目が直径3mmの微粉砕装置が好適である。本発明に適用できる微粉砕設備22の例としては、例えば、株式会社ホーライのHAシリーズ「細粉砕機メッシュミル」等がある。
【0034】
前記選別設備26は、複数の選別装置から構成されてなり、前記除電設備28は、前記複数の選別装置の各々の選別装置における粉砕タイルカーペット体24が投入される投入口付近に設けられている。そして、前記除電設備28は、前記投入口から投入された粉砕タイルカーペット体24が選別処理されて次の選別装置へと送られる粉砕タイルカーペット体24の排出口の付近にも設けられている。
【0035】
前記除電設備28としては、種々の公知の除電装置が適用可能である。本発明に好適な除電設備28の例としては、例えば、株式会社キーエンスのDual I.C.C.制御方式の除電装置等がある。
【0036】
図示例では、前記選別設備26は、振動篩としての第一振動篩42及び第二振動篩44、風力選別機46並びに比重差選別機48を含む構成とされている。風力選別機46としては、循環型風力選別機の例を示した。
【0037】
前記微粉砕設備22で微粉砕された粉砕タイルカーペット体24(本願明細書の実施の形態では3mm以下に粉砕されたもの)は、送風ブロワ52で次の工程へと圧送される。
図1の(B)における微粉砕された粉砕タイルカーペット体24の状態の写真を
図7(B)に示す。
【0038】
符号54はサイクロンであり、圧送されてきた粉砕タイルカーペット体24を下部ロータリーバルブより排出し、第一振動篩42に投入する。また、この時に、軽い繊維は集塵されて集塵設備へと送られる(図示は省略)。投入される際には、第一振動篩42の投入口に設けられた除電設備28によって、投入される粉砕タイルカーペット体24に帯電している静電気が除去される(
図6のサブステップSS202)。第一振動篩42は、3mm~0mmの塩ビ+炭カル+繊維の混合である粉砕タイルカーペット体24から1mm以下のものを選別するのが目的である。
【0039】
第一振動篩42で第一振動篩処理が行われる(
図6のステップS104)。第一振動篩42のふるい網上に残った粉砕タイルカーペット体24(網上3mm~1mm塩ビ+繊維)は循環型の風力選別機46へと送られるが、この第一振動篩42のふるい網上物の排出口にも除電設備28が設けられており、排出される粉砕タイルカーペット体24に帯電している静電気が除去される(
図6のサブステップSS204)。
図1の(C)における粉砕タイルカーペット体24の状態の写真を
図7(C)に示す。
【0040】
第一振動篩42のふるい網下に落ちた粉砕タイルカーペット体24(網下1mm~0mm塩ビ+炭カル+繊維)は、第二振動篩44に投入される。第二振動篩44で第二振動篩処理が行われる(
図6のサブステップSS208)。この時、第一振動篩42の排出口と第二振動篩44の投入口に設けられた除電設備28によって、粉砕タイルカーペット体24に帯電している静電気が除去される(
図6のサブステップSS206)。第二振動篩44は、1mm~0mmの塩ビ+炭カル+繊維の混合である粉砕タイルカーペット体24から1mm以下のものを選別するのが目的である。
【0041】
第二振動篩44のふるい網上に残った粉砕タイルカーペット体24(網上1mm~0mmに含まれる微繊維)は、回収される。
図1の(D)における粉砕タイルカーペット体24の状態の写真を
図7(D)に示す。
【0042】
また、第二振動篩44のふるい網下物を排出する排出口にも除電設備28が設けられており、第二振動篩44のふるい網下物(網下1mm~0mm塩ビ+炭カルパウダー)も、帯電している静電気が除去される(
図6のサブステップSS210)。この第二振動篩44のふるい網下物は、精度よく選別された塩ビ+炭カルパウダーであり、製品(3)として回収される。
図1の(E)で回収される粉砕タイルカーペット体24である製品(3)の状態の写真を
図7(E)に示す。使用済みタイルカーペットの構成材料の炭酸カルシウムはこの製品(3)として約100%回収される。パウダー状の塩ビも多少混入するが、ほとんどが炭酸カルシウムであるので、再製品化にあたって問題はない。
【0043】
循環型の風力選別機46では、第一振動篩42のふるい網上に残った粉砕タイルカーペット体24(3mm~1mm塩ビ+繊維)を風力選別する(
図6のステップS106)。
【0044】
循環型の風力選別機46の構造概略図を
図4に示す。循環型の風力選別機46では、投入口56から投入された粉砕タイルカーペット体24が、循環型の風力選別機46内部に設けられたシロッコファン58による風で吹き上げられ、軽比重物60は軽量物側排出口88へ、重比重物62は重量物側排出口90へ、とそれぞれ選別される構造とされている。循環型の風力選別機46としては、公知の循環型風力選別機が適用できるが、例えば、日本専機株式会社の循環式風力選別機が好適に使用できる。粉砕タイルカーペット体24が投入される際には、投入口56付近に設けられた除電設備28によって、投入される粉砕タイルカーペット体24に帯電している静電気が除去される(
図6のサブステップSS212)。
【0045】
循環型の風力選別機46では、軽量物側の軽量物側排出口88からは繊維が選別されて回収される。
図1の(F)で回収される繊維の粉砕タイルカーペット体24の状態の写真を
図8(F)に示す。
図1の(F)では、繊維のみが回収される。繊維としては、例えばナイロン繊維である。
図1の(F)で回収された繊維は、上述したサイクロン54,80による圧送の際に集塵される軽い繊維と共に、回収された繊維の製品となる。前記集塵設備で集塵される繊維は、綿のように極めて比重が軽い繊維であり、風力選別機46の軽量物側に選別される繊維は、前記集塵設備で集塵される繊維と比べると比重の大きい繊維である。この回収される繊維の製品は、工程毎に静電気が除去されているため塩ビ粒などの付着がなく、高精度で選別された繊維の製品である。繊維が例えばナイロン繊維の場合、本発明によって高精度で選別されたナイロン繊維は、種々のナイロンの利用用途に再利用可能であるが、例えば、消泡剤などの用途、特に「エコ・フォーム」(登録商標)などの消泡剤の原料に再利用可能である。
【0046】
軽量物側排出口88には、除電設備28は設けられていないが、これは、軽量物側に選別される繊維は回収されるだけであり、製品とはならないためである。一方、塩ビ粒(
図1の(G))が選別される重量物側排出口90には、除電設備28が設けられており、排出される粉砕タイルカーペット体24に帯電している静電気が除去される(
図6のサブステップSS214)。
【0047】
選別されて塩ビ粒となった粉砕タイルカーペット体24(3mm~1mmの塩ビ粒)は、さらなる精選のため、送風ブロワ78で次の工程へと圧送される。
図1の(G)における粉砕タイルカーペット体24の状態の写真を
図8(G)に示す。
【0048】
符号80はサイクロンであり、圧送されてきた塩ビ粒の粉砕タイルカーペット体24を下部ロータリーバルブより排出し、比重差選別機48に投入する。また、この時に、軽い繊維は集塵されて集塵設備へと送られる(図示は省略)。比重差選別機48の目的は、3mm~1mmの塩ビ粒を精選するためである。比重差選別機48では比重差選別が行われる(
図6のステップS108)。
【0049】
比重差選別機48の構造概略図を
図5に示す。比重差選別機48は、集塵フード64内に傾斜して設けられた選別多孔振動板66と、粉砕タイルカーペット体24が投入される投入口68と、前記選別多孔振動板66に向かって風を吹き上げるブロワ70と、前記選別多孔振動板66の重量物排出口側の上部に設けられた整流板76と、を有している。比重差選別機48としては、公知の比重差選別機48が使用できるが、例えば、原田産業株式会社のSH型比重差選別機が好適である。また、選別多孔振動板66としては、網が側面視で鋸歯状とされた選別多孔振動板66が好適である。そして、本発明では、公知の比重差選別機に図示した整流板76を取り付けるのが好適である。
【0050】
投入口68から粉砕タイルカーペット体24が選別多孔振動板66面上に投入されると、ブロワ70による風によって、軽比重物は前記選別多孔振動板66の下端方向に移動し、軽量物排出口から排出され、重比重物は前記選別多孔振動板66の上端方向に移動して、重量物排出口から排出されるように構成されている。前記整流板76により、前記ブロワの風が軽比重物側に流れるように構成されている。この風の流れにより、塩化ビニル樹脂に付着した繊維を効率的に除去することができる。
【0051】
また、スクリーンである前記選別多孔振動板66を通過する粉砕タイルカーペット体24は、網通過物排出口72から排出される。また、比重差選別機48には、重比重物排出シャッター74が設けられており、重比重物が重量物排出口へとガイドされる。
【0052】
比重差選別機48の投入口68、軽量物排出口、重量物排出口、網通過物排出口72、のそれぞれには、除電設備28が設けられており、排出される塩ビ粒である粉砕タイルカーペット体24に帯電している静電気が除去される(
図6のサブステップSS214及びSS216)。
【0053】
比重差選別機48の重量物排出口から排出されて除電された粉砕タイルカーペット体24(3mm~1mm塩ビ粒)は、金属検知機36にかけられ、検知された金属類は金属排出口38から排出される。この重量物排出口から排出された3mm~1mm塩ビ粒は、精選されており、製品(1)として回収される(
図6のステップS110)。
図1の(H)で回収される粉砕タイルカーペット体24である3mm~1mm以下塩ビ粒の製品(1)の状態の写真を
図8(H)に示す。このようにして回収された製品(1)は、種々の塩ビ製品に再利用可能である。
【0054】
前記選別多孔振動板66を通過して網通過物排出口72から排出されて除電された粉砕タイルカーペット体24(網下1mm以下塩ビ粒)は、金属検知機36にかけられ、検知された金属類は金属排出口38から排出される。この網通過物排出口72から排出された網下1mm以下塩ビ粒は、精選されており、1mm以下塩ビ粒の製品(2)として回収される(
図6のステップS110)。
図1の(I)で回収される粉砕タイルカーペット体24である1mm以下塩ビ粒の製品(2)の状態の写真を
図8(I)に示す。このようにして回収された製品(2)は、種々の塩ビ製品に再利用可能である。
【0055】
比重差選別機48の軽量物排出口から排出された粉砕タイルカーペット体24は、繊維が付着した塩ビ粒であるため、前記微粉砕設備22へと戻されて、再度微粉砕される。
図1の(J)における粉砕タイルカーペット体24の状態の写真を
図8(J)に示す。
【0056】
このようにして、本発明の使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム及び材料分離回収方法によれば、使用済みタイルカーペットから各構成材料を全て高精度で分離回収することができる。
【0057】
従来、タイルカーペットの構成材料の樹脂の選別品(塩ビ)は100%リサイクルが出来ず、純原料に増量する程度のリサイクルを行っていた。理由としては従来の方式で選別を行っても最低1%の繊維がどうしても残るためである。本発明では、製品(1)の3mm~1mm以下塩ビ粒、製品(2)の1mm以下塩ビ粒に関して、繊維をほぼ完全に除去することに成功したため純原料としてリサイクルが可能になった。
【0058】
図9の左側の写真は、上記した本発明の実施の形態で得られる製品(1)及び製品(2)でリサイクルしたリサイクルタイルカーペット1の写真である。製品(1)の3mm~1mm以下塩ビ、製品(2)の1mm以下塩ビに関しては、繊維をほぼ完全に除去(繊維残があったとしても0.3%程度)であるため、リサイクル品の塩ビを純原料としてカーペットリサイクルが可能になる。
【0059】
図9の右側の写真は、製品(3)でリサイクルしたリサイクルタイルカーペット2の写真である。製品(3)のパウダーに関しては、本発明のシステムの設備副産物として多少の繊維が混入するが、純原料として100%リサイクルが可能であった。ポイントとして従来のリサイクル品と比較して除電装置の帯電除去の効果がある。
【0060】
図1の状態(F)における除電設備28の有無による比較写真を
図10に示す。
図1の状態(F)において、除電設備28が無いと、
図10の左側に示す写真のように、塩ビ粒が混入した状態となる。一方、除電設備28が有ると、
図10の右側に示す写真のように、塩ビ粒の混入がない繊維が回収される。
【0061】
上記得られる製品(1)における除電設備28の有無による比較写真を
図11に示す。上記得られる製品(1)において、除電設備28が無いと、
図11の左側に示す写真のように、ほんの少し繊維が混入した状態となる。一方、除電設備28が有ると、
図11の右側に示す写真のように、繊維の混入がない塩ビ粒が回収される。
【0062】
また、比重差選別機48の整流板76の有無による比較写真を
図12に示す。上記得られる製品(1)において、比重差選別機48の整流板76が無いと、
図12の左側に示す写真のように、ほんの少し繊維が混入した状態となる。一方、比重差選別機48の整流板76が有ると、
図12の右側に示す写真のように、繊維の混入がない塩ビ粒が回収される。比重差選別機48の整流板76が無くとも、製品となるような高精度で塩ビ粒を回収することはできるが、比重差選別機48の整流板76を設けた方が、より高精度で塩ビ粒を回収することができる。
【0063】
図13に、上記のようにして得られた製品(1)に対して、1000粒検査を行った様子を示す。左側の写真が製品(1)を1000粒並べて検査している様子を示し、右側の写真が製品(1)を1000粒検査した結果見つけた繊維付着品である。得られた製品(1)の塩ビ粒1000粒を検査して、繊維付着が見られたのは3粒であった。このことから、繊維付着率は0.3%であり、本発明では、繊維をほぼ完全に除去できたことがわかる。
【符号の説明】
【0064】
10:使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム、12:タイルカーペット体、14:破砕設備、16:破砕タイルカーペット体、17:投入口、19:破砕ロータ、21:押し込み装置、22:微粉砕設備、23:排出口、24:粉砕タイルカーペット体、25:スクリーン、26:選別設備、27:外周面、28:除電設備、29:破砕刃、30:搬送機構、31:固定刃、33:回転軸、34:投入ロボット、36:金属検知機、38:金属排出口、40:金属類、42:第一振動篩、44:第二振動篩、46:風力選別機、48:比重差選別機、50:搬送コンベア、51:回転刃、52:送風ブロワ、54:サイクロン、56:投入口、58:シロッコファン、60:軽比重物、62:重比重物、64:集塵フード、66:選別多孔振動板、68:投入口、70:ブロワ、72:網通過物排出口、74:重比重物排出シャッター、76:整流板、78:送風ブロワ、79:パイル層、80:サイクロン、81:バッキング層、82:裏打ち層、84:裏側支持層、86:タイルカーペット、88:軽量物側排出口、90:重量物側排出口。
【要約】
【課題】 使用済みタイルカーペットから、各構成材料を高精度で分離回収できるようにした、使用済みタイルカーペットの材料分離回収システム及び材料分離回収方法を提供する。
【解決手段】 使用済みタイルカーペットの材料分離回収システムであり、前記使用済みタイルカーペットである、パイル層及び裏側支持層を含むタイルカーペット体を破砕する破砕設備と、前記破砕されたタイルカーペット体を微粉砕する微粉砕設備と、前記微粉砕された粉砕タイルカーペット体の構成材料を選別する選別設備と、前記選別設備の投入側と排出側のそれぞれに設けられ、前記粉砕タイルカーペット体に帯電している静電気を除去する除電設備と、を含む、使用済みタイルカーペットの材料分離回収システムとした。
【選択図】
図1